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南シナ海の領有権をめぐる中国とフィリピン、ベトナムの対立が激化している

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中国への抗議デモ、ベトナムで3週連続
【バンコク=深沢淳一】ベトナムの首都ハノイの中国大使館前で19日、南シナ海の領有権問題で対立する中国への抗議デモが行われた。
 AP通信などによると、学生ら約300人が参加した。抗議デモは5、12日に続いて3週連続。共産党支配のベトナムではデモが禁止されているが、当局は警察官を多数配置してデモを管理下に置き、短時間に限って容認している。
 デモは前回までと同じく、南部の商業都市ホーチミンでも行われた。ハノイでは、参加者が「中国はベトナム領海での違法活動をやめろ」などと書いたプラカードやベトナム国旗を掲げ、大使館前からハノイ市内を行進した。商業施設の前では、中国製品の不買を求めて叫ぶ光景も見られたという。
(2011年6月19日17時33分  読売新聞)
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南シナ海問題
産経ニュース2011.6.20 07:55
 南シナ海の領有権をめぐる中国とフィリピン、ベトナムの対立が激化している。ともに同海域での資源探査活動を中国側に妨害されたフィリピンとベトナムは米海軍との合同軍事演習を予定し、「被害者」を自称する中国は大型巡視船を派遣した。緊張をはらむ海図の中で、米国はどんな“針路”をとるのか。関係国の注目が集まっている。

 ▼ストレーツ・タイムズ(シンガポール)
「対決の危険性」に言及
 シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは14日付の紙面で1ページを割いて「南シナ海の緊張の高まり」を特集、フィリピン、ベトナム、中国にスポットを当てた記事を並べた。
 「マニラは掛け金をつり上げた」という見出しを掲げた記事は、フィリピンにおける中国への対決姿勢の高まりぶりを伝えた。
 例えば、「南シナ海」という呼称に代え、「西フィリピン海」を使用するとしたフィリピン政府の方針を、「いつになく自己の主張を打ち出した措置だ」と分析、フィリピンのある知事が、中国の覇権拡大の動きを「むき出しの交戦性」と酷評し、中国製品のボイコットを呼びかけている動きなども取り上げた。
 また、緊張の高まりは「米国が地域の紛争にどう対処するのか、ということへの注目度を増大させている」と指摘。「中国と衝突すれば、米国はフィリピンの側につく」というアキノ政権高官の言葉を引用しつつ、1951年に結ばれた「米比相互防衛条約」の存在に言及している。
 「ベトナム、けんかの最中の実弾演習」という記事では、演習は「手荒なまねをされることを拒否するという、ベトナムの中国に対するメッセージだ」との有識者の分析を紹介し、演習は両国が「“対決”する危険性」を高め、「中国は(演習に)非常に不当な反撃をするだろう」と、有識者の見方を続けた。
 さらに中国国営新華社通信が配信した「中国軍事力増強は作り話」との記事を引いて、中国側の言い分が信じるに足りないものであることを、やはり有識者の言葉でこう指摘した。
 「私は、南シナ海における中国の行動を表現するとき、『独断的』という言葉よりも、『攻撃的』という表現を好んで使うようになった。この2つには極めて重要な違いがある」(シンガポール 青木伸行)

 ▼ウォールストリート・ジャーナル アジア版(米国)
米国の役割、より重要に
 「中国を取り込む動きを続ける一方で、安全保障上の責務を維持し、合理的な行動の基準を支持し続ける以外に米国の選択肢はない」
 米シンクタンク、AEI日本部長のマイケル・オースリン氏は14日付米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)への寄稿で、東南アジア諸国との緊張を高める中国に対し、米国がとるべき態度をこう定義した。
 氏は中国の行動について「中国が思い通りに紛争を解決するため、軍事力の行使にためらいを感じないことを国際社会は懸念すべきだ」と強調。同時に米国もアジア諸国もまだその対処方法は見いだしていないとして、3つの理由から適切な対応の重要性を訴える。
 氏がもっとも重視するのは、隣国が「中国の要求に従わざるを得ない」と感じる状況を中国が作り出すことが慣例となれば、アジアの地域政治の性質が大きく変容する恐れがあるという点だ。これは「中国が際限なく他の要求もできる」ようになり、「多国間の協調的な行動パターンに戻すことは困難になる」と分析する。
 また、中国が隣国を脅しても許されるなら、北朝鮮のような「破滅的な政権」はつけ上がって同じ行動をとろうとし、地域の不安定化を増進させる。さらに中国の嫌がらせに対してベトナムが見せた反応のように小国が常に脅しに泣き寝入りするとはかぎらない。「威嚇や衝突の可能性は増大するだろう」と氏は懸念を示し、中国の行動はすでにインド・太平洋地域で軍拡競争を引き起こしていると指摘する。
 一方で氏は、「米側に立ち、中国と対峙しバランスをとっているとみなされることを望む国はほとんどない」とし、「米国の役割は難しくなると同時に、より重要になる」としている。(宮下日出男)

 ▼国際先駆導報(中国)
中国はあくまでも被害者
 中国国営新華社通信が発行している国際情報紙、国際先駆導報は16日、「ベトナムが南海で頻繁に挑発行為を繰り返す」と題して、最近の南シナ海における中越対立の原因について分析する記事を1面トップで掲載した。ベトナムが同海域で実施する米国との合同軍事演習などを「現状を変えようとする過激な行動」と批判、「中国は自国の権益が他国に奪われることを座視できない」と南シナ海に対する管理強化を主張した。
 記事は、南シナ海における一連の対立は、紛争を話し合いで解決することを規定した「南シナ海行動宣言」(2002年)に違反する行為を、ベトナムが一方的に行っていることに原因があり、中国はあくまでも被害者である−と強調した。
 そのうえで、問題の処理には「2つの原則がある」とし、「ひとつは第三者が介入しない当事者だけの解決。もうひとつは武力に訴えず、平和的な方法で臨むことだ」と主張した。
 このため、米軍と合同演習を実施しようとするベトナムは、2つの原則を無視することになり、中国は対抗措置を取る用意があると述べた。
 また、ベトナム国内で最近、反中デモが起きていることについて、同紙は「ハンバーガーを食べ、ヒップホップを聴いて育ったベトナムの若者は、自分の国が20世紀に米国に侵略され、中国に助けられたことを忘れたようだ」と厳しく批判した。
 ベトナムが中国の領海内で油井を掘削、毎年数百億ドルの利益を得ているとも主張し、米国を念頭に「今後、地域外の勢力が参入することも考えられ、同海域の情勢はさらに複雑化し、対立が悪化する可能性もある」との専門家の見方を紹介した。(北京 矢板明夫)
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ベトナム:南シナ海で軍事演習/ベトナム漁船、南沙諸島周辺で中国艦船から威嚇射撃/『尖閣戦争』2011-06-15 | 国際
 ベトナム:南シナ海で演習 中国をけん制、緊張高まる
 【バンコク西尾英之】ベトナム海軍は13日、同国沖の南シナ海で実弾を使った軍事演習を実施した。領有を巡り対立する中国を刺激するのは必至で、南シナ海の緊張は一層高まりそうだ。
 演習が行われたのはベトナム中部クアンナム省沖約40キロの海域。海軍当局者はAP通信に、大砲などを使った演習で毎年行われる通常のものと説明し、中国との対立とは無関係だと語った。
 しかし南シナ海では、西沙諸島や南沙諸島周辺海域の領有を巡り中国とベトナム、フィリピンなどが対立。5月下旬以降、ベトナムの資源探査船と中国の船舶との小競り合いが続いている。ベトナム政府は中国への抗議を繰り返しており、この時期の軍事演習には中国をけん制する狙いがあるとみられる。
 中国の南シナ海への進出をけん制したい米国は、ゲーツ国防長官が今月、東南アジア各国と協力して地域への軍事的関与を強める姿勢を示したばかり。しかしベトナムの軍事演習については「力の誇示は緊張を高めるだけだ」(国務省のトナー副報道官)と懸念を表明し、間接的ながらベトナムに自制を求めた。
 一方、ベトナムの首都ハノイと南部のホーチミン市では12日、5日に続いて再び市民による反中国デモが行われた。社会主義国の同国は市民の政治デモを厳しく取り締まってきたが、反中デモについては事実上容認している模様だ。
毎日新聞 2011年6月13日 20時03分(最終更新 6月14日 0時24分)
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 『尖閣戦争――米中はさみ撃ちにあった日本(祥伝社新書223)』2010年11月10日初版
p42〜
*中国の息の長い戦略的、かつ野心的な計画---西尾
 ここまで日本が危うい状態に追い込まれていながら、国民のなかには、まだそこまでの危機感が浸透していないように思います。尖閣を軍事占領されることはないと考えているとしたら、それは甘い。アメリカが安保条約に基づいて抑えてくれると考えているとしたら、それはさらに甘いと私は最初に言いました。そして安保条約というのは、そんな性格のものではありませんと述べました。そこが一番のポイントだと思います。
 ここから日本はどうやって尖閣を守るかという話に転じなければいけないのですが、多くの人はアメリカに対する依存心理があって、クリントン国防長官以下が安保条約の5条適用と言ってくれると、「ああ、そうか」とほっとする。私ですらも安堵するわけですから、日本人がそれで安堵するのは無理はない。北朝鮮のミサイル打上げのときに、ライス国務長官(当時)が飛んできて「大丈夫よ。日本はアメリカの核で守られているんだから、大丈夫、大丈夫」と言ってくれたら、ほっとするのと同じことです。
 しかし中国の今度の行動は、そんなに単純ではありません。きわめて戦略的な、息の長い、1世紀以上にわたって練られた中国人の野心的な計画の終着点だという性格が基本にあります。
 中国は清の時代に、ロシアとイギリスの両国による西域争奪戦になすすべがありませんでした。中国が第2次大戦直後にチベットを侵略したのは、それへの復讐ですが、同時にインドを北から抑え込むためでもありました。チベット動乱の3か月後に、中印国境戦争が起きています。そして、それから10年後に、中国の眼は北に向かい、中ソ国境紛争と呼ばれるソ連軍との戦争を起こしました。ソ連が油断をしていたときです。北の次は当然南です。ベトナムは清の属国でしたが、かつてフランスに奪われ、何とか取り戻したいという領土的野心をもっていました。
 しかしベトナムはフランスを倒し、アメリカをも追い払うという勇敢な民族で、中国も簡単に手出しができません。ですが、アメリカはベトナム戦争で手傷を負い、厭戦気分が高まり、アメリカは2度とベトナムに戻ってこないとわかってから、中国はゆっくりと侵略の牙を磨きだし、中ソ戦争の10年後に、ベトナム侵略を開始しました。1979年の中越戦争です。
 こんなふうに中国の対外侵略の歩みはゆっくりですが、1度として停止したことはないのです。東西南北の4方向に向けてのこの国の深謀に根差した膨張行動の歴史をみれば、次に残された東への野心をこの国が諦めるはずはありません。理屈ではないのです。ただ西、北、南への進出にくらべて今度は用心深かった。旧日本軍への恐怖もあるでしょうが、何といってもアメリカが怖い。
 しかし、その恐怖を抑えて、中国はここへきて、そろそろ動き出したのです。今の日本はどうやらまったく怖くないようだ。アメリカも力を失って浮き足立っている。同時多発テロ以後、アメリカが恐れているのは持ち運び可能な小型核です。アメリカ軍は少しずつ戦線を引き上げて、太平洋の防衛ラインを東へ移していく可能性が高い。太平洋全域を支配しようと手を出している中日新聞は、琉球列島が何といっても邪魔である・・・。
p45〜
*南シナ海で現実に起こっていること---西尾
 こうして事態は少しずつ動いていて、中国の野望がはっきりしてきたわけですから、沖縄は本当に危ないのです。そこから先何が起こるか考えてみたいと思います。すでに東南アジアでは、島の領有をめぐってしばしば衝突が起こっていて、1988年には、スプラトリー諸島、中国では南沙諸島といいますが、そこのジョンソン環礁でベトナム、中国両軍が軍事衝突を起しており、ベトナム軍艦が沈没しています。水兵70人以上が死亡しています。99年には2度にわたってフィリピン軍艦艇と中国の漁船が衝突して、このときは漁船が沈没しています。
 最近でもこの10月にも、やはり領有権を争うパラセル諸島、中国名は西沙諸島ですが、ベトナム漁船が中国に拿捕されています。8月にはインドネシアのナトゥナ諸島沖でインドネシア海軍が拿捕した中国漁船を、武装した中国艦艇にに奪還される事件が起きています。南シナ海全体が中国のこうした威嚇と、現実的な拿捕事件、あるいは軍事行動に攪乱されています。これは日本とて決して無関心でいられる事件ではありません。さしあたり南で、中越戦争のつづきでしたが、次には当然東の海上へ目が向けられます。
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中国海軍が東シナ海で動き始めた/11隻の中国海軍艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過2011-06-20 | 政治〈国防/安全保障/領土〉


中国は、南シナ海の領有権や海洋権益を巡り、ベトナムやフィリピンなどとのトラブルが絶えない

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海洋安全保障 中国けん制へ国際連携図れ(6月20日付・読売社説)
 中国の著しい海洋進出で、急速に変わりつつあるアジアの安全保障環境に、日本は適切に対処していく必要がある。
 菅首相とインドネシアのユドヨノ大統領が17日、東京で会談し、マラッカ海峡や南シナ海などにおける海賊対策や安全保障の問題での協力を一層強めていくことで一致した。
 こうした海域は、中東と北東アジアを結ぶ海上交通路(シーレーン)であり、貿易立国の日本にとっては極めて重要である。
 両国は、津波などに備える防災協力や、地球温暖化問題への対応、外相、防衛相、経済産業相ら閣僚による各協議の定例化についても合意した。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)の中核を占めるインドネシアと日本が、対話を重ね、地域の安定化に向けて協力できるようになれば、意義は大きい。
 両首脳が戦略的関係の強化を図るのは、「海洋大国」を目指す中国に共同で対処する必要があるとの判断からだ。
 中国は、南シナ海の領有権や海洋権益を巡り、ベトナムやフィリピンなどとのトラブルが絶えない。武力による威嚇も辞さない構えの中国の姿勢に対し、ASEAN各国は不安感を強めている。
 こうした中国の動きに対して、ASEANは、南シナ海での紛争を話し合いで解決するとした「行動宣言」を、法的拘束力を伴う「行動規範」に格上げすることを目指している。中国はこの協議に前向きに応じる必要があろう。
 懸念されるのは、日本近海でも最近、中国海軍が活動を活発化させていることである。
 中国海軍の駆逐艦など11隻が6月上旬、沖縄本島と先島諸島の間を通り抜け、フィリピン東方沖の西太平洋で演習を実施している。遠洋での演習は、年々規模も内容も拡充されている。
 中国海軍の増強は、東シナ海で尖閣諸島やガス田問題を巡って、中国と対立する日本にとっても看過できない。
 日本政府は、インドネシアと同様に、対中警戒感を強める他のアジア諸国とも、重層的で幅広い対話の枠組みを構築していかなければならない。米国との同盟を深化させることも、中国へのけん制となるはずだ。
 7月のASEAN地域フォーラム(ARF)や、秋の東アジア首脳会議(EAS)などの機会を積極的に利用すべきだろう。各国が連携して、中国に自制を促せるよう知恵を絞る必要がある。
(2011年6月20日00時59分  読売新聞)
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南シナ海の領有権をめぐる中国とフィリピン、ベトナムの対立が激化している2011-06-20 | 国際
中国海軍が東シナ海で動き始めた/11隻の中国海軍艦艇が沖縄本島と宮古島の間を通過2011-06-20 | 政治〈国防/安全保障/領土
「BRICS」を政治利用する中国2011-04-23 | 国際

ホリエモン収監前“最後の授業”─2011年6月9日 慶応義塾大学

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第127回】 2011年6月20日  週刊ダイヤモンド編集部
ホリエモン収監前“最後の授業”──2011年6月9日 慶応義塾大学

123452011年4月に証券取引法違反で実刑が確定し、6月20日に東京高検に出頭、収監される予定の元ライブドア社長堀江貴文氏。その堀江氏は2011年6月9日、中村伊知哉・慶応大学の教授の招きにより、慶應大学学生の前で収監前としては“最後の授業”を行った。

 中村  慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)というのは、メディアのイノベーターを育てることを看板の一つにしています。
 つまり、メディアを刷新していく人。堀江さんがその一人のモデルであることは間違いない。
 ところが今回、KMDの授業に堀江さんをお招きしようとしたところ、大学側が「呼んではいけない」と言ってきた。刑が確定しているからという理由で、理事会の決定だそうです。
 そんなこと言われても、呼びます。もし僕が政治学の教授だったとしたら、田中角栄を呼べないのか。ネルソン・マンデラを呼べないのか。
 僕は、辞表を書くことになるかもしれませんが、堀江さんが近いうちに、こっちからあっち(刑務所)にいってしまうので、今日は堀江さん“オン・ザ・エッヂ”、まさしくギリギリのタイミングでお話をお伺いすることができました。
*テレビ局と政界だけは変えることができなかった
中村 今日のテーマは大きくわけて三つ。最初は「堀江さんのこれまで」、次が「堀江さんのこれから」、三つ目が「僕たちがこれからどうするか」です。まず一つ目。堀江さんのこれまでについてお聞きします。堀江さんが今まで取り組んだなかで一番でかいディール、大変だった仕事って何ですか?
堀江 金額的に一番大きかったのは、ニッポン放送買収ですかね。1200〜1300億円くらい。
 一番儲かったのは弥生という会計ソフトの会社。230億円で買って、僕がいなくなったあと、730億円で売れた。500億円儲かった。
中村 堀江さんのアドバンテージっていうのは、企業を目利きして、買ったり売ったりするところ?
堀江 いや、それは、僕のやっていることのごく一部。
 ライブドア時代に「あいつは守銭奴だ」とマスメディアの人達からすごく言われたんですけど、僕は上場企業の経営者として株主に最大限のリターンを最短期間で返そうとして、頑張っていただけ。でも、世の中一般の人は、会社と個人の区別がついていない。ライブドアが儲けていたら、僕が儲けていると思っている。
 つまり、僕自身が儲けたいがために、あんなに一生懸命、合理的思考をしたりとか、時間を削って仕事のことばっかり考えたりとか、血も涙もない人間だというふうに、思っちゃったみたいなんですよね。僕はライブドアに投資をしている株主に最大限にリターンを返せるかだけをただ考えていた。
中村 自分のなかで最大の失敗、後悔は?
堀江 全部、後悔しています。ただ、後悔もしつつも、自分に関しては失敗だけれども、結果的に目標が達成できたから大きく考えれば成功というものはあります。
 どういうことかというと、例えば、プロ野球買収は僕自身としては失敗ではあります。でも、これも、よくよく考えてみたら、その後、大きなミッションとしては成功しているな、と。 
 ソフトバンクや楽天が新規参入して、パ・リーグが盛り上がって、地域密着型ビジネスモデルも成功しています。つまり、自分が種をまいて、他人が成功したということです。自分の考えていたミッションを他人が実現してくれた。
中村 パ・リーグ、おもしろいですよね。
堀江 面白いです。僕が予想した通りになりました。パ・リーグでだめなのはオリックスくらいですよね。
 自分が種をまいて、その後、他の人も変えられなかったという意味では、政治とテレビ局。その二つの分野だけは未だに何も変わっていない。だから、その二つは大きな意味でも失敗だった。
中村 これまで、この人だけは超えられないな、っていう人はいましたか?
堀江 超えられない…か…。ボクはそこまでえげつなくできないよね、という人はいますよね。
中村 誰? 日枝(久・フジテレビ会長)さん?
堀江 (笑)日枝さんは、またちょっとえげつなさが違う。
 例えば、日枝さんがやってきたライバルを全部蹴落として、院政を敷くということが、ボクは、やりたくないからできない。できるかもしれないけど。
中村 僕は日本の大学をどうしたらいいか、いつも悩んでいるんです。
 例えば、グーグルもヤフーもスタンフォード大学から出て来て、フェイスブックはハーバード。じゃあ、日本の大学はどうよ、と思っているんですが…。
堀江 日本の大学は金がないですからね。
中村 東大も?
堀江 東大はお金ないです。
中村 大学が何かやることは、日本の場合、難しいですか?
堀江 う〜ん、できないことはないでしょうけど、僕だったら自分で研究所を作る。
中村 作りましょう。
堀江 作ります。科学技術系の研究開発はお金がかかる。だから、企業化してお金が戻ってくる仕組みにする。例えば、グーグルに出資していたスタンフォード大学は、キャピタルゲインが相当なものになった。
中村 うん、スタンフォード大学のジョン・ヘネシー学長はグーグルの取締役で入っていますからね。
*研究開発だけで運営できる研究所が必要
堀江 まさにそういうところはしっかりやらなければいけない。
 僕は「どうやってお金を運用しているんですか」ってよく聞かれるんですけど、「ベンチャー投資」って答える。ITに関しては、目利きができますからこれだっていう技術の芽に投資するのが一番儲かるんですよ。グリーの田中君が楽天時代に会社を作ったときに、出資させろと言ったら断られましたけど(笑)。
 まあ、それはどうでもいいでんすけど、つまり研究所が有望な研究の芽に投資して思う存分研究してもらう。それで社会に還元して、キャピタルゲインも得て再投資をしていく。研究開発投資だけでぐるぐる回って行くような、そういう研究所です。
中村 今、日本にそんなのないですよね?
堀江 でも、戦前の理化学研究所はそんな感じでしたね。ビタミンを発見したのでビタミン製剤をつくって売ったりして。リケンビタミンってそこから来ているんですよ。リコーも理化学研究所のスピンアウトなんです。
 当時、理化学研究所から派生した企業群の理研コンツェルンっていうのがあったんですよ。今の時代なら、リコーみたいなスピンアウトが成功すれば、その株を5〜10%もっているだけで、何兆円と返ってくるわけですから。
 有望な技術の種っていうのはいっぱいある。でも、東大とかは、それを積極的に事業化することもできていないし、お金を生み出すこともできない。
 僕は本当は研究者になりたかったんです。それで学生時代、東大の教養学部基礎科学科の先輩がいて手伝いにいったことがあったんですよ。そしたら、そこに置いてあったコンピューターがApple2のぱちもん(偽物)だったんです。「天下の東大がぱちもんか」と愕然としてしまったんですよね。単年度会計で金がないもんだから、裏金つくって、一年中、科研費、科研費って言っている。
中村 堀江さんの研究所の構想は今聞いた限りだと、かなり、頭の中ではできあがっている?
堀江 そうですね、シードマネーがどこから出るのかという話はあるんですけど、これは是非、やらなければいけない。東大にはできないかもしれないし。
中村 その研究所構想っていうのは(刑務所から)出てから実現するの?
堀江 出てから実現するつもりです。このあいだ、茂木健一郎さんと飲んでいたときに茂木さんもやろうとおっしゃってくれたので、ファウンダーに入っていただいて。お金を何十億かあつめて…。まあ、それじゃあ足りないかもしれないけど。
中村 足りないでしょうね。
堀江 でも、そういう研究所を作れば、頭がいい奴はもう東大とか入んないと思うんですよ。研究所入るのに年齢制限もなくて、「お前いいから、うちこい」と。「好きなだけ研究しろ。金もいくらでもだす」と言えば。
 やっぱり、日本の大学はおかしいですよ。iPS細胞の研究で有名な山中伸弥教授のような人まで、試験監督をやっていて、採点までやっている。ぎょっとしますよね。
中村 私もぎょっとされますよ。和服で試験監督やっていますから。
 堀江さんの研究所、楽しみですねえ。アメリカはソ連との核戦争に備えて、インターネットを開発した。地震大国日本がこれからどういう技術を開発していくべきかという時に、そういうお金の話がぜんぜんできていないですもんね。
*刑務所の中でもやることがたくさんある
中村 ロケットの開発の途中で刑務所入っちゃっていいんですか?
堀江 いや、ロケット開発で僕の役割っていうのは、メンバーを急かすことだけなんで、中からでもできます。
中村 刑務所の中から外への連絡手段は?
堀江 手紙とかですね。
中村 どんなところに入ってどんな暮らしになるのか、もうわかっているんですか?
堀江 ざっくりは。
中村 大部屋?それとも独房なんですか?
堀江 おそらく独房だと言われていますけど、ちょっとわからないですね。
中村 中で何をするって決めているんですか?
堀江 とりあえず、刑務作業がある日は刑務作業。自由時間はメールマガジン書いたりとか、小説とか原稿書けとか依頼があったり、ミッションがけっこうあるんです。あとは漫画読んだり、本読んだりですかね。
 いろいろ刑務所の先輩たちが教えてくれるんですよ。中での生活について。
中村 先輩って、OB会とかあるんですか?
堀江 いや、OB会とかはないんですけど(笑)、経験のある人はゴルフの教え魔みたいに教えてくれる。昨日も鈴木宗男さんの秘書と…。
中村 作戦会議?
堀江 作戦会議ですね。3〜4年前に明治以来の監獄法ってのが受刑者処遇法という非常にマイルドな法律に変わったんですよ。かなり自由度が高くなった。だから、刑務所関連の法令集は持って行ったほうがいいと言われましたね。できることは最大限やったほうがいいからと。
 あと、意外と、コネってきくらしいんですよ。
中村 は?
堀江 コネ。
中村 どんな!?
堀江 昨日は、アルカイダの友人の友人の方の秘書もいたんですけど。やっぱり、法務大臣やっていると入る前の人から陳情があるらしくて。そういう陳情は一応聞くらしいですよ。
中村 え? 何してくれるんですか?おかずが一品増えるとか?
堀江 いや、どこの刑務所に入れてほしいとかそういうことらしい。
中村 そういう仕事しているんですね、政治家って…。
裁判官と検事が癒着司法改革をすべし
中村 最後に、僕たちのこれからをどうするか。日本にがっかりしていますか?
堀江 別に…がっかりってことはないですけど。
(会場との質疑応答)
堀江 (会場に向かって)このなかで官僚になろうという人いますか?
 国家一種試験に合格しても、法務省入ったら地獄ですからね。絶対に法務省入らないほうがいい。
中村 ほう。
堀江 なぜかというと、普通、国家一種試験に合格して中央省庁に入ると、キャリアになって最初から偉いポストでどんどん出世していくじゃないですか。でも、法務省は出世できないらしいんですよ。なぜなら、重要ポストはみんな検察官だから。局長以上はほとんど検察官らしいです。
 他の省庁ならキャリアのトップって事務次官じゃないですか。それが法務省は検事総長ですから。さらに検事総長の下に全国7〜8ヵ所の高等検察庁ってあるんですけど、そこの検事長がくるので、事務次官ていうのはその次なんですよね。序列でいうと10番目くらいなんですよね。
中村 変なこと知っていますね。
堀江 いや、僕、もうマニアになりましたから(笑)。こういうこと言うと刑務所でいやがらせされるのがいやなんですけど、法務省についてはさらに皆さんにお伝えしたいことがあって。
中村 はい。
堀江 検察官って、司法試験に受かって事件を担当する人達じゃないですか。それなのになぜか法務省の幹部ポストの7割が検事なんですよ。
中村 考えてみれば、変な話だと…。
堀江 だって、事件を担当するために司法試験に合格した人が、なぜか法務省の行政をやっているわけですよ。7割も。
 じゃあ、少なくともあとの3割が法務省のキャリアなのかと思うじゃないですか。それがまた違うんです。裁判官なんですよ。裁判官が法務省に出向しているんですよ。
中村 そんなことになっているんだ。
堀江 しかも、一方通行だったらいいんですけど、また裁判官に戻るんですよ。
 検察官が裁判官になる判検交流っていうのはよく知っていたんです。ところが、その逆に裁判官が検事になる仕組みもあるんですね。そうして裁判官が法務省内の法律を吟味する部署にも行くわけです。法務省内の行政を担当する部署に裁判官がいるんですよ。これはすごいなと。だから、「君ら仲間なの?」みたいな。グルなんですよ。
中村 次の堀江さんの本はそれですか? タイトルは「君ら仲間?」。
堀江 ほんと、すごいなと思いましたよ。内部の癒着具合が。法務大臣にはそこの改革をやってほしいですよ。検察官全員排除してほしい。検察官は事件とかやってくださいと。
中村 堀江さんが総理になったらまずやりたいことはそれ?
堀江 いやいや、他にやりたいこといっぱいあります。そんなのは些末なこと。刑事司法の改革の一環として、法務省改革というのは必要なだけで。
中村 堀江さんが戻ってくるまでに総理大臣は3人くらい替わっているかもしれないですよね。
堀江 そうですね。
中村 毎年恒例の…。
堀江 はい。菅さんも替わること確定しましたからね。
中村 ほかにもいろいろ聞いてみたいことあったんですけど、時間が経過していまいました。ほんとに今日は、あっちとこっちのぎりぎりというところで、僕らにとってもぎりぎりの話をしていただけと思っております。
 少なくとも2011年のこの時代の日本を代表するアイコンである堀江さんにきていただいて、同じ空間、同じ時間を共有できたってことは僕らにとって貴重な財産になるかと思います。僕らが堀江さんに対して何を託して、僕ら自身も何を作っていけるのかってことが問われているのかなという気がしました。さっきの研究所の話なんかも僕も関心があってひかれているんです。
 今後どういう形があるかわかりませんけども、是非、なにか一緒にできることがあればと思っています。今日は、堀江さんありがとうございました。
堀江 ありがとうございました。
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●堀江貴文 1965年に東京大学在学中にライブドアの前身オン・ザ・エッヂを創業。IT系企業として急成長し、プロ野球球団、ニッポン放送の買収の乗り出し、2005年には衆議院選挙にも立候補した。2006年証券取引法違反で逮捕され、2011年4月には最高裁判所で実刑が確定していた。 慶應大学が堀江氏を正式な授業に招くことを拒否したため、中村教授は個人でキャンパス外の会場を用意し特別授業として開催した。
 かつて、ホリエモンと呼ばれるようになった由来は「堀江氏のアイデアはドラえもんの道具のように次から次へとポケットから出て来る」からとも言われている。堀江節は少しも衰えてなかった。 これまでの人生で何が成功したと感じ、何を後悔しているのか。また、刑務所での生活、出所後に取り組む壮大な研究所構想、宇宙開発、さらには、司法制度批判へと話題は及んだ。
●中村伊知哉 京都大学経済学部卒業。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。インターネット政策などを担当。MITメディアラボ客員教授、スタンフォード日本センター研究所長などを経て、2006年より慶應大学教授。著書多数。
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堀江貴文氏への重すぎる実刑確定と、それでも止まらない大手メディアの“社会的リンチ”2011-05-20 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
堀江貴文被告(34) 東京地裁判決。2007-03-16 | 社会
ホリエモンと司馬遷2006-04-27 | 社会

