話し合い解散 困難 「違憲状態」響くか 維新の会 台風の目
中日新聞《核心》2012/04/01
次回の衆院選は、全体像を見通すのが難しい。まず、解散がどのような形で行われるのか分からない。時期は憲法問題も絡み、複雑だ。そして、既成政党以外の第三極がどこまで伸びるのか。これらの三つの「未知数」を紐解きながら、衆院選の構図を占う。(政治部・清水俊介、安藤美由紀、上野実輝彦)
■決意
今、与野党の最大の政策課題は、消費税増税法案。野田佳彦首相は、同法案成立に向け、掛け値なしで「不退転の決意」で臨んでいる。
同法案が不成立になったり、内閣不信任決議案が可決したりすれば、首相は「国民に、聞いてみたい」と衆院解散に打って出る可能性は十分ある。
今回は、もうひとつの解散パターンがある。従来の激突型解散と異なる「話し合い解散」だ。与野党の主要政党で解散の時期を約束し、その前に主要な政策課題を実現するという手法。今回は、消費税増税法案を成立させるのと引き換えに衆院を解散させるというシナリオが語られている。
ただ、政治生命を左右する解散について合意するには与野党の党首間に一定の信頼関係が必要だ。野田首相と自民党の谷垣禎一総裁は二月二十五日、極秘に会談したことが明らかになっているが、解散日程について話し合うような関係にはほど遠い。また、話し合いで解散すれば、既存政党による談合と批判を受けるため、民主、自民の両党内でも反対論が出るだろう。そもそも話し合い解散は、一九五八年に一度実現したが、その後は行われていない。永田町のシナリオ通り話が進む可能性は高くない。
■区切り
二〇〇九年衆院選での一票の格差が最高裁から「違憲状態」とダメ出しされて、一年が経った。
違憲状態を解消しなければならないというのは与野党の最大公約数だ。最も手っ取り早く有力な案は福井、山梨、徳島、高知、佐賀各県を一議席ずつ減らす〇増五減。ただ、この方針を決めても、それから具体的な選挙区の区割りを衆院議員選挙区画定審議会で行わなければならない。
区割りが完了して法整備が終わっても、有権者に新しい選挙区が浸透するために一定の周知期間が必要だ。周知期間は、与野党でも「最低三ヶ月」「できれば一年」とさまざまな見方がある。最短の経路を辿っても、違憲状態を脱するまでに半年以上かかる。
野田首相は、違憲状態のままで解散の可能性をちらつかせているが・・・。
■第三極
小選挙区制を中心とする選挙制度が導入されて以来、五回衆院選が行われてきた。その間、二大政党への議席の集約が進んできた。
中選挙区制時代、第三党以下の政党は、定数のおよそ20〜30%程度を占め、議席数も百以上を維持していた。 だが、直近の三回では第三党以下の議席の割合は15%を下回り、前回は一割程度になってしまった。
ただ、次回の選挙は、流れが変わるとの見方が強い。民主、自民の二大政党への失望感が広がり、新しい政治勢力を求める意見が国民の中で広がっているからだ。
注目されているのが橋下徹大阪市長が代表を務める「大阪維新の会」。二月の共同通信社の世論調査では、61%が維新の会の国政進出に「期待する」と答えている。
維新の会は衆院選で三百人の擁立を目指しているとされる。目標通り候補者を擁立すれば衆院選の台風の目となる。
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「政党じゃない」維新の会のウイークポイントとは
PRESIDENT online NEWS FILE 2012年3月30日(金)
「もし今夏、野田佳彦首相が消費税増税関連法案を争点に衆院の解散・総選挙に踏み切った場合、鳩山由紀夫元首相は落選し、菅直人前首相も危ないと見られている」(全国紙選挙担当デスク)
大政党が急速に国民の支持を失い、次の総選挙では大物議員が続々落選しそうな雲行きだが、そんな中、ただ一つ勢いに乗っているのが橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」。
橋下市長は、大阪市職員に組合、政治活動への参加を強制的に答えさせるなど、その“強面ぶり”が一部で反発を買っているものの、橋下氏の突破力に多くの国民が漠然とした期待を寄せている現状は変わらない。
