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国民も経済界も原子力村の論理に絡め取られている/知らないのは日本人だけ?(2)原発は安い、という神話

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知らないのは日本人だけ?(Part2)「原発は安い」という作られた神話
JBpress 2011.06.14(Tue) 川島 博之

 人類はエネルギー源として、石油、石炭、天然ガス、原子力などを用いている。ただ、石炭を使うようになったのは、ここ200年のことだ。石油は100年、天然ガスは60年、原子力は40年ほどの歴史しかない。それまでは、燃料として木材を使ってきた。
 技術の進歩によって、次々に新たなエネルギーが出現したが、それが広く使われるかどうかは、コストが関わっている。産業界は安いエネルギーを求める。
 日本は戦後の一時期まで石炭を使用していたが、昭和30年代に石油に転換した。中東から大量の石油が供給されるようになり、石炭より石油の方かコスト面で有利になったからだ。
 日本は戦後の焼け野原から新たに産業を立ち上げた。そのために、自由にエネルギーを選択することができた。そして、いち早く石油に切り替えたことが高度成長をもたらした。
 一方、戦勝国でありながら戦前からの工業国であったイギリスは、石炭から石油への転換が遅れた。石炭を使用する設備が多数存在し、また石炭産業の労働組合が強かったためだ。その結果、イギリスの産業は衰退した。
 このようにエネルギーと社会のあり方の間には深い関係がある。適切なエネルギー源を選択しない社会は衰退する。
*21世紀に入ってから原発の比率は減少している
 そんな目で、下の図[原子力発電の1次エネルギーに占める割合、出所:IEA(国際エネルギー機関)]を見ていただきたい。

これは原子力発電が「1次エネルギー」に占める割合を示したものである。1次エネルギーとは総エネルギー供給量のことである。この図から、世界がどんな思いで原子力発電を行っているか読み取ることができる。
 日本では原子力発電は安いとされている。それは、電気事業連合会がそのように試算しているからだ。
 ただ、昨今は原子力発電が本当に安いかどうかについて議論がある。燃料代は安いが、反対派対策などに社会的コストがかかり、また、使用済みの燃料を処分するにもコストを要するためだ。廃炉など最終処理に要するコストは、今でもよく分かっていない。
 このようなことを考える場合には、世界を広く見渡して見ることも必要だ。もし原子力発電が本当に安いエネルギーならば、多くの国が原子力発電を増やすだろう。その結果、1次エネルギーに占める原発の割合は上昇する。
 だが、図を見て分かるように、21世紀に入ってから原発の比率は減少している。アメリカも原発大国とされるフランスでも、原発の1次エネルギーに占める割合は横ばいか、低下傾向にある。
*多くの国が心の底で思っていること
 なぜ低下しているのであろうか。スリーマイル島やチェルノブイリの事故が影響していることは確かだ。反対運動が盛んになったために、原発を建設することが難しくなったのだ。だが、そうした社会的コストが高くつくようになったのは、日本やドイツなど先進国でのことだろう。
 先進国だけが原発を持っているわけではない。インド、パキスタン、メキシコ、アルゼンチンなど多くの国が所有している。それらの国では、反原発運動は先進国ほどには強くないと思う。それでは、なぜそのような国で原発による発電量が増えなかったのであろうか。
 それは、多くの国が、心の底では「原発は高い」と考えているためと思われる。
 近年、安価な天然ガスが豊富に存在することが分かり、ヨーロッパを中心にその利用が進んでいる。また、中国の奇跡的な経済成長は、安価な石炭を利用したものだった。石炭は単位エネルギー当たりのCO2排出量が石油や天然ガスに比べて多いために、多くの国はその使用を控えている。しかし、中国はそんなことはお構いなしで、大量に使っている。
 今になって中国も原発を造り始めているが、それは言ってみれば、バブル景気に踊って気が大きくなっているせいだろう。原発を大量に造り始めたのは、航空母艦の保有を願う気持ちと同じと見てよいと思う。
 各国とも、エネルギーが経済と深く関わっていることをよく知っている。だから、1990年代になると、原発を増設することはなかった。それは、使用済み燃料の最終処理まで考えると、原子力が決して安いエネルギー源ではないと思っているからだ。
*「原子力の平和利用」の裏側にあった思惑
 図より分かるように、原発が増えたのは冷戦時代の70年代から80年代にかけてである。そして、冷戦が終了した90年代に入ると横ばいになり、21世紀になると減少し始めた。
 80年代は石油価格が低迷した時代であったが、それでも原発は増えた。一方、石油価格が高騰した21世紀に、原発による発電割合は減少している。このことは、原発が安いエネルギー源として造られているのではなく、「安全保障」と密接な関係を有していることを示している。
 日本が原発を造った動機も、既に多くの人が指摘しているように、安全保障が深く関わっている。広島、長崎に原爆を落とされた日本では、国民感情を考えれば原爆を持つことはできない。そうであればなおさらのこと、原発を所有し、それのみならずプルトニウムを燃やす技術を開発して、潜在的核保有力の高さを誇示する必要があった。
 歴代の自由民主党政権は原発保有の安全保障面でのメリットを重視してきた。そのため、少々の事故には目をつぶり、またコストを無視して多額の税金を投入してきた。
 そして、安全保障面での効果を期待しながらも、そのことをおくびにも出さなかった。原子力の平和利用を強調してきた。
 このような二重性が原発の周辺の人々を甘やかし、そして利権を生んだ。利権はがん細胞と同様に自己増殖し始める。福島第一原発事故の後に「原子力村」と揶揄されるようになった集団は、「原発は安い」と言う神話を作り上げ、また地球環境問題への対応を追い風にして原発を増設し、利権を拡張しようとしたのだ。
 世界はコスト面から原発を冷めた目で見ていたが、原子力村の住人たちは、世界の趨勢とは全く異なるイメージを国民に植え付けることに成功した。
 それは戦前に、帝国海軍がより多くの軍艦を造りたかったために、米国は敵だと国民に向かって宣伝したようなものだった。
*国民も経済界も「原子力村」の論理に絡め取られている
 本来、政治家は「帝国海軍」や「原子力村」のように利権集団化したグループを上手くコントロールしなければならない。だが、戦前もそうだったが、日本には広い視野に立って利権集団をコントロールできる政治家が少ない。
 素人同然の政治家たちは、専門家集団である原子力村の論理を素直に受け入れてしまった。それが、地球環境問題への配慮を謳った民主党の原発増設計画だったと思う。
 今日では、安全保障のためにたくさんの原発を建設する必要はない。冷戦が終わり、民族紛争型の戦争が増えたために、多くの国が原発は少数で十分だと考えている。だから、経済的合理性がない原発を造らなくなってしまった。
 しかし、原子力村の論理が優先した日本は、世界と全く違う道を歩もうとした。多くの国民も、「原子力村」が発信した「原発は安いエネルギーであり、資源のない日本には必要である」との論理を素直に受け入れている。
 その結果、福島の事故後も、世論調査で約半数の人が「原発は必要」と回答している。経済界のリーダーたちも、原子力村の論理に絡め取られ、原発の推進がかえって経済の成長を阻害している事実を読み解けないようだ。
*原子力への膨大な税金投入が日本の低迷の一因
 これまで、中国共産党はエネルギー問題に関しては徹底的にリアリストだった。地球環境問題などへの配慮などどこ吹く風で、安いエネルギーを使った。そして、それが成功につながった。
 しかし、日本では政治家も国民も原子力村の論理に流されてしまった。
 先にも述べたように、エネルギーと経済発展には深い関係がある。日本が世界の趨勢と異なったエネルギー政策を実行し、膨大な税金を原子力に投入し続けたことは、ここ20年ほど経済が成長しなくなった一因になっていると思う。
 日本では利権集団の世界観が国内を席巻し、世界と異なる非効率な政策が実施されることが多い。このあたりを、どう見直すか。福島第一原発の事故は、専門家集団のコントロールという新たな問題を投げかけている。 *強調(太字)は来栖
 <筆者プロフィール>
川島 博之 Hiroyuki Kawashima
 東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。1953年生まれ。77年東京水産大学卒業、83年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得のうえ退学(工学博士)。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現職。主な著書に『農民国家 中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』など
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原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
 知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音
JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。(背景の着色は来栖)
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《ちらつく原発タブー》 不信任案否決されたが、「菅降ろし」なぜ起きた2011-06-03 | 地震/原発
原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
40人の原子力専門家が明かす「フクシマの真実」/これでも原発のリスク、許容しますか2011-05-06 | 地震/原発 


『日本の政策企業家と選挙=小沢一郎政治伝記』岡孝著(ラウトレッジ社)米英両国で出版

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「失望が多く、成功は少なかった」…米英で初の小沢一郎伝記
産経ニュース2011.6.14 01:42
 日系米人ジャーナリストによる初めての英語での小沢一郎民主党元代表の伝記が米英両国でこのほど出版された。同書はいまや刑事被告人にまでなった小沢氏の政治面での複雑な動きが単なる権力欲からなのか、特定の政策推進を目指すからなのかを問い続け、政策面での動因を強調した。
 同書は「日本の政策企業家と選挙=小沢一郎政治伝記」(ラウトレッジ社)と題され、米英両国で5月に発売された。著者はクリスチャン・サイエンスモニターなど米大手紙の記者として長年、活躍した日系米人の岡孝氏で、英オックスフォード大学に出した博士論文を基礎としている。岡氏は1990年代から小沢氏の国際問題顧問をも務め、直接の交流も深い。
 同書は小沢氏の生い立ちから政界入り、田中角栄氏との絆などを追い、小沢氏の政界での動きを「権力欲か、政策追求か」という観点から分析した。特に同氏の著書「日本改造計画」や小選挙区制度の推進に焦点を合わせ、「集団的コンセンサス志向から個人の意思による政策の競合での選択への移行を求め、米英両国のような政権交代が可能な二大政党制を実現することを意図した」と指摘した。
 同書は小沢氏の動きの最大要因について、権力欲とする見方をも詳述しながらも、同氏が平成3年10月に首相就任を求められても断った実例などを挙げて、政策傾斜の見方を優先させている。小沢氏の過去20年ほどの軌跡としては「失望が多く、成功は少なかった」と述べる一方、21年8月の総選挙での民主党大勝を小沢氏の功績に帰した。
 同書は小沢氏が検察審査会の議決で強制起訴されて、刑事被告人となった経緯を説明しながらも、なお同氏が今後の裁判で無罪を獲得し、今度こそは首相になるという可能性も記している。(ワシントン 古森義久)
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〈来栖の独白〉
 賛否を超えて、小沢一郎氏という人物は長年にわたって、日本国内は無論のこと、世界に余程気になる存在であることに間違いない。首相であるのに顔すらも記憶されない菅氏とはえらい違いだ。
>今後の裁判で無罪を獲得し、今度こそは首相になるという可能性も記している。
 胸が熱くなった。首相というポストの成否はどうでもよい。小沢氏は政策の人であり、総理という椅子を望んでいないから(これも菅氏とは、大違い)。無罪を獲得して戴きたいのだ。裁判所が正義の砦であってほしいのだ。
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前原誠司外相辞任と『誰が小沢一郎を殺すのか?』〈カレル・ヴァン・ウォルフレン著〉2011-03-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

被ばく線量が限度の250?シーベルトを超えた東電社員、新たに6人、計8人に

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原発の現場作業員、安全管理の現実を語る
WSJ日本版 2011年6月14日21:52 

