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増大する赤い脅威は冷戦時代のソ連を凌ぐ! 日本も「中国の研究」に一流の人材を投入せよ

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増大する赤い脅威は冷戦時代のソ連を凌ぐ! 日本も「中国の研究」に一流の人材を投入せよ
(SAPIO 2012年2月22日号掲載)
文=古森義久、中嶋嶺雄
 アジア全域の駐留米軍を射程にした中距離ミサイルの増強、空母の保有のみならず、衛星破壊兵器、宇宙基地、さらにはサイバー攻撃とアメリカを挑発しつづける中国。一方のアメリカも近年、中国の軍事的脅威に対する研究を強力に進め、その規模と深度はかつてのソ連研究を凌ぐほどになっている。
 このほど『「中国の正体」を暴く─アメリカが威信をかける「赤い脅威研究」の現場から』(小学館101新書)を上梓した産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久氏が、中国研究の第一人者として知られる国際教養大学理事長・学長の中嶋嶺雄氏と対談。「赤い脅威の正体」について語り合った。
中嶋 このところアメリカの対中国政策がずいぶん変わってきました。その最大の理由は中国の軍事的膨張です。オバマ政権の中国に対する外交・軍事戦略は明らかに従来の姿勢と違います。その点から見て、このたび古森さんが書かれた新書『「中国の正体」を暴く』は非常に中国の本質に迫った重要な作品です。
古森 オバマ政権の対中国政策の転換は、日本にとっても大きな意味があると思います。オバマ政権が登場して最初の2年間は、融和政策でした。中国を刺激するような言動はなるべくとらない、軍事力についても軍拡とか脅威とかという言葉を口にしないという、かなり明確な通達が政権内で出されていました。中国に対して厳しいことを言うとすれば、“透明性”について言及することぐらいでした。
 ご存知のように、中国の軍事体制の特徴のひとつは透明性がないということです。どういう戦略でどういう兵器をどのように調達していくのか。それを誰が、どういう手続きで決めるのかということがまったくわからない。これは民主主義ではない国の特徴です。
中嶋 人民解放軍は、林彪の時代があり、その前は彭徳懐の時代、文革後は葉剣英、海軍は劉華清でした。つまり、誰が軍の指導者かということがよくわかっていた。ところが、今は中国の軍全体が非常に膨張し、誰が軍の指導者なのか不透明になっている。従来、アメリカは中国をカウンターパートとか、ステークホルダー(利害保有者)という認識を示してきましたが、その方針を転換せざるを得ない状況になったのですよね。
古森 アメリカがどんなに融和的に中国と接しても、図に乗ってどんどん強硬な措置をとってくる。それで、オバマ政権もやむを得ず、中国の軍事拡張を正面から批判し、対応策を打ち出すようになったということです。そのクライマックスが今年1月5日にオバマ大統領が国防総省で行なった、アジアにおける米軍のプレゼンスを強化するという演説です。
中嶋 私は1993年から「米中新冷戦」ということを言ってきました。米ソの冷戦構造崩壊にともなって東西冷戦は終わったが、アジアには冷戦が残っている。特にアメリカと中国は価値観が違うだけじゃなくて、軍事戦略の面でも冷戦を続けるだろうと。それがいよいよ現実的になった。中国が台湾を含めてどういうアジア政策を展開するのか。第1列島線、第2列島線ということを言って、最近では南シナ海、尖閣諸島だけではなく、沖縄までも虎視眈々と狙っている。
               

古森 第1列島線、第2列島線とはその影響圏、コントロールする範囲を広げていくという意味で中国が使っている用語ですね。これは西太平洋における米軍のプレゼンスがどんどん希薄になることを願っている戦略です。最近の中国がミサイル増強や空母を保有するなど、軍事のハードウェアを強化していることの背景には、そういう膨張的な戦略意図があります。
■明の時代から中国は海洋国家だった
中嶋 私が懸念するのは、中国が太平洋地域だけならともかく、イランやアラブ地域の方向にも触手を伸ばしているということです。ハーバード大学の教授だった故・サミュエル・ハンティントンは論文『文明の衝突』の中で「儒教イスラムコネクション」の危険性という問題を提起していました。中国が儒教的な専制体制をとりながら、それがイスラム原理主義、あるいはイスラム圏と結びついた時には非常に危険だという内容です。最近の中国の動きを見ていると、パキスタン、イラン、イラクといわばイスラム原理主義的な国と関係を結んでいる。そしてスーダンや、私たちが名前も知らないようなアフリカの国々にまで関心を示しています。こういう中国の世界的な膨張に対して、アメリカとしても我慢ができなくなったということでしょうね。
古森 日本にとっては西太平洋、東アジアが最大の関心の領域ですが、一方で中国がグローバルパワーとして、まず経済面から活動を拡大してきた。たとえば、昨年、リビアのカダフィ政権が倒れました。その危機の時、3万人以上の中国人労働者を帰国させるため、人民解放軍が派遣されたというように、経済活動の拡大によって、軍事力でそれを守るようになってきた。
 ただし中国がグローバル展開する際、アメリカとの価値観の違いが顕著に表われます。たとえば、アフリカ諸国に政府援助する時、アメリカは、民主主義を進めるとか、軍事用途には使わないなど必ずある程度の条件をつけます。ところが、中国の場合、ほとんど条件をつけないので、独裁政権、軍事政権は大喜びで中国からの援助を受け入れます。これがまた、アメリカにとって脅威となるわけです。
中嶋 中国のイスラム圏、アフリカ諸国への勢力拡大は、もちろん資源確保という戦略意図があるわけですが、明の時代にアフリカまで出て行った鄭和の大航海を想起させます。われわれは中国を大陸国家だと思っているけれども、中国は実は海洋国家でもある。2008年北京オリンピックの開会式で、フィールドいっぱいに無数の人間が巨大な船形のパフォーマンスを展開して鄭和を持ち上げました。あれは、世界中に海洋国家であることをアピールしたんだろうと思うんですね。
古森 その中国の軍拡は、いったい何を目指しているのか、というのがわれわれの懸念になるわけですが、日本では国政レベルで中国のあり方、特に軍事力に光を当てて研究し、議論するということがない。期待するのは無理なんでしょうか?
