産経ニュース 2014.12.21 14:00更新
【深・裏・斜読み】オウム観察処分更新請求、勢力盛り返し“次世代”探る
公安調査庁がオウム真理教への5回目の観察処分の更新を請求した。主流派「アレフ」は前回更新決定時より勢力を盛り返す一方で出家信者の高齢化が進行し、教祖、麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(59)の“次世代”を探る動きも出始めている。更新請求に前後して、分離派「ひかりの輪」や麻原死刑囚の三女(31)は公安庁などへの法的措置を立て続けにとった。地下鉄サリン事件から来年で20年を迎えるのを前に、教団をめぐる動きが活発化している。
公安庁は約3年前の前回更新決定以降、計57回にわたり15都道府県にある教団施設延べ130カ所に立ち入り検査を実施。さらに、公安調査官らが情報収集した結果、教団の勢力が拡大している状況を確認した。
それによると、国内の信者数は約3年前に比べて約150人増え約1650人となっている。アレフでは、教団名を隠して自然食やカレーを食べる会を開催して取り込み、「サリン事件は陰謀だった」などと説いているという。
■出家信者の高齢化
数字の上では勢力を拡大しているが、同事件から20年がたち、出家信者の減少と高齢化が進んでいる。約3年前に比べ、中核となる出家信者数は約100人減少している。公安庁幹部は「教団内で高いステージの認定は麻原(死刑囚)にしかできない。出家信者の昇進が頭打ちでモチベーションが保てなくなり、組織運営に不満を持って辞める信者もいる」と話す。
公安庁が今月18日に公表した資料によると、このような状況下で、アレフ内では今秋、麻原死刑囚の長男(22)の誕生日を祝う会が行われた。教祖不在が続く中で“次世代”を求める動きも出始めているようだが、その長男は今年10月、「勝手に自分の名前を使って催事をした」として自分の名前や写真の使用差し止めと損害賠償などを求めてアレフを提訴した。
一方、公安庁は今回の請求で、教団運営への直接的な関与を示す「教団幹部との手紙や面談」に関する証拠を得たとして、三女を教団の役員であると初めて認定した。しかし、三女は今月9日、「事実ではない」として認定取り消しと1000万円の損害賠償を求めて国を提訴した。三女の矛先はアレフにも向かい、教団幹部が教団内の電子掲示板の名誉を毀損(きそん)する投稿を放置したとして損害賠償を求める裁判を起こした。公安関係者は「教団内部の紛争が背景にある」と説明する。
■「穏健派追い出し」
一方、ひかりの輪=上祐史浩代表(52)=は11月7日、公安庁が前回の更新請求時に構成員の発言をゆがめて証拠にしたなどとして損害賠償を求めて国を提訴。その10日後には、公安調査官が元構成員に立ち入り検査の情報を漏らしたとして国家公務員法(守秘義務)違反罪で東京地検に告発した。公安庁は「(訴訟については)コメントしない。告発には適切に対処したい」としている。
また、ひかりの輪は11月27日、自ら設置した外部監査委員会が「観察処分の適用条件に当たる事実は認められなかった」との調査結果を出したと発表したが、公安庁は今回の更新請求で「一般的な監査ではなく、観察処分を免れる手段だ」と判断した。
「観察処分が続く中でアレフは穏健派を追い出し、より過激になってきている。サリン事件が起きたときと同じ精神構造になりつつある」と話すのは、同教団に詳しい紀藤正樹弁護士。「ひかりの輪は公安庁からアレフの別動隊とみられている。もし観察処分がなかったらアレフは穏健派を包含し、今よりも大きな勢力になっていただろう」と両団体への処分継続の必要性を説いた。アレフはホームページで「危険な教義を復活させた事実はない」などと主張しているが、産経新聞の取材には応じていない。
■増える教団資産6・9億円
公安調査庁によると、オウム真理教の資産は初めて観察処分になった平成12年は約3800万円だったが、今年10月末は約6億9000万円に増えた。その大半がアレフ分だという。
信者の寄付が定期的な収入だが、大きな収入源は年3回実施する「集中セミナー」。アレフは毎回、全国の信者ら300~400人を集め、1週間程度の修行を行う。参加費は1人5万~10万円で、1回で数千万円規模の収入をあげる。公安庁幹部は「集中セミナーでも麻原死刑囚の映像を流したり、サリン事件当時と同じ修行をさせたりしている」と危険性を指摘する。
一方、ひかりの輪は出版などでも収入を得ている。
オウム真理教犯罪被害者支援機構によると、教団は一連の事件の被害者に約38億円の賠償金を支払うことになっているが、まだ約19億円が支払われていない。同機構の副理事長の中村裕二弁護士は「教団は組織を拡大し、資産を増やしている。被害者賠償にあてるべきだ」と述べた。
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麻原死刑囚「生誕祭」に7百人か 過去最多
徳島新聞 2014/12/18 17:31
公安調査庁は18日、国内外の治安情勢をまとめた2015年版「内外情勢の回顧と展望」を公表した。オウム真理教から改称したアレフが松本智津夫死刑囚(59)=教祖名麻原彰晃=の誕生日に合わせて毎年3月に開く「生誕祭」に、今年は過去最多の700人以上が集まったと記している。
公安庁は「松本死刑囚に対する信仰心の強化が進んでいる」と指摘している。
公安庁によると、アレフと教団元幹部が設立した「ひかりの輪」の信者数は計約1650人(11月末時点)で昨年とほぼ同じ。現金や預金などの資産は約6億9千万円(10月末時点)で、昨年より約1億2千万円増えたとしている。
◎上記事の著作権は[徳島新聞]に帰属します
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◇ 麻原彰晃死刑囚の三女が提訴 「アレフ幹部」認定に反発 2014-12-09 | 死刑/重刑/生命犯 問題
◇ 麻原彰晃(松本智津夫)死刑囚は『麻原開祖』…「アレフ」と「ひかりの輪」 信者・資産増 教団名隠し勧誘 2014-11-08 | 死刑/重刑/生命犯 問題
◇ 松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の長男がアレフ提訴 「無断で名前使われた」 2014-10-24 | 死刑/重刑/生命犯 問題
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公安調査庁 オウム真理教への5回目の観察処分請求、勢力盛り返し“次世代”探る
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