[小沢一郎氏裁判 第9回公判〈前〉]からの続き
産経ニュース2011/12/15 Thu.
《弁護側は、「僕は小沢一郎を裁判にかけたいと思っていないわけ、前から言っているようにね」という発言から、順番に質問していく》
弁護人「『われわれ(○○検事と石川議員)の作戦で、小沢さんは起訴になっていない』とあなたは言っています。小沢さんを不起訴にする、という共通目的を持っていると理解されますが」
証人「石川さんの立場に立って取り調べをしています。そう理解されるでしょう」
弁護人「事実ではないんですか」
証人「私は石川さんにも小沢さんにも近くありません」
弁護人「では、石川さんの立場に立って、『○○検察官と石川被疑者は小沢氏の不起訴という共通目的を持っている』とするのは、積極的に嘘をついていることにならないですか」
証人「…。あのー、別に石川さんをだまそうとしたわけではないですし、積極的に嘘をつくというのは当時全く考えられません。実際、石川さんもそう思わなかったんじゃないですか。検事が不起訴を望む、なんて」
《次は、「法律家としては、(小沢被告の)共謀の認定はちょっときついという話はしたよね」という部分》
弁護人「具体的にどういうやり取りの中でこの話をしたのか、正確に言葉通り説明してください」
証人「(石川議員が逮捕される前の、小沢被告への報告・了承を認めた昨年)1月11日の調書作成を終えた後、石川議員から『これで(小沢被告も)共謀共同正犯ですね』と議論をふっかけられて。『共謀の認定もいろいろあって、総合的に考えて十分という場合もあるし、この供述だけでは(認定が)厳しいという考えもある』と言いました」
「そうすると、石川さんから『○○検事の考えはどうか』と尋ねられたので、『個人的にはきつい気がする』という話をしました」
《続いて、土地購入原資の4億円に対する、○○検事の「汚い金だっていうのは、検察が勝手に言ってるだけで、水掛け論になるから相手にしなくていい。証拠ないんだから。別に」という発言》
弁護人「『4億円は汚い金』という証拠がない、と石川さんに伝えたんですね」
証人「あの…、言葉ではそうです。言葉の勢いで言ってしまいました。証拠がない、というのは事実に反します」
弁護人「あなた、4億円の出所の重要性をよく知っていて、前年から捜査していたんですよね。取り調べの半分は水谷建設の件に費やしている。そういう重要なことを、取り調べの検察官が勢いでいいますか?」
証人「このときは、そうですね」
弁護人「嘘をついたんですね」
証人「嘘ではありません。(隠し録音を文書に起こした)反訳書を見ると、言い過ぎたな、と。言い過ぎを後悔しているということです」
「この日は石川さんに水谷建設のことを聞いても仕方がない、と思っていました。否定する一方だったので。しかし、石川さんが水谷の話をほじくり返すので、止めさせようとして、そう話しました」
弁護人「『簿外の金』とは、あなたが言いだしたんですか」
証人「違います。…訂正します。私が言い出したか、石川議員が言い出したかは分かりません。ただ、『簿外の金』という表現で、会話がかみ合っていたのは事実です」
弁護人「『自分で言うのも何だけど』とは?」
証人「固有名詞を隠して、丸めて表現しているところを言っています」
《石川議員の小沢被告との「報告・了承」時期について、石川議員が調書の訂正を求めた際の「12月だろうが、3月だろうが変わんねーからさ、また変わると、なんでじゃあ変わったのってなっちゃうからさー。めんどくせーからさ」という発言》
弁護人「検察官調書ってそういうものですか? 不合理な話が出ても何のやり取りもないまま?」
証人「実際の報告が(平成16年)12月だった、という話はこの日に初めて出ました。客観的な証拠に矛盾するし、根拠もなく不合理でした。だから、『まあまあ(仕方がないです)』と石川さんが(訂正を)あきらめたんだと思いました」
《午前中の公判で「石川さんの話は7割が本当、3割が虚偽と認識していた」とする○○検事の発言の意味》
証人「1点付け加えると、取調官というのは被疑者が本当のことを言っていると思いたいんです。自己弁護の気持ちはあったと思います」
弁護人「石川さんと小沢さんの共謀について、あなたの調書を主要な証拠として認定できると考えてましたか」
