仙台高裁で逆転無罪　自白調書について「内容は信用できない。捜査官の誘導で作られた可能性がある」

侵入、窃盗で一審有罪　福島の男性、逆転無罪　仙台高裁
河北新報 2012年05月24日木曜日
　邸宅侵入と窃盗の罪に問われた福島県のアルバイト男性の控訴審判決で、仙台高裁は２３日までに一審の有罪判決を破棄、無罪を言い渡した。高裁は検察側立証の柱となった自白調書について「内容は信用できない。捜査官の誘導で作られた可能性がある」と判断した。検察側は上告せず、無罪が確定した。
　男性は知人ら２人と共謀し２０１０年５月、福島県郡山市内の邸宅に侵入、バイクなどを盗んだとして逮捕、起訴された。
　関係者によると、男性は逮捕後、容疑を否認していたが、捜査官から「客観的な状況からすれば（知人らが盗もうとしていることを）知らなかったという言い分は通らない」などと言われ、認める供述をした。公判では「物を運ぶのを手伝うように言われ、盗みをしようとしていると思わなかった」と否認を貫いた。
　一審郡山簡裁は「（容疑を認めた）捜査段階の供述は客観的状況などから合理性が認められる」と両罪の成立を認定。懲役１年、執行猶予３年を言い渡した。
　弁護側は控訴審で「警察官調書と検察官調書の間で窃盗の故意が生じた時期にずれがあり、不自然」と主張。知人らが盗みに入ったことをどの時点で認識したかについて、警察官調書は「現場に行き、自分たち３人以外誰もいないのはおかしいと思った」と記載。検察官調書は「２人が『バイクを持って行っても大丈夫か』などと話しているのを聞いた」と記していた。
　高裁は「邸宅侵入と窃盗の故意、共謀に関する証拠は信用し難い。一審判決は、事実を誤認したと言わざるを得ない」と結論付けた。