小沢一郎氏裁判 第8回公判〈後〉
産経ニュース2011.12.8
[小沢一郎氏裁判 第8回公判〈前〉]からの続き
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弁護人「(調書を作成した)検事はだれですか」
証人「××検事(法廷では実名)です」
弁護人「(この記載は)事実ですか」
証人「異なります」
弁護人「なぜ(事実と異なる)調書が作成されたのですか」
証人「石川さんの性格や普段の行動から推察し、大事な事項は先生に報告、了承を取るのは、当たり前の話だと(××検事から)いわれ、そういう可能性の話ならば、あるのではないかと申し上げたところ、こういう調書ができました」
弁護人「否定しなかったのですか」
証人「否定すると嘘つき呼ばわりされる。『記憶がないヤツには、いつまでも付き合ってられない。記憶を補うのが自分(検事)たちの仕事だ。石川さんの話も総合して調書を作っている』といわれ、同調してしまった」 弁護人「逮捕前は報告の時期を明示していないが、逮捕後に作成された調書では時期が明確に示されている。どういう経緯があったのか」
証人「はっきりとした記憶にありません。時期的なことに注意を払っていなかったので…。しかも、ちょこちょこ日付とか表現を(検事が)変えることは多々あるので気にしていなかった」
弁護人「池田さんの方から時期を明示したことはありましたか」
証人「ありません」
弁護人「報告したにもかかわらず、具体的な描写は(調書には)一切ありませんね」
証人「記憶もないし、報告したこともありませんので、具体的なシチュエーションがないのは当然です」
弁護人「調書の中には、小沢さんが『おう、分かった』と了承したくだりがありますが。これは、どういう経緯があったのですか」
証人「普段、報告する際に、了解したら(小沢被告が)どういう反応が返ってくるのかと(××検事から)以前に聞かれ、答えたことがあります。引用したのだと思います」
弁護人「(調書にサインはしたが)間違いがあればいつでも訂正できるという説明があったのではないですか」
証人「はい」
弁護人「可能性の問題を挙げただけだと、訂正を求めなかったのですか」
証人「そういう文章を作る人に説明しても変えてくれないし、たとえやってくれても語尾をあいまいにする程度なので」
《池田元秘書は、自身の弁護士に、検察官が自分の意図とは違う調書が作成されたと手紙で訴えていた》
弁護人「手紙は平成22年1月4日付ですが、この日に書いたのですか」
証人「2月4日の間違いです」
弁護人「それだけ混乱していたのですね」
証人「はい」
弁護人「この手紙はどこで書いたのですか」
証人「(千葉県の)鎌ケ谷です」
弁護人「どこで出したのですか」
証人「書いたのは勾留中の拘置所内でしたが、出そうとしたら保釈されたのでその足で出しました」
《池田元秘書の担当検事は途中、××検事から△△検事(法廷では実名)に代わった》
弁護人「交代の理由は」
証人「突然でしたが聞いていません」
弁護人「△△検事に調書の訂正を求めましたね」
証人「はい」
弁護人「△△検事の反応は?」
証人「非常に怒りまして××のときは認めたのに突然立場を変えるのかよ。オレをなめくさっているのかと怒られました」
弁護人「それでも違うと主張したのですね」
証人「その調子で恫喝され、悔しくて涙を流す場面もありました」
弁護人「涙を流したのはどれくらいの長さでしたか」
証人「1時間くらいでした」
弁護人「涙の理由は?」
証人「聞いてもらえないという悔しさと恐ろしさもありました。関西弁でまくし立てるように『ふざけるな』と怒られ、(△△検事は)殺気だった感じや見た目も恐ろしいので、とんでもない人に代わったと、暗い気持ちになりました」
弁護人「△△検事の印象はどうでしたか」
証人「××検事より年配で体格も大きい。目つきも鋭く、雰囲気を持った方だな、と思いました」
弁護人「△△検事の言葉で印象に残っているものはありますか」
証人「『別件逮捕できるんだぞ』とか。『弁護士の言うことは聞くな、俺たちがお前のことを決める』とも言われました」
弁護人「いつからですか」
証人「最初の、初日の取り調べからです」
弁護人「△△検事の取り調べはいつも高圧的でしたか」
証人「いつもいつも、ではなく、ときに優しく接してくださることも。『いい加減認めちゃえば。悪いようにはしないよ』と甘い言葉をかけられました」
