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「小沢傀儡政党」日本未来の党に未来はあるか 日本経済の本当の問題から逃げる政治家たち

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「小沢傀儡政党」日本未来の党に未来はあるか  日本経済の本当の問題から逃げる政治家たち
日本経済の幻想と真実 JBpress2012.12.06(木)池田 信夫
 先週結成された「日本未来の党」が、いろいろな話題を提供している。
  12月3日には「脱原発に賛成ですか?」というネットアンケートを取ったところ、7割が「反対」という結果が出て、あわてて数字をリセットし、「原発推進に賛成ですか?」というアンケートに切り替えたが、またも「賛成」が圧倒的多数になり、サイトを閉鎖してしまった。
■電力会社をすべて倒産させる「卒原発」
  永田町では、未来の党は「小沢傀儡(かいらい)政党」と呼ばれている。傀儡政権という言葉はあるが、傀儡政党というのは新語である。滋賀県の嘉田由紀子知事が11月27日に結成した日のうちに、小沢一郎氏の「国民の生活が第一」などが合流し、民主・自民に次ぐ第3勢力になった。
  しかし未来の党は、嘉田氏の意思で始まった政党ではない。彼女自身が「岩手県の達増拓也知事から9月末に小沢氏との会談を要請されたのがきっかけで、まったく想像していなかった」とか「なぜ私に声をかけてくれたのか」などと語っている。「小沢氏に誘われて新党結成を決めたのか」という問いには「そうだ」と認めた。
  正直と言えば正直だが、これでは嘉田氏の掲げた「卒原発」などのスローガンは、小沢氏を隠すための煙幕と言われてもしょうがない。その看板政策である卒原発の「カリキュラム」と称するものも、驚くべき内容だ。
  それによれば、全国の原発を再稼働しないで10年かけて廃炉にする。これで生じる電力会社の損害を「交付国債」で補填し、発送電分離など電力自由化を行い再生可能エネルギーを増やすという。
 すべての原発をこのまま廃炉にしたら何が起こるだろうか。経産省の試算によると、電力10社の合計で50基の原発の資産価値、約3兆2000億円がゼロになり、廃炉費用も約1兆2000億円かかるので、計4兆4000億円の損失が出る見込みだ。電力10社の純資産5兆9000億円の7割超が失われ、4社は3年で債務超過になる。
  交付国債というのは、政府が発行する約束手形のようなもので、必要があれば政府に請求して現金化できる。つまり、これは破綻した電力会社に税金を投入するということだ。電力会社の経営を交付国債で補填すると、東電と同じようにすべての電力会社が国家管理になり、電力産業は崩壊する。この状態で、どういう「電力自由化」が可能なのだろうか。
■維新の会から未来の党に鞍替えした「脱原発」ロビイスト
  12月4日の公示では、未来の党の比例区の名簿が受け付けぎりぎりになって修正され、一部の名簿が午後5時の受け付け後に「発見」されるという事件が起こった。
  これは中国ブロックで名簿順位が3位になった飯田哲也代表代行(山口1区と重複立候補)が順位を1位に上げようとしたためと言われている。
  この背景には、党内の圧倒的多数を占める小沢系議員と、嘉田氏の側近である飯田氏の確執がある。
  飯田氏は大阪府市のエネルギー戦略会議のメンバーでもあったが、日本維新の会の橋下徹代表代行が「原発ゼロ」の政策を転換したため、未来の党に寝返った。これを橋下氏はツイッターで激しく批判した。
 仰る通り飯田さんの案は完全に論理矛盾。専門家会議でもまだまとまっていない案です。公示直前に発表し、公示後の論戦を避ける意図もあったのかもしれません RT @ikedanob: 電力会社に税金を投入してすべて国有化するというのは、電力自由化と真逆だ。何を考えてるのか。
  飯田氏は「脱原発」を売り込んで政治家に食い込むロビイストだ。ソフトバンクの孫正義社長の設立した「自然エネルギー財団」の資金も握っていると言われる。その「脱原発利権」を守るために、維新の会から未来の党に鞍替えする商魂はたくましい。
■本当の争点は原発でもTPPでもない
  かつて55年体制のもとでは、万年与党の自民党と万年野党の社会党が、対立しているように見えながら談合していた。社会党は自分で政権を担う可能性はないので、非武装中立などの空想的な政策を掲げ、自民党も社会党と対決するように見えながら、バラマキ福祉などの要求は取り入れ、与野党の「擬闘」が続いてきたのだ。
  高度成長期には、これでよかった。政治家は成長の果実を国民に分配するのが仕事で、難しい判断を迫られることは少なかったからだ。
  しかし90年代以降、低成長の局面に入ると、こうした与野党のなれ合いには限界が見えてきた。
  このため「政治改革」が行われ、めまぐるしい政党の離合集散が起こった。小沢氏は常にその中心にいたが、彼の仕掛けは1993年の細川護煕政権以外はすべて失敗し、民主党とも袂を分かって迷走を続けてきた。
  未来の党は社民党と選挙協力するというが、何の不思議もない。その政策は、社民党とほとんど同じだからである。かつて55年体制に決別して2大政党をつくれと主張した小沢氏が、20年の曲折の果てにたどりついたのが、かつて彼がつぶそうとした社会党の再現だというのは歴史の皮肉である。
  他方、自民党の安倍晋三総裁は「日銀が輪転機をぐるぐる回してお札を刷り、公共事業で景気を回復する」と言っている。このように公共事業に税金をばらまく与党と福祉に税金をばらまく野党が組んで、1000兆円を超える政府債務が積み上がったのだ。
  しかし12党のうち1つも、財政再建の計画を出していない。そのためには大幅増税や年金の大幅削減など、痛みを伴う改革が避けられないからだ。どの党も有権者の反発を恐れて、脱原発や反TPP(環太平洋パートナーシップ)や反増税やインフレ目標など、甘い話ばかり掲げている。その集大成が未来の党である。
  アメリカでは「財政の崖」が話題になっているが、日本の財政を待ち受けている崖は、それよりはるかに大きく深い。日本経済はその崖に向かって転がり始めたブレーキの壊れた車のようなものだが、その中で与野党がそろって目先の痛みを避ける今回の選挙は、もしかすると日本が経済大国として迎える最後の総選挙になるかもしれない。


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