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『日刊ゲンダイ』ガサ入れの裏に新聞業界と警視庁生安のジェラシー/日本メディアの根本的な問題

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日刊ゲンダイのガサ入れの裏に「ジェラシー」ありき
宮崎学オフィシャルサイト

 10月27日、「違法な風俗店の広告」を掲載したとして広告代理店社長が逮捕され、日刊ゲンダイ本社に家宅捜索が入った。ガサ入れの様子は大々的に報道されたので、見た人も多いと思う。
 当日にテレビカメラが入るということは、事前に記者クラブにブリーフィングがあったということだ。同じメディア業界の者たちが特定のメディアにダメージを与えるような報道をすることに私は強い違和感を覚えた。それと同時に、この種の報道をした「記者たち」が「ざまあみろ」と感じたかどうか、問うてみたいと思った。
 なぜこのような事態になったのか。事件について自分なりに「推認」してみたい。まず、石川知裕議員の有罪判決で有名になった「推認」なる言葉は、デジタル大辞泉には
≪すい‐にん【推認】[名](スル)これまでにわかっている事柄などから推し量って、事実はこうであろうと認めること。「密約文書が保存されていると―する」≫
 とあるが、言葉としては普段は使われない。
 法律学小辞典(有斐閣)には「推定」はあるが、「推認」は載っていないのだが、法律関係者によると、「推認」とは「裁判官用語」とのことである。裁判官や法廷に出る弁護士、検察官が好んで使う用語であって、日本語としてはなじみが薄いのである。
 前置きが長くなったが、今回の家宅捜索を私が「推認」すると、二つの「男の嫉妬」が見え隠れする。
 まず、一つめ。この出版不況にあっても日刊ゲンダイは発売部数を伸ばして健闘してきた。部数がそこそこいいことに対するメディア特に新聞業界のジェラシーがある。特に日刊ゲンダイは、他紙と違って「反小沢」ではない。小沢叩き一色の業界の中で横並び報道を排した冷静な報道をしてきた稀有な存在だ。だから部数も伸びていたのだと「推認」できる。多様な意見を取り上げるのがメディアの役割であるのに、人気が出ると異端視して排除したがるのが既存メディアなのである。
 そして、二つめのジェラシー。昨今の暴力団排除で目立っている警視庁のマル暴こと組対(組織犯罪対策部)4課に対する生安(生活安全部)のジェラシーである。
 もともとヤクザ相手の組対4課とは、警視庁の中でもバカにされていたと「推認」される部署なのだが、最近は条例だ法改定だと、ちょっと雰囲気が違ってきた。そこで、エロの取締まりなどを担当する生安が「マル暴だけが目立ちやがって。俺たちもいっちょ行っとくか」と存在感を示したかったと「推認」している。
 「警視庁は今回の事件を受け、日本新聞協会など7団体に対し、違法広告を掲載しないよう確認の徹底を要請していて、今後、取り締まりをいっそう強化する方針です」とTBSが報道していたが、「ヤクザの次はエロで行くぜ」と強硬策に出たのだと「推認」している。
 これにより、他のメディアもエロに対して委縮するはずだ。こうした状況は、私のコンビニ訴訟で実話誌の腰が引けていたことからも「推認」できる。今後は記者クラブのあり方を含め、いろんな議論をしなくてはならない。
 今回の件も事件としては大きくないが、根深い問題がある。
■「推認」と「特定」
 さて、「推認」についてもう少し考えてみよう。
 来年の国会で成立が予定されている暴対法の「改正」では、「実行犯が特定されない段階でも、脅迫電話などの捜査から攻撃した組がほぼ特定されれば、規制に踏み切る」(10月13日付け読売新聞電子版)としている。状況証拠で何でもアリにするという話で、各紙がほぼ同様の報道をしている。
 つまり、これも「推認」だ。確たる証拠がなくても、周囲の事情を見て、脈絡から「特定」する。非常に恐ろしい、恣意的な判断である。
 石川判決でも明らかなように、「推認」は、刑事裁判の大原則である「疑わしきは被告人の利益に」をまったく無視しているのだが、それがどんどん拡大する傾向にある。
 ちょっと話はそれるが、かつて社会主義国の法律を研究する「社会主義国法」というのがあった。学生時代にその権威であるF教授の講義をこっそり聞きに行ったことがある(登録してなかったからな^^;)。
 教授によると、「推認」や「みなし」という言葉を最も頻繁に使ったのは旧ソ連など社会主義国家であったという。国家に不都合な「違法行為」を取り締まるために、いろいろと拡大解釈して、たくさんの人をシベリア送りにした。
 いわゆる「革命的適法性」である。革命の為なら何をしてもいいというもので、極めてザツな、法とは言えない法の適用であった。
 現在の「推認」は、まさに同じではないか。
 個人の自由が、暴力団排除という極めてわかりやすいロジックで狭められているのだ。
 そもそも自由(freedom)については、さまざまな形で弾圧を受けてきた左翼が最も大切にしなくてはならない概念である。
 しかし、ことヤクザに関しては何の反応もないどころか「ヤクザなど弾圧されて当然」という態度である。結局、基本的人権だとか自由とか言っている左翼言論には「ただしヤクザを除く」という但し書きがついているのだ。
「私は君の言うことに賛成しないが、君がそれを言う権利は死んでも守るつもりだ(S・G・タレンタイア『ヴォルテールの友人』より)
 そんな言葉は、もう死語となってしまったのだろうか。2011年10月30日 宮崎学 
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ウォルフレン氏 日本政府煽る財政危機は実情と異なると指摘
NEWSポストセブン2011年11月6日(日)7時00分配信
 テレビ界では、「テレビ減税」(通信・放送システム災害対策促進税制)の創設が画策されている。東日本大震災を名目に、テレビ、ラジオ、通信業者の災害用設備新設の法人税優遇(2年間の特別償却)と固定資産税優遇(課税標準を5年間3分の1に圧縮)という図々しい要求である。
 総務省は概算要求の税制改正要望にすでに盛り込んでおり、この改正は、すんなり通る可能性が高い。
 民放キー局の親会社である大手新聞も同様のことを企んでいる。消費税増税の必要性を紙面で主張する一方で、「新聞代は消費税免除に」と陳情し、野田内閣はそれを認める方針である。
 こんな連中が、野田内閣が進める大増税、年金1000万円カットを「仕方ない」「国民も痛みを」と後押ししているのである。
 アムステルダム大学教授で、日本の権力構造に詳しいカレル・ヴァン・ウォルフレン氏が指摘する。
 「テレビをはじめとする日本メディアの根本的な問題は、国家権力の中枢にいるエスタブリッシュメントたちの考え方に無批判に従っているだけで、彼ら自身にそれを深く理解し、批判する力がないことです。
 例えば日本の財政赤字はほとんどは日本国内からの借金で、国外から借りているわけではない。むしろ日本は米国債を大量に保有しており、政府が煽る財政危機は明らかに実情と異なる。政治家や官僚の言葉を垂れ流すことは、すなわち国民を騙すことにつながる」 ※週刊ポスト2011年11月11日号 *強調(太字・着色)は来栖
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陸山会・西松建設事件判決に見る危うさ 調書主義を転換、裁判官の印象・推認で黒白を決するようになった2011-09-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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大マスコミが伝えない小沢一郎 憂国論2011-10-08 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は小沢一郎裁判をどう見ているのか2011-10-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 緊急インタビュー カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は小沢裁判をどう見ているのか
日刊ゲンダイ20102010月24日
小沢氏のカネの出所?「それがどうした」と言いたい
<司法と大メディアによる「人物破壊」>
「誰が小沢一郎を殺すのか?」(角川書店)――オランダ人のジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は今春、この本を出して話題を呼んだ。小沢一郎という異能の政治家を検察、メディアがよってたかって潰そうとしている実情を描き、日本の特殊性、異常を浮き彫りにしたのである。さて、その後、陸山会事件では元秘書3人に有罪判決が下り、小沢氏本人の裁判も佳境を迎える。司法判断、それを報じるメディアの姿勢、小沢氏本人の対応について、改めて、冷徹なジャーナリストに聞いてみた。
 私が最初に小沢氏に会ったのは90年代半ばで、サンデー毎日誌上でやった対談でした。実は、その後も、彼をずっと追い続けていたわけではありません。むしろ個人的には菅氏との方が親しいくらいです。
 2010年の暮れ、小沢氏と再会しました。そのとき、素直にこう言ったものです。
「はっきり言って、あなたのことはよく知らない。どういう人なの?」
