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「大阪母子殺害事件」差し戻し審初公判 大阪地裁 水島和男裁判長

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大阪母子殺害:弁護側、改めて無罪主張 差し戻し審初公判
 大阪市平野区の母子殺害放火事件で、殺人などの罪に問われた大阪刑務所刑務官の森健充(たけみつ)被告(54)=休職中=に対する差し戻し審の初公判が20日、大阪地裁(水島和男裁判長)であった。検察側は「被害者の生活状況を知る近しい者の犯行で、その機会があるのは被告だけだ」と述べ、改めて有罪を主張。弁護側は事件当日にマンションを訪れていないとして無罪を訴えた。
 検察側は事件翌日に現場マンションの階段踊り場の灰皿から採取した吸い殻72本のうち、DNA型鑑定で1本を森被告のものと断定。この日の審理でも「被告は事件当日の02年4月14日、現場のマンション階段踊り場の灰皿に吸い殻を捨てた」と述べた。
 最高裁は吸い殻が変色していたことから事件以前に捨てられた可能性があるとし、無期懲役とした1審・大阪地裁判決、死刑とした2審・大阪高裁判決の認定を事実誤認としたが、検察は「短時間で変色することもある」と強調した。
 一方、森被告の靴の中から採取した犬の毛を新証拠として提出し、DNA型鑑定の結果、被害者宅の犬の毛の可能性があると主張。更に、森被告自身が捜査段階で描いた現場室内の図面にある五月人形のかぶとは事件当日に飾られたものだとして、被告がその日に現場へ行ったことは明らかだとした。
 これに対し、弁護側は吸い殻について「被告が被害者夫婦に自分の携帯灰皿を渡したことがあり、被害女性が事件より前にその中の吸い殻を踊り場の灰皿に捨てた可能性がある」と反論。「あまりにも早く被告を犯人と絞り込みすぎた。関係者へのアリバイ捜査が十分ではない」と指摘した。
 また、最高裁が鑑定を促した残りの吸い殻71本が誤廃棄されたことに触れ「これこそが被告の無実を証明する機会だったが、吸い殻は消えた」と述べた。【苅田伸宏、村松洋】毎日新聞 2011年10月20日 11時42分(最終更新 10月20日 14時16分)
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犬の毛」DNAがカギ 大阪の母子殺害事件差し戻し審
産経ニュース2011.10.19 14:09
 大阪市平野区で平成14年に起きた母子殺害放火事件で、殺人などの罪に問われた大阪刑務所刑務官、森健充(たけみつ)被告(54)=休職中=の差し戻し審が20日から、大阪地裁(水島和男裁判長)で始まる。最高裁は状況証拠のみで有罪とした1審無期懲役、2審死刑判決をいずれも破棄。現場付近で採取されたたばこの吸い殻について「疑問点が解明されていない」と判示した。ところがその後、吸い殻の紛失が判明、差し戻し審は最大の争点を失った。挽回を目指す検察側は犬の毛のDNA鑑定結果を新たに提出するが、その評価によっては無罪が言い渡される可能性もある。
*新たな基準
 「被告が犯人でなければ説明できない事実関係が含まれている必要がある」
 最高裁は昨年4月の判決で、状況証拠のみで有罪を認定する場合の判断基準を示した。母子殺害事件に当てはめると、1、2審が重視した間接事実はいずれも基準を満たさない−。それが死刑破棄の理由だ。
 検察側立証の決め手は、現場マンションの踊り場の灰皿から採取されたたばこの吸い殻だった。72本のうち1本から森被告のDNA型を検出。検察側は「被告が事件当日に現場を訪れた有力な証拠」とし、1、2審が有罪認定を導く最大の根拠にもなっていた。
 しかし最高裁は弁護側の主張をいれ、「被害女性が被告方から持ち出した携帯灰皿の中身を捨てた可能性がある」と指摘。残る71本には被害女性が好んだ銘柄もあり、差し戻し審で鑑定するよう促した。
*大規模たばこ実験
 残りの吸い殻から1本でも被害女性のDNA型が出されれば、「携帯灰皿経由説」はより説得力を持つ。弁護側が「無罪を示す資料」と位置付けたのも当然だった。
 ところが昨年7月、差し戻し審に向けた協議の場で、大阪府警が71本を保管していた段ボール箱を、すでに約9年前の森被告逮捕直後の時点で紛失していたことが発覚。差し戻し審の“眼目”ともいうべき証拠調べが不可能になった。
 「無罪証明の機会を奪われた形で、判決に影響を及ぼすのは明らかだ」と弁護側は強く非難。差し戻し審では府警の警察官らを尋問し、証拠品の管理態勢を厳しく追及する。
