年金改革の試算公表、防衛省・沖縄防衛局長の講話、福島第一原発事故をめぐる政府会議の議事録未作成
3つの問題で迷走を始めた野田政権
現代ビジネス 2012年02月03日(金)長谷川幸洋「ニュースの深層」
野田佳彦政権がいよいよ迷走状態になってきた。
ここへきて混乱の種になっているのは、年金改革の試算公表と防衛省・沖縄防衛局長の講話、それに東日本大震災と東京電力・福島第一原発事故をめぐる政府会議の議事録未作成という3つの問題である。
年金試算については藤村修官房長官が野党の追及を受けて、新たに試算し直した結果を3月中に公表する方針をいったん示した。ところが、党内から反発の声が上がると、その日のうちに「時間がかかる」と軌道修正する始末だ。
沖縄防衛局長の講話問題は局長処分で乗り切ろうとしたものの、党内からも「いずれ更迭は避けられない」が出ている。議事録問題はさらに深刻だ。岡田克也副総理は「議事概要」の作成でお茶を濁そうとしているが、こちらは公文書管理法というれっきとした法律違反の疑いがある。
野田首相は消費税引き上げを訴え、国会開会前は「参院で法案が通らなかったら、どうなるか」などと恫喝まがいのセリフを吐いて強気で攻めていた。ところが、ねじれ国会の現実に直面すると結局、行政改革や衆院定数是正のような重たい案件を避けて通れなくなった。
そこへ降って沸いたように、持ち上がった3つの問題である。ひと言で言えば、国会論戦の第一カーブに入ったばかりというのに、政権自体が勝手にあちこちで自損事故を起こしている格好だ。
この調子だと野党は相手の足下をみて、行政改革も衆院定数是正も話が進まないだろう。とても、その先の消費税引き上げどころではないような雰囲気になっている。
先の3つの問題は無関係であるように見えて、いずれも民主党政権につきまとうガバナンス(統治)の危うさを象徴している。
年金試算はもともと昨年3月、党の「社会保障と税の抜本改革調査会」幹部だった仙谷由人や古川元久らが厚生労働省に依頼して作成したものだ。結果が大増税だったので「お蔵入り」と決めたはずだが、メディアに大きく報じられると、輿石東幹事長や岡田克也副総理が公表に前向きな姿勢を示した。
ところが「それでは目先の増税が危うくなる」という慎重論が高まると「やっぱり出さない」という話になる。それで徹底すればいいものを「試算がなくて議論が出来るか」と批判されると「やっぱり出す」と二転三転した。
なぜ、こうなったか。元をただせば結局、自分たちが最初に公約した「消費税を財源とする最低保障年金」と財務省が悲願とする「社会保障改革を理由にした消費増税」という似て非なる2つの考え方について、自分たち自身でしっかりと論点を整理できていなかったためだ。
ずばり言えば、財務省とすれば増税さえできれば、最低保障年金などどうなってもかまわない。だから、必要な財源論など厚労省まかせで適当にお茶を濁しておけばよかった。党が「試算が欲しい」というなら「厚労省に注文すれば」という程度の話だったのだ。
そうは言っても、最低保障年金はいったん党が公約に掲げた旗だから、ほおっておくわけにもいかない。そこでとりあえず「こっそり厚労省に頼んでみるか」という展開だった。だから、大部分の議員は試算の存在も知らないのだ。
問題があきらかになった後も、もともと政権を背後で動かしている財務省がグリップしていた話ではないから、政権幹部たちが勝手に「公表する」とか「しない」とか喋る始末で、てんでばらばらになってしまった。万事に用意周到な財務省とすれば、上手の手から水が漏れた形だ。完全な誤算である。
沖縄防衛局長の講話問題もがっくりだろう。最初に国会で取り上げて、問題をあかるみに出したのは共産党だ。いかにも共産党らしい「スクープ」だが、こちらもその後の対応がお粗末だ。局長自身が「法律違反の可能性を承知していた」と白状しているのだから、なんとも救えない。問題が長引けば、田中直樹防衛相の責任問題に飛び火するのは必至だ。
大震災の議事録未作成問題は根が深い。というのは、およそあらゆる政府の会議で議事録が作成されていなかったとしても、その大本になる官僚の「手書き議事メモ」がないという事態は考えられないからだ。
世間では「議事録がない」となったら「会議の内容がまったく分からなくなってしまった」と思われがちだが、そんなことはない。実は議事録がなくても、手書きの記録メモ自体はいまでも完璧に残っているはずなのだ。どういうことか。
