新設は増額 発電量制 原発事故後に交付金補強
「地元停止求めにくい」
中日新聞2011/8/17Wed.朝刊 1面
原子力関係予算を握る経済産業省と文部科学省が福島第一原発事故の一カ月後、原発の立地自治体などに交付金を支給する規則を全面改正し、新増設時の交付額を増やす一方、既設の原発では発電実績に応じて交付額を決める方式に変更していたことが分かった。事故収束に向けた見通しが立たず、原因究明もままならない時期に、新増設や運転を後押しする改正をしていたことになる。
改正したのは「電源立地地域対策交付金」の交付規則。四月十三日に改正され、海江田万里経産相と高木義明文科相の連名で、同日付の官報に告示した。経産省原子力安全・保安院が福島第一原発事故の国際評価尺度を、旧ソ連チェルノブイリ原発事故と同じレベル7に引き上げた翌日のことだった。
改正規則では、原発を新設したり増設したりする際の交付金の単価を増額。発電能力(出力)百三十五万キロワットの原発を新設する場合だと、運転開始までの十年間に立地自治体へ支給する額は、四百四十九億円から四百八十一億円に三十二億円上積みした。
一方、既設の原発では、発電実績を重視する仕組みに変わった。
立地外の都道府県に電力を供給した際に交付する「電力移出県等交付金相当部分」は、たとえ発電量がゼロでも、原発の規模に応じた交付金が支払われてきた。二年間の経過措置はあるものの、今後は発電量だけが基準になる。
運転開始の翌年から運転終了まで長期間にわたり支給する「長期発展対策交付金相当部分」や、使用済み核燃料再処理工場などの地元に交付する「核燃料サイクル施設交付金相当部分」も、発電量や稼働実績を重視して交付する。
新増設に反対する市民団体からは実績主義への変更によって運転を停止すると交付金が減るため、地元自治体が停止を求めにくくなると指摘が出ている。
資源エネルギー庁は今回の規則改正を記者発表せず、官報に告示しただけだった。説明用の冊子も二〇〇四年二月に規則を制定した際には、表紙に「大改正後の新たな交付金制度」と記し、「新たに地域活性化事業が交付対象事業に追加」などと、これまでの制度との違いが分かるようになっていた。だが、今回は新制度の内容しかなく、どこを変更したのか前の冊子と比べないと分からない。
同庁電源地域整備室は「昨年六月にエネルギー基本計画が閣議決定され、これに基づき改正したが、地元からの要望もあった」と説明。官報の告示時期には「特段大きな意味はない」としている。
<エネルギー基本計画> 2002年に制定されたエネルギー政策基本法に基づき、エネルギーの需給に関する長期的、総合的な施策を進めるために政府が策定する。昨年6月に菅直人内閣が閣議決定した基本計画では、原子力について「安全の確保を大前提として、国民の理解と信頼を得つつ、新増設の推進、設備利用率の向上」などを図るとしている。30年までに14基以上の新増設を行う目標を掲げている。
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◆老朽原発 募る不信 稼働40年 美浜2号機延命 焦点/ もろさの指標となる「脆性遷移温度」2011-08-18 | 地震/原発
福島原発事故後に原発立地交付金、全面改正/新増設や運転を後押しする改正
蜜月 北海道電力と知事/社の役員 毎年個人献金/就任以降 道幹部“天下り”
蜜月 北海道電力と知事
中日新聞〈特報〉2011/08/17
北海道電力泊原発3号機は営業運転再開へ動きだしたが、最終判断をした高橋はるみ北海道知事の、北海道電力との蜜月ぶりには驚かされる。同社幹部からの政治献金は毎年の恒例。北電元会長が資金管理団体の会長も務める。原発「全機停止」の事態を避けたかった経済産業省にとって、これほどの”人材”はなかったはずだ。(小国智宏、篠ヶ瀬祐司)
*泊原発再開は必然の流れ?
「安全性の信頼を確保するため原子力安全・保安院の最終検査に加えて原子力安全委員会の確認プロセスを得たことは評価したい」。16日の道議会産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会。高橋はるみ知事は泊原発3号機の安全性について、こう説明した。「地元町村には速やかに情報提供をしていく。道民には記者会見で説明したい」とも。
この時点で運転再開容認の流れはできた。「今日中にも海江田大臣に了承の電話を入れたいらしい」と関係者の間でささやきが広がった。
高橋知事は当初、原子力安全・保安院が早急に北海道電力に対し最終検査を受けるよう指導したことに対し、「地方軽視だ」と反発した。ただ、海江田万里経産相から釈明の電話があると、一転して柔軟姿勢に転じ、営業運転再開に前向きな姿勢を示した。議会関係者からは「知事の反発はポーズにすぎない。初めから容認するつもりだった」との声が漏れた。
北海道議会で特別委員会が開かれた16日午後、市民約40人が東京・丸の内の北海道電力東京支社を訪れ、泊原発3号機の営業運転再開断念を申し入れた。「9・11再稼働反対・脱原発!全国アクション」実行委員会の杉原浩司さんは「国や道知事の判断とは別に、事業者としての責任も重大だ。最低限ストレステストを受けるべきだ」と、同支社担当者に迫った。
もともと高橋はるみ知事は原発を推進してきた経産省の官僚だった。
富山県出身。祖父の高辻武邦氏は富山県知事を2期務めた。父親は経産省と関係が深い地元のガス会社の元社長。弟は現社長だ。
一橋大学を卒業後、旧通産省に入省。中小企業庁課長などを得て、2001年、経産省北海道経済産業局長に就いた。これが、北海道との縁になった。
旧通産省で先輩に当たる北海道選出の町村信孝衆院議員に誘われ、2003年の知事選に自民党推薦で出馬し初当選。町村氏の父親で衆院議員や北海道知事を務めた町村金吾氏は、高橋知事の祖父の高辻氏と旧内務省で同期という間柄だった。
今年4月10日の知事選では新人3氏を大差で破って3選を果たした。
新人候補はそろって「脱原発」を掲げた。民主党推薦の候補は「原発に頼らない自然エネルギーの開発推進が重要」と強調。共産党推薦候補も泊原発3号機のプルサーマル計画反対や同1、2号機の廃炉を目指すと明言した。元民主党道議の無所属候補も「知事が脱原発宣言を出すべきだ」と訴えた。
これに対し高橋知事は事故やトラブル発生時への対応について「しっかり検討していきます」(北海道新聞のインタビュー)と「検討」を口にするだけ。
逆に「ただ、泊原発は1993年の北海道南西沖地震の際も影響なく、稼働停止すらしませんでした」(同)と安全性を強調した。
*社の役員 毎年個人献金
北海道電力との関係も深い。
高橋知事の資金管理団体「萌春会」には、北海道電力の役員が毎年、個人献金していることが分かっている。
真下紀子道議(共産)の調査では、04年は少なくとも17人から44万円、05年も17人から44万円、06年は16人から45万円。07年もほぼ同額の献金があったとみられる。さらに08年は会長、社長ら10人から36万円、09年も10人から33万円が献金されていた。しかも、会長経験者は10万円、会長、社長は5万円、副社長は3万円などと役職に応じた額が決まっており、毎年、ほぼ同じ時期に一斉に献金している。この「萌春会」の会長は、元北海道電力会長で、北海道経済連合会(道経連)の会長も務めた南山英雄氏。
真下道議は道議会で「形を変えた事実上の企業献金だ」と指摘したが、高橋知事は「それぞれ個人の立場でご支援をいただいている」と述べ、今後も献金を受け入れる意向を示している。
*就任以降 道幹部“天下り”
さらには、道幹部が北電や関連会社に再就職していたことも真下道議らの調べで分かった。
高橋知事が知事に就任した以降に始まっており、少なくても4人が再就職していた。元議会事務局長が06年に北電調査役に就任し、昨年退職。ほかに元建設部参事が子会社の技術顧問に就くなど、3人が子会社に再就職し現在も在職している。
*経産省 避けたい国内全機停止
運転再開へ向けてレールは敷かれていたわけだが、NPO法人「原子力資料情報室」の伴英幸共同代表は「地震、津波の想定が甘かったため福島で事故が起きた。泊原発でも(耐震安全性評価などの)バックチェックや、活断層の影響の検討が不可欠だ」と、時期尚早だとみる。
なぜ、これほど急ぐ必要があったのか。
福島第一原発の事故以来、定期点検が終了して運転再開した原発はなかった。このままの状態が続けば現在稼働中の原発も定期点検に入り、来年3月には日本中のすべての原発が止まる「全機停止」となるはずだった。
その瞬間に「日本の電力の3割を原発が担う」という、もうひとつの神話は崩壊する。全電力の中で原発の電力が占める割合を操作して発表するのは不可能になる。
ところが、泊3号機の運転再開により、同機が次の定期点検に入る13ヶ月後まで、この事態は先送りされたのだ。
前出の伴氏は「『全機停止』は避けたいというのが原子力安全・保安院の意向なのだろう。玄海原発がやらせ問題で再開できなくなり『では泊原発を』となったのだろうが、規制当局が運転を促すのはおかしな話だ」と憤る。その上で「今は様子見をしていても、泊原発が突破口となり、営業運転再開を認める自治体が出てくるかもしれない」と、連鎖の可能性を指摘した。
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◆「原発マネー国家」日本/ 泊村〈原発立地交付金232億円〉、漁業しかなかった過疎の村が裕福な自治体に2011-08-18 | 地震/原発
自分で作り出している日本経済の癌細胞/腐敗が蔓延っても豊国の志が高い中国の政治家と官僚
西洋医学では治癒不能、末期がんの日本経済 国民一人ひとりの「ら抜き」精神が国を豊かにする〈川嶋 諭〉
JBpress2011.08.20(土)
日本語ではら抜き言葉は文法が間違っているか、または美しくないとされる。しかし、人生は「ら抜き」することで豊かになれる。そう教えてくれたのは作家の土居伸光さんである。奥さんが突然末期がんの宣告を受けて死に直面した時、奥さんが選んだ生き方から土居さん自身が学んだことだという。
*がん治療をやめたら寿命が延びた
医師から「余命半年、手の打ちようがない」と宣言された土居さんは、奥さんにはそのことを告げず、一縷の望みをかけて治療を受けさせることを決意した。
しかし、最高の西洋医学をもってしてもがんの進行を止めることはできなかった。
逆に頭髪が抜け落ち体半分が黒く変色してしまった。また嘔吐やめまい、激しい頭痛など、抗がん剤による副作用が容赦なく奥さんを襲った。
果たしてこのまま治療を受けさせることが奥さんのためになるのか、確信を持てなくなった土居さんは奥さんに末期がんであることを告げる。
その時、奥さんの口から出てきた言葉は意外なものだった。恐らく、聞かずとも病気のことは察知していたに違いない。
「治療を受けるのをやめて、残された自分の人生を思いきり生き抜いてみたい」
それからの2人の人生は西洋医学に頼っていた時とは180度違うものになった。長野県にある自然食だけで生活を送る養生園に長期滞在したり、東洋医学を勉強したりして自分の力でがんと闘うようになった。
その過程で知り合った同じ末期がんの人たちが、痛みや苦しみに耐えながらもあっけらかんと前を向いて生きている。残された時間を少しでも長く有意義に生きようとしている。
そうした姿を見て、「妻の中で大きな変化が生じているのが分かりました」と土居さんは言う。「人生におけるパラダイムが音を立てて変わってしまったようです」。
*がん細胞は自分で作り出している
がんとは、交通事故などのように突然自分に襲いかかってきた不幸ではない。がん細胞は自分自身で作り出したものである。「そのことを理解した時、妻に何かが起きたのです」。
「それまで妻の中にあった『若くしてがんに罹るなんて、何んという不幸者。大好きだったテニスももうできない』というような被害者意識は全くなくなりました」
そして、間近に迫った死に対する不安も不思議なほど消えていったという。
生活習慣その他で自分で作ってしまったがん細胞は、医療の力は借りたとしても自分で何とかするしかない。西洋医学に頼り切っていた姿勢から、自分で主体的にがん細胞と立ち向かう姿勢に変わったことで、「妻は悟りを開いたようです」と土居さんは言う。
結局、奥さんの闘病は叶わず2年半後に亡くなってしまうのだが、余命半年と宣言されてから2年以上も長く生き延びたことになる。
*受身の人生からの脱却
そして、2年間も寿命を伸ばしたこともさることながら、「苦しみに悶え不安に怯え被害者意識に苛まれて終わる人生ではなく、有意義に人生を全うしたことの意義は妻にとって大きかったと思います」と土居さんは話す。
奥さんのそうした姿は、土居さん自身も変えた。「自分がそれまで歩んできた中で持っていた価値観が音を立てて崩れてしまいました。今までの自分はいったい何をしていたんだろう。目から鱗が落ちるとはこのことだと思いました」と言う。
その時、土居さんが悟ったのが「ら抜き」の人生である。「やらされる」に代表される受身の人生からの脱却だ。
土居さんは大手宝飾関連の会社で、やり手の営業マンとして辣腕を振るってきた。しかし、歯に衣着せぬ物言いが上司の反発を買い、地方へ左遷の憂き目に遭う。
飛ばされた地方でも1年半で売上高を2倍にするなど、目覚しい成果を上げるのだが、正当な評価を受けることはなかった。不平不満のたまる会社人生だった。そんな矢先に奥さんにがんが見つかり、踏んだり蹴ったりの人生だと思うようになっていた。
ら抜きで豊かになる組織や国家
しかし、奥さん闘病する姿を見るうちに土居さん自身にも変化が訪れる。人間の体に生まれるがん細胞のように、不平不満の原因は会社や相手ではなく自分にあると考えられるようになったという。
土居さんの「変化」についてはご自身の最新刊『光』(光文社)に友人の娘さんとのメールのやり取りの形で詳しく書かれているので、ご興味のある方はお読みいただきたい。
さて、この「ら抜き」で豊かにする人生の考え方は、組織や国家といったレベルにも当てはまりそうである。
例えば、原子力発電所の誘致問題。この記事「原発で波高まる津軽海峡夏景色(上)」、「漁師仲間の飲食・タクシー代まで原発持ち」はお読みいただいただろうか。
電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原子力発電所を巡り、地元民および対岸の北海道函館市の住民の心の葛藤を描いたものだ。
*原発建設巡り波高まる津軽海峡
急速に漁獲量が減る中で、降って湧いたように出てきたJパワーの原発建設。多額の補償金と雇用という2つの甘い蜜を提示され、大間町の人々は原発誘致を決める。しかし福島第一原子力発電所の事故で、建設が宙に浮いてしまった。
そのことに地元住民は、戸惑いと怒りを隠さない。一方、大間町とは津軽海峡をはさんで対岸にある函館市では、一銭の補償金も入らない中で原発のリスクだけを押し付けられた形になり、建設中止を求める声が支配的だ。
有名な大間のマグロをはじめウニ、イカ、タコ、ヒラメなどの海産物や大間牛などの農産物で生計を立ててきた大間町だが、漁獲量の激減で「もう生きられない」と将来の不安を嘆き、原発誘致を決めた。
そして、原発建設が宙に浮くと再び不安と不満が渦巻く。そこに垣間見えるのは、その地域ならではの特性を生かして主体的に努力を続けようというよりは、原発に頼り切った受身の姿勢である。「ら抜き」の人生をあきらめた姿と言えるかもしれない。
もちろん、生きるために原発を選んだ大間町の人たちを責めることはできない。しかし、手に負えなくなった末期がんに、いくら痛み止めのモルヒネを注射しても治癒は望めないのと同じように、原発頼りでは実は地域は活性化しない。
*漁業不振につけ込んだ原発建設
補償金をもらって生活している今はいいかもしれない。しかし、原発に頼る生活を続けて子供や孫の世代に何を残していけるのか。競争力のある地域になれるのか。逆に将来を犠牲にしているとは言えないだろうか。
最も問題なのは、地元の弱みにつけ込んで原発建設を推進する政策の考え方だろう。補償金と雇用を地元にもたらすのはいい。しかし、せっかくやるなら、それらを使って、地元が自立できるようなプログラムまできちんと用意すべきではないか。
カネと雇用は渡したからあとは自己責任というのでは、国を豊かにする政策にはなっていない。原発を推進したいだけにとどまっている。
ここにとどまるのか、その先にある地方を活性化して日本を豊かにするという発想を持つのかでは天と地ほど差がある。
その意味では、高速鉄道の事故や大連でのポリプロピレンの流出事故など、不祥事続きで国民の言論の自由も許していない中国政府の方が我が日本よりも国民のことを考えていると言えるかもしれない。
*所得倍増政策を研究し始めた中国政府
今週、最新刊である『われ日本海の橋とならん』(ダイヤモンド社)のプロモーションのために日本に帰ってきていた加藤嘉一さんに会って話をした。加藤さんによると、いま中国政府は池田隼人元総理大臣の「所得倍増政策」を熱心に研究しているという。
日本を抜いて世界第2位の経済大国になった中国では、成長率つまり国内総生産(GDP)に代わる目標が必要になってきており、中国政府が注目しているのが国民の幸福度であるという。そのために日本の所得倍増政策を研究しているというのだ。
経済成長に最重点を置いてきた中国が国民一人ひとりの幸福度に方向転換しているという。それなしには、国民の政府批判が抑えられなくなっていることなのだろうが、国民生活を豊かにし中国経済を活性化しようという強い意欲が感じられる。
加藤さんのこの著書の中では、中国の官僚が厳しい競争原理にさらされている姿が印象に残る。例えば、四川大地震の際には、その復興を受け持つ地域を被災しなかった市単位に任せ競争させている。
日本で言えば、例えば、震災した福島県は東京都、宮城県は大阪府に任せるというように。復興のスピードと内容を競わせるわけだ。そういうDNAが中国の官僚システムには埋め込まれていると加藤さんは言う。競争原理とは対極にある日本の官僚システムとは180度違う世界がそこにある。
*腐敗がはびこっても豊国の志が高い中国の政治家と官僚
残念ながら、国を豊かにしようという意欲と行動力では日本の官僚と政治家は中国の足元にも及ばないようだ。
官僚にそれだけの権限と権力を与えられている裏返しとして汚職などの腐敗が進んでいることを取り上げて、中国を批判するのはたやすい。しかし、それが負け犬の遠吠えになっていないか自己批判する必要があるだろう。
中国政府にとって最大の問題は民主化を求める国民の声だと加藤さんは言う。インターネット、そしてスマートフォンの急速な普及によって従来型のメディアコントロールが不可能になっており、中国政府は緊張感あふれる政策運営を余儀なくされているという。
政治家と官僚が国民を豊かにしようという志は高くても、国民は目の前にある小さな不満の解消を最優先し、民主化していない制度のせいにする。そこにあるのは、国民の主体的な改革ではなく、上からのお仕着せの政策に対する不満である。
それは民主国家であるはずの日本でも実は全く変わらない。つまり、国民一人ひとりがお上に頼らない「ら抜き」で改革・改善をやりぬく志を持たない限り、次なる発展は望めないということだろう。
無能で世界の恥さらしの日本の政治家を選んでいるのは私たちである。がん細胞は自分たちが作っているということを認識しないと日本は変われない。
<筆者プロフィール>
川嶋 諭 Satoshi Kawashima
早稲田大学理工学部卒、同大学院修了。日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。1988年に「日経ビジネス」に異動後20年間在籍した。副編集長、米シリコンバレー支局長、編集部長、日経ビジネスオンライン編集長、発行人を務めた後、2008年に日本ビジネスプレス設立。
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刑務所内に「準介護士制度」をつくり、希望に応じて受刑者が受刑者を介護する/杉良太郎
刑務所視察
中日新聞夕刊「紙つぶて」2011/08/20Sat.杉 良太郎
15歳の時に刑務所の慰問を始めて、今年で52年になる。日本社会の高齢化が進むにつれて受刑者の高齢化も進み、これが問題になってきている。
もともと高齢者は病弱で、刑務所にいる間にもあらゆる病に侵されていく。介護を要する者が各施設で1%以上いるのが現状だ。食事や排便、体の移動さえできない受刑者の世話は、刑務所しょくいんがしている。介護士になるために刑務所職員になったわけではないが、誰もやる者がいないので仕方なくやる。受刑者の方も申し訳ない気持ちになる。
こういう受刑者にとって、刑期を終え出所することは死を意味する。娑婆に戻っても身寄りがない。身内がいても迷惑をかけられているから引き取らない。受刑者はそれを知っているから出たがらない。担当官に「何とか置いてくれ」と頼む。「2度と戻ってくるな」と言われると、担当官をみらみつけ「鬼」と言って出て行くが、またすぐに罪を犯して戻ってくる。
一方、受刑者の中には、社会に出て更生したい者も多くいる。そこで私は、刑務所内に「準介護士制度」をつくり、希望に応じて受刑者が受刑者を介護することを提案したい。出所後、正規の介護資格を取り直すことで受刑者の就職難を緩和できるし、社会問題の介護士不足の改善にもつながると思う。何より、刑務所職員が本来の仕事に専念でき、刑務所が介護施設にならないようにすることが大事なことではないか。(法務省特別矯正官僚監、歌手・俳優)
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◆「岡山刑務所」塀の中の運動会/塀の中の暮らし
◆「岡山刑務所」塀の中の運動会/塀の中の暮らし2011-01-05 | 死刑/重刑/生命犯 問題
民主党代表選/日米官僚機構は二人三脚で日本の安保政策を決めてきた/官僚からの脱却は難しい
民主党代表選 「ポスト菅」をめぐる争い(序)
副島国家戦略研究所(SNSI)・中田安彦
NET IB NEWS 2011年8月18日 13:17
この夏はひときわ暑い。私は福島県田村市都路(旧都路村)にあるSNSIの事務所で読書や情報調査をしながら過ごした。ついきのう、帰京したところだ。都路は「緊急時避難準備区域」に指定されている原発30キロ圏内の村で、人口は3,000人ほどいたが、避難者が多く実際には200人ほどしか残っていない。営業している店も一軒しかなく、後は人の集まるところといえば診療所と20キロ圏内の警戒区域への一時帰宅のバスが止まっている体育館くらいだ。20キロ圏の手前では各県警からの機動隊が交通を封鎖しており、3・11震災後の原発災害の雰囲気を肌で感じることができる場所だ。
そんなわけで、私も書店にしばらく行っていなかったのだが、帰り際の駅構内の書店で目についたのは雑誌『文藝春秋』の巻頭特集にある民主党代表選挙に名乗りをあげた民主党有力政治家たちの文章である。文章を寄せたのは、野田佳彦財務大臣、馬淵澄夫前国土交通大臣、海江田万里経済産業大臣の3人。代表選にはこのほか、鹿野道彦農水大臣や小沢鋭仁元環境大臣らも名乗りを上げている。