 そして今夏、再び長い時間、話をする機会があって、彼が本当に強いリーダーであることを再認識しました。
 何が言いたいのかというと、私は小沢氏本人に人間的な興味があるわけではないのです。小沢氏の所業に対する司法当局とマスコミの扱い方。これは大変異常なものです。これに多大の関心を寄せているのです。
 今、小沢氏を標的にして進行していることは「人物破壊」です。長年かかって築き上げてきた既得権益を破壊しようとする人物に銃口を向け、そして引き金を引く。体制にとって、新種の人間というのはいつの時代も脅威なのです。
 日本の政治史を眺めると、建設業者から領収書のないカネが政治家の元へ流れるというのは、半ば常識化していて、システムとして組み込まれていました。特に小選挙区制に移行する前は顕著でした。これで小沢氏を有罪にするなら、自民党議員の多くも同罪です。
 小沢氏はたぶん、そうした資金を受領していたのでしょう。私がここで指摘したいのは「それがどうしました?」ということです。真の問題点は小沢氏や秘書が金を受領していたかどうかではないのです。
<先進国ではありえない>
 小沢一郎氏の初公判で考えなくてはいけないのは、捜査、逮捕、起訴、裁判が先進国として、きちんとバランスのとれたものであったかということです。
 昨年暮れ頃から、検察に対する不信感が市民の間で増幅してデモが行われたりしていましたが、大手メディアは黙殺したままでした。そこに大震災がきたので、しばらく小沢問題はないがしろにされてしまいました。
 その間にも大手メディアは小沢氏の「人物破壊」を続けました。司法が一人の政治家を撲殺しようとし、それに大手メディアが加担した。それによって、多くの国民が小沢氏=悪者のイメージを持つに至ったのです。
 検察と裁判所の不健全な関係も問題です。日本では起訴された被告は99%以上の確率で有罪になってしまう。こんなことは世界中どこにもありませんが、その検察に小沢氏は完全に狙い撃ちにされたという事実です。 一度は不起訴になったが、検察審査会という新しい手続きが持ち出され、結局は強制起訴された。
 小沢公判の前に秘書3人が有罪判決を受けた陸山会裁判がありましたが、あの判決にも驚きました。これも世界では例がないものでした。(インタビュアー・堀田佳男)
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緊急インタビュー カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は小沢裁判をどう見ているのか
日刊ゲンダイ(2011/10/25)
秘書3人の「推認」による有罪は司法による“大量虐殺”だ
小沢裁判の前に秘書3人が有罪判決を受けた陸山会裁判がありましたが、判決は「推認」による有罪でした。私に言わせれば、あれは司法による“大量虐殺”に等しい。秘書3人は、別に政治献金を着服したわけではありません。単なる記載ミスです。控訴中ですし、真偽はわかりませんが「推認」によって有罪判決を受けるといったことが先進国であっていいのでしょうか。
少なくとも他の民主主義国家でこの程度のことが重罪とされることはないでしょう。裁判官の見識を疑わざるを得ません。犯罪と呼べる行為ではありません。ですから有罪判決が下されたことは大変残念です。
日本の司法と新聞には「推定無罪」という当たり前の考え方が存在していません。疑わしきは罰せずという基本的姿勢が感じられません。新聞も最初から「小沢有罪」という流れで書いています。
■日本のスキャンダルは作為的
私はずいぶん日本のスキャンダルについて勉強しました。月刊誌「中央公論」にも以前書きましたが、日本のスキャンダルというのは故意に仕立て上げられる。違法行為を犯していなくとも、意図的に銃口を向けて撃ち落とせるカラクリがあるのです。
この点で日本は法治国家と本当にいえるのか疑問です。あえて問われれば、答えは「イエス」と「ノー」の両方。日本は近代国家ですが、一方で国家の中心にあるべき核になるものが見えません。日本の政治システムは合議制で、大統領制のような強い行政力を持ったリーダーを意識的につくってこなかったのです。
■小沢は反米ではない
鳩山政権時代、小沢氏はずっと後ろで鳩山氏を支えていました。しかし、その鳩山政権を米国は明らかに倒したかったはずです。ワシントンは「独立した日本」は望まないのです。鳩山氏は、ASEANに日本と中国と韓国を加えた「ASEANプラス3」としきりに言っていましたし、小沢氏は議員を大勢連れて中国に出向いたりしていました。こうした行為はワシントンの癇(かん)に障る。「勝手なことはやめてくれ。日本は我々がOKということだけをやっていればいいのだ」ということです。
私は長年、日米関係を研究していますが、それは歴史的に見ても世界に他にはない二国間関係だから興味がそそられるのです。しかし一方で、悲しいことにあまりに片務的です。日米関係はかつては日本の産業発展に役立ちましたが、いまや役に立たないどころか、危険な関係になっています。
小沢氏の起訴に至る今回のケースで、米国がなんらかの役割を果たしたかどうかはわかりません。ただ、そうだとしても私は驚きません。ワシントンは小沢氏を信用していないからです。小沢氏は決して反米ではないのに、バカげたことです。(インタビュアー・堀田佳男)
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緊急インタビュー カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は小沢裁判をどう見ているのか
日刊ゲンダイ(2011/10/26)
大マスコミは「小沢たたき」をやり過ぎたと分かっている
09年の政権交代直後に大手新聞の編集者と酒席を共にした時のことです。彼らは私に「明治維新の後、日本が生まれ変わったように、民主党政権でも再び日本は変わっていけると思うか」と聞いてきました。私は「できるかできないかは、あなたたちにかかっています」と言ってやりました。まったく自分たちのやっていることを理解していない。マスコミがどれほどの力があるかよく分かっていないのです。
昨年、小沢氏が不起訴処分になった時、新聞は1面から大きな記事を書き大騒ぎしました。これは司法とマスコミの騒ぎ過ぎで、日本社会のバランスのなさが如実に表れた好例です。
ただ最近、日本のマスコミの小沢氏への論調が少しずつ変化しています。朝日新聞でさえも変化の兆しが見えます。つまり、小沢たたきをし過ぎたという反省にも似た態度が見られるのです。朝日の編集者と話をすると、自分たちの自己矛盾(二面性)を認めてもいます。週刊誌の論調にも変化が見られます。
■官僚を使いこなせる政治家
政治力という点を考えると、田中角栄は天才でしたね。角栄がすごかったのは、官僚をうまく使いこなしたことです。小沢氏はこの点を角栄から学んだはずです。ですから、小沢氏は官僚からコントロールされずに、官僚を使っていける政治家だろうと思うのです。角栄・小沢両氏に共通するのは、政治家としての自信にあふれている点です。一方、菅・野田両首相はすぐに官僚にコントロールされてしまう。そこが違うところです。
政治家小沢一郎への関心は、自民党政権を終わらせ、民主党政権を樹立し、55年体制を崩した点にあります。
少なくとも、彼が政治潮流のハンドルを切った。当時多くの日本人と話をすると、とにかく自民党政権を終わらせなくてはいけないという思いで共通していました。
そして民主党政権が誕生し、民主党は、官僚任せではなく、政治家主導で政策を立案しなくてはいけないとの強い思いにあふれていました。しかし実現できなかった。
いま民主党議員は2つのタイプに大きく分かれます。ひとつは名声を得るためだけに、ハシゴを一生懸命上っている単なる野心家。このタイプの議員は首相や大臣になることが目標なのです。カネは入るし、周囲からは敬意を払われる。最大の関心事は自身の再選。政策立案には関与しなくていいと最初から思っている。
もうひとつは、政策立案にかかわって政治のハンドルを握ろうとするタイプの政治家です。小沢氏はまさにこのタイプに属するわけです。小沢氏はいまでも最も指導力のある政治家だと思います。
■日本社会の歪みの修正に期待
日本の政治システムは、責任の所在がずっと曖昧なままです。問題が起きた時に、誰が責任を取るのかがはっきりしていない。
民主党政権が誕生した時に、政治的責任という概念が取り沙汰されましたが、結局曖昧なままです。
私が期待するのは、東日本大震災後、東北の復興だけでなく、日本社会の歪んだ部分が修正され、再生してほしいということです。単に復興という観点ではなく、新しい次元で生まれ変わるくらいのエネルギーと英知がほしい。日本が生まれ変わる好機だと考えるべきでしょう。(インタビュアー・堀田佳男)
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「日本の政治家として一番やってはいけないことはなんだと思いますか」「そりゃ、天皇制をいじることだ」2011-10-01『悪党 小沢一郎に仕えて』 ?
「チャーチル/復権・・・」裁判闘争を終えた時、小沢一郎はどんな言葉を国民に語りかけるか。2011-09-24『悪党 小沢一郎に仕えて』?
小沢一郎が語った「原発/国家のリーダー(衆愚の中からは衆愚しか)/マスコミは日本人の悪いところの典型」2011-09-19『悪党 小沢一郎に仕えて』 ?