中嶋 日本の政治家はそんなレベルにないですね。それどころか、大挙して中国を訪問し、江沢民や胡錦濤に頭を下げるという外交をやっている。
 そもそも中国の侵犯や威嚇が続く尖閣問題は、明らかに日本外交の失敗です。1972年に日中国交正常化しましたが、その直前に人民日報が「尖閣は中国の領土」と外交声明を掲載しました。ところが、当時アメリカのニクソン大統領が訪中するという“ニクソン・ショック”で、日本政府も外務省もバスに乗り遅れるなとばかりに、その重要な声明を考慮せず、国交正常化に流れていった。その後、78年の「日中平和友好条約」批准書交換セレモニー出席のために訪日した?小平は「尖閣の問題は次の世代、また次の世代に委ねる」という内容の発言をし、政府もメディアも大歓迎した。だが、?小平が最高権力者となった後の92年、中国は領海法を定め、国内法上は尖閣は中国のものであるとしました。この年、天皇皇后両陛下の訪中が控えていたため、日本政府は中国の領海法に対して、ひと言も抗議していないんです。そういう既成事実の積み重ねがある上に、さらに中国に低姿勢に出る。そうすれば、中国は世界と協調してくれるだろうと。
古森 中国に対してやさしく出れば、中国もやさしくしてくれるという発想はどこから出てくるのでしょうか?
中嶋 戦後の日本外交、特に外務省のチャイナスクールなどが大きな災いの元だと思います。私はかつて香港の総領事館に外務省特別研究員として2年間勤務したことがありますが、「中国」というとそれだけで位負けするという体質があるようですね。
■日本には中国と相容れない価値観が厳存する
古森 私は北京駐在の後半に、アメリカを専門に研究している中国の知識人―政府関係者ですが―と親しくなったのですが、彼が流暢な英語で「日本と中国はひとつの国になるのが自然じゃないですかね」と本気で言うんです。で、文化も言語も違うのはどうするのかと聞くと、「言葉はやっぱり大きい国の言葉でしょう」と言うわけです。
中嶋 まさに「中華思想」ですよね。これはとても根が深い。われわれもよほど身を構えていかないといけない。
古森 アメリカの場合には、基本的な価値観の違いを少なくとも国政レベルで認識しています。だから、日本の議員のように訪中して最高指導者に会いたいなんて言う人たちはいない。胡錦濤が訪米した時でも、議会でのパーティで議会の側からは写真は撮らなかった。胡錦濤と並んでいるところを写真に撮られるのを嫌がるアメリカ議員の声が多くて禁止になったんです。中国は大変怒りましたけどね。日本の国会議員と正反対です。
 アメリカ側のそんな姿勢の背景には、一党独裁で人権を弾圧し、国民の自由な選挙で選ばれた指導者ではないという基本的な体制・価値観の違いへのはっきりした認識があります。
中嶋 なるほどね。日本はその点、中国との関係を「同文同種」といった言葉で括ろうとしますが、そもそも無理がある。中国の文化を学んだことは事実ですが、明治時代はヨーロッパの近代化を学び、戦後はアメリカ民主主義を学びました。中国から漢字文化を学んだとはいえ、日本独自の文字をつくり上げてるわけです。独自の美意識もある。
古森 日本でも中国との相容れない価値観が厳存することを認識して、もう少し国政、あるいは外交そのものと結び付いた中国の軍事動向への対応、情報収集活動も含めて新しい枠組みへの動きがあってしかるべきだと思うのですが。
中嶋 不透明な中国の軍事力に対する分析能力を磨くことは非常に重要なことですね。
古森 アメリカは中国の軍事動向を把握するために人工衛星などハードウェアを充実させ、その情報収集能力の高さはすばらしいものです。それプラス、官と民の両方で中国の軍事を研究する人材が増加している。戦後、米ソ冷戦時代、ソ連の軍事がやはり秘密のベールに包まれており、そのソ連の軍事を研究する分野に、国際政治学、安全保障学、理工系も含めて、ベスト・アンド・ブライテスト(超一流の人材)が集まっていた。キッシンジャーやブレジンスキーなどが一例です。そのベスト・アンド・ブライテストが今、中国の軍事研究へと移ってきているんです。つまり、官と民がぴたっと歩調を合わせて、アカデミズムでも中国の軍事研究が主流となっている。そういう状況が少しでも日本に出てくればと思うのですが……。
中嶋 日本のアカデミズムでは、軍事研究そのものが人気がないだけでなく、防衛大学校を除いて安全保障や防衛についての授業はほとんどないんです。一番大事なことなのに回避している。日本はアジアの中で、大学教育レベルでも遅れる気がします。
 アジアの安全保障において、今後、アジア諸国からの期待にこたえるような人材育成とともに、日本政府は沖縄の基地問題を早く解決して、中国という「脅威」に対応していく体制を構築しなければいけませんね。
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「中国の正体」に気がつかない日本 米国の専門家が分析する中国軍拡の最終目標とは2012-02-08 | 国際/防衛/(中国・・・)