みなさんも御存知の通り、菅直人首相は今月(8月)10日になって、明確に、すでに掲げている退陣3条件の通り、「二次補正」「再生エネルギー固定価格買取法案」(再生可能エネルギー特別措置法案)「赤字国債法案」の3つが成立したときには退陣することを国会での答弁で再度確認された。二次補正はすでに成立していたが残りの2法案も月内には成立する。これで菅直人退陣、月末の代表選挙を行なうことが決まった。
支持率が10パーセント台に落ち込んだ菅首相。脱原発への執念はすごかったが、それを支える側近に欠けていた。東京電力の福島第一原発があれだけの世界的にも意味を持つ事故を起こしてしまったにもかかわらず、当時の経済産業省のトップ官僚への責任追及が十分になされていない。菅首相は閣僚にも見放され、四面楚歌の状況だった。
一方では、原発再稼働をめぐって、玄海原発を運転する九州電力などのあからさまな「やらせ」の問題などが噴出していた。そのような脱原発路線には十分な追い風も生まれていたのだが、それをうまく生かせなかった。
残念ながら、菅首相が「指導力」を発揮した場面は、企業の自家発電設備による「埋蔵電力」の活用など、電力需給に関するあらゆる情報を経済産業省に示すよう国家戦略室を通じて文書で指示したことくらいだった。
脱原発という政策自体は間違っていない。しかし、菅首相にはそれを単なる理念にとどまらず、政策や工程表(ロードマップ)として具体化するためのブレーンが存在しなかった。
この国では政策を作ることができるのは、今もなお官僚機構である。菅首相は、経産省批判を繰り返していた改革派官僚の古賀茂明氏やソフトバンクの孫正義社長にも接近していた。だが、原発事故直後からの事故対応で批判を与野党、マスコミから浴びていた菅首相には十分な時間が足りなかった。菅首相は、首相になってから震災までは、妥協して原発推進派となったが、もともとは自然エネルギー推進派だった。
おそらく菅首相の意図を一番理解していたのが、細野豪志原発担当大臣だったとみられるが、細野は次の代表選には10日の段階で出ないと表明している。ただ、他の候補が崩れるのを待っているのかもしれない。今、菅、小沢、前原の三有力者の支持を獲得できそうなのは細野豪志だけだからだ。加えて言えば細野はホワイトハウスとも連絡を取り合っている。あるいは「次の次」かもしれないがいずれにせよ細野は近いうちに首相になる人物である。
さて、冒頭で述べた、野田、馬淵、海江田の3者の文藝春秋への寄稿だが、偶然かどうかはわからないが、実際に「本命候補」と言えそうな野田・馬淵が揃って寄稿している。海江田の文章は単に菅直人首相への不満を述べているものであり、厳密には政策提案と言えるものではない。
野田財務大臣は、松下政経塾出身者で、渡部恒三衆議院議員が率いる「民主党7奉行の会」のメンバーのひとりだ。ほかに前原誠司や玄葉光一郎らも7奉行メンバーだが、このふたりは今回の代表選挙には出ないようだ。前原は、野田を支える側に回るだろう。
野田はすでに「財務省の組織内候補」と揶揄されているように、増税と大連立を今回の代表選の主要政策として掲げている。文藝春秋への寄稿でも「最大の危機は財政です」と述べている。「大震災を理由に財政健全化への取り組みを先延ばしにすることは出来ません」と、歳出カット以外での財政再建、つまり増税への意欲を見せている。
さらに、この後、13日のテレビ番組に出演し、「自公との大連立を行なって救国内閣を作りたい」とも述べている。
民主党代表選 「ポスト菅」をめぐる争い(前)
2011年8月19日 07:00
野田といえば、昨年の参議院選挙で消費税の増税が争点になった時も、アメリカのルース駐日大使に、消費税増税について、「国民もだんだん理解し始めている」とわざわざ報告しに行ったほどの人物だ。野田は円高是正のための米国債買いの介入を去年(2010年)の9月15日(代表選翌日)、震災直後に円高が進展した3月中旬、そして米債務危機を背景に急速に円高が進んだ、この8月に行なった。ところがこの円売りドル買い介入の効果は結果的にみて円高基調を押しとどめるほどの効果はなかった。
この野田のドル買い介入を暗に批判しているのが馬淵だ。馬淵は円高の原因として金融政策として、日銀が「量的緩和」を行なっていないことをあげている。量的緩和の代表格と言えるのが、アメリカが10年秋から始めて今年(11年)の6月で一旦はやめた、QE2のような政策だ。
要は、馬淵は、世界中でお金の流通量を増やしているにもかかわらず、日銀だけがマネタリーベース(お金の量)を引き下げていることが根本的な円高の原因であり、ドル買い介入には意味が無いというもので、「デフレ脱却論」を重視する立場だ。小沢一郎前代表は震災後に米紙WSJへのインタビューで「金なんぞ印刷すればいい」と発言していたが、二人の経済政策は震災時に金融引き締めを行なうべきではないとする点で共通する。野田と馬淵の経済・金融政策のどちらが正しいかというと、これは歴史が証明している。増税と緊縮は震災復興時にはやってはいけないのである。
たとえば、田中秀臣・上念司の『震災恐慌』(宝島社)という本には、戦前の昭和恐慌に陥った時の経済政策の舵取りを握った高橋是清・大蔵大臣が財政支出と金融緩和を行なっていた事例があげられている。
また、同書には戦後のわずかな期間だが総理を務めた石橋湛山が経済ジャーナリストをしていた1925年(つまり関東大震災から2年後)に書いた論文が引用されている。それによれば、戦前にも浜口雄幸大蔵大臣(後の首相)や大蔵省が、震災後の緊縮財政・財政再建を目指して、金融緩和を行なわず、いたずらに円高状態を放置したことがあった。これを石橋湛山は強く批判した。
結局、大震災、金融恐慌という二重苦から日本を立ち直らせたのは、高橋是清の積極財政政策だったのである。要するに、震災によって経済が弱っているときには財政再建は絶対にやってはいけない政策なのである。
野田を暗に批判する馬淵は、日本がデフレから脱却することで、具体的には「未来型エネルギー国家」なりの経済成長を手助けする形成を進めた上で、税収を回復させることを前提に消費税増税を検討すべきだというスタンスである。このように、今回の民主党代表選挙では、経済政策をめぐり、財政規律か経済成長かという対立軸ができあがっている。
民主党代表選 「ポスト菅」をめぐる争い(中)
2011年8月19日 14:00
野田は大学を出た後、松下政経塾に入塾、その後、千葉県議会議員となり政治家一本でキャリアを歩んでいる。一方で馬淵は、大学卒業後、三井建設社員やコンピューター関連商品製造販売会社の取締役や北米法人最高経営責任者など民間企業の経験がある。また、土建屋あがりの政治家である田中角栄元首相を尊敬すると公言する「変わり者」でもある。経済政策に関しては財務省の言いなりにはならない素地が、馬淵には政治家一筋の民間企業経験がない野田よりはあるわけだ。
次にエネルギー政策についてだが、三者とも菅首相の「脱原発」を唐突だとする姿勢では共通しているが、野田・海江田と馬淵とでは若干ニュアンスが違うようだ。馬淵は、「安全技術の確立」と「未来型エネルギー国家」の姿を提示することを前提に、原発やその他の電力ノウハウを海外に輸出していくべきだとしている。
一方の野田や海江田は、原発輸出にはかなりの積極派である。なかでも野田は、「短兵急に原発輸出を止めるべきではない」とまで述べている。これは、現政権で菅首相に否定的で現在の民主党における主流派の一角を形成する仙谷・前原グループが、積極的に原発輸出の旗振りをやってきたからだろう。代表選でも野田を支持するのは前原グループが中心となるから、その支持層の意向が絡んでいるからだ。
仙谷や前原はアメリカのジャパン・ハンドラーズ(日本対策班)とも深く結びついており、アメリカの推し進める中国包囲網の形成に日本もひと役買うべきだという発想があり、野田もこれを支持している。
仙谷は原発や新幹線などのインフラ部門の海外セールスを、これまで前田匡史(国際協力銀行資源ファイナンス部長、内閣官房参与)という自らの顧問を使って国策として推し進めており、自身も去年(2010年)、前原と共にベトナムに出向いている。仙谷や前原を高く買っているのがアメリカのアーミテージ元国務副長官たちであり、日本の財界人では、JR東海の葛西敬之会長らである。アーミテージと葛西は「反中国派」であり、ビジネスの側面でもベトナムやインドとの連携を重視している。
海江田も、トルコの駐日大使やベトナム副首相との対話を例に引きながら、「日本の(原子力)技術に対する期待は非常に大きい」と述べている。しかし、ここで海江田が同時に専門家の話として、「この20年くらい日本の原発における安全確保の技術は、やはり安全神話に浸っていてあまり進歩がなかった」とも述べていることに注目すべきだ。そうであるならばなおさら、原発事故の収束も見ておらず、なおかつ原発の安全技術が確保されたか否かもはっきりと国民的な議論が行なわれているとは言えないなかで輸出を再開すべきではないと海江田は言うべきではないのか。海江田は国民ではなく財界の方ばかりを見ているようだ。
そのなかで馬淵の提言は、一応は筋が通っている。菅直人の脱原発宣言を唐突なものだと批判してはいるが、その上で、「真に国民の信頼を得ることができる安全技術の確立」を再生可能エネルギーの推進とともに重視すべきだと述べているからだ。
つまり、脱原発を叫ぶだけではなく、最先端の技術を開発して経済成長につなげていくべきだというのが馬淵の主張だ。(ただし、原発再稼働については野田・馬淵とも容認する姿勢のようだから、代表選がこの二人の対決となれば、大きな争点にはならないだろう)。
このように、野田(増税・大連立)・馬淵(増税反対・大連立慎重)という風に対立軸がかなり明確な代表選挙だが、この他にも鹿野農水大臣や小沢元環境大臣が出馬すると言われている。
鹿野は、元は自民党であり、小沢一郎とは新進党の時に一緒になっているが、後に対立し新進党の代表選挙で争う関係になったこともある。新進党を小沢が1997年に解党したときには、反小沢系の議員を集めてミニ政党の「国民の声」を作った。
小沢鋭仁は、鳩山政権時の環境大臣(鳩山グループ所属)であり、地球温暖化防止のために原子力発電の拡充をうたったことがあるが、震災後は、原発については、当面の新増設を否定し、長期的視点での段階的撤退を提唱する方針に転向した。経済政策では馬淵同様にデフレ脱却を打ち出すことをすでに7月下旬に表明している。
民主党代表選 「ポスト菅」をめぐる争い(後)
2011年8月20日 07:00
実際に何人が民主党代表選に出馬するかはわからない。出馬には20人の国会議員の推薦人が必要であるからだ。官僚の支持を集めている野田財務大臣が順当に行けば勝つところだが、民主党内には小沢・鳩山グループのように「脱官僚依存・政治家主導」を今もスローガンに掲げているグループもあるので野田も楽観はできない。
ただ、小沢一郎は自らが10月上旬の政治資金規正法違反に関する裁判を待つ身である。小沢の秘書の同法違反容疑での判決が9月26日に出る。検察側の調書が裁判官によって大量に不採用になっており検察側の立証は崩れつつあるが、小沢本人は民主党員資格停止の処分を岡田克也幹事長の率いる執行部から食らっており今回の代表選には出馬できないし、投票権もない。
それでも小沢グループは130人、鳩山グループは40人で合計170人。旧民社党系が40人、前原グループが80人、野田グループが25人、菅グループが40人と言われている(複数のグループへの重複参加あり)。今回の代表選は国会議員だけの投票なので、合計407人の議員を候補者は奪い合う構図になる。
メディアは早くも野田の「大連立への参加」を大きく書き立てている。大連立はすでにドイツで2005年に起きている。この時も与党だったシュレーダー政権(社会民主党)が選挙で第一党を取れず、第一党となったキリスト教民主社会同盟(CDU)も他の野党との連立が出来なかったために、結局、CDUとSPDの「二大政党」の大連立(グランド・コアリッション)となったのである。民主主義的な議会制度では多数を与党が取らなければ、野党の政策協議か連立を組むことでしか法案は通せない。
日本においても民主党は衆議院では過半数を超える議席を持っているが、参議院では過半数に達していない。この「ねじれ国会」の状況にある。
アメリカもそうだ。10年の中間選挙でオバマ大統領の民主党は共和党に下院で大きく議席差を付けられてしまった。8月2日の債務上限到達のタイムリミット直前に一応妥結した両党の「財政再建合意」でも民主党が掲げる富裕層向けの増税は実現できず、財政削減を求めた共和党の要求が一方的に通ってしまう結果となり、オバマの指導力が厳しく問われる結果となった。
加えて、日本においては、政治家よりも霞が関の高級官僚が影響力を持っているという「官僚主導国家」である点に注意をしなければならない。大連立を推し進めることで最終的に得をする(=利益を得る)のは実は、官僚である。なぜならば今言われている大連立は結局、官僚が提出する法案をスムーズに通すためだけのものであるからだ。官僚は、この大連立を機に原発再稼働、原発輸出、所得税・法人税・消費税の増税路線、日米同盟の強化に加えてTPP(環太平洋戦略経済連携協定)の推進などこれを気に一気にやってしまおうと目論んでいる。
政権交代のあとに民主党政権が掲げた、官僚主導から政治家主導への国家の枠組みづくりは、鳩山政権の無残な崩壊、その後の菅政権によって完全に頓挫してしまった。民主党だけではなく、今の自民党も相当弱体化しており、単独で政権を担える形にはなっていない。そんな時に小手先の大連立を行なったところで、結局は官僚の敷いたレールに乗るだけの政権運営になる。「救国政権」というには程遠い結果になるだろう。
菅直人首相が、脱原発政策に没頭していたために、消費税増税、TPPの実施のようなアメリカが強く求める政策は幸か不幸か足踏みをしている。これをアメリカとしてはアメリカの意向を重視してきた前原誠司前外相の息のかかった野田政権を実現することで早く達成したいだろう。官僚機構はアメリカの意向を無視できない。
文藝春秋への寄稿のなかで、馬淵は対米関係については述べていないが、野田は「日本の安全保障と外交にとって最大の資産であり基盤をなすのは日米同盟」と明瞭にと述べている。また、野田は日米同盟を「国際公共財」と述べているが、この表現は外務省や防衛省の官僚たちがよく好んで使う。野田は財務省だけではなく外務省、防衛省からも"期待"されている首相候補のようだ。
原発事故の対応の不味さを見透かされて日本は今、事実上の米国による「再占領」下にある。米国と日本の官僚機構は二人三脚で冷戦後の日本の安保政策を決めてきた。そういう経緯もあるので、なかなか官僚の敷いたレールから脱却するのは難しい。しかし、政治家が自らのアイデアで官僚やアメリカを説得し、納得させることができないままでは、日本の未来は真っ暗である。
その意味で、経済政策で既存の財務省路線に異議を唱えた、馬淵澄夫に私は少しだけ期待している。いずれにしても殻を打ち破る指導者の登場を私は強く期待している。(了)
<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。
普天間から福島まで日本の優柔不断/「政治家が『責任は俺がとる』と言えば官僚はやりますよ」小沢氏
普天間から福島まで、代償の大きい日本の優柔不断=メア氏
WSJ.com 2011/8/20 12:03.
日本では、菅直人首相が「戦後最大の危機」と呼ぶ東日本大震災後の対応に追われ、それまで論争の的となっていた沖縄普天間米軍基地移転問題はここ数カ月下火になっている。同基地の移転問題は菅首相の前任者、鳩山前首相の失脚の大きな原因となった。
だが、基地問題は間もなく再燃するだろう。この夏、財政危機に直面している米政府は予算削減を断行するとみられ、普天間基地の移転問題が数週間のうちに解決されなければ、普天間基地移転予算が撤回されるかもしれない。そうなれば、地元住民がどんなに反対しても基地はおそらく現在の場所に残ることにだろう。
少なくともそれが、著書「決断できない日本」(現時点では日本語版のみ)の宣伝のため来日中の元米国外交官、ケビン・メア氏の見解だ。菅首相は数週間内に退任するとみられ、問題を早急に解決するには、大胆かつ熟練した後継者が必要だ。
メア氏自身、沖縄に関しては苦い経験がある。鳩山氏同様、メア氏も沖縄をめぐる論争によって国務省日本部長という職を失うことになった。メア氏は以前、沖縄人を侮辱したとして地元で抗議の嵐を呼び起こした。しかし今週来日した同氏は、同氏の発言とされるコメントは報道によって非常に歪曲されたものであるとの主張を繰り返した。
国務省に30年勤務した後、今ではワシントンのNMVコンサルティングに勤務する 同氏は、東アジアにおける地政学的パワーバランスを維持し、中国からの現実の脅威に対抗するために沖縄は重要な戦略拠点であると考えている。沖縄県の最西端は台湾からわずか約100キロの距離にあり、台湾海峡で有事となった場合、極めて重要となる。18日に外国人記者との会見を行った同氏は「沖縄は東京よりも平壌に近い距離にある」と注意を喚起した。
同氏はその著書で、普天間基地の移転問題が未解決のまま、米歳出削減のあおりを受けるリスクにさらされることになったのは日本政府の優柔不断が原因と述べて いる。同氏によれば、沖縄の政治家と中央の政治家は移転計画を前進させ、実行するかわりにまずコンセンサスを築く必要があり、それは日本政治を決定付ける特徴ともいえるが、計画実行の障害になっている。
メア氏は、あと数週間以内に日本側で移転日を具体的に決めなければ、普天間基地は在日米軍の75%を受け入れている沖縄にそのまま残るとみている。
メア氏はまた、東日本大震災後、日本の政治的決断力の欠如を直接体験したと語った。3月11日の翌週に米軍が行った救援のための「トモダチ作戦」 の調整官を務めた同氏は、震災対応において、中央政府の当初の優柔不断を痛感させられた。
「日本政府には、『自分の責任において決断する』と言える人が誰もいない」とメア氏は述べ、震災直後の5〜6日間、政府では原子力発電所の危機は東電の問題という態度がみられ、「担当者は誰もいなかった」と指摘した。
記者:Cheng Herng Shinn
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◆菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎:百術は一誠に如かず2010-12-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎
2010年12月26日ラジオ(ニッポン放送22日収録)
菅原 今年最後の放送は、民主党元代表、小沢一郎さんにお越しいただいて、政治の話、日本のこれからの話、そんなことを聞こうと思います。あの、小沢さんは日ごろあまりご自分のことは言われませんね(笑)。
小沢 あはは。
菅原 座右の銘なんてものはありますか?
小沢 はい。僕は「百術は一誠に如かず」という言葉が好きで、どんなに策を凝らしても一番大事なのは誠を尽くすということで、今風に言えばパフォーマンスよりは誠を尽くすことの方が大事だと。そういう意味だろうと思うんですが・・・。
菅原 もう一度言ってください。百に技術の術ですか?
小沢 百ぺんの術策よりも、唯一つの誠より優れたものはないと。
菅原 一つの誠、はあ〜なるほどねえ。今日のしてきたネクタイをいうと、紺色と白で・・・。
小沢 あはは。
菅原 色はそういう色が好きなんですか?
小沢 色は背広でも何でも紺が多いですね、我が社は(笑)ただ最近は、紫がはやっているものですから「お前も同じようなものじゃなくこういうのもつけろ」つって、ネクタイを何本か頂きました。
菅原 そんな小沢さんの人柄がなんとなく伝わったかなというところで、あの、政治というか、なぜなんでしょうか、あの沖縄の問題。承知をされているんですけど、鳩山さんもついに断念してしまった。なんであのときにずーっと行かなかったかなと思うんだけども、政治家・・自民党も民主党も僕も含めて、アメリカにね、私のような素人、門外漢から見ても日米同盟なんて言葉だけはきれいなことを言ってるけども、どこかね、怯えてるんじゃないのと。そういう風に見えるんですよ。アメリカの何に怯えてるんですか。
小沢 そうですね・・・アメリカの経済力を含めた巨大な力でしょうね。怯えと同時にですね、アメリカの言うようにしてれば楽だと。そういう意識があるんじゃないでしょうかねえ。食うには困らないというとこでやってれば。ですから、そういう意味で、独立国家としての日本はどうあるべきかとか、そういう類の問題はできるだけ考えないようにして、言うとおりにしてると。そうしてればまあ、なんとか生きていけるんじゃないかと。という、二つの要素があるんじゃないですかね。
菅原 小沢さんと同じ党だけど、今の政権の人たちはね、ほとんどみな普天間・辺野古問題は県外、国外と言ってたじゃないですか。ところが今は全部ひっくり返ってしまった。政治家として情けないなと思っているんですけども、その一方で、それじゃあ中国と親密に仲良くかと思うと、中国に対しても肩肘張って。
小沢 基本的に事なかれ主義なんですね。中国に対しても経済力でつながっていて非常に強くなって大きくなっていますが、まあ、あまりゴチャゴチャしないようにと。尖閣の領土侵犯のときも経団連なんかが「早くこれケリつけてくれないと企業経営にひびく」とか、そういう観点だけなんですね。そういうことですから、アメリカからも中国からも実は全く相手にされてないですね。ロシアだって同じですわね。そういう意味で、国は国民と領土で成り立っているものですから、そういうきちんと国民の生命、それから日本国というそのものをきちんと自分で守っていく、そういう考え方、政治的な姿勢、スタンス、そういうものが全く・・・これ自民党時代からですけども、なかったと。今もないと。そういうところが、彼らに軽んじられる最大の原因だと思っています。
菅原 本来なら、戦いに敗れたのですから、しばらくは家来でいても仕方なかったにしても、65年たっても自立、独立されてないとしたら、こんなに情けないことはないんで。小沢さんは以前からアメリカとも対等に、中国とも対等に、正三角形でいかなきゃいかんと。特に中国を中心とした東アジア同盟というか、そうした形でこれからの日本はやっていかなきゃいかんと、小沢さん除いてそういうことを言う人が一人もいないんじゃ、これは困ったもんだなと思っているんですが。
小沢 そういう発言すると角が立つと議員はみな捉えるんですね。ほんとの事なかれですから、(外国から)まず軽蔑されますね。
官僚、政治家、それぞれの職分を守ること。政治がきちんとビジョンを示し責任を取れば役人は理解してくれる。
菅原 そういう話を聞くと、結局政治家は官僚に取り込まれてしまっている。こっちから見えない。官僚のね、これはもういろんな人が言ってるんだけど、明治維新から続いている官僚制度ですよね。(太平洋戦争終戦で)改まるかと思ったら官僚のシステムだけは生き残ってる。官僚制度の問題さえ片付ければ、自ずと普天間の問題も、日米同盟の問題も、日中の問題、アジアの問題、いろんな問題が収まってくると思ってるから。小沢さんがもしこの先政治の中心に立ったとしたら、どのようにされようと思っていますか?
