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イスラム国を力でねじ伏せなければならない理由 オバマとイスラム国の戦争(その2) 黒井文太郎

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イスラム国を力でねじ伏せなければならない理由 オバマとイスラム国の戦争(その2)
 JBpress 2014.10.06(月) 黒井 文太郎 
 米軍を中心とする有志連合は、シリア北東部のイスラム国の「首都」ラッカを中心に、主要な軍事拠点を破壊。その後、イスラム国が運営していた同国東部の石油関連施設を空爆し、彼らの油田収入には大きな打撃を与えた模様だ。
 もっとも、空爆だけでは地域の支配権を奪還することはできない。空爆と同時に地上部隊の作戦も必要になる局面だが、地上作戦を担うべき反政府軍は、兵力も武器も貧弱であり、イスラム国への有効な反撃ができていない。そもそも米軍との連携もできていないようだ。
 しかも、イスラム国はすでに主要な拠点を移動し、各地域の民間人の中に紛れ込んでいるため、空爆の目標が絞られにくい状況になっている。したがって、空爆によってイスラム国はそれなりのダメージを受けてはいるが、実際には支配地域をあまり失っていない。
 それどころか、今は逆に主力部隊を送り込んで、シリア北部のトルコ国境の町アイン・アルアラブ(クルド名「コバニ」)を猛烈に攻め立てている。イスラム国がそこを奪取すると、ラッカからトルコ国境まで、完全にイスラム国が支配する回廊が確保されることになる。

        
           印が示す場所がアイン・アルアラブ。トルコとの国境に接している(Google Maps) 

目の前の激戦に神経を尖らせるトルコ
 アイン・アルアラブでは空爆と同時に、クルド人部隊が地上で応戦して激戦となっているが、イスラム国に押され気味だ。すでにイスラム国側の迫撃砲がアイン・アルアラブ中心部を襲うまで肉薄している。イスラム国の迫撃砲は、ときおり国境を越えたトルコ領にも着弾している。
 そこで戦うクルド人部隊の主力は「人民防衛隊」(YPG)だ。トルコ南部で長年トルコ政府と戦ってきた分離独立派ゲリラ「クルド労働者党」(PKK)の系列組織だが、武装レベルが低く、対イスラム国の戦闘では劣勢にあるが、すでにPKKの戦闘員が、YPGの支援のために多数現地入りしている。
 こうした事態に対し、現在、トルコが陸軍を同地域の国境エリアに展開している。トルコはもともとシリアのアサド政権とは対立していたが、有志連合のシリア軍事介入への協力には慎重で、空爆にも国内の基地使用を拒否していた。が、イスラム国が国境に迫る事態となったことで、有志連合への参加に転じた。今後、同国内の基地使用を認めるほか、自らシリア領内に越境する方針も打ち出している。
 すでに9月19日以降、トルコ領内には15万人以上の難民が新たに流入しており、大きな不安定要因になっている。同地域の不安定化はトルコの安全保障に大きな脅威になるのだ。
 だが、トルコはクルド勢力の台頭も脅威と見なしている。国内の多くのクルド人が居住するトルコは、彼らの分離独立運動を恐れており、長年にわたってPKKを弾圧してきた。つまり、トルコは「クルド難民帰還」「イスラム国のこれ以上の台頭の阻止」「クルド人部隊の台頭の阻止」という、それぞれ相反する目的を同時に進めたいのだ。
 トルコ軍をシリア側に地上展開させるプランを、トルコがどれだけ本気で考えているかは分からないが、もしもイスラム国の脅威がさらに迫るようなら、トルコは直接この地域を掌握したいと考えるかもしれない。
