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TPP 弱みはアメリカにあり/「交渉の手の内を曝せと迫るメディア」=日本の弱さはその辺りにある

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田中良紹の「国会探検」 弱みはアメリカにあり
投稿者: 田中良紹 日時: 2011年11月16日 22:04
 TPPを巡る議論を要約すると、「アメリカに国益を侵されるから反対」と「アメリカと組まなければ日本の国益は守れない」の二つに分かれる。一見対立する主張だが、どちらも日米関係はアメリカが強く日本は弱いと考えている。
 アメリカとの戦争に敗れて従属的立場に置かれた日本人が、そうした見方をするのは理解できなくもないが、1990年から10年以上アメリカ議会を見てきた私は「本当にそうか?」という気になる。
 アメリカは世界最強の軍隊を持ち、ドルは世界の基軸通貨で、世界中の資源を押さえ、世界の情報を操作する力を持っている。しかし第二次大戦以降アメリカは戦争に勝った事がない。朝鮮戦争は引き分けで「思い出したくもない戦争」である。そのコンプレックスがアメリカをベトナム戦争に駆り立て、建国以来初めて戦争に敗れた。
 イラクやアフガニスタンでの戦争も勝利したとは言えない。しかもその戦争によってアメリカ経済は蝕まれ、財政赤字が止まらなくなった。かつて盟友のヨーロッパはEUを作ってアメリカと対峙するようになり、ユーロがドルの地位を脅かし始める。おまけにEU諸国間の関税撤廃によってヨーロッパ向け農業製品の輸出もままならなくなった。
 冷戦構造を利用してのし上がった日本に「ものづくり」で敗れ、金融と情報産業に特化して世界を支配しようとしたが、金融商品がアメリカ経済を破綻させ、米国民は今や塗炭の苦しみの中にある。アメリカ資本主義に対する国民の信頼は崩れ、経済の建て直しが最優先の課題である。
 一方で経済の成長力はアジアにある。アメリカがアジア太平洋地域に目を向けてくるのは当然だ。アメリカにとってアジアは死活的に重要で、この地域で何とか覇権を握りたい。それがTPPに力を入れる理由だが、アメリカ主導でこの交渉をまとめ上げる事が出来るかは予断を許さない。アメリカ議会が日本を参加させる事に慎重なのはその懸念の表れである。日本との交渉では思うにまかせなかった苦い過去があるからだ。
 日本はアメリカとの交渉で実にしたたかだった。それを「言いなりになる」と考えてしまうのは小泉政権を見たからである。主張を鮮明にする政治手法は勝つか負けるかのどちらかになる。弱い相手には勝てるが強い相手には言いなりになるしかない。そこがかつての自民党と違う。かつての日本は強い相手から実益を得る術を心得ていた。日米経済戦争に勝ったのはアメリカではなく日本である。
 09年の総選挙で民主党は「アメリカとの自由貿易協定の締結」をマニフェストに掲げ、そのセーフティネットとして「農家戸別所得補償」をマニフェストに入れた。そもそも民主党はアメリカと自由貿易をやる方針だった。それが実現しなかったのはアメリカが二国間交渉を受け付けなかったからである。
 そしてアメリカはTPPという多国間協議に乗り出した。その真意はまだ定かではないが、一般的には多国間協議の方が交渉は複雑になる。それこそアメリカ主導が実現するかは予断を許さない。一方で成長力著しい中国と技術力世界一の日本が手を組み、そこに韓国が加われば、アメリカはアジアで取り残される。TPPの方が何とか主導権を握れるとアメリカは捉えている事になる。
 だから日米の間でつばぜり合いが始まった。ハワイでの日米首脳会談で野田総理が「あらゆる物品を自由化交渉の対象にすると言った」とホワイトハウスが発表し、日本の外務省は「言っていない」と異例の抗議をした。外務省は「ホワイトハウスは誤りを認めた」と言うが、ホワイトハウスは「訂正しない」と言う。「これまで日本側が言ってきた事を総合して発表したのだ」と言う。
 つまり菅政権が言った事を野田総理が言った事にしたというのだ。誠に自分勝手な都合の良い解釈だが、これがアメリカの外交のやり方である。アメリカと付き合う時には常に相手が二枚舌である事を腹に収めておく必要がある。アメリカの言った事を鵜呑みにすると判断を誤る。
 これを見て「日本はアメリカに勝てない」と思う者は、「だから交渉に参加してはならない」と言う事になる。しかし参加しないとどうなるか。アメリカが黙っている筈はない。江戸の仇を長崎でという話になる。どこでどんな報復を受けるか分からない。予想のつかない攻撃を受けるのは交渉するより始末が悪い。
 私は今回のアメリカの態度を「弱さの表われ」と見る。野田総理の参加表明の仕方を見て、アメリカのペースにならないと判断したホワイトハウスが、アメリカにとって都合の良い菅政権の方針を勝手に付け加えたのである。そうしないとアメリカ議会や国民を説得できないからだ。
 「だったら徹底して抗議し、発言を訂正させろ」と言う者もいるが、それでは政治にならない。そんなところで肩をいからせたら利益になるものも利益にならなくなる。ここは弱い者の顔を立てて「貸し」を作るのが得策である。
 それもこれも日本国内に強い反対論のある事が一定の効果を挙げているのである。それをうまく使いながら、アメリカ主導に見せかけて、日本がアジアから利益を得られるようにするのが日本の国益である。中国やインドも参加させる方向に持ち込めればTPPも意義が出てくる。
 TPPをアメリカが中国に対抗するための安全保障戦略だと言うピンボケ論議もあるが、中国やインドを排除したらアメリカ経済は立ち行かない。中国やインドをアメリカンスタンダードに持ち込みたいのがアメリカである。それがTPPの行き着く先だと私は思っている。そのプロセスで各国が国益をかけた交渉を繰り広げる。
 アメリカの二枚舌とやりあうには、こちらも二枚舌で対抗すれば良い。にっこり笑って相手の急所を刺すが、しかし決裂するほどは刺さない。それが外交である。ところが国内には敵を間違えている連中が居る。二枚舌とやりあう自国の総理を二枚舌と批判する野党や、国民に本当の事を説明しろと迫るメディアである。交渉の手の内をさらせと迫るメディアが世界中にあるだろうか。この国の弱さはその辺りにある。
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15兆ドル・・・米国の新たなワーストレコード
2011/11/17Thu.「ロシアの声」

