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発達障害 大東一広被告に求刑超す判決/障害者を犯罪予備軍とみなして刑務所に隔離-大阪裁判員裁判

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発達障害者に求刑超え異例判決 「社会秩序のため」に賛否分かれる
J-CASTニュース2012/7/31 19:59
  姉を刺殺した発達障害のある42歳の男性被告に、裁判員裁判で求刑を超える懲役20年の実刑判決が言い渡された。その理由に、「社会秩序の維持」を挙げており、識者の間でも論議になっている。
  障害を理由に減刑することは、刑事裁判では、よく見られる。この判決が異例なのは、逆に刑を重くしたことだ。
■障害者団体などは、「無理解、偏見」と批判
  報道によると、大阪市平野区の無職大東一広被告(42)は、大阪地検の精神鑑定で、社会的なコミュニケーションに問題があるとされるアスペルガー症候群と診断された。そのうえで、地検は、大東被告に責任能力はあるとして、殺人罪で懲役16年を求刑していた。
  一方、2012年7月30日の大阪地裁判決では、アスペルガー症候群であると認定しながらも、大東被告がまったく反省していないうえ、家族も同居を望んでいないため、社会の受け皿がなく、再犯の可能性があると指摘した。そして、「許される限り刑務所に収容することが社会秩序の維持にも役立つ」として、殺人罪の有期懲役刑の上限を適用した。
  判決によると、大東被告は、小学校5年で不登校になってから約30年間の引きこもり生活は姉のせいだと逆恨みした。そして、11年7月25日に生活用品を市営住宅の自宅に届けに来た姉に対し、腹などを包丁で数カ所刺して殺害した。
  これに対し、弁護側は、「主張が認められず遺憾だ」として、控訴する構えを見せている。法廷では、障害の影響があったとして、保護観察付きの執行猶予判決を求めていた。
  社会秩序維持を挙げた判決について、障害者団体などからは、「無理解、偏見に基づく判決だ」などと批判が出ている。とはいえ、ネット上では、その反応は様々だ。
■識者から「裁判員の判断の方が常識」の意見も
  判決について、「犯した罪ではなく、出所後の受け皿の有無で刑が決まるとかおかしい」「福祉の存在意義を真っ向から否定する言い分だな」といった疑問は多い。一方で、「病人だとはいっても、このような人間を受け入れられる施設が刑務所以外にあるのだろうか」などと判決を支持する声もあり、「無期禁固でいい」といった極論すらあった。
  識者の間でも、意見は分かれているようだ。
  日経の記事によると、判決について、板倉宏日大名誉教授(刑法)は「障害がある場合、量刑が軽くなるケースが大半。法律の専門家からすれば違和感が残る」と指摘した。一方、産経によると、元最高検検事の土本武司筑波大名誉教授は「検察側の求刑が軽すぎた。裁判員の判断の方が常識にかなっている。裁判員裁判を導入した成果といえるだろう」と述べた。
  発達障害について、家族がいないと社会の受け皿がないというのは本当なのか。
  大阪市内で発達障害者の支援に当たるある相談員は、取材に対し、「受け皿は少ないのが実情」と明かす。「グループホームに発達障害に特化したところはなく、どこも満杯です。ですから、社会復帰する施設は、なかなかありません」。
  独り暮らしをしたとしても、実情は同様だ。2005年に発達障害者支援法が施行され、自治体が障害者を支援することになっている。しかし、本人が相談などをせずに引きこもっていた場合、行政が乗り込むのは難しいようだ。
  ただ、前出の相談員は、判決については、「刑務所に発達障害対応のプログラムがあるとは思えず、理不尽だと思います」と漏らした。

   厳 罰 という名の 隔 離  発達障害被告に求刑超す判決 
中日新聞 特報 2012/8/10 Fri.
