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官房機密費 初めての司法判断/大阪地裁「公開請求があれば国は開示すべき」原則公開への足掛かりに

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官房機密費判決 原則公開への足掛かりに
2012/03/26付 西日本新聞朝刊 社説
 いつ、何に、いくら使ったのか。使い道は明かさないでいいとされてきた内閣官房報償費(官房機密費)をめぐり、初めての司法判断が示された。
 「具体的な使い道や相手方、個別の支出金額が特定できない」支払明細書や受払簿などの書類については、公開請求があれば国は開示すべきだとする大阪地裁の判決である。
 「秘密のベール」に包まれている官房機密費の一部にすぎないのかもしれないが、これまで「一切言えない」の一点張りだった機密費の使途が、少しでも開示される意味は小さくない。
 この判決で示された判断を、官房機密費の使途開示を可能な範囲で広げる足掛かりにすべきだろう。
 判決は、安倍晋三元首相が官房長官だった2005―06年に支出された官房機密費約11億円の使途を明らかにするよう大阪市の市民団体代表が求めていた訴訟で言い渡されたものだ。
 原告は11億円の支出先や個別の金額、時期が記された「政策推進費受払簿」「支払決定書」「報償費出納管理簿」「報償費支払明細書」「領収書」計約770点の資料を情報公開請求したが、国がすべて不開示としたため、裁判所に処分の取り消しを求めていた。
 判決は、このうち支出先が記載されていない報償費支払明細書と政策推進費受払簿については、開示すべきだとの判断を示し、国に不開示決定の取り消しを命じた。出納管理簿の一部についても開示すべきだとした。
 官房機密費とは、内閣官房長官の裁量で機動的に使うことができる「経費」のことだ。使途や支出先は公表されず、領収書の提出義務もない。
 国内外の極秘情報を収集するのが主な目的とされるが、野党対策や政治家のパーティー券購入、海外視察に出掛ける議員への餞別(せんべつ)など「目的外」流用の疑惑が何度も指摘されてきた。
 機密費という性格上、直ちに使途すべてを明らかにできない事情もあるだろうが、機密費といえども元をたどれば国民の税金である。税金の使い道を「一切言えない」というのでは、国民の多くは納得できまい。
 一定期間「秘密」にしておく必要がある外交機密と同様、同時進行的に開示するのは困難でも、一定の時間、年月を経た後には原則公開する方向で検討したらどうだろうか。
 今回の判決は自民党政権時代に起こされた訴訟に対するものではあるが、09年に民主党政権に代わっても官房機密費の「非公開」方針は変わっていない。機密費の透明性を高めるべきだと主張してきたのは、ほかならぬ民主党である。
 支払い記録の作成と保存を義務づけ、機密の程度に応じて10―25年後の公表を求める官房機密費流用防止法案を国会に提出したことも、自らが使う側になったら、忘れてしまったのだろうか。
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鳩山内閣退陣直前の官房機密費急増と「機密費で記者を接待、女も用意」=平野元参院議員 2010-06-11 | 政治 
 わたしはこれで記者を堕落させた 「機密費」で接待、「女」も用意
 平野貞夫・元参院議員に聞く 2010/5/30 10:00 J-CASTニュース
 官房機密費を政治評論家に配った――野中広務・元官房長官のこんな発言が波紋を広げている。「政治と金」を厳しく追及してきたはずのマスコミの側に「マスコミと金」の問題が急浮上した形だ。政治部記者の「接待」を機密費で面倒みたと話す、かつて小沢一郎氏(現・民主党幹事長)の懐刀といわれた平野貞夫・元参院議員(74)に話を聞いた。辞める直前の細川護煕首相(当時)から「お世話になった人たちにお礼をしたいので、機密費の使い方を教えてくれ」と電話が入ったこともある、と話す平野貞夫さん。
接待うけた記者がその後出世していった
――官房機密費の対マスコミ使用について、直接経験したことを聞かせて下さい。
平野 昭和40(1965)年の終わりから2年間ぐらいの話です。当時、衆院事務局に勤務しており、園田直・衆院副議長の秘書を務めました。園田さんに言われて竹下登・官房副長官のところに報償費(官房機密費)を月々300万円とりに行き、その大部分を私が管理していました。
野党対策費として旅行の際の餞別に使ったり、副議長担当の記者対策にも使ったりしました。当時はまだ、テレビではNHKの記者だけで、あとは大手の新聞、通信社。20代の記者もいたけど、多くは30から35ぐらいで、40歳近い人もいました。