 【大垣】坂本正之さんは3月、世界で最も危険な原子力発電所に降り立った。そのとき、防護服について30分間説明を受けたが、それ以外はほとんど準備がなかった。
 坂本さんは56歳。30人の従業員を抱える中部地方の建設会社、北陸工機の代表取締役だ。福島第1原子力発電所の原子炉が煙を吐き、ガンマ線がにじみでていた頃、がれきを撤去し、泥を運び出すために雇われた。坂本さんはそれまで防護服を着たこともなかったし、線量計を使ったこともなかった。平常時であれば、原発で働く際に必要とされる事務手続きもまだ行っていない。
 原発で働く作業員の安全がどのような状況なのか、坂本さんによる詳しい説明から見えてくる。東京電力は6月13日、6人の作業員の被ばく線量が限度を超えた可能性が高いことを明らかにした。これまでの合計では8人となる。この限度は、今回の事故に限って基準を緩めて定められた値だ。
 中学卒業の坂本さんは、国の危機を救わなければという「ミッション」を感じると話す。だが同時に、頭がよくないから怖くないとも冗談を言う。「本当に賢い人たちはシーベルトとかベクレルというものに対して知識があるから、非常に怖いというか不信感、不安感がある。無学、無知というのは考えてみたら非常にありがたい」 原発現場の片付けで、東京電力が頼っているのは坂本さんのような人たちだ。つまり、立ち向かう危険についてあまり知識も理解もなく、トレーニングも受けていない下請け業者や労働者だ。
 事故から数カ月間、坂本さんが話した問題は混乱により次第にひどくなっていった。地震と津波により、放射線量を測定し、作業員を管理するシステムが機能しなくなった。坂本さんや他の6人ほどへの取材から、東京電力がその代替策をなかなか実施しなかったことも明らかになった。
 東京電力はこの問題を認識している。「原子炉冷却を第一にしている。一般的に遅いと言われるかもしれないが、できるだけ早く全力で取り組んでいる」と、東京電力の広報担当者は話す。
 東京電力は5月の報告書で、放射線環境で働くうえでの正式な登録を行っていない作業員がいることを明らかにした。最初の数週間、線量計が不足していた頃には、多くの作業員が線量計を持っていなかった。
 ある大手建設会社に雇われた数人の作業員は、採用された時には原発で働くとは知らされなかったという。
 東京電力の広報担当者は、作業員は適切な訓練を受けたと考えていると話した。また、原発内部で働く下請け業者や他社の作業員に関しては、東京電力には責任はないとも言う。
 東京電力の5月の報告書を受けて、原子力安全・保安院は、5人の女性作業員を正式に登録せず、汚染された建物内で作業を行う作業員にマスクを着用させなかったのは違法であるとして、厳重注意とした。日本には放射線の被ばくや作業員の安全に関してさまざまな法律があるが、違反に対する罰則はほとんどない。
 原子力安全・保安院は線量計の不足や、他の作業員の安全に関する問題についても東京電力を追求した。緊急事態であったことを考えると、作業員の訓練や被ばく量の追跡に関して、東京電力が一時的な措置としてとった手法は適切だったという。しかし、放射線の管理や作業員の安全に関して、可能な限り早く正常に戻すようにと命じた。
 1カ月ほど前、福島第1原発の指令センターで働く人々から不思議なほど高い放射線量が検出された。これにより、センターが汚染され、数千人の作業員が放射性粒子を体内に取り込んでいた可能性が高いことが分かった。 また、東京電力は2300人余りの作業員の被ばく量を検査し、数百人で値が高くなっているのを発見した。厚生労働省は6月7日、原発に調査員を送り、作業員の安全管理について調査すると発表した。
 細川律夫厚生労働相は5月31日、記者団に対し 「私としても大変驚いており、遺憾に思っているところだ」と話した。厚生労働省は東京電力と関連会社の関電工に対して、労働安全衛生法違反についての是正勧告を行った。また、東京電力に対して今月、福島第1原発で事故発生以降に働いた人たちの内部被ばく量の検査を完了するよう命じた。
 厚生労働省の推計では、これまで7800人が福島第1原発で仕事をしたという。東京電力では、まずは事故が最もひどかった3月に働いた3726人の検査を行っている。
 東京電力の広報担当者によると、原発での暑さと放射線の問題を改善するため、冷却ジェルを入れたベストや、タングステンでできたベストを導入するという。作業員の休憩所をもっと作り、医師が必ず常駐するようにするとも話した。
 この間坂本さんは、自身のミスに対処していた。3月にトラック運転手を募集した際、間違った勤務地を職業案内所に伝えたのだ。運転手は、不当に第1原発に派遣されたと苦情を訴えた。雇用者は正しい職務内容を伝えなければならないとする法律に違反しているという。
 坂本さんは話す。「普通にこなせるなと思っていたが、自分が犯したミスを思うと、どうも普通の精神状態じゃなかった」
 髪を五分刈りにした多弁な坂本さんは、大垣市にある小さな家で自分の会社を経営している。坂本さんの運営する北陸工機は、通常は高速道路やダムで配管工事を行っている。3月11日の大震災の後すぐに、復旧作業を請け負えないかとの電話が入り始めた。
 3月15日、二つの原子炉で爆発が起こった。その翌日、坂本さんと10人の作業員はJヴィレッジに向かった。原発から南に25キロほど離れたサッカー関連の施設で、原発対応の拠点となっている場所だ。そこで検診を受け、東京電力から30分ほど、放射線と防護服についての講習を受けた。
 その日聞いたことは、ほとんど忘れてしまったと坂本さんは言う。だが、強く印象に残ったことがある。それは、石をひっくり返す時は注意しろ、なぜなら放射性物質が隠れているかもしれないから、ということだ。
 「海で石をめくると、小さいカニがいる。それは、ザリガニであったり、大きなタラバガニであったりする。線量をこうむった時、それがザリガニであったらいいが、大きなタラバが出た時もある」
 坂本さんの1日は6時半に始まった。作業員が着替えを始める時間だ。下着、フードつきの防護服、3枚重ねにした手袋と靴のカバーを身につける。袖口とズボンのすそにテープを貼ってすき間をふさぐ。マスクを着け、フードとマスクのすき間をふさぐように、お互いにテープを貼り合う。
 次に、指令センターに向かう。施設の中で唯一電気が通り、放射線をさえぎる厚い壁がある場所だ。ここで外側の服を脱いでシュレッダーにかけ、被ばく量を計る。その日の仕事を聞き、もう一度身支度を調える。坂本さんはこれを1日に少なくとも3回は繰り返した。食事の時や休憩、トイレに行くときなどだ。
 防護服を身につけると、外界から完全に切り離された感じがする。「手袋してゴム手袋して、さらに皮手袋をして袖口をテープで巻いて。自分の世界から遮断して、自分をパックして閉じ込めてしまったような作業環境は、われわれの世界ではあまりない。宇宙船に乗って月にいくという人はあんなものをしてね」
 現場では、作業員たちは携帯電話サイズの線量計を胸のポケットに入れ、累積での被ばく量を記録した。放射線のレベルが跳ね上がると、線量計のアラームが鳴る。
 問題は、全員に行き渡るだけの線量計がなかったことだ。坂本さんによると、通常4人のチームで1人だけが線量計を持っていた。しかし、原発で長年働いてきた作業員は、各人が一つずつ持たなければならないと知っていた。彼らは苦情を訴え、それが原子力安全・保安院の厳重注意につながり、東京電力は線量計の供給を増やすよう命じられた。
 恐ろしい場面もあった。3月20日頃、3号機の格納庫から黒い煙が上がっていたのを見たのだ。誰かが「坂本さん、走って」と叫んだ。
 坂本さんは運転していた車から飛び出した。降りたのは水たまりの中だった。水が放射能に汚染されていたら、非常に危険だったかもしれない。幸運なことに、検査で放射線量の上昇は見られなかった。しかし、その後すぐ、関電工の二人の作業員が、それほど幸運ではなかったことが分かった。汚染された水に入って、10万マイクロシーベルト以上(原発作業員が5年間で浴びる放射線の限度以上)の被ばくをしていたのだ。
 時間が経過し、危険が去り始めたように見えてくると、坂本さんや他の原発作業員は少し手を抜き始めた。坂本さんの会社の従業員が、降雨時に防水用ポンチョを着ず、汚染された雨水で防護服が濡れるに任せたことがあった。坂本さんは彼らを叱ったという。
 また一時期、坂本さんたちが仕事をしていた場所の放射線量が、通常レベル近くに下がった。そこで、マスクとフードのすき間をテープで貼るのをやめた。予防措置は本当に必要だったのかと、坂本さんは疑問に思ったという。「言われたことを守って、服を着て作業しますけれども、それが何だと思っていますから」
 坂本さんは4月23日に原発で働くのをやめたが、また戻るだろうと話す。彼の小さな会社は、まだ原発に10人ほどの従業員を派遣している。坂本さんは原発で5週間仕事をし、累積被ばく量は2万5000マイクロシーベルトをわずかに上回る水準だったという。日本の原発の作業員が通常、1年間で浴びる限度の半分強だ。
 6月初旬、坂本さんは再び福島を訪れ、北陸工機を雇った建設会社の関係者と現在の問題を話し合った。作業員の健康問題は大きなテーマだったという。
 賃金についても話した。最初の2カ月間、坂本さんの従業員は通常2万円から2万5000円の日給の2.5倍を受け取ったという。この日坂本さんが聞かされたのは、原発内の非常事態は収束したと東京電力が宣言したことだった。新たな賃金は、通常のわずか5割増しだ。
記者: Phred Dvorak 
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福島第1原発:作業員内部被ばく100ミリシーベルト限度
2011年6月14日 13時6分 更新:6月14日 14時20分
 東京電力福島第1原発の緊急作業で、被ばく線量が限度の250ミリシーベルトを超えた東電社員が新たに6人判明し、計8人となった問題で、細川律夫厚生労働相は14日、内部被ばくで100ミリシーベルトを超える作業員を作業から外すよう東電に指示した。同省は13日に内部被ばくと外部被ばくを合わせて200ミリシーベルト超の東電社員ら計12人を外すよう指示しており、東電は厚労相の指示を受けてさらに20人前後を作業から外す見通し。【井上英介、岡田英】
 ◇厚労相、東電に指示
 細川厚労相は14日の閣議後会見で「250ミリシーベルトを超えるような方がさらに増えたのは大変遺憾に思っている」と不快感を表明した。同省は今後も、内部被ばく100ミリシーベルト超で緊急作業から外すよう東電を指導していく。
 緊急作業での被ばく問題で同省は、東電の40代と30代の男性社員2人の被ばく線量計が精密検査で600ミリシーベルト台だったとして10日に是正を勧告。さらに13日、震災発生時から緊急作業に従事していた東電社員や協力会社員2367人の簡易検査結果の報告を東電から受け、この中で内部被ばくと外部被ばくの合計で250ミリシーベルト超が新たに6人判明した。
 報告ではこのほか200ミリシーベルト超〜250ミリシーベルトが6人▽150ミリシーベルト超〜200ミリシーベルトが21人▽100ミリシーベルト超〜150ミリシーベルトが67人。合計200ミリシーベルト以内でも内部被ばくだけで100ミリシーベルト超の該当者は20人前後に上った。厚労相は内部被ばくが深刻に影響しかねない点を考慮し厳しく指導する姿勢を示したとみられる。
 同省によると、原発事故を収束させる緊急作業には、震災以降これまでに計約7800人が従事。東電は、このうち線量が高いとみられる震災直後から従事していた3726人について暫定的な被ばく線量の確定を急いでいる。しかし、震災発生から3カ月が経過した13日の時点でも報告は2367人どまりだ。
 今後の作業への影響について松本純一原子力・立地本部長代理は会見で「全面マスクなど放射線管理はしており、現在の作業状況からみると、作業員が足りなくなる事態にはない」との見方を示した。
 ◇解説…防護策の徹底求め
 厚生労働省が作業員の「内部被ばく」の線量が100ミリシーベルトを超えた場合、緊急作業から外すよう東電に徹底させたのは、緊急時の特例として引き上げられた線量限度250ミリシーベルトを超えた作業員8人のうち、内部被ばく量だけで上限を超えていたのが6人に上るなど、東京電力の管理の甘さにある。
 内部被ばくは、放射性物質を吸い込むなどして体内で継続的に被ばくする。時間と共に排せつされ、排せつも含めた「半減期」は成人ではヨウ素131で約7日、セシウム137で約90日だが、白血球の一時的な減少や、がんの発生確率がわずかに上がる恐れがあり、健康への影響が心配される。
 内部被ばくは「ホールボディーカウンター」という機器で測定する。しかし、福島第1原発にある4台は空気中の放射線量が高すぎて正確に測定できず、主に福島県いわき市の東電施設2台でしか検査できない。結果が判明するまで約1週間もかかるなど実態把握が遅れている。
 今回の厚労省の指示は、東電の管理体制が不十分なためのものだが、検査や対策に手間取れば今後の作業への影響が懸念される。東電には長期にわたっての健康管理はもちろんのこと、再発防止のため防護策の徹底が求められる。【奥山智己】毎日JP

知らないのは日本人だけ?(1)世界の原発保有国の語られざる本音/多くの国は核兵器を持ちたいと思っている

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知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音
JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。(背景の着色は来栖)
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国民も経済界も原子力村の論理に絡め取られている/知らないのは日本人だけ?(2)原発は安い、という神話2011-06-14 | 地震/原発
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ベトナム:南シナ海で軍事演習/ベトナム漁船、南沙諸島周辺で中国艦船から威嚇射撃/『尖閣戦争』

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ベトナム:南シナ海で演習 中国をけん制、緊張高まる
 【バンコク西尾英之】ベトナム海軍は13日、同国沖の南シナ海で実弾を使った軍事演習を実施した。領有を巡り対立する中国を刺激するのは必至で、南シナ海の緊張は一層高まりそうだ。
 演習が行われたのはベトナム中部クアンナム省沖約40キロの海域。海軍当局者はAP通信に、大砲などを使った演習で毎年行われる通常のものと説明し、中国との対立とは無関係だと語った。
 しかし南シナ海では、西沙諸島や南沙諸島周辺海域の領有を巡り中国とベトナム、フィリピンなどが対立。5月下旬以降、ベトナムの資源探査船と中国の船舶との小競り合いが続いている。ベトナム政府は中国への抗議を繰り返しており、この時期の軍事演習には中国をけん制する狙いがあるとみられる。
 中国の南シナ海への進出をけん制したい米国は、ゲーツ国防長官が今月、東南アジア各国と協力して地域への軍事的関与を強める姿勢を示したばかり。しかしベトナムの軍事演習については「力の誇示は緊張を高めるだけだ」(国務省のトナー副報道官)と懸念を表明し、間接的ながらベトナムに自制を求めた。
 一方、ベトナムの首都ハノイと南部のホーチミン市では12日、5日に続いて再び市民による反中国デモが行われた。社会主義国の同国は市民の政治デモを厳しく取り締まってきたが、反中デモについては事実上容認している模様だ。
毎日新聞 2011年6月13日 20時03分(最終更新 6月14日 0時24分)
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ベトナム:「艦船が漁船に威嚇射撃」中国に抗議…南沙諸島
 【バンコク西尾英之】ベトナム外務省は2日、同国と中国が領有を争う南シナ海の南沙諸島周辺でベトナム漁船が中国艦船3隻から威嚇射撃を受けたとして、ハノイの中国大使館に同様の行為を即時中止するよう求める抗議文を送った。
 ベトナムのメディアによると、発砲を受けたのは1日。外務省は「我が国の主権を侵害する行為だ」と抗議。領有問題の平和的解決を目指して中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が02年に署名した「南シナ海行動宣言」に違反すると主張した。
 ベトナムは同国の排他的経済水域(EEZ)内で5月下旬、資源探査船が中国監視船から妨害を受けたとして抗議していた。
毎日新聞 2011年6月3日 22時05分(最終更新 6月3日 23時33分)
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  『尖閣戦争――米中はさみ撃ちにあった日本(祥伝社新書223)』2010年11月10日初版
p42〜
*中国の息の長い戦略的、かつ野心的な計画---西尾
 ここまで日本が危うい状態に追い込まれていながら、国民のなかには、まだそこまでの危機感が浸透していないように思います。尖閣を軍事占領されることはないと考えているとしたら、それは甘い。アメリカが安保条約に基づいて抑えてくれると考えているとしたら、それはさらに甘いと私は最初に言いました。そして安保条約というのは、そんな性格のものではありませんと述べました。そこが一番のポイントだと思います。
 ここから日本はどうやって尖閣を守るかという話に転じなければいけないのですが、多くの人はアメリカに対する依存心理があって、クリントン国防長官以下が安保条約の5条適用と言ってくれると、「ああ、そうか」とほっとする。私ですらも安堵するわけですから、日本人がそれで安堵するのは無理はない。北朝鮮のミサイル打上げのときに、ライス国務長官(当時)が飛んできて「大丈夫よ。日本はアメリカの核で守られているんだから、大丈夫、大丈夫」と言ってくれたら、ほっとするのと同じことです。
 しかし中国の今度の行動は、そんなに単純ではありません。きわめて戦略的な、息の長い、1世紀以上にわたって練られた中国人の野心的な計画の終着点だという性格が基本にあります。
 中国は清の時代に、ロシアとイギリスの両国による西域争奪戦になすすべがありませんでした。中国が第2次大戦直後にチベットを侵略したのは、それへの復讐ですが、同時にインドを北から抑え込むためでもありました。チベット動乱の3か月後に、中印国境戦争が起きています。そして、それから10年後に、中国の眼は北に向かい、中ソ国境紛争と呼ばれるソ連軍との戦争を起こしました。ソ連が油断をしていたときです。北の次は当然南です。ベトナムは清の属国でしたが、かつてフランスに奪われ、何とか取り戻したいという領土的野心をもっていました。
 しかしベトナムはフランスを倒し、アメリカをも追い払うという勇敢な民族で、中国も簡単に手出しができません。ですが、アメリカはベトナム戦争で手傷を負い、厭戦気分が高まり、アメリカは2度とベトナムに戻ってこないとわかってから、中国はゆっくりと侵略の牙を磨きだし、中ソ戦争の10年後に、ベトナム侵略を開始しました。1979年の中越戦争です。
 こんなふうに中国の対外侵略の歩みはゆっくりですが、1度として停止したことはないのです。東西南北の4方向に向けてのこの国の深謀に根差した膨張行動の歴史をみれば、次に残された東への野心をこの国が諦めるはずはありません。理屈ではないのです。ただ西、北、南への進出にくらべて今度は用心深かった。旧日本軍への恐怖もあるでしょうが、何といってもアメリカが怖い。
 しかし、その恐怖を抑えて、中国はここへきて、そろそろ動き出したのです。今の日本はどうやらまったく怖くないようだ。アメリカも力を失って浮き足立っている。同時多発テロ以後、アメリカが恐れているのは持ち運び可能な小型核です。アメリカ軍は少しずつ戦線を引き上げて、太平洋の防衛ラインを東へ移していく可能性が高い。太平洋全域を支配しようと手を出している中日新聞は、琉球列島が何といっても邪魔である・・・。
p45〜
*南シナ海で現実に起こっていること---西尾
 こうして事態は少しずつ動いていて、中国の野望がはっきりしてきたわけですから、沖縄は本当に危ないのです。そこから先何が起こるか考えてみたいと思います。すでに東南アジアでは、島の領有をめぐってしばしば衝突が起こっていて、1988年には、スプラトリー諸島、中国では南沙諸島といいますが、そこのジョンソン環礁でベトナム、中国両軍が軍事衝突を起しており、ベトナム軍艦が沈没しています。水兵70人以上が死亡しています。99年には2度にわたってフィリピン軍艦艇と中国の漁船が衝突して、このときは漁船が沈没しています。
 最近でもこの10月にも、やはり領有権を争うパラセル諸島、中国名は西沙諸島ですが、ベトナム漁船が中国に拿捕されています。8月にはインドネシアのナトゥナ諸島沖でインドネシア海軍が拿捕した中国漁船を、武装した中国艦艇にに奪還される事件が起きています。南シナ海全体が中国のこうした威嚇と、現実的な拿捕事件、あるいは軍事行動に攪乱されています。これは日本とて決して無関心でいられる事件ではありません。さしあたり南で、中越戦争のつづきでしたが、次には当然東の海上へ目が向けられます。

欧州で脱原発の流れ/イタリア国民の脱原発を「集団ヒステリー」という石原伸晃氏の知的貧困

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欧州の脱原発 フクシマの衝撃は重い
毎日新聞 社説
 欧州で「脱原発」の流れが加速している。イタリアは12、13日の国民投票で原発再開に「ノー」を突き付けた。6日にはドイツが既存の原発17基を22年までに全廃することを閣議で決めている。いずれも福島第1原発の事故が背景にある。世界に波紋を広げるフクシマ・ショックの重さを改めてかみ締めたい。
 イタリアの国民投票は57%近い投票率で成立し、原発反対票が約95%を占めた。同国はチェルノブイリ原発事故(86年)後、国民投票で原発全廃を決めたが、他国からの電力輸入などでコストがかさみ、ベルルスコーニ首相は20年をめどに原発を再開したい考えだった。「原発再開法」を推進した同首相には最悪のタイミングで原発事故が起きたわけだ。
 ドイツの場合は、「フクシマが私の考えを変えた。(事故の)映像が脳裏に焼き付いて離れない」というメルケル首相の言葉がすべてを物語っていよう。福島の原発事故が世界の主要国の針路を変えた。ドイツなどで環境重視の緑の党などが発言力を増し、各種選挙で旋風を巻き起こしたことにも注目したい。
 他方、欧州には事故の恐ろしさが誇張されて伝わり、ある種の「過剰反応」を引き起こしたと主張する人もいる。独伊は「脱原発」と言いながら、原発大国フランスなどからの電力輸入をあてにしているではないかとの見方もある。脱原発の評価はそう簡単ではない。
 原発政策は、経済や政治の統合が進む欧州と、海に囲まれた日本とでは事情が違う。欧州は欧州、日本は日本である。その欧州も、仏英などの原発推進派と、独伊やスイス、ベルギーなどの「脱原発」派に分かれているのが実情だ。80年にいち早く脱原発へかじを切ったスウェーデンの議会は昨年、方針を転換する法案を小差で可決している。
 だが、脱原発に踏み切った独伊の決断はあくまで尊重されるべきである。脱原発を進めれば電力コストがかさんで国民負担は増えやすい。閣議にせよ国民投票にせよ、脱原発の決断はそう簡単ではない。両国はフクシマを反面教師とし、多少の負担増は覚悟の上で「安全」を選んだといえよう。
 ドイツは「脱核兵器」にも前向きで、国内に配備されている米軍の戦術核兵器の撤去を求めてきたことも忘れてはなるまい。
 一方、米国や中国、インドは原発推進の姿勢を変えていない。中東ではサウジアラビアが30年までに16基もの原発を建設するとの情報もある。世界の分かれ道に、どう対応すべきか。スリーマイル島(79年)やチェルノブイリに続く原発事故の震源地となった日本としては、将来の原発政策を腰を据えて考えたい。
毎日新聞 2011年6月15日 2時32分
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知らないのは日本人だけ?(1)世界の原発保有国の語られざる本音/多くの国は核兵器を持ちたいと思っている2011-06-14 | 地震/原発
 JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。(背景の着色は来栖)
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国民も経済界も原子力村の論理に絡め取られている/知らないのは日本人だけ?(2)原発は安い、という神話2011-06-14 | 地震/原発
原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
40人の原子力専門家が明かす「フクシマの真実」/これでも原発のリスク、許容しますか2011-05-06 | 地震/原発
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永田町異聞 2011年06月15日(水)
イタリア国民の脱原発を集団ヒステリーという知的貧困

 いまさらこの方につける薬はないと思うが、イタリア国民の「脱原発」に向かう動きを評して「集団ヒステリー」とは、言葉を安易に使う政治家の典型的病例というほかない。
  朝日新聞の記事によると、イタリアの国民投票で原発反対派が多数だったことについて、自民党の石原伸晃幹事長はこう語ったという。
  「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは、心情としては分かる」
 それも言うなら「現実に起きた放射能災害の惨禍をメディアの報道で目の当たりにし、同じ地震国であるイタリアの人々が原発に大きな脅威を感じているのは、心情としてよく分かる」であろう。
  そもそもこの人は「ヒステリー」とは何かについて、考えたことがあるのだろうか。
  ひとことで表現するなら「感情過敏」。気が立ちやすく理性の抑制が薄弱な状態である。自己内省ができず、人の欠点ばかり見えて、自分の短所は気づかない。
  集団的、社会的に、自己内省をせず、誰かを悪者にしていっせい攻撃するようなときに使うのが、集団ヒステリーであり、最近ではメディアを中心とした小沢バッシングにその典型をみることができる。
  しからば、石原幹事長、あなたは「脱原発」投票をしたイタリア国民をして、何の根拠もなく原発を悪者にし感情過敏に陥った民だと本当に言えるのだろうか。
 もしそうだとすれば、福島第一原子力発電所で現実に起こった史上最悪の原発災害の重大性を過小に評価し、矮小化して、原発推進政策の継続を企図しているとしか思えない。
 かりに言葉の使い間違いに過ぎないのなら、石原氏の言語レベルの低さを露呈しただけのことだが、そもそも「集団ヒステリーを心情として分かる」という、その心情とはいかなるものであろうか。集団ヒステリーの心情が分かる人は、自らが自己内省のないヒステリー気質の人をおいてほかになかろう。
 振り返ってみれば、自民党そのものが自己内省をせず政敵にネガティブキャンペーンを仕掛ける集団ヒステリークラブであったからこそ、時代の変化についてゆけず、政権の座から転がり落ちたのではなかったか。
 いまや民主党も、菅政権のおかげで、自民党を凌駕するほどに、自己内省なき危険症状に陥りつつある。
 政治集団やマスコミをこの病状から救うには、洗脳され続けてきた国民がより正確な情報によって覚醒し、イタリアのように明確な意思を示す大きな世論のうねりをつくってゆくしかないだろう。
 新 恭(ツイッターアカウント:aratakyo)

原子力に携わっている企業と族議員とが生き残り策を探る「地下式原子力発電所政策推進議連」

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「地下原発」推進 反菅ズラリ 不信任騒動渦中に議連発足
特報 中日新聞2011/06/16Thu.