あらゆる会議に出ている官僚の最重要な仕事は「メモをとる」ことといって過言ではない。なぜかといえば、そのメモをもとに役所が対処方針を決めるからだ。これは役職に関係ない。たとえ局長だろうと、自分1人しか出ていなければ、必死で最初から最後までメモをとる。
メモとりした官僚は直ちに自分の役所にとって返して、幹部たちに内容の詳細を報告する。どんな政治家がどんな発言をしたか。そこが分からなければ、議論が自分たちに都合の悪い展開になっていたとしても、巻き返しようがない。だから会議のメモとりは官僚の仕事の出発点といっていい。
かつて自民党政権時代、政権のもっとも重要な会議は経済財政諮問会議だった。総理が議長、経済財政担当相が司会役になって、ときどきの重要案件を議論した。テーブルに座れるのは閣僚と日銀総裁、それに民間議員だが、官僚たちも後ろの椅子に座ることができる。
その貴重な椅子に財務省は総理秘書官と内閣官房副長官補、それに官房総括審議官の3人を送り込んでいた。とりわけ官房総括審議官の役割はメモとりである。通常、経済財政諮問会議の議論は当日の記者会見でしか外部には分からない。
4日後に議事録が公表される決まりだったが、財務省は官房総括審議官が手書きでとったメモを基に、その日のうちに対処方針を決めていたのである。この4日の差は決定的である。マスコミがおおまかな会見内容を基に記事を書いて「おしまい」としていた間に、財務省は次の手を考え政治家への根回しを始めていたのだ。
手書きメモには、公表される議事録には出ない重要事実が記されている場合もある。本当のやりとりは手書きメモでしか分からないといってもいい。
議事録の未作成はたしかに見過ごせない重要問題である。だが、だからといって「会議自体の記録がない」という話ではない。官僚出身の岡田もそうと知っているからこそ、いまになって「議事概要を作れ」と指示しているのだ。
しかし議事概要ではだめだ。そんな簡略版では国民にとって見過ごせない政権の失態部分は伏せられるに決まっている。手書きメモは役所単位で作っている。野党はこれを機に、出席していた官僚たち全員がとっていたに違いない「手書きメモ」の公表こそ迫るべきだ。
(文中敬称略)
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クローズアップ2012:沖縄防衛局長更迭へ 選挙に関与、半ば慣例化
野田政権が真部朗沖縄防衛局長を更迭する方針を固めたのは、これ以上、事態を長引かせれば、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題だけでなく、政権そのものに大きな打撃となりかねないからだ。しかし、真部氏が宜野湾市長選への投票を呼びかけた今回のケース以外にも、沖縄防衛局が選挙に関与していた例が次々と明らかになっており、沖縄は反発を強めている。
「選挙への不当介入だ」「非常に許し難い問題だ」。2日、防衛省聴取のため真部氏が上京し、トップ不在となった沖縄防衛局。宜野湾市長選に出馬表明した共産、社民、沖縄社会大衆各党が推薦する伊波(いは)洋一元市長と、自民、公明両党が推す佐喜真淳(さきまあつし)県議の双方の陣営関係者がそれぞれ抗議に訪れた。「本省の調査中なので回答を待ってほしい」。応対した局幹部は繰り返し頭を下げるほかなかった。
複数の沖縄防衛局関係者によると、沖縄では知事選と国政選挙で、局長講話などによる職員への投票呼びかけは半ば慣例化していた。局内の講堂に参加できる職員を集め、局長が「棄権せず、必ず投票に行ってください」「公務員の中立性を守ってください」などと話すのだという。幹部職員を集めた会議「局議」で局長が投票を呼びかけ、幹部職員がそれぞれの職場で伝えるパターンもあった。
基地問題を対立軸に、長く保革が伯仲してきた沖縄政界。日米安保体制維持のため「基地の安定的運用」が使命の防衛局にとって、各種選挙での革新側の勝利はその使命の妨げになりかねない。
「候補者名は出さなくとも、真意は十分に伝わる」と関係者は言う。
20年以上前の知事選では、沖縄防衛局の前身、那覇防衛施設局の幹部が局発注工事を受注した土木建設業者を集め、万票単位で集票のノルマを示したこともあったという。
