安倍首相独占インタビュー「日本は揺るぎない信用・信頼がある」
zakzak 2014.05.07
安倍晋三首相が、夕刊フジの独占インタビューに応じた。政権奪還から1年4カ月、アベノミクスは2年目に突入し、消費税増税という試練を乗り越えて、景気を成長軌道に乗せることが期待されている。一方で、アジア太平洋地域で軍事的野心を見せる中国の動きは看過できない。安倍首相は、オバマ米大統領との「すし会談」の秘話から、日本を貶める「ディスカウント・ジャパン」運動と対峙する決意、サッカーW杯ブラジル大会への期待、自宅や公邸での知られざる気分転換など、一気に語った。
──オバマ大統領来日の成果は
「アジアでは現在、安全保障上の変化がある。中国が軍事的かつ経済的に台頭し、東シナ海や南シナ海で『力による現状変更』を試みている。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国も懸念している。私とオバマ大統領は、日米同盟は、アジア太平洋地域の平和と安定に主導的役割を果たす。力による現状変更に反対することで完全に一致した。共同声明には、尖閣は日米安保第5条の適用対象。集団的自衛権の行使に関する日本の検討を歓迎・支持する、などと明記された。これらは画期的だ」
──中国は日米首脳会談前後、沖縄県・久米島周辺のEEZ(排他的経済水域)で無断調査をしていた
「日本は科学調査に同意を与えていない。現場海域で、海上保安庁の巡視船や航空機から中止要求を行っている。また、外交ルートでも、中国政府に対して、調査内容の説明と調査の中止を、連日強く申し入れている。主権の確保が図られるよう毅然と対応していく」
──共同声明は、国内での集団的自衛権議論に追い風になるか
「あくまで集団的自衛権の問題は、わが国の平和と安定に資するために検討している。平和と安定の基軸は日米同盟であり、同盟国である米国が『歓迎・支持』したことは、集団的自衛権に関する取り組みが日米同盟を強化していく方向だと明らかになった」
──オバマ大統領との「すし会談」は、どんな雰囲気だったのか
「基本的にオバマ大統領は仕事の話を好むタイプだが、いきなり仕事の話をしたわけではない。東京・銀座のすきやばし次郎の店内に入ると、大統領は『前から、この店に来たかったんだ』と喜んだ。店の入り口に、ミッキーマウスがすしを食べているイラストが飾ってあったので、私から『これはウォルト・ディズニーの社長が来店した後、プレゼントとして送られたもの。米国の知的財産を侵害していない』と冗談っぽく説明すると、大統領は笑っていた」
──打ち解けた様子だ
「ゴルフの話では盛り上がった。オバマ大統領が『最近、ゴルフはやっているの?』と聞くので、私は『忙しくて、あまり時間がない。首相になってスコアが落ちた』と答えた。大統領が『どれくらいで回るの? 僕はハンディキャップ15だ』といい、『私は18。ぜひ一度、日本で一緒に回ろう』と誘った。さらに大統領は『日本にいいゴルフ場はあるの?』と聞き、私は『当然、星の数ほどある』と胸を張った」
──日米首脳ゴルフ会談はありそう?
「チャンスがあればね」
──TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は継続協議となった
「アジア太平洋地域に大きな経済的枠組みができようとしている。これは市場アクセスだけでなく、ルールづくりも含めて21世紀型の新しい経済圏となる。これを『自由民主主義』『基本的人権』という価値観を共有する日米両国がリーダーシップを持って進めていくのは、国家百年の計だ。両国だけでなく、この地域にも大きな利益をもたらす。オバマ大統領とは、この点でも一致した」
──なるほど
「そういえば、オバマ大統領が『羽田空港から、すきやばし次郎に来る間に、フォードやGMの車を見なかった。こんな国は他にない』と言うので、私は『そんなことはない。BMWやベンツはたくさんある』といい、日本が決して閉鎖的ではないと説明した」
──合意までもう少しか
「外交交渉で合意するには、妥結に向けた道筋をつくっていくことが難しい。日米両国は今回、道筋をつけることに成功した」
──オランダ・ハーグでの日米韓首脳会談で、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領との距離は縮まったか
「人間同士の信頼関係は、まず会って、共通の課題について話すところからスタートする。現在、北東アジアには北朝鮮という危機がある。私と朴大統領は『これは日米韓3カ国が協力すべき課題であり、この危機を乗り越えるのは国家リーダーの責務だ』という認識を共有できた。その意味で、オバマ大統領の配慮で、日米韓首脳会談が開けてよかった」
──日本と日本人を貶める、他国の「ディスカウント・ジャパン運動」には、どう対峙する
「事実に基づかない不当な批判には、適切な申し入れを行うことが大切であり、現に行っている。日本人はもっと自信を持っていい。先日、ASEANの国々の意識調査を行ったところ、日本は『一番信頼できる国』に復帰をした。EUでも『信頼できる国』としては米国に次ぐ2位だ。日本は揺るぎない信用・信頼がある」
──消費税増税の影響はどうか
「まだ、これからだと思う。幸い、4月は各企業が賃上げの決断をしてくれた。最新調査では平均約6200円と過去10年間で最も高い。加えて、5・5兆円の経済対策や、1兆円の税制対策が効果を上げている。経済の動向を注視しながら、変化があれば機敏に対応したい。デフレ脱却のチャンスを決して手離してはならない」
──6月にサッカーW杯ブラジル大会が始まる。注目の選手は
「やはり、本田圭佑選手(ACミラン)だね。あれぐらいのプレーヤーになると、海外メディアなどに厳しい批判も受けるが、気にせずに、力を発揮してもらいたい」
──決勝に残ったら、ブラジルに応援は
「東京で開催された2002年W杯決勝を観戦するため、ドイツのシュレーダー首相(当時)が緊急来日した。ザックジャパン(日本代表)が決勝に残れば、行きたいね。遠いけど…(笑)」
──2020年東京五輪に向けて、若いアスリートが活躍している。女子ゴルフKKT杯バンテリンレディスでは、15歳のアマチュア、勝みなみ選手(鹿児島高1年)が、国内ツアー最年少で優勝した
「層が厚い女子ゴルフで勝つのはすごい。将来が楽しみな選手だ。プレー中におにぎりを食べていたけど、バナナではなくおにぎりというあたりが、ほほえましいね。『祖父にゴルフを教えてもらった』というエピソードもいい。東京五輪まで6年ある。こうした若い世代に目標ができて、気持ちが刺激されることは素晴らしい」
──GW中に読みたい本は
「浅田次郎氏の時代ミステリー『黒書院の六兵衛』かな。まだ、読み始めたばかりだよ」
──どんな音楽が好きなのか
「最近はリラックスするため、クラシックが多くなった。シューベルトとか、ハイドンとか。自宅で本を読んだり、書類を整理するときに聴くね。あと公邸のマッサージチェアに座るときは聴いている。目をつぶると眠くなっていい」
──公邸にマッサージチェアがあるのか
「第1次安倍内閣のときはなかったんだけど、脚部マッサージ機能付きのいい機種があるんだ。(5人の元・前首相の)誰かが置いていったんだろうね…」
──GW中も欧州歴訪など多忙だが、もし1週間、休みがあったら何をしたい?
「ボーッとしたいね。本でも読んでいたい。あとゴルフ。次の公務に備えて、リフレッシュしたい」
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