 アサド政権は10月3日、「トルコ軍が越境したら侵略と見なす」と警告を発したが、実際にはアサド政権にトルコ軍と対決する軍事的な余力はないだろう。今後のトルコの対応が注目される。
*反アサド勢力を攻撃することへの批判も
 このように、クルド人勢力は空爆を歓迎しているが、逆に空爆に対する批判が、クルド系以外の反体制派から出てきている。イスラム国を叩くことで、アサド政権を利しているとの不満だ。実際、アサド政権は、有志連合の空爆を事実上容認する一方で、反政府軍への攻撃を続けている。
 イスラム国は他の反体制派にとって脅威だが、アサド政権と戦っているという部分では共通している。アサド政権としては、イスラム国の進撃を米軍が抑えてくれれば、自分たちの戦力はそれ以外の反政府軍への攻撃に振り向けられる。
 オバマ政権はアサド政権との協調を一切拒否しており、アサド政権の存続も認めない旨を一貫して公言しているが、かといってアサド政権打倒に直接的に軍事介入するという方針もとっていない。オバマ大統領も9月28日に放送された米CBSテレビのインタビューで、イスラム国の脅威排除を優先させたことが、アサド政権を利する可能性があることを認めている。
 さらに状況を複雑にしているのは、米軍がイスラム国以外のイスラム過激派グループも攻撃目標としていることだ。例えば、空爆初日から米軍は「ホラーサーン」という新興グループも攻撃目標とした。ホラーサーンはアルカイダ系の外国人主体の小規模なグループで、対欧米テロを準備していたとアメリカは判断している。
 ホラーサーンはアルカイダ系の「ヌスラ戦線」に合流していたが、米軍はそのヌスラ戦線の部隊も攻撃目標としている。ヌスラ戦線はイスラム国と並ぶイスラム過激派有力組織で、イスラム国ほどではないものの、やはり海外からイスラム系の義勇兵が多数参加している。アルカイダ系のイスラム過激派ということで、アメリカは非常に警戒しているのだ。
 ただし、ヌスラ戦線は明確にアサド政権打倒を掲げており、他の反政府軍とも多くの戦線で共闘関係にある。ヌスラ戦線はシリア内戦ではイスラム国とはライバル関係にあり、今までは敵対していたが、今回の空爆を受けて両者が関係を修復する動きがすでに始まっている。
 もっとも、実際のところは、シリアの反政府軍各派の戦闘員グループは、それほど明確に組織系列が固定化しているわけではない。シリアの反政府軍には、イスラム復古主義(サラフィー)を掲げるヌスラ戦線やイスラム国の他にも、有力な組織として、欧米や湾岸産油国政府に近い「自由シリア軍」、自由シリア軍と距離を置く非サラフィー系イスラム主義の「イスラム戦線」「シャーム戦士イスラム連合」「真正進歩戦線」「ムジャヒディン軍」など諸派多数があるが、そこでは様々な地元の小グループが、それぞれ地縁・血縁関係や友人・知人関係で、加入したり離脱したりしている。必ずしも完全に主義・思想で分かれているわけではないのだ。
 そうした複雑な事情において、有志連合の軍事介入には、シリア反体制派の中でも、賛否様々な反応がある。
平和的手段での解決は不可能
 ところで、前回拙稿において、米軍の空爆への批判の理由として、主に6つの点を挙げた。
 (1)国際法違反ではないか?
 (2)軍事的手段ではなく、平和的手段で解決すべきではないか?
 (3)民間人の巻き添え被害が出るのではないか?
 (4)国民を殺害し続けているアサド政権を利するだけではないか?
 (5)空爆だけで成果が期待できるのか?
 (6)逆に海外でのテロが増えるのではないか?