防衛当局の意向が露骨に表れたのが97年に普天間代替施設の海上ヘリポート建設を巡って行われた名護市民投票。住民投票には公選法が適用されないこともあって、那覇防衛施設局は職員が2人1組になって戸別訪問し、基地建設に理解を求めた。
◇「普天間」進まぬ焦りか
ただ、今回表面化した真部氏の講話は宜野湾市長選を巡って行われたもので、職員をリストアップし、親戚への投票呼びかけにまで踏み込んでいた。防衛局関係者は「宜野湾市長選に絡んで局長講話があった例は知らない。中身も明らかにやり過ぎ」と明かす。
普天間飛行場移設で沖縄が保革とも「県外」で一致する中、沖縄防衛局は環境影響評価など移設に向けた手続きや防衛省と地元との調整に忙殺されている。関係者はそうした状況に「焦りがあったとしか思えない」と話した。【井本義親、吉永康朗】
◇官邸迷走、動き鈍く
藤村修官房長官は2日の記者会見で「(講話)全体の評価はできる段階ではない。防衛省の適正化委員会(調査チーム)で判断していく」と語り、事実関係の調査にあたることを強調するにとどめた。
今回、藤村氏の言動は迷走した。講話問題が発覚した1月31日の記者会見では「重大な事案。厳正に対処をしていく方針だ」と重い処分をにおわせた。首相官邸のこうしたムードに防衛省内では「更迭はやむなし」とのムードが広がった。ところが、1日の会見では一転、「全体像をつかんだ上で判断したい。逆にいいことだという評価も出るかもしれない」と火消しにまわり、政権としてのスタンスが定まっていないことを印象づけた。
政権が揺れたのは、講話問題が政権に与える影響を測りかねていたからだ。講話の内容が公選法違反にあたらなければ、訓告や厳重注意などの「形式的な処分で乗り切れるかもしれない」(政府関係者)との迷いが当初はあった。だが、真部氏が「名護の選挙でも(講話を)やった」と、普天間飛行場の移設受け入れが争点になった10年9月の名護市議選でも投票呼びかけの講話をしたことを明かし、事態は深刻化した。
動きが鈍かった自公両党が徹底追及に方針を転換したことも、官邸には誤算だった。自民党の谷垣禎一総裁は2日、党本部で記者団に「防衛省の政策に少しでも有利なように選挙結果を導こうとした疑念がある」と批判。公明党の山口那津男代表も党本部での会合で「公務員の政治的中立性が有権者から疑われる事態は正さなければならない」と強調した。
同日の衆院予算委員会では遠山清彦氏(公明)が「講話は局長の発意となっているが本当か。私が知る局長の人柄や仕事ぶりから考えて、本省、政務三役に判断を仰いでいなかったか」と追及。渡辺周副防衛相は「そういう話は一切なかった。天地神明にかけてお誓い申し上げる」と否定したが、組織ぐるみの疑惑すら浮上している。
事態の深刻化に野田政権は真部氏の更迭方針を固めたが、与党幹部は「防衛局の講堂に(職員を)集めたのは真部局長の判断。こういうのは長引かせたらダメだ。そういうことを官邸はまったく分かってない」と政権の動きの鈍さを批判した。【佐藤丈一、坂口裕彦、小山由宇】
◆沖縄防衛局長問題を巡る主な経緯◆
2011年
12月 19日 不適切発言で更迭された田中聡氏の後任として、真部朗氏が沖縄防衛局長に就任
28日 沖縄防衛局が普天間飛行場移設の環境影響評価書を沖縄県に未明に提出
2012年
1月 4日付 沖縄防衛局総務部が各部へのメールで宜野湾市に本人か親族が在住する職員をリストアップして6日までに提出するよう指示
13日 内閣改造で田中直紀氏が防衛相に就任
18日付 沖縄防衛局総務部が各部へのメールでリストアップされた職員に真部氏の講話を聴くよう呼びかけ
23、24日 真部氏が防衛局庁舎内でリストアップされた職員(80人のうち66人が参加)に講話し宜野湾市長選への投票を呼びかけ
31日 共産党の赤嶺政賢氏が衆院予算委でメールの存在を指摘し問題発覚
藤村修官房長官が記者会見で「重大な事案だ」と指摘
2月 1日 防衛省が衆院予算委理事会で事実関係を認める
防衛省が政務三役らによる調査チーム設置を決める
真部氏が法律違反の疑いを「自覚している」と発言
2日 真部氏が防衛省政務三役の聴取に「軽率だった」と非を認める
5日 宜野湾市長選告示
12日 同投開票
[毎日新聞 2012年2月3日 東京朝刊]
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〈来栖の独白〉2012/2/3Fri.