 深刻な大震災や福島第一原発事故のさなかに国民をあきれさせた菅直人内閣の不信任騒動。その渦中の5月31日、超党派による「地下式原子力発電所政策推進議連」が発足した。「脱原発」の逆風が吹きつける原発を臨海部の山の地下に造って進めようという動きだ。だが、主要メンバーをみると、「菅降ろし」を画策してきた首相経験者も名を連ねる。地下原発議連の狙いとは。(佐藤圭、篠ケ瀬祐司)

 本紙が入手した地下原発議連の名簿には、民主、自民、公明、みんな、国民新、たちあがれ日本、新党改革の各党と無所属の計49人が並ぶ。反原発を掲げる共産、社民両党以外の主要政党が顔をそろえた。
 会長は、たちあがれ日本代表で元経済産業相の平沼赳夫氏。顧問は、民主党の鳩山由紀夫前首相、羽田孜元首相、石井一副代表、渡辺恒三最高顧問、自民党からは谷垣禎一総裁、森喜朗元首相、国民新党は亀井静香代表らの9人。
 初会合は5月31日、衆院第一議員会館の地下1階会議室で開かれ、平沼、森、石井の各氏ら約20人が出席した。今月末にも2回目の会合を予定しているという。
 原発を地下に造るという発想は、突如浮上したわけではない。自民党の三木武夫政権の1975年、資源エネルギー庁で研究が始まった。
 当時から反原発運動などで地上での新規立地は難航していた。地上式では建設が難しい臨海部の急峻な未利用地まで選択の幅を広げるのが狙いだった。81年には、同庁の検討委員会が「技術的、経済的にも可能」とする報告書をまとめた。
 しかし、電力会社は「原発は危険だから地下に造ると思われる」「地上立地の妨げになる」との理由で消極的な姿勢を崩さなかった。これに不満を持った平沼氏ら自民党有志が91年、党内に「地下原子力発電所研究議員懇談会」を結成したものの、電力会社の協力を取り付けることはできなかった。
 今回の地下原発議連は、福島第一原発事故で地上での新規立地や増設はおろか、既存原発の存続も危うくなる中、かつての自民党の懇談会メンバーを中心に、与野党の原発推進派が結集した恰好だ。
*倒閣拠点? 超党派で終結
 地下原発議連は、発足のタイミングから、不信任騒動との関連が取りざたされた。与野党の原発推進派が、原子力政策の見直しに傾斜した菅直人首相を引きずり降ろそうとしたのではないか。「原発推進大連立」の拠点が地下原発議連ではないか・・・・と。
 実際、谷垣、安倍、鳩山の各氏は「菅降ろし」の急先鋒。顧問以外のメンバーを見ると、不信任賛成に動いた民主党の小沢一郎元代表に近い西岡武夫参院議長、山岡賢次副代表、松木謙公衆院議員(民主党除名)らが入っている。
 事務局長を努める自民党の山本拓衆院議院は、「原発銀座」と呼ばれる福井県選出だ。山本氏は「菅降ろし」を視野に入れた動きとの見方について「特に意識はしなかったが、メンバーを見ると、不信任に賛成しそうな人ばかりだった。昔の仲間が集まれば、大連立の話もするかもしれない」と含みを持たせる。

欧米で稼働例「地震、津波に強い」
 そもそも地下原発とはどのようなものなのか。

 ←(臨海部の地下式原発)

 
↑ (地下式原発のイメージ図=公益社団法人土木学会原子力土木委員会の1996年の資料から)

 地下原発議連の資料によると、全地下式の場合、臨海部の山の地下空洞に、原子炉やタービン発電機など主要施設を配置し、そこに取水・放水トンネルやケーブルトンネルがつながっている。
 原子炉が設置される空洞は幅33?、高さ82?と巨大なものを想定。既存の地下揚水発電所などの空洞よりも25?ほど高いが、岩盤をコンクリートなどで補強すれば十分掘削は可能だとしている。
 なぜ地下に原発を造ろうとするのか。
 山本拓氏は「地下は地震と津波に強い」と利点を挙げる。「地表に比べて地下の揺れは小さい。福島第一原発も地下式にしていれば津波をかぶって電源を喪失することもなかったはずだ」
 事故時の放射能対策でも、地下式は優れているという。議連資料では、土が30?かぶった原発(出力百万キロワット)で炉心を冷やす一次冷却水が失われる事故を想定。試算の結果、地表に出る放射性ヨウ素は、地上式の十万分の一になるとしている。「(岩盤などで)放射能を封じ込めていくのが地下原発だ」と山本氏は説明する。
 建設費についても「かつては地下の方が地上より2割ほど高いといわれたが、今は建設コストも安くなっている」。地下に設けることで、原発を狙ったテロ対策にもなるという。
 ただ、福島原発の事故が収束しない中での議論。「今は電力会社も資源エネルギー庁も、既存の原発をどうするかで手いっぱい。原発の新規立地を進めるなら地下も必要。今すぐどうこう(建設)ではなく、選択肢の一つとして地下原発の基準をつくておく」。山本氏は「将来への備え」を強調した。
 地下原発は、実験炉や商業炉など閉鎖を含め欧米で6基の稼動例があるが、広がっていない。
 地下原発の動きに対し、NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は「放射性核廃棄物をどう処理するかという問題は、地下でもクリアできない」と指摘。
*NPO「衝撃力こもり危険」
 安全性にも疑問を投げかける。「内部で爆発があった場合、衝撃力が内にこもる。圧力容器や格納容器が無事でも配管が壊れれば、大きな事故につながりかねない。そうなれば地上式より作業員が近寄りにくくなる」と、かえって危険な状態になるとみる。
 津波の影響は受けないのか。「冷却が必要だから、原発は水から離れられない。地下式にしてもどこかで海とつながっており、津波の影響を受ける可能性は残る」
 放射能の封じ込めについても「数十?の土がかぶっていたとしても、放射能は地上に抜けていくだろう」と、効果は限定的だと予測する。
 再浮上してきた地下原発。「原子力に携わっている企業と『族議員』とが生き残り策を探っているようにしか見えない」と、伴氏は手厳しい。
 地下原発議連の狙いについて、政治評論家の浅川博忠氏は「中心メンバーらは、地下原発を入り口にして、憲法や選挙制度の改正、政界再編なども視野に入れているのではないか」と分析している。
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《ちらつく原発タブー》 不信任案否決されたが、「菅降ろし」なぜ起きた2011-06-03 | 地震/原発
 中日新聞 【特報(佐藤圭、小国智裕)2011/6/3Fri.】より抜粋 転写
*政策転換がきっかけに
 今回の「不信任案政局」を振り返ると、菅首相が原子力政策の見直しに傾斜するのと呼応するように、自民、公明両党、民主党内の反菅勢力の動きが激化していったことが分かる。
 首相は5月6日、中部電力に浜岡原発の原子炉をいったん停止するよう要請。同月18日には、電力会社の発電、送電部門の分離を検討する考えを表明した。
 さらに事故の原因を調べる政府の「事故調査・検証委員会」を設置することを5月24日に決定。翌25日には外遊先のパリで、太陽光や風力など自然エネルギーの総電力に占める割合を2010年代の早期に20%へと拡大する方針も打ち出した。(略)
*旧態依然権力の影
 実際、自民党の石原伸晃幹事長は6月2日、不信任案への賛成討論で「電力の安定供給の見通しもないまま、発送電の分離を検討」「日本の電力の3割が原発によって賄われているのに、科学的検証もないままやみくもに原発を止めた」と攻撃。菅降ろしの最大理由の一つが原発問題にあることを“告白”した。
 民主党内でも、小沢一郎元代表周辺が5月の大型連休後、不信任案可決に向けた党内の署名集めなど多数派工作をスタートさせた。5月24日には、小沢氏と、菅首相を支持してきた渡部恒三最高顧問が「合同誕生会」を開催。渡部氏は、自民党時代から地元福島で原発を推進してきた人物だ。
 日本経団連の米倉会長はこの間、首相の足を引っ張り続けた。浜岡停止要請は「思考の過程がブラックボックス」、発送電分離は「(原発事故の)賠償問題に絡んで出てきた議論で動機が不純」、自然エネルギーの拡大には「目的だけが独り歩きする」との発言を続けるという具合だ。
 金子勝慶応大教授は、福島第1原発の事故について「財界中枢の東京電力、これにベッタリの経済産業省、長年政権を担当してきた自公という旧態依然とした権力が引き起こした大惨事だ」と指摘する。
 金子氏は「不信任案政局」の背景をこう推測する。
 「管首相は人気取りかもしれないが、自公や財界がいちばん手を突っ込まれたくないところに手を突っ込んだ。自公は事故の原因が自分たちにあることが明らかになってしまうと焦った。それを小沢氏があおったのではないか」
*政権不手際に矮小化?
 戦後政治史を振り返ると、自民党と原発の関係は深い。
 1954年、当時若手衆院議員だった中曽根康弘元首相が、「原子力の平和利用」うたい、原子力開発の関連予算を初めて提出、成立させた。保守合同で自民党が誕生した55年には、原子力基本法が成立。その後の自民党の原発推進政策につながっていった。
 74年には田中角栄内閣の下で、原発などの立地を促す目的で、自治体に交付金を支出する電源三法交付金制度がつくられ、各地に原子炉を建設する原動力となる。
*今も続く蜜月関係
 自民党と電力会社の蜜月関係は今も続く。
 自民党の政治資金団体「国民政治協会」の2009年分の政治資金収支報告書を見てみると、9電力会社の会長、社長ら役員が個人献金をしている。
 東電の勝俣会長と清水正孝社長は、それぞれ30万円。東北電力の高橋宏明会長は20万円、海輪誠社長は15万円。中国電力の福田督会長と山下隆社長はそれぞれ38万円を献金している。
 会長、社長以外でも、東電では、6人の副社長全員が12〜24万円を、9人の常務のうち7人が献金していた。
・98年から昨年まで自民党参院議員を務めた加納時男氏は元東電副社長。党整調副会長などとしてエネルギー政策を担当し、原発推進の旗振り役を務めた。
 民主党の小沢元代表も、東電とは縁が深い。
 東電の社長、会長を務めた故平岩外四氏は、90年ら94年ま財界トップの旧経団連会長。90年、当時自民党幹事長だった小沢氏は、日米の草の根交流を目的として「ジョン万次郎の会」を設立したが、この際、平岩氏の大きな支援があったとされる。
 「ジョン万次郎の会」は、財団法人「ジョン万次郎ホイットフィールド記念 国際草の根交流センター」に名を変えたが、今でも小沢氏が会長で、東電の勝俣会長は顧問の1人に名を連ねている。「原発事故は神様の仕業としか説明できない」などと東電擁護の発言をしている与謝野薫経済財政相も、現在は大臣就任のため休職扱いだが、副会長に就いていた。与謝野氏は政界入り前に日本原子力発電の社員だった経歴もある。
 一方、電力会社の労働組合である電力総連は、民主党を支援している。労働組合とはいえ労使一体で、エネルギーの安定供給や地球温暖化対策などを理由に、原発推進を掲げてきた。原発で働いている組合員もいる。
 また電力総連は、連合加盟の有力労組であり、民主党の政策に大きな影響を及ぼしてきた。
 組織内議員も出していて、小林正夫参院議員は東京電力労組の出身。藤原正司参院議員は関西電力労組の出身だ。
 つまり、エネルギー政策の見直しを打ち出した菅首相は、これだけの勢力を敵に回した可能性がある。
 結局、菅首相は「死に体」となり、発送電分離や再生可能エネルギー拡大への道筋は不透明になった。
 「フクシマ」を招いた原子力政策の問題点もうやむやになってしまうのか。すべてを「菅政権の不手際」と矮小化させるシナリオが進行しているようにみえる。
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アメリカの足の裏を舐めないと存続できない日本/米主導で原子力発電/発電用濃縮ウランの大半は米から輸入2011-05-30 | 地震/原発
 「目くらまし」を見抜けぬ愚民国家
田中良紹の「国会探検」2011年5月17日 18:07
 浜岡原発の停止要請は「目くらまし」だと前回書いた。ところがそれを「原子力政策の転換」と受け止める「おめでたい」論調が多いので呆れる。あのやり方はこの国の官僚が国民を支配するために使ってきた常套手段そのもので、見抜けなければ愚民と言うしかない。
 福島原発の深刻な事故は国民の反原発感情を揺さぶり、今後のエネルギー政策に大きな影響を与える事が予想された。そうした時に支配者が考える事は世論を無視して強行突破することではない。いかにも原子力政策を転換するように見せかけながら、実際には変更の幅を極力変えないようにすることである。そのため「浜岡原発」が利用された。
 官僚が「目くらまし」に使うトリックの道具は数字である。今回は「87%」という数字が使われた。「地震が起きる確立が87%」と言われると、感情でしか物事を考えない人達は「大変だ」と恐怖心が先に立つ。それでまともな思考が出来なくなる。支配する側はそれを狙っている。
 福島原発事故は地震の確率が0.1%の所で起きた。論理的に考えれば地震の確率と事故とはストレートに結びつかない。どこの原発も事故は起こる可能性がある。それをそう考えさせないために支配者は「87%」に目を向けさせ、愚民はそれに乗せられる。
 「87%」を問題にするなら、そもそもそんなところに原発を建設した事が間違いである。運転を停止しても地震が来れば放射能事故は起こる可能性があり、速やかに「廃炉」にするというのが論理的である。ところが菅総理が言った事は「安全策を講じるまでの運転停止」だった。それは「浜岡原発を継続する」と宣言したに等しい。
 なぜなら安全のために投資をしたら、投資をした後で「廃炉」という選択肢はありえないからである。防潮堤の建設などには2年ほどの時間がかかるらしいから、運転再開を決めるのは自分ではない別の人間で「俺の責任にはならない」という計算も菅総理には働いたかもしれない。
 それを本人が「歴史の評価」とか大見得を切るからチャンチャラおかしくなる。菅総理は「停止要請」によって浜岡原発の継続を宣言し、それ以外の場所にある原発事故の危険性から目をそらさせたのである。そう言われると困るから、「原子力計画をいったん白紙にする」と付け加えた。しかし「白紙」というのは「変更」ではない。自分は「白紙」にし、別の人間が極力「変更」しない形の計画にしてくれれば良いのである。
 それをニュースキャスターが「菅総理は原発の見直しに踏み込んだ」とか言っているから「おめでたい」。「何年までに原発の割合を何%減らす」とか、再生エネルギーの開発計画を発表した時に言うべき事を、論理的に考えれば考えるほど「原発を継続する」と言っている時に言うのだから始末が悪い。
 福島原発事故の教訓は「絶対の安全はない」と言うことである。どんなに想定しても想定外の事は起こる。どんなに安全対策をしても破られる事はある。だから最悪を考えて備えをしなければならない。ところが政府は「原発の安全性」を強調するあまり、不測の事態への対応をして来なかった。
 原発のメルトダウンを知りながら、住民のパニックを恐れて発表したのは事故から2ヶ月以上も経ってからである。発表していれば対応できていた事ができなかった。その被害者は周辺住民である。放射能による健康被害が現れるのは5年から10年先の事だから、これも菅政権にとっては「俺の責任ではない」と言う事になるのだろうか。
 日本が原発を54基持っているという事は、54個の核爆弾を持っているに等しい。つまり核戦争に備える思考と準備が必要なのである。敵は自然の猛威かもしれないし、テロ攻撃かもしれない。日本にミサイルで原爆を投下しなくとも、テロリストは小型スーツケースの原爆を都心で爆発させる事も出来るし、また海岸に建てられた原子力発電所を襲えば原爆投下と同様の効果が得られる。
 ところがそうした備えがない事を今回の事故は示してくれた。警視庁の放水車や消防庁の放水車が出動するのを見て私は不思議でならなかった。核戦争に備えた自衛隊の部隊はいないのかと思った。こんな事では政治は国民も国土も守る事が出来ない。いちいちアメリカを頼らなければならなくなる。
 考えてみれば日本のエネルギー自給率は4%に過ぎず、すべてはアメリカ頼みである。かつては国内の石炭に頼っていたのを1960年代に政府は無理矢理石炭産業を潰し、アメリカの石油メジャーが牛耳る中東の石油に切り替えた。ところが遠い中東の石油に頼りすぎる危険性が指摘されると、これもアメリカの主導で原子力発電を導入した。発電用濃縮ウランの大半はアメリカから輸入されている。
 普天間やTPP問題で分かるようにアメリカの足の裏を舐めないと存続できない菅政権は、原発見直しのフリは出来ても「転換」は簡単には出来ないのである。
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映画「100,000年後の安全」地下500? 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発
高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28
原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
原発保有国は潜在的核武装国/保有31カ国の下心/日本の原発による発電量は世界第3位2011-05-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉

