日本モンキーセンターのサルはなぜ「たき火」を恐れない? サルが暖を取る光景が話題に
THE PAGE2015/1/20 11:00
20日は二十四節気のひとつ「大寒」。暦の上では小寒から立春までは寒さが厳しいといわれているが、同日の愛知県内も冷え込み、名古屋地方気象台によると、名古屋市では最低気温0.7度を観測した。そんな中、日本モンキーセンター(愛知県犬山市)では、ヤクニホンザルの家族が体を寄せ合い「サル団子」になって暖をとる光景が話題となっている。また2月末までの土・日・祝日はサルたちが「たき火」で暖をとる「ほほえましい」場面も。しかし、動物は本来、火を怖がるものだが、なぜ、そのような光景がみられるのか? 同センターに聞いてみた。
[写真]たき火の周りで暖を取るヤクニホンザル。遠赤外線効果で、たき火から離れた場所でも暖かいという
■たき火のきっかけは「伊勢湾台風」?
さて、本来、人間以外の動物は火を恐れ、近づかないというのが通説であるが、同園のヤクニホンザルはなぜ「たき火」にあたるのだろうか。起源は、1959年に東海地方を襲った大型台風「伊勢湾台風」にさかのぼる。
同園の前身である旧犬山野猿公苑で、伊勢湾台風で出た倒木や家屋の残骸の木材などを使い、職員や来場者が暖を取るためにたき火をしたところ、少しずつサルも集まってきた。野猿公苑時代は、動物の展示に関する規制が今より格段にゆるかったため、サルと人が一緒にたき火にあたることもあったという。
現在は柵に囲われた「モンキーバレイ」の中で飼育される約160頭のヤクニホンザル(ニホンザルの亜種で、生息地は鹿児島県屋久島)がそれぞれお気に入りの場所でたき火にあたる。他の動物園でも人為的にニホンザルがたき火にあたるよう試みられているようだが、うまくいかないという。
ここのサルは自然にたき火にあたり始めてから8世代にわたり、55年続く恒例行事のたき火を経験している血統のため、DNAに染みついているのだろうか。
■たき火の中に隠れたサルたちの大好物
たき火をたいている最中、おやつのサツマイモをたき火の下の“おき“と呼ばれる灰の中で、約2時間以上かけて出来上がった焼き芋をサルたちのおやつに与えている同園。“おイモタイム”が近づくとサルたちもそわそわし始める。
飼育員がたき火の中から熱々の焼きイモを取り出し、多くのサルが食べられるよう、小さく割って投げると一斉にサルが群がる光景が見られ、柵の上部に設けられた見学スペースでは見学客の歓声が上がる。
イモを奪い合い、ケンカをするサルや、群れから離れ安全を確保したうえで美味しそうに黙々と頬張るサル、中には池の水で熱々のイモを冷ましてから食べるサルも。たき火は、2月末までの土・日曜日と祝日の11時半から14時に開催、おイモタイムは午後2時ごろから見られる。
■たき火のない時は「サル団子」
では、同園でのたき火のないときはどうしているのか。柵で囲まれた広い放飼場(運動場)の中には、小さな四阿(あずまや)以外に寒さをしのぐ場所は設けられていない。そこで先に述べた「サル団子」へとつながる。
同園の加藤氏によると「本来、野生のサルが屋根の下で眠ることはなく、ここのサルたちも屋根を嫌って夜空の下で過ごすことが少なくありません。一カ所で身を寄せ合って“サル団子”を作り、暖を取ります。血縁関係のあるサルや、オス同士でサル団子になることがほとんどです」と話す。
「大寒」を迎え寒さは厳しくなる一方だが、家族で身を寄せ合う「ぽっかぽか」な光景に、多くの来園者が目を細め眺めていた。
同気象台によると、全国的に冬型の気圧配置となっているが、20日の東海地方はそれが緩み、西から次第に高気圧に覆われる見込みで概ね晴れるという。ただ、空気が乾燥しており火の取り扱いへの注意を呼びかけている。
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