といったことだ。
 今回、その2点目である「軍事的手段ではなく、平和的手段で解決すべきではないか?」ということを考えてみたい。
 すべての戦闘行為は、人の死を生むものだから、避けるべきだという考えは、ある意味で正しい。したがって、もしも平和的手段で解決が可能であれば、それに越したことはない。問題は、イスラム国の台頭によって生じる問題が、平和的手段で解決可能かということなのだが、イスラム国のこれまでの行動を見れば、結論としては、残念ながらそれは限りなく不可能に近いというしかない。
 では、イスラム国の台頭による問題とは何か? まず、イスラム国の極めて独善的で残虐な「自分たちの意に従わない者」「異教徒や異端者とみなす者」への弾圧行為がある。
 イスラム国の戦闘員たちがそのような行為を平気で行う理由は、組織レベルでも戦闘員個人レベルでも、様々なことが推測できる。勇猛さの誇示、恐怖による威圧、復讐心などだ。しかし、イスラム国が突出しているのは、やはりイスラムを前面に出して、こうした蛮行を堂々と行っていることだろう。
 そこを理解するには、そもそもイスラム国とは何かということから考えなければなら ない。
イスラム国はなぜ独善的で残虐なのか
 イスラム国は、最高指導者であるイラク人のアブバクル・バグダディを、イスラム共同体の最高指導者(預言者の代理人)である「カリフ」と位置付け、自らの国をイスラム法(シャリーア)に基づくカリフ制国家としている。そして、イスラム国指導部が司るイスラム法による統治は絶対的なものであり、抵抗する者は徹底的に排除するという考えを隠していない。
 なお、イスラム法とは、現在すでにサウジアラビアやイランなどのイスラム国家で採用されている法体系だが、イスラム国はその厳格な適用を掲げている。
 ただし、イスラム法には統一された明文規定がない。イスラムの考えでは、それはまさに唯一神(アッラー)の教えということになっており、その法源は預言者ムハンマドが神から啓示を受けたとされる聖典「コーラン」と、ムハンマドの言行(スンナ)に拠っているのだが、それらには曖昧な表現が多くある。また、人間社会のすべての分野を細かく規定しているものでもないし、もともと7世紀のアラビア半島の社会風土で誕生したものだから、現代の人間社会には単純には重ねられない部分もある。
 そこで、イスラム法学では昔から、コーランやスンナの「解釈」が重要視されてきたわけだが、どうしても解釈には幅も出る。イスラム国は、自分たちの統治はイスラム法に則ったものだと主張しているが、それは彼ら自身が勝手に解釈している独善的なイスラム法にすぎないのだ。
 したがって、世界各地のイスラム指導者およびイスラム教徒の大多数、さらにはあのアルカイダ指導部までがイスラム国を批判している。だが、それでもイスラム国は、自分たちの指導者をカリフと称し、自分たちのイスラム法解釈を絶対的なものと見なしている。自分たちは絶対的な存在という考えで、それをもとに「自分たちに従わない者」「異教徒や異端者と見なす者」に対して、生殺与奪の権を持つと認識しているのである。
 実はイスラム法における異教徒への対応については、それこそ聖典の解釈などをめぐってイスラム学の一大論点になっている分野でもある(「イスラムは寛容か否か」論争など)。
 イスラムは本来、唯一神への信仰と預言者ムハンマドに啓示された言葉(コーラン)の実践こそが人を正しく導くという宗教だ。無実の人間を随意に殺してもいいなどという教えはない。
 ただ、聖典コーランには、宗教共同体間の闘争が激しかった7世紀当時のアラビア半島の社会事情が反映され、無神論者や異教徒に対する差別的で攻撃的な文言が含まれること、さらにはムハンマド以降のイスラム社会内部の宗派対立はまさに血塗られた闘争の歴史であったこと、などは指摘しておきたい。こうした戦闘的な部分を「ジハード」(聖戦。本来はイスラムの実践のための努力を意味する言葉)として拡大解釈するのが、イスラム国に限らず、世界中の「イスラム過激派」の特徴とも言える。
 イスラム社会は、1000年以上も前から、時代に合わせて「解釈」の努力を続けてきているのだが、イスラム過激派の多くはサラフィー思想(初期イスラムへの厳格な回帰)を掲げ、7世紀の時代背景で誕生した激しい言い回しの部分を、単純にそのまま再現実行しようとする傾向がある。
