September 23, 2011, 7:40 pm
関連;小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19
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悲哀!角栄の"晩年"にそっくり小沢一郎の落日 勝てないから見切られて、人が離れていく。焦っても、かつてほどの力(カネ)がない。 そして「どじょう」に寝返るユダが止めを刺す
2011年09月23日(金)週刊現代
かつて田中角栄は、「頂上を極めるためには敵を減らすことだ」と語った。だが弟子は、その言葉を実践することができなかった。政界一の憎まれ役になった末、政治家・小沢一郎の黄昏が迫っている。
*腹心たちが見放した
「小沢はもう終わりだな」
「決まってるじゃないですか。終わりですよ」
野田佳彦内閣が発足した直後のことである。今回の組閣で政務三役に抜擢された議員2人が、密かにそんな会話を交わしていた。
2人は小沢一郎元代表に対抗する民主党内の非小沢勢力・・・・・・ではない。彼らはともに、小沢グループでは中核と目されるメンバーだ。
自他ともに認めるバリバリの小沢系---にもかかわらず、2人は小沢に対する憤りを隠さず、すっかり見限った様子だった。
「なぜ小沢は、代表選の前に野田と会っていたんだ。あれは俺たちに対する重大な裏切り行為だよ」
民主党代表選が告示される直前、8月下旬のこと。小沢はかつての同志・細川護煕元首相を介し、野田首相との極秘会談を行った。
細川の証言によれば、小沢と野田の会談時間は約40分。ともに幹部として長く同じ党に属していたにもかかわらず、両者がサシで話をするのは、これが初めてだったという。
会談は終始、和やかな雰囲気だったようだ。細川によれば、野田が代表選で披露した?どじょう演説?に対し、小沢は「よかった」と電話で感想を伝え、さらに側近の輿石東参院議員会長が党幹事長に就任したことについても、「とても良い人事だ」と、野田を手放しで褒めたという。
だがこの極秘会談は、小沢を支えるべく、野田や前原誠司政調会長、仙谷由人政調会長代行ら「反小沢勢力」との闘争を繰り広げてきた小沢の側近たちにとって、「許しがたい裏切り」にしか思えなかった。
小沢グループのベテラン議員の一人は、忌々しげにこう語った。
「野田だけではない。小沢は我々には何も言わず、仙谷とも会っていた。結局、代表選が終わったら野田・仙谷にスリ寄って裏で手を結ぶつもりだったんじゃないか」
冒頭で「小沢は終わり」と言い放った政務三役の一人も、こう吐き捨てた。
「これじゃあ来年9月(の代表選)も、野田が続投するのは決定的だな。小沢はもう終わったんだよ。今後、たとえ裁判がうまくいって無罪になったとしても、総理を目指すなんてとても無理だ。せいぜい野田の下で、副総理止まりだろうよ」
2年前の政権交代の時点で、小沢とその「軍団」の力は、まさに他を圧倒していた。当時の鳩山由紀夫首相以下、閣僚も党役員も、小沢?大?幹事長に逆らうことはできなかった。
その影響力は、小沢が政治の師と仰ぐ故・田中角栄元首相を彷彿とさせるものだった。角栄は'76年にロッキード事件で失脚するも、その後の内閣は「角影内閣」「直角内閣」などと呼ばれ、政界のキングメーカーとして君臨した。
時の総理も大臣も逆らえない、圧倒的な権力。小沢はほんのひと時、師匠に並びかけたのかもしれない。だが、絶頂は長く続かなかった。
角栄がロッキード事件の裁判の過程で力を失っていったように、小沢もまた「政治とカネ」の裁判を抱え、昨年6月に幹事長を失職する。以来、自ら代表選に出馬するなど、幾度となく復権を図ってきたが、今回の代表選では野田に敗北。9月26日には、元秘書の大久保隆規被告ら3人の政治資金規正法違反事件の判決が控えている。小沢の政治生命は、いよいよ「落日」を迎えようとしているのだ。
代表選で事実上の3連敗を喫した直後、小沢は自身の傘下にある3つのグループ、「一新会」「北辰会」「参院小沢グループ」の統合を発表した。約120名を一つに統合し、来年9月に予定される次回代表選に備えるため、と見られている。
ところが驚くべきことに、「絶対服従」のはずの配下の議員たちが、小沢の号令に従わなかった。それどころかグループ内から統合案への異論が続出し、計画が頓挫したのである。
小沢グループの議員たちからは、こんな反対意見が次々と飛び出した。
「小沢さんが有無を言わさず1人で統合を決めてしまった。代表選の敗因の分析もしないうちに、統合という結論ありきはおかしい」(小沢グループ中堅議員)
「代表選の連敗により、党内で反小沢票のほうが過半数を占めていることがはっきりした。小沢グループの数は減る一方だ。まずは仲間を増やすべきなのに、グループ統合論になるのは解せない。統合なんてすれば、締め付けを嫌がって仲間がさらに減るだけ」(同若手議員)
「いくらタマがないからと言っても、西岡武夫参院議長や輿石東参院議員会長なんていう、突拍子もない名前が飛び出した時点で、政治的に終わっている。小沢さんは、カンがすっかり鈍ってしまったのではないか」(同ベテラン議員)
小沢グループは、かつての「田中軍団」を彷彿とさせる、鉄の結束力を誇ると言われてきた。
しかし、領袖の角栄本人を含め、その後に何人もの総理大臣を輩出し、七奉行と称された幹部など人材の宝庫だった旧田中派に対し、小沢グループはまだ総理の椅子を手にしたこともなければ、お世辞にも人材が豊富とは言えない。
政治評論家の小林吉弥氏はこう評する。
「田中元首相と小沢氏の人間性の違いが、集団の特性にも影響しているのでしょう。田中氏のもとには、彼の人間的な魅力に畏怖や尊敬の念を持った有能な人間が集まり、それが政治を動かす力に繋がっていた。
一方で小沢氏の場合、田中氏が持っていたような懐の深さ、心の広さを感じることが少ない。小沢氏の周囲には、『選挙でバックアップしてもらえるかどうか』など、損か得かの利害関係に基づいた人間関係しかありません。そこが田中氏ともっとも異なる点であり、小沢氏が決して田中角栄にはなれない所以なのです」
その権力の源泉がカネであるのは共通しているが、角栄の人間力で結びついていた面もある田中軍団に対し、滅多に人前に姿を現さず、引きこもりがちで人見知りな小沢の率いる軍団には、そうした「陽」の雰囲気がほとんどない。
それでも、どうして表面上の結束を保っているかと言えば、カネをバラまき、一部の側近が「恐怖政治」を布いて、新人・若手の不満を抑えつけているのが実態だ。
同グループの若手の中には、代表選前に先輩議員から「てめえ」呼ばわりで怒鳴られ、「従え」と恫喝され、渋々、方針に従ったという者が少なからずいる。
そんな空気に辟易していた新人らが、「グループを統合し結束をより強化する」などと言われたら、「これ以上はもうごめんだ」と考えるのは当然だろう。
*総理を目指せば命取り
さらに、小沢が抱える問題はグループ内の求心力低下だけではない。これまで小沢と歩調を合わせてきた鳩山の口からも、最近、こんな発言が飛び出した。
「このまま、小沢さんとの付き合いを続けていっていいものかどうか・・・・・・」
全国紙政治部民主党担当記者が、鳩山の心境をこう解説する。
「小沢・鳩山両グループは、近々、合同で勉強会を開くことになっていますが、鳩山グループは内部崩壊が進んでボロボロ。代表選で鹿野道彦農水相を支持した大畠章宏前国交相、中山義活元首相補佐官は裏切り者扱いで、松野頼久元官房副長官は『出戻りは許さない』と批判しています。所属議員がどんどん減り、このままでは鳩山グループは小沢グループと統合するしか影響力を残す道はなさそうだが、果たしてそれでいいのか、鳩山氏は悩んでいる」
盟友からは距離を置かれ、配下には見限られ、周囲から櫛の歯が欠けるように人が去っていく。小沢は、角栄の晩年の姿にそっくりになってきた。
それでも復権を目指して足掻き続ける小沢について、政治評論家の三宅久之氏は、「もしも来年9月の次回代表選に、自分自身が出馬することを狙っているようなら、それこそ小沢氏の政治生命は終わりでしょう」として、こう語る。
「かつて田中角栄も、政治家としての晩年に復権を目指しました。ですが、結果的にはそれが、小沢氏や竹下登元首相らの離反を招くことになったのです」
角栄はロッキード事件の控訴審判決('87年)を受けるため、東京高裁に向かう直前、秘書だった早坂茂三に「いままで苦労をかけた。だが今日で(無罪判決が出て)終わりだ」と、力強く言い放ったという(実際には高裁が一審の有罪判決を支持、控訴棄却)。
「角栄自身は無罪になることを信じ、最後の最後まで復権への執念を燃やしていました。しかしそれは、彼の腹心らにとっては容認できないものでした。『角さんの復権の下働きをしていたら、いつまでたっても俺たちの夜は明けない』。そう思った彼らは、竹下氏を中心に『創政会』を結成、田中派を離脱していきます。小沢氏も、いまさら自分が総理の椅子に座ることを考えたりすれば、部下たちの離反を招き、当時の田中氏と同じ境遇に陥ってしまうでしょう」(三宅氏)
当時、竹下は自派閥の立ち上げにあたり、初会合に集まった議員らに現金を配った。その金額は佐藤栄作政権の末期に、角栄が自分の派閥を結成する際、料亭に集まった配下の議員に配ったのと同じ200万円だったと言われている。
角栄は怒り狂い、竹下から現金をもらった議員一人ひとりに電話をかけ、「竹下は悪い夢を見ている。俺が必ず、目を覚まさせてやる」と説得を試みたが、すべては、手遅れだった。派閥を乗っ取られた角栄は酒に溺れ、病に倒れて命を縮めてしまった。
それから約25年。当時とまったく同じ、「カネで数を買う」角栄方式を受け継ぎ、それを実践してきたのが小沢だったが、それも、もはや限界に来ている。
*カネはもうバラまけない
そんな窮地にあって、小沢に唯一の光明があるとすれば、野田陣営との?密議?が効を奏したためか、新政権の人事面で、小沢グループがそれなりに処遇されたことだろう。
筆頭は幹事長に就任した輿石東。さらに、小沢グループの長老の一人、山岡賢次が国家公安委員長・拉致問題担当相に就任し、参院小沢グループからは一川保夫参院議員が防衛相に抜擢された。他にも田中真紀子元外相が衆院外務委員長に就くというサプライズなど、小沢グループ・小沢擁護の?うるさ型?の議員には、政府と党の要職があてがわれている。
ただ、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、
「今回の人事は、小沢グループを厚遇したわけでも、党内融和を目指したものでもありません」
として、こう語る。
「野田政権の人事は、単に財務省主導で増税を行うためのシフトに過ぎません。それは財務省の勝栄二郎事務次官と親しい、国交省の竹歳誠次官が官房副長官として官邸に入っていることからも明らか。さらには旧大蔵省OBの藤井裕久元財務相を新設の党税制調査会長に据え、政調会長代行には仙谷氏が就きました。藤井・仙谷両氏は、6月に策定された『税と社会保障の一体改革案』の取りまとめをした張本人です。今後は、消費税率の段階的引き上げに向け、党内をまとめていくつもりでしょう」
野田首相は政府・与党の政策を決定し、方向付ける権限を党政調会に集中させた。第2の首相とも言えるポジションの政調会長に就任したのは、野田と近い前原誠司。その後見役が政調会長代行の仙谷だ。
「影響力が弱まるどころか、?仙谷支配?そのもの。表に出なくて済む分、いっそう自由に仙谷氏が動けるようになった。前原氏も、『政調を通さなければ、法案は一本も通らないんだ。つまり(最高実力者は)俺なんだ』と、自信満々です」(民主党中間派代議士)
一方、幹事長ポストに輿石氏が座ったことに、小沢本人は「こちらにずいぶん配慮してくれている」などと語り、満足感を示しているという。党員資格を停止され、?昔の名前?以外に何も持っていない小沢にとって、党のカネと選挙の公認権を握る幹事長ポストは生命線だ。何とかクビの皮一枚繋がり、めでたし、めでたし……かと言えば、そうでもない。
小沢グループ幹部の一人は、こう危惧する。
「小沢さんは密かに、輿石さんの言動に注意を払っています。幹事長ポストを獲ったのは悪くないが、『長いものには巻かれろ』といった性格の輿石さんが、野田首相サイドに取り込まれてしまったら意味がない」
輿石は幹事長に就任するやいなや、幹事長代行に就いた樽床伸二に対し、
「俺もアバウトな男だから、衆院のこと、とりわけ選挙のことはよろしく頼むよ」
と、実務を丸投げしてしまった。樽床は、ほくそ笑んだと思われる。何しろこの輿石の一言で、樽床は事実上、幹事長の権力の大半を握ったも同然だからだ。
「輿石さんは就任挨拶で自民党に行った際も、同行していた前原氏と樽床氏を指差し、『私は衆院のことは、さっぱり分かりません。相談はこの人たちとやってください』と言い放ち、周囲を唖然とさせました。
小沢氏の周辺からは『小泉政権時代に、青木幹雄氏(元自民党参院議員会長)が小泉元首相に一本釣りされ、旧経世会が分裂状態に陥った時と同じことが起きるのではないか』と、不安の声が挙がっています」(民主党ベテラン議員)
身内だと思って頼りにしていた輿石が、実は裏切り者の「ユダ」に変わる。小沢にとっては、まさに最悪のシナリオである。
しかも、仮に輿石が小沢の思惑通りに「都合の良い幹事長」になろうとしても、それすら難しい、という見方がある。幹事長権限のうち、もっとも政治的に旨味があるのは、「選挙対策」などの名目で党のカネを自由に使えることだ。
ところが民主党は、岡田克也前幹事長が「300万円以上の支出に対しては監査を行う」という通称?岡田ルール?を導入したため、かつてのように使途不明のカネを気ままにバラまくことは難しくなった。
「幹事長室には、輿石氏の他に鈴木克昌・一新会会長や、小沢氏の秘書出身の樋高剛氏が副幹事長として入りましたが、彼らの動向をチェックするのが樽床幹事長代行の役割です。しかも、党のカネの出納を管理する党財務委員長には、野田グループの武正公一氏が就いています。以前のように、カネをバラまいて配下の議員たちに恩を売るような手口は、もはや通用しません」(全国紙政治部デスク)
*次の衆院選で終わり
カネの切れ目は縁の切れ目・・・・・・。小沢は、師匠の角栄を反面教師としてきたはずだったが、結局は師匠と同様、カネで維持してきた権力を、カネによって失おうとしている。
さすがに、本人にも「ここは正念場」という自覚があるのだろう。このところ小沢は、今までほとんどやってこなかった、現場の若手議員たちとの直接対話を始めている。
「『直接話したこともないような奴が、俺のことを批判してるんだ。会って話してからならともかく、そうでないのに攻撃されるのはかなわん』と、周囲には愚痴っているそうです。そこで、若手を中心にグループの議員たちと会合の場を持とうとしています。以前のことを考えれば、これは大きな進歩と言えないこともない。自分でも、『このままでは角さんのようになってしまう』という自覚があるのでしょう。
不満が溜まっている若手に対するガス抜きなのかもしれませんが、彼らに何を言われても、『ふん、ふん。そうか』と黙って頷いて聞いているようですよ」(前出・民主党ベテラン代議士)
会って話をして付き合えば、その人間のことがよく分かるのに、知らないまま毛嫌いしている場合が多い。自戒すべきである---とは、角栄が遺した言葉の一つ。政界有数の人見知りと言われる小沢だが、だいぶ遅ればせながら、師匠の言葉を実践するつもりになったのだろうか。
ただし、それでも小沢が政治的に追い詰められつつあるのは間違いない。
「小沢氏が、依然として民主党政権内に隠然たる影響力を持っていることは確かでしょう。しかし、それも次回の衆院選までです。次の総選挙で、おそらく小沢グループの議員の大半は落選することになる。そうなれば必然的に、小沢氏は政治的なパワーを失うことになります」(前出・三宅氏)
〈年如流水去不返 人似草木争春栄〉(年は流水の如く去って返らず、人は草木に似て春栄を争う)
これは角栄が好んだという、明治の元勲・木戸孝允の手になる漢詩だ。憂国の情を表したものとされ、「歳月は流れる水のように二度と返って来ないのに、人々は春の草木が美しさを競うように、己の出世ばかりを願い私利私欲に走っている」と嘆いている。
角栄はこの詩を愛し、人にも大事な人生訓としてその意味を伝えながら、ついに自らは、最後まで「春栄を争う」ことを止めることができなかった。
小沢は当然、この詩の存在も、その意味もよく知っているだろう。分かっていてなお、権力を追いつづけることを止められない己の性を、いま噛み締めているかもしれない。(文中一部敬称略)
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◆ 『悪党 小沢一郎に仕えて』石川知宏 元小沢一郎秘書・衆議院議員著(朝日新聞出版)
--第2部第4章より--
p203〜
2011年の元旦、私は深沢を訪ねた。恒例の「小沢新年会」に出席するためだ。
p204〜
2010年は幹事長辞任、代表選敗退、そして検察審査会による「起訴相当」の議決と、小沢一郎にとっても不遇の1年だった。2011年からは私も小沢一郎も裁判闘争が始まることになっていた。
*チャーチルとの共通点
「よくもまあそんな2人が元旦に向き合うなんて・・・」
私はそう思いながら小沢一郎の様子をうかがった。
何か話題を出さなければいけないと思って、私は切り出した。
「最近、チャーチルの本を読んでいるんですよ」
すると小沢は即座に反応した。
「おまえ、知ってるか。チャーチルも2回厳しい時があったんだ」
それを聞いて、私は驚いた。小沢氏はちゃんと「次」を考えていた。
2010年末の空いた時間、私はイギリスの元首相であるウィンストン・チャーチルについて書かれた新書をいくつか読んだ。チャーチルは私の中では小沢一郎と匹敵するぐらい興味が尽きない人物である。
私が近くにいた時期は、小沢一郎が政治人生の中で1番苦しい時代だったと思う。自民党幹事長、新生党代表幹事、民主党幹事長が3つの絶頂期だとすると、その狭間はすべて不遇の時期。これだけ浮き沈みがある政治家は見たことがない。
「いつ総理大臣になるんだ」
「チャーチルでも65歳でなったから、まだ大丈夫ですよ」
ちょうどいい言い訳をチャーチルから学んだ。
小沢のチャーチル好きはあまりメディアで語られたことはないと思う。小沢は訪英した時にチャーチルを墓参している。
p206〜
チャーチルは1929年には半ば外される形で蔵相を退任してから10年間、官職から干された。保守党のドン、ボールドウィンとの確執が鮮明になったのである。植民地・インドの自治領化や国王の結婚問題などで真っ向から対立して権力から遠ざけられた。
「アラウンド50」のチャーチルも政治家としては1番脂がのっていた。なのに、活躍の場はない。チャーチルは不遇の時期に歴史を学んでじっくり大局を読んだ。自伝『わが半生』も書いた。河合さんの本にはこうあった。
「チャーチルは、自らの孤立が深まれば深まるほど、歴史の中に支えを求めていった。それは、目前の問題をその時々に実際的に解決しようとすた保守党指導者の態度ときわめて対照的であった」
自分の祖先の歴史や自分の半生を本にまとめ、趣味の風景画にも興じた。それを知って、
「小沢はチャーチルそっくり」
と思った。小沢も不遇の時期には、できるだけ表舞台には姿を見せず、さまざまな歴史書に当たりつつ、じっくり大局をうかがっていた。地方行脚に出かけるのもそういう時で、現場の声を聞いて冷静に分析している。八丈島に釣りに行ったり、金丸さんや二階堂さんの墓参に行ったり、神社仏閣を訪ねている。(略)
p207〜
小沢の復権シナリオ
チャーチルと小沢一郎は生い立ちも似ている。互いに父は保守政治家で、チャーチルの父は蔵相、小沢の父は建設相だ。また、2人とも受験に2度失敗している。チャーチルは陸軍士官学校の試験に2度失敗し、小沢も東大法学部を目指して2浪しても不合格で、仕方なく慶應義塾に入学した。2人とも何度も挫折を味わいながら、若くして父を失い、その後、政界で頭角を現した。
チャーチルは保守党で初当選して4年で自由党に入り、20年後に再び保守党に戻った。人からは「変節漢」と揶揄された。自民党から新生党、新進党、自由党、民主党と渡り歩いた小沢も同じヤジをあびせられた。それは時代に即した考え方、変化に即した行動を取ろうとするからで、本人の中では筋が通っている。(略)
とにかく小沢のそばにいて学んだことは「過ちて改むるに憚ること勿れ」ということだ。とにかく信念を貫き、予想通りにうまくいかなかったら譲る。ただし、譲った後でも歴史の流れは見誤らない。
TPP(環太平洋経済連携協定)が問題になった。小沢は自由貿易論者だが、TPPには慎重な立場にいる。地域レベルではなく、WTO(世界貿易機構)のように、あくまで世界的な枠組みでのルール作りにこだわっている。それは世界恐慌後に列強がブロック経済に走り、第2次世界大戦につながった歴史の反省からだ。貿易自由化とは小沢にとって安全保障戦略でもある。かつて掲げた「国連待機軍構想」も、世界平和を希求するためにならず者国家に対しては世界が一致結束して戦う考えからきている。
1939年、対独宥和政策でナチスの台頭を招いてしまったチェンバレン内閣は、ナチスに対する最大の批判者でありながらも、当時は「時代遅れの政治家」と揶揄されていたチャーチルをあえて海軍相として呼び戻した。そのとき、海軍は全艦隊に向けて3語、「ウィンストン・イズ・バック」、つまり、「チャーチルが戻ってきたぞ!」と打電したのだ。チャーチルの復活劇は国民を鼓舞し、やがて彼は首相の座にのし上がった。その後、チャーチルはイギリスを第2次世界大戦勝利に導く。
日本でも、菅政権の支持率が落ち込むほど、小沢を求める声が高まっている。(略)
p210〜
チェンバレン内閣はドイツ軍からノルウェーを救う作戦に失敗し、与党・保守党内からも「チェンバレンおろし」の声がわきあがった。チェンバレンは反乱軍を取り込もうとしたが、彼らは野党と連立しないかぎりは入閣を固辞した。そこでチェンバレンは野党に連立を打診するが、首相が代わらない限りは首を縦に振ろうとしない。それでも留任にこだわったチェンバレンは震災後の菅さんとそっくりだ。
一方のチャーチルは次期首相候補に浮上するが、与野党に敵が多く、軽率な言動で戦局のかじ取りに懸念がたえなかったが、労働党が「新政権」との連携に意欲を示す。その頃チャーチルは若い低所得者層に人気があった。ラジオ出演を頻繁に繰り返していたからだ。チャーチルの時代にとってのラジオは、小沢一郎がよく出演する「ニコニコ動画」と同じような位置づけだろう。自民党が恩讐を超えて、小沢一郎にラブコールを送る日は来るのだろうか。
チャーチルは首相就任演説で「血と労苦と、汗と涙をささげる」と誓っている。小沢も2010年の党代表選で演説の最後をこう締めくくった。
「皆さんにこうして訴えるのも、私にとっては最後の機会になるかもしれません。私は自らの政治生命の総決算として最後のご奉公をする決意であります。そして同志の皆さんとともに、日本を官僚の国から国民の国へ立て直し、次の世代に松明を引き継ぎたいと思います。そのために私は政治生命はおろか、自らの一命をかけて全力で頑張る決意であります」
どこかチャーチルに似ている。チャーチルは1度政権を手放した後、76歳で返り咲いた。小沢もそうだが、70歳近くにもなるともう自分の利益を考えて政治をやる年ではない。裁判闘争を終えた時、小沢ははどんな言葉を国民に語りかけるか。必ず歴史に残る一言になると思う。 *強調(太字・着色)は来栖
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◆民主党大会 小沢氏演説=この理念に沿った政治をこの国が渇望しないはずがない2010-09-15 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
民主党代表選に於ける小沢一郎氏演説
〈前段略〉
さて、今回の立候補にあたっては、今日の危機的な政治経済事情の中で、果たして自分にその資質があるだろうか、政治の最高責任者として国民の生活を守るというその責任を果たすことができるだろうか、と本当に悩み、自問自答いたしました。それにもかかわらず立候補を決意をしたのは、今、政治を変えなければもう間に合わないという、私の切実な思いを正々堂々、世に問いかけたかったからであります。
思い起こせば、私は27歳で衆議院議員に初めて立候補した際、選挙公報にこうつづりました。「このままでは日本の行く末は暗澹たるものになる。こうした弊害をなくすため、まず官僚政治を打破し、政策決定を政治家の手に取り戻さなければならない」と。意志なき政治の行き着く先には国の滅亡しかありません。日本は敗戦を経て本質は変わっていないのではないか。若かりしころの、感じたその思いは初当選以来、いまなお変わっておりません。
今日、わが国はデフレによる経済の収縮、少子高齢化の既存の社会制度のギャップによる不安など、経済も社会も危機的な状況に陥っております。
世界で最も層が厚かった中間所得層が解体され、ごく少数の富裕層と数多くの低所得層への分化が急速に進んでおります。日本が誇った社会保障制度も崩れつつある中、2年後には団塊の世代が年金受給者となる日を迎えます。
今、日本は、最も大事にされなければならないお年寄りがいなくなっても誰も気づかず、また、就職できない多くの若者が絶望感にさいなまされ、若い親が育児を放棄しわが子を虐待する。もはや高度成長がいろいろな問題を覆い隠してくれた時期はとうに過ぎ去って、社会の仕組みそのものが壊れています。そしてまた、日本人の精神風土も興廃し始めていると思います。
今、ここで政治を見直し、行政を見直し、国のあり方を見直さなければ、もう日本を立て直すことができないのではないかと思います。多くの国民の皆さんも同じように感じていたのだと思います。昨年、われわれ民主党に一縷の思いを託し、政権交代を実現させていただきました。しかしもう1年が過ぎ、残された任期はあと3年であります。
私たちは今、直ちにこの3年間を国の集中治療期間と位置づけ、徹底した改革を断行し、実行していかなければなりません。しかしその改革は明治維新以来140年続く官僚主導の政治を、根っこから国民主導、政治主導に変えなければとても成し遂げられるものではありません。私の頭の中を占めているのはその思いなのであります。
しかし、私は官僚無用論を言っているわけではありません。日本の官僚機構は世界に冠たる人材の集まっているところであると考えております。問題は政治家がその官僚をスタッフとして使いこなし、政治家が自分の責任で政策の決定と執行の責任を負えるかどうかということであります。
私は40代でたまたま国務大臣、自民党幹事長に就任するという機会があり、国家はどう運営されているのか、その実態を権力の中枢でつぶさに見続けて参りました。そこで見た官僚主導の、例えば予算作りでは、各省のシェアが十年一日のごとくほとんど変わることがありませんでした。官僚組織というのはそういうものであります。
その中で私は、自民党の中にいながらこの改革は無理であることを骨身に染みて分かりました。だからこそ、政権与党である自民党を飛び出して、真にしがらみのない政党を作り、政権を変えるしかないという決意をもってこの17年間、政治活動を続けて参りました。
改めて申しあげます。昨年、政権交代が実現したのは、こんな日本を何とか変えてくれ、という国民の悲痛なまでの叫びからだったはずであります。この声に応えようと、菅総理大臣始め閣僚の皆さんが一生懸命に取り組んでおられることを否定をするものではありません。
しかし、政治と行政の無駄を徹底的に省き、そこから絞り出した財源を国民の生活に返すという、去年の衆院選挙マニフェストの理念はだんだん隅においやられつつあるのではないでしょうか。実際に来年度の予算編成は、概算要求で一律10%カット。これではこれまでの自民党中心の政権と変わりません。財政規律を重視するという、そういうことは大事なことではありますけれども、要は官僚の抵抗で無駄を削減できず、結局マニフェストを転換して国民に負担をお願いするだけではないでしょうか。これでは本当の意味で国民の生活は変わりません。
私には夢があります。役所が企画した、まるで金太郎あめのような町ではなく、(※)地域の特色にあった町作りの中で、お年寄りも小さな子供たちも近所の人も、お互いがきずなで結ばれて助け合う社会。青空や広い海、野山に囲まれた田園と大勢の人たちが集う都市が調和を保ち、どこでも一家だんらんの姿が見られる日本。その一方で個人個人が自らの意見を持ち、諸外国とも堂々と渡り合う自立した国家日本。そのような日本に作り直したいというのが、私の夢であります。
日本人は千年以上前から共生の知恵として、和の文化を築きました。われわれには共生の理念と政策を世界に発信できる能力と資格が十分にあります。誰にもチャンスとぬくもりがある、豊かな日本を作るために、自立した国民から選ばれた自立した政治家が自らの見識と自らの責任で政策を決定し実行に移さなければなりません。
そして、霞ヶ関で集中している権限と財源を地方に解き放ち、国民の手に取り戻さなければなりません。そのため、国のひも付き補助金を順次すべて地方への一括交付金に改めます。これにより、地方では自主的な町作りやインフラ整備が可能になります。国、地方を通じた大きな節約効果と、そして地域経済の活性化が期待できます。また、地域での雇用が生み出され、若者がふるさとに帰り、仕事に就くこともできるようになります。
国民の皆さんにご負担をお願いするのは、ここにいる皆さんがありとあらゆる知恵を絞って、できることすべてに取り組んでからでいいはずであります。そしてそれが、昨年の総選挙で民主党と国民との約束でなかったでしょうか。
衆議院の解散総選挙はこうした改革に与えられた任期を費やして、その結果を出してからのことであります。官僚支配の140年のうち、40年間、私は衆院議員として戦い抜いてきました。そしてようやく官僚機構と対立できる政権の誕生にかかわることができました。われわれは国民の生活が第一の政治の幕開けにやっとこぎつけたのであります。
官僚依存の政治に逆戻りさせるわけにはいきません。それはとりもなおさず、政治の歴史を20世紀に後戻りさせることになるからであります。私は代表になってもできないことはできないと正直に言うつもりであります。しかし、約束したことは必ず守ります。
こう断言できるのは官僚の壁を突破して、国民の生活が第一の政治を実行するのは、最後は政治家の志であり、改革のきずなで結ばれている皆さんとなら、長い時代の壁を突破できると信じるからであります。そして私自身は、民主党の代表すなわち国の最終責任者として、すべての責任を取る覚悟があります。
今回の選挙の結果は私にはわかりません。皆さんにこうして訴えるのも、私にとっては最後の機会になるかもしれません。従って最後にもう一つだけ付け加えさせてください。
明治維新の偉業を達成するまでに多くの志を持った人たちの命が失われました。また、わが民主党においても、昨年の政権交代をみることなく、志半ばで亡くなった同志もおります。このことに思いをはせるとき、私は自らの政治生命の総決算として最後のご奉公をする決意であります。そして同志の皆さんとともに、日本を官僚の国から国民の国へ立て直し、次の世代に松明を引き継ぎたいと思います。
そのために私は政治生命はおろか、自らの一命をかけて全力で頑張る決意であります。皆さんのご指示、ご理解をお願いいたしまして、私のごあいさつといたします。ありがとうございました。
※憲法第13条
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」
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◆小沢氏「僕の支持者は微動だにしない。お天道様がちゃんと見てるよ」2011-01-18
田中龍作ジャーナル 2011年01月18日
小沢一郎元代表。熱燗を啜りながら政治哲学を語った。この日も適量の2合を飲んだ。
小沢一郎元民主党代表が17日、都内の料理屋でフリー記者らと懇談した。記者クラブメディアや菅執行部が「離党」「議員辞職」と喧しいなか、小沢氏は政治や人生を縦横に語った。
筆者は懇談会・開始時刻の夕方6時より数分前に会場の料理屋に着いた。小沢氏はすでに来ていて、先着のフリー記者らと冗談を言い合っていた。マスコミが喧伝する倣岸不遜さはかけらもない。
ジャーナリストの江川紹子氏が「これだけ叩かれても頑張ることができるのはどうしてか?」と尋ねた。
小沢氏は「それは支持者がしっかりしているから。僕の支持者は微動だにしない」と話し、マスコミに右顧左眄する最近の政治的風潮を嘆いた。
「民主主義の基本は選挙」が小沢氏の政治哲学だ。民の声を政治に反映させる最大の機会が選挙なのである。
若かりし頃の小沢氏は国会会期中、選挙区に帰らなかったという。その代わり夏休みは2ヶ月間ベタッと張り付いて有権者の家を一軒一軒訪問したのである。
小沢氏は自民党幹事長時代、鶴田浩二の「傷だらけの人生」がオハコだったそうだ。
♪何から何まで真っ暗闇よ。筋の通らぬ事ばかり。右を向いても 左を見ても 馬鹿と阿呆の絡み合い。どこに男の夢がある。♪
「今の永田町こそ、この鶴田浩二の歌がぴったりじゃないですか?」と筆者は聞いた。
「お天道様がちゃんと見てるよ」。強制起訴だ、離党勧告だと騒がれても平常心を失わない小沢氏の姿勢を象徴する言葉だった。
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◆小沢邸新年会/ポピュリズムとの闘い2011-01-03
民主党:対立くっきりの新年会 菅首相と小沢元代表
民主党は1日、菅直人首相と小沢一郎元代表が、それぞれ新年会を開いた。「脱小沢」路線を維持する首相に対し、小沢氏は自らに近いグループから政府や党の要職に人材を起用し挙党態勢を築くよう求め、年初から根深い党内対立を印象づける結果となった。
小沢氏は東京都世田谷区の私邸で新年会を開催。海江田万里経済財政担当相や原口一博前総務相、山岡賢次副代表ら民主党の衆参両院議員118人が駆けつけたほか、新党大地の浅野貴博、無所属の石川知裕両衆院議員の計120人の国会議員が参加した。
小沢氏は資金管理団体の政治資金規正法違反事件で強制起訴を控えており、参加人数が注目された。現職幹事長だった昨年の165人(新党大地の鈴木宗男代表は含まず)は下回ったが一定の存在感を示した。全体の約3分の1が新人衆院議員で、小沢氏の党内基盤の重点も印象づけた。閣僚で唯一参加した海江田氏は早めに退出し、菅直人首相の新年会にも参加した。
小沢氏はあいさつで「私が(89年に)自民党幹事長に就任した時も参院は過半数を割っていたが、野党と話し合い、議論することができた。ねじれ国会という理屈は通用しない」と国会運営に苦しむ菅政権を批判。「政府・与党が力を合わせなくてはならない」と挙党態勢の構築を求めた。自身の「政治とカネ」の問題については「ご迷惑ばかりかけている」と述べるにとどめた。
一方、菅首相は公邸で年賀会を開催。仙谷由人官房長官、蓮舫行政刷新担当相、鉢呂吉雄国対委員長、枝野幸男幹事長代理ら政府・民主党幹部や、菅グループの江田五月前参院議長ら国会議員約45人が参加。首相は「脱小沢」も念頭に「多少のハレーションは覚悟して、自分なりの言葉でやりたいことをしっかり伝えていきたい」とあいさつした。【葛西大博、倉田陶子】
◇小沢邸新年会出席を取材で確認した国会議員(敬称略)
【民主党衆院議員】※海江田万里▽原口一博▽山岡賢次▽山田正彦▽東祥三(以上当選5回)吉田治▽細野豪志▽松野頼久▽※城島光力▽※松原仁(以上当選4回)樋高剛▽松木謙公▽内山晃▽松宮勲▽高山智司▽津島恭一▽小宮山泰子▽神風英男▽山口壮▽中津川博郷▽中塚一宏▽鈴木克昌(以上当選3回)岡島一正▽太田和美▽辻恵▽横山北斗▽福田昭夫▽中野譲▽渡辺浩一郎▽橋本清仁▽松崎哲久▽古賀敬章▽若井康彦▽梶原康弘▽階猛▽石関貴史(以上当選2回)黒田雄▽中後淳▽水野智彦▽岡本英子▽川島智太郎▽金子健一▽石田三示▽岸本周平▽山口和之▽石原洋三郎▽菊池長右エ門▽畑浩治▽瑞慶覧長敏▽高橋英行▽三宅雪子▽江端貴子▽木村剛司▽相原史乃▽大西孝典▽菅川洋▽仁木博文▽山崎摩耶▽萩原仁▽早川久美子▽大谷啓▽渡辺義彦▽玉城デニー▽笠原多見子▽大山昌宏▽柳田和己▽奥野総一郎▽村上史好▽高松和夫▽小林正枝▽川口浩▽熊谷貞俊▽木内孝胤▽空本誠喜▽阪口直人(以上当選1回)
【同参院議員】平田健二(当選3回)平野達男▽広野允士▽森ゆうこ▽尾立源幸(以上当選2回)藤原良信▽外山斎▽谷亮子▽田城郁▽安井美沙子▽行田邦子▽小見山幸治▽主浜了▽姫井由美子▽一川保夫▽室井邦彦▽米長晴信▽大久保潔重▽平山幸司▽友近聡朗▽佐藤公治▽川上義博(以上当選1回)
【民主党以外の衆院議員】石川知裕(無所属、当選2回)▽浅野貴博(新党大地、当選1回)
※は菅首相の年賀会への出席も確認した議員
毎日新聞 2011年1月2日 20時20分(最終更新 1月2日 21時27分)
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「小沢で明け、小沢で暮れる去年今年」 読み人しらず
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September 25, 2011, 6:24 pm
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September 25, 2011, 7:22 pm
陸山会事件:小沢氏元秘書3人、午後に判決 東京地裁
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人の判決が26日午後、東京地裁(登石郁朗裁判長)で言い渡される。無罪を主張する被告と検察が全面対決する構図の中、地裁は論告求刑の直前に、取り調べに問題があったとして捜査段階の供述調書を却下。検察側に厳しい判決が出ることも予想され、10月6日に始まる小沢元代表の公判にも大きな影響を与える可能性がある。(中、後段略)
毎日新聞 2011年9月26日 10時28分(最終更新 9月26日 10時29分)
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◆「チャーチル/復権・・・」裁判闘争を終えた時、小沢一郎はどんな言葉を国民に語りかけるか。2011-09-24 |
『悪党 小沢一郎に仕えて』? . . . 本文を読む
◆小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 『悪党 小沢一郎に仕えて』
『悪党 小沢一郎に仕えて』 ? . . . 本文を読む
◆石川知裕議員ら、小沢一郎氏元秘書の「陸山会事件」26日判決?/全員無罪なら小沢氏は即座に復権だが2011-09-22
◆石川知裕議員ら、小沢一郎氏元秘書の「陸山会事件」26日判決 ?/ 関わった検事はみんな消えてしまった2011-09-21
敗色濃厚の検察 . . . 本文を読む
◆陸山会事件判決を前に/微罪(期ズレ)認定や執行猶予付では、メディアが「小沢一郎有罪」と騒ぐだけだ2011-09-22 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
