【裁判員5年(中)】裁判員熟慮「死刑判決」をひっくり返すプロ裁判官の“論理”…「先例主義ならロボットが裁けばいい」憤る遺族
産経ニュース 2014.6.3 07:00 [注目の刑事裁判]
故郷の兵庫県稲美町を離れ、千葉県松戸市のマンションで暮らしていた荻野友花里さん=当時(21)=の運命が暗転したのは、大学卒業を5カ月後に控えた平成21年9月だった。
マンションに侵入した竪山辰美被告(53)に胸を包丁で刺されて殺害され、部屋に火を放たれた。
強盗殺人罪などで起訴された竪山被告の裁判員裁判の1審千葉地裁は23年6月、死刑を選択。事件前後に別の強盗致傷を繰り返していたことなどを重視した結果だった。だが2審東京高裁は昨年10月、死刑判決を破棄、無期懲役とした。理由は、1人殺害で計画性がない場合は死刑とされない「先例の傾向」だった。
「裁判員は被告の人間性を見極めて死刑と判断したのに、専門家が相場主義でひっくり返した」。友花里さんの母、美奈子さん(61)は憤る。
*死刑は特に慎重に
裁判員裁判の死刑判決が破棄された例は過去3件。いずれも東京高裁の同じ裁判長が担当した。うち1件の別の強盗殺人事件で裁判員を務めた女性が口にするのは戸惑いだ。
公判で弁護側は無罪を主張し、女性は「絶対判断を間違ってはいけないと万が一の可能性も精査した」というのに破棄という予想外の結論に。「思考停止というか放心状態というか…。全てがよく分からなくなった。もう封印したい」と嘆息した。
2審が先例に言及した背景には、執行すれば取り返しのつかない死刑は、特に公平性を踏まえて慎重に検討すべきだとの意識がある。最高裁司法研修所も24年7月、過去の量刑判断を尊重するよう求める研究報告を示した。プロの裁判官が長年検討を積み重ね、定着している「死刑適用基準」を重視する考えだ。
一方で「先例主義ならロボットが判断すればいい」(全国犯罪被害者の会の松村恒夫代表幹事)との批判の声が上がる。機械的な尺度で死刑を破棄すれば、国民の健全な社会常識や生活感覚を反映させるのが狙いの裁判員裁判の意義を損ないかねないのだ。
ただ、裁判員裁判で言い渡された求刑超えの量刑が上級審で見直される可能性も出てきた。大阪・寝屋川の女児虐待死事件(22年)では、1審大阪地裁は検察側の求刑の1・5倍となる懲役15年を言い渡した。2審も支持したが、最高裁は6月に結論の見直しに必要な弁論を開く。
すでに上告審に舞台を移した1審死刑破棄のケースとともに、最高裁の判断が注目される。
*「経験則」分からず
裁判員裁判の無罪判決を2審で覆され、苦悩する裁判員もいる。
覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)罪などに問われたイラン人の男に対する1審大阪地裁の裁判員裁判の無罪判決に対し、2審大阪高裁は「経験則に照らし不合理で事実誤認がある」と1審判決を破棄。最高裁は今春、2審を支持し、審理を地裁に差し戻した。
裁判員を務めた男性会社員(58)は「薬物事件はなじみがなく、状況が想像できなかった。プロが裁くべきだった」と語る。
薬物密輸事件などは直接証拠がない中で判断を迫られることがあり、裁判員裁判からの除外を求める声は根強い。検察幹部はいう。
「同種事件で積み重ねた経験則を知らない一般人に判断させるのは酷だ」
=続く
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◇ 裁判員裁判の死刑判決破棄 3例目 〈長野3人強殺・死体遺棄事件〉池田薫被告 東京高裁 村瀬均裁判長 2014-02-28 | 被害者参加/裁判員裁判/強制起訴
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◇ 千葉大生強殺 竪山辰美被告 2審は無期 裁判員の「死刑」破棄2例目/(1例目=南青山強殺 伊能和夫被告) 2013-10-08 | 被害者参加/裁判員裁判/強制起訴
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◇ 東京高裁 裁判員の死刑判決 初めて破棄 (東京・南青山)強盗殺人などの罪に問われた伊能和夫被告 2013-06-20 | 被害者参加/裁判員裁判/強制起訴
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◇ 裁判員裁判の「死刑判決」破棄 東京高裁 村瀬均裁判長 / 遺族「絶対に納得できません」 2013-10-24 | 被害者参加/裁判員裁判/強制起訴
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◇ 裁判員裁判が1審で言い渡した死刑判決を破棄して無期懲役に減刑した事案 裁判員裁判、考えさせた報道 2013-10-27 | 被害者参加/裁判員裁判/強制起訴
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◇ 裁判員裁判の死刑破棄2件 / 裁判員法=「国民の常識を裁判に反映させる」とは書いていない 2013-10-22 | 被害者参加/裁判員裁判/強制起訴
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◇ 【裁判員制度のウソ、ムリ、拙速】 大久保太郎(元東京高裁部統括判事) 『文藝春秋』2007年11月号 2008-02-14 | 被害者参加/裁判員裁判/強制起訴
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【裁判員5年(中)】死刑判決をひっくり返すプロ裁判官の論理 死刑破棄3例、全て東京高裁 村瀬均裁判長
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