Quantcast
Channel: 午後のアダージォ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 10100

原子力半島 本州最北端の大間 「原発をやめるなら黙っちゃいねぇ」

$
0
0

原発で波高まる津軽海峡夏景色(上) 「原発をやめるなら黙っちゃいねぇ」
 川井 龍介
JBpress2011.08.16(火)
 本州最北端の町、大間。青森県下北半島の突端にあるこの地名は、「大間のマグロ」としてその名が知られている。何百キロというマグロの一本釣りの男らしい漁の様はテレビでもしばしば取り上げられ、ドラマの舞台にもなっている。
*イメージとは遠く漁業の不振にあえぐ町
 いまではすっかりマグロの町、漁師の町というイメージが強く、一般には豊富な海産物に恵まれた土地だと思われている大間だが、全体として見れば漁業は決して順風満帆とは言えず、漁業者と漁業で支えられてきた町は、他の過疎地と同様将来への不安と開発願望を抱えてきた。
 それが形となって現れたのが、電源開発株式会社(Jパワー)が造る大間原子力発電所だ。
 静かな海沿いの土地、約130万平方メートルのなかに、日本で初めてウランとプルトニウムの混合酸化物燃料(MOX燃料)を利用するという、改良型沸騰水型軽水炉を使ったこの原発は、2008年5月に着工し、2014年11月の運転開始を目指して建設工事が進められてきた。
 「マグロに原発は似合わない」と、直感的に思う人もいるだろう。地元でも当初から反対はあった。
 しかし町や県の後押しもあって漁業者もこれを受け入れ、1基の建設が進み、町のなかには“経済効果”をあてこみ2基目も誘致したらどうだろうという声さえ出てきた。しかし、「3.11」の福島原発の事故で事態は一変、工事は中止となった。
*町議会からは工事再開を求める声が
 4月の時点でJパワーでは「現在、地震の影響により建設工事の実施にさまざまな制約が生じたことなどから、保安・保全に係る工事などを除き、本体工事については休止しています」と、アナウンスしている。
 しかし、地元大間では「なんとか早く工事を再開させてほしい」という声が町議会などからいち早く出ている。
 全国的には事の重大性に鑑みれば、稼働中の原発の停止だけでなく工事中の原発についても中断ないしは撤回といった決断を国も電力会社も自治体もとるべきだという世論が高まっている。
 つまり工事中止は当然のことと受け止められており、休止による雇用の不安などの問題は理解できるとしても、もう少し慎重に考えるべきではないかというのが外部の見方だ。
 特に、今回の事故による放射線の被害者からは、「いったい何を考えているんだ」という意見があるのは当然だろう。おそらく東京をはじめ都市部で暮らす人たちも大半がそう考えるのではないだろうか。
 では、実際現地はいったいどうなっているのか、原発についてどういう空気が流れているのか。福島の事故後、原発が単に一地方の問題ではないことを思い知ったいま、津軽海峡に突き出た海の町、大間とその海峡を挟んだ対岸の都市、函館市を訪ねてみた。
*決して誇張ではない「原子力半島」の異名
 まさかりにその形をよく喩えられる青森県下北半島。立てたまさかりの柄の部分に相当する位置には六ヶ所村の核燃料施設があり、そこから北へ上がった東通村には東北電力の原子力発電所1号機があり、同2号機と東京電力の1、2号機が計画されている。
 ここからさらに北へ上がり、まさかりの刃の付け根にあたるむつ市には使用済み核燃料中間貯蔵施設が建設中だ。
 原子力半島とも言われるこの半島で、まさかりで言えば刃先にあたる部分が大間町だ。東京から行くには、三沢空港へ飛びそこから車で3時間半以上、青森空港からは少なくとも4時間半はかかる。
 野辺地駅から始まるJR大湊線を利用する手もあるが下北駅からさらに車で1時間はかかる。私は青森市内から車で約4時間をかけて大間に入った。
