御嶽山救助批判する自衛隊アレルギーとお花見騒ぎ 憲法9条が受賞なら99カ国に平和賞の資格あり。GHQの軛を脱せない日本~織田邦男氏
ずばり勝負 2014.10.29(水) JBpress
マット安川 ゲストに元空将・織田邦男さんを迎え、御嶽山噴火現場での自衛隊の活動実態をお聞きしました。また、「憲法9条のノーベル平和賞ノミネート」への疑問も提示いただきました。
御嶽山の救助・捜索活動の実態を国民はほとんど知らない
織田 今回の御嶽山噴火での救助・捜索活動について、自衛隊や警察、消防がどれだけ困難な活動をしたのか、意外と国民には知られていません。だからいわれなき批判が出てくるんだなと思いました。
例えば、自衛隊はなぜもっと早く、山に取り残された人を助けないのかという声がありました。3000m級の山にヘリコプターを飛ばすことがいかに難しいか、墜落する可能性もあり、決死の活動なんです。しかも火山灰がある。ヘリコプターの捜索で一番つらかったのは高山病だったといいます。頭が割れるように痛くなる。
また、低体温症もあります。火山灰が雨で濡れると、生コンのようになり、足を突っ込むと抜けなくなるらしいです。その中を一歩一歩力ずくで進む。靴が脱げても取れない。そうすると低体温症になってしまう。それで体調を崩して後送されたり、本当にたいへんなことをやっているんですが、そういうことはあまり知られていない。
自衛隊だけではなく、警察も消防もみんな苦労してやっているということが国民のみなさんも分かれば、現場のやる気にもつながると思うんですが。
装甲車でも何でも使えるものを総動員するのは当然のこと
ある有識者がラジオで、自衛隊は雨の日になったら活動できないのか、それは軍隊ではない、軍隊ではないから集団的自衛権なんてトンデモないというような発言をされていました。では、私は聞きたい。火山灰が積もっているところに雨が降って、どこの軍隊がやれますか、救助を続けられますかと。
また、ある有名なコメンテーターは、なぜ自衛隊なんですかと言っていました。なぜ装甲車を出すんですかと。装甲車というのは、もし火砕流が起これば、その中に避難すれば、1時間はムリですが5分や10分は時間を稼ぐことはできる。火山石が飛んできて直撃を受けても助かるわけです。
地雷探知機や、有毒ガスの監視装置なども同じです。火山ガスは毒ガスで極めて危ない状況で活動しているわけですから有効なんです。
自衛隊と警察、消防では装備が違います。自衛隊しか持っていないものがある。警察と消防の能力を超える範囲で、自衛隊がその能力を持っているのであれば、使えるものは使うでしょう。あのような状況で使えるものは使うというのは当然のことです。
自衛隊は何も目立ちたくてやっているわけではありません。しゃしゃり出ているわけではないし、好きでやっているわけでもない。任務として、長野県知事の要請を受けて、安倍総理大臣の指示に基づいて、防衛大臣が命令を発して、その命令に基づいてやっている。
つらい任務なんですよ。それを理解してもらうというのはムリかもしれませんが、少なくとも黙っていてほしい、自衛隊OBとしてはそう思いますね。
自衛官はサンドバッグみたいなものです。今回の件で、自衛隊や軍に対するアレルギーがいかに強いかがよく分かりました。コメンテーターのような優秀で頭のいい人でも、極端に非合理的になる。
これは戦後の自衛隊アレルギーそのままです。日本人の心の疾病というのはまだまだ癒えていないんだなという感じがしますね。
憲法9条のノーベル平和賞申請は国際的な恥
今回の憲法9条のノーベル平和賞申請は、自由だし、いいんです。ただ昔、外国人に言われたことを思い出しました。日本人は内輪だけの常識で、外のことは知らないと。それは花見みたいなもので、桜の下で輪になって飲めや歌えとやっている、ああいう感じだと。今回の件は、典型だと思います。
これに関してはJBpressに記事を書き、大きな反響がありビックリしました。どういうことかというと、憲法9条の第1項というのは、99カ国がすでに取り入れているものです。第1項はどこに由来しているかというと、1928年のパリ不戦条約です。まったく瓜二つです。そういう憲法を持っている国が日本以外に98カ国ある。
もし仮に、憲法9条が平和に非常に貢献しているからノーベル賞に値するとしたら、ほかの98カ国もノーベル賞に申請しなければおかしい。論理的にはですね。そういうことを知らず、憲法9条というのは日本独自のものだと思っているふしがある。
そもそも、ノーベル平和賞は申請すれば、形式が合っていれば受け入れられるわけです。だからノーベル賞委員会に受け入れられたと喜々としていましたが、私は恥ずかしかったですよ。世界的に見て、これほど恥ずかしいことはない。
花見と同じで、日本人だけが輪になって、やった、やったと騒いでいるが、他国の憲法を見てみなさいと。日本独自の平和憲法だからノーベル平和賞をくださいというのは恥ずかしい。勉強不足だなと思います。
実は、日本国憲法の特殊性というのは、9条の第2項にあるんです。つまり軍隊を持たないということで、最初は非武装だった。しかし、朝鮮戦争が起きたため、警察予備隊という軍隊でも警察でもない組織をつくった。それが保安隊になり、現在の自衛隊になった。
ですから、憲法9条がノーベル平和賞としてふさわしいのかというと、非武装でずっときていれば世界に冠たる憲法だったかもしれませんが、いまは自衛隊という武装組織を持っているので、これではほかの国と一緒です。
ちなみに、集団的自衛権については、全世界で行使できなかったのは日本だけです。それはなぜか、その根源はどこにあるのか。たぶん自信がないんでしょう。自信を失わされた。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の巧妙な戦後政策で、徹底して日本が悪いことにされた。
だから、集団的自衛権を行使したら、日本だけが暴走する、明日にでも侵略戦争を始める、徴兵制が始まるといったキャンペーンを朝日新聞や毎日新聞は張っている。トンデモない筋違いなキャンペーンです。本当に暴走するのか。私はそんなことはない、日本人の成熟度、常識度はかなり高いと思っています。
「マット安川のずばり勝負」2014年10月17日放送
■織田 邦男(おりた・くにお)氏
元・空将。1974年、防衛大学校卒業、航空自衛隊入隊、F4戦闘機パイロットなどを経て83年、米国の空軍大学へ留学。90年、第301飛行隊長、92年米スタンフォード大学客員研究員、99年第6航空団司令などを経て、2005年空将、2006年航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)、2009年に航空自衛隊退職。
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◇ 世界に恥を晒した「憲法9条ノーベル平和賞」申請 戦争放棄を謳った憲法は99カ国に存在 織田邦男 2014-10-17 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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