小沢 明治以来の官僚機構。戦後、ぼくは、戦前以上に官僚統治が行き渡っていると思ってるんですね。それと同時に日本の官僚というのはアメリカと密接に結びついています。外務省だけじゃなく。そういう面もあるんですよ。
ただ、僕は官僚を否定してるんじゃなくて、日本の官僚は国家レベルのことをやりなさいと。国会議員も国家レベルのことをやりなさいと。それぞれの職分を守りなさいと、それだけのことを言っているんですが。
官僚の人もね、大部分の人は既得権を奪われるんじゃないかという恐怖感でいますけれども、優秀な人ほどこのままではいけないんじゃないかと思っています。腹の中では。だから僕はその人たちがきちんと表に立ってやれるようにするためには、政治家が「こういう国づくりをしたい」と、だから「この方針に従って、具体的な行政をあんたらやってください」と、「その結果はオレが責任とる」と、言えば彼らはやりますよ。
その、「何かお前たち考えろ」と、役人の考える範囲というのは今までの基本方針を大変更するということはできませんから。既存の積み上げということになります。それでその中で何か知恵を絞って持ってって、うまくいかなければ「お前らけしからん」「役人けしからん」と、役人のせいにされちゃう。これじゃあたまったもんじゃないというのが彼らですね。これは全部のことに共通することで、政治家自身がやはり自分のビジョンと主張を内政でも外交でもきちんと申すと、そういうふうにすればですね、僕は必然的に役人はついてくると思っています。
菅原 小沢さんからそういう風な話を聞くと簡単なのになあ・・・と。素人から見るとねえ、できないのかなあと・・・。
小沢 官僚の既得権を奪うだけではダメなんで。必要なことは、僕は、もっと権限を強化しなきゃいけないところもあると思うんです。例えば危機管理とかテロだ金融危機だ天然災害だといろんなことあるでしょう。そんなときにもっと政府は強力な権限持たないとダメですよ。阪神大震災みたいに、総理大臣が来るまで三日間かかって何かかんかしつつ、その間に人が死んでしまうなんて。その意味では素早くパッと対応できるような、国の権限を強化しなきゃいけない面も、あります。それはもう事柄に応じてありますけども、そういう役割をきちんと付与すれば、私は役人は大丈夫、理解してくれると思います。
菅原 これから小沢さんがね、政治生命をかけて、特に、来年、裁判も待ち受けていますね。政治とカネという問題は、政治にカネは必要である。
小沢 以前からずーっと僕が主張してるのは、政治資金の問題、私個人のこと云々ということをこの場で申し上げるつもりはございませんが、政治資金の問題を筆頭にして、行政であれ、一般の会社であれ、日本は非常に閉鎖的、クローズドな社会ですよね。菅さんはオープンオープンとおっしゃってるからもっとほんとはオープンにしなきゃいけないんですが。
僕は、政治資金も、誰から貰ったか、極端に言えばですよ、誰だって浄財くれるっていえば貰ったっていいと思う。それで、何に使ったか、収入と支出を全部、1円からオープンにすると。それで国民みなさんが「あんなやつから貰うなんてけしからんじゃないか」とか「こういうところでこれを使うのはけしからん」と、そういうふうに思えばそれは選挙の際にきちんと判断すればいいんで。
今は、オープンオープン言いながら・・・私自身は全部オープンにしてますけども、オープンにしなくていい部分が残ってますし、それから行政でも、機密事項的なことはほとんどクローズドですよね。大臣だって知らされていないし。会社だってそうです。ほんとの機密事項は株主であれ従業員であれ誰も知らない。僕は、アメリカみたいになんでもかんでもオープンにするというのは弊害も出てくると思います。少なくとも、ヨーロッパ並みのオープンな社会にしていかないといけないと思っています。
菅原 あの、国会議員は(政治献金ではなく)国民の税金で賄ってますよね、給料から政治活動費も。
小沢 日本はそのパーセンテージが高いですね。
菅原 そうですよね。それであるんなら、政治資金も、政治に本当に使うためのものをね、アメリカ式に、広く集めたらどうなんだろうと。こないだ、岡田さんが経団連から献金を、あれだけダメだって言ってたのに(笑)、もらうことにね、そのために法人税5%下げるなんて(笑)それがひとつのアレなのかなと思わざるを得ないようなね、かえって国民から見てもおかしいなということが、清潔に、クリーンにと言いながらあらたまってこない・・・。
小沢 大きな変革をしようとすれば、今までの旧体制で既得権を持っていた人からすれば脅威ですから、「あの野郎さえいなければ」ということになりがちなのは、歴史上でも仕方のないことなんですけども。
ただ、僕は、質問していないのは、国民の皆さんは、いま、テレビ新聞だけじゃなくて、ネットやいろんなもの、媒体が普及してきましたよね。ですからものすごく意識が変わってきている。このラジオだって、いっときテレビやなにかで押されたみたいであれしてますけども、ラジオ聴いてる人っていうのは意外に多いんですよね。いろんな意味で情報を知ることが出来るようになったので、僕は国民の皆さんは、かなり意識が違ってきてると思っています。
ですから、さらにもう一歩進んで、今お話したように、自分も、百円でも千円でも、献金して政治活動を助けてやろうというようなことまで行けば、いろんな問題は少なくなりますよね。僕の場合はね、ワーワーワーワーメディアに騒がれるたびに個人献金が数百人規模で増えてるんですよ(笑)。
菅原 ほお。
小沢 もちろん、アメリカみたいに何万何十万という人じゃないですから、トータルの金額はそんな大きいわけじゃないですけども、それでも、去年も、今年も、300人、400人ずつ個人献金者が増えてます。
小沢 だから僕はメディアの非難が集中してますけども、お金のことであれ何であれ、不正行為がね、あったならば、それは政治家であれ一般人であれきちんと罰せられなきゃいけないと。それはその通りだと思うんですが、ただなんとなくね、そのときそのときで、一人を悪者にして、肝心な世の中の仕組みや政策やそういうものが全然改革されないで終わっちゃってるんですね。その場その場で。そこが僕は非常に問題だと思っていますね。で、何か起こるたびに、規制が強化されるんですよ。規制強化というのは官僚の権限を大きくするだけなんですよ。これがほんとに繰り返しなんですよ、日本の。
菅原 我々のようなね、政治に縁のないところで生きてるでしょう、それでも規制はひしひしと迫ってきています。だからね、戦後のどの時代よりもいま窮屈でね、「これもダメ、あれもダメ」、ね。そして税金の増税を堂々と言いかけて止めてしまったもんだから、なんかね、ズルくね小さく、ここから取ってあっちから取ってね(笑)気がつかないところで取り上げてるんですよ。そういうのをね、改めてもらいたい。
菅原 あの、金の問題が長くなりすぎたんで、ここで、これからの日本の国の姿、そして政治をどういうふうに、特に、来年、政治的な動乱が起きるんじゃないかと思っているんですが。そういう中で小沢さんは何を考え、何を目的として、この先、やっていかれるか。その話を聞かせていただいて終わりにしようと思います。
小沢 はい。私が言っているのは、自立した日本人と、自立した日本人の集合体である自立した日本国。それが私の、抽象的な言葉でいうと目標で、要するに、自分自身で考え、自分自身で判断し、自分自身で責任を取ると。ということでないと、個人も国も成り立たないし、誰にも相手にされないということだと思っているんです。
アメリカは日本の最大の同盟国ですけども、同盟国であるに相応しい日本は、じゃあ日本の役割はなんなんだと。そして、アメリカは、なんなんだと。現状はそれでいいのかと。そういうことを日本人がしっかり持って、それでアメリカにも言わなきゃいけない。
中国も、僕これ既に言ってんですけども、尖閣列島は、数千年の中国王朝の支配に入ったことは、歴史的にないんですよ。間違いない、日本の正真正銘の領土なんですね。そういうことについて、しっかりした・・・僕はもう中国の人にも言ってますけどね、あれは歴史上見ても争うことは何もないと。その問題であれ何の問題であれ、しっかりと自分のあれを相手に伝えられるような日本人に、そして日本の国にしたいなあと、そう思っております。
菅原 さて、そうは言っても、何年になりますか(笑)、言い続けてもね、みんな腰倒れといいますか、小沢さんも今年は68歳、まあまあ、私なんか10個も上ですけどもね、今のままでは、私のような門外漢でも不安でね、どうなんだろうこの国は。
もう孫もいるもんだから、特に孫なんか見てると、いま中学、これから高校に行こうなんてものだから、これからの日本はどうなるんだろうと。細かく言えば教育はどうなるんだろうね食料はどうなるんだろう、いろんなことがやっぱり・・そしてそれは殆どが今までの政治の官僚組織のね、具体的に暖かい手を差し伸べてやってくれてないんですよ。
政治家としての小沢さんは実績があり度胸があるんだからね、ひとつ・・・まあ、そういう人が何人かいるじゃないですか、亀井静香とかね(笑)。
小沢 仰るようにですね、今の日本は老いも若きもですね将来の不安、将来の見通しが全然たたない、これは経済であれなんであれね、そこに僕は日本の社会の不安定なそして不安な要素があるんだと思うんです。ですからやっぱりあらゆる意味で、少なくともリーダーが「こういう日本を作りたい」と「このために皆で頑張ろうや」というやっぱり自信を持ってですね、言えるようにしなきゃいけないと思いますですね。
菅原 お互いにあの東北のね、岩手と宮城の県境で、歩いても行けるところで(笑)。生まれてるんだけども、明治維新をもう一度振り返ると、「白河以北一山百文(『白河の関所より北の土地は、一山で百文にしかならない荒れ地ばかり』という侮蔑表現)と言われてね、ずぅっと蔑視されて、そういうやっぱり薩長土肥、西側の、私なんか薩長土肥と、向こうは敵だって言うんだけども、西郷さんも好きだし、大久保利通も。ねえ、でもそういった維新のときの精神がだんだんだんだん山縣有朋あたりになってくるとやっぱり別のものに変わってしまって・・・。
小沢 官僚機構がどんどん強くなってきてしまいましたからねえ。だから官僚のシェアの中でみんな結局は悲惨な戦前の歴史になってしまうんですよねえ。明治のリーダーが偉かったのは「白河以北一山百文」という言葉がありますけども、明治のリーダーが偉かったのは、敵であった徳川幕府の中からも優秀な人材はどんどん登用していますね。これはね、僕はえらかったと思いますね。
菅原 五稜郭榎本ね。
小沢 ええ。誰であっても。それでね、うちの大先輩の原敬であっても・・あれ東北の方ですからね、それが立憲政友会幹事長になって総理大臣にまでなったわけですから。いろんな人を、白河以北の人材であっても優秀なら採用したんですね。それだけの、やはりトップリーダーに人を見分ける目があったんでしょうね。
菅原 必ずしも薩長全部が悪いわけではなくて。だけどやっぱり東北は悲惨だった。賊軍と言われたりしてね、長いこと雌伏してた。その雌伏から、ひとつ、小沢さんが・・・。
小沢 あははは。
菅原 立ち上がりました。
小沢 あはは、はい、そうですね。
菅原 今日は本当にありがとうございました。(強調=太字・着色は、来栖)
東電社員殺害事件とDNA鑑定/暗い影=最先端の科学を扱う側の問題 捜査機関による証拠の捏造
反射鏡:東電社員殺害事件とDNA鑑定の「光と影」=論説委員・伊藤正志
またもDNA鑑定が人生を大きく変えようとしている。
97年に起きた東京電力女性社員殺害事件のことだ。被害女性(当時39歳)の体内から採取された精液のDNA型が、無期懲役が確定したネパール人、ゴビンダ・プラサド・マイナリ受刑者とは別人のものと判明した。
さらに、遺体近くなどにあった体毛のDNA型も、この別人と一致した。
被害女性は日常的に複数の男性と性関係を持っていたとされる。ポイントは、精液だけでなく体毛が現場に残されていた点だろう。殺害される前に現場で性交した可能性を示すからだ。
現場の部屋の鍵を持っていたマイナリ受刑者は、被害者と性関係を持った後に殺害し現金を奪ったとして有罪になった。だが、新事実によって「被害者が他の第三者と現場にいたとは考えがたい」とした確定判決の認定は、大きく揺らいだ。
マイナリ受刑者は再審請求中だ。「新証拠によって事実認定に合理的な疑いを生じさせれば足りる」というのが、再審開始の基準だ。もちろん、最終的な有罪・無罪は証拠の総合評価で決まるが、まずは再審の一歩を踏み出すべきだろう。
仮に再審が開始され無罪になれば、DNA鑑定はマイナリ受刑者を救う「決め手」となったと評価できよう。
だが、マイナリ受刑者を塀の中に突き落としたのもまたDNA鑑定だった。殺害現場の部屋のトイレで見つかったコンドーム内の精液のDNA型などが、マイナリ受刑者と一致したことが有罪の根拠となったからだ。
冒頭で「またも」と書いたのは、足利事件の菅家利和さんを思い出したからである。
90年に栃木県足利市で4歳女児が殺害された事件で、菅家さんは冤罪(えんざい)に追い込まれた。誘導による「自白」もあったが、女児の下着から検出されたDNA型が、菅家さんと一致したとされたことも大きな理由だった。
だが、当時の鑑定技術ではその型の出現頻度は1000人に1・2人で、足利市内の成人男性だけで100人が該当した。
結局、DNA鑑定技術の進歩を踏まえた再鑑定の結果、菅家さんの冤罪は証明された。菅家さんを絶望のふちに立たせたDNA鑑定は、雪冤の「決め手」にもなったのだ。
米国でも近年、DNA鑑定の進歩により刑事事件で潔白が証明される人が相次いでいる。成城大の指宿信教授は、「無実を探せ!イノセンス・プロジェクト」(現代人文社刊)の中で、09年6月末時点で240人という数字を挙げている。うち17人が死刑囚というのも驚きだ。
警察庁によると、最新の検査法によるDNA鑑定では、約4兆7000億人に1人の確率で個人識別が可能だという。まさに犯罪捜査の切り札、時に冤罪を晴らす手段として最新のDNA鑑定は「光」を放つ。
だが、目をこらせば、その裏に暗い「影」がある。それは最先端の科学を扱う側の問題だ。
東電女性社員殺害事件に話を戻す。警察はトイレのコンドームのDNA鑑定をする一方で、なぜ被害者体内に残った精液のDNA鑑定を当初しなかったのか。「微量で当時の技術ではできなかった」と説明される。だが、鑑定しようとしたのかさえ判然とせず、恣意(しい)的な判断があったのではとの疑問が残る。
また、被害者のショルダーバッグの取っ手からマイナリ受刑者と同じ血液型B型の付着物が検出され、検察は有罪の根拠の一つとしている。ならばDNA鑑定で白黒をつけるべきだが、過去の鑑定で付着物を使い切ったためできないという。
事実ならば、ご都合主義的な鑑定の運用に危うさを感じる。
裁判官出身の森炎弁護士が「なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか」(幻冬舎新書)で、さらに端的に指摘する。
森弁護士は、DNA鑑定の画期的な発展を前提に、捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)も新たな局面に入ったとして、こう書く。
「全く無関係な者を犯人に仕立て上げることなど、いとも簡単にできるようになってしまいました。提出を受けた検体をほんの少し、被害者の持ち物に付着しさえすれば、それだけで鉄壁の証拠が作り出されてしまいます。(略)完全犯罪ならぬ完全冤罪がインスタントで作り出せるということです」
ミステリー小説のようだが、背筋が凍る仮説である。
現在、DNA鑑定は指針策定を含め警察に運用が任されている。試料の管理に警察以外の第三者を介在させ、方法についても明確なルール作りが必要だ。
毎日新聞 2011年8月21日 東京朝刊
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◆東電女性殺害事件/弁護団、「鑑定結果は無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」再審開始を求める2011-07-27 | 社会
民主党代表選/強まる「小沢氏」に対する官僚・メディアによるネガティブキャンペーン/悪意に満ちた人物破壊
小沢批判を18年続ける日本メディアをオランダの大学教授批判
週刊ポスト2011年9月2日号 2011.08.21 07:00
民主党代表選が本格化する中で、またぞろ政・官・報から「反小沢」の大合唱が巻き起こっている。この“恒例行事”を、「日本の歪んだ民主主義政治の象徴である」と喝破するのは、長年にわたって日本政治を研究し続けてきたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学教授)だ。
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私は30年以上にわたって日本政治、そして日本と国際社会との関係を取材・研究してきた。その立場から自信を持っていえることは、現在の日本は、民主主義国家としての命運を左右する重要な転換期を迎えているということである。
その最大のキーマンが小沢一郎氏だ。私は現在の日本政治において、本当の意味での改革を成し遂げられるのは彼以外にないと考えている。
しかし、民主党の代表選がいよいよ始まろうとする中で、小沢氏に対して再び官僚や新聞・テレビメディアによる攻撃が強まっている。私は『誰が小沢一郎を殺すのか?』(角川書店刊)の中で、繰り返される「反小沢キャンペーン」が、いかにアンフェアで悪意に満ちた「人物破壊」を目的としたものであるかを論じた。
もちろん他の国でも、政敵に対するネガティブキャンペーンはある。だが、小沢氏に対する攻撃は、1993年の自民党離党・新政党結成以来18年の長きにわたって続いてきた。これほど長期にわたって個人を標的にした「人物破壊」は世界に類を見ない。
日本では少しでも小沢氏を擁護する発言をすると、大メディアから「小沢の犬」という評価を受ける。それ故に日本では、「小沢支持」を堂々といえる知識人が現われない。
断わっておくが、私は1994年以降、小沢氏とはほとんど会っていない。むしろ、会った回数でいえば菅首相や鳩山由紀夫・前首相の方がはるかに多く、何度も議論を交わしており、政治的にも私は“小沢サイド”に立つ人間ではない。私が訴えたいのは、検察と大メディアによる小沢氏への「人物破壊」は、一政治家のスキャンダル報道にとどまらず、日本の民主主義を後退させるものであるということだ。
私が昨年12月に日本に滞在した時、小沢氏を支援する一般市民が検察への抗議デモを広範囲に行なっていた。だが、新聞、テレビはそれを決して取り上げなかった。
また、去る7月28日に行なわれ、約10万人がインターネットで視聴した小沢氏と私の対談も、大メディアは完全に無視した。その場で小沢氏は「官僚主導の政治から、政治家主導、国民主導の政治に変えなくてはならない」「その代わり、国民の代表である政治家は自分自身の責任で政策を決定、実行しなくてはならない」と語った。しかし、そうした重要な発言も、メディアが報道しなければ国民の政治的現実とはならない。
逆に、些細な政治上の出来事が過大に誇張されて報道された場合、それは重要な政治的現実として国民の脳裏に焼きついていく。一昨年以来続けられてきた「小沢資金疑惑」の報道ぶりは、小沢氏が国家への反逆行為を起こしたとか、あるいは凶悪なレイプ犯罪をしたかのような暴力的な書き方だった。
しかし、読者は新聞記者が書いた意見を、自分たちも持つべきだと思い込むようになる。強大なメディアはこうして情報を独占し、“政治的現実”を作り出して、国民世論に重大な影響力を与えてきた。
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◆強姦罪の被告に最高裁が無罪判決/小沢捜査の大鶴基成前東京地検次席・佐久間達哉前特捜部長2011-07-26
◆前原誠司外相辞任と『誰が小沢一郎を殺すのか?』〈カレル・ヴァン・ウォルフレン著〉2011-03-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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◆『誰が小沢一郎を殺すのか?』の著者カレル・ヴァン・ウォルフレン氏と小沢一郎氏が対談〈全文書き起こし〉2011-07-30 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
『誰が小沢一郎を殺すのか?』著者と小沢氏本人が対談 全文書き起こし
NCN 2011年7月29日(金)16時48分配信
『誰が小沢一郎を殺すのか?』――この衝撃的なタイトルの本を上梓したオランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、官僚・マスコミ・検察に代表される「非公式権力」によって、民主党の小沢一郎元代表が"抹殺"され続けていると日本のシステムを分析・紹介した。そのウォルフレン氏と小沢氏本人が2011年7月28日、自由報道協会主催の公開討論会で対談。本の感想について「私が露骨に言えないことを正確に言っていただいた」という小沢氏が、ウォルフレン氏とともに東日本大震災と原発事故対応、菅首相と民主党の問題点、検察、金融などさまざまなテーマについて、日本人の特性と日本社会への提言を織り交ぜながら語り合った。小沢氏の口からは「お悔みを申し上げるのが政治家の仕事なのか?」「菅さんは私の常識では理解できない」など、刺激的な言葉も飛び出した。
以下、番組での小沢氏とウォルフレン氏のやりとりを全文、書き起こして紹介する(討論会の司会はジャーナリストの上杉隆氏)。
・[ニコニコ生放送] 小沢氏×ウォルフレン氏の対談から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv57454701?po=news&ref=news#09:30
■「日本人のあり方」が日本国の大きな資源
上杉隆氏(以下、上杉): 公開討論会を始めたいと思います。その前にウォルフレンさん、一言ごあいさつを頂けますか。
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏(以下、ウォルフレン): 今日はこのような機会をつくっていただき、お招きいただいたことを大変うれしく、また光栄に思っている。日本は第二次世界大戦以降、最大の災害に接した。災害に対する日本の皆さんのあり方と措置は、世界中の人たちの心の琴線に触れた。それは皆さんが冷静に対応されたことからだと思う。
この大災害に対して、日本の皆さんが心してあたったことで、国際的には日本人の威信が高くなったと思っている。災害に瀕して、非常に尊厳を持って、秩序正しくあたられた。お互いに「大変だった」という言い方をせず、お互いを助け上げる、引っ張り上げるような対応だった。「日本の人たちはすごいな」ということを、多くの友人から聞いた。その時も、そして今も思っているのだが、日本の皆さんのあり方、これが日本の皆さんにとって、また日本の国にとって大きな資源だと思っている。
この数年、日本の私の友人からは、「本当にイライラしてどうしようもない」という話を聞く。政権も交代したのだし、「何とか政治の体制、構造が変わってほしい」と、「より良い制度ができることを期待していたのに・・・」ということを聞いている。こういう大災害に接した時こそ、何か壮大なことができる、ひとつの大きな窓が開かれたという気がする。それを可能にする資源というか材料というのは、日本の皆さんの中にあると思う。そういう壮大な何かをしなければならない、今がその時期だ、という話を今日はできればと思って来た。
個人的なコメントをさせていただくが、家内と私は災害(東日本大震災)が起きたあの時期、日本にいなかった。普通は日本にいて、この本(『誰が小沢一郎を殺すのか?』)が出版された時期でもあったから、通常であれば日本にいたのだが、息子がちょうど誕生したので、たまたま日本にいなかった。そういう時に災害が起きた。家内と私は「日本にいるべきだった」という気持ちがした。それだけ日本に対して深い気持ちを持っていた。日本の市民ではないし、日本の国籍を持っているわけではないけれど、日本をそれだけ近く感じているという立場からお話させてもらいたい。
■お悔みを申し上げるのが政治家の仕事なのか?
上杉: まずは「3.11」の震災について、その震災後のことについてお話を頂ければと思う。今ウォルフレンさんからお話いただいたので、小沢さんの方から。「3.11」の国を揺るがすような大震災以降、どうも既存メディアでは小沢さんの影が見えなかったのでは、何もしていないのではないか、という声もあった。果たして小沢さんはどのような活動をされていたのか。「3.11」の発災以降のことも含めて、お話をいただければと思う。
小沢一郎衆院議員(以下、小沢): 今度のいまだかつて経験したことのないような大災害、私も被災県の岩手県の出身だけれども、特に福島県の原発の損壊と放射能汚染の問題、それが非常に深刻な事態だと、私は当初から機会ある度に訴えてきた。このような時にあたって、今ウォルフレンさんが指摘されたが、世界でも非常に評価されるような日本人の長所が発揮されていると同時に、日本人の欠点も露呈されているというのが、正直なところではないかと思っている。長所というのは、それは一般的に言われているように、こんな大災害にもかかわらず、みんな一生懸命力を合わせて復興のために頑張っていること。その忍耐と努力と、そして能力というのは、当然日本人として誇っていいことだと思っている。
ただ、放射能汚染といういまだかつて(ない)、ある意味においてはチェルノブイリやスリーマイル以上に、非常に大きな危険性を秘めているこの原発の事故と放射能汚染の拡大――。これほどの大きな深刻なことになると、単なる個人的な力の発揮ということ以上に、本来もっと国家として前面に立って、そして英知を集めて思い切って対策を講じていく仕組みと姿勢が必要だと思う。けれども、どうもその意味において、政治の面だけではなくて、一般の国民の中からもそういった強い要求というか、動きというものがなかなか出てこない。まさに非常に日本的な現象だと思っている。ほかの国ならば、こんなに黙って現状を見過ごしているような国民は多分ないだろうと思う。大きな大きな国民運動にまで広がりかねないと思うが、そういう(大きな運動にならない)ところがちょっと日本の国民性というか不思議なところであって、「まあまあ」という中で個人が一生懸命頑張っている。
上杉さんがマスコミの話をしたけれども、マスコミ自体も、政治が何をすべきか、政治家が何をすべきかと(報じない)。お見舞いに現地を歩くのが政治家の仕事なのか? お悔やみを申し上げるのが政治家の仕事なのか? というふうに私はあえて憎まれ口をきくけれど、やはり政治の役割というのは、そういうことではないと思う。このような深刻な事態をどのようにして克服していくか、そのためには政治の体制はどうあるべきなのか、政治家はどうあるべきなのかと考えるのが、本当に国民のための政治家のあり方だと私は思っている。そういう意味で、今後もいろいろとご批判は頂きながらも、私の信念は変わらないので、その方向で頑張りたいと思う。
■財源があろうがなかろうが、放射能を封じ込めろ
上杉: 引き続いて、お二方に質問を。自由報道協会の面々は発災直後から現地に入り、取材活動をずっと行ってきた。その取材の中で相対的に、結果としていま現在、県単位で見ると岩手県の復興が意外と進んでいるという報告が上がってきている。おべんちゃらではなく。(小沢氏の)お膝元の岩手県の復興が進んだという見方もできるが、一方で岩手県だけがそういう形で支援が進めばいいのかという疑問もある。そこで、これはウォルフレンさんと小沢さんお二方に伺いたい。仮に現在の菅政権ではなく、小沢一郎政権だったらどのような形で国を復興させたのか。また、もし小沢一郎総理だったら、具体的な方法としてどのような形で今回の震災に対応したのか。ご自身のことでお答えにくいかもしれないが、まず小沢さんから。
小沢: 岩手県の震災復興の進捗具合が大変良いとお褒めいただいているが、別にこれは私が岩手県にだけ特別何かしているということではない。ただ、それぞれの国民あるいは県民の努力と同時に、地域社会を預かっている知事はじめ、それぞれの任務にある人たち、トップが先頭に立って、そしてその下で皆があらゆる分野の活動で一生懸命やっている。岩手県が他の県に比べて良いとすれば、そういう体制がきちんとされているので、復興の進捗状況が良いと言われている理由ではないかと思っている。
私の場合は、かてて加えて原子力ということ、放射能汚染ということを強く主張している。これはもちろん東京電力が第一義的に責任を持っていることは間違いのないことだけれども、日本が政府として国家として、原子力発電を推進してきたことも事実だし、原発の設置運転等については許認可を与えている。そういう意味から言っても、また今日の放射能汚染が依然として続いているという非常に深刻な事態を考えると、東京電力が第一義的責任者だといって済む状況ではないのでは。東京電力にやらせておいて、政府はその後押しをしますよ、支援しますよというシステムでは、本当に国民・県民の生活を守っていくことはできないのではないか。
やはり政府、国家が前面にその責任をもって、最も有効と思われる対策を大胆に(行う)。これはお金がいくらかかる、かからないの問題ではない。メディアも含めてすぐ財源がどうだなんていう話が、また一般(財源)の時と同じような繰り返しの話ばかりしているが、そんな問題ではない。極端な言い方をすれば、財源があろうがなかろうが、放射能汚染は何としても封じ込めなければいけない話で、それは国家が政府が、前面に立って全責任でやる。私はそういうシステムを、仕組みをもっともっと早く、今でも遅くないから構築すべきだと思っている。今なお、東京電力が第一義的責任というやり方をしていたのでは、多分解決しないのではないかと思っている。
■菅さんは一人で何でもできると思い込んでいる
上杉: ウォルフレンさん、同じ質問だが、もし菅総理ではなくて小沢一郎総理だったら、この震災に対してはどうなっていたか。
ウォルフレン: いろいろな面があると思うが、まず3月11日にあの災害が起きた当時、私は阪神・淡路大震災の時と比べて政府の対応はどうだったかと、直感的に思った。当時の政府の対応と比べて、今回はずっと早く迅速に動いたという気がした。私はそのストーリーを書き、世界中に報道された。その時に私が言ったことは、「半世紀続いた一党体制が崩れて、新しい民主党という政党のもとに政権が建った。その政権は本当に国民のことを、人のことを大事に考えて中心に置いている」という書き方をした。ところが、せっかくの初動後の時間が経過するに従って、壮大な画期的な改革をする機会が与えられたにも関わらず――それはキャリア官僚の体制の上に政治的なコントロールを敷くということだったが――そこに至らないでズルズル時間が経ってしまった感じがする。
なぜ、そうなってしまったのかを考えたわけだが、1993年という年以降、政治の改革をしようと集まった政治家たちが、新しい民主党という党をつくった。そして官僚体制に対して、政治がきちんとコントロールしよう、今までなかった真摯な政府をつくろうという人たちだったのに、どうなってしまったのかと思った。何が起きてしまったのか、正直いって私自身は分からない。ただ、ひとつ考えられるのは、首相が一人で何でもできると思ってしまっているのではないか、ということ。数日前に日本に来て、その間多くの方々といろいろ話をして感じたのは、どうも菅さんは、時々いいアイデアもあるのかもしれないが、それを自分一人でやるだけの政治力があると思い込んでしまっているのではないか、ということだ。
菅さんにしても、誰であっても、一人ではとてもできないことではないか。災害に対処しながら、また原発事故に対処しながら、今までの官僚体制に政治がコントロールしていく――それを同時にやるのは大変なことだ。細かいことは存じ上げないが、原発事故が起きたということは、多くの人たちが新しいところで生活を始めなければならない。再定着が必要になってくるわけだから、政治家一人ではとても負えるものではない。民主党をつくった人たちが、官僚制度の上に政治的なコントロールを敷こうと、そして本当に政府をつくろうと、同じ志を持った民主党の政治家たちがお互いに、一緒に協力をしていかなければできないことなのだ。
災害が起きる前年、去年の秋だったけれど、少なくとも三人(小沢氏、鳩山由紀夫氏、菅直人氏)のトロイカ体制という話を聞いた時に、ある意味では当たり前だが、私はすごく良いアイデアだと思った。明治維新ひとつをとってみても、一人で誰がやったというわけではない。志を同じくした人たちが、一緒にやったことだった。戦後の復興にしても同じ。皆で一緒にやって初めてできたこと。半世紀に渡って一党支配の体制を崩した新しい政党が、新しいシステムをつくる。それにはトロイカであれ、グループであたっていかなければならないと、私は去年思ったものだ。
小沢政権ができた場合に、この災害にあたってどう対応されたかのは分からない。けれども、私は小沢さんは「官僚を制する」というよりは、「官僚と一緒に仕事をする」能力がある方だと思っているし、権限の委譲もできるし、官僚の下に置かれることは絶対にない方だと思っている。小沢政権ができた場合には、きちんと然るべき人たちと協調体制のとれた対応をとっていかれるのではないかと思う。
■現状を維持しようとする日本の免疫システム
上杉: (ウォルフレン氏が書かれた)『誰が小沢一郎を殺すのか?』という本のタイトルも衝撃的だが、その中で小沢一郎さんに対して、日本国内の権力構造が"人物破壊"のキャンペーンを張っているとウォルフレンさんは指摘している。「世界的に類を見ない人物破壊」――少し聞きなれない言葉だが、ウォルフレンさん、せっかくだから小沢さんが横にいらっしゃるので、この本で書ききれなかったこと、そしてぜひ聞いてみたいことを質問してはどうか。
ウォルフレン: 前にも言ったように、私は特別小沢さんを知っているわけではないし、友人ということでもない。小沢さんよりはむしろ、菅さんの方をよく知っているし、それよりさらに鳩山さんを知っている、ということが正しいかと思う。私が関心を持っているのは、政治体制をきちんと制する、その現象をもたらすためのタレント・才能を持った方、こういう有能な人を抹殺するというメカニズム、そのシステムに非常に関心を持っているわけだ。
この(日本の)マスコミの問題というのは、不思議な逆説的な現象を呈している。マスコミの主流派は「政治的なリーダーシップが欠如している」「なぜ、そういう政治家が出てこないのか」と言うが、出てくるとその人を抹殺しようとする。なんて奇妙なシステムだと思っている。私はマスコミ自体が悪いからそうなっているとは言わない。ただ、どうも「既存の秩序を守る」――それが自分たちの義務であるかのようにマスコミが思っているのではないか。20年〜25年、私はいろんな官僚やシニア編集者の方々と会い、話し合う機会があった。彼らはどうも秩序が覆ることや、それが脅かされることに対して、恐れを感じている。現体制を何としても守りたい、という気持ちがあるのではないか。
また検察の小沢さんに対するやり方というのは、外から見ると、本当に馬鹿げていると言わなければならない。だから「日本には免疫システムがあるのだ」というふうに言うわけだ。私があえて「民主党政権になっても、小沢さんが首相にはならない」と予測したのは、2009年の春だったと思うが、先ほど言った"現状を維持しようという免疫システム"が存在しているから、そう思ったのだ。名前を忘れてしまったけれど、自民党のある人が私に漏らした。「検察が小沢さんに対してああだこうだ言っていることを代議士全部にやったら、国会は空っぽになってしまう」と言っていた。それで12月になって検察が十分な証拠が集まらなかったと言ったら、朝日新聞の論説のところで「証拠はないけれども彼は有罪だ」という言い方をした。どうやってそんなことが言えるのかと思う。
検察審査会というものがある。いつ、どのようにできたか知っている日本の方は少ないと思うが、これはアメリカの占領下でできたシステムだ。どうやって検察審査会ができたのか、経緯を知らない方も多いと思うので、少し説明する。アメリカの占領軍は、日本の法務省を信頼しなかった。信用できないと思った。だから市民による、検察体制を審査しようというものをつくった。そういう新しい制度をつくって、日本にデモクラシー、民主政治を根付かせようとした。法務省関係者は非常に抵抗したが、抵抗しきれずに最終的には検察審査会なるものができたのだ。ところが、その検察審査会が今まで発動されたのは、交通事故とか軽犯罪とかそういうことだけだった。小沢さんのことにあたっては、どこから取り出してきたのか知らないけれども、"魔法の何か"を使った。それで、客観的に物事を見ることが大事だと思うわけだ。私は小沢さんのファンでもなければ、小沢さんの特別な友達でもないが、日本の政治状況を客観的に見るということでやっている。
■民主党の主張を実現する最大のチャンス
上杉: 小沢さんに対して質問は?
