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<美濃加茂市長事件>公判の山場「被告人質問」2014.10.24 藤井市長はどう答えたか? 関口威人

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<美濃加茂市長事件>公判の山場「被告人質問」 藤井市長はどう答えたか?(上)
 弁護士ドットコム 2014年10月25日 21時10分 
 受託収賄罪などで起訴され、刑事裁判の被告人となっている岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長が10月24日、名古屋地裁の法廷に立ち、被告人質問に答えた。検察側から資金管理のずさんさを追及されたが、「現金を受け取ったことはまったくない」と業者からの金銭授受をあらためて否定した。(ジャーナリスト/関口威人)
●経営していた塾の「金の出し入れ」と事件の関係は?
藤井市長は、弁護側の質問にしたがって、警察の取り調べの様子を説明した。今年6月、愛知県警に任意同行を求められたとき、「席に着いた瞬間から机に書類をたたきつけられ、『さっさと認めろ』とどなりつけられた。それからはひたすら、同じことの繰り返しだった」と振り返った。
その後、刑事から「早く認めないと美濃加茂市を焼け野原にするぞ」と言われたという。その言葉については「支援者や関係者にどんどん捜査を広げていくという意味だと受け止めた。特に、議員との兼業で経営していた塾の教え子のところまで行くこともほのめかされ、つらかった」とした。
その塾にかかわる金の出し入れが、事件との関連で厳しく追及されたという。
贈賄側である名古屋市の浄水設備会社「水源」の中林正善社長は、昨年4月2日に美濃加茂市内のファミリーレストランで、市長に10万円を手渡したと、供述している。その2日後の4月4日、塾の口座に「9万5000円」の入金があった。
藤井市長は、この入金について、「塾生から集めた月謝を、塾の家賃の引き落としに合わせて振り込んだものだ」と取り調べ段階から主張していたが、刑事らは「そんなものはない」と取り合わなかった。検事も、取り調べの最後まで「認めるなら今しかない。あなたが認めなくても検察が立証して有罪になる。有罪のとき、お父さんはどんな気持ちになるか」と、警察官である父親を引き合いに出して、自白を迫ったという。
保釈後、市長の手元に戻ってきたパソコンで管理していた帳簿を見直すと、やはり月謝の集金はあった。4月の月初め、しかも年度初めだったため「年間維持費」や「教材費」などを普段の月よりも余分に受け取っていた。塾講師に支払うバイト代などを差し引いても、手元に10万円以上はあった。さらに、4月3日には前年の確定申告に対する国税の還付金約30万円が振り込まれていた。
「これは取り調べのときには忘れていたが、当時は自分としても当てにしていた。年度初めについては資金繰りに余裕があった」と藤井市長。
その後、4月30日には、やはり塾の口座に「8万6000円」の入金があった。検察側の主張によれば、名古屋市内の居酒屋で20万円の「現金受け渡し」があったとされる4月25日の5日後のことだ。
「(贈賄側の)中林からもらったんじゃないか」と公判で問う検察官に、藤井市長は「そういうことはない」と、これも否定した。
●明らかになった市長の「資金管理」のずさんさ
だが、ここで藤井市長の資金管理のずさんさが露呈する。実際の収入に比べて、税務署への確定申告で記載された収入が少ないと、検察官が指摘したのだ。
塾の月謝と議員報酬などを合わせると、当時月60~80万円ほどの収入があったはずだが、確定申告では月15万円ほどの収入で、赤字申告されていたという。
藤井市長は「そこまで少なかったかどうか覚えていないが、少なく申告している認識はあった」と認めた。「意図的ではない」としたが、収入を過小に偽って申告し、30万円余りの還付金を受け取ったことになる。公判後の記者会見では税理士と相談し、いずれ修正申告するつもりだと釈明した。
検察側が過少申告に注目したのは、藤井市長の「資金繰りの厳しさ」が賄賂を受け取った動機だと主張するためだ。だが、過少申告によって還付金を受けていたことは、資金に余裕を生み出すことにつながったとも考えられる。裁判長も「本件にどこまで関係があるのか」と、それ以上の検察の追及を制止する場面となった。
昨年の4月ごろといえば、前市長の病気療養に伴う辞意表明で、藤井氏の市長選出馬が突然降ってわいたころだ。もともと資金管理が甘かったところに、選挙関連の資金の出し入れが加わり、この時期に大きな混乱が生じていたことは否めない。
「選挙運動に際しては、選挙違反などを絶対に出さないという意味で、顔の見える市内のメンバーだけでやる方針にした」と、藤井市長は強調した。しかし、政策について相談していた名古屋市議秘書のT氏が選挙期間中、側面的な支援のため美濃加茂市内の旅館に滞在し、その宿泊費を中林社長が肩代わりしていたことなど、周辺の複雑な動きまでは把握できていなかった。