ここにおいて、小沢一郎氏の政治生命は断たれる。これこそが、検察の描いたストーリー。検察の狙った果実だ。 . . . 本文を読む
◆小沢一郎氏裁判 初公判10.6.被告人質問2012.1.10〜11.判決2012.04中旬/残ったのは石川議員の記載ミスだけ2011-09-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
陸山会事件 判決2011.09.26 . . . 本文を読む
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◆『小沢革命政権で日本を救え』〔1〕このまま「霞が関」が勝利すると、日本はファシズム国家になる2010-07-01 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆『小沢革命政権で日本を救え』〔2〕選挙は川上から/捜査段階から「安田好弘」という弁護体制2010-07-05
◆『小沢革命政権で日本を救え』〔3〕官僚トップが畏怖する郷原信郎・村木厚子・木村盛世2010-07-06
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副島隆彦の学問道場
「1243」 野田佳彦が首相に決まったが、これは勝栄二郎の財務省が操(あやつ)る傀儡(かいらい)政権である。 副島隆彦 2011.8.30
副島隆彦です。 今日は 2011年8月30日 午前4時です。
昨日、野田佳彦(のだよしひこ)が、昨日29日に民主党の代表選挙に勝ち、今日30日、衆議院での首班指名の投票で新首相に就任する。
昨日の 代表選の 結果を見ていて、私が考えたことは、勝栄二郎(かつえいじろう)財務次官(官僚のトップ)と、岡田克也幹事長がふたりで深く仕組んだな、ということだった。
日本財務省は増税路線である。復興途中にある日本国の厳しい現状を知りながら、それでもなおアメリカ様に貢ぐ資金を作り出すために、日本国民に 復興税やら消費税の値上げやらの 増税を強制しようとする。 苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)そのものだ。
苛政(かせい、重税のこと)は虎よりも猛(たけ)し、のとおりだ。
財務省が深く仕組んだな。今回の、たった一週間の日程で慌ただしく決めて実行した民主党代表選による首相の首の挿(す)げ替え劇だった。誰もこのシナリオの裏の仕掛けを語ろうとしない。 岡田幹事長が日程の決定には権限を持っている。野田佳彦は、この勝栄二郎・事務次官のことを「勝さん、勝さん」と呼び、自分の上司であるかのように仕え、そして育てられてきた。私は、この事実を10年前( 加藤紘一が失脚した「加藤の乱」の時)からずっと知っていた。
日本の財務省のドンは15年前からずっと、武藤敏郎(むとうとしろう)と坂篤郎(さかあつお)の3人である。この3人が、アメリカの威光と意向を受けながら、ずっと日本管理の最高権力を握り、今に至る。 この大きな一点の事実を軽視して、ここを日本政治の中心と見ないで、他のことにすり替えたら、すべては嘘の話になる。
国家のお金の全体の 動かし方のすべてを実質で握る者(たち)が、そのまま国家の最高権力者である。だから、今の日本の最高権力者はこの勝栄二郎(かつえいじろう)である。早ばやと3年目の事務次官居座りを自分で決めた。
小沢一郎の勢力が鳩山由紀夫の派閥を足して(これが半分に割れているようだ)、ようやく177人の民主党国会議員であった。本当は、これ以外に、今年初めに菅直人への反抗を示して除名された16人の比例区選出議員たちと、6月2日の菅直人への内閣不信任案(自民党が提出した)に同調の雰囲気で投票欠席をした、小沢一郎ら9人が、党員資格停止で、代表選での投票を阻止されているので、この25票を合わせると、202票である。
これに対して野田佳彦は215票を取った。前回の昨年9月の代表選挙では、菅直人が206票で、小沢一郎が200票だった。 この伯仲は、よく吟味され、計算されていた。 鹿野道彦(かのみちひこ)と 馬渕澄夫(まぶちすみお)の 計70票が決戦投票で野田に回るように綿密に周到に計算されていたことが分かる。
馬渕の海江田への投票をNHKが直前で撹乱した。NHKはここまで謀略集団にまで転落している。私たちが強く支持する 小沢一郎の考えの中心は、官僚・メディア・財界の、アメリカの手先3者連合に対して、何があっても今の民主党体制を守って、自分が育てて当選させた306人のうちの若い衆議院議員たちに、一日でも多く政治家経験を積ませて、年収3千万円弱の歳費を貰(もら)わせ続けることだ。だからあと2年間はこのまま民主党政権を続けさせて、解散・総選挙をさせないことだ。若い政治家たちにどうせ穢い現実政治のあれこれの処理の仕方を身につけさせることが大事である。
不断の不屈の小沢革命の実行で、最後に残されている果実(フルーツ)は、この多くの未だ未熟の、経験の少ない若い政治家たちに厳しい実地での経験を積ませることだ。だから、自分が政治家(国会議員)として生き残るために小沢一郎から離れて、態度を翻して、きたない政治資金を裏からもらうことまでしても、それも実際に一人の政治家が育ってゆくうえでの 不可避の過程だ、と考えなければ済まない。
一体、日本の歴代政治家で、200人もの若い政治家を、弟子として育て、そして実際に国会に議員として送った者がいるか。他の大物政治家たちは、自分のことだけで精一杯だ。たったのひとりの子分も、弟子も育てられないで、自分の保身だけに窮窮してそして引退していったではないか。
人をたくさん育てたことが(たとえ粗製濫造であろうとも) 小沢一郎の最大の功績であり、小沢一郎の偉さだ。このことを指摘する者が今もほとんどいない。小沢国民革命は、人材の育成の点に本当の眼目がある。だからたとえ一回、一回の闘いで敗れても、民族独立への堅い志(こころざし)を同じくする人間たちが勢力として残る限り、不屈に日本国民の闘いはこれからもずっと続くのである。
自民党政権時代は、新首相になる者からの ご祝儀は、賛成議員にひとり一億円と決まっていた。それは外国経由で派閥ごとに配られて、これには警察も裁判所も手を出さないことに不文律として決まっていた。 小沢一郎はこの日本国の悪習、悪弊を破壊した。今も根絶しようとしている。だから小沢は嫌われる。
今の小沢派の政治家たちは、だから汚れていない。貧乏に耐えながら生きている。おそらく財務官僚の側に寝返った者たちは、今回、ひとり5千万円ずつを貰(もら)ったはずである。 金(かね)で票は買えるのだ。人間は本当に金(かね)で動く。そのことを勝栄二郎たち財務官僚はよくよく知っている。
アメリカの次の大統領は、ジョゼフ・バイデンで決まりだ。現在の副大統領のバイデンが、この8月19日に、中国の次の国家主席(大統領のこと)となる習近平(しゅうきんぺい、シーチンピン)と二人で親密に、 G2(ジー・ツー。Group2 アメリカと中国の二大国)で「私たち二人で、これからの世界を動かして行こうぜ」と 言った。
このときに、バイデンが次の米大統領だというお披露目(ひろめ)が世界に向かってなされたのである。
おそらく来年の3月には、バラク・オバマは、“オバマ・ショック”と後世、呼ばれるであろう、ニクソン・ショック(ドル・ショック。1971年8月15日)の41年目の再来である、「米ドルは、もう金(きん)との兌換(だかん)は出来ません。しません」の 宣言をして、体調不良か何かを理由に辞任してゆくだろう。
そして次の大統領選挙は、11月の本選挙に向けて、バイデンが、おそらくヒラリーをランニング・メイトの副大統領候補にして当選し、そしてその次に・・・・となるだろう。
バイデンという肝の座った、何ものにも動じない、どんな借金地獄のアメリカ経済・財政のボロボロの現状にもめげないで対処しようとする人間が、一切の綺麗事(きれいごと)を言わず、「オレがやる」と言って、外交だけでなく(長年、米上院の外交委員長をやった。通勤電車で出身のデラウエア州から通った)労働組合の幹部上がりの泥くさい政治家だ。
外交だけでなく金融・財政の危機への対処も自分がやる、と言っている。
バイデンは、 CFR(シー・エフ・アール、米外交問題評議会)派である。だから、ネオコン派と近い、手荒な、属国群への謀略政治も辞さない、リチャード・アーミテージやマイケル・グリーンに「犯罪者的な外交手法は、やめよ」と言っている。だから、アーミテージとグリーンが育てた愚か者の前原誠司では、アメリカとしても承認することはないのだ。
前原は、昨年2010年9月7日の、尖閣諸島沖での、日本の海上保安庁の船4隻で、中国漁船の1隻を挟み撃ちにして拿捕(だほ)した事件を、外相として行って、それで今も前原には中国が激怒している。日中の外交協定(秘密条約)で、「境界不確定海域では、それぞれの国の漁船はそれぞれの海上警察が取り締まる」としてあったのを、アーミテージらの指令で、日中を険悪にするために、前原の権限でやらせた。
だから中国は前原の首相成りは絶対に呑まないし、許さない。このことでアメリカに激しく抗議する。 日本の首相を誰にするかの実質的な決定権は、今もアメリカ帝国にある。だから、中国の顔を窺わないでは、アメリカは世界管理、世界運営は出来なくなっているので、アメリカは中国の言い分を聞かざるをえない。だから前原の線ははじめから無かったのだ。
習近平も 温家宝もバイデンに、激しく「アメリカの財政と金融をきちんとしろ」と迫ったようだ。バイデンは、" Chinese are aggressive . " 「中国人はキツイことを言う」と辟易(へきえき)したようだ。
バイデンにしてみれば、日本の財務省が、バカの野田を操って、これからも「円高阻止の介入」をやらせて、何度でも、これからも一回当たり3兆円(200億ドル)分ぐらいずつ、ボロボロの米国債を買い続けてくれるなら、こんなに嬉しいことはない。
習近平の属する上海閥(幇、パン)=太子党(タイヅータン)=石油党の勢力も米国債をまだ買い続けることで、アメリカを支えると約束してくれた。このことがバイデンの最大の外交業績だ。 そのために中国に行ったのだ。バイデンは、泥くさい現実政治家だから、「お金のことがなによりも大事。累積した(50兆ドルぐらいある。4千兆円)アメリカの国家の借金の問題こそは一番大事」と分かっている。
日本は、こうやって今年も来年も、大きく崩れ始めたアメリカ帝国の「地獄への道連れ経済」を強いられる。それでも、私たち不屈に抵抗し民族の自立を目指し、愛国のこころざしを変えない日本国民が、頑強に小沢一郎が率いる政治勢力(政治家200人)を支持して、闘い続ける限り、日本の未来は明るい。
日本の政治を無権限なのに壟断(ろうだん)する、勝栄二郎らの愚劣なる日本官僚たちは、やがてやって来る2013年7月の参議院選挙で、私たちが勝って、本当に、たくさんの法律をどんどん変えて、長く続いた律令体制からの官僚支配政治を廃止して、官僚たちを、本当に、ただの事務公務員にたたき落とす。各省の 事務次官や局長級 を廃止して 若い30台の政治経験の少ない政治家たちに、それらの仕事をさせる。それが国民の代表たちによる正しい政治だ。小沢一郎が言う「官僚主導から政治主導へ」だ。ついでに「国の大掃除をする。きたないものすべて掃除するのだ」の大方針に私たち国民が忠実に従うべきときである。
この 日本国家の一番大事な国家体制の改革の大事業を、私たちはたったひとつの 「公務員制度改革」の名の法律群の改正だけで、実行できるのである。これにはアメリカの口を挟(はさ)ませることもなく、私たち日本国民の堅い意思と決断だけで出来る。だから各省の官僚どもが束になって、必死になってこの動きに抵抗しているのである。
だが、このことはすでに日程に登っていて、2009年8月30日の選挙で勝った時の、あのマニフェスト(国民との約束)に明言してあるのだから、かならず実現できる。公務員制度改革(官僚制度の解体)以外の 他の福祉のことや、税金のこと、復興のこと、外交・軍事(安全保障ともいいう)などのことは、外国との交渉であり、たくさんのお金がかかることだから、やがて出来る小沢革命政権をもってしてもなかなか大変であり、簡単には実現できることではない。だが官僚制度の解体・消滅だけは、本当にできる。お金はかからないどころか、多額の国家資金がこれで救い出される。
官僚たちを「おそろしい大蛇からただのヘビ」に変えて、正体を暴いて、脱魔術化(だつまじゅつか。disenchantment ディスエンチャントメント。私たちが罹っている魔法、呪縛から解放されること)して、彼らを卑小にしてしまうことは、必ず出来る。
これから一年間、もともと能力のない野田佳彦首相 を頓珍漢(とんちんかん)風に操って、その様子が丸見えになって失笑を買い、私たちから嘲笑、冷笑 されるであろう勝栄二郎よ、まあ、頑張りたまえ。私たちは、こうやって国民政治の実質を簒奪する黒子である お前たち官僚の姿を徹底的に炙り出し、冷酷に冷ややかに見つめる、ということをする。 小沢一郎を執拗に違法に攻撃している法務省官僚と裁判官たちを含めた司法官僚たちの悪あがきも度を越している。司法・法務官僚たちを使って、小沢一郎を抑えつけることをやったので、それで財務官僚たちの方が好き放題にやれたということである。 副島隆彦拝
*勝栄二郎
1975年に大蔵省(現財務省)に入り、予算編成を担当する主計畑を主に歩んだ。93年に発足した細川政権では官房長官秘書官を務めた。東大卒。75年大蔵省。官房長を経て09年7月から主計局長。10年7月から財務省事務次官。61歳。埼玉県出身。 *強調(太字・着色)は来栖
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菅直人から野田佳彦へ継承される消費税増税――勝財務省事務次官の筋書き通りか
週刊金曜日ニュース2011年8月29日6:11 PM
まるで菅直人首相のライフワークのように見える「社会保障と税制の一体改革」こと消費税増税策。さも、二〇一〇年七月参議院選挙の民主党・マニフェストで、菅首相が突如として唱えはじめたような印象になっている。しかしこれは正しい理解ではない。
説明しよう。麻生太郎政権時代に成立した、〇九年度税制改正法(〇九年三月三一日公布)の附則一〇四条には次のように明記されている。
「政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ(中略)段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、二〇一〇年代の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする」
これはまさしく「社会保障と税制の一体改革」そのものである。そしてその法案整備時期を一二年三月までと指定しているのだ。
つまり、この一一年九月からスタートする臨時国会に提出されるであろう「社会保障と税制の一体改革」法案は、自公政権末期の麻生太郎内閣が時限爆弾として仕込み、それを菅・民主党政権が粛々と実行しているのである。
すなわち、民主党政権が「附則一〇四条」に従い、一二年三月までに消費税増税法(一〇%に増税)を提出→件の「附則一〇四条」自体は自公連立政権時代に成立した法律であり、消費税増税法案は「衆参ねじれ」にもかかわらず民自公の賛成多数で成立する――という流れが待っているのである。
これひとつとってみても「あの政権交代は、一体、何だったんだろう」と虚しくなる。
時に菅首相を批判する勢力――鳩山由紀夫前首相や小沢一郎元幹事長あたり――からは、消費税増税路線を「マニフェスト違反」と批判する声を聞くが、ならば、「小鳩体制」のときに、すみやかに「附則一〇四条」を削除すべきだったのではないか。
まさかお二方が「附則一〇四条」の存在を知らなかったわけがあるまい。つまり、彼らにとって消費税増税批判は、菅首相を批判するための材料にすぎないのではないか(ゆえに私は「小鳩体制」が続いていても、消費税増税に着手したのではないかと睨んでいる)。
とはいえ、菅直人は首相に就任して以来、まるで小泉構造改革の継承者のごとくふるまっている。
そして「菅は財務省のいいなりになった」「野田佳彦は財務省の操り人形」「仙谷由人はまるで財務省の手先だ」「与謝野馨は財務省の代理人だ」という比喩もよく聞くようになった。
*「政治主導」の正体
このときいう「財務省」とは、具体的には勝栄二郎事務次官を指す。3・11以降、菅首相の支持率が低下し、政局的な危機が訪れても見捨てず下支えしてきたのが勝次官である(この人は小沢氏に冷や飯を食わされそうになった経験があることから、反小沢の立場と見られている)。たとえば第二次補正予算の編成や成立に尽力し、特例公債法案が野党の抵抗で店晒しにあり、政府の兵糧が尽きる中、資金繰りに動いたりしている。
勝次官が懸命に菅首相を支えたのは、ひとえに財務宿願の消費税増税を実現させるためである。
官邸をよく知る者は現政権を「勝政権」と呼ぶが、それほどまでに菅首相は勝次官に依存し、官邸の重要事項を仕切らせている。
今年、一月一四日の組閣において与謝野馨氏を経済財政政策担当相、社会保障・税一体改革担当として入閣させたのも、勝次官の意向である。麻生内閣の財務大臣が菅直人首相のもとで消費税増税に血道をあげているのは偶然ではなく必然なのである。これが民主党の「政治主導」とやらの正体だ。
そして勝次官は、菅内閣での消費税増税法案を成立させることを目標にしてきた。それが菅政権がここまで続いてきたひとつの大きな理由といえる。つまり菅首相が辞任し、もし消費税増税慎重派が新代表に選出されたりしたら、もし消費税増税支持の代表候補がボロ負けしたら、もはや目も当てられない。財務省としては、またもや消費税増税を見送らなければならなくなる。ちなみに勝次官は幻の「国民福祉税」の細川護煕政権時代、官房長官秘書官を務めている。あのような悪夢は二度と見たくはないだろう。
「内閣府は一二日の閣議に、二〇二〇年代前半までの中長期の経済財政試算を提示した。社会保障と税の一体改革に沿って消費税を一五年度までに五%上げた場合でも、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス+PB)の赤字は二〇年度に一七・六兆〜一八・三兆円にのぼる。政府が目標とする二〇年度の黒字化を達成するには、消費税換算でさらに七%程度の収支の改善が必要となる」(八月一二日付『日本経済新聞』電子版)
いまさら、何をか言わんや、である。そんなことはこの新制度を検討する前から分かりきっていたことではないか。
民主党「税と社会保障の抜本改革調査会」勉強会(二〇一〇年一一月開催分)配布資料「税と社会保障の抜本改革〜スウェーデンとの比較の視点から〜」(日本総合研究所調査部)によれば、一三年度までに消費税を三%引き上げ、一五年度までに二%引き上げ、さらに一九年度までに四%を引き上げることで、PB黒字化が達成するとしている。
つまり一五年度までの五%増では財源が足らず、さらにその四年後までに四%増、税率一九%にすることが求められているのだ。
*野田財相が「正当後継者」
そう。そもそもこの消費税増税は「社会保障改革」をひとつの口実に挙げているが、真の狙いは「財政健全化」+PBの黒字化にある。ならば五%増税では全く足らないのである。
要するに、今回の消費税増税では、消費税率一〇%で何年持ちこたえられるのかの議論が一切なされていないのだ。ひとまず五%を増税して何年後かのさらなる増税が目論まれているのだとしたら、そしてそれが国民に隠されていたとしたら、それこそ「ペテン」に等しいのではないか。
政権に居座り続けた菅首相は、退陣三条件(「特例公債法案」「第二次補正予算」「再生可能エネルギー法案」の成立)が全て揃う八月二六日に退陣すると八月一〇日の衆議院財務金融委員会で明言した。これは菅首相本人の意思のみならず、勝次官からも退陣を了解されたとみるのが正しい。そして退陣が予定される二六日から中一日挟んだ二八日には新代表選挙(両院議員総会)が開催されるべく、調整がすすめられている。
そして菅首相の正当後継者として野田佳彦財務相が名乗りを挙げる。野田氏は八月一〇日発売『文藝春秋』に掲載の「わが政権構想」にて「政府・与党は、六月三十日に社会保障・税一体改革の成案をまとめました。(中略)私は、覚悟をもってこの一体改革を実現していきたいと考えています」と、菅首相の増税路線継承を明確に打ち立てた。
つまり、勝次官は野田氏を全面的に支えていくことになる。野田氏が負けた場合には全てが白紙に戻る可能性すら秘めているからだ。
今回の代表選挙は新総理大臣を選ぶ選挙であり、この消費税増税のみならずTPP(環太平洋戦略経済連携協定)や政権の枠組み(野党対策)に、〇九年マニフェストのありかたも議論されなくてはならない。
通常国会も終了するのだから、代表選の期間は八月二七日から九月の第一週ぐらいを充てても支障がないと思われるのだが、そうはならなかった。選挙期間が長くなればなるほど国民ウケが悪い「増税派」が嫌われるのは明らかだからだ。もしメディアで世論調査を実施して「増税候補不人気」などという結果が発表されたら、民主党で多数を占める一年生が、雪崩をうって「反増税」に流れる可能性があるからだ。
短期決戦あるのみ。そういう理解でいいですかね、勝さん?
(小谷洋之・ジャーナリスト、8月19日号) *強調(太字・着色)は来栖
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財務省 菅氏に「普天間で鳩山躓くので関わるな」と忠告した
NEWSポストセブン2011.09.26 07:00
「最強官庁」ともいわれる財務省。だが、国家の予算を握っていることだけが最強官庁・財務省の権力の源泉ではない。むしろ、この役所の情報収集力と組織の結束の強さこそ、官僚主導政治を根付かせてきた秘密だろう。「政治主導」を掲げて政権交代を果たした民主党政権の3人の総理大臣が、次々に財務官僚に籠絡されていった軌跡はそのことを浮かび上がらせる。
2010年1月に当時の菅直人副総理が財務大臣に横滑りすると、財務官僚は菅氏を取り込みにかかった。
菅氏を本来嫌っていたはずの財務官僚たちが、その頃からすでに「次は菅政権」と吹聴し始めた。さらには菅氏に対し、鳩山政権を窮地に立たせていた普天間基地の県外移転問題についてアドバイスまで行なっていたという。
菅氏側近が振り返る。
「とにかく財務省の情報能力はすごい。『普天間問題は鳩山政権の命取りになるから、大臣は決して関わってはいけない。待っていれば海路の日和がある』と菅さんに忠告し、日米交渉はその通りになっていった。現実主義者の菅さんは、財務省を敵にするより頼りにした方がいいと判断した」
実際には、普天間基地をめぐる日米交渉は、外務省や防衛省が裏に回って鳩山方針をつぶしにかかっていたわけだから、“霞が関の盟主”である財務省には鳩山政権の命運が手に取るように見えていたのは当然だった。
「財務省を味方にすれば総理になれる」という神話が、すでに民主党には植え付けられている。仙谷由人氏をはじめ、玄葉光一郎氏、枝野幸男氏、安住淳氏らが財務省の与党となり、「マニフェスト撤回」に動いてきたのも、二匹目のドジョウを狙っているからだ。
財務官僚にとって、未熟な民主党の政治家を動かすのは簡単だ。近づいてくる政治家に増税は必要だといわせ、「あの大臣はすごい」「首相候補だ」とメディア工作で評判を上げれば、その気になって忠誠に励む。
※週刊ポスト2011年10月7日号 *強調(太字・着色)は来栖
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September 25, 2011, 7:45 pm
霞ヶ関を去る改革派官僚の特別手記・古賀茂明「『改革への新たな一歩』ーー日本再生のため、さらなる戦いに挑みます」
現代ビジネス 2011年09月26日(月)古賀茂明
「本日、経産省を退職します」
本日9月26日、私は長年勤めてきた経済産業省を退職することになりました。
霞ヶ関を辞める覚悟はずいぶん前からできていました。そもそも公務員改革にかかわりはじめたところから、いや、実は7〜8年くらい前に改革を妨害する当時の次官と対立したあたりから、思いっきり改革に取り組んだら守旧派の官僚全体を敵に回してクビになるかも知れないと思っていました。ここ数ヵ月はいつ辞めさせられるかどうかわからないという日々でした。
ですから、「ついに辞めるんだ」といった感慨はありません。むしろ「ようやく決着が着いたな」という安堵感のほうが大きいのです。自分でも驚くほどに淡々と、そして自然に今日という日を迎えました。
*なぜ枝野大臣自身の判断を聞きたかったのか
枝野幸男経産相とは、就任以来、一回も話をしていません。ご本人には就任直後にメールを送りましたが、返事も直接はいただいていません。
メールでお伝えしたことは、これまでの経産大臣は私にずっと仕事をくれなかったので、枝野大臣も同様であれば、私は経産省にいても意味がないので辞めるしかないと思っています、ということでした。そして、大臣のお考えを直接確認したい、ということを伝えました。事務方を通すといろいろ誤解もおきるから、直接会う時間がないのであればメールでも結構ですから直接大臣の考え方、返事を聞かせていただきたい、とお願いしました。
結局、返事はいただけず、事務方から、「大臣はそのまま辞めていいと言ってます」という話がありました。いったんは、「それなら、辞めよう」と決心しました。ところが大臣が記者のぶら下がり取材などで、私の人事は自分が決めたわけでなく、事務方にやらせているという意味のことを言われたので、そのままでは困ると思い直したのです。
私はもともと幹部官僚に身分保障は必要ないというのが持論ですから、辞めさせられること自体は構いません。しかし、クビにすることが大臣の意志ではなく、事務方が大臣の名前を使ってできるとなったら、官僚主導をますます強めることになる。そんな前例を作るわけにはいかない。そう思ったのです。事務次官が気に入らない部下を大臣の名前を使って勝手にクビにできるのであれば、私のように現職官僚が公務員改革を主張するなど一切できなくなる。だからこそ、大臣が直接判断する、そこだけは守ってもらわないと困ると考え、直接大臣自身の考えを確認することにこだわったのです。
枝野大臣自身の判断を聞くため、事務方に一旦辞意を撤回することを連絡しました。それを事務方が大臣に伝えたのでしょう、先週火曜日(9月20日)の記者会見で、大臣は、「(私と)直接会うつもりはない」、「歴代の大臣の判断を引き継ぎ、それを了とする」「手続きは事務方に任せた」と話したのです。つまり大臣の最終判断は、このまま私が辞めてしまうことを前提に、辞める手続きを事務方に任せたということです。これで私には大臣と直接話をする道は閉ざされました。事務方に任せるとおっしゃたので、仕方なく官房長と話をしましたが、事務方の考え方は一貫していました。もちろん「待っていても仕事はない。辞めてくれ」ということでした。
私は公務員という職にしがみつくつもりはありません。ただこの国のために仕事をしたいと考え、いままではその可能性が残されていたので待っていたのです。しかし、これでその可能性が完全になくなりました。絶対に仕事ができないと分かっていて、税金で給料をもらっているわけにはいきません。辞めるならぐずぐずしていても仕方がないので、先週22日に辞表を提出したのです。
結局、枝野大臣は、この問題を判断することから逃げたかったのかもしれません。自分が直接、クビを切ったという責任を避けるために、前の大臣からの引き継ぎだと言っているのでしょう。しかし、その判断は「人事の政治主導」からいえば正反対です。
ある意味では枝野大臣も判断はしています。その判断とは、「歴代の大臣を引き継いだ」ということです。歴代の大臣は事務方のいうとおりにしていたというだけのことです。結局、枝野大臣も「事務方にいわれたとおりにやる」という判断を下したのです。
*経産省は変わってしまった理由
私が、当時の松永和夫経産省事務次官から、はじめて退職勧奨を受けたのは、今年の6月のことです。そのとき私は、事務次官に言われたからといって辞めるのは嫌だと断りました。そのことを海江田経産相(当時)が国会で追及され、苦し紛れなのか「私の部屋のドアはいつでも開いている」とおっしゃた。そこで私は大臣と直接、会うことにしました。海江田さんは、「俺が話せば古賀もいうことを聞くだろう」と思ったのかもしれません。実際にお会いすると、波風立てずに事務方のいうことを聞いておとなしく辞めてくれ、というような感じがひしひしと伝わってきました。
私は、「簡単な質問ですから答えてください。私に仕事をくれるのかくれないのか。二つに一つしかありません。どちらですか。仕事をもらえないなら辞めるしかありません。」と迫りました。
しかし、それには口を濁し、海江田さんは「初めて会ったばかりなんだから話せばわかり合える」とか、「これから何回も会おうよ」などと繰り返しました。もちろん、その後、実際に会おうというお声がかりは二度とありませんでした。そのうち海江田さんは、大臣を辞めてしまったのです。
鉢呂さんが経産大臣になったときにも、枝野さんと同じ内容のメールを出しました。そのときも事務方は、「鉢呂さんは辞めてもらっていいといっている」と伝えてきましたが、鉢呂さん自身の意思を確認する間もなく大臣を辞めてしまいました。そして枝野さんに引き継がれたのです。
しかし、実際にはどの大臣も同じことです。その前任の大臣である直嶋さんも大畠さんも、結局は私の人事問題からは逃げてきたのですから。
かつて経済産業省には役所全体に日本を改革しようというマインドがみなぎっていました。いろいろいい政策をやってきたと思います。しかし2000年に入ったころから、日本経済が本当に下向きになったのと軌を一にして、その雰囲気は失われました。
いろいろなことを変えることがいいことだという価値観があった経産省も、いまは完全に守りに入ってしまっています。それは日本経済が下降線を辿っているなかで、現職公務員としてだけでなく退職後の天下りなど自分たちの生活を守ることに汲々とし出したからです。
政策や法律などいろいろな制度の上には必ず天下りの仕組みが乗っています。昔はいろいろな産業分野が次々新しく出てきたので、そこに天下りの仕組みを築いていけば、少しくらい古い分野を削っても全体としてパイは少しずつ膨らみました。ところが、いまは経済が成長しないので新しい利権が増えることは期待できません。
日本のためには、いろいろな政策を根っこから見直さなくてはいけない。しかし、それをやると天下り先など自分たちの生活が引っ繰り返ることになる。だから大きな改革はできない。どんどん後ろ向き、内向きになり、結局、経産省には改革はできない、そういう時代を迎えています。これでは経産省の存在意義はありません。
*経産省が手放せない原子力利権
なかでも原子力発電は、経産省の官僚の生活を支える、天下りシステム、利権構造が非常に大きいのです。経産省全体で様々ある官僚の生活安全保障の仕組みのうち、何割という大きなウエートを占めています。これを根底から覆されると、それを他で賄うことはとてもできないほど大きいのです。
直ちに路頭に迷う人がたくさん出てくるかもしれないほどなので、経産省には絶対、この利権だけは守らなくてはいけないという思いが強い。だからこそ議論の余地なく東京電力は守る、原発は推進する、という前提でいまも進んでいるのです。
もちろん外に向かって「いままでと同じ政策でいきます」と宣言したら、袋叩きに遭うことはわかっているので、「見直す」とは言っていますが、ホンネはまったくそんなことは考えていません。電力市場の改革、発送電分離などいろいろ議論はありますが、いまの経産省はさらさらやる気はないでしょう。
霞が関と永田町は既得権益グループとくっつき、そこに寄生する形で自分たちの生活の仕組みを作ってきました。この仕組みは自民党時代に築かれたので、そのしがらみのある自民党には改革はできない。でも民主党政権になればそこにメスを入れられるだろうと、期待しました。
しかし、現実には民主党政権は改革に挑んでなどいません。そもそも経験が浅く、その能力がなかったこともあるでしょう。また自治労や日教組、さらには電力総連などの民間企業の労組などの既得権益団体と密接な関係にあった。さらに政権につくといろいろな団体が寄ってきます。いままで自民党についていた農協、医師会、電力業界も政権政党にすり寄ってくる。いまの民主党はそのウマミが分かってきた。
結局、何のことはない2年で民主党は自民党になってしまったのです。しかも民主党は労働組合がついているからなおのこと改革できません。2年たってこの政党には改革ができないと、はっきりしたと思います。
*増税はギリシャへの道。いま必要なのは「政策イノベーション」
では、いま何をするべきなのか。
公務員改革は、改革の前提となる基盤の問題です。どんな改革をやるにしても結局官僚を使わなくてはいけない。だから官僚がきちんと政治家のいうことを聞いて国民のために動く仕組みを作らなくてはいけない。自分達の「生活協同組合」のことばかりでなく、まともな政策を考え、国民のために実施する、そういう公務員をどうやって作るかという仕組みの問題です。だからまず、これを真っ先にやらなければなりません。
しかし公務員改革だけではダメです。政治が官僚を使える仕組みを作って、その基盤の上に新しい政策を出さなくてはいけないのです。まったく新しい環境に適応していくための「政策イノベーション」、私はそう呼んでいますが、今、あらゆる分野でそれが求められています。
しかし、野田政権が、具体的な政策として出ているのは増税だけです。
財政が大変であることは事実です。ただ財政再建のために出ている唯一の手段が増税だというのは間違っています。財務省はギリシャにならないために増税するといっていますが、私は「増税はギリシャへの道だ」と公言しています。
ギリシャは借金を払えなくなってきて、行革だ、歳出削減だ、公務員改革だ、リストラだ、と慌ててやっている。しかしそれだけ足りません。増税するといっても、消費税はすでに20%、これ以上は大きくは上げられない。結局、借金を返すためには、個人や企業の稼ぎが上がって税収が増えるようにする、つまり経済成長しかないのです。
ところが世界の誰もがギリシャに経済成長はできないと思っている。それは成長に必要な規制改革や民営化を進めてこなかったために、成長する環境が整備されていないからです。いまから環境を整えても実際に成長が始まるのは何年も先のこと、とても間に合いません。
まさにいまの日本は、ギリシャに至る道を歩み始めているのです。つまり行革も歳出削減もほとんどやらず、公務員改革もできない。経済成長のために規制改革をし、企業が自由に活発に活動できる環境作りもできない。なにもやらないまま、消費税を取り敢えず5%上げて10%にするという。
しかし、今後さらに消費税を15%、20%に上げても、税収は足りないでしょう。なぜなら、経済はデフレでどんどん小さくなっている。ちょっと前は消費税1%=2・5兆円といっていたものが、いまは2・1兆円になってしまった。このままどんどんさがっていけば消費税を1%上げても1・5兆円しか増えないということにもなるかもしれません。このままでは、消費税を20%に上げたが借金は減っていない、これ以上増税はできない、借金を返せないという事態があと何年か先に来ることになるでしょう。まさに「ギリシャへの道」です。
ギリシャにならないために、どうすればいいのか。必要な政策は、行革、歳出削減、公務員改革とリストラ。ここまでは皆、言っています。しかし、それだけではダメです。ギリシャの最大の問題は成長できないことなのです。いままでの日本の成長戦略はほとんどバラマキでした。昔は公共事業、いまは新産業育成とか言って、補助金や融資、優遇税制。結局全部バラマキで、景気対策の域を出ていません。これでは成長率など上がるはずもない。政策担当者は「成長によって税収を上げるのは無理だ」と諦めていますが、それはくだらないバラマキばかりやっているからです。
*既得権益と規制に雁字搦めの「成長分野」
成長分野という話をすると、必ず出てくるのが、農業、医療、再生可能エネルギーの三つです。野田首相も所信表明でもこの3つを謳っています。ところが、その3つの分野は規制でがんじがらめです。農業では株式会社が大規模農地を持って自由に経営することはできない。規制改革で農協の独禁法適用除外の見直しが提言されても、結局できません。医療でも株式会社は病院を持てない。混合診療も解禁されない。電力市場は10電力のみで、それ以外の株式会社は自由に活動できない。世界中で実施されている発送電分離もできない。
成長が見込まれる分野で、企業が自由に活動できない。自由主義、資本主義の国で企業が自由に活動できないというのはまるで笑い話ではありませんか。
これを変えようとしたら、農業では農協、農水省、医療では医師会、厚労省、電力では電力会社・電事連、経産省、そしてそれぞれの族議員という、非常に強い既得権グループと戦わなくてはなりません。しかしいまの政治は戦わない。選挙が怖くて戦えない。自民党も戦わなかったが、戦えると期待した民主党も結局は戦わない。だから増税しか政策が出てこないのです。
いまの復興増税の話が終われば次は消費税増税の話が出て来ます。消費税増税とは、一般消費者という、いちばん弱い相手と戦うことです。本来、政治の機能とは「強きを挫き弱きを助ける」こと。それが「強きを守り弱気を叩く」という、本来の真逆にいこうとしています。
いま目指すべきは、守られすぎた既得権グループと戦って自由なフィールドを拡げ、企業や若い人が活躍できる環境を作り、それによって成長率を上げて税収を上げることなのです。それを私は「戦う成長戦略」と呼んでいます。「バラマキ成長戦略」の逆です。
マクロ的にいえば、デフレ脱却が最大の課題です。ただしデフレ脱却といって、おカネを増やすだけで実質経済が拡大しなければ意味はありません。デフレを脱却し、それをより高い実質経済成長につなげていくためのミクロの改革が「戦う成長戦略」なのです。
*メディアも変わらなければならない
この実現を妨げているのは、政治や官僚だけでありません。メディアの問題も大きいのです。
たとえば、いまJT株の売却が議論されています。法律を改正すれば政府所有のJT株はゼロにできます。しかしいま議論されているのは政府が2分の1持っているJT株を3分の1まで下げようということです。新聞も、それ以上下げるのは葉たばこ農家の経営に関わるから難しい、実現するのは難しい、と平気で書いています。 なぜ葉たばこ農家だけ、そこまで守らなくてはいけないのか。メディアだったら、こういうときこそそこを問題提起しなくてはいけないはずです。しかし、それどころか、一部では、3分の1にしても大した売却益にはならないから意味はない、などととんでもない逆方向の記事もあります。財務省に気を使っているからです。本来なら、JT株をゼロにできるのかと、政府や政治家に踏み絵を踏ませるのがメディアの役割でしょう。本来は、ジャーナリズムが、そういう役割を果たしていかなくてはいけないと思っています。