ウォルフレン: 本(『誰が小沢一郎を殺すのか?』)を読んで下さったのだろうか? 本を読んで、何か私の書いていることに過ちがあったら、指摘していただきたい。過ちから学ぶことが多いものだから。
小沢: もう読ませていただいた。本の中でも、私があまり露骨に言えないことを正確に言っていただいた。非常にわが意を得たりというか、よくここまで客観的に、公正に見て書いていただいたと思っている。
上杉: この本にも書いてあり、先ほどのウォルフレンさんの言葉の中にもあったが、日本は総理をつくるという形でマスコミ、国中が持ち上げる。持ち上げておいて、そういうリーダーができるとつぶすという、非常に不思議な国だと言っている。小沢さんとしては、その実感はあるか?
小沢: やはり日本社会の、日本人の特殊性ではないだろうか。歴史的な何千年の経過の中で、強力なリーダーというのはほとんど必要なかった。平和で豊かな国だったから。「和を以て貴しと為す」という言葉に代表されるような、いわゆる悪く言えば「談合社会」、良く言えば「コンセンサスの社会」というのが出来上がっていて、それは結局、結論は誰も責任をとらなくてもいい仕組み。
だから今の状況を見て申し上げたいことは、われわれ(民主党)は官僚主導の政治から、政治家主導、国民主導の政治に変えるんだ、そして国民の皆さんの生活を第一にしていく政治を実現するんだと、皆さんに訴えて政権を任せてもらった。ところが現実には、自民党の時よりひどいじゃないかという批判もあるくらいに、官僚機構に乗っかっているだけ。こういう非常事態においては、まさにわれわれが主張した国民主導の政治を実現するために、国の統治の機構、中央集権から地方分権、いろいろな制度を含めて、震災に対処するという大義名分があるから、思い切ってやればできる絶好の機会。ウォルフレンさんも言っているが、われわれの主張を実現する最大のチャンスだ。
ところが結果としては、今言ったように、「今まで以上に悪いじゃないか」と酷評される。そのゆえんは何かというと、国民主導、政治家主導の政治というのは、政治行政の政策を決定し実行する時に、国民そして国民の代表である政治家が、自分自身の責任で決定し実行するということだ。それがなければ国民主導とか政治家主導なんていうのは、ただの言葉でしかない。政治家が責任を取らないなら、何で官僚が言うことを聞くのか? 「俺が責任を取るから、こうこうこういう方針でやってくれ」と言えば官僚はついてくる、無茶苦茶な話でない限りは。だから、「それは俺は知らない、そっちで決めたんだ、あれはどうしたんだ」と、そういうことをやっていたのでは、われわれの主張はまったく国民に対してウソを言ったことになってしまう。なので私は、遅かりしだが、今からでも遅くないから、こういう危機にあたってこれをうまく活用して、本当の政治家主導の政治を実現して、「国民の生活が第一」というわれわれの訴えたキャッチフレーズに恥じることのないような震災対策、政治を実現しなくてはならない、そう思っている。
■トロイカ体制なくして菅総理なし
上杉: まさしくこの「3.11」の国難の後に、政治的な団結そして主導が望まれるわけだが、ウォルフレンさんの先ほどの言葉から代弁して質問する。当初、民主党政権に交代したときには、トロイカ体制ということで小沢さん、菅さん、鳩山さんの3人に期待したとあった。この震災においては、トロイカ体制どころか党内バラバラ、与野党との連携もできていない状況になっている。当事者である小沢さん、そのトロイカ体制すらできない理由は一体どこにあるのか。
小沢: それは菅さんに聞いてもらわないといけない。ウォルフレンさんも仰ったように、一人で全部できるわけがないから、神様じゃないから、いろんな皆さんの知恵と力を借りてやる。そのことはその通りだ。しかし、それぞれの部署、それぞれの責任ある立場にある人、なかんずく日本の政治機構の中では総理が絶大な権限を持っている。だから菅さんは、僕や鳩山さんのことは別に相手にしなくてもいいが、自分の責任でちゃんとやれればそれでいい。けれども、なかなかその時々に思いついたことを仰るが、すぐに撤回したり、あるいは自分の言葉に責任を持たない。それがやはり最大の問題ではないだろうか。
何度も言うが、政治家、特にトップのリーダーは自分の言ったこと、自分の言動に責任を持たなければ誰もついてこないし、国民も全然信用しない。政治家の言うことなんかみんなウソっぱちだという話になってしまう。私はそれは今日の日本にとって非常に不幸なことだし、また将来の日本にとってもそういう事態が続くと、日本には永久に民主主義は根付かないということを非常に恐れている。こういうような形で、ぜひマスメディアもオピニオンリーダーというならばきちんと、それらしい論評と報道をしてもらいたいと思っている。
上杉: 今度はお二人に伺いたい。いま小沢さんの口からも、菅直人首相――今回の震災後、一応日本という国を率いているが、どうも海外からの評価では原発対応を含めてあまりうまくいってない、酷い、うんざりしているような状況を作り出しているというのが現状だ。その菅さんは6月2日、大手メディアの報道によれば、不信任案採決の直前に一定の目処ということで退陣を事実上表明されたが、いまだ総理の座に居座っている。菅さんについて、ウォルフレンさんが最も親しい一人というが、一体なぜ辞めないのか、そして彼は何をすべきなのか教えていただきたい。
ウォルフレン: 菅さんを知っていると言ったが、それほど知っているわけではないから、なぜこういうことになっているかは私にも分からない(笑)。菅さんが総理になったこと自体、小沢さんはもちろん鳩山さんも含めて、そういう(トロイカ)体制があったからこそ、総理になれたということ。そもそも93年に一緒にスタートしたが、特に小沢さんなくしては民主党はまとまらなかっただろうし、民主党がなければ菅政権などあり得なかった。菅さん自身、小さな存在の政治家でしかなかっただろうと思う。私は公約を実行するためには、いま小沢さんが仰ったように、やはりキャリアの官僚制度に対してきちんと政治家がコントロールすること、一緒にやっていくしかないと思う。
■今の状況を予測していたから、不信任案賛成の結論に至った
上杉: 同じ質問で、菅さんはなぜ辞めないのか、そして何をすべきなのか、ウォルフレンさんよりは(菅さんに)親しい小沢さんに伺いたい。
小沢: 菅さんの性格とか人間性は、私は知りません。私の常識ではなかなか理解できないという程度。ただ問題はすべて、日本社会、日本人のあいまいさ。あの時に辞めると言ったとか言わないとか。今度は菅さんは国会でも「私は辞めるなんて言ったことない」なんて後で言う。何事もクローズとあいまいさがいけない。私はそういう点でえらく批判されるけれど、まったく逆で、会談するにしても何するにしても、オープンで話して平気だし、記者会見で言うことと個人的にしゃべることは同じだ。
そういう、きちんとしたオープンで明確なお互いの意見の交換、やりとり、詰めを日本人は嫌う。皆いい加減な言葉でごまかしてしまう。何の会議でも、皆さんの会社でも同じだと思うが、そうすると誰も傷つかない。結論を出さなければ。何となくということで、誰が決めたんだ、何となくあの会議で決まったということになる。だから、何となくの結論に意に沿わない菅さんは、「俺はそんなこと言った覚えはない」ということになるわけだ。そういう意味では私は単なる感情論や、何となくそうだろうという憶測の類で、大事なことを話し合ってはいけないと、そう思っている。日本人的常識では、菅さんはもう辞めるみたいなことを言ったんだろうけど、その常識が通用しない相手だとどうしようもないわけで、今のようになってしまうわけだ。私が制度的に総理を、内閣を辞めさせるには不信任案の通過しかないという結論に至ったのは、まさにこういう状況を予測していたからだ。
私はそういう意味でもう少し、日本社会にオープンな、公正客観的な、そして正確な、必ず議論をし結論を出すという習慣を、日本人自身が身につけなければいけないのではと思っている。日本の会議というのは、民主党も自民党と同じだが、絶対に多数決しない。多数決の決を採れと言っても採らない。そうするとカドが立つとか波風がどうのこうのと言う。だから自民党では、何度も言うが、意見がまとまらない、どうしても反対者がいるときは、反対者に最後の会議に欠席してもらって、全会一致ということにするわけだ。民主党では、そもそもその決も採らないので、私は民主主義ということを一体理解しているのだろうかとさえ思うくらいだ。そこははっきりと自分の意見を言い、はっきりとした結論を得て、そして皆で得た結論には従う、そういう習慣を早く日本人は身につけなければいけないと思っている。
■選挙や政治活動への公権力の直接行使は後進国的
上杉: いま小沢さんも言及された「オープンなところで」ということでは、実は自由報道協会の会見――今回は公開討論会だが、過去最多の参加は小沢さんの4回。菅直人総理はずっと申し込んでいるが、0回だ。そういう意味でも、どちらがオープンかということは実績として皆さんご存じだと思う。ところが日本のメディア、記者クラブになると、「密室政治の権化」みたいな形の小沢一郎という像が出てくる。ウォルフレンさん、この全くの逆転状況はどうして起きていると思うか。
ウォルフレン: マスコミはいろんなことを言うと思う。私がこの本を書いたのは、皆さんに説明したいこともあるが、私自身も自分なりに結論を見出したいということもあった。なぜ一人の政治家に対して、かくも長い間――世界中そんなことはどこにもないが――こういう抹殺のキャンペーンを、しかも成功裏に続いているかというのが分からない。あえて言うならば、現状を維持できなくなるとか、壊れることへの恐れではないかと思う。「ウォルフレンさん、どうしたら良いと思いますか? 日本は何をしたら良いと思いますか?」とよく聞かれるが、本を読んでくださってからお聞きになれば、お答えしたいと思う。
今ちょっと閃いたアイデアがある。結構良いアイデアかもしれない。国民は民主党に政権を託した。それは民主党のトップの人たちが集団で公約したことを実行してくれると思ったからだ。日本の国民が選んだのは政治家であって、検察やマスコミを有権者が選んだわけではない。日本の皆さんは法務大臣に対して陳情書を一緒に書いたらいいと思う。法務大臣、政治家であるあなたを私たちは選んだのだと。だから選ばれた権限を持って、小沢一郎のこの裁判を終わらせてほしいと、そして彼がリーダーとしてやるべきことを出来るような道を開いてほしいと、法務大臣に訴える。新聞は無視するだろうから、相当声を上げないといけない。そういう陳情書を出すということ、それから「そうだそうだ」と声を上げないと物事は起こらないと思う。ちょっと閃いたアイデアだが、効果が出るかもしれない。
上杉: 法務大臣への陳情は、皆さん気が向いたら勝手にやってください。私がここで煽ったりするとまたいろんなことを言われるので。今ウォルフレンさんの言葉であったが、いわゆる日本のシステムの問題、そして検察のことにも触れられた。その検察の問題に関して、当事者ということでお答えにくいかもしれないが、一連の検察のシステム、それに対する国の対応などは、小沢さんからご覧になってどうか。最近、石川知裕(衆議院議員)さんの検察側から出されていた証拠、検事の調書が不採用になったという非常に珍しいことがあった。それも含めてお答えいただければと思う。
小沢: 個別の問題については差し控える。私ども(民主党)のマニフェストというか主張の一つだが、いわゆる民主主義の根幹である選挙――これは主権者が唯一主権を行使する場だ。この選挙によって選ばれる政治家は、主権者たる国民自身を代弁して代表して活動するわけだ。その選挙とか政治活動については、欧米社会で見られるように、やはり独立した第三者的機関が、選挙や政治活動の管理・指導を行うというシステムを、私は作るべきだと思っている。直接、警察や検察が選挙のことや政治活動について公権力を行使するという仕組みは、私はいわば後進国的な要素を強くするばかりであって、健全な民主主義の発展のためにはよろしくないと思う。
例えば選挙でも何でもそうだが、本当に些細なことまで言えば、個人の皆さんも年がら年中ずっと、朝から晩まで監視されていたとしたら、ちょっとした道交法違反とか軽犯罪法違反とかに触れない人は、まずいないだろうと思う。そういうことを考えてみれば、まさにスピード違反だろうが、駐車違反だろうが、立小便だろうが、公権力がとにかく介入することになれば何でもできるわけだ。1億2000万人を全員監視するわけにはいかないが、特定の人間にターゲットを絞ってやったら、誰もこれから免れる人はいないのではないだろうか。全員罪人になってしまう。
選挙というものは、1億の主権者が参加する大事な民主主義の原点だ。1億人も参加するから、投票するほうも投票されるほうも、いろいろな問題点は些細なことを含めればたくさんあるはず。根本的な買収とか供応とかは別にして、ちょっとしたことで全部公権力が介入することになったら、今の日本がそうだけれども、狙われたらアウトだ。こういう中では民主主義は定着しないと思っていて、そのため制度的にしっかりと選挙や政治活動を監視する国民を代表する第三者機関、選挙委員会という仮の名をしているけれど、そういうものを作って、きちんと選挙の公明性、公正を確保していくというふうに、仕組みを変えないといけない。(今は)全部官僚機構で、あらゆる国民の生活の隅々まで官僚支配が行き届いている。これを打破するには、国民自身が自ら政治家を選んで、その政治家に思い切った活動をさせるというのが、私は民主主義の基本的なことであろうと思う。そういうようなことも一つの国民主導の政治への大きな改革であると考えている。
■今そこにある、もうひとつの危機
上杉: ウォルフレンさん、最後に一言。
ウォルフレン: 一言だけ言わせてほしい。無関心になってしまうのは容易いことだと思う。大災害があった、復興しなければならない、原発の事故を起こした、大変だ――。それだけではない、もっと大きな危機があるんだということ。国際的な金融の動きをフォローしていれば、そしてアメリカ国内で起きていることに目を向けているならば、何かが終わりに来ていることを感じるはずだ。第二次世界大戦後の国際金融システム、われわれが暮らしてきた間ずっとあった体制が、終わろうとしている。ということは日本に大きな影響があるということだ。
日本はきちんとした政治的な主導なくして、何の目的もなしに漂流することはできないはずだ。言葉だけで大変なことが起きると言ってるのではなくて、本当に深刻な問題なのだ。でも日本の皆さんには、より良い将来があって然るべきだと思う。最終的に申し上げたかったこと、結論として言いたかったのはそのことで、先ほどからも随分お話したし、この本にも随分書いてあるので、買っていただくことができるかなと思う(笑)。
小沢: 今のウォルフレンさんが指摘されたことは、大変重要なことだと思う。まだ日本人はそれをあまり深刻に受け止めていないけれど。報道でお分かりのように、アメリカでもヨーロッパでも、財政、金融の危機的な状況が今出て、みんな深刻になっているところだ。これはちょっと話が違うけれども、「ミスター円」と呼ばれた榊原(英資)氏が『世界同時不況がすでに始っている!』という本を書かれていて、私も読んだ。今日の日本社会の無責任体制の社会の中で――これは政治家だけの問題じゃない――政治経済あらゆる分野での総無責任体制の中で、経済が大恐慌でも起きた日には、全くもう混乱して無秩序な体制、社会に陥ってしまうのではないかという心配を、一方においてしている。内では原発の放射能汚染の問題、そして(外では)世界全体を覆っている財政金融を中心とした経済の問題、これをやはり日本人はもっともっと深刻にとらえて、その対処の仕方をあらゆる社会の分野で整えていかなくてはならないと思う。(了)(協力・書き起こし.com) *強調(太字、着色)は来栖
仏大統領、訪中/米 副大統領、訪中/金総書記、ロシア訪問/国際社会から相手にされないニッポン
バイデン副大統領 22日来日
NHK8月22日 5時18分
アジアを歴訪しているアメリカのバイデン副大統領は、22日から日本を訪れ、滞在中、東日本大震災の被災地を訪れるほか、菅総理大臣と会談して、復興支援に引き続き取り組んでいくアメリカの立場を伝えることにしています。
バイデン副大統領は、6日間にわたって中国を訪れ、習近平国家副主席など指導部との一連の会談をこなし、モンゴルに立ち寄ったあと、22日夜から24日まで日本を訪れます。バイデン副大統領が日本を訪れるのは、就任後初めてで、23日は菅総理大臣と会談し、大震災からの復興や東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応を巡って意見を交わすことにしています。そして、復興支援に引き続き取り組むアメリカの立場を伝える方針です。さらに宮城県の被災地を訪れ、アメリカ軍ががれきの除去などに当たった仙台空港で、被災者らに向けてメッセージを述べる予定です。今回の訪問は、来月上旬に予定されていた菅総理大臣とオバマ大統領の会談に先立って行うことで、政府要人の活発な交流による強固な日米同盟をアピールするねらいもありましたが、菅総理大臣が今月末にも退陣する意向を示したことで、中国訪問後の儀礼的な訪問にとどまる形となります。
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仏大統領が25日に北京訪問、胡錦濤・中国国家主席と会談へ
2011年08月22日[パリ21日 ロイター]
フランスのサルコジ大統領は25日に北京を訪問し、中国の胡錦濤国家主席と会談する。会談では、最近の世界の金融市場の混乱について話し合われる可能性が極めて高い。
フランスは今年、20カ国・地域(G20)の議長国を務めている。
サルコジ大統領は、フランスの海外領土である南太平洋のニューカレドニアに向かう途中で中国に立ち寄る。
大統領官邸によると、会談は現地時間午後5時(日本時間午後6時)に行われ、その後、大統領と国家主席は夕食を共にする。
サルコジ大統領の中国訪問は今回が6度目。
両首脳は仏独首脳会談で提案された金融取引税の導入や、G20の議題などについても話し合う可能性がある。
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中国の次期トップ2人が、国際的な注目浴びる
WSJ Japan Real Time2011年8月22日10:49 JST
中国の習近平国家副主席(58)と李克強副首相(56)は、来年から新指導部トップとして中国を率いることが有力視されている。この2人が先週、国際的なスポットライトを浴び、2人が現在の指導者といかに異なるかを垣間見せた。
習副主席は、次期共産党総書記(国家主席)に内定しているが、先週、訪中したバイデン米副大統領と数回会談した。帰国前日の21日には、四川省の省都・成都市のレストランで非公式の夕食を共にしたり一緒にお茶を飲んだりした。
一方、李副首相は香港を訪問し、英語でスピーチを行うなど次期首相候補としての能力を誇示した。
習副主席も李副首相も、こうした行事で共産党の路線に沿って発言しており、10年で一度の指導部交代を控えて2人を引き立てる狙いがあったとアナリストや外交筋はみている。ただし、党の路線に沿った発言とはいえ、2人とも多少オープンで世界的な指導者のスタイルを帯びていたと指摘する向きもいる。
習副主席の振舞いは、とりわけ米当局者の関心を引いた。バイデン副大統領とかなりの時間をともに行動したが、同副主席がこのように米政府当局者とこれほど長時間一緒に過ごしたことはない。また、来年まで米国を公式訪問する予定はないからだ。
米政府高官は、習副主席が米政府債務上限交渉をめぐる最近の舞台裏の駆け引きなど米国の政治に強い関心を示したと述べた。バイデン副大統領との先週の最初の会談は予定より45分間も延長された。
あるオバマ政権高官は「習氏は何を伝えたいか極めて明確なアイデアを持っておりアプローチが戦略的だった」との見方を示した。また同僚に対し自信に満ちた態度を示していたという。
また、「バイデン副大統領と同席するのを非常に楽しんでいた」と語った。同高官はまた、「習氏が米国は今後も太平洋の大国としての役割を演じ続けるとの持論を展開した」と語った。
21日には習副主席とバイデン副大統領は外交上の慣例を破って、2008年に大地震で最大の被害を受けた四川省の都江堰を一緒に訪れた。
習副主席は2009年にメキシコを訪問した際、先進国が中国を批判することへの不快感を示した発言が注目されたが、ウィキリークスが公表した外交電では駐中国米大使にハリウッド映画が好きだと話したことが明らかになるなど、これまで米国に対する姿勢は不透明だった。
一方、李副首相の香港訪問も同様に、同副首相をスポットライトを浴びさせる試みだったとアナリストはみている。同副首相は18日、香港大学で講演した際、最後の部分で英語を使い、これがとりわけ中国のネット利用者に注目された。現在の最高指導者たちに英語を使える人はほとんどないからだ。
李氏は、習氏とともに2007年に共産党政治局常任委員となって以降、2013年に温家宝首相の後を継ぐとみられてきた。同氏は温首相と親密とみられている。
ただ最近では、「王岐山副首相(金融担当)のほうがもっと有能な首相候補だ」という声も金融界を中心に強く出ている。最近、共産党幹部たちと話をしたある消息筋は「温家宝のような人物がまた登場するのを望まない人々が多い」と語った。
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対立を抱えながら共存の道を探る米中
日本経済新聞2011/8/20付
米国のバイデン副大統領が中国の習近平国家副主席の招きで訪中している。習副主席は来年秋に胡錦濤国家主席の後を継ぐ最高指導者になるとみられている。地方視察を含め足かけ6日、副大統領に同行する予定で、次の指導者として対米関係重視の方針を鮮明にしたといえよう。
米国債の格下げなどで世界的に金融市場が混乱している。いまや米中は世界1、2位の経済大国である。副大統領との会談で習副主席が「マクロ政策協調を強化する責任がある」と表明したのは当然だろう。
中国は米国債の最大の保有国。リスクが高まった米国債をこれ以上買い増したくない半面、保有する資産の価値を保つためにも米国債の売却を進められない微妙な立場だ。
今回、習副主席が米国の財政政策を直接批判した形跡はない。中国では米国の財政政策への不満がくすぶっているが、これ以上市場を混乱させたくないというのも本音だろう。
米国にとって中国は輸出市場として重要になった。米国内では輸出や投資の拡大の妨げになっている中国側の障壁への不満が強い。米側の説明では副大統領は人民元相場や知的財産権の問題を取り上げたのに、中国側の発表には一切出てこない。こうした問題での食い違いの表れであり、対立が続くことも示唆する。
米中は世界で1、2位の国防費を支出する軍事大国でもある。しかも政治体制の違いやアジアでの主導権争いなど火種は多い。両国が「戦略的な判断ミス」を避けるため交流を深めるべきだと副大統領は述べた。当たり前だが重要な外交の姿勢だ。
もちろん、米中が一本調子で連携を深めるわけではない。米国は今、中国の台頭に対応するため世界戦略の重心を中東からアジア・太平洋へと移しつつある。習副主席に対しバイデン副大統領は、アジア太平洋地域で米国が引き続き主導的な役割を果たしていく考えを伝えた。
一方、習副主席は世界的な問題では米国と共同で「建設的な大国」の役割を担いたいと表明した。具体的な意味は不明だが、かつて中国軍の高官が米軍高官に、太平洋を東西に二分して両軍で管轄を分け合おうと提案したことを考えると、単純に協調姿勢を示すわけではなかろう。
楽観はできないが、中国が本当の意味で「建設的な大国」になろうとするのなら、日本を含めた世界にとって利益だ。中国の隣国として、日本は米国以上に対中関係の深化を考える必要がある。同時に、他の友好国とも手を携えて米国のアジア関与を支えていかなければならない。
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金総書記が9年ぶりロシア訪問、金正恩は随行名簿に含まれず
中央日報/中央日報日本語版 2011年08月22日08時32分
北朝鮮官営メディアが21日に公開した金正日(キム・ジョンイル)のロシア訪問随行員は計12人。後継者の三男・金正恩(キム・ジョンウン)は随行名簿に含まれなかった。