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この国を滅ぼす政治報道の重い罪 民主党代表選「親小沢」「反小沢」を煽動しているのはマスコミではないか2011-08-30 | 政治/検察/メディア/小沢一郎


「レクイエム」と「マタイ・パッション」/無残な世界にあって、おのが存在を問うて苦しむ時、魂を訪れて

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(備忘)
 本日2011年11月07日Mon.より、中日新聞朝刊で小説『天佑なり』が始まった。幸田無音著。私好みの時代物、2,26事件の頃を描くようだ。5日まで『グッバイ マイ ラブ』が連載されていて、これもよかった。
 本年は6月より、母のことで、実家と名古屋を行ったり来たりの生活が続いた。人心地ついてみれば、残すところ2カ月を切っている。私個人のことなどより、日本にとっても世界においても大変な年であった、と痛感している。いや、まだまだ何が起きるかわからない。
 コンサートにも行けなかった。
 久しぶりに行ったのが先月(10月)23日、モーツアルトの「レクイエム」K.626。バッハ室内合唱団と中部日本交響楽団。しらかわホール。モーツアルトのレクイエムは、バッハのマタイ受難曲とともに、私にとって私自身の存在理由とでも言いたいような楽曲だ。私は何のために生まれて来たのか、何のために今生きているのかと悩む時、決まって私の脳裏にこの曲が流れる。この無残な世界にあってこのちっぽけな人間、居てもいなくてもよい人間(私)が何故に存在しているのか、と問うて苦しむ時、天からの光のように私の魂を訪れて希望へと誘ってくれる、そういう音楽である。
 「中部日本交響楽団」という楽団は、通常の楽団のようには存在しない。あえて楽団員という形にとらわれず状況に応じた人選を行う。演奏会(曲目)に合わせた編成を組織する。コンマスを務めた宗川諭理夫さんが印象に残った。
 10月30日Sun.は名フィルサロンコンサート。実に久しぶり。名古屋ダブルリードアンサンブル。モーツアルト交響曲25番。バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」など・・・。「主よ、人の望みの喜びよ」は、ミサのなか(聖体拝領)でよく弾く曲。もはや私にとって、生活の一部である。
 ところでNHK Eテレ「オーケストラの森」は、10月30日、セントラル愛知交響楽団を聞かせてくれた。セントラルのコンマスとチェロ奏者の私はファンである。いや、それだけでなく、セントラルの演奏そのものがいい。もちろん指揮の斉藤一郎さんも。
 名フィルもセントラルも、チケット料金を考えるなら、絶対に「お得」な買い物である。日本のオケの定期演奏会であるが、S席でも1万円内(5千円〜)で収まる。因みにウィーン・フィルの演奏会が先日名古屋芸術劇場であったが(もちろん、私などは行っていない)、最高席は4万3千円。この不況のなか、完売したという。
 月に数回、気に入りの楽団の演奏を聴きに行く、私の生活である。地元の優秀な(良い音を奏でる)楽団を応援したい、という気持ちも強くある。ウィーンフィルにも、遜色ないゾ♪ ただ一つ、秋から冬はキモノで出かけるが、近年は夏が長くなってしまった。10月30日も、キモノは少し暑かった。
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 「Chopinと福永武彦と」2008/01/21 より
〈来栖の独白〉
 ショパンの華麗さとしなやかさに惹かれて、一昨年から弾いてきた。高く深い美しさに惹かれた。ダン・タイ・ソンで聴いてからは、虜になった。小原孝さんがご自分の番組NHKFMのなかで「フォルテは無いと思ってください。すべてピアノで」とおっしゃっていたが、本当にそう。あくまでも、やさしくしなやかに弾く。特にノクターンは。
 先日もNocturnesを弾いていた。No1.Op.9-1「変ロ短調」。ちょっとロマンチックな出だし、甘さすら感じさせると、ずっと思っていた。
 しかし突然、違う、と感じた。甘くない、と。凛とした孤独が聴こえた。そしてすぐに、それはそのはずだ、と思った。ショパンが、孤独を奏でないはずがない。他人の寄り付くことを頑なに拒んで強靭な美のリアリストだったショパンの音楽に、孤独が漂っていないわけがない。
 私がショパンに強く惹かれたのはこの孤独の旋律の故だった、と気づいた。
 ショパンは、次のように言う。(音楽とは)「音によって思想を表現する芸術」、「自分の耳が許す音だけが音楽である」と。この思想の故に、ショパンは孤独であった、と私は思う。
 思想とは、生命の証、生きる意味である。
 不意に(いや、当然のように)、福永武彦を思い出した。
 福永武彦の作品に出会ったのは、大学の教養時代だったと思う。青年特有の寂しさと不安(落ち着かなさ)を持て余し悩んでいた私は、この『草の花』に衝撃を受けた。たまたま前期の試験と時期を同じにしたが、福永作品の世界から抜け出せなかった。単位を落とすことも覚悟した。が、試験を受けることだけはしておこうと思った。アメリカ文学史(アメリカン・フォークロア)の試験で、答えがさっぱり書けず、問題とは関係のない要らぬことを書いて出した。「私はいま福永武彦の小説に夢中になっています。氏の描く『孤独』は、いまの私にとってのっぴきならないテーマなのです・・・」。単位を落とすことを覚悟しているので、気持ちだけは強かった。ところが、後日発表を見ると「優」をくれていた。びっくりした。申し訳ない気持ち、単位が貰えてほっとしている自分、弱い自分が恥ずかしかった。
 長い時を隔てて、『草の花』を手に取った。懐かしい文字列。しかし、今回初めて、この小説にショパンという文字が出てくることを発見した。福永氏の心の中で、恐らくショパンの孤独が鳴り響いていたのだろう。

福永武彦著『草の花』(抜粋)
 しかし、一人は一人だけの孤独を持ち、誰しもが閉ざされた壁のこちら側に屈み込んで、己の孤独の重味を量っていたのだ。
 ----僕は孤独な自分だけの信仰を持っていた、と僕はゆっくり言った。しかしそれは、信仰ではないと人から言われた。孤独と信仰とは両立しないと言われたんだ。僕の考えていた基督教、それこそ無教会主義の考え方よりももっと無教会的な考え方、それは宗教じゃなくて一種の倫理観だったのだろうね。僕はイエスの生き方にも、その教義にも、同感した。しかし自分が耐えがたく孤独で、しかもこの孤独を棄ててまで神に縋ることは僕には出来なかった。僕が躓いたのはタラントの喩ばかりじゃない、人間は弱いからしばしば躓く。しかし僕は自分の責任に於いて躓きたかったのだ。僕は神よりは自分の孤独を選んだのだ。外の暗黒(くらき)にいることの方が、寧ろ人間的だと思った。
 孤独というのは弱いこと、人間の無力、人間の悲惨を示すものなんだろうね。しかし僕はそれを靭いもの、僕自身を支える最後の砦というふうに考えた。傲慢なんだろうね、恐らくは。けれども僕は、人間の無力は人間の責任で、神に頭を下げてまで自分の自由を売り渡したくはなかった。
 ---ピアノコンチェルト一番、これ、前の曲ね。これはワルツ集、これはバラード集。どうしたの、これ?