いまのメディアには政策を批判的に検証するという姿勢が著しく欠けています。例えば復興増税にしても、財務省の路線に乗って増税の議論ばかりしていますが、ではそのカネを使って被災地でなにをするのかという議論が殆どない。例えば、復興特区が実現し、私は相当思い切ったことがやれるのではないかと期待していましたが、なにも出てきていません。マスコミはなぜ、そのことをもっと議論しないのでしょうか。
メーカー系の外資系企業の知人と話していると、彼らは復興特区に非常に期待していると言っていました。面白いことに各国に親会社の現地法人があるため中国やインドなどには出ていけない外資系の日本企業こそ、日本市場の成長にもっとも期待しているのです。彼らは本社からは、日本は政治もメチャクチャ、もう終わりじゃないかといわれ、優秀な技術者はどんどん中国の現地法人に取られています。いままで営々と築いてきた内部留保も、日本ではどうせ投資できないだろうから中国に投資しろと迫られています。
そういう状況のところに、政府が復興特区で思い切ったことをやるという話が出たので、非常に期待していたのです。ところが一時出た発送電分離の話もしぼみ、半年たってもなにも出てこない。本社からは、やはり日本はダメだ、と見切られそうになっているというのです。
震災復興は抜本改革を始める最後のチャンスだと思います。しかし、ここでまったく思い切った発想が出てこない。民主党だけでなく自民党からも出てこない。この現状をなんとしても変えなくてはいけません。
*今日が新たなスタートの日。ぜひ一緒に戦いましょう
これから私がやろうと思うことは、一つは、改革をやりたいと思う政治家、地方の首長に政策提言などをしていくことです。いままでは公務員の立場で特定の政治家と緊密な関係を持つことは自由には出来ませんでしたが、これからは自由の身です。本気で改革をやる人を見極めながら政策などを提案、議論、そして実現していきたいと、考えています。
そうはいっても政治家は選挙が怖い。きちんとした政策を訴える政治家を国民が支持しないといけません。つまり国民が「改革が必要だ」ということを理解し、それを応援しないと進まないのです。そのために国民が改革政策への理解を高めること、国民が政治に参加することが大事です。そのサポート役をしたいというのが、もうひとつの私のこれからの仕事です。
特に若い人を政治に結びつけていくことに取り組みたい。ひとりひとりが政治に参加していく、それを一つの大きな運動に繋げていく、それが大事です。これまでのメディアでは十分ではなかった。そのための情報発信をやっていきたい、そんな思いをいま抱いています。
今まで、多くの方から辞めないで頑張って、という声をいただきました。本当に嬉しくて、ありがたいと思いました。余りにたくさんの方から声をかけていただいたので、お一人お一人に返事を差し上げることができませんでした。この場を借りて心から御礼を申し上げます。
私の力が足りず、途中で辞めなければならないこと、皆さんのご期待に添えなかったことには申し訳ないという思いでいっぱいです。
しかし、公務員を辞めるということは改革を諦めるということではありません。これからも改革のために、今まで通り、いや、今まで以上に努力して行きたいと思います。
私にとって、今日は終わりの日ではありません。新たなスタートの日です。
一人でも多くの方々とともに改革への活動ができれば何よりの喜びです。
これから少しずつ活動を具体化して行きます。その都度、ツイッター、テレビ、インターネットなどを通じてご報告させていただきます。
皆さんの力が日本を変える力になります。是非一緒に日本再生のために闘いましょう。
※ ※ ※
『現代ビジネス』編集長からのお知らせ
いよいよ古賀茂明さんが新しい第一歩を踏み出します。現代ビジネスは、日本再生のために新しいスタートをきった古賀茂明さんをこれからも応援していきます。
その第1弾として、古賀さんの講演会『古賀茂明さんの「日本再生」をサポートする会』を10月20日午後7時より都内にて開催する予定です。詳細は、現代ビジネスWebサイト上で近く発表します。また無料のメールマガジン『現代ビジネス編集長からの手紙』でも、お知らせします(購読申し込みはこちらから)。それ以外にも、現代ビジネスでは、古賀さんの活動をお伝えしていきます。ぜひご覧ください。
古賀さんとともに、瀬戸際にあるこの国の再生への道を考え、そしてご一緒に日本の未来をつくりましょう『現代ビジネス』編集長 瀬尾傑
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◆人事を官僚に丸投げする枝野大臣に「古賀問題」をクラブ記者に代わって直撃/結局、政治主導などやる気なし2011-09-24 | 政治
◆退職勧奨を受けた経産省官僚 古賀茂明氏、海江田万里経産相と直接対決2011-07-29 | 政治
◆古賀茂明著『官僚の責任』/霞が関は人材の墓場/優秀なはずの人間たちがなぜ堕落するのか2011-07-21 | 読書
◆公務員制度改革はかくて骨抜きにされた われらは敵だらけの中でいかに戦ったか/古賀茂明vs高橋洋一2011-07-22 | 政治
◆原発問題の裏にある経産省・東電「天下り・利権の構図」/退職勧奨を受けた古賀茂明キャリア官僚 VOL.1〜3 2011-07-21 | 政治
◆経産省官僚古賀茂明氏への肩たたき/民主党政権よ、霞が関の改革派潰しにまで手を貸すのか2011-07-16 | 政治
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September 25, 2011, 9:45 pm
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September 25, 2011, 9:56 pm
日米首脳会談で、普天間問題をめぐる深刻な認識の差異が明らかになった
【佐藤優の眼光紙背】2011年09月25日10時00分
両首脳の会談は、わずか35分で終わった。
日米首脳会談は、大成功であったという印象を焼き付けるべく、野田首相周辺や外務省は腐心しているようだ。以下の趣旨の記事を多く目にする。
米大統領:「彼となら仕事できる」…「実務的」首相に好感
【ニューヨーク高塚保】オバマ米大統領が野田佳彦首相との初の首脳会談後、「I can do business with him.(野田首相となら仕事ができる)」と語っていたことが、大統領周辺から日本側に伝わった。首相の同行筋が22日、記者団に明らかにした。
大統領は「実務的」(外務省幹部)と言われ、同様に実務的な首相に対して好感を抱いたようだ。ただ、会談では米軍普天間飛行場の移設問題で、大統領が「結果を求める時期が近い」と迫るなど、早速難問が突きつけられた。首相に具体的な成果を求める米側の圧力が今後強まりそうだ。(9月23日毎日新聞電子版)
首相同行筋というのは、業界用語で、首相官邸の政治家や内閣官房のスタッフだけでなく、今回の訪米に同行した外務官僚を指す。同行筋は、大統領周辺が<I can do business with him.>と伝えてきたという情報を流し、「野田首相となら仕事ができる」とオバマ大統領が野田首相に好感を抱いているという「物語」をつくろうとしている。ほんとうにそうなのだろうか? 筆者は懐疑的だ。まず、I can do business with him.のdo business withは、成句で「…と取り引きする」(『ジーニアス英和辞典』大修館、『新英和中辞典』研究社など参照)と訳すのが通例だ。オバマ大統領の発言を素直に訳せば、「野田首相とは取り引きができる」となる。高校英語レベルの成句なので、外務省に合格する英語力のある者が間違えるはずがない。businessという単語があるから、あえて「仕事」と訳して、「野田首相となら仕事ができる」という日本語にし、「オバマ大統領の野田首相に対する好感」という「成果」をつくり出そうとする外務官僚の姑息なやり方と筆者は見ている。一般論として好感を抱いていない相手とでも取り引きは可能だ。「取り引き」は帝国主義外交の基本である。米国が日本と「取り引き外交」を行おうとしている現実を冷徹に認識する必要がある。
さらに日米首脳会談のサブスタンス(実質的内容)をめぐるより深刻な事実認識の差異が露呈した。9月24日「琉球新報」はこう報じた。
「普天間移設」大統領発言、疑義が浮上 首をかしげる首相
【東京】日米首脳会談で米軍普天間飛行場移設問題について、オバマ米大統領が野田佳彦首相に対し「結果を求める時期に近づいている」と発言したとされる件で、発言の事実に疑いが浮上している。野田首相は首脳会談後の記者団との懇談で発言について問われ、首をかしげて「進展を『期待する』という話はあった」と説明した。オバマ大統領の「結果を求める時期」については、米国務省のキャンベル次官補が記者団に説明していた。野田首相の認識と食い違っていることが明らかになった。
21日(日本時間22日)、首脳会談には野田、オバマ両首脳の他、玄葉光一郎外相、クリントン国務長官が参加。外務省や国務省職員ら両国事務方も同席した。会談終了後、キャンベル次官補が報道陣に、会談内容について「われわれは結果を求める時期に近づいている。それは大統領からも明確にあった」と解説した。
それを受け、日本メディアは「(オバマ大統領は)具体的な進展が得られるよう日本側の努力を強く要求した」と報道。この「結果要求」の背景としては、「普天間移設とセットである在沖米海兵隊のグアム移転の実現性にも(米議会から)厳しい視線が注がれ、現行計画が空中分解しかねない現状への米側のいら立ちを映し出した」とした。
関係者によると、野田首相は記者団に「オバマ大統領との会談で結果を求められたのか」と問われ、首をかしげた。首相は普天間問題のやりとりについて「こちらから沖縄の負担軽減を図りながら、誠心誠意説明していくという話をした。(大統領から)進展を期待しているという話はあった」と述べたという。(http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-182019-storytopic-3.html)
日米首脳会談において、オバマ大統領が野田首相に対して、「われわれは結果を求める時期に近づいている」と述べたことが事実ならば、極めて重要な問題である。それを野田首相は正確に認識せず、「進展を『期待する』という話はあった」と受け止めていたということになる。普天間問題について、米国外交の最高責任者であるオバマ大統領が、「時期に近づいている」という時限性、「成果を求める」という内容についての履行を米国が求めているか、それともただ「進展に期待する」という希望を表明しただけであるかでは、今後の外交交渉の組み立て方が本質的に異なってくる。真相を明らかにする責任が、首相官邸、外務省にある。
筆者のところに入ってきた情報では、野田首相による説明は、9月22日、ニューヨークのホテルで行われた内政懇のときのものだ。内政懇(内政懇談)という業界用語は、外国訪問中の首相、外相などの要人が同行記者団を相手に国内政治について懇談することである。オンレコードの扱いになる。従って、この場での野田首相の発言は、記者会見のときと同様に報道に反映する。
このとき同行記者と野田首相との間で次のやりとりがあったということだ。
まず、記者が「普天間飛行場の移設問題で、キャンベル米国務次官補によると、大統領は結果を出すよう求めた」と質したのに対し、野田首相は首をかしげた。そして、「やりとりとしてこちらの立場を申し上げた。日米合意にのっとってやっていくということで、沖縄の負担軽減を図りながら、少なくとも普天間に固定化しないようにしないといけないということで、誠心誠意、沖縄に説明するという話をして、(オバマ大統領からは)『その進展を期待している』という答えはあった。」と答えた。「結果を出すように求めた」という発言がオバマ大統領からあったという事実を野田首相は確認していないのである。そこで記者がさらにこう確認した。
「結果を求められるような時期が近いという趣旨の発言がアメリカ側のブリーフで出ている。」
これに対し、野田首相は、「『進展を期待している』という答えだったと思う」と答えた。
今回の日米首脳会談における重要なポイントであるオバマ大統領が野田首相に対して、「われわれは結果を求める時期に近づいている。」という発言があったか、なかったかという事実関係が宙に浮いた状態になっているのだ。
通訳ミスを除けば、理論的に考えられる可能性は2つに絞られる。
第1は、米国側が不正確なブリーフをしたことだ。<キャンベル次官補が報道陣に、会談内容について「われわれは結果を求める時期に近づいている。それは大統領からも明確にあった」と解説した>ということであるから、その場合、キャンベル氏は大きな責任を負わなくてはならなくなる。
第2は、野田首相が、オバマ大統領の発言を理解できなかったという可能性だ。前にも述べたように、「時期に近づいている」という時限性、「成果を求める」という内容についての履行を米国が求めているか、それともただ「進展に期待する」という希望を表明しただけであるかでは、今後の外交交渉の組み立て方が本質的に異なってくる。まさにこれは今回の日米首脳会談の最重要事項だ。このような最重要事項を理解できないような人には、外交的資質がないということになる。しかし、いくら外交の経験を積んでいないといっても、野田氏はこれまでに幾多の政争を経験し、首相にのぼりつめた政治家だ。オバマ大統領の発言の重要事項を理解できないということは考えられない。
外務省は、外交の専門家集団としての職業的良心に従い、真相を明らかにすべきだ。しかし、外務省はなぜ報道で指摘されるよりも前にきちんと手を打たないのか。外務省は野田首相の内政懇の記録をもっているはずだ。記録を読めば、問題の所在に気づかないはずがない。
I can do business with him.の意訳、内政懇問題の無視は、いずれも日米首脳会談の成果を誇大に宣伝し、深刻な問題を隠蔽しようとする外務官僚の自己保身から生じたものと筆者は見ている。外務官僚には、野田政権を本気で支える気持ちがあるのだろうか? 日米首脳会談に対する誠意を欠く外務官僚の対応は、国民を愚弄するものである。(2011年9月24日脱稿)
・佐藤優(さとう まさる)
1960年生まれ。作家。1985年に外務省に入省後、在ロシア日本大使館勤務などを経て、1998年、国際情報局分析第一課主任分析官に就任。2002年、鈴木宗男衆議院議員を巡る事件に絡む背任容疑で逮捕・起訴。捜査の過程や拘留中の模様を記録した著書「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮社、第59回毎日出版文化賞特別賞受賞)、「獄中記」(岩波書店)が話題を呼んだ。2009年、懲役2年6ヶ月・執行猶予4年の有罪判決が確定し外務省を失職。現在は作家として、日本の政治・外交問題について講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。近著に「予兆とインテリジェンス」(扶桑社)がある。
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◆陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆外交/儀礼的な会話の踏襲では、外国の首脳に日本がまともに相手にされることはないだろう2011-08-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
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September 26, 2011, 3:22 am
陸山会事件、西松建設事件裁判の判決要旨
2011/9/26 19:31 日本経済新聞
陸山会事件、西松建設事件の判決要旨は次の通り。
【西松建設事件】
新政治問題研究会と未来産業研究会は西松建設が社名を表に出さずに政治献金を行うために設立した政治団体であり、西松建設の隠れみのにすぎず、政治団体としての実体もなかった。献金は西松建設が自ら決定し、両研究会を通じて実行。寄付の主体はまさに西松建設だった。
岩手県や秋田県では、公共工事の談合で小沢事務所の了解がなければ本命業者にはなれない状況。小沢事務所の秘書から発せられる本命業者とすることの了解はゼネコン各社にとって「天の声」と受け止められていた。元公設第1秘書の大久保隆規被告は2002〜03年ごろから天の声を発出する役割を担うようになった。
西松建設は公共工事の談合による受注獲得のために寄付しているのだから、同社としては西松建設による献金と小沢事務所に理解してもらわなければ意味がない。献金の受け入れ窓口だった大久保被告が理解していなかったとは到底考えられない。
加えて、献金総額や献金元、割り振りなどの重要事項は、大久保被告が西松建設経営企画部長とのみ打ち合わせ、献金の減額・終了交渉でも大久保被告は「まあお宅が厳しいのはそうでしょう」と述べた。大久保被告も捜査段階で、両研究会が西松建設の隠れみのと思っていたとの趣旨を供述している。
大久保被告は、両研究会からの献金について、衆院議員の石川知裕被告、元秘書の池田光智被告が収支報告書に両研究会からの寄付だと虚偽の記載をすることを承知していた。大久保被告の故意は優に認められる。
両研究会からの寄付とする外形は装っているが、実体は西松建設から。他人名義による寄付や企業献金を禁止した政治資金規正法の趣旨から外れ、是認されない。
【陸山会事件】
04年分収支報告書の「借入先・小沢一郎 4億円、備考・04年10月29日」との記載は、体裁から陸山会が小沢一郎民主党元代表から4億円を借り入れた日とみるのが自然かつ合理的。被告側が主張する「同年10月初め〜同月27日ごろまでに小沢から陸山会が借りた合計4億円」を書いたものとすると、それを担保にする形をとって小沢元代表名義で銀行融資を受け、転貸された4億円を記載しなかったことになり、不自然。
加えて、石川被告が4億円を同年10月13日から28日まで前後12回にわたり5銀行6支店に分散入金したことなどは、4億円を目立たないようにする工作とみるのが合理的。4億円を原資とする土地取得も04年分報告書に載ることを回避しようと隠蔽工作をしたとも推認される。
■背景事情
4億円の原資は石川被告らに加え、用立てた小沢元代表自身ですら明快な説明ができていない。原資の説明は困難。
当時の水谷建設社長は胆沢ダム建設工事の受注に絡み、大久保被告の要求に応じて、04年10月に5千万円を石川被告に、05年4月に同額を大久保被告に手渡したと証言したが、ほかの関係者証言や客観的証拠と符合し、信用できる。一切受け取っていないという両被告の供述は信用できない。
陸山会は04年10月ごろ、原資が明らかでない4億円もの巨額の金員を借り入れ、さらに石川被告自ら、水谷建設から5千万円を受領した。小沢事務所は常にマスコミのターゲットになっており、これらのことが明るみに出る可能性があったため、4億円借り入れの事実を隠蔽しようとしたと推認できる。
■石川、池田両被告の故意
4億円や土地取得費用など合計3億5261万6788円の不記載について石川被告の故意は明らかに認められる。
石川被告は「司法書士から『本登記を行った時が正式な所有権の移転』と聞いたので本登記の日を支出日にすることが正しいと思った」と述べるが、契約の経緯や内容を前提にすると、司法書士が述べたということ自体甚だ疑わしい。仮に事実でも故意を阻却しない。
池田被告は4億円について「小沢元代表の純然たる個人資産で陸山会を含む関連5団体が預かっており、返済は『借入金返済』に当たらない。寄付合計1億5千万円も4億円の一部で陸山会資産でなく『寄付』には当たらない」と述べ、弁護人も故意がないという。
しかし預かり金と言いながら「預かった理由や返済時期、5団体が分けて預かる理由や金額も分からなかった」などと述べ、著しく不自然、不合理で到底信用できない。
「石川被告から『小沢代議士から4億円を借りている』と聞いた」と述べ、元代表が巨額な個人資産を預ける理由もないことを勘案すると、池田被告は4億円を借入金と認識しながら返済を報告書に記載しなかったと認められる。1億5千万円についての主張も信用できず、故意があった。
■大久保被告の故意、共謀
土地の本登記を05年に繰り延べるため、仲介業者との交渉をした際、大久保被告らは購入原資を既に確保し、当初の契約内容通り04年10月29日に残代金を完済し、所有権移転登記を受けることができた。完済後も仮登記にとどめるのは契約の経緯として極めて異例。
当時の大久保被告は小沢事務所の資金確保を図る立場だった。大久保被告も石川被告と同様、4億円借り入れがマスコミの関心の対象になることを危惧していた。
明示的にせよ黙示的にせよ、石川、大久保両被告が意思を通じていたことが強く推認され、そうでなくても石川被告が大久保被告に登記の繰り延べ交渉を依頼した際、隠蔽の一環として、その必要性と対応を説明し、認識を共有したとみるのが自然かつ合理的。大久保被告が異例の交渉をしていることが証左。
池田被告も石川被告から引き継ぎを受けるなどし、4億円を報告書に記載しないこと、仮装のため設定した定期預金担保融資にかかる借入金4億円や転貸金4億円は返済も含め記載しても構わないことなど、隠蔽について石川被告の意図と方法の説明を受け、認識を共通にしたことが認められる。大久保被告は池田被告との間でも意思を通じ合ったといえる。
大久保被告が報告書の提出に関し、法的義務を負う会計責任者だったこと、小沢事務所での役割や立場を考えれば、大久保被告は4億円借り入れを隠蔽する多大な利害関係があった。石川、池田両被告による報告書の虚偽記入や不記載は大久保被告にとっても自らの犯罪と評価されるべきものといえる。大久保被告に概括的な故意が認められ、共同正犯としての責任も肯定できる。
04年分報告書の4億円や土地取得費用などの不記載、05年分報告書における土地取得費用などの虚偽記入、07年分報告書の4億円返済の不記載、これに関わるつじつま合わせのための虚偽記入や不記載も大久保被告の故意、石川、池田両被告との共謀が認められる。
07年分報告書の架空寄付合計7千万円については池田被告が前記認識に基づき計上したと認めるに足る証拠はなく、池田被告から大久保被告に報告があったとも認められない。大久保被告の故意や共謀を認定するにはなお合理的な疑いが残る。
【量刑理由】
西松建設事件での報告書の虚偽記入は、03〜06年までの4年分、額は陸山会の報告書では計2100万円、民主党岩手県第4区総支部については計1400万円に上る。
小沢事務所は談合を前提とする公共工事の本命業者の選定に強い影響力があり、影響力を背景に公共工事の受注を希望する企業に多額の献金を行わせていた。規正法の規制の下で、引き続き企業からの多額の献金を得るため、他人名義の寄付を受け、報告書上、明らかにならないよう虚偽記入した。
陸山会事件では、04年分報告書の不記載総額は8億9700万円余り、05年分と07年分では5億5千万円、虚偽記入の総額は3億7千万円(大久保被告については3億円)に上っている。
陸山会は原資を明快に説明するのが難しい4億円を小沢元代表から借りて本件土地を購入。取得時期が、談合を前提とした公共工事の本命業者の選定に対する影響力を背景に、小沢事務所が胆沢ダム建設工事の下請け受注に関し、水谷建設から5千万円を受領した時期と重なっていた。
そのような時期に原資不明な4億円もの資金を使って高額な不動産を取得したことが明るみに出れば、社会の注目を集め、報道機関に追及され、5千万円の授受や、小沢事務所が長年にわたり企業との癒着の下に資金を集めていた実態が明るみに出る可能性があった。本件は、これを避けようと敢行された。
規正法は、政治団体による政治活動が国民の不断の監視と批判の下に公明かつ公正に行われるようにするため、政治資金の収支の公開制度を設けている。
それなのに本件は、現職衆院議員が代表者を務める政治団体に関し、数年間にわたり、企業が隠れみのとしてつくった政治団体の名義による多額の寄付を受け、あるいは4億円の存在が発覚しないように種々画策し、報告書に多額の不記載や虚偽記入をしたものである。規正法の趣旨にもとる悪質な犯行だ。
しかも、いずれの事件も長年にわたる公共工事をめぐる小沢事務所と企業との癒着を背景とするもので、法の規制を免れて引き続き多額の企業献金を得るため、あるいは、癒着の発覚を免れるため、国民による政治活動の批判と監視のよりどころとなる報告書に意図的に数多くの虚偽記入などをした。
法の趣旨を踏みにじり、政治活動や政治資金の流れに対する国民の不信感を増大させ、社会的影響を見過ごすことはできない。被告らは不合理な弁解を弄して責任をかたくなに否認し、反省の姿勢を全く示していない。
大久保被告は、自らいわゆる天の声を発する役を担当し、企業との癒着に基づいた小沢事務所の資金集めに深く関わっていた。犯情は他の被告に比べて相当に重い。石川被告が果たした役割は非常に重要で責任は大きい。池田被告が果たした役割も重要である。
他方、小沢事務所と企業との癒着は、被告らが事務所に入る前から存在し、被告らがつくり出したのではないなどの事情も認められ、刑の執行を猶予するのが相当だ。〔共同〕
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陸山会事件、建設業界との癒着認定 地裁判決、石川議員控訴へ
2011/9/26 21:59日本経済新聞
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人を有罪とした東京地裁判決で、登石郁朗裁判長は26日、「原資を明快に説明できない資金を隠蔽しようとしたことが虚偽記入の動機で、悪質だ」と述べた。ゼネコンから計1億円の裏献金を受領したことも認め、建設業界と癒着していたと認定した。石川議員は判決を不服として控訴する方針。
東京地裁は6月末、石川議員が虚偽記入を認めた捜査段階の供述調書や、会計責任者だった元秘書、大久保隆規被告(50)や小沢元代表に報告し了承を得たとする供述調書について、検察側の証拠採用の請求を却下していた。しかし、判決は石川議員らが法廷で「合理的に説明できなかった」ことや、調書以外の客観証拠などを基に起訴内容を認定した。
元秘書らの共犯として同法違反罪で強制起訴された小沢元代表の公判は10月6日に始まる。元秘書らの有罪判決は、無罪を主張する元代表の審理に影響しそうだ。元代表の政治的責任を問う声が強まる可能性もある。
登石裁判長は判決理由で「小沢元代表の事務所は東北地方の公共工事に決定的な影響力を持ち、秘書の意向は『天の声』と受け止められた」と指摘。工事受注に絡み中堅ゼネコン、水谷建設(三重県桑名市)から石川議員と大久保元秘書が2回にわたり計1億円の「裏献金」を受領したとの検察側主張も認めた。
そのうえで、陸山会が小沢元代表から借り入れた土地購入費4億円を収支報告書に記載しなかった動機を「原資を明快に説明できない資金で不動産を購入したことが追及され、長年にわたる企業との癒着が明るみに出ることを避けようとした」と認定。「政治腐敗の根絶に向けた法改正などの努力を踏みにじり、国民の不信感を増大させた」行為は悪質だと述べた。
石川議員らが公判で無罪を主張したことは「不合理な弁解で責任を否認し、反省の態度を示していない」と批判。ただ、企業との癒着が石川議員らが事務所に入る前に始まっていた経緯などを考慮し執行猶予を付けた。
判決によると、石川議員ら3人は共謀し、2004年の土地購入に充てた小沢元代表からの借入金4億円を記載しないなど陸山会の政治資金収支報告書を虚偽記入した。大久保元秘書は西松建設のダミーの政治団体から違法な献金を受けた規正法違反も有罪とされた。
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〈来栖の独白〉
天下の東京地裁がこのような杜撰な判決文を書くとは、魂消て、開いた口がふさがらない。恣意的に、事実と認めたり認めなかったり、「推認」を認定としたりする。
判決文は“石川議員らが法廷で「合理的に説明できなかった」”というが、立証責任は検察側にある(=推定無罪)ことは、素人でも知っている。
こんなことで、衆院議員の政治生命が奪われるなど、あってはならない。無論のこと、小沢一郎という稀有の政治家の政治生命を奪ってはならない。
東京地裁よ、検察が立証できなかったことまで、裁判所は認めてやるのか。裁判所が国民感情を気にすることは分かっていたが、ここまでポピュリズムに堕したとは、信じたくない。
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◆国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構?出てこない虚偽記載の事実〜?水谷建設元会長2011-01-28 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
集中連載【国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構(1)】どこを探しても出てこない「虚偽記載」の事実
日刊ゲンダイ2011年1月19日
*世田谷区深沢の問題の土地
民主党の小沢一郎元代表が今週中にも強制起訴されるという。再び大マスコミの狂騒が始まっているのだが、ちょっと待ってほしい。「政治とカネ」問題のいったい何が疑惑で何が具体的不正なのか。答えられる新聞記者がいるのなら聞いてみたい。検察と大マスコミにつくり上げられた事件の壮大な虚構を検証してみた――。
●唯一の疑惑「期ズレ」の虚構
最強の捜査機関「東京地検特捜部」が2度も不起訴にせざるを得なかった小沢の政治資金規正法違反。これに対し、クジで選ばれた検察審査会の11人の素人が昨年4月と9月、「起訴相当」の議決をしたために今回の強制起訴となるのだが、その被疑事実はこんな内容だった。
〈小沢氏の資金管理団体「陸山会」は04年10月に東京・世田谷区の土地を買ったのに、04年の収支報告書に資産として記載せず、05年の報告書で05年1月に取得したと「虚偽記入」した〉
期日を3カ月ズラしたことが、政治資金規正法違反の虚偽記載にあたるというわけだ。これが小沢疑惑の唯一の「犯罪容疑」にされている。たった3カ月の「期ズレ」ぐらいで日本中が「政治とカネだ」と大騒ぎさせられているわけだが、実はこの期ズレ問題こそ最大の虚構なのである。
ちょっと専門的になるが、上の写真を見てほしい。問題にされている世田谷区深沢の土地の不動産登記簿である。一番下の「所有権移転」の期日は平成17年(05年)1月7日になっている。その上の所有権仮登記が平成16年10月29日だ。不動産売買で、仮登記と登記完了の時期がズレるなんて、よくあること。しかも、これが資金管理団体「陸山会」がからむ売買だから、余計にややこしくなった。
●あくまで正当な法律行為
「小沢氏が世田谷の土地に最初に関わるのは、不動産業者と売買予約を結んだ04年10月5日です。この土地に目を付けた理由について、小沢氏は昨年1月の会見で『秘書の数も増え、妻帯者も増えた。事務所兼用の住居を提供したいと思っていたところ、本件土地を見つけて購入することになった』と説明しています」(事情通)
小沢の秘書は「軍団」とも呼ばれ、選挙時は各地に派遣されて候補者を四六時中、補佐する。小沢ほど大人数の秘書を抱える政治家はいない。その秘書の住居として「賃貸よりも購入の方がコストが安い」と考えるのは政治団体の代表者として当然だ。
しかし、政治団体は「権利能力なき社団」のため、「陸山会」では登記できない。実印が作れないためだ。そこで「陸山会」代表者である小沢個人が10月29日に「所有権移転請求権」を仮登記しているのだ。
「重大なポイントがここにあります。東京第5検察審の議決書では、この10月時点を『陸山会が土地を取得した』とみているのですが、それが違うのです。大きな認識不足なのです。あくまで小沢氏個人が『権利者』になったにすぎず、まだ陸山会のものになっていない。登記簿の記載通り、実際の所有権移転は翌年の1月7日に行われ、ここで所有権が小沢氏に移り、そこで小沢氏と陸山会の間で“使用権に関する確認書”が交わされた。かなり複雑ですが、ここで初めて問題の土地は陸山会の資産となったわけです。そのため、陸山会の政治資金報告書に資産計上されたのが05年となったのは何も問題がない。虚偽記載でなく、正しい記載なのです。むしろ、まだ陸山会の資産になっていない04年の報告書に記載した場合の方が違法なのです」(司法ジャーナリスト)
小沢本人や陸山会事務局は、こうした経過を報道陣に説明してきた。しかし、複雑ゆえに正しく理解されない。まして小沢のように秘書たちの住居用に土地を買うケースはマレだから、同僚議員たちさえも理解できない。それが誤報と疑惑を膨らませてしまったのである。
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集中連載【国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構(2)】超複雑だが、グルグル回った土地取引4億円の流れに不正はない
日刊ゲンダイ2011年1月20日
東京地検特捜部が不起訴にした理由もそこにある
「小沢氏団体、04年報告書記載に虚偽 土地購入計上せず」――。小沢「土地取引」疑惑の発端は、09年10月15日付の読売新聞朝刊だった。
小沢の資金管理団体「陸山会」が04年に世田谷の土地購入をした4億円を政治資金収支報告書に書かなかったという内容で、以降、この4億円の出どころをめぐってテレビ・新聞では「水谷建設からの裏金」「ゼネコンの献金」などという疑惑報道があふれたのである。
東京第5検察審査会の審査員もこれに引っ張られた。「4億円の原資を隠蔽するために、小沢氏は執拗な偽装工作をしている」「4億円の出どころや土地取得資金の記載を翌年にずらした」と“認定”。2度の「起訴相当」議決のキメ手になった。
だが、一連の「認識」には大きな間違いがある。04年の土地取引の主体は「陸山会」ではなく、あくまで小沢個人だったことだ。ここをゴチャ混ぜにしてしまうと、何も見えてこない。
「小沢氏は昨年1月の会見で、土地購入費について、当時の経理担当秘書から『かき集めれば何とかなるが、(陸山会の)活動費がなくなる』と相談され、『(過去、複数回にわたって)銀行から引き出し、金庫に保管していたカネを貸し付けた』と説明した。言葉通りの解釈なら、小沢氏はポケットマネーを“立て替えた”ということになる。つまり、土地は小沢個人のカネで買ったわけです。しかも、この04年時点では所有権の移転登記はされていないから、あくまで小沢個人の資産。実印がなく、登記が出来ない政治団体の陸山会の政治資金収支報告書に記載する必要は全くないのです」(事情通)
政治資金収支報告の記載はあくまで政治資金の収支だ。個人のカネで買った資産を書く義務は法律のどこにも書いていない。読売の「認識不足」もここにあるのだ。
すると、大マスコミの記者はこう騒いだ。
「ポケットマネーで土地を買ったのに、なぜ、小沢はすぐに陸山会に4億円を貸し付けたのか」
検察審もここを疑惑視したが、この答えもちょっと考えれば説明がつく。会計のプロの見立てはこうだ。
「陸山会は当初、小沢氏の“立て替え金”をすぐに戻そうと考えていたでしょう。ところが、当時の陸山会は『活動資金がなくなりそう』だったわけだから、おいそれとは大金を動かせない。解散・総選挙がいつあるのか分からず、金庫を空っぽにするわけにはいかない。担保に乏しい政治団体が金融機関から新規借り入れするのは難しく、時間もかかるからです。そこでどうしたか。陸山会の銀行融資枠を広げることだった。小沢氏が金融機関から4億円の融資を受け、陸山会に貸し付けた。陸山会はその4億円を担保に銀行から融資を受け、小沢氏に返したわけです」
注意したいのは、この場合、貸し付けた小沢個人と、融資書類に署名、押印した陸山会代表小沢の“2人の小沢”が登場することになる。この複雑さが話をややこしくさせているのだ。
個人的に“立て替えた”カネなら、その後チャラになれば収支報告書に書く必要はない。融資枠拡大のための4億円の貸付金は04年の報告書に記載されており、04〜07年にかけて陸山会から小沢個人に「返済」されている。つまり、原資の流れも出どころもすべてオープンであり、筋は通っているのだ。東京地検特捜部が小沢本人を聴取し、預金通帳を全部調べながら「不起訴」にせざるを得なかった理由はここにあるのだ。
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集中連載【国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構(3)】問題の「期ズレ」が起きたのは世田谷の土地が「農地」だったからだ
2011年1月21日
よくあるケースで「何が疑惑なの?」とクビをかしげる不動産業界
「(04年に)土地代金を支払っているのに、本登記を翌年(05年)にずらしている」——。
東京第5検察審査会が1回目の議決で「諸工作で、マスコミ等に騒がれないための手段と推測される」と判断した「期ズレ」はなぜ起きたのか。
繰り返し言うが、04年10月時点で世田谷の土地を買ったのは、あくまで小沢個人。資金管理団体「陸山会」の資産ではなかったから、その政治資金収支報告書に記載する必要はない。しかも、10月時点では所有権移転請求権を「仮登記」しただけである。
ただ、この段階で「仮登記」といった面倒な手続きを取らず、すぐに所有権移転を「本登記」し、「陸山会」と“使用権に関する確認書”を取り交わしていれば「期ズレ」問題は起きなかった。法務局に何度も足を運んでムダな登記手数料を払う必要もなかっただろう。なぜ、あえて「仮登記」にしたのか。
「不動産登記簿の『地目』がポイントです。小沢氏が買った土地は当時、『畑』でした。農地売買は農地法に基づく手続きが必要で、地方都市などでは地元の農業委員会の許可を得るのに数カ月かかることも珍しくありません。許可が出るまでの間、『所有権』を公的に主張できず、『仮登記』という手段が取られるケースが多いのです。小沢さんの政治団体が買った世田谷区深沢8丁目の土地は『宅地化農地』のため、当然、世田谷区農業委員会の許可が必要です。届け出をすれば、普通は2週間程度で許可が出ますが、1カ月以上かかる場合もあります」(不動産業界関係者)
小沢が昨年1月の会見で説明していたように、当時は秘書の「事務所兼住宅」を探していた頃。たまたま見つけた土地が「農地」であり、その土地を一刻も早く押さえようと「仮登記」したと考えれば説明がつく。世田谷区の別の不動産業者はこう語った。
「仮登記という、普通はやらないことを小沢さんがやったのは、農転(農地転用)の手続きがあったからと考えるのが妥当です。登記簿を見ると、小沢さんは04年10月5日に売買予約をしている。つまり問題の土地を買う契約をした。で、10月29日に仮登記をしている。恐らく、契約をしてカネも全額支払おうとしたが、農転の手続きが終わっていなかったから、仕方なく仮登記をしたのでしょう。こういうケースはいくらでもあるし、問題の土地の登記簿には何ら問題点はない。どの業者に聞いても、そう言いますよ」