弁護人「大久保さんとの共謀を追及する中で、△△検事は大久保さんの供述について話していましたか」
証人「私からの報告があったことを大久保さんが認めている、と言われました」
弁護人「いつからですか」
証人「最初のうちからそれとなく言われていましたが、心ならず調書にサインした29日の前、27、28日ごろからは何度も言われました。『大久保や石川はもう認めている。調書も進んでいる。自分だけ認めず、取り残されている』と」
弁護人「前日は何時まで取り調べがありましたか」
証人「夜12時すぎまでありました」
弁護人「△△検事はなんと言っていましたか」
証人「先ほど申し上げたように自分だけ取り残されている、ということや『認めなければ大久保さん、石川さんの取り調べがますます厳しくなる』『捜査が拡大する』『保釈がなくなる、勾留が延びる』などと言われました」
弁護人「調書の原案は夜の取り調べが始まって、すぐ作成されたんですか」
証人「午後7時ごろにはできていました」
弁護人「それから、ずっと署名を迫っていたと?」
証人「はい」
弁護人「その日は拒否を貫いたんですね」
証人「はい」
弁護人「取り調べ後に独居房に戻り、どう考えましたか」
証人「明日も続くんだな、と。どう対応したらいいかな。周り(大久保元秘書、石川議員)も認めているというし。認めてしまおうかな、と葛藤がありました」
弁護人「『素直にすれば悪いようにしない』という△△検事の言葉を、どう受け取りましたか」
証人「状況が良くなる、不起訴になる、罪が軽くなる、という意味だと思いました」
弁護人「実際に不起訴にすると言われたんですか」
証人「言われてはいません」
弁護人「そう受け取ったんですね」
証人「はい」
弁護人「しかし、それは△△検事が決めることではありませんよね」
証人「組織上、上の人が決めることでしょうが、取調官が報告されるわけですから、情状や処分の関係で、それなりに権限があるのではないか、と思いました」
弁護人「1月29日の調書では、小沢代議士に収支報告書の原案を示していたかどうか、明確ではありません。尋ねられていませんか」
証人「28、29日は主に、大久保さんへの報告内容を聞かれました。小沢代議士への報告は話題になっていませんでした」
弁護人「29日までに『この程度の調書に署名しても、小沢さんに累は及ばない』と言われたことはありますか」
証人「この段階ではありません」
弁護人「29日以降は全面自供の形になっています」
証人「心が折れてしまって。できるだけ検事の心証が悪くならないように、と考えていました」
弁護人「心が折れるとは?」
証人「事実でないことを認めた虚脱感があり、全て検事に任せよう、と思っていました」
弁護人「2月3日の調書に署名する際、△△検事は何か話していましたか」
証人「『小沢代議士を起訴できない』と言っていました」
弁護人「池田さんが『報告・了承』を認めても、小沢代議士を起訴できない、と」
証人「この程度の調書では起訴できない。仮に起訴するなら、もっと詳細な状況について調書を作らなければいけない、と。そう言って調書に署名するよう求められました」
弁護人「△△検事(法廷では実名)とはどういうやりとりがあったのですか」
証人「私は『小沢代議士への報告は年に1度、12月にしかしていません』と申し上げました。すると、△△検事は『じゃあ(調書に)12月って入れてやるよ』っていう感じで、曖昧(あいまい)な表現にして『入れてやっただろう』と」
弁護人「△△検事は(小沢氏への報告の時期を)3月としたかったのですか」
証人「そうです」
弁護人「しかし、池田さんの認識では3月はなかったのですね」
証人「はい」
弁護人「この調書に具体的な記載がないのはなぜですか」
証人「そもそも(事実が)ないことなので、△△検事にも取り繕うことができなかったんだろうと思います」
弁護人「『共謀』の意味を誤解していましたか」
証人「誤解していません」
証人「当初から共謀はないと申し上げていました」
弁護人「この調書でいう共謀とはなんですか」
証人「報告し、了承を得るということです」
弁護人「明らかな誤記ですが、見落としていたのですか」
証人「はい。憔悴しきっていましたので、気づきませんでした」
《法廷の大型モニターに池田元秘書が当時、弁護士に宛てて書いた手紙が映し出される。2月4日付だ。「調書を認めなければ、捜査も終わらず罪も重くなる」。》
弁護人「この手紙に出てくる検事は誰ですか?」