名簿には含まれていないが、金玉(キム・オク)が5月の中国訪問に続いて今回も随行した。金玉は金正日の夫人・高英姫(コ・ヨンヒ)が04年に死亡した後、ファーストレディーの役割をしてきた。金正日の健康問題を管理している可能性がある。金玉は今回もウグイス色のスーツを着て目を引いた。
キム・ヨンジェ駐ロシア大使とシム・グクリョン・ナホトカ総領事を除いた10人のうち経済専門家は5人で、今回の訪問は朝ロ間の経済問題に焦点が置かれていることを表している。
労働党秘書で随行員に含まれた太鍾守(テ・ジョンス、総務担当)は、大安(デアン)重機械連合企業所の責任秘書などを務めた実物経済専門家。また朴道春(パク・ドチュン、軍需担当)は軍需分野に明るい。それぞれ咸鏡南道(ハムギョンナムド)と慈江道(ジャガンド)の党責任秘書を務め、昨年、金正日に抜てきされた。
党機械工業部長の朱奎昌(チュ・ギュチャン)は核・ミサイル開発などの責任を負う軍需専門家。政府当局者は「ロシアからの軍事武器導入が議論される可能性もある」と述べた。オ・スリョン咸鏡北道党責任秘書はロシアと接する地域の責任者資格で随行したとみられる。職権乱用などで07年4月に首相を解任され、順川(スンチョン)ビナロン連合企業所の支配人になった後、昨年、党第1副部長に復帰した朴奉珠(パク・ポンジュ)も随行員に含まれた。
金正日の妹婿である張成沢(チャン・ソンテク)国防委副委員長と金養建(キム・ヤンゴン)党秘書は大豊(デプン)グループなど対北朝鮮投資誘致を担当しているという点で関心を引く。一部では、党対南秘書の金養建がロシア天然ガスパイプラインの南北貫通問題のために随行員に含まれたという観測もある。
姜錫柱(カン・ソクジュ)副首相と金桂寛(キム・ケグァン)第1外務次官は6カ国協議の調整を担当するとみられる。軍部では金英春(キム・ヨンチュン)人民武力部長が唯一含まれた。
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クローズアップ2011:金総書記、9年ぶり訪露 北朝鮮、バランス模索
◇対中依存、低減狙う
ロシア大統領府と北朝鮮の朝鮮中央通信は20日、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記がメドベージェフ大統領の招請を受けてロシアの非公式訪問を開始したと発表した。東シベリアのウランウデで23日前後に開かれる見通しの首脳会談では、核問題をめぐる6カ国協議の再開問題などが話し合われるとみられる。南北、米朝の対話が進む中、ロシアと北朝鮮が急接近した形で、朝鮮半島を取り巻く構図に変化が生じる可能性が出てきた。【モスクワ田中洋之、北京・米村耕一】
20日午前、金総書記を乗せた特別列車が国境の豆満江(トゥマンガン)を越え、ロシア側に入った。現地メディアによると、特別列車は17両編成で、うち3両は総書記専用の執務室と寝室、通信室、残りは随行員が使っているという。ハサン駅では歓迎式典が開かれ、イシャエフ極東連邦管区大統領全権代表やダリキン沿海地方知事ら政府要人が出迎えた。特別列車にロシア側の用意した4車両が連結され、イシャエフ全権代表も同乗。約3700キロ先のウランウデに向けシベリア鉄道を走り始めた。
金総書記が9年ぶりのロシア訪問に踏み切った背景には、対中依存度が極端に高まる対外関係を多様化させたいとの狙いがあるようだ。こうした「バランス外交」は北朝鮮が伝統的に取ってきた手法でもあり、6カ国協議再開に向けて交渉を有利に進めるための戦略のようだ。
北朝鮮とロシアの経済関係強化は徐々に進められてきた。
北朝鮮が「経済特区」として力を入れている羅先(ラソン)特別市を8月中旬に訪問した中朝貿易関係者は、ロシアからのトラックが資材を積んで市内を多数行き来しているのを目撃した。鉄橋補修工事などもロシア企業が請け負っていたという。
貿易や経済協力の規模は対中関係が圧倒的だ。ただ、中国には明確に北朝鮮を改革・開放に誘導する狙いがあり、インフラ投資などの経済協力もそれが前提だ。これに対しロシアは、中国のような意図は強くなく、北朝鮮側に一定の便宜を図ることが少なくないという。「重油なども中国は安くしないが、ロシアは特別価格で売ってくれる」(北朝鮮当局者)という例もある。
6カ国協議は7月に南北、米朝が対話し、韓国や中国が提案していた「3段階案」に沿った前進がみられている。北朝鮮は米韓が26日までの予定で実施している軍事演習に激しく反発しているものの、一方で朝鮮戦争時に行方不明となった米兵の遺骨発掘作業再開をめぐる米朝協議に前向きな姿勢を見せている。対話を断ち切る考えはないようだ。
◇ロシア「6カ国」へ存在誇示
ロシアが金総書記を招請したのは、来秋に極東ウラジオストクでロシアが初めて主催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)の成功に向け、北東アジアでの発言権を高めておきたいという思惑があるようだ。
00〜02年には当時のプーチン大統領(現首相)が金総書記と計3回会談するなど、ロシアは北朝鮮に対する一定の影響力を持っていた。だがその後、首脳の接触は途絶え、08年にメドベージェフ大統領が就任した後も事態打開は図られず、6カ国協議の枠組みでも中国や米国、韓国に比べ、ロシアの影響力は極端に低下していた。
ロシアはAPECを極東発展につなげる一大事業と位置づけ、大統領が6月に現地を視察するなど国家を挙げて準備に取り組む。APEC成功には、朝鮮半島情勢の安定が不可欠であり、今回の金総書記招請を契機に緊張緩和の道筋をつけたいところだ。
また、ロシアはサハリン産天然ガスを北朝鮮経由で韓国に送るパイプライン構想に意欲をみせる。ただ、北朝鮮経由は「政治的リスクが高い」との懸念が強く、ロシアの政府系天然ガス企業「ガスプロム」は、韓国に直結する海底パイプライン敷設▽液化天然ガス(LNG)に転換して韓国にタンカーで輸送する−−という代替案を検討している。
今回開催が見込まれる首脳会談では、このパイプライン構想も主要議題となりそうだ。北朝鮮にはパイプライン通過料として年間1億ドル以上の利益があるとの目算があり、首脳会談を通して一挙に具体化させたい考えと見られる。両国は既に実務接触を繰り返しており、首脳会談での一定合意を目指して、ぎりぎりの折衝が続けられている模様だ。
毎日新聞 2011年8月21日 東京朝刊
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〈来栖の独白〉
金総書記の(主に経済問題について話し合う)ロシア訪問、そして米国バイデン副大統領の中国訪問という大きな動きを、日本のメディアは小さな報道にとどめている。相も変らぬ「なでしこ」のその後と川下りの船の転覆等々、3面記事ばかりが賑わう。菅政権居座り中は国際社会から相手にされないという事情はあるにせよ、メディアが国際社会の動向に目を向けなくなって久しい。いや、国際社会にばかりではない。国内の政治の深層や福島第1原発の事故・放射能を取り巻く状況についても報道しない。「我欲」と「エンタメ」の国になってしまったか。
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◆国民栄誉賞=スピンコントロール(政府が、その政権運営、権力維持、情報管理のために行うメディア戦略)2011-08-04 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
国民栄誉賞と10シーベルト――あまりに幼稚な日本政府のスピンコントロール
Diamond online『週刊上杉隆』2011年8月4日 上杉 隆
結局、なでしこジャパンへの国民栄誉賞の授与が決まった。先週のコラムでの提言は徒労に終わった。政府の厚顔無恥、協会の権威主義には改めてあきれてしまう。
繰り返しになるが、今回の受賞は、団体としては初、これまでは長期にわたる実績を認められた個人にのみ贈られたき同賞が、一度の世界一で、まだ発展途上の選手たちに授与されたという異例のことになる。
3・11震災後の日本に勇気を与えたというのが主な受賞理由だそうだが、職業柄、素直に喜べない。私はひねくれているのだろうか。
これも繰り返しになるが、なにしろ、チーム団体での世界一ならば過去にも多くの例があるはずだ。近年でもWBCでの世界一、女子ソフトボールでの世界一、枚挙にいとまがないではないか。
他とのバランスで考えれば、内閣総理大臣顕彰などが妥当ではなかったか。その考えはいまなお変わらず、政府が国民栄誉賞を持ち出してきた背景を考えると、暗澹たる気持ちになる。これはのちに説明しよう。
*日本のメディアだけが扱わない言葉「スピンコントロール」
それにしても、案の定だが、大手メディアは今回の受賞を手放しで褒め称え、報じ続けている。そう、それが実は政府のスピンコントロールである可能性が高いにもかかわらず、一切そうした点への検証はない。相変わらず、おめでたい人たちである。
政府が、その政権運営、権力維持、情報管理のために行うメディア戦略をスピンコントロールという。情報統制の基本中の基本で、もはや世界中の国では常識となってさえいるこの言葉を、日本のメディアだけが扱わない。
米国ではベトナム戦争の70年代、そして冷戦末期の80年に、メディア統制のために盛んに語られた政治用語のひとつでもある。実際、ホワイトハウスの記者会見場は“スピンルーム”とも呼ばれ、日常的に、記者たちが政府のスピンを警戒する空気ができている。
政治権力とメディアの緊張関係の有無を確認する際、スピンという言葉が多用されだしたら、政府の不健全な目論見が存在するというシグナルにもなっている。つまり、それほど米国の政界やメディア界においては、一般化されている用語なのだ。
英国でも同じような状況だ。いや90年代以降は、英国こそスピンコントロール大国となり、政府とメディアの数々の戦いが見られた。スピンドクターのアラステア・キャンベル首相補佐官へのニュースの扱いだけをみても、スピンに対するメディア側の警戒ぶりがわかるというものである。なにしろ、彼は、英国では、スピンによってイラク戦争を開戦させた男として認識されているほどだ。
いずれにしろ、そうしたスピンは世界中の政府内で実行され、また世界中のメディアやジャーナリストたちが、その目論見と戦っているというのが現状なのである。そう、世界で唯一、記者クラブのある日本を除いては――。
断言しよう。なでしこジャパンへの国民栄誉賞は、日本政府のスピンである。しかも、世界のレベルからみたら、あまりに単純で幼稚なスピンコントロールである。
だが、日本のメディアはその程度のスピンすら見抜けない。きっと、よほど愚鈍の集まりなのだろう。なぜならば、仮にスピンだと知っていて報じていないのならば、相当悪質な集団ということになる。それは次のニュースで明らかだ。
*国民栄誉賞のリークと同時に何が起きていたか
政府が、なでしこジャパンへの国民栄誉賞検討のリークをはじめた8月1日、何が起きたか考えてほしい。それは、世界中の科学者たちを震え上がらせる、とんでもないニュースとして、日本でも報じられている。
〈東京電力は1日、福島第1原発1、2号機の原子炉建屋の西側にある排気塔下部の配管の表面付近で、計測器の測定限界に相当する事故後最高値の毎時10シーベルト(1万ミリシーベルト)以上もの高い放射線量を計測したと発表した――(以下略)〉(毎日新聞)。
新聞・テレビはこの恐ろしいニュースをこの日以降、十分に報じたとはいえない。10シーベルトという致死量を軽く上回る放射線検出の大ニュースは、国民栄誉賞という人体に何の影響もないどうでもいいニュースに取ってかわってしまった。
とくに民放テレビは、このニュースを朝から晩まで流しつづけ、政府のスピンに自ら協力しているかのようである。
3月、筆者は、測定器の不備による作業員への被曝の可能性を危惧して、その安全管理と健康調査の是非を公開するよう、東京電力の記者会見で繰り返し質問した。
当時、東京電力は1シーベルト以上の放射線を測る機器はないと断言し、2号炉外のピット周辺で計測した作業員の健康調査の結果すら発表しようとしなかった。
ところが、ふたを開けてみれば、10シーベルトである。しかも、きちんと測れる機器があるではないか。東京電力はまたしても記者会見でうそをついていたのである。
3月以降、作業に携わった作業員はのべ何万人にも上る。その作業員の被曝の可能性は否定できない。早急な検査が求められる。
なにしろ10シーベルトを超える放射線が検出された場所の近くで、鉛などの防護服や遮蔽壁などを使わず、彼らは普通に作業してきたのだ。
しかも、3桁の作業員の行方がわからないという。いったい政府はその責任をどう取るつもりなのか。また、メディアはなぜ、この人類史上、類を見ない大ニュースを大きく扱わないのか。
なでしこも世界一ならば、10シーベルト超の検出も世界一である。せめて同程度に報じて、国民に知らせるべきではないか。政府のスピンに甘んじて乗って、自らの仕事をサボっている場合じゃないのである。
陸山会事件 最終弁論「検察の主張は空中楼閣」/証拠がなくなった以上、小沢氏の強制起訴裁判は成立しない
陸山会事件:石川被告ら無罪主張 「検察は『空中楼閣』」
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人の最終弁論が22日、東京地裁(登石郁朗裁判長)であり、同会事務担当者だった石川被告の弁護側は「収支報告書の記載に虚偽はない」と改めて無罪を主張した。後任の事務担当だった池田光智被告(33)と、会計責任者だった大久保隆規被告(50)も無罪を訴え結審した。判決は9月26日で、10月6日に初公判が決まった小沢元代表の審理の行方にも影響を与えそうだ。
最終弁論で石川被告の弁護側は、元代表から借り入れた4億円について「04年分収支報告書にきちんと記載した」と主張。一方、元代表からの4億円を担保に同時期に銀行から受けた同額の融資を記載しなかった理由は「(実質的に動いたのは4億円なのに)計8億円の借り入れをした趣旨(の報告書)になり釈然としなかったため」と述べ、違法の認識はなかったとした。
池田被告の弁護側は「検察側のストーリーを押しつける強引な調べが行われた」と批判した。
大久保被告の弁護側は「収支報告書の作成や提出に一切関与していない」と、名目上の会計責任者に過ぎないと強調。石川、池田両被告との共謀は「指示も了承も与えたことはない」と否定した。ダミー団体を介して違法な献金を西松建設から受領したとして大久保被告が起訴された事件についても「西松の資金と認識していなかった」と無罪を訴えた。
検察側が陸山会事件の虚偽記載の背景として主張した中堅ゼネコン「水谷建設」からの計1億円の裏献金については、石川、大久保両被告側は「裏献金に関する(同社の)前社長の証言は信用性が乏しい」と強調。「検察は小沢元代表を立件しようとして起訴できなかった不名誉を回避するため、不明朗な資金授受があったかのような『空中楼閣』の主張を印象づけようとしている」と非難した。
地裁は6月、石川、池田両被告が大久保被告と小沢元代表に虚偽記載を報告していたことなどを認めた相当数の調書を却下。検察側はその後、石川被告に禁錮2年、池田被告に同1年、大久保被告に同3年6月を求刑した。【野口由紀】毎日新聞 2011年8月22日 20時53分
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◆陸山会事件・小沢捜査の元特捜大鶴基成氏が早期辞職/この国の政治を失わせた大罪を国民と小沢氏に謝れ!2011-08-02 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆証拠がなくなった以上、小沢氏の強制起訴裁判は成立しない/喫緊の課題=指定弁護士による小沢裁判公訴取消2011-07-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆石川知裕:最後に特捜部にエールを送って、この事件を終わりにしたい「陸山会事件」2011-07-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「陸山会事件」東京地裁 検察のデッチ上げ調書を証拠採用せず/小沢強制起訴の根幹崩れる2011-07-06 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「小沢事件」全内幕/裁判所も認めた世紀の謀略/「調書」大量却下2011-07-13 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆検察改革 捜査・公判を根本から問え/陸山会事件〜検察側供述調書、地裁が証拠不採用2011-07-13 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「陸山会事件」異議を棄却/検察側は主要な調書を欠いたまま20日の論告求刑に臨むことになった2011-07-12 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「特捜部は恐ろしいところだ」ストーリー通りの供述を取らなければ、という強いプレッシャー〈陸山会事件〉2011-07-11 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆もはや小沢氏を法廷に縛りつける理由はないのに、検察官役の指定弁護士、前田元検事を証人申請2011-07-06 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆『誰が小沢一郎を殺すのか?』の著者カレル・ヴァン・ウォルフレン氏と小沢一郎氏が対談〈全文書き起こし〉2011-07-29 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「政治資金規正法を皆さん勘違い。小沢さんがいなくなることはプロの政治家がいなくなること」安田弁護士2011-07-21
◆小沢氏「僕の支持者は微動だにしない。お天道様がちゃんと見てるよ」2011-01-18 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆フリージャーナリストらによる「小沢一郎懇談会」開催の意図と経緯を語ろう 2011-01-22 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
「日本首脳の靖国参拝」中国にとっては大きな駒の1つ。譲歩すれば、その後に別の対日要求が出てくる
国際激流と日本
挑発的?米国人学者が提言 「首相はもっと頻繁に靖国を参拝せよ」
JBpress2011.08.23(火)古森義久
いわゆる靖国問題が日本国内の政治論議にまた浮上した。民主党の次期代表、つまり次期首相候補に名乗りを上げた野田佳彦財務相が、首相や閣僚が終戦記念日に靖国神社に参拝し、戦死者の霊を弔うことにはなんの支障もないとする見解を表明したからだった。
この見解は、これまでの民主党政権の靖国参拝への態度からはまったく遊離している。菅政権でも、首相はじめ閣僚たちは誰一人として8月15日に靖国神社に参拝しなかったからだ。この点は、野田氏自身に対する「では自分がなぜ参拝しないのか」という疑問にもつながる。
野田氏は8月15日の記者会見で、「首相の靖国神社参拝は問題なし」という見解を強調した。野田氏は民主党が野党だった2005年、「靖国にはA級戦犯が合祀されているから日本の首相は参拝してはならないという論理は破綻している」と主張し、結果として時の小泉純一郎首相の参拝を擁護した。
野田氏は当時「サンフランシスコ講和条約や4回にわたる国会決議ですべての戦犯の名誉は法的に回復された」と述べたのだった。
今回の会見で野田氏はこの自分の主張について問われて、今もその見解を変えていないと答え、自分が首相になった場合の靖国参拝の可能性も否定はしなかった。ただし野田氏のこの言明はすぐに韓国政府からの批判的な論評を招いた。
*靖国参拝問題に不干渉を通してきた米国政府
日本の首相は自国の戦死者への弔意を表するために靖国神社に参拝してはならないのか。
この問いに対する鳩山政権や菅政権の答えは明らかに「不参拝」だった。そして、その理由は中国や韓国からの激しい反対だったと言えよう。外国の反応が主要因なのである。しかも中韓両国の場合、日本の首相の靖国参拝に反対をぶつけるのは政府なのだ。中国政府と韓国政府なのである。
しかし他の外国の政府はそんな反応はまったく見せていない。同じアジアでも日本軍の戦闘行動の舞台となったタイ、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、インド、ベトナム、マレーシアなど、どの国も日本の首相に「靖国参拝をするな」とは述べていない。
台湾の李登輝元総統などは日本の首相は靖国を参拝するのが当然だと主張し、自分自身が日本軍人として戦死した実兄の追悼に靖国神社に詣でている。
では、米国はどうか。靖国神社には米軍との戦闘で亡くなった日本軍将兵の霊が最も多く祀られている。だから、もし日本側が外国の反応を首相の靖国参拝の是非論で最大要因と見なすならば、米国の対応は最重要となる。
米国の政府は、日本の政治指導者の靖国参拝には一切、不干渉を通してきた。特に奨励もしないが、決して反対もしない。そもそも外国の内部での自国の戦死者の追悼というのは、その国の独自の慣行であり、外国があれこれ指示すべきことではない、という認識が基本だと言えよう。
*靖国参拝は日本人自身が決めるべき内面的な課題
米国の民間の識者の反応となると、さらに奥行きが深く、意外でさえある。日本をよく知り、日米戦争の歴史をも熟知するような学者たちが、日本の首相の靖国参拝を奨励するのである。しかも、中国のような外国が日本の首相の参拝の是非に介入することを非難するのだ。
その顕著な実例はジョージタウン大学の東アジア言語文化学部長だったケビン・ドーク教授の意見である。日本の民主主義やナショナリズムの研究を専門とする同教授は、「日本の首相が靖国神社に参拝するのは当然」と述べるのだ。
小泉政権当時の、日本の首相の靖国参拝を中国が非難することに対して同教授は「日本の首相よ、靖国参拝をもっと頻繁に」と激励したのだった。
ドーク教授の日本の新聞への寄稿には以下のような記述があった。
「靖国参拝は日本国民にとっては祖国を守るために戦没した先人への心情にかかわる微妙な問題であり、あくまで日本国民自身が決める内面的な課題である。特に戦死者の霊をどうねぎらうかは日本の国民や指導者があくまで独自に決めることであり、他国が干渉すべき案件ではない。他者の尊厳への敬意の表明は民主主義社会での個人の権利や市民の自由である。そこには政治的な外交的な意味はない」
「挑発的と思われるかもしれないが、日本の首相が年に1度よりも頻繁に、たとえば毎月でも靖国を参拝することをまじめに提案したい。そうすれば首相は反対者の多くが主張するように戦争や軍国主義を礼賛するために参拝するのではなく、生や死に対する精神、信仰の適切な応じ方を真に敬虔に 模索するために参拝していることを明示できる。
その明示の最善の方法は信仰にもっと積極的になることであり、そのために儀式上どのような祈念の形態をとるかは首相自身の権利として選べばよい」
「一国の政府が他国の指導者の戦死者追悼の方法に外部から無理やりに政治や外交の意味を押しつけ、その追悼の中止を要求することは人間の心を排除し、民主主義の基本を脅かすことになりかねない。個人の精神の保ち方や信仰のあり方が脅かされるからだ」
ドーク教授は以上のような見解を今も変えていないと明言する。そして、さらに次のようなことを述べるのだった。
「中国政府が小泉首相の靖国神社参拝を、軍国主義や戦争の美化と結びつけて非難することはあまりにも皮肉な倒錯である。今、中国が異様なほど大規模な軍拡を進めていることは全世界が知っている。その軍国主義の中国が日本の首相の神社参拝をとらえて、軍国主義だと非難するのだ。
また、中国が靖国を攻撃する背景には政治や外交の武器にするという目的以外に、信仰や宗教を脅威とみて、反発するという現実がある。中国政府は現に国内のカトリック教徒を弾圧し、逮捕までして、バチカンを無視し、自分たちに都合のよい人物たちを勝手に司教に任命している」
米国の識者の間にこんな意見があることをわれわれ日本側としては少なくとも認識はしておくべきだろう。
*中国の狙いは日本の指導層の「調教」?