 ---千枝ちゃんにあげるんだよ。千枝ちゃんがショパンを大好きだって言ったから、それだけ探し出した。向うものの楽譜はもうなかなか見付からないんだよ。
 僕の書いていたものはおかしな小説だった。(略)全体には筋もなく脈絡もなく、夢に似て前後錯落し、ソナタ形式のように第一主題(即ち孤独)と第二主題(即ち愛)とが、反覆し、展開し、終結した。いな、終結はなく、それは無限に繰り返して絃を高鳴らせた。
 僕はそうして千枝子を抱いたまま、時の流れの外に、ひとり閉じこもった。僕はその瞬間にもなお孤独を感じていた。いな、この時ほど、自分の惨めな、無益な孤独を、感じたことはなかった。どのような情熱の焔も、この自己を見詰めている理性の泉を熱くすることはなかった。山が鳴り、木の葉が散り、僕等の身体が次第に落ち葉の中に埋められて行くその時でも、愛は僕を死の如き忘却にまで導くことはなかった。もう一歩を踏み出せば、時は永遠にとどまるかもしれない。しかしその死が、僕に与える筈の悦びとは何だろうか、・・・・僕はそう計量した。激情と虚無との間にあって、この生きた少女の肉体が僕を一つの死へと誘惑する限り、僕は僕の孤独を殺すことはできなかった。そんなにも無益な孤独が、千枝子に於ける神のように、僕のささやかな存在理由の全部だった。この孤独は無益だった。しかしこの孤独は純潔だった。
 孤独、・・・いかなる誘惑とも闘い、いかなる強制とも闘えるだけの孤独、僕はそれを英雄の孤独と名づけ、自分の精神を鞭打ちつづけた。
 支えは孤独しかない。
 僕の青春はあまりに貧困だった。それは僕の未完の小説のように、空しい願望と、実現しない計画との連続にすぎなかった。
 藤木、と僕は心の中で呼びかけた。藤木、君は僕を愛してはくれなかった。そして君の妹は、僕を愛してはくれなかった。僕は一人きりで死ぬだろう。

〈来栖の独白 続き〉
>この孤独は無益だった。しかしこの孤独は純潔だった。・・・・僕は一人きりで死ぬだろう。
 なんという、ぞっとさせるような孤独だろう。しかし、冷静な理知の眼には、人生の現実はそのような残酷なものだ。『草の花』は知的な青年の孤独を描いている。私はこの孤独(純潔)に魅せられ、惹かれ続けてきた。守りたいものであった。群れることを嫌った。
 若いときには若いときの、老いには老いの孤独があるだろう。老いての孤独は、若いときとは比較にならぬ峻烈なものであるのかもしれない。人は、そのようにして、やっと死に辿りつくことができる。2008/01/21 up

演者(首相)の後ろに財務官僚/勝栄二郎が、内閣に「大増税」へと舵を切らせている/国家戦略会議

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 芸に自信がなければ、できることではない。夏の盛りの落語会で、柳家さん喬師匠が「福禄寿」という真冬の人情噺(ばなし)を演じたのを聴いた。いつしか、語り手の姿は消え去り、雪がしんしんと降る光景が自然に浮かんだ▼「落語は演者が消えなきゃあかん」と語ったのは、上方落語の人間国宝桂米朝師匠である。それを可能にしたのは、聴き手の想像力を刺激する円熟した表現力だった▼フランス・カンヌで開かれたG20首脳会合で、野田佳彦首相が表明した「国際公約」にも、想像力をかき立てられた。消費税率を10%に引き上げるという関連法案を来年の通常国会に提出するとの宣言である▼国内向けには低姿勢の「安全運転」に徹し、外遊先で高々と国際公約として打ち上げる。知恵を授けたのは誰かと考えると、首相という演者の背後にいる財務官僚の姿が思い浮かんだ。まず、海外で既成事実を積み上げるという周到な作戦なのだろう▼さらに不可解なのは、法案成立後に消費増税の是非をめぐって国民に信を問いたいという考えだ。野党は「順序が逆」と反発するが、民主党は消費税を上げなくても財源はあると豪語したのだから、法案を出す前に衆院を解散するのが筋だ▼海外で首相が前のめりになるほど、演出者の姿が鮮明になるような気がしてならない。「演者」が消えてほめられるのは話芸ぐらいなのに。
「中日春秋」2011/11/06Sun.
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野田政権「国家戦略会議」が危うい 自民党時代の「官僚主導」が復活か
J-CASTニュース2011/11/ 5 17:00  
   野田政権の「国家戦略会議」が発足した。12月中旬をめどに「日本再生の基本戦略」をまとめ、来年の年央に具体策を含む「日本再生戦略」を策定するという。
   この国家戦略会議によく似たものがあった。自民党政権時代の「経済財政諮問会議」だ。どう違うのか。
■経営代表に加えて連合代表もメンバーに
   今回のメンバーは野田佳彦首相を議長に、藤村修官房長官と古川元久国家戦略担当相が副議長。総務、外務、財務、経済産業の各大臣と、白川方明日銀総裁、岩田一政日本経済研究センター理事長、緒方貞子国際協力機構理事長、古賀伸明連合会長、長谷川閑史経済同友会代表幹事(武田薬品工業社長)、米倉弘昌経団連会長(住友化学会長)。
   主要閣僚と日銀総裁、学識経験者、経済界代表という構成は、自民党政権時代の経済財政諮問会議とほぼ同じ。民主党政権になり、経営代表に対抗する立場の連合会長が新たに加わったのが最大の違いだ。
   時の政権が経済界代表や学識経験者を巻き込み、「民間の意見」を聞いて、政策の実現を図るスタイルは、小泉政権の経済財政諮問会議と同じだ。小泉政権では、経団連会長でトヨタ自動車会長だった奥田碩氏らが経済財政諮問会議の主要メンバーとなり、民間企業が求める政策を「民間ペーパー」にまとめ、諮問会議で実現を求める一方、郵政民営化など小泉構造改革の応援団としても積極的に後押しに動いた。
   自民党政権時代、経済財政諮問会議のシナリオは財務省、総務省など主要官庁が作り、内閣府が調整役を務めていた。「民間ペーパー」も「実際は財務省OBのトヨタの担当者と内閣府が調整してまとめていた」(関係者)という。
   小泉政権は、経済財政諮問会議で経済界や学識経験者から郵政民営化を求められ、その民意に応える形で民営化を実現した。当時の小泉政権は経団連から政治献金を受け取っており、その見返りとして経団連が求める規制緩和などの実現を経済財政諮問会議を通じて行ったといえる。
■どのような「民意」がつくられるのか
   果たして、野田政権の国家戦略会議はどんな舞台装置となるのか。野田政権は「政治主導」を掲げた鳩山、菅政権の失政を教訓に財務省との接近を図っている。消費税を引き上げ、財政再建を図るべきだと主張する野田首相の政策は、野田氏が財務相時代に財務官僚から刷り込まれたとされる。今回の国家戦略会議の設置、構成メンバーも財務省をはじめとする官僚が、民間や有識者代表の「民意」を利用して、霞が関が求める政策の実現を図ろうとしているのは間違いない。官僚主導が復活するのではないかという懸念がある。
   野田政権が小泉政権と違うのは、経済界との距離感と連合の存在だ。財界代表の米倉氏、長谷川氏は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期交渉参加と「社会保障と税の一体改革」に基づく消費税増税を求めている。経団連は「米倉会長になって疎遠だった民主党政権との距離感を国家戦略会議で一気に縮め、消費税や法人税など税制の抜本改革を実現したい」ともくろむ。
   しかし、関係者の間では「国家戦略会議は消費税や雇用問題などの基本路線で、経団連と連合が対立するのは明らか」との見方が強い。東京電力の原発事故を受け、「エネルギー政策の再構築」も議論する予定だが、脱原発依存に舵を切った連合と、東電など原発メーカーを抱える経団連の対立も予想され、先行きは不透明だ。
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財務省の天皇 勝栄二郎事務次官と香川俊介官房長には逆らえない/野田政権は直勝内閣/メディア工作部隊2011-10-02 | 政治
 朝日、読売を国税狙い撃ち「財務省には逆らえない」と幹部談
NEWS ポストセブン 10月2日(日)7時5分配信
 財務省の強さ――それは国家の予算を握っていることだけでなく、情報収集力と組織の結束の強さこそ、官僚主導政治を根付かせてきた秘密だろう。財務官僚たちの影響下にあるのは民主党政権だけではない。彼らは政・官・司・財・報に幅広く支配の手を伸ばしている。
 政権交代をはさんだこの数年、財務省が最も力を入れてきたのが「第4の権力」であるメディアへの工作だった。
 財務省が本格的に増税に向けたメディア工作をスタートさせたのは、「消費税増税なしで財政再建できるとは考えられないし、安心できる社会保障制度も成り立たない」と消費税増税路線を鮮明にした福田康夫首相の頃とされ、世論工作の司令塔を長く務めてきたのが「財務省の天皇」の異名を持つ事務方トップの勝栄二郎・事務次官の直系とされる香川俊介・官房長だ。
 若手官僚を中心に組織された100人規模の政界工作部隊は、香川氏の指令ひとつでメディア工作部隊にも変身する。それをバックアップするメディア対策専門部隊もある。
 東京・竹橋の大手新聞社の本社に近いエスニック料理店は、財務官僚がベテラン記者や編集幹部、評論家などと勉強会を開く際によく使う店の一つだ。常連というベテラン記者の話である。
「飲食費はワリカン。財務官僚の守備範囲は財政政策だけではない。バックグラウンド・ブリーフィングといって、例えば『エリート教育について取材したいと考えている』といえば、調査課などから関連資料やデータを一式取り寄せた上で、霞が関での議論や問題点を非常にわかりやすく説明してくれる。ブレーンストーミングですね」
 それを自分でやるのが記者の本来の仕事のはずで、昔は、資料一式役所が用意した記事は「もらい記事」と呼ばれて恥とされた。だが、政策が嫌いな政治部記者や、不勉強で専門知識がない経済部記者は、財務官僚のサービスを有り難がって役所に頼りきりになる。
 メディア工作部隊の幹部には、キャリア官僚ながら玄人はだしの「手品」を演じる課長クラスや「腹話術」を得意芸とする審議官クラスもいて、記者たちを絡め取る。そして会合のたびに記者たちに、「野田さんはああ見えて政策にはかなり詳しいね」とささやくことで、大メディアに「政策通の政治家」と報じさせる。これぞ正真正銘の腹話術だ。
