少年法の実名禁止に疑問示す 「透明性欠けば議論妨げ」
中日新聞2012年3月27日 10時23分
【ニューヨーク共同】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)国連事務所のディアス代表は26日、日本の少年法が犯行時未成年の死刑囚の実名報道を禁じていることをめぐり「(死刑囚を)殺しても良いが名前を報じてはいけないというのは皮肉だ」と述べた。さらに「透明性を欠けば(死刑制度の)議論が妨げられる」と疑問を示した。
ニューヨークの国連本部で世界の死刑について記者会見したディアス氏は、中国の死刑に秘密が多いことを批判。その上で死刑を存続している各国にとり「透明性を高めることが極めて重要なステップ」と強調した。
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◆死ぬこと《死刑》よりも、皆の記憶の中から自分が消えてしまうんじゃないか、ということに抵抗があった 2012-03-01 | 光市母子殺害事件
元少年の死刑確定、実名報道は「匿名化」社会の例外的措置か
2012/3/1 7:00.WSJ Japan Real Time 金井啓子のニュース・ウオッチ
山口県光市で1999年に起きた母子殺害事件で殺人と強姦致死などの罪に問われた被告(犯行時18歳1カ月)の死刑判決が確定することになった。最高裁に残る統計では犯行時の年齢が最も若い死刑確定者になるとみられている。
筆者は、これまで匿名だった被告の実名が大半のテレビや新聞で明らかにされ、顔写真も報道された点に関心を持った。
実名報道に切り替えたメディアは、これまで匿名で報じたことについて「少年法の趣旨を尊重し社会復帰の可能性などに配慮したため」と説明。「国家によって生命を奪われる刑の対象者は明らかにされているべき」で、「死刑が確定すれば更生・社会復帰の機会はなくなるため」実名報道に切り替えたという。
だが、死刑確定時で実名とするのが妥当なのか気にかかった。そこで、『英国式事件報道 なぜ実名にこだわるのか』(文藝春秋)の著者である共同通信ニューヨーク支局次長の澤康臣記者に話を聞いた。
まず、罪を犯した少年を匿名で報じる一般的な措置について、澤記者は「少年犯罪に限らず、被害者や加害者をはじめとして記事に書かれる人々への打撃を記者たちに意識させる、価値のあるもの」と考えているという。だが、加害者の少年を匿名で報じるこの規定は、匿名にして書く内容を削ることにより報道被害が減って配慮ある報道にするという考えを反映しているが、物事を伝え記録する以上できるだけ多くの内容を伝えてこそ意味が増すという本来のジャーナリズムのあり方と逆だという疑問も呈している。「書かれた本人への打撃の軽重と、社会や歴史の財産としての記事の中身の善し悪しは本来別次元で、だからこそ『バランス』というほかない。そのバランスは一件一件事情が違うはず」と語った。つまり、「何をどう書くか」という問題は、打撃の大きさのみでも、また、記事の意義深さだけでも決められないため、双方を比較したうえでバランスを取る必要があるのだという。
死刑確定で実名報道に切り替えた措置に関して、澤記者は「各社が相当な議論と苦悩の末に独自の判断をしたことはまちがいなく、(実名・匿名報道が)それぞれ尊重されるべき」と強調した。そのうえで、実名切り替えに個人的には賛成だという澤記者は、1)死刑は重大な制度で、死刑囚の名が伏せられる社会は不透明、2)更生の可能性は再審や恩赦で、実現すれば歴史的事件となりむしろ人名を含め記録する必要は増す、3)少年法の匿名報道規定は更生支援のためで死刑確定者も対象とする矛盾は「法の落とし穴」━━と3つの理由を挙げた。
少数派となった匿名継続の毎日新聞、中日新聞、西日本新聞などは「非道極まりない事件だが少年法の理念を尊重し匿名で報道するという原則を変更すべきではない」、「死刑判決が確定した後も再審や恩赦の可能性はある」と説明している。