<美濃加茂市長事件>公判の山場「被告人質問」 藤井市長はどう答えたか?(下)
 弁護士ドットコム 2014年10月25日 21時10分  
受託収賄罪などの被告人として法廷に立った岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長。10月24日の被告人質問で、検察が追及したもう1つの争点は、昨年3月14日の美濃加茂市議会でのやり取りだった。(ジャーナリスト/関口威人)
●議会での「浄水設備の質問」も否定
当時、市議だった藤井市長は、この議会の1週間ほど前、中林社長と初めて会ったときに受け取った浄水プラントの資料を、市の防災安全課長に手渡した。そのうえで、議会では市の「防災施設整備事業」の状況について聞き、続いて、防災にかかわる「民間が開発した新技術」を取り入れる可能性があるかどうかを質問した。この「民間の新技術」が浄水プラントのことを指し、議会質問を通じて市に導入を迫ったというのが、検察の見立てだ。
これに対して、藤井市長は実際に「浄水プラントのことは一切質問していない」と主張。「災害備蓄品について、一般論として聞いた。栄養食や洗浄液などについてだった。浄水プラントについても頭にはあったが、1回話を聞いただけのもので、このときは触れなかった」という。
しかし、質問を受けて答弁に立った総務部長は「議員からはプールにたまる雨水の活用ということで提案いただきましたが」「本当に有効なものであったら導入に向けて検討をしていきたい」などと答えており、明らかに浄水プラントに言及している。
藤井市長は「当時は市としても災害時の水の活用について検討しており、部長も(質問されていない浄水プラントにわざわざ言及したことは)『早とちりだった』と言っている」と説明したが、検察官は「誤解を招いたらまずいのでは?」「再質問で修正すべきだったのでは?」などと突っ込んだ。
市長はプラント導入に前向きだったことは否定していない。この議会後も、市長はプラントの資料を市当局に手渡し、導入を迫る。4月中旬には、導入を求める書面を自ら作成し、担当課に提出している。
市長は「書面で出すと役人は仕事が早い」としたうえで、「中林から依頼を受けたのではなく、私も浄水プラントがいいものだと思っていた。4月13日に淡路島で地震があり、水道管が破裂するなどの被害が出た。災害への備えはまったなしで、浄水プラントをもっと早く進めたいと強く思ったので、あえて書面で出した」と説明した。
●「2人きりになった記憶はない」
そして、事件の核心である中林社長を交えた会食について、藤井市長は次のように答えた。
まず、昨年3月7日、名古屋市内の飲食店での会食。この日、藤井市長は名古屋市議秘書のT氏とともに、中林社長と初めて会った。第一印象は「資料を見て、一生懸命に説明する。汗を流している中小企業の人といういいイメージ」だった。その席で、浄水プラントの資料を受け取ったことはよく覚えているという。しかし、「それ以降、どこでどの資料をもらったかは覚えていない」と藤井市長は説明した。
続いて、検察側が1回目の現金授受があったとする、4月2日のファミリーレストラン。このときの会食について、藤井市長は「やり取りはほとんど記憶にない」という。ただし、「ドリンクバーをT氏が取りに行くことはあり得ない」と強調した。
さらに、4月25日の居酒屋。2回目の現金授受があったとされる現場だ。藤井市長は、T氏が「普段にも増して政策などについて話していた」と説明し、「わざわざ席は立たない」と主張した。そして、中林社長と「2人になった記憶がない」と述べた。
検察側は、いずれも場面でも、同席者が席を外したすきに現金授受があったと主張しているが、藤井市長は、そのようなことはなかったと否定した。
会食後、中林社長あてに「本当にいつもすいません」などと送ったメールの内容についても、「『すいません』や『ありがとう』は過剰なくらい使う。『いつも』も深く考えて書いたわけではない」。
気づかずに受け取った可能性はないかと念押しする弁護側の質問にも「絶対にない。あり得ない」と答えた。
次回、11月19日の公判では、中林社長に対する再尋問と、中林社長と収監中に隣の独房にいて知り合い、手紙のやりとりを重ねてきたという弁護側証人に対する尋問が、同時に行われる。いわゆる「対質」の形で開かれることになった。
弁護側は、捜査メモなどの証拠開示や警察官・検察官に対する証人尋問も請求しており、今後の裁判所の判断が焦点となる。
 ◎上記事の著作権は[弁護士ドットコム]に帰属します
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美濃加茂市長事件 被告人質問 2014/10/24 Fri. 藤井浩人被告(市長) 改めて無罪主張 2014-10-24 | 社会/検察/司法
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