いじましいことを言うようだが、更迭であっても、キャリア官僚たちの退職金は半端ではないだろう。十分、優遇される。
昨年夏、以下のような記事があった。
<経産省3首脳更迭>退職金、「自己都合」より2割高
東京電力福島第1原発事故への一連の対応や国主催の原発シンポジウムでの「やらせ問題」などの責任を問われ、更迭される経済産業省の松永和夫事務次官(59)▽寺坂信昭原子力安全・保安院長(58)▽細野哲弘資源エネルギー庁長官(58)の3首脳に対して、自己都合退職よりも高額の退職金が支給されることが11日、分かった。
経産省は「3首脳の退任は勧奨によるもので処分によるものではないため、通常の早期退職と同等の扱いになる」と説明。国家公務員の退職金に関して定める退職手当法で規定する「定年前早期退職」が適用され、退職金は自己都合退職よりも2割前後(1000万円超)高くなるとみられる。
退任日は松永次官と寺坂院長が12日付、細野長官が9月1日付。海江田万里経産相は4日、3首脳の更迭を発表した。【野原大輔、和田憲二】
毎日新聞 2011年8月12日(金)2時33分配信
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◆福島原発事故 記録を隠蔽「愚者の楽園」/「衆愚の中からは衆愚しか生まれない」悪党小沢一郎に仕えて2012-01-26 | 政治
愚者の楽園
田中良紹の「国会探検」
「普通の国」なら国がひっくり返るほどの大騒ぎになっている問題が大騒ぎにならないからこの国は異常である。
3月11日に発生したフクシマ原発事故で設置された政府の「原子力災害対策本部」が議事録を作っていない事が判明した。国家としてあるまじき行為、民主主義の根幹が否定された話である。ところがメディアは騒がない。日本は極めて静かである。本質的な問題を直視しようとしない国は「愚者の楽園」と言うしかない。
昨年5月に書いた『場当たりポピュリズムの末路』というコラムで、私は「大震災の発生直後からの政治の対応にどうしようもない違和感を感じてきた。理解できない動きの連続に唖然としてきた。それを想定外の事が起きたからという言い訳で政権は切り抜けてきたが、とてもそれだけで納得できるものではない」と書いた。
その違和感の正体がここにある。この問題を報じたNHKによると、事務局を務めた原子力安全・保安院の担当者は「業務が忙しくて議事録を作成出来なかった」と釈明したという。国民をバカにするのにも程がある。そんなデタラメが通用すると思っているなら国民も随分なめられたものである。
会議でメモを作らない官僚など存在しない。どんな緊急事態でも、どんなに多忙でも、メモを作るのが官僚の仕事である。総理大臣以下全大臣が出席した「原子力災害対策本部」の会議は、いわば行政府の最高レベルの会議であるから記録がない筈はない。それを「議事録がない」事にしたのは「会議の内容を隠蔽したい」と言っているに等しい。
誰が記録を隠蔽しようとしているのか。政治家が官僚に隠蔽を命じたとすればその政治家はもはや国民の代表ではない。国民主権を裏切る側の代表である。それとも政治家の指示もないのに官僚が隠蔽しようとしたのなら官僚は国民の代表を無視した事になる。それも国民主権を裏切る行為である。日本は民主主義国でない事になる。
放射能予測装置「スピーディー」の情報が国民に公開されなかった問題でも菅総理、枝野官房長官らは「知らされなかった」と釈明した。一方で文部科学省の官僚は事故直後に米軍に「スピーディー」の情報を提供した事を認めた。政治家は本当に知らされなかったのか。日本の官僚は国民の代表ではなくアメリカの下で働いているのか。米軍は放射能から守られ、国民は放射能に汚染した。大問題なのに誰も追及しない。
以前『秘密会がない国会は異様だ』というコラムを書いた。他国では当然のように開かれる「秘密会」がわが国会では開かれない。政治に未熟な人間は「何でも透明にするのが民主主義だ」と言うが、国民を外国の勢力から守り、経済を円滑に運営するためには、機密情報を元に政治家同士が議論する必要がある。国民の利益のために「透明にできない」場合もあるのだ。