 人口6286人、面積52.06平方キロ(7月31日現在)。半島の突端に位置する町の中でも一段と津軽海峡に突き出た大間崎には「本州最北端の地」と書かれた石碑がある。ヨーロッパ大陸の最西端ポルトガルのロカ岬と同じく、“最端”というのはそれだけで売り物になるようだ。
 周辺にはマグロをはじめとした海産物の土産物屋や食堂が軒を連ねる。ここから海岸沿いを南西に下ると函館へのフェリー乗り場があり、さらに国道を進むと右手の海沿いの小高い地に、建設中の大間原発が現れる。
*最盛期に5億〜6億円あったコンブ漁は数千万円に激減
 これを見過ごして海に出て、奥戸(おこっぺ)という漁港の近くに出ると、右手に巨大な体育館といった威容を誇る原発の建屋がよく見える。周辺には巨大なクレーンが立ち上がり、取水口は堤防より長く海に突き出している。
 「昔は、よくあのあたりの海岸で遊んだり、コンブをとっては干したりしていたもんだ」と、地元で育った老婦人が懐かしそうに言う。
 そのコンブは、長年不漁が続き、漁業関係者によれば、10〜20年前は年間5億〜6億円の漁獲があったのがこのところは数千万円に落ち込んでいるという。温暖化が原因かとも思われるがはっきりしたところは分からない。
 一方、マグロ漁は一昨年、昨年と好調に推移している。大分の関サバ、関アジのように、ブランド化して管理したのも功を奏している。いわば大間の看板でもあるマグロだけに、今回の原発事故に関連して、回遊魚であるマグロが放射線に汚染されていないかどうかについても検査するなど神経質になっている。
 また、大間牛という肉牛をブランド化して育てることにも力を入れている。いずれにしても、マグロをはじめウニ、イカ、タコ、ヒラメなどの海産物や農産物、そして観光は町を支える重要な資源である。
*原発のことを話したがらない町民
 それだけに、万一原発が事故を起こした場合を考えると、福島の例を見れば分かるように取り返しのつかない事態に陥ることは想像ができる。しかし、だからといって原発建設を白紙に戻したらどうかという意見は、一部を除いて表に出ていないようだ。
 原発のことについては、町でも積極的に話をする空気がないのは短い滞在でも分かる。
 それは、原発の安全性への危惧を感じながらも、建設に伴って得た漁業補償などによる生計をはじめ、これもまた建設に伴う交付金や税収、加えて就業機会やサービス業の安定をいまさら犠牲にはできないという気持ちの表れだろう。
 匿名を条件に、ある有力な漁業関係者が語ってくれた。
 「福島の原発事故を見て、恐いということは感じるが、みんなのなかではどこかお茶飲み話みたいなもので・・・。電源開発の人と最近でも飲み食いしたけれど、津波に対しては安全対策がなされているというし・・・。原発は大丈夫だと言うから、これからの町の可能性にかけて誘致したんだ。これが中止というなら(町民は)黙っていないと思うよ」
 こう語った後に、「でも、もし原発以外のもので、町が豊かになるなら、原発は誘致しないでしょう?」と尋ねると、「そりゃそうだ。原発は恐いもんだよ。でも・・・」と、複雑な胸の内を明らかにした。
*国策だと信じて地元に戻ってきたのに・・・
 夫が原発の関連事業で働いているある中年の女性は、原発の安全性については不安を持ちながらも、建設を中止すべきだという意見には反発を覚える。
 「国策として原発を造るからということで、誘われて故郷の大間に帰ってきて仕事に就いたのに、ここで建設をやめるというのなら、これまでかけた分の時間を返してと言いたい。私たちは都会の人のために電源を造っているのに・・・」
 同じような話をどこかで聞いたような気がしたと思ったら、群馬県の八ッ場ダムの建設地を昨年取材した際に聞いた地元の人の声だった。
 また、大間在住の中年女性は、漁師町である大間の気風として「もう補償金もらってしまったら何にも言えないし、しょうがないっていう気持ちがあるようです。でも海を売ったことを嘆いている人もいます」と話す。
 これに対して津軽海峡の対岸のまち函館では、大間の動きにどう反応しているのだろうか。
(つづく)