 上告審では、森被告のDNA型が検出された吸い殻の証拠価値も大きく後退した。「フィルターが茶色く変色し、事件のかなり前に捨てられた可能性がある」と疑問が示されたからだ。
 検察側は差し戻し審でこの点に答えるべく、府警の警察官約50人を動員して大規模な「たばこ実験」を実施。コーヒーを飲んだ直後など、多様な条件下でたばこを吸わせ、「当日でも変色はあり得る」と主張する方針。一方の弁護側は「科学性がなく、どれだけ意味があるのか」と問題視しない構えだ。
*異例の獣毛鑑定
 吸い殻に関して仮に検察側の主張がすべて認められても、最高裁は先の判断基準を踏まえ「被告が犯人でなければ説明できない事実が存在するか疑問」とまで指摘した。有罪立証のハードルは相当高い。
 そこで劣勢を補うべく、検察側が新たに提出するのが、森被告の靴の中から採取されたという獣毛のDNA鑑定結果だ。被害者宅では飼い犬の死体も見つかっており、この犬の毛と一致すれば、「現場マンションには行ったことがない」とする森被告の供述を覆す有力な物証となり得る。
 ただ弁護側は「獣毛のDNA鑑定は人の場合と違って、いまだ精度が低い」と主張。採取の経緯や保管状況も定かでないと反論しており、裁判所が鑑定をどう評価するかも注目される。
     ◇
大阪市平野区の母子殺害放火事件
 平成14年4月14日、大阪市平野区のマンション一室が全焼し、焼け跡から主婦の森まゆみさん=当時(28)=と長男の瞳真(とうま)ちゃん=同(1)=の他殺体が発見された。殺人と現住建造物等放火罪で逮捕・起訴された義父の森健充被告は無罪を主張。直接証拠はなかったが、現場近くの遺留物や目撃証言などの状況証拠から、1審大阪地裁は有罪と認定し無期懲役を、2審大阪高裁は死刑をそれぞれ言い渡した。しかし最高裁は昨年4月、「事実誤認の疑いがある」として1、2審判決を破棄、審理を大阪地裁に差し戻した。
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『年報・死刑廃止2010』 /大阪母子殺害事件/堀籠幸男裁判官/後藤貞人弁護士2010-11-13 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 <大阪母子殺害>被告側「無罪判決に向け全力」
 「『疑わしきは被告の利益に』という刑事裁判の原則にかなった判決。差し戻し審では無罪判決に向け全力で頑張りたい」。大阪市の母子殺害事件で殺人罪などに問われた刑務官、森健充(たけみつ)被告(52)の死刑判決を破棄した27日の最高裁判決について、弁護側は高く評価した。今後、大阪地裁で審理がやり直されるが、判決は改めて直接証拠がない事件捜査の難しさを示した。
 午後3時、最高裁第3小法廷。藤田宙靖(ときやす)裁判長の退官により、堀籠幸男裁判官が判決主文を代読すると、後藤貞人弁護士はじっと前を見つめ、弁護活動の実務を担った陳愛弁護士は、うっすらと涙を浮かべた。
 1、2審とも有罪とされた森被告だが、陳弁護士らの接見に、いつも「裁判所は分かってくれる」と語り、無罪判決しか頭にない様子だったという。後藤弁護士は法廷を出ると事務所に電話し、森被告に判決を伝える電報を打つよう指示した。
 その後、後藤弁護士は「最高裁はこれまで事実誤認の主張に扉を閉ざしてきたが、最近は痴漢冤罪(えんざい)や再審など変化が見られる。裁判員制度開始の影響が大きい」と興奮を隠せない様子で語った。大阪府警の捜査については「あまりに早い段階で容疑者を絞り、必要な捜査を怠った。無理な取り調べもあった」と批判。「検証のため取り調べの可視化が必要」と語気を強めた。【伊藤直孝】
◇事件の経緯◇
 02年4月14日夜、大阪市平野区のマンション一室から出火し、焼け跡から主婦の森まゆみさん(当時28歳)と長男瞳真(とうま)ちゃん(同1歳)の他殺体が見つかった。まゆみさんは森被告の妻の連れ子と結婚して暮らしており、検察側は、まゆみさんに恋愛感情を募らせた森被告が思いを拒まれるなどしたため憤って絞殺し、瞳真ちゃんを浴槽につけて水死させたうえ、室内に放火したとして、殺人、現住建造物等放火罪で起訴した。1審・大阪地裁は05年8月、状況証拠から有罪認定して無期懲役を言い渡し、2審・大阪高裁(06年12月)も有罪として「被告は反省しておらず、更生の可能性はない」と死刑を言い渡した。
◇解説…状況証拠評価、裁判官も割れる
 死刑判決を破棄した最高裁判決だが、裁判官5人の見解は割れた。小法廷の考え方となる多数意見は3人にとどまり、那須弘平裁判官は「有罪の余地あり」と意見を述べ、堀籠幸男裁判官は「被告の関与は十分立証されている」と反対意見で1、2審の有罪認定を支持した。裁判員制度導入で市民が死刑判決に関与するかもしれない中、状況証拠のみで有罪・無罪を判断する困難さが改めて浮き彫りになった。