世田谷の農業委員会を直撃したが、「古いことなので、いつ許可を出したか分からない」とのことだった。小沢事務所は、裁判に関わることなのでいつ農業委員会から許可が下りたかは明かしていない。しかし、許可に手間取り、さらに暮れの12月に入り、小沢事務所が忙しくなり、最終的な売買契約完了が年をまたぎ、翌年1月7日になったとしても、特別不自然なことではないのだ。要するに、「期ズレ」の疑惑は、どうでもいいささいな、とってつけた疑惑なのだ。
読売新聞はじめ大手マスコミや検察が、それでもこの土地売買にこだわったのは、購入資金4億円の中に水谷建設からの裏金がまざっていたと見立てたからである。だが、その見立てもすべて崩れている。
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集中連載【国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構(4)】「1億円ウラ献金」を証言した水谷建設元会長のいかがわしさ
日刊現代2011年1月27日
福島県前知事の収賄事件も大混乱
小沢事件は、ウラ献金1億円があったかどうかで、事件の性質は百パーセント違ってくる。それこそ有罪か無罪かの問題だ。
検察は、1億円事件があったから「悪質だ」として、虚偽記載容疑で石川知裕衆院議員などを逮捕し、政治を今日まで大混乱させている。
そもそも土地取引をめぐる「期ズレ」の問題はとくに不正がない。もし1億円事件がなかったら、小沢事件はでっち上げであり、小沢抹殺、政権交代潰しの政治的陰謀ということになる。
それだけに、水谷建設からの「1億円ウラ献金事件」は何にもまして重要であり、大マスコミも国会もイの一番に真相を追求しなければいけない問題なのだ。
東京地検特捜部は、水谷建設元会長の証言をもとに、小沢事件を組み立てたが、水谷功元会長(65)の証言は信じていいのか。専門家はそこにクビをかしげる。というのも、当時も脱税で刑務所に服役していたように、水谷元会長はいわくつきの人物なのだ。
福島県の佐藤栄佐久前知事の収賄事件でも、核心の証言をしていた。検察はそれをもとに立件したのだが、裁判の途中で水谷元会長は「自分の裁判(脱税)が進行中だったので、実刑を回避しようと検察から言われるままを証言した」と告白、証言をひっくり返したものだ。最終的に佐藤栄佐久前知事の事件は、実質無罪となっている。
司法に詳しいジャーナリストが言う。
「水谷氏は政界のタニマチといわれるが、単に気前がいいだけでなく、闇社会にも通じ、損得勘定で動く海千山千の人物。さまざまな事件で検察にシッポをつかまれている。検事から、“あっちの事件は目をつむるから、こっちの事件は言う通りにしろ”と言われれば、罪を逃れるために何だって言う。そういう評判ですよ」
そんないい加減な人物の証言をもとに、検察は1億円ヤミ献金事件を組み立てたのだから乱暴だ。大マスコミは、検察のシリ馬にばかり乗っていないで、少しは水谷建設や水谷元会長の正体に迫ったらどうなのか。検察の広報機関でないというのなら、水谷元会長を会見に引っ張りだしたらどうなのか。それがジャーナリズムだろう。
こう言うと、大マスコミは、1億円の授受に関しては、第三者の証言もあるという。検察に教えてもらっているからだ。しかし、その授受現場にいた目撃者たちの証言も輪をかけていい加減なものなのだ。
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◆小沢氏の「政治とカネ」問題は存在しない 2010-09-11
新恭提供:永田町異聞 2010年09月02日
(前段略) 問題の土地は東京都世田谷区深沢8丁目28番地5号の476平方メートルである。この土地の登記簿謄本の記載から次のことが分かる。
小澤一郎氏は、2004年10月5日、所有者である東洋アレックスという不動産会社からこの土地を購入するため、「売買予約」をし、10月29日に「所有権移転請求権仮登記」をしたうえで、翌05年の1月7日に「所有権移転登記」を完了している。
「小澤」は小沢個人のとき。陸山会代表としては「小沢」と使い分けていることに留意願いたい。
なぜ、陸山会が契約しなかったかというと、人格なき社団のため不動産登記ができないからである。
小澤氏は「所有権移転請求権仮登記」をした10月29日に3億4200万円を売主である東洋アレックスに支払った。
小澤一郎名義で所有権移転登記を完了した05年の1月7日、小澤一郎は、小沢一郎を代表とする陸山会との間で下記の確認書を交わした。
「本件不動産は甲(陸山会)が政治活動に使用するため売主より購入するものである。ところが、甲は法律上、人格なき社団であるため、甲の名義で不動産を登記することができない。そこで便宜上、乙(小澤個人)を甲の代表者として明記したうえで、売主との間で不動産売買契約を締結し、また、乙の名義で所有権移転登記申請を行うものとする(登記済み権利書は甲または甲の設定する者が保管する)。しかし、あくまで本物件は甲が甲の資金をもって購入するものであり、乙個人は本件不動産につき、何の権利も有さず、これを甲の指示なく処分し、または担保権の設定をすることはできない。売買代金その他購入に要する費用、ならびに本件不動産の維持に関する費用は甲がこれを負担する。」
この確認書に基づき、同じ1月7日、陸山会は小澤個人が立て替えていた3億4200万円に登記関係の諸費用を加えた3億4264万円を小澤個人に支払った。
小澤氏はあらかじめ、陸山会の資金が土地購入により減少することを見越し、04年10月29日に小澤個人が3億4200万円を売主に支払うと同時に、4億円の銀行融資を受け、そのまま陸山会に転貸した。
陸山会は即日、その資金を2億円の定期預金2本に組んだ。
陸山会は定期預金を05年、06年と2億円ずつ解約して小澤個人に返済した。これは収支報告書で確認できる。小澤氏は07年に4億円を銀行に返済した。
この間、陸山会の収支にかかわる資金の動きは、04年10月29日に小澤個人から転貸された銀行融資4億円、05年1月7日に小澤個人へ支払った土地取得代金など3億4264万円、05年、06年に小澤個人に返済した2億円ずつ計4億円である。
これらはいずれも各年の収支報告書にもれなく記載されており、虚偽記載はどこにも見当たらない。
検察は04年10月29日に陸山会が土地代金3億4264万円を支払ったのに不記載としたが、これは前述したとおり、小澤個人が3億4200万円を支払ったものである。陸山会の報告書に記載されたとしたら、それこそ虚偽記載にあたる。
05年1月7日に陸山会が、小澤氏の立て替えた3億4200万円に登記関連費用を加えた3億4264万円を小澤個人に支払った時点で、報告書に記載しており、この処理こそ論理的、合理的である。
小沢氏を起訴相当とした東京第五検察審査会の示した「容疑内容」は以下のようなものだった。
「04年分の陸山会収支報告書に、土地代金の支払いや土地を記載せず、05年分の収支報告書に、土地代金分を含む約4億1500万円を事務所費として支出し、土地を05年1月7日に取得したと虚偽記入した」
陸山会が土地代金を小澤個人に支払って土地を取得したのは05年1月7日であるから、小澤個人と陸山会の確認書に法的問題がない限り、虚偽記入という検察審査会の判断は事実誤認といわざるをえない。
ただここで小澤氏が04年10月5日に売買予約をし、10月29日に「所有権移転請求権仮登記」をした段階、つまりまだ本登記に至らない時点で、土地代金全額を支払っているのはなぜかという疑問を抱く読者もいるだろう。
これについて、Dさんは次のように解説する。
「おそらく売主が『全額現金をいただけるなら、登記を来年の1月1日以降にして、来年分の固定資産税を当方で負担します』と言ったのではないかと推測します。税法によれば、1月1日の所有者がその年の固定資産税を負担することになっているからです。そしてこのような『操作』は、不動産取引においてはきわめて常識的で日常的なことです」
さらに、こういう疑問も湧くだろう。なぜ陸山会なり、小沢氏はこうしたことを説明しないのか。Dさんの推測を参考に紹介しておく。
「1月7日の本登記までの実務は、小沢氏側の、たとえば石川氏であるとか、あるいは出入りの司法書士などではなく、すべてプロである東洋アレックス側で行ったものと推測します。石川氏や大久保氏は当時の記憶脳や思考脳が混乱して、検察の手玉に取られたのではないかと思われます。1月7日といえば、言ってみれば御用始めの時期であり、1月1日の所有者が固定資産税を負担するということを念頭において進めた実務の結果としては、大いにありうる日付です」
なかなかの推理ではないか。判断は読者にお任せしたい。
いずれにしても、ここで強調したいのは、筆者が確認した限りでは、陸山会に収支報告書の記載上の不備が見い出せないということである。
そして、不思議なのは、登記簿謄本など関係資料のチェックは取材のイロハであるにもかかわらず、なぜマスメディアは前述したような正確な事実関係を無視して、検察の発表なりリークなりを鵜呑みにした報道を続けたのかということだ。
もし、公的な資料に記載された事実経過を知りながら、あえてそれを無視した報道を繰り返してきたとすれば、国家、国民の利益を損ねる大いなる犯罪といわねばならない。
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◆大林宏検事総長「小沢氏を有罪とする証拠はない」/検察審に知ってほしい小沢土地取引の真実
永田町異聞2010年10月01日(金) 検察審に知ってほしい小沢土地取引の真実
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September 26, 2011, 8:16 pm
〈来栖の独白2011/09/28Tue.〉
司法は、危ういところに差し掛かっている。換言するなら、われわれ市民が、危うい領域に踏み込んだ。
昨日の判決文を読んでみて感じたことは、裁判所は従来の調書主義・証拠主義を転換し、裁判官の「印象」「推認」で黒白を決するようになったな、ということだ。
6月、地裁は被告らの供述調書の検察側証拠請求を大幅に斥けた。大阪地裁特捜部の証拠改竄事件で、供述調書の信用性が揺らぎ、取り調べのあり方に問題が投げかけられたからだ。
取り調べに誘導や脅しは、勿論あってはならない。「全面」可視化は必要だ。
しかし、こうなってみると---検察官の挙証責任(推定無罪)を放棄されてみると---、被疑者の声(事件発覚直後)を聞く貴重な場も失われたことに、私は気づく。
勝田事件の場合だが、彼は人間味ある山崎刑事ら捜査官に心を許し、事件は無論のこと、自己の生い立ちから身辺のこと、心の機微まですべてを聞いてもらおうと望んだ。「僕は、ほかにも人を殺しています」と取り乱して叫ぶ勝田の心を、最初は思いもかけない告白に驚きながらも優しく慰撫してくれたのは刑事たちだった。
ほかの事件においても、そういった、刑事と被疑者の、(こういってはへんに聞こえるかもしれないが)人間的な交わりの場があったのではないか。そういうところから、被疑者は自己の罪に気づいてもゆくのだろう。
そのような捜査当局なら、昨日の東京地裁判決を読めば、「やってられない」と感じるのではないだろうか。
裁判所は、調書主義を捨てた。裁判員裁判とも相まって、これからは法廷が益々「印象(感情)」「憶測」の支配する場となっていくだろう。私たちは、まず身だしなみにも気をつけなくてはいけない♪ 「怪しい」と思われて身柄を引っ張られたら最後、言い訳は通用しない。すべて「感情」が支配するのだから。そして、裁判所のポチであるメディアは、裁判所の言うとおりに書く。
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陸山会事件:元秘書3人に有罪 知事、小沢元代表擁護 批判強める県議会野党 /岩手
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、東京地裁が26日、元秘書3人に政治資金規正法違反(虚偽記載)で有罪判決を下したことを受け、県内では関係者から擁護と批判の声が上がった。
民主党籍を持つ達増拓也知事は県庁で記者団の取材に応じ、今回の判決について「無罪になると思っていたので驚いた。客観的事実に基づいて(審理されれば)有罪にはならないケースと思っている」と述べた。民主党県連の佐々木順一幹事長も「(元秘書の)控訴審での無罪を信じて県連としての活動を行っていきたい」と話した。
小沢元代表は、元秘書と同じ事件で強制起訴され、10月6日に初公判を迎える。達増知事は「政治の中で非常に重要な役割を果たしてきた人を巡る裁判で、司法関係者はしっかりした根拠に基づいて事実関係を認定してほしい」と擁護した。
一方、県議会の野党会派は批判を強める。自民党県連の千葉伝幹事長は「県民の小沢元代表に向ける目は厳しくなった」と話し、地域政党いわての飯沢匡代表も「国民の政治不信を強める結果になった」と批判した。
小沢元代表の地元後援会は、平静を装いながらも動揺の様子は隠せなかった。ある後援会関係者は「裁判所が(共謀を認めていた)被告の供述調書を却下したので、(無罪を)期待したのだが。厳しい判決だ」と戸惑いの表情を浮かべた。そのうえで、「我々は小沢先生を信じている。(小沢元代表の)公判に影響が出るかもしれないが、ずっと支えていくつもりだ」と話した。【宮崎隆、湯浅聖一】毎日新聞 2011年9月27日 地方版
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【佐藤優の眼光紙背】石川知裕衆議院議員に対する第一審有罪判決について
2011年09月27日08時30分
佐藤優の眼光紙背:第117回
9月26日、東京地方裁判所は、小沢一郎・元民主党代表の政治資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で起訴された元秘書・石川知裕氏(衆議院議員)ら3人に執行猶予つきの有罪判決を言い渡した。土地取引事件で起訴された石川氏が禁錮2年執行猶予3年(求刑・禁錮2年)、後任の元事務担当秘書・池田光智氏(34)が禁錮1年執行猶予3年(求刑・禁錮1年)。会計責任者として、西松建設の違法献金事件でも起訴された元秘書・大久保隆規氏(50)に関しては、土地取引事件の一部は無罪としたうえで、禁錮3年執行猶予5年(求刑・禁錮3年6カ月)という判決が言い渡された。
今回の判決は、検察の完全な勝利だ。筆者は、この裁判を「誰が日本国家を支配するか」という問題を巡る政治エリート内部の権力闘争と見ている。もっともこの権力闘争に加わっている個々のプレイヤーは自らが果たしている社会的、歴史的役割を自覚していない。検察庁は「国家は資格試験で合格した偏差値エリートが支配するべきである」と考える官僚階級の集合的無意識を体現している。これに対して、「小沢一郎」という記号が、民意によって代表された政治家を代表している。ここで、実際に小沢一郎氏が民意を体現しているかどうかは重要でない。官僚から見れば、国民は無知蒙昧な有象無象だ。この有象無象から選ばれた国会議員は無知蒙昧のエキスのようなものだ。資本主義社会において、カネと権力は代替可能な関係にある。カネの力で無知蒙昧な有象無象の支持を取り付け、国家を支配しようとする「小沢一郎的なるもの」を排除しないと、日本が崩壊するという官僚階級の危機意識から、この権力闘争は始まった。
2009年11月、石川氏から筆者に電話がかかってきた。司法記者が石川氏の秘書に「検察が『石川は階段だ』と言っています」と伝えてきたので、その読み解きに関する相談だった。筆者は、「要するに石川さんという階段を通じて、小沢幹事長にからむ事件をつくっていくという思惑なのでしょう。これは僕にとってとても懐かしいメロディです。2002年6月に鈴木宗男衆議院議員が逮捕される過程において、『外務省のラスプーチン』こと私が『階段』として位置づけられていたからです」と答えた(2009年11月24日付眼光紙背「特捜検察と小沢一郎」参照)。
今回の地裁判決は、あれから約2年かけて、官僚階級の利益代表である検察が、きちんと仕事をしたということの証左だ。今回の事件における政治的争点は、政治資金収支報告書不正記入の問題ではなく、石川氏を経由して、5000万円、大久保氏を経由して5000万円の計1億円という巨額の裏金が小沢氏に渡っているか否かという事実の有無だ。この点について、朝日新聞はこう記す。
登石郁朗裁判長は判決理由の中で、小沢事務所がゼネコンと癒着して政治資金を集めていた実態を指摘し、裏金受領の事実まで明確に認めた。
そのうえで判決は、「政治活動や政治資金の流れに対する国民の不信感を増大させた」と述べた。10月6日に初公判がある小沢氏本人も、政治的・道義的な責任を問われそうだ。(9月27日asahi.com)
それならば、検察庁はなぜ1億円の裏金について石川氏、大久保氏、そして小沢氏を起訴して、刑事責任を追及しないのだろうか? どの新聞記事を読んでも合理的説明がない。事実ならば、これこそまさに巨悪ではないか? 巨悪を追いつめることができないほど検察庁の捜査能力は低いのだろうか? それとも裏金で起訴しても公判を維持できる自信がなかったのだろうか?
石川氏は、水谷建設からの5千万円の授受を取り調べ段階から一貫して否認している。筆者には石川氏が嘘をついているとは思えない。本件について、石川氏は著書『悪党 小沢一郎に仕えて』(朝日新聞出版、2011年)で、説明責任を果たしている。検察側主張、裁判所の判断と石川氏の著書を読み比べて、問題を虚心坦懐に評価しなくてはならない。
マスメディアは、本件を政局に発展させたいようだ。読売新聞の記事を引用しておく。
小沢氏の求心力低下避けられず…元秘書有罪判決
民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、石川知裕衆院議員ら元秘書3人が有罪判決を受けたことで、同党内で最大の120人の勢力を誇る小沢グループに動揺が走った。
8月の代表選を機に影響力を強めたと指摘された元代表の求心力低下は避けられない情勢で、復権への道はさらに険しくなったといえそうだ。
小沢グループは当初、東京地裁が違法な取り調べを理由に3人の供述調書の一部を却下したことで、「元秘書3人は無罪になる。小沢氏も無罪を勝ち取り、来年9月の党代表選に小沢氏が出馬する」とのシナリオを描いていたが、こうした楽観論は消えうせた。
同グループの一川防衛相は26日、石川議員らの判決を受け、防衛省内で記者団に「(裁判の行方を)注視していくことに尽きる。特に感想はない」と言葉少なに語った。東京地裁が政治資金収支報告書の虚偽記載だけではなく、西松建設からの違法政治献金を認定したことに関しても、グループからは「元代表の公判に影響する可能性がある。心配だ」と懸念する声も出た。(9月27日読売新聞電子版)
筆者は、司法の判断と政治家に対する評価は、原理的に区別すべきであると考える。国家と社会は、そもそも出自を異にする。司法は国家に属する機能だ。これに対して、社会を代表する国会議員は、国家権力を監視し、抑制することが任務だからだ。
それに無罪推定の原則が、近代国家、近代市民社会の基本的なゲームのルールだ。石川氏は第一審判決を受け入れず、争う意思を表明している。野党が、司法判断を理由に、民主党攻撃の道具に、無罪推定の原則を踏みにじるゲームをすると、そう遠くない将来にブーメランが野党にかえってくる危険がある。
筆者自身の小沢一郎氏に対する評価は二面的だ。政治とカネを巡る検察庁による小沢攻撃は、官僚による国家統制の強化を志向しているので、日本の民主主義に危機をもたらすと考えている。さらに石川氏にかけられた5千万円の裏金疑惑は事実でないと考えている。また特捜検察の石川氏に対する取り調べは、厚生労働官僚の村木厚子氏に対する冤罪事件に通底する無理があると考える。それだから、本件に対し、筆者は小沢氏を擁護する論陣を張っている。
他方、筆者は、民主主義原則の観点から、小沢氏の政治行動に対して強い批判がある。6月2日、野党が提出した内閣不信任案に賛成して、菅直人首相(当時)を打倒しようとしたのは、議会制民主主義の原則を根本から踏みにじる行為だ。民主政治において超えてはいけない線を小沢氏と同氏に同調した民主党議員は踏み越えたと認識している。
さらに民主党代表選挙で、当初、西岡武夫参議院議長を、その後、海江田万里経産相(当時)を擁立した小沢氏の政治手法は、1人1人の国会議員を単なる駒としてしか見なさずに、政治市場で勝利すれば、成果を総取りするという政治的新自由主義だ。こういう政治手法に筆者は強い忌避観を覚える。小沢グループに所属する若手国会議員がよく口にする「親方(小沢氏)が白と言えば、黒い物でも白」というのは、任侠団体の論理であり、冗談でも健全な政治家が口にすべき言葉ではない。自立した政治家を養成することできないような派閥がいくら肥大しても、日本の社会と国家の生き残りに貢献しない。
現下日本の閉塞状況を打破するために、「政治家はダメだ」と国民が諦念をもってはならない。政治家の水準が、国民の平均から著しく乖離することはない。今の政治のだらしなさは、筆者を含む国民1人1人の実態を反映しているのである。われわれ国民も変わり、政治家を変えていく努力をしなくては、われわれの愛する日本が、帝国主義的傾向を強める国際環境の中で生き残ることができなくなる。
小沢問題のような国内政争に割くエネルギーはほどほどにして、日本の国家体制の強化のために政治エリート、特に与党国会議員の力を結集してほしい。(2011年9月27日脱稿)
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◆陸山会・西松建設事件 判決要旨/石川知裕議員、控訴の方針/小沢氏に「政治とカネ」の問題は存在しない 2011-09-26
どこを探しても出てこない虚偽記載の事実 . . . 本文を読む
◆この国を誤らせる最悪の誤判/陸山会事件:小沢元代表の元秘書 衆院議員石川知裕被告らに有罪判決2011-09-26
誤判でも、原判決は重い。メディアも、確定的に報道する . . . 本文を読む
◆陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「チャーチル/復権・・・」裁判闘争を終えた時、小沢一郎はどんな言葉を国民に語りかけるか。2011-09-24
『悪党 小沢一郎に仕えて』?
◆小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19
『悪党 小沢一郎に仕えて』 ?
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【佐藤優の眼光紙背】特捜検察と小沢一郎
2009年11月24日11時00分
佐藤優の眼光紙背:第63回
特捜検察と小沢一郎民主党幹事長の間で、面白いゲームが展開されている。テーマは、「誰が日本国家を支配するか」ということだ。
特捜検察は、資格試験(国家公務員試験、司法試験)などの資格試験に合格した官僚が国家を支配すべきと考えている。明治憲法下の「天皇の官吏」という発想の延長線上の権力観を検察官僚は(恐らく無自覚的に)もっている。
これに対して、小沢氏は、国民の選挙によって選ばれた政治家が国家を支配すべきと考えている。その意味で、小沢氏は、現行憲法の民主主義をより徹底することを考えている。民主主義は最終的に数の多い者の意思が採択される。そうなると8月30日の衆議院議員選挙(総選挙)で圧勝した民主党に権力の実体があるいうことになる。
特捜検察は「きれいな社会」をつくることが自らの使命と考えている。特捜検察から見るならば、元公設第一秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕、起訴されている小沢氏に権力が集中することが、職業的良心として許せない。国家の主人は官僚だと考える検察官僚にとって、民主主義的手続きによって選ばれた政治家であっても、官僚が定めたゲームのルールに反する者はすべて権力の簒奪者である。簒奪者から、権力を取り返すことは正義の闘いだ。こういう発想は昔からある。1936年に二・二六事件を起こした陸軍青年将校たちも、財閥、政党政治家たちが簒奪している権力を取り戻そうと、真面目に考え、命がけで行動した。筆者は、特捜検察を21世紀の青年将校と見ている。検察官僚は、主観的には実に真面目に日本の将来を考えている(そこに少しだけ、出世への野心が含まれている)。
筆者の見立てでは、現在、検察は2つの突破口を考えている。一つは鳩山由紀夫総理の「故人献金」問題だ。もう一つは、小沢氏に関する事件だ。小沢氏に関する事件は、是非とも「サンズイ」(贈収賄などの汚職事件)を考えているのだと思う。
ここに大きな川がある。疑惑情報を流すことで、世論を刺激し、川の水量が上がってくる。いずれ、両岸のどちらかの堤が決壊する。堤が決壊した側の村は洪水で全滅する。現在、「鳩山堤」と「小沢堤」がある。「故人献金」問題で、「鳩山堤」が決壊するかと思ったが、思ったよりも頑強で壊れない。そこで、今度は「小沢堤」の決壊を狙う。そこで、石川知裕衆議院議員(民主党、北海道11区)絡みの疑惑報道が最近たくさん出ているのだと思う。石川氏は、小沢氏の秘書をつとめていた。8月の総選挙では、自民党の中川昭一元財務省(故人)を破って当選した民主党の星である。この人物を叩き潰すことができれば、民主党に与える打撃も大きい。
司法記者は、「検察が『石川は階段だ』と言っています」と筆者に伝えてくる。要するに石川氏という階段を通じて、小沢幹事長にからむ事件をつくっていくという思惑なのだろう。これは筆者にとってとても懐かしいメロディだ。もう7年半前のことだが、2002年6月に鈴木宗男衆議院議員が逮捕される過程において、「外務省のラスプーチン」こと筆者が「階段」として位置づけられていたからだ。
マルクスは、「歴史は繰り返される。一度目は悲劇として。二度目は喜劇として」(『ルイ・ボナパルトの18日』)と述べている。当面は、石川知裕氏を巡る状況が、今後も政局の流れを決めるポイントになると思う。(2009年11月23日脱稿)
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◆拡大する検察権力
安田 戦後の歴史を見ると、ロッキード事件、そしてこれに続く金丸事件で、政府あるいは国会が検察に全く刃向かうことができなくなってしまった。その結果、日本の国家権力で一番強いのが検察になってしまったと思います。そして、その内実は、徹底した保守主義なんですね。
僕なんかは、検察官に将来なっていく人たちと司法研修所で一緒だったわけですけど、そういう人たちの多くは政治的なんですね。検察官という職業に対して、政治的な意味づけをしている。腐敗した政治や行きすぎた経済を正さなければならない。それができるのは自分たちだけだという感覚を持っている人がわりあい多くて、もっと言ってしまえば、実に小児的であったんです。
たとえば、ある特捜部長は、就任の際、検察は額に汗をかく人たちのために働かなければならないという趣旨の発言をするんですね。青年将校なのか、風紀委員なのか、実に幼いんです。こういう青年将校的な発想しか持ち合わせない寄せ集めが、今の検察の実態ではないかと思うんです。
しかもそれがすごく大きな権力を持っているものですから、これは警察と一体となって行っているのですが、対処療法的に次々と治安立法を作り上げていく、たとえばオウム以降、破防法がだめだったら即、団体規制法を作る。あるいはサリン防止法を作る。あるいはその後に少年法を変えていく、内閣に犯罪防止閣僚会議というようなものを作って、刑罰を1、5倍に重刑化して、刑法全体の底上げをやるわけですね。
彼らは、社会の実態をほとんど知らない、犯罪の原因も知らない、あるいは相対的な価値観や複眼的な視点もない、というのが正しいんでしょうけど、どんどん風紀委員的に対応するんですね。その最たるものが、1997年の死刑事件に関係する連続五件の上告だったと思うんです。あのときに最高検の幹部が談話を発表して、裁判所は腰抜けだということを言うわけです。つまりこのままでいけば、死刑判決を出せる勇気のある裁判官はいなくなると。彼らを鍛え直すために上告をしたというわけです。ところが死刑判決があの時期に減ってきたというのは、社会全体のマインドだったんですね。しかし、そういうものを理解する能力がなくて、彼らには腰抜けと映ったわけです。
他方、検察は、被害者感情を利用し、それに乗っかって、重罰化を進めてきたんですね。例えば、光事件ですと、検察は少年を死刑にすることを被害者遺族に誓い、そのために共同戦線を張り、1、2審とも無期であったのに、死刑を求めて異例の上告をしたわけでして、検察官そのものが公的な立場から私的なものに転換してしまった。私的というのは個人的という意味よりも、公の大きなことを忘れてしまって些末な価値観の中にしか存在しなくなった、という意味で申し上げているのですが。
もう一つは、検察は社会的な批判に弱い、言い換えると、社会に迎合して非難をかわすわけです。これは、厳罰化のもう一つの側面だと思います。
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September 27, 2011, 2:13 am
【これまでとこれからの「小沢一郎」の話をしよう】石川議員独占インタビュー
日刊ゲンダイ2011年9月27日
「こんなウソだらけの判決は絶対に受け入れられない」
9月26日、陸山会事件の判決が言い渡されました。無罪を信じていましたが、結果は厳しいものでした。
「被告人・石川知裕を禁錮2年に処する。この裁判が確定した日から3年間、刑の執行を猶予する」――。
主文を聞いた瞬間は愕然、茫然自失です。数日前から報道では厳しい観測が流されていたので、ある程度は覚悟もしていました。
でも、やはり驚きと脱力感で頭がクラクラしましたね。拘置所で田代検事に言われた「事実と裁判の結果は違う」という言葉の重さを噛みしめています。
ただ、今回の判決は、まさしく司法の危機だと思います。検察が起訴できなかった水谷建設からの裏ガネが、裁判所の独断と偏見で認定されてしまった。
その根拠となったのが、水谷建設の川村元社長の証言。私が彼と会ったことを裏付ける物証は何ひとつないのに、「渡した」という川村元社長の証言だけで、裁判所が「推認」してしまった。本当に私が5000万円を受け取ったというなら、そっちの罪で裁けばいいじゃないですか。
川村元社長に聞いてみたい。どうして、こんなウソをついたのか。ウソで冤罪に陥れて、何とも思わないのか。死ぬ前に、一度でいいから真実を語って欲しい。これが、私の一番の願いです。
ウソだらけの川村元社長の証言を「自然だ」と判断した裁判所の感覚も、私には分かりません。普通、顔も分からない人間に、5000万円もの大金を渡しますか?裁判官は、あまりに世間知らずですよ。社会経験がなく、閉鎖的な世界にいると、そうなってしまうのでしょうか。
判決後、検察官とも挨拶を交わしたのですが、彼らはニヤついていて、やけにうれしそうでしたね。
私の裁判の結果について、まだ小沢氏と話をしていないし、何も報告していません。判決後、報道陣から小沢氏のことを聞かれて、内心では「今ごろ、囲碁でも打っているんじゃないかなぁ」と思っていました。小沢氏は、こういう重大な局面で、囲碁を打ちながら待つことが多いんです。きっと、嫌なことも忘れられるんでしょうね。実際は、夕方から「チュリス赤坂」の事務所で、弁護士資格を持つ階猛議員や弁護団の先生らと協議をしていたみたいですが。
10月6日からは、小沢氏自身の裁判が始まります。私も証人として出廷することになり、精神的にキツいですが、控訴して闘っていきます。小沢氏にも、必ず嫌疑をハネ返して欲しいですね。
地元でも判決の反響は大きくて、事務所の電話が鳴りっぱなしだったそうです。午後6時の時点で、すべて激励の電話だったと聞き、ありがたくて涙が出ました。元外務省主任分析官の佐藤優氏からも励ましの電話をもらいました。みなさんに支えられていると実感し、「これから闘っていくんだ」と闘志を新たにしています。
こんなウソだらけの判決は、到底受け入れられないし、絶対に許しちゃいけない。今回のようなケースがまかり通れば、狙い撃ちされた政治家はひとたまりもないからです。政界全体のためにも、ここで私が踏ん張るしかありません。
▽いしかわ・ともひろ 1973年生まれ。早稲田大学卒業後、小沢一郎氏の秘書を経て、07年から衆議院議員。陸山会事件で起訴され、民主党を離党。今年7月に出版した「悪党 小沢一郎に仕えて」(朝日新聞出版)は5万部のベストセラーになっている。メルマガも好評配信中。
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陸山会事件判決、小沢事務所の説明一蹴
石川議員「事実ない」 陸山会事件判決に
日本経済新聞2011/9/27 1:02
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京地裁は26日、衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人全員に有罪を言い渡した。小沢事務所の意向を「天の声」と指摘して建設業者との癒着という“背景事情”まで幅広く認定した判決に被告側は怒りを隠さず、一方の検察側は胸をなで下ろした。政治とカネを巡り繰り広げられた法廷での攻防。次の舞台となる小沢元代表の初公判は来月6日に迫る。
「事実でないことを基に判決が下された」。禁錮2年、執行猶予3年の判決を受けた石川議員は26日夕、東京・永田町の衆院第1議員会館で記者会見し、憤りをあらわにした。
2度の休廷を挟み4時間近くに及んだ判決公判直後で、表情には疲れもにじむ。だが判決で認定された水谷建設からの裏献金について問われると「大変驚いている。裁判所は(水谷建設側の)一方的な供述を認めてしまっており、司法の危機だ」とまくし立てた。
取り調べの際、検事から「事実と裁判の結果は違う」と告げられたといい、「検察の主張は到底受け入れられない」と強調。今後も政治活動を続けることに「ためらいはない」と言い切った。
同席した主任弁護人の木下貴司弁護士も「検察側が主張せず、証拠もない事実を裁判所が独自に認定している。検察の行き過ぎた捜査を許してきたのが今回のような判決だ」と批判した。
大久保隆規元秘書(50)と池田光智元秘書(34)の弁護団も「承服できない」などとするコメントを出した。
元秘書側はこの日の判決の言い渡し中も、納得のいかない表情を繰り返し浮かべた。
東京地裁で最も大きい104号法廷で午後1時半に始まった判決公判。冒頭、登石郁朗裁判長が有罪を宣告すると、3被告は法壇を前に立ち尽くした。裁判長に促されて着席した大久保元秘書は顔をこわばらせて前方を凝視。石川議員は深く腰掛けて目を閉じ、池田元秘書はやや視線を落として、判決理由の朗読に聞き入った。
「小沢事務所は談合で決定的影響力があった」「隠蔽工作が強く推認される」。検察側主張に沿った認定が次々と読み上げられ、大久保元秘書がたびたび顔をしかめる。水谷建設側からの裏献金を認めたくだりでは「違う」とでも言いたげに何度も首を振った。弁護団も首をかしげたり、時折苦笑したりと不満な様子を隠そうとしなかった。
一方、公判途中で多数の供述調書を却下されながら、判決では主張が全面的に認められた検察側。判決後、ある幹部は「妥当な判決、適正な判断だ」と指摘した。
裁判所が調書を大量に却下するなど「注目されるポイントも生まれたが、もともとそれほど騒がれるたぐいの事件ではない。政治資金規正法違反だから当時の秘書を起訴しただけ」と、冷静な受け止めを強調した。
別の幹部は「取り調べのあり方の問題が注目されがちだが、実際の裁判は証拠の積み重ねで立証している。主張が認められて正直、ほっとしている」と安堵の表情。八木宏幸・東京地検次席検事は「動機を含め、当方の主張がほぼ認められた」とのコメントを出した。
【判決骨子】
・岩手県などの公共工事の談合で小沢事務所の意向は決定的影響力を持ち、「天の声」と受け止められていた
小沢事務所側は、中堅ゼネコン「水谷建設」から工事受注に絡む「裏献金」として計1億円を受領した
・石川知裕衆院議員らは、小沢一郎元代表からの借入金4億円の原資などが追及されるのを恐れ、隠蔽しようと故意に虚偽記入した
・大久保隆規・元公設第1秘書は借入金隠蔽の認識を石川議員らと共有していたとみるのが自然で、共謀が認められる(ただし2007年分の一部は共謀は成立しない)
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◆陸山会・西松建設事件判決に見る危うさ 調書主義を転換、裁判官の印象・推認で黒白を決するようになった2011-09-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
〈来栖の独白2011/09/28Tue.〉
司法は、危ういところに差し掛かっている。換言するなら、われわれ市民が、危うい領域に踏み込んだ。
昨日の判決文を読んでみて感じたことは、裁判所は従来の調書主義・証拠主義を転換し、裁判官の「印象」「推認」で黒白を決するようになったな、ということだ。
6月、地裁は被告らの供述調書の検察側証拠請求を大幅に斥けた。大阪地裁特捜部の証拠改竄事件で、供述調書の信用性が揺らぎ、取り調べのあり方に問題が投げかけられたからだ。
取り調べに誘導や脅しは、勿論あってはならない。「全面」可視化は必要だ。
しかし、こうなってみると---検察官の挙証責任(推定無罪)を放棄されてみると---、被疑者の声(事件発覚直後)を聞く貴重な場も失われたことに、私は気づく。
勝田事件の場合だが、彼は人間味ある山崎刑事ら捜査官に心を許し、事件は無論のこと、自己の生い立ちから身辺のこと、心の機微まですべてを聞いてもらおうと望んだ。「僕は、ほかにも人を殺しています」と取り乱して叫ぶ勝田の心を、最初は思いもかけない告白に驚きながらも優しく慰撫してくれたのは刑事たちだった。
ほかの事件においても、そういった、刑事と被疑者の、(こういってはへんに聞こえるかもしれないが)人間的な交わりの場があったのではないか。そういうところから、被疑者は自己の罪に気づいてもゆくのだろう。
そのような捜査当局なら、昨日の東京地裁判決を読めば、「やってられない」と感じるのではないだろうか。
裁判所は、調書主義を捨てた。裁判員裁判とも相まって、これからは法廷が益々「印象(感情)」「憶測」の支配する場となっていくだろう。私たちは、まず身だしなみにも気をつけなくてはいけない♪ 「怪しい」と思われて身柄を引っ張られたら最後、言い訳は通用しない。すべて「感情」が支配するのだから。そして、裁判所のポチであるメディアは、裁判所の言うとおりに書く。
....