 大阪地裁で先月末、発達障害の被告に対し、異例の判決が出た。「被告の障害に対応できる社会の受け皿がなく、再犯の恐れがある」ことを理由に、求刑を上回る刑が言い渡された。これでは「障害者=犯罪者」として罰するのと同じではないか、という批判が高まっている。社会の受け入れ態勢の不備が、障碍者への厳罰化につながっている。判決から見える問題点をあらためて検証した。(出田阿生)
■他人への再犯「あり得ない」
 昨年7月に姉=当時(46)=を包丁で刺殺したとして、殺人罪に問われた大東一広被告(42)の裁判員裁判で、大阪地裁の河原俊也裁判長は先月30日、被告に懲役20年を言い渡した。
 求刑は懲役16年。4年も上回ったのは、被告が「発達障害」と認定されたためだった。
 大東被告は小学5年で不登校になり、約30年間引きこもり生活を送っていた。本人も家族も障害には気づいていなかった。被告は不登校になった時に「転校や引っ越しをして、やり直したい」と両親に頼んだが、実現しなかった。それを姉のせいだと思い込んだ。
 二十代のころにはインターネットで自殺の方法を調べようと、姉に「パソコンを買って」と頼んだが、新品を買ってもらえず、さらに憎んだ。
 犯行時は母親と二人暮らし。結婚して家を出た姉が被告のために生活用品を届けた際、「食費やお金は自分で出すように」と置き手紙で自立を促したことが、今回の犯行の引き金となった。
 大東被告は逮捕後の検察の精神鑑定で初めて、広汎性発達障害の一つ、アスペルガー症候群と診断された。この障害には、他人の感情や意図を理解することを苦手とする傾向がある。コミュニケーションがうまく図れず、いじめられて不登校になったり、障碍者本人が被害感情を募らせてしまうこともある。
 担当した山根睦弘弁護士は「障害のせいで、自分の苦しみはすべて姉のせいだと思い込んだ。通常なら考えられないような動機だ。家族への甘えが入り混じった複雑な恨みの感情を30年も募らせた末の犯行であり、あかの他人への再犯はあり得ない」と説明する。
 懲役20年は殺人罪の有期刑の上限。限度まで重くした理由は何か。判決は▽母親らが同居を断った▽被告の精神障害に対応できる社会の受け皿がない▽再犯の恐れがあり、許される限り長い期間刑務所で内省を深めさせることが社会秩序のためになる--とした。
■悪循環を生む「受け皿不足」
 この判決について、精神障碍者の当事者団体「全国『精神病』者集団」の山本真理さんは「犯罪行為そのものを罰するのが刑法のはず。障害者だから罪を重くするのは、障害自体を罪として罰しているのと同じ。明らかな差別だ」と憤る。
 母親らが被告を引き取らない以上、社会に受け皿がないから刑務所へ--という判断についても「社会の支援不足を、障碍者個人や家族の責任に転嫁することは本末転倒だ」と厳しく批判した。
 そもそも、統計では精神障碍者の犯罪発生率は低く、件数も一般人に比べて極めて少ない。
 元法務官僚で龍谷大学法科大学院の浜井浩一教授(犯罪学)は「発達障害そのものが重大犯罪の原因ではない。犯罪の多くは突発的。発達障害を理解してもらえないことから生じる『二次障害』が、強い被害念慮(確信はないが、被害を受けていると感じること)などを生み、それが発達障害特有のこだわりと結び付いて起される。適切な対応によって二次障害をケアすることで、重大な結果を防げる」と話す。
 発達障害がある人たちの支援組織「日本発達障害ネットワーク」の市川宏伸理事長は「障害に特徴的な考え方や行動様式を周囲が理解していれば、と悔やまれる。30年も社会的支援がなかったために起きた事件なのに、受け皿がないという理由で刑を重くするとは。障害者を何重にも追いつめている」と語る。
 長期間刑務所に入れれば反省し、再犯が防げるという判決の趣旨だが、刑務所の現行体制では発達障害者も一般受刑者と同じ扱いをされる。神戸学院大法科大学院の内田博文教授(刑法)は「刑務所には発達障害に対応した更生プログラムがなく、長期間収容すれば、かえって症状が悪化するだけだ」と批判する。
「困ったら刑務所」批判強く
 触法障害者はとにかく隔離--という判決の背景に何があるのか。
 精神障碍者の人権問題に詳しい池原毅和弁護士は「地下鉄サリン事件以降の社会や、昨今の刑事司法の流れの影響が如実にある」と分析する。
 池原弁護士によると、2005年に施行された医療観察法が「ある種の出発点」。同法は心神喪失や心神耗弱で刑事責任を問われなかった精神障碍者を入院させ、手厚い治療と社会復帰を目的に掲げて導入された。しかし、「障害者を犯罪予備軍とみなして病院に閉じ込め、隔離しただけ。刑務所に長期間収容するというこの判決も同じ発想だ」。
■社会の偏見が裁判員に影響?
