美味しんぼ描写に福島被災者「鼻血、聞いたことない」「偏見の助長心配」
産経ニュース 2014.5.12 21:33
福島県内外で暮らす被災者や、実際に被災者の相談を受ける医師らからも批判の声が上がった。
「ストレスで血圧が上がることはあったが鼻血が出たことはない。周囲でもそんな話は聞かない」と話すのは、福島県田村市都路町で酒店を営んでいた遠藤テル子さん(69)。原発から半径30キロ圏内にある店舗兼自宅は除染が昨年11月に終わり、ようやく住めるようになった。「住民が戻らず仕事が成り立たないから帰れない人も多い。責任ある立場の人には、故郷に住めないとか住んではいけないとか簡単に言ってほしくない」という。
福島県南相馬市から東京都江東区の東雲(しののめ)住宅に避難している主婦の高井由比子さん(44)は「影響力のある雑誌で、医学的根拠のないことを言うことの影響を考えてほしい。発信力のある人だからこそ言葉を選んでほしかった」とため息をつく。
原発事故直後には新潟、千葉、大阪の避難所を転々とした。「子供はもちろん、大人でも福島出身と打ち明けるのに勇気がいる。いろいろな考えや意見の人がいてもかまわないが、今回の件で福島県や出身者への偏見が助長されることにならないか心配だ」
被災者の内部被曝調査を行い、被災者や子供への影響を不安視する母親らの相談に乗っている南相馬市立総合病院の非常勤医師、坪倉正治医師も「ストレスによりめまいが増えたとの話を聞くことはあるが、鼻血で搬送された患者の話は聞いたことがない」という。
「(原発事故から)3年たっても急性放射線障害についての誤った認識が議論になることに驚いている」という坪倉医師は、「これでは5年たっても10年たっても状況は同じではないか」と語った。
東京電力によると、福島第1原発では現在、1日3000人から4000人の作業員が、被曝管理を徹底した上で高線量下の収束作業に当たっている。夏場などには、作業員に熱中症などの体調不良が多発するが、東電によると、被曝によって鼻血が出るといった体調不良について、福島第1原発に常駐する医師らからは報告されていないという。
福島第1原発で勤務したことのある作業員は「収束作業の現場を必要以上に不安視されてしまうことが残念でならない」と話した。
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〈来栖の独白〉
中日新聞などは(朝日新聞も)、もっと激しく、継続して、根拠のない不安を煽ってきた。
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「美味しんぼ」 風評助長する非科学的な描写
讀賣新聞 社説 2014年05月13日 01時46分
あらぬ不安を煽あおる問題の多い内容である。
漫画誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の連載「美味しんぼ」が、放射性物質による健康被害の描写を巡って、物議を醸している。
12日発売の最新号と前号で、福島県双葉町の井戸川克隆前町長や福島大の荒木田岳准教授ら実在の人物を登場させ、「福島の真実」をテーマに語らせた。
主人公が、東京電力福島第一原子力発電所の現場を視察した後に鼻血を出す場面がある。井戸川氏は、「鼻血が出たり、ひどい疲労で苦しむ人が大勢いる」と述べ、被曝ひばくを原因と明言している。
荒木田氏は、「(福島県を)人が住めるようにするなんて、できない」と断じている。
いずれも科学的知見に基づかない独善的な見解である。菅官房長官が「正確な知識をしっかり伝えることが大事だ」と述べたのは、もっともだろう。
福島県では、全県民を対象とした調査により、健康影響を早期に発見する体制が整っている。これまで、放射性物質による直接の健康被害は確認されていない。
国連の専門委員会も、「住民に確定的影響は認められない」との見解を示している。
除染も、順次進んでいる。福島県によると、除染と放射性物質の自然減により、放射線量が60%以上低減した場所もある。
「美味しんぼ」の描写は、専門家が、現場や住民の調査を踏まえて蓄積してきた客観的事実をないがしろにするものと言える。
福島県では約200万人が生活し、復興を目指している。「美味しんぼ」は、これに冷水を浴びせている。県も、「県民を深く傷つけ、風評を助長するもので断固容認できない」と非難した。
「美味しんぼ」の作者、雁屋哲氏は自身のブログで、「取材をして、すくい取った真実を書くことがどうして批判されなければならないのか」と反論している。
だが、一方的な見解を拡散させることで、福島県民の不安を増幅させていいのだろうか。
小学館が雑誌の発売後、健康被害に関する県の見解を求めたことも、裏付けの甘さを物語る。
最新号には、震災がれきの処理を受け入れた大阪の住民に健康異常が出ているとの記述もあり、大阪府などが小学館に抗議した。
表現の自由は最大限尊重されるべきだが、作者や出版社には、内容についての責任が伴うことを忘れてはならない。
2014年05月13日 01時46分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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