  JBpress 2012.02.08(水)古森 義久
 米国の国政の場では、2012年となっても中国の軍事力増強が依然、重大な課題となったままである。いや、中国の軍拡が米国の安全保障や防衛に投射する重みは、これまで以上となった。今や熱気を増す大統領選挙の予備選でも、対中政策、特に中国の軍拡への対応策は各候補の間で主要な論争点ともなってきた。
 中国の軍拡は、わが日本にとっては多様な意味で米国にとってよりも、さらに切迫した課題である。日本の安全保障や領土保全に深刻な影を投げる懸念の対象だと言える。
 だが、日本では中国の軍拡が国政上の論題となることがない。一体なぜなのか。そんな現状のままでよいのか。
■中国はこの20年間、前年比で2桁増額の軍拡を続行
 私はこのほど『「中国の正体」を暴く』(小学館101新書)という書を世に出した。自著の単なる宣伝とも思われるリスクをあえて覚悟の上で、今回は、この書が問う諸点を提起したい。中国の史上前例のない大規模な軍事力の増強と膨張が、日本にとって明らかな脅威として拡大しているからである。今そこにある危機に対し、日本国内の注意を喚起したいからでもある。
 この書の副題は、「アメリカが威信をかける『赤い脅威研究』の現場から」。本書に付けられたキャッチコピーの一部から、概要が分かっていただけると思う。
「450発の核弾頭、空母、ステルス戦闘機、衛星破壊兵器、宇宙基地、サイバー攻撃・・・」
「増大するその脅威はかつてのソ連を凌ぐ!」
「今、アメリカが最も恐れる国」
「ワシントン発! 中国研究の先鋭たちを徹底取材」
「サイバー攻撃に関する限り米中戦争はもう始まりました」
 この書の主体は米国側の政府や議会、さらには官民の専門家たちが中国の軍拡をどう見るのかの報告である。
 中国が公式に発表する国防予算だけでも、ここ20年ほど一貫して前年比で2桁増の大幅な増額を果たしてきたことは周知の事実である。その上に公表されない領域での核兵器や弾道ミサイル、空母、潜水艦、駆逐艦、戦闘機などのハードウエアの増強がさらに顕著なのだ。
■中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦
 中国の軍事の秘密の動向は米国でしか実態をつかめない部分が大きい。なにしろ唯一のスーパーパワーたる米国の情報収集力は全世界でも抜群なのである。日本が足元にも及ばないほどの諜報の能力をも有している。人工衛星や偵察機による偵察、ハイテク手段による軍事通信の傍受、あるいはサイバー手段による軍事情報の取得などの能力は米国ならでは、である。
 私は『「中国の正体」を暴く』で、米国の中国軍事研究の専門家たち少なくとも12人に詳細なインタビューをして、彼らの見解をまとめて発表した。
 その結果、浮かび上がった全体像としては、第1に、中国の大軍拡が疾走していく方向には、どう見ても米国が標的として位置づけられているという特徴が明白なのだ。
 第2には、中国の軍拡は日本や台湾に重大な影響を及ぼし、その背後に存在する米国のアジア政策とぶつかるだけでなく、米国主導の現行の国際秩序へのチャレンジとなってきたという特徴がさらに屹立する。
 つまり、中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦なのである。米国の専門家たちの大多数は少なくともそう見ているのだ。
 こうした特徴は私が本書で最初に紹介した米国防総省相対評価(ネットアセスメント)局の現職顧問、マイケル・ピルズベリー氏の次のような言葉にまず総括されていた。
 「中国がなぜ軍事力を増強するのか。いくつかの事実を見ると答えが自然に浮かび上がります」
 「まず現在、中国人民解放軍が開発を急ぐ対艦弾道ミサイル(ASBM)は明らかに米軍の原子力空母を標的にしています。この特定のミサイルが長距離で狙う艦艇というのは、米国しか保有していないのです」
 「中国は2007年1月に人工衛星を破壊するミサイルを発射し、見事に標的の破壊に成功しました。この種の標的も米軍以外にはありません。米軍が実際の軍事作戦で人工衛星の通信や偵察の機能に全面依存することを熟知しての動きでした」
■中国の軍拡の目標は台湾制圧の先にある
 中国の軍拡の最終目標については、従来、米国の専門家たちの間で意見が2つに分かれていた。
 第1はその究極目標が台湾有事にあるとする意見だった。中国は台湾を自国領土と完全に見なしており、その独立宣言などに対しては軍事力を使ってでも、阻止や抑止をすることを宣言している。中国はそうした有事のために台湾を侵攻し、占領できる軍事能力を保持しているという見方である。台湾有事以上には軍事的な野望はないという示唆がその背後にはあった。
 第2は、中国が台湾有事への準備を超えて、軍事能力を強化し、東アジア全体や西太平洋全域で米国の軍事プレゼンスを抑え、後退させるところまでに戦略目標を置いているのだ、という見解である。
 しかし私が2011年全体を費やして実行した一連のインタビューでは、米国の専門家たちの間では、すでに第2の見解が圧倒的となったことが明白だった。