山川草木のすべてのものから発せられる生気の波動

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〈来栖の独白〉
 東日本大震災から100日余りが過ぎた。被災地の皆様の艱難辛苦を思わぬ日は、ない。やさしい目をした牛や豚、鶏や犬、猫・・・多くの動物が命を失った。生きとし生けるもの、町や田舎、山河が大きく姿を変えた。書いていればきりがない。
 被災地の方がたに比すれば、私など、もったいないような生活が与えられている。そんな結構な明け暮れでありながら、ひどい疲労感に襲われている。この齢になって、このような悲惨を見た。このようなことが起きた。わけても、原発による人災は、希望という名の一切を奪った。日々福島の原発の姿を見るごとに、立ち上がれないような絶望に襲われる。人間至上主義の根本的な誤りに気づく。
 五木寛之氏の『百寺巡礼』(第4巻2004年3月発行)のまえがきに、次のようなことが書かれている。
 “約40の寺々を訪れて、このところ日本人の古い信仰心の姿が少しずつ見えるようになってきた感じがある。それは明治の初めに、政府が強制的に神仏を分離させる以前の日本人の心のありかただ。
 巡拝する寺のほとんどの境内の一角に、小さなほこらや社がひっそりと存在することに気づくようになったのは最近のことである。
 それぞれの寺に鎮守の神のあることが、はじめは不思議だった。真宗の寺は、その点、きっぱりと弥陀一仏を守っているのだが、親鸞や蓮如にしても、各地の他州の寺にその足跡は少なくない。
 みずからの神のみを信じて、他の神を絶対に認めようとしない一神教の風土とは、はっきりとちがう寛容さが古い日本人の心情にはあるようだ。
 自然や風土に対する感じ方もそうである。森や、川や、草や、山や、虫や、けものや、石や土にまで生命を視る感覚は、原始的な土俗性として近代では蔑視されてきたといっていい。
 しかし、人間と唯一の神だけが地上の主人であるといった考えかたは、どこかで大きな壁にぶつかるのではあるまいか。最近の動物たちに起きている異変は、人間至上主義に対する自然の警告のように思われてならないのだ。”
 最終章は、次のように締めくくられている。
“人間をはじめ、山川草木のすべてのものから発せられる生気の波動を感じる。そのことによって、自分の滞った内部が気持よく流れ、衰えた気力、体力を回復することができるのではあるまいか。
 永保寺を訪れて、そうした「いい旅」をしている、という実感があった。”
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老、病、死という三重の「罰」に囲まれて暮らす人生の後半生=五木寛之著『天命』2010-06-07 | 仏教/親鸞/五木寛之・・
ワクチン接種牛9百頭、共同埋却 種牛5頭は抗体検査もシロ
2010年6月7日 11時47分(共同)
 口蹄疫問題で、宮崎県は7日、発生地から半径10キロ圏内でワクチン接種を受けた日向市の農家約70戸が飼育する牛約900頭を、遊休地3カ所に集めて殺処分し共同埋却するため、農家から移動させる作業を始めた。移動制限区域内だが、処分迅速化のため特例として農林水産省が認めた。
 7日は15戸の約180頭が対象で、全体の作業は12日まで。県によると、週内に宮崎市などでも同様の作業が始まる。
 県が避難させたエース級種牛5頭は6日、遺伝子検査に続き、抗体検査でも口蹄疫に感染していないことが裏付けられた。県は、5頭の避難先である西都市尾八重を中心とする移動制限区域解除に向け、10日に5頭の抗体検査を再度実施。半径10キロ圏内にある農家2戸の家畜の健康状態も確認する方針。順調にいけば制限区域は13日午前0時に解除となる見通し。
 東国原英夫知事は6日、「種牛は貴重な財産であり、5頭を守れる可能性が高まったことに安堵するとともに、5頭以外を失ってしまった事態を重く受け止めている」とのコメントを出した。
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〈来栖の独白2010/06/07〉
 他の生きものの命を奪って食べずには一日も命を繋げない人類である。口蹄疫に関するニュースは、私にその事実をあらためて突きつけた。牛も豚も人類の食糧として「生産」「出荷」され、商品として不適となれば「処分」される。
 五木寛之さんは『人間の運命』(東京書籍)の中で次のように言う。
“私たち人間は、地上における最も兇暴な食欲をもつ生物だ。1年間に地上で食用として殺される動物の数は、天文学的な数字だろう。
 狂牛病や鳥インフルエンザ、豚インフルエンザなどがさわがれるたびに、「天罰」という古い言葉を思いださないわけにはいかない。
 私たち人間は、おそろしく強力な文明をつくりあげた。その力でもって地上のあらゆる生命を消費しながら生きている。人間は他の生命あるものを殺し、食う以外に生きるすべをもたない。私はこれを人間の大きな「宿業」のひとつと考える。人間が過去のつみ重ねてきた行為によってせおわされる運命のことだ。
 私たちは、この数十年間に、繰り返し異様な病気の出現におどろかされてきた。狂牛病しかり。鳥インフルエンザしかり。そして最近は豚インフルエンザで大騒ぎしている。
 これをこそ「宿業」と言わずして何と言うべきだろうか。そのうち蟹インフルエンザが登場しても少しもおかしくないのだ。大豆も、トウモロコシも、野菜も、すべてそのように大量に加工処理されて人間の命を支えているのである。
 生きているものは、すべてなんらかの形で他の生命を犠牲にして生きる。そのことを生命の循環と言ってしまえば、なんとなく口当たりがいい。それが自然の摂理なのだ、となんとなく納得できるような気がするからだ。
 しかし、生命の循環、などという表現を現実にあてはめてみると、実際には言葉につくせないほどの凄惨なドラマがある。砂漠やジャングルでの、動物の殺しあいにはじまって、ことごとくが目をおおわずにはいられない厳しいドラマにみちている。
 しかし私たちは、ふだんその生命の消費を、ほとんど苦痛には感じてはいない。以前は料理屋などで、さかんに「活け作り」「生け作り」などというメニューがもてはやされていた。コイやタイなどの魚を、生きてピクピク動いたままで刺身にして出す料理である。いまでも私たちは、鉄板焼きの店などで、生きたエビや、動くアワビなどの料理を楽しむ。
 よくよく考えてみると、生命というものの実感が、自分たち人間だけの世界で尊重され、他の生命などまったく無視されていることがわかる。
 しかし、生きるということは、そういうことなのだ、と居直るならば、われわれ人類は、すべて悪のなかに生きている、と言ってもいいだろう。命の尊重というのは、すべての生命が平等に重く感じられてこそなのだ。人間の命だけが、特別に尊いわけではあるまい。”
 日々他者の命を奪って生きているくせしてそれら生きものに与える酷さにくよくよ悩む私に、五木寛之さんの『天命』(幻冬舎文庫)がすっきりと腹に落ちた。五木さんは、人間の悲惨、とりわけ老人となってからの悲惨を「罰を与えられるような老年」と言われている。「罰」という言葉が、私に一応の納得を与えたのである。あまたの命を奪いつくして生きた人間、その終末は無惨であってよい、正解を得たように私は得心し覚悟したのである。五木さんは次のように言う。
“これでは人間の後半生はなんだというのか。必死で前半生を生きた人間が、あたかも罰を与えられるような老年を生きなければならないというのは、どういうことか。(略)
 いま私の周辺には、人生の半ばまで一所懸命に生きて、そのあげく不運な後半生を突きつけられた友人、知己があまりにも多いのである。
 老いていくことは、肉体的にはエントロピーが増大していくことだ。崩れていき、錆びついてくる体とともに生きることだ。夜は眠れず、歯も、目も不自由になってくる。手足もこわばり、記憶力は日々おとろえてくる。そんなありきたりの老化は覚悟の上としても、さらにその上に病気が多発するのが問題である。(略)
 悲惨としかいいようのない執着(しゅうじゃく)と絶望のなかで生きる人々の、なんと多いことだろう。それを横目で眺めながら、自分ひとりが平安なこころでいられるものだろうか。「衆生病むがゆえにわれ病む」というのが菩薩のこころだとすれば、澄み渡った老後の境地など、本当は決してありえないのではあるまいか。(略)
 死、そのものよりも、死へいたる過程が悲惨なのだ。(略)人生の途上における夭折は別である。長寿社会の緩慢な死の道行について私は語っているのである。(略)
 いま自分の周囲を見わたして、思わずため息が出るのを抑えることができない。どうして必死で生きた人間が、後半生を老、病、死という三重の罰に取り囲まれて暮らさなければならないのか。
 「そのために神さまはボケるという逃げ道を用意してくれているのさ。ボケてしまえば悲惨もくそもないだろう」しかし、私はボケながら平和に生きる道を人間の望ましい姿とは思わない。それはむしろ、さらなる悲惨かもしれないのである。”
 老年の悲惨については、私自身、非常な不安を抱えて生きてきた。最重要関心事といっても過言ではない。
 しかし、五木さんの「罰」という言葉に出会い、覚悟ができたのである。夥しい命を奪って生き延びてきた「私という人間」の末路は、悲惨でよい。罰として、悲惨でよい。そうでなくしてどうして、奪った命に対して割り切れよう。五木さんはそのようには考えなかったのだが、私は、少なくとも「私という人間」の末路は悲惨でよい、と覚悟をきめる。餓死でもよい。それが、いのち奪われた無辜の生きものたちへの、せめてもの辻褄あわせ、延いては詫びになる。

電気を流した。「豚は一瞬、金縛りのように硬直して、聞いたことのない悲鳴のような鳴き声を上げた」 
「うし/しんでくれた ぼくのために/そいではんばーぐになった/ありがとう うし…」
「牛は処分を察してか悲しい顔をする。涙を流した牛もいた」担当者ら、悲痛〜心のケアを
「子牛もいた。何のために生まれてきたんだろう」処分用薬剤を140頭もの牛に注射し続けた獣医師 

ペリカンの受難/口蹄疫/人間中心主義思想の根底に旧約聖書/ネット悪質書込みによる韓国女優の自殺2010-06-17  
〈来栖の独白2010-06-17
 1991年の湾岸戦争。海岸に接していた大規模石油基地が爆破され、大量の重油が海に流れ出したことがあった。この際にも、多くの無辜の生物が油に翼を奪われ、いのちを落とした。
 地球は、宇宙は、ひとり人類だけのものではない。声なき声の多くの生物のものでもある。
 五木寛之氏は『天命』(幻冬舎文庫)のなかで次のように言う。
 “たとえば、環境問題は、これまでのヨーロッパ的な、キリスト教的文明観では解決できないのではないでしょうか。
 欧米の人たちの考えかたの伝統のなかにには人間中心主義というものがあります。この宇宙のなかで、あるいは地球上で、人間が神に次ぐ第一の主人公であるという考えかたです。
 これはルネサンス以来の人間中心主義の思想の根底にあるものですが、主人公の人間の生活に奉仕するものとして他の動物があり、植物があり、鉱物があり、資源がある。水もあり、空気もあると、考えるわけです。
 そうした考えのなかから生まれる環境問題の発想というのは、やはり人間中心です。つまり、われわれはあまりにも大事な資源をむちゃくちゃに使いすぎてきた。これ以上、水や空気を汚し樹を伐り自然環境を破壊すると、最終的にいちばん大事な人間の生活まで脅かすことになってしまう。だからわれわれは、もっとそうしたものを大切にしなければいけない。----これがヨーロッパ流の環境主義の根源にあるものです。(略)
 これに対し、アジアの思想の基本には、すべてのもののなかに尊い生命があると考えます。
「山川草木悉有仏性」という仏教の言葉があります。山の川も草も木も、動物もけものも虫も、すべて仏性、つまり尊いものを持っている、生命を持っているんだ、という考えかたです。
 そうした考えかたから出ている環境意識とは、川にも命がある、海にも命がある、森にも命がある、人間にも命がある。だからともに命のあるもの同士として、片方が片方を搾取したり、片方が片方を酷使するというような関係は間違っているのではないか、もっと謙虚に向き合うべきではなかろうか、というものです。こういう考え方のほうが、新しい時代の環境問題には可能性があると私は思うのです。
 つまり「アニミズム」ということばで軽蔑されてきた、自然のなかに生命があるという考え方こそは、遅れた考え方どころか、むしろ21世紀の新しい可能性を示す考えかたなのではないでしょうか。
 狂牛病の問題で、あるフランスの哲学者が、人間のために家畜をありとあらゆる残酷なしかたで酷使してきたツケが回ってきたのだと言っていました。人間のために生産力を高めようとして肉骨粉を与え、共食いさせた。そうした人間の業というものがいま、報いを受けているのだ、と。狂牛病の問題だけではなく、すべてに関して人間中心主義というものがいま、根底から問われていると思います。”
 僅かに、卑見に相違するところがある。
>これはルネサンス以来の人間中心主義の思想の根底にあるものです
 と、おっしゃるくだりである。人間中心主義思想の根底にあるものは旧約聖書ではないか、と私は観ている。創世記は次のように言う。
 “ 神は言われた。
「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」
 神は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。神はこれを見て、良しとされた。神はそれらのものを祝福して言われた。
「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」
 夕べがあり、朝があった。第五の日である。
 神は言われた。
「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」
 そのようになった。 神はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。神はこれを見て、良しとされた。神は言われた。
「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」
 神は御自分にかたどって人を創造された。
 神にかたどって創造された。男と女に創造された。
 神は彼らを祝福して言われた。
「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」
 神は言われた。
「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草を食べさせよう。」
 そのようになった。神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。”〔創世記1.20〜1.31〕