米国学界で中国研究の泰斗ともされるペンシルベニア大学名誉教授のアーサー・ウォルドロン氏の見解も興味深い。同氏は2人の叔父を第2次大戦中、日本軍との戦闘で亡くし、子どものころから日本の戦時中の軍事行動には強い反発を覚えていたという。だが、近年、靖国神社を訪れてみたというのだ。
小泉政権当時に私がワシントンでインタビューしたウォルドロン教授は次のような趣旨の見解を述べていた。
「数多くの日本の家族も同じような悲劇を体験したことだろうと思った。それに私は小泉首相の『平和を祈るために靖国を参拝する』という言葉を信じた。戦後の日本は民主主義と非軍国主義を実践した国であり、米国と共通の価値観を持つ同盟国でもある。その日本には日本なりの方法で自国の戦没者を追悼する権利があるとも思った」
「靖国神社では改めて日本側の戦没者も米側同様に自国のために戦って死んだ、ごく普通の人たちだったのだと実感した。そして、なによりも米国と日本はすでにとっくに和解していることを痛感した。
靖国では私は境内に咲いたサクラの花ビラをプラスチックの容器に入れて飾った『靖国の桜』という飾りを1つ買って持ち帰り、亡き叔父の遺影の隣においた。日米両国の死者の霊を悼んだのだ。これが私にとってのヤスクニ受け入れだった」
さらにウォルドロン氏は中国研究者として以下のような考察をも強調したのだった。
「私はさらに中国研究者として、またいつも客観性を求める学者として中国がなぜ日本の政治指導者の靖国参拝を非難するかを考察すると、その意図があまりに明白に見えてしまう。中国共産党にとっては真の狙いは、日本の指導者に靖国参拝を止めさせることよりも、日本の指導層全体を叱責し、調教することなのだ。自国の要求を日本に受け入れさせることが長期の戦略目標なのだ。
靖国はその大きな将棋のなかの駒の1つにすぎず、日本がそこで譲歩すれば、その後に別の対日要求が出てくる。その最終目標は中国が日本に対し覇権的な地歩を固めることなのだ」
野田氏の発言でまた国際的な脚光や論議を呼びかねない「靖国問題」には米国にこうした意見があることも明記しておくべきである。*強調(背景着色等)は来栖
<筆者プロフィール>
古森 義久 Yoshihisa Komori
産経新聞ワシントン駐在編集特別委員・論説委員。1963年慶應義塾大学経済学部卒業後、毎日新聞入社。72年から南ベトナムのサイゴン特派員。75年サイゴン支局長。76年ワシントン特派員。81年米国カーネギー財団国際平和研究所上級研究員。83年毎日新聞東京本社政治部編集委員。87年毎日新聞を退社して産経新聞に入社。ロンドン支 局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2001年から現職。2005年より杏林大学客員教授を兼務。『外交崩壊』『北京報道七00日』『アメリカが日本を捨てるとき』など著書多数。
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◆「日本の国内法においてA級戦犯は戦争犯罪人ではない」という認識は、日本政府の公式見解である2011-08-18 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
◆中国が管轄海域と主張する南シナ海の「牛の舌」/中国は、その誇大な主張の後ろ盾となる軍事力を有している2011-08-03 | 国際/中国
◆経済発展によるカネで軍拡を続ける中国 2010年度の国防予算は日本円で6兆292億円2011-01-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
五木寛之著『親鸞』 われらは他の命をいただくことでしか生きられない存在
五木寛之著『親鸞』227回 2011/8/21Sun.
「そして、苦しみながら生きている人びとの心を、さらに深く苦しめる思いがあった」
と、親鸞は語った。
「それは、後生、ということだ」
「ゴショウって、なんだっぺな」
前列に坐った女がきいた。親鸞は答えた。
「後生とは、死んだあとのことをいう。そなたは自分が死んだあと、どこへいくと思うていなさる?」
〈中段略〉
道場内の人びとにむかってたずねた。
「この中に、いっそ死にたい、と思いながら暮らしているかたは、おられるだろうか」
みなが顔を見合わせて黙り込んだ。
一人の若い女がためらいがちに手をあげた。
五木寛之著『親鸞』228回 2011/8/22Mon.
歳のころは23,4というところだろうか。化粧はしていないものの、堅気の暮らしではないことが一目でわかる女だった。
「そなたは?」
と、親鸞はきいた。女は周囲の好奇の目にさからうような口調で答えた。
「わたしは、船宿で遊び女として稼いでいる女でございます。他国から流れてこの地へやってまいりました。好きで卑しい仕事についたわけではございません。親と家族のために身を売って、生きてまいりました。でも、いまの暮らしがつくづくいやになり、何度も死のうと思いながら、それができずにすごしております」(略)
「死ぬのがおそろしい、のは、なぜかの」
と親鸞はきいた。女はきっと顔をあげて、いった。
「こんな業のふかい仕事をしていて、罰があたらぬわけがないじゃありませんか。わたしは地獄へおちるのがこわいのです。子供のころ、お坊さまが地獄の絵をみせて、話してくださったことがありました。生前、罪ぶかい暮らしをしている者(やろ)は、死んだら地獄へおちる。そう思うと眠っていても胸が苦しくなってまいります。親鸞さまは、念仏をとなえたら地獄へいかずともすむと教えておられるのでしょう? その念仏をいただきたくて、こうして恥をしのんでやってきたのです」(以下略)
五木寛之著『親鸞』229回 2011/8/23Tue.
〈前段略〉
「ここにいる連中の中には、殺生を生業としている者たちが大勢いる。川や湖や海で綱をひき、魚をとる漁夫たちもそうだ。また野山で獣を追い、鳥を捕(とら)まえる漁師もいる。しかし、本当は世間に武士といわれる者たちほど業のふかい仕事はないのだ。主君のために敵と戦い、人間を殺すのが役割だからな。このわしも、若いころから幾度となく合戦にくわわっては、大勢の敵を殺してきた。年老いたいまでも、事あらば戦をし、人を殺すだろう。思えばつくづく業のふかい大悪人だと、ため息をつくばかりじゃ。親鸞どのは、そのような者でも、御仏を信じて念仏すれば、浄土へ往生できるといわれる。そなたたちも、武士だのなんだのと肩をそびやかすのはやめて、おのれの業のふかさを噛みしめるがよい。わしの言葉に納得がいかなければ、この場を去れ。いつかはそのことに気づく日もあろう」(中略)
「親鸞さま」
と、さきほどの遊び女が声をあげた。
「念仏すれば、本当にわたしたちのような賤しい女でも、地獄へおちずにすむのでしょうか」
親鸞はいった。
「法然上人が山をおりて念仏をとかれたころも、そなたと同じ思いで生きている人びとが大勢いたのだ。そんな人びとの中から、こんな歌がうまれた。むかし流行った今様をひとつ、きいてくだされ」
そして親鸞は目をとじて、うたいだした。
はかなきこの世を過ぐすとて
海山稼ぐとせしほどに
よろずの仏にうとまれて
後生わが身をいかにせん
五木寛之著『親鸞』230回 2011/8/24Wed.
〈前段略〉
「わたくしは、百姓たちつかって田ぁたがやし、米つぐってます。殺生などしてねえです。むかしから百姓は良民、大御宝といわれで、だいじな国の宝とされできました。われらはすべて海山稼ぎの者、といってっけど、どうも納得がいがねえですが」
「ご不審はもっともです」
親鸞はうなずいていった。
「しかし、虫を殺さずに田を耕すことはできますまい。また、稲は人に食べられようとして実をつけるのでしょうか。山川草木すべてに命がある、と思えば、われらは他の命をいただくことでしか生きられない悲しい存在なのです。そうは思われませんか」
「思わねなぁ」
と、一人の日焼けした男がいった。
「とったばっかしの魚食ったり、うめえ飯食ったときは、うれしくてたまんねよ。牛馬(うしうま)は、人につかわれるために生まれてきたんだっぺ。稲も、野菜も、人が食って、なんぼのもんだっぺな」
あちこちからいっせいに笑い声がおこった。
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関連:五木寛之著『親鸞』 阿弥陀仏もイエスも、よろずの仏から疎まれた罪人を深く憐れみ、彼らをこそ救う2011-06-17 | 仏教/親鸞/五木寛之・・・
五木寛之著『親鸞』164回
〈前中段 略〉
はかなきこの世を過ぐすとて
海山稼ぐとせしほどに
よろずの仏にうとまれて
後生わが身をいかにせん
親鸞はこの歌を思いだすたびに、胸がぎゅっとしめつけられるような気持がするのである。
よろずの仏にうとまれて、というところが、なんとも切ない。
親鸞の幼いころ、さまざまな出来事が続いた。大火があり、疫病がはやり、合戦がおこり、地震があった。さらに歴史にのこる大飢饉もおそってきた。
人びとは生きるために戦い、殺生をかさね、だましあい、争いあってその日を生きなければならなかった。世間で悪とされる行為を、だれが避けることができただろう。
そして人びとは死後の世界をおそれた。無間地獄の恐ろしさを世にひろめたのは仏門の僧たちである。
生きて地獄。
死んで地獄。
救いをもとめて仏にすがろうとすると、よろずの仏は皆、さしだされた人びとの手をふり払って去っていく。 おまえたちのような悪人を救うことはできない、と。
去っていく仏たちを見送り、呆然とたちすくむ人びとにむかって、法然上人はこう力づよく語りかけたのだ。
〈よろずの仏にうとまれた者たちよ。あれを見よ。すべての仏たちが去っていくなかを、ただ1人、こちらへむかって歩いてこられる仏がいる。あれが阿弥陀仏という仏だ。よろずの仏に見はなされた人びとをこそ救う、と誓って仏となられたかたなのだ〉
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■ヨハネによる福音書9章1〜
1 イエスが道をとおっておられるとき、生れつきの盲人を見られた。
2弟子たちはイエスに尋ねて言った、「先生、この人が生れつき盲人なのは、だれが罪を犯したためですか。本人ですか、それともその両親ですか」。
3イエスは答えられた、「本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである。
■マタイによる福音書9章1〜
1 さて、イエスは舟に乗って海を渡り、自分の町に帰られた。
2すると、人々が中風の者を床の上に寝かせたままでみもとに運んできた。イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、しっかりしなさい。あなたの罪はゆるされたのだ」と言われた。
3すると、ある律法学者たちが心の中で言った、「この人は神を汚している」。
4イエスは彼らの考えを見抜いて、「なぜ、あなたがたは心の中で悪いことを考えているのか。
5あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。
6しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と言い、中風の者にむかって、「起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。
7すると彼は起きあがり、家に帰って行った。
8群衆はそれを見て恐れ、こんな大きな権威を人にお与えになった神をあがめた。
9さてイエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。
10それから、イエスが家で食事の席についておられた時のことである。多くの取税人や罪人たちがきて、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。
11パリサイ人たちはこれを見て、弟子たちに言った、「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人などと食事を共にするのか」。
12イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。
13『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、学んできなさい。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
14そのとき、ヨハネの弟子たちがイエスのところにきて言った、「わたしたちとパリサイ人たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。
15するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいる間は、悲しんでおられようか。しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その時には断食をするであろう。
16だれも、真新しい布ぎれで、古い着物につぎを当てはしない。そのつぎきれは着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなるから。
17だれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、その皮袋は張り裂け、酒は流れ出るし、皮袋もむだになる。だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。そうすれば両方とも長もちがするであろう」。
18これらのことを彼らに話しておられると、そこにひとりの会堂司がきて、イエスを拝して言った、「わたしの娘がただ今死にました。しかしおいでになって手をその上においてやって下さい。そうしたら、娘は生き返るでしょう」。
19そこで、イエスが立って彼について行かれると、弟子たちも一緒に行った。
20するとそのとき、十二年間も長血をわずらっている女が近寄ってきて、イエスのうしろからみ衣のふさにさわった。
21み衣にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と心の中で思っていたからである。
22イエスは振り向いて、この女を見て言われた、「娘よ、しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです」。するとこの女はその時に、いやされた。
23それからイエスは司の家に着き、笛吹きどもや騒いでいる群衆を見て言われた。
24「あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。
25しかし、群衆を外へ出したのち、イエスは内へはいって、少女の手をお取りになると、少女は起きあがった。
26そして、そのうわさがこの地方全体にひろまった。
27そこから進んで行かれると、ふたりの盲人が、「ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」と叫びながら、イエスについてきた。
28そしてイエスが家にはいられると、盲人たちがみもとにきたので、彼らに「わたしにそれができると信じるか」と言われた。彼らは言った、「主よ、信じます」。
29そこで、イエスは彼らの目にさわって言われた、「あなたがたの信仰どおり、あなたがたの身になるように」。
30すると彼らの目が開かれた。イエスは彼らをきびしく戒めて言われた、「だれにも知れないように気をつけなさい」。
31しかし、彼らは出て行って、その地方全体にイエスのことを言いひろめた。
32彼らが出て行くと、人々は悪霊につかれて口のきけない人をイエスのところに連れてきた。
33すると、悪霊は追い出されて、口のきけない人が物を言うようになった。群衆は驚いて、「このようなことがイスラエルの中で見られたことは、これまで一度もなかった」と言った。
34しかし、パリサイ人たちは言った、「彼は、悪霊どものかしらによって悪霊どもを追い出しているのだ」。
35イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
36また群衆が飼う者のない羊のように弱り果てて、倒れているのをごらんになって、彼らを深くあわれまれた。
浴びれば即死が待っている 福島第一 「10シーベルト」が意味すること
浴びれば即死が待っている 福島第一 「10シーベルト」が意味すること
現代ビジネス2011年08月24日(水)
「東京電力は、『近くで作業をする予定がないから問題はない』との説明をしています。しかし、本当にこれまでの5ヵ月で、その危険な高濃度汚染箇所に近づいた作業員がいなかったのか。しっかりとした調査が必要です」(元東芝の原子炉設計者・後藤政志氏)
東京電力・福島第一原発の事故処理に、またも重大な問題が発生した。同原発1号機・2号機の原子炉建屋間にある主排気塔の下部などで、毎時10シーベルト(Sv)=1万ミリシーベルト(mSv)超という、異様に高濃度の放射能汚染箇所が発見されたのだ。
計測した機械が10Svまでしか測れなかったため、実際の放射線量は、これより遥かに高い可能性がある。人間は毎時7Sv以上の放射線を浴びると確実に死に至る。10Sv超など、まさに即死レベルだ。
東京電力はこの「発見」を、「3月の事故直後にベント(排気)した際に出た放射性物質が、排気塔に溜まっている」などと、あたかも大した問題ではないかのように発表した。しかし、本当にそうなのか。前出・後藤氏はこう指摘する。
「1、2号機の排気塔でそんな数値が出ているなら、当然、3、4号機の同じ場所にも、同じ危険があると考えなければならない。原発敷地内の別の場所にも、どこにそうした高濃度汚染箇所があるか分かりません。作業員が近づけない場所が増えていけば、事故処理の工程にも、当然影響が出てくると思われます」
実際のところ、福島第一の状況は、政府や東電が説明しているような、「順調に収束に向かっている」状況とはほど遠い。事故対策に関わる政府関係者の一人は、「危険なのは、むしろここから先だ」と語る。
「今までは、ガレキを機械で除去したり、原子炉建屋の外で循環冷却のための配管を設置したりといった、比較的、放射線量が低い場所での作業が大半でした。しかし、これからは建屋の中に人間が入り、燃料棒がメルトダウンして穴が空いている炉心状況の確認作業などが必要になってくる」
これまでの作業でも、平常時の被曝限度である累積100mSvを超える被曝をした作業員が100人以上いることが確認されている。今後、即死レベルの危険地帯がある建屋内での作業が増えれば、どれほどの被曝量になるのか、見当もつかない。
「10Svの箇所では、3mの距離から放射線量を計っただけの作業員が、4mSvもの被曝をしてしまった。このまま被曝量が増えていけば、想定しているよりずっと早く、作業員の数が足りなくなる」(同関係者)
*死者が出ないことを祈る
それでなくとも、現場の作業員たちの置かれた環境は、どんどん悪化しているという。復旧作業に携わる作業員の一人はこう語る。
「建設関係を中心に作業員の人数が増え、さらに業者によるピンハネもあって、作業員一人あたりの給与や日当が激減しています。いまでは1日1万円にもならない金額で、被曝しながら働いている人がいる。ただでさえ人が足りないというのに、これでは作業員の募集が難しくなるばかり。
酷暑や猛烈な湿気、そして被曝に怯えながら、現場作業員はなんとか踏みとどまっていますが、そのうち、何か大きな事故が起きるのではないかと、心配でなりません」
作業員たちの労働環境の悪化のみならず、そもそも各原子炉も、依然として予断を許さない状況だ。
東京電力が8月3日に経産省原子力安全・保安院に提出した報告書によれば、現時点で炉心への注水機能が失われた場合、メルトダウンした燃料に残る崩壊熱により、1号機〜3号機は13〜15時間で原子炉の温度が1200度に達するとしている。
福島第一で行われている注水作業については、循環システムの度重なる故障や、稼働効率の悪さが伝えられている。システムが動き出して1ヵ月以上が経過しているのに、高濃度汚染水は減らず、むしろ増えているのが現実だ。
だが、もしそれが何らかの理由で完全に止まれば、半日後にはまたしても水素爆発や、さらに深刻な水蒸気爆発を起こす可能性さえあるということだ。
こんな綱渡りの状況にもかかわらず、「収束に向かっている」などと喧伝し続ける政府と東電の態度は、まったく理解できない。
「爆発的事象の起きる可能性は、確かに以前に比べれば減っているかもしれませんが、だからと言ってそれが安全だと言えるわけではない。メルトダウンして格納容器の密閉性が失われてしまったという時点で、本来は人間が制御できる範疇を超えてしまっていることを忘れてはなりません。
いまも福島第一は、緊急事態中の緊急事態にあることは間違いないのです。政府と東電は、希望的観測ばかりを言うのではなく、きちんと事実を伝える必要があります」(前出・後藤氏)
政府・東電による、もっとも?楽観的?なシナリオでも、福島第一で溶けた燃料棒の取り出し作業に着手できるのは、10年後である。完全収束には数十年どころか、それ以上の歳月を要するだろう。われわれは、なんという負の遺産を抱え込んでしまったのか。 「週刊現代」2011年8月20日・27日号より *強調(太字・着色)は来栖
中国監視船、日本領海に侵入=2隻が初めて、尖閣周辺―海保
中国監視船、日本領海に侵入=2隻が初めて、尖閣周辺―海保
(時事通信社 - 08月24日 11:05)
海上保安庁によると、24日午前6時15分ごろ、沖縄・尖閣諸島にある久場島の北北東沖約30キロと33キロの日本の接続水域(領海周辺の約22〜44キロ)を中国の漁業監視船2隻が航行しているのを海保巡視船が発見した。うち「漁政201」は同35分ごろ、「漁政31001」は同45分ごろ、日本領海に侵入した。
中国の漁業監視船の領海侵入は初めて。政府は同日午前、首相官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置した。
第11管区海上保安本部(那覇市)によると、巡視船は接続水域内で2隻の航行を確認した後、2隻に対して領海内から退去するよう無線を通じて警告。午前6時半ごろ、2隻のうちいずれかから無線で、「魚釣島その他周辺諸島は中国固有の領土だ。漁政は法にのっとり、中国管轄海域において正当な公務を行っている」と返答があったという。
2隻は午前7時10分ごろ、領海を出たが、漁政201は同40分ごろ再び侵入し、約7分後に離れた。
いずれも午前8時15分現在、久場島の東約27キロの接続水域を領海線に沿うように1列で航行し、南に航行。海保は巡視船と航空機で領海内に入らないよう警告している。
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◆尖閣諸島は、我が国の実効支配が及んでいる我が国固有の領土/中国を利する枝野官房長官発言/眼光紙背2011-08-13 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
◆軋む世界/巨額の財政赤字、国防費削減を迫られる米国/経済力をバックに軍備拡張を進める中国 2011-07-31 | 国際/中国