 つまり中国は米国や米軍を主目標に位置づけて、台湾制圧を超えての遠大な目標に向けて軍事能力を強めている、という認識が米国でのほぼコンセンサスとなってきたのだ。
■日本に対する歴史的に特別な敵対意識
 では、中国の軍拡は日本にとって何を意味するのか。米国側の専門家たちが日本がらみで語ったことは注視に値する。
 ヘリテージ財団の首席中国研究員、ディーン・チェン氏は以下のような考察を述べた。
 「中国はもちろん日本を米国の同盟国として一体に位置づけ、警戒をしています。しかしそれだけではない点を認識しておく必要があります。私が会見した人民解放軍のある将軍は『私たちは米国とは和解や協調を達成できるかもしれないが、日本とはそうはいかない。日本は中国にとって、なお軍事的な脅威として残っていくだろう』ともらしました。日本に対しては歴史的に特別な敵対意識が存在するというのです」
 アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート(AEI)の中国研究員で元国防総省中国部長のダン・ブルーメンソール氏も次のように語った。
 「中国には、日本に対して歴史上の記憶や怒り、そして修正主義の激しい意識が存在します。その意識は中国共産党のプロパガンダで強められ、煽られ、今や中国が軍事力でも日本より優位に立ち、日本を威嚇する能力を持つことによって是正されるべきだというのです」
 要するに、中国共産党には軍事面でも日本を圧倒しておくことが歴史的な目標だとするような伝統がある、というのである。
 だからこそ、現在の中国の軍拡は日本で真剣に認識され、論議されるべきだろう。だが現実には国政の主要課題には決して上がることがない。私はこの点での日本の危機に対しても、この書で警鐘を鳴らしたいのである。
・古森 義久 Yoshihisa Komori
 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員・論説委員。1963年慶應義塾大学経済学部卒業後、毎日新聞入社。72年から南ベトナムのサイゴン特派員。75年サイゴン支局長。76年ワシントン特派員。81年米国カーネギー財団国際平和研究所上級研究員。83年毎日新聞東京本社政治部編集委員。87年毎日新聞を退社して産経新聞に入社。ロンドン支 局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2001年から現職。
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中国が軍備拡張 /2012年 国防予算 8兆7千億円/日本にシーレーンの危機管理シナリオはあるか2012-03-05 | 国際/防衛/(中国・・・)
 中国の全国人民代表大会第5回会議が3月5日から開かれる。国防予算が注目の的になっているが、日本もそれに対応したシーレーンの危機管理シナリオを策定しておくべきではないだろうか。 
 藤田正美の時事日想:Business Media 誠 2012年03月05日 07時59分
 中国の国防予算は1989年以来ほぼ一貫して10%前後の高い伸び率を保ってきた(リーマンショック後の2009年の公表数字も7.5%増だった)。ほぼ5年で倍になるようなペースである。全人代の李肇星報道官(前外相)はこのことについて、「中国は沿岸線も長く、広大な国土を守らなければならず、この金額でもGDP(国内総生産)の1.38%と、ほかの大国に比べて多いわけではない」と強調している。
 もっとも中国の国防予算の数字が実態とはかけ離れたものだということも広く言われている。例えば、2011年の米国防総省による連邦議会への報告書によれば、2010年の中国国防予算は公表数字のほぼ倍の1600億ドル(約12兆8000億円)に達するとしている。軍事予算の透明性を周辺各国から要請されていることから、中国政府の姿勢にも変化が現れていると評価されているが、それでも今年の予算も「過少申告」されていることは間違いあるまい。
 周辺諸国にとって大きな問題は、中国が隠そうともしない中国の資源ルートへの野心だ。とりわけ現在の焦点は南シナ海。ここではフィリピン、ベトナムなどが中国との領土紛争を抱えている。中国がこの地域を「核心的利益」として西沙諸島や南沙諸島などの領有権を主張しているからだ。
 このため中国人民解放軍は空母機動部隊を編成することを当面の目標とする。旧ソ連から購入した空母は改装を終え、試験航海を繰り返しているほか、自前でも2隻の空母を建造中だ(実際に、運用されるまでには数年はかかるだろうし、3隻の空母を保有しても同時に任務に就くのは1機動部隊だとある軍事関係者は言う)。
 中国人民解放軍海軍のこうした戦力増強は、中国が資源の輸入国になったからである。国益を守るために、原油や鉱物資源がアフリカや中東から運ばれてくるシーレーンを防衛するというわけだ(日本でもシーレーン防衛が議論されたことはあるが、自衛隊の能力を大きく超えることもあって立ち消えとなった)。つまり中国海軍の任務は、従来の沿岸防衛から遠洋へ拡大したのである。