しかしメディアには公開しないが、機密保持を条件に与野党の議員、すなわち国民の代表には教えて議論するのが「秘密会」である。国民の代表に公開すれば隠蔽した事にはならない。ところがわが国では肝心な情報を官僚が独占し、国民の代表に教えないから「秘密会」も開かれない。霞が関の中だけで結論を決め、一部の政治家にだけ教えて国会を誘導する。だから総理大臣も情報を知らされない可能性がある。それを変えようとしたのが09年の政権交代だったが、全く変わっていない事がこの問題でも明らかである。
問題を沈静化させるためか、藤村官房長官は23日の記者会見で「議事録を作成する」と発言した。しかし録音があるのかどうかは明らかにされず、職員のメモを頼りに作成すると言う。それが実際の議論通りなのかを国民は判断する術がない。もはや政府に都合の良い議事録が作られると考えた方が良い。そうなると政府と国会と民間とに作られた事故調査委員会の調査はどうなるのか。気の抜けたビールのような気がしてきた。
そして忘れてならないのが原発事故の対応を中心的に行なったのは「原子力災害対策本部」ではなく、東京電力本社内に作られた「原発事故対策統合本部」である事だ。事故発生の4日後、菅内閣は法律に定められた「原子力災害対策本部」とは別にわざわざ任意の組織を作って事故対応に当った。その議事録が明らかにならなければ今回の原発事故の対応を検証する事は出来ない。
「フクシマ」を将来の国民を守るための教訓にするには、「統合本部」の議事録の公開は必須である。政府が公開を拒むなら野党が国会で追及すべきである。つまらぬ党利党略に凝り固まって国民に人気のない自民党にとって起死回生の攻撃ポイントになる。それが出来ないなら自民党は昔と変らぬ官僚下請け政党と看做され、政権交代など夢のまた夢になる。
沖縄返還交渉で佐藤栄作総理の「密使」を務めた故若泉敬氏は、アメリカとの外交交渉で核持込の密約を呑まされ、沖縄県民に贖罪の心を抱いていた。一方で沖縄返還後の日本が日米同盟に絡め取られていく様に絶望し、極秘交渉の経過を『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』という本に著した。密約の暴露は日本に衝撃を与える筈であった。ところが誰も騒がない。重大問題に鈍感な日本を若泉氏は「愚者の楽園」と呼んだ。今回の議事録問題は私にそれを想起させる。
投稿者:田中良紹 日時:2012年1月24日02:59 *強調(太字・着色)は来栖
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◆WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)2011/5/27 小沢一郎元民主党代表インタビュー「天命に遊ぶ」2011-06-03 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
小沢一郎元民主党代表インタビュー:一問一答 WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)2011年5月27日12:58
小沢一郎元民主党代表はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、福島原発事故への政府の対応は「遅く、放射能汚染に対する認識がまったくない」と批判するとともに、長年ライバル関係にある菅直人首相について「首相は一日も早く代わったほうがいい」と述べ、対決姿勢を鮮明にした。
以下はインタビューの一問一答。
Q:東日本大震災と福島第1原発事故以降の政府の対応について、全般的にどう評価しているか。
A:もう2カ月以上、70日になる。原子炉がコントロールできない状況に置かれている。
私は客観的な見方をする学者の先生から、この状況は燃料の熔融や炉が破損して、非常に危険な状況だということを聞いていた。非常に心配していたら、今になって、仕様がなくなってポツポツ認めている。対応が遅く、放射能汚染に対する認識が甘い、というより、まったくないといってもいいくらいの菅内閣の対応だ。