証人「△△検事です」
弁護人「手紙には『この程度の報告で小沢先生や大久保さんには迷惑もかからない』ともある。この検事は誰ですか」
証人「△△検事から、2月3日と4日の取り調べで言われました」
弁護人「2月3日の手紙には、『××検事が可能性の話をさせられた』との話も出てきますが、どうして(取り調べをしていた△△検事ではなく)××検事の名前も出てくるのですか」
証人「△△検事の調書が××検事の調書からの引用が多かったので、弁護士には(手紙を書く以前の)経緯を含めて理解してほしかったのです」
《池田元秘書の保釈後の取り調べ》
弁護人「検察から呼び出されましたよね」
証人「はい」
弁護人「担当の検事は誰でしたか」
証人「××検事です」
弁護人「調書は作成されましたか」
証人「作成されませんでした」
弁護人「どうしてですか」
証人「私が保釈前の調書でサインはしましたが、『小沢代議士と大久保さんに報告したり、了承を得たことは全くない』と申し上げたので、調書にしようがなくて作れなかったのだと思います」
弘中惇一郎弁護人「何点か確認させてください。(前日の)24日に一覧表を見ていれば、25日に間違えることはないのではないですか」
証人「(24日には)きちっと見たわけではなく、こういう一覧表があるのかと分かっただけでしたので」
弁護人「数字まで識別できるほどには見ていないわけですね」
証人「そうです」
弁護人「小沢邸に隣接して陸山会の建物がありますか」
証人「はい。私邸の一角に駐車場と、書生の住み込み部屋を陸山会で借りています」
弁護人「貸し主は?」
証人「地主から借りています」
弁護人「地続きになっているのですか」
証人「はい」
弁護人「借家ですね」
証人「そうです」
弁護人「借りている人は誰ですか」
証人「(小沢被告の)奥様が契約上の借地になり、陸山会が借りています」
弁護人「なぜ奥さんが?」
証人「貸し出す方の問題で、政治団体に貸すと手続きなどが複雑になるので、できれば個人にしてほしい、と。直接借りられないので奥さんを通したと聞いています」
弁護人「地上の建物は誰の名義ですか」
証人「そこまでは…」
弁護人「地上の建物は陸山会が使う目的で建てられたのか」
証人「そう聞いています」
弁護人「賃料は相場に比べてどうですか」
証人「当時はよく分かりませんでしたが、石川さんの方から相場で計算してこうなったと聞いています」
《30分の休廷後、検察官役の指定弁護士の最終尋問》
裁判長「どうぞ、中央の席に座ってください。今度は指定弁護士から質問があります」
証人「はい」
指定弁護士「それでは、先ほどの弁護人からの質問についてもう少し聞かせてください」
指定弁護士「小沢邸の門から入って正面の建物が事務所などで、左手が書生の住居や駐車場ですか」
証人「はい」
指定弁護士「正面の建物は小沢家のものですか」
証人「書生が事務所として使います」
指定弁護士「全部がそうですか」
証人「事務所と応接室は、ご来客があったときに(小沢被告が)使うこともあります」
指定弁護士「21年12月24日に××検事(法廷では実名)から見せられたのはこの資料でいいですか」
証人「これでいいと思います」
指定弁護士「18年、19年の分も××検事から見せられなかったですか」
証人「これを見せられた記憶はありません」
指定弁護士「18、19年分についても収支一覧表を小沢被告に見せたのですか」
証人「はい。毎年同じようにしていました」
指定弁護士「(取り調べで)16年分がないね、という話はしませんでしたか」
証人「そこは覚えていません」
指定弁護士「一覧表は(小沢被告に)見せたのですか」
証人「見せていません」
指定弁護士「内容だけ知らせたのですか。そのとき、小沢さんの反応はどうでしたか」
証人「『ああ、そうか』ぐらいだったと思います。17年のときは一つ一つの団体の収入、支出を順に説明したが、『そう言われてもよく分からないから、全体でいくらになるんだ』ということを言われました。それを受けて、団体間の(資金の)移動を除いたものを報告し、『そうか、分かった』ということだったと思います」
指定弁護士「資料を作り直したということですか」
証人「はい」
指定弁護士「それは17年の収支概算というものですか」
証人「はい」
指定弁護士「同じ日に作り直したのですか」
証人「はい」
指定弁護士「確かに記憶にありますか」
証人「はい」