 だが、大メディアが増税必要論を一斉に報じるようになったのは、個々の記者への工作だけが理由ではない。財務省の報道機関工作の有力な武器となったのが、国税の税務調査である。
 朝日新聞は2009年2月に東京国税局の税務調査で京都総局のカラ出張による架空経費の計上など約5億1800万円の申告漏れを指摘され、東京、大阪、西部、名古屋の4本社編集局長と京都総局長を処分した。同年5月には、読売新聞東京本社も東京国税局の税務査察で推定2億7000万円の申告漏れを指摘されている。その前には日テレ、フジテレビ、NHKも申告漏れを指摘された。
 時系列でいえば、税務調査の後、読売は丹呉泰健・前財務事務次官を社外監査役に迎え、朝日も「増税礼賛」の論調を強めていく。
 有力紙の論説委員は、「メディアは常に税務当局に狙われている。経営上も財務省に逆らえない」と本音を明かす。※週刊ポスト2011年10月7日号
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<片山虎之助氏>野田政権は「直勝内閣」 財務省主導を批判
毎日新聞 9月29日(木)20時3分配信
 「野田内閣は『直勝内閣』と言われている」。29日の参院予算委員会で、たちあがれ日本の片山虎之助氏が、「財務省主導」との指摘を受けがちな野田佳彦首相の政治姿勢を皮肉った。
 「勝」とは財務省の勝栄二郎事務次官。82年に田中角栄元首相の強い影響下で誕生した中曽根内閣が「直角内閣」と呼ばれたことをもじったものだ。片山氏は「人事も増税も財務省、事務次官主導だ」と首相を批判した。
 これに対し野田首相は「国民に負担をお願いする場面はあると思うが、特定の省の特定の誰かに洗脳されたわけではない」と反論。増税は自らの問題意識であるとの認識を強調した。【笈田直樹】
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陸山会事件:午後判決/勝栄二郎 法務官僚と裁判官を使って小沢一郎を抑えつけ、財務省は好き放題やった2011-09-26 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
小沢一郎を落ち目と見切った登石裁判長/財務省首領 勝栄二郎が、内閣に「大増税」へと舵を切らせている2011-09-30 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 マスメディアがなぜか「増税」に反対できない事情と弱み J-CASTニュース2011/9/29 17:00

TPPとは、米国による属国化政策/意に沿わないと訴えられる/FTAに頼った韓国の大誤算は明日の日本の姿

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誰が儲けるのかTPP参加 この国も1%の金持ちと99%の貧乏人
日刊ゲンダイ(2011/11/04)
■野田無能首相が売国奴よろしく自分の政権維持をアメリカに保証してもらうのが最大の目的らしい
 TPPについて、野田首相が来週10日に記者会見を開いて、「参加」を表明するそうだ。大手マスコミがうれしそうに、そう報じている。
 国民の99%は、TPPが何なのか、環太平洋連携協定がどういうものなのか、実感も理解もない。それを一方的に、国民議論抜きで進めるとは乱暴な話だが、なぜ暗愚首相はこうも決着を急ぐのか。オバマ米国の魂胆を理解しているのか。
 そこをズバリ言い当てているリポートが評判になっている。あおぞら銀行がいったん公表し、その後あわてて回収した「TPPに潜む危険性」なる文章である。「正鵠(せいこく)を射た内容なので、財務省か金融庁あたりから横やりが入って回収騒ぎになった」と話題なのだが、リポートでは、10カ国参加とか環太平洋というのはまやかしで、〈これは事実上の日米FTA(自由貿易協定)であり、日本が参加しないTPPなどアメリカにとって「無価値」なのである〉と断言している。
 ちょっと長い引用になるが、理由はこうだ。
 〈TPPはアメリカにとって「雇用戦略」でもある。オバマ大統領は2010年の一般教書演説において「今後5年間でアメリカの輸出を2倍に増やす」という国家輸出戦略を提唱しており、「この先私が結ぶ貿易協定はアメリカの雇用に資するものだけだ」と発言していることからも解るとおり、TPPはその戦略の一つとして明確に位置づけられているのである〉
 ◇TPPはアメリカの輸出を増やしアメリカの雇用を増やすためだとオバマ自身が演説している
 ◇アメリカと自由貿易を始めた韓国で国民の貧富の格差が更に拡大し様々な分野で国民生活が圧迫されている
■賛成反対の議論など全く無意味、末路のアメリカ最後の恫喝になぜ屈服するのか
 米国の露骨なドル安誘導政策でわかるように、追い詰められているオバマ政権は輸出主導でGDPを伸ばし、冷え込む国内景気を穴埋めする戦略に切り替えた。輸出倍増による200万人雇用創出も唱えている。同リポートは、〈アメリカに次ぐ世界第2位の消費市場を持っている日本はまさに「垂涎の的」と言えよう〉としている。これがTPPの本質を突いていると評判なのだ。
■米国のプラスは日本の大損
 日本は米国に狙われ、食いものにされるのが歴然だが、元外交官の天木直人氏もこう言う。
 「GDP規模から見ればTPP参加予定の10カ国のうち、アメリカと日本で90%以上を占める。つまり他の8カ国は刺し身のツマのようなもので、アメリカの関心はあくまで日本の市場だけです。輸出と雇用を増やすには、なんとしても日本を引っ張り込み、儲けたい。その計算が立っているから積極的なのです。自分のところに損なことをアメリカはしませんよ」 だからオバマは、野田との首脳会談でTPP参加をしつこく迫った。その恫喝に進んで屈服した野田も野田だ。卑しさに反吐が出る。
 「日本の首相は、米国の後ろ盾があるかないかで、政権維持が違ってくる。鳩山元首相や小沢氏は米国の言いなりにならないから潰された。党内に基盤もなければ能力もない野田首相は、米国、官僚、財界、大マスコミにペコペコして政権を維持する道を選んだ。オバマにせっつかれているTPP参加は最初から決めていたこと。わが身優先の売国政治なのです」(経済アナリスト・菊池英博氏)
 関税撤廃の自由貿易化で日本はどうなるのか。どんな目に遭うか。そこを省略して、アメリカの輸出倍増政策に尻尾を振って全面協力のどじょう首相。ぼんくらとは分かっていたが、自国の不利益など何とも思わない危険極まりない男だ。
■FTAに頼った韓国の大誤算は明日の日本の姿
 米国との「2国間貿易協定」といえば、一歩先を行った韓国のFTAがいい例だ。関税の95%以上を撤廃することで、果たして韓国は幸福になったのかというと、まったく逆だ。
 ここにきて韓国国内では「FTAは危険すぎる」という声が一気に高まり、いま最後の国会批准が大紛糾している。
 「米韓FTAの発効予定は来年1月ですが、どうなるか流動的です。日本では、韓国のプラス面だけが報道されている。しかし、実情はかなり違います。関税が下がって好調なのは、相変わらずサムスンやLG、現代など財閥系の大企業だけなのです。期待されていた雇用環境はまったく改善しない。もともと財閥系大企業は海外生産が主ですし、FTAで農業、漁業から金融まで打撃を受け、国内産業がどんどん細っている。それで中小企業が潰れ、大学生の就職先もなく、失業増大が社会問題になっているのです」(評論家・河信基氏)
 韓国では、FTA推進のために、農業補償だけでも14年間で9兆円がバラまかれている。だが、急激なウォン安による物価高騰もあって、だれもが生活防衛に走り、国内投資も激減し、マイナス面だけが出てしまっているのだ。
 「先日のソウル市長選では、与党候補が負け、野党はFTA反対で勢いづいている。FTA協議を決めた5年前の盧武鉉時代、韓国はIMF管理下の嫌な記憶を断ち切りたい思いもあってFTAに経済成長の希望を託した。しかし、現実は甘くなく、ソウルでも経済格差や産業空洞化、失業がどんどん拡大しているのです。地方はもっとひどい。この調子だと来年の国会議員選挙、さらに大統領選でも与党は負けるでしょう」(河信基氏=前出)
■国を売って壊滅の道を選ぶのか
 大規模デモが起きたアメリカの「1%の金持ちと99%の貧乏人」が、関税撤廃で韓国にも“輸出”された格好なのだ。しかし、それはTPPに前のめりの日本がたどる道でもある。筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言った。
 「TPPとは、米国による属国化政策であり、経済統合なのです。本国の経済が没落してニッチもサッチもいかなくなってしまったから、属国から絞り上げようとしている。それに抵抗するどころか、民主党政権の幹部たちは、進んで日本の富を差し出そうとしている。狂気ですよ。東条英機は国を破滅させたが、一応国を守る気はあった。しかし野田という首相は、国を売って壊滅の道を選ぶのですから、東条以下の男ですよ」
 犠牲は農業だけではない。TPPが発効すれば、医療、金融、投資とあらゆる分野で、アメリカ基準が日本に入り込み、連中の意に沿わないと、訴えられる。カナダやメキシコはそうやって、どんどん侵食されている。いずれは日本の公共事業も、米企業が入札でぶん捕り、日本企業は下請けに回されるとまじめに語られ始めた。そんなものの、どこに「経済成長が見込める」のか。
 デフレ不況長期化で出口が見えないからといって、経済植民地の道を選ぶのは大愚だ。「賛成」「反対」だと騒いで済む話ではなく、ここで潰さないと韓国以上に痛い目に遭う。アメリカの手先のような大マスコミ報道に踊らされていないで、国民は目を覚ませ! *強調(太字・着色)は来栖
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『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項(毒まんじゅう)/コメの自由化は今後こじ開けられる2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP)
 米国丸儲けの米韓FTAからなぜ日本は学ばないのか 「TPP亡国論」著者が最後の警告! 
