産経ニュース 2015.2.2 06:00更新
【名言か迷言か】「小沢一郎」はどこへ行くのか
小沢一郎氏に関心がある人は「一体、どこへ行くのか」と思いたくなる昨今だろう。
生活の党は昨年の衆院選の結果、国会議員が4人となり、政党要件を満たさなくなった。政党交付金の支給がストップする危機的状況に対し、代表だった小沢氏は山本太郎参院議員を迎えることでしのいだ。その「代償」は政党名の変更だ。山本氏の要求により「生活の党と山本太郎となかまたち」と、個人名が入る前代未聞の政党名を受け入れた。
そして、1月27日の記者会見で、「一郎、太郎」による共同代表制にすることを発表した。
小沢氏は記者会見で、同席したパートナーの能力をこう高く評価した。
「旧来の政治の手法だけではなく、国民への働きかけや対話を太郎さんの手腕、能力を通じてやっていけるという大変大きなメリットもある。とてもいい政党を形つくれた」
小沢氏は「代表の定例会見はできるだけ太郎さんにやっていただきたい」とも述べ、山本氏はうれしそうに「えへへへへ」と笑みを浮かべた。
山本氏は、党名に個人名が入っていることに他党から疑問の声が上がっていることについて「これから勢いづきそうだな、と不安を持っているのかな」と自己評価してみせた。新党名の候補に「一郎・太郎」「太郎と一郎」などが挙げられていたことも上機嫌に披露した。
両氏はまた、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件に絡み、イスラム国と相対する周辺諸国の人道支援を訪問先の中東で表明した安倍晋三首相をそろって攻撃し、イスラム国への批判はほとんど聞かれなかった。
山本氏は、ツイッターでイスラム国対策として安倍首相が表明した2億ドル支援を止めるよう主張し続けている。
記者会見でも「(中東で)イスラエルの存在はかなり微妙な立場だ。イスラエル国旗の前でテロに関して発言したのは、完全に挑発だ」と断じた。さらに「イスラム国の人たちからみても、『日本はいったいどっちの立場なんだ』『安倍という人が言っていることは日本国民の総意でいいのか』ということであるならば、この先どんどん国益が失われたり、日本国内でのテロが現実化していく」と続けた。
もっとも、山本氏の発言はある意味で「想定内」といえるだろう。
ところが、小沢氏の発言も、山本氏に同調するような内容だった。
「(首相は)イスラム国と戦争、あるいは敵対状態にある国にお金や物資を支援するということを公然と宣言した。アメリカを中心とした有志連合の立場で国際紛争にあたるということを現地で声明した。イスラム国が『自分たちの敵である』『戦争相手の一員だ』と認識するのは当たり前のことだ」
一方で小沢氏は、代表する著書「日本改造計画」(講談社)で「国連中心主義」をうたい、こう指摘している。
「実際にどのようにして、国際社会の正義と秩序を維持していくのか。それは世界の国々が加盟し、かつ唯一の平和機構である国連を中心とする以外にない」
その国連は、安全保障理事会が昨年9月、イスラム国など過激派に戦闘員として参加する外国人の処罰を加盟国に義務付ける決議案を全会一致で採択した。今年1月25日には、日本人人質の一人がイスラム国に殺害されたとの情報に対し「残虐かつ卑劣な行為だ」として、イスラム国を強く非難する報道声明を発表した。
国連はイスラム国をテロ集団として非難している。小沢氏は会見で「国連中心の旗を主張していく」と強調したものの、発言の“ズレ”は否めない。
小沢氏は、自民党に代わり得る政党の結成を目指し、民主党や維新の党などを巻き込んだ野党再編を志向する。しかし、維新幹部は「山本氏が一緒になったことで小沢氏の存在は再編の求心力ではなく、遠心力になってしまった。小沢氏が関わる再編の望みはなくなった」と突き放す。
小沢氏は、自民党や民主党の要職を経験し、時の政権を動かす姿は「剛腕」といわれた。政界の酸いも甘いも知り尽くしている。永田町最古参議員にもなった。にもかかわらず、園遊会で天皇陛下に手紙を手渡すなど不可解な言動を“売り”とする参院当選1回の山本氏に歩調を合わせているのだ。山本氏に身も心も売ったかのようにみえる。
もっとも、自民党のあるベテラン議員は、「一郎・太郎コンビ」は「一時的なものだろう」と冷ややかだ。
「小沢氏は、政党交付金が手に入れば何でもいい、という人になったのだろう」
「金への執着」がすべてだと解説した。(政治部 内藤慎二)
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「小沢一郎」はどこへ行くのか 小沢氏は、政党交付金が手に入れば何でもいい、という人になったのだろう
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