指定弁護士「私の方で概算と一覧表の数字を対比すると、概算の方が数字がまるまっている。あとで作ったとは思えませんが」
証人「12月の段階で報告したので、当然と思います」
指定弁護士「政治団体の全体の残高が4億円を下回らないように、と考えていたのですか」
証人「はい」
指定弁護士「具体的にはどうしていたのですか」
証人「下回らないようにチェックしていました」
指定弁護士「外貨預金がありますよね。これはいつ崩してもいいものですか」
証人「はい」
指定弁護士「小沢さんの了承は必要ですか」
証人「実際に崩したことはないので、仮定の話は何とも申し上げられない」
指定弁護士「万が一に供えていたお金ですか」
証人「万が一の時に崩せばいいということです」
指定弁護士「石川(知裕衆院議員)さんは、『本件4億円は銀行の定期預金』と証言されているのはご存じですか」
証人「はい」
指定弁護士「石川さんは『その定期預金は崩さないで、4億円を返す』と説明されていることも知っていますね」
証人「はい」
指定弁護士「実際にどう返すんでしょうね」
証人「通常の政治団体の資金で返すということだと思います」
指定弁護士「今から考えて、当時から石川さんはそう考えていたと思いますか」
証人「今思えば、そのつもりなんだろうと思います」
指定弁護士「経理を担当されていて、日常的なやりくりで収支がプラスになったことはありますか」
証人「記憶が曖昧(あいまい)だが、16年はプラス、17年はトントンで、18年はマイナスという記憶があります」
指定弁護士「最後の質問にします。5団体の経理の日々の入力は女性秘書が行っていたのですか」
証人「はい」
指定弁護士「あなたは月1回チェックするのですか」
証人「はい」
指定弁護士「あなたは、女性秘書らの入力で収支報告書を作るのが具体的な役割ですか」
証人「はい」
指定弁護士「引き続き、質問させてもらいます。あなたは西松建設(の違法献金)事件当時から弁護士に相談していたのですか」
証人「はい」
指定弁護士「今はどうですか」
証人「2人に相談しています」
指定弁護士「今、あなたは学生ということですが、弁護士への報酬はどなたかから援助を受けているのですか」
証人「今までの貯蓄と、親からの援助です」
指定弁護士「政治家個人の収入と、政治団体の収入が混同されてはいけませんね」
証人「はい」
指定弁護士「政治家個人の資産と、政治団体の資産も同様ですね」
証人「はい」
指定弁護士「小沢事務所にいたときもそういう認識でしたか」
証人「はい」
指定弁護士「小沢被告の個人の現金を預かることはあったのですか」
証人「私が小沢代議士の個人のお金を預かっていたことはありません。タッチしていません」
指定弁護士「政治団体から小沢被告個人の(口座への)入金や、逆に小沢被告個人の口座から政治団体にお金を入れることはありましたか」
証人「陸山会が(小沢被告)個人分の費用を立て替える場合もありましたし、陸山会や他の団体が支払うべきものを(小沢被告が)立て替えているケースもありましたので、判明した際には処理していました」
指定弁護士「そういう意味ではなく、小沢被告個人のお金を政治団体が預かったり、双方で利用しあうようなケースがあったのでしょうか」
証人「そういう意味では(小沢被告から受け取ったという)4億円は預かっているという認識です」
指定弁護士「その4億円以外で(預かっている)例はありますか」
証人「…。経験はありません」
指定弁護士「あなた自身は、預かった経験がないのですね」
証人「はい」
指定弁護士「先輩や同僚から(預かっていると)聞いたことはありますか」
証人「ないです」
指定弁護士「あなたはこう説明したという記載がある調書に署名をしていますよね」
証人「はい」
指定弁護士「無理やり、検事に説明させられたのですか」
証人「実際の現金の出し入れが合わないと認めた部分もありましたが、全体の文章の中で、『虚偽記載した』とか、『つじつま合わせ』とかは言っていません」
指定弁護士「読んで内容を確認してサインするのではないですか」
証人「はい。認識として『虚偽の記載』とかは違うと申し上げたが…」
指定弁護士「どうして(虚偽記載の)部分だけ認識と違う内容にしなければならないのか」
証人「それは、検事のテクニックだと思う。重要ではない部分は、私の主張通りにし、肝心な部分は自分たちで作ったのではないか」