化粧品開発のための動物実験規制

「陸山会事件」東京地裁 検察側供述調書を証拠採用せず/ 裁判長も怒った検察のデッチ上げ

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春秋 2011/7/4付
 むかし、中野並助という検事がいた。大正から昭和戦前期に活躍した人だ。終戦のころには検事総長まで上りつめたが、偉ぶることなく人情の機微にも通じ、なかなかの好漢だったらしい。大酒飲みでも知られ、中野飲み助と呼ばれた。▼こういうくだけた検事だけに、取り調べをお座敷芸にたとえたりしている。「謡曲だって、浄瑠璃だって、小唄だって、まず易しいものからはいって相当番数を重ね、しかる後に大物にとりかかるのだ」と著書「犯罪の通路」で言う。検事の取り調べ術も一朝一夕には上達はせぬ、じっくり修行を、という教えだ。▼これにならえば、小沢一郎氏の元秘書らを調べた検事たちは入門からやり直すしかあるまい。陸山会事件の裁判で東京地裁が、検察側の主張を支える重要な供述調書の証拠採用をまとめて却下した。「特捜部は恐ろしいところだ」などと脅したうえでの調書だったという指摘だ。裁判所も腹に据えかねたとみえる。▼調書は、検察審査会が小沢氏本人の起訴を議決した際の根拠でもある。冤罪(えんざい)を生んだ郵便不正事件に続き、またしても浮かび上がった検察の不始末だ。かの飲み助氏によれば「取り調べにあたるものは、一つ騙(だま)されてやろうというくらいな、余裕と寛容さが必要だ」。あの世で、昨今の素人芸を嘆いているだろう。〈日本経済新聞〉
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小沢裁判 もうやるだけ時間と税金のムダ
日刊ゲンダイ2011年7月2日
強制基礎の根幹崩れる
●裁判長も怒った検察のデッチ上げ
  検察ストーリーは、やはり砂上の楼閣だった。小沢一郎元代表の元秘書3人が収支報告書の虚偽記載に問われた「陸山会裁判」で、東京地裁が「検察敗北」の決定打を放った。検察の供述調書38通の大半を「信用できない」として証拠採用を却下。デッチ上げと認めた調書には、衆院議員の石川知裕被告(38)が「小沢元代表に虚偽記載を報告、了承を受けた」という調書も含まれていた。この調書が、小沢の強制起訴の唯一の証拠だっただけに、秋にも始まる裁判は根底から崩れ去ったも同然だ。無罪は確実で、裁判を開くだけ時間と税金の浪費である。
 陸山会裁判で、元秘書3人の弁護団があぶり出したのは、ハナから結論ありきで、脅し、すかし、泣き落としで自白調書を作りあげた東京地検特捜部のエゲツない実態だ。
  その筆頭格が、石川議員の聴取を担当した元特捜副部長の吉田正喜、田代政弘両検事である。
 「吉田検事は別件の“贈収賄事件”の調書を作成し、『こんな事件はサイドストーリーだ』と破り捨てるパフォーマンスを演じて自供を強要。田代検事は『特捜部は恐ろしい組織だ』と脅しつつ、時には『親しい検察上層部が“小沢の起訴はない”と言っていた』と甘言をささやき、小沢氏の関与が色濃い調書にサインさせたのです」(司法ジャーナリスト)
  石川は保釈後の再聴取をICレコーダーを使って密かに録音。石川が供述を翻そうとすると、聴取を担当した田代検事が「最高権力者の小沢氏が変えさせたとの印象を持たれて(検察審査会で)小沢氏が不利になる」と再び揺さぶりをかける様子がバッチリとられ、裁判所に提出された。
  大久保隆規元秘書の調書を取ったのは、改ざん検事の前田恒彦受刑者だったし、池田光智元秘書の担当検事2人も、今回と同じように作成調書が「デッチ上げ」と過去の裁判所で認定された“札付き検事”だ。
  不良検事の吹きだまりのような捜査メンバーに、普段なら特捜部の肩を持つ東京地裁も「こいつら、オカシイ」と判断したのだろう。証拠不採用の決定文で「威迫ともいうべき心理的圧迫と利益誘導を織り交ぜながら、巧妙に供述を誘導した」と、特捜部を厳しく批判。弁護団関係者も「驚くほど検察の調書が採用されなかった。裁判長の怒りすら感じる」と語ったほどだ。
  こんなデタラメ検事たちの作文調書が、小沢関与のシナリオとなり、検察審査会で強制起訴される決定的材料に悪用されたのだ。元検事の郷原信郎・名城大教授はこう言う。
 「小沢氏の共謀を立証する材料は、石川議員らの供述調書しかありません。その信用性が崩れたのですから、検察官役の指定弁護士は戦う前から武器を奪われたようなもの。“勝負あった”と見るべきです。もはや、小沢氏を法廷にダラダラと縛りつける理由はありません。指定弁護士は早期決着を図るべきです」
  指定弁護士はサッサと白旗を揚げるべきだし、デッチ上げに便乗した大マスコミも検察と同罪だ。政権交代の立役者を潰した世論誘導の不明を恥じて、素直に国民に謝罪したらどうだ。
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【裁判所も認めた!世紀の謀略「小沢事件」全内幕】
日刊ゲンダイ2011年7月4日
脅しとデッチ上げしかできない地検特捜部はとっとと解散したほうがいい
 東京地検特捜部はもうオシマイではないか。民主党の小沢一郎元代表の政治資金団体「陸山会」事件で、東京地裁が特捜部の取り調べを問題視し、多くの調書の証拠採用を見送った件である。検察は決定を不服とし、異議申し立てをするつもりらしいが、やれるものならやってみろだ。これで小沢の無罪は決定的だし、司法関係者の間からは「検察はもう完全崩壊だ」の声が噴き出している。
 検察が陸山会事件で裁判所に証拠採用を請求した供述調書は38通。小沢の元秘書で衆院議員の石川知裕氏、同じく元秘書の池田光智被告、大久保隆規被告らの調書だ。
  そのうち、東京地裁の登石郁朗裁判長は石川被告の調書10通、池田被告の調書2通の全内容を却下し、他の調書の一部も却下した。ズバリ、捜査がデタラメで調書に任意性がないからだ。これが関係者に衝撃を与えているのは理由がある。元東京地検公安部長で弁護士の若狭勝氏はこう言う。
 「被告の弁護側は検察が提出してきた供述調書の中身を問題視し、異議を唱える時は2つのパターンがあります。ひとつはそもそも取り調べ段階の捜査に違法性があり、調書全体が認められないと主張するケース。もうひとつは調書の証拠採用は認めるが、中身については信用性を争うケースです。今度のは最初のケースで、裁判所もそれを認めた調書がこれだけあった。捜査の手法に相当な問題があったという証しです。この裁判は小沢氏の元秘書の裁判で、小沢氏本人が強制起訴された裁判とは裁判長が違います。裁判長によって、証拠の評価、判断は違いますが、最初のパターンでこれだけの調書が却下されたとなると、裁判長によって、その評価が変わるとは思えない。小沢氏の裁判にも影響があるだろうし、検察審査会は昨年、証拠申請が却下された石川氏の供述調書を重視して、『小沢氏に共謀の可能性あり』と強制起訴議決をした。その前提が崩れたとなると、検察審査会から地検特捜部への批判が出てくる可能性もあります」
●もうこれまでのようなデタラメは通じない
  検察と検察審査会といえば、謀略のような手口で小沢抹殺を企んだ“共犯者”だ。その両者が今になって内輪モメなんてブラックジョークだ。小沢にしてみれば「フザケンナ」だろう。東京地検で公安部の検事だった落合洋司弁護士はもっと手厳しい。
 「これまでも地検の捜査手法は問題視されてきたんですよ。否認すれば、刑が重くなるぞ、家族にも迷惑がかかるぞってね。関係者に片っ端からガサを打つぞ、迷惑がかかるぞっていう捜査をやってきた。今度の証拠申請では切り違い尋問が問題になりました。Aは自白しているぞ、とウソを言って、Bに自白を迫る手法です。そんなことをずっとやってきたし、検察のそういう捜査手法を警察もマネしてきたのです。それでも調書が却下されることは少なかった。裁判所が検察に遠慮してきたからです。その空気が村木事件以来、変わってきたのでしょう。大阪の裁判所は非常に厳しくなったし、それを受けて東京の裁判所も問題がある捜査、調書を見過ごすわけにはいかなくなったのだと思います」
  しかも、今回、捜査の任意性を問題視された検事は複数だ。地検特捜部全体の“体質”が問われたのである。
 「もともと、小沢氏の秘書の捜査は小沢氏に駆け上るためのステップで、最初から筋書きができていた。だから無理に無理を重ねる取り調べになり、それがひっくり返された。もう検察は従来のような取り調べはできなくなると思います」(落合洋司氏=前出)
  ここまで悪さがバレた以上、地検特捜部はもう解散した方がいい。
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《第13回前半》陸山会事件公判 水谷建設元運転手が調書内容を否定「ハラがたってます」2011-05-30 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 5月24日雨。今日は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷するため、傍聴希望者がいつもより多い。約55席の傍聴席に対して、90人ぐらいは並んでいた。たしかに、水谷元会長は日本全国を揺るがせた陸山会事件のキーマンの一人で、ウラ金の実態をどう証言するかでこの裁判の行方が大きく左右されることは間違いない。
そのほか、水谷元会長の前には水谷建設の元専属運転手が弁護側の証人として出廷する。ウラ金を渡したとされる時期に社用車の運転手をしていたのは彼だけで、これもまた重要な証言となる。まずは午前に行われたこの元運転手の証言から報告する。

10時開廷。午前中は、水谷建設の元専属運転手が出廷。元運転手は、事情聴取のときに川村元社長が04年10月15日に石川知裕氏に5000万円を渡した際、受け渡し場所となった全日空ホテル(現・ANAインターコンチネンタルホテル)まで川村元社長を送ったと話し、その時の様子が調書にまとめられている。石川氏に渡したとされる5000万円については証言や物的証拠が極端に少ないので、運転手の証言は検察側の立証にとって重要な意味を持つ。まずは弁護人による尋問。
(──は弁護人、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたは川村元社長を全日空ホテルまで車で送ったことはありますか
「1回か2回ぐらいあると思います」
── 時期についての記憶はありますか?
「会長(注:水谷功元会長のこと)が脱税事件で逮捕された以降だと思います」
※補足。水谷功元会長が脱税容疑で逮捕されたのは06年7月。川村元社長がウラ金を渡したと証言しているのは04年10月と05年4月。つまり、元運転手はウラ金渡しの際に川村社長を社用車に乗せて全日空ホテルに行ったことはないと証言していることになる。
──そのことは検察官に説明しましたか
「はい」
── 検察官に何を聞かれましたか
「全日空ホテルで車を待機させるときのことを聞かれました」
── それは04年10月15日ではなく、全日空ホテルで車を停めるときの方法を聞かれたということですか
「はい」
── 車はどのように停めていたのですか
「川村社長だけではなく、会長を送るときも含め、2階のロビーで降ろして、ボーイさんに頼んでその近くで待機していました」
── 川村元社長の手荷物について聞かれましたか
「『覚えておりません』と答えました」
※補足。「手荷物」とは川村元社長が届けたとされる5000万円入りの紙袋を指す。検察は、何としてもこの運転手に「川村社長は、全日空ホテルに送ったときに手荷物を持っていた」という調書をとりたかっただろう。というのも、石川氏に渡したとされる5000万円については川村元社長の証言以外に証拠はなく、当日に本当に川村元社長が全日空ホテルに行ったという証拠もないからだ。しかし、その調書は元運転手の記憶とは異なるものだったことが明らかになっていく。
── あなたは調書を訂正したいと思っていますか
「はい」
── 川村社長を全日空ホテルに送ったときは、出発の直前に指示されたとの供述がありますが
「日常的にどこに行くのかは直前に言われることもあったので、こういうことを言いました」
── ということは、特定の時期の話ではなくて、一般的な話だったということですね
「はい」
── 検事は、その説明を(特定の日付の話であるかのような)こんな書き方をしたのですか
「はい」
── 調書を訂正するのなら、どのように訂正したいですか
「この日の記憶がほとんどなかったので、(日付を)限定できるということはないと思います。(検事には)この当時の記憶がほとんどなかったので『送った記憶がない』と言ったのですが、こういう調書になってしまいました」
── 検事から手荷物について聞かれたことについては
「手荷物については一般的なことで言ったので、川村社長を全日空ホテルに送った時の話をしたわけではないです」
── 調書にサインを求められたとき、どのように感じましたか
「10月15日ということで限定していたので、不安を感じました」
── 検事にはどのように話しましたか
「10月15日について限定されていることを指摘して、『サインできません』と言いました」
── 検事はどう言いましたか
「『サインしてもらわないと困る』と。私が『10月15日に限定しているのは直せないのですか』と聞いたら『直せない』と言われました」
── サインをしなくちゃいけないとも言われたのですか
「『サインして下さい』と言われたので、『サインはできません』と申し上げたのですが、『これは今日あなたが話したことをまとめたものだ』と」
── なぜサインしてしまったのですか
「『サインをしなきゃいけない』と言われました」
── 当時はなぜ(10月15日のことについて)聞かれているのかわからなかったのではないですか
「はい」
── サインしたことで後悔はしていますか
「10月15日に限定されたことが、私には覚えがありませんので、こういう書き方をされたのは直してほしいとおもっています」
── こういう調書がつくられたことについては
「できるならば、日付は削除してほしいです」
── こういう調書ができたことについて、どのように感じていましたか
「多少、ハラがたっていますね」
── 04年10月15日に、川村元社長を全日空ホテルに送ったという記憶はないんですね
「はい」
── 川村社長はこの公判で、全日空ホテルへの交通手段について『社用車がタクシーで』と答えていますが
「タクシーであれば、会社に領収書があると思います」
※弁護人の尋問終了後、検察側の反対尋問が行われる。運転手の調書否定証言に対し、検察側は川村元社長を議員会館の小沢事務所に訪ねていたことを尋問する。狙いがどこにあるかがよくわからなかったが、川村元社長が小沢事務所を訪ねていたことを証言させ、水谷建設と小沢事務所の関係の濃さをアピールしたかったのかもしれない。それに対し、元運転手は手帳に書かれているものは議員会館に行ったことを認め、一方で「日付はわかりませんが、手帳に書いた以外はないと思います」と答える。

最後に裁判官による尋問。
(──は裁判官、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたが手帳をつけていた理由はなぜなのですか
「会社には日報があったのですが、私が行動していたことを自分で後で確認することも含めて、会社に聞かれたときのために書いていました」
※補足。会社に提出していた日報は、手帳に書かれているものに比べればおおざっぱなもので、詳細は書かれていないという。
── 手帳はどういう時に書いていましたか
「その時に応じて書く場合と夕方に書いていました」
── 何日かまとめてということは
「それはほとんどないと思います」
── 書き漏らしはありますか
「(仕事が)重なった時などはあると思うんですが」
── もうちょっと具体的にお話いただけますか
「時間的に会長と社長がバッティングしてしまったりした時ですね」
── 書き漏らすこともあったということですか
「忘れることもあったと思います。その日、書くのを忘れて、そのまま書いていないということはあると思います」
── 手帳はあなたのスケジュール表としても使っていたのですか
「そうです」
── スケジュールはあらかじめわかっているものなのですか
「先にわかっているというのは少ないですね。(指示が来るのは)当日か前の日で、事前に連絡がきていれば手帳に書きますが、当日に書くことが多かったです」
── それが当日が前日に書くことが多かったということですね
「はい」
── 直前に言われて書き忘れるということは
「それもあると思います」
── 10月15日に川村社長を送ったかどうかですが、あなた自身は記憶がないのですね
「はい」

以上で午前の部が終了。裁判官も、04年10月15日に元運転手が全日空ホテルまで川村氏を送迎したかどうかに強い関心を持っているようだ。
元運転手が証言したように、川村氏が水谷建設東京支店で金庫から5000万円を引き出した後、全日空ホテルまでタクシーで移動したのであれば、領収書が何らかの形で残っている可能性が高い。しかし、それがないのであれば社用車で移動したことになり、それは元運転手の証言とは矛盾してしまう。川村氏の移動手段をどのように事実認定するかも、裁判の重要なポイントとなるだろう。
そのほか、元運転手の証言によって検察による調書の取り方の問題点がまたもや明らかとなった。おそらく、元運転手の聴取を担当した検事は、上司の思い描くストーリーのままの調書をつくったのだろう。しかも、検察はこの調書の内容を一部の記者にリークして、「石川有罪」の空気作りまでしていた。リークをした検察関係者が、このような杜撰な聴取で調書が作られていたことを知っていたかは不明だが、検察の情報操作の巧さを感じさせる。
引き続き、午後は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷する。ここでも石川氏に渡したとされる5000万円の流れについて証言が行われる。
※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に主要部分を再構成したものです
2011/5/25(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史
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《第13回後半》陸山会事件公判 水谷建設 水谷功元会長が語る「裏ガネ渡しの流儀」2011-06-03 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 引き続き午後の部。
《THE JOURNAL》 編集部 西岡千史 2011年6月3日 13:03
 13時30分開廷。証人である水谷建設元会長の水谷功氏が法廷に入る。水谷元会長は大柄でスキンヘッド、黒に近いスーツにピンク色のネクタイという風貌。それにドスのきいた低い声で関西弁を話すので、見るからに親分の風格が漂っていてる。

まずは弁護人による尋問。
(──は弁護人、「」内は水谷元会長、※は筆者注)
── どのようなゼネコンに営業活動をしていたのですか
「だいたい日常の営業活動でどこが(工事の受注に)強いということがわかりますので、そこに営業することになります」
── 水谷建設が受注できる見込みはありましたか
「過去の実績がありましたので、受注をもらえると思っていました」
── スポンサーは誰が決めるのですか
「お客さん(ダムを受注したゼネコンのこと)が決めます」
※「スポンサー」とは、ゼネコンの下請け業者を取りまとめる幹事社のこと。後の証言でも出てくるが、水谷建設は胆沢ダムの工事でスポンサーになりることを目指していて、そのために小沢事務所に営業活動をしていた。
── スポンサーをとることは重要なことなのですか
「我々の中では、サブになることは難しくないです。交渉権のあるスポンサーが金額の設定をしますので、非常に責任感もあります。私ども下請け業界では雲泥の差があります」
── 具体例で言ってもらえますか
「いろいろとありますけど、メリットも多いということです」
── スポンサーになることは仕事にも影響がありますか
「スポンサーになれれば勝ちだし、なれなければ負けです。胆沢ダムでスポンサーになると実績にもなりますし、逆にスポンサーになれないと『水谷建設は力がない』ということになりますね」
■水谷建設の営業活動の実態と裏ガネの手配
※水谷元会長は、胆沢ダムの営業活動では、小沢一郎氏の元秘書である高橋嘉信氏に営業をかけていた。しかし、高橋氏は04年当時はすでに小沢事務所から離れていたため、川村元社長に大久保隆規氏に営業活動をかけるよう指示したという。
── 大久保氏へのあいさつ(営業活動)とは具体的に何をするのですか
「まあ、鹿島建設と水谷建設の間ではスポンサーでの受注の了解ができているので、横槍を入れてほしくないという話ですね」
── 川村元社長はスポンサーをとることが大事だとわかっていましたか
「当然わかっております」
※大久保氏に話題が及んだことで、突然、水谷元会長が被告人席に話しかけはじめる。
「最初に言わないといけませんが、当社のためにご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」
※頭を下げる水谷元会長。突然の謝罪だったので驚いたが、弁護人の質問は淡々と続く。
── 5000万円についてあなたはどう思っていますか
「まあ、大久保さんとそれなりの約束(※スポンサーになる約束のこと)ができたから、そうなんだろうということです」
── 本当にそのお金は大久保氏に渡されていますか
「それはわかりません。私が報告を受けていることと川村君の証言は違いますし、刑務所での検事の取調べの時も『なんだろうな』と思っていました」
── 川村元社長からはこの件について報告を受けていたのですか
「逐一、受けておりました」
── 川村元社長は5000万円を2回渡したと証言していますが
「2回という記憶はないですけど、1億円とは聞いております」
── 04年10月15日に石川氏に渡したとされる5000万円は誰が手配したのですか
「私が手配しました」
■水谷建設の裏ガネ渡しの流儀
※水谷建設は裏ガネ渡しについていくつかのルールを持っていた。そこを弁護士がたずねる。
── あなたはさきほど『スポンサーになることが前提』という話をされましたが、鹿島建設が胆沢ダムの工事を落札できたのは10月8日ですよね。金を渡したのは10月15日で、しかもその後に水谷建設はスポンサーから外れてますよね
「はい」
── あなたは裏ガネを渡すのは『スポンサーになるのが前提』と話しているのに、04年10月15日にはまだスポンサーになることが決まっていないし、その後、スポンサーにもなれていませんね
「川村からの報告で決まったものやと思って、了解しました」
── この段階でスポンサーになれることが決まっていなかったらどうしていましたか
「(裏ガネの)用立てはしません」
── こういうお金は話が成立してから渡すものじゃないのですか
「以前の私の場合は、(裏ガネを渡す)陳情は盆と正月で、それ以外にお願いしたいときは、ちょっと言いづらいけど・・、成功報酬として出していました。自分は親からこういうものなんだという教育を受けてましたので、そうしてました」
── あなたは裏ガネの支出については厳しかったのですか
「社員何百人が稼いできたお金を、価値のない使い方はできません」
── 川村元社長はスポンサーになれなかったとき、水谷建設で労災隠しが発覚したためだという説明をしていませんでしたか
「彼はそういう説明をしないと、(社内が)おさまりませんわな」
── 水谷建設がスポンサーになれなかったとき、あなたは川村元社長にどういう話をしたのですか
「私は川村君に『話が違うやないか』と言ったら、川村君は『名目上は(スポンサーの下請けとなる)サブですが、交渉権は水谷建設にあります』と説明があったんですが、納得がいかなかったので、『大久保さんと合意ができているのならおかしいやないか』と言いました」
── こういう簿外の裏ガネを管理していたのはだれですか
「最終的には管理部長が管理していました」
── 裏ガネの保管場所は
「(桑名市の水谷建設本社の)3階の金庫です」
── 普通の現金の保管場所は
「1階の金庫です」
── 裏ガネの支出を管理するメモはないのですか
「裏ガネは表のカネ以上に厳しく管理していました」
── たとえ裏ガネであっても、もちろんそれは会社にとっては公金ですよね
「はい」
── 管理部長が裏ガネの記録をつけていたのですか
「はい」
── 管理部長は、この法廷で国税が入ったときに処分して、それ以降は帳簿をつけていないと証言していますが
「それはちょっと考えにくいですね。年間でいうと数億というカネが動いていますので、(帳簿は)わかるようにしていました」
※補足。この管理部長は第12回公判で証人として出廷していて、弁護人の『裏ガネの帳簿がありますよね』と繰り返し質問されたが、すべて否定している。
── 脱税事件では裏ガネの帳簿が発見されていないのですが
「・・そんなことも話をしないといけませんか」
── して下さい。お願いします。
「管理部長の責任で動かしました」
── どこに動かしたのですか
「断定はできませんが、(管理部長の)お父さんのところか、社員のところだと思います。金を渡したという証拠がないと渡しは納得できなかったので、(刑務所内で事情聴取を受けたとき)なぜ、中村はそう話すのかなあと検事に話したんです。私が(脱税事件で)逮捕されたときに役員で集まったときも『あれが見つからなくてよかったです』と話していました。その前年にも裏ガネの帳簿が合わなかったときに中村に言ったら『明日、報告します』ということで翌日に本人の勘違いだったとわかったということもありました」
── 政治家に金を渡したことは
「あります」
── そういうときのルールとはどんなものですか
「北海道、東京、九州といろいろありますけど、カネは朝に持って出て、着いた時に渡すことにしていました。当日が無理な場合は、前日に持って行きます。あと、できるだけ第三者に入ってもらうようにしていました」
── 川村元社長は法廷では04年10月15日の午後に大久保の使者である石川に渡したと話しました。川村元社長は、金はその2日前の13日に東京に運んでもらって、しかも見届け人も入れずに渡したということですが
「私とは認識の差がだいぶありますので、これを言うとややこしくなりますので・・」
── というのは
「川村君が出張する前に私に連絡がありまして、出張から帰ってきた翌日に渡すと。それで14日に専務と一緒に渡すよう言ったつもりなんです」
── 川村元社長は一人で渡したと言っていますが、見届け人については
「見届け人は・・いなかったんですかね。ちょっと考えづらいんですけど」
── こういった金を渡す時の配慮は誰が指示したのですか
「川村君にしてみればはじめてのことですので、専務にも行かせたんですけど、そこが不明朗になっています」
── 川村元社長はどのように話していましたか
「私には『大久保さんに渡した』と報告を受けました」
── 川村元社長は石川氏に渡したと話していますが
「もし私であれば、渡した時に約束した人(※大久保氏のこと)に電話して、預かり証をもらっていますし、そもそも一人で行くことはないです」

弁護人の尋問は終了。続いて行われた検察官による尋問では、水谷元会長が5000万円を手配した時のことについてたずね、水谷元会長は「管理部長に『お金を◯日までに用意して、◯日の◯時までに東京に持って行きなさいと指示しました」と証言する。最後に、裁判官の尋問。
(──は裁判官、「」内は水谷元会長)
── 胆沢ダムに関しては社運をかけていたということですが
「(胆沢ダムは)日本で数えるほどしかない規模のダム工事で、これまでやってきたダム工事が終わって機械があまりますので、受注したかったということです」
── 高橋嘉信さんの所にお願いに行ったということですが
「(法廷で)余計な名前を出してしまいましたけど・・、私は何度もお願いに行きました」
── それまでは高橋さんと話をしていたのですか
「私はずっと高橋さんがやっているものと思っていましたが、あそこ(※小沢事務所のこと)が違う会社を推薦してきているという話ですので、協力会社の社長に頼んで、大久保さんに話をしに行ったということです」
── 本件で問題となっている5000万円について、専務には話をしたのですか
「お金を持って行って、できるだけ(受け渡し場所に)一緒に行ってこいという話をしたのですが」
── 電話ですか、直接ですか
「電話だと思います」
── そのとき、専務はどこにいたのですか
「静岡だと思います」
── その時に金額の話をしましたか
「言ってないと思います」
── 管理部長にはどのような話をしたのですか
「『社長から聞いていると思うけど、14日に必要だから』と話しました」
── 中村さんに金額は言いましたか
「5000万円と言いました」