 そうした絶対的優越意識を背景に、イスラム国の戦闘員が実際に行っていることは、捕虜の処刑、異端者あるいは非服従者の処刑や拷問および実質的奴隷化(特に女性は戦利品扱い)、略奪や営利目的誘拐、改宗強要、強制徴兵(子供含む)といった数々の蛮行だ。
 これらは必ずしも彼らのイスラム法に則ったものとも限らず、単なる欲望の発露にすぎないケースも多いが、イスラム法の絶対的施行者という彼ら自身のタテマエに、それらは正当化されている。
「悪事をしている」という自覚は皆無
 なお、こうした蛮行は、イラクにおけるサダム・フセイン時代の恐怖支配の模倣というようにも見えなくもないかもしれない。宗教的な背景よりも、母体であるイラクの地域的な特性の影響が強いのではないかということだ。
 確かにイスラム国の指導部に、サダム時代のバース党や軍部の人脈が入り込んでいるのは事実だが、それは少し違うと筆者自身は考えている。筆者はサダム時代のイラク人亡命者社会と接点があり、サダム時代の恐怖支配を多少は知っているが、独裁政権の残虐行為は、主に「殺らなければいずれ自分が殺られる」という猜疑心・警戒心から来ているように思う。シリア人社会とも筆者は長年の接点があるが、アサド独裁政権による残虐行為もそうだ。つまり、自分たちが悪事をしている自覚が心の奥にあるのだ。したがって、彼らは自分たちの残虐行為を隠そうとする。
 しかし、イスラム国の残虐行為は、それとは本質的に性質が違う印象がある。やはり自分たちの全能感を背景にした行為であって、そこに狂信者たちは疑いを持っていないようにみえる。彼らには微塵も「悪事をしている」という自覚がない。堂々と人を斬首し、晒し首にすることが神の意思の実践だと、自らを誇っているのである。
 こうした相手に、平和的な交渉で妥協を促すというのは、まず不可能と言える。イスラム国はその性質上、妥協というものはしない。彼らと平和的に共存するとすれば、彼らの絶対的な統治を認めて、世界中がその下に屈服するしか方法がない。つまり、イスラム国との平和的共存は無理なのである。
イスラム国は伝統的なカルト的テロ組織の1つ
 もっとも、こうしたイスラム国の性質は、なにも目新しいものということでもない。世の中には昔から、こうした教条的・独善的・狂信的・暴力的なテロ組織は、イスラム過激派に限らずいくらでもあった。冷戦後の時代で言えば、ペルーの極左集団「センデロ・ルミノソ」やアルジェリアの「武装イスラム団」(GIA)などが、カルト度の高いテロ組織が極度に妥協を許さぬ殺戮集団と化したケースといえる。規模は違えど、ポア(殺害)を善行だと位置付けていたオウム真理教の指導部も、メンタリティは似たようなものだ。
 イスラム国はもともと、イラク戦争後に米占領軍やシーア派住民に怒涛のテロ攻撃を仕掛けていた狂信的なスンニ派過激派を母体としている。長期低迷していた彼らが偶然、シリア内戦や、イラクでのシーア派政権による弾圧で生じたスンニ派住民の反発などの機会に遭遇し、それらを利用して勢力をここまで広げたにすぎない。
 前述したように、指導部に旧バース党時代のイラク軍人などが参加しているイスラム国は、戦術と戦略では確かにここまでは目覚しい成功を収めているが、それはなにも画期的な思想集団だったからということではない。
 イスラム国とは紛れもなく、伝統的なカルト的テロ組織の1つだ。こうした狂信的テロ集団は、誰かが力でねじ伏せなければ、その暴走を止めることはできない。
 かつてのアルジェリアのGIAのように、処刑慣れしたイスラム過激派が殺戮の限りを尽くし、やがて民衆から孤立していく過程を待つという方法もあり得るが、そのためには大変な数の罪なき人々の犠牲が必要ということになる。そんなことを許していいはずはない。
武力鎮圧でカタをつけないと状況はますます悪化
 ところで、「軍事的解決ではなく平和的な解決を」という立場に立てば、イスラム国を弱体化させるにしても、直接的な軍事攻撃ではなく、経済的に封鎖するなどして自壊させればいいという考えもあるかもしれない。長期的に見れば、理論上はそれも戦術としてはあり得る。
 ただし、イスラム国はすでに急速に統治体制を整備しつつあり、独自の経済基盤を確立しつつある。現実には石油密売ルートの遮断も難しいうえ、あれだけの支配地を掌握した組織を、経済封鎖で干し上げるには、かなりの時間が必要になる。
 その間、イスラム国の支配地では、さらなる暴力行為が続く。膨張志向の彼らの進撃によって、さらに多くの人々が殺害される。非軍事的手段だけでは、現在進行中のこうした殺戮を即座には防止できない。