《池田元秘書はこれまで、前任の石川知裕衆院議員から引き継ぎを受けた際、りそな銀行から4億円の融資を受けていることについての説明があったとしている。池田元秘書は、4億円の返済について、担保の定期を切り崩せばよいと当初から考えていたというが、これについて、まず左陪席の裁判官が質問する》
裁判官「定期で返せばいいと思っていたわけですよね」
証人「はい」
裁判官「では、もともと(定期預金の)4億円の資金があり、さらに4億円を借りることに、あなたは疑問をお持ちではなかったのですか」
証人「当時は、(異動して会計担当の仕事を始めたばかりで)受け身で深く考えませんでした」
裁判官「石川秘書から、4億円の定期預金について『小沢代議士に返す金だから、手をつけるな』という指示はありましたか」
証人「いずれ返す、とだけ聞いていました。手をつけるな、などという指示はありませんでした」
裁判官「4億円を返す意識はあったわけですよね。収支報告書に『借入金』として反映させる必要がないというのは、どうしてそう思ったんですか」
証人「あくまで個人的資産で、一時的な預かり金、と。必要ないと思いました」
裁判官「『一時的預かり』と石川秘書から説明を受けていたんですか」
証人「受けていません」
裁判官「自分で法的、会計的に検討されたことはない?」
証人「ございません」
裁判官「その理由を説明できますか」
証人「(貸借)契約した書類がないというのもありました」
裁判官「公開する必要がないものと考えていたわけですね」
証人「はい」
裁判官「4億円が表に出せない、という意識はあったんですか」
証人「表に出せないというよりは、陸山会として公開するものではない、あくまで個人の金だ、という認識でした」
裁判官「4億円は事務所に置いてあったわけでもなく、政治団体に入っていたわけですよね。それでも『借入金』として計上しないんですか」
証人「銀行通帳は『金庫』ではないが、一体的に取り扱っている。通帳に預ける形で保管しているという、そういう感覚でした」
裁判官「金額について突き合わせをしましたか」
証人「通帳の残高と各団体の預金残高を見比べたこともありました」
裁判官「きちんと金額が出ましたか」
証人「きちんとは出ず、17年と19年の処理で最終的に近い数字になっていきました。ピタピタとは合っていません」
裁判長「収支報告書を大久保さんに見せなくていいと、引き継ぎを受けたんですか」
証人「『見せなければいけない』とも、『見せなくていい』ともありませんでした」
裁判長「見せた方がいいと思ったことはありませんか」
証人「(石川議員が会計を担当した)16年分も(手伝いをしていた)私が全部サインをしていました。(大久保元秘書は)『名ばかり責任者』なのかな、と思っていました」
裁判長「収支報告書はあなたが作成し、誰にもチェックを受けていなかったんですね」
証人「はい。自分で完結していました」
裁判長「通帳には他にも書き込みがありますが、これは誰の字ですか」
証人「石川さんだと思います。17年以降は、必要があれば私が記入していました」
裁判長「誰かに説明するため、メモしていたんですか」
証人「説明するというより、分かりやすくするために書いていました」
裁判長「(16年購入の)土地の登記が(17年)1月7日になり、資産と代金支出を併せて17年分の収支報告書に記載するよう石川秘書から求められた、ということですが。どういうきっかけでその話になったんですか」
証人「石川さんから積極的に引き継ぎがありました」
裁判長「何となく引き継ぎのときに、ということですか」
証人「はい」
裁判長「小沢被告から(収支報告書の記載について)質問を受けることについて、『可能性を否定できるかどうか』と聞かれたんですね」
証人「はい。それで『(小沢被告から)聞かれるかもしれない』とは答えました」
裁判長「(捜査段階)当時の記憶として、質問を受けたり説明したことは一切なかったんですか。それともしたか、しなかったか、という記憶がなかったんですか」
証人「記憶がありませんでした」
裁判長「『原案』についてどうして話が出てきたんですか」
証人「検事から言われました。詳細を聞かれないまま、『原案』という言葉がまぎれこんでいました」
裁判長「話題に全く出ていないのに、『原案』という言葉が登場したんですか」
証人「はい、何もありませんでした」
裁判長「質問も一切なく?」
証人「一切なく、『原案』の言葉が入ってきました」
《次回公判は15日。石川議員の取り調べを担当した検事らの証人尋問》