陸山会事件:元秘書3人に有罪 知事、小沢元代表擁護 批判強める県議会野党 /岩手
小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、東京地裁が26日、元秘書3人に政治資金規正法違反(虚偽記載)で有罪判決を下したことを受け、県内では関係者から擁護と批判の声が上がった。
民主党籍を持つ達増拓也知事は県庁で記者団の取材に応じ、今回の判決について「無罪になると思っていたので驚いた。客観的事実に基づいて(審理されれば)有罪にはならないケースと思っている」と述べた。民主党県連の佐々木順一幹事長も「(元秘書の)控訴審での無罪を信じて県連としての活動を行っていきたい」と話した。
小沢元代表は、元秘書と同じ事件で強制起訴され、10月6日に初公判を迎える。達増知事は「政治の中で非常に重要な役割を果たしてきた人を巡る裁判で、司法関係者はしっかりした根拠に基づいて事実関係を認定してほしい」と擁護した。
一方、県議会の野党会派は批判を強める。自民党県連の千葉伝幹事長は「県民の小沢元代表に向ける目は厳しくなった」と話し、地域政党いわての飯沢匡代表も「国民の政治不信を強める結果になった」と批判した。
小沢元代表の地元後援会は、平静を装いながらも動揺の様子は隠せなかった。ある後援会関係者は「裁判所が(共謀を認めていた)被告の供述調書を却下したので、(無罪を)期待したのだが。厳しい判決だ」と戸惑いの表情を浮かべた。そのうえで、「我々は小沢先生を信じている。(小沢元代表の)公判に影響が出るかもしれないが、ずっと支えていくつもりだ」と話した。【宮崎隆、湯浅聖一】毎日新聞 2011年9月27日 地方版
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◆「陸山会事件」 水谷建設川村尚元社長「小沢氏側へ1億円」証言の背後にある事情2011-04-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
「小沢氏側が1億円要求」=2回に分け提供と証言−水谷建設元社長・陸山会公判
小沢一郎民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金規正法違反罪に問われた衆院議員石川知裕被告(37)ら元秘書3人の公判が27日、東京地裁(登石郁朗裁判長)であり、中堅ゼネコン「水谷建設」の川村尚・元社長(53)の証人尋問が行われた。元社長は「工事受注の見返りに元秘書から1億円の資金提供を要求され、2回に分けて支払った」と証言した。
検察側の質問に対する川村元社長の証言によると、元社長は2003年11月、協力会社社長の紹介で、議員会館の小沢事務所で元公設第1秘書大久保隆規被告(49)と会い、胆沢ダム(岩手県奥州市)建設工事の下請け受注を依頼。大久保被告から「同業者より遅い」と言われた。
同年の大みそかには、大久保被告の自宅を訪れ、現金100万円を渡し、その後料亭で4〜5回接待したという。
04年9月に、議員会館で大久保元秘書から2回に分けて計1億円を提供するよう要求され、「分かりました」と応じた。同年10月15日に5000万円、05年4月中旬に5000万円を小沢氏側に提供したという。(時事通信2011/04/27-11:28)
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「小沢事件」キーマン水谷功氏の揺らぎ、変質2011-03-10
小沢一郎公判"ねじれ"の原因となった「水谷兄弟」の骨肉の争い 「渡せと指示したが渡したかはわからない」と証言が揺れ始めた
現代ビジネス 伊藤博敏「ニュースの深層」2011年03月10日(木)
特捜部は、大久保隆規秘書を09年3月に逮捕、さらに「小沢逮捕」に駆け上がろうと、当時、脱税事件で三重県の津刑務所に服役していた水谷氏のもとに日参、「小沢事務所に裏ガネ1億円を渡すように指示した」という証言を引き出した。
09年10月以降、捜査を再開、10年1月の石川逮捕に至ったのは、功氏の「裏ガネ証言」があったからである
「四面楚歌」で孤立する水谷功氏
ところが、今年に入って「秘書公判」が始まると、「水谷証言」が揺らぎだした。
「5000万円を2回、持って行くように指示したのは事実だが、それが確実に相手のところに渡ったかどうかは、わからんわなぁ」と、あいまいな発言を繰り返すようになった。しかも、検察側ではなく弁護側(小沢秘書サイド)証人となったのである。
もともと、ぶれる人ではあった。佐藤栄佐久・前福島県知事の汚職事件では、「裏ガネを渡した」と証言、佐藤逮捕の決め手を検察に提供しながら、公判になると否認に転じた。 それにしても、大物政治家を権力の座から引きずり下ろすような証言をしながら、なぜ豹変するのか。
水谷氏の知人によれば、「四面楚歌で孤立している功氏は、水谷建設社長を務める兄・紀夫氏とも、裏ガネを運んだ川村(尚)元社長とも対立、独自の道を歩かざるを得ない状況だ」という。
「脱税事件で服役の間に、川村氏は距離を置くようになったし、水谷建設は復帰を許さなかった。『会社の為にやってきたことなのに』と、怒り心頭。現在、愛西市の日起建設というところで再起を図っているが、会社も川村も許すつもりはない」
渡せとはいったが、渡したかどうかは本人じゃないからわからない---。
石川元秘書に5000万円、大久保秘書に5000万円を手渡ししたのは、当時、社長の川村氏である。「本人じゃないからわからない」のは事実だが、あえてそれを口にするあたりに、両者の深い溝がうかがえる。
兄・紀夫氏との関係もそうだ。
昨年9月、水谷氏の知人の女性経営者が、債権譲渡した男性と二人で、水谷建設を相手に「貸金返還請求訴訟」を起こしている。
訴状では、8年前の03年8月、女性経営者は当時、会長だった水谷氏から頼まれて6000万円を融資したものの、現在に至るまで支払いがないので、元金に利息をつけて返還しろ、と訴えている。
すでに、裁判は始まっており、水谷建設の借金だという女性経営者の訴えが正しいのか、当時、代表権のない副社長だった功氏の個人的借金だったと反論する会社側の主張が正しいかを論評する気はない。
興味深いのは、提訴前に水谷氏が「陳述書」を提出、そのなかに「借入に際しては会社経理担当者と協議のうえで行い」、「借用目的は裏ガネ」で、「管理本部長に頼まれたから借り入れた」と、述べていることだ。
「三行半」を叩きつけてきた会社=紀夫社長に対し、過去の精算を、裁判所を通じて迫っていると見ることもできる。
水谷建設元会長と、今も表記されているため、一体と見られがちだが、実は、孤立無援、四面楚歌の状態にある。川村氏とも水谷建設ともケンカ状態。そこに小沢氏サイドが巧みに接近しているのだという。
「日起は小さなサブコンだが、功氏はここで食っていかなくてはならない。でも、事件続きで、みんな怖がって、なかなか完全復帰はできない。そこに小沢氏周辺が、『証言などで協力してくれれば悪いようにはしない』と、メッセージを送っているという話もある。弁護側証人を了解したのは、そんな"秋波"に応えているのでないか」(前述の知人)
日本有数のサブコンのトップとして、ゼネコンの前捌き役として、政界を含む各方面との調整作業を行っていた頃の面影はそこにはない。あるのは、必死の生き残り策に追われ、利用できるものは何でも使おうとする孤独なひとりの経営者の姿である。
だから弱く、でもしたたかに遊泳、それが傍目には"ゆらぎ"と映る。それは事実だがその背景まで考慮しなければ、「小沢事件」のキーマンの変質は理解できない
◆小沢氏強制起訴 水谷元会長告白「1億円裏ガネ=ワケ分かりません。石川、大久保なんて会ったこともない」2011-02-02
◆東京地裁、石川知裕被告弁護団の申請に基づき水谷建設元会長を証人採用2011-02-03
◆陸山会・西松建設事件 判決要旨/石川知裕議員、控訴の方針/小沢氏に「政治とカネ」の問題は存在しない 2011-09-26
どこを探しても出てこない虚偽記載の事実 . . . 本文を読む
◆この国を誤らせる最悪の誤判/陸山会事件:小沢元代表の元秘書 衆院議員石川知裕被告らに有罪判決2011-09-26
誤判でも、原判決は重い。メディアも、確定的に報道する . . . 本文を読む
◆陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「チャーチル/復権・・・」裁判闘争を終えた時、小沢一郎はどんな言葉を国民に語りかけるか。2011-09-24
『悪党 小沢一郎に仕えて』?
◆小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19
『悪党 小沢一郎に仕えて』 ?
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【佐藤優の眼光紙背】石川知裕衆議院議員に対する第一審有罪判決について
2011年09月27日08時30分
佐藤優の眼光紙背:第117回
9月26日、東京地方裁判所は、小沢一郎・元民主党代表の政治資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で起訴された元秘書・石川知裕氏(衆議院議員)ら3人に執行猶予つきの有罪判決を言い渡した。土地取引事件で起訴された石川氏が禁錮2年執行猶予3年(求刑・禁錮2年)、後任の元事務担当秘書・池田光智氏(34)が禁錮1年執行猶予3年(求刑・禁錮1年)。会計責任者として、西松建設の違法献金事件でも起訴された元秘書・大久保隆規氏(50)に関しては、土地取引事件の一部は無罪としたうえで、禁錮3年執行猶予5年(求刑・禁錮3年6カ月)という判決が言い渡された。
今回の判決は、検察の完全な勝利だ。筆者は、この裁判を「誰が日本国家を支配するか」という問題を巡る政治エリート内部の権力闘争と見ている。もっともこの権力闘争に加わっている個々のプレイヤーは自らが果たしている社会的、歴史的役割を自覚していない。検察庁は「国家は資格試験で合格した偏差値エリートが支配するべきである」と考える官僚階級の集合的無意識を体現している。これに対して、「小沢一郎」という記号が、民意によって代表された政治家を代表している。ここで、実際に小沢一郎氏が民意を体現しているかどうかは重要でない。官僚から見れば、国民は無知蒙昧な有象無象だ。この有象無象から選ばれた国会議員は無知蒙昧のエキスのようなものだ。資本主義社会において、カネと権力は代替可能な関係にある。カネの力で無知蒙昧な有象無象の支持を取り付け、国家を支配しようとする「小沢一郎的なるもの」を排除しないと、日本が崩壊するという官僚階級の危機意識から、この権力闘争は始まった。
2009年11月、石川氏から筆者に電話がかかってきた。司法記者が石川氏の秘書に「検察が『石川は階段だ』と言っています」と伝えてきたので、その読み解きに関する相談だった。筆者は、「要するに石川さんという階段を通じて、小沢幹事長にからむ事件をつくっていくという思惑なのでしょう。これは僕にとってとても懐かしいメロディです。2002年6月に鈴木宗男衆議院議員が逮捕される過程において、『外務省のラスプーチン』こと私が『階段』として位置づけられていたからです」と答えた(2009年11月24日付眼光紙背「特捜検察と小沢一郎」参照)。
今回の地裁判決は、あれから約2年かけて、官僚階級の利益代表である検察が、きちんと仕事をしたということの証左だ。今回の事件における政治的争点は、政治資金収支報告書不正記入の問題ではなく、石川氏を経由して、5000万円、大久保氏を経由して5000万円の計1億円という巨額の裏金が小沢氏に渡っているか否かという事実の有無だ。この点について、朝日新聞はこう記す。
登石郁朗裁判長は判決理由の中で、小沢事務所がゼネコンと癒着して政治資金を集めていた実態を指摘し、裏金受領の事実まで明確に認めた。
そのうえで判決は、「政治活動や政治資金の流れに対する国民の不信感を増大させた」と述べた。10月6日に初公判がある小沢氏本人も、政治的・道義的な責任を問われそうだ。(9月27日asahi.com)
それならば、検察庁はなぜ1億円の裏金について石川氏、大久保氏、そして小沢氏を起訴して、刑事責任を追及しないのだろうか? どの新聞記事を読んでも合理的説明がない。事実ならば、これこそまさに巨悪ではないか? 巨悪を追いつめることができないほど検察庁の捜査能力は低いのだろうか? それとも裏金で起訴しても公判を維持できる自信がなかったのだろうか?
石川氏は、水谷建設からの5千万円の授受を取り調べ段階から一貫して否認している。筆者には石川氏が嘘をついているとは思えない。本件について、石川氏は著書『悪党 小沢一郎に仕えて』(朝日新聞出版、2011年)で、説明責任を果たしている。検察側主張、裁判所の判断と石川氏の著書を読み比べて、問題を虚心坦懐に評価しなくてはならない。
マスメディアは、本件を政局に発展させたいようだ。読売新聞の記事を引用しておく。
小沢氏の求心力低下避けられず…元秘書有罪判決
民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、石川知裕衆院議員ら元秘書3人が有罪判決を受けたことで、同党内で最大の120人の勢力を誇る小沢グループに動揺が走った。
8月の代表選を機に影響力を強めたと指摘された元代表の求心力低下は避けられない情勢で、復権への道はさらに険しくなったといえそうだ。
小沢グループは当初、東京地裁が違法な取り調べを理由に3人の供述調書の一部を却下したことで、「元秘書3人は無罪になる。小沢氏も無罪を勝ち取り、来年9月の党代表選に小沢氏が出馬する」とのシナリオを描いていたが、こうした楽観論は消えうせた。
同グループの一川防衛相は26日、石川議員らの判決を受け、防衛省内で記者団に「(裁判の行方を)注視していくことに尽きる。特に感想はない」と言葉少なに語った。東京地裁が政治資金収支報告書の虚偽記載だけではなく、西松建設からの違法政治献金を認定したことに関しても、グループからは「元代表の公判に影響する可能性がある。心配だ」と懸念する声も出た。(9月27日読売新聞電子版)
筆者は、司法の判断と政治家に対する評価は、原理的に区別すべきであると考える。国家と社会は、そもそも出自を異にする。司法は国家に属する機能だ。これに対して、社会を代表する国会議員は、国家権力を監視し、抑制することが任務だからだ。
それに無罪推定の原則が、近代国家、近代市民社会の基本的なゲームのルールだ。石川氏は第一審判決を受け入れず、争う意思を表明している。野党が、司法判断を理由に、民主党攻撃の道具に、無罪推定の原則を踏みにじるゲームをすると、そう遠くない将来にブーメランが野党にかえってくる危険がある。
筆者自身の小沢一郎氏に対する評価は二面的だ。政治とカネを巡る検察庁による小沢攻撃は、官僚による国家統制の強化を志向しているので、日本の民主主義に危機をもたらすと考えている。さらに石川氏にかけられた5千万円の裏金疑惑は事実でないと考えている。また特捜検察の石川氏に対する取り調べは、厚生労働官僚の村木厚子氏に対する冤罪事件に通底する無理があると考える。それだから、本件に対し、筆者は小沢氏を擁護する論陣を張っている。
他方、筆者は、民主主義原則の観点から、小沢氏の政治行動に対して強い批判がある。6月2日、野党が提出した内閣不信任案に賛成して、菅直人首相(当時)を打倒しようとしたのは、議会制民主主義の原則を根本から踏みにじる行為だ。民主政治において超えてはいけない線を小沢氏と同氏に同調した民主党議員は踏み越えたと認識している。
さらに民主党代表選挙で、当初、西岡武夫参議院議長を、その後、海江田万里経産相(当時)を擁立した小沢氏の政治手法は、1人1人の国会議員を単なる駒としてしか見なさずに、政治市場で勝利すれば、成果を総取りするという政治的新自由主義だ。こういう政治手法に筆者は強い忌避観を覚える。小沢グループに所属する若手国会議員がよく口にする「親方(小沢氏)が白と言えば、黒い物でも白」というのは、任侠団体の論理であり、冗談でも健全な政治家が口にすべき言葉ではない。自立した政治家を養成することできないような派閥がいくら肥大しても、日本の社会と国家の生き残りに貢献しない。
現下日本の閉塞状況を打破するために、「政治家はダメだ」と国民が諦念をもってはならない。政治家の水準が、国民の平均から著しく乖離することはない。今の政治のだらしなさは、筆者を含む国民1人1人の実態を反映しているのである。われわれ国民も変わり、政治家を変えていく努力をしなくては、われわれの愛する日本が、帝国主義的傾向を強める国際環境の中で生き残ることができなくなる。
小沢問題のような国内政争に割くエネルギーはほどほどにして、日本の国家体制の強化のために政治エリート、特に与党国会議員の力を結集してほしい。(2011年9月27日脱稿)
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◆小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
『悪党 小沢一郎に仕えて』石川知宏 元小沢一郎秘書・衆議院議員著(朝日新聞出版)
p226〜
石川 ロシアは北方領土、中国は尖閣諸島に目をつけています。歴史からいうと第1次世界大戦後に列強が中国に入り込んでいったように、いま日本が周辺諸国から攻め込まれようとしています。これだけ好き放題にやられてしまっているのは、やはりリーダーの責任でしょうか。
小沢 リーダーのせいではあるけれど、それ以前に日本人自身の問題だな。よく言うように、国民のレベル以上のリーダーは出ねえんだよ。衆愚の中からは衆愚しか生まれない。だから国民のレベルアップをしないとリーダーも育たない。その意味でどうしたらいいのか。そういうことをもう少し日本人は自分で考えなきゃいけないな。
石川 はい。
小沢 いまの震災を例にすると、マスコミを含めてバカみたいに、やれ挙国一致だ、やれいま政権を変えるのはどうだ、ってアホみたいな議論をしている。これは日本人的な議論だ。欧米では違うんだよ。危機だからこそ強力な政権とリーダーを作らなければならないっちゅうのが彼らの考え方だよ。日本人はみんな丸く丸くなろうとする。丸くなって、談合ばかりしていたって解決しねえんだよ。原発事故にしても誰も責任をとらない。誰が責任者なのか、誰が決めているのか。わけがわからない。そこをマスコミが一緒になってもっと仲よくなれって。何を考えているんだよ。
石川 まあ、そうですね。
小沢 マスコミは日本人の悪いところの典型なんだ。国家の危機を経験してきた欧米人は、危機のときだからこそ強いリーダーを選ぶ。第2次大戦前のイギリスはチェンバレンという首相がいて、ヒトラーと妥協して「チェンバレンの平和」と言われたんだな。それが結局はヒトラーの勢力を増大させてしまった。そのときにイギリス人は最も批判の多かったチャーチルを首相に選んで、チェンバレンを降ろした。危機だからこそ変えた。危機じゃなかったらチャーチルは総理にならなかった。発想が違うんだよ、ゆでガエルみたいな日本人とな。 *強調(太字・着色)は来栖
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↧
September 27, 2011, 1:45 pm
根拠なく推測と矛盾だらけの陸山会判決
2011年09月27日(火)永田町異聞
いま、東京地裁、登石郁郎裁判長の判決文要旨を読んでいる。この矛盾に満ちた文章が、この国の司法の場で通用することに唖然とするばかりだ。たとえば、陸山会事件に関するこの記述。
◇04年分収支報告書に「借入先・小沢一郎 4億円、備考・04年10月29日」との記載がある。・・・石川被告は4億円を複数の口座に分散させた後、陸山会の口座に集約しているが、4億円を目立たないようにする工作とみるのが自然だ◇
それが自然だろうか。であるなら、なぜ04年収支報告書に「4億円を小沢氏から借りた」ことを記載するのだろうか。
こういうくだりもある。「これらの事実を総合的に検討すると、石川被告は4億円の収入や、これを原資とした土地取得費用の支出が04年分収支報告書に載ることを回避しようとする強い意志を持って種々の隠ぺい工作をしたことが強く推認される」
不可解な文章ではないか。これに対しても同じ疑問をぶつけたい。ではなぜ、04年収支報告書に小沢氏からの4億円借り入れを記載したのだろうかと。
約3億5000万円の土地代金を支払ったとについても、記載していないわけではない。土地の登記が完了した翌年1月7日に支払ったことが次年度報告書で明らかにされている。
記載したことを無視し、記載しなかったことだけで考えれば、検察の言うような片手落ちの理屈になり、そのストーリーにそって作文した東京地裁の判決文になる。
この事件はつまるところ、記載の仕方がどうあるべきかという、きわめて事務的なルールの問題だ。
そのような案件で強制捜査にまでおよんだことを正当化するために、検察は、小沢氏が陸山会に貸した4億円のなかに裏金が含まれているという、勝手な解釈を論拠の柱に据えた。
判決文要旨にはこうある。「水谷建設社長は胆沢ダム建設工事の受注に絡み、大久保被告の要求に応じて、04年10月に5千万円を石川被告に、05年4月に同額を大久保被告に手渡したと証言したが、ほかの関係者証言や客観的証拠と符合し、信用できる。一切受け取っていないという両被告の供述は信用できない」
それほど東京地裁が水谷建設社長の証言を信用できると断定しているのに、なぜ検察は、1億円の贈収賄事件として立件しなかったのであろうか。当然、確信を持てないから立件できなかったのである。
だいいち、どこの政治家が、ゼネコンから裏金をもらって、そのカネを公的文書に残る表の取引に使うなんて馬鹿なことをするだろうか。裏のものは裏で使うのが自然だ。
東京地裁は、村木冤罪事件で供述調書のほとんどが証拠不採用になった流れを受けて、陸山会事件でも多くの調書の信用性を否定したが、この判決文を見る限り、それは検察ストーリーをそっくり受け入れたという印象を薄める下準備と考えざるを得ない。
法廷での証言などを重視したように見せかけてはいるが、判決文を素直に読めば、その判定になんら根拠や証拠があるわけでもなく、あるのはただ裁判官の「推認」のみであることがわかる。
ここに筆者は、日本の司法の崩壊現象を強く感じる。できることなら「無罪判決」は避けたいという、裁判官の心理がこれほど白日のもとにさらされては、裁判所への国民の信頼は地に堕ちるだろう。
「検事から控訴されない裁判官が高く評価される」という人事上の不文律が従来からこの国の司法界をゆがめてきた。
そういえば、ジャーナリスト、岩上安身氏のインタビューに、元大阪高裁判事、生田暉雄弁護士は、三権分立とは言いながら実態として検察など行政権力に盾突きにくい裁判官の心理状況を次のように語っていた。
「現在、行政権力が肥大化し、議会権力は付け足し、裁判はもっと付け足しになっている。第一、予算規模が違う。法務官僚は検察官が多く、検察権力が幅を利かしている。徳島地裁時代に私はかなり無罪判決を出したが、先輩に『あまり無罪を出すと出世に差し支えるよ』と言われた。無罪を出すということは行政権力に否定的な考えの持ち主とみられる。最高裁自体が行政権力に弱い。予算を握られているからだ。裁判官独立の原則があり、他の権力の介入を許さないタテマエだが、結局は給料や人事で操られている」
検察のみならず、裁判所までが推測や印象にもとずく恣意的な判断をしていることを自ら明らかにしたのが今回の判決といえるだろう。
新 恭 (ツイッターアカウント:aratakyo)
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◆大林宏検事総長「小沢氏を有罪とする証拠はない」/検察審に知ってほしい小沢土地取引の真実2010-10-01 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆“検察の正義”に委ねていいのか? 検察を支配する「悪魔」2010-03-11 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
“検察の正義”に委ねていいのか? 元検事、元司法記者が語る、小沢捜査の裏側
(Business Media 誠 - 03月11日 10:33)
民主党の小沢一郎幹事長をめぐる政治資金規正法違反事件では、各メディアが小沢氏に関する疑惑を報じる中、検察は小沢氏の秘書ら3人を起訴し、小沢氏自身は不起訴とする方針を固めた。検察はなぜ小沢氏への捜査を行い、なぜ不起訴という結論に至ったのか。また、多くのメディアが検察と一体化したかのような報道を行った背景には何があったのか。
共同通信社で司法記者を担当した魚住昭氏と東京地検などで検事を務めた郷原信郎氏は3月8日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見し、検察の“小沢捜査”の背景を語った。【堀内彰宏】
●なぜ小沢捜査は行われたのか
魚住 今の日本は大きな問題を抱えています。それは検察庁という行政機関が巨大な力を持ちすぎて、誰もそれを統御できないということです。その上、検察は組織が腐敗し、かつ捜査能力が極端に低下しています。検察の暴走、腐敗、能力低下の3つが同時進行しているのです。それを如実に示したのが小沢幹事長をめぐる一連の捜査でした。
2009年3月、西松建設関連の政治団体から2100万円の偽装献金を受け取った疑いで、小沢氏の秘書(大久保隆規氏)が政治資金規正法違反の疑いで逮捕されました。これは従来の常識では考えられない出来事でした。過去の摘発例を見ると1億円を超える裏献金を受け取った政治家が立件されたケースはありますが、政治資金収支報告書に記載されているオモテの金で、額が2100万円に過ぎないのに立件するというのは異常なことです。
しかも衆議院選挙を目前にした時期に、検察は従来の立件のハードルをガクンと下げて、野党第1党の党首側近を逮捕しました。当然ながら、「この捜査は不当な政治介入だ」と世論の強い批判を浴びました。一部では、「当時の麻生政権の要請を受けて行われた国策捜査だ」という意見もありましたが、私はそうは思いません。検察はその時々の政権の意のままに動くような組織ではありません。特捜部の検事たちはいつの時代もそうですが、多少無理をしてでも政治家がらみの事件をやって手柄をあげ、マスコミの脚光を浴びて出世の足がかりにしたいのです。
問題は「特捜部の暴走を検察の上層部がなぜ止めなかったか」ということです。私は上層部の判断の背景には「小沢政権ができることに対する忌避感があったのではないか」と疑っています。
小沢氏はもともと検察と仲が良くありません。しかも彼は脱官僚、つまり検察を中軸とする中央官僚機構の解体・再編を目指すと公言している政治家です。「そんな人が首相になったら困る」という上層部の思惑が微妙に作用したのではないか。そうとでも考えなければ理解できない異常な捜査でした。
2009年末から表面化した陸山会の土地購入をめぐる事件は、西松建設の事件で世論の批判を浴びた検察がその失地回復のために行った捜査でした。つまり、検察のやったことを正当化し、「小沢は金に汚い悪質な政治家だ」ということを証明するために行われたものです。
この第2ラウンドの捜査でも検察は敗北しました。大物政治家を2度も被疑者として調べながら、起訴できないというのは、検察にとって戦後最大級の失態です。捜査が失敗した理由は明白です。「小沢氏の当時秘書だった石川知裕衆議院議員に5000万円の闇献金を渡した」という水谷建設(水谷功元会長)側の怪しげな証言を信じ込んだからです。
まんじゅうに例えると、アンコに当たる部分が5000万円の闇献金で、皮に当たる部分が4億円の土地購入の不記載です。皮の部分の4億円の不記載は、煎じ詰めると「土地の購入時期を2〜3カ月ずらして政治資金収支報告書に書いた」という形式犯に過ぎません。5000万円の闇献金がその土地購入費にあてられたというアンコが立証されなければ、スカスカの皮だけのまんじゅうになって食べられたものではありません。
ところが、検察が信じた水谷建設側の供述はうそ話だった。アンコが腐っていたんです。石川議員が否認を貫き通せたのは、まったく身に覚えがない事実だったからです。あらかじめ決めたターゲットを摘発する、つまり「小沢を狙い撃ちする」という捜査の常道に反することをしたから検察は失敗したのです。今回の事件だけでなく、10年あまり前から検察は同じような不純な捜査を繰り返すようになっており、検察の劣化・暴走が目立つようになりました。
●検察の劣化・暴走が目立つようになったワケ
なぜ検察はそうなってしまったのか?
重要なポイントだけを挙げると、1つは検察の裏金問題です。検察は少なくとも1999年まで、年間5億円前後の裏金を組織的に作り、幹部の交際費、遊興費にあててきました。検察はその事実を全面否認したばかりか、2002年にはその裏金作りを内部告発していた三井環という中堅幹部を口封じのために逮捕しました。これは恐ろしい権力犯罪ですが、日本の主要なメディアはきちんと批判しませんでした。検察が最も大事な情報源であるため、その検察の機嫌を損ねて情報がもらえなくなるのを恐れたからです。
これを別の角度から見ると、検察は主要なメディアに対する影響力を保ち、自らの恥部を覆い隠すためにも常に大事件をやり続けなければならない。そういう自転車操業的な体質を身に付けてしまったと言えます。この裏金問題は、検察組織のモラルハザードを深刻化させました。上層部が「自己保身のために何をやってもいいのだ」というお手本を示したのですから当然でしょう。
2つ目の理由は、今も触れた主要な新聞・テレビメディアと検察の癒着関係です。検察の暴走をチェックすべきメディアがその役割をほとんど果たしていません。
3つ目の理由は、裁判所と検察の癒着です。日本では起訴された案件の99%近くが有罪になります。起訴事実を否認して無実を主張すると、1年も2年も身柄を拘束されます。検察の言い分を裁判官がほとんど認めるので、裁判所は検察の暴走をチェックする役割を果たしていません。
つまり、検察をメディアと裁判所が強力にサポートする体制ができあがっているのです。だから検察の力は巨大なのです。法律の上でも検察の幹部人事は国会の承認が必要ではありません。選挙による民意のコントロールも利きません。
一方、日本の政党勢力の方はどうでしょうか。政権与党の民主党は大雑把に言うと、新自由主義者と社会民主主義者、つまり小さな政府論者と大きな政府論者の寄り合い所帯です。そのため、とても壊れやすく、政策の方向性を決めるのが難しい。国民新党や社民党と連立を組んでいるのでなおさらです。
それでも民主党を軸にした連立政権がとりあえず機能しているのは、小沢という求心軸があるからです。彼が内政においては「反小泉構造改革」、つまり社会民主主義的な所得の再分配、それに「脱官僚」、つまり従来の官僚主導政治の改革、外交においては「対米自立路線」、この3つの基本政策を打ち出すことで、民主党左派や社民党、国民新党の支持を取り付け、民主党内の新自由主義者たち、反小沢勢力をおさえこんできました。
ところが、今回の事件で小沢幹事長は自らの金権体質を国民に批判され、深手を負いました。長崎県知事選の敗北(2月21日)も重なって、彼の求心力はかなり弱まったと思います。
●検察中心の刑事司法の仕組み
郷原 私の西松建設事件と陸山会事件についての見方も、今、魚住さんが話したこととほとんど変わりません。検察の能力が極端に低下し、そういう言ってみれば最低レベルの事件しかできなくなっているのに、まったくマスコミなどから批判されないまま、それがまかり通っているというのが現在の状況です。
魚住さんは司法記者として検察を外から見てこられた人ですが、私は23年間検事として仕事をして、検察の中にいました。それだけに今の検察の状況については、驚きというか「絶望を感じるほど問題だ」と思っています。そこで、私の方からは「なぜ検察がこういう状況になってしまったのか」「日本の検察には組織としてどういう特徴があるのか」ということをお話ししたいと思います。
日本の検察は、刑事司法に関して全面的な権限を与えられているところに特徴があります。すべての刑事事件について、検察官は起訴や控訴をする処分権限を持っています。そして、検察官は「犯罪事実が認められる場合でも、あえて起訴をしない」という訴追を猶予する権限も持っています。この2つによって検察は、刑事司法に関して絶対的な権限を持っています。
このような検察中心の刑事司法の仕組みは、殺人や強盗、薬事犯のようなアウトローによる犯罪、社会の周辺部分と言いましょうか、あまり社会生活や経済活動などに影響を及ぼさないような犯罪現象を前提として構築されたと考えていいと思います。
殺人や強盗、薬事犯のような犯罪であれば、「反道徳的」「非倫理的」という社会の評価はもう定着している、あらかじめ決まっているわけですから、検察官は価値判断をする必要がありません。とにかく証拠があれば、起訴をすればいい。その証拠が不十分であれば裁判所が無罪にする、それだけのことです。
ところが、例えばライブドア事件、村上ファンド事件のような経済分野の犯罪現象、今回問題になっているような政治資金規正法違反などの犯罪。こういった違法行為は、案件数としては限りない数、世の中に存在しています。その中からどの事件を選んで処罰の対象にするのかということに関しては、処罰する側、摘発する側の価値判断が求められています。
ですから、そういう社会的、経済的、政治的に大きな影響を及ぼす事件については、検察官はそういう犯罪に対してどういう基準で悪質性や重大性を判断し、どういったものを摘発の対象にしていくのかについて明確な基準をあらかじめ示す、最低限検察の内部では明確にしておく必要があります。
ところがそういった基準が明確にされないまま、一般の殺人や強盗のような事件と同じように、「犯罪がある限り、それを処罰するのは当たり前だ。検察は何をやってもいい」という考え方で、全面的に検察のアクションが容認されてしまうという、そこに最大の問題があります。
●政治資金規正法は何のためにあるのか?
先ほど魚住さんが言われたように、西松建設事件までは1億円以上の裏献金事件、献金自体が隠されたような事件が、政治家の政治資金規制法違反による摘発の対象にされていた。ところが西松建設事件では、それよりもまったくレベルの低い、悪質重大とは到底思えないようなことを摘発の対象にしました。しかも、それが政治的に非常に大きな影響を生じさせました。
陸山会の事件で最終的に検察が起訴した事実というのは、先ほど魚住さんが言った、不動産の取得時期のズレの問題、それとその不動産の取得の際に小沢氏が一時的に立て替えたお金の流れが収支報告書に記載されていなかったという、極めて形式的な問題でしかありません。
政治資金規正法というのは、政治の世界のルールを定める法律です。それが「どのような趣旨・目的で定められているのか」ということを明確にし、「どのようなことを国民に対して開示することが求めているのか」ということをしっかり理解すれば、「どのような行為が悪質重大であるか」「どのような行為が軽微なものか」ということの判断は可能なはずです。
このように日本の社会、そして国民が政治や経済、社会に関する重要な価値判断の部分まで“検察の正義”というところに全面的に委ねてしまっている。魚住さんが先ほど言われたように、これが日本の社会に危機的な状況が発生している根本的な原因になっています。
まず今、必要なことは日本人全体がこの検察の正義というマインドコントロールから脱することです。人が集まってできている組織なので、そこでは必ず間違いが起きる可能性があります。そして、とりわけ検察の場合は、一度判断したことを後で訂正することが難しいわけです。大きな影響を生じさせてしまうと、「それが間違いだった」ということを後で言いにくい。その分、一度犯した間違いがもっと大きな間違いになってしまう可能性があります。そういう検察の間違いが社会にとって致命的な間違いにならないように、検察にも一定の説明責任、そしてその判断の根拠に関する資料の開示責任というものを常にきちんと負わせていく必要があります。
ところが先ほど言いましたように、日本の刑事司法というのは、殺人や強盗のような価値判断不要な伝統的な犯罪を前提に作られています。検察官にはほとんどと言っていいほど、説明責任も、そして資料については透明性も求められていないわけです。
そういう検察に対しては、マスメディアと政治とが権力バランスをうまく保っていくことが不可欠だと私は思います。ところが先ほど魚住さんが言われたように、日本のマスメディアは基本的に検察と一心同体の関係であり、検察に対する批判的な報道や検察のアクションを疑うということをまったくしません。「それはなぜか」というと、検察が“いい”事件をやることが基本的にマスメディアにとって利益になることだからです。利益共同体のような存在です。
そして、日本では歴史的に、「政治は検察の正義に対して介入してはならない」とされてきました。「検察が判断する通りに事件をやることが正義であり、それに政治的に介入すること自体が悪だ」という風にされてきました。ですから、政治は検察に対するチェック機能をほとんど果たしてきませんでした。
自民党中心の政権がずっと続いていた時代には、そのこと自体はあまり問題ありませんでした。なぜかというと、検察も政治的に大きな影響を及ぼさないように自制的に権限行使をしてきたからです。しかし現在の日本は、国民の主体的な選択によって政権が選択され、それがまだ不安定な状況です。こういう状況において検察は、「検察の権限が政治的に不当な影響を及ぼすことについての危機感というものを、もっと強く持つ必要があるのではないか」と思います。
●検察とメディアが一心同体となる理由
会見後に行われた質疑応答では、検察と政治の関係や検察とマスメディアの関係などについての質問が投げかけられた。
――小沢氏に対する捜査はまだ続けられると思いますか?
郷原 「まだやりたい」という意欲は検察に残っていると思います。しかし、さすがに小沢関連事件の摘発を2回試みて、両方とも大失敗に終わって、3回も試みるということは検察の常識としては考えられません。そこまでいくと、もう常識を超えた異次元の世界になってしまう。ちょっと私は想像したくありません。
――検察が政治に与える影響についてどのように考えていますか?
郷原 私が最近思うのは、民主党政権側が検察に対して非常に萎縮しているような感じを受けます。官邸サイドもそうですし、党サイドもそうなんです。ここまで検察のアクションがでたらめで、しかも大きな政治的影響が生じているわけですから、「どこが間違っているのか」ということを堂々と言って、検察を批判してもいいはずなのですが、それがまったくできない。
それは1つには、マスメディアが戦前の統帥権干犯※のように、検察に対する介入を徹底的に批判するということが原因だと思います。もう1つは、ここまで検察によるアクションのレベルが落ちてくると、みんな胸に手を当てて考えてみると、「自分もやられるかもしれない」と思い始めます。それがベースになって、「検察が怖い」と思う原因になっているのではないでしょうか。これはある意味で恐ろしい現象じゃないかと思います。
※統帥権干犯……1930年にロンドン海軍軍縮条約に調印した浜口雄幸内閣に対して、「統帥権の独立を犯すもの」として野党や軍部などが反発した事件のこと。以後、政府が軍部に介入しにくくなり、政党政治が弱まるきっかけとなった。
――報道にたずさわる人間と検察とがクローズドな形でコミュニケーションをとっていることについてどう考えますか?
