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小選挙区 1票の格差 安倍政権潰し?「選ばれた衆院議員に正当性はない」毎日新聞社説の政治的思惑

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【高橋昌之のとっておき】安倍政権潰し? 無効判決の毎日新聞社説に感じる政治的思惑
2013.3.31 14:08
 広島高裁(筏津順子裁判長)が25日、昨年12月の衆院選小選挙区の「1票の格差」について違憲と判断し、広島1区と2区の選挙を無効とする判決を言い渡したことは、憲政史上初の「国政選挙無効判決」だったことから、大きな波紋を呼びました。
 各新聞も1面トップで扱い、社説などで政治に対して早急な格差是正を求めたのは当然のことですが、毎日新聞社説が衆院選の結果、誕生した安倍晋三政権の正当性にまで疑問を呈したのは、「政治的意図」を感じざるをえないのでいかがなものかと思います。
 広島高裁の判決は昨年12月の衆院選の「1票の格差」が最大で2・43倍だったことについて、「選挙権の制約、民主的政治過程のゆがみの程度は重大で、憲法上、許されるべきではない。最高裁の違憲審査権も軽視されており、選挙は無効と断ぜざるを得ない」というものでした。そのうえで、無効を猶予する期間について「無効を1年以上放置するのは適切ではない」などとして、今年11月26日までとしました。
 これについて、毎日新聞は26日付朝刊の社説で、「警告を超えた重い判断」との見出しを掲げ、「憲法が要請する投票価値の平等に基づいて実施されなかった選挙で選ばれた衆院議員に正当性はない」とし、「最高裁で無効判決が確定すれば、訴訟対象の衆院議員は失職する。失職議員が関与して成立した法律は有効なのか。そんな疑問も沸く」と指摘しました。
 「安倍政権」という文言は使っていませんが、事実上は「安倍政権が今後成立させる法律は有効なのか」、つまり「安倍政権に正当性はあるのか」と言っているのに等しいわけです。
 ひとつの高裁の判決をもって、最高裁で判決が確定してもいない段階で、政権の正当性にまで踏み込んで言及するのは、新聞の社説として議論が飛躍しすぎており、適切と言えるでしょうか。毎日新聞は安倍政権がお嫌いなのかもしれませんが、今回の衆院選無効判決を利用して、安倍政権にダメージを与えようという政治的思惑を感じざるをえません。
 そもそも、今回の無効判決については、法律の専門家らから「裁判所はこの種の行政訴訟では本来、謙抑(けんよく)的であるべきで、あまり判断を振りかざさない方がいい」(土本武司筑波大名誉教授)などと疑問の声が出ています。国政選挙の無効を求める訴訟では、違憲でも公益に重大な障害が生じる事情がある場合に無効を回避できる「事情判決の法理」を適用するのが通例だからです。
 それから外れてまで、広島高裁が無効判決に踏み込んだのは、1票の格差是正に向けて国会は早急に取り組むべきだとの極めて強いメッセージを発したものだと受け止めるのが、現段階では適切でしょう。
 裁判所というところは、純粋に法律的判断をしていると思われている方が多いと思いますが、実はそうではないケースもあるのが実態です。
 私は地方支局在任中にある注目裁判の判決を言い渡した裁判長と、酒を酌み交わしながら懇談したことがあります。私は判決に備えて過去の判例を調べたり、法律の専門家らに取材したりしたのですが、その結果、原告敗訴の可能性が極めて高いと思っていました。ところが、判決は原告勝訴という異例のものだったのです。
 私はその裁判長に、どうしてそのような判決になったのか、率直に聞いてみました。すると裁判長は「私もこういう大きな裁判で判決を出すのは最後でしょうからね。法的判断としては原告を勝たせるのは難しかったが、私は原告を救ってあげたいと思った。それでまず原告勝訴という結論を決めて、その後に判決理由を考えたんです」と明かしました。
 つまり、判決は法的判断ではなく裁判長の個人的判断によるものだったわけです。その裁判長は定年間近だったので、もしかしたら最後に異例の判決を出して名を残したいという個人的な思惑が働いた可能性もあるなと、私は思いました。今回の無効判決がそうであるかどうかは分かりませんが、判決にはそうした裁判長の個人的判断や思惑が働く場合もあるのです。
 少なくとも、今回の衆院選が無効であるかどうかの判断については、最高裁の判決を待つべきでしょう。ただ、1票の格差を早急に是正すべく、与野党各党は取り組むべきだということは間違いありません。現在、衆院の選挙制度については、1票の格差是正に加えて定数削減と選挙制度改革も絡んで、各党間の協議は難航しています。
 選挙制度改革となると、各党は少しでも自分の党に有利になるよう主張しますから、なかなかまとまりません。現在の小選挙区比例代表並立制も、宮沢喜一内閣不信任決議案が可決され衆院を解散、その結果、非自民連立の細川護煕政権が誕生するという大政変が起きてようやく導入されたという経緯があります。
 各党には党利党略を捨てて、定数削減と選挙制度改革の議論を早急に進めてほしいと思います。そうしなければ、政治は今度は裁判所からではなく、国民から「ノー」を突きつけられることでしょう。
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1票の格差:衆院選訴訟 新潟も違憲 判決無効請求は棄却−−東京高裁
 毎日新聞 2013年04月12日 東京朝刊
 小選挙区間の「1票の格差」が最大2・43倍だった昨年12月の衆院選を巡り、新潟市の男性が新潟1区の選挙無効を求めた訴訟の判決で、東京高裁(設楽(したら)隆一裁判長)は11日、区割りを「違憲」と判断した。無効とした場合の影響の大きさを考慮して選挙自体は有効とし、請求は棄却した。
 判決は、昨年11月の法改正に伴う小選挙区の「0増5減」について「最大格差が2倍未満になる必要最小限の改定にとどまる」と批判し、「従来の定数配分の修正にとどまらない幅広い見直しが必要だ」と抜本的な格差是正を求めた。
 また、1票の格差が最大2・30倍だった09年衆院選の区割りを「違憲状態」と判断した最高裁判決(11年3月)から1年9カ月経過していたことに触れ、「昨年の衆院選までに最高裁判決の趣旨にのっとった区割り是正は十分可能だった」と指摘した。
 昨年の衆院選を巡っては、二つの弁護士グループが全国14の高裁・支部に計16件の訴訟を起こし、広島高裁と同高裁岡山支部が先月、戦後初の「違憲・無効」判決を出したほか、12件の「違憲」判決、2件の「違憲状態」判決が出ている。今回の原告男性はこれとは別に、弁護士をつけずに訴えていた。
 男性は判決後、新潟市内で記者会見し「違憲判決は当然。無効請求を棄却されたのは残念だ」と話し、上告の意向を示した。
 男性は「自分の1票が平等でないのは納得できない。誰かが声を上げねばならない」と訴えた。
 一方、新潟県選管は「判決内容をよく検討して対応したい」とコメントした。【和田武士、山本愛】
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