だが維新の会は、今のところ地域政党にすぎず、政党としての要件を満たしていないというウイークポイントを抱えている。所属国会議員5人以上、もしくは1人以上かつ直近の国政選挙の得票率2%以上のいずれかの要件を満たせば政党と認められ、政党助成金を受けられるのだが、地域政党の場合は政党助成金が受けられず、小選挙区と比例区の重複候補が立てられないといった制約を受ける。
そこで維新内部で議論に上っているのが、他党の国会議員の引き抜きや既成の小政党との合併話だ。
すでに橋下氏が塾長の「維新政治塾」に民主党の国会議員が一人応募し、党内で物議を醸したが、水面下ではほかにも維新への転身を模索している議員がいるとみられる。果たして一本釣りで5人を確保できるかどうか。5人集められないときは小政党との合併という選択肢も。
「実際、維新内部では以前から、政策が近い渡辺喜美代表の『みんなの党』との合併について話し合われている。双方ともにブレーンがほぼ同じ。渡辺代表は維新が掲げる大阪都構想実現のために地方自治法の改正案も作って連携をアピールしている。みんなの議員は関東中心で大阪など関西が足場の維新と選挙区が重ならない。維新の“全国展開ら”には、みんなと組むのが最もやりやすい」(前出選挙担当デスク)
ただし維新関係者によると「みんなの幹部の中に“うちは中央政党だから”と先輩風を吹かす人がいて維新内部の反発を買ったことがある」ほか、「みんなと組むと、維新も既成政党とみなされる恐れがある」との慎重論もあるとか。渡辺代表は橋下氏のハートをつかめるか。
PRESIDENT 2012年4月16日号
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◆公債特例法案・行政改革・一票の格差と選挙制度・小沢裁判・・・複雑に絡まりあいながら政界再編に向かう 2012-03-31 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
再編の幕開け
田中良紹の「国会探検」
野田内閣が消費増税法案を国会に提出した事で与党は分裂模様である。それを見て嘆息する国民も多いと思うが、私はいよいよ政界再編の幕が上がったと思っている。
話は2005年に遡る。郵政選挙に勝利して巨大与党となった自民党は、自公体制を磐石にして長期政権を敷くため、小沢一郎氏が主導して実現させた小選挙区制を中選挙区制に戻そうと考えた。
絶頂期にあった小泉総理は中選挙区制の復活を公明党に約束する一方で、盟友である山崎拓氏に靖国問題で対極の立場を表明させ、民主党議員を巻き込んだ議員連盟を作らせた。それは1993年に小沢一郎氏らが自民党から飛び出し、細川政権を作って以来の政治体制を終らせ、自民党が主導して新たな政治体制を作る動きに私には見えた。
「2005年体制」と当時の学者はしきりに言った。それによると、「55年体制」は冷戦構造の中で自民党長期政権を生み出したが、それを壊した小沢一郎氏ら自民党脱党組は日本政治に混乱をもたらした。ところが05年総選挙によって自民党は再び巨大化し、小沢氏らの野党勢力を一掃した。そこで自民党を基盤に二つの政党を作り、それが政権交代する新たな政治体制が出来ると言うのである。それが実現すれば小泉氏は「日本政治中興の祖」になる筈であった。
ところが構想は2年後に破綻する。小泉後継の安倍政権が07年の参議院選挙で小沢一郎氏率いる民主党に敗れたからである。勝利した小沢氏はしかし民主党が自民党に代わって政権を担える政党とは思っていなかった。小沢氏が考えたのは自民党と民主党をいったん合体させ、その上で二つに分ける政界再編である。それが福田総理との間で話し合われた「大連立」であった。
「大連立」にはもう一つ目的があった。政党を二つに分ける前に、国家の基盤となる安全保障政策を同じにする事である。それが出来れば二大政党による政権交代はよりスムーズになる。だから小沢氏は福田総理に民主党の安保政策を飲むように迫り、福田総理も真剣にそれに応えようとした。歴史に「イフ」はないのだが、あの時「大連立」が実現していれば日本は確実に変わっていた筈である。