Diamond online 2011年10月24日 中野剛志[京都大学大学院工学研究科准教授]
 TPP交渉に参加するのか否か、11月上旬に開催されるAPECまでに結論が出される。国民には協定に関する充分な情報ももたらされないまま、政府は交渉のテーブルにつこうとしている模様だ。しかし、先に合意した米韓FTAをよく分析すべきである。TPPと米韓FTAは前提や条件が似通っており、韓国が飲んだ不利益をみればTPPで被るであろう日本のデメリットは明らかだ。
 TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加についての結論が、11月上旬までに出される。大詰めの状況にありながら、TPPに関する情報は不足している。政府はこの点を認めつつも、本音では議論も説明もするつもりなどなさそうだ。
 しかし、TPPの正体を知る上で格好の分析対象がある。TPP推進論者が羨望する米韓FTA(自由貿易協定)である。
■米韓FTAが参考になるのはTPPが実質的には日米FTAだから
 なぜ比較対象にふさわしいのか?
 まずTPPは、日本が参加した場合、交渉参加国の経済規模のシェアが日米で9割を占めるから、多国間協定とは名ばかりで、実質的には“日米FTA”とみなすことができる。また、米韓FTAもTPPと同じように、関税の完全撤廃という急進的な貿易自由化を目指していたし、取り扱われる分野の範囲が物品だけでなく、金融、投資、政府調達、労働、環境など、広くカバーしている点も同じだ。
 そして何より、TPP推進論者は「ライバルの韓国が米韓FTAに合意したのだから、日本も乗り遅れるな」と煽ってきた。その米韓FTAを見れば、TPPへの参加が日本に何をもたらすかが、分かるはずだ。
 だが政府もTPP推進論者も、米韓FTAの具体的な内容について、一向に触れようとはしない。その理由は簡単で、米韓FTAは、韓国にとって極めて不利な結果に終わったからである。
 では、米韓FTAの無残な結末を、日本の置かれた状況と対比しながら見てみよう。
■韓国は無意味な関税撤廃の代償に環境基準など米国製品への適用緩和を飲まされた
 まず、韓国は、何を得たか。もちろん、米国での関税の撤廃である。
 しかし、韓国が輸出できそうな工業製品についての米国の関税は、既に充分低い。例えば、自動車はわずか2.5%、テレビは5%程度しかないのだ。しかも、この米国の2.5%の自動車関税の撤廃は、もし米国製自動車の販売や流通に深刻な影響を及ぼすと米国の企業が判断した場合は、無効になるという条件が付いている。
 そもそも韓国は、自動車も電気電子製品も既に、米国における現地生産を進めているから、関税の存在は企業競争力とは殆ど関係がない。これは、言うまでもなく日本も同じである。グローバル化によって海外生産が進んだ現在、製造業の競争力は、関税ではなく通貨の価値で決まるのだ。すなわち、韓国企業の競争力は、昨今のウォン安のおかげであり、日本の輸出企業の不振は円高のせいだ。もはや関税は、問題ではない。
 さて、韓国は、この無意味な関税撤廃の代償として、自国の自動車市場に米国企業が参入しやすいように、制度を変更することを迫られた。米国の自動車業界が、米韓FTAによる関税撤廃を飲む見返りを米国政府に要求したからだ。
 その結果、韓国は、排出量基準設定について米国の方式を導入するとともに、韓国に輸入される米国産自動車に対して課せられる排出ガス診断装置の装着義務や安全基準認証などについて、一定の義務を免除することになった。つまり、自動車の環境や安全を韓国の基準で守ることができなくなったのだ。また、米国の自動車メーカーが競争力をもつ大型車の税負担をより軽減することにもなった。
 米国通商代表部は、日本にも、自動車市場の参入障壁の撤廃を求めている。エコカー減税など、米国産自動車が苦手な環境対策のことだ。
■コメの自由化は一時的に逃れても今後こじ開けられる可能性大
 農産品についてはどうか。
 韓国は、コメの自由化は逃れたが、それ以外は実質的に全て自由化することになった。海外生産を進めている製造業にとって関税は無意味だが、農業を保護するためには依然として重要だ。従って、製造業を守りたい米国と、農業を守りたい韓国が、お互いに関税を撤廃したら、結果は韓国に不利になるだけに終わる。これは、日本も同じである。
 しかも、唯一自由化を逃れたコメについては、米国最大のコメの産地であるアーカンソー州選出のクロフォード議員が不満を表明している。カーク通商代表も、今後、韓国のコメ市場をこじ開ける努力をし、また今後の通商交渉では例外品目は設けないと応えている。つまり、TPP交渉では、コメも例外にはならないということだ。
 このほか、韓国は法務・会計・税務サービスについて、米国人が韓国で事務所を開設しやすいような制度に変えさせられた。知的財産権制度は、米国の要求をすべて飲んだ。その結果、例えば米国企業が、韓国のウェブサイトを閉鎖することができるようになった。医薬品については、米国の医薬品メーカーが、自社の医薬品の薬価が低く決定された場合、これを不服として韓国政府に見直しを求めることが可能になる制度が設けられた。
 農業協同組合や水産業協同組合、郵便局、信用金庫の提供する保険サービスは、米国の要求通り、協定の発効後、3年以内に一般の民間保険と同じ扱いになることが決まった。そもそも、共済というものは、職業や居住地などある共通点を持った人々が資金を出し合うことで、何かあったときにその資金の中から保障を行う相互扶助事業である。それが解体させられ、助け合いのための資金が米国の保険会社に吸収される道を開いてしまったのだ。
 米国は、日本の簡易保険と共済に対しても、同じ要求を既に突きつけて来ている。日本の保険市場は米国の次に大きいのだから、米国は韓国以上に日本の保険市場を欲しがっているのだ。
■米韓FTAに忍ばされたラチェット規定やISD条項の怖さ
 さらに米韓FTAには、いくつか恐ろしい仕掛けがある。
 その一つが、「ラチェット規定」だ。
 ラチェットとは、一方にしか動かない爪歯車を指す。ラチェット規定はすなわち、現状の自由化よりも後退を許さないという規定である。
 締約国が、後で何らかの事情により、市場開放をし過ぎたと思っても、規制を強化することが許されない規定なのだ。このラチェット規定が入っている分野をみると、例えば銀行、保険、法務、特許、会計、電力・ガス、宅配、電気通信、建設サービス、流通、高等教育、医療機器、航空輸送など多岐にわたる。どれも米国企業に有利な分野ばかりである。
 加えて、今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米国にも同じ条件を適用しなければならないという規定まで入れられた。
 もう一つ特筆すべきは、韓国が、ISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」)条項を飲まされていることである。
 このISDとは、ある国家が自国の公共も利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度である。
 しかし、このISD条項には次のような問題点が指摘されている。
 ISD条項に基づいて投資家が政府を訴えた場合、数名の仲裁人がこれを審査する。しかし審理の関心は、あくまで「政府の政策が投資家にどれくらいの被害を与えたか」という点だけに向けられ、「その政策が公共の利益のために必要なものかどうか」は考慮されない。その上、この審査は非公開で行われるため不透明であり、判例の拘束を受けないので結果が予測不可能である。
 また、この審査の結果に不服があっても上訴できない。仮に審査結果に法解釈の誤りがあったとしても、国の司法機関は、これを是正することができないのである。しかも信じがたいことに、米韓FTAの場合には、このISD条項は韓国にだけ適用されるのである。
 このISD条項は、米国とカナダとメキシコの自由貿易協定であるNAFTA(北米自由貿易協定)において導入された。その結果、国家主権が犯される事態がつぎつぎと引き起こされている。
 たとえばカナダでは、ある神経性物質の燃料への使用を禁止していた。同様の規制は、ヨーロッパや米国のほとんどの州にある。ところが、米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとして、ISD条項に基づいてカナダ政府を訴えた。そして審査の結果、カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払った上、この規制を撤廃せざるを得なくなった。
 また、ある米国の廃棄物処理業者が、カナダで処理をした廃棄物(PCB)を米国国内に輸送してリサイクルする計画を立てたところ、カナダ政府は環境上の理由から米国への廃棄物の輸出を一定期間禁止した。これに対し、米国の廃棄物処理業者はISD条項に従ってカナダ政府を提訴し、カナダ政府は823万ドルの賠償を支払わなければならなくなった。