新人検事は「自白調書」の捏造を教えられる

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元検事 市川寛が明かす 新人検事は「自白調書」の捏造を教えられる
2011年06月16日(木)週刊現代

 大阪地検特捜部の証拠捏造事件によって、日本の検察の信用は地に墜ちた。実際に自白強要で厳重注意を受け、検察を辞した市川寛弁護士が、驚くべき検察の新人教育の内情を教えてくれた。
ヤクザと外国人に人権はない
 検事になって3年目の'95年、当時の上司が、私の取った自白調書は生ぬるいと言って、こうやるんだと伝授してくれました。こんなやり方です。
 被疑者が取調室に入ってきて、検事の目の前に座る。その被疑者に向かい、検事が「私は〇年△月×日□時ごろ、××においてAさんを殴ったり蹴ったりしてケガを負わせました」と供述の文言を勝手にしゃべる。
 事務官がそれを調書に取る。被疑者はこの時点で何も言っていません。そして出来上がった調書を被疑者の前に置いて、「署名しろ」と言う。それで署名したら自白調書のできあがり、しなかったら「これはお前の調書じゃない。俺の調書だ!」と迫れ、と---。
 こう語るのは市川寛弁護士(45歳)だ。'93年に新任検事として横浜地検に配属され、以後、徳島・大阪・横浜・佐賀・横浜の各地検に在籍。佐賀時代に担当した事件の取り調べ中、「ぶっ殺すぞ!」と被疑者を脅したことを自ら証言し、厳重注意処分を受けて'05年に辞職した。市川氏のような取り調べ手法は当時、レアケースだと見られていたが、その後検察では自白の強要や見込み捜査が常態だったことが明らかになってきた。昨年発覚した大阪地検特捜部の証拠捏造事件では4月27日、前田恒彦・元検事の実刑が確定している。
 そんな検察の教育の実状について市川氏が明かす。
 今はすべての新任検事は東京地検に配属されますが、私の頃は、主な大規模地検に分散して配属されました。1年目は先輩検事の執務室に入って仕事をし、基本的に新人教育は「決裁」の場で行われます。検事は1年目から取り調べも行いますが、起訴・不起訴の判断や求刑はすべて、上司による決裁を経なければなりません。その決裁での議論を通じて、上司から検事のイロハを叩きこまれるのです。
 ただそのイロハは、司法試験合格を目指していたころに抱いていた検事像とは全く異なったものでした。例えば1年目に、私は大先輩の検事から、「ヤクザと外国人に人権はないと思え」と教えられました。「外国人は日本語が分からない。だから、日本語であればどんなに罵倒してもいい」と言われたのです。
 当時の上司は筋金入りの特捜検事だった方ですが、指導内容は凄まじいものでした。「市川君、生意気な被疑者は机の下から向こうずねを蹴るんだ。(あえて)特別公務員暴行陵虐罪をやるんだよ。それが特捜のやり方だ」とも言われました。
 一時報道された、被疑者を壁に向かってひたすら立たせておくという手法も教えられました。ある先輩は、外国人の調べの際、千枚通しを被疑者に突き付けて罵倒したとも言っていました。「こうやって自白させるんだ」と。
 これは最初の配属先に限った話ではありません。私は'93年の横浜を振り出しに、'94年には徳島、'96年には大阪と、地検を転々としました。この駆け出しの頃に、徹底して叩きこまれたのが調書のつくり方なのです。
 調書というと、皆さんは被疑者の供述をそのまま文書化したものと思われるでしょうが、必ずしもそうではないということは、冒頭に挙げた私の体験談でご理解いただけると思います。
 若手の検事は、どんな体裁の調書を作成しなければいけないのかを、徹底して叩きこまれる。贈収賄事件ならこういう調書、共謀の場合はこう、未必の故意ならこうといった具合に叩きこまれる。脅したり、壁に向かって立たせたりというのは、そうした調書を作りあげるためのテクニックです。
検察庁に?望まれる?検事
 新人の調書が上司の意に添わないものなら、調書の取り直しを命ぜられます。私は上司に「ノー」と言えるような強い人間ではありませんでした。心の中では、これはおかしい、違うだろうと思いながらも、次第に検察庁に?望まれる?検事になっていきました。結局この、おかしいと思っても言えない弱さが、辞職の原因となる大変な過ちにつながっていきました。
 その過ちとは、私が佐賀地検にいた'01年に立件された「佐賀市農協背任事件」です。この事件の取り調べの最中、私は被疑者を罵倒し、脅しあげて調書を取り、冤罪事件をつくり上げてしまったのです。
 事件の発端は佐賀地検に届けられた一通の告発状でした。そこには当時佐賀市農協組合長だった副島勘三さんが、不正な融資を行っている、と書かれていました。それで地検は特捜捜査をかけたわけですが、その告発状は、組合長を引きずり下ろしたい農協内の一グループによる中傷だったことが、後の裁判で明らかになりました。その裁判の過程で、我々検察の捜査の杜撰さが次々と露見していきました。
 一審は無罪。検察は控訴しましたが、二審の高裁で控訴棄却され、検察が無罪の証拠を隠匿したことも露見したため、完全無罪が確定しました。
 事件当時、私は三席検事で、地検トップの検事正、その下の次席検事に次ぐポジションにいました。その私が事件を担当する主任に命じられたのは、副島さんに対する強制捜査の前日です。次席検事に、「明日ガサ(捜索)入れるから。君が主任だ」と、まったく突然言われました。
 私はそれまで副島さんの話も聞いていなければ、証拠類も最低限のものしか読ませてもらえなかった。しかも私はその後研修出張があったため、主任検事だというのに、ほとんど捜査に関わることさえできなかった。次席検事には「君がいない間に第一陣逮捕しとくから」と伝えられました。
 起訴の判断は通常主任検事が行うのですが、この事件でははじめから検事正と次席検事が起訴と決めていました。不起訴の意思を示すと、検事正に「お前も諦めろ」と諭されました。もう上で起訴と決まっているから諦めろ、という意味です。
 出張から戻り、取り調べに入っても、正直な話、被疑者から何を聞いたらいいかも分からない。有罪・無罪の判断もつかない。けれども上司の次席検事からは「とにかく割れ(自白させろの意)」としか言われない。私は強引に取り調べを進め、暴言を吐いたり脅したりして調書をまとめました。
 調書には「本日まで嘘をついてきましたが、検事さんの話を聞き、もはや言い逃れできないと思い知りました。私は罪を認めます」という「自白」が記されていました。私は聞いたものをまとめたつもりでしたが、副島さんはこんなことは一言も言っていないとおっしゃっていました。我々のつくった調書には杜撰な点も多く、取り調べをした参考人の生年月日も間違っていたほどでした。
夢から醒めた
 当時の私には、上が「起訴する」と決めたことに逆らうだけの力が欠けていました。これが私の最大の過ちでした。検事は勝てる事件しかやりません。どうやっても有罪をとれそうになかったら不起訴にします。その選別能力があるのが検察だ、という考えです。逆に、起訴してしまったら、絶対に無罪は出せない。負けるわけにはいかないんです。なんせ検察は「正義」の役所なんですから。
 事件の公判中に、私は横浜地検小田原支部に移りました。このとき、副島さんの無罪が確定しました。私はずっと罪の意識を抱いていたので、判決にはホッとするとともに、取り返しのつかない過ちを犯してしまったという自責の念に駆られました。こうして12年間の検事生活にピリオドを打ったのです。
 思えば検事時代は非常に狭い範囲で生活していました。大半が官舎に住み、同じ検察庁に通う。外で飲むと何かと危険なので、飲みと言えば酒屋にビールを配達してもらって検察庁内でやる。外で飲むなら検察庁ごとに決められた「この店は安全」という1~2店にしか行きません。
 そんな状態ですから、法曹関係を除くと、検事の人付き合いは、高校・大学の同級生くらい。話し相手はほぼ検事です。価値観は固定され、視野狭窄になるのも当然です。
 出世コースも限られています。法務省から上がっていくルートと、特捜から上がっていくルートの2種類です。法務省ルートは人事評価の基準が傍目には分かりにくい。ですから、現場でのし上がるには、特捜にいくしかありません。
 特捜では頻繁に人事異動があります。せっかく特捜にきても、1年でお払い箱になるということもざらです。2年、3年と残って初めて本当の「特捜検事」なのです。
 特捜は、全国の検事から選りすぐりの「割り屋」が集められた組織です。割り屋とは、自白を取る(=割る)のがうまい検事のこと。若手検事は本人が特捜に行きたいか否かにかかわらず、割り屋になるべく上司から鍛えられます。
 今の割り屋は、出世への焦りと、上司からの締め付けによって、本来の意味での自白を引き出すのではなく、検察サイドが望むような調書を取るのが上手い人という意味に変質しているのではないかと思います。自分たちに都合のいい事実をつくり上げるためなら、証拠の改ざんにも手を染めるというありえない暴走が、今回の大阪の事件のケースでしょう。
 検事を辞めて5年が経って、やっと検察を客観視できるようになってきました。いまは夢から醒めたような気分です。
........................
検察を支配する「悪魔」 田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)


記者クラブは日本を滅ぼす/改めて「ジャーナリスト活動無期限休止」を宣言.上杉隆

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改めて「ジャーナリスト活動無期限休止」を宣言――記者クラブは日本という国家を滅ぼす
Diamond online2011年6月16日 週刊・上杉隆 【第179回】 上杉 隆 [ジャーナリスト]
 
 今週号の「週刊ポスト」の反響が大きい。発売からきょうまでの3日間で8人の政治家、4人の大手メディア幹部、2人の宗教団体幹部から問い合わせがあった。
 記事は、緊急寄稿した〈上杉隆「ジャーナリスト無期限休業宣言」〉というもので、4月1日に発表した年内でのジャーナリスト活動休止を改めて宣言したものだ。
 原発事故以来、大手メディアによる国民への「洗脳」の実態が日々明らかになってきている。それは本コラムでずっと訴え続けてきた記者クラブ問題に起因するものである。
マスコミの問題だけに留まらない 記者クラブ問題の病根の深さ
 「記者クラブはひとりメディアだけの問題ではない。それは、国民の生命・財産、もしくは国家全体におよぶ重大な問題なのである。官報複合体という強力な権力構造が、国民を洗脳し続け、それはシステム化してしまっている。よって、記者クラブ問題はマスコミの問題ではなく、国家システム全体の問題なのだ」
 1999年来、ラジオ番組や講演などで筆者は繰り返しこういい続けてきた。その実態がようやく明らかになりはじめ、国民の間に共通認識が広がりはじめたこと自体は大いに歓迎している。
 しかし、その時期は少しばかり遅かった。それが悔やまれてならない。記者クラブ、そこに依拠する大手メディアの欺瞞に気づいた人々はまだまだ少数である。
 洗脳からの覚醒は、メディアツールとしてのインターネットの台頭が大いに寄与するものだが、その結果、年代層で大きく情報に格差が出てしまっている。
 つまり、ネットで情報を得る日本人と、これまで通り新聞・テレビからニュースを得る日本人では、圧倒的に情報量で差が出てしまっているのだ。
大震災でも政府・東電と一体化 やはり「広報機関」となった大手メディア
 3・11からの100日間、大手メディアの報道は機能しないどころか、逆機能を果たしてしまった。
 「メルトダウンはしていない」
 「格納容器は健全に守られている」
 「放射能の外部放出はない」
 「チェルノブイリのような大事故には絶対にならない」
 「ただちに人体に影響の出るものではない」
 「仮に3号炉が水素爆発しても大きな問題はない」
 「放射能汚染水は海洋で拡散され、被害が及ぶことはない」
 「プルトニウムは安全だ」
 言わずもがなだが、こうした報道は結果として誤報である。誤報ならばまだよかったかもしれない。それはもはや「デマ」であり「風評」である。
 何もしなければ害はないものの、大手メディアは、政府・東電と一体化し、いつものようにその広報機関としての働きを強化させたため、結果としてこのような「デマ」や「風評」を流す犯罪行為に加担してしまったのである。
 そのために何が起きているか。新聞・テレビからの情報をいまだ信じているおよそ1億人以上の日本人は、政府・東電の原発事故対応の失敗によって、国力が低下し、国家の信頼が失われ、多くの国民の健康が脅かされている現実を知らされないでいるのだ。
 また、今後、数十年以上もの間、放射能による内部被曝の恐怖と戦わなくてはならない未来も直視できないでいる。
 本来、それを知らせるのはジャーナリズムの仕事だ。「安全」は東京電力が、「安心」は政府が追求すべき仕事だ。だが、メディアはそうではない。仮に「安心」「安全」から遠のくことになっても、「事実」を追い求めるのがジャーナリズムに要請された仕事なのである。
 だが、残念ながら、日本の記者クラブメディアは、この100日間、何ひとつそれをできなかった。それは断言できる。繰り返すが、大手メディアは本来の機能を果たすどころか、逆機能を働かせたのだ。
罪の意識をまったく持たない記者クラブメディアの構成員たち
 この問題が根深いのは、彼らに罪の意識がまったくないことだろう。自らが犯罪に加担したなどという意識はさらさらない。それだからこそ、「安心デマ」「安全デマ」に乗っかり、社会へのアラート機能を作動させることなく、国民を洗脳し続けたのだ。
 皮肉なことに、記者クラブメディアは、読者や視聴者の「安全」や「安心」を守るどころか、それを奪い、信用を落とすことになったのだ。
 3月、東京電力の会見に出席し続けた筆者は、記者クラブシステムがついに日本という国家を滅ぼし、国民の生命と健康をも奪おうとしていることに気づいた。それは、当初、妄想と受け取られた。だが、声を上げ続けたおかげで、「助かった」という反応も少なからずいただくようになった。
 自由報道協会のメンバーも同様だ。それぞれバラバラに取材をしているフリーランスの記者たちは、目の前で起きている現実に正直である。自らの見た現実、取材した事実を、そのままネットの視聴者や読者に提供し続けた。
 その結果、日本人のごく一部には、それらの声を届けることができた。福島の幼い子どもを持つ母親たちの中には、毎日、自由報道協会のサイトにアクセスしてくる者も少なくない。誰もが本当のことを知りたいのだ。
 根拠のない「安心」や「安全」報道はもうこりごりである。読者や視聴者が知りたいのは「事実」である。政府や東電の虚偽の発表など知りたくないのである。
フリーランス記者の仕事を決して認めようとしない大手メディア
 しかし、いま、ようやく自らの間違いに気づいた大手メディアは、結果として正しく報じたフリーランスの記者たちの仕事を認めようとしない。そればかりか、その存在すら否定しようとしている。
 メルトダウン、格納容器の破損、放射能飛散、海洋汚染、プルトニウム、ストロンチウム――。
 こうした放射能事故の事実を追及し、報じてきたのはフリーランスの記者たちである。
 日隅一雄氏のように、連日連夜、記者会見に通い続け、東電の嘘を暴き、隠された情報を明らかにし、ついには自らの身体を蝕む病魔に倒れたジャーナリストが行なった仕事だ。今回の原発事故報道は、そうした記者たちが、文字通り、命がけで追及した結果、明らかになった事実ばかりではないか。
 今からでも遅くない。大手メディアの記者たちは、日隅氏のもとを訪れ、その仕事を追認すべきである。いや、治療の邪魔になるかもしれないので、彼のホームページを訪れるだけでもいい。犯罪者ではなく、記者としての矜持が残っているのならば、きっと、何かを感じ取ることができるだろう。
 この日本でフェアな言論空間を構築することは難しいのだろうか。筆者自身はジャーナリストとしての活動を休止するが、別の可能性を探ってみるつもりだ。
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〈来栖の独白〉
 今朝のNHKテレビニュースは、長時間を節電の賢い方法や節電のもたらす効用などに充てていた。節電特集である。原発の重大な問題点、負の側面から目を逸らさせ、原発問題は節電でクリアされるといった、日本人特有の生真面目さに訴えかける。裏を返せば、「原発さん、あなたがダウンしちゃったので、私たちは、こんな努力を強いられています」という原発讃歌である。NHKだけに限らない。つくづく愛想が尽きる昨今のメディア事情である。
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無期限活動休止宣言・上杉 隆「フェアでない日本のメディアに関わりたくない」2011-04-02 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