筆者は、重大な犯罪では容疑者が少年でも実名で報道すべきという個人的な意見を持つ。現行の少年法は時代にそぐわないと考えるからである。また、被害者や遺族は実名だけでなくプライバシーも洗いざらい報道される確率が高いのに対し、容疑者は過度に保護されているとも感じる。だが、そうであっても、今回は裁判官のひとりが反対を唱える珍しい例だったうえに、死刑判決が覆る前例がゼロではない以上、この時点で実名切り替えの判断を下したことには、筆者は疑問をぬぐいきれない。今回の判決を前におそらくメディア内部では議論していたのだろうが、実例が出る前にもっと社会的に幅広い議論があってもよかったのではないだろうか。
日本では通常、些細なコメントでも匿名でしか報道しない、できないケースが多い。筆者が外資系メディアの日本支局に所属していた際、重大な秘密でない際も取材先が匿名を希望することが多く、上司に「なぜこんなことが実名で話せないのか理解できない」と言われたことを思い出す。
今回の実名切り替え措置は、そうした「匿名化」する日本社会では異例と言える。今回の判断がごくまれな例外となるのか、それとも、なんでも匿名とする風潮に一石を投じ議論するきっかけとなるか、注目に価する。
(筆者は近畿大学文芸学部准教授。2011年11月まで「金井啓子のメディア・ウオッチ」を連載)
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〈来栖の独白2012/03/01 Thu.〉
卑見は、実名報道には反対である。マスコミ各社が挙げた実名報道の理由は「更生の可能性が無くなった」というもので、私は激しく否を唱える。人は変わり得るものだ。とりわけ少年(元少年で、現在に至ってもまだ若い)は可塑性に富んでいる。なにより、死刑確定という現時点での一事により「死人」と定めてしまう神経の太さ、大雑把にはどうしても同調できない。生きており、温かい肉体に包まれている人間に対して、如何にも、むごい。
ただ、上のコラムを読んで、些か考えるところもあった。
もう10余年も前のことになるが、名古屋アベック殺人事件の主犯K君が云った。「死ぬことよりも怖かったのは、僕がこの世から忘れ去られることだ」と。
死刑制度を存置し、死刑執行を行わしめているのは、(「国家」ではなく)我々「国民」である。裁判員裁判は、そのことを端的に教えてくれた。
ならば、我々国民は、我々自らが手にかけた(制度という名の下に命を奪った)人の名前を知らなくてよいのだろうか。K君の言葉を振り返るなら、死刑に処せられ、名前すら知られずに「無」になってゆくのは侘しすぎる・・・、そのような感慨が私に浮かぶ。
侘しい、荒涼とした風景だ、死刑とは。それが、若い人に対してなら、なおさらだ。
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《日本の死刑状況について「無期懲役者からの手紙」》より抜粋
「強がりではなく、一審当時のわたしには死刑になって死んでいくことは決して難しいことではありませんでした。まわりの状況や雰囲気などで、一審の途中からもう自分は死刑になると勝手に確信していたのですが、自分が死刑になって死んでいくということに対してはほとんど抵抗はありませんでした。もう終わった、と自分の人生に対しての諦めの気持ちもあったのですが、それまで精一杯かっこをつけて強がって生きてきたわたしにとっては、たとえ自分が死刑になったとしてもジタバタせず、最後のツッパリで清く死んでいくことしか頭になかったのです。むしろわたしは自分が死ぬということよりも、みんなの記憶の中から自分が消えてしまうんじゃないか、ということに対してのほうに抵抗があったように思います。たとえ私が死んだとしても、せめてわたしのことを忘れないでほしいという気持ちは強くもっていましたし、そのためにもうどうせ悪くされるのなら、たくさんの人の記憶に残るように思いきり悪のまま清く死んでいこうとしていたのだと思います。ほんとうになんて馬鹿な、と思うでしょうが、それまでのわたしは自分の命さえ大切にしていませんでしたし、そういう生き方しかしてこなかったのです」。
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◆元少年に死刑判決 報道 実名か匿名か/光市事件 木曽川長良川リンチ殺人事件 /少年法の理念尊重貫く 2012-02-25 | 光市母子殺害事件