一般自然災害への対応も、私の県も被災県の1つだが、単なる旧来の取り組みと同じだ。役所の積み上げと、査定に任せきりで、民主党が目指した国民主導・政治主導という政治の在り方とは程遠い実態になっている。私もそうだが、ほとんどの人たちが、不安と不満を募らせているというのが現状だ。やはりその最大の原因は、民主党が掲げてきた、政治家が自ら決断して政策を実行するということが行われていないためだ。決断とは、イコール責任だ。責任を取るのが嫌だとなると、誰も決断しなくなる。
Q:原発事故で事態をここまで悪くしないようにするために、政府がすべきであった決定や政策はどんなものがあったか。
A:こういう状況になると、東京電力の責任に転嫁したって意味がない。東京電力が悪い、あいつが悪い、こいつが悪いということを言っている。どうでもいいことならそれでいいが、原発の放射能汚染の問題は、ここまで来ると、東電に責任を転嫁しても意味がない。政府が先頭に立って、政府が対応の主体とならねばいかんというのが、私の議論だ。東電はもう、現実何もできないだろう。だから、日一日と悲劇に向かっている。
Q:菅首相は統合本部を数日後に設立し、東電に踏み込んだ。あれは十分ではなかったのか。
A:十分も何も、パフォーマンスはどうだっていい。そういうことを気にすべきではない。事態は分かっているのだ。何が起きているかってことは、ほぼ。東電が分かっているのだ。東電が分かっていることは、政府も分かっているのに決まっている。だから、私が言ったように、他人に責任をなすりつける話ではない。政府が主体となって対応策を、どんな対応策かは専門家を集めなければ分からない。それは衆智を集めて、こうだと決まったら政府が責任を取るからやってくれと、そういうのが政治主導だ。それがまったくみられないから、国民はいらいらして不満を募らせ、民主党はだめだとなっている。
Q:小沢氏が指揮を執っていれば、最初の段階でメルトダウンが起きて危ないということは国民に大きな声で言っていたか。
A:言うだろう。隠していたらどうしようもない。それを前提にして、対応策を考えねばならない。当面は福島の人だが、福島だけではない、このままでは。汚染はどんどん広がるだろう。だから、不安・不満がどんどん高まってきている。もうそこには住めないのだから。ちょっと行って帰ってくる分には大丈夫だが。日本の領土はあの分減ってしまった。あれは黙っていたら、どんどん広がる。東京もアウトになる。ウラン燃料が膨大な量あるのだ。チェルノブイリどころではない。あれの何百倍ものウランがあるのだ。みんなノホホンとしているが、大変な事態なのだ。それは、政府が本当のことを言わないから、皆大丈夫だと思っているのだ。私はそう思っている。
Q:なぜ、このタイミングで出てきたのか。
A:隠しようがなくなったからだろう。知らないが。政府に聞いてみるべきだ。
Q:菅首相はアドバイザーを集めて意見を聞いている。聞き方がまずいのか。
A:何を聞いているのだか知らない。集めただけではしようがない。結論を出して何かやらないと。だいたい、原発で食っている連中をいくら集めてもだめだ。皆、原発のマフィアだから。あなた方もテレビを見ていただろう。委員だの何だの学者が出てきて、ずっと今まで、大したことありません、健康には何も被害はありません、とかそんなことばかり言っていた。原子力で食っている人々だから、いくら言ったってだめなんだ。日本人もマスコミもそれが分からないのだ。日本のマスコミはどうしようもない。
Q:いろいろ聞いてやってみて、だめだったら辞めてもらうということだが、どこまでいったら辞めてもらうのか。どの辺が判断の基準になるのか。
A:どこまでということはない、何もしていないのだから。このまま、ダラダラしていたら、本当に悲劇になってしまう。海も使えなくなる。
Q:原子力エネルギーをどう考えるか。
A:しょせん、過渡的エネルギーとしてはある程度、大口電力供給のためにも仕方がない。だが、高レベルの廃棄物を処理できないからいずれ、新しいエネルギーを見出さなければいけない。そのように私は言ってきた。まさに今、こういう自然災害のなかで、原発の事故まで起きて、これを食い止めると同時に、長期的なエネルギー政策をしっかりと考える必要がある。
Q:菅政権に対する小沢氏の批判だが、今回、事態の深刻さに対して菅政権が国民に対して正直でなかったことにあるのか、それとも、もし政権が強ければ、事態の対応はもっとうまくいっていたということにあるのか。