担当記者を連れて、赤坂や銀座の料亭へ行ってクラブへ行って……ランクは中級でしたがね。それから記者たちはこちらが用意した「女」とホテルに泊まってました。私は途中で抜けるのですが、園田さんから「ちゃんと最後まで接待せんか」と怒られたこともあります。その費用をこちらが持ち、1度に20〜30万円、月に1回程度といった感じでやっていました。
――記者に抵抗感はなかったのでしょうか。
平野 それが当たり前の時代でしたから。でも、朝日新聞の記者だけは応じませんでした。「自分の信条だ」とか何とか言ってました。ほかの記者は、政治家や派閥と仲良くやって情報を取る、それが仕事だと思っていて、後ろめたさは持っていませんでした。また、そういう記者がその後出世して行きましたよ。
封筒の厚さからすると、30万円程度かそこら
――今の話に出てきた記者の中で、今も政治評論家などで活躍している人はいますか。
平野 活躍というほどではないですが、現役の評論家もいます。某紙では幹部になった人もいますが亡くなりました。
――そうした慣行は、ほかの政治家担当の記者たちの間でもあったのでしょうか。また、いつごろまで続いたのでしょうか。
平野 私たちが特別な事をしている、という意識は当時全くなかったですね。野党対策もマスコミ対策も「世論対策」という意味では同じでしたから、広く行われていたと思います。以降は、私たちの10年下ぐらいまでは続いたでしょうか。感覚的に、ですが。
――ほかにも機密費のマスコミへの使用経験はありますか。
平野 非自民・共産の連立政権である羽田孜内閣(1994年)のときにあります。当時私は参院議員で、自民を離党し小沢(一郎)さんたちと与党の新生党にいました。あるとき、熊谷弘・官房長官と私とある政治評論家の3人で食事をすることになったのですが、熊谷さんが急に行けなくなりました。その際、評論家の人に渡すように、と熊谷さんから封筒を預かりました。中は現金で、厚さからすると、30万円程度かそこら、50万はなかったですね。料理屋で渡すと彼は自然に受け取りました。あれは間違いなく機密費でしょう。そう説明を受けた訳ではないですが。彼は今でもテレビなどで時々見かける活躍中の人です。名前は言えません。
20年、30年後に使途公開するルール必要
――平野さんは、過去にも機密費に関して大手マスコミの取材を受けられ、野党対策に使った話などをされています。当時の記事に機密費の対マスコミ使用の話が出て来ないのは、削られたからでしょうか。
平野 いえ、そういう質問が出なかったので、私の方でも話さなかったということです。
――今春に入りテレビや講演などで「政治評論家へ機密費を渡した」と証言している野中さんが官房長官だったのは1998〜99年です。野中証言の信憑性についてはどうお考えですか。
平野 野中さんの証言は「なるほど」と思う内容で、そういう現状はあったと思います。自民党政権下では、政党や派閥の勉強会にマスコミの人を呼んで講演料やお車代として機密費が最近まで使われていた可能性は大いにあります。
――制度やマスコミ人の意識の上で改革すべき点はあるでしょうか。
平野 制度上では、例えばアメリカなどのように、20年、30年したら使途を公開する、といったルールを設けるべきです。後の世に明らかになる、というのは大きな歯止めになると思います。
マスコミの人はもっと自戒すべきでしょう。機密費に限らず、政治家と大マスコミとのもたれ合いは、程度の差こそあれ昔から続いていました。民主党政権になって変化の兆しが出てきましたが、例えばテレビ局と電波政策の関係は、「既得権益」を巡りこれまで「あうんの呼吸」で進んできた側面があります。
こうした冷戦体制時代の「文化」をひきずってはいけません。昔と違って「情報社会」と言われる現在です。派閥の幹部からの情報にしがみつかず、自分で本質を見極め、政権・政治家の側の情報に惑わされない報道をしていくことが求められる時代になっていると思います。
<メモ 野中広務・元官房長官の機密費発言>官房機密費の使い道のひとつとして、政治評論をしている人たちに対し「盆暮れ500万円ずつ届ける」などの行為があったと明かした。2010年4月下旬、TBS系番組や沖縄県での講演などで証言した。受け取りを拒否した評論家として、田原総一朗さんの名前だけを挙げている。
<平野貞夫さん プロフィール>
ひらの さだお 1935年、高知県生まれ。法政大学大学院政治学修士課程終了。衆院事務局に勤務し、副議長・議長秘書などを経て委員部長を務める。92年の参院選(高知県)で、無所属(自民党など推薦)で初当選。2期務める間に小沢一郎・現民主党幹事長と行動を共にし、新生党や新進党の結成に携わる。「小沢氏の懐刀」と称された。2004年に参院議員を引退し、現在は言論・執筆活動に専念している。著書に 「小沢一郎 完全無罪 『特高検察』が犯した7つの大罪」(講談社)、「平成政治20年史」(幻冬舎新書)など多数。 

                
