反イスラム 過激に
中日新聞 2015年1月14日 核心
■ 仏 モスク襲撃や不審火
フランスの風刺週刊紙シャルリエブド銃撃テロなど一連の事件を受け、多くのイスラム教徒を抱えるフランスやドイツでは、モスク(イスラム教礼拝所)への襲撃など反イスラムの動きが拡大している。十一日の仏全土で行われたデモ行進では民族や宗教を超えた「連帯」が叫ばれたが、反イスラム感情の高まりは、国民の分断を加速させかねず、欧州は重い課題を抱え込んだ。
今回の事件の現場となり、西欧最多とされる約5百万人のイスラム教徒が住むフランスの状況は、極めて深刻だ。
南部ポールラヌーベルで7日午後、モスクに銃弾2発が撃ち込まれ、西部ルマンのモスクには8日、手榴弾が投げ込まれた。
南東部エクスレバンのモスクで8日夜から9日未明にかけて、放火とみられる火災が発生。9日には南部コルシカ島で、イスラム教のタブーである豚の頭を置くなどの悪質な行為が相次いだ。仏内務省によると、これまでにその数は54件に上る。
移民排斥を掲げ、昨春の欧州議会選で仏第一党に躍進した極右政党「国民戦線」のルペン党首は、「イスラム過激派との戦いが始まった」と主張。社会にくすぶる反イスラム感情は、国民戦線をさらに押し上げかねない危うさをはらむ。
過激派の実情に詳しい、仏ラジオ局記者ダビッド・トムソン氏は「イスラム過激派にとっても反イスラムの動きが出ることは願ってもないことだ」と指摘。欧州に巣食う「亀裂」が新たなテロの温床になる危険があると警鐘を鳴らした。(パリ・渡辺泰之)
■ 独 排斥デモ 2万5000人
ドイツで昨年10月から月曜夜に反イスラムデモを実施している「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(通称ペギーダ)」。12日夜、事件後、初のデモを東部ドレスデンなど国内各地で実施した。
「テロの犠牲者は煽動者に利用されることを望んでいない」。マース法相がデモ中止を呼び掛けたが、DPA通信によると、過去最高だった今月5日の1万8000人を大きく上回る2万5000人が参加。法相の呼びかけは完全に無視された格好だ。
AP通信によると、ペギーダ創設者の1人ルッツ・バッハマン氏(41)は「パリの恐ろしい出来事はペギーダがますます必要とされている証しだ」と訴えた。
ドイツはトルコ系移民を中心に人口の5%にあたる約4百万人のイスラム教徒を抱える。彼らの多くは旧西独地域に住むが、ドレスデンなどデモの中心地である旧東独地域にイスラム教徒はほとんどいない。彼らの反イスラム的主張は、生活実感とは無関係のイメージに基いているとみられる。
メルケル首相は12日、「イスラム教もドイツの一部だ」と言及。ペギーダへの抗議デモもあり、国民の意見は割れている。ドイツはユダヤ人虐殺の歴史から移民排斥には敏感で、メルケル政権は移民政策を堅持する姿勢を示すが、ペギーダの動きが拡大していけば、ドイツの対外的信用は揺らぐことになる。(ベルリン・宮本隆彦)
◎上記事の著作権は[中日新聞]に帰属します (中日新聞2015年1月14日 水曜日 朝刊より、書き写し=来栖)
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