山口・光の母子殺害:元少年に死刑判決 報道、実名か匿名か 少年法の理念尊重貫く=社会部長・丸山雅也
毎日新聞は、山口県光市母子殺害事件で最高裁判決後も元少年の匿名報道を続けています。何ら落ち度のない母子の尊厳を踏みにじり尊い命を奪った残虐極まりない事件です。誠に許し難い凶行ですが、少年法の理念を尊重し匿名で報道する原則は、最高裁判決が出たからといって変更すべきではないと判断しました。事件発生以来、取材にあたってきた西部本社報道部の意見も踏まえ、東京本社編集編成局で議論したうえでの判断です。
94年の連続リンチ殺人事件で死刑が確定した元少年3人の最高裁判決(11年3月)でも毎日新聞は匿名で報じ、その経緯を紙面で紹介しました。今回の判決でも実名報道に切り替えるべき新たな事情はないと考えました。そうした事情は、今回の判決を報じた21日朝刊で「おことわり」として読者の皆さんにも説明しています。
少年法61条は、少年時の事件で起訴された被告らの名前や住所、容貌など本人と推測できるような記事の掲載を禁じています。これは、少年法が成熟した判断能力を持たない少年時代に起こした事件に関して、その少年の更生を目的としているためです。
今回、多くの報道機関が死刑確定で更生の機会がなくなるなどとして実名報道しました。しかし、元少年には死刑確定後も事件を悔い、被害者や遺族に心から謝罪する姿勢、すなわち心の更生が求められていることに変わりはありません。
遺族の本村洋さんは判決後の記者会見で「眼前に死というものが迫ってきて改めて自分が犯した罪、自らの死を通じて感じる恐怖から、自ら犯してしまった罪の重さを悔いる、かみしめる日々が来るのだと思う」と述べました。被告から死刑囚に立場が変わり、元少年の心境に変化が生じる可能性もあります。
法制度上は再審や恩赦も全くありえないわけではありません。事件当時、元少年は死刑の適用が可能な18歳となってから30日で、確定すれば記録が残る66年以降、最年少となります。4人の裁判官のうち宮川光治裁判官は「精神的成熟度が18歳を相当下回っている場合は死刑回避の事情があるとみるのが相当」として再度の審理差し戻しを求める反対意見を述べました。最高裁の死刑判断に反対意見が付くのは、被告が冤罪(えんざい)を訴えた「三鷹事件」(55年)など戦後まもない時期に3例把握されているだけという極めて異例なもので、匿名報道にあたってはこうした点も判断材料としました。
今回の判決は読者の関心も高く、匿名報道について「筋を通している」「強く共感を持つ」などの評価、「実名報道すべきだった」との指摘など、さまざまな声をいただきました。背景には少年事件報道の在り方、裁判員裁判時代の死刑判断基準、さらに死刑制度そのものなど論議が必要な多くの問題を含んでもいます。
元少年の状況については今後も可能な限り取材に努めます。また、毎日新聞の第三者機関「『開かれた新聞』委員会」で06年、「死刑が執行されるに際しては匿名であってはならない」と、国家に生命を奪われる人の氏名は明らかにすべきだとする指摘があったことも重く受け止めています。
私たちは、読者の皆さんのご意見も参考にしながら、編集編成局内、さらに「『開かれた新聞』委員会」で論議を深めていきます。
毎日新聞 2012年2月25日 東京朝刊
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山口・光の母子殺害:元少年に死刑判決 報道、実名か匿名か 各社判断分かれる
山口県光市の母子殺害事件で元少年(30)に死刑を言い渡した最高裁判決を受け、大半の報道機関は実名で報じたが、毎日新聞など一部は匿名を維持した。少年法が未成年者の犯罪の実名報道を禁じる中、今回も大阪府などで男性4人が殺害された「連続リンチ殺人事件」同様、判断は分かれた。【日下部聡、川名壮志、長野宏美、袴田貴行】
毎日新聞が在京主要紙、事件が起きた山口県の地元紙、通信社、NHK、民放各キー局など15社に取材したところ13社が実名、毎日新聞や東京新聞、西日本新聞が、匿名だった。
報道各社の実名・匿名対応とその理由