証人「そこは分かりません」
弁護人「通常ならば取調官なら膨大な証拠があるので意見を言うことはできるのではないのですか」
弁護人「では改めて。5月17日の取り調べに当たり、共謀は当然認められると思っていましたか」
証人「…そこは何とも言えないところですが。この供述だけでは厳しいかなというのが率直な印象でした」
《弁護側反対尋問が終わり。指定弁護士再尋問》
指定弁護士「1月19日に作成された調書について、4億円の原資についてはどういう記載となったかご記憶にありますか」
証人「『小沢先生が政治活動の中で何らかの形で蓄えた簿外の資金であり、表に出せない金』ということでした」
指定弁護士「ここで『簿外の金』と使われていますが、どちらから出た言葉か記憶にないですか」
証人「どちらともなく出たと思います」
指定弁護士「(『政治活動の中で』の意味について)もう少し詳しく覚えていますか」
証人「経世会、新生党、新進党、自由党、民主党など、(小沢被告が関係した)政党などが離合集散する中で、という表現だったと思います」
指定弁護士「(昨年)5月17日の取り調べは、1日で終わることになっていましたか」
証人「そういうふうに聞かされておりました」
指定弁護士「調書を作成されないこともありますが、この日は調書を作成したいという気持ちはありましたね」
証人「はい」
指定弁護士「当初、収支一覧表について石川議員は『3月』に小沢被告に見せて説明したとしていたが、石川さんの供述がぶれたので調書に記さなかった」
証人「はい」
指定弁護士「石川さんが『12月』に作成して見せたと言ったときにどう思いました」
証人「まだ根拠のない弁解を始めたなと思いました」
指定弁護士「石川さんはそういうことを繰り返すことがある」
証人「はい」
弁護人「実際に石川さんの調書を作成したのは何日でしたか」
証人「1月19日でした」
弁護人「メモの中で、石川さんが話した政党の固有名詞が出ていないのはなぜですか」
証人「客観的事実がない。後で調べたら分かると思っていました」
弁護人「石川さんが供述していたけれども、その日は調書も取らない。3日も経ったらあなたの記憶が混濁するのではないですか」
証人「何党が何党に変わったかは重要ではないと思っていた。この供述自体も半信半疑だったので」
弁護人「半信半疑であれば、なおさら供述を照らし合わせることが必要ではないのですか」
証人「そんなことを言ったら、調書に書いてないことはたくさんありますよ!」
指定弁護士「あなたは調書を書く際に、石川さんの供述を覚えていますね」
証人「はい。寝ているとき以外はこの事件のことを考えていましたので」
指定弁護士「詳細なメモを作る人もいると思いますが、あなたはどうですか」
証人「被疑者の一挙手一投足を見ています。いちいちメモを取りながらやっていたら取り調べにならない」
裁判官「それでは私から質問します。確認になりますが、副部長の□□検事(法廷では実名)についてですが、上下関係では□□検事が上になるのですか」
証人「私の上はそうですが、その上に特捜部長がいます」
《平成22年5月17日の取り調べで、元秘書の石川知裕衆院議員(38)が供述を覆すことで、「小沢被告の起訴の可能性が高まる」という見通しを○○検事が持った根拠》
証人「合理的であればいいんですけど、不合理な弁解をすれば、検察審査会は国民が判断するとあって、より起訴の可能性が高まるという見通しを持ちました」
裁判官「あなたの上司や同僚で、そういったことを言っていたのですか」
証人「いえ」
裁判官「『認めれば小沢被告が起訴にならない』という発言は、少し危険な取り調べをしているという自覚がありましたか」
証人「そうですね。一般的には言わないですし、言葉のとらわれ方によっては…」
裁判官「当時はその認識がありましたか」
証人「当時ですか?」
証人「そうですね。見通しを述べただけなので、取り調べをしているときに危険とか危険じゃないとか考えてはやっていないですね」
裁判官「当時は考えてなかった、と」
証人「はい」
裁判官「そのときに録音をされているということが分かっていたら、こういう説明はしませんでしたか」
証人「しなかったと思います」