 判決は「直接証拠がある事件でも、状況証拠のみの事件でも有罪認定の基準は変わらない」とした07年の最高裁判例を引用し、状況証拠のみの事件では「被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が必要」と基準を示した。そのうえで現場に残された吸い殻を立証の柱とした検察側の主張について、捜査の不十分さを指摘し「有罪認定のレベルに達していない」と批判した。裁判員制度を念頭に慎重な捜査、審理を促したと言える。
 しかし堀籠裁判官は、国民の健全な良識を刑事裁判に反映させることが裁判員制度の目的として「今回の基準は不明確。裁判官の認定手法を裁判員に求めることは避けるべきだ」と指摘した。一方、藤田宙靖裁判長は「手放しで『国民の健全な良識』を求めることが制度の趣旨と言えるかは疑問。基準を明示することは法律家の責務」と反論。基準に対する見解も分かれた。
 和歌山毒物カレー事件(98年)や仙台・筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件(00年)でも状況証拠による立証が争われたが、被告の有罪が確定した。今後、直接証拠がないとされる埼玉・千葉と鳥取の連続不審死事件などが裁判員裁判で審理される。裁判員が判断に迷う場面が予想され、捜査当局は従来以上に十分な証拠集めと説得力のある立証活動が求められ、裁判官も評議の工夫を迫られている。【伊藤一郎】(毎日新聞 2010年4月27日 22時1分)
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大阪の母子殺害事件、死刑判決を覆したミラクル弁護士とは
やまと新聞社10-05-03 17:30 配信

 最高裁が4月27日、事実誤認があるとして1審の無期懲役と2審の死刑判決を破棄し、大阪地裁に審理を差し戻した大阪市平野区の母子殺害放火事件。被告の主任弁護人を務める後藤貞人弁護士(63)、大阪弁護士会=は「大阪の刑事弁護の第一人者」といわれる。タレント・羽賀研二や検察批判を展開する三井環・元大阪高検公安部長らの弁護も担当。そのミラクルな実力ぶりは−。
 後藤氏は1969年、大阪大法学部を卒業。75年に司法修習(27期)を終え、弁護士登録した。約3600人が登録する大阪弁護士会の中でも、「刑事弁護を専門とする数少ない弁護士」(司法関係者)だ。
 これまでに、銃刀法違反罪に問われた指定暴力団山口組の元若頭補佐、滝沢孝被告の裁判=1、2審無罪=や、牛肉偽装事件で詐欺などの罪に問われている浅田満被告の控訴審、収賄などの罪に問われた三井氏の裁判など著名事件の弁護を数多く担当。法廷取材が長いベテラン記者は「無罪を主張する被疑者や被告にとって駆け込み寺のような存在」と話す。
 大阪の刑事弁護士の1人も「まさにプロ中のプロ。われわれの間では『後藤でダメならあきらめろ』と言われるほど。人権派といわれるが、頭でっかちではなく、事実を重んじるタイプ」と絶賛する。
 後藤氏は裁判員裁判が始まる前から、法廷で書面を見ずに弁論を展開する“離れ業”が注目されていた。業界誌のインタビューには《われわれは技術者です。その技術を駆使して被疑者・被告人に与えられた権利と利益を守るために全力を尽くす》と答えている。
 一方で、被害者の苦しみを理解するため、死者が出た事件の法廷では赤いネクタイはせず、絶対に笑わないとも。前出のベテラン記者は「マシンのような弁護士だと思っていたから、本人からネクタイの話を聞いたときは意外だった」と振り返る。
 後藤氏は現在、詐欺と恐喝未遂の罪に問われ、1審で無罪となった羽賀被告の控訴審の主任弁護人を担当。昨年11月の第1回公判では改めて無罪を主張した。
 「法廷は検察官の主張が合理的な疑いを超えて証明されたかどうかを判断する場所」と言い切る後藤氏。対する検察関係者は「(1審無罪の決め手となった)元歯科医の証言の信用性を否定できれば、逆転有罪も難しくない」と自信をみせる。
 26日の次回公判では、元歯科医=偽証罪で公判中=の知人らへの証人尋問が予定されており、大阪高裁を舞台に後藤氏と検察が再び対決する。
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「大阪母子殺害事件」事実認定の点で抑制的と言われていた最高裁は変わっても、依然変わらぬ検察2011-01-28 | 死刑/重刑/生命犯 問題


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