能楽『定家』が描く愛欲地獄
特集 能楽の扉を開く 観世清河寿
nippon.com [2014.07.08]
観世清河寿 KANZE Kiyokazu
二十六世観世宗家。1959年、二十五世宗家観世左近元正の長男として東京に生まれる。4歳で初舞台を踏む。90年、家元を継承し、二十六世観世宗家として、現代の能楽界を牽引する。1995年度芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。99年、フランス芸術文化勲章シュバリエ賞を受賞。2012年度芸術選奨文部科学大臣賞、2013年第33回伝統文化ポーラ賞大賞を受賞。2014年元日、「観世清和」より「観世清河寿」に改名。重要無形文化財(総合指定)保持者、(一財)観世文庫理事長、(一社)観世会理事長、(一社)日本能楽会常務理事。(独)日本芸術文化振興会評議委員。東京芸術大学音楽学部講師。著書に『能はこんなに面白い!』(小学館)、『新訳風姿花伝』(PHP研究所)など。
----------------------------------------------
名古屋能楽堂 3月定例公演
「秀吉と能」 ― のふにひまなく候 ― 名古屋能楽堂 3月定例公演
秀吉が内裏で催した前代未聞の大イベント、文禄二年の禁中能。その二日目に演じられたのが能〈定家〉である。式子内親王と藤原定家の忍ぶ恋を描いたこの能で、秀吉がシテの式子内親王を、秀吉の近習・下村徳左衛門がワキの僧をつとめた。間狂言は、これも秀吉の近習であった岩井弥三郎。笛は伊藤安中、大鼓に名手として知られた樋口(ひぐち)石見(いわみの)守(かみ)、小鼓に金春座の大蔵道意といったプロの囃子方。秀吉やその近習という素人とプロの囃子方がそろって舞台に立ち、演じること、それを観ることを楽しむのは、当時すでに標準的な能の愛好のスタイルであり、今日に至るまで続いている。
演目
狂言 「柑子(こうじ)」(和泉流)/シテ 野村又三郎
能 「定家(ていか)」(観世流)/シテ 久田三津子