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「オリンパス」/損失を隠し、前任者の体面を汚さないようにするのが義務?/不正直は恥ずべきことだ

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オリンパスの恥ずべき偽り
JBpress 2011.11.11(金) Financial Times
 今から3週間前、オリンパスで起きた出来事は不可解だった。同社の英国人社長、マイケル・ウッドフォード氏が解任され、その後間もなく極めて異様な買収の詳細を公表した。
 何かがひどく間違っていたが、オリンパスがなぜ3件の小さな企業買収と馬鹿げたほど法外な顧問料で14億ドルを無駄にしたのかを理解するのは難しかった。
 今週は状況が少し明らかになったが、一段と不穏な事態になった。
 高山修一新社長は正式な謝罪として2度頭を下げ、1990年代までさかのぼる投資の損失を隠すために、取締役会内部で20年間にわたって会計操作が行われていたことを明らかにした。これらの損失は買収を使って償却されていたのだ。
*損失を隠し、前任者の体面を汚さないようにするのが義務?
 カメラ・医療機器メーカーであるオリンパスの前会長、菊川剛氏を筆頭に責任を問われている3人の取締役・監査役が、恥ずかしくない行動を取っていると思っていたと考えることはまだ可能だ。彼らは、失敗をこっそりと隠し、前任者たちの体面を汚さないようにすることが義務だと思ったのかもしれない。
 もしそうだとしたら(正確に何が起きたのか我々にはまだ分からないが)、彼らは間違っていた。正直に話していた方が、同社の投資家だけでなく、従業員、監査役、日本企業にとってもはるかに良かった。
 ところが実際には、彼らがオリンパスを危険なほど脆弱な状況に陥れ、事情を知っていたか義務を怠ったかのどちらかである他の取締役たちの信用も傷つけてしまった。
 明らかに似ているのは、1990年代末に「飛ばし」と呼ばれる取引でバブル崩壊後に負った損失を隠した日本長期信用銀行や山一証券のような金融機関だ。
 これらの企業は、毀損した資産を簿価でダミー子会社に移すことで、証券投資や融資でやらかした大失敗を隠蔽した。オリンパスは単に、それからさらに15年間ほど、ごまかしを引き延ばしただけだ。
*悪徳トレーダーと似た本能
 また、オリンパスの一件は、損失を出し、それを架空取引や秘密口座を使って隠蔽する銀行の悪徳トレーダーを連想させる。
 ベアリングズ銀行の悪徳トレーダーだったニック・リーソン氏は1990年代半ば、株価指数の日経225と日本国債を使った取引で、オリンパスが怪しげな買収に支払ったのとほぼ同じ額の損失を出した。
 1つの違いは、犯人とされる人物がオリンパスの取締役会の一員だったことだ。
 オリンパスも、損失を明らかにするよりも、それを隠すことが自らを救う唯一の方法だと考える悪徳トレーダーの本能を共有している。
 もしかしたら日本人が抱く強い廉恥心に、同社取締役がすぐにミスを認めず、逆に事態を悪化させてしまうという歪んだ効果があったのかもしれない。
 これまでの証拠から見ても、今回の出来事は類まれな不祥事であり、口をつぐみ、仕事を失わないようにするよりも、むしろ公表することにしたウッドフォード氏の判断が完全に正しかったことを示している。
*小説か映画のような共謀
 経営上層部におけるこれほどの共謀は通常、役員室の日常ではなく、悪徳企業を描くジョン・グリシャム氏の小説やハリウッド映画に出てくるようなものだ。
 今回の不正行為は、世界的に名高い内視鏡事業と有名なカメラブランドを持つ企業を危険にさらしている。
 オリンパスの株価は10月半ばから75%下落し、同社の時価総額は35億ドルの自己資本をわずかに超える水準まで減少。社債も格下げされた。
 菊川氏は、ウッドフォード氏がオリンパスの「社会的信用を貶めようとしている」と非難したが、実際に貶めたのは菊川氏自身である。
 エンロンの破綻や「レポ105」という粉飾決算手段を用いたリーマン・ブラザーズが示すように、会計スキャンダルは決して日本独自のものではない。
 それでも、オリンパスが認めた行為の規模と大胆不敵さは驚異的だ。それは、買収に過剰な金額を支払い、それを減損処理するという広く蔓延する習慣につけ込むことで損失を隠すという、しゃれた企業風刺劇であり、「顧問料」は特に独創的だった。
 だが、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の甘い基準は、オリンパスがこうした不正を働くのを嫌になるほど容易にした。
*不正を容易にした日本のガバナンスの甘さ
 15人の取締役のうち12人は同社の幹部か元幹部で、別に監査役会を持っているという安全装置は、責任を問われている3人組の1人、山田秀雄氏が監査役会のトップだったという事実によって機能しなくなっていた。
 一方、同社の外部の監査法人――2009年まではKPMG、現在はアーンスト・アンド・ヤング*1――は、今回のごまかしがなぜ続いていたのか、そして損失がロンダリングされていたと言われるケイマン諸島籍の投資ファンドの本当の目的をなぜ見抜けなかったのかという厄介な疑問に答えなければならない。
 日本にとっては、もっと大きな教訓がある。物事がうまくいかなくなった時に、問題の本当の深刻さを認めるよりも、むしろ「軟着陸」を企てることは、不信を生むということである。我々が今目にしているように、最終的に真実が浮かび上がった時には投資家が怖気づき、信頼の危機が起きる。
*1=KPMGの日本のメンバーファームはあずさ監査法人、アーンスト・アンド・ヤングは新日本監査法人
 筆者の同僚のジリアン・テットは、長銀の破綻に関する著書『Saving the Sun(邦題:セイビング・ザ・サン―リップルウッドと新生銀行の誕生)』の中で、長銀の役員たちは習慣的に、日銀が検査を実施する際、地下室のコンクリートのマンホールの中に都合の悪い資料を隠したと伝えている。
 それがさらに進んで、子会社を設立するようになり、子会社が不良債権を貯め込んでおくために使われるようになったという。
 多くの日本人はその結末に納得がいかなかった。長銀は米国のプライベートエクイティファンド、リップルウッド・ホールディングスが率いる投資グループによって、新生銀行という名の欧米流金融機関に変わった。だが、オリンパスの外国人投資家が今変革を迫っているように、長銀のごまかしが同社を攻撃されやすくしたのだ。
*恥ずべき不正直
 日本企業は、調和的な労働慣行について欧米に教えるものを持っている。だが、企業の取締役会は、幹部に目を光らせ、たとえ誰を困らせることになっても、規律が適用されていることを確実にするのが仕事だ。オリンパスの取締役たちは、代わりに自分たちを守った。
 徹底した掃除が必要であり、東京証券取引所から上場廃止にされるといった脅威にしっかりと対応できる新たな経営陣が必要だ。菊川氏は立派な意図を持っていたかもしれないが、不正直は恥ずべきことだ。By John Gapper
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オリンパス内部通報:「配転」逆転勝訴だが・・・2011-08-31 | 社会


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