■日本も危機管理のシナリオを
 こうした中国海軍の「質的変化」にとって、最も警戒すべき相手が米海軍であることは言うまでもない。このため中国人民解放軍は米海軍機動部隊を寄せ付けないために、弾道対艦ミサイル(東風21D)を開発した。射程が3000キロとされ、「これを防ぐ有効な手段が米軍にない」と軍関係者は言う。そうなると空母は東シナ海に入ることが難しくなり、大幅に米海軍の能力が制限されてしまう。
 日本にとっては、米海軍の行動が制限されることも大きな問題だし、南シナ海の自由航行が阻害されるかもしれないことも大問題である。日本に入ってくる原油の約8割が南シナ海を通過する。もちろん原油だけではない。そのほかの資源もかなりの量が南シナ海を通って運ばれてくる。
 ある米軍関係者は、「だから戦前の日本軍は南方へ進出した。その状況は今でも変わらないのに、南シナ海への日本のコミットは弱い」と言う。むろん海上自衛隊そのものが南シナ海に「進出」するということではなく、日本が南シナ海の周辺諸国とどのような関係を結び、中国をけん制するのかということだ(そうした観点から見た時、沖縄の普天間基地移設問題で日米間をギクシャクさせた鳩山元首相の責任はあまりにも重い)。
 李肇星報道官がどう言いつくろうと、中国の軍事予算の膨張が周辺諸国に緊張をもたらしていることは間違いない。第二次大戦で敗戦国になって以来、とかく我々は安全保障問題から目をそむけがちだ。目をそむけることで経済的繁栄を謳歌してきたことも事実である。
 しかし東アジアから東南アジアにかけての軍事バランスが大きく変化することが、日本にどのような影響をもたらすのかということを真剣に見つめる必要がある。変化の過程では必ず緊張が生まれる。そして場合によっては、当事者が意図しない力が働いて、緊張がやがて暴発する可能性もある。
 緊張状態が生まれた時、日本がどうするのか。危機管理のシナリオを作っておかないと、いざという時に状況に対応するだけで手一杯になってしまうかもしれない。福島第一原発のオフサイトセンターは、放射能を防ぐことができず、また停電時の対策もなかったために、何の役にも立たなかった。「最悪のシナリオはありえない」ということが何の根拠もない楽観論だったことが今さらながら身にしみる。まさか一国の将来がかかる安全保障で根拠のない楽観論に身を任せているなんてことはないと思いたいが、どうだろうか。
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沖ノ鳥島を奪われた時、日本は崩壊する/中国漁船衝突事件に見る、米国における中国のプロパガンダ 2012-03-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
 JBpress2012.03.02(金)神戸発:ラジオ政論
 今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)は、前衆議院議員、たちあがれ日本の西村眞悟氏をゲストに迎えた。
 尖閣諸島のみならず沖ノ鳥島沖までも領海侵犯する中国の動向など、無防備な日本の課題について西村氏が鋭く指摘した。
■日本を「餌場」として狙う中国
中山 日本の山林や水源地を中国が盛んに購入しているそうですが、何が狙いなのでしょう。国内資源の保護のための対策や法律が整備されていないのではありませんか。
西村 今の日本は真空状態にあって、その中に中国人が“イナゴ”のように入ってきている。これを規制しなければなりません。
 地球上で一番警戒を要するのは中国人です。彼らは「嘘に騙される方が悪くて、嘘をつく方は悪くない」とか「他人の物は自分の物」なんて思い込んでいる。
 水や山林の買い占めに関しても、チベットや新疆ウイグル自治区に対する弾圧と同じように「日本は自分の物になる」という前提で来ているのでしょう。
 そもそも日本の無防備状態は、菅(直人)政権の時から始まりました。政府は中国人向け観光ビザの発給条件を、年収25万元(約325万円)から年収6万元(約78万円)に引き下げましたよね。
 年収約80万円の中国人を受け入れ、その中から不法滞在したうえに永住権を得て、生活保護を申請された場合には出すことになるでしょ。そういうアホなことを、菅政権以来ずっとやっているんです。その前の鳩山(由起夫)氏は、文句無しのルーピーでしたが。
 今、日本自体が“餌場”になっていて、中国が涎を垂らして来ている状況にあるのです。
■中国漁船衝突事件に見る、米国における中国のプロパガンダ
中山 中国と言えば、かつて尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件が発生した際、当時海上保安官だった一色(正春)氏がネット上に映像を公開しました。あの一件についてはどうお考えですか?
