豊田社長とチャップリン
2012/5/11 18:12 WSJ Japan Real Time
トヨタの豊田章男社長トヨタ自動車の豊田章男社長は9日、同社が「カイゼン」精神を活かし一連の車種をアップグレードするやり方を示す上で、チャップリンの発言を引用した。
豊田社長は都内での決算会見の冒頭、記者団へのあいさつで、「私は、喜劇王チャップリンが、『あなたの最高傑作は何か?』と聞かれた時にはいつも、『NEXT ONE』と答えたという、常によりよいものを作ろうとする姿勢に、我々でいう『改善』の精神と相通ずるものを感じております。ぜひとも、トヨタ、レクサスの『NEXT ONE』に、ご期待頂きたいと思います」と述べた。
気の利いたセリフで、日本内外でメディアが取り上げてきたセリフだ。ただ1つ問題がある。チャップリンの研究者たちによると、チャップリンはこのセリフを言ったことがないというのだ。グーグルの英語版でざっと検索してみても結果は同じだ。
チャップリンに関する複数の著書があり、日本チャップリン協会の会長を務める大野裕之氏は、チャップリンが「the next one」とコメントしたと日本で広く考えられているが、それに関する自身の研究ではそうした事実はないことが分かったと述べた。
大野氏は豊田社長の発言について知ると、JRTに対して、「章男さんに、(チャップリンは)そんなことは言っていないと伝えておいてください」と笑いながら語った。
大野氏によると、1979年の全日空(ANA)のテレビコマーシャルで、こうした誤った認識が日本で広まったようだ。
そのANAのコマーシャルでは、空港でパイロット姿の俳優、故森繁久彌さんがジャンボ機の脇に立ち、「the next one」をチャップリンの発言として話している。
トヨタの広報担当者は、この発言の由来の疑わしさについて同社は認識していないと話した。トヨタの広報部・グローバルコミュ二ケーション室の布施直人主査は、日本では通常、チャップリンの発言とされており、いかにも彼らしい発言だとの見方を示した上で、「つまり、現状の満足度より常に良くするのが大事という意味だ」と語った。
トヨタは、事前に準備する幹部発言原稿の事実関係調査については、「カイゼン」の精神をもっと活かす必要があるかもしれない。
記者: Chester Dawson
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