裁判官「5月17日の捜査報告書は、供述内容よりも詳しかったですが、何を元にして作ったのですか」
証人「私の記憶です」
裁判官「メモなどは取らなかったのですか」
証人「一切取っていません」
裁判官「1月には取っていたが、5月17日は取ってないんですか」
証人「そうですね」
裁判官「記憶を喚起するものもなく、報告書を作られたんですか」
証人「そうですね」
裁判長「ほかの共犯者はこう言っているということを石川さんに告げて、取り調べをしたことはありますか」 証人「大久保(隆規元秘書=一審有罪、控訴中=)さんの供述を主任検事から聞いて、石川さんに聞いた(質問した)ことはあります」
裁判長「続いて5月17日の取り調べなんですが、『作戦が功を奏す』というようなことを言っていますが、石川さんは、作戦の中身について分かると思っていましたか。双方に共通の理解があったんですか」
証人「私も、軽口といえば軽口でした。厳密に話したとは言えません」
裁判長「最後になりますが、反訳書の中で石川さんが『東京地検特捜部の恐ろしさが、身をもって分かりました』と言っていますが、あなたはそれを聞いたときに、石川さんはどういうことを言っていると思いましたか」
証人「自分が逮捕されて勾留されていることについて言っていると思いました」
裁判長「それだけですか」
証人「はい」
《約30分の休廷を挟んで、石川知裕衆院議員の政策秘書の女性に対する、弁護側の質問》
弁護人「出身地はどこですか」
証人「北海道です」
弁護人「最終学歴を教えてください」
証人「立命館大学文学部です」
弁護人「卒業は、いつですか」
証人「1998(平成10)年9月です」
弁護人「その後は?」
証人「民主党の国会議員秘書をしています」
弁護人「公設秘書ということですか」
証人「はい」
弁護人「だれの秘書ですか」
証人「石川知裕の政策秘書です」
弁護人「いつからですか」
証人「2007(平成19)年3月27日です」
弁護人「当選したときからということですね」
証人「はい」
弁護人「政策秘書とは、どのような仕事ですか」
証人「政策の立案やアシスタント、スケジュールの管理などです」
弁護人「仕事場は?」
証人「議員会館です」
弁護人「家族構成を教えてください」
証人「夫と子供2人です」
弁護人「子供はおいくつですか」
証人「7歳と5歳です」
弁護人「保育園に入れているのですか」
証人「はい。保育園です」
弁護人「家事は夫婦で分担しているのですか」
証人「夫は平日、湯河原にいますので、平日は私が家事をしています」
弁護人「そうした状況はいつからですか」
証人「7年前からです」
弁護人「あなたは東京地検特捜部の調べを受けていますね」
証人「はい」
弁護人「何回ですか」
証人「2回です」
弁護人「最初の調べはいつですか」
証人「昨年の1月26日です」
弁護人「どのように呼ばれたのですか」
証人「その日の午前10時に、▲▲(法廷では実名)と名乗る人から、私の携帯に電話がありました」
弁護人「何と?」
証人「午後1時45分に検察庁に来てくれということでした」
弁護人「何のためとの説明でしたか」
証人「何のためか分かりませんでしたので、『資料の返却ですか』と尋ねました」
弁護人「すると?」
証人「『はい』と言っていました」
弁護人「今までにも資料の返却に(検察庁に)うかがうことあったのですね。これまでとの違いはありましたか」
証人「はい。普段は時間を一方的に指定することはありませんでしたので、心配になりました。なので3回ほど、資料の返却か確認しましたが、そうですとのことでした」
《女性秘書は資料の返却と思っていたため、軽装で名刺入れなどが入る小さなバッグ1つだけを持って指定された時間に行ったと主張。財布も持っていなかったという。だが、受付を終えると9階の検事の部屋に通された。自己紹介して初めて▲▲が検事であることを知ったとする。▲▲検事は身長は180センチぐらいで、眼鏡をかけ、女性秘書は「かっぷくがよかった」と証言した。▲▲検事は、まず女性秘書に対して「何で呼ばれたか分かりますよね」と切り出してきたという》
弁護人「あなたは何と答えたのですか」
証人「…。何で呼ばれたのか分かりませんと、資料の返却ですよねと逆に尋ねました」