A:政権が強い、強くないとの表現も間違いではないが、さきほどから言っているように、何か国民生活に関する問題を処理する時に、われわれは、自民党の官僚機構に任せて、おんぶに抱っこの政治はもはやだめだと言ってきた。政治家が自ら決断し、国民のための政治を実行する。今回の原子力の話だけではない。
しかし、それは何かというと、それはイコール責任だ。決断したら決断した者の責任が生じることは当たり前だ。責任のない決断はない。そういうことを主張してきたにもかかわらず、民主党の政権が、特に菅政権が、そうでないという実態に気づき、国民の支持を失っている。政策の実行ができないのなら、総理をやっている意味がないでしょう、ということだ。
Q:問責決議案や不信任案を提出する、提出しないとの話が出ているが、国難といわれる時期、そのような政治家の動きを国民はどう受け止めているとみるか。
A:困難な時だけ仲良く、仲良くというのは日本人の発想で、だからだめなのだと考える。日本のマスコミは全部そうだ。太平の時は誰でもいいのだ。うまくいっている時は。困難、危機の時だから、それにふさわしい人を選び、ふさわしい政権を作るのだ。日本人は発想が逆だ。大陸の人は、発想がそうではない。日本人は平和ぼけしているから。まあまあ争わないで、まあまあ仲良くという話になる。仲良くしたって、何も解決できない。当たり障りのない話をしているだけだ。波風立てずに、丸く丸く。これでは、政治家など要らない。役人に任せていればいい。
Q:菅首相を降ろせというなか、強いリーダーはいるのか。
A:何人でもいる。
Q:強いリーダーの代表格というと小沢氏が思い浮かぶ。自分でやろうとの気持ちはあるのか。
A:私はもう老兵だから。老兵は消え去るのみ、とのマッカーサー元帥の言葉はご存知だろうか。消え去ろうと思っていたが、もう一仕事やらねばならないとは思っている。
Q:話題を変える。政治資金規正法違反の話は今、どういう状態で、今後、どういう方針で戦うのか。
A:どういう方針もなにもない。私は何も悪いことをしていない。これは官憲とマスコミによるものだ。旧体制の弾圧だからしようがない。調べてほしいのだが、私は何も不正な金はもらっていない。ただ、報告書の時期がずれていただけだ。こういった例は何百、何千とある。単に報告書を直して再提出するだけで済んでいた話だ、今まではずっと。なぜ、私だけが強制捜査を受けるのか。そこを全然、マスコミは考えない。
これは民主主義にとって危機だ。政府ないし検察の気に入った者しか政治ができないということになる。ほんとに怖い。あなた方も変な記事を書いたとして逮捕されることになりかねない。そういうことなのだ。絶対にこういうことを許してはいけない。私が薄汚い金をもらっているのなら辞める。
1年以上強制捜査して何も出てない。だからちょっと報告書の書き方を間違ったといったわけでしょう。現実政治というのは権力だからそうなるんだが。戦前もそう。それを繰り返したんじゃ、だめだ。そんな民主主義は成り立たない。それを心配している。自分はなんてことない。なんの未練もない。政治家をやめれば遊んで暮らせるからそれでいいが。日本の民主主義はこのままだと本当にまた終わりになる。外国が心配しているのはそこだ。日本は本当に民主主義国家かという心配をしている。
Q:震災に話を戻す。復興、復旧にこれからお金がかかっていく。もちろん労力も。一つは第2次予算が出るか出ないかで国会でもめている。第2次予算の緊急性と規模はどのようなものと考えるか。もう一つは、財源は増税にするのか、国債発行にするのか。そのへんはどのようにすべきか。
A:復旧に必要なことは、お金がどれくらいかかったって、やらなくてはならない。あのままでは住めなくなる。再臨界に達するかもしれない。あそこが爆発したら大変だ。爆発させないために放射能を出しっぱなしにしている。爆発するよりたちが悪い、本当のことを言うとだ。ずっと長年にわたって放射能が出るから。だから私は金の話じゃない。日本がつぶれるか、日本人が生き延びるかどうかという話だと言っている。金なんぞ印刷すればいい。その結果、国民が負担することになるが。国家が本当に放射能汚染をここで食い止めるという決意のもとに、徹底して金だろうがなんだろうがつぎ込まなくてはだめだ。国民はそのことをよく理解してほしい。国債でやれば借金だし、いずれ償還分は払わなくてはいけないが。