◆中国の漁業監視船、再び尖閣へ 中国は国内法で尖閣諸島や西沙・南沙諸島を中国領土だと主張2011-01-28 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
◆自分の国は自分で守る決意/境外を保護するのは法律、正義、自由ではない。国際法も国力の強弱に依存2011-01-12
◆一触即発の中国・朝鮮半島情勢。米・韓・中、そして北朝鮮とどう渡り合えばいいのか2011-01-12
◆経済発展によるカネで軍拡を続ける中国 2010年度の国防予算は日本円で6兆292億円2011-01-10
◆新防衛大綱;「動的防衛力」へ/田母神俊雄著『田母神国軍』2010-12-17
◆「核心的利益」中国は主権や領土に関わる問題で外国に妥協しない姿勢を強めた2011-07-18 | 国際/中国
◆旧ソ連から買った中国の空母「ワリヤーグ」/有事の戦闘では弱いが、平時に発揮される中国空母配備の効果2011-07-14 | 国際/中国
◆中国は、南シナ海の領有権や海洋権益を巡り、ベトナムやフィリピンなどとのトラブルが絶えない2011-06-20 | 国際/中国
◆IMF、報告書発表「中国が今後5年以内に世界一の経済大国になる」/民主主義と経済的成功の関係2011-06-11 | 国際/中国
島田紳助さん“黒い交際”を理由に芸能界を引退 「ほんの少しだけ美学を通させて欲しい」
紳助“黒い交際”理由に引退「悔いはない」
nikkansports.com
人気タレント島田紳助(55)が23日、“黒い交際”を理由に芸能界を引退した。この日夜、東京・新宿の吉本興業東京本部で記者会見を行い、自ら発表した。今月中旬、過去に暴力団関係者との「親密メール」のやりとりをしていたことが外部から同社に持ち込まれて判明。紳助は「ルール違反をしたので、自分で一番厳しい処分を科した」などと説明した。涙を浮かべたが「悔いはない」と言い切った。今後は「普通の人」に戻って静かに暮らすという。
午後10時、集まった約300人の報道陣を前に紳助は、険しい表情で頭を下げて言った。「今日をもって芸能界を引退することになりました」。引退という結論に至った理由を「僕があいまいな判断をしたら800人の後輩に示しがつかんと思った。自分に一番重い処分を与えた。悔いはありません。ぶれることなく引退します」と説明した。
同席した吉本子会社のよしもとクリエイティブ・エージェンシー水谷暢宏社長によると、今月中旬、紳助が05年6月ごろから07年6月ごろまで、数十年来の友人を通じ、暴力団関係者Bさんと携帯電話メールのやりとりをしているなど「一定の親密さをうかがわせる交流」をしていたことが、外部からの口頭による情報提供で判明。社長は情報提供者については明かさなかったが、関係者によると、友人は元プロボクシング世界王者渡辺二郎被告(恐喝未遂罪で実刑判決を受け上告中)という。
同社は情報について検証した結果、「信頼性が高い」と判断し、日本テレビ系「24時間テレビ」が終了した21日午後10時半ごろ、同社は紳助から初めて直接事情を聴いた。紳助はその場で事実と認め、反省の意思を示した上で「責任をとって引退します」と伝えたという。その後、同社と紳助は電話などでやりとりし、23日午後5時、水谷社長が引退の意向を受理した。
紳助によると、十数年前に「ある解決できない悩み」が生じ、友人A(渡辺二郎被告)さんを通じ、Bさんが解決してくれたことから、Bさんに対し「人としての恩」を感じ、感謝のメールをAさんを通じて送ったという。04年に、紳助が吉本の女性社員を殴って負傷させた事件の際に励まされ、「ありがとうございます。2人がいるから心強いです」「心の支えになってます」「心はひとつですよね」などというメールをAさんを通じて送ったという。「ただ、会ったのは十数年で4〜5回」とした上で「(交流は)僕の中ではセーフだと思っていて、悪いことをしているという意識や交際という認識はなかった。ただ吉本から『業界のルール違反や』『これはアウト』と言われ、認識の甘さを知った。芸能界のルールとして間違っていた」とした。
仕事関係者や親しい芸能人から、引退撤回を強く求められた話をした際、涙を浮かべた。「泣いたら、後悔してるみたいですけど、熱い思いがうれしかっただけ」。引退は、ダウンタウンの松本人志だけに事前に伝えた。松本から「やめないでください」と返信があったが、紳助は「最低の終わり方だが自分のわがままを通させてくれ」とこたえたという。
今後は「普通の人」に戻ると明言。「明日からは一般人なんで、静かに暮らしていきます。恩返しで、若い人たちが夢を見れるようなことに協力したい。沖縄のサンゴがなくなったから何とかしたいとか、世の中の役に立っていきたい」。一方で「明日からは、書かれたら遠慮せず告訴できる」とも話し、「(芸能界に)まったく未練はない。一瞬テッペンにのぼったんで、悔いもありません」と強調した。
[2011年8月24日9時14分 紙面から]
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紳助引退会見【一問一答】
デイリースポーツオンライン
(会見の冒頭、机に手をついて『申し訳ありませんでした』と頭を下げた)
‐引退自体に納得しているか
「納得というか、800人の後輩に示しがつかんし、一番重い処罰を自らに下して引退すると決めました」
‐(問題になったのは)ずいぶん前のメールだが、内容は
「『メールに見覚えあるか』と会社に聞かれた。(送ったメールは04年の暴行事件で)謹慎している時のもの。この時助けてくれたみんなにも(A氏と)同じメールを送った。『2人の存在があって今のボクがいます』と」
‐なぜ今問題になったのか
「理由はまったく聞いてない。ボクの中では(メールのやりとりは)セーフだと。(A氏は)真っ白な方でしたから。(暴力団とは)知りませんでしたし」
‐暴力団との交際だと理解していたのか
「ボクが十数年前に悩んだ時、引退を考えているとA氏さんに話した。僕も知らない間にA氏がB氏に(何とかしてやってくれ)とお願いしていた。後で(お礼に)会いに行った」
‐引退に至る過程で迷いはなかったか
「自分の身に(困った時があり)、Aさんに『心はひとつですよね』とメールを送った。Bさんに会ったのは偶然も合わせて5回程度です。だから僕自身の中ではセーフだと思っていた」
「週刊誌に(黒い交際など)いろなこと書かれて、悔しかったんで。明日から一般人なので遠慮せんと、告訴したいと思います」
‐レギュラー、共演者のみなさんには
「吉本の方から話をしてもらって、家にきて『引退だけは撤回してもらえないか』とも言われまして。後悔してるわけではない。その熱い思いがうれしかったです。違反は違反」
‐誰に事前に引退を明かしたのか
「事前に教えたのはダウンタウンの松本ぐらいです。電話で、向こうは『やめないでください』と。21歳でデビューして、漫才やめるきっかけは松本でしたから。芸能界終わる時にもヤツだけには伝えました。ほんの少しだけ美学を通させて欲しいとお願いしました。和田アキ子さんにも電話したんですけどお出にならなかったんで、報告できなかった」
‐芸能界を振り返って
「素晴らしい人に恵まれた。心の師である上岡龍太郎さんも55歳で引退して『引退したらいかんよ』と、2、3年前から言われてたんですけど、同じ年で引退するのは運命感じます」
‐やり残したことないか
「未練はない。山はてっぺんまで登ったらゆっくり降りなければいけない。その言葉が胸に染みているが、ボクはがけに転げ落ちてしまった。ボクらしいかなと思います」
(2011年8月24日) *強調(太字)は来栖
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〈来栖の独白〉
驚いた。今朝起きて(A.M.07:05頃)居間に降りる(我が居室は2F)と、テレビ画面に「紳助」の顔。何か謝罪している模様。一瞬「(夫君が)朝から珍しく芸能ニュースを見ているのかな」とびっくりしたが、そうではない。いつものようにNHK7時のニュースだった。近年NHKは、トップニュースで、堂々「三面記事」を持ってくる。それも延々とやる。政治・経済といった報道は後回し。また、最近力を入れている(と感じる)のは、「天気情報」である。民放顔負けの才色兼備気象予報士を何人も抱えて登場させる。天気情報を届けるのに、かくもチャーミングな女性でなければならないのか。一昔前までは、NHKのアナウンサーといえば、加賀美幸子アナウンサーなど、ひたすら質実だったような気がする。昨今、NHKも、色を売るようになった。---NHKへの違和感は、ここまで。---
紳助氏は、上掲記事のように、引退するそうだ。記事によれば
「ほんの少しだけ美学を通させて欲しいとお願いしました」
と、ある。
彼の賢さを見る。どこかの政治家のように、スキャンダルを書き立てられつつ汚れたイメージで居座るのは、得策ではない。潔く身を退けば、彼の場合【暴力団】よりも【引退】のほうが印象に残る。「人間は誰でも失敗や過ちを犯すものだ、紳助はその失敗・過ちに潔く責任を取った」・・・紳助を思い出すとき、人はきっと彼の潔さを称賛するだろう。そしてそれは、きっと紳助に対する「帰ってこい」コールに繋がるのではないか。
知名度の高い芸人だ。賢いから、評論だってできる。本も書けるだろう。
紳助さんの引退の決心が将来を目論んでのものとは、思わない。潔く身を処することの重さを感じた次第だ。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある、か。身を捨てても己が美学は貫きたいものだ。紳助さんは、心ばえも優れている。
「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎/「発送電」の分離(電力の自由化)=経産省に任せるなら望み薄
経団連会長、政府との仲修復か 野田新首相に「元通りの関係」
日本経済新聞2011/9/1 12:22
野田佳彦新首相(民主党代表)は1日午前、経済3団体と連合に就任のあいさつ回りをした。新首相は経団連の米倉弘昌会長に「経済政策を間断なくやりたい」と表明。菅政権に批判的な米倉会長が政府の新成長戦略実現会議を連続して欠席していることを念頭に「政府の会議をつくり直す。出席してもらえますか」と要請した。米倉会長は「震災前は出席していた。元通りの関係だ」と記者団に語った。
米倉会長は民主党の新執行部人事についても「(党内融和を)有言実行した。大変素晴らしい」と絶賛した。この後、新首相は経済同友会、日本商工会議所を訪れた。
これに先立つ民主党の有力支持団体である連合へのあいさつ回りで、新首相は「重責を担うことになった。全力でやっていくのでこれまで同様応援してほしい」と協力を求めた。古賀伸明会長が「輿石東幹事長は的を射た人事だ。一致結束した政権運営をお願いしたい」と党内融和を促すと、新首相は「党内一致の態勢を築いて難局を乗り越えたい」と応じた。
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野田新首相「間断なく経済対策」 経団連会長と会談
日本経済新聞2011/9/1 11:40
野田佳彦新首相(民主党代表)は1日午前、経団連の米倉弘昌会長と会談した。冒頭で米倉会長は「党の人事は大変、有言実行だった」と評価、野田新首相は「何とか早くいい(内閣の)体制を作って、すぐにでも始動できるようにする。これから間断なくしっかり経済対策を実行していきたいので、お知恵を拝借したい」と応じた。
米倉氏は会談後、記者団に対して、野田新首相から「今までの菅直人政権が設けた会議を作り直すので、参加してほしい」と要請があったことを明らかにした。そのうえで米倉氏は「東日本大震災の発生まではちゃんとサポートしていたので、(政府とは)元通りの関係ということになる」との認識を示した。野田新首相には「全面的に協力する」と伝えたという。
米倉氏は「震災復興が遅々として進まないので、ぜひとも早くしてほしい」とも要望。新首相との関係については「これまでよく話をしていたので、ちゃんと人となりをお互いにわかっており、理解し合えると思う」と語った。〔日経QUICKニュース〕
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脱原発も「ノーサイド」? 野田新首相 広がる警戒感
中日新聞 〈特報〉 -篠ケ瀬祐司、中山洋子-2011/08/31Wed.
■新設否定も再稼働は前向き
新首相に選ばれた野田氏は30日午後、恒例のあいさつに国会内の各党控室を回った。
野田氏は「新たな原子力発電所は造れない」としながらも、再稼働には前向きだ。これに対し、早速、与野党内から厳しい声が広がっている。
民主党の川内博史衆院議員は「高速増殖炉や核燃料サイクルは稼働見通しが立っていない。しかも日本は地震国。原発の増設ができないのは当たり前だ」と指摘する。
再稼働についても、現時点で検討を始めるのは早すぎるとみる。「福島第1原発は津波ではなく、地震で原子炉が壊れた可能性がある。まだ隠されているデータやマニュアルを公開させる必要もある。再稼働の検討の前に、事故原因の徹底究明に基づく安全審査指針の見直しが不可欠だ」
その際、必要なのは政府が従来、無視してきた原子力行政に批判的な専門家の参画と訴える。
■「原子力ムラ」が巻き返しの動き
かねて原子力行政を批判してきた自民党の河野太郎衆院議員は「野田氏の周辺には、電力業界に近い議員が多いように見える」と警戒する。
河野氏は「既に電力各社の職員が、国会議員の事務所が集まる議員会館を回り、原発の必要性を説いて回っている」と「原子力ムラ」の巻き返しを暴露。「原子力委員会事務局にいる電力会社からの出向者の一掃も必要だ」と付け加えた。
河野氏自身は「自民党は与党時代に原子力を推進した。これを総括した上で、自民党としての新たなエネルギー政策を打ち出したい」と話す。
みんなの党の浅尾慶一郎政調会長は「野田氏は再稼働の際に安全性を点検するというが、地元住民だけではなく、国民的な合意がなければ再開は難しい」と、原発再稼働のハードルを上げる。
その上で、最終処分場の確保まで含めた「原発の本当のコスト」を示すことが不可欠だと提起する。「電力会社の地域独占をやめて送配電部門を分離し、市場メカニズムを導入すればコストの高い原発は淘汰される。人工光合成など技術革新を進めることで10年以内の脱原発は可能だ」
社民党の福島瑞穂党首は「野田氏は民主党代表選では世論を意識し、新設しないとトーンを変えた。しかし、中部電力浜岡原発を止めた菅氏ほど脱原発の方向性は出していない。官僚側は野田氏をくみしやすしと考えているのでは」と、新内閣の行方を案ずる。
実際、30日には原子力委員会が原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」の見直し作業再開を決めるなど、菅氏退場を待っていたかのような動きが見られる。
福島氏はもんじゅ廃止や原子力安全・保安院の改編時の規制機能強化を訴えると意気込んだ。
■財界 早くも高評価
原発をめぐっても、野田氏は月刊「文芸春秋」9月号の「わが政権構想」で「脱原発対推進の対立ではなく」と、得意の「ノーサイド」を主張している。
しかし、菅首相が後に「私的な思い」と後ずさった7月の「脱原発」宣言の際は「短兵急に進める話ではない」と牽制。同誌の手記では「2030年までは原子力技術を蓄積することが現実的」とし、新興国への原発輸出も「国際貢献」と位置付けている。
こうした「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎している。
経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)は野田氏について早々に「安定感と行動力を持った政治リーダー」と絶賛。「(政治家の資質が)すべて物足りない」とこき下ろした前任者と打って変わり、高い評価を与えた。
こうした野田氏に「脱原発」を期待するのは無意味なことなのか。
経済評論家の佐高信氏は「無理でしょう」と切り捨てる。野田氏は増税論者だが、その前提は無駄遣いの一掃。しかし、原子力ムラにある多くの公益法人の改廃については絶望的だとみる。
「しゃべる訓練はできているが、耳がふさがっているのが松下政経塾出身者の特徴。彼もその1人。脱原発の国民の声が聞こえていない」
ちなみに佐高氏は菅首相の中途半端な「脱原発」も罪深いと断じる。「脱原発を言うのなら、党の利害を超えて解散しなければダメだった」
政治評論家の森田実氏も「脱原発には、よほどの指導力が必要。野田政権では困難だ」とみる。
「野田氏は松下政経塾出身で、財界に近いことは確かだ。ただ、『減原発』では国民的な合意がほぼ、できている。世論に逆らって“原発推進”とまでは言えないのだろう」
■地域独占崩れず 自由化望み薄?
電力業界を含む財界が最も懸念するのが発送電の分離だ。巨費を投じる原発建設を可能にしてきたのは、電力会社による地域独占だった。その構造は変えられないのか。
富士通総研の高橋洋主任研究員は「発送電分離は世界的な流れ。大半の国は日本より進んでいる。電力会社が反対するのは当然だが、電力の自由化によって再生可能エネルギーの普及も進む」と説明する。ちなみに脱原発を選んだドイツでは再生可能エネルギーは発電量全体の13・5%にも及んでいるという。
「電力大手の地域独占を撤廃し、自由化を進めるには政治リーダーが強い意思を持つことが重要だ」と高橋氏は説くが、野田氏がそれに適任か否かについては「まだ出発点なので期待したいが、経産省に任せるなら思い切った変化は望み薄だ」と渋い見立てだ。
■被災者の健康維持こそ急務
こうした脱原発へのかじきりと同時に、待ったなしなのは福島原発事故の被災者たちの健康維持だ。前政権は被ばくを広げる愚を犯している。
「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」の山田真代表は「原発の安全神話が崩れたら、今度は『放射能は安全』という妙な風潮が広がっている。低線量被ばくを軽視する人もいるが、影響が出てからでは遅い。最悪の事態を想定しなくては子どもたちを守れない」と話す。
この間、開いてきた福島の子どもらの健康相談会では「風評をあおる」と言われることを恐れ、不安を口にできない親の姿を数多く見てきた。
「被ばく検査もいつになるか分からない。国はこれまで何もせず、それが新政権で急に変わるとは思えない。しかし、新たな『安全神話』のために福島の子どもたちはいまだ放置されている」
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◆「脱原発」を堅持しよう 電力自由化=発送電分離は不可避/脱原発からは最も遠い野田佳彦新首相2011-09-02 | 地震/原発
原発の安全神話が崩れたら、今度は『放射能は安全』という妙な風潮が広がっている
脱原発も「ノーサイド」? 野田新首相 広がる警戒感 財界 早くも高評価
中日新聞 〈特報〉-篠ケ瀬祐司、中山洋子-2011/08/31Wed.
■新設否定も再稼働は前向き
新首相に選ばれた野田氏は30日午後、恒例のあいさつに国会内の各党控室を回った。
野田氏は「新たな原子力発電所は造れない」としながらも、再稼働には前向きだ。これに対し、早速、与野党内から厳しい声が広がっている。
民主党の川内博史衆院議員は「高速増殖炉や核燃料サイクルは稼働見通しが立っていない。しかも日本は地震国。原発の増設ができないのは当たり前だ」と指摘する。
再稼働についても、現時点で検討を始めるのは早すぎるとみる。「福島第1原発は津波ではなく、地震で原子炉が壊れた可能性がある。まだ隠されているデータやマニュアルを公開させる必要もある。再稼働の検討の前に、事故原因の徹底究明に基づく安全審査指針の見直しが不可欠だ」
その際、必要なのは政府が従来、無視してきた原子力行政に批判的な専門家の参画と訴える。
■「原子力ムラ」が巻き返しの動き
かねて原子力行政を批判してきた自民党の河野太郎衆院議員は「野田氏の周辺には、電力業界に近い議員が多いように見える」と警戒する。
河野氏は「既に電力各社の職員が、国会議員の事務所が集まる議員会館を回り、原発の必要性を説いて回っている」と「原子力ムラ」の巻き返しを暴露。「原子力委員会事務局にいる電力会社からの出向者の一掃も必要だ」と付け加えた。
河野氏自身は「自民党は与党時代に原子力を推進した。これを総括した上で、自民党としての新たなエネルギー政策を打ち出したい」と話す。
みんなの党の浅尾慶一郎政調会長は「野田氏は再稼働の際に安全性を点検するというが、地元住民だけではなく、国民的な合意がなければ再開は難しい」と、原発再稼働のハードルを上げる。
その上で、最終処分場の確保まで含めた「原発の本当のコスト」を示すことが不可欠だと提起する。「電力会社の地域独占をやめて送配電部門を分離し、市場メカニズムを導入すればコストの高い原発は淘汰される。人工光合成など技術革新を進めることで10年以内の脱原発は可能だ」
社民党の福島瑞穂党首は「野田氏は民主党代表選では世論を意識し、新設しないとトーンを変えた。しかし、中部電力浜岡原発を止めた菅氏ほど脱原発の方向性は出していない。官僚側は野田氏をくみしやすしと考えているのでは」と、新内閣の行方を案ずる。
実際、30日には原子力委員会が原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」の見直し作業再開を決めるなど、菅氏退場を待っていたかのような動きが見られる。
福島氏はもんじゅ廃止や原子力安全・保安院の改編時の規制機能強化を訴えると意気込んだ。
■財界 早くも高評価
原発をめぐっても、野田氏は月刊「文芸春秋」9月号の「わが政権構想」で「脱原発対推進の対立ではなく」と、得意の「ノーサイド」を主張している。
しかし、菅首相が後に「私的な思い」と後ずさった7月の「脱原発」宣言の際は「短兵急に進める話ではない」と牽制。同誌の手記では「2030年までは原子力技術を蓄積することが現実的」とし、新興国への原発輸出も「国際貢献」と位置付けている。
こうした「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎している。
経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)は野田氏について早々に「安定感と行動力を持った政治リーダー」と絶賛。「(政治家の資質が)すべて物足りない」とこき下ろした前任者と打って変わり、高い評価を与えた。
こうした野田氏に「脱原発」を期待するのは無意味なことなのか。
経済評論家の佐高信氏は「無理でしょう」と切り捨てる。野田氏は増税論者だが、その前提は無駄遣いの一掃。しかし、原子力ムラにある多くの公益法人の改廃については絶望的だとみる。
「しゃべる訓練はできているが、耳がふさがっているのが松下政経塾出身者の特徴。彼もその1人。脱原発の国民の声が聞こえていない」
ちなみに佐高氏は菅首相の中途半端な「脱原発」も罪深いと断じる。「脱原発を言うのなら、党の利害を超えて解散しなければダメだった」
政治評論家の森田実氏も「脱原発には、よほどの指導力が必要。野田政権では困難だ」とみる。
「野田氏は松下政経塾出身で、財界に近いことは確かだ。ただ、『減原発』では国民的な合意がほぼ、できている。世論に逆らって“原発推進”とまでは言えないのだろう」
■地域独占崩れず 自由化望み薄?
