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「MAD(相互確証破壊)」な世界の限界を試す北朝鮮/核抑止の論理が通じない政権が存在するとしたら

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「MAD」な世界の限界を試す北朝鮮
JBpress2013.04.03(水)(2013年4月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 *北朝鮮はMADの概念が当てはまらない可能性がある〔AFPBB News〕
 相互確証破壊(MAD)という概念のポイントは、どちらの側も正気でなければならないというところにある。核兵器の時代が始まって以来、世界の平和はこの考え方で維持されてきた。
  合理的な政治指導者なら、何のかんのと言っても自国民を何百万人も死に至らしめる恐れのある行動は取らないという計算通りに、世界はキューバ・ミサイル危機やベルリンの壁崩壊といった危うい場面を何度かくぐり抜けてきた。
  核武装をした北朝鮮を巡る今回の危機で最も不安なのは、この国の政権が希有な例外の1つで、通常の核抑止の論理が通用しない相手であるかもしれないことである。
  どこかの政治指導者が普通なら考えられないことを考える覚悟なのかもしれない、と思わせる場面は冷戦期にも時折見られた。毛沢東は1950年代後半にモスクワを訪れた際、核戦争はそれほど悪いものではないかもしれないと発言した。
  居合わせた旧ソビエト連邦の、百戦錬磨で少々のことでは驚かないはずの元スターリン主義者たちでさえこれには目を丸くしたが、毛沢東はこう続けたという。「仮に最悪の事態に至って人類の半分が死ぬことになっても、半分は残る。帝国主義は破壊されるだろうし、そうすれば世界全体が社会主義になる」
 *核兵器を振りかざし、世界を脅す全体主義の悪夢
  北朝鮮は多くの点で、毛沢東時代の中国の最も悪い側面を再現している。外の世界からの孤立、強制労働収容所、個人崇拝、そして国内で大規模な飢餓が発生することも容認してしまう姿勢がその主なところだ。
  同胞が何百万人も死ぬことは受け入れられないという認識が核抑止の拠り所であることを考えると、最後に挙げた側面には特に背筋が凍る思いがする。
  西側世界には、北朝鮮をちょっとしたジョークとして扱う残念な傾向がまだ見受けられる。インターネットには、北朝鮮の若き指導者・金正恩(キム・ジョンウン)のずんぐりとした姿を画像編集ソフトで加工した「滑稽な」写真があふれている。
  だが実際のところ、平壌(平壌)の政権は面白がって見ていられる代物ではない。この体制は既に何百万人もの人生を台無しにし、今では外の世界を核兵器で大っぴらに脅かしている全体主義の悪夢なのだ。
 北朝鮮は実のところ何を考えているのか? これを推測することは、難しいが非常に重要な作業である。この国のリーダーについては、外の世界のことを意外に理解しているかもしれないとうかがわせる場面が時折見られる。
  筆者は以前、現在の指導者の父親である金正日(キム・ジョンイル)とたびたび交渉していたという中国のとある上級外交官に、北朝鮮のあの独裁者は西側について知識を持っているのかと尋ねたことがある。返ってきた答えは「もちろん」だった。「彼は一晩中インターネットを見ているよ」と教えてくれた。
 *強硬な態度を貫く米韓政府
  またその息子については、外の世界にもっと門戸を開くのではないかという期待がいくらかあった。スイスの学校を卒業したという経験が何らかの影響をもたらしているに違いない、との見立てだ。
  しかしながら金正恩は今日、核兵器で人目を引こうという北朝鮮の姿勢を新たな、そしてさらに危険なレベルに引き上げている。この国の政府は先日、韓国と戦争状態に入ったと発表し、米国への核攻撃にも言及した。
  米国と韓国はこれを受け、MADの従来型の教えに則った対策を取っている。
  まず米国は、核兵器を搭載できる爆撃機の試験飛行を韓国上空で行った。「ひるむな。弱さを見せるな。敵はいずれ退却する。核戦争で壊滅する危険を冒すことはない」という、核抑止論の専門家がしそうなアドバイスに沿った対応だ。
  また韓国政府も、挑発を受けたら多方面への政治的な影響を考慮することなく迅速な軍事的対応を取ると述べている。
 *核抑止の論理が通じない政権が存在するとしたら・・・
  危険なのは、これらの方針では、敵方が物事を合理的に考えると想定されていることだ。実際、かつて特使として北朝鮮との交渉に臨んだクリス・ヒル氏など、米国にいる北朝鮮の専門家たちは、あの国には米国と一戦交えるつもりはないと主張し続けている。
  彼らによれば、本当に危険なのは平壌の経験の浅いリーダーが何かの間違いで図らずも戦いを始めてしまうことだという。そしてその場合でも、戦闘は長続きせず、核兵器の投入にはほど遠い段階で終わる可能性が高い、と彼らは想定している。
 恐らくその通りなのだろう。だが困ったことに、本当にそうだという確信は持てない。もし通常の核抑止の論理が通用しない政権がこの世界のどこかにあるとしたら、それは北朝鮮であるからだ。
  ということは、米国と韓国が現在取っている姿勢――「核を使った恐喝」には屈しない、ひるまず立ち向かうという方針に基づいた姿勢――は、少し弱める必要があるかもしれない。今の段階で最も重要なのは、目前の状況の鎮静化に専念することだ。だとすれば、必要なのは米国と韓国の軍事演習を増やすことではなく、むしろ減らすことなのかもしれない。
  長期的な話をするなら、朝鮮半島に平和をもたらすものとして最も期待できるのは、北朝鮮内部の変化であるに違いない。
 *水面下で変わりつつある北朝鮮
  なぜなら、北朝鮮は水面下で変わりつつあるからだ。外の世界との貿易は10年前に比べれば格段に増えている。2005年からは北朝鮮側に設けられた工業団地を韓国と合同で運営しており、進出した韓国企業の工場で北朝鮮の労働者が5万人以上働いている。
  国境を接する中国との小規模な交易も盛んに行われている。外の世界から商品やニュースが入り込んでくるにつれ、個人が資産を保有したり自由に行動したりできる場面も少し拡大されている。
  中国は現在、北朝鮮と貿易や対話を進める必要性を強調している。西側世界ではこれを下手な言い逃れだと見なすことが多いが、上記のような経済面の変化を考えると、実はそれ以上のものかもしれない。
  もし核兵器を使わないように北朝鮮の指導部を説得できれば、そして外の世界と商業の面でかかわりを持つよう促すことができれば、平和的な変化が訪れる見通しは大幅に強まることになるだろう。
 By Gideon Rachman
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北朝鮮はなぜ反撃を受けて壊滅しかねない危険を冒してまで、好戦的な言動を続けるのか 古森 義久 2013-04-03 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉 
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北朝鮮 原子炉再稼働を宣言 2013-04-03 | 国際/中国/アジア 
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