小沢一郎は死んだのか/小沢一郎の人間力

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小沢一郎は死んだのか スッカラ菅に粘られ、「グループの結束力にも陰り」なんて報道も
日刊ゲンダイ2011年6月16日
 世紀のペテン首相が驚異的な粘りで政権にしがみついているが、「まさか」の展開に計算が狂ったのが小沢グループだ。鉄の結束で、菅を“退陣表明”まで追い込んだのに肩透かし。新聞はこぞって「小沢一郎元代表の求心力が低下してきた」などと書きたてている。実際、小沢はどうなるのか。次の一手、秘策はあるのか。
●衆参合わせて100人以上を動かせる強みは健在
  小沢嫌いの大マスコミは何とか小沢を潰そうとしてアレやコレや書いているが小沢の求心力は衰えていない。
  今月13日、民主党を除籍になった松木謙公衆院議員を励ます会が開かれたが、この会合はグループ中堅・ベテランの結束を再確認する場となった。
 「不信任前夜、ニューオータニに集まった70人超のメンバーのうちの2期生以上が対象で、前週金曜日の急な呼びかけだったのに、25人が集まりました。『我々は一人もはぐれることなく、これからも一致して行動していこう』と確認し合い、最後にバンザイ三唱で気勢を上げました」(出席者の一人)
  翌14日からは、小沢自身が3日連続で自宅に1期生を招いている。毎回20人程度が集まり、会合を持っている。ここでも「一致結束」が確認されている。
 「一度にやるのはムリなので分けてやっているのです。今週だけで70人以上が集まる。来週もやります」(小沢周辺)
 小沢グループとみなされながら不信任造反に躊躇してこぼれた議員がいるのは事実だ。しかし逆に、今週集まっているメンバーは、小沢と行動を共にするガチガチの議員だ。結束は並大抵ではないし、中には「小沢に殉死する」とまで言う議員もいる。小沢は来週、参院議員との会合も持つとみられる。不信任でいったん造反を決意した衆院77人に参院小沢系25〜30人が加われば100人を超える。この数はデカい。
  政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
 「不信任前夜に集まった衆院77人の人数は民主党執行部にとって脅威です。まず彼らが一致結束して離党した瞬間、民主党は衆院で単独過半数を割り込むことになる。離党はしなくても小沢グループの人数は民主党内の派閥で最大です。小沢グループが誰を推すかで、代表選の結果を左右できるのです」
  民主党内はポスト菅でかまびすしい。野田、仙谷、樽床、鹿野といった名前が挙がっているが、小沢は誰と明言していない。独自候補を擁立する可能性を含めて、小沢グループが代表選でどう動くか。グループが結束している小沢は、いつでも仕掛けることができる。
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「小沢一郎」の人間力/周りの人たちは小沢に惚れ込み、仕えている。彼はウソをつかない。2011-06-06 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
  菅首相にとどめを刺す寸前だった小沢一郎の「人間力」
現代ビジネス 田崎史郎
「ニュースの深層」(2011.06.06)
 民主党首脳部もわたしたちも、民主党元代表・小沢一郎のパワーを小さく見過ぎているのではなかろうか。今回の「内閣不信任案政局」を見ていて、そう思った。
 たしかに、最後は前首相・鳩山由紀夫にはしごを外されたために、内閣不信任決議案可決に至らず、首相・菅直人にとどめを刺すことはできなかった。しかし、民主党内で造反組が小沢グループを中心にして可決に必要な80人前後に積み上がってくると予測した人はどれくらいいただろうか? なぜ、小沢の意向でこれだけの衆院議員が動くのだろうか?
 小沢の動きは分かりづらい。しかし、こと政局のことに関して、彼はウソをつかない。彼の発する言葉を注意深く観察していれば、どんな行動を取るか、おおよその察しはつく。
 小沢は本気だと思ったのは、統一地方選前半戦が終了した直後の4月13日に、小沢が発表した短い「見解」だった。
「地震、津波による被災者の方々への対応は遅々として進んでいません。また、福島第1原発の初動対応の遅れをはじめ、菅直人首相自身のリーダーシップの見えないままの無責任な内閣の対応は、今後、さらなる災禍を招きかねない状況となっています」
 この見解で、小沢は菅政権が続くことが「さらなる災禍を招く」と表明した。明らかな菅政権打倒宣言である。その3日後、小沢はインターネット番組に出演し、「最近の心境としては、自分自身のことや民主党政権うんぬんのレベルではない。このままだと大変だと分かっていながら傍観しているのは、歴史の批判に堪えられない」と語った。
 この段階で、菅を支える人たちはその異常に気付き、対策を打たなければならない。小沢は、民主党結束へのこだわりを喪失し、ここで動かないことは「歴史の批判に堪えられない」とまで語ったのだから。
 しかし、鳩山が小沢に4月29日、倒閣回避を要請し、小沢が「連休中に熟慮する」と答えたことが政権側の楽観論に拍車を掛けた。
 小沢が連休中の5月5日、千葉県一宮町で地元の漁業関係者との懇談で「今までは我慢してきたが、これからは行動する」と決意表明していたにもかかわらず、だ。
 菅政権側が対策を打ち始めたのは、自民、公明両党が内閣不信任案の早期提出に向けて調整を開始した5月23日以降のことだ。それでも同25日夜、党執行部の1人に情勢を聞くと、楽観的だった。
「不信任案に賛成するのは30人以下と思っている。会派離脱申請組の16人を含めてそれぐらいだ。あと欠席組がちょぼちょぼ。読みが甘かったにしても、40人ぐらいだろう。署名はそんなにあつまっていない。署名しているのはせいぜい50人程度。このうち、署名しただけで賛成はしない、という人がいる」
*「小沢切り」に失敗した執行部
 この1週間後には造反組は執行部が想定した倍に膨れあがっていた。これを目の当たりにした自民党幹部は「小沢はすごい。何の権力も持っていないのに、首相を辞めさせる寸前にまで追い込んだのだから」と語った。
 しかし、小沢と敵対する政権側には、小沢の力をできるだけ低く見ようという思いが強い。敵の戦力を見誤ることは敗北につながる。小沢の力を過小評価することは昨年夏の民主党代表選当時と同じであり、菅らは何度も失敗しているのにまた同じ失敗を繰り返している。
 小沢の力の淵源を解説するのに、「選挙とカネ」と説明すると分かりやすいが、それで分かった気になるのは、少し違うのではないかと思う。現在の小沢は、民主党内で蚊帳の外に置かれ、選挙の面倒を見られるわけでも、金をまけるわけでもない。前回の総選挙で世話になったといっても、それは代表選での投票で十分に返している。
 政治家には、人に仕えるタイプと、ポストに仕えるタイプがいる。菅の周りにいる人たちはほとんど、その役職に就いているから菅を支えるというポストに仕えるタイプだ。これに対し、小沢の周りにいる人たちは小沢に惚れ込み、仕えている。
 その求心力をもたらしているのはおそらく小沢の「人間力」だ。菅の人間力はないに等しいが、小沢には十分にあると見なければ、この政局における議員の動きを理解することができないのではないか。
 それにうすうす気付いているからこそ、幹事長・岡田克也ら執行部側は、小沢が本会議を欠席したことを理由にして、除籍(除名)処分に踏み切ろうとした。しかし、参院議員会長・輿石東の反発に遭って失敗に終わった。言い換えると、「小沢切り」に失敗した。
 それでも、執行部側は「小沢の力は落ちていくから心配ない」と言う。そんな甘いことを言っていると、次の政局でふたたび肝を冷やすことになるのではないか。(敬称略)  *強調(太字)は、来栖
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〈筆者プロフィール〉
田崎史郎(たざき・しろう)
 時事通信社解説委員長。1950年、福井県生まれ。時事通信入社後、政治部エース記者として活躍するなど、30年を超える政界取材を もとにした分析には定評がある。『梶山静六 死に顔に笑みをたたえて』(講談社刊)ほか 著書多数。テレビ朝日系「報道ステーション」でもコメンテーターを務める。
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WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)2011/5/27 小沢一郎元民主党代表インタビュー「天命に遊ぶ」| 政治/検察/メディア/小沢一郎
「誰が小沢一郎を殺すのか?」日本の人格破壊システム/政治資金規正法を皆さん勘違い2011-06-01 
河村たかし市長・大村秀章知事、小沢一郎氏と会談/稲盛和夫氏、民主党に愛想をつかす2011-02-08
ニコニコニュース 小沢一郎記者会見 一問一答2011-01-28 
菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎:百術は一誠に如かず2010-12-27
民主党大会 小沢氏演説=この理念に沿った政治をこの国が渇望しないはずがない2010-09-15 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

五木寛之著『親鸞』よろずの仏に疎まれた罪びと、彼らを深く憐れまれ、彼らをこそ救う

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五木寛之著『親鸞』163回
〈前中段 略〉
「たずねてこられるかたがたが、心から救いをもとめておられることです。こんなわたくしのような者でも、そんなかたがたを、むげに追い返すわけにはいきません。人びとの苦しみは、はた目にもつらいものでございます」
 親鸞は鉄杖の肩に手をおいていった。
「それは、わかっている。だが、わたしに病者を治す力はないのだ。ましいたる人や、足のなえた人を念仏で救うことなどできぬ。そのことは鉄杖どのも、ちゃんと理解しておられるはずだが」 
 親鸞はしぼりだすような口調でいった。鉄杖はそれでも納得できない顔で、
「しかし、昨夜ひそかにたずねてこられたかたは、しみじみとこうおっしゃっておられました。わたしは人びとの忌む業病をわずらっている。そのことはもう諦めている。だが、あるお坊さまは、自分にこういわれた。悪因悪果、そなたの悪業が病となってあらわれたのだ。みずからの業の深さを悔いるがよい、と」
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五木寛之著『親鸞』164回
〈前中段 略〉
  はかなきこの世を過ぐすとて
  海山稼ぐとせしほどに
  よろずの仏にうとまれて
  後生わが身をいかにせん
 親鸞はこの歌を思いだすたびに、胸がぎゅっとしめつけられるような気持がするのである。
 よろずの仏にうとまれて、というところが、なんとも切ない。
 親鸞の幼いころ、さまざまな出来事が続いた。大火があり、疫病がはやり、合戦がおこり、地震があった。さらに歴史にのこる大飢饉もおそってきた。
 人びとは生きるために戦い、殺生をかさね、だましあい、争いあってその日を生きなければならなかった。世間で悪とされる行為を、だれが避けることができただろう。
 そして人びとは死後の世界をおそれた。無間地獄の恐ろしさを世にひろめたのは仏門の僧たちである。
 生きて地獄。
 死んで地獄。
 救いをもとめて仏にすがろうとすると、よろずの仏は皆、さしだされた人びとの手をふり払って去っていく。 おまえたちのような悪人を救うことはできない、と。
 去っていく仏たちを見送り、呆然とたちすくむ人びとにむかって、法然上人はこう力づよく語りかけたのだ。
〈よろずの仏にうとまれた者たちよ。あれを見よ。すべての仏たちが去っていくなかを、ただ1人、こちらへむかって歩いてこられる仏がいる。あれが阿弥陀仏という仏だ。よろずの仏に見はなされた人びとをこそ救う、と誓って仏となられたかたなのだ〉
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■ヨハネによる福音書9章1〜
1 イエスが道をとおっておられるとき、生れつきの盲人を見られた。
2弟子たちはイエスに尋ねて言った、「先生、この人が生れつき盲人なのは、だれが罪を犯したためですか。本人ですか、それともその両親ですか」。
3イエスは答えられた、「本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである。 
■マタイによる福音書9章1〜 
1 さて、イエスは舟に乗って海を渡り、自分の町に帰られた。
2すると、人々が中風の者を床の上に寝かせたままでみもとに運んできた。イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、しっかりしなさい。あなたの罪はゆるされたのだ」と言われた。
3すると、ある律法学者たちが心の中で言った、「この人は神を汚している」。
4イエスは彼らの考えを見抜いて、「なぜ、あなたがたは心の中で悪いことを考えているのか。
5あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。
6しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と言い、中風の者にむかって、「起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。
7すると彼は起きあがり、家に帰って行った。
8群衆はそれを見て恐れ、こんな大きな権威を人にお与えになった神をあがめた。
9さてイエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。
10それから、イエスが家で食事の席についておられた時のことである。多くの取税人や罪人たちがきて、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。
11パリサイ人たちはこれを見て、弟子たちに言った、「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人などと食事を共にするのか」。
12イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。
13『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、学んできなさい。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
14そのとき、ヨハネの弟子たちがイエスのところにきて言った、「わたしたちとパリサイ人たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。
15するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいる間は、悲しんでおられようか。しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その時には断食をするであろう。
16だれも、真新しい布ぎれで、古い着物につぎを当てはしない。そのつぎきれは着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなるから。
17だれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、その皮袋は張り裂け、酒は流れ出るし、皮袋もむだになる。だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。そうすれば両方とも長もちがするであろう」。
18これらのことを彼らに話しておられると、そこにひとりの会堂司がきて、イエスを拝して言った、「わたしの娘がただ今死にました。しかしおいでになって手をその上においてやって下さい。そうしたら、娘は生き返るでしょう」。
19そこで、イエスが立って彼について行かれると、弟子たちも一緒に行った。
20するとそのとき、十二年間も長血をわずらっている女が近寄ってきて、イエスのうしろからみ衣のふさにさわった。
21み衣にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と心の中で思っていたからである。
22イエスは振り向いて、この女を見て言われた、「娘よ、しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです」。するとこの女はその時に、いやされた。
23それからイエスは司の家に着き、笛吹きどもや騒いでいる群衆を見て言われた。
24「あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。
25しかし、群衆を外へ出したのち、イエスは内へはいって、少女の手をお取りになると、少女は起きあがった。
26そして、そのうわさがこの地方全体にひろまった。
27そこから進んで行かれると、ふたりの盲人が、「ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」と叫びながら、イエスについてきた。
28そしてイエスが家にはいられると、盲人たちがみもとにきたので、彼らに「わたしにそれができると信じるか」と言われた。彼らは言った、「主よ、信じます」。
29そこで、イエスは彼らの目にさわって言われた、「あなたがたの信仰どおり、あなたがたの身になるように」。
30すると彼らの目が開かれた。イエスは彼らをきびしく戒めて言われた、「だれにも知れないように気をつけなさい」。
31しかし、彼らは出て行って、その地方全体にイエスのことを言いひろめた。
32彼らが出て行くと、人々は悪霊につかれて口のきけない人をイエスのところに連れてきた。
33すると、悪霊は追い出されて、口のきけない人が物を言うようになった。群衆は驚いて、「このようなことがイスラエルの中で見られたことは、これまで一度もなかった」と言った。
34しかし、パリサイ人たちは言った、「彼は、悪霊どものかしらによって悪霊どもを追い出しているのだ」。
35イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
36また群衆が飼う者のない羊のように弱り果てて、倒れているのをごらんになって、彼らを深くあわれまれた。

半世紀の証言:名張毒ぶどう酒事件

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半世紀の証言:名張毒ぶどう酒事件/上 無実信じ続けた母
 1961年3月28日、三重県名張市葛尾で開かれた懇親会で農薬入りぶどう酒を飲んで女性5人が死亡した名張毒ぶどう酒事件から50年が過ぎた。奥西勝死刑囚(85)=名古屋拘置所在監=は無罪を訴え続ける。節目の時に関わった人たちの証言と、親族や弁護士以外で面会を許可された特別面会人が大学ノート10冊分に残した奥西死刑囚の肉声から、半世紀をたどる。
 「赤飯を炊いてタイを用意して待っとるよ」。その朝、母は努めて明るい声で息子を送り出した。
 1審無罪から5年後の69年9月。奥西勝が名張市の母タツノ宅から向かったのは、控訴審判決が下される名古屋高裁。「原判決を破棄し、被告人を死刑に処する」。奥西がタツノの元へ戻ることはなかった。タツノも毒ぶどう酒事件のあった集落から姿を消した。
      *
 元東海テレビカメラマンの門脇康郎(67)が集落を訪ねたのは78年冬だった。奥西のことを書いた本を読み「判決は事実を見誤っている」と直感した。だが集落の住民は事件について口をつぐんだ。
 「奥西を一番よく知る人物から話を聞きたい」。弁護団すら知らなかったタツノの居所を捜し当て、80年2月、名張市内の市営団地に足を運んだ。ガラス戸の5センチほどの隙間(すきま)から、小さな声が聞こえた。「(集落の住民に)墓も持って行け言われてな」
 タツノが明かした「死刑囚の母」の日常は過酷だった。道に座っていると蹴られ、家のガラスは石で割られた。逃げた先々で「毒ぶどう酒の奥西や」とささやかれた。団地は事件から数えて4カ所目の住まいだった。「つらい毎日でした」。昼も雨戸が閉め切られた室内の闇から、おびえ切った目がのぞいた。
 80年秋、タツノは初めて門脇を室内に招き入れた。戸を開けると線香の香りが鼻を突き、煙でいぶされてすすけたカーテンが目に留まった。タツノは午前と午後に2時間ずつ、線香を上げて息子の帰りを毎日祈っていたのだ。「どうか息子を助けてください」。タツノは息子より若いカメラマンの前に正座し、涙を流して畳に額をつけた。門脇は恐れさえ抱きながら、黙って眺めるしかなかった。
      *
 「まさる しっかりせよ」(上告棄却直後の72年6月22日)
 タツノは拘置所の奥西に手紙を送り続けた。「1日でも、もういっぺん一緒に暮らしたい」(74年4月19日)「あんかを入れて寝ていると勝は寒くないかと心配で、すると勝の夢を見るのです」(88年4月22日)
 特別面会人として奥西との面会記録をノート10冊に書き残した川村富左吉(故人)は94年2月、手紙をワープロで打ち直し、奥西に差し入れた。息子の無実を信じた母は88年11月、84歳で病死した。969通に上る手紙は120ページの冊子となって残った。(敬称・呼称略)
 ●奥西死刑囚の言葉●
 最後まで無実を信じてくれた。母は誰よりも一番よく無実を知っていた=91年3月22日、母タツノについて
 これでやっと終わると思った。死んだ妻にも晴れて墓参りがしたいと思った=96年5月22日、無罪判決時の心境
 名古屋拘置所に移され2〜3日ぼーとしていた。自分が今どうしてここに居るのかわかるのに1週間くらいかかった=同、逆転死刑判決時の心境
 (特別面会人・川村富左吉の記録より)
毎日新聞 2011年6月14日 東京夕刊