 以上で第13回公判が終了。水谷功元会長は証言台から退いた後、ドアの付近で裁判官、弁護人、検察官、傍聴席に深々と頭を下げ「失礼しました」と礼をして退廷したのが印象的だった。
※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に再構成したものです(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史)
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陸山会事件公判 水谷建設の元運転手証言「川村尚元社長を裏金5千万円受渡し現場へ送った記憶、ない」2011-05-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
陸山会事件公判 水谷建設水谷功元会長「裏献金、手配したが、実際に提供されたかどうかは分からない」2011-05-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

もはや小沢氏を法廷に縛りつける理由はないのに、検察官役の指定弁護士、前田元検事を証人申請

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前田元検事を証人申請へ 検察官役、小沢元代表公判
 資金管理団体「陸山会」の収支報告書虚偽記入事件で、政治資金規正法違反の罪で強制起訴された民主党元代表小沢一郎被告(69)の公判前整理手続きが6日、東京地裁(大善文男裁判長)であった。関係者によると、検察官役の指定弁護士は大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で実刑となった前田恒彦元検事(43)ら9人を証人申請する方針を示した。
 前田元検事は元公設第1秘書大久保隆規被告(50)の取り調べを担当。指定弁護士は大久保元秘書の供述調書も証拠請求していたが、弁護側が同意していなかった。
2011/07/06 21:08   【共同通信】
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〈来栖の独白〉
 指定弁護士、何を考えているのだか。正気の沙汰ではない。
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「陸山会事件」東京地裁 検察のデッチ上げ調書を証拠採用せず/小沢強制起訴の根幹崩れる2011-07-06 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
・小沢裁判 もうやるだけ時間と税金のムダ
日刊ゲンダイ2011年7月2日
強制起訴の根幹崩れる
●裁判長も怒った検察のデッチ上げ
 検察ストーリーは、やはり砂上の楼閣だった。小沢一郎元代表の元秘書3人が収支報告書の虚偽記載に問われた「陸山会裁判」で、東京地裁が「検察敗北」の決定打を放った。検察の供述調書38通の大半を「信用できない」として証拠採用を却下。デッチ上げと認めた調書には、衆院議員の石川知裕被告(38)が「小沢元代表に虚偽記載を報告、了承を受けた」という調書も含まれていた。この調書が、小沢の強制起訴の唯一の証拠だっただけに、秋にも始まる裁判は根底から崩れ去ったも同然だ。無罪は確実で、裁判を開くだけ時間と税金の浪費である。
 陸山会裁判で、元秘書3人の弁護団があぶり出したのは、ハナから結論ありきで、脅し、すかし、泣き落としで自白調書を作りあげた東京地検特捜部のエゲツない実態だ。
 その筆頭格が、石川議員の聴取を担当した元特捜副部長の吉田正喜、田代政弘両検事である。
「吉田検事は別件の“贈収賄事件”の調書を作成し、『こんな事件はサイドストーリーだ』と破り捨てるパフォーマンスを演じて自供を強要。田代検事は『特捜部は恐ろしい組織だ』と脅しつつ、時には『親しい検察上層部が“小沢の起訴はない”と言っていた』と甘言をささやき、小沢氏の関与が色濃い調書にサインさせたのです」(司法ジャーナリスト)
 石川は保釈後の再聴取をICレコーダーを使って密かに録音。石川が供述を翻そうとすると、聴取を担当した田代検事が「最高権力者の小沢氏が変えさせたとの印象を持たれて(検察審査会で)小沢氏が不利になる」と再び揺さぶりをかける様子がバッチリとられ、裁判所に提出された。
 大久保隆規元秘書の調書を取ったのは、改ざん検事の前田恒彦受刑者だったし、池田光智元秘書の担当検事2人も、今回と同じように作成調書が「デッチ上げ」と過去の裁判所で認定された“札付き検事”だ。
 不良検事の吹きだまりのような捜査メンバーに、普段なら特捜部の肩を持つ東京地裁も「こいつら、オカシイ」と判断したのだろう。証拠不採用の決定文で「威迫ともいうべき心理的圧迫と利益誘導を織り交ぜながら、巧妙に供述を誘導した」と、特捜部を厳しく批判。弁護団関係者も「驚くほど検察の調書が採用されなかった。裁判長の怒りすら感じる」と語ったほどだ。
 こんなデタラメ検事たちの作文調書が、小沢関与のシナリオとなり、検察審査会で強制起訴される決定的材料に悪用されたのだ。元検事の郷原信郎・名城大教授はこう言う。
「小沢氏の共謀を立証する材料は、石川議員らの供述調書しかありません。その信用性が崩れたのですから、検察官役の指定弁護士は戦う前から武器を奪われたようなもの。“勝負あった”と見るべきです。もはや、小沢氏を法廷にダラダラと縛りつける理由はありません。指定弁護士は早期決着を図るべきです」
 指定弁護士はサッサと白旗を揚げるべきだし、デッチ上げに便乗した大マスコミも検察と同罪だ。政権交代の立役者を潰した世論誘導の不明を恥じて、素直に国民に謝罪したらどうだ。 *強調(太字)は、来栖
・【裁判所も認めた!世紀の謀略「小沢事件」全内幕】
日刊ゲンダイ2011年7月4日
脅しとデッチ上げしかできない地検特捜部はとっとと解散したほうがいい
 東京地検特捜部はもうオシマイではないか。民主党の小沢一郎元代表の政治資金団体「陸山会」事件で、東京地裁が特捜部の取り調べを問題視し、多くの調書の証拠採用を見送った件である。検察は決定を不服とし、異議申し立てをするつもりらしいが、やれるものならやってみろだ。これで小沢の無罪は決定的だし、司法関係者の間からは「検察はもう完全崩壊だ」の声が噴き出している。
 検察が陸山会事件で裁判所に証拠採用を請求した供述調書は38通。小沢の元秘書で衆院議員の石川知裕氏、同じく元秘書の池田光智被告、大久保隆規被告らの調書だ。
 そのうち、東京地裁の登石郁朗裁判長は石川被告の調書10通、池田被告の調書2通の全内容を却下し、他の調書の一部も却下した。ズバリ、捜査がデタラメで調書に任意性がないからだ。これが関係者に衝撃を与えているのは理由がある。元東京地検公安部長で弁護士の若狭勝氏はこう言う。
「被告の弁護側は検察が提出してきた供述調書の中身を問題視し、異議を唱える時は2つのパターンがあります。ひとつはそもそも取り調べ段階の捜査に違法性があり、調書全体が認められないと主張するケース。もうひとつは調書の証拠採用は認めるが、中身については信用性を争うケースです。今度のは最初のケースで、裁判所もそれを認めた調書がこれだけあった。捜査の手法に相当な問題があったという証しです。この裁判は小沢氏の元秘書の裁判で、小沢氏本人が強制起訴された裁判とは裁判長が違います。裁判長によって、証拠の評価、判断は違いますが、最初のパターンでこれだけの調書が却下されたとなると、裁判長によって、その評価が変わるとは思えない。小沢氏の裁判にも影響があるだろうし、検察審査会は昨年、証拠申請が却下された石川氏の供述調書を重視して、『小沢氏に共謀の可能性あり』と強制起訴議決をした。その前提が崩れたとなると、検察審査会から地検特捜部への批判が出てくる可能性もあります」
●もうこれまでのようなデタラメは通じない
 検察と検察審査会といえば、謀略のような手口で小沢抹殺を企んだ“共犯者”だ。その両者が今になって内輪モメなんてブラックジョークだ。小沢にしてみれば「フザケンナ」だろう。東京地検で公安部の検事だった落合洋司弁護士はもっと手厳しい。
「これまでも地検の捜査手法は問題視されてきたんですよ。否認すれば、刑が重くなるぞ、家族にも迷惑がかかるぞってね。関係者に片っ端からガサを打つぞ、迷惑がかかるぞっていう捜査をやってきた。今度の証拠申請では切り違い尋問が問題になりました。Aは自白しているぞ、とウソを言って、Bに自白を迫る手法です。そんなことをずっとやってきたし、検察のそういう捜査手法を警察もマネしてきたのです。それでも調書が却下されることは少なかった。裁判所が検察に遠慮してきたからです。その空気が村木事件以来、変わってきたのでしょう。大阪の裁判所は非常に厳しくなったし、それを受けて東京の裁判所も問題がある捜査、調書を見過ごすわけにはいかなくなったのだと思います」
 しかも、今回、捜査の任意性を問題視された検事は複数だ。地検特捜部全体の“体質”が問われたのである。
「もともと、小沢氏の秘書の捜査は小沢氏に駆け上るためのステップで、最初から筋書きができていた。だから無理に無理を重ねる取り調べになり、それがひっくり返された。もう検察は従来のような取り調べはできなくなると思います」(落合洋司氏=前出)
 ここまで悪さがバレた以上、地検特捜部はもう解散した方がいい。

列島縦断 放射能はこんなに出ている 想像以上、汚染地域は日本各地に拡がっていた

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もっと細かく全国1000ヵ所を独自調査 列島縦断 放射能はこんなに出ている 想像以上、汚染地域は日本各地に拡がっていた 実測数値を全掲載〈前編〉
2011年07月05日(火)週刊現代

〈表中の数値は細字が0.19未満(安全基準以内)、太字が0.19以上0.60未満、シロヌキが0.60以上(避難を検討したほうがよい水準) 単位はマイクロシーベルト/時〉
 
●流山に新たなホットスポットが
●都内の高線量地域
●徹底調査!名古屋、大阪はなぜ高いのか
●原発周辺地域は総じて高い
●東北の現実
 
あなたの町の本当の線量は
「柏市(千葉県)に住む者ですが、本当に避難したほうが良いのでしょうか?」
「文京区(東京都)の幼稚園に子供を通わせる母親です。園長に頼んでも園庭の線量を測ってくれない。調べてくれませんか?」
「軽井沢(長野県)のもっと具体的な測定値が知りたいです」
 本誌前号 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9839 が発売されてからというもの、編集部に読者からの電話が殺到した。ごく一部は「なぜ危険を煽るんだ!」という抗議だったが、ほとんどの電話から「本当のことをもっと知りたい」という切実な思いが伝わってきた。
 それらの不安はすべて、政府・行政の無策、無責任が原因である。
 政府の掲げる「年間20ミリシーベルト、毎時3・8マイクロシーベルト」という被曝限度量がいかにバカげているか、中部大学の武田邦彦教授が語る。
「ICRP(国際放射線防護委員会)が定めた年間1ミリシーベルトにしても、あまり言われていませんが、外部被曝と内部被曝を合計した数値です。国、各省庁が一致団結して、食物をきっちり検査する態勢を取っていれば、内部被曝はずいぶん減らせる。でも実情は、国はいま国民に積極的に放射性物質を含んだ食物を食べさせようとしているわけです。ですから、ある程度の内部被曝を計算せざるをえない。
 そうすると、毎時の限度量は3・8の20分の1、0・19でも、まだ多いということになる。様々な要因を勘案した上で、0・11マイクロシーベルト/時が、我々が浴びても安全だと言える基準だと私は提言しています」
 3・8マイクロシーベルト/時という数値の欺瞞については、自治体ですら認め始めている。6月22日、千葉県野田市は被曝限度を「年間1ミリシーベルト、毎時0・19マイクロシーベルト」と定めた。国の基準ではなく、ICRPの基準を独自に採用したのだ。
 前出の文京区に住む母親は本誌にこう語った。
「野田市長の判断は素晴らしいと思う。3・8マイクロシーベルト/時の安全基準なんて、自分の子供には絶対に当てはめたくない。母親なら皆、思いは同じではないでしょうか」
 そもそも「低線量被曝なら人体に影響はない」という「安全デマ」を最初に流したのは、枝野幸男官房長官だった。福島第一原発から漏れた放射線の量を発表した後に、毎度、「ちなみにCTスキャン1回分の5分の1の量です」などとつけ加えていた。
 日本大学専任講師の野口邦和氏(放射線防護学)がこう批判する。
「医療被曝は専門知識を持った医師が、『被曝させて将来ガンになる確率が上がるデメリット』と、『目の前にある病気を治療するメリット』を天秤にかけ、メリットがデメリットを十分に上回ると判断して行われている。医療被曝と原発事故による被曝を比較することが、そもそもおかしいのです。なぜなら、事故による被曝はデメリットしかないからです。
 官房長官がああいうことを言ったため、患者が放射線を使用する検査を嫌がるケースも出て、医療現場に混乱が起きている。放射線防護学会のメーリングリストでは、『学会として抗議すべきではないか』という声が飛び交っています」
 その場しのぎの安全デマの集積により、もはや国民は政府の言うことを誰も信じなくなった。3・8マイクロシーベルト/時という被曝限度量を安心して受け入れる人はいない。

0・85まで上がった
 すると、次に浮かんでくるのは、「果たして自分の住んでいる場所は大丈夫か」という心配である。3・8マイクロシーベルト/時を超える場所など、福島第一原発周辺以外には存在しない。しかし、0・19マイクロシーベルト/時、さらに武田教授の提唱する0・11マイクロシーベルト/時を超える場所は、日本全国に点在している。
 武田教授は本誌前号で、「0・6マイクロシーベルト/時を超えたら避難を考えたほうがいい」とも指摘した。さすがに多くはないが、その基準を超えている場所も、実際に存在する。
 福島市内で小学生を育てる主婦(38歳)も電話で本誌にこう訴えた。
「できたら福島市内もきちんと調べてください。いま子供を持つ福島の主婦がいちばん欲しい物は、ガイガーカウンター(線量計)なんです。でもなかなか個人では手が出なくて。行政はアテにならないので、どなたかが調べてくださるのを待っています」
 こうした声も受け、本誌は前号に続いて放射線量の独自調査を行った。
 今回は、調査範囲を全国に拡げるとともに、各エリアをより細かく調べることに努めた。調査ポイントは全国1000ヵ所以上。これから2週にわたり、その結果を詳報していく。今号は前編として、500ヵ所の実測数値を表にしてすべて掲載した。そちらもご参照いただきたい。
 まずは前号で反響の大きかった千葉県流山市、柏市の高線量エリアを再検証する。県内の「東葛」と呼ばれる地域だ。
 流山市の総合運動公園内で、1・88マイクロシーベルト/時(以下、単位はすべて同じ)を計測したことは前号で報じた。安全基準の約10倍の線量だ(政府発表の基準値では2分の1、となるが)。
 今回はその場所からさらに足を延ばし、調査を進めた。市内の空間線量は常に0・3を超えている感覚で、かなり高い。前記の運動公園のように、放射性物質が集まるホットスポットとなればさらに数値が上がる。武田教授が提唱する避難基準「0・6」も簡単に超えてしまう。
 流山市には、大手ディベロッパーによる高層マンション建設など、劇的な開発が進んでいる場所がある。「流山おおたかの森駅」(つくばエクスプレス)の駅前だ。百貨店が入る複合ビルもあり、街全体がキレイに整備された印象がある。
 本誌記者が駅前広場に足を踏み入れると、平和な風景に似つかわしくない電子音が鳴り響いた。音の発信源は、記者がポケットに入れていた線量計だった。
 取り出して見ると、0・52。この線量計は数値が0・4前後に達すると画面に「HIGH(高い)」と表示され、警告音が鳴る。
 線量計を見つめる記者に気づき、幼児を連れた母親が不安そうに寄ってきて、
「放射能ですか?」
 と尋ねる。やはり敏感になっているのだ。
 線量計は約15秒に一度、計測値を更新する(本誌は一ヵ所につき5~10回計測し、その平均値を取るようにしている)。ピッピッと音をたてる線量計のモニターを二人で見つめる。
 0・39、0・44、0・52、0・47・・・。
 ほとんどが0・4を超える数値で、その度に画面の背景が黄色くなり、「HIGH」の文字が出る。
「・・・駅なのに、そんなに高いんですか。マンションを買ったばかりなのにショックです。何より、こんなに高いんだったら、子供を外で自由に遊ばせられませんね。主人に相談しても『気にするな』としか言ってくれなくて・・・」
 夫婦間の温度差—特に子供が小さい家庭で、これが問題になりつつある。働き盛りの男性は、自宅周辺の線量が多少高かったとしても、目をつぶって仕事を続ける。それは当たり前の態度かもしれない。
 しかし夫の出勤後、子供とともに家に残された妻には、言いようのない不安が襲ってくる。
 子供を外で遊ばせていいのだろうか、魚や野菜を食べさせていいのだろうか、水を飲ませていいのだろうか・・・。
 こういった母の不安を、まったく掬い上げられていないのが、政府のいい加減な対応なのである。
 流山おおたかの森駅前広場では、アスファルトの上1mで計測した空間線量は0・38。地表0mが0・63。さらに芝生に移動すると、空間線量が0・53、地表線量は0・85にまで上がった。いずれも、地表面は避難基準の0・6を超えている。
 もちろん、人間がその場所で寝ころんで一日過ごすわけではないので、その数値=いますぐ避難、という意味ではない。だが、「安全だ」と思い込んで暮らしていると、思わぬ健康被害を受ける恐れがあることは、間違いない。
 
柏市と野田市の逆転現象
 流山市の北側に接する自治体が、国の方針を拒否して独自基準を決めた、野田市である。福島第一原発から放射性物質が流れてきたとすれば、北側の野田市がより高値だと予測できる。
 野田市に入り調査を開始した。ここで予測は裏切られる。市内を移動しながら線量計の数値を見ると、平均値は明らかに流山市より低い。だいたい0・15から0・2の間か。野田市駅前ロータリーを調べた。
空間線量 0・15
 地表線量 0・24
 地表は少し高いが、空間線量は流山の約3分の1まで低下した。
 もう1ヵ所、ロータリー内の植え込みを調べた。
空間線量 0・18
 地表線量 0・22
 同じ水準だ。
 放射能汚染の拡がりが同心円でないことはすでに知られているが、野田市と流山市のように、福島から直線上にある2点の線量が逆転するという現象もある。
 つまり、野田市は通らずに、流山市だけに放射性物質が辿り着いたルートが存在するということだ。表を見てもらえばわかるが、福島からの「風の通り道」に位置する栃木県宇都宮市の線量も低い。
 なぜこういう逆転現象が起きるのか。いくつかの仮説があるが、それについては、次号で詳しく検証していきたい。
 野田市から柏市へ。また線量が0・3を超える。やはり千葉県では、この両市がホットスポットとなっている。柏の葉公園で調べた数値(表参照)は、やはり高い。激しい電子音が鳴り続けるため、公園内にいる人々が何事かとこちらを見る。この公園は、もはや長時間くつろげる場所ではなくなっているのに、市民はそれを知らない。一刻も早く、行政が腰を上げなければならない。
 では次に、東京都内を前号より詳しく見ていこう。表の数値を見ると、葛飾、足立、北、荒川、江戸川、江東、台東、文京の各区が比較的高い傾向にある。
 千葉の東葛地区に近い葛飾区や足立区、江戸川区、それらに隣接する北区や荒川区の線量が高いことは、予想ができる。しかし、文京区が高いことについては、識者たちもはっきりした見解を述べられていない。
 理由はどうあれ、高いのは事実であり、文京区に住む母親たちの焦燥感は募っている。有名校が多く、子供の教育に熱心な文教地区だからなおさらだ。
 6月19日には、「放射能から子どもを守る文京ネットワーク」の第1回会合が開かれ、30名ほどの母親たちが参加した。参加者の一人がこう明かす。
「うちの子供は区立保育園に通っていますが、園長先生はまったく私たちの不安に耳を傾けてくれない。『区役所の方針に従ってやっています』と繰り返すばかりで、区役所にきくと『国や東京都の方針に従っている』と言う。全体として保守的で、私たちとの意識の差が大き過ぎるんです」
 同ネットワークは署名を集め、7月には区役所に提出する予定だ。
 母親たちはインターネットで情報交換をすることが多いが、彼女らがいてもたってもいられなくなったのは、ネット上でこんな情報が流れたからだ。
「文京区の道端で、2・39を計測」
 証拠として線量計の写真も添付してある。千代田線千駄木駅近く、急な坂を下りきった場所だという。
 2・39とは尋常ではない数値だ。本誌がこれまで測った中でも、最高値は流山の2・12だった。本誌が周辺を測ったところ、そこまで高水準の値は出てこなかった。しかし一度は計測されている以上、とんでもなく線量が高いホットスポットが潜んでいる可能性は否定できない。
 署名活動によって区役所の対応は変わるのか。文京区の母親たちの不安な日々は続く。
 
事故がなくても漏れている
 次に本誌が着目したのは「原発周辺地域」の線量である。今回、次々に明らかになった国と電力会社のウソ。その最大のものが「原発はクリーン」だった。ひとたび事故を起こすとあれほどの放射性物質を垂れ流す原発が、平時にはクリーンということがあるのか。
 まずは静岡県御前崎市の浜岡原発に向かった。途中、横浜や逗子、熱海などで線量を測ったが目立った数値はなかった(表を参照)。静岡、菊川も異常なし。原発のお膝元、御前崎市役所に着いた。線量は0・17と低い。原発周辺も、高くても0・2前後だった。
 原発から約3km離れた民家の庭を測った。
 空間線量 0・18
 地表線量 0・15
 そこに住む住民が語る。
「この数値が高いのか低いのか、正直よくわからない。福島から放射性物質が飛んできているという話もきくけど、それ以上に(浜岡原発の方向を指さし)あそこから漏れていないかが心配です。停止したってことは何か問題があったんじゃないのか。どれだけ安全と言われても信用できないし、いまはとにかく大地震が来ないことを祈るだけです」
 浜岡原発では、周辺地域との有意な差は見受けられなかった。
 しかし、表をよく見てほしい。福井県の原発銀座、島根県の島根原発、佐賀県の玄海原発では、いずれも少し高い値を示していることがわかるだろう。
「当然のことです」と語るのは、元京都大学原子炉実験所講師の小林圭二氏だ。
「端的に言うと、原発はたとえ事故がなくても、放射性物質を完全に外に出さないようにするのは不可能なんです。微量の放射能は日常的に出ています。原発には必ず高い煙突がありますが、あれは基本的に、煙ではなく放射性物質を出すためのものです」
 