川井 龍介 Ryusuke Kawai
 ジャーナリスト
 慶應大学卒。新聞記者などを経て独立。ノンフィクションを中心に著書多数。代表作に「『十九の春』を探して」(講談社)、「122対0の青春」(講談社文庫)。近著に「社会を生きるための教科書」(岩波ジュニア新書)。サンデー毎日で音楽コラム「Music Cafe」を連載中
=========================
原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 | 地震/原発
 

中日新聞【特報】2011/4/27Wed.
原発の「ごみ」行き場なく 使用済み核燃料の行方は 中間処理施設 建設中も
 福島第1原発の事故では、発電を終えた核燃料が敷地内に置かれている危険性を知った。使用済み核燃料は青森県六ヶ所村の再処理工場の貯蔵施設で受け入れているが満杯に近く、各原発内の貯蔵プールなども余裕がなくなりつつある。一方、この燃料を再びエネルギー源として使う核燃料リサイクルは実現していない。同じ下北半島に建設中の中間貯蔵施設の現場を歩き、原子力政策の限度を考えた。(篠ケ瀬祐司、小国智裕)
 まだ肌寒く、フキノトウが顔を出し始めた青森県むつ市関根。使用済み核燃料をいったん貯蔵する中間施設の建設現場付近からは、津軽海峡を挟んで、うっすらと北海道函館市が見える。
 昨年8月に着工され、貯蔵建屋は基礎を終え床部分を造る段階だ。大震災で資材は被災地に優先されて本体工事は中断するが、来年7月の稼動開始目標は変わらない。
 貯蔵能力は三千?。最終的に建屋はもう1棟造られ、最大で計五千?を貯蔵する予定だ。同施設を造るのは「リサイクル燃料貯蔵株式会社」で、東京電力と日本原子力発電が出資している。

・最長50年保管
 使用済み核燃料は、まず発電所内のプールで冷やされる。それから六ヶ所村の再処理工場に送るまでの間、キャスクと呼ばれる金属製容器に入れて、空冷式のこの貯蔵建屋内に保管される。
「中間」とはいえ期間は最長50年間。再処理が滞り、使用済み核燃料がたまり続けたり永久貯蔵化したりしないか。
 リサイクル燃料貯蔵社の江村公夫広報渉外部長は「年限や容量などは地元との約束だ」と、予定量や期間以上の貯蔵はないと断言する。
 同施設から海まで5百?と近いが、周囲に防潮堤は見当たらない。江村氏は「東電の自社評価では、6、3?の津波発生可能性を想定。施設は海抜20?の場所にあり、防潮堤は必要ない。キャスクは(固定の台から)転落したり、水没したりしても耐えられる」と安全性を強調する。
・背景に交付金
 施設はむつ市が誘致した。2000年6月の法改正で、原発敷地外でも使用済み核燃料を貯蔵できるようになった。5ヵ月後、当時の杉山粛(まさし)市長(故人)が東電に対し、市内に立地可能かの調査を依頼。OKが出ると杉山氏は03年の市議会で誘致を正式に表明した。
 誘致の背景は、見込まれる巨額の交付金や固定資産税だ。市は破綻寸前で02年度の財政規模が約90億円に達し、累積赤字は約14億円。杉山氏は「財政確保を模索する中で、誘致する考えに至った」と議会で述べた。
 財政的な効果はすぐ表れた。03年度に市に入った初期対策交付金は約9億7千万円。10年度決算では、原発関連で約22億3千万円の交付金を受けている。
 市は09年にショッピングセンターを改修して現市庁舎に移った。費用総額約27億円のうち13億円以上が東電と日本原電の寄付だった。
 下北半島は今、隣の東通村で東通原発、大間町で大間原発が1基ずつ建設中で「核半島」とも呼ばれている。誘致する背景はいずれも同じだ。 