半世紀の証言:名張毒ぶどう酒事件/中 忘れられない「地獄」
 供養塔の建つ高台からは、50年前とほとんど同じ姿の小さな集落が一望できる。
 「あの日の夕方、公民館近くで遊んでいたら母ちゃんが『はよう帰りや』と言ったのを覚えています」。今年4月24日朝、三重県名張市葛尾地区の公民館跡近くの高台で、毒ぶどう酒事件の慰霊祭が約40年ぶりに開かれた。母親を亡くした北浦幸彦(59)が遺族を代表してあいさつした。「50年は長いようで短かった」。住民ら約30人を前に涙ぐんだ。
      *
 61年3月28日夜、公民館であった地区の懇親会。南田栄子(75)は湯飲みに口を当てた瞬間、ピリッという刺激を感じた。男には日本酒、女にはぶどう酒が振る舞われた。酒の弱い南田は乾杯後、飲んだふりをした。
 10分後、女性たちがばたばたと倒れた。「みんな酔うとるな」と思った。しかし、逃れるように戸外へ出て動かなくなった人を見て気付いた。「ただ事じゃない」。地獄だった。10人ほどの女性が「苦しい」とうめいた。駆け付けた医師の指示で自宅からバケツで湯を運び、倒れた人の体をふいた。南田の仲人をしてくれた女性も倒れていた。同い年の友達だった。死んだ妻を抱いてうつむく奥西勝(85)もいた。
      *
 「妻と愛人との三角関係を清算するため農薬を入れた」。6日後、奥西が逮捕される決め手となったのは自白だった。狭い集落の「三角関係」を耳にしていた南田は「やっぱりそうか」と納得した。
 古川秀夫(76)は当時、県警名張署の鑑識担当だった。奥西の険しかった顔ががらりと変わり、笑顔で署内を歩くのを見て「罪を認めて葛藤がなくなったな」と思ったという。だが2週間後、奥西は「自白を強要された」と否認に転じた。
 1審無罪(64年)、2審逆転死刑(69年)……。自白の信用性を巡って司法判断は揺れた。押し寄せるマスコミにコメントを求められる住民は、葛尾地区に住んでいることを隠すようになった。
 南田は3月28日になると事件を思い出し怖くなる。気持ちに区切りをつけたくて慰霊祭に参加した。「亡くなった人には安らかに眠ってほしいが、やっぱり事件は忘れられないよ」。慰霊祭が今後開かれる予定はない。(敬称・呼称略)
 ●奥西死刑囚の言葉●
 妻が死に、子どもやら家族のこと、仕事のことやらどうしたらよいかが真っ先に気になった=96年5月22日、事件発生後の心境
 警察の暴力はしょっちゅう受けた。頭を押さえつけたり、こづいたり。机をどんどんたたいたり、恐ろしかった=93年12月27日、取り調べについて
 死刑になるとか全然思わなかった。思うのは子どもや家族のことばかり=96年5月22日、自白時の心境
 (特別面会人・川村富左吉の記録より)
毎日新聞 2011年6月15日 東京夕刊

半世紀の証言:名張毒ぶどう酒事件/下 支えた特別面会人
 「名張事件に再審開始決定出る。嬉(うれ)しくて、嬉しくて電報を打つ」
 05年4月5日、奥西勝(85)の元特別面会人、川村富左吉の大学ノートに、名古屋高裁の再審決定を伝える文字が躍った。面会を始めて18年、ノートは10冊目になっていた。
 名古屋市の弁護士会館の記者会見場に、川村はつえをついて現れた。「無実を信じていた。言葉が出ない」と涙ぐんだ。
       *
 人権団体「日本国民救援会」の専従役員だった川村は、第5次再審請求中の82年から奥西の支援活動を始めた。国会議員を通じて法務省に働きかけ、87年に面会が許可された。親族や弁護士以外の確定死刑囚との面会は当時異例だった。
 川村は死刑執行の情報を耳にするたび名古屋拘置所へ駆け付け、奥西の顔を見て胸をなで下ろした。98年、第6次請求が棄却された時、奥西は「いつもこんな時、川村さんが飛んできてくれるので実は待っていた」と言って出迎えた。
 心臓病を患って03年に特別面会人を退いてからも時折奥西と会った。だが再審決定直後の05年6月6日、「特に用はないが顔を見たくなって」赴いたのが交流の最後となった。5カ月後、大動脈瘤(りゅう)破裂で逝った。74歳だった。後を継いだ特別面会人、稲生昌三(72)の記録には奥西の弔いの言葉が残る。「よくぞここまで私を支えてくれました」
 名古屋高裁の別の部が再審開始を取り消したのは、それから約1年後だった。
       *
 最高裁の差し戻し決定(10年4月)を受けた高裁の第7次請求の差し戻し審では、ぶどう酒に入れられた農薬が奥西の当初の自白通り「ニッカリンT」だったかを判断するため、ニッカリンTを再製造し、鑑定人が成分分析する。
 名古屋高検幹部は「勝つとか負けるとかじゃない。この裁判は検察と弁護団の論争だけで終わらせられない」と、半世紀の闘いの決着を望む。
 82年に弁護団に加わった弁護団長の鈴木泉(64)は「司法の壁をなかなか打ち破れない無力感」を募らせる。「奥西さんに残された時間は少ない。生きている間に冤罪(えんざい)を晴らしたい」(敬称・呼称略)=沢田勇、大野友嘉子、式守克史が担当しました
 ●奥西死刑囚の言葉●
 これに打ち負けるわけにはいきません。命ある限り無実を訴えつづけたい。裁判官が何言おうと私は無実です=97年1月29日、第5次再審請求特別抗告棄却時の心境
 顔で笑って心で泣いて=98年10月12日、第6次再審請求棄却時の心境
 よくぞここまで書いてくださった。裁判官が現場のことにくわしい=05年6月6日、再審開始決定書を読んで(特別面会人・川村富左吉の記録より)
 毎日新聞 2011年6月16日 東京夕刊
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名張毒ぶどう酒事件の人々 
名張毒ぶどう酒事件 扉は開くか

男性2人を殺害「電動のこぎり切断事件」池田容之被告、弁護人控訴(東京高裁)を取下げ 死刑が確定

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裁判員裁判初の死刑確定=被告が控訴取り下げ−2人殺害切断・東京高裁
 マージャン店経営者ら男性2人を殺害し遺体を切断、遺棄したなどとして、強盗殺人などの罪に問われ、一審横浜地裁の裁判員裁判で死刑とされた無職池田容之被告(33)が17日までに、弁護人による東京高裁への控訴を取り下げた。死刑が確定した。裁判員裁判による死刑判決の確定は初めて。取り下げは16日付。
 横浜地裁は昨年11月、被害者の1人に対し生きたまま首を切断した殺害方法を、「およそ想像できる殺害方法のうちでも最も残虐だ」と非難。「酌むべき事情を最大限考慮しても、極刑を回避する事情は見いだせなかった」と述べ、裁判員裁判で初の死刑判決を言い渡した。
 判決言い渡し後、朝山芳史裁判長は「控訴することを勧めます」と異例の付言をしていた。裁判員経験者も判決後の記者会見で、「控訴してください」と被告に呼び掛けていた。(時事通信2011/06/17-16:55)
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〈来栖の独白2011/06/17〉
 「控訴してください」などと、実に情けない愚かな一審裁判官、裁判員だ。被告本人は上訴しないだろう、と私は危ぶんでいた。裁判所も裁判官(員)も独立した存在のはずだ。上の裁判所を当てにして判決を下すなど、言語道断。取り返しのつかないことをしてくれた。
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裁判員裁判初の死刑判決「電動のこぎり切断事件」 池田容之被告の弁護団、東京高裁に控訴2010-11-30 | 被害者参加・裁判員裁判 / 検察審査会 
〈来栖の独白2010-11-30
 報道によれば、強盗殺人などの罪に問われ、裁判員裁判初の死刑を横浜地裁で言い渡された無職池田容之被告(32)の弁護団が、判決を不服として東京高裁に控訴した、ということである。控訴は29日付。池田被告自身は22日に弁護団と接見した際、「控訴は(遺族を)傷つけることにつながる恐れがある」として、控訴しない意向を示していた。
 被告人は弁護団の控訴を取り下げないで戴きたい。1審で判決を下した裁判長が上訴を勧めるなど、言語道断。それほどに脆弱な、心もとない判決だった。自分の下す判断に確信を持たずして、人の命を奪う。呆れた話だ。三審制(控訴審がある)とはいえ、裁判官の独立も判決の重みも、皆目、分かっておられない。言い訳と控訴審への甘えばかりが窺われる。こんな杜撰な「いのち」の扱い方(殺し方)をしておいて「良い経験だった」と感想を述べる裁判員。
 人の生死(命)を決めるに、多数決による、というのも無茶な話だ。
 目を転じてみる。死刑執行に手を下す刑務官は、この人殺しという職務を上から命令され、遂行する。三審制によって(たてまえは)厳正に定められた(はずの)刑を、法務大臣が執行を命令し、行政が遂行する。執行する刑務官の胸は、いかばかりだろう。死刑とは何か、執行に携わる人の涙も知らず、いい加減な、子どもみたいな気持ちで判決を出してもらっては困る。
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刑事司法(理性・法・人が人として評価される場)に逆行する裁判員裁判=のこぎり切断事件に死刑判決
裁判員裁判で初の死刑判決/2人殺害.生きたまま電動のこぎりで切断/横浜地裁
裁判員裁判で2例目の死刑求刑 2人殺害/生きたまま電動のこぎりで切断/横浜地裁
死刑とは何か〜刑場の周縁から来栖宥子(2009/03/12Thu.)
 裁判員裁判の実施が間近になった。本当に実施可能なのだろうか、という半信半疑の思いも私にはある。拙サイトでは裁判員制度について、様々な記事や論説から考えてきた。実に多くの問題を抱えた制度であって、どれ一つとってみても、揺るがせに出来ない重い問い掛けであると痛感している。 裁判員裁判は死刑相当とされそうな重大事件について市民が参加する。けれども「裁判員になりたくない」「死刑に関わりたくない」との世論が圧倒的に多い、と聞く。矛盾していないか。従来の世論調査結果によれば、8割強の国民が死刑制度に賛成している。
 本稿では、国民が斯くも係わる事を嫌悪する死刑、とりわけ死刑執行の実態とは何なのか、可能な限り現場(処刑場)に近く寄って考えてみたい。裁判員制度が死刑の実際について知り考える契機になるなら、と密かに期待を寄せるものである。
 先ず、中日新聞の「論壇時評」(2008/2/28〜29)から。
 論壇時評【「神的暴力」とは何か 死刑存置国で問うぎりぎり孤独な闘い】(抜粋)
 日本は、「先進国」の中で死刑制度を存置しているごく少数の国家の一つである。井上達夫は、「『死刑』を直視し、国民的欺瞞を克服せよ」(『論座』)で、鳩山邦夫法相の昨年の「ベルトコンベヤー」発言へのバッシングを取り上げ、そこで、死刑という過酷な暴力への責任は、執行命令に署名する大臣にではなく、この制度を選んだ立法府に、それゆえ最終的には主権者たる国民にこそある、という当然の事実が忘却されている、と批判する。井上は、国民に責任を再自覚させるために、「自ら手を汚す」機会を与える制度も、つまり国民の中からランダムに選ばれた者が執行命令に署名するという制度も構想可能と示唆する。この延長上には、くじ引きで選ばれた者が刑そのものを執行する、という制度すら構想可能だ。死刑に賛成であるとすれば、汚れ役を誰かに(法相や刑務官に)押し付けるのではなく、自らも引き受ける、このような制度を拒否してはなるまい。(大澤真幸 京都大学大学院教授)
 (以下略)

メディアは伝えるべきことを伝えているか<愛の反対は憎しみではなく無関心です>

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中日春秋
2011年6月17日
 太平洋戦争末期、東海地方で大地震が続き、甚大な被害が出たことを当時、大半の国民は知らなかった。軍部の報道統制で、新聞はわずかな事実しか伝えられなかったからだ▼昭和十九年十二月七日の東南海地震で、三重や愛知県などで約千二百人が犠牲になった。翌八日は太平洋戦争の開戦から三年。各紙の一面トップは昭和天皇の写真付きの記事だった▼中部日本新聞(中日新聞)でも、三面に二段の小さな記事だけだ。レイテ沖海戦にも敗れた厳しい戦況の下、国民の士気への影響を軍部は恐れたのだろう(保阪正康責任編集『昭和史講座』)▼一カ月後、愛知県三河地方を襲った直下型地震では、二千人を超える死者が出ている。中部日本新聞は「再度の震災も何ぞ 試煉(しれん)に固む特攻魂」の見出しを掲げ、被害状況にはほとんど触れなかった▼軍の情報統制は今はない。被災地や原発事故のニュースは厚みがある。それでも自問を重ねる。伝えるべきことを伝えられているか、震災報道の陰で埋もれている重要なニュースはないか▼北沢防衛相は、米普天間飛行場の代替え施設の滑走路をV字形にすることや、過去に多くの墜落事故を起こした垂直離着陸機オスプレイの普天間飛行場への配備を容認すると仲井真知事に通告した。<愛の反対は憎しみではなく無関心です>。マザー・テレサの言葉をかみしめている。
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記者クラブは日本を滅ぼす/改めて「ジャーナリスト活動無期限休止」を宣言.上杉隆 2011-06-16 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
Diamond online2011年6月16日 週刊・上杉隆 【第179回】 上杉 隆 [ジャーナリスト]