やはり高かった東海村
 停止している浜岡が低かった事実も、小林氏の証言を裏づけているのか。同氏が続ける。
「日常的といっても、ずっと出ているわけではなく、バッチ式といって、ある程度溜まったら放出するということを繰り返しているのです。煙突を高くしているのも理由がある。低いと近隣の住民を直撃してしまうが、高いところから出すことで、地上に到達するまでに拡がって薄まるという考え方です」
 ここでも出てきた「拡散して薄まる」という論理。汚染水を海に垂れ流す時もそうだった。水俣病の時代から、国や国策企業の発想は変わっていない。毒物は薄く広く流す。今回、本誌が計測した値は、この国のそんな薄ら寒い正体を物語っている。
 もちろん、少し高いとはいえ、この程度の数値では住民の苦情に自治体が対応することはないだろう。
 しかし、原発でもここだけは別だった。茨城県の東海村である。
 東海村といえば、'99年に起きたJCO臨界事故で作業員2名が死亡したことが記憶に刻まれている。その時に公開された被曝者の無惨な映像が、我々のもつ放射能への恐怖の具体的なイメージを形成している。
 敷地入り口近くの公道に警備員が二人立っている。周囲には「立ち入ることを禁ず」の看板多数。公道から手を伸ばし、入り口付近を計測すると、いきなり線量計がけたたましいアラームを発した。
 0・80---。
「DANGEROUS(危険)」という赤い文字とともに、信じられないほど高い数値が表示された。平均すると0・70。原発施設の他の場所も比較的高かったが、この入り口付近の数値だけは異常だ。余計なお世話かもしれないが、そこに防護服も着ず立ち続けている警備員たちの健康被害が心配になる。
 近隣住民はこう語る。
「うーん、思ったより高いね。でも、こんなに近いんだから、気にしてたら生活はできない。もちろん事故は心配だけど、それも覚悟しているよ」
 今回の高線量と'99年の臨界事故に因果関係があるのか、手持ちの機器ではそこまで判別できなかった。だが、半減期が10年を超える放射性物質はざらにある。その可能性も否定はできないだろう。
 続いて本誌は、東海道線を下って愛知に入った。豊橋市、岡崎市、安城市、数値は安定しているようだ。トヨタ自動車のお膝元、豊田市に入る。空間線量は0・1台半ばと低い。記者が線量を測っていても、東京や千葉と違って気にとめる人はいない。危機感が薄いのだろう。
 しかし、名古屋市に入ると、少し数値が上がったように感じる。名古屋駅新幹線ホームが0・17。ナゴヤドーム前は0・19。中部電力本店前が0・21だった。
 名古屋を抜けて岐阜へ。恵那市に入ってアスファルトの路面を計測すると、最高値で0・39を計測し、名古屋エリアで初めて「HIGH」が表示された。
 続いて大阪に入る。全体的に、静岡や横浜と比べると少し高い印象を持つ。
 大阪城公園の天守閣前広場では、中国人観光客が集まっていた。観光ガイドが機関銃のような早口で中国語を叫んでいるが、その間隙をつくように線量計が音をたてた。
 数値は0・32。これは最高値で、平均するともう少し下がるが、高い水準であることに変わりはない。東京を敬遠した観光客が大阪に流れているが、大阪とて汚染と無縁ではない。

梅田のビル街で0・34を計測
 外部被曝の場合、除染といって、水で洗い流すだけでも数値を下げることができる。逆に、空気や水が滞留するところは、放射性物質も溜まって線量が高くなる傾向がある。
 大阪のある街でゴミの山のなかに線量計を突っ込んでみた。数値がみるみる上がっていき、最高で0・35を記録した。
 このゴミはおそらく、原発事故当時からずっと放置されてきたのだろう。大阪府内の他の場所より明らかに高いということは、やはり空気が滞留する場所は危険なのだ。
 次に訪れたのは、大阪のシンボルタワー・通天閣がそびえる新世界。空間線量はそれほどでもないが、裏路地にひしめく民家の雨どいを測定すると、最高で0・32を計測した。
 環境NGOグリーンピースの核・原子力問題担当部長のヤン・ベラネク氏は本誌にこう語っていた。
「汚染度が高いのは盛り土や枯れ葉の山、道路脇の草むらや側溝などです。そしてもっとも危険なのが雨どいの下。それが溝などにつながっていればいいが、地面に垂れ流しになっていると要注意です」
 やはり大阪でも、こうした場所は高い傾向がある。梅田のビル街で調査をしていた時のことだ。大阪駅北側にあるヨドバシカメラ前の空間線量は0・17程度だったのに、横断歩道を渡った向いのビル下の植え込みでは、0・34という数値が計測されている。
 このようなミニホットスポットは、福島から700km離れた大阪にも点在しているのである。橋下徹府知事が府庁移転を目論む大阪南港でも、0・2を超える数値が計測された。
 それにしても、千葉や東京東部の線量がおしなべて高いことは、福島第一原発からの距離を考えても理解はできる。しかし、名古屋や大阪の水準が静岡より高いのはなぜだろうか。
 近畿大学理工学部の山崎秀夫教授(環境解析学)がこう解説する。
「日本の場合、地面からくる自然線量は標準で0・03~0・05だと言われています。外国に比べて低いのは、土壌に含まれるウランやトリウムなどの天然放射性元素の量が比較的少ないからです。
 ウランは火成岩である花崗岩のほうが濃度が高く、堆積岩のほうが低い。ですから火山灰と堆積岩でできている関東平野より、生駒山や六甲山など花崗岩でできた山のある大阪のほうが線量が高いんです。糸魚川から静岡に抜ける中央地溝帯の西と東では、岩石の構造がずいぶん違う。その境目より西が、東より少し高いと一般的には言われています。岐阜なども、ウランなどを豊富に含む花崗岩が多いので線量がやや高い傾向があります」
 岐阜の恵那市は有名な花崗岩の産地だ。先ほど線量が高かったことも、これで説明がつく。
 
スーパーホットスポット
 もちろん、名古屋・大阪も福島第一原発から出た放射性物質の影響を受けないわけではない。佐賀の唐津市でセシウムが検出されたことからも、それは証明されている。
 ただ、山崎教授の言うように、西日本はもともと東京より線量が高いという事情がある。放射線量の高低については、そうした環境要因も含めて考慮する必要があるようだ。
 避難区域を除く東北被災地の線量はどうか。本誌は今回、三陸海岸沿いを走る国道45号線を北上し、宮城県石巻市から岩手県宮古市を調査した。震災直後は壊滅的な打撃を受けたこの道も、今は災害派遣の車両や仮設住宅、瓦礫などの運搬車両で混雑している。
 表を見てもらえばわかるが、宮城県の女川原発周辺で高くなり、気仙沼にホットスポットが見受けられるが、他は比較的低く安定している。陸前高田市で避難生活を送る男性が言う。
「線量が低いってきいて安心したよ。目の前のことが大変だからあんまり話題にはならないけど、ウチのカミサンなんかも本当は心配してんだ。国の言うことは信用できないから、こうやって調べてもらえるのはありがたいよ」
 だがやはり、本誌がかねて指摘しているように、福島市内と郡山市内の数値は高い。福島市には地表線量7・74というスーパーホットスポットも存在した。
 そして今回、新たに判明したのが、両市に挟まれる位置にある二本松市の予想以上の高さだ。地表線量が3を超える場所がある。同市に住む60代女性が困惑を隠さずに言う。
「やはり高いですか。二本松は当初避難民を受け入れていたせいで、線量が高いっていうイメージがないんです。しかも、福島市は少しずつ下がっているようだけど、二本松は全然下がらないから、いまとなっては福島市内より高い場所もある。すでに避難してしまった人もいるし、私も犬を抱っこして散歩している。犬を抱っこしてる人、二本松にはたくさんいますよ」
 二本松の現状を見ても、福島第一原発からは、いまも放射性物質が漏れ続けている疑いがある。日一日、刻一刻と、放射能汚染地域は変化し、しかも拡がり続けている。
 これからはなおさら、全国各地の放射線量をきちんと調べ、それを住民に周知していく必要が出てくるだろう。だが繰り返すが、政府はアテにならない。
 本誌は次号も引き続き、全国の放射能汚染、特に高線量地域を中心に、その実態をレポートしていく。
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本誌が独自調査 日本全国隠された「放射能汚染」地域 全国民必携これが本当の数値だ 2011年06月27日(月)週刊現代

国の原発再稼働要請⇒合格と決まっているストレステスト⇒玄海原発:町長が再稼働了承を撤回

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玄海原発:町長が再稼働了承を撤回
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働問題で、今月4日に運転再開を了承した同町の岸本英雄町長は7日午前、町役場で臨時会見を開き、了承撤回を表明した。6日に国が全原発を対象にストレステスト(耐性試験)を実施すると発表し、玄海原発の運転再開先送りが確実になったことと、九電の「やらせメール」問題が発覚したためで、岸本町長は「作業をやり直したい」と語った。
 6月26日にケーブルテレビなどで放送された国の説明番組で、再開を支持するメールを子会社などに送るよう九電が依頼した「やらせメール」問題。岸本町長は「原発事故を起こさないようヒューマンエラー防止を求めていたが、正にそこに触れる問題」などと述べ、了承撤回理由の一つになったことを強調した。
 また、ストレステストについては「菅直人首相からストレステストを再開の前提とするとの発表があったから」と語った。
 午前11時から開く町議会で撤回について同意を求め、午後にも九電に伝える。
 岸本町長は今月4日、九電の眞部(まなべ)利應(としお)社長に運転再開了承を伝え、同原発2、3号機が福島原発事故後、全国初の再稼働となる可能性が高まっていた。【原田哲郎】毎日新聞 2011年7月7日 11時36分(最終更新 7月7日 12時06分)
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〈来栖の独白〉
 国も町も、なんといい加減な安全認識であることだろう。「メール」程度で原発稼働の成否が左右される。お話にならない。海江田氏は「国が責任を持つ」と云ったが、原発(放射性)は人類が責任をとれることがらではない。発生した高レベル放射性廃棄物の処理にしても、人類の支配可能な「時間」を遥かに超えている。責任をとれる事態など、一つもないのだ。ましてや臨終に至っている政権ではないか。どうやって責任をとるというのか。実に実に無責任政権だ。
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未来図を国民に示せ 国の原発再稼働要請
中日新聞【社説】2011年6月21日
 現在停止中の原発について、菅直人首相が「安全対策が適切に整ったので、再稼働すべし」という方針を明らかにした。脱原発は、本気でしょうか。
 「ありえない」。福島から、原発周辺の住民から、そして多くの自治体の長からも、驚きの声が相次いだ。
 福島第一原発の建屋は無残に吹き飛び、骨組みもあらわな惨状をさらしている。
 被災直後に炉心溶融を起こした原子炉は高熱と放射性物質を出し続け、冷却のための放水は果てしなく続いている。大量に出る高濃度汚染水の捨て場はない。
 福島は遠くかすんで
 何よりまだ現場では、幾多の現場作業員が、劣悪な条件や健康不安と闘いながら、事態収拾に努めている最中だ。避難区域の住民が、わが家へ帰るすべもない。
 現状打開の期待がかかる米国製の高濃度汚染水浄化装置は、大量の油や汚泥を受け止めきれず、わずか五時間でダウンした。東京電力の説明は、相変わらずの「想定外」だ。
 国中が福島の惨状に心を痛め、当局の言葉や技術に不信を感じつつ、不安の中で推移を見守っているといっていい。そのさなかの唐突な安全・再稼働宣言である。
 国内五十四基の商業原発中三十五基が、定期検査などのため運転を休んでいる。再開への扉は、原子力安全・保安院が電力事業者に指示したわずか五項目の指示と立ち入り検査で開かれた。非常用電源の確保など、当面の津波対策がなされるめどがついたという程度のことだ。中長期的な安全対策には目をつむり、電力不足を懸念する一部産業界の求めに応じ、原子力安全委員会による安全、耐震指針見直しの議論も待たず、夏前の再開を急いだ感は否めない。
 “政争の具”にするな
 これまでにも保安院は、安全検査の時間短縮を容認したり、老朽化した原発の耐用年数を大幅に延ばしたり、安全軽視の姿勢が目についた。このような態度が、次の過酷事故(シビアアクシデント)につながらないかと、国民は不安を覚えている。
 そもそも、原発推進機関の経済産業省と、原発を監視する立場にある原子力安全・保安院を分離するという方針は、どこへ行ってしまったのだろうか。
 本社加盟の世論調査では、原発について「電力需給に応じて廃炉を進める」など、廃炉推進の声が八割以上を占めている。
 物理学者でもあるドイツのメルケル首相は「福島の光景が目について離れない」と、政府として脱原発に踏み切った。永田町から原発がある地方への距離は欧州からよりも遠く、国民との間に横たわる溝はあまりに深い。 関係する道府県の知事たちが、「再開のさの字も出る状況ではない」(川勝平太・静岡県知事)などと、驚き、あきれ、詳しい説明を求めるのは当然だ。
 さらなる驚きは、菅首相が経産相の発言を早々と支持したことだ。これで脱原発に取り組む首相の決意が見えなくなった。
 首相は五月上旬、自ら記者会見し、中部電力浜岡原発について、近い将来極めて高い確率で発生が予想される東海大地震への備えが不十分として、全面停止を要請した。その後も原発重視をうたう現行のエネルギー基本計画を「白紙に戻して議論する必要がある」と語った。
 二〇二〇年代の早い時期に自然エネルギーの占める割合を20%に引き上げると国際社会に表明するなど、脱原発に大きくかじを切ったかに見えた。
 しかし、形ばかりの検査で原発再稼働を認めるようでは、首相の“本気”を疑わざるをえない。
 それどころか、首相は消費税増税や脱小沢のように、脱原発を政権延命の道具にしようとしているのではないか。浜岡停止後の世論調査で首相の評価は上がり、退陣を求める意見は減った。
 自民党内には、首相が脱原発を争点に衆院解散・総選挙に打って出るのではないかとの臆測も広がっている。だが、国民が求めているのは、日本の未来を支える具体的なエネルギー像だ。それがないと国民的議論はなしえない。このような大事なことを政争の具にすることは許されない。
 電力不足はどれほど
 菅政権がいつまで続くにしても、今政府がなすべきは、この夏、原発を再稼働させないと、どの地域でどれだけ電力が不足して、産業や生活が具体的にどのような影響を受けるのか、可能な限り詳しく国民に説明することだ。そして、目前で進行する福島の危機から目をそらさずに、脱原発への道筋を示しつつ、再生可能エネルギー中心の街と暮らしの未来図を描いて見せるべきである。
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ストレステスト 「再稼働」優先が過ぎる
中日新聞【社説】2011年7月7日
 テストします、結果は合格と決まっています。海江田万里経済産業相が打ち出した原発のストレステストとは、そんな話ではないか。付け焼き刃の政策続きでは、不安を膨らませかねない。
 ストレステスト(耐性試験)では、全原発を対象に、最悪の災害などにも耐えられるかどうかを考査する。
 欧州連合(EU)は福島第一原発被災直後にその必要性を表明し、域内すべての原発を対象に、六月から始めた。地震や津波、航空機事故などに対し、核燃料の格納容器や冷却機能がどれだけ持ちこたえられるかを確かめる。中間報告までに約三カ月かけるという。EUは閣僚級会合で、ストレステストは安全性確保の「第一歩」と位置付けた。
 ところがである。当の日本政府は、定期検査で停止中の九州電力玄海原発運転再開への動きに合わせたように、それを持ち出した。
 その上、経産省は、検査の結果は再稼働の条件にはならないとの見解を示している。菅直人首相も、きのう国会で再稼働との関連を追及されると、あいまいな答弁に終始してしまった。これでは何のためのテストか分からない。合格を決めた受験生に、形ばかりの入試を受けさせるようなものではないか。まさに本末転倒だ。
 テストの方法や項目などは、その経産省の機関である原子力安全・保安院などが決めるという。原発の安全性を高めるためには、経産省から切り離すべきだと指摘されている機関である。こんな試験をだれが信用できよう。
 震災後に各電力会社に必要とされた緊急対策も、計画段階にあるものや、完了までに数年かかるものも少なくない。テストをするというのなら、たとえば第三者の専門家集団が一から見直したテスト基準をつくり、“合格”したものから再稼働を審査するというのが、正しい順序でないか。
 玄海原発の地元、玄海町や佐賀県は再開容認へ動きだしていた。しかし、隣県の長崎や周辺自治体の首長、住民には、拙速な再稼働を不安視する声が強まっている。ストレステストは、こうした不安や疑問を真摯(しんし)に受け止め、それらを解消するために実施されるべきである。
 そもそも方針のあいまいさが問題だ。国民の不安と疑問の根底には、政府が、自然エネルギーの普及や発送電の分離といったエネルギー政策の未来図を、いつまでたっても示せないことがある。
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高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
文明転換へ覚悟と気概 週のはじめに考える
中日新聞【社説】2011年5月8日
 東日本の巨大地震からまもなく二カ月。連日の余震となお遠い復興への道のり。私たちが問われているのは、文明転換への覚悟と気概のようです。
 なかば義務感にかられて、北欧フィンランドに建設中の放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」を見に出かけました。
 多くの国際賞受賞のこの記録映画の配給元は「アップリンク」。今秋公開の予定でしたが、四月、東京・渋谷の自社劇場で上映したところ連日の行列と満席、全国各地の五十館以上での上映へと広がっていったそうです。前例のない反響、福島第一原発事故で国民が原発問題に真正面から向き合うようになったことがわかります。
 高レベル放射性廃棄物は世界に二十五万トン、危険性が消えるまでには十万年。「オンカロ」はフィンランド語で隠し場所を意味します。廃棄物を凍土奥深くの岩盤に埋め込む世界初の試みです。管理可能か、明快な回答を持ち合わせる専門家はいませんでした。
*人間支配が及ばない
 日本列島が現在の形になったのは一万年前、人類が文明をもったのはたかだか五、六千年前です。十万年は人間のリアルな思考や言葉が及ぶ時空域ではありません。人間が制御できないという絶望感。静かな画面は、人類が手にしてしまった原発の恐怖と不気味さを伝えていました。
 続いて、菅直人首相が浜岡原発の全炉停止を要請しました。法的手続きではない政治判断でした。
 東京から百八十キロ、名古屋から百三十キロ。東海地震想定域の真上の浜岡原発は「世界で最も危険な原発」と呼ばれてきました。事故の場合の被害は福島原発の比ではなく、首都圏の一千万人の避難や首都喪失も想定されました。
*やむをえぬ浜岡の停止
 マグニチュード9・0の巨大地震は、日本列島を東西に数メートル引き伸ばし、首都直下型や東海、東南海・南海地震誘発が憂慮されます。浜岡原発停止はやむをえぬ判断でしょう。全原発に及ぼすべきかどうか、そこが問題です。
 浜岡を含め日本の原発は五十四基、電力の30%を占めるようになっています。すでに原油枯渇の兆候があり、太陽光や風力のクリーンエネルギーへ転換させるにしろ、先行きはなお不透明です。電力の安定供給のためには原発は不可欠という状況です。
 原発停止による生活レベルの一九七〇年代への後退は許容できるにしても、グローバル競争の落後者になる恐怖に打ち勝てるかどうか。私たちは無限の成長を前提にした近代世界の住人。文明転換の勇気をもてるかどうかです。
 地質学の石橋克彦神戸大名誉教授は、地震と原発が複合する破局的災害・「原発震災」の概念や言葉を提唱、浜岡原発の廃炉を訴えるなど警告を発してきました。
 「世界」や「中央公論」の誌上には「日本列島全域が今世紀半ばごろまで大地震活動期」「原発は完成された技術ではない」「人間の地震に関する理解は不十分」「地震列島に五十基以上の大型原子炉を林立させることは暴挙」とも書いています。警告通り、福島原発の大損傷が発生してしまいました。
 「原発震災」は人間存在への問いかけだったのでしょう。教授が提言したように原発総点検、リスクが高い順の段階的閉鎖・縮小が現実路線のように映ります。世界観を変えるには覚悟と決意、気概がいります。
 日本を代表する東北の農漁業。その被害も甚大でした。食料問題も原発に劣らない不安で重大な問題。世界の食料品価格が高騰、二〇〇八年のリーマン・ショック時を上回っているからです。
 食料価格高騰は投機と「将来の供給不足懸念」が要因とされるだけに深刻です。コメと野菜こそ90%台と80%台の自給率を保っているものの、小麦は10%台、大豆やトウモロコシはほとんど輸入しています。命にかかわる問題です。農業の復興と立て直し、食料の自給は急務です。
*新しい幸せと充実が
 失われたコミュニティーの復元や修復も大切なテーマ。震災は、私たちがそれぞれが独立しながらも、結局は支え合い、助け合って生きていくものだ、ということをあらためて気づかせてくれました。それは、ボランティアに向かう若者の行動にも表れました。
 極限状況にあっても、人間はなお優しさや思いやり、勇気や忍耐を示す存在でした。献身や自己犠牲も。それは私たちの未来へ向けての大きな希望でした。
 経済的繁栄や快適な生活とは別次元の幸せと充実。それが追い求める内容かもしれません。私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。 *背景色着色は来栖
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「オンカロ」地下500? 核のごみ隠す/原発から出た放射性廃棄物を、無害になるとされる10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発


高木仁三郎という希望

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「高木仁三郎という希望」中里英章
2011/6/22 中日新聞夕刊
"市民科学"思想の温かさ
 3・11の原発震災後、高木仁三郎さんの著書を新装版として出版しました。『チェルノブイリ原発事故』『食卓にあがった放射能』『反原発、出前します』の三冊ですが、20年も前に出版されたとは思うないほど、みずみずしい文章が語りかけてくるのに驚かされました。
 高木さんとであったのは1969年のことです。この年、大学闘争が盛んで国立大学2校で入試がなかったので、東京都立大学の化学科に進んだのですが、そこへ高木さんが新任の助教授として赴任してきたのです。31歳の気鋭の科学者でした。師と呼ぶには若く、兄貴のようでした。当時の教官と学生は、一緒にデモもすれば集会にも参加し、議論は対等(のつもり)にやっていました。
 1971年3月のある夜、高木さんの家へ向かうバスの座席に二人並んで座っていました。この頃、成田空港建設のための第1次強制執行が行われていて、連日たくさんの逮捕者を出していました。私は三里塚現地の闘争に参加するのを躊躇していましたが、時期が煮詰まってきたので、高木さんの研究室で相談しました。そして、「三里塚へ行きます。逮捕は覚悟です」と、やっとのことで言いました。すると「もう少し話さないか。今夜、家にお出でよ」といってくれたのです。
 「逮捕なんか覚悟すると、だいたい逮捕されるんだよね」。さすがに兄貴のいうことには、説得力があります。「でもね、自分が楽になる方を選んじゃいけないね。苦しくなる方へ進むと道がひらけるんじゃないかな」。ほかに何を話したかよく覚えていませんが、夜道を走るバスの中の会話は鮮明に記憶に残っています。その言葉通り、高木さんは、72年に三里塚の岩山大鉄塔ができた後、ドイツのマックス・プランク核物理研究所へ留学。帰国後、都立大学を辞したのです。そして、原子力資料情報室の世話人となり、原子力推進を根源的に批判し、「平和で持続的な未来」を展望する“市民科学”という思想に至りました。その思想を伝えるのが原子力資料情報室のほか、高木学校と高木仁三郎市民科学基金です。
 1987年に『あきらめから希望へ』(花崎皋平との対論)を出版しました。社会は重苦しい雰囲気に包まれていました。未曾有の大災害となったチェルノブイリ原発事故から一年を経ていましたが、ヨーロッパやウクライナの悲惨な被害の実態が次々に報じられていたからです。日本でも、ジェット気流にのって飛んできた放射能で食品が汚染されるなど、原発を推進する側にも反対する側にもやりきれない気持ちがただよっていました。日比谷公園に二万人もの人々が集まった脱原発大集会は翌年です。
 そうした状況のなかで、市民からの問い合わせや事故の原因究明に忙殺されながら、高木さんは次のような発言をしています。原発技術者や体制内に蔓延する「組織されたあきらめ」を批判したあとに、「私は、あきらめに対置して『希望をこそ組織しよう』と言いたい。かのパンドラの箱にひとつだけ残っていたのは希望で、ギリシャ神話によれば、それこそが私たちを生かし続けて来たものだった。かの技術者は『甘い』というだろう。だが、『冷めたあきらめ』より『甘い希望』を選ぶしかあるまい」(「朝日新聞」1987年4月23日)。
 2000年10月8日、道半ばでガンで倒れたのは残念なことでした。高木仁三郎について語るとき、透明なあたたかさを感じるのは希望を抱くからではないでしょうか。
 (なかざと・ひであき=編集者、七つ森書館代表)