Q:東電の処理について役所が過去にはいろいろ決めてきた。今回、役所の言うとおりに決めてはいけないと考えるか。
A:東電のことはたいした問題ではない。一私企業がどうなろうが。それが本質ではない。ただ、例えば東電がつぶれるとする。電気の配電やら運営ができなくなる。それから5兆円の社債を出しているから、社債が暴落する。公社債市場が大変になる。それから銀行に何兆円かの借金があるから、それが返せなくなると銀行も大変だ、ということだろう。どうってことはない。要は早く原発の放射能を止めることだ。
Q:民主党が政権をとって間もない2009年10月、インタビューした際、自民党をつぶすことが目的だと言っていた。今回、発言を聞いていると、民主党政権に非常に批判的だが、自民党がむしろリーダーになった方がよいと、日本を救えると見ているのではないか。
A:私はそう見ていないが、国民がそのような状況になってきているということだ。これなら自民党の方がまだいいじゃないかという人が多いでしょう。私が描いていた図とちょっと違うのは、民主党政権がもう少し愚直に政治に取り組んでくれることを期待していた。そうすれば、国民がたとえ個別の政策が少しずつ遅れたとしても、変更したとしても絶対支持してくれると。
そういう民主党をまず作り上げる。しかし、一方において自民党的、というのは日本的な政党だが、これも必要だと。自民党は事実上つぶれたような状況だが、新しい自民党がまた成長してくれると。そこで2大政党という絵を描いていたのだが。どうにも民主党政権自体がおかしくなって、強烈な支持者であった人たちも、ちょっともう見放した格好になっている。
例えば、何兆円の企業のオーナーである稲盛さんとか、スズキ自動車の鈴木会長とかは、何兆円の企業でありながら、正面切って民主党を応援してくれていた人たちが、本当に一生懸命やっただけに、頭にきちゃって、こんな民主党ぶっつぶせ、もう一度やり直しだと言うくらい失望している。愚直さに欠けた民主党政権でちょっと違った。違ったときは違ったなりに考えなくなくてはならないので仕方ない。だが私の最初の理想は変わらない。日本に議会制民主主義を定着させたいという理想は全然変わっていない。
Q:いま、国会に不信任決議案が提出された場合、それを支持するか。
A:それはどうするかよく考えているところだ。
Q:菅首相はどのくらい政権に留ると考えているか。
A:彼はいつまでも留まりたい。だから困っている。それが彼の優先順位の第一だから。だからみんな困っている。
Q:先ほど「もう一仕事したいという気持ちを持っている」と言っていたが、どのようなことがしたいか。
A:いま言ったことだ。議会制民主主義を日本に定着させたいという、この理想は全然変わっていない。ところがいま、民主党も国民から見放され、自民党もかつての自民党ではなくなってきている。このままでは日本の政治はぐちゃぐちゃになる。だからそうならないように、老骨にむち打って頑張ろうかということだ。
Q:最近になって、メルトダウンが起きていたとか、原子炉に傷が付いていた、などの情報が次々と出ているが、政府は今まで知らなかったのか。
A:知っていたけれど言わなかったということだろう。だから問題だ。
Q:どういうことか。
A:知らない。政府のことだから。言うと大変になると思ったから言わなかったのだろう。大変になるというのはどういうことかというと、政府の対応が難しくなると言うことだ。だけど、わたしはそんなことで躊躇しているときではないと考えている。
Q:声が上がればご自身が前面に出られて首相になるということも考えられるのか。
A:私は、あまりにぎにぎしい立場というのは好きではない。もう気楽にしていた方がいいから、自分で好みはしないが、「天命に従う」というのはよくないけど、「天命に遊ぶ」という言葉が好きになった。天命の命ずるまま、もういらないと言われれば去るのみだ。
Q:最後に、菅総理はどのぐらい総理の座にとどまるとみているか。
A:一日でも早く代わった方がいいと思う。 *強調(太字・着色)は来栖
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