山口5人殺害:中学の同級生「あの優しかった男がなぜ」
毎日新聞 2013年07月29日 13時43分(最終更新 07月29日 14時32分)
「あの優しかった男がなぜ」−−。山口県周南市の5人連続殺害・放火事件で、殺人、非現住建造物等放火容疑で逮捕された保見光成(ほみ・こうせい)容疑者(63)と中学3年で同じクラスだった男性会社員(63)は、戸惑いの言葉を口にした。事件の残虐さと、保見容疑者の当時の印象が重ならないという。
会社員によると、クラスに21人いた男子の中で、身長が175センチを超えていた保見容疑者は最も背が高かった。当時135センチ前後だった会社員が同級生から背の低さをからかわれた時、保見容疑者は「何しとるんか」と割って入り、助けてくれたという。「僕のことを『マメ』と呼んで優しくしてくれた」
ただ、保見容疑者は1年時はバレーボール部に所属したものの2、3年時は部活動をしていない。勉強は好きではなく、生徒会活動もしていなかった。保見容疑者の自宅は中学校から約7キロ離れた山間部の集落にあり、当時は運行していた路線バスで通学していたという。
会社員によると、保見容疑者は中学卒業後、地元を出て左官の仕事に就いた。高度成長期で、職人の左官は日当の高さからあこがれの仕事だったという。会社員は自動車整備工をしていたが、19歳ぐらいの頃、関東にいた保見容疑者から写真2枚を添えた手紙をもらった。写真には街中で自然体で立つ保見容疑者が写っていた。「おしゃれだなと思った。僕のことを覚えてくれているとうれしくなった」
最後に会ったのは、保見容疑者が地元にUターンする前後の十数年前。「おい、飲もうや」と電話があり、2人で周南市内のすし屋と居酒屋をはしごした。保見容疑者は関東弁になっていたが「おやじの調子が悪いから家を直さないと」と話すなど、変わっていなかったという。
保見容疑者が山口地検に送られた27日。丸顔になり、髪の毛が薄くなった姿がテレビで流れた。「彼の気持ちがどう変わったのか私も知りたい。唯一の救いは彼が自殺しなかったこと。洗いざらい話してほしい」。会社員は祈るように語った。【内田久光】
*上記事の著作権は[毎日新聞]に帰属します
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◇ 「山口 周南 連続殺人・放火事件」 保見光成容疑者 被害者の名を示しながら動機に関する供述 2013-07-31 | 社会
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「いたずらされる」周辺住民に不満漏らす 周南連続殺人放火
スポニチ アネックス2013年7月30日 06:00
山口県周南市の連続殺人放火事件で、殺人容疑などで逮捕された保見光成容疑者(63)が「(自宅や車を)いたずらされる」と話し、周辺の住民への不満を漏らしていたことが29日、知人の男性(53)への取材で分かった。
保見容疑者は、殺害された5人のうちの1人で隣に住む山本ミヤ子さん(79)の家に向け、実際には写らない偽装型の防犯用カメラを設置していたことも既に判明。
周南署捜査本部は、保見容疑者が周辺住民とトラブルを重ね、警戒心や不満を強めていった結果、事件につながった可能性もあるとみて、動機の解明を進めている。
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山口・周南の殺人放火:容疑者逮捕 雨の中、下着姿で観念 獣道、疲れた様子 機動隊員の前で座り込む
毎日新聞 2013年07月27日 西部朝刊
*7、8年前に父亡くし“奇行”
山口県周南市金峰(みたけ)の住民5人が殺害された連続殺人・放火事件の容疑者は、現場から約1キロ離れた山中に下着姿で身を潜めていた。事件発生から6日目、降りしきる雨の中、保見光成(ほみこうせい)容疑者(63)は近づく県警機動隊員に、観念したように座り込んだという。不安な夜を過ごしてきた住民は、容疑者逮捕の一報に「静かな夜が戻る」と安堵(あんど)した。
「保見さんですか」。獣道の脇に立っていた保見容疑者は機動隊員の問いかけに「そうです」と疲れ切った様子で答えたという。山本ミヤ子さん(79)に対する殺人、非現住建造物等放火容疑のほか、他の4人殺害についても大筋で認めているといわれる保見容疑者。事件の背後に何があったのか。