石川知裕:最後に特捜部にエールを送って、この事件を終わりにしたい「陸山会事件」

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石川知裕:最後に特捜部にエールを送って、この事件を終わりにしたい
《THE JOURNAL》編集部 日時: 2011年7月 7日 12:06
 東京地裁は6月30日、陸山会事件で検察から証拠請求されていた調書を大量に不採用にした。調書が不採用となったことで検察側の立証が困難になるのは必至で、判決にも大きな影響を与えることは確実だ。調書の不採用を受け、被告人の一人である石川知裕議員に話を聞いた。
※インタビューの最後に、7月7日に発売された石川知裕議員の新著『悪党 ── 小沢一郎に仕えて』の紹介コメントも掲載しています。

──東京地裁は6月30日に陸山会裁判で石川議員ら3人の被告の調書を却下しました
 裁判官は公正中立な立場で判断をされるわけですが、決定を聞いてうれしかったです。
──調書はどの程度の数が不採用になったのでしょうか
 大久保、池田、石川の3人で38通の調書があり、私の調書については15通のうち10通が完全に不採用、残り5通が一部不採用となりました。
 やはり大きかったのは、聴取を録音をしていたことによって水掛け論にならなかったとです。この点に関しては、録音をすすめていただいた佐藤優さんに非常に感謝しています。また、取り調べの可視化にも一つの前進になり、特捜部の手法そのものも今後問われてくるのではないかと思います。
──被告の主張によって、これほど大量の調書が不採用になったのは異例ですね
 東京地検特捜部が証拠請求をした調書が、これだけの数で不採用になるのは例がないと聞いています。いままでは検面調書の特信性が絶対的な信頼を裁判所に与えていたわけですけが、近年の特捜部の手法が裁判所に不信感を与えたのではないでしょうか。
 私は、検事ひとりひとりが不正を行っているわけではないし、立派な方々だと思います。正義感に燃えて、国家にのために巨悪をのさばらせないために働いているのだと思う。私自身も、検察官個人に対して恨みはありません。しかし、組織体として動くと、特捜部長をはじめ配属された検事が、特捜部に在籍している約2年間で「何か成果を出さなければ」となる体質に問題がある。佐藤優さんはこれを「集合的無意識」と話していましたが、全体の意思として動いてきたことを変えなければいけない。そのきっかけとなる調書不採用だったのではないでしょうか。
──裁判を振り返ると、検察側の主張は、経理作業も含めて「完全無欠の小沢秘書軍団」をアピールして、一方で3人の元秘書が法廷で語る小沢議員の秘書の実務の実態がかなりかけ離れていたように感じました
 そのとおりですね。私の発言でも、当時の経理作業について「合理的に説明できない」という言葉が広がっていましたが、あの発言は、「その時その時に処理しようとしてきたことを、後から一本の線で理屈につけて説明するのは難しい」という意味で、やった行動のすべてが不合理だという意味ではないんですよ。秘書時代は、3月31日に政治資金収支報告書を提出する前にバタバタとやらないといけないぐらい経理以外の仕事が忙しかったですし、それが当たり前だと思っていました。
 だから、問題はこの後です。名ばかり会計責任者をどうするのか。大久保さんは何も知らなくて、私や池田がハンコを借りて、会計責任者として押印していた。では、私や池田が特殊な事例かというと、少なからぬ事務所ではそういったことが行われていたはずで、それは改めるべきだと思います。ですので、いまの私の事務所では、ちゃんと公認会計士を入れて、監査をやるようにしました。将来的には、監査法人のチェックを受けるように法制化する必要があるかもしれません。
 一方で、私自身の調書が大量に不採用になったことで、これからまた特捜部の闘いになるのではないかと感じています。これは心の根の部分にあります。
──特捜部との闘いになるとはどういうことでしょうか
 特捜部としては名誉を傷つけられたわけです。「石川が政治家をやり続けるかぎりはやってやる」という、そこはかとない恐怖があります。
──判決で仮に有罪となった場合、公民権停止で失職となる可能性もありますが
 政治家にとって、やはりそれは気になるところです。ただ、まだ若いですし、これまでが順調な人生だったのかもしれませんし、頑張るしかないと思います。それも運命です。しかし、調書がこれほど不採用になるということは、この裁判が時代の真ん中にある裁判だったことは確かだと思います。
──メディアについてはどのように感じていますか
 私は、今回の調書不採用によって、記者の情報の取り方について一石を投じたと思います。リークというのはスクープなんですが、これは最高裁でも認められている権利です。ただ、検事と私しか知らないはずの調書が、次の日に新聞に載っている。それでは公務員の守秘義務はどうなってるのかと。こういうリークが報道されることによって、あたかも事実であるかのように定着してしまう。これは大手マスコミが考えないといけないひとつのきっかけになると思います。
──これからの検察のあり方についてどう考えていますか
 土地の取得時期を翌年にずらしたということで、収支報告書の記載について疑われるところがあったことは確かです。ただ、特捜部がこれだけの人員を使って、これだけの長期間の捜査をする事件だったのかはよく考えてもらいたい。もし、判決で我々が無罪ということになれば、おそらく検察は控訴してくるでしょう。しかし、特捜部には落ち着いて考えてもらいたい。我々もそこまでの事件だったのかと思いますし、特捜部にも「お互い冷静になって考えましょう」ということを言いたい。
 私は、特捜部に対しては「本当の巨悪を捕まえてくれ」というエールを送って、この裁判を終わりにしたいと思っています。(構成:《THE JOURNAL》編集部 西岡千史)
▽   ▽   ▽
■石川知裕氏 新刊『悪党 ── 小沢一郎に仕えて』
(石川議員からのコメント)
 小沢一郎さんに関連する本は国会図書館で調べると100冊ぐらいありますが、きわめて肉声が少ないんです。この本では、小沢さんの肉声と行動原理を書きましたので、他の小沢本にはない特徴があると思います。
 5月30日に小沢さんと行った対談も収録してますので、内閣不信任案のことについても触れています。新聞にも出てますけど、民主党は経験を積まずに偉くなった人ばかりだと語っていて、こういう危機のときにはどういう判断をとらなければいけないのかという話をしています。
 そのほか、小沢さんのものぐさなところや、もう少しいろんな人に電話をかけたりすればクリアできた問題もあったのではという思いを、内側の目線から書いています。
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「陸山会事件」東京地裁 検察のデッチ上げ調書を証拠採用せず/小沢強制起訴の根幹崩れる2011-07-06 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

新日本原発紀行 宮城・女川 町の歳入は今も、電源交付金や固定資産税など原発関連で5割近くを占める

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住民不在 再開へ動き
<新日本 原発 紀行> 宮城・女川
2011年6月23日Thu.中日新聞【特報】
 大震災の津波では、東京電力福島第1原発だけでなく、東北電力の女川原発(宮城県女川町、石巻市)も浸水などの被害を受けた。地元の町や集落も壊滅状態だ。辛うじて深刻な事故を免れ、自動停止した女川原発。福島とは明暗を分けたが、被災住民は目の前の生活再建で頭がいっぱいの中、早くも運転再開の動きが出ている。(小国智宏)

*被災後、運転一時綱渡り
 宮城県の牡鹿半島。その名の通り、時折、野生のシカの姿をみかける自然豊かな景勝地だ。その沿岸に女川原発はある。
 沿岸の集落も津波に根こそぎやられ、数か所の集落は「消滅」していた。高台に残った神社で手を合わせていた公務員の男性(60)は「家はほとんど壊れ、1部残った2階の部屋で生活している。水も電気もまだない」と下を向いた。「この年で、こんな目に遭うとは。原発のことまで考える余裕はないよ」
 あの日、女川原発も巨大な津波に襲われた。福島第1原発のような深刻な事故には至っておらず、東北電力は「安全性確保の仕組みが有効に機能し、安全に停止することができた」とする。だが、それは幸運にすぎないだけだったのかもしれない。
 1号機えは、高圧電源盤の装置が地震の揺れでショートするなどして火災が発生。2台ある非常用ディーゼル発電機のうち、1台が使用できない状態になった。
 2号機は1号機に比べ海岸寄りに立つ。定期検査を終え起動していたが原子炉建屋の熱交換器室が浸水した。そのため、ここでも2台ある非常用ディーゼル発電機のうち1台が動かなかった。
 熱交換器室は建屋付属棟にあり、掘り下げて造られた施設の水の高さが一時、約2・5?に達した。水は海につながる配管・ケーブル通路から入ってきた。
 屋外の海岸沿いにあった重油貯蔵用タンクは津波で倒壊。1〜3号機の使用済み燃料貯蔵プールの水が地震の揺れによって、あふれた。こうした被害はあったが、送電線からの電気(外部電源)は流れていたため、「事故」にはならなかった。
 女川原発を襲った津波は高さ13?。安全審査指針で想定していた津波は最大でも9・1?でしかなかった。被害が少なくて済んだのは、主要な施設が標高14・8?の高さにあったからとみられる。
 非常用発電機の修理が終わらないうちに、今度は4月7日の大きな余震に見舞われた。外部電源5回線のうち1回線は点検中で、3回線が途絶した。残ったのは1回線と一時は綱渡りの運転を強いられることになった。
 津波の被害は、原発周辺で放射線量を常時測定するモニタリングステーションにも及んだ。敷地外11か所のうち、4か所が破壊され、2か所で測定不能になった。
 原発から約8?離れた女川町の中心地近くの緊急時対策拠点「県原子力防災対策センター(オフサイトセンター)」と、隣接の放射線を監視する「県原子力センター」も壊滅した。海岸から約4百?離れていたが、津波にのみ込まれ、職員2人が死亡、原子力保安検査官事務所の所長ら3人は行方不明のままだ。
 オフサイトセンターの機能は仙台市に移され、原子力安全・保安院の保安検査官2人が女川原発に常駐している。

*壊滅、生活で手いっぱい
 地元の首長は「安全対策をした上で、国の指導も受け」(安住宣孝女川町長)、「安全を確保した上でなら」(亀山紘石巻市長)と運転再開に前向きな発言をする。宮城県の村井嘉浩知事は「国が新たな安全の基準を提示するまでは容認できない」との立場だ。
 東北電力は震災後、防潮堤を築いたり、大容量の電源装置3台を設置するなどの安全対策を発表した。18日には、海江田万里経済産業相が緊急安全対策は適切に実施されているとして、定期検査中の原発について運転再開を要請した。
 こうした動きに対し、被災住民の反応は鈍い。住民は目の前の生活のことで頭がいっぱいだ。
 女川町で原発建設の話が浮上したのは1965年ごろ。温排水や放射能の影響を心配した漁業関係者らが反対運動を繰り広げた。「潮目が変わったのは、73年のオイルショックのころだった」と、自らも被災し避難所暮らしの町議、高野博さん(68)は振り返る。「船の燃料代が高騰して苦しくなったとき、補助金や融資を餌に、行政側が賛成するよう迫った」
 長い反対運動の末、建設が決定。1号機の着工は79年だった。女川町に原発がもたらしたものは大きかった。関連工事で作業員が宿泊する民宿などは潤った。町の歳入は今も、電源交付金や固定資産税など原発関連で5割近くを占める。
 現在、約650人が避難生活を送っている町総合体育館は交付金で建てられたものだ。病院や運動公園などの建設にも交付金が充てられた。
 震災直後、原発の敷地内にある東北電力の体育館には、近くの集落の被災者が大勢逃げ込んだ。最大時360人。東北電力の社員らが食料や毛布などを選んだ。「電力さんは本当によくしてくれた」と住民は感謝を口にした。勤務先の会社が被災し解雇された男性(57)は「女川は原発でもっていた町。原発が止まったら衰退する」と心配する。総合体育館に身を寄せる女性(79)も「電力さんのおかげで、いい思いもさせてもらってきた。今さら原発は怖いなんて思わないよ」と語った。
 懸念を口にする人もいる。大学生の娘が福島県内に住んでいるという主婦(55)は「福島の事故は対岸の火事とは思えない。女川でも同じような事故が起きるかもしれない」。水産加工会社を解雇された男性(44)は「原発は絶対駄目とは思わないが、運転再開はまだ早いのでは」と話した。
 高野さんは「交付金でハコものを次々と建てたが、今では維持費が重くのしかかる。地元の産業は育たず、人口は減る一方だ」と語る。「福島の事故を見て、住民の考え方も徐々に変わってきていると思うんだが・・・」

*市民団体「まずは検証を」
 宮城県沖では、今後も巨大地震が起きる可能性が指摘されている。
 「まずやるべきは、今回の震災の徹底的な検証だ」と主張するのは、市民団体「原子力発電を考える石巻市民の会」の日下郁郎さん(54)だ。
 女川原発では安全審査指針の想定した揺れを超える加速度(ガル)が一部で観測され、「今後の詳細な解析結果次第では、指針を見直さざるを得なくなる可能性もある」とし、こう訴えた。
 「住民の頭が復興に向いている間に、住民を置き去りにしたまま、早々と運転再開を口にすべきではない。知識を積んで時間をかけてしっかり議論をしてから住民の意見を聞いて決めるべきだ」
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新日本原発紀行 鹿児島・川内/温排水による海水温上昇/塩素の垂れ流し/磯焼け2011-05-22 | 地震/原発
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《ちらつく原発タブー》 不信任案否決されたが、「菅降ろし」なぜ起きた2011-06-03 | 地震/原発
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まだ終わっていない日本の原子力信奉/輸入化石燃料への依存を減らすためには原子力に頼るしかない2011-05-20 | 地震/原発
原発と離婚できない福島住民/立ち入り禁止区域で働いているんですか/原発は安定しているから「いい仕事」2011-05-19 | 地震/原発
原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発

梅雨明けとともに、HPトップ(画像)を変えた

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〈来栖の独白〉
 本日、当地も梅雨明けというニュースに接し、HP『勝田清孝と来栖宥子の世界』のトップ頁(画像)を変更。先月PCを新しくしたのに伴って、HPビルダーもヴァージョンアップさせていた。V6からV15へと急激な変身のため、もしうまくゆかなかったらトップページでもあり、大丈夫か、とかなりひやひやものだったが、なんとかできた。
 今このPCの斜め横には、さんざ献身してくれた退役PCがいる。ありがとう、私の心優しい相棒!

何処までもあざとい、キモイ男 菅の姑息な思惑

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菅首相の姑息な思惑 脱原発解散は「真夏の夜の夢」
産経ニュース2011.7.8 11:04
 「私は憲法上与えられた権限の中で全力を挙げて仕事をしている」−。菅直人首相は7日、参院予算委員会で衆院解散になお含みを残した。全原発でストレステスト(耐性検査)実施を唐突に打ち出したことも「脱原発解散を狙っている」との疑念を深めた。国家の根幹に関わるエネルギー政策を自らの延命のためいつまで振り回すつもりなのか。(今堀守通)
 「東日本大震災の責任を負った首相である以上、復旧・復興に全力を挙げたい。東京電力福島第1原発事故も収束に全力を挙げ、再度起きることがないような仕組みづくりに向け一定の道筋を見いだしたい」
 首相は7日の参院予算委でも続投への決意を重ねて示した。もはや退陣要求は耳に入らないとみえる。
 8月6、9両日に広島と長崎でそれぞれ開催される原爆犠牲者の追悼式典について問われると「万難を排して出席したい」と妙に力を込めた。追悼式典で「脱原発」を高らかに宣言し、解散の地ならしをしようと考えているのだろうか。
 ただ、首相の思いとは裏腹に脱原発解散はそう容易ではない。原発の即時全面停止を唱えるならばいざ知らず「将来的に脱原発を目指す」と宣言したところで自民党などの主張と大きな違いはなく争点にならない公算が大きいからだ。
 そこで首相が思いついたもう一つの切り札が再生エネルギー特別措置法案だった。先月27日の記者会見で退陣3条件の一つに挙げ、翌28日の民主党両院議員総会では「エネルギー政策が次期国政選挙の最大の争点になる」とぶち上げた。
 だが、太陽光など自然エネルギーに原子力を代替するだけの供給力はなく、これを「脱原発」にすり替えるのは無理がある。自民党には「無理に反対すれば解散の口実にされかねない」との警戒感が広がっており、早期成立に応じる可能性は十分ある。
 そこで窮余の策として浮かんだのが原発のストレステストだった。玄海原発の再稼働をあっさり認めれば脱原発解散の最後の灯火が消えると考えたのだろう。単に古川康佐賀県知事が求める地元説明に応じたくなかっただけかもしれない。
 だが、ストレステストを再稼働の条件にするならば運転中の原発もテスト終了まで停止しなければ理屈に合わない。政府の安全宣言も嘘だったことになる。
 首相の姑息(こそく)な思惑はもはや見透かされている。どう取り繕っても脱原発解散は首相のはかない「真夏の夜の夢」にすぎない。
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「不信任再提出可能」見解の参院議長に不快感 川端議運委員長
産経ニュース2011.7.8 12:38
 川端達夫衆院議院運営委員長は8日、西岡武夫参院議長が内閣不信任決議案の再提出は可能との見解を表明したことに対し「衆院の運営について参院からとやかく言われる筋合いはない」と不快感を示した。国会内で記者団に述べた。
 西岡氏は7日の記者会見で、不信任案提出は一国会で1回限りとの慣例に関し「法的根拠はない。衆院議長が(再提出された場合に)議題にしないことは法的に不可能だ」と述べた。
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〈来栖の独白〉
 内閣の陣容に変化があった(あの時の内閣ではない)のだから、不信任案提出は可能だろう。

東京拘置所の確定死刑囚へのアンケート 死刑執行告知「1週間前に」が多数

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死刑執行告知「1週間前に」が多数
   刑務所や拘置所運営について改善を提言する市民や弁護士らの「刑事施設視察委員会」が、東京拘置所の確定死刑囚へのアンケートで執行を告知するべき時期を尋ねたところ「執行1週間前」との回答が最多だったことが分かった。法務省が8日、同委が拘置所に提出した意見書を公表した。
 「心の準備ができれば心情が安定し苦痛を軽減できる。死刑囚の人間の尊厳や品位を守る執行にしてほしい」との回答や、「現行の執行直前」「分からない。難しい」との意見もあった。件数は明らかにしていない。同拘置所は「意見として承る」としている。
 委員会の設置は刑事収容施設・被収容者処遇法に盛り込まれ、施設ごとに構成。法務省が提出された意見書を毎年公表している。法務省によると、2010年度中に委員会が出した645件の意見のうち、改善措置を講じたのは414件。
 京都刑務所(京都市)は冬に散髪する際、水道水からぬるま湯に改善。岡山刑務所(岡山市)では水虫対策の措置を取り、約260人いた感染者が約50人まで減った。
 佐世保刑務所(長崎県佐世保市)では受刑者から大相撲のテレビ中継が賭博の対象になっているとして、視聴中止の提案もあったが「楽しみの一つとして長く定着している」として見送られた。
nikkansports.com[2011年7月8日19時25分]
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江田法相 死刑執行に慎重「急いでやらなきゃという話ではない」
 江田五月法相は8日の記者会見で「裁判員裁判で準備に時間がかかった死刑求刑事件が判決を迎え、このところ死刑判決が目立つようになった」と指摘。確定死刑囚が戦後最多となっている状況について「いっぱいたまったから急いでやらなきゃという話ではない」と述べ、執行には依然慎重な姿勢を示した。
 死刑制度については「悩ましいこと。廃止する国が増えてきていることもあり、世界に開かれた日本としてどうしていくのかしっかり考えていきたい」と話した。
スポニチ[2011年7月8日 11:24]

内部被曝 セシウムよりもストロンチウムが危険/セシウムは全身の細胞に、ストロンチウムは骨に蓄積

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放射線汚泥肥料 人体への影響を専門家が警告
日刊ゲンダイ2011年7月6日
農水省の基準は信用できるか
●「内部被曝を考慮すればセシウムよりも測定されていないストロンチウムが危険」
  放射性物質の土壌汚染の危険性が指摘されているが、盲点になっているのは汚染された汚泥を原料とする肥料の問題だ。
  先月末、農水省は放射性物質を含む汚泥の「肥料への利用」基準をようやくまとめた。原則として原料汚泥中の放射性セシウムの濃度が1キロあたり200ベクレル以下であれば肥料として使用できる。特例として、農地土壌より汚泥のセシウムの濃度が低く、かつ濃度が1キロあたり1000ベクレル以下であれば地域内に限って肥料として使用可能としている。あまり話題にならないまま実行されつつあるが、この農水省の基準は信用できるのか。プラザ30階クリニック(東京)の副院長で放射能から体を守る栄養療法に詳しい土井里紗氏(内科)に聞いた。
 「農水省は、過去の土壌の放射線量に基づいて基準値を決めているといいますが、内部被曝について正しく認識をしていないようです。セシウムしか測定されていませんが、さらに問題なのは測定されていないストロンチウムの危険性です。放射性物質が体外から出ていく生物学的半減期で考えると、セシウム137が90日程度なのに比べ、ストロンチウム90は49年と長い。ストロンチウムは、体内に入るとカルシウムと間違って骨に吸収されてしまう。ベータ線を放出し、10ミリという狭い範囲で放射線を出します。その分エネルギーは強く毒性が高いため、少量でも取り込むのは避けるべきです。内部被曝を考慮するなら、ストロンチウムも測定すべきです」
  セシウムやストロンチウムといった放射性物質を含んだ汚泥が肥料として広域に流通したとき、どんな事態が懸念されるのか。
●細胞、骨に蓄積
 「放射性物質はどんなに少なくてもリスクがあります。野菜や果物はセシウムをカリウムと間違えて根から吸収してしまいます。また、自然放射線の内部被曝は年間1.5ミリシーベルトといわれていますが、自然放射線は人間の進化の過程で体に蓄積しないようになっています。しかし、人工放射線の歴史は原爆からの非常に短い期間しかありません。(野菜や果物に含まれた)セシウムは全身の細胞に、ストロンチウムは骨に蓄積してしまうのです。自然放射線と同じリスクとしてみてはいけません。人体に与える影響として考えられるのは、骨肉腫をはじめとしたがんなどですね」
  現時点ではセシウムの危険性しか問題になっていないが、文科省・環境モニタリングの結果によれば、福島第1原発から60キロの福島県本宮市や80キロの西郷村から採取した植物からもストロンチウムが検出されている。もちろん生活圏である。政府は、人体に影響を及ぼす可能性があるすべてを調べ基準を改めるべきだ。
*強調(太字)は来栖