弁護人「▲▲検事の答えは?」
証人「違いますと。あなたにお話ししてもらわないとならないことがあると言っていました」
《続いて、女性秘書は名前や戸籍などを紙に記入させられたという》
弁護人「その後は?」
証人「取り調べを始めると告げられました」
弁護人「何についての取り調べですか」
証人「ホニャララ、ホニャララの被疑者として取り調べると」
弁護人「ホニャララとは何ですか」
証人「わざとゴニョゴニョと聞きづらくしていましたし、被疑者のところだけ大きくしていましたし…」
《その後、▲▲検事は六法全書を開いて、黙秘権を説明し、聴取を始めたという。女性秘書は再び容疑を尋ねたが、▲▲検事は答えなかったとする。そして、持ち物を検査され、携帯電話も目の前でディスプレーを見せ、消すことを要求され、女性秘書は従ったと主張する》
弁護人「(記入した経歴を記した)紙について質問がありましたか」
証人「はい。紙に基づいて経歴を確認していきました」
弁護人「その後のやりとりは?」
証人「資料の返却に来ただけと思っていたので、取り調べならば、連絡をさせてほしいと懇願しました」
弁護人「(▲▲検事の)反応は?」
証人「駄目だと」
弁護人「理由は?」
証人「あなたに権利はないと。被疑者なら、せめて弁護士にも連絡させてくれと言いましたが、それもできないと言われました」
弁護人「それで何と?」
証人「▲▲検事は、私に『自分のことは自分が分かっているだろうから、自分から話せ』と。ただ、まったく思い当たることがなかったので黙っていました」
弁護人「膠着(こうちゃく)状態が続いたのですね。▲▲検事の反応は?」
証人「一方的に自分が検事になった理由などを話していましたが、だんだんとイライラされて、何で黙っているのかとヒステリックになりました」
《その後も、膠着状態が続き、2、3時間が経過したという。ここで、女性秘書は1回目のトイレ休憩を許され、こっそりと携帯で連絡を取ろうとしたが、圏外で無理だったという》
弁護人「どう感じましたか」
証人「絶望を感じ、被疑者を受け入れるしかないと考えました。そして、話せることは話すので、質問してほしいと訴えました」
《その後も具体的な質問はされず、保育園への子供の迎えを誰かに頼まなければならないと、外部への連絡を懇願し続けたという。だが、▲▲検事は「人生そんなに甘くはない」「自分が悪いんだから泣いても無駄だ」などとして、なかなか応じなかったとする。ただ、ようやく夫への連絡や事務所への連絡を許され、質問が始まった》
証人「資料を出してきてそれを元に質問がありました」
弁護人「資料とは」
証人「通帳のコピーのようなものでした」
弁護人「誰の名義か分かりましたか」
証人「やり取りの中で石川の政治団体のものだと分かりました」
弁護人「どんなことを聞いてきたのですか」
証人「何を問題にしているのか分かりませんでした。(書き込みは)あくまでも私のメモ。収支報告書は帳簿を見てつけるので、それを持ってきてほしいと言いました」
弁護人「すると」
証人「▲▲検事は事務官に指示して押収した段ボールを何個か持ってこさせていました」
弁護人「帳簿は見つかったのですか」
証人「入っていませんでした」
弁護人「帳簿が入っていないことも知らなかったのですね」
証人「はい」
《女性秘書は、取り調べを担当した▲▲検事(法廷では実名)から、家族の写真が入ったUSBメモリのデータを見せるよう要求された》
弁護人「▲▲検事は家族の写真を見て、何と言ったんですか」
証人「(▲▲検事は)『こんな…かわいい子供たちが…』」
証人「『犯罪者の子供ということになったら、どう思うだろうね』、と…」
弁護人「どんな表情でしたか」
証人「にやにやしながらでした」
《女性秘書はそのやり取りの際、すでに午後8時を回っていたと説明。▲▲検事は家に帰ることも、電話で連絡を取ることも認めなかったという》
証人「どうしても帰りたい、と言ったら、(▲▲検事は)『人生そんなに甘くないよ』と。せめて子供が無事に家にいるか、確認させてほしいとお願いしましたが、初めのうちは『そんな権利はない』と。そのうちに私が過呼吸のようになり、『夫になら電話してもいいぞ』と許されました」