 凶悪犯罪の発生件数は減少傾向なのに治安当局やメディアは「体感治安の悪化」という言葉で危機意識をあおり、厳罰化が進んでいる。あおられた市民の「素朴な正義感」が今回の判決に反映された可能性もある。
 岐阜大学の高岡健准教授(児童青年精神医学)は「障害者の親や家族、隣人など、障害について理解のある人が裁判員に入っていれば、良い意味で市民感覚が反映されるだろうが、そうでない場合、逆に社会で偏見を持たれがちな障害者が『市民感覚』により排除される結果になる」と見る。
 高岡准教授は、障碍者の社会復帰への支援体制について十分な情報提供が、裁判員に対してあったのかも疑問視する。まだ乏しいとはいえ、刑務所を出た高齢者や障害者の社会復帰を支援する「地域生活定着支援センター」などのプログラムが整備され始めているためだ。
 前出の浜井教授は「日本の刑事司法は更生や社会復帰を全く考えていない。家族や病院、福祉施設にも見放された時、断らないのは刑務所だけ。困ったときは刑務所へとなる」と批判する。
 「少年法の手続きのように成育歴や生活環境を調べ、障害と事件との関連性、再犯可能性などを検証する。さらにどんな支援が必要かを考えることこそ、真の更生と社会復帰に直結する。隔離すればいいというのはあまりに非人道的で、社会にとっても無益だ」
 障害者が社会で生きていくための支援体制は決定的に不足している。今回の判決は、その切迫した状況から目を逸らした結果ともいえそうだ。
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自閉症〈先天的な障害〉理解し支援充実急げ〜彼のような障害者も受け入れ可能/「豊川家族5人殺傷事件」 2012-01-31 | 社会 
 ニュースを問う 愛知・豊川の家族5人殺傷事件 自閉症理解し支援充実急げ
 中日新聞2012/1/29Sun. 志方一雄(豊川通信局)
 インターネットの切断に腹を立てた被告が家族5人を包丁で襲い、2人を殺害、3人に重傷を負わせた豊川家族5人殺傷事件。31歳の被告に自閉症という障害があり、判決が注目された名古屋地裁岡崎支部での公判をすべて傍聴してきた。社会に障害者を受け入れる体制がもう少し整っていれば、事件は防げたのではないかとの思いを抱いている。
■買い物に執着心
 検察側、弁護側が被告に精神鑑定を実施。双方の鑑定医はともに被告を自閉症と認定した。 
 自閉症について私は「後天的な精神病の一種」という誤った認識を持っていた。「先天的な障害で、治療をしても治るものではない」。鑑定医はそう証言し、特徴的な症状として「こだわり」と「他人の気持ちが理解できない」点を挙げた。
 被告が犯行時、強いこだわりを持っていたのが、インターネットによる買い物だった。物ではなく、買い物という行為そのものにこだわりがあった。事実、買った物のほとんどは段ボール箱のまま部屋に山積みされていた。「買い物へのこだわりをなくすにはどうすればよいか」。質問に医師は答えた。「他のものにこだわりが移るまでは治らない」
 知的障害の程度は、被告自身が語る言葉が分りやすかった。被告は好きなテレビ番組を問われて「アンパンマン」と答えた。「それ以外の番組は難しくて話が分からない」。被告人質問でも、被告は大半の質問に「分らない」と繰り返した。
 しかし自閉と知的の障害があったことを被告の母親は「知らなかった」と証言した。人とコミュニケーションが取れないという認識はあったはずだが、障害が原因とは思っていなかったようだ。
 被告は中学を卒業後、製菓会社で菓子の箱詰めなどの仕事に就いた。1年後、入社した後輩に仕事を教えることができず、仕事を辞めた。家族が知らなかった障害を会社が知っていたとは思えないが、障害への配慮があれば仕事を続けられたかもしれない。
 その後も被告が仕事を探した形跡はある。選んだのはチラシ配りの仕事。30万円を払えば仕事を紹介するというものだったが、詐欺だった。他人の意図を読むことができない被告は簡単にだまされ、この時、初めてクレジット会社に借金をした。その後は部屋にひきこもり、ネットに興味を抱き、やがてネットショッピングに夢中になった。
■家族知らず悲劇
 借金が3百万円を超えたころ、家族は頻繁に関係機関に相談を持ちかけた。警察、保健所、県の相談窓口・・・。そこで教えられた実効性のある対応は「クレジットの解約」や「ネットの切断」だった。家族と被告の対立は深まり、とうとうネットを解約。被告がネットを復旧したため2度目の解約をし、その夜、悲劇が起きた。