近所の住民らによると、保見容疑者は事件現場の金峰地区郷集落の出身。約7キロ離れた周南市立鹿野中を卒業後に地元を出た。
成人後の保見容疑者には、トラブル話がつきまとう。1996年ごろまで10年ほど、川崎市多摩区のアパートで暮らし左官の仕事をしていたという。保見容疑者と同じ駐車場を利用していた近所の男性(67)は、車に関するトラブルで保見容疑者にひどく怒られたのを覚えている。アパートの住民とのいさかいも多かったといい「息子も投げ飛ばされたことがあると言っていた」と話した。
父親の介護で古里に戻ったころは、トラブルはなかった。介護を手伝っていた元ホームヘルパーの女性(65)によるとむしろ「いつもありがとうございます」と丁寧にあいさつし、献身的だった。父親が飲みやすいようにペットボトルを加工し「こんなの作りました」とうれしそうに見せたこともあった。
だが、7、8年前に父親が亡くなって以降、評価は変わる。「目つきが変わり、近寄りがたくなった」。自宅に上半身だけのマネキンを置くなどの“奇行”が目立つようになり、女性は「なんかおかしいねとみんな思っていた」と明かす。
このころから、保見容疑者の飼い犬などを巡る住民とのトラブルが目立ち始めた。同級生の男性は「川崎から帰ってきて2年くらいは一緒に飲んだりしていたが、向こうから段々離れていった」と話す。2003年には、今回の事件で殺害された被害者の一人が酒席で保見容疑者を刃物で刺したこともあった。
親を亡くし、集落で孤立を深めたのか。ある捜査関係者は「住民とのトラブルがあったことは聞いているが、それでこんな事件を起こすのか」と首をかしげた。【尾垣和幸、高橋直純、蒲原明佳】
*「狭い地域で孤立か」 トラブル解消へ支援必要−−専門家分析
逮捕された保見光成容疑者は8世帯しかない狭い集落で以前から住民と度々トラブルを起こしていた。専門家は閉ざされた土地だからこそ人間関係がこじれて孤立しやすくなると分析。今回の事件を機に行政によるトラブル解消の支援が必要と指摘した。
精神科医の香山リカさんによると、近年、親の介護などでやむなく都会からUターンして地方で暮らす人の中には、閉ざされた地域になじめず1人で悩みを深める事例が多いという。今回の事件についても「周囲に溶け込めず、再び都会に戻るには高齢で、心理的に追い詰められた末に、他者を巻き込む形で衝動を爆発させたのでは」と語る。
関西国際大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は「都市部の放火は希薄な人間関係から募らせた社会への不満が動機となる場合が多い。それに対して今回の事件は、狭い集落における人間関係のあつれきが動機につながった『田舎型放火』の可能性が高い」と語る。その上で、頭を複数回殴った後さらに放火するという残虐な殺害方法に着目して「被害者に強い怒りを抱いていたのでは」と推測する。
ジャーナリストの大谷昭宏さんも「過疎地の集落には逃げ場がなく、不満もマグマのようにたまりやすい」と述べ、「今回の事件を機に福祉的な支援以外に、事件になる前にトラブルを解決する行政サポーターなどの必要性を考えるべきではないか」と提言する。
事件から容疑者確保まで5日かかったことについて「逃げているという前提で、山口県警は住民の不安を考えて容疑者の捜索にもっと大量に人を割くべきだった」と述べた。【関谷俊介、青木絵美】
*「全容解明進める」−−山口県警
山口県警の岡野時夫刑事部長と伊藤正恭・周南署長は保見容疑者の逮捕から約1時間後、周南署で記者会見した。岡野部長は冒頭「まれにみる残忍かつ凶悪な事件で、今後、全容解明を進める」と話し、伊藤署長は保見容疑者が山本さん殺害以外の事件についても「『私がやりました』とおおむね認めている」と説明した。
一方、伊藤署長は保見容疑者の動機については「まだ話していない」、逮捕まで5日の保見容疑者の行動については「今後調べる」と一切触れなかった。
今回の事件で県警は、21日夜の火災で焼け跡から3人の遺体を見つけた後、緊急配備(約3時間後解除)を敷き、集落内を巡視した。しかし、河村聡子さん(73)は少なくとも火災から約2時間以上経過した後に襲撃されたとみられており、被害は拡大した。この点について伊藤署長は「亡くなった方々には非常に心苦しいと思っているが、警察活動に関してはきちっとやったと考えている」と答えた。
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