奈良小1女児殺害10年:再犯者率は依然として高く
毎日新聞 2014年11月11日 03時00分
2004年11月に奈良市で起きた小1女児誘拐・殺害事件は、17日で発生から10年となる。同種事件の再発防止策のひとつとして06年、法務省は全国の刑務所などで更生のためのプログラムを導入したが、女児が狙われる事件のうち件数が多い強制わいせつなどの再犯者率は依然として高く、全体の認知件数も増加傾向にあることが、警察庁への取材で分かった。専門家からはプログラムの見直しを求める声が出ている。
警察庁によると、全国で13歳未満が被害者となった強制わいせつ事件の認知件数は06年の1015件から07〜09年は900件台に減少したものの、10年以降は再び1000件台になり、13年は06年以降で最多の1116件に達した。また、06年に67件だった強姦事件も13年は69件と微増した。
一方、全国の警察に逮捕されるなどした性犯罪の容疑者のうち、統計のある、他罪も含めて前科・前歴がある人の割合(再犯者率)も増している。強制わいせつの容疑者については再犯者率が06年の41.2%が13年には46.4%に上昇。強姦容疑は06年の48.9%から13年は54.6%に上がった。
「性犯罪者処遇プログラム」は、奈良市の事件で小林薫元死刑囚(殺人、わいせつ目的誘拐罪などで死刑確定、昨年2月に執行)が過去に性犯罪で服役していたことをきっかけに導入された。06年施行の刑事施設・受刑者処遇法で矯正教育が義務付けられ、各刑務所などは受刑者に性犯罪の原因となる認識や行動のひずみを自覚させる「認知行動療法」を採り入れた。
同プログラムについて法務省は、性犯罪を再犯した率が受講者(12.8%)は非受講者(15.4%)より低いという追跡調査結果などから「一定の効果がある。プログラムは現時点で問題があるとは考えていない」(成人矯正課)との姿勢だ。ただ、この追跡調査結果については、大きな差が出ていないとの評価や、累犯者が受講に応じない傾向があるなど、問題点を指摘する声もある。
プログラムの実効性について、精神科医でNPO法人「性犯罪加害者の処遇制度を考える会」の福井裕輝代表理事は、「認知行動療法は、例えば痴漢常習者が電車内で自身の行動を抑えられるか訓練するなど具体的なリスクのある状況でしか成立せず、刑務所の中では効果が出ない」と指摘。「男性ホルモンの分泌異常など治療が必要なケースもある」とし、条件付きで早期釈放させて医療機関で受診させるなど、実態に即した見直しの必要性を訴えている。【伊澤拓也】
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