ともかく「大連立」は安保政策の転換と政界再編を実現しようとした。しかし民主党内の反発で不発に終わり、09年の総選挙で民主党は政権交代を目指す事になる。その選挙直前に「西松建設事件」が起きた。それがなければ小沢総理が誕生していた。
現役の政治家の中で政府の中心にいて消費増税に取り組んだ経験を持つのは小沢一郎氏ただ一人である。消費税増税の難しさを最も良く知っている。増税の意義をいくら説明しても、国民は消費税が本当に国民生活のために使われるのかを疑っている。自分にどれだけ利益になるかが分からない。
そこで09年の民主党マニフェストは国民に直接利益を与える所から始まった。その財源は行政の無駄を省く事で捻出する。行政の無駄を省くためには官僚との壮絶な戦いが必要だが、それを最低4年間はやり抜く。その上でいよいよ足りなくなればマニフェストでうたった政策をやめるか、消費税の値上げを認めてもらうかを選挙で国民に問う。民主党マニフェストを私はそのように読んだ。
一方で、野党に転じた自民党はひたすら民主党マニフェストを「バラマキ」と攻撃した。そして民主党が財政均衡を守らない政党である事を印象付けるため、10%の消費増税を参議院選挙のマニフェストに入れた。政策に責任を負わない野党だからこそ作れた選挙マニフェストである。ところが民主党の菅総理がそれに抱きついた。財務省の圧力があったのか、アメリカの圧力があったのかは知らないが、09年の民主党マニフェストとは違う事を言い始めた。
その頃私は「政界再編が準備されつつある」というブログを書いた。メディアは菅総理の「脱小沢」ぶりを強調し、民主党の党内対立を面白がっていたが、私には民主党が党内に二つの潮流を作り、民主党が主導する形で再編を始めようとしているように見えた。そしてその見方はその後も変わっていない。
そこで野田政権の消費増税である。野田総理は「不退転の決意」を強調するが、実現させる方策を全く講じない。そのくせ「今国会で成立させる」と事を急ぎ、しかもそれに「政治生命を賭ける」と言い切る。本当に社会保障のために消費増税をやると言うのならそんな言い方をする必要は全くない。無理矢理成立させようとすればするほど、逆効果となり成立は難しくなる。野田総理は一生懸命に成立を難しくしているのである。
野田総理の発言を私なりに解釈すると、長く総理をやらないという事である。法案が通らなければ総辞職か解散しかないが、解散に打って出れば選挙で負けるのは必定で、どっちにしても総理を辞める事になる。辞めずに済むのは自民党が野田政権に協力して法案が成立した場合だが、成立する前に選挙をすれば元の木阿弥になる恐れがある。選挙は増税が成立した後になり、そうなれば協力した自民党も選挙で勝つ見込みがなくなる。
なぜなら「消費税より行政の無駄を省け」と主張する地方首長の勢力が選挙に出ようとしていて、国民の人気は圧倒的にそちらに向かう。選挙になればその勢力と組む消費税反対派が選挙に勝利する可能性が高い。困っているのは実は自民党だと私は思う。自民党の中も次第に一枚岩ではなくなる。国民は民主党や国民新党の分裂模様に目を奪われているが、彼らはそれをあらかじめ計画してやっている可能性があるのである。
誰も指摘しないのが不思議なのだが、実は消費税より重要な法案がある。特例公債法案である。これが成立しないと予算は成立しても執行が出来なくなる。「ねじれ」だから常識的には成立しない。去年はそれを成立させるために菅総理が退陣と引き換えにした。今回も野田総理が自らの首を差し出すのか、それとも自民党と手を組んで切り抜けられるのか。それもこの政局に絡んでくる。
そして4月末の小沢裁判の判決次第で消費税政局の舞台はまた変わる。このように消費税政局は、公債特例法案、行政改革、一票の格差と選挙制度、小沢裁判などと複雑に絡まりあいながら最終的には政界再編に向かって進んでいくのである。
田中良紹 2012年3月31日 03:21
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