<ドイツ>脱原発法が成立

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<ドイツ>脱原発法が成立 国内17基、順次停止へ
毎日新聞 7月8日(金)20時41分配信
  ドイツ連邦参議院(上院)は8日、2022年までに国内17基の原発を停止する改正原子力法案に同意した。既に連邦議会(下院)が先月30日に可決しており、これで正式に「脱原発」が法的に成立した。福島第1原発の事故後、運転を停止している旧式の8基はこのまま閉鎖する。残る9基については、15、17、19年に各1基、21、22年に各3基を順次停止していく。【ベルリン】
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脱原発を決めた「メルケリズム」 世論を政策に反映、一方で大衆迎合との批判も
■ドイツ
 ドイツ政府は2022年までに国内17基の原子力発電所をすべて廃止する方針を決めた。「フクシマ」の事故のショックが後押ししたことは否めない。脱原発の動きはイタリアやスイスへも広がっている。メルケル首相の決断の背景と思惑を探る。
  「メルケリズム」の勝利−−。ドイツの連立与党が22年までの原発全廃で合意した5月30日、ドイツの有力週刊誌シュピーゲル(電子版)はこのように報じた。
  福島第1原発の事故後、欧米主要国の中でいち早く「脱原発」を決めたドイツでは、メルケル首相の政治手法を意味するメルケリズム(メルケル主義)という言葉が頻繁にメディアに登場している。
  識者やジャーナリストがさまざまな定義を試みているが、大ざっぱに言ってしまえば、大衆が望むことに、自らを合わせていく姿勢、というようなスタイルだ。首相は今回も、ドイツ国民の間に渦巻く原発への不安を素早く政策決定に反映させた。英仏など北大西洋条約機構(NATO)主導のリビアでの軍事作戦にも、根強い世論の反対などを背景に、早々に不参加を決めた。
 「メルケリズムとはインスタント民主主義。同じ女性宰相でも、情熱的で争いを好んだサッチャー英元首相と違い、メルケルは常に現実的で妥協を好む」(フォークス誌)との指摘もある。ポピュリズム(大衆迎合主義)と批判する向きも少なくない。
  確かに今回、首相の決断は速かった。東日本大震災の4日後の3月15日には、1980年以前から稼働する古い原発7基の一時停止を発表した。もともとドイツは電力の輸出国だったが、7基の原発を止めた影響で、3月下旬にはフランスやチェコなど近隣国からの電力輸入が超過する事態に陥った。フランスは発電量の8割を原発に依存しているため、「原発撤退を唱えながら、よりによって原発大国から輸入」と皮肉る声もあったが、脱原発への流れが揺らぐことはなかった。3月27日に投開票された南部バーデン・ビュルテンベルク州議会選挙では、反原発を党是に掲げる環境政党・緑の党が躍進。原発からの早期撤退は国民的な合意になっていった。
  だがドイツが脱原発を決めたのは、もともと福島の事故が起きるずっと前からだ。中道左派の社会民主党と緑の党が連立を組んだシュレーダー政権時代の02年、ドイツは22年ごろまでに原発を全廃することを既に決定し、関連法を成立させている。
  しかし中道右派のキリスト教民主・社会同盟と自由民主党のメルケル連立政権は昨年9月、この路線を修正。原子力に替わる太陽光や風力発電など再生可能エネルギーが思うように普及していない現状を理由に、原発稼動を最長14年間、延長することを決めた。
  忘れてはならないのは、メルケル政権が決めたのは「原発復活」ではなく、あくまで「全廃の先延ばし」だということだ。ドイツでは与野党とも基本的に「将来的な廃止」では一致しており、議論の対象は「時期」の設定に移っていた。福島の事故は、こうした中で起きたのだ。
  ◇代替エネ技術輸出を狙う
  メルケル首相は5月10日、外国人特派員との記者会見で「フクシマが私の考えを変えた。映像が脳裏に焼き付いて離れない」と何度も「フクシマ」を強調。脱原発を決めた理由として、福島の事故が直接のきっかけだったと明言した。脱原発は当初、選挙対策とも言われたが、物理学者でもある首相が語った「想定もしていない状況が、ドイツでも起きるかもしれないと考えた」との述懐には自身のショックがよく表れており、本音と思われる。
  だが首相に近い与党議員は「風力などの再生可能エネルギーを伸ばし、いずれは輸出商品にできるとの読みもあった」と説明する。原発から手を引く代わりに、技術大国として代替エネルギーを早い時期に国家産業に成長させ、いずれはそれで稼ぐ。こうしたしたたかな“そろばん勘定”があったのも事実だろう。
  原発閉鎖により、今後現実的に懸念されるのは電力不足だ。緯度の高いドイツは冬場に日照時間が減るため、太陽光発電にも過度の期待ができない。送電網を監督する連邦ネットワーク庁のクルト長官は「暖房などで電気使用量が増える冬には停電のおそれがある」と警告する。脱原発に突き進める理由として、島国の日本と違って陸続きの欧州では電力を融通し合えるという事情もあるが、当然、近隣国も冬場は暖房使用が増えるため、寒い時期に過剰な電力輸入はあてにできない。電力料金の値上げも予想され、1世帯当たり今後は年間1万円以上の出費増になるとの試算もある。
  また、二酸化炭素を排出する石炭への依存という問題も残る。ドイツは現在、発電量の23%を原子力に頼り、17%が再生可能エネルギー。残りの6割は石炭など主に火力だ。環境先進国として、地球温暖化に影響する二酸化炭素の削減を常に訴えてきたドイツだが、原発撤退により、皮肉にも今後も「石炭頼み」が続くことになる。
  こうした中、注目されるのは洋上風力発電だ。現在は北海とバルト海の6カ所で発電所が稼働し、さらに26カ所の建設が認可されている。認可済みの分が全て稼働すれば、原発8基分以上に相当すると見込まれている。約2万基の風車が稼働する陸上は建設場所が既に飽和状態のため、「洋上」に期待する声は大きい。今後は、北部の海からドイツ南部までの送電網整備が大きな課題となる。
  「ドイツは世界で最も有能で、経済的に成功した国の一つ。国民は電力不足を心配する必要はない。我々が歩む道は挑戦の連続だが、未来の世代にとっては大きなチャンスになる」。メルケル首相は5月30日、高らかにこう宣言した。政府は6月6日、国内17基の原発を22年までに順次停止することを正式に閣議決定した。大半の主要国が原発との付き合いを続ける中、ドイツは早々に決別の道を歩む。
  欧州屈指の経済大国による壮大な実験は、どこまで成功するのか。「見切り発車」との批判も根強いが、スイスやイタリアも既に脱原発を選択するなど、国際的な影響は決して小さくない。いずれにせよ、未知の領域に船出したドイツを導く「メルケリズム」から、今後も目を離せないのは確かなようだ。
 毎日フォーラム2011年7月8日
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原発の全面停止を決めたドイツ 欧州全体に悪影響、得するのはフランスか2011-06-06 | 地震/原発
菅首相、G8で原発継続表明へ/原発=自然を征服してまで人間本位の社会を追求する姿勢の象徴2011-05-22 | 地震/原発
 〈来栖の独白〉
 我が国の首相には、ドイツの首相のような理想も叡智も胆力も、そして各界を説得しうる度量、好ましい人間性も、あるとは思えない。
.....
20年後を想う危機感 週のはじめに考える
中日新聞 2011年5月22日
 東日本大震災を受けて、ドイツがあらためて原発撤退に踏み出そうとしています。被災国を上回るかのような危機感は何に由来するのでしょうか。
 東日本大震災発生の報が世界中を駆け巡った際、海外の知人友人から相次いだ見舞いのメールや電話は、戦(おのの)きに満ちたものでした。
 「津波が日本を呑(の)み込んでゆく映像を見た」「原子炉が爆発し、メルトダウンが起きている、とテレビが伝えている。東京は大丈夫か」。過剰ともいえる報道ぶりは当初批判の対象ともなりました。
 撤退に収斂する民意
 皮肉にも、その恐怖感を裏付けるかのような被害実態が日々明らかになっていますが、中でも強い危機感を示したのがドイツです。従来の原発容認の立場を翻し、早期の原発撤退を鮮明にしたメルケル首相の姿勢にその衝撃の凄(すさ)まじさが集約されています。
 ドイツが原発撤退を鮮明にするのは、これで二度目です。一九九八年、「統一宰相」のコール首相に代わって政権に就いた社民党のシュレーダー首相は、フィッシャー党首時代の緑の党との連立政権下、原発撤退を主要政策の一つに掲げました。
 再生可能エネルギーの開発、原発企業への補償、海外との使用済み核燃料処理契約の扱いなど、撤退実現のための国民的論議は、この時一度尽くされています。妥協を重ねた末とはいえ、原発による発電総量、稼働期間を規定し法制化した内容は、二〇二〇年代に全廃の実現を見据えたものでした。
 この方針は、次のキリスト教民主・社会同盟と社民党の大連立政権下でも継続されましたが、一昨年の総選挙で発足した現保守系連立政権は、稼働期間を延長する方針に転換、原発は容認の方向で進むかに見えました。
 欧州にあっての試み
 そこに起きたのが東日本大震災です。発生直後に行われた保守の牙城南部バーデン・ビュルテンベルク州選挙での大敗と、州レベルとはいえ、史上初めての緑の党主導政権誕生は脱原発への回帰を迫るに十分でした。
 「原子力発電は再生可能エネルギーにつなぐまでの過渡的なエネルギー、と見る点では国民的コンセンサスができているといえる。あとは、その過渡期の期間をどれだけみるか、という違いだけだ」。ドイツ現代政治専門の森井裕一・東大准教授はこう分析しています。
 原発全廃を党是とする緑の党発足以来三十年。社民党、そして保守政党までが原発撤退を決めたことで、ドイツの民意は収斂(しゅうれん)した、といえます。
 経済大国たるドイツの地位を脅かすことなく、その転換が実現できるのか。なお道のりには厳しいものがありますが、現在十七基ある原子炉のうち八基が停止し、今後、新規の原子炉建設も見込まれない事情を考えると、撤退後の風景を想像するのもそう難しくない所まできています。
 しかし、ドイツの危機感が欧州全体、ひいては国際社会で共有されているか、といえばそうではありません。米国に次ぐ世界第二の原発大国の隣国フランスの原子力政策は、一部に見直し論が出ているとはいえ、容易に揺らぎそうにありません。
 フォルカー・シュタンツェル駐日独大使は、事故後二カ月を経て開いた記者会見で、「各国の国家判断を尊重するドイツの考え方に変わりはない」と述べました。ドイツの原発撤退は、あくまで原発を容認する欧州にあっての試みである点も忘れてはならないでしょう。
 ドイツは戦後、欧州統合のプロセスとともに歩んできました。ドイツ統一後十年の二〇〇〇年、独仏関係を熟知するルクセンブルクのユンケル首相に両国の政治的な考え方の差について伺ったことがあります。「本質的な違いはないが、あるとすればアプローチの方法だ。ドイツ人は現在の決定が二十年後にどう表れるかを正確に計りたがる。フランス人は長期的な構想にはあまり重きを置かない」。当時から二十年後、原発廃止が実現しているかもしれないという符合は示唆に富んでいます。
 被災国への問いかけ
 戦争の惨禍を繰り返すまい、と戦後一貫して負の歴史を語り継いできたドイツです。次元こそ違いますが、「3・11」を機に将来起こり得る惨禍に想(おも)いを致し、一際(ひときわ)危機意識を募らせているとしても不思議ではありません。
 自然を征服してまで人間本位の社会を追求する姿勢が西洋文明のなかにあるとすれば、原発はその一つの象徴でしょう。西欧の中心にあって、あえて脱原発を選択するドイツの危機感は、国際社会、何より、被災国日本の危機感の行方を問うています。
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安全なら原発再稼働容認=2次補正、今国会提出も―菅首相
時事通信 5月18日(水)18時21分配信
 菅直人首相は18日午後、首相官邸で記者会見し、定期検査などで運転停止中の原子力発電所について「安全性が確認されれば稼働を認めていくことになる」と表明した。また、「原子力のより安全な活用方法が見いだせるなら、さらに活用していく」と述べ、原子力政策を基本的に維持する考えを示した。
 経済産業省原子力安全・保安院によると、商用原子炉54基のうち、営業運転中は17基、調整運転中は2基で、残り35基は定期検査や東日本大震災など何らかの理由で運転を停止している。
 一方、首相は2011年度第2次補正予算案について「本当に急ぐものが提案された場合は考えないといけない」と述べ、今国会中に提出する可能性を示した。その場合、被災者生活再建支援金の不足分など小規模な2次補正とし、8月以降に復興対策のための本格的な補正予算案を編成するとみられる。
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菅首相:G8演説で「原発継続」表明へ
 菅直人首相が26、27日にフランス・ドービルで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)で行うエネルギー政策に関する発言の概要が20日、分かった。東京電力福島第1原発事故を受け、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及を推進するなど4本柱で構成。原発の安全性を向上させたうえで継続利用する方針を示し、日本が「脱原発」に転じたとの見方を払拭(ふっしょく)する。
 発言は26日昼(日本時間同夜)のG8のワーキングランチの冒頭で行われる。4本柱は(1)原子力の安全性向上(2)再生可能エネルギーの推進(3)石油、石炭など化石燃料の二酸化炭素(CO2)排出量削減(4)省エネ・節電。特に再生可能エネルギーを基幹エネルギーに加える方針を強調する。化石燃料のCO2排出量については、日本は石炭をガス化するなど最先端の削減技術を持つため、普及を促進する。【大貫智子】毎日新聞 2011年5月21日 2時33分
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高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
文明転換へ覚悟と気概 週のはじめに考える
中日新聞【社説】2011年5月8日
 東日本の巨大地震からまもなく二カ月。連日の余震となお遠い復興への道のり。私たちが問われているのは、文明転換への覚悟と気概のようです。
 なかば義務感にかられて、北欧フィンランドに建設中の放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」を見に出かけました。
 多くの国際賞受賞のこの記録映画の配給元は「アップリンク」。今秋公開の予定でしたが、四月、東京・渋谷の自社劇場で上映したところ連日の行列と満席、全国各地の五十館以上での上映へと広がっていったそうです。前例のない反響、福島第一原発事故で国民が原発問題に真正面から向き合うようになったことがわかります。
 高レベル放射性廃棄物は世界に二十五万トン、危険性が消えるまでには十万年。「オンカロ」はフィンランド語で隠し場所を意味します。廃棄物を凍土奥深くの岩盤に埋め込む世界初の試みです。管理可能か、明快な回答を持ち合わせる専門家はいませんでした。
*人間支配が及ばない
 日本列島が現在の形になったのは一万年前、人類が文明をもったのはたかだか五、六千年前です。十万年は人間のリアルな思考や言葉が及ぶ時空域ではありません。人間が制御できないという絶望感。静かな画面は、人類が手にしてしまった原発の恐怖と不気味さを伝えていました。
 続いて、菅直人首相が浜岡原発の全炉停止を要請しました。法的手続きではない政治判断でした。
 東京から百八十キロ、名古屋から百三十キロ。東海地震想定域の真上の浜岡原発は「世界で最も危険な原発」と呼ばれてきました。事故の場合の被害は福島原発の比ではなく、首都圏の一千万人の避難や首都喪失も想定されました。
*やむをえぬ浜岡の停止
 マグニチュード9・0の巨大地震は、日本列島を東西に数メートル引き伸ばし、首都直下型や東海、東南海・南海地震誘発が憂慮されます。浜岡原発停止はやむをえぬ判断でしょう。全原発に及ぼすべきかどうか、そこが問題です。
 浜岡を含め日本の原発は五十四基、電力の30%を占めるようになっています。すでに原油枯渇の兆候があり、太陽光や風力のクリーンエネルギーへ転換させるにしろ、先行きはなお不透明です。電力の安定供給のためには原発は不可欠という状況です。
 原発停止による生活レベルの一九七〇年代への後退は許容できるにしても、グローバル競争の落後者になる恐怖に打ち勝てるかどうか。私たちは無限の成長を前提にした近代世界の住人。文明転換の勇気をもてるかどうかです。
 地質学の石橋克彦神戸大名誉教授は、地震と原発が複合する破局的災害・「原発震災」の概念や言葉を提唱、浜岡原発の廃炉を訴えるなど警告を発してきました。
 「世界」や「中央公論」の誌上には「日本列島全域が今世紀半ばごろまで大地震活動期」「原発は完成された技術ではない」「人間の地震に関する理解は不十分」「地震列島に五十基以上の大型原子炉を林立させることは暴挙」とも書いています。警告通り、福島原発の大損傷が発生してしまいました。
 「原発震災」は人間存在への問いかけだったのでしょう。教授が提言したように原発総点検、リスクが高い順の段階的閉鎖・縮小が現実路線のように映ります。世界観を変えるには覚悟と決意、気概がいります。
 日本を代表する東北の農漁業。その被害も甚大でした。食料問題も原発に劣らない不安で重大な問題。世界の食料品価格が高騰、二〇〇八年のリーマン・ショック時を上回っているからです。
 食料価格高騰は投機と「将来の供給不足懸念」が要因とされるだけに深刻です。コメと野菜こそ90%台と80%台の自給率を保っているものの、小麦は10%台、大豆やトウモロコシはほとんど輸入しています。命にかかわる問題です。農業の復興と立て直し、食料の自給は急務です。
*新しい幸せと充実が
 失われたコミュニティーの復元や修復も大切なテーマ。震災は、私たちがそれぞれが独立しながらも、結局は支え合い、助け合って生きていくものだ、ということをあらためて気づかせてくれました。それは、ボランティアに向かう若者の行動にも表れました。
 極限状況にあっても、人間はなお優しさや思いやり、勇気や忍耐を示す存在でした。献身や自己犠牲も。それは私たちの未来へ向けての大きな希望でした。
 経済的繁栄や快適な生活とは別次元の幸せと充実。それが追い求める内容かもしれません。私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。 *背景色着色は来栖
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使用済み燃料 大量に
中日新聞2011/5/7Sat.夕刊
 政府の要請を受けて浜岡原発が全面停止しても、建屋内には使用済み燃料が大量に残る。このため、想定外の地震や津波が起きた際の危険性はすぐには去らない。
 核燃料は、燃料棒を束ねた燃料集合体を一体とし、使用後も原子炉建屋内のプールで貯蔵される。冷却のために最低でも2年弱は保管され、青森県六ヶ所村の再処理工場や海外などに運ばれる。
 中電によると、3月末時点で浜岡原発1〜5号機に保管されている使用済み核燃料は計6625体。福島原発の事故を受け、中電は緊急対策として冷却機能を保つための非常用ディーゼル発電機を建屋屋上に設置した。(略)
 榎田洋一名大院教授(原子力工学)は「原発を全面停止しても、使用済み燃料は発熱が続く。外部に移すにも、安全性が整った施設に限られており、簡単に運び出せない。国内の原発からは、六ヶ所村だけで処理しきれない量の使用済み燃料が出ており、長期的に手だてを考えなければならない」と話している。
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28
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原発保有国は潜在的核武装国/保有31カ国の下心/日本の原発による発電量は世界第3位2011-05-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
 東西対立の遺物、原発よさらば 福島の事故が証明した、効果絶大なるテロの標的
JB PRESS 2011.05.14(Sat)川嶋 諭
 たとえ思いつきであろうと、地に落ちた人気をわずかでも回復させたいという政治パフォーマンスであろうと、菅直人首相が中部電力浜岡原子力発電所の運転停止を要請し、政府のエネルギー計画の撤回に踏み切ったことは、全くもって喜ばしい。
 原子力発電所は安全だと言い張ってきた政府と電力会社の嘘がばれたいま、福島第一原発の二の舞いは起こり得る。
いったん事故を起こせばこれだけの被害(まだ拡大する)を引き起こす原発を彼らの手に委ねるのは国民の選択肢としてあり得ないからだ。
 もし、福島第一原発の後に続く原発事故が日本のどこかで起きれば、もはや完全に取り返しのつかないことになってしまう。
その意味で、瓢箪から駒とはいえ、菅首相の決断は歓迎されるべきものだろう。
 実際、5月11日には今回の震災で茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発で、あわや大惨事を引き起こしかねない状況だったことが明らかになった。
 朝日新聞の報道によると、震災後の停電とその後の高さ5.4メートルの津波の影響で非常用発電機1台と非常用炉心冷却装置1系統が使用不能になって炉心温度が上がり、炉心内で発生した水蒸気を圧力容器に逃がす作業で、何とか急場をしのいだという。
 停電と5メートルの津波でも、危機が目の前に来ていたわけである。想定される東海沖地震の震源地付近に建ち、かねて危険が指摘されている浜岡原発の一時停止は、日本国の未来を懸けたリスクマネジメント上、当然の判断と言える。
 この菅首相の行動に対し、密室での決定で意思決定のプロセスが明確でない、浜岡を特別視する判断基準が分からないとの批判が相次いでいて、それはその通りだと思う(「密室で決まった浜岡原発の停止要請をどうして賞賛できるのか」)。手続きとしては明らかに間違っている。
 しかし、仮に中部地区で夏場に電力が足りない状況になったり電気料金が上がったりしても、万が一の原発事故の大きさに比べたら比較対象とはならない。
 5月11日には、神奈川県の南足柄市で栽培されていたお茶畑から政府の基準を上回る放射能(セシウム)が検出されている。また、ある食品メーカーが独自に調査した結果では、福島第一原発から50キロ以上離れた水田の土から、政府が発表している数値よりケタ違いに高い放射線が検出されたという。
*原発から50キロ以上離れた田んぼの土から高濃度のプルトニウム
 この食品メーカーによると、現時点でその結果を公表するのは影響が大きすぎるため発表は控えているとのことだが、その田んぼの土からは高い濃度のプルトニウムも検出されたそうだ。
 一方、5月12日になって、東京電力は福島第一原発の1号機の原子炉に穴が開いている可能性があると発表した。
 それが事実だとすれば、燃料棒を冷やすための水を常に供給し続けなければならず、それが高濃度の放射能に汚染された排水となって海に流れ出続ける危険性がある。
 福島第一原発の放射能汚染は、水蒸気爆発以降収まっているように見えるが、実際には汚染を続けている。新たな水蒸気爆発の危険性も高い確率で残っている。
 プルサーマル運転をしていた福島第一原発3号機では、燃料に高い比率でプルトニウムを混ぜていたため、チェルノブイリやスリーマイル島の事故とは別に半減期が2万4000年と目が飛び出るほど長いプルトニウムによる汚染が広がる危険性がある。
*半減期が2万4000年の怖い汚染の静かなる広がり
 新聞やテレビの解説者によれば、プルトニウムは万が一人体に取り込まれても異物として排除されやすいので心配はいらないという。
 しかし、プルトニウムが大気や土壌、そして海水へと撒き散らされ続ければ、再び人体に濃縮された形で取り込まれる危険性は十分にある。何しろ半減期が2万4000年なのである。紙や木が燃えるようにはなくなってくれないのだ。
 プルトニウムはα線(陽子2つと中性子2つのヘリウムの原子核)を放出する。α線は紙1枚でも防げるので人体の奥深い組織には悪影響はないとされるが、一方で肺に吸い込むと肺胞の表皮組織を集中的に傷つけて肺ガンを引き起こすとも言われている。
 原発は、いったん事故を引き起こせば、地元の住民に、そして日本人全体に甚大な被害をもたらし、また地球を非常に長い期間汚染し続けるリスクを背負っている。
 福島第一原発の事故で、目の前に終わりなき大きなリスクをまざまざと見せられたいま、最も不安を感じ始めているのは原発を持たない沖縄電力を除く電力会社の経営陣ではないだろうか。東京電力のようにはなりたくないと考えるのが自然だろう。
*13日の金曜日、浜岡原発が停止
 中部電力の水野明久社長が菅総理の要請を受け入れて、5月13日の金曜日に浜岡原発の運転を中止したのには、そんな計算も働いているはずだ。
 首相の要請を受け入れるかを議論した取締役会では激論が交わされたと報道されているが、法的根拠のない首相の要請を結局受け入れることにしたのは、明日発生するかもしれない巨大地震への恐怖ではなかったか。
 この決断は、水野社長にとって敗軍の将になる危険性がなくなるばかりか、ヒーローになれる絶好の機会と言えるのだ。
 産経新聞は中部電力の事実上の創業者で戦後の9電力体制を築いた松永安左エ門を引き合いに出して、菅首相の要請は突っぱねるべきだったと言う(産経抄)。
 しかし、死ぬまで勲章の受け取りを拒否し自立と日本のためを行動原理とした松永安左エ門だったら、日本のため世界のために浜岡原発を自ら停止したのではないか。そもそも動機不純の原発は建設しなかったかもしれない。
*菅首相の要請は渡りに船?
 中部電力の清水社長にすれば、菅総理からの要請を内心、待ってました、渡りに船だと喜んだとしても全くおかしくないと私は思う。
 ほかの電力会社のトップも内心ではそう考えている可能性もある。何しろ、原発は今の日本の環境では電力会社に富をもたらしてくれる宝の山ではなくなってきたからだ。
 日本が現在の中国のように高度経済成長の最中にあって電力供給が決定的に足りない状況だった時代は、国策もあって確かに原発への投資は利益を生んだ。しかし、日本の電力需要がピークアウトした今は、設備負担の重い原発は旨みが少なくなっているのだ。
 地域独占で料金が認可制の電力会社にとって、巨大な設備投資が必要な原発を建設すれば、その償却分や核燃料の所有額を電気代に加算できたうえに償却後は大きな利益を享受できた。しかし、それは電力消費が右肩上がりであることが前提だ。
 現在のように電力需要が下がり始めれば収益モデルは過去のものとなり巨大な設備負担がのしかかる。さらには、稼働から年月が経った原発では、地震以外にも原子炉容器や配管の応力腐食割れなど様々な事故のリスクに怯えなければならない。
*デフレ経済が好きな民主党政権では原発は儲からない
 どうしたことかデフレ政策を掲げて実践している今の民主党政権が続けば、経済はますます冷えて電力需要は下がる一方だ。
 さらに増税で企業の海外移転も進めばさらに電力消費は減る。日本の経済政策上から見ても原発は電力会社にとって経営リスクなのである。
 また、原子力発電のコストは決して安くない。それどころか、福島第一原発の事故で巨額の賠償金が必要になる以前の段階で、最も発電コストの高い方法になっているのだ(「高すぎる原発の発電コスト、LNG火力で代替せよ」)。
 この記事によれば、電力会社の業界団体である電気事業連合会などが発表している“粉飾”されたデータではなく、実態に近い発電コストは、1KWh当たり火力発電が9.9円。原子力の場合には12.23円もかかるという。
 一方、原子力が環境に優しいという触れ込みにしても、確かに二酸化炭素は出さないものの、大量の熱エネルギーを海水に放出している。何しろ、原発は蒸気機関で発電するので熱効率が悪い。タービンの性能が上がった現在でも30%台そこそこ。
*原発は蒸気機関車時代の技術
 原子炉で発生する熱の3分の2は海水に放出されている。二酸化炭素は放出しなくても地球を温めているわけで、決して環境に優しいわけではない。さらに、発電所の立地が消費地から遠いため、高圧線を通るうちに電力の半分近くが熱となって大気中に放出されてしまう。
 つまり、核分裂で得たエネルギーで最終消費者が電力消費として回収できているのはわずか6分の1。残りの6分の5は熱エネルギーとして放出している勘定になる。やはりシュッシュポッポ時代の技術でしかない。
 一方、火力発電所の方は、ガスタービンを使ったコンバインドサイクルという発電方法によって、日増しに熱効率が上がっている。最高効率のものは60%を超える。また、立地も消費地に近いため、送電ロスは小さい。
 ガスタービンというのは、言ってみればジェットエンジンである。燃料に圧力をかけて噴射させて燃やし、燃焼ガスが一気に膨張したその勢いでタービンを回す(ジェット機の場合は推力となる)。燃焼の際の温度を高めれば高めるほど、燃やしたガスの膨張度が高まるので効率が高くなる。
 すでに1500度を超える高い温度で使用できるガスタービンが実用化されている。高い温度のガスタービンは廃熱の温度も高くなるので、その廃熱を使って水を沸騰させて蒸気にして蒸気タービンを回せば、さらに効率が高くなる。これがコンバインドサイクルである。
*蒸気機関車VSジェットエンジン
 ジェットエンジンのハイブリッドシステムと考えていい。電力を発生させる仕組みそのものでは、シュッシュポッポの蒸気機関車時代の技術である原発に比べ、超音速時代の高効率な技術であり、はるかにハイテクだ。
 以前、このコンバインドサイクルを作っている三菱重工業の高砂製作所に取材に行ったことがある。
 タービンブレードの耐熱性、軽量化のための材料開発、燃焼ガスの流れを効率的にブレードに伝える空力設計など、日本の技術の粋を集めたものだった。
 技術の進歩も目覚ましく、最近では1600度以上のガスタービンも開発されていて、その場合には燃料に水素を使うという。燃焼で二酸化炭素を生まず、熱効率も60%以上となり、極めて環境に優しい発電方式となる。
 今の日本が置かれた環境にどういった発電方式が電力会社の経営にふさわしいのかという観点から、株主総会を控えているいま、電力会社の株主の皆さんは経営をチェックした方がいいのではないか。
*原発はテロリスト最大のターゲットに
 さて、日本が原発を導入するに当たってはコストや環境以外の動機もあったはずである。国防だ。しかし、日本の再軍備と核武装をこっそり視野に入れていたこの不純な動機も今となっては全くの的外れとなった。
 福島第一原発の事故が国防の観点からはっきりと示したのは、テロあるいは仮想敵国から原発に何らかの攻撃がされたら、とんでもない被害をほぼ永遠にもたらすということだろう。
 日本を滅ぼすのに原爆は不要。日本中に散らばっている54基の原発をロケットで攻撃すれば、日本全土はたちまち永遠に生物が住めない世界に変わる。カルタゴがローマ帝国に滅ぼされた時、作物が二度と生えないように塩をまかれたどころの騒ぎではない。
 中曽根康弘元総理と初代の科学技術庁長官だった正力松太郎・読売新聞社主が1955年に二人三脚でスタートさせた日本の原子力産業育成は、米国のアイゼンハワー大統領による「平和のための核利用:Atoms for peace」という見せかけの看板につられたものだった。
 実はソ連に対抗するために核による軍拡のお先棒を担がされたことが明らかだった。それについては有馬哲夫・早稲田大学教授の『原発・正力・CIA』(新潮新書、2008年)に詳しい。若く血気盛んな中曽根元総理と野望ある正力氏は、米国の術中にはまっていく。
*読売新聞が牽引した日本の原発建設
 もちろん、米国が正力氏を見込んだのにはわけがある。日本国内だけで1000万部という世界最大部数にまで育てた新聞事業と日本初の民放、日本テレビの影響力だ。結局、それらをフル活用されて日本は原発大国へと大きく歩を進めていく。
 米国に招待されて核施設を見に行った中曽根元総理は、自著『自省録』(新潮社、2004年)の中で、次のように書いている。「日本もこの流れに乗らないとたちまち取り残されると、多いに焦燥感に駆られます」
 帰国した中曽根元総理は居ても立ってもいられず、当時予算委員会の筆頭理事だった立場を最大限に利用して原子力の調査費を予算計上する。その額は2億3500万円だったという。この数字に具体的な意味はなく、熱中性子を受けて核分裂するウラン235の235をただ取っただけだった。
 このようにして日本が米国から原子力技術の供与を受けられるようになる前、米国はすでにアジアでもイラン、イラク、インド、パキスタンなどに原子力技術を供与していた。米国に滅ぼされたイラクを除けば、これらの国は今や原爆保有国である。
 原発を持った一国の権力者が原爆を持ちたくなるのは道理。隣国などと紛争を抱えていればなおさらだ。現在、原発を持っている国を調べると、その下心が透けてくる。それをデータで示してくれたのがこの記事(「知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音」)だ。
*原発を保有している31カ国の下心
 「現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)」
 「それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている」
 「その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリアが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている」
 「旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである」
 「その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている」
*原爆を作りたいがための原発は最大の弱点に
 「ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している」
 「原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである」
 日本と同じ愚かな轍を踏んでしまった国が何と多いことだろう。これらの国のいくつに原爆を作れるという下心があるかは分からない。しかし、そのために原発を建設してしまったとすれば、攻めばかり考えて守りを全く考えていないことになる。
 日本の現状を見ればそれは明らかだ。日本の原発はテロに対して全くと言っていいほど無防備である。その点はこの記事「北朝鮮が狙う日本海側の原発、守備は万全?」が警鐘を鳴らしている。
 「日本の原発の多くは日本海沿岸に集中しています。潜水艦で攻撃されたらひとたまりもないでしょう。今ごろ北朝鮮と仲良くしようとか話し合おうとか言う人には、そろそろ北の正体を思い知れと言いたいです」
*東西対決が終わってみれば、原発はただの遺物に
 世界に原発が広がったのは、米国とソ連という東西対立の賜物だった。東西対立が終わったいま、この副産物は国家を守るという意味でも大変危険な存在になっている。地域紛争やテロによる明確なターゲットになるからだ。
 建設・運営コストも高く、環境にも優しくなく、国防上からも危険極まる原発は、本来、東西対決の終わりとともに棄てていくのが正しい姿ではないか。できれば一気にすべての原子炉を廃炉にしてほしいところだが、電力供給の事情もあるから簡単にはいかないだろう。
 世界の原子力関連市場で、日本の技術や製品はその中核を占めるまでになっているという。地震国の少ない国で原子力の安全利用を進めたい国があるとすれば、そうした国に安全でできるだけコストの安い部品や機器を供給し、原発の安全度を高めるのは、福島第一原発の事故で地球を汚染してしまった国の責任でもある。
 また、万が一の場合には、徹底支援するためにも原子力技術から逃れることは許されない。
 しかし、世界最大の地震大国である日本では、浜岡原発を皮切りに危険度の高いところから廃止して、コンバインドサイクルや風力、太陽光、燃料電池、地熱発電などに切り替えていくことは、東西対決が終わったいま、明らかな時代の要請である。 *強調(着色・太字)は、来栖
〈筆者プロフィール〉
川嶋 諭 Satoshi Kawashima
・早稲田大学理工学部卒、同大学院修了。日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。1988年に「日経ビジネス」に異動後20年間在籍した。副編集長、米シリコンバレー支局長、編集部長、日経ビジネスオンライン編集長、発行人を務めた後、2008年に日本ビジネスプレス設立。
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原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
20?・250?シーベルト/国民の健康よりも原子力行政優先/「政府官邸へ何を言っても届かない」小佐古敏荘氏2011-05-17 | 地震/原発