魚住 記者クラブについて申し上げます。記者クラブ自体が特殊なのですが、検察庁を担当している司法記者クラブというのはさらに特殊な記者クラブです。どこが特殊かというと、検察庁という行政機関の方が記者クラブより圧倒的に力を持っていて、検察庁の気に入らないことをしたら出入り禁止になるという規則があります。それから、テレビカメラが入れません。司法記者クラブの力が検察庁より圧倒的に弱いがために、そういう特殊な慣行がいまだに続けられている。
なぜ圧倒的に弱いかというと、検察庁がものすごく貴重な情報を持っているからです。「自分の会社だけでもその情報をもらいたい」という気持ちがあって、1つにまとまれないんですね。これは逆に言うと「検察庁の分割統治が成功している」ということです。
郷原 本当の問題は今、司法記者クラブに所属している記者の問題ではないと思うんですね。むしろ、司法記者クラブ出身のもっと上の遊軍と言われる人たちにあると思います。そういう人たちは検察幹部や法務省幹部と個人的なつながりを持っていて、むしろそういったところが(司法記者クラブ所属の記者より)貴重な情報をつかんできます。
その人脈は彼らにとって財産です。「自分が貴重なつながりを持っている相手が常に正義であって、正しい」という前提が維持されると、その情報源が生きてくるわけですね。ですから、もしその前提が崩れてしまうと、長年にわたって築き上げてきた記者としての財産が失われてしまいます。そのため、検察と司法記者クラブ系メディアの一心同体的な関係ができあがる、というところに最大の問題があると思っています。
――先ほど魚住さんは10年前くらいから検察の劣化・暴走が目立つようになったとお話しされましたが、その具体的な例を教えてください。
魚住 いちいち挙げていったらキリがないのですが、例えば1997年前後に行われた不良債権の処理に絡む捜査ですね。最終的に最高裁で無罪になった、日本長期信用銀行の特別背任事件が特徴的です。要するに長銀の経営破たんの責任者を処罰することが時効でできなかったので、経営破たんの後始末に入った人を逮捕して、スケープゴートとして国民の前に差し出したというような事件でした。
郷原 2009年9月に出した『検察の正義』という本の中で詳しく書いていますが、私は2000年前後以降、特捜検察がやった事件でまともな事件は1つもないと思います。やればやるほど、どんどんやることのレベルが落ちている。それが実情だと思います。
普通なら、企業であればいいものを作らなければどんどん売れなくなる、どんどん組織が衰退していくんですね。ところが検察の場合は、その商品が消費者に評価されるのではなくて、ほとんどマスメディアを通じてしか評価されません。そのため、悪質性や重大性という面ではレベルの低いものしか摘発できないわけですが、それをマスメディアが評価してしまう。評価されると、「この程度でもいい」という話になって、やることがもっと落ちていく。それが能力低下を招いていった1つの負のスパイラルなのかなと考えています。
――日本には検察の捜査に対して、民主的な手段で介入できるようなシステムはありますか?
郷原 日本の法律では検察庁法14条で法務大臣の指揮権として、そのことに関する規定があります。これは検察の権限行使に対する唯一の民主的コントロールを定めた規定です。
ですから、今、考えるべきことは「法務大臣の指揮権をいかに適切に行使するシステムを作るか」ということです。検察の権限行使を政治的に利用するような方向で、法務大臣の指揮権を不当に使うというようなことは確かに問題です。しかし、「検察の権限行使が本当に正しいのかどうか」ということを専門的な見地、第3者的な見地からチェックできるようなシステムを作ることが今、日本にとって非常に重要なのではないかと思います。
◆暴走する「検察」〜検察を捜査する機関が日本にはない、という問題
◆検察ファッショ〜検察は今や、一次捜査権と公訴権を安心して任せておける存在ではなくなった〈1〉
◆検察ファッショ〜検察は今や、一次捜査権と公訴権を安心して任せておける存在ではなくなった〈2〉2010-03-08 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆「罪なき罪」をつくる検察の大罪 元大阪高検公安部長.三井環 / 元広島高検検事長.緒方重威
◆被疑者ノート「冤罪 こうして作られる」郵便不正事件 厚労省元局長村木厚子被告の公判で元係長上村勉被告
◆原口総務相「検察に裏金があるかどうかも含め、全省庁を調査する」
◆核機密 「全容は今も闇の中だ」=西山太吉さん 検察を支配する「悪魔」(田原総一朗+田中森一)
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September 27, 2011, 10:11 pm
関連;小沢一郎氏「予想外の判決だ」「あんな判決はあり得ない」「検察でも認定できないのに」不快感をあらわに2011-09-28
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またか
田中良紹の「国会探検」2011年9月27日 19:04
「ほー」と思わせる判決だった。「陸山会事件」の一審判決で東京地裁の登石郁郎裁判長は、大久保隆規元秘書が公共工事の談合で「天の声」を出す当事者であり、石川知裕元秘書と共に水谷建設から裏金1億円を受け取ったと認定した。そしてそれを隠蔽するため政治資金収支報告書に嘘の記載をしたとして3人の元秘書に執行猶予付きの禁固刑を言い渡した。それならこれは虚偽記載事件と言うより贈収賄事件である。
東京地検はなぜ贈収賄事件として贈賄側を逮捕し、次いで収賄側の立件に至らなかったのか。一連の事件には初めから不可解な点が纏わりついている。まず政権交代がかかった衆議院選挙直前の3月に「西松建設事件」で大久保秘書が政治資金規正法の虚偽記載容疑で突然逮捕された。形式犯とも言える容疑での強制捜査は前例がない。
しかも時期的に総理になる可能性の高い政治家に対する捜査である。検事総長以下最高幹部が意思統一し捜査に臨むのが決まりである。ところが「検察首脳会議」は開かれず、「若手検事の暴走」という形で強制捜査が行われた。私が担当したロッキード事件で、東京地検は田中逮捕の前に「福島の天皇」と呼ばれた高齢の知事を逮捕して世論の動向を探るなど慎重に準備を進めたが、今回の捜査にはその片鱗もない。
「西松建設事件」の収賄側には自民党議員の名前が多数挙がっていて、中には事件発覚後に秘書が自殺した者もいた。しかし当時の官房副長官は自民党に事件は及ばないと断言し、その通り自民党議員は立件の対象にならなかった。「若手検事の暴走」という形にした事や政権交代の推進力である小沢一郎氏に的を絞った捜査は、通常の検察捜査というより政治的色彩の強い捜査と見られた。大阪地検も同時期に民主党副代表をターゲットにする「郵便不正事件」に着手したから狙いは政権交代阻止と見られた。
大久保秘書の容疑は西松建設が政治献金をするために作った組織を西松建設本体と認識していたというもので、これが虚偽記載に当るというのである。犯罪と騒ぐような話かと思ったが、いつものことながら政界とメディアに「政治的道義的責任」を追及する大合唱が起きた。ここで小沢氏が非を認め、代表を退けば、検察は形式犯でしかない大久保元秘書の起訴を見送る公算が強いと私は見ていた。
ところが小沢氏は非を認めず、検察に対して闘争宣言を行なった。検察は大久保元秘書を起訴せざるを得なくなり、「西松建設事件」だけでは有罪が難しいため、慌てて小沢捜査に力を入れ始めた。過去にさかのぼりゼネコン関係者からの聴取が行なわれた。
その結果摘発されたのが「陸山会事件」である。検察は秘書らが住む事務所棟建設の土地購入に関して4億円の記載ミスがある事を発見した。一方で水谷建設から1億円の裏金提供の話を得る。この二つがどのように結びついているのか不明だが、ともかく二つの情報が流れればそれで目的は達する。国民には贈収賄事件の心証を与え、しかし検察は贈収賄事件の立件をしない。立件すれば証明しなければならないが、心証を与えるだけで政治的効果は十分だからである。
一方で大阪地検の「郵便不正事件」は検察の大失態となった。担当検事が供述調書を改ざんして逮捕され有罪となり、事件の構図は崩れた。検事の取調べは信用できなくなった。そのため「陸山会事件」でも裁判所は供述調書を証拠として採用しない事にした。証拠に代わって判決の骨格を成したのは「推認」である。裁判所が被告と検察の言い分のどちらを「自然と見るか」という事で、客観より主観が優先される。
今回の判決で裁判所は全面的に検察側の主張を受け入れた。3人の元秘書や小沢氏はすべて嘘を言ってきた事になる。ロッキード事件以来、数々の「でっち上げ」を見てきた私には「またか」という思いがある。ロッキード事件で田中角栄氏に一審有罪判決が下った日、私は官邸で後藤田官房長官を担当する政治記者だった。中曽根総理も後藤田官房長官もその日は裁判に一言も触れなかった。
野党が「田中角栄議員辞職勧告決議案」を提出すると言って騒ぎ始めると、二院クラブの参議院議員であった作家・野坂昭如氏が、「選挙民が選んだ議員を国会が辞めさせるのはおかしい。それでは民主主義にならない」と私に言った。「その通り。辞めさせたかったら選挙で辞めさせるのが民主主義です」と私が言うと、しばらくして野坂氏が「田中角栄に挑戦する」と言って新潟3区から立候補を表明した。
1993年に田中角栄氏が亡くなりロッキード裁判は控訴棄却となった、その2年後に最高裁はロッキード社幹部に対する嘱託尋問調書の証拠能力を否定する判決を下した。嘱託尋問調書は田中角栄氏がロッキード社から受託収賄した事を裏付ける証拠である。真相がほとんど解明されていないロッキード事件は、しかしメディアによって「総理大臣の犯罪」とされ、その後の日本政治には「政治とカネ」のスキャンダル追及が付きまとう事になった。
今回の裁判で有罪判決を受けた元秘書は不当な判決だとして控訴した。小沢氏本人の裁判も来週から始まる。かくなる上は裁判の行方を見守るしかないのだが、「またか」と思うようにメディアや政治の世界が「政治的道義的責任論」を叫び始めた。政局に絡ませようと言うのである。しかし大震災からの復興予算を作らなければならない時に、立法府がやるべきはスキャンダル追及ではない。司法の問題は司法に任せる事が民主主義の基本なのである。
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◆小沢排除は三権協調して行われた/森英介元法相「小沢事務所の大久保秘書逮捕=あれは私が指示した事件だ」2010-10-11
平野貞夫の「永田町漂流記」
「日本一新運動」の原点(22)──これでは議会民主政治は機能せず、暗黒政治となる
10月7日、民主党の小沢元代表は、記者団に東京第五検察審査会の起訴議決により、強制起訴されることになったことについて見解を表明したが、これに対してマスコミはさまざまの報道をくり返している。
その中で見過ごすことのできないのが、「朝日新聞の社説」(8日朝刊)で、読み返すうちに朝日が戦前、世論を戦争に導いた我が国の悲劇を思い出した。そこで、朝日の社論がいかに議会民主政治の原理を冒涜し、かつての過激派の粛清思想であるかを論じておく。
■朝日社説の問題点
社説のタイトルは「小沢氏のけじめ--民主党はこれでよいのか」というものだ。全体として問題であるが、特に二点について指摘したい。
第一は「真相究明は『司法の場に移っている』として、国会での説明にも前向きと言えなかった」と論じていることである。小沢氏は「(証人喚問や政治倫理審査会での説明は)国会の決定に従う」と明言しているし、それはテレビでも流されたから国民の多くが耳にしている。
朝日の社説は、その後の司法の場での対応の発言を意図的に悪用して、「国会での説明に前向きといえなかった」と、小沢氏がここに至っても説明責任を果たす気がないと、悪いイメージを国民に植えつける悪意を露骨に印象づけている。小沢氏の「国会の決定に従う」との意志を、どうして素直に受け入れないのか。この点については事実を意図的にねじ曲げたものであり、日本一新の会として、謝罪と訂正を断固として要求する。
小沢氏の「政治と金」についての説明は、代表あるいは幹事長時代に、記者会見の質問に対してその都度行われている。問題は、第一線の記者がデスクに持ち込んでも「必要ない」と記事にされないことにあり、現場の記者のぼやきを幾度となく聞かされた。
また、野党や民主党の反小沢派の中に、「国民が納得する説明をすべきだ」との主張がある。検察のリークによる報道で洗脳された多くの国民が納得するには、検察の言い分どうりの説明をしろということに等しいことである。
第二は、「有権者の期待を裏切らず、歴史的な政権交代の意義をこれ以上傷つけないためにも、強制起訴決定の機会に議員辞職を決断すべきだった」という個所である。これは憲法の原理を無視した暴論である。議員辞職はもちろんのこと、離党も断じてすべきではない。もし小沢氏がその道を選ぶとすれば、重大な憲法無視となる。
議会民主政治の歴史は、国家検察権力との闘いであった。検察権力は民衆の代表である政治家を弾圧して、国家権力が有利になるための役割を果たしてきた。現在でも潜在的にその意識があり、憲法に「不逮捕特権」(第50条)、「免責特権」(第51条)などが規定されているのは、国会議員の政治活動の自由を保障するためである。
小沢氏の場合、検察がその総力を傾注し、莫大な税金を弄して捜査して不起訴となった事件を、得体の知れない団体の人たちが、政治目的をもって第五検察審査会に、不起訴は不当と申し立てたものである。
それを常識に欠ける補佐弁護士の指導で「起訴相当」と議決し、そして二度目の審査で強制起訴への議決をするに至ったのである。もともと違憲の疑いのある検察審査会法であるが、今回の議決にいたる手続き、すなはち審査会の年令構成、補佐弁護士の選定、議決日と公表日のあり方などなど重大な疑惑もあり、なかんずく議決理由に違法性があり、多くの専門家が議決は無効と指摘している。
このまま強制起訴にもとづいて、裁判が行われることになると、我が国の司法制度そのものが崩壊しかねない問題に繋がることである、さらに、小沢氏の無罪が確実視される中、これまでの「検察起訴即離党」の前例とは状況が根本的に異なるものである。第五検察審査会の審査実態など、徹底的な究明が必要とされるとき、小沢氏に議員辞職を迫るとは、議会民主政治の何たるかについて無知・無能といわざるを得ない。改めて朝日新聞の論説諸氏に告げる。「貴方たちは、日本の議会民主政治を機能させなくするために生きているのか。加えて、満州事変勃発直後から第二次世界大戦終了まで、大政翼賛会の発表をそのまま記事にし、戦争賛美の論説を書き続け、国民に多大の犠牲を強いる先導役を果たしたが、現在進行中の朝日論説と重なるとは思わないか。終戦をうけてあなた方の先輩は、社説「自らを罪するの弁」(1945年8月23日付、国民への謝罪)、声明「国民と共に立たん」(1945年11月7日)を発表・辞任した事実を振り返るべきである。」
第一の、事実を曲げて小沢氏の「国会での説明に前向きと言えなかった」の部分の訂正と謝罪がない場合は、私が代表を務める日本一新の会として、「朝日新聞の不買運動」を始める。すでにネット上では同様の運動が早い時期から進んでいるようだが、私もその一員に加わり、もう一段レベルを上げる先頭に立つことを宣言する。
■小沢氏の「政治と金」の問題の本質
西松事件から始まる小沢氏の政治と金の問題の本質は、政権交代により、健全な議会政治と国民生活を護ろうとする小沢一郎を、政界から排除しようとする政治謀略である。
西松事件で、大久保秘書逮捕の2日前の平成21年3月1日、私は当時の森英介法務大臣に「平成になって日本の政治を悪くしたのは小沢一郎だが、その裏にこの平野がいた」と面前でいわれた。何でこんなことをいうのかと気になってはいたが、2日後から小沢氏は検察とマスコミの総攻撃を受けることになる。
麻生自民党政権が、事実上の指揮権を発動した傍証を私は承知しているし、5月22日の「THE JOURNAL」に、「西松事件・大久保秘書逮捕の真相を究明すべし!」として発表したとおりである。当時の漆間内閣官房副長官の「疑惑は自民党には及ばない」という、まか不思議な発言や、樋渡検事総長らの指導による東京地検特捜部の執拗な小沢氏への攻撃は、今日の大阪地検特捜部と同根・同質の問題を孕んでいる。
しかし、小沢氏を民主党代表から引きずり下ろすことは成功したが、国民の意思による政権交代は実現した。その民主党政権をやむを得ず受け入れた検察官僚と巨大メディアは、小沢一郎を政権から排除すれば、旧体制の官僚政治を持続できると画策し、陸山会事件をでっちあげたのである。鳩山政権に協力しないことで、不作為に同政権を崩壊させた旧体制官僚は、菅直人政権を手中に収めて、徹底的な小沢排除を断行し、その結末が第五検察審査会の二回目の起訴議決であった。菅氏らと旧体制官僚とのコラボレーションは鳩山政権の中ですでに出来上がっていたのだ。
小沢排除は、菅政権のもと、行政府と司法府と、そして国会の立法府の三権の中で協調して行われるようになった。文字どおりの「暗黒政治」の始まりである。
がしかし、日本の国と国民を護れという天命は、絶対にこれを許さない。すでに、日本一新を希求する多くの人々がこれを打ち破るために起ち上がっており、それは燎原の火のごとく燃え上がり、政権交代の大義を貫くためにひとつの輪になる日も近い。
投稿者: 平野貞夫 日時: 2010年10月10日 09:35
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西松事件・大久保秘書逮捕の真相を究明すべし!
5月13日(木)、3人の経済人から夕食に招かれた。話題は政治の劣化や経済再生などで、民主党政権への提言を聴く機会でもあった。
その中で、驚くべき情報を教えられた。A氏の発言で要点は次のとおり。
「私は森英介元法務大臣と昵懇で、時々会食していた。昨年3月西松事件で小沢事務所の大久保秘書が逮捕された問題について、?あれは私が指示した事件だ?と、現職の法務大臣からの直接の話を聞いた。こんなことが許されてよいのか、と驚いた」
A氏は私にこの情報を伝えるにあたって、悩んだ末のことだと思う。経済人としての立場もあり、私は実名を明らかにするつもりはない。私があえてこの情報を世の中に明らかにするのは、A氏の説明を聞いて私が「なるほど、さもありなん」と、私自身が森法相(当時)から直接に、それに関連する指摘を受けていたからである。
平成21年3月1日(日)、大久保秘書逮捕(3月3日)の前々日、私は千葉市で森法相と会う機会があった。千葉知事選挙の吉田平候補者の出陣式の行事の席だった。堂本知事(当時)に、私に関して聞くに堪えない中傷・誹謗の発言をしたことを、明確に記憶している。「堂本知事さん、この平野という人物は平成になって日本の政治を混乱させた人で、小沢一郎も問題があり悪人だが、この人が小沢さんよりもっと悪人なんですよ」
この森法相の発言は、私にとって心に刺した棘のようになっていた。3日の大久保秘書逮捕の後、それとの関連について考えてみたが、直接につながる材料がなかった。私も強制捜査の対象になっていたことは、元特捜部長などの言動から後になって知ったものだ。
A氏の発言は、私にとって想定外のものだった。森法相の私への発言をつながり、西松事件大久保逮捕に政治が関与していた傍証となる。当時の麻生政権が民主党への政権交代阻止のためあらゆる方策を行使していた状況をみても、指揮権の発動も含め、政治の関わりを徹底した調査が必要である。
法律専門家によれば、大久保秘書逮捕の「政治資金虚偽記載容疑」は、常識論として検察の独自判断で行う法論理ではない。特別な政治力が動かなければ、やれることではないという見方もある。
西松事件、水谷建設問題、小沢陸山会の虚偽報告問題など、昨年からの小沢民主党幹事長をめぐる「政治と金」の問題は、詳細な法理論も大事である。それと同樣に事件背景や権力の動きについて総合的に調査が必要である。
本年2月4日、小沢幹事長が「不起訴」と決まったとき、安倍元首相は「鳩山政権が不起訴にした(指揮権発動の意か)」と、麻生前首相は「灰色幹事長だ」と、それぞれコメントした。内閣総理大臣をやった政治家が、この問題でこんなコメントを出したことに、私は奇妙さとともに両首相の心理的幼児性、すなはち、自己の行動の辻つま合わせを感じざるを得ない。
昭和9年の検察ファッショ・「帝人事件」は、起訴当時の警視総監・藤沼庄平が、「起訴は司法省行刑局長の塩野季彦らが内閣崩壊の目的をもって仕組んだ陰謀だった」と証言したことから、犯罪のデッチアゲであったことがあきらかになった。
時代の変わり目で、政治権力のかもし出す形相について、私たちは厳しい監視の眼が必要である。昨年からの「政治と金の問題」の本質は、検察とマスコミの無作為の共謀であったことを検証する必要がある。
投稿者: 平野貞夫 日時: 2010年5月22日 13:58
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【陸山会事件】検察リーク 「裁判所が不採用にした調書の内容まで報道された」
田中龍作ジャーナル 2011年9月26日 21:19
会見場に入ってきた石川知裕議員の表情は憔悴しきっていた。目もうつろだ。予想だにしない判決内容だったからだ。主任弁護人の木下貴司弁護士が切り出した―「検察官が主張もしていない、証拠も出していない事案について裁判所が事実として認定している」。
水谷建設がダム工事建設で便宜を図ってもらう見返りとして石川氏へ5千万円を渡したとする案件について、検察は贈収賄で立件することを見送っていたのである。
そもそも検察が主張していたのは世田谷区の土地を購入する資金に充てた4億円の記述漏れだ。これが政治資金規正法違反にあたるとして、石川氏を起訴していたのである。
ところが東京地裁は検察の起訴事実以上のことを積極的に事実として認定して石川氏に有罪判決を下したのだ。
木下弁護士は「裁判所がアンパイアの立場をしっかりやってくれていたら、検察が提出したものをダメなものはダメと蹴っていれば、検察がつけ上がることもなかった。司法の危機だ」。
筆者は検察からの記者クラブへのリークについて石川議員に質問した―
「リークは大きかった。裁判所が不採用にした検察調書の内容まで報道されていた」。石川議員は唇を噛みしめながら語った。
検察リークを垂れ流す記者クラブメディアがダーティーなイメージを作り上げる→それが裁判官の心証を形成する→判決に色濃く影響する。
筆者が知る刑事事件の裁判官は朝日新聞を2部取っていた。1部は購読用、もう1部はスクラップ用だ。新聞記事が裁判官に与える影響の大きさを物語っているといえよう。
検察と記者クラブにとって都合の悪い政治家は塀の内側に落とされるのである。
石川氏は判決を不服(事実誤認)として、明日朝一番で控訴する。 *強調(太字・着色)は来栖
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◆「今回のようなケースがまかり通れば、狙い撃ちされた政治家はひとたまりもない」石川議員独占インタビュー2011-09-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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September 27, 2011, 10:17 pm
関連;陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26
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小沢元代表、法廷へ:近づく初公判 元秘書3人有罪「あり得ない判決」 側近に漏らす
「あんな判決はあり得ない」。小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で26日に元秘書3人全員に有罪が言い渡されたことに対し、小沢元代表は27日夕、東京都内の個人事務所で自らと近い山田正彦前農相と面会し、不快感をあらわにした。26日夜には報告に訪れた弁護士にも「予想外の判決だ」と不満を表明。10月6日の自身の初公判に向け、司法への対決姿勢をにじませた。【葛西大博、鈴木一生、山本将克】
小沢元代表は山田前農相に、東京地裁の判決が水谷建設からの裏献金1億円の受領を認定したことについて「検察でも(罪を)認定できないのに」と不満をもらした。これに先立ち元代表を支持する衆参の国会議員約20人は27日昼、国会内で会合を開き、辻恵衆院議員が「飛び抜けて異例の不当判決だ」と批判。「事実関係を無視して一方的な心証だけで判決が出たことは国民への挑戦とも受け取れる」などの意見も出た。
前夜の26日夜。元代表は事務所で判決の報告を弁護士から淡々と聞き、元秘書3人の控訴方針を伝えられると「やむを得ないな」と応じた。
◇3人とも控訴
これを受け元事務担当者の衆院議員、石川知裕被告(38)=禁錮2年、執行猶予3年▽後任の事務担当者、池田光智被告(34)=禁錮1年、執行猶予3年▽西松建設からの違法献金事件でも有罪とされた元公設第1秘書、大久保隆規被告(50)=禁錮3年、執行猶予5年=は27日、控訴した。
一方、判決から一夜明け、検察幹部は改めてほっとした表情を見せた。大久保被告を取り調べた元特捜検事が証拠改ざん事件で昨年逮捕され、虚偽記載を認めたとされる同被告の調書を初公判前に撤回。さらに石川被告の「隠し録音」に基づき、地裁から多くの調書を却下された。ある幹部は「万一(26日の判決が)無罪だったら検察の信頼回復は一層遠のいただろう。調書却下に伴う分かりやすい証拠構造で有罪になっているので、控訴審でも逆転の可能性は低い」と自信をみせた。
ただ、検察として起訴を見送りながら検察審査会に強制起訴された元代表の公判には口を濁す。ある幹部は「元秘書3人の有罪で十分。元代表は2回聴取して不起訴を決めており、我々に無関係の事件」と強調する。だが、あるOBは「今回の判決は政治資金規正法でも客観証拠や状況証拠から犯意や共謀を認定できるという指針を示した。元代表の事件でもそうした証拠はゼロではない」と述べ、元代表の公判の行方に注目する。
毎日新聞 2011年9月28日 東京朝刊
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◆ロッキード事件以来のでっち上げ/西松建設事件 当時の官房副長官は「疑惑は自民党には及ばない」と断言2011-09-28 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
またか
田中良紹の「国会探検」2011年9月27日 19:04
「ほー」と思わせる判決だった。「陸山会事件」の一審判決で東京地裁の登石郁郎裁判長は、大久保隆規元秘書が公共工事の談合で「天の声」を出す当事者であり、石川知裕元秘書と共に水谷建設から裏金1億円を受け取ったと認定した。そしてそれを隠蔽するため政治資金収支報告書に嘘の記載をしたとして3人の元秘書に執行猶予付きの禁固刑を言い渡した。それならこれは虚偽記載事件と言うより贈収賄事件である。
東京地検はなぜ贈収賄事件として贈賄側を逮捕し、次いで収賄側の立件に至らなかったのか。一連の事件には初めから不可解な点が纏わりついている。まず政権交代がかかった衆議院選挙直前の3月に「西松建設事件」で大久保秘書が政治資金規正法の虚偽記載容疑で突然逮捕された。形式犯とも言える容疑での強制捜査は前例がない。
しかも時期的に総理になる可能性の高い政治家に対する捜査である。検事総長以下最高幹部が意思統一し捜査に臨むのが決まりである。ところが「検察首脳会議」は開かれず、「若手検事の暴走」という形で強制捜査が行われた。私が担当したロッキード事件で、東京地検は田中逮捕の前に「福島の天皇」と呼ばれた高齢の知事を逮捕して世論の動向を探るなど慎重に準備を進めたが、今回の捜査にはその片鱗もない。
「西松建設事件」の収賄側には自民党議員の名前が多数挙がっていて、中には事件発覚後に秘書が自殺した者もいた。しかし当時の官房副長官は自民党に事件は及ばないと断言し、その通り自民党議員は立件の対象にならなかった。「若手検事の暴走」という形にした事や政権交代の推進力である小沢一郎氏に的を絞った捜査は、通常の検察捜査というより政治的色彩の強い捜査と見られた。大阪地検も同時期に民主党副代表をターゲットにする「郵便不正事件」に着手したから狙いは政権交代阻止と見られた。
大久保秘書の容疑は西松建設が政治献金をするために作った組織を西松建設本体と認識していたというもので、これが虚偽記載に当るというのである。犯罪と騒ぐような話かと思ったが、いつものことながら政界とメディアに「政治的道義的責任」を追及する大合唱が起きた。ここで小沢氏が非を認め、代表を退けば、検察は形式犯でしかない大久保元秘書の起訴を見送る公算が強いと私は見ていた。
ところが小沢氏は非を認めず、検察に対して闘争宣言を行なった。検察は大久保元秘書を起訴せざるを得なくなり、「西松建設事件」だけでは有罪が難しいため、慌てて小沢捜査に力を入れ始めた。過去にさかのぼりゼネコン関係者からの聴取が行なわれた。
その結果摘発されたのが「陸山会事件」である。検察は秘書らが住む事務所棟建設の土地購入に関して4億円の記載ミスがある事を発見した。一方で水谷建設から1億円の裏金提供の話を得る。この二つがどのように結びついているのか不明だが、ともかく二つの情報が流れればそれで目的は達する。国民には贈収賄事件の心証を与え、しかし検察は贈収賄事件の立件をしない。立件すれば証明しなければならないが、心証を与えるだけで政治的効果は十分だからである。
一方で大阪地検の「郵便不正事件」は検察の大失態となった。担当検事が供述調書を改ざんして逮捕され有罪となり、事件の構図は崩れた。検事の取調べは信用できなくなった。そのため「陸山会事件」でも裁判所は供述調書を証拠として採用しない事にした。証拠に代わって判決の骨格を成したのは「推認」である。裁判所が被告と検察の言い分のどちらを「自然と見るか」という事で、客観より主観が優先される。
今回の判決で裁判所は全面的に検察側の主張を受け入れた。3人の元秘書や小沢氏はすべて嘘を言ってきた事になる。ロッキード事件以来、数々の「でっち上げ」を見てきた私には「またか」という思いがある。ロッキード事件で田中角栄氏に一審有罪判決が下った日、私は官邸で後藤田官房長官を担当する政治記者だった。中曽根総理も後藤田官房長官もその日は裁判に一言も触れなかった。
野党が「田中角栄議員辞職勧告決議案」を提出すると言って騒ぎ始めると、二院クラブの参議院議員であった作家・野坂昭如氏が、「選挙民が選んだ議員を国会が辞めさせるのはおかしい。それでは民主主義にならない」と私に言った。「その通り。辞めさせたかったら選挙で辞めさせるのが民主主義です」と私が言うと、しばらくして野坂氏が「田中角栄に挑戦する」と言って新潟3区から立候補を表明した。
1993年に田中角栄氏が亡くなりロッキード裁判は控訴棄却となった、その2年後に最高裁はロッキード社幹部に対する嘱託尋問調書の証拠能力を否定する判決を下した。嘱託尋問調書は田中角栄氏がロッキード社から受託収賄した事を裏付ける証拠である。真相がほとんど解明されていないロッキード事件は、しかしメディアによって「総理大臣の犯罪」とされ、その後の日本政治には「政治とカネ」のスキャンダル追及が付きまとう事になった。
今回の裁判で有罪判決を受けた元秘書は不当な判決だとして控訴した。小沢氏本人の裁判も来週から始まる。かくなる上は裁判の行方を見守るしかないのだが、「またか」と思うようにメディアや政治の世界が「政治的道義的責任論」を叫び始めた。政局に絡ませようと言うのである。しかし大震災からの復興予算を作らなければならない時に、立法府がやるべきはスキャンダル追及ではない。司法の問題は司法に任せる事が民主主義の基本なのである。*強調(太字・着色)は来栖
◆小沢排除は三権協調して行われた/森英介元法相「小沢事務所の大久保秘書逮捕=あれは私が指示した事件だ」2010-10-11 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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◆「今回のようなケースがまかり通れば、狙い撃ちされた政治家はひとたまりもない」石川議員独占インタビュー2011-09-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆登石郁郎裁判長の判決文(要旨) この矛盾に満ちた文章がこの国の司法の場で通用することに唖然とする2011-09-28
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September 27, 2011, 10:43 pm
月刊誌「北方ジャーナル」公式ブログ
2011年09月27日
札幌刑務所・拘置支所が施設内部を公開
札幌刑務所(札幌市東区・米谷和春所長)と同拘置支所(同・佐藤一之支所長)は27日午前、報道陣に施設内部を公開した。道内の刑務所など矯正施設を監督する札幌矯正管区の「定期公表」の一環で、北海道司法記者クラブに加盟する新聞・通信・放送各社のほか、記者クラブ非加盟の本誌編集部から2人が参加した。札幌刑務所は今年、本誌9月号の取材に応じて工場や居室などの内部を公開しているが、報道各社に広く対応するのは昨年同時期の施設公開以来1年ぶり。同日は司法記者クラブ加盟社から刑場の公開を求める要望も寄せられ、刑務所の米谷和春所長(57)が「厳粛な刑を執行する場でもあり、一施設長の判断では対応できない」と答える一幕があった。
札幌刑務所は明治3(1871)年に、同拘置支所は明治13(1880)年に開設した。拘置支所は2001年に新築し、刑務所は現在改修中(終了2012年めど)。ともに札幌矯正管区と同じ敷地内(札幌市東区東苗穂2‐1)に建ち、収容者の食事の献立がほぼ同じであるなどの共通点がある。
札幌刑務所の定員は2498人で、27日時点の収容者は1410人(56.4%)。犯罪傾向が進み、かつ刑期の短い「B指標」の受刑者を収容しており、多くが覚醒剤取締法違反(約34%)や窃盗(31%)での服役で、刑期は平均3年4カ月。道外の多くの矯正施設と同様に高齢化が進んでおり、60歳以上の受刑者が約15%を、65歳以上が7%ほどを占めている。平均年齢は45歳7カ月。
刑事裁判の被告人・被疑者を収容する拘置支所は、定員322人。27日時点の収容数は258人(80.1%)で、同日は裁判出廷が9件あった。年間では1880件に上り、裁判員裁判への出廷数はこれまで延べ55件。施設内に刑場を有しているが、執行場所や収容中の死刑囚の人数などは「公開できない」としている。
以下、撮影が認められた部分を、報道陣への公開順に写真で採録する。札幌刑務所の米谷所長は、このたびの公開の目的について「可能な範囲で透明化をはかり、刑務所・拘置支所の業務を知っていただきたいと考えた」と話している。(ん)
札幌刑務所共同室
札幌刑務所共同室
拘置支所
拘置支所
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◆「岡山刑務所」塀の中の運動会/塀の中の暮らし
◆逆行「開かれた刑務所」〜新法5年 相次ぐ面会制限
◆謝罪 無期懲役囚から被害者の父への手紙
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September 27, 2011, 10:51 pm
関連;陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26