 メキシコでは、地方自治体がある米国企業による有害物質の埋め立て計画の危険性を考慮して、その許可を取り消した。すると、この米国企業はメキシコ政府を訴え、1670万ドルの賠償金を獲得することに成功したのである。
 要するに、ISD条項とは、各国が自国民の安全、健康、福祉、環境を、自分たちの国の基準で決められなくする「治外法権」規定なのである。気の毒に、韓国はこの条項を受け入れさせられたのだ。
 このISD条項に基づく紛争の件数は、1990年代以降激増し、その累積件数は200を越えている。このため、ヨーク大学のスティーブン・ギルやロンドン大学のガス・ヴァン・ハーテンなど多くの識者が、このISD条項は、グローバル企業が各国の主権そして民主主義を侵害することを認めるものだ、と問題視している。
■ISD条項は毒まんじゅうと知らず進んで入れようとする日本政府の愚
 米国はTPP交渉に参加した際に、新たに投資の作業部会を設けさせた。米国の狙いは、このISD条項をねじ込み、自国企業がその投資と訴訟のテクニックを駆使して儲けることなのだ。日本はISD条項を断固として拒否しなければならない。
 ところが信じがたいことに、政府は「我が国が確保したい主なルール」の中にこのISD条項を入れているのである(民主党経済連携プロジェクトチームの資料)。
 その理由は、日本企業がTPP参加国に進出した場合に、進出先の国の政策によって不利益を被った際の問題解決として使えるからだという。しかし、グローバル企業の利益のために、他国の主権(民主国家なら国民主権)を侵害するなどということは、許されるべきではない。
 それ以上に、愚かしいのは、日本政府の方がグローバル企業、特にアメリカ企業に訴えられて、国民主権を侵害されるリスクを軽視していることだ。
 政府やTPP推進論者は、「交渉に参加して、ルールを有利にすればよい」「不利になる事項については、譲らなければよい」などと言い募り、「まずは交渉のテーブルに着くべきだ」などと言ってきた。しかし、TPPの交渉で日本が得られるものなど、たかが知れているのに対し、守らなければならないものは数多くある。そのような防戦一方の交渉がどんな結末になるかは、TPP推進論者が羨望する米韓FTAの結果をみれば明らかだ。
 それどころか、政府は、日本の国益を著しく損なうISD条項の導入をむしろ望んでいるのである。こうなると、もはや、情報を入手するとか交渉を有利にするといったレベルの問題ではない。日本政府は、自国の国益とは何かを判断する能力すら欠いているのだ。
■野田首相は韓国大統領さながらに米国から歓迎されれば満足なのか
 米韓FTAについて、オバマ大統領は一般教書演説で「米国の雇用は7万人増える」と凱歌をあげた。米国の雇用が7万人増えたということは、要するに、韓国の雇用を7万人奪ったということだ。
 他方、前大統領政策企画秘書官のチョン・テイン氏は「主要な争点において、われわれが得たものは何もない。米国が要求することは、ほとんど一つ残らず全て譲歩してやった」と嘆いている。このように無残に終わった米韓FTAであるが、韓国国民は、殆ど情報を知らされていなかったと言われている。この状況も、現在の日本とそっくりである。
 オバマ大統領は、李明博韓国大統領を国賓として招き、盛大に歓迎してみせた。TPP推進論者はこれを羨ましがり、日本もTPPに参加して日米関係を改善すべきだと煽っている。
 しかし、これだけ自国の国益を米国に差し出したのだから、韓国大統領が米国に歓迎されるのも当然である。日本もTPPに参加したら、野田首相もアメリカから国賓扱いでもてなされることだろう。そして政府やマス・メディアは、「日米関係が改善した」と喜ぶのだ。だが、この度し難い愚かさの代償は、とてつもなく大きい。
 それなのに、現状はどうか。政府も大手マス・メディアも、すでに1年前からTPP交渉参加という結論ありきで進んでいる。11月のAPECを目前に、方針転換するどころか、議論をする気もないし、国民に説明する気すらない。国というものは、こうやって衰退していくのだ。 *強調(太字・着色)は来栖
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【必見&拡散】 絶句JAPAN!!【中野剛志】
TPP交渉参加「苦境にあるオバマ大統領にAPECで花を持たせたい」/問題はデメリットを報道しないメディア2011-11-01 | 政治(経済/社会保障/TPP)
政調ナンバー2 桜井充政調代理が看破したTPPの本質/これまで総て米国が利するように改正、制定、開放2011-11-05 | 政治(経済/社会保障/TPP)自由貿易というと聞こえはいいが、前原政調会長を筆頭に霞が関の役人どもは、みんな米国ベッタリだ/「中小企業でリストラ、廃業進む」=森永卓郎氏指摘 . . .

財務官僚の意向はよく聞くが、民意を聞かない野田首相/G20で増税を公約/借金は国民に、資産は天下り先に

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独仏首相のメンツと金融機関の思惑でギリシャ国民投票をつぶしたG20で国民に信も問わずに「増税」を公約した野田首相の「財務省べったり」  
現代ビジネス ニュースの深層 2011年11月07日(月)高橋洋一
■先週は20カ国・地域(G20)首脳会議で世界は揺れた。
 まずはギリシャ問題だ。ギリシャのパパンドレウ首相から、支援策の受け入れを国民投票で決めるという話がでてきたからだ。ギリシャのユーロ離脱にもつながるので、仏独指導者が必死に回避に動き、結局、国民投票の話は消えたようだ。
 仏独指導者は、せっかく決めた支援策を反故にされるのは、政治家のメンツとして譲れなかったのだろう。また、他にユーロ圏でギリシャの国民投票を批判したのは、主に金融機関だ。それは、もし国民投票の結果、ギリシャのユーロ離脱(ギリシャ通貨ドラクマの復活=独自の金融政策)になると、保有するギリシャ国債の値下がりはとても債務カット50%では済まないので、ギリシャがユーロにとどまったまま支援するほうが、金融機関として自らの利益になるからだ。
 ちなみに、金融機関以外のユーロ圏の人の本音を言えば、ギリシャがユーロ圏から出ていって財政支援をしないほうがいいだろう。
■国民投票は経済的にも理にかなっていた
 一方ギリシャにとっては、財政支援を受けつつ厳しい条件を飲むか、ユーロ離脱して厳しい経済環境を受け入れるかの選択になる。実は、ギリシャはこれまで200年間で100年以上のデフォルト(国家破綻)の経験がある。仮に後者のユーロ離脱となっても、これまでの為替の調整(=金融政策)で何とかいけるだろう。
 9月19日の本コラム(アジア金融危機と同じ過ちを繰り返すな。ギリシャ危機と増税の二重苦が直撃すれば、日本は先進国から脱落する http://gendai.ismedia.jp/articles/-/20045 )で明らかにしたように、経済理論的にいえば、ギリシャはユーロ圏にとどまってもうまく経済運営できないことがわかっている。これはマンデル教授の最適通貨圏の理論から、ギリシャ経済はユーロ経済と異質だからだ。
 であれば、今回ギリシャが無理にユーロ圏にとどまっても、再び問題になるのは確実だ。そうであれば、ユーロを離脱しドラクマを復活させ、独自の金融政策を活用し為替調整力を使うほうが、よりよい経済運営ができる。これは、英国、デンマーク、スウェーデンがEUにいながら、ユーロには加盟せずに、自前の金融政策によって、いい経済パフォーマンスを上げている大きな理由だ。
 この点で、国民投票は民主主義の観点からも経済の観点からも理にかなった方法だった。
 ギリシャの国民投票を押さえ込もうとしたのは、政治家のメンツとデフォルト確率5割以上のギリシャに対しユーロ圏にいるからという理由で安易に貸し込んだ金融機関が短期的な損得から政治的に圧力をかけていたからだ。そして、今回はその圧力が勝った。
 ギリシャ問題の長期的な抜本策となるユーロ離脱について、想定していないとか手続き規約がないとかいって否定しつつ、政治家が政治的思惑で、国民投票すら許さないのは、ちょっと怖い。
 ギリシャの将来はどうだろうか。ギリシャがユーロ各国の財政支援を得て今回の危機を乗り切ると、その一方で厳しい緊縮条件を受け入れなければいけない。ギリシャは、自分たちを「欧州人」とは思っていない。しかし、「欧州人」や国際機関から監視の名目で乗り込んでくる。そうしたストレスにどこまで耐えられるか。おおらかな「南欧人」の体質改善がはたしてどこまでできるだろうか。将来再びギリシャ問題は起こると思う。
■自民党への国有地無償貸与がなぜいま問題なったのか
 一方、日本の野田佳彦総理も唖然とさせてくれた。まさかギリシャの国民投票を消しにかかる民主主義無視ともいえる欧州政治家パワーに触発されたのか、G20で「2010年代半ばまでに消費税の税率を段階的に引き上げる」との方針を表明した。