西村 一色氏が取った行動は、我が国の歴史上画期的なことです。戦前、中国は米国内で「日本は悪だ、残虐なことを中国人にしている」と宣伝して、米国世論を反日に誘導した経緯がある。
 それと同様のプロパガンダを、また米国のマスコミでやり始めたのです。
 これを受けて、ニューヨーク・タイムズでは「尖閣諸島では、貧しく無防備な中国人漁民を日本の軍国主義者が武装船で虐めている」と報じました。こうしたありもしない宣伝によって、また戦前と同じサイクルに入ってはならない・・・。
 そんな時に、一色氏が「百聞は一見に如かず」と言わんばかりに事実を世界中に流したのです。
 途端に中国はピタリとやめました。中国人の嘘が世界中に発表されたから、やめざるを得なかった。ですから一色氏は、戦前のように東アジアで孤立状態に陥る危機から、我が国を救ったと言ってもいいでしょう。
中山 確かにあの映像がなければ、日本の国境線で起きた事実を誰も知ることはなかったと思います。政府に報告は上がっていたのですか。
西村 海上保安庁から証拠のビデオが上がっていたのに、菅(直人)元首相、前原(誠司)元外務相、仙石(由人)元官房長官らは隠していたんですよ。
 つまり、彼らは中国共産党とグルになって日本人を貶めた。世界中から日本が非難されるのを助長していたということです。
■小沢訪中団が日本のシーレーンにもたらした危機
中山 以前、民主党幹事長時代の小沢(一郎)氏が同党の議員約140名を含む総勢600名あまりを率いて中国を訪問したことがありましたね。
西村 あの時、中国側からすると「日本が掌中に入った」と思ったでしょう。小沢訪中団が胡錦濤国家主席を拝謁して以来、中国は西太平洋の沖ノ鳥島周辺に艦隊を送り込むようになった。
 我々は戦略的要衝として尖閣諸島だけに神経を集中しがちですが、真の意味で日本が崩壊するのは、西太平洋の沖ノ鳥島周辺海域を奪われた時です。
 東日本大震災の直後も、海洋国家日本の救援活動は西太平洋沖なくして成り立ちませんでしたよね。
 従って、この海域で中国の原子力潜水艦が動き回れるようになったら、日本は本当に飲み込まれてしまう。尖閣諸島を奪われる以上に、西太平洋沖はマズいのです。
中山 「軍事を抜いた政治は楽器を抜いた音楽だ」という言い方もありますが、あまりにも平和ボケしていますよね。
西村 エネルギー面でも2つの問題があります。1つは、もし日本が脱原発して石油火力発電だけに依存したら、それは我が国の生殺与奪権を中国共産党の軍隊に握られたのも同然だということ。
 2つ目は、中国の軍事行動を見るに、日本のシーレーンを切断できるということです。
 70年前に我が国が日米開戦に踏み切ったのは、ABCD包囲網によってエネルギーを断たれたからでした。今の日本も、当時と同じ状態に追い込まれる可能性は十分にあるのです。
■1票の格差是正は解散先送りの口実に過ぎない
中山 国内の話題について伺います。1票の格差是正の勧告期限を守れなかったことについて、民主党の前原(誠司)政調会長は「違法状態を短くするため定数削減、定数是正を含めた取り組みを進めたい」と述べました。
 これは、わざと解散を遅らせようという狙いにも見えます。
西村 その通りです。前原氏の発言は「定数を改めなければ解散できない」ということでしょう。議員定数だけを双六のように軽々と動かすわけにはいきませんから、解散はまだ先になる。
 ただ、議員定数削減という美名の下に隠れていても、民主党は解散したら消滅しますよ。
中山 議員定数削減は、税金の無駄遣いをなくすという意味で国民の耳には響きがいいですが、現職議員の議席の固定化につながる可能性があるため、私は選挙制度を改正すべきだと思うのですが。
西村 結局はそういう議論に行き着くでしょう。だから、ずっと解散できないということになる。
 議員が多い、少ないと議論されていますが、それより私はもっと働けと言いたい。
 東日本大震災から1年が経つのに、民主党議員は何もしていません。震災のどさくさに紛れて親分が指示を出して、資金集めパーティーだけはやっているようですが・・・。
 ブータン国王夫妻との宮中晩餐会を欠席して、同僚議員のパーティーに参加した大臣もいましたね。
 こうやって国家観も持たず、歳費を受け取りながら金儲けの資金パーティーをやっている連中は自らは解散などできないと思います。
■政治家を育てない松下政経塾は「松下出世塾」に改名せよ
中山 野田(佳彦)総理も前原政調会長も松下政経塾の出身者ですが、かつて松下(幸之助)氏の側近だった江口(克彦、みんなの党)参議院議員が「看板だけ」だと述べました。この批判をどう思いますか?
