産経ニュース 2015.1.17 07:00更新
【衝撃事件の核心】栃木・小1女児殺害「取り調べ録画テープ」は物証なしの壁を突き破るか
事件取材に携わっていて凶悪事件の解決ほど喜ばしいことはない。昨年6月、「今市事件」の容疑者が逮捕された。
幼い女児をめった刺しにし、遺体を山林に遺棄する残虐な犯行は、全国で始まっていた子供を守るための運動を加速させる一つのきっかけとなった。一方で捜査は進展せず、昨年の今ごろは「迷宮入り」の言葉が頭の中に浮かんでいた。
事件が急展開したのは昨年2月。別の事件の取り調べ中、勝又拓哉被告(32)が「(今市事件は)自分がやった」と供述を始めたのだ。栃木県警はこれをきっかけに裏付け捜査を開始。4カ月かけて容疑を固め、6月3日、殺人容疑で逮捕した。阿部暢夫(のぶお)刑事部長は以前、記者に対し、「どんな事件の容疑者にも今市事件との関わりを念頭に捜査している」と話していた。そんな執念が実を結んだ。
だが、この事件は発生当初、ここまで長期化するとは思われていなかった。女児の遺体から別人のDNA型が検出されていた。県警は犯人特定につながると、捜査線上に挙がった人物のDNA型を採取し、照合した。しかし、DNA型は誰とも一致しなかった。DNA型は当時の捜査幹部のものだったからだ。県警は「現場で会話をしている程度で付着するようなものだった」と説明しているが、捜査線上に浮かんだ人物が次々と容疑者から外される結果となった。勝又被告もその一人だった。
勝又被告が真犯人であれば、犯行に使った車両やナイフを処分する動機と時間を与えたことになる。女児を連れ込んだとされる当時のアパートからも物証は得られなかった。勝又被告が事件関与を供述した時点でも、有罪はおろか、逮捕さえも難しい。そう考える捜査関係者もいたという。
起死回生の手段は、取り調べの録音・録画(可視化)。事件関与を話し出した時点からの取り調べを全て録音・録画し、犯行の経緯を勝又被告自ら語る場面も収められているという。中でも、遺体を捨てるまでの走行ルートの供述は防犯カメラの記録と一致している。
犯人しか知り得ない「秘密の暴露」。走行ルートは、その日その場所を通ったことを示すだけで、殺害の証拠にはならないが、自白が真実である裏付けとして、裁判でも有効な傍証になるという見立てが、捜査関係者の中にあるようだ。
「供述が強制されたものでない」という任意性についても、取り調べを全て記録したことでクリアできるという。だが、検察側には「取り調べの映像を見せることで裁判員が納得するかどうか」と慎重な声もある。
自白偏重は幾多の冤罪(えんざい)事件を生んできた。足利事件の苦い教訓を持つ県警だが、捜査幹部は「今市事件は捜査官が容疑者の信頼を得ることで供述を引き出せたケース」と自信をみせる。威信をかけた捜査の結末を見届けたい。(桑島浩任)
■今市事件 平成17年12月1日午後、今市市(現日光市)で小学1年の女児=当時(7)=が行方不明になり、翌日、茨城県常陸大宮市の山林で遺体が発見された。栃木、茨城両県警は有力情報に捜査特別報奨金を設定、8年半にわたり捜査を続けてきた。
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