再処理工場各原発内プール 容量はほぼ満杯

・「福島の事故後 不安に」青森・むつ市民
 中間貯蔵施設をむつ市民はどうみているか。
 会社員男性(56)は「地元には特別な産業がない。誘致でカネを引っ張ってくるのは苦渋の選択では」と、誘致に理解を示す。年配の男性も「息子が東北電力の東通原発で働いている。ここらでは自衛隊か原発関連の仕事しか働き口がない」と、施設の建設はやむを得ないとの立場だ。
 福島の事故後に考えが変わったという住民もいる。ある商店主は「実は中間貯蔵とはどんなものかよく知らなかった。福島の事故をみて不安になった」と漏らす。
 誘致・建設に反対してきた「核の中間貯蔵施設はいらない! 下北の会」の野坂庸子代表は「施設の核燃料を50年後にどうするかについて、事業者は『40年目までに協議する』と言っている。それは子どもたちにツケを回すことではないか」と不信感を募らせている。
 原発の使用済み核燃料の行方はどうなっているのか。ウラン燃料は3〜4年燃やした後に、使用済み核燃料が残る。その燃え残りのウランや新たに生成されたプルトニウムを再処理し、燃料として原発で再利用するのが「核燃料サイクル」。輸入に頼るウランを有効利用できる上に、核の「ごみ」を大幅に減らせるというメリットがある。
 その拠点が日本原燃の再処理工場だ。使用済み核燃料は3年かけて百度以下に冷まして、剪断や溶解、精製してプルトニウムを取り出す。それをウランと混ぜて「MOX燃料」に加工し、既存の原発で燃やすのがプルサーマル発電だ。現在は海外で製造されたMOX燃料が使われている。
 ところが、この再処理工場はいまだに稼動していない。1997年の運転開始予定だったが、相次ぐトラブルから延期され、現在は12年10月の運転開始を目指す。
 原発54基から出る使用済み核燃料は、使用前のウランの重さで年間約1千?。再処理工場の貯蔵施設受け入れ容量は3千?なのに対し、既に約2827トンが運び込まれて満杯に近い。
 日本原燃は「試験工程の組み直しなども考えながら進めていく必要があるかもしれないが、現時点では、予定通り竣工へ向けて取り組んでいきたい」と説明する。
 再処理工場が稼動しても処理能力は8百?で、2百?程度が毎年残ってしまう。一方、各原発の総貯蔵量は昨年9月現在で約1万3千5百20トンに及ぶ。福島第1原発の場合、共用プールや各原子炉建屋の容量2千百トンに対し、千8百20トンが入れられていた。
 貯蔵能力使用率を見ると、東電の原発を上位に、その他もあと数年で容量を超えてしまう。貯蔵場所がなければ、ウラン燃料を取り換える事ができず原発は稼動できなくなる恐れもある。
 問題はこれだけではない。再処理した後に残る核分裂生成物など高レベル放射能廃棄物の最終処分についてはめどさえ立っていない。液体は特殊なガラスで固め、ステンレス容器に封じ込めて30〜50年かけて冷やした後、地下約3百?の深さに埋める。だが、最終処分場の建設場所はまったく決まっていない。
 フランスや英国に再処理を依頼してきたが、今や自国内処理が原則。最終処分場が必要なことは原発の稼動当初から分かりながらも見切り発車した。原発が「トイレのないマンション」といわれるゆえんだ。原発の是非については、安全性はもちろんだが、最終処分問題も国民的議論を行うときが来ている。
----------------------
巨額税金で後押し【原子力予算】/原発支える埋蔵金/原発マネー 「地元対策費」 霊柩車など“麻薬”2011-08-15 | 地震/原発 
「原子力」天下り 結ぶ 「原子力村」霞が関一帯に密集2011-07-16 | 地震/原発


Viewing all articles
Browse latest Browse all 10100

Trending Articles