西村 批判の通りです。政経塾の設立に関わった本人が言っているのだから、これほどの真実はない。
 私は、松下政経塾ではなく「松下出世塾」に名前を変えないといけないと思います。財界の爺さんに媚を売るとか、カメラに向かってどう構えたらイケメンに見えるとか・・・そんなことしか考えていないでしょう。
 かつて松下政経塾ができた時、入塾しようとした人に私はこう言いました。「浜松の鰻じゃあるまいし、政治家が養殖できるか。政治家というのは、自ら苦難をくぐり抜けて国家のために働く意欲を強めるものだ」と。
 あの言葉を何ら変更する必要はなさそうですね。
中山泰秀のやすトラダムス』 2月26日 24:00-25:00放送
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南京大虐殺/河村たかし名古屋市長/『日本人の誇り』藤原正彦2012-02-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
 『日本人の誇り』藤原正彦著(文春新書)
p104〜
 南京大虐殺の不思議
 「南京大虐殺」も実に不思議な事件でした。1937年12月13日に南京を陥落させた日本軍が、その後6週間にわたり大規模な虐殺行為を行ったというものです。
 1997年にアメリカで出版された五十万部を超えるベストセラーとなった、中国系アメリカ人アイリス・チャンによる『ザ・レイプ・オブ・南京』によりますと、「ヒットラーは6百万人のユダヤ人を殺し、スターリンは4千万以上のロシア人を殺したが、これらは数年をかけて行われたものだ。レイプ・オブ・南京ではたったの数週間で市民30万人を殺し、2万人から8万人の女性を老若かまわず強姦し豚のように殺した、という点で史上最悪のものだ。天皇を中心地した日本政府がこれを仕組んだ」という内容のものです。「日本兵は女性の腹を裂き、胸を切り刻み、生きたまま壁に釘づけにした。舌を鉄の鉤に吊るしたり、埋めてセパードに食い散らかせた」などとも書いてあります。
 私達の父や祖父達がこんなことを組織的にしていたとしたら、私たち日本人は百年は立ち上がれないでしょう。祖国愛や誇りを持つなどということもあり得ないことです。
 そのためにも事実を明らかにし、東京裁判史観に染まった国民にどうしても真実を知ってもらう必要があります。
 1937年12月、南京攻略を決めた松井石根大将はとても神経質になっていました。日露戦争に従軍したことのある松井大将は、かつて世界1規律正しいと絶賛された軍隊でロシアと戦ったことを誇りに思っていました。
 そこで攻勢前に兵士たちに、「首都南京を攻めるからには、世界中が見ているから決して悪事を働いてはならぬ」という趣旨の「南京攻略要綱」をわざわざ兵士に配り、厳正な規律を徹底させました。これ自体が稀な行為です。そのうえ、還暦を目前に控えた松井大将は、陸軍大学校を首席で卒業した秀才ですが、若い頃からアジアの団結を唱える大アジア主義に傾倒していて根っからの親中派でした。孫文の革命を支援したばかりか、若き蒋介石が日本の陸軍士官学校に留学した時は親身で面倒まで見てやった人です。運命のいたずらで愛弟子と戦わざるを得なくなり、せめて規律だけは保たせようと思ったのでしょう。そして、攻略を始める前日の12月9日、南京包囲を終えた松井大将は中国軍に対し、民間人の犠牲を避けるため10日正午までに南京を解放するよう勧告しました。蒋介石をはじめ政府と軍の首脳はすでに7日に首都を放棄していました。続いて役人、警察官、郵便局員と姿を消したため、水道は止まり電気も消え、無政府状態となりました。
p106〜
 ほとんどの戦争では、中国でもヨーロッパでも、市民を巻き添えにしないため軍隊は市内から出るものです。第2次大戦でパリはドイツに占領され、後に連合軍に占領されましたが、どちらの場合も軍隊は市街を出たので美しい町が保たれたのです。北京や武漢でも中国兵は町から出たので市民巻き添えという混乱はありませんでした。
 南京守備軍の唐生智司令官はこれを無視しました。「首都と運命を共にする」と広言していた彼は、日本軍の猛攻を受け陥落寸前というときに撤退命令を出すや、逃げ出してしまいました。指揮系統はすでに失われていたので数万の兵に撤退命令は伝わりませんでした。大混乱の最大原因です。降伏命令だったら何も起きなかったからです。
 『「南京事件」の総括』(田中正明著、小学館文庫)に、軍服を脱ぎ捨てた数千の中国兵が安全区に入ってきてからの混乱が詳述されています。南京市は首都といっても面積は世田谷区の3分の2ほどの狭さです。日本軍の攻撃の迫った12月1日、南京市長は全市民に対し、安全区、すなわち国際委員会が管理する地区に避難するよう命令します。安全区は、狭い南京の一角に作られた2千?四方程度の最小の地区です。日本軍が攻略を始めた12月10日には、すでに揚子江上流に避難した中上流階級の人々を除く、全市民がここ安全区に集まっていました。 資料により異なりますが、この段階における安全区人口は12万から20万の間です。「惨劇」があったとしたら、すし詰めとなったこの安全区で起きたはずなのです。
 ところが不思議なことに、南京に入城した幾万の日本兵も、共に入城した百数十名の日本人新聞記者やカメラマンンも誰一人そんな惨劇を見ていないのです。皆が一糸乱れぬ口裏を合わせているのでしょうか。こんな狭い所で大虐殺が行われたというのに、そこに住んでいた国際委員会の外国人や外国人記者も目撃していません。
 日本軍が入城した12月13日から翌年2月9日までに、国際委員会は日米英の大使館に61通の文書を提出しており、そこには殺人49件、傷害44件、強姦361件(うち被害者多数3件、被害者数名6件)などがありますが、大虐殺と呼べるものはありません。この数字自身も、国際委員会書記スマイス教授が認めたように、検証されたものではなく中国人からの伝聞によるものでした。また国府軍側の何應欽将軍が直後の1938年春に提出した大部の報告書にも、南京での虐殺を匂わせるものはいっさいありません。無論、市民虐殺を示唆する日本軍の作戦命令も存在しません。