電力業界を含む財界が最も懸念するのが発送伝の分離だ。巨費を投じる原発建設を可能にしてきたのは、電力会社による地域独占だった。その構造は変えられないのか。
富士通総研の高橋洋主任研究員は「発送電分離は世界的な流れ。大半の国は日本より進んでいる。電力会社が反対するのは当然だが、電力の自由化によって再生可能エネルギーの普及も進む」と説明する。ちなみに脱原発を選んだドイツでは再生可能エネルギーは発電量全体の13・5%にも及んでいるという。
「電力大手の地域独占を撤廃し、自由化を進めるには政治リーダーが強い意思を持つことが重要だ」と高橋氏は説くが、野田氏がそれに適任か否かについては「まだ出発点なので期待したいが、経産省に任せるなら思い切った変化は望み薄だ」と渋い見立てだ。
■被災者の健康維持こそ急務
こうした脱原発へのかじきりと同時に、待ったなしなのは福島原発事故の被災者たちの健康維持だ。前政権は被ばくを広げる愚を犯している。
「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」の山田真代表は「原発の安全神話が崩れたら、今度は『放射能は安全』という妙な風潮が広がっている。低線量被ばくを軽視する人もいるが、影響が出てからでは遅い。最悪の事態を想定しなくては子どもたちを守れない」と話す。
この間、開いてきた福島の子どもらの健康相談会では「風評をあおる」と言われることを恐れ、不安を口にできない親の姿を数多く見てきた。
「被ばく検査もいつになるか分からない。国はこれまで何もせず、それが新政権で急に変わるとは思えない。しかし、新たな『安全神話』のために福島の子どもたちはいまだ放置されている」 *強調(太字・着色)は来栖
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◆「脱原発」を堅持しよう 電力自由化=発送電分離は不可避/脱原発からは最も遠い野田佳彦新首相2011-09-02 | 地震/原発
「脱原発」を堅持しよう 日本の未来のエネルギー
中日新聞【社説】2011年9月2日
猛暑の夏が過ぎていく。どうやら、原発に依存しない暮らしのかたちも見えた。本当に豊かな未来のために、脱原発の方向性はこのまま堅持するべきだ。
九月に入り、朝晩の空気はめっきり涼しくなった。
首都圏も東北も、そして名古屋も、記録的猛暑といわれた夏を、ほぼ原発に頼らずに乗り切った。
東京電力と東北電力管内の電力使用制限令は、九日までに前倒しで解除になる。中部電力管内では、自動車業界の土日操業効果もあって、百万キロワット、中型原発一基分の電力が節約された。
■原発に依存しない夏
原発なしでは、産業も暮らしも立ちゆかないという、経済産業省と電力業界挙げての強い“警告”も、どうやら杞憂(きゆう)に終わりそうな気配が強い。むしろ生活者の間には「原発なしでもいけそうだ」という自信がわいたのではないか。身の回りの電気のむだを洗い出し、電力に依存し過ぎた暮らしを見直すきっかけがつかめたのではあるまいか。LEDの普及など、省エネ型の社会基盤整備にも弾みがついたのではないか。
脱原発路線を打ち出した菅直人首相が退陣し、新しい内閣がきょうにも発足する。
野田佳彦新首相は「原発を新設しない」としながらも、「安全性を確認した原発を活用し、電力の安定供給を確保する」と、再稼働容認の立場を鮮明にしており、民主党代表選に出馬した五人の中で、脱原発からは最も遠いといわれている。脱原発、脱原発依存路線からの後退、あるいは揺り戻しを心配する声も高くなっている。
菅内閣末期には「原子力ムラ」の巻き返しがささやかれ、定期検査などで停止中の原発を拙速に再稼働させようとする動きが活発になってきた。だが、菅内閣の総評はさておいて、脱原発の方向性は、福島第一原発の惨状を目にした多くの国民に、一定の評価を受けている。国民の意思と願いが込められた脱原発の金看板を、そう簡単に掛け替えるべきではない。
事故後、間もなく半年になる。経産省原子力安全・保安院は、福島第一原発から飛散した放射性セシウム量が、広島型原爆百六十八個分に上ることを公表した。文部科学省の調査では、土壌汚染の最高濃度は一五〇〇万ベクレル以上に上る。徐々に明らかになる放射能汚染の実態は予想以上に深刻で、広範囲にわたっており、避難の長期化は避けられない。
■発送電分離は不可避
風評被害も後を絶たず、桃や稲作農家の悩みは深い。牛たちは野生化し、作付けのできない田畑、ふるさとの風景は荒れていく。
損害補償の基準だけはようやくできた。賠償総額は数兆円規模に上るというが、廃炉費用を含めればゼロが一つ増えるとの見方もある。いずれにしても、東京電力が独りで担える額ではない。電気料金の値上げも含めて、そのツケは国民すべてにのしかかる。原発は高くつく。安全上も経済的にも、あまりにリスクが高すぎる。
再稼働できたとしても、原発の新設は将来にわたって不可能だ。放射性廃棄物処分場の立地もままならない。既存の原子炉の寿命が尽きれば、原発はいずれにしても“安楽死”させる以外にない。
その意味で、脱原発は後退ではなく進化である。
国内の総発電量に占める原発の割合は三割弱、二、三割の節電が不可能ではないことは、この夏実証された。その上に太陽光や風力などの自然エネルギーや廃熱利用を上積みすれば、私たちは今より豊かになれる。
自然エネルギーの全量買い取りを電力会社に義務づけた再生エネルギー特別措置法が成立し、大手がしのぎを削る太陽光以外の風力、小型水力発電分野にベンチャー企業の進出が盛んになった。技術革新も進んでいる。
自然エネルギー市場を安定させるには、真の電力自由化が欠かせない。
特措法には「円滑な供給の確保に支障が生ずる場合」には、買い取りを拒否できるという抜け穴が開いている。これをふさぐ必要がある。そして大手電力会社の地域独占を廃し、発電事業と送電事業を分離させ、いつ、どこからでも自然エネルギーによる電力が家庭や事業所に送り届けられる環境を整えるべきである。欧米にできて、日本にできないわけがない。
■国家百年の計として
電源の地域分散、電気の地産地消が可能になれば、建設にも維持管理にも巨額の費用がかかる原発は自然にいらなくなるはずだ。
私たちの暮らしを守り、安心を取り戻し、有望な新産業の育成を図るため、新内閣には百年先を見据えた、新たなエネルギー政策を示してほしい。脱原発こそ、国家百年の計である。 *強調(太字・着色)は来栖
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◆電力会社の利権を奪えば脱原発できる! ニッポンの自家発電はすでに原発60基分2011-06-13 | 地震/原発
◆なんと原発50基分!埋蔵電力活用で「脱原発」できる/電力会社の利権を奪えば脱原発できる2011-07-11 | 地震/原発
◆「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎/「発送電」の分離(電力の自由化)=経産省に任せるなら望み薄2011-09-01 | 政治(経済・社会保障)
◆映画「100,000年後の安全」地下500? 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発
◆原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28
「脱原発」を堅持しよう 電力自由化=発送電分離は不可避/脱原発からは最も遠い野田佳彦新首相
「脱原発」を堅持しよう 日本の未来のエネルギー
中日新聞【社説】2011年9月2日
猛暑の夏が過ぎていく。どうやら、原発に依存しない暮らしのかたちも見えた。本当に豊かな未来のために、脱原発の方向性はこのまま堅持するべきだ。
九月に入り、朝晩の空気はめっきり涼しくなった。
首都圏も東北も、そして名古屋も、記録的猛暑といわれた夏を、ほぼ原発に頼らずに乗り切った。
東京電力と東北電力管内の電力使用制限令は、九日までに前倒しで解除になる。中部電力管内では、自動車業界の土日操業効果もあって、百万キロワット、中型原発一基分の電力が節約された。
■原発に依存しない夏
原発なしでは、産業も暮らしも立ちゆかないという、経済産業省と電力業界挙げての強い“警告”も、どうやら杞憂(きゆう)に終わりそうな気配が強い。むしろ生活者の間には「原発なしでもいけそうだ」という自信がわいたのではないか。身の回りの電気のむだを洗い出し、電力に依存し過ぎた暮らしを見直すきっかけがつかめたのではあるまいか。LEDの普及など、省エネ型の社会基盤整備にも弾みがついたのではないか。
脱原発路線を打ち出した菅直人首相が退陣し、新しい内閣がきょうにも発足する。
野田佳彦新首相は「原発を新設しない」としながらも、「安全性を確認した原発を活用し、電力の安定供給を確保する」と、再稼働容認の立場を鮮明にしており、民主党代表選に出馬した五人の中で、脱原発からは最も遠いといわれている。脱原発、脱原発依存路線からの後退、あるいは揺り戻しを心配する声も高くなっている。
菅内閣末期には「原子力ムラ」の巻き返しがささやかれ、定期検査などで停止中の原発を拙速に再稼働させようとする動きが活発になってきた。だが、菅内閣の総評はさておいて、脱原発の方向性は、福島第一原発の惨状を目にした多くの国民に、一定の評価を受けている。国民の意思と願いが込められた脱原発の金看板を、そう簡単に掛け替えるべきではない。
事故後、間もなく半年になる。経産省原子力安全・保安院は、福島第一原発から飛散した放射性セシウム量が、広島型原爆百六十八個分に上ることを公表した。文部科学省の調査では、土壌汚染の最高濃度は一五〇〇万ベクレル以上に上る。徐々に明らかになる放射能汚染の実態は予想以上に深刻で、広範囲にわたっており、避難の長期化は避けられない。
■発送電分離は不可避
風評被害も後を絶たず、桃や稲作農家の悩みは深い。牛たちは野生化し、作付けのできない田畑、ふるさとの風景は荒れていく。
損害補償の基準だけはようやくできた。賠償総額は数兆円規模に上るというが、廃炉費用を含めればゼロが一つ増えるとの見方もある。いずれにしても、東京電力が独りで担える額ではない。電気料金の値上げも含めて、そのツケは国民すべてにのしかかる。原発は高くつく。安全上も経済的にも、あまりにリスクが高すぎる。
再稼働できたとしても、原発の新設は将来にわたって不可能だ。放射性廃棄物処分場の立地もままならない。既存の原子炉の寿命が尽きれば、原発はいずれにしても“安楽死”させる以外にない。
その意味で、脱原発は後退ではなく進化である。
国内の総発電量に占める原発の割合は三割弱、二、三割の節電が不可能ではないことは、この夏実証された。その上に太陽光や風力などの自然エネルギーや廃熱利用を上積みすれば、私たちは今より豊かになれる。
自然エネルギーの全量買い取りを電力会社に義務づけた再生エネルギー特別措置法が成立し、大手がしのぎを削る太陽光以外の風力、小型水力発電分野にベンチャー企業の進出が盛んになった。技術革新も進んでいる。
自然エネルギー市場を安定させるには、真の電力自由化が欠かせない。
特措法には「円滑な供給の確保に支障が生ずる場合」には、買い取りを拒否できるという抜け穴が開いている。これをふさぐ必要がある。そして大手電力会社の地域独占を廃し、発電事業と送電事業を分離させ、いつ、どこからでも自然エネルギーによる電力が家庭や事業所に送り届けられる環境を整えるべきである。欧米にできて、日本にできないわけがない。
■国家百年の計として
電源の地域分散、電気の地産地消が可能になれば、建設にも維持管理にも巨額の費用がかかる原発は自然にいらなくなるはずだ。
私たちの暮らしを守り、安心を取り戻し、有望な新産業の育成を図るため、新内閣には百年先を見据えた、新たなエネルギー政策を示してほしい。脱原発こそ、国家百年の計である。 *強調(太字・着色)は来栖
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◆原発の安全神話が崩れたら、今度は『放射能は安全』という妙な風潮が広がっている2011-09-01 | 地震/原発
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◆「原子力」天下り 結ぶ 「原子力村」霞が関一帯に密集2011-07-16 | 地震/原発
◆経産省官僚古賀茂明氏への肩たたき/民主党政権よ、霞が関の改革派潰しにまで手を貸すのか2011-07-16 | 政治
◆官僚・古賀茂明氏の出処進退にみる 公務員制度の摩訶不思議2011-07-14 | 政治
◆原発問題の裏にある経産省・東電「天下り・利権の構図」/退職勧奨を受けた古賀茂明キャリア官僚2011-07-12 | 地震/原発
野田政権「ノーサイド政治」の本質は「霞が関におんぶにだっこ」 「政策」にノーサイドなどありえない
党内の支持優先で国民を見ていない野田政権「ノーサイド政治」の本質は「霞が関におんぶにだっこ」 「政策」にノーサイドなどありえない
現代ビジネス2011年09月02日(金)長谷川 幸洋
野田佳彦新総理が誕生した。このコラムを執筆している9月1日午後時点で内閣の顔ぶれは決まっていないが、それでも、これまでの発言などから新しい野田政権の性格がおぼろげに見えている。
野田は民主党の代表に決まった直後の演説で民主党議員に「ノーサイドにしましょう」と呼びかけた。日本人は対立よりも協調性や調和を好む人が多いから、こういう姿勢は一般に好感をもって受け止められているようだ。
だが、ラグビーのスポーツ精神でノーサイドが尊いとしても、政治の世界がそれでは困る。国民はまず政策を判断材料にして議員を選んでいるはずだ。代表選が終わった途端にノーサイドでは、自分が選んだ議員を通じて実現してほしい政策まで、なんだかあいまいに妥協されてしまいかねない。
*ノーサイドとは一昔前の自民党政治そのもの
国民の代表である政治家には、信念をもって最後まで「自分のサイド」を貫いてほしい。また、そうあるべきだと思う。
野田が両院議員総会で「ノーサイドにしよう」といった視線の先には、400人の民主党国会議員しか見えていない。政権基盤を安定させられるかどうかは、まず民主党議員たちの支持にかかっている。だから野田はノーサイドと言って、できるだけ多くの議員に支持してもらいたかったのだ。
だが実は、議員たちの後ろに多くの有権者が控えている。有権者はみなそれぞれ実現してもらいたい、あるいは実現してもらいたくない政策がある。ある人は増税を望み、別の人は増税をまったく望まない。ここは、けっしてノーサイドにはならない。
たとえば、既得権益を得ている層とそうでない層では基本的な利害対立がある。
国民に意見対立があるなら、国民の意見を反映する政治家の政策も対立しているはずだ。ところが、そういう対立を覆い隠して政治家たちに「みんな和解しましょう」と言っている。ここに野田政治の本質的側面がすでに表れている。
言い換えると、ノーサイドとは一昔前の自民党政治そのものでもある。
自民党時代には政策は霞が関が一手に引き受けていた。政策は霞が関がつくっていて基本的にみな同じだったから、永田町の政治家は「決断と実行」とか「忍耐と寛容」とか政策の根幹に関係ない部分でアピールしていた。実行力とか包容力とかを競う以外に言いようがなかったとも言える。
そういう政治はダメと分かったので、2年前の総選挙で民主党は「脱官僚・政治主導」の旗を掲げたはずだった。政治家が政策を官僚の手から取り戻そうとしたのだ。ところが結局、官僚に絡めとられて脱官僚路線はうまくいかず、民主党三代目の野田政権に至って、結局「ノーサイド」と言う以外になくなってしまった。
*新たな政策決定の仕組みが波乱の種になる
単に言葉だけではない。小沢一郎元代表に近い輿石東参院議員会長を幹事長に起用したところをみると、野田は党人事の上でも小沢・反小沢の対立を乗り越えて和解しようという姿勢があるようだ。
では、ノーサイドの政治はうまくいくだろうか。結論を言えば、それは難しい。
なぜなら「霞が関におんぶにだっこ」という政治はもう機能しないからだ。霞が関は大きくなりすぎた。民間部門の箸の上げ下ろしまで霞が関が差配し、天下りで官僚が税金をかすめとる体制を続けていて、日本経済の復活はない。
日本経済が停滞している根本原因が霞が関主導体制にあるという認識は、東日本大震災と福島第一原発事故の辛い経験を経て国民全体に広まった。そういう認識が永田町にも敏感に伝わっている。
多くの民主党議員が霞が関の口移しのような姿勢では「次の総選挙が危ない」と気づいてしまった。たしかに野田は勝ったが「増税はダメ」という勢力は党内に相当数、残っているのだ。
野田は政策決定の仕組みも変えようとしている。
政策調査会を完全復活させて、基本的に予算案と法案、条約は前原誠司政調会長の了承なくして閣議決定しない仕組みにした。それが新たな波乱の種になる。
新代表誕生のユーフォリア(幸福感)でつかの間、ノーサイドが心地よく響いたとしても、たちまち議員たちは現実に戻る。政調の部門会議で増税路線を具体的に決めようとすれば、再び大荒れになるのは必至だろう。
しかも、それはすぐやってくる。復興財源を手当てする基幹税増税は3次補正予算案の編成と並行して取組む段取りになっている。社会保障財源としての消費税引き上げも来年3月までに法案化する予定だ。すなわち議論は秋からスタートする。
*一番困っているのは自民党
小沢と自民党についても書いておこう。
今回の敗北で小沢は鳩山由紀夫グループと連携しても、政権を握れないことがはっきりした。来年9月の代表選で再挑戦するかもしれないが、このままではジリ貧である。
ここは鳩山と袂を分かっても離党して新党を結成し、国会でキャスティングボートを握るか、それとも党内の少数勢力としてキャスティングボートを握るか。どちらかを選ぶしかなくなってきた。
野田政権誕生で一番困っているのは、実は自民党である。
自民党はこれまで「唯一の責任政党として国民に耳の痛いことも言う。それは増税だ」と訴えてきた。増税を武器に支持を訴えたのだが、いまや野田政権が増税を言っている。どちらも「責任政党として増税を目指す」という話になって、違いがなくなってしまった。
それで大連立するならすっきりするが、自民党は当面、大連立を受け入れない方針のようだ。それで出口がなくなってしまった。いざ解散・総選挙になったとき「私たち自民党は民主党とここが違います」という対立軸がなくなってしまったのだ。
原発、外交関係をとっても、民主党も自民党も基本的には段階的な脱原発依存と日米関係重視で大差はない。
自民党が抜本的な霞が関と公務員制度改革を打ち出すなら、公務員労組への依存体質が残る民主党との対立軸になる可能性がある。それもためらうなら、自民党は結局、長期低迷から抜け出せないだろう。(文中敬称略) *強調(太字・着色)は来栖
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◆古賀茂明著『官僚の責任』/霞が関は人材の墓場/優秀なはずの人間たちがなぜ堕落するのか2011-07-21 | 読書
◆「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎/「発送電」の分離(電力の自由化)=経産省に任せるなら望み薄2011-09-01 | 政治(経済・社会保
ロシアは野田新政権を日露経済協力に誘おうとしている/原発政策を見極めながら、LNGカードを切ってくる
野田新政権に「日露経済協力」へのメッセージを送るロシアは、エネルギー=LNGカードを切ってくる
現代ビジネス2011年09月02日(金)佐藤 優
ロシアは民主党代表選挙で前原誠司前外相が代表に選出され、首相に就任することに期待していた。それは前原氏が外相時代に北方領土における日露共同経済活動の検討を含む2国間の提携を強化する意思を示したからだ。ロシアの意図は、日本との戦略的提携を強化し、中国の影響力拡大を牽制することにある。端的に言うと、ロシアは前原氏を帝国主義者と見なしている。ロシアは帝国主義外交を展開しているので、「力の論理」の信奉者である前原氏とならば、帝国主義的な勢力均衡外交というゲームができると認識しているのだ。
8月29日に野田佳彦財務相が民主党代表に選出されたことを受け、同日、ロシア国営ラジオ「ロシアの声」(旧モスクワ放送)が興味深い論評を行ったので、全文を引用しておく。
〈 引き継いだ問題 どう解決するか --- 野田政権誕生へ
日本では与党・民主党の代表選挙が行われ、54歳の野田佳彦氏が新しく代表に選ばれた。野田氏は官僚出身ではないものの、官僚からも人気があり、演説にも優れ、人との関係を作るのが上手な人物だ。また日本経済の先行きについても、幻想を抱いてはいない。地に足がついた人物だといえるだろう。早ければ30日にも首相としての指名を受ける可能性もある。
野田氏が首相として引き継ぐものは決して楽な仕事ではない。世界経済危機のあおりを受けた経済問題など、首相が交代したことによって自動的に消え去るようなものではない。また世界情勢も単純なものではない。というのも前政権の間、中国や韓国、ロシアなどの隣国との関係がさらに複雑化したとも言えるからだ。
野田氏は政治経済改革の信奉者として知られている。また前任者と同じく、デフレ退治に重きを置いており、そのほかの問題解決はデフレ克服の後にすべきだという意見を持っている。財務大臣任期中の政策を振り返ってみても、野田氏が保守的な意見の持ち主であることが分かるだろう。財政の建て直しのため、支出の削減と新しい国債発行を支持していた。
また原発問題については、より厳しい安全基準のもとでの原発保全を唱えている。外交については、ほかの民主党議員と同じく、アメリカとの軍事政治同盟を支持すると共に、中国の急速な強大化に警戒感を有している。 それではロシアとの関係にはどのような変化が見られると予測されるだろうか? ロシア戦略研究所のウラジーミル・チェレホフ専門家は次のように述べている。
「ロシアとの関係で言えば、日本がすでにロシアに対して持っている戦略を変更しようとするような政治指導者は日本にはいないと考えています。つまりクリル4島返還という問題です。日本がそのような要求をあきらめることは将来的にもほとんどあり得ません。ただそのやり方については、また別です。日本にとって、ロシアとの関係改善が必要になることもあり得ますし、そうなれば領土問題はまた棚上げとなるでしょう。」
世界には、領土問題を抱えながらも、成功裏に経済関係を発展させている国々が多く存在する。また確かにロシアと日本の経済関係は、潜在力を生かしきれてはないにせよ、それほど悪いものではない。露日の経済関係の見通しについて、再びウラジーミル・チェレホフ専門家に意見を聞いてみた。
「中国との競争という背景があることを考慮に入れれば、露日の経済関係の改善は大いにあり得ることです。客観的な状況によって、日本にとってもロシアにとっても、プラグマティックな関係を構築していくことの必要性が明らかになってきています。たとえば、インドと中国の間には非常に緊張した領土問題が存在していましたが、?小平が経済関係の発展と領土問題の棚上げを提案したことによって、経済関係が急速に良くなった経緯もあります。それはおそらく、ロシアと日本との関係にも当てはめてみることができるでしょう。」
最近では、日本の実業界がロシアとの協力に大きな関心を示していることがより明確となってきている。また日本はロシアからのエネルギー輸入を増加させる準備もある。サハリン3のプロジェクトはいつでも開始できる段階だ。
野田氏は2002年、ロシアとの関係について、ロシアは日本という国が友好国となることを望んでおり、また日本もロシアと正常な関係を持つことを望んでいる、といった趣旨の考えを示したことがある。しかしそれ以来ロシアとの関係について、公式の場所で発言したことはない。 〉(http://japanese.ruvr.ru/2011/08/29/55329251.html)
ロシアは、この論評で、「(野田新首相の)外交については、ほかの民主党議員と同じく、アメリカとの軍事政治同盟を支持すると共に、中国の急速な強大化に警戒感を有している」という認識が示されている。ロシアは野田新首相が前原氏同様の帝国主義的な勢力均衡外交を行う意思があるかについて探りを入れているのである。チェレホフ氏のコメントを通じ、ロシア政府は「野田新政権も北方4島返還を要求してくる。ロシアは交渉を回避するつもりはない」というシグナルを出し、日本に安心感を与えようとしている。同時に「領土問題を棚上げにして経済関係を発展させる可能性はないか」と水を向けている。
*「南クルリの問題は何の制限も生み出さない」
翌8月30日には、「ロシアの声」のタチアナ・フロニ氏の論評を通じて、より直裁にロシアの希望を伝えている。骨子は、日本の新政権は経済を重点課題とし、野田新首相が得意でない外交問題、特に複雑な北方領土問題でロシアに対して勝負をかけることはないという見通しを示し、日本政府がどう反応するか様子をうかがっているのである。フロニ氏の論評を全文引用しておく。
〈 ロシアは野田首相から何を必要としているか?
日本では新しい首相が決まり、これは最近5年間ですでに6回目となる。世界はすでに日本で毎年首相が交代することに慣れつつある。東日本大震災後の国の復興という課題のほかに、野田政権には中国やロシア、韓国などとの領土問題も残されている。しかし野田首相はそれらの問題を先鋭化させることはないだろうし、日本の外交政策になにかラディカルな動きがあるとは考えられない。野田氏が得点を稼がなくてはならないのは経済分野においてだ。
東洋大学のアナトリー・コシキン教授は、日本社会では首相の交代によって、経済的な奇跡が期待されており、経済の救済が望まれていると指摘している。
「日本製品は品質は高いものの、諸隣国の製品の安さに押されて、競争力を失いつつあります。まずもってそれは中国および東南アジア諸国です。日本では消費税引き上げのほかに電力価格の引き上げも検討されています。このような状況のなかで野田政権はおそらく、諸隣国との関係改善に取り組むことになるでしょう。」
また南クリル諸島については、日本外交の立場に変更は当面ないと予測されるものの、一時のような激しさはもはやみられない。元駐日ロシア大使のアレクサンドル・パノフ氏は、今回民主党代表選挙に立候補した各政治家はいずれも、領土問題での日本の立場を守りながらも、ロシアとの経済関係の発展を望んでいると指摘している。
「日本の実業界および政治エリートの立場からすれば、南クリルの領土問題はなんらの制限も生み出すものではないと見ている。日本の実業界が関心を持てば、プロジェクトは実現されるだろう。かつてソビエト連邦時代には、領土問題の存在さえ認められていなかったものの、多くのプロジェクトが実現されていた。サハリン2の成功や、ヴォストーチニイ港の建設、林業やヤクートの石炭などだ。相互の関心さえあれば、経済協力の問題は容易に解決できるものです。今日、まさにそのような状況だと言えるだろう。」
専門家らは、日本とロシアの関係が今後もますます発展することを予測している。 〉(http://japanese.ruvr.ru/2011/08/30/55421255.html)
*日本経済のネックはエネルギーとみるロシア
ここに出てくるコーシキン教授は、旧ソ連共産党中央委員会国際部で対日工作を担当した対日強硬論者だ。ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンの3大統領が北方領土問題に関して日本に譲歩しすぎたという論陣を張る中心人物だ。「戦後現実を尊重すべきである。クリル諸島(北方領土)は合法的にロシア領になったのであり、ロシアは日本に領土を返還する法的、道義的義務は一切ない」という主張をする日本専門家の代表がコーシキン教授である。エリツィン時代に「ロシアの声」にコーシキン教授のコメントが取り上げることは考えられなかった。
これに対して、パノフ教授は、ロシア外務次官、駐日大使をつとめた知日派で、北方領土問題で、日本に対する妥協が不可欠であるという立場を一貫してとっている。コーシキン教授は、「パノフ大使は売国奴だ」と非難したことがある。パノフ教授に対するプーチン首相の信任が厚い。パノフ教授はロシアの日本専門家の中で領土問題に関してもっとも柔軟な姿勢をとっている。
コーシキン教授、パノフ教授という対極的立場にある日本専門家のコメントを通じ、ロシアは野田新政権を日露経済協力に誘おうとしている。ロシアは日本経済のネックがエネルギーにあると認識している。野田新政権の原発政策を見極めながら、ロシアはLNG(液化天然ガス)カードを切ってくると筆者は見ている。
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日本で新内閣組閣発表
ラジオ局「ロシアの声」2011,09,03 16:41
日本の新内閣組閣が2日に発表された。新内閣が行う外交路線にはいかなる変更があるのだろうか。
新内閣の顔ぶれを見ると、構成員全体が非常に若返ったのがわかる。また重要なポストにはまったく新しいメンバーが就いた。新外相に就任したのは47歳の玄葉光一郎氏だ。ここ最近、日本は領土問題で近隣諸国との関係を急激に悪化させてしまったことから、新外相は就任早々から関係改善の重い任務を背負うことになるのは必至だ。玄葉氏は国家戦略担当、宇宙開発担当大臣を務めたものの、外交分野では経験がない。ロシア科学アカデミー極東研究所日本調査センターのキスタノフ氏はこの点を指摘し、次のように語っている。
「玄葉氏自体についてあまり知られていない。国際政治で彼はまだ『だめになってはいない』。しかしながら、野田首相の先に行った声明からある程度の推測を行うことはできる。というのも国際舞台で日本がどういう外交政策をとるかは野田首相の決定にかかっているからだ。新首相は領土問題で日本の国益を強く主張していく構えだ。これはまず中国、韓国との問題においてそうであり、首相に就任する前の段階ですでに口にしていたが、就任後も同じことを繰り返している。南クリル問題では今のところ声明は表されていないが、全体として強硬なトーンであり、この問題に対する立場が近い将来柔軟化することはありえないと思う。」
玄葉新外相は個人サイトで座右の銘を「不失恒心」と書いている。これは自分の使命を忠実に守り、心に決めたことをやりとげることを意味する。また尊敬する人物についてはチャーチルと石橋湛山を挙げているが、石橋氏とは1956年鳩山内閣の後首相に就任し、全体としては前鳩山内閣の路線を継続した政治を行って、「独立外交」と中国、ソ連との経済関係の発展を推し進めた人物だ。玄葉新外相も石橋氏、チャーチル同様、こうした健全な思考や柔軟性を発揮するだろうか? キスタノフ氏は、玄葉氏は外相の座にあって進化することのできる人物だと期待したいとして、さらに次のように語る。
「前原前外相も就任当初は非常に強硬な態度で領土問題に臨んでいたが、就任中のたった半年間でも進化があった。私には、前原氏は南クリル諸島を自国の領土だとして一歩も引かない日本の立場と、島で協力を開始したいという願いをマッチさせるアプローチの方法を模索していたように思える。もし前原氏が影響力のある政治家として、こうした路線をとることが長期的視点では日本の国益に適うことを新内閣にわからせることができるなら、前向きな結果が生まれるかもしれない。」
野田新首相は就任後初めて行った記者会見で声明を表し「中国、韓国、ロシアという近隣諸国と友好関係を維持していきたい。日本は経済外交に大きな意味を置いている。その目的は健全なアジア太平洋地域を創設することだ」と述べている。これが通常行われるような単なる外交的な発言ではなく、期待の持てるものであることを祈りたい。
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◆野田新政権の課題は中国の圧力を跳ね返すことだ/尖閣諸島は、日本が実効統治する日本固有の領土である2011-08-31 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
◆竹島問題を注視するロシア/日本政府が腰が引けた態度を取っていると、ロシアに足許を見られる2011-08-16 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
◆『悪党 小沢一郎に仕えて』マスメディアと東京地検特捜部/石川知裕氏×佐藤優氏 緊急対談〈1〉2011-07-30 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆『悪党 小沢一郎に仕えて』マスメディアと東京地検特捜部/石川知裕氏×佐藤優氏 緊急対談〈2〉