 今週号の「週刊ポスト」の反響が大きい。発売からきょうまでの3日間で8人の政治家、4人の大手メディア幹部、2人の宗教団体幹部から問い合わせがあった。
 記事は、緊急寄稿した〈上杉隆「ジャーナリスト無期限休業宣言」〉というもので、4月1日に発表した年内でのジャーナリスト活動休止を改めて宣言したものだ。
 原発事故以来、大手メディアによる国民への「洗脳」の実態が日々明らかになってきている。それは本コラムでずっと訴え続けてきた記者クラブ問題に起因するものである。
マスコミの問題だけに留まらない 記者クラブ問題の病根の深さ
「記者クラブはひとりメディアだけの問題ではない。それは、国民の生命・財産、もしくは国家全体におよぶ重大な問題なのである。官報複合体という強力な権力構造が、国民を洗脳し続け、それはシステム化してしまっている。よって、記者クラブ問題はマスコミの問題ではなく、国家システム全体の問題なのだ」
 1999年来、ラジオ番組や講演などで筆者は繰り返しこういい続けてきた。その実態がようやく明らかになりはじめ、国民の間に共通認識が広がりはじめたこと自体は大いに歓迎している。
 しかし、その時期は少しばかり遅かった。それが悔やまれてならない。記者クラブ、そこに依拠する大手メディアの欺瞞に気づいた人々はまだまだ少数である。
 洗脳からの覚醒は、メディアツールとしてのインターネットの台頭が大いに寄与するものだが、その結果、年代層で大きく情報に格差が出てしまっている。
 つまり、ネットで情報を得る日本人と、これまで通り新聞・テレビからニュースを得る日本人では、圧倒的に情報量で差が出てしまっているのだ。
大震災でも政府・東電と一体化 やはり「広報機関」となった大手メディア
 3・11からの100日間、大手メディアの報道は機能しないどころか、逆機能を果たしてしまった。
「メルトダウンはしていない」
「格納容器は健全に守られている」
「放射能の外部放出はない」
「チェルノブイリのような大事故には絶対にならない」
「ただちに人体に影響の出るものではない」
「仮に3号炉が水素爆発しても大きな問題はない」
「放射能汚染水は海洋で拡散され、被害が及ぶことはない」
「プルトニウムは安全だ」
 言わずもがなだが、こうした報道は結果として誤報である。誤報ならばまだよかったかもしれない。それはもはや「デマ」であり「風評」である。
 何もしなければ害はないものの、大手メディアは、政府・東電と一体化し、いつものようにその広報機関としての働きを強化させたため、結果としてこのような「デマ」や「風評」を流す犯罪行為に加担してしまったのである。
 そのために何が起きているか。新聞・テレビからの情報をいまだ信じているおよそ1億人以上の日本人は、政府・東電の原発事故対応の失敗によって、国力が低下し、国家の信頼が失われ、多くの国民の健康が脅かされている現実を知らされないでいるのだ。
 また、今後、数十年以上もの間、放射能による内部被曝の恐怖と戦わなくてはならない未来も直視できないでいる。
 本来、それを知らせるのはジャーナリズムの仕事だ。「安全」は東京電力が、「安心」は政府が追求すべき仕事だ。だが、メディアはそうではない。仮に「安心」「安全」から遠のくことになっても、「事実」を追い求めるのがジャーナリズムに要請された仕事なのである。
 だが、残念ながら、日本の記者クラブメディアは、この100日間、何ひとつそれをできなかった。それは断言できる。繰り返すが、大手メディアは本来の機能を果たすどころか、逆機能を働かせたのだ。
罪の意識をまったく持たない記者クラブメディアの構成員たち
 この問題が根深いのは、彼らに罪の意識がまったくないことだろう。自らが犯罪に加担したなどという意識はさらさらない。それだからこそ、「安心デマ」「安全デマ」に乗っかり、社会へのアラート機能を作動させることなく、国民を洗脳し続けたのだ。
 皮肉なことに、記者クラブメディアは、読者や視聴者の「安全」や「安心」を守るどころか、それを奪い、信用を落とすことになったのだ。
 3月、東京電力の会見に出席し続けた筆者は、記者クラブシステムがついに日本という国家を滅ぼし、国民の生命と健康をも奪おうとしていることに気づいた。それは、当初、妄想と受け取られた。だが、声を上げ続けたおかげで、「助かった」という反応も少なからずいただくようになった。
 自由報道協会のメンバーも同様だ。それぞれバラバラに取材をしているフリーランスの記者たちは、目の前で起きている現実に正直である。自らの見た現実、取材した事実を、そのままネットの視聴者や読者に提供し続けた。
 その結果、日本人のごく一部には、それらの声を届けることができた。福島の幼い子どもを持つ母親たちの中には、毎日、自由報道協会のサイトにアクセスしてくる者も少なくない。誰もが本当のことを知りたいのだ。
 根拠のない「安心」や「安全」報道はもうこりごりである。読者や視聴者が知りたいのは「事実」である。政府や東電の虚偽の発表など知りたくないのである。
フリーランス記者の仕事を決して認めようとしない大手メディア
 しかし、いま、ようやく自らの間違いに気づいた大手メディアは、結果として正しく報じたフリーランスの記者たちの仕事を認めようとしない。そればかりか、その存在すら否定しようとしている。
 メルトダウン、格納容器の破損、放射能飛散、海洋汚染、プルトニウム、ストロンチウム――。
 こうした放射能事故の事実を追及し、報じてきたのはフリーランスの記者たちである。
 日隅一雄氏のように、連日連夜、記者会見に通い続け、東電の嘘を暴き、隠された情報を明らかにし、ついには自らの身体を蝕む病魔に倒れたジャーナリストが行なった仕事だ。今回の原発事故報道は、そうした記者たちが、文字通り、命がけで追及した結果、明らかになった事実ばかりではないか。
 今からでも遅くない。大手メディアの記者たちは、日隅氏のもとを訪れ、その仕事を追認すべきである。いや、治療の邪魔になるかもしれないので、彼のホームページを訪れるだけでもいい。犯罪者ではなく、記者としての矜持が残っているのならば、きっと、何かを感じ取ることができるだろう。
 この日本でフェアな言論空間を構築することは難しいのだろうか。筆者自身はジャーナリストとしての活動を休止するが、別の可能性を探ってみるつもりだ。
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〈来栖の独白2011/06/16〉
 今朝のNHKテレビニュースは、長時間を節電の賢い方法や節電のもたらす効用などに充てていた。節電特集である。原発の重大な問題点、負の側面から目を逸らさせ、原発問題は節電でクリアされるといった、日本人特有の生真面目さに訴えかける。裏を返せば、「原発さん、あなたがダウンしちゃったので、私たちは、こんな努力を強いられています」という原発讃歌である。NHKだけに限らない。つくづく愛想が尽きる昨今のメディア事情である。
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無期限活動休止宣言・上杉 隆「フェアでない日本のメディアに関わりたくない」2011-04-02 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

ヤフーと産経新聞に賠償命令 米ロサンゼルス銃撃事件 三浦和義氏の写真掲載

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ヤフーと産経新聞に賠償命令 ネットでの写真掲載「必要性認められない」 東京地裁判決 
日本経済新聞 2011/6/15 18:54
 米ロサンゼルス銃撃事件で逮捕され、ロス移送後に自殺した三浦和義元会社社長(当時61)=日本では銃撃事件の無罪確定=の遺族が、ネット記事で過去の逮捕・連行時の写真を掲載され精神的苦痛を受けたとして、ヤフーと配信元の産経新聞社に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁の松並重雄裁判長は15日、両社に66万円の支払いを命じた。
 問題となったのは、2008年10月に三浦元社長が死亡した際のヤフーのニュース記事。1985年9月に三浦元社長が警視庁前でパトカーから降ろされた手錠姿の写真を、産経新聞から配信を受けて掲載した。遺族側は「無念の死を遂げた元社長を辱めるものだ」などと主張していた。
 松並裁判長は「遺族は20年以上も前の手錠姿の写真を公表されることを望まないと考えられ、記事内容に照らしても85年当時の手錠姿を掲載するまでの必要性は認められない」と指摘。元社長に対する遺族感情を侵害すると認定した。
 ヤフーは「配信記事が第三者の権利を侵害しない旨、産経側が保証していた」と主張したが、松並裁判長は「ヤフーは人の人格的利益を侵害する写真が載らないよう注意し、掲載された場合は速やかに削除する義務を負う」として退けた。
 ヤフーの話 判決文を見たうえで今後の対応を検討したい。
 産経新聞の話 主張が一部認められなかったのは遺憾。判決内容を詳しく検討して対応を判断する。
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27年目のロス疑惑ー洞爺湖サミットー共謀罪


オウム全裁判が年内に終結/震災・原発・沖縄・死刑、いずれも軽重区別をつけてはならない命の問題

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オウム遠藤被告、9月に弁論=死刑上告で最後−最高裁
 地下鉄、松本両サリン事件など4事件で殺人罪などに問われ、一、二審で死刑とされたオウム真理教元幹部遠藤誠一被告(51)について、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は16日までに、弁論期日を9月29日に指定した。
 教団をめぐる一連の事件で死刑が言い渡されたのは13人。このうち11人が確定し、上告中の中川智正被告(48)も9月16日の弁論が決まっている。(時事通信2011/06/16-17:54)
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〈来栖の独白2011/06/18Sat.〉
 全裁判が終結、確定すれば、オウムの場合、次に来るものはかなり早期と予想される。国にとって最も効果的な時期、状況を選んで行われるだろう。
 昨年7月28日、千葉法相(当時)は東京拘置所在監の2名に対して死刑を執行した。私はこれを法務官僚に半ば屈した末の命令と受け止めたが、某テレビ番組で千葉氏と側近が語っていたところによれば、千葉氏は法相就任の極めて早い時期に執行命令の決断はしていたという。さまざまなことがあって命令の時期が遅れただけ、ということだった。命令書に判を押さないで済ませる気はなかった、と。
 死刑廃止思想の持ち主でいらしたから、執行について煩悶があったことは疑う余地はないだろう。が、氏は法相として死刑執行の決断はしていた、ということだ。なぜ、執行するか。彼女の云うことによれば、「死刑についての議論を国民の間で起してほしいから」ということであった。
 死刑囚2人に命を差し出させることで願った、死刑制度に関する国民的議論。その結果はどうだったか。一時的に騒いだだけではなかったろうか。
 3・11以降は東日本大震災以外のことを話題にすれば、顰蹙を買いかねない風潮である。ましや、「死刑」の議論など、ごくわずかの変人のすること、不謹慎の極みであろう。
 K君(名古屋アベック殺人事件、無期懲役者)は書信の中で次のように言う。
“衣食住の全てを税金でお世話になっている私たち受刑者は、東日本大震災や原発事故の関係で当然のことながら、節水や節電に取り組むことになります。昨年に続いて今年もまたとても厳しい夏になりそうですが、微力ながら私も「今の自分にできること」をしっかりと考えて実行してゆきたいと思います。”
 3・11以降、揺るがせにできない問題は数々起きた。中国は新規原発を稼働させたし、北方領土の問題、また沖縄については、それこそ国民が一緒になって考えねばならない問題をアメリカは提起してきている。それらすべて命の問題である。
 いかなる状況にあっても、不断にしっかりと考え、取り組んで「ここに問題があります」と言ってゆかねばならない。東日本大震災の問題も原発の問題も、そして沖縄、防衛・安全保障のことも死刑も、いずれも軽重区別をつけてはならない問題である。
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8月中に東京拘置所の刑場を報道陣に公開 平和(シャローム)とは「傷付いた部分のない状態」をいう2010-07-30 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 〈来栖の独白 2010-07-30Fri.〉
 報道によれば、千葉法相は、8月中に東京拘置所の刑場を報道陣に公開するそうだ。これまで密殺・密行であった処刑。それが刑場だけでも、公開されることになる。
 故勝田清孝死刑囚は上告趣意書のなかで「犯罪の抑止に少しでも貢献できるのであれば大衆の面前での処刑をも辞さぬと純粋に考えたりする私です。」と述べ、東京拘置所在監の死刑囚坂口弘氏も“叶ふなら絞首は否む広場での銃殺刑をむしろ願はむ” と詠んでいる。
 また、私も弊ホームページのなかで、「死刑とは何か〜刑場の周縁から」と題して加賀乙彦氏や大塚公子氏の作品から、刑場と刑執行の有り様について考えてみた。
 裁判員制度が施行されて1年以上が経過した。本年は死刑という量刑も考えねばならない事案も出てくる、とも報じられている。国民は、死刑について知らねばならない。そのための水先案内人となって28日処刑に立会い、そしてまた本日「8月中に東京拘置所の刑場を報道陣に公開」と発表した千葉法相の英断を賛美したい。
 冗談(英断を賛美)は、ここまで。
 千葉法相は、「国民的な議論の契機にしたい」として28日の死刑執行を命令したと言う。如何にも乱暴、強引な理由付けではないだろうか。命を奪わず(執行せず)とも議論はできるのではないか。法相という重く高い立場のもたらす苦悩が私のような民間人には理解不能なのだろうが、私はどう考えても二人の命の喪失の上に何かが結実するとは思えないのである。千葉法相は、死刑廃止の理念を持っておられた。死刑廃止は「平和」と同じく、人類の叡智を傾けて成される高邁な理想である。手前味噌(私はカトリックの信徒である)を言わせて戴くなら、聖書によれば、「平和(シャローム)」とは「傷付いた部分のない状態」をいう。「国民的な議論の契機」が死刑執行であった、命を奪うこと(身体全損)であったなら、私は立ち上がれないような思いに閉ざされる。こんな契機で死刑廃止も平和も訪れるとは思えない。全存在を否定された二人の絶望を見過しにできない。
 また千葉氏は、死刑執行を法務官僚側から説得されたとの一部報道に対しては「まったく当たっていない」と答えているが、それも俄かに信じがたい。そもそも従来、法相に死刑執行を説得しない法務官僚など、あり得ない。「死刑執行命令書に判を押すこと」と「刑場の公開」は、双方がギリギリで見せたカードだったろう。1年近くも判を押さずに踏ん張った千葉氏が易々と判を押したとも思えず、永年開かずの扉を守ってきた法務省が易々と刑場を公開するはずもない。
 夢想しないではいられない。本日は叶わずとも、明日にでも死刑制度が廃止されるなら、刑場の公開も不要となる。「刑場の公開」ということは、この国が死刑を存置している、この先当分は存置する、ということだ。
 「死刑制度の存廃を含めたあり方を研究する勉強会も同月中に発足させる方針」とも言う。まだまだこの先当分、死刑は続きそうだ。「研究」や「勉強会」の類いが、早急に対応したためしはない。
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中国、原子炉新規稼働へ/原発を持つ国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができる/原発保有国の本音2011-05-11 | 中国 
北沢俊美防衛相、日米で共同開発を進めているミサイルの第三国への輸出を認める方針2011-06-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
韓国議員が国後島を訪問 日露間の領土問題におけるロシアの対応を視察2011-05-24 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
メディアは伝えるべきことを伝えているか<愛の反対は憎しみではなく無関心です>2011-06-17 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 中日春秋
 2011年6月17日
 太平洋戦争末期、東海地方で大地震が続き、甚大な被害が出たことを当時、大半の国民は知らなかった。軍部の報道統制で、新聞はわずかな事実しか伝えられなかったからだ▼昭和十九年十二月七日の東南海地震で、三重や愛知県などで約千二百人が犠牲になった。翌八日は太平洋戦争の開戦から三年。各紙の一面トップは昭和天皇の写真付きの記事だった▼中部日本新聞(中日新聞)でも、三面に二段の小さな記事だけだ。レイテ沖海戦にも敗れた厳しい戦況の下、国民の士気への影響を軍部は恐れたのだろう(保阪正康責任編集『昭和史講座』)▼一カ月後、愛知県三河地方を襲った直下型地震では、二千人を超える死者が出ている。中部日本新聞は「再度の震災も何ぞ 試煉(しれん)に固む特攻魂」の見出しを掲げ、被害状況にはほとんど触れなかった▼軍の情報統制は今はない。被災地や原発事故のニュースは厚みがある。それでも自問を重ねる。伝えるべきことを伝えられているか、震災報道の陰で埋もれている重要なニュースはないか▼北沢防衛相は、米普天間飛行場の代替え施設の滑走路をV字形にすることや、過去に多くの墜落事故を起こした垂直離着陸機オスプレイの普天間飛行場への配備を容認すると仲井真知事に通告した。<愛の反対は憎しみではなく無関心です>。マザー・テレサの言葉をかみしめている。
◆「千葉景子法相による死刑執行に抗議する」弁護士・ 安田好弘『年報 死刑廃止2010』 / 耕論 死刑 悩み深き森「執行の署名は私なりの小石」 元法務大臣 千葉景子さん

社説検証/独・伊の脱原発/ 「安全高め流れ変えよ」産経 / 「脱」を日本にも求めた朝日

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独・伊の脱原発 安全高め流れ変えよと産/「脱」を日本にも求めた朝
産経新聞 6月20日(月)7時56分配信
 【社説検証】

 福島第1原子力発電所の事故が契機となり、ドイツ、スイスに続いてイタリアも「脱原発」を決めた。これを欧州における脱原発の流れと捉える向きもあるが、原発大国のフランスや英国、チェコ、ポーランドなど原発を堅持する国はまだまだ多く、産経は、原発で作られたフランス産の電力をアテにするドイツについて「『自国内では生産しない』という名ばかりの『脱』」だと論じ、読売も「実態として欧州の原発依存は変わらない」との見方を示している。
 朝日は、この「脱原発」を高く評価した。「脱原発への離陸に成功すれば、ドイツは21世紀の新しい文明と生活のモデルを示すことができよう」。脱原発によって明るい未来が約束されたかのようで、筆致も高揚している。同時に、国内では福井や佐賀、青森など原発立地県の知事選で原発容認派の現職の勝利が相次いだことに触れ、「欧州との、この落差はいったいどうしたことか」と嘆き、「『脱原発』の民意を、政党はどうくみ取れるのか」と訴えた。
 毎日は「両国はフクシマを反面教師とし、多少の負担増は覚悟の上で『安全』を選んだ」と肯定的に受け止め、東京は「国際社会への重い問いかけ」「欧州からの新たな警鐘」と、独・伊の決定を重視すべきだとの姿勢を打ち出した。
 対して産経と読売は、ドイツの選択は適切だったかと疑義を呈する。産経は「一国の選択としては尊重すべきだが」としつつも「手放しの脱原発礼賛は禁物」と、「脱原発」の広がりを牽制(けんせい)し、読売も「ドイツの産業競争力を奪いかねない重大な政策転換」と問題提起した。
 そのドイツの産業競争力の低下について産経は「欧州連合(EU)全体の景気低迷を招きかねない」とし、「(火力発電の比重増大で)原油や天然ガスの価格高騰を招く。エネルギー不足とコスト高は日本経済、ひいては世界経済にも悪影響を与えかねない」と危惧した。
 独・伊とも脱原発に伴うエネルギー政策は曖昧で、「(ドイツは)当面は火力発電所の増設などで、将来的には自然エネルギーの拡充で埋めるという。だが、その道程には不確定要素が多い」(読売)、「(イタリアは)国民は脱原発を選択したが、政府は風力や太陽光発電などで代替する具体的な政策を描けていない」(日経)と、それぞれ指摘している。
 さて問題は、わが国の今後のエネルギー政策をどのように進めていくかだ。
 産経と読売はともに、ドイツなどと違って隣国から電力を買えない日本の事情に触れたうえで、「産業競争力を維持するうえで、安全性を高めて原発を活用していくことが、当面の現実的な選択である」(読売)、「安全性と安定供給を両立させての原発堅持が不可欠」(産経)と断言した。
 毎日は「原発事故の震源地となった日本としては、将来の原発政策を腰を据えて考えたい」と論じる。しかし産経は、事故を起こした国だからこそ、「安全性を再確立して範を世界に垂れ、脱原発の流れを食い止める」のが責務だと主張する。
 日本の多くの原発はいま、運転が停止している。「法的根拠を欠く運転不能は、国家の機能不全」と言い切る産経は、次のように提言し政府を促した。
 「菅直人首相と海江田万里経済産業相の傍観は許されない。原発立地県を行脚し、首長に運転同意を『要請』すべきである」。このままでは日本の経済も国民生活も“沈没”しかねない。(清湖口敏)
 ■「独・伊の脱原発」に関する主な社説産経
・(ドイツの脱原発)実態知らずの礼賛は禁物(8日付)
・(伊も脱原発)日本から流れを変えよう(15日付)朝日
・(ドイツの決断)脱原発への果敢な挑戦(8日付)
・(原発と民意)決めよう、自分たちで(15日付)毎日
・(欧州の脱原発)フクシマの衝撃は重い(15日付)読売
・(ドイツ「脱原発」)競争力揺るがす政策再転換(7日付)
・(イタリアの選択)欧州の原発依存は変わらない(16日付)日経
・「脱原発」欧州の不安と現実(15日付)東京
・(どうする「脱原発」)ドイツの重い問いかけ(8日付)
・(イタリア脱原発)欧州からの新たな警鐘(15日付)
最終更新:6月20日(月)8時2分
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首相 原発再稼働 後押し/経産相 原発再開要請/世論調査「廃炉推進」82% 「不安感じる」倍増2011-06-20 | 地震/原発
不信任騒動渦中に発足「地下原発推進議連」/超党派 反菅/企業と族議員、生き残りを模索2011-06-16 | 地震/原発
《ちらつく原発タブー》 不信任案否決されたが、「菅降ろし」なぜ起きた2011-06-03 | 地震/原発