《午後9時を回っても、夕食をとらないまま取り調べは続いたという。朦朧とする意識の中、女性は座る姿勢について強い叱責を受けた》
証人「机の下に手を置いて、ぎゅっと握っていました。急に机をボンッとたたかれて『話を聞く態度じゃない』と注意されました。さらにその後、背もたれに体を寄せると、またボンッと机をたたかれ、『人の話を聞く姿勢じゃない。背筋を伸ばせと言われました』」
弁護人「(同席する)検察事務官の様子はどうでしたか」
証人「夕方くらいからコックリコックリしていて、午後7時半以降は机に足を投げ出して寝ていました」
弁護人「▲▲検事は注意しないんですか」
証人「しません」
弁護人「聴取のメモは誰がとっていたんですか」
証人「誰も取っていません。事務官のノートパソコンも閉じたままになっていました」
《午後10時を回り、取り調べはすでに9時間を超える。女性秘書はようやく弁護士に連絡をとり、「脱出」するまでの経緯を語っていく》
証人「もう帰ります、と強く主張したところ、▲▲検事は『本当に、本当に、石川(議員)の心証が悪くなってもいいんだな。石川がどうなってもいいんだな』と、立ち上がって何度も言いました」
弁護人「それで思いとどまったんですか」
証人「帰れる権利はあると思い、弁護士に電話しました。体は硬直し、手が震え、(携帯電話の)電源を入れるのも大変でした」
弁護人「▲▲検事はどうしていましたか」
証人「『そんなことをしていいと思っているのか』と大声を出されましたが、制止を振り切りました」
弁護人「さすがに手は出してこなかったですか」
証人「はい」
弁護人「弁護士に何と言われましたか」
証人「(午後10時をすぎ)そんな時間に検察庁にいることに驚いた、と言われました」
《すぐに主任検事に抗議した弁護士から、間もなく女性に着信があったという》
証人「『(主任検事が)あなたはもう帰ったと言っている。本当に検察庁にいるのか』と聞かれました。そこで携帯電話を▲▲検事に渡しました」
弁護人「2人のやり取りは聞こえましたか」
証人「(弁護士の)先生は大声で抗議していたので聞こえました。『参考人として呼んだのか、被疑者として呼んだのか』と聞かれ、▲▲検事は『参考人』と答えていました」
《弁護士と▲▲検事のやり取りが終わっても、女性秘書の期待に反し、部屋を出ることはかなわなかったという》
証人「無事帰れると思って立ち上がったところ、ドアの前で通せんぼされ『座れ』と言われました。私を見下ろしてにやにやし、『弁護士に頼ってもムダだということが分かったでしょ』と続けました」
《その後、午後11時ごろになり、部屋にかかってきた内線電話で▲▲検事の態度が急変。女性は家に帰ることを許されたという。所持金もなく、歩いて議員会館に戻ったと振り返る》
《精神状態が不安定になり、左耳も聞こえない状態になったという女性秘書は、翌日に約束されていた取り調べをキャンセル。質問に立つ女性弁護士は、女性秘書が通院した際の診断書を示し、取り調べで受けたショックの大きさを強調する》
《同月31日に2度目の取り調べを受けた女性秘書は、聴取に応じた理由について「弁護士から『聴取を拒否すれば逮捕されるかもしれない。石川議員に何があるか分からない』と説得された」と説明。最後に、取り調べが与えた子供への影響を問われ、再び声をふるわせる》
証人「取り調べからしばらくの間、保育園に送っても私の足から離れませんでした。『ママがまた帰ってこなくなる』と、泣いて離れませんでした」
弁護人「子供は当時、いくつでしたか」
証人「3歳と5歳です」
《ここで弁護側の証人尋問は終了。検察官役の指定弁護士側が女性秘書に尋ねていく》
《指定弁護士は、女性に対する聴取の目的が、陸山会事件とは別に、石川議員の政治資金収支報告書の虚偽記載疑惑にあったことを確認。女性が管理していた石川事務所の銀行通帳の中で、献金を受けた相手の名前などが記されたメモ書きが消されている点について尋ねる》
弁護人「石川さんの政治資金として入金されたものが、収支報告書に記載されていない。その入金者の名前をあなたが消した、という問題があったんじゃないですか」
証人「やっていないので、そういう認識はありませんでした」
弁護人「検察側はそういう認識で聴取していたんではないですか」