 買い物へのこだわりを障害による症状と認識していたら、家族の対応は違っていたのではないか。障害を知らなかったため、結果的に家族も被告も最悪の事態へ追い込まれたと思えてならない。
 公判では希望も感じた。自閉症の障害者に住居を提供し、仕事を斡旋している障害者支援団体代表は「彼のような障害者も受け入れ可能」と断言した。
 別の支援団体の女性代表は、自ら自閉症に悩んだ経験を話した。彼女は結婚して子どもを育て、社会生活を送りながら「こういう場合、相手はこう感じる」と1つ1つ学んでいったという。「今では通常の生活を送れる程度に人の気持ちを理解できるようになりました」と語る彼女を見て、自閉症は少しずつ克服できるのだと私には思えた。
 自閉症や知的障害のある人のなかにも、優れた芸術や天才的な業績を残した人もいる。そういう人たちを社会が受け止め、支援できる体制づくりを急がねばならない。事件はその緊急性、重要性を私たちに示している。
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愛知・豊川の家族5人刺され2人死亡 30歳長男逮捕/外との接点絶たれ激高か2010-04-17 | 死刑/重刑/生命犯 問題 
 愛知・豊川の家族5人殺傷: 「ネット競売、借金300万円」 父、警察に相談
 ◇長男トラブル、父が警察に相談
 愛知県豊川市の一家5人殺傷事件で、殺害された会社員、岩瀬一美さん(58)が事件直前、県警豊川署に「長男が自分のクレジットカードを勝手に使い、ネットオークションなどで200万〜300万円の借金を作った。どうすればいいか」と相談していたことが17日、分かった。捜査幹部が明らかにした。一美さんはその後、自宅の電話を止めてインターネットを使えなくしたという。同署は長男の高之容疑者(30)=殺人未遂容疑で逮捕=がこれに激高して家族を襲ったとみて調べている。【沢田勇、山口知】
 ◇けがの家族、刺し傷10カ所以上
 捜査幹部や親族によると、高之容疑者は引きこもり状態にあった事件前、ネットに一日中没頭したうえ、ゲームなどをオークションなどで購入しては一美さん名義のカードで支払っていた。一美さんら家族は12〜15日に計8回、購入などに関するトラブルを巡って110番したり「これ以上エスカレートさせないためにはどうすればいいか」と同署に相談していた。
 一方、一美さんの遺体には顔や首などに4カ所▽孫の金丸友美ちゃん(1)の遺体には額や左腕などに3カ所の刺し傷や切り傷があることが同署の調べで分かった。司法解剖で一美さんの死因は出血性ショックだった。
 さらに妻正子さん(58)=1カ月の重傷=は顔や太ももなど10カ所▽三男文彦さん(22)の内縁の妻、金丸有香さん(27)=同=は首や手など17カ所▽文彦さん=2週間の軽傷=も顔や首など10カ所の傷があった。正子さんは顔に殴られた跡もあった。
 高之容疑者は一美さんだけでなく他の4人も執拗(しつよう)に襲って自宅に火を放つなど、家族全員への殺意をうかがわせる行動を取っており、同署は動機の解明を急ぐ。
 ◇直前の12〜15日、警察に8回相談
 家族が事件直前の12〜15日に計8回相談していた、高之容疑者とのトラブルについて、同署は8回とも、話し合いによる解決を助言したが、結果的に事件を防げなかった。高之容疑者の暴力や家族のけがは一度も確認されなかったうえ、11日以前には相談や通報は一度もなかったという。
 同署によると、12日夜、岩瀬さんの次男(24)が「兄が父と口論して怖い」と署に通報。家族は駆け付けた署員に、高之容疑者のネットオークションでの借金を説明。署員の仲介で「借金はこれ以上せず、少しずつ返す」ことで和解したという。
 13日夜には署で「クレジットカード会社から警察に被害届を出すよう言われた」と相談。署は「親族間の金銭トラブルは被害届を受理できない」と説明した。
 15日にも「兄が物を投げたりして暴れている」などと110番があったが、けが人はなかった。【秋山信一】
毎日新聞 2010年4月18日 東京朝刊
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愛知5人殺傷:家族に強い怒り 長男、執拗に何度も刺す
毎日新聞2010年4月17日 21時52分 更新:4月18日 1時26分