「原発解散」の噂/「解散は8月の広島、長崎の原爆の日」という“尾ひれ”までついて

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永田町に駆けめぐる首相「原発解散」の噂 自民党に警戒感
産経ニュース2011.6.18 21:21
 菅直人首相が「脱原発」か否かを争点に衆院解散に打って出る−。永田町でこんな噂が駆けめぐり、自民党が警戒感を強めている。東京電力福島第1原子力発電所事故で原発への不信感が高まるなか、平成17年の郵政解散のように、民主党に地滑り的勝利を与える可能性があるためだ。
 「菅さんの性格から、そのシングルイシュー(単一課題)で選挙をやるのかもしれない」。自民党の大島理森副総裁は18日、BS朝日とテレビ東京の番組で、表情をしかめて語った。
 「原発解散」は、選挙の陣頭指揮を執る大島氏にとっては気になる噂のようで「原発をイエスかノーかだけで議論する選挙はあるべきではない。菅直人という政治家の戦略だけで、日本のエネルギー政策を判断されたらたまらない。その前に辞めていただく」と、警戒感をあらわにした。
 背景には、5月6日の菅首相の中部電力浜岡原発停止発表が、有権者から高評価だったという自民党の分析がある。「首相は原発解散で勢いを挽回しようとしている。解散は8月の広島、長崎の原爆の日らしい」という、もっともらしい“尾ひれ”までついて広まっているという。
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《ちらつく原発タブー》 不信任案否決されたが、「菅降ろし」なぜ起きた2011-06-03 | 地震/原発 
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首相 原発再稼働 後押し/経産相 原発再開要請/世論調査「廃炉推進」82% 「不安感じる」倍増

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原発再稼働、後押し 首相「停止、経済に影響大」
産経新聞 6月20日(月)7時56分配信
  菅直人首相は19日午後、太陽光や風力といった自然エネルギーの普及をテーマに、首相官邸と東日本大震災の被災地をインターネットを結んで住民らと意見を交わす「自然エネルギーに関する国民対話」を開いた。首相は「すべての原子炉を止めることはあまりにも経済に対する影響が大きい」として、電力不足を回避するため、定期検査などで停止中の原子力発電所を再稼働させることについて、理解を求めた。
  首相は短文投稿サイトのツイッターや仙台市や福島県郡山市など4カ所の住民からテレビ電話を通じて寄せられた質問に2時間にわたり答えた。
 首相は自身と、原発の再稼働を図る海江田万里経済産業相との立場は異なるのではないかとの質問に、「安全性が確認された原発を順次再稼働させてほしいというのは、全く同じ思いだ」と応じた。
 ただ「長期的にどのようなエネルギーを選ぶかは、別に議論する必要がある」とも述べ、自然エネルギーの推進を主張。「原子力政策を進める行政が『風力や太陽光発電はコストが高く、供給が不安定』として意図的に力を入れなかった面がある」と指摘した。
 さらに、発電から送電、小売りまでを独占的に担ってきた電力会社のあり方を見直す立場を鮮明に打ち出し、電力会社に自然エネルギーによる電力の買い取りを義務付ける「固定価格買い取り制度法案」の今国会での成立に意欲を示した。
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原発:経産相再開要請 「安全基準説明して」 立地自治体は困惑
 停止中の全国の原子力発電所について、深刻な事故に備えた電力各社の安全対策を踏まえ、再稼働への協力を自治体に求める意向を明らかにした海江田万里経済産業相に対し、18日、地元からは疑問や困惑の声が上がった。【松野和生、目野創、横田美晴、栗田亨】
 全国最多の原発を抱える福井県。同県高浜町に立地する関西電力高浜原発(1〜4号機)は、1号機が停止している。野瀬豊・同町長は「国に求めている原発の新しい安全基準や避難道の整備などについて、答えを持ってきてもらえるなら意味があるが、ただ『動かしてほしい』では難しい。政府の再生エネルギー計画なども位置づけが不明確で、ムードとしてしか語られていない」と、政府の対応に疑問を投げかけた。
 全国で唯一、県庁所在地に立地された中国電力島根原発(松江市)は、点検・交換漏れが昨春発覚。2号機は運転を再開したが、1号機は今も停止中だ。同市原子力安全対策課の小川真課長は「国から納得できる説明がない。1号機に関しても不安感が解消されていない」。島根県の溝口善兵衛知事は「国から十分説明を受け、チェックしていく。慎重かつ丁寧に対応したい」とコメントした。同原発の運転差し止め訴訟の原告代表、芦原康江さん(58)は「福島第1原発が、津波だけでなく地震によって被害を受けたのか分析が不十分だ」と批判した。
 定期検査中の四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)に関して、山口道夫・同県原子力安全対策推進監は、中村時広知事が必要としている(1)新たな安全基準を国が示す(2)地震の揺れを含めた安全対策の姿勢を四国電力が示す(3)地元の同意・理解がある−−の3条件を挙げ、「(新基準が示されていない)現状では、国の要請に対して白紙の状態は変わらない」と話した。
 石川県志賀町の北陸電力志賀原発は、1、2号機とも停止中。谷本正憲・同県知事は「原子力安全・保安院が要請した緊急対策に合格した浜岡原発に停止を求め、同様に合格した志賀原発には再稼働を求めている。何が違うのか住民に国が説明してくれないと、県としては再稼働の判断はできない」と話した。
 福島県内では10基ある原発のうち、福島第1の5・6号機と第2の1〜4号機が冷温停止中だ。これらについて佐藤雄平知事は4月以降「再稼働はあり得ない」と明言し続けている。
 第2原発が立地する楢葉町の猪狩克栄・企画課長は「まずは原発事故を収束させるべきだ。地震にも津波にも対応した安全対策を国が十分に説明できるとは思えない」と疑問を投げかけ、「夏場の電力不足を心配してのことだと思うが、立地自治体の住民も納得しないのではないか」と話した。
 ◇橋下氏「原発の周辺に住めば」
 橋下知事は海江田経産相の発言に「時期尚早だ。海江田経産相や経産省のみなさんが原発の周辺に住めばよい」と批判。「福島第1原発事故を収拾できていない政府が、安全を言うのはどういう思考回路なのか」と述べた。
毎日新聞 2011年6月18日 大阪夕刊
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「廃炉推進」82% 「不安感じる」倍増 原発世論調査
中日新聞2011年6月19日 11時07分
 本社加盟の日本世論調査会が今月11、12日に実施した全国世論調査によると、国内に現在54基ある原発を「直ちに全て廃炉にする」「定期検査に入ったものから廃炉にする」「電力需給に応じて廃炉を進める」とした人が合わせて82%に上り、「現状維持」の14%を大きく上回った。福島第1原発事故が収束せず、その後の対応をめぐる政府、東京電力の不手際が指摘される中、国が推進してきた原発政策への不信感の強さが浮き彫りになった。
 事故前後での原発への不安を聞いたところ、事故前に「大いに不安を感じていた」「ある程度感じていた」は計43%だったのに、事故後は計94%と倍増。今回の事故が与えた心理的変化の大きさを裏付けている。
 政府がエネルギー基本計画で掲げていた「2030年までに原発14基以上を新増設する」との方針には、67%が「新設、増設するべきではない」と回答。「14基より減らすべきだ」は22%で、「方針通り進めるべきだ」は6%だった。
 現在運転中の原発の安全対策では「運転を続けて定期検査で対応するべきだ」が54%で「直ちに止めて対応するべきだ」の38%を上回り、政府の要請で運転停止した浜岡原発のような異例の措置よりも、日常生活への影響も踏まえた現実的な措置を求める声が強かった。
 また、今後重点的に取り組むべきエネルギー分野(2つまで回答)では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが84%でもっとも多く、次いで水力45%、天然ガス31%と続いた。原子力は7%で、石油、石炭(各4%)を上回った。
 原発事故のニュースを聞いて感じたこと(同)では「国の原子力安全規制の体制が信頼できない」が59%でトップ。「国や電力会社の情報が信用できない」が51%で続き、「電力会社など事業者の安全意識が足りない」が48%だった。
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脱原発で「不便な生活受け入れられる」 世論調査
中国新聞2011/06/19Sun.
 既設原発の一部または全部の廃炉を「支持」する人や、原発の新設、増設に反対する人たちの多くは電力不足を危惧する一方で、不便な生活は「受け入れられる」と回答した。原発廃止の意思が楽観論に基づくものではなく、現在の生活水準を下げてでも「脱原発」を積極的に進めるべきだとの考えが根強いことがうかがえる。
 既設の原発を「直ちに廃炉」「定期検査で廃炉」「電力需給に応じて廃炉」と回答した人のうち、電力不足について「大いに不安がある」「ある程度不安がある」としたのは計83%。「原発の新・増設をしない」とした人の中でも計82%が同様に不安を訴えた。
 一方、電力不足で暮らしが不便になることを「受け入れられる」と回答したのは全体で80%。廃炉「容認」や新・増設をしないと答えた人に限るとそれぞれ84%に上り、「受け入れられない」の各15%を大きく上回った。
 政府のエネルギー基本計画の方針通りに原発の新・増設を進めるべきだと回答した人の中では、不便な生活を「受け入れられる」が59%、「受け入れられない」は40%だった。
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「原発解散」の噂/「解散は8月の広島、長崎の原爆の日」という“尾ひれ”2011-06-20 | 政治
 永田町に駆けめぐる首相「原発解散」の噂 自民党に警戒感
産経ニュース2011.6.18 21:21
 菅直人首相が「脱原発」か否かを争点に衆院解散に打って出る−。永田町でこんな噂が駆けめぐり、自民党が警戒感を強めている。東京電力福島第1原子力発電所事故で原発への不信感が高まるなか、平成17年の郵政解散のように、民主党に地滑り的勝利を与える可能性があるためだ。
 「菅さんの性格から、そのシングルイシュー(単一課題)で選挙をやるのかもしれない」。自民党の大島理森副総裁は18日、BS朝日とテレビ東京の番組で、表情をしかめて語った。
 「原発解散」は、選挙の陣頭指揮を執る大島氏にとっては気になる噂のようで「原発をイエスかノーかだけで議論する選挙はあるべきではない。菅直人という政治家の戦略だけで、日本のエネルギー政策を判断されたらたまらない。その前に辞めていただく」と、警戒感をあらわにした。
 背景には、5月6日の菅首相の中部電力浜岡原発停止発表が、有権者から高評価だったという自民党の分析がある。「首相は原発解散で勢いを挽回しようとしている。解散は8月の広島、長崎の原爆の日らしい」という、もっともらしい“尾ひれ”までついて広まっているという。
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社説検証/独・伊の脱原発/ 「安全高め流れ変えよ」産経 / 「脱」を日本にも求めた朝日2011-06-20 | 地震/原発
不信任騒動渦中に発足「地下原発推進議連」/超党派 反菅/企業と族議員、生き残りを模索2011-06-16 | 地震/原発
《ちらつく原発タブー》 不信任案否決されたが、「菅降ろし」なぜ起きた2011-06-03 | 地震/原発
映画「100,000年後の安全」地下500? 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発
高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28
原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
原発保有国は潜在的核武装国/保有31カ国の下心/日本の原発による発電量は世界第3位2011-05-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉

中国海軍が東シナ海で動き始めた/11隻の中国海軍艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過

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沖縄近海に中国空母の「影」 防戦・日本に政治主導の「陰」 
産経ニュース2011.6.12 07:00
 中国海軍が東シナ海で動き始めた。8、9両日、計11隻の海軍艦艇が次々に沖縄本島と宮古島の間を通過していった問題だ。
 艦艇は3グループに分かれて航行した。第1グループは潜水艦救難艦や補給艦など3隻。第2グループはミサイル駆逐艦やフリゲート艦など5隻。第3グループはフリゲート艦3隻。
 いずれも沖縄本島南端と宮古島の中間地点の公海上を南東に抜け、太平洋に向かった。潜水艦救難艦が含まれているため、潜水艦も周辺で息をひそめているのだろう。
 日本政府が艦艇の動向を公表すると、間髪入れず中国国防省は6月中下旬に西太平洋で演習を行う予定であると明らかにした。「年度計画内の演習」と強調し、遠洋訓練の常態化をアピールすることも忘れなかった。
プレゼンスを誇示
 一方、長期的にみると中国側の別の狙いも浮かび上がる。ある日本政府高官は指摘する。
 (1)台湾海峡有事や尖閣諸島(沖縄県)・先島諸島侵攻での米軍の介入阻止に向け、太平洋でのプレゼンスを誇示する(2)プレゼンス誇示の究極的目標ともいえる空母完成を見据え、米軍を待ち受ける際に空母のエスコート役となる艦艇に海域を習熟させておく−。
 沖縄近海に中国軍の空母の「影」が、ひたひたと忍び寄っているわけだ。
 艦艇の太平洋展開と歩調を合わせるように中国系香港紙「商報」は7日、中国軍の陳炳徳総参謀長が「空母を建造中」と述べたと報じた。軍の最高幹部クラスが空母建造を対外的に認めるのは初めてだという。
 艦艇の行動と高官の発言は周到に計画され、すべて一本の糸で結ばれているかのようだ。
 これに対し日本側の対応はどうだったか。
 むろん自衛隊のオペレーションにぬかりはない。海上自衛隊の護衛艦とP3C哨戒機がマークし、警戒監視を続けている。P3Cは中国海軍の艦艇を写真におさめ、護衛艦から撮影した動画もある。
日本政府は右往左往
 問題はそこから先だ。艦艇の動向を国民に公表するという単純極まりないオペレーションで、政府は右往左往した。
 防衛省は第2グループの艦艇が沖縄近海を通過した1時間後の8日午後1時ごろ、事実関係を公表する手はずを整えていた。だが、報道各社にペーパーが配られたのは午後5時ごろになってからだ。
 防衛省→外務省→首相官邸。ペーパーはそのルートをたどり、4時間かけて回覧され、民主党政権の検閲を受けていた。動画の公表にいたっては、それから丸1日たった9日午後5時半だった。政治主導により、中国を刺激しないよう賢明な判断を働かせていたのだろう。
 現段階ではどこで時間を浪費したのか定かでない。ただ、昨年9月の中国漁船衝突事件で中国側に翻弄され、胡錦濤国家主席を前におどおどとメモを読んだ菅直人首相と彼の意をくむ官邸スタッフは、判断をためらった疑いがある
外務省の“前科”
 外務省も疑ってかかるべきだ。中国への過剰配慮の“前科”があるからだ。
 平成20年7月、中国は東シナ海のガス田「樫(中国名・天外天)」で新たに掘削を行っていたことが判明した。日中両政府は同年6月、ガス田問題の協議で樫については共同開発の合意に至らず、継続協議の対象にした矢先だった。
 現状維持すべきところを掘削したことは、中国側の明確な合意違反で、その不当な行為を確認したのは海自のP3Cだった。
 当時、中国側は樫をはじめガス田周辺でのP3Cの飛行をやめるよう日本側に激しく抗議してきていた。「なぜ軍の航空機を飛ばし敵対的な行動をとるのか」という論理を振りかざした。
 P3Cの飛行は正当な警戒監視活動であり、中国側の言い分に理はない。このため、防衛省も資源エネルギー庁も監視の強化を検討していた。
 しかし、外務省だけは違った。「P3Cの飛行を控えるべきだ」。外務省は防衛省にそう迫ってきたというのだ。「こともあろうに中国の意をくむとは…」。当時の防衛省幹部は絶句したものだ。
 中国が東日本大震災発生に配慮し抑制気味だった日本への「示威行動」を活発化させたことは明白だ。対峙する日本は民主党政権のもと、中国に対し過剰に配慮する姿勢が強まった。まかり間違っても、中国軍ににらみを利かせる自衛隊の運用に暗い影を落とさないことを願うばかりだ。
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「中国が沖縄を獲る日」講演 福岡で文明史家・黄文雄さん
産経ニュース2011.6.5 02:34
 戦時中に日本軍の軍人・軍属として亡くなった台湾人を慰霊する「日華(台)親善友好慰霊訪問団」(福岡市)による第9回台湾特別講演会が4日、同市で開かれ、文明史家の黄文雄さんが日中問題について講演した。黄さんは、中国の不安定な国内事情を挙げながら、「国民の目をそらせるために日本や周辺国を外敵にしている」と指摘した。
 演題は「中国が沖縄を獲る日」。黄さんは、中国が領有権を主張する尖閣諸島の歴史的経緯に触れ、「中国も台湾も1960年代までは教科書で日本の領土と記述していた」と強調。昨年9月の中国漁船衝突事件では、「日本人の多くが尖閣諸島を自国領だと感じていることがわかり、安心した」と述べた。
 さらに、日本がアジアの最先進国で、人権を尊重する国家であることなど理由に、「日本人は自信を取り戻さなければならない」と主張。その方策として「日本が外国から尊敬されていることを知る必要がある」と訴えた。
 講演会では黄さんの登壇を前に、慰霊訪問団の小菅亥三郎団長が「講演を通して、日本人としての新たな気付きを得てほしい」とあいさつした。

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