【どうなる安倍外交】情報戦で後手の日本 アジア・パラドックスにどう立ち向かう?(1)
zakzak2013.05.28
オバマ第2期政権がスタートして早々、日本から安倍晋三首相が2月22日にワシントンを訪れ、「ジャパン・イズ・バック!」と日米同盟強化を訴えると、対抗するように、韓国の朴槿恵大統領が今月7日に訪米した。
日本は尖閣諸島をめぐる中国の脅威から、韓国は北朝鮮の脅威から米国を必要とする。一方、韓国は将来を見据えて「米中韓の連携」(ジャパン・アウト=日本外し、チャイナ・イン=中国接近)を模索する。アジアでのパワー・ゲームの幕開けである。
背景には、米中両国の力が拮抗する「パワー・パラドックス」時代が間近に迫っていることがある。こうした時代を予感する米中間には、紛争を回避する「戦略的抑制」のメカニズムが働く。米中はお互いに戦略的脅威を相殺する以上の協調関係を見いだす。
同時に、米国では連邦予算の強制的な歳出削減が発動され、軍事費削減が決定的となった。オバマ第2期政権は、対中宥和政策へと舵を切ると同時に、複雑なバランス・ゲームを展開する。米国は日米韓の連携を模索するが、中国はその連携にくさびを打ち込もうとする。そして、6月初旬に習近平国家主席が米国を訪問する。
日米間には「同盟のジレンマ」がつきまとう。
米国は経済的相互依存が深化する中国に宥和政策を追求したい半面、日米同盟の信頼性維持につとめねばならない。結果、尖閣諸島をめぐる日中間の紛争に「巻き込まれる」ことを最大に恐れる。従って、オバマ政権は中国との紛争回避のために軍事的バランスをとり、日中両国に紛争が起こらないよう両国政府に政治的・軍事的メッセージを送る。
日本では、米国から「捨てられる危機」を感じ、自助努力(=自国防衛)を余儀なくされる。米国の拡大抑止が期待できない以上、防衛費増強、憲法改正、対地攻撃能力確保が必要となる。
米国では、安倍首相に対する風当たりが強い。米各紙は「安倍の歴史認識の間違い」(ワシントン・ポスト、4月26日)、「日本の不必要なナショナリズム」(ニューヨーク・タイムズ、同月23日)、「総理の戦争時代パッションへのこだわり」(ウォールストリート・ジャーナル、同月25日)、「精査された安倍の国粋主義」(フィナンシャル・タイムズ、同月28日)などと、安倍政権の右傾化を一斉に非難した。
日本は慰安婦問題で韓国と、尖閣諸島で中国と事を構えれば構えるほど孤立化する。
現在、日本は中韓両国からの情報戦における「戦略的劣勢」に立たされている。これを挽回せねば安倍政権の将来はない。
<筆者プロフィール>
川上高司(かわかみ・たかし)
1955年、熊本県生まれ。拓殖大学海外事情研究所所長。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。著書に、「米軍の前方展開と日米同盟」(同文舘出版)、「アメリカ世界を読む−歴史を作ったオバマ」(創成社)など。
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【どうなる安倍外交】情報戦で後手の日本 アジア・パラドックスにどう立ち向かう?(1) 川上高司
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