証人「そういう疑いで取り調べをしている、と2回目の取り調べで説明を受け、納得しました」
弁護人「事実として、通帳のメモを消したことはありますか」
証人「あります」
《午後5時近くになり、小沢被告も肩や首を繰り返し動かすなど、疲労の色がにじむ》
指定弁護士「取り調べのときは陸山会とは全く関係のない話を聞かれたのですね」
証人「関係ない話でした」
指定弁護士「あなたは大学卒業後、すぐに政治家の秘書になられたのですか」
証人「はい」
指定弁護士「あなたが秘書として勤めた方を具体的に教えてください」
証人「はい。(元)参院議員の円より子、衆院議員の田名部匡代、衆院議員の橋本清仁、衆院議員の首藤信彦。そして石川知裕です」
指定弁護士「計何年勤めていますか」
証人「13年です」
指定弁護士「秘書という仕事柄、家に帰るのが遅くなることがありますか」
証人「あります」
指定弁護士「体を壊したことはありますか」
証人「円事務所にいたときに3回入院しました」
指定弁護士「石川議員の秘書になって経理を担当をしていましたか」
証人「経理は最初の事務所からやっていました」
指定弁護士「マスメディアへの対応もやりましたか」
証人「スケジュール調整もあるのでやりました」
指定弁護士「あなたは石川議員の会計帳簿を作成していましたか」
証人「…会計帳簿とは、どういうものですか」
指定弁護士「政治資金規正法上の会計帳簿です」
証人「私が管理する団体に関しては担当していました」
指定弁護士「資金管理団体についてはやりましたか」
証人「はい」
指定弁護士「石川議員から『こうしろ』という指摘されることはありましたか」
証人「ないです」
指定弁護士「石川議員が会計帳簿をごらんになるときはいつですか」
証人「提出前の3月になります。団体によっては6月になりますが」
指定弁護士「それについて石川議員が『間違っている』ということはありますか」
証人「ないです」
指定弁護士「平成22年1月26日に検察庁に呼ばれたときのことですが、『返却物があるから取りに来てくれ』ということでしたね」
証人「はい」
指定弁護士「あなたの(子供の写真が入った)私物のUSBメモリが検察庁にあった」
証人「はい」
指定弁護士「そのときすでに石川議員の事務所が差し押さえられていたのですか」
証人「そうです。強制捜査を受けていました」
指定弁護士「あなたにどういう容疑がかかっているのか分からなかったですか」
証人「分からなかったです」
指定弁護士「(石川議員の)弁護士から『あなたが行かないと逮捕とか、石川議員に何かあるかもしれない』と言われましたね」
証人「はい」
指定弁護士「弁護士はあなたが逮捕される可能性があることを知っていたのではないのですか」
証人「☆☆弁護士(法廷では実名)はオウム事件の弁護にもかかわったので『検察は免許証記載の住所地と住民票の住所が違うだけで逮捕する。何をするか分からない恐ろしい組織だ。対応した方がいい』と言われたからです」
《大善裁判長が本日の審理の終了を告げた。次回は16日午前10時から。大久保隆規元秘書=1審有罪、控訴中=の聴取を担当し、証拠改竄(かいざん)事件で実刑判決が確定した前田恒彦元検事が証人として出廷する》
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◆石川知裕議員の女性秘書を弁護側証人として採用/女性秘書が語った「不意打ち10時間取調べ」の全貌2011-03-26 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
小沢一郎民主党元代表の政治資金管理団体「陸山会」の政治資金収支報告書をめぐる事件で、石川知裕衆院議員の弁護側は1月27日、石川議員の女性秘書が受けた取調べの様子を証言するため、証人採用を求める書面を提出した。
石川議員の女性秘書は昨年1月26日に突然検察庁から呼び出されて約10時間におよぶ聴取を受け、その様子を「週刊朝日」が報じたことで話題を読んだ。
今回、その女性秘書が《THE JOURNAL》のインタビューに応じ、当時の取り調べの様子や証人となって訴えたいことなどを語った。(構成・文責:《THE JOURNAL》編集部)
──証人として立ちたいのはなぜですか?