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機密費「毎月5千万円使った。評論家にも届けた」野中広務元長官、講演で証言 2010-05-10 | 政治 
 野中氏−毎月5千万円使った 機密費、評論家らに配る
 小渕内閣で官房長官を務めた自民党の野中広務元幹事長(84)は30日、長官在任中に内閣官房機密費を「1カ月当たり、多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使っていた」と明らかにした。共同通信の取材に答えた。
 内訳については月々、首相に1千万円、国会で野党工作などに当たる自民党国対委員長や参院幹事長に各500万円程度のほか、政治評論家や野党議員らにも配っていたと説明した。官房機密費は毎年十数億円計上されているが、官房長官経験者が使途を明らかにしたのは極めて異例だ。
 野中氏によると、評論家に転身した元政治家が小渕恵三首相に電話し「自宅を新築したから3千万円ほどお祝いをほしい」と要求したことや、野党議員から「北朝鮮に行くから官邸にあいさつにうかがいたい」と暗に機密費を要求されたこともあったという。
 野中氏は「前任の官房長官からの引き継ぎ簿に評論家らの名前が記載され『ここにはこれだけ持っていけ』と書いてあった。持っていって返してきたのはジャーナリストの田原総一朗氏だけだった」と証言。「政権交代が起きた今、悪癖を直してもらいたいと思い、告白した」と強調した。2010/05/01 00:34【共同通信】
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機密費、評論家にも 野中元長官、講演で証言
琉球新報2010年4月28日
 野中広務元官房長官は、23日に那覇市内で開かれたフォーラムの基調講演の中で、自身が長官在任中(1998年7月〜99年10月)、先例に従い、複数の評論家に内閣官房報償費(機密費)から数百万円を届けていたことを明らかにした。
 野中氏は講演で「言論活動で立派な評論をしている人たちのところに盆暮れ500万円ずつ届けることのむなしさ。秘書に持って行かせるが『ああ、ご苦労』と言って受け取られる」と述べ、機密費からの提供が定期的にあったことを明かした。
 野中氏は自民党政権時代に、歴代の官房長官に慣例として引き継がれる帳簿があったことにも触れ「引き継いでいただいた帳簿によって配った」と明言。その上で「テレビで立派なことをおっしゃりながら盆と暮れに官邸からのあいさつを受けている評論家には亡くなった方もいる」と指摘した。一方で機密費の提供を拒否した評論家として田原総一朗氏を挙げた。
 官房長官の政治的判断で国庫から支出される機密費は、鳩山内閣が昨年11月に内閣として初めて2004年4月以降の小泉内閣から現在までの月別支出額を公表したが、使途については明かしていない。
<用語>内閣官房報償費(機密費)
 「国の事業を円滑に遂行するために状況に応じて機動的に使う経費」とされる。国庫からの支出は年間約12億円で、使途の不透明さが問題視されており、民主党は2001年に一定期間後の使途公表を義務付ける法案を国会に提出した。
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東奥日報「天地人」2010年5月4日(火)
 首相官邸奥の院の金庫はまるで打ち出の小づちだ。欲しいときに欲しいだけカネが出てくるらしい。「1カ月当たり多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使っていた」と野中広務元官房長官が官房機密費の実態を明らかにした。
 証言はリアルだ。「首相に1千万円、国会で野党工作などに当たる自民党国対委員長、参院幹事長に各500万円程度のほか、政治評論家や野党議員にも配った」。おねだりもあった。自宅の新築祝いに3千万円ほしい、と当時の小渕首相に厚かましい要求をしたのは評論家に転身した元政治家だった。
 会計検査院のチェックも及ばない聖域で、野党の切り崩し資金に、外遊する国会議員への餞別(せんべつ)に、評論家のご機嫌取りにと気前よく札びらを切っていたのか。本来は、国益に結びつく情報の収集や危機管理に使うはずの国民の税金が、なれ合い政治の潤滑油に化けていた。
 自民党のかつての実力者があえて身内の恥をさらしたのだから、これが事実なのだろう。「政権交代が起きた今、悪癖を直してもらいたいと思い告白した」という。残念ながら悪癖を正す動きは鈍い。だが、野中証言で政府も国会も口をつぐむわけにはいかなくなった。
 少なくとも歴代の官房長官と国対委員長には、事実関係を国会で語ってもらわなければなるまい。何のために、誰にいくら渡したのか、納税者が使途の公表を迫るのは当然だ。重宝な打ち出の小づちを振り続けてきた政治家に、納税者が怒りの拳を振り上げる番だ。
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