三菱自、炊飯器や電子レンジに給電可能なEV「アイ・ミーブ」

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三菱自動車、炊飯器や電子レンジに給電可能なEV披露
WSJ 2011/7/8 18:11
 茶わん一杯のあたたかいご飯が自動車で炊けるとしたらどうだろう。
 電力の供給不足で国民が汗だくの毎日を送るなか、三菱自動車は世界初の量産電気自動車(EV)「アイ・ミーブ」の新たな活用方法の開発を進めている。
 完成間近の新技術の1つが、高容量の車載バッテリーを家電製品の電源に使用できるようにする「ACパワーサプライEZ」だ。このアダプターを介してバッテリーに接続することで、炊飯器と電子レンジであればを最長1日半稼働できるという。三菱自動車は6日、この新技術は現在試験段階にあり、今年後半に発表できる見通しだとした。
 そうなればタイミング的には絶好かもしれない。現在恐れているとおり、政治的反対や菅直人首相が急きょ要求している「ストレステスト(安全検査)」によって、多数の原発が再稼働できなくなった場合、冬に再び電力不足に直面する可能性があるためだ。
 三菱自動車が思い描いているのは、自然災害やその他緊急時に代替エネルギー源として利用可能な先進のバッテリーだ。
 同社は6日に発表されたリリースで、EVに対しては「従来の“環境問題への対応”に加えて“エネルギー需給ひっ迫への対応”という観点からの期待が高まっている」と述べた。
 企業では工場の稼働時間をずらし、家庭ではエアコンを切るなどして国を挙げて節電に励んでいるときに、貴重な電力を自動車の運転に使用するのは、あまり賢明なことには思えないかもしれない。
 だが6日に行われた新技術発表会で、三菱自動車の益子修社長は、EVは将来的に風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギーから生成した電力を蓄えるための、重要なツールになる可能性があると主張した。また、節電ムードによって、どこでも利用可能な電源としてのEVのメリットへの認知が高まったと強調した。自動車は電力が必要な場所があればどこにでも行ける。ただし、お米をお忘れなく。

菅首相「違法献金」 東京地検 捜査開始

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菅首相「違法献金」急展開 東京地検 捜査開始
日刊ゲンダイ2011年7月9日 掲載
在日韓国人K氏が聴取されていた
●「返却日」をウソついていたことも発覚
  菅首相の「違法献金問題」が急展開だ。ついに東京地検が捜査を開始した。首相に違法な献金をしていた人物が聴取されていたのだ。どんなに「菅降ろし」が強まっても居座りつづけてきた首相だが、「政治とカネ」がトドメを刺す可能性が出てきた。
●「国籍を知らなかった」は不自然
  菅首相の「違法献金問題」とは、横浜市内でパチンコ店を経営する在日韓国人K氏から109万円の献金を受け取っていたという一件だ。政治資金規正法は、政治家が外国人から寄付を受けることを禁じている。
 「週刊朝日」(3月11日発売)がスクープし、朝日新聞も3月11日、1面トップで報じた。
 「前原誠司外相(当時)が外国人献金問題で辞任した直後だっただけに、政界は『これで首相も終わりだ』と大騒ぎになりました。ところが、まさにその日、大震災が起き、ウヤムヤになってしまったのです」(政界関係者)
  首相の「違法献金問題」は、その後、市民団体が告発。ついに東京地検が本格捜査に動きだしたという。大手メディアはほとんど報じていないが、7日の参院予算委で自民党の礒崎陽輔議員が明かした。
 〈菅総理は刑事告発されております。今週、相手方のKさんが東京地検から事情聴取を受けております〉
  さらに、首相が虚偽答弁をしていたことをバクロした。
  これまで首相は、「3月11日の朝日新聞の報道で初めてK氏が在日韓国人だということを知った」「3月14日に献金を返した」と答弁していた。
  ところが、礒崎議員が〈現金を返したのはその日じゃないでしょう。あなたが初めて知ったという3月11日の前日、3月10日に神奈川県の保土ケ谷パーキングエリアで、あなたのスタッフがこっそり返したと、そういう事実を我々は聞いている〉と明かしたのだ。その瞬間、首相は真っ青になっていた。
  献金を返したのが、3月14日なのか、それとも3月10日なのかでは、決定的な違いがある。司法関係者が言う。
 「首相は国会答弁で、『3月11日の報道を受け、事実関係を調べた結果、K氏が在日韓国人だと確認が取れたので3月14日に返却した』と答えています。あくまで外国人だったとは知らなかったという主張です。もし、知っていて献金を受けていれば、罰則の対象ですからね。でも、本当は事前に外国人だと知っていて献金を受け取り、『週刊朝日』から取材を受け、『これはヤバイ』と大慌てで3月10日に献金を返したのではないか。だとすれば返却日を3月14日だと小細工した理由も納得です。K氏は在日韓国人のなかでは有名人だった。首相が外国人だと知らなかったというのは不自然です」
  違法献金の捜査はどう進むのか。カギはK氏が握っている。もし、K氏が「首相は自分の国籍を知っていた」と検察に話したら、首相はアウトだ。
 「K氏は首相にカンカンになっているといいます。週刊朝日の記事が出る数日前、菅さんがKさんの携帯に電話し、『なにかあったら帰化したことにして欲しい』と頼み込んだりしたことに不信感を持っているというのです」(事情通)
  国会で追及した礒崎議員はこう言う。
 「捜査情報をどこから入手したかは、信頼できる筋の情報としか言えない。しかし、この問題は首相の『政治とカネ』という重大問題です。真相を明らかにする必要があります」
  国会はK氏を「国会喚問」して徹底的に追及すべきだ。

陸山会事件 ニコ生7月10日23時から<徹底検証!検察調書大量却下はなぜ起きたか>小沢氏裁判に与える影響

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10日23時からニコ生で<徹底検証!検察調書「大量却下」はなぜ起きたか?>(http://t.co/nyPXMFd )を放送。出演は石川知裕、郷原信郎(@nobuogohara)、市川寛、江川紹子(@amneris84)、八木啓代(@nobuyoyagi)、角谷浩一の各氏。

 小沢一郎・元民主党代表の元秘書たちが政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで起訴された「陸山会事件」。
 その刑事裁判が進んでいますが、クライマックスになって、検察側が提出した供述調書が大量に却下されるという、前代未聞ともいえる事態が起きました。東京地検は7月5日に異議申し立てをしましたが、このまま調書が証拠採用されなければ、裁判の結果に大きな影響を与えることも予想されます。
 また、検察の捜査手法、特に供述調書の作られ方に構造的な問題があるのではないか、との指摘もされています。
 なぜ検察調書は却下されたのか?
 小沢氏の元秘書たちの裁判の行方は?
 検察審査会によって強制起訴に至った小沢氏の裁判に与える影響は?
 この番組では、元検事の郷原信郎氏と市川寛氏、そして裁判の被告人である、小沢氏の元秘書・石川知裕衆院議員らをスタジオに招き、今回の異常事態の背景を徹底的に検証します。
 出演者:
角谷浩一(司会)
郷原信郎(元検事、弁護士)
市川寛(元検事、弁護士)
石川知裕(衆院議員、元小沢氏秘書)
江川紹子(ジャーナリスト)
八木啓代(作家)
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石川知裕:最後に特捜部にエールを送って、この事件を終わりにしたい「陸山会事件」2011-07-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
もはや小沢氏を法廷に縛りつける理由はないのに、検察官役の指定弁護士、前田元検事を証人申請2011-07-06 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
「陸山会事件」東京地裁 検察のデッチ上げ調書を証拠採用せず/小沢強制起訴の根幹崩れる2011-07-06 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

玄海1号、敦賀1号、美浜1〜3号、福島第一1〜6号など老朽原発、緊急冷却で原子炉割れ大爆発!?

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老朽原発に警鐘「玄海1号 最も危険」
中日新聞 特報 2011/07/09Sat.

緊急冷却で原子炉割れる!?
 原発の原子炉がガラスのコップのように割れてしまったら−。日本の原発ではその危険性が高まっていると警告する科学者がいる。もし、そうなれば、核反応制御不能となって大爆発を起こし、大量の放射性物質が広範囲に拡散する。福島第一原発事故の比ではない大惨事となりかねない。危険度トップは玄海原発1号機だ。(小国智宏)
 「日本で1番危険な原子炉は、九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)です」。こう断言するのは、井野博満・東大名誉教授(73)=金属材料学=だ。
 玄海原発2号機、3号機は現在、定期検査のため運転停止中。菅直人首相がストレステスト(耐性評価)の実施を突然打ち出し、九州電力の「やらせメール」が発覚したため、地元の岸本秀雄町長は再稼働を了承する方針を撤回した。しかし井野氏は、むしろ運転中の1号機について大きな問題があるというのだ。
 原発は地震や事故など異常が起こると運転が停止し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が働いて、原子炉を急速に冷やす仕組みになっている。福島第1では、電源を喪失してこのECCSがうまく作動せず、事故に至った。ところが玄海1号機ではECCSが働いた場合、逆に大きな事故が起きる可能性があるという。
 玄海1号機の運転開始は36年前の1975年で、九州電力の原発の中では最も古い。井野氏は言う。「1号機の原子炉圧力容器の鋼(母材)の壁は老朽化でもろくなっている。急速に冷やした場合、破損する恐れがあるのです」
 井野氏が例えるのは、ガラスのコップだ。熱いガラスのコップに冷たい水を急に入れると、内側と外側の急激な温度変化に耐えられずバリンと割れてしまうことがある。同じような現象が圧力容器にも起こりうるという。
 圧力容器の内壁は、核分裂で発生する中性子線にさらされている。鋼は、中性子線を浴びるほどもろくなる。通常、鋼はある程度の力を加えても変形するだけで割れることはない。しかし、ある温度を下回ると、陶器のように割れてしまう。この温度を脆性遷移温度という。もろくなればなるほどこの温度は上がる。
 井野氏によると、北大西洋を航行中に沈没したタイタニック号は、質の悪い鋼材が使われていて脆性遷移温度は27度だったという。そして氷山に衝突した衝撃で船体は割れてしまった。
 電力会社は、原発の耐用年数を推測するため、この脆性遷移温度を調べている。圧力容器の内壁のさらに内側の位置に圧力容器と同じ材質の試験片を4〜6組ほど設置。数年から十数年ごとに取り出して検査する。内壁より炉心に近い位置に設置してあるため、中性子の照射量が大きくなり、劣化が早く進む。紙片を調べ、将来のもろくなった状態を予測するのだ。

予想超す劣化 九電「問題なし」
 玄海1号機の圧力容器の脆性遷移温度はどうなのか。75年の運転開始時はマイナス16度だったのが、76年に35度、80年に37度、93年に56度と徐々に上昇してきた。「ここまでは、ほぼ予想通りでした。衝撃的だったのは昨年10月に九州電力が公表した2009年4月時点の温度です」。何と98度に跳ね上がっていたのだ。
 玄海1号機のような加圧水型軽水炉では、圧力容器内を150気圧、300度以上の高温高圧で運転している。容器に亀裂が入れば、爆発的な破壊に発展し、大量の放射性物質を放出することになる。
 井野氏らは、昨年12月、経済産業省原子力安全・保安院に説明を求めたところ、「驚いたことに、保安院はその時点で何の情報も持っていなかった。九州電力は『報告する義務はない』として知らせていなかったのです」。
 なぜ玄海1号機の数値は急激に上がったのか。井野氏は「鋼の中の銅の含有率が高かった可能性がある」とみる。「原因を調べるために、試験片を大学などに提供し、ミクロ組織の検査を行うべきです。少なくともその結果が分かるまで原子炉は止めるべきです」
 九電が03年に提出した報告書の予測曲線によると玄海1号機の脆性遷移温度は65度程度、誤差を入れても75度前後のはずだった。98度は、修正した予測曲線から大きく外れている。
 九電広報部は「試験片の98度というのは、66年運転した場合の想定温度。容器本体は80度と推定している。60年運転想定では91度。日本電気協会の定めた新設炉の業界基準93度を下回っている」と説明。「安全上問題はない」と説明する。
 しかし、井野氏は「予測曲線からあまりにもはずれている。根本的に見直し安全検査を徹底すべきだ」と訴える。
 玄海1号機と同じ問題を抱える老朽原発は、ほかにもある可能性が高い。井野氏はこの点を強く危惧している。
 「日本の原発は米国に10年以上遅れ営業運転を始めた。1960年代に運転を開始した米国やドイツの原発は、今ではすべて閉鎖されている。このために日本の原発は老朽化の先頭を走っています」
 原発は当初、30〜40年の寿命を想定して設計。70年に営業運転を始めた敦賀原発1号機は、2010年には閉鎖になるはずが、そうはなっていない。住民の反対運動などで新規建設が困難になったことや、既存の原発を延命した方が安上がりということなどから、国は寿命を延長する方針を決めたのだ。
 30年を超えた原発について、電力会社は国に老朽化対策の報告書を提出し、高経年化対策検討委員会で審議して認められると、10年ごとに最長60年までの延長が可能になる。
 玄海1号、敦賀1号、美浜1〜3号、福島第一1〜6号など20基近くの原発が30年以上運転されている。敦賀1号、美浜1号、福島第一1号機は40年を超えての運転が既に認められている。今後は50年、60年を目指す原発が出てくるかもしれない。
 井野氏は「老朽化すれば、故障やトラブルが増え、メンテナンスが大変になるのが普通。無理な運転をすれば傷みもひどくなる」と指摘する。
 玄海1号の98度はワーストで、50度以上の原発は7基。ただ、試験片を10年以上検査していない原発もある。「検査をすれば、玄海1号機と同じように脆性遷移温度が跳ね上がる圧力容器はほかにもある可能性は否定できない」
 井野氏はあらためて警告する。「全国の老朽化した原発を早急に総点検し、予測以上の脆化を示した原子炉はすぐに廃炉にすべきだ」

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