証人になって取調べの可視化に貢献したいからです。違法な取調べの実態をみなさんに知ってもらいたい。秘書や家族を人質に取ることは絶対に良くないことです。証人採用されないのは、取調べの可視化が進んでしまうことを嫌がる検察の気持ちが大きく影響していると思います。
──検察側は「石川議員の起訴内容に直接関係ない」と意見書を提出したと報道されていますが
「関係ない」ということに納得がいきません。必要性も関連性もないのであれば、検察にとっても私にとっても、あの事情聴取は無駄な時間だったということなのでしょうか。私は、事情聴取の後に片耳が聞こえなくなり、仕事をする気力もなくなりました。それでも検察から謝罪もなければ、検察が週刊朝日に出した抗議文では「事情聴取は適正だった」と言いはられ、そんなことは絶対におかしいと思います。
──当時の状況を教えてください
検事から呼び出されたので、資料を返してもらって30分ぐらいで帰れると思ったので、コートも着ずにランチバッグだけで気軽に検察庁に行ったら、10時間拘束されました。子どもの迎えも行かせてもらえず、電話もさせてもらえませんでした。「弁護士に電話をさせてください。その権利はあるはずです」と言っても、「弁護士に何ができるんだ」と電話すらさせてくれませんでした。あの空間の中では、自分のあるべき権利を主張したところで認めてもらえません。やりとりをしている間に、私も「あれ、本当に電話する権利はないんじゃないか」とも思いました。弁護士に電話するにしても検事から「おまえが雇ったのか」「おまえが選任届を出したのか」と言われると、私個人は弁護士との契約書を結んでいませんので「電話しちゃいけないのかな」と段々と洗脳されてしまうんです。17時を過ぎても帰してくれませんでした。
──事情聴取はどのようなものでしたか
「監禁」という言葉がぴったり当てはまります。部屋からは出られませんし、トイレに行こうとすれば事務官がトイレの目の前まで付き添います。休憩を取るつもりでトイレに行っているのに、廊下で待たれてしまうと早く出ざるをえません。誰かとこっそり連絡を取っていると思われても困ります。とはいえ連絡を取ると言っても携帯は圏外なのでつながりません。帰りたくて涙が出てくるのに、検事からは「人生そんなに甘くない」と言われました。イスの背もたれに背中がついても怒られました。その姿勢を強要されると次第に頭がもうろうとしてきます。「考えられないから休憩させてください」と言っても取り合ってくれません。呪文のように「お話ししてください」と言われ続けると、判断が鈍くなり、「ああ、こうやって冤罪がつくられていくんだ」と目の前で冤罪がつくられる過程を体験したかのようでした。お腹がすいて早く帰りたくなり、「ハイと言えば楽になれるのかな」と思う気持ちがよくわかりました。
──なぜ10時間も我慢できたのですか?