 愛知県豊川市の一家5人殺傷事件で、殺害された岩瀬一美さん(58)と孫の金丸友美ちゃん(1)の遺体にはそれぞれ3〜4カ所の傷があり、負傷した他の家族3人にも最多で17カ所に及ぶ傷があることが17日、県警豊川署の調べで分かった。同署は岩瀬さんに対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕した長男の高之容疑者(30)が家族全員に強い殺意を持ち、包丁で何度も切りつけたとみて、詳しい動機を追及する。【山口知】
 同署によると、岩瀬さんは顔や首など4カ所、友美ちゃんは額や左腕など3カ所に切り傷や刺し傷があった。発見時、岩瀬さんは心肺停止状態で、友美ちゃんは死亡していた。司法解剖で岩瀬さんの死因は出血性ショックだった。
 さらに▽妻正子さん(58)=1カ月の重傷=は顔や太ももなど10カ所▽三男文彦さん(22)の内縁の妻、金丸有香さん(27)=同=は首や手など17カ所▽文彦さん=2週間の軽傷=も顔や首など10カ所−−の傷があった。正子さんは顔に殴られた跡もあった。いずれも命に別条はない。高之容疑者は現行犯逮捕された際、服に多量の返り血を浴びていた。
 高之容疑者は逮捕直後に「インターネットの接続を父に解約されて腹が立った」と供述する一方、岩瀬さんだけでなく他の4人も執拗(しつよう)に襲って自宅に火を放つなど、家族全員への殺意をうかがわせる行動を取っている。13日には「兄が父の身分証で銀行口座を開設しようとしている」、15日には「次男とけんかしている」と家族が110番しており、同署は普段からの家族関係を調べるなどして動機の解明を急ぐ。
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一家5人刺され2人死亡 豊川、容疑の30歳長男逮捕
2010年4月17日 中日新聞夕刊
 17日午前2時15分ごろ、愛知県豊川市伊奈町、会社員岩瀬一美さん(58)方で家族5人が刃物で相次いで刺され、岩瀬さんと孫の金丸友美ちゃん(1つ)が死亡した。妻の正子さん(58)と三男の内縁の妻の金丸有香さん(27)が首を切られ重傷、友美ちゃんの父親で三男の岩瀬文彦さん(22)が軽いけがをした。豊川署は殺人未遂の疑いで岩瀬さんの長男の高之容疑者(30)を現行犯逮捕。容疑を殺人に切り替えて調べる。
 豊川署によると、岩瀬さんは首やこめかみ付近を、友美ちゃんは額や左肩などを刺されていた。
 同署によると、高之容疑者は、2階で寝ていた正子さんを懐中電灯で照らし「おれのインターネットを解約したのはだれだ」と怒鳴り、1階台所から包丁を持ち出して正子さんと隣で寝ていた友美ちゃんを刺した。さらに1階で寝ていた岩瀬さんと、文彦さんと金丸さんを刺したとされる。その後、高之容疑者は2階自室の布団にライターで火をつけて逃げたという。自宅は2階部分が焼けた。岩瀬さん方は7人家族で、次男(24)は外出していた。
 金丸さんが近所のアパートに駆け込み、住人が通報。駆け付けた署員が、自宅近くにいた高之容疑者を取り押さえた。高之容疑者は「父にインターネットを止められた。家が燃えてしまえと思った。家族を殺してやろうと思った」と話しているという。近所の人の話では同容疑者は15年ほど自宅に引きこもりの状態だったという。
 現場は東海道線西小坂井駅近くの住宅街。
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愛知・豊川の家族5人殺傷:「何で解約したんだ」/外との接点絶たれ(その1)
 ◇寝ている家族次々 容疑の長男、トラブル絶えず
 愛知県豊川市の会社員、岩瀬一美さん(58)方で17日未明に起きた一家5人殺傷事件。殺人未遂容疑で現行犯逮捕された無職の長男、高之容疑者(30)は家族を次々と包丁で刺し、1歳の幼子の命まで奪った。十数年前から自宅に引きこもっていたという高之容疑者。外の世界と自分をつないでいたインターネットの契約を家族に解約され、激高した末に事件を起こしたとみられる。【中村かさね、沢田勇、高木香奈、沢田均】
 「何でおれのインターネットを解約したんだ」。県警豊川署によると、17日午前2時ごろ、2階の自室を出た高之容疑者は、母正子さん(58)の寝ている部屋を懐中電灯で照らしながら忍び入り、いきなりこう怒鳴った。正子さんの左脇腹と太ももを包丁で刺すと、隣で寝ていた三男文彦さん(22)の長女、金丸友美ちゃん(1)の顔や肩なども刺した。さらに1階へ下り、一美さん、文彦さん、文彦さんの内縁の妻、金丸有香さん(27)を次々と刺した後、ライターで自室の布団に火をつけて逃げた。