 当時、中国に関して最も権威ある情報源とされていた「チャイニーズ・イヤーブック」と呼ばれる年鑑がありました。上海で英国系新聞が出版していたものです。これにも虐待の影はありません。
 一口で言うと、虐殺を示す第一次資料は何一つないということです。(〜p108)
p110〜
 東京裁判で再登場した
 「南京大虐殺」が再登場したのは、南京戦後8年半もたった1946年、東京裁判においてです。証人となった中国人が次々に大虐殺を「証言」しました。日本兵は集団をなし、人を見れば射殺、女を見れば強姦、手当たり次第の放火と掠奪、屍体はいたる所に山をなし、血は河をなす、という地獄さながらの描写ばかりでした。
 この裁判は、通常の裁判とはまったく異なり、証人宣誓が求められず証拠検証もされませんでしたから、言いたい放題だったのです。殺害者数30万人という証言に疑念を抱いたロヴィン弁護人が「私の承知している限りでは南京の人口は20万ですが」と質問すると、ウェッブ裁判長は「今はそれを持ち出すときではありません」と慌ててこの発言をさえぎりました。
 中国人だけでなく金陵大学(のちの南京大学)のベイツ教授など数人の欧米人も証人として出廷しました。ベイツ教授は事件時に南京にいて国際委員会のメンバーであり、「戦争とは何か」を書いたティンパーリに、書簡で事件を教えた人です。「1万2千人の市民を含む非武装の4万人近い人間が南京城内や城壁の近くで殺されたことを埋葬記録は示している」という趣旨の証言をしましたが、やはり中国人からの伝聞のみです。
 埋葬死体が戦死者のものかどうかも確認していません。実はベイツ教授は、やはり国際委員会に属する金陵大学のスマイス教授と、1938年の3月から4月にかけて、多数の学生を動員して南京市民の被害状況を調査していました。スマイス教授は社会学が専門なのでこの種の調査には慣れていて、50戸に1戸を無差別抽出して、2人1組の学生がそこを訪れ質問調査するという方法でした。
 この日時をかけた調査結果は、日本兵の暴行による被害者は、殺された者2400人、負傷した者3050人でした。(「南京地区における戦争被害調査」)。ただし、調査は被害者救済のためのもので、誰も住んでいない家は調査対象となっていませんから、家族全員が犠牲になった家などは統計に入っていません。また死亡者の中に、南京に自宅のある兵で便衣兵(軍服を脱いで一般市民に混じった中国兵)として処刑された者もかなり混じっているはずです。この人たちは市民でもあります。というわけで実数はある程度上下するはずです。しかしこの調査はほとんど唯一の第1次資料と言えるものです。
 ベイツ教授はこの調査を知っていながら、東京裁判では大いに水増ししました。そればかりか、
 「日本軍侵入後何日もの間、私の家の近所の路に、射殺された民間人の屍体がゴロゴロしておりました。スマイス教授と私は調査をした結果、城内で1万2千人の男女及び子供が殺されたと結論しました」
 と述べたのです。一方のスマイス教授の東京裁判への出廷は、弁護側が要求したにもかかわらず認められませんでした。ベイツ教授は1938年と1946年に蒋介石より勲章をもらっていました。
 またマギー牧師は法廷で延々と日本軍による殺人や強姦の事例を証言しましたが、ブルックス弁護人に「実際に自分で見たのはそのうちの何件か」と問われ、「実際に見たのは1件だけ」と白状しました。しかもそれは、日本軍歩哨に誰何され逃げ出した中国人青年が射殺された件でした。当時、中国にいた宣教師たちが国民党におもねっていたことは、アメリカの上海副領事をしていたラルフ・タウンゼントが1933年に出版した『暗黒大陸中国の真実』(芙蓉書房出版)などに記されています。
p120〜
 私は大虐殺の決定的証拠が1つでも出てくる日までは、大虐殺は原爆投下を正当化したいというアメリカの絶望的動機が創作し、利益のためなら何でも主張するという中国の慣習が存続させている、悪質かつ卑劣な作り話であり、実際は通常の攻略と掃討作戦が行われただけと信ずることにしています。さらに事を複雑にしているのは日本国内に、大虐殺を唱え続けることこそが良心と平和希求の証し、という妄想にとらわれた不思議な勢力があることです。「南京大虐殺」は歴史的事実ではなく政治的事実ということです。事実であるという決定的証拠が1つでも出るはるか前に、「カチンの森」が事件発生50年後のソ連崩壊時に告白されたごとく、「南京大虐殺」の真実が、アメリカの情報公開で明るみに出るか、中国の一党独裁崩壊後に告白されるのではないかと考えています。
 ただし、アメリカは時が来れば何でも情報公開する公平でオープンな国のように見えますが、肝心のものは公開しません。真珠湾攻撃前1週間の暗号解読資料とかケネディ大統領暗殺犯などについては、今もすべてを出そうとしません。南京事件が原爆投下と関係しているとしたら容易には出さないでしょう。
 南京の話が長くなったのは、これが未だに日本人を委縮させているからです。中国に対して言うべきことも言えないでいる理由だからです。尖閣諸島が中国のものと言っても、自分から体当たりしてきて謝罪と賠償を高らかに唱えても、怒鳴りつけることもできず、下を向いたまま「領土問題は存在しません」とつぶやくだけの国となっているからです。
 20年以上にわたり毎年10%以上も軍事費を増加させるという中国の異常な軍備拡大に抗議するどころか、すでに6兆円を超すともいわれる巨額のODAを与え、さらに援助し続けるのも、自らの対中防衛力を高める努力もしないでハラハラしているだけなのも、中国の不当な為替操作を非難しないのも、「南京で大虐殺をしましたよね」の声が耳にこだまするからです。中国の対日外交における最大の切り札になっているのです。(〜p121)


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