 G20の「成長と雇用のためにアクションプラン」での文章を見ると、「法案を来年度末(2012年3月末までに提出」とあり、あくまで「提出」という今の政府の既定路線を言っただけという「逃げ道」が一応残っている。
 いくら海外で叫び、提灯持ちのマスコミが国内向けに書いたとしても、なんの拘束力もない。普通の国際会議では、大きな争点がある国内問題については話をせず、方向性も示さない。ちなみに、G20の「成長と雇用のためにアクションプラン」では、米国、英国、フランス、イタリアなども個別の政策を述べているが、ほとんどはそれまでに各国で決まっていた話ばかりだ。
 しかも、野田総理は、自民、公明両党が消費税増税法案提出前の衆院解散を求めていることに対し、「法案が通った後、実施の前に信を問うやり方にしていきたい」と法案成立前の解散を否定した。
 なにげない同行記者とのやりとりだが、実は裏ではかなり激しいバトルが本丸財務省から仕掛けられている。消費税増税法案提出前の衆院解散を求めている自民党は、一部で増税の前に公務員宿舎などの売却を行えとも主張するだろう。
 公務員宿舎は売りたくないのが財務省の本音だ(10月3日と17日の本コラム参照)が、これまでは公務員宿舎に話が及ぶと、財務省は国会議員宿舎批判をマスコミにリークして対抗してきた。ところが、今回は、自民党への土地の無償貸与を持ち出してきたのだ。こうした情報は財務省しかわからず、なぜ今の時期に出てきたのか、それがポイントだ。
 国有地の売却などでお世話になってきたマスコミは、あらためて財務省に頭が上がらないばかりか、ここまでやるのかと財務省の本気度を再確認したと思う。案の定、自民党への土地の無償貸与の報道の後、民主党の消費税増税法案に対して、茂木敏充政調会長は「協力する」というなどの意見が自民党内からではじめた。
 民主主義からいえば、「法案が通った後、実施の前に信を問う」といっても、経済活動ではすでに消費税増税を織り込んでいるはずなので、実施直前に国民の信を問うても増税はやめられない。かといって、増税について何も準備しないで待てというのも酷い話だ。
■増税一直線なら日本が沈没する
 しかも、6月20日付け本コラム(「復興」「社会保障」「財政再建」の三段階増税を許すな 新聞が報じない増税反対に集まった 超党派議員211人 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9228 )で指摘したように、消費税増税法案を来年3月までの提出を急ぐのは、麻生政権下で財務省が仕掛けた平成21年度所得税等を改正する法律附則104条があるからだという。
 それには、「政府は、・・・平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」と書かれている。「講ずるものとする」という表現は「・・・しなければならない」という義務でなく裁量の余地がある書き方だ。
 リーマンショック後に「蚊が刺した程度」といった与謝野馨氏が担当の財務相だった。その後、東日本大震災も起こった。とても「平成二十年度を含む三年以内の・・・経済状況の好転」とはいえない。法律附則104条にも反する話だ。そうした愚行を強行すれば、6月20日付け本コラムのように、増税一直線になって、日本経済が沈んでしまう。
 さらに、民主党は、マニフェストで「公約」した歳入庁についてはほとんど前進していない。旧社保庁の日本年金機構は法人の把握が国税庁より著しく低く、10兆円程度の社会保険料の徴収漏れがあるとの試算もある。また国税庁では国民総背番号を持っておらず税務調査が不徹底で、5兆円程度の税の徴収漏れともいわれている。これから、歳入庁を作ると、15兆円程度の税・保険料の増収になる。
 これらの点を考えると、消費税増税法案提出前の衆院解散は民主主義の観点からも経済の観点からも理にかなった方法だ。
 理屈のない話を、官僚主導の下で民主党が強行しようとしている。官僚主導の下で民主党が強行しようとしているについて、財務官僚の意向はよく聞くが、民意を聞かないというのは、誰がみてもおかしい。
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借金は税金で国民に負担させ、資産は天下り先に温存ーー朝霞宿舎だけでない国有地売却を拒む「霞ヶ関の論理」ギリシャは500億ユーロの資産を売却  
現代ビジネス ニュースの深層 2011年10月10日(月)高橋洋一
 先週10月3日付けの本コラムで朝霞公務員宿舎問題をとりあげた。ほかの先進国は公務員宿舎などまず持っていない。それでも必要なら民間に売却して、それを借り上げるのが基本だろう。
 朝霞についていえば、埼玉県にある他の公務員宿舎を売却し、民間が建て直し、それを借りればいい。わざわざ朝霞の森を切ってまで新設することはない。しかも、事業仕分けの凍結という結果を曲げてまで行う必要はまったくない。
 野田政権の選択は、再凍結か被災者受入という条件で建設と書いたが、結局、3日の野田首相の判断は再凍結だった。再凍結より被災者受入で建設のほうがよかったと思うが、新設公務員宿舎に民間人が入るのを好まなかったのかもしれない。
■まったく進んでいない公務員宿舎の売却
 また、凍結とともに「都心3区の公務員宿舎は危機管理用を除いてすべて廃止。16カ所で売却」という方針も表明された。
 しかし、5年前の小泉政権下では、私が作成に深くかかわった「骨太2006」で、「今後10年間で国有資産の売却約12兆円」との方針を示し、公務員宿舎の売却収入は1兆円が見込まれていた。その時に公表された宿舎の「移転・再配置計画」では、都心3区の宿舎について、今回の野田政権の方向とほぼ同じものが出ていた。
 同計画では、2006年1月現在、都心3区(千代田、中央、港)には33宿舎(1782戸)あった。これを2010年3月には16ヵ所を売却し、17宿舎(1531戸)へ、2017年3月には12宿舎(1215戸)へ減らすとしていた。また、この12宿舎は危機管理用など移転困難なもととしている。
 5日の国会閉会中審査で、浅尾慶一郎議員(みんなの党)が、都心の公務員宿舎の廃止は骨太の方針2006と同じではないか、と質問したのに対して、安住財務相は、それは実現されなかった、だから私たちがやる、と強弁した。
 しかし16ヵ所を売却する達成期限は昨年3月末であり、民主党政権になってからの話である。政権にいるのだから、売却が未達成の理由を明らかにして、再度計画を作っていなければいけない。
  財務省が宿舎を売却しないのは、宿舎管理のための公務員がいるからだが、公務員宿舎は一般の民間に比べて安いので、その差額がヤミ手当になっていてやめられないという指摘もある。
■国有資産を売却し国債償還にあてればいい
 この公務員宿舎に限らず、国有財産など国の資産の売却はほとんど進んでいない。
 2006年7月に閣議決定された「基本方針2006」では、国有財産については10年間の売却収入の目安として12兆円を見込むとともに、2015年度末に国の資産規模対GDP比の半減を目指し、国の資産を140兆円規模で圧縮することとしていた。
 一定の政策目的のために保有している外為資金・年金寄託金等及び売却困難な道路・河川等の公共用財産はスリム化の対象としないが、政府資産については、真に必要な部分のみを厳選して保有するとされていた。
 国のバランスシートを見ると、資産647兆円、負債1019兆円(2010年3月末)。資産がたっぷりある。資産の中には、国有財産37兆円、公共用財産145兆円などの他、現金・有価証券111兆円、貸付金155兆円、年金寄託金121兆円、出資金58兆円と流動性の高い金融資産が多い。このうち年金寄託金は将来の年金のためにとっておくとしても、貸付金や出資金などは天下り先の特殊法人に流れているのだから、それを民営化すればいい。そうすれば、天下り法人の廃止と国の資産のスリム化が一気にできる。
 ところが、国の資産の売却はいっこうに進んでいない。下図(略 来栖)は、国の資産のうち金融資産の対GDP比をOECD統計でみたものだ。ほとんど金融資産残高対GDP比は減っていない。
公務員宿舎に限らず国の資産は民間に売却して有効活用することは、民間経済の活性化になるばかりではなく財政再建にもなる。
 国の資産の売却は資産サイドのスリム化になるが、国債償還に回せば負債サイドのスリム化にもなる。一般の企業がリストラの過程で資産と負債の両建てのスリム化が好ましいのと同様、政府でも好ましい。
■500億ユーロの資産を売却するギリシャ
 しかし、日本の資産対GDP比は世界の中でも高いほうだ。しばしば、財務省は、バランスシートの負債サイドの債務残高対GDP比が世界一になっているというが、資産サイドの対GDP比も世界有数の大きさだ。負債サイドだけを強調して、増税による財政再建の主