実名報道を決断した理由として多かったのは▽事実上の死刑確定で更生の機会がなくなった▽社会復帰への配慮が必要なくなる▽事件の重大性を考慮した−−だった。国家が命を奪う刑罰の対象に誰がなったのかを監視する意味で、実名は必要との意見も根強い。
一方、匿名とした理由について毎日新聞は21日朝刊で「おことわり」を掲載し、「少年法の理念を尊重した。元少年には今後も更生に向け事件を悔い、被害者・遺族に心から謝罪する姿勢が求められる。再審や恩赦の可能性もないわけではない」との見解を示した。
これらの判断理由については、各社ともおことわりなどの形で報じている。
かつては浅沼稲次郎・社会党委員長刺殺事件(60年)の山口二矢(おとや)少年(当時17歳)や、68年に19歳で4人連続射殺事件を起こした永山則夫・元死刑囚など、発生直後から実名報道されたケースもあった。永山元死刑囚については毎日新聞は発生時に「A少年」と表記。71年に本人が獄中手記「無知の涙」を刊行して本名を公表し、1審の途中から実名に切り替えた。
70年代以降は匿名がほぼ定着していたが、80年代後半〜90年代、凶悪な少年犯罪が相次いだのを機に、週刊誌を中心に実名を掲載するメディアが出始め、06年に徳山工業高専(山口県)の女子学生が少年(当時19歳)に殺害された事件では、少年の自殺後に新聞1社と民放2社が実名と顔写真を報じた(毎日新聞は匿名)。
■報道各社の実名・匿名対応とその理由(●は実名、○は匿名。毎日新聞については文中)
朝日新聞 ● 国家に生命を奪われる刑の対象者は明らかにされるべきだ
読売新聞 ● 更生の機会はなくなる。国家が人の命を奪う死刑の対象は重大な社会的関心事
日経新聞 ● 死刑判決の重大性、更生の機会がなくなることを考慮した
東京新聞 ○ 再審や恩赦があり、更生の可能性が消えるわけではない。少年法の配慮は必要
産経新聞 ● 社会復帰などを前提とした更生の機会は失われる。事件の重大性も考慮
共同通信 ● 更生、社会復帰に配慮する必要がない。国の刑罰権行使を監視する必要がある
時事通信 ● 更生の可能性がなくなったことや事件の重大性などを総合的に判断した
西日本新聞 ○ 再審や恩赦の可能性はあり、現時点では少年法の趣旨を尊重する必要がある
山口新聞 ● 更生、社会復帰に配慮する必要がなくなった
NHK ● 重大な犯罪で社会の関心が高い。社会復帰、更生の可能性がなくなった
TBS ● 更生と社会復帰の可能性がなくなる。誰に刑が執行されるかが匿名であってはならない
日本テレビ ● 少年の更生の可能性が絶たれた。事件の社会への影響を踏まえ公益性を優先した
テレビ朝日 ● 更生する機会がなくなった。国家が人命を奪う行為を国民が監視できなくなる
フジテレビ ● 更生の可能性が事実上なくなったことや、事件の重大性などを総合的に判断した
テレビ東京 ● 更生や社会復帰への配慮の必要性が失われた。重大性を総合的に判断した
毎日新聞 2012年2月25日 東京朝刊
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◆光市事件 差し戻し上告審 元少年の死刑確定へ/毎日新聞・中日新聞は、これまで通り匿名で報道します。2012-02-20 | 光市母子殺害事件
◆木曽川・長良川リンチ殺人事件「少年法が求める配慮の必要性から、中日新聞は3被告を匿名で報道します」2011-03-11 | 死刑/重刑/生命犯 問題
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◆【中国】死刑執行、去年は数千人か 死刑囚頼みの臓器提供/『ゆれる死刑 アメリカと日本』小倉孝保著 2012-03-27 | 死刑〈国際〉
3月27日 9時28分国際的な人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は・・・・
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「少年法の実名禁止に疑問」アムネスティ・インターナショナル国連事務所のディアス代表
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