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復興増税9兆2000億円 全JT株売却で縮小
中日新聞2011年9月28日朝刊
政府・民主党は27日、東日本大震災の復興財源を賄うための臨時増税額を9兆2千億円とする臨時増税案を決定した。増税期間は「10年を基本」にする。政府保有の日本たばこ産業(JT)株の全株売却などで税外収入を2兆円上積みし、増税額を民主党税制調査会が見込んでいた11兆2千億円から圧縮した。東日本大震災の本格復興に充てる2011年度第3次補正予算案は12兆円とし、当初案から増額した。
増税幅の圧縮は、景気への悪影響を懸念する増税反対派の議員らに配慮して、同日開いた政府・民主党三役会議で決めた。
税外収入の上積み分は、JT株を2段階で全て売却し1兆円、エネルギー対策特別会計で保有する株の売却で7千億〜8千億円、財政投融資特別会計の剰余金の活用で2千億〜3千億円を見込んだ。増税期間について、前原誠司党政調会長は、国民新党や野党との協議次第で期間が延びる可能性を示した。
増税対象は所得税、法人税、たばこ税、個人住民税(地方税)とした。
増税の開始時期と期間は、所得税が13年1月から10年間、法人税が12年4月から3年間、たばこ税が12年10月から10年間、個人住民税が14年6月から5年間。
所得税は税額の4%を上乗せ課税し、個人住民税は均等割を年500円上乗せする。たばこ税は国税と地方税を合わせて1本2円増税する。法人税は実効税率引き下げを12年4月から3年間、実質的に凍結する。
三役会議に先立ち開かれた党税調の総会では、税外収入が当初想定していた5兆円を超えた場合、「時限的な税制措置を減額する」とした。政府・民主党案通り2兆円を上積みできれば、所得税などの引き上げ幅は縮小できる見込みだ。総会後、藤井裕久会長は「議員定数の削減など国会議員がまず身を切ることも明記した」と述べ、増税に理解を求めた。
一方、政府・民主党三役会議は27日、11年度第3次補正予算案の規模を、政府原案の総額11兆1千億円に9千億円を上積みし、12兆円とした。2500億円の除染費用に加え、被災自治体の要望を受けた公立学校や病院、公共施設の耐震化の費用などを増額する。
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復興増税 財源探しを尽くしたか
中日新聞 社説2011年9月28日
民主党内で復興増税をめぐる議論がまとまった。野田佳彦内閣と党執行部は増税を断行する方針だが、本当に復興財源探しを尽くしたと言えるだろうか。官僚の既得権益擁護も目に余る。
民主党の税制調査会は藤井裕久会長ら役員が所得税と個人住民税、法人税、たばこ税の臨時増税案を総会に提示した。所得税は二〇一三年から十年間、個人住民税は一四年から五年間引き上げる。
これに対して、出席議員からは反対ないし慎重論が続出していたが、押し切られた形だ。民主党が増税案をまとめたとしても、その後、与野党間でさらに議論が続く見通しだ。
野田内閣と党執行部は増税の理由を「東日本大震災の復旧・復興費用を現世代で負担し、将来につけを回さないため」と説明している。だが千年に一度とされる震災なら、復興費用を千年にならして賄ってもおかしくない。
まして日本経済がデフレにあえいでいるのに、震災に加えて増税では景気に二重の打撃になってしまう。新たな世界金融危機もささやかれる中、増税に突っ走るのはあまりに危険ではないか。
増税以外に財源がないのかといえば、そうは言えない。たとえば国債整理基金の繰り入れ停止がある。国の借金返済と利払いのために二十兆円余りを国債費として歳出に計上しているが、うち半分の十兆円余は元金返済分だ。
利払いは停止できないが、元金返済のために新たに借金を重ねる必要はない。住宅ローンの元金返済に新たなローンを組む人はいないのと同じ理屈である。
であれば、すでに成立した二〇一一年度予算から元金返済分の十兆円余を復興財源に転用できる。こうした繰り入れ停止措置は藤井氏の蔵相時代を含めて過去十一回にわたって実施されてきた。今回できない理由はない。
日本郵政株式や国有財産の売却もある。日銀による復興国債引き受け、経済的には同じ効果が見込める復興国債の市中発行に合わせた日銀の国債買い入れ増額という手段もあるだろう。
野田首相は事業仕分けで凍結が決まったはずの公務員宿舎の建設も容認した。まるで歳出削減努力をどこかに置き忘れたかのようだ。被災地にすれば、復旧・復興もままならないのに不要不急の公務員宿舎が新築されるのは、やり切れない思いだろう。
増税に宿舎建設と官僚のやりたい放題を許していいのか。
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September 28, 2011, 6:33 am
関連;陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26
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有罪判決の石川知裕議員、即時控訴「断固として戦い続ける」
2011年09月26日21時30分BLOGOS編集部
小沢一郎氏の元秘書3人が政治資金規正法違反で全員有罪を言い渡された本日の判決。懲役2年、執行猶予3年の判決を言い渡された、元秘書・石川知裕衆議院議員が閉廷後記者会見を開いた。いつもは笑顔でベビーフェイスの石川議員も、長時間の裁判から、疲れ果てた表情で登場。検事に言われた「事実と裁判の結果は違うものだ」という言葉が忘れられない、「判決内容には大変不満を持っている」とし、直ちに控訴することを明らかにした。【取材・構成 田野幸伸(BLOGOS編集部)】
*明日一番で即時控訴する
石川弁護団・木下主任弁護士(以下、木下):今日の判決は一言で言って、遺憾であり、不満であります。検察官が主張もしていない、それに添う証拠も出していない事実について裁判所が独断的といえるような認定をしている点がいくつかある。裁判所を本来もっと信頼していた。アンパイア的な立場に立って、検察、弁護側の主張立証を踏まえて、検察官の主張立証を認めることができなければ却下する。これが本来の刑事訴訟法のもとにおける裁判所のあり方。そこを超えた判決をしている。我々としては、明日一番で即時控訴をして、戦っていく。
*「事実と裁判の結果は違うものだ」
石川知裕議員(以下、石川):今日、東京地方裁判所から判決が出ました。今、木下弁護士が言ったように、判決内容には大変不満を持っております。拘置所の中で検事さんから言われた言葉が忘れられません。それは「事実と裁判の結果は違うものだ」という言葉でした。今日検察が主張してきた水谷建設からの(裏金)5000万円を含め私としては到底受け入れることが出来ない、まったく事実のないことを元に判決内容が下されました。控訴して、断固として戦い続けて行きたいと思っております。
*質疑応答
北海道新聞・細川:今回の有罪判決を受けて、議員活動を続けるという考えに変わりはないか。有権者の失われた信頼について、北海道の有権者にどう説明していくか。
石川:今日の判決は不当だと思っておりますので、政治活動を続けることにためらいはありません。「信頼を失った」というのは細川さんがお感じになっていることかもしれません。私自身はこれからもきちんと訴え続けて行き、控訴審で必ず着せられている罪が晴らせるものだと信じております。
自由報道協会・田中龍作:(検察から記者クラブへの)リークが今回の捜査・裁判に及ぼした影響をどのように考えているか。具体的にこれは真っ赤なウソだ、というリークはどれか。
石川:与えた影響は大きかったろうと思っております。今回、裁判所によって却下された、不採用とされた調書を元にしたによる報道というのが、事実に基づかないものだと思っております。
検察も諦めた収賄が認められた
IWJ・岩上安身:水谷建設からの闇献金があったとされる話、これは検察側は正面から起訴するのをあきらめた事案であるにもかかわらず、判決の中で事実認定されていた。大変驚いた。これをどうお感じになったか。そして本日の(元秘書)お三方の有罪判決を受けて、これから始まる小沢さんの裁判にどんな影響を及ぼすか。裁判の政治性についてどう感じているか。
石川:まず水谷建設からの5000万円認定に関しては大変驚きましたし、憤りを持っております。これがもし認定されるのであれば、一方的に渡した、(という水谷建設側の話)を日本の裁判所が一方的に認めてしまうことになりますので、司法の危機だと思います。小沢さんについてですが、検察の政治的主張をどう裁判所が認定するか分かりませんが、政治活動にはやはり、今日の判決は影響があるのかもしれません。裁判については、私はそこまで分からないので、主任弁護人から話してもらいます。
木下:小沢一郎議員への影響ですが、あちらの裁判を担当していないので直ちには読み切れませんが、小沢先生のほうは4億円が記載してあったかなかったか、そして共謀、この2つが大きな点ですから。しかも共謀についてはこちらの裁判に証拠が出ていませんから、今のご質問にお答えするのは難しいと思います。
岩上:証拠がなくても、今回、事実認定してしまったわけですよね。
木下:そこの所は恐ろしい話ですよね。最近の検察の行き過ぎは、それを許容してきたから。裁判所がもっとクールにアンパイアとしての立場を持って、ダメなものはダメと蹴飛ばしてこなかった。石川議員が言った「司法の危機」とはそういう意味だと受け取っています。
フリーランス・畠山理仁:今回の裁判に限らず、報道によって付くイメージというものもあると思いますが、一方で取り調べの実態は国民に見えにくいものだと思います。石川さんは東京地検特捜部の取調べを録音しているそうですが、その音声を公開するつもりはないのか、音声を公開することの影響についてどう考えているか。
木下:今の点については弁護人からお答えします。実は、録音記録は、小沢一郎議員の裁判において、指定弁護人から証拠請求が行われており、今後向こうのほうでも法廷で調べられる予定ですので、今、公開したり、ダビングしてお渡しすることは控えたい。
ニコニコ動画・七尾:小沢元代表について、今、どういう思いか
石川:ま、特にどういう思いもこういう思いもないのですけれど、これから小沢さんも10月6日から裁判が始まります。私も証人として呼ばれております。裁判というのは時間と精神的にも大きな負担がかかりますので、体に気をつけて頑張って欲しい。今、国の内外が大きな危機ですので、強制起訴という事で、政治活動が制限されていますけれど、必ず疑いが晴れるときが来ると思っておりますので、その時には、第一線で頑張って欲しい。
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「検察は水谷建設に騙されている!」―石川知裕議員 有罪判決後インタビュー
2011年09月28日14時37分 BLOGOS編集部
小沢一郎元民主党代表の資金管理団体「陸山会」を巡る裁判において、東京地裁は26日、元秘書である石川知裕議員に有罪判決を下した。翌9月27日、石川知裕議員は議員会館でインターネットTV局であるODAIBA TVのインタビューに応えた。石川氏は、インタビューの中で裁判所の判決に対し、怒りをにじませている。有罪判決直後の石川議員の心情をインタビューの書き起こしでお伝えする。
インタビュー動画(UstreamのODAIBA TV「時局放談」より)
*「推認につぐ推認」には憤りを感じる
一先生、昨日は大変でしたね
石川議員(以下、石川):13時半から裁判が始まりまして、17時過ぎまで掛かりましたけど、ああいう判決がでるとはまったく予想しておりませんでした。
一証拠がない中での有罪判決を意外に思った方も多かったと思うのですが
石川:特に水谷建設からの5千万円に関してはまったく物証がないので。それを隠したいから一連の経理操作を行ったんだという、正に「推認に次ぐ推認」で認めてしまったということには、私は非常に驚いておりますし、憤りを感じております。
―水谷建設の会長も「石川さんはかわいそうだ」と発言したと新聞で報じられていましたが
石川:水谷建設の会長に言われても複雑な感情がありますが…。いずれにしても川村なるものが、まったくもって嘘でたらめを言っているわけです。私に金を渡したと。それで検察側は"自分が不利になることを言っているんだから"と事実だと主張して、それを裁判所も認定した。私は、収支報告書の作成に関しては"違法だ"という認識はなかった。評価は裁判所が行うので、そこの評価が分かれるのは仕方ない。しかし、事実の検証がない、物証がないままというのには驚きましたね。
―今回の判決に関しては、非常に珍しい"一歩踏み込んだ判決"という評価が聞こえてきます。一歩踏み込んだというよりも既に俵を割っているんじゃないかという声もありますが
石川:まぁ推認に次ぐ推認ですからね。
―これは推定無罪の判決を覆す前代未聞の判決という声もありますが
石川:「小沢の秘書だから」という先入観が働いていると思います。小沢一郎狙い撃ちの裁判、検察の捜査ですからね。そういう先入観は当然あったと思います。
―推定無罪とは「被告人が有罪であると主張する検察官がその被疑事実について立証しなければ、被告人は有罪判決を受けることはない」ということなんですが、今回は裁判官が疑わしいと考えたから有罪ということのように思えます。これは控訴審では、どうなるのでしょうか
石川:私は控訴審の裁判では必ずいい判決を受けることができると思っております。あまりにも乱暴。これはもうびっくりでした。
―今回の公判においては、供述調書が却下されているんですよね。で証拠がないまま推定につぐ推定で判決が下っている。これでは、今後いろんな形で冤罪が起きるのではないかと危惧してしまうのですが
石川:私は今回の調書却下は、検察が脅迫や誘導でとった調書ではなくて、裁判所が自分たちが裁判所で聞いたことを基にして判決を下すという一つの転換点になると思っていました。しかし、実際にはあまりにも物証がないまま、乱暴な推認が続いたことに驚きました。
―これで「日本の司法制度は死んだも同然だ。今の日本はもはや法治国家の体をなしていない」と考えることも出来ると思うのですが
石川:昨日、「水谷5千万円」の認定を聞いたときには、そういう思いもありました。これでは"相手を貶めよう"と考えて、いろんな作戦を練った検察の作戦が成功したことになるんですよ。その前に検察がだまされている、水谷建設が何らかの形でだましているんです。私が拘置所での検事さんの話で忘れられないのは「事実と裁判の結果は違う。裁判の結果は積み上げてきた証拠をもって、裁判官が判定するから。だから、事実と裁判の結果は違うんだよ」という話です。これは未だに頭にこびりついてますね。昨日からは特に。
―よく言われるのは「事実と"法廷の事実"は違う」ということですが、その通りになったということですかね。石川:そうですね。だから、運転手が運んでいないといっているのに運んだことになっている。そして、経理担当者が5千万を川村に渡しました、それを石川に渡しましたという証言のみが取り上げられている。私のアリバイを証明しろっていっても、5年も6年も前の何月何日の午後なんて証明できないですよ。その時政治家やってれば日程もありますけどね。本当に信じられないですよ!
―お怒りはよく伝わってきます。
石川:本当に信じられないですね。
*識者も今回の判決を疑問視
―NHKのコメンテーターである若狭弁護士は、今回の判決について以下のようにコメントしてます。
"今回は、供述調書を却下し証拠調べもしていない。供述に頼らず、状況証拠だけで有罪判決を出せるというのは、特捜部としては大きな力を得たと思う。"これはかなり踏み込んだ発言ですね。またジャーナリストの江川紹子さんも"裁判官の価値観、想像で物語を組み立てることには危惧を覚える。裏づけのないものを事実として断定してしまうのは非常に危険である。"と感想を述べています。
石川:江川さんは、ずっと傍聴していらっしゃって比較的中立な立場でお話されていると思うのですが、やっぱり乱暴ですよ、裁判官は。いくらなんでも。
―下衆な話しになりますが、裁判官と検察の方が"お友達"であるケースもありますしね。
石川:判検交流という言葉もあるように、"お友達"になるようなシステムになっているんです。
―以下は、twitterで寄せられた、ある弁護士さんの意見です。"やはり裁判所は信用してはいけないということがわかりました。元々、最も検察よりの裁判長と言われていましたが、その通りになりました。判決の真意は証拠ないけど「小沢の秘書」だから有罪。こんな判決が許されるのでしょうか。"
石川:まぁ「悪党である小沢一郎に仕えた」という先入観をどうしても持ってますから。
―もう一人ご紹介します。この方は記者会見に出席した記者の方です。"記者会見で、この一連の裁判および記者クラブ報道の政治性を痛感した。あれだけの報道陣がいながら、質問のために挙手したものが私以外4人しかいなかった。私にとって闇献金まで事実認定されたのは想定外だったが、それ以外の報道陣は驚きもせず想定内のような態度だった。"
石川:裁判所の判決は、想像以上にとんでもない不当判決でした。しかし、司法記者クラブの方から見れば、検察寄りで一番書きやすい判決なわけです。だからいちいち質問する必要はないんです。もし、これが比較的我々に有利な判決であれば質問が続出したと思いますね。「こういう部分に疑いが残るんじゃないですか」とかね。でも、我々の主張はすべて退けられましたから。
―今後については、どのようにお考えですか。
石川:現在27日16時過ぎですけど、もう控訴しました。弁護士にお願いしてます。日程的には来年、控訴審の裁判が始まると思います。その前に10月6日に小沢一郎元民主党代表の裁判が始まりますので、私も10月28日、11月1日と証人尋問で呼ばれております。この裁判は来年4月ごろに判決が出る予定ですので、まだまだ裁判は続きます。
―裁判、裁判で大変ですね。
石川:そうですね、時間的にも精神的にも疲れます。費用もかかります。ただ、地元からの応援、全国からの支援カンパをいただいておりますので、そういう応援の声が自分を奮い立たせてくれます。
―当然裁判だけでなく、国政のほうも
石川:今まで地域間の要望に出来るだけ応えていけるように活動してきています。よくテレビや新聞で「石川はちゃんと政治活動できるのか」と言われてますけど、それは地域関係者の声を聞いたことがない人が言ってるだけなんです。地域の町長さんや農業関係者の声から私の活動を知ってほしいと思います。もう一つ宣伝がありまして、9月12日から有料のメールマガジン「石川ともひろの汚名返上」を始めました。昨日、正に汚名を着せられましたからね。裁判の様子や日常の身近なことを書いています。それと「小悪党の処世術」ということで小沢さんの傍でどういう立ち回りをしてきたかというようなことを書いています。まぐまぐでやってますので、どうか入会いただければと思います。
◆陸山会事件公判 水谷建設の元運転手証言「川村尚元社長を裏金5千万円受渡し現場へ送った記憶、ない」2011-05-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
「記憶ない」元運転手、裏金提供の元社長送迎を否定
産経ニュース2011.5.24 12:31
小沢一郎民主党元代表(69)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の第13回公判が24日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれ、中堅ゼネコン「水谷建設」の元運転手が出廷。検察側の主張では、元運転手は石川被告に裏金5千万円が渡された日に川村尚元社長(54)を受け渡し現場のホテルに送迎したとされるが「その日に送った記憶はない。もっと後だった」と証言した。
検察側が作成した自身の供述調書について「訂正してほしい」とも述べた。
これまでの公判では、川村元社長を含め同社の元幹部ら4人が、小沢元代表側に裏金が提供されたことを裏付ける証言をしている。
午後には、同社の水谷功元会長(66)が出廷する。
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「小沢氏側に裏金1億円払った」 水谷建設元社長証言
産経ニュース2011.4.27 11:25
小沢一郎民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の第10回公判が27日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれ、中堅ゼネコン「水谷建設」の川村尚・元社長(53)が証人として出廷。石川被告らに手渡したとされる小沢事務所への裏金計1億円について「衆院議員会館の小沢先生の部屋で大久保隆規被告(49)から要求された。その後、お支払いした」などと証言、裏金の提供を明言した。
小沢元代表側への裏金提供を当事者が公の場で言及したのは初めて。
検察側の質問に、川村元社長は小沢事務所に営業活動を行った理由を「小沢先生の地元のダム。力が強い小沢事務所に反対されると工事に参入できないと聞いていたため」と証言した。
平成15年の社長就任以降、受注したい具体的工事名2つを挙げて大久保被告にあいさつや料亭接待を続けたところ、16年9月になって「それぞれの工事業者決定後に5千万円ずつ」と要求され、「同年10月15日と17年4月中旬ごろに支払った」と語った。
15年末には大久保被告の自宅で、お歳暮として現金100万円と高級牛肉を渡したとも明かした。
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◆ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ2011-04-28
〈来栖の独白2011/04/28〉
陸山会事件の公判。水谷建設前社長・川村尚氏の供述に耳を傾けるほどに、ロッキード事件が重なってしまう。
現金受け渡しの場面などは、まったく酷似している。陸山会事件のそれは全日空ホテル(現ANAインターコンチネンタルホテル)であり、ロッキード事件はホテルオークラであった。「陸山会」は水谷建設前社長川村氏が渡し、「ロッキード」は丸紅の伊藤宏専務が渡した(という)。陸山会は「5000万円を宅急便の袋に入れて折りたたみ、それをひと回り大きい紙袋」に入れ「床をスライドさせるような形で渡し」、ロッキードは「1億2500万円入りの段ボール箱」。どちらも証人がことさら具体的に述べれば述べるほど、意図に反してリアリティは低下し、胡散臭さが漂ってしまう。これで、弁護側証人水谷建設元会長水谷功氏なんかが出てきた日には、この法廷はどうなるんだろう♪
ロッキード事件で成功した検察。裁判所まで同じでは困る。
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『検察を支配する「悪魔」』田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)
第三章 絶対有罪が作られる場所
p80〜 ロッキード事件の金銭授受は不自然---田原
ここからは、ロッキード事件の話をしたい。
ロッキード事件で田中角栄は、トライスター機を日本が購入するにあたって、ロッキード社から4回にわたって、丸紅を通じて計5億円の賄賂を受けと取ったとして、1983年10月に受託収賄罪で懲役四年、追徴金5億円の判決を受けましたね。
この4回あったとされる現金の受け渡し場所からしても、常識から考えておかしい。1回目は1973年8月10日午後2時20分頃で、丸紅の伊藤宏専務が松岡克浩の運転する車に乗り、英国大使館裏の道路で、田中の秘書、榎本敏夫に1億円入りの段ボール箱を渡した。2回目は同年10月12日午後2時30分頃、自宅に近い公衆電話ボックス前で、榎本に1億5000万円入りの段ボール箱を。3回目は翌年の1月21日午後4時30分頃、1億2500万円入りの段ボール箱がホテルオークラの駐車場で、伊藤から榎本に渡された。そして、同年3月1日午前8時頃、伊藤の自宅を訪れた榎本が、1億2500万円が入った段ボール箱を受け取ったとされている。
最後の伊藤の自宅での受け渡しはともかく、他の3回は、誰が見ても大金の受け渡し場所としては不自然です。とくに3回目のホテルオークラは、検察のでっちあげ虚構としか思えない。
伊藤の運転手だった松岡にインタビューしたところ、検察によって3回も受け渡し場所を変更させられたと言う。もともと松岡は、受け渡しに対して記憶はまったくなかったのですが、検事から伊藤の調書を見せられ、そんなこともあったかもしれないと、曖昧なまま検察の指示に従った。
検事が、最初、3回目の授受の場所として指定してきたのは、ホテルオークラの正面玄関です。松岡は検事の命令に添って、正面玄関前に止まっている2台の車の図を描いた。
でも考えてみれば、こんなところで1億2500万円入りの段ボール箱の積み下ろしなどするわけがない。正面玄関には、制服を着たボーイもいれば、客の出入りも激しい。おまけに、車寄せに2台車を止めて段ボール箱を運び込んだら、嫌でも人の目につく。
検察も実際にホテルオークラに行ってみて、それに気が付いたんでしょう。体調を崩して大蔵病院に入院していた松岡の元に検察事務官が訪ねてきて、「ホテルオークラの玄関前には、右側と左側に駐車場がある。あなたが言っていた場所は左側だ」と訂正を求めた。
それでも、まだ不自然だと考えたのでしょう。しばらくしたら、また検察事務官がやってきて、今度は5階の正面玄関ではなく、1階の入り口の駐車場に変えさせられたと言います。
それだけならまだしも、おかしなことに、伊藤が描いた受け渡し場所も変更されていた。最初の検事調書では、伊藤も松岡とほぼ同じ絵を描いている。松岡の調書が5階の正面玄関から1階の宴会場前の駐車場に変更後、伊藤の検事調書も同様に変わっていた。
打ち合わせもまったくなく、両者が授受の場所を間違え、後で揃って同じ場所に訂正するなんてことが、あり得るわけがない。検事が強引に変えさせたと判断するしかありません。百歩譲って、そのような偶然が起りえたとしても、この日の受け渡し場所の状況を考えると、検事のでっち上げとしか考えられない。
この日、ホテルオークラの宴会場では、法務大臣や衆議院議長などを歴任した前尾繁三郎を激励する会が開かれていて、調書の授受の時刻には、数多くの政財界人、マスコミの人間がいたと思われる。顔見知りに会いかねない場所に、伊藤や田中の秘書、榎本が出かけていってカネをやり取りするのは、あまりにも不自然です。
しかも、この日の東京は記録的な大雪。調書が事実だとすれば、伊藤と田中の秘書が雪の降りしきる屋外駐車場で、30分以上立ち話をしていたことになる。しかし、誰の口からも、雪という言葉が一切出ていません。
万事がこんな調子で、榎本にインタビューしても、4回目の授受は検察がつくりあげたストーリーだと明言していました。
もっとも、丸紅から5億円受け取ったことに関して彼は否定しなかった。伊藤の自宅で、5億円を受け取ったと。それは、あくまでも丸紅からの政治献金、田中角栄が総理に就任した祝い金だと。だから、伊藤は、せいぜい罪に問われても、政治資金規正法だと踏んだ。そして、検察から責め立てられ、受けとったのは事実だから、場所はどこでも五十歩百歩と考えるようになり、検察のでたらめにも応じたのだと答えた。
つまり、検察は政治資金規正法ではなく、何があっても罪の重い受託収賄罪で田中角栄を起訴したかった。そのためにも、無理やりにでも授受の場所を仕立てる必要があったというわけでしょう。
p83〜 法務省に事前に送られる筋書き---田中
ロッキード事件のカネの受け渡し場所は、普通に考えておかしい。またそれを認めた裁判所も裁判所ですよ。ロッキード事件以来、ある意味、検察の正義はいびつになってしまった。
政界をバックにした大きな事件に発展しそうな場合、最初に、検察によってストーリーがつくられる。被疑者を調べずに周りだけ調べて、後は推測で筋を立てる。この時点では、ほとんど真実は把握できていないので、単なる推測に過ぎない。
でも、初めに組み立てた推測による筋書きが、検察の正義になってしまうのです。なぜ、そんなおかしなことになるかと言えば、政界や官界に波及する可能性がある事件の捜査については、法務省の刑事課長から刑事局長に、場合によっては、内閣の法務大臣にまであげて了解をもらわなければ着手できない決まりになっているからです。とくに特捜で扱う事件は、そのほとんどが国会の質問事項になるため、事前に法務省にその筋書きを送る。
いったん上にあげて、了承してもらったストーリー展開が狂ったら、どうなりますか?検察の組織自体が否定されますよ。事件を内偵していた特捜の検事がクビになるだけでなく、検察に対する国民の信頼もなくなる。
本当は長い目で見たら、途中で間違っていましたと認めるほうが国民の信頼につながる。それは理屈として特捜もわかっているけれど、検察という組織の保身のためには、ごり押しせざるを得ないのが現実です。
特捜の部長や上層部がなんぼ偉いといっても、一番事件の真相を知っているのは被疑者ですよ。その言い分をぜんぜん聞かず、ストーリーをどんどん組み立てる。確かに外部に秘密がまれたり、いろいろあるから、その方法が一番いいのかもしれないが、だったら途中で修正しなければいけない。
ところが、大きい事件はまず軌道修正しない。いや大きい事件になるほど修正できない。だから、特捜に捕まった人はみんな、後で検察のストーリー通りになり、冤罪をきせられたと不服を洩らす。僕を筆頭として、リクルート事件の江副浩正、KSD事件の村上正邦、鈴木宗男議員と連座した
外務省の佐藤優、村上ファンドの村上世彰(よしあき)、ライブドア事件の堀江貴文・・・全員、不満たらたらで検察のやり方を非難している。
これを特捜が謙虚に反省すればいいのですが、特捜はそんなことはまったく頭にない。「あのバカども、何を言っていやがるんだ」という驕りがあり、最初にストーリーありきの捜査法は一向に改善されません。
p85〜 尋問せずに事実関係に勝手に手を入れる---田中
とくに東京の特捜では、まずストーリーありきの捜査しかしない。被害者を加害者に仕立て上げてしまった平和相銀事件がいい例ですよ。
東京に来て驚いたのは、調書ひとつをとっても、上が介入する。調書作成段階で、副部長や主任の手が入ることも多く、筋書きと大幅に異なったり、筋書きを否定するような供述があると、ボツにされる。だから、検事たちも、尋問をするときから、検察の上層部が描いた筋書きに添う供述を、テクニックを弄して取っていく。
僕も手練手管を弄して自分の描いた筋書きに被疑者を誘導することはありましたよ。しかし、それは、あくまでも現場で捜査に携わっている人間だから許されることだと思う。捜査をしている現場の検事は、こりゃあ違うなと感じれば、軌道修正する。被疑者のナマの声を聞いて判断するので、自分の想定したストーリーが明らかに事実と違えば、それ以上はごり押しできない。人間、誰しも良心がありますから。
しかし東京では、尋問もしていない上役が事実関係に手を入れる。彼らは被疑者と接していないので容赦ない。被疑者が、これは検事の作文だよとよく非難しますが、故のないことではないと思った。恐ろしいと思いましたよ。冤罪をでっち上げることにもなりかねないので。
だから、僕は東京のやり方には従わなかった。大阪流で押し通した。上がなんぼ「俺の言う通りに直せ」といっても、「実際に尋問もしていない人の言うことなんか聞けるか」で、はねのけた。
p86〜 大物検事も認めた稚拙なつくりごと---田原
4回目の授受の場所を特定したのは誰か---ロッキード事件に関わった東京地検特捜部のある検事にこの質問をしたところ、彼は匿名を条件に「誰にも話したことはないが」と前置きして、次のように当時の心境を語っていた。
「ストーリーは検事が作ったのではなく、精神的にも肉体的にも追いつめられた被告の誰かが・・・カネを受け取ったことは自供するけれども・・・あとでお前はなぜ喋ったんだといわれたときのエクスキューズとして、日時と場所は嘘を言ったのじゃないか。
そして、それに検事が乗ってしまったのじゃないか、と思ったことはある。田中、榎本弁護団が、それで攻めてきたら危ないと、ものすごく怖かった」
この元検事の証言を、事件が発覚したときに渡米し、資料の入手やロッキード社のコーチャン、クラッターの嘱託尋問実現に奔走した堀田力元検事にぶつけると、「受け渡しはもともと不自然で子どもっぽいというか、素人っぽいというか。恐らく大金の授受などしたことがない人たちが考えたとしか思えない」と語っていました。
堀田さんは取り調べには直接タッチしていない。だからこそ言える、正直な感想なんでしょうけれど、どう考えても、あの受け渡し場所は稚拙なつくりごとだと認めていましたよ。
p88〜 検事は良心を捨てぬと出世せず---田中
検事なら誰だって田原さんが指摘したことは、わかっている。その通りですよ。田原さんがお書きになったロッキード事件やリクルート事件の不自然さは、担当検事だって捜査の段階から認識している。
ところが引くに引けない。引いたら検察庁を辞めなければいけなくなるから。だから、たとえ明白なでっち上げだと思われる“事実”についてマスコミが検察に質しても、それは違うと言う。検事ひとりひとりは事実とは異なるかもしれないと思っていても、検察という組織の一員としては、そう言わざるを得ないんですよね。上になればなるほど、本当のことは言えない。そういう意味では、法務省大臣官房長まで務めた堀田さんの発言は非常に重い。
特捜に来るまでは、検察の正義と検察官の正義の間にある矛盾に遭遇することは、ほとんどありません。地検の場合、扱うのは警察がつくっている事件だからです。警察の事件は、国の威信をかけてやる事件なんてまずない。いわゆる国策捜査は、みんな東京の特捜か大阪の特捜の担当です。
特捜に入って初めて検察の正義と検察官の正義は違うとひしひしと感じる。僕も東京地検特捜部に配属されて、特捜の怖さをつくづく知りました。
検察の正義はつくられた正義で、本当の正義ではない。リクルート事件然り、他の事件然り。検察は大義名分を立て、組織として押し通すだけです。
それは、ややもすれば、検察官の正義と相入れません。現場の検事は、最初は良心があるので事実を曲げてまで検察の筋書きに忠実であろうとする自分に良心の呵責を覚える。
しかし、波風を立てて検察の批判をする検事はほとんどいない。というのも、特捜に配属される検事はエリート。将来を嘱望されている。しかも、特捜にいるのは、2年、3年という短期間。その間辛抱すれば、次のポストに移って偉くなれる。
そこの切り替えですよ。良心を捨てて、我慢して出世するか。人としての正義に従い、人生を棒に振るか。たいていの検事は前者を選ぶ。2年、3年のことだから我慢できないことはないので。ただそれができないと僕のように嫌気がさして、辞めていくはめになるのです。
◆《第13回前半》陸山会事件公判 水谷建設元運転手が調書内容を否定「ハラがたってます」2011-05-30
2011/5/25《THE JOURNAL》
10時開廷。午前中は、水谷建設の元専属運転手が出廷。元運転手は、事情聴取のときに川村元社長が04年10月15日に石川知裕氏に5000万円を渡した際、受け渡し場所となった全日空ホテル(現・ANAインターコンチネンタルホテル)まで川村元社長を送ったと話し、その時の様子が調書にまとめられている。石川氏に渡したとされる5000万円については証言や物的証拠が極端に少ないので、運転手の証言は検察側の立証にとって重要な意味を持つ。まずは弁護人による尋問。
(──は弁護人、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたは川村元社長を全日空ホテルまで車で送ったことはありますか
「1回か2回ぐらいあると思います」
── 時期についての記憶はありますか?