 結局のところ、この問題は「どちらが、より人的被害が少ないか?」と「今、理不尽に殺されようとしている人をどう救うか?」いうことを尺度に考えるしかない。これは例えば、暴力団がどこかの町を占領して市民を殺害しまくっているとき、あくまで交渉で臨むのか、あるいは警察力で鎮圧するのか、というような事例と似ている。将来予測は絶対ではないが、こうした事態では、結果的には武力鎮圧でカタをつけないと、状況はますます悪化し、被害はより大きくなる可能性が極めて高い。
 イスラム国の台頭という事態に対しても、より早い対処が、被害を極小化することになると、筆者は考える。今回のケースでは、平和的な手段によって対処するなどという余裕はなかった。やはり今回のように、アメリカが有志連合を作って軍事介入に動くしかなかったのではないか。ベストではないかもしれないが、よりベターな道ではないかということだ。
 一方、イラクとシリアで起きている殺戮は、むろんイスラム国によるものばかりではない。イラクではシーア派政府軍によるスンニ派住民の殺戮も広く発生している。
 シリアでは、アサド政権とその助っ人たち(ヒズボラ、イラン革命防衛隊とイラン人民兵、イラク・シーア派民兵など)による民間人殺戮が、イスラム国による暴力以上の規模で現在も進行中である。反政府軍の中にも略奪や暴力行為を行う不届きなグループが皆無ではない。
 もちろんこれらはすべて止めなければならない。だが、だからといって、イスラム国をこのまま放置していいということにはならない。冒頭に記した通り、空爆だけではまだイスラム国を撃退するまで至っていない。しかし、放置すればイスラム国はますます勢力を広げ、巨大な勢力に成長していたはずである。これはやはり誰かが力で止めなければならないのだ。
 なお、ここまでは「イスラム国という極端な狂信者集団を弱体化させるのに、いかに人的被害を少なく抑えて対処するか?」といった主に人道的観点から、武力介入の是非を考えてきたが、次に1つ、あまり日本の報道では見られない論点を指摘しておきたい。空爆という政治的選択肢のリアルポリティクス、つまり軍事介入を実際に実行したアメリカ側の事情である。
 次回はその話から考えてみたい。
【あわせてお読みください】
国際法的にグレーでも他に手段がなかったシリア空爆 オバマとイスラム国の戦争(その1)」(黒井 文太郎))

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シリア北部から避難の住民証言「イスラム国は空爆を避け住宅地に分散」
 産経ニュース 2014.10.3 08:51更新

        

 「イスラム国」の本拠地であるシリア北部ラッカの複数の住民が、訪問先の首都ダマスカスで取材に応じ「戦闘員は空爆を避けるため住宅地に分散している」などと証言した。
 ラッカでは市民は外出を控え、街はゴーストタウンと化しているという。
 ラッカからのバスが毎日10本前後到着するダマスカスのバスターミナル。ほとんどの人がイスラム国の処罰を恐れて取材を拒否する中、応じてくれたムハンマドさん(23)=仮名=は「自宅が空爆を受け、母と3姉妹、弟の計5人が死んだ」と震える声で話した。
 ムハンマドさんは、イスラム国に拘束されている父に面会に行って外出中で難を逃れた。「自分は被害者なのに、空爆された理由を話せとイスラム国に尋問された」と吐き捨てるように言った。
 イスラム国は、市内の主要施設から撤退。米軍が狙う可能性が低いキリスト教徒や、イスラム教シーア派の施設や家屋を占拠して、新たな軍事拠点にしている。
 「市民の90%はイスラム国に反対している。でも彼らは空爆から逃れ、故郷の破壊だけが進んでいる」とやり切れない表情を見せた。
 ラッカ郊外のハラフさん(30)=仮名=は「イスラム国の戦闘員になれば金がもらえるが、拒否すれば食べるものもない。隣国レバノンへの出稼ぎを計画したが、国境検問所で止められた」と途方に暮れていた。(共同)
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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国際法的にグレーでも他に手段がなかったシリア空爆 オバマとイスラム国の戦争(その1) 黒井文太郎 2014-09-29 | 国際 
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