私は安田弁護士から、石川知裕議員が毎日10〜13時間事情聴取を受けているという記録を見せてもらったことがありました。私もせめてその時間を超えるまでは耐えなきゃいけないなと思っていたからだと思います。また、30分間くらいの予定で出かけた人間が何時間も出てこないのですから、必ず弁護士か誰かが助けてくれるだろうと思っていました。でも誰も来ませんでした。検事には「弁護士に頼っても何もしてくれないことがわかっただろ」と言われました。こう言われると、たしかに自分が契約した弁護士じゃないし、やっぱり助けてくれないのかなと思ってしまうのです。
──最後はどのようにして出てきたのですか
22時半の段階で、もう倒れそうになっていました。「石川さんの心証がが悪くなるぞ」と言われ続けましたが、「子どもが寝る時間も過ぎてるし、帰ります」と言いました。私が立ち上がると「座りなさい」と言われ、検事の声も段々大きくなってきました。そういうやりとりをしていたら取調室の電話が鳴りました。おそらく木村主任検事から「帰せ」という話がまわったのでしょう。急に検事の態度が変わり、帰れることになりました。しかし、「そのかわり明日また同じ時間に来い」と言われたので、無言で帰ろうとすると「待て。明日同じ時間に来ると約束しろ」と言って帰してくれませんでした。結局また弁護士に電話をして相談すると、「来ると約束して出てきて」と言うので、「約束しないといけないんだ...」と思いながら、「ハイ」と言って出てきました。
──出てきた時間は何時ぐらいでしたか?
23時ごろにようやく建物を出られました。1月26日ですから、今と同じような真冬でした。コートもなかったので外に出た瞬間に歯が"ガチガチガチ"と音を鳴らしました。最初に言ったとおり、30分で出られると思っていたのでタクシー代すら持っておらず、歩いて帰りました。翌日はその弁護士さんも信じられなくて電話をとらず、検察からの電話も事務所からの電話も受けずに家に引きこもっていました。
──その後の取調べはどのようなものでしたか
当時は事情聴取を拒否し続けたら、本当に逮捕されてしまいそうな雰囲気でした。住民票の住所変更をしてないだけでも逮捕できてしまう世の中ですので、強硬に拒否するのではなく、きちんと弁護士を入れて事情聴取を受けることになりました。弁護士を選任して検察庁に出し、弁護士と一緒に検察庁に行き、入口で待ってもらうようにしました。
──前回より精神的には落ち着けましたか
検事は前回と違っていたし、弁護士も待ってくれているので安心感がありました。しかし前回の10時間の取調べがひどすぎたのか、あまりの緊張で急にお腹が痛くなり、生理になってしまいました。そんな時期でもないのに。さすがにその理由も言えず、「一度この建物から出させてください、絶対に戻ってきますから」とパニックになりながら言いました。最初は検事さんもダメだと言っていたのですが、「絶対に戻ってきます、30分でも15分でもいいので一度出させてください」とお願いすると連絡を取ってくれて、30分間の時間を与えてもらいました。
──弁護士には相談したのですか
取調室に戻ったら必ず出た理由を説明するよう言われました。だからきちんと言いました。調書には記録されているはずです。それほど前回の10時間がつらくプレッシャーになり、精神状態がおかしくなっていました。
──取調べの担当検事はどうでしたか
その日の検事は紳士的で理論的に聞きたいことを聞こうとしてくれる人でした。しかし前回の取調べがひどく、同じ特捜の人だったのでやはり緊張感はありました。
──その取調べが、検察は現在では「石川議員の起訴内容に直接関係ない」と主張しています
ひどい取調べをした上に、それが必要なかったかのように言われることに憤りを覚えます。議員秘書として経験があり、精神的にも強いと自覚している私でも、厳しい精神状態に追い詰められました。一般の方があの様な空間に閉じこめられればもっと取り乱すと思います。不本意ながらも検察がつくった調書にサインして、殺風景な部屋から抜け出せるものだったら抜け出したいと思うでしょう。だからこそ、取調べの可視化が必要なのではないでしょうか。
(構成:《THE JOURNAL》編集部 上垣喜寛・西岡千史)2011年2月1日19:18