「会長(注:水谷功元会長のこと)が脱税事件で逮捕された以降だと思います」
※補足。水谷功元会長が脱税容疑で逮捕されたのは06年7月。川村元社長がウラ金を渡したと証言しているのは04年10月と05年4月。つまり、元運転手はウラ金渡しの際に川村社長を社用車に乗せて全日空ホテルに行ったことはないと証言していることになる。
──そのことは検察官に説明しましたか
「はい」
── 検察官に何を聞かれましたか
「全日空ホテルで車を待機させるときのことを聞かれました」
── それは04年10月15日ではなく、全日空ホテルで車を停めるときの方法を聞かれたということですか
「はい」
── 車はどのように停めていたのですか
「川村社長だけではなく、会長を送るときも含め、2階のロビーで降ろして、ボーイさんに頼んでその近くで待機していました」
── 川村元社長の手荷物について聞かれましたか
「『覚えておりません』と答えました」
※補足。「手荷物」とは川村元社長が届けたとされる5000万円入りの紙袋を指す。検察は、何としてもこの運転手に「川村社長は、全日空ホテルに送ったときに手荷物を持っていた」という調書をとりたかっただろう。というのも、石川氏に渡したとされる5000万円については川村元社長の証言以外に証拠はなく、当日に本当に川村元社長が全日空ホテルに行ったという証拠もないからだ。しかし、その調書は元運転手の記憶とは異なるものだったことが明らかになっていく。
── あなたは調書を訂正したいと思っていますか
「はい」
── 川村社長を全日空ホテルに送ったときは、出発の直前に指示されたとの供述がありますが
「日常的にどこに行くのかは直前に言われることもあったので、こういうことを言いました」
── ということは、特定の時期の話ではなくて、一般的な話だったということですね
「はい」
── 検事は、その説明を(特定の日付の話であるかのような)こんな書き方をしたのですか
「はい」
── 調書を訂正するのなら、どのように訂正したいですか
「この日の記憶がほとんどなかったので、(日付を)限定できるということはないと思います。(検事には)この当時の記憶がほとんどなかったので『送った記憶がない』と言ったのですが、こういう調書になってしまいました」
── 検事から手荷物について聞かれたことについては
「手荷物については一般的なことで言ったので、川村社長を全日空ホテルに送った時の話をしたわけではないです」
── 調書にサインを求められたとき、どのように感じましたか
「10月15日ということで限定していたので、不安を感じました」
── 検事にはどのように話しましたか
「10月15日について限定されていることを指摘して、『サインできません』と言いました」
── 検事はどう言いましたか
「『サインしてもらわないと困る』と。私が『10月15日に限定しているのは直せないのですか』と聞いたら『直せない』と言われました」
── サインをしなくちゃいけないとも言われたのですか
「『サインして下さい』と言われたので、『サインはできません』と申し上げたのですが、『これは今日あなたが話したことをまとめたものだ』と」
── なぜサインしてしまったのですか
「『サインをしなきゃいけない』と言われました」
── 当時はなぜ(10月15日のことについて)聞かれているのかわからなかったのではないですか
「はい」
── サインしたことで後悔はしていますか
「10月15日に限定されたことが、私には覚えがありませんので、こういう書き方をされたのは直してほしいとおもっています」
── こういう調書がつくられたことについては
「できるならば、日付は削除してほしいです」
── こういう調書ができたことについて、どのように感じていましたか
「多少、ハラがたっていますね」
── 04年10月15日に、川村元社長を全日空ホテルに送ったという記憶はないんですね
「はい」
── 川村社長はこの公判で、全日空ホテルへの交通手段について『社用車がタクシーで』と答えていますが
「タクシーであれば、会社に領収書があると思います」
※弁護人の尋問終了後、検察側の反対尋問が行われる。運転手の調書否定証言に対し、検察側は川村元社長を議員会館の小沢事務所に訪ねていたことを尋問する。狙いがどこにあるかがよくわからなかったが、川村元社長が小沢事務所を訪ねていたことを証言させ、水谷建設と小沢事務所の関係の濃さをアピールしたかったのかもしれない。それに対し、元運転手は手帳に書かれているものは議員会館に行ったことを認め、一方で「日付はわかりませんが、手帳に書いた以外はないと思います」と答える。
最後に裁判官による尋問。
(──は裁判官、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたが手帳をつけていた理由はなぜなのですか
「会社には日報があったのですが、私が行動していたことを自分で後で確認することも含めて、会社に聞かれたときのために書いていました」
※補足。会社に提出していた日報は、手帳に書かれているものに比べればおおざっぱなもので、詳細は書かれていないという。
── 手帳はどういう時に書いていましたか
「その時に応じて書く場合と夕方に書いていました」
── 何日かまとめてということは
「それはほとんどないと思います」
── 書き漏らしはありますか
「(仕事が)重なった時などはあると思うんですが」
── もうちょっと具体的にお話いただけますか
「時間的に会長と社長がバッティングしてしまったりした時ですね」
── 書き漏らすこともあったということですか
「忘れることもあったと思います。その日、書くのを忘れて、そのまま書いていないということはあると思います」
── 手帳はあなたのスケジュール表としても使っていたのですか
「そうです」
── スケジュールはあらかじめわかっているものなのですか
「先にわかっているというのは少ないですね。(指示が来るのは)当日か前の日で、事前に連絡がきていれば手帳に書きますが、当日に書くことが多かったです」
── それが当日が前日に書くことが多かったということですね
「はい」
── 直前に言われて書き忘れるということは
「それもあると思います」
── 10月15日に川村社長を送ったかどうかですが、あなた自身は記憶がないのですね
「はい」
以上で午前の部が終了。裁判官も、04年10月15日に元運転手が全日空ホテルまで川村氏を送迎したかどうかに強い関心を持っているようだ。
元運転手が証言したように、川村氏が水谷建設東京支店で金庫から5000万円を引き出した後、全日空ホテルまでタクシーで移動したのであれば、領収書が何らかの形で残っている可能性が高い。しかし、それがないのであれば社用車で移動したことになり、それは元運転手の証言とは矛盾してしまう。川村氏の移動手段をどのように事実認定するかも、裁判の重要なポイントとなるだろう。
そのほか、元運転手の証言によって検察による調書の取り方の問題点がまたもや明らかとなった。おそらく、元運転手の聴取を担当した検事は、上司の思い描くストーリーのままの調書をつくったのだろう。しかも、検察はこの調書の内容を一部の記者にリークして、「石川有罪」の空気作りまでしていた。リークをした検察関係者が、このような杜撰な聴取で調書が作られていたことを知っていたかは不明だが、検察の情報操作の巧さを感じさせる。
引き続き、午後は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷する。ここでも石川氏に渡したとされる5000万円の流れについて証言が行われる。
※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に主要部分を再構成したものです
2011/5/25(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史
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September 28, 2011, 7:10 pm
復興増税 財源探しを尽くしたか
中日新聞 社説2011年9月28日
民主党内で復興増税をめぐる議論がまとまった。野田佳彦内閣と党執行部は増税を断行する方針だが、本当に復興財源探しを尽くしたと言えるだろうか。官僚の既得権益擁護も目に余る。
民主党の税制調査会は藤井裕久会長ら役員が所得税と個人住民税、法人税、たばこ税の臨時増税案を総会に提示した。所得税は二〇一三年から十年間、個人住民税は一四年から五年間引き上げる。
これに対して、出席議員からは反対ないし慎重論が続出していたが、押し切られた形だ。民主党が増税案をまとめたとしても、その後、与野党間でさらに議論が続く見通しだ。
野田内閣と党執行部は増税の理由を「東日本大震災の復旧・復興費用を現世代で負担し、将来につけを回さないため」と説明している。だが千年に一度とされる震災なら、復興費用を千年にならして賄ってもおかしくない。
まして日本経済がデフレにあえいでいるのに、震災に加えて増税では景気に二重の打撃になってしまう。新たな世界金融危機もささやかれる中、増税に突っ走るのはあまりに危険ではないか。
増税以外に財源がないのかといえば、そうは言えない。たとえば国債整理基金の繰り入れ停止がある。国の借金返済と利払いのために二十兆円余りを国債費として歳出に計上しているが、うち半分の十兆円余は元金返済分だ。
利払いは停止できないが、元金返済のために新たに借金を重ねる必要はない。住宅ローンの元金返済に新たなローンを組む人はいないのと同じ理屈である。
であれば、すでに成立した二〇一一年度予算から元金返済分の十兆円余を復興財源に転用できる。こうした繰り入れ停止措置は藤井氏の蔵相時代を含めて過去十一回にわたって実施されてきた。今回できない理由はない。
日本郵政株式や国有財産の売却もある。日銀による復興国債引き受け、経済的には同じ効果が見込める復興国債の市中発行に合わせた日銀の国債買い入れ増額という手段もあるだろう。
野田首相は事業仕分けで凍結が決まったはずの公務員宿舎の建設も容認した。まるで歳出削減努力をどこかに置き忘れたかのようだ。被災地にすれば、復旧・復興もままならないのに不要不急の公務員宿舎が新築されるのは、やり切れない思いだろう。
増税に宿舎建設と官僚のやりたい放題を許していいのか。
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◆陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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JT株は2段階で完全売却、3次補正は約12兆円−政府・民主合意(2)
9月28日(ブルームバーグ)ニュース
政府・民主党は27日夜、野田佳彦首相と民主党の輿石東幹事長らとの会議で、東日本大震災からの復興費用などに充てる財源として政府が保有するJT株式を2段階に分けてすべて売却する方針を決めた。今年度第3次補正予算案の規模を約12兆円とすることでも合意した。
会議に出席した前原誠司政調会長が会議後の会見で明らかにした。JT株は5年で政府保有を2分の1から3分の1に下げ、その後「10年プラスアルファのかなり長いタイムスパンの中で最終的には全株を売る」と述べた。JT完全民営化を目指すのかとの質問には「そういうことだ」と語った。
保有比率の引き下げには政府にJT株式総数の50%以上の保有を義務付ける日本たばこ産業株式会社法(JT法)の改正が必要になる。完全民営化で国内たばこ製造の独占体制が崩れるため、前原氏は葉たばこ農家対策や他のたばこ会社の参入条件などを整備する必要があるとの認識も示した。
JTは資金調達などで経営の自由度を増し国際競争力を高めるために完全民営化が必要との考えを示し政府側に保有株の売却を要望してきた。JT株の28日終値は前日比1.8%安の35万6500円。政府が保有する500万株はこれを基に計算すると、1.8兆円規模になる。
JT広報担当の山本英幸氏は政府・民主党の合意に関する報道について「完全民営化は専売改革以来の国の基本方針であるとともに、当社としても望んでいるところだ」とコメントした。
自社株買い
ジャパンインベストの大和樹彦アナリストは、政府保有株の完全売却が長期間にわたることについて、短期的に需給悪化の心配はなく「市場が好転し株価が上昇するようなことがあれば、売却計画を前倒しする可能性もあるのではないか」と指摘、「JTは今後、自社株買いも進めていくいくだろう」と述べた。
B型肝炎対策も含めた臨時増税は、JT株売却やエネルギー特別会計が保有する株式売却などで約2兆円の新たな税外収入を捻出し、当初想定した11.2兆円から9.2兆円に圧縮させる考えも明らかにした。税外収入は、郵政改革法案の成立を前提にした日本郵政株の売却、国会議員定数の削減などにも取り組みさらなる上積みを目指す。
前原氏は、復興債の償還期間は10年間を基本としながら、国民新党や自民、公明両党との協議で延長することもあり得るとの見通しも示した。
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復興財源、JT株売却などで税外収入捻出 根強い反対、2兆円上積み難航
2011.9.29 05:00 SankeiBiz(ニュース)
政府・民主党は27日夜、東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税の規模を圧縮するため、税外収入を当初案から2兆円上積みして7兆円とすることを決めた。上積み分には、政府が保有する日本たばこ産業(JT)株や資源開発企業株の売却収入などを充てる方向だ。ただ、JT株売却には自民党が反発。最終決着までに曲折がありそうだ。
震災復興費など当面の歳出は16兆2000億円。政府は当初、このうちの5兆円を歳出削減や税外収入で賄い、残りの11兆2000億円を臨時増税で捻出する方針だった。これに対して民主党の前原誠司政調会長が税外収入の上積みと増税額圧縮を要望。最終的に税外収入の2兆円の上積みで合意した。野田佳彦首相は28日の参院予算委員会で「(増税案を)なるべく早く成立させる」と語った。
上積みする2兆円のうち1兆円は、JT株の完全売却で確保する。政府はJT株の50%を保有。当初は3分の1まで売却して5000億円分を捻出する方針だったが、最終的に全株を売却することにした。
このほか、エネルギー対策特別会計が保有する資源開発企業株の売却で7000億〜8000億円、財政投融資特別会計の剰余金を流用して2000億〜3000億円を生み出すとしている。
前原政調会長は「日本郵政株の売却や国会議員定数の削減、国有資産の売却などもしっかり進める」と述べ、さらなる上積みを目指す考えも示した。
ただ、今回の上乗せ案が、思惑通り実現するかどうかは微妙だ。JT株売却に対しては、葉タバコ農家が「政府関与が薄まり、JTが全量を買い取る制度が維持されなくなる」と反発。自民党も反対し、株売却の前提となる法改正に向けて与野党協議が難航する可能性は大きい。
また、株を保有する資源開発企業には国際石油開発帝石など16社があるが、「株が外資に売られれば、日本のエネルギー政策に悪影響を与え、国益を損なう」との反対論がある。
政府税制調査会で復興財源特別チームの座長をつとめる五十嵐文彦財務副大臣は28日、記者団に対し、「10年間で少なくとも2兆円は掘り出そうという話だ」と述べ、税外収入の上積みは「目標値」にすぎないとの見方を示した。民主党税調も同日、あくまでも当初の増税規模11兆2000億円、税外収入5兆円で与野党協議を行う方針を確認。増税幅圧縮が“絵に描いたもち”に終わる懸念は消えない。(山口暢彦)
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September 28, 2011, 8:07 pm
陸山会事件:小沢元代表の喚問要求 石川議員に辞職勧告決議案、野党が提出
自民、公明、社民、たちあがれ日本の野党4党は28日、小沢一郎民主党元代表の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件で有罪判決を受けた元秘書、石川知裕衆院議員に対する議員辞職勧告決議案を衆院に共同で提出した。石川氏に対する辞職勧告決議案の提出は昨年2月と今年2月に続き3回目だが、民主党はこれまでと同様に決議の採決に応じない方針だ。
自民党の逢沢一郎国対委員長は28日、記者団に「(石川氏らが)有罪判決を受けた後の決議案は、過去2回の決議案とまったく重みが違う」と強調し、民主党に採決に応じるよう求めた。しかし、民主党の平野博文国対委員長は、記者団に「まだ判決が確定しているわけではない。推移を見守りたい」と述べ、採決に慎重な考えを示した。
議員辞職勧告決議案には法的拘束力がなく、過去に可決された例は衆参両院で計4回あるが、実際に辞職した議員はいない。昨年6月に決議案を提出された民主党の小林千代美衆院議員も自発的な辞職だった。
決議案提出に先立ち、野党7党は28日、国会内で国対委員長会談を開き、社民党を除く6党が小沢元代表と石川議員の証人喚問を求める方針で一致した。社民党は衆院政治倫理審査会の開催を求めた。民主党が会期の再延長をしない方針を示していることから、野党7党は次期臨時国会を早期に召集し、各委員会で閣僚の所信表明と質疑を行うことなどを求める方針で一致。29日の与野党国対委員長会談で与党側に要求する。【吉永康朗】毎日新聞 2011年9月29日 東京朝刊
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〈来栖の独白〉
「国民のレベル以上のリーダーは出ねえんだよ。衆愚の中からは衆愚しか生まれない」と小沢一郎氏は言う。正に、そうだ。議員辞職勧告決議案を提出した国会議員たち、司法の悪辣が直ぐに自分たち、そして市民国民の首を絞めることになるのだという現実に気づいていない。この国が官僚の支配に乗っ取られて久しい、ということに気づいていない。「原発」がその証左なのに。
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◆小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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September 28, 2011, 8:31 pm
日米関係の時限爆弾となる野田首相の国会答弁
2011年09月29日08時35分 佐藤優の眼光紙背:第118回
筆者が本コラム(9月25日付眼光紙背「日米首脳会談で、普天間問題をめぐる深刻な認識の差異が明らかになった」)で、ニューヨークで9月21日(日本時間22日)に行われた日米首脳会談で、オバマ大統領が野田佳彦首相に対し、「結果を求める時期が近づいている」と述べたとされる件について、26日の衆議院予算委員会で野田首相がきわめて重要な答弁をした。毎日新聞の報道を引用しておく。
野田首相:普天間の辺野古移設、米大統領「結果求める時期」発言否定−−衆院予算委
野田佳彦首相は26日の衆院予算委員会で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の沖縄県名護市辺野古への移設時期について「いつまでにと明示するのは困難だ」と強調し、「誠心誠意、説明しながら、(沖縄県側の)理解をなるべく早い段階で得られるようにしたい」と述べた。
ニューヨークでの日米首脳会談後、米側はオバマ大統領から「結果を求める時期が近い」と早期実現を求めたことを発表したが、首相は「(記者に)ブリーフした方の個人的な思いが出たのではないか。大統領は『その進展に期待する』という言い方だった」と否定した。石原伸晃氏(自民)への答弁。(9月27日毎日新聞電子版)
本件について、以下の琉球新報の報道を読むと事態の深刻度がよくわかる。
首相「結果求める」否定 米大統領発言、衆院予算委で答弁
【東京】日米首脳会談で米軍普天間飛行場移設問題について、オバマ米大統領が野田佳彦首相に対し「結果を求める時期に近づいている」と発言したとされる件で、野田首相が26日の衆院予算委員会で発言の事実を否定した。野田首相は「大統領本人というよりも、ブリーフ(説明)をした方の個人的な思いの中で出たのではないか」と述べた。石原伸晃議員(自民)に答えた。
オバマ大統領の「結果を求める時期」については、米国務省のキャンベル次官補が記者団に説明していた。
キャンベル次官補は「日米双方とも結果を求める時期に近づいていることを理解している。その点は大統領も非常に明確にしていた」と言及。それを受け、日本側メディアが大統領発言として報道し「米の強硬姿勢が鮮明」などと解釈を付けていたが、野田首相の認識と大きく食い違っていることが浮き彫りになった。
野田首相は26日の衆院予算委員会で、首脳会談での普天間に関する議論の中身について「(危険性を)固定化することなく、負担軽減を図っていくという説明をして、沖縄の皆さんのご理解をいただくという基本姿勢を述べた」と説明。大統領の発言については「『その進展に期待する』という言い方だった」と述べ、報道された発言内容を否定した。「結果を求める時期」との発言については「ブリーフをした方の個人的な思いの中から出たのではないか」と指摘した。(9月27日琉球新報電子版)
国会質問における首相の答弁について、質問者は事前に質問を政府に通告する。石原伸晃自民党幹事長は、「日米首脳会談ではオバマ大統領から、期限を触れて約束の履行を守るよう求められた。このような状態の中で、普天間の移設について、いつまでに結論を出すのか、具体的に」と質した。この趣旨の質問がなされた場合、外務省が答弁案を作成する。その場合、日米首脳会談の記録をチェックする。首脳会談の記録は、外交の世界の業界用語で言う「バーベイタム(verbatim、逐語的な)」で作成される。オバマ大統領、野田首相の発言が正確に再現されるのである。通訳の表現がわかりにくかったり、意訳である場合は、オバマ大統領が英語でどう言ったかも記録される。この記録に照らし合わせたうえで、26日の衆議院予算委員会における野田首相の、「時期が云々というのは、大統領本人というよりも、ブリーフをした方の個人的な思いの中で出たんではないかと思う。オバマ大統領のお話しはその進展に期待をするという言い方であった。」という答弁がなされている。従って、少なくとも日本側の会談記録には、「結果を求める時期に近づいている」というオバマ大統領の発言は記録されていないと考えるのが妥当だ。
それでは、米国側はどう説明したのか。キャンベル国務次官補のブリーフ記録では、「私が思うに、双方がわれわれは結果を求める時期に近づいていることを理解しており、そして、そのことは大統領によって非常に明確にされた(I think both sides understand that we're approaching a period where we need to see results, and that was made very clear by the President.)。」となっている。
ブリーファー(説明者)の仕事は、首脳会談の内容に関する正確な情報をマスメディアに提供することだ。そもそも、大統領の発言のごとく装って、「個人的な思い」を伝えることは、外交官の職業的良心に反する行為だ。特に米国は、官僚が大統領の発言の取扱に関しては、とても厳格だ。その意味で、客観的に見て、このブリーフを行ったキャンベル氏は危機的状況に置かれている。もっとも日本のマスメディアがこの事実を大きく扱わないので、この危機的状況が等身大で認識されていない。日本の外務官僚は、この危機が露見しないように、キャンベル国務次官補の「個人的な思い」ということにすれば、何とか逃げることができると考えているのだろう。具体的には、「私は〜と思う(I think~)」と言っているので、これは「個人的な思い」で、それを大統領の発言と勘違いした日本人記者の水準の問題だという、マスメディアを侮蔑した論理を展開している。しかし、キャンベル氏は「このことは大統領によって非常に明確にされた」と述べている。オバマ大統領から時期に関する要請が野田首相になされたと理解するのが合理的だ。
筆者のところに入ってくる情報だと、外務官僚は「キャンベルさんの説明は(米国の)議会対策の国内向けなので、問題視すべきでない。事態を穏便に済ませるべきだ」という働きかけを民主党の有力政治家に対して行っている。しかし、このアプローチは間違いだ。沖縄の世論は、オバマ大統領の言葉を「騙って」、米国の官僚が「結果を求める時期に近づいている」と米海兵隊普天間飛行場の辺野古移設の強行に向けた圧力をかけてきたと見ている(そう見て当然である筆者も思う)。これに対して、国会の場で、野田首相が「時期が云々というのは、大統領本人というよりも、ブリーフをした方の個人的な思いの中で出たんではないかと思う。オバマ大統領のお話しはその進展に期待をするという言い方であった。」とキャンベル氏のブリーフ内容を否定したにもかかわらず、その事実を日本の外務官僚がひたすら隠蔽しているように沖縄のマスメディア、政治エリートには映る(そう映って当然と筆者も考える)。野田首相の国会答弁が、日米関係に時限爆弾を仕掛けることになったと筆者は見ている。
この問題については、日本政府が外交ルート(すなわち日本外務省)を通じて、事実関係を確認し、「オバマ大統領は『結果を求める時期に近づいている」と発言しなかった」という事実関係を明らかにするとともに、「キャンベル国務次官補は、『双方がわれわれは結果を求める時期に近づいていることを理解しており』とおっしゃられたが、少なくとも日本側、すなわち野田首相は、そう認識していない。普天間飛行場の移設は沖縄の人々の理解を得ずに進めることはできないので、時間が必要だというのが日本側の認識だ」という実状を明らかにすべきだ。
沖縄の外務官僚、防衛官僚に対する不信は極点に達している。政治主導でその不信から信頼に向けた道筋を整えなくては、普天間問題の解決は不可能だ。キャンベル氏の「個人的な思い」によるフライングが、ただでさえ複雑な沖縄の人々の感情を一層複雑にしていることを東京の政治エリート(国会議員、官僚)は、冷徹に認識することだ。真実を明らかにし、「結果を求める時期に近づいている」という時限性の圧力を取り払うことが、日米同盟を危機から救うことになる。私が思うに(I think)、現在の外務官僚の姑息な手法では、日本の友人であるキャンベル氏にかえって迷惑をかけることになる。(2011年9月29日脱稿)
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◆普天間問題をめぐる認識の差異「I can do business with him」2011-09-26 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
日米首脳会談で、普天間問題をめぐる深刻な認識の差異が明らかになった【佐藤優の眼光紙背】2011年09月25日10時00分
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September 28, 2011, 8:44 pm
ビートたけしも感謝する?!「暴排条例」で暴力団・企業舎弟・密接交際者の海外逃避が始まっている最後に残った東京、沖縄も10月1日に施行
現代ビジネス2011年09月29日(木)伊藤博敏「ニュースの深層」
暴対法によって指定暴力団となっている組織の幹部が率直に明かす。
「形のうえで本部は残しますが、経済上の拠点、実質的な本部はマカオに移しました。香港、上海、シンガポールなどにも拠点を置いて、経済活動をするつもり。英語ができるのも、中国語ができるのもいるので、何の支障もありません。日本では、何ひとつできないんだから仕方がない」
警察庁が全力をあげる暴力団排除の動きが、暴力団の"懐"を直撃、身動き取れないまま、日本脱出を始めている。
彼らにとって致命的なのは「反社会的勢力(反社)」と認定を受けたうえでの銀行口座の閉鎖だった。警察当局などと協議を続けてきた金融機関は、「暴力団と交際していると判断される場合、契約を解除できる」という「暴力団排除条項」を導入、09年9月以降、警察の「反社認定」の作業と合わせ、次々に銀行口座を閉じる作業を始めた。
*密接交際者を決める警視庁犯罪対策第三課の「サジ加減」
その"仕上げ"が暴力団排除条例(暴排条例)だ。10月1日、最後に残った東京都と沖縄県が施行、暴力団幹部、企業舎弟、共生者と呼ばれる暴力団側の関係者だけでなく、「密接交際者」であれば「住民側」も、「勧告」され、それに従わなければ氏名を「公表」される。次に「命令」を受け、さらに罰金刑などを課せられ、最後は刑事告発のうえで刑事罰を問われる可能性も出てきた。
この「密接交際者」の定義は曖昧だ。暴力団事務所に出入りこそしないが、不動産、土建、金融などを一体となって行う「企業舎弟」から、昔からの友人知人のつもりでつきあい、飲食ゴルフを共にしただけで「密接交際者」となる場合もある。最終的には、認定作業を行う警視庁組織犯罪対策3課の"サジ加減"だ。うかつな人間より、認定を怖れる確信犯の方が、排除を免れかねない。
この暴排条例の効果は大きい。事務所を貸す、駐車場を貸す、みかじめ料を納める、暴力団系企業から物品を購入するという「住民側」も、氏名が公表されれば、自動的に銀行口座は閉じられる。なによりまともな企業はコンプライアンスを理由に、取引を停止してしまうだろう。それが、合法的にトラブルなく行われるように、「反社とわかれば契約は打ち切ります」という「暴排条項」を結んでいる場合も少なくない。
氏名の公表は、ビジネス的には「死」と同じだ。なんとしてでも避けなければならない。 『週刊文春』でビートたけしが、「暴排条例が出来た方が、それを理由に断れるからありがたいよ」と、述べていたがその通りである。
暴排条例の先にあるのはマフィア化だ。当局が認定する構成員と準構成員の数が減る一方で、認定できない「周辺者」の数が増えるのは間違いない。
日本にいる以上、「隠し講座」はいつか通用しなくなる。地下に潜っている「親密交際者」との関係も、本部が日本にある限り、どこかで点と点が結ばれて線となり、認定され排除される。それならいっそのこと海外に、と暴力団は発想する。今のビジネスシーンで、銀行口座がなければ、どんな取り引きも成立せず、「排除条項」と「排除条例」による口座の閉鎖は、彼らにとって海外への選択がやむを得ない段階に来たことを示している。*仕手筋も海外脱出
暴力団だけではない。
不動産証券化、株式、債権、商品先物といった金融商品を扱うファンド関係者や仕手筋のなかには、「反社認定」が厳しくなった頃から海外脱出組が増えた。
そのために「50の手習い」で、一から英会話をマスターした人がいる。
「もう日本が嫌になった。年に何億も納税しているのに、何のメリットも与えてくれない。それどころか、何か悪いことやっているんじゃないかと、鵜の目鷹の目でアラを探す。投資業だからいろんな人と出会うし、危ない世界の人もいる。カネに色はつかないからオレは気にしないけど、これから『反社』だと勝手に認定され、財産没収ということになりかねない。難点は英語だったが、一生懸命学校に通って、家庭教師も雇い、なんとか日常生活に困らなくなった。近く、一家でシンガポールに行きます」(先物相場師)
窮屈になる一方の環境を嫌って、すべての資産を投げ売り、年内に韓国に移住する著名な仕手筋のX氏がいる。知人が代弁する。
「増資に絡む株担保融資や新株引受で、Xは100億円以上の資金を残しました。警察当局は山口組の企業舎弟と認定しているのですが、本人は『急ぎのカネを暴力団に貸しているだけ』という認識です。でも暴排条例の施行で、もう株売買はどんな手を使ってもできなくなるでしょう。本人は日本生まれの在日三世ですが、豪邸、別荘、絵画、書画骨董などの類をすべて売却。恐らく50億円以上になるしょうが、それを持って韓国に永住するつもりです」
暴排条例は、暴力団だけでなくその周辺者に「密接交際者」か「一般市民」かの踏絵を踏ませて、清流に住むことを求める。表立っての反対は難しいが、国家にそこまで強制されることを嫌い、暴力団も絡むグレーゾーンでの生き方が好きな人もいる。
そんな人は、続々と日本を脱出、ついには暴力団が本部を移転、「反社の空洞化」が始まった。暴排条例の適用が厳しくなればなるほど、その傾向は強まり、やがて山口組の総本部はそのままに、運用本部、資金管理会社はすべて海外、という時代が来るのかも知れない。
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◆島田紳助さん、引退/幾つかの「ナゾ」/渡辺二郎・羽賀研二被告の裁判(弘中惇一郎弁護士)と大阪府警?2011-08-24 | 社会
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September 29, 2011, 3:21 pm
沖縄密約開示訴訟:沖縄返還、密約文書「廃棄の可能性」 東京高裁、開示請求を却下
元毎日新聞記者の西山太吉さん(80)ら25人が、72年の沖縄返還を巡る日米間の密約を示す文書の開示を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は29日、国に開示を命じた1審・東京地裁判決(昨年4月)を取り消し、原告側の請求を退けた。青柳馨裁判長は密約と文書の存在を認める一方、「不開示決定(08年10月)の時点で文書は無かった」と判断。同決定までに文書が廃棄された可能性があると指摘した。(3面にクローズアップ、25面に判決要旨、社会面に関連記事)
西山さんらは08年9月、沖縄返還に絡み日米高官が▽米軍用地の原状回復費400万ドルと米短波放送の国外移設費1600万ドルの日本による肩代わり▽沖縄返還協定の日本側負担(3億2000万ドル)を超える財政負担−−に合意(密約)したことを示す文書など7点を開示請求。外務・財務両省は翌10月、「文書不存在」を理由に不開示とした。
高裁は、日米高官が密約の内容を記載した文書を69〜71年に作成し、外務、財務両省が保有していたと認定。控訴審で国が新たに証拠として提出した外務省有識者委員会の報告書(昨年3月公表)が「広義の密約」を認めたことにも言及した。
その上で有識者委の調査でも文書を発見できなかったとし、「その後に歴代の事務次官らから聴取するなど国の探索は網羅的で徹底しており調査の信用性は高い」と指摘。「日本政府は肩代わりを国民に秘匿する必要性があったと考えられ、外務、財務両省は文書を通常とは異なる場所で、限られた職員しか知らない方法で管理していた可能性が高い」とした。
さらに「情報公開法の制定により、文書を公開してそれまでの説明が事実に反していたことが露呈するのを防ぐため、両省が同法施行前に、秘密裏に廃棄した可能性を否定できない」と述べた。
こうしたことから「(文書作成から三十数年以上経過した)不開示決定の時点で、両省が文書を保有していたとは認められない」と結論づけた。
文書存在の立証責任に関しては「原告側が過去のある時点で文書が作成されたことを証明した場合、国が廃棄を立証しない限りは文書保有が続いていると推認される」との1審判断を踏まえつつ、密約文書の特殊性から「保有は推認できない」とした。【和田武士】
◆東京高裁判決の骨子◆
・密約文書の開示と慰謝料支払いを命じた1審判決を取り消す
・国は過去に密約文書を保有していたと認められるが、現存しない。秘密裏に廃棄したか、保管外にした可能性を否定できない
・文書を発見できなかったとする10年の外務、財務両省の調査は信用できる
毎日新聞 2011年9月30日 東京朝刊
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沖縄密約訴訟:「大勝利だが大敗北」原告側、一定の評価も
密約は確かに存在したが、その文書は今はない−−。沖縄返還の際の日米密約を裏付ける文書の開示を求めた訴訟の控訴審で29日、東京高裁は情報公開法施行(01年4月)前に国側が廃棄した可能性を指摘した。原告側は「大勝利と同時に大敗北」と表現。「情報公開法の精神が踏みにじられた」と批判のボルテージを上げた。
判決後、原告・弁護団は東京・霞が関の司法記者クラブで会見。原告の元毎日新聞記者、西山太吉さん(80)は「特定の職員が特定の方法で管理し、廃棄した可能性に踏み込んだ。1審よりもドーンと進んだ」と一定の評価をした。だが、次第に「判決は『捨てたんだから、ないものはない』と言い、廃棄について遺憾の『い』も言っていない」、「司法の独善、限界が露呈された。情報公開とはそんなものか」と机をたたきながら、語気を強めた。
一方、上告について原告団は「検討する」と述べるにとどめた。
原告団は1月、作家の澤地久枝さん(81)を代表に「市民による沖縄密約調査チーム」を結成し、開示された4500ページを超える外交文書を分析した。開示された文書は、沖縄返還交渉段階のものが多数を占め、財政負担が発生する最終的な合意段階の文書が欠けていた。このため原告側は廃棄の可能性も念頭に「不合理だ」と控訴審で主張した。
澤地さんは会見で「これまで外務省は一枚岩となって密約文書の存在を一切認めてこなかった。裁判所はその外務省を救った。実に内容のない、お粗末な判決」と批判した。【野口由紀、伊藤一郎】
◇「裁判した価値はあった」北岡和義さん
72年に国会を震撼(しんかん)させた沖縄密約事件の「現場」に居合わせた原告の一人は「乱暴な判決だ」と憤りを隠さなかった。日本大国際関係学部非常勤講師の北岡和義さん(69)=静岡県熱海市。当時、社会党の横路孝弘議員(現衆院議長)の公設第1秘書だった。
72年3月27日の衆院予算委。横路議員は毎日新聞記者だった西山さんから入手した機密公電のコピーを手に密約疑惑を追及、北岡さんは傍聴席で質疑を見守った。報道陣のカメラのフラッシュが一斉に光った光景を今も忘れない。
30年余りが過ぎた05年春。米国でニュース番組制作の仕事に携わっていた北岡さんは、知人から西山さんが国家賠償を求めて提訴したと聞いた。西山さんは事件後、長く沈黙を守っており、その行動に「正直驚いた」。議員の質問は「不発」に終わり、「道義的責任を感じた。西山さんの復権のため支援しよう」と帰国した。
司法が初めて「密約」を認めた1審。原告側が訴訟で追求したのは「国民の知る権利の実現」であり、西山さんも会見で「画期的判決」と興奮気味に意義を強調した。だが、北岡さんは「記者人生を終わらせざるを得なかった西山さん個人の憤りや喜びをもっと聞きたい」とも感じた。
逆転敗訴で迎えたこの日の会見で怒りをあらわにする西山さんを見ながら「個人的な悔しさがこみ上げてきたのだろう」と語る。だが、北岡さんはこうも思う。「訴訟を通じて密約があったことを社会に知らしめ、西山さんも十分に復権できた。その意味で裁判をやってきた価値は消えない」 【和田武士】
毎日新聞 2011年9月29日 21時53分(最終更新 9月30日 1時12分)
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「文書廃棄を奨励」西山さんら高裁批判
沖縄タイムス2011年9月30日 09時34分(1時間27分前に更新)
【東京】「司法は死んだ」。沖縄返還をめぐる密約文書の開示請求訴訟の控訴審判決で逆転敗訴した元新聞記者の西山太吉さん(80)ら原告は29日、東京・霞が関の司法クラブで会見し「国家の秘密を国民の前に明らかにし、歴史の審判を受けるという情報公開法の精神を蹂躙した」などと相次いで批判した。「保存すべき文書を廃棄した国の責任を追及すべきだ」「外務省が探して見つからないから『ない』というだけの判決」と怒りの声を上げ、憲法判断を示すべきだとして上告を求める考えを示した。
午後2時すぎ、青〓馨裁判長が「原判決を取り消す」と切り出し、主文だけを読み上げた。
西山さんや作家の澤地久枝さん(81)ら原告は厳しい表情を崩さず、重苦しい空気が原告席を包んだ。日本弁護士会館の待合室に集まった原告団は、判決文に目を通し「秘密文書は捨てた方がいいと推奨しているような判決だ。開いた口がふさがらない」と怒り心頭。
西山さんは「判決は、外務省が否定していた密約文書や廃棄を認めた。密約の全面肯定だ。その点では全面勝訴だ」と強調。一方で「廃棄されたなら、米国の外交文書を追認し、開示を命じるべきだ」と主張した。「永久保存すべき文書を廃棄したという違法行為があったのに、裁判所は遺憾の『遺』も言わずに追認した」と批判を強めた。
公開された外交文書を独自に調査し、控訴審に提出した澤地さんは「沖縄返還時の遠い話ではない。戦前戦後を通し、日本の国家は秘密主義だ。永久に秘密が明らかにならなければ、このまま勝手なことが行われてしまう。若い人にも切実な問題」と主張した。
原告共同代表の桂敬一さんは「判決は知る権利を抽象的な権利としている。情報公開は国家の債務的な行為である。憲法判断を示す必要がある」と述べ、上告を示唆した。※(注=〓は「柳」の異体字)
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社説:沖縄密約文書判決 廃棄疑惑に国は答えよ
「文書はかつて政府が保有していたが、秘密裏に廃棄した可能性を否定できない」−−。沖縄返還交渉をめぐる日米密約文書の開示訴訟で、東京高裁はこんな判断を示した。持っていないものは開示できない、との理屈で西山太吉元毎日新聞記者ら原告が求めた開示請求は却下したものの、実質的には国による隠蔽(いんぺい)工作が過去にあった可能性を示す判決である。外務省は廃棄の有無などについて改めて調査し、真実を国民の前に明らかにする責任がある。
原告が開示を求めていたのは、沖縄返還にあたり米国が支払うべき旧軍用地の原状回復費400万ドルを日本側が肩代わりすることなどを示した文書である。昨年4月の1審判決は密約文書の存在を認め、政府の調査は不十分だと指摘。「国民の知る権利をないがしろにする国の対応は不誠実」として、文書の全面開示を命じた画期的なものだった。
一方、今回の高裁判決は同じように密約文書の存在を認めながらも、政権交代後に外務省や財務省が行った探索や歴代幹部の事情聴取でも出てこなかった以上、もはや文書はないのだろう、と結論づけた。
重要なのは、密約文書がないのは存在しなかったからではなく、いつかの時点で「秘密裏に廃棄、ないし保管から外した可能性を否定することができない」と判決が述べたことだ。そこまで言及しながら、不開示決定を適法だとしたのは政府に甘い判決と言わざるを得ないが、1審、2審と司法が相次いで密約文書の存在を認め、その廃棄の可能性にまで言及した事実は極めて重い。
そもそも開示請求対象の文書の写しは米国立公文書館で公開されており、元外務省局長も文書に署名したことを認めている。密約文書はあったというのが国民の抱く常識的感覚だ。「保有していないという従来の政府の主張が認められた」(藤村修官房長官)と言ってすませようとする政府の姿勢は感覚を疑う。
外交文書は30年経過で原則公開されるが、政府に不都合なものは恣意(しい)的に除外されることが多い。外交交渉には秘密がつきものとはいえ、一定の期間が過ぎたらすべてを公にすることは、国民が国家の重要な政策選択について正しい理解と建設的な批判をするため不可欠だ。公文書は役所のものではなく国民の共有財産である、という自覚が、日本の行政には著しく欠けてはいないだろうか。
密約文書の問題に象徴される政府の不誠実な姿勢は、今日に至る沖縄の政府不信につながっている。普天間飛行場問題に解決の糸口が見えないまま、来年は沖縄の本土復帰から40周年の節目だ。野田政権の沖縄への姿勢が改めて問われよう。
毎日新聞 2011年9月30日 2時30分
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◆『検察を支配する「悪魔」』田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)
p156〜 大衆迎合メディアが検察の暴走を許す---田原
マスコミを踊らすなんて、検察にとっては朝飯前なんですよね。
最近の事件で言えば、堀江貴文の事件。堀江は拘置所に入っているにもかかわらず、マスコミには堀江の情報が次々と出てきた。あれは検察がリークしたとしか考えられない。
最近はとくに意図的なリークによって世論を煽り、有罪にできなくとも、世論に断罪させて社会的責任を取らせようとする傾向が強くなったように思う。
情報操作によって世論を喚起した事件として思い出すのは、沖縄返還協定を巡って1972年に毎日新聞政治部記者、西山太吉と外務省の女性事務官が逮捕された外務省機密漏洩事件です。
西山記者が逮捕されたとき、「言論の弾圧だ」「知る権利の侵害だ」という非難が国民の間で上がった。
そこで、検察は起訴状に「西山は蓮見(女性事務官)とひそかに情を通じこれを利用し」という文言を盛り込み、批判をかわそうとした。この文言を入れたのは、のちに民主党の参議院議員になる佐藤道夫。
検察のこの目論見はまんまと成功、西山記者と女性事務官の不倫関係が表に出て、ふたりの関係に好奇の目が注がれ、西山記者は女を利用して国家機密を盗んだ悪い奴にされてしまった。
本来、あの事件は知る権利、報道の自由といった問題を徹底的に争う、いい機会だったのに、検察が起訴状に通常は触れることを避ける情状面をあえて入れて、男女問題にすり替えたために、世間の目が逸らされたわけです。
西山擁護を掲げ、あくまでも言論の自由のために戦うと決意していた毎日新聞には、西山記者の取材のやり方に抗議の電話が殺到、毎日新聞の不買運動も起きた。そのため、毎日は腰砕けになって、反論もできなかった。
さらに特筆すべきは、検察の情報操作によって、実はもっと大きな不正が覆い隠されたという事実です。『月刊現代』(2006年10月号)に掲載された、元外務省北米局長の吉野文六と鈴木宗男事件で連座した佐藤優の対談に次のような話が出てくる。吉野は西山事件が起きたときの、すなわち沖縄返還があったときの北米局長です。
その吉野によると、西山記者によって、沖縄返還にともない、日本が400万ドルの土地の復元費用を肩代わりするという密約が漏れて、それがクローズアップされたけれど、これは政府がアメリカと結んだ密約のごく一部にしか過ぎず、実際には沖縄協定では、その80倍の3億2000万ドルを日本がアメリカ側に支払うという密約があったというのです。
このカネは国際法上、日本に支払い義務がない。つまり、沖縄返還の真実とは、日本がアメリカに巨額のカネを払って沖縄を買い取ったに過ぎないということになる。
こうした重大な事実が、西山事件によって隠蔽されてしまった。考えようによっては、西山事件は、検察が、佐藤栄作政権の手先となってアメリカとの密約を隠蔽した事件だったとも受けとれるんです。
西山事件のようにワイドショー的なスキャンダルをクローズアップして事件の本質を覆い隠す手法を、最近とみに検察は使う。
鈴木宗男がいい例でしょう。鈴木がどのような容疑で逮捕されたのか、街を歩く人に聞いてもほとんどがわかっていない。あの北方領土の「ムネオハウス」でやられたのだとみんな、思いこんでいるんですよ。しかし、実は北海道の「やまりん」という企業に関係する斡旋収賄罪。しかも、このカネは、ちゃんと政治資金報告書に記載されているものだった。
興味本位のスキャンダルは流しても、事の本質については取り上げようとしないメディアも悪い。いや、大衆迎合のメディアこそ、検察に暴走を許している張本人だといえるかもしれませんね。
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◆なぜ外交文書の公開は必要か2010-03-18 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
◆核機密 「全容は今も闇の中だ」=西山太吉さん 検察を支配する「悪魔」(田原総一朗+田中森一)2010-03-10 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
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