 近所の人に異変を知らせたのは消防車のサイレンの音だった。「目が覚めて外に出ると、一美さんは心臓マッサージを受けていた。家族も次々と救急車に乗せられて……」。目撃した近所の男性は言葉を失った。
 1時間後、自宅裏の葬儀場の敷地内で返り血を浴びて立っていた高之容疑者を、豊川署員が見つけた。
 近所の住民によると、高之容疑者は十数年前から引きこもり状態だった。家庭内でトラブルを起こすことも多く、今月13日には父親名義で銀行口座を開こうと一美さんの身分証を取り上げて口論になった。
 15日には次男(24)とけんかをした。いずれも家族では抑えきれず、110番で警察官が出動する騒ぎになった。
 ◇働いたがすぐに辞め
 理髪店主(43)によると、高之容疑者は地元の公立中学を卒業後、一時期働いていたが、人付き合いが苦手ですぐに辞め、引きこもるようになったという。半年に1回くらい散髪に来たが、会話はなかったという。近所の女性(35)は「(高之容疑者以外の)6人で外出する姿も見かけ、普通の家族のようだった。でも警察がよく来ることもあって、近所では『変わった人がいる』といううわさがあった」と話していた。

愛知・豊川の家族5人殺傷:「何で解約したんだ」/外との接点絶たれ(その2止)
 愛知県豊川市の家族5人殺傷事件からは「引きこもり」「インターネット」のキーワードが浮かぶ。
 厚生労働省のホームページによると、引きこもりは、さまざまな要因によって社会的な参加の場面が狭まり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態のことを指す。
 引きこもりの子どもや家族を支援しているNPO法人「フレンドスペース」(千葉県)の桝田宏子・カウンセリング部長は「引きこもりの人はトラブルを起こすなどの形で周囲にサインを出している。それが単なるトラブルなのか、何かのサインなのかを周囲が見極める力が必要だ」と話す。
 桝田部長によると、引きこもりは国内に100万人前後存在する。親や周囲が就職など目に見える結果を追うことが引きこもりを長引かせる原因になるため、気長に見守る環境が必要という。「コミュニケーションの中で売り言葉に買い言葉で刺激するのはよくない」と警告する。
 一方、インターネット社会に詳しい神戸大大学院工学研究科の森井昌克教授(情報通信工学)は今回の事件について「自分と他の世界との接点だったネットを切られたのが大きなショックで、『自分はもう終わりだ』と思って逆上したのではないか」と分析する。
 森井教授によると、インターネットを切られて暴力事件を起こす例は他にもあるが、殺人にまで至るのはまれだという。
 森井教授は「引きこもり状態でも30歳なら『自分はこれでいい』とは思っていなかったはずで、迷いがあったと思う。社会との接点だったネットが断たれて『自分の存在がなくなった』と感じたのではないか」と話した。【秋山信一、式守克史】
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 ◇「引きこもり」の人が起こしたとされる最近の事件
04年10月 両親を殺害したとして高校中退後に20年間引きこもっていた東大阪市の男(36)を逮捕。「将来に不安を感じた」と供述
   11月 両親を鉄アレイで殴って殺害したとして水戸市の男(19)を逮捕。「しつけの厳しい祖父を殺す恐怖を克服するため、先に両親を殺した」と供述
   同月  両親と姉を刺殺したとして高卒後に自宅に引きこもっていた茨城県土浦市の男(28)を逮捕。「いつか自分が殺されるので、その前に殺そうと思った」と供述
06年 5月 東京都杉並区で男(33)が両親を殺害後、焼身自殺。男は定職に就かず、引きこもりがちだった
08年 1月 母親と弟、妹を刺殺したとして小学校時代から引きこもりがちだった青森県八戸市の男(18)を逮捕
09年 7月 父親を殺害したとして千葉県大多喜町の男(20)を送検。インターネットの掲示板に「今から父、祖母、祖父を殺す」と予告していた
    9月 妹を刺殺したとして高校中退後に引きこもっていた愛知県春日井市の男(22)を送検。「音がうるさかった」と供述
※年齢は事件当時
毎日新聞 2010年4月17日 中部夕刊

山本譲司著『累犯障害者』獄の中の不条理 新潮社刊

       


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