 米国の国家債務の規模が15兆ドルを超えた。それは米国のGDP(国内総生産)にほぼ匹敵する値だ。専門家らは当面、投資家の間での懸念を呼び起こすことはないと考えているものの、将来的にはすべての金融市場を巻き込む新たな危機が起きる恐れもある。
 米国の債務は、15兆336億725万5920ドル32セントというとんでもない数字になっている。オバマ政権の3年間の間に、国家債務は1.5倍となり、それはうれしいニュースではない。専門家らは今年中にも国家債務がGDPと同額にまで膨れ上がると予測している。
 一方、米国が常々批判している欧州諸国に関してみれば、国家債務はGDPの60%以下に抑えられている。工業通信銀行のアントン・ザハロフ・アナリストは次のように指摘している。
―最近の共和党および民主党の発言を見ていると、最終的にはコンセンサスが達成されると思います。ですから、8月にスタンダードアンドプアーズが米国の格付けを引き下げた時のようなことにはならないかもしれません。しかし、最悪のシナリオもあり得るということも忘れてはなりません。今年末までには市場に否定的な影響を与えるような知らせが入ってくる恐れもあるわけです。
 最近の状況を見ると、共和党と民主党は国家債務を1兆5000億ドル削減するための計画調整の最終段階に入っている。それは支出の抑制と増税でもってまかなわれる見通しだ。また軍事費の余剰金を、雇用対策や医療支援に向けることも検討されている。
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小沢一郎裁判=「官僚支配に従う者」と「国民主権を打ち立てようとする者」とを見分けるリトマス紙である2011-10-10 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
  リトマス試験紙 田中良紹の「国会探検」日時:2011年10月9日
「小沢一郎氏を国会証人喚問」の愚劣2011-10-20 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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   【佐藤優の眼光紙背】


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