米経済界は中国に猛烈な怒り オバマ氏の弱腰外交にも強い批判
zakzak 2014.11.12 連載:世界を斬る 日高義樹
「オバマ大統領は中間選挙の大敗北の後始末もせず中国に出かけて、米国の輸出を増やすための話し合いをするそうだが、米経済界は今や中国に対して猛烈にハラをたてている。中国に毅然とした姿勢をとらないと、国民から強い批判を受けるだろう」
ブッシュ前政権の最高首脳の一人で、ハドソン研究所の所長をつとめた後、アスペン研究所で21世紀の製造業を研究している友人のトム・デュースターバーグ博士がこう言った。
オバマ大統領は2009年に北京を訪問し、米経済を立て直すため、中国の協力をとりつけることに成功した。今回、中間選挙後のゴタゴタが続くワシントンから逃げるようにして、そそくさと習近平主席に会いに出かけたのは「夢よもう一度」を狙ってのことだろう。友人が指摘したように、米国の企業家や経済人、それにシリコンバレーまでが今、米国のビジネスに対する中国政府のやり方にひどくハラをたてている。
先頃、中国企業アリババがニューヨークで株を売り出して大儲けした。時を同じくして中国政府は、自国内の米企業の活動を締め付け始めた。最初の標的はアップルで、新しいアイフォーン6を世界的に売り出した際、中国での販売を許可しなかった。
次に狙われたのがマイクロソフト。同社に対して、「中国政府の情報を集めるだけでなく、妨害工作をしている」として北京など中国のマイクロソフト支店に立ち入り検査を行い、コンピューターを押収した。さらに、コンピューター企業に最先端の部品を売っている米クアルコム社も公安警察の手入れを受けて、新製品を押収された。
全米商工会議所など米経済界は、中国がこうした理不尽な行動をとり始めたのは、「オバマ大統領の弱腰の対中国外交の結果だ」と考えている。
今回の中間選挙で勝った共和党の議員らのなかには若い企業家も多く、何より国家の力が米国のビジネスに必要であると考えている。私が全米商工会議所やハドソン研究所でよく顔をあわせるアーカンソー州選出のトム・コット上院議員やネブラスカ州選出のベン・サッソー上院議員らは「オバマ大統領の弱腰外交が米国に大きな不利益をもたらしている」と非難している。
オバマ大統領は習近平主席だけでなく、オーストラリアやミャンマーの政府首脳と会い、アジアにおける経済利権の調整を図ろうとしている。だが、米国の有権者らはもはや中国のご機嫌をうかがうようなオバマ氏のアジア外交を許さない。
オバマ大統領はこうした米国民の反発に気がつかず、選挙後の会見でも的外れの感想ばかり述べている。オバマ氏の今回のアジア訪問は、2009年のときとは、まったく異なる反応を米国民から突き付けられることになるだろう。
■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。
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急速に変わってきた米国人の中国観とオバマ外交失敗の原因
zakzak 2014.10.08 連載:世界を斬る 日高義樹
香港で起きている学生らの反政府運動は、「一国二制度」という形で香港の独自性を守るという約束に反して、北京政府が2017年に行われる香港の行政長官選挙に共産党のやり方を強制しようとしたからだ。
北京政府があらかじめ決めた候補者から行政長官を選ぶという非民主主義的な選挙制度に、将来を考える学生らが激しく反発したのは当然だ。なりゆき次第では、中国の政治の仕組みを揺るがすことになりかねない。
香港で起きた今回の重大な動きは、米国の保守勢力、国防総省、そして海軍がオバマ大統領の中国一辺倒政策に反抗し、中国との対決姿勢を強化しようとしていることと無関係ではない。
オバマ大統領は、「空母キラー」と呼ばれる中国のDF21Dミサイルに怯えて、第7艦隊をハワイの東に引き上げようとした。だが、米海軍は大統領の決定に従わず、予定どおり第7艦隊の主力である空母を最新鋭の「ロナルド・レーガン」にするとともに、艦載航空兵力である第5飛行戦隊の基地を東京近郊の厚木から、中国により近い山口県岩国に移すことにした。
香港のある南シナ海の国々は今、中国海軍の不法な侵略行動に対抗して、米海軍との協力体制を強化したり、軍事力を増強したりしている。シンガポールは、マラッカ海峡の入り口チャンギに第7艦隊のための特別基地を建設した。
米海軍は今年、南シナ海周辺で延べ150隻の艦艇を送り込んで訓練を実施した。また、ベトナムやマレーシア、それにタイまでが海軍や航空戦力を強化しつつある。
ハドソン研究所のケン・ワインスタイン所長は、こうした動きの引き金になったのは「日本の集団的自衛権構想」として次のように述べた。
「あらゆる国が軍事力を拡大する中国に弱気になったとき、日本が集団的自衛権を打ち出した。この構想を進めた安倍晋三首相に、我々は『考えられないことを考えた人』に与えるハーマン・カーン賞を贈呈した」
友人のジャーナリストは私にこう言った。
「オバマ外交の失敗は中国と戦わなかったことがすべての原因だ」
米国人の中国に対する考え方は急速に変わってきている。
■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。
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米、好景気の理由 「金融政策の成果」ではなくシェールオイル&天然ガス増産
zakzak 2014.10.01 連載:世界を斬る 日高義樹
ウォール街の株価は乱高下しているが、石油エネルギー産業が好調なため、米国の景気は世界で最も良い状態が続いている。9月26日には、ホワイトハウス経済諮問会議のジェイソン・ファーマン議長は、今年の第2四半期のGDPの伸びを上方修正し、4・6パーセントにすると発表した。
ハドソン研究所の文書もこう報告している。
「米国は、いまや石油と天然ガスの上に浮いている。シェールオイルとシェールガスなどの安いエネルギーのおかげで、世界で最も好ましい経済状態になっている」
米国では2012年、シェールオイルの産出額が1日あたり100万バレル増加。これはブッシュ前大統領の地元ミッドランドのあるテキサス州やコロラド州でシェールオイルの増産体制が大きく進んだからだ。米全土のシェールオイル油田の数はいま、4万にのぼる。
この結果、米国は中東からの原油の輸入に頼る必要がなくなり、値段が安くなるとともに供給も安定した。特にシェールオイルは、値段が1バレルあたり5ドルから8ドルと、サウジアラビアなどの原油と比べると、10分の1で、極めて安い。
シェールオイルの増産に加えて、米国のエネルギー事情を良くしているのがLNG天然ガス。
全米商工会議所エネルギー部会のリポートがこう指摘している。
「米国は砂地のフロリダ州を除いて、どこを掘っても天然ガスが出てくる。これまで米国では石油とともに出てくる天然ガスを全く使わず廃棄してきたので、値段も非常に安い」
米国の産業界はすでに、この天然ガスを効率的に利用し始め、エネルギー業界は輸出体制を作り始めている。米国の石油大手は、天然ガスを冷凍して貯蔵する施設などを建設する一方、20隻の大型タンカーを建造し、世界中に売り出そうとしている。
オバマ大統領は、米国の景気がヨーロッパや中国、日本などに比べていいのは、「米政権が適切な金融通貨政策を続けてきたからである」と主張し、現在の低金利政策を少なくともむこう1年は続けようとしている。
だが、米国の好景気の本当の理由は、シェールオイルと天然ガスの増産によるエネルギーの安値なのである。
米国がこのままシェールオイルの増産を進めていけば、あと10年でサウジアラビアを追い越し、世界最大の産油国になるといわれている。外国から原油を輸入する必要がなくなれば、米国は輸送のためのシーレーンを守らなくてもよくなり、軍事費を削減できる。
ところが、オバマ氏本人と政権はもともと石油業界が嫌いで、積極的な後押しをしようとしない。全米商工会議所は、オバマ氏がシェールオイルなど石油産業に対する規制緩和を進め、減税を行えば、「米国のエネルギー価格はさらに安くなり、景気がもっとよくなる」と指摘している。
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◇ 世界の中で日本がどう競争し生き残るか、という視点がエネルギー論議から欠落=最大の問題 田中伸男 2014-07-28 | 政治/原発/(核兵器)
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■ 『アメリカの新・中国戦略を知らない日本人』日高義樹著 PHP研究所 2013年2月27日第1版第1刷発行 2013-02-28 | 本/(演劇)
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■ 集団的自衛権「機雷掃海」能力=抑止力 / ホルムズ海峡~マラッカ海峡 南シナ海 死活的に重要なシーレーン 2014-06-18 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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