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本屋大賞『海賊と呼ばれた男』 作家・百田尚樹 「すごい男たちを知ってほしかった」

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【話の肖像画】作家・百田尚樹(57)すごい男たちを知ってほしかった
2013.5.20 03:09
 非常に驚いた、というのが受賞した最初の感想ですね。本屋大賞は書店の店員の方が選ぶんですが、店員の方って女性が多いんです。ぼくの硬派な作品が選ばれるかな?と思っていましたが、それでも選ばれた。東日本大震災の後、日本全体があきらめムードになっていた。そのときにこそ、日本を立ち直らせたすごい男たちのことを知ってほしい−と思って書いた。書店の方も、この作品を多くの人に届けたいと思ってくれたことがうれしいですね。
 〈出光興産の創業者、出光佐三をモデルにした小説「海賊と呼ばれた男」(講談社)が、全国の書店員が「最も売りたい本」を選ぶ2013年本屋大賞を受賞した〉
 この本は、放送作家の同業者と話していたとき、出光が国際的に孤立していたイランにタンカーを極秘派遣した「日章丸事件」のことを聞いたのがきっかけでした。ぼくだけが知らんのかとびっくりして、周りの人に聞いても、みんな知らない。そこで調べていくと、出光佐三の人生は、驚愕(きょうがく)すべき95年だったんです。
 これほどスケールの大きい人間が日本にいたのかと。生涯のどこをとっても、戦いと苦難の連続。晩年のハイライトは「日章丸事件」ですが、それよりも終戦の2日後、焼け野原の東京で社員を集め、「愚痴を言うな。愚痴は泣き言である。日本は必ず立ち上がる。ただちに建設にかかれ」と命じたことに感銘を受けました。
 一代をかけて築き上げた会社を戦争でみんな失った。それでも佐三は、一人も社員をくびにせず、自分の資産をなげうってまで会社を存続させた。当時、佐三は60歳です。当時の平均寿命や健康状態を考えたら、今なら80歳に近いほど。人生の最晩年だと思うんです。
 〈「海賊と呼ばれた男」は、終戦後、日本の石油業界のために、会社の社員全員のために、立ち上がるエピソードから始まる。出版不況の中、100万部を突破した〉
 出光佐三に触れた後、東日本大震災がありました。バラエティー番組で笑っていていいのかと悩んだこともありました。クリエーターはみな悩んだと思いますよ。でも佐三のことを調べれば調べるほど、「これは書かないといけないぞ」と思いました。
 昭和20年の日本と、震災の後の日本の姿がダブったんです。終戦後の日本はひどかった。300万人の命が失われ、住むところもなければ、工場もない。ゼロどころか、莫大(ばくだい)な賠償金を背負い、マイナスのスタートからだった。それでもわずか20年で、アメリカを除く戦勝国を追い越した。出光もすごいけれど、出光は日本の「すごい男」の象徴なんです。出光佐三と、出光興産の社員だけが努力しても、日本は立ち直らないんです。名もなき「出光佐三」が何千万人もいたからこそ、日本は立ち直った。そのすごさを知ってもらいたいんです。
 本屋大賞の授賞式で、女性の書店員の方とお話ししたんですが、みんな、登場人物を「しびれる」って言ってくれたんです。どんな困難にあってもくじけない。芯のある、非常に魅力的な男を、現代の女性は待っているんですね。(聞き手 広瀬一雄)
【プロフィル】百田尚樹 ひゃくた・なおき
 昭和31年、大阪府生まれ。大学時代は関西の人気バラエティー番組の常連出演者だったが、番組にかかわる放送作家の道に進み、関西の“お化け番組”「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)にスタート時から携わっている。平成18年に「永遠の0」で作家デビュー。ボクシングを題材にした「ボックス!」、整形美女の愛憎を描いた「モンスター」など話題作を次々と世に出し続ける。

『出光佐三 反骨の言魂』水木 楊 / 『海賊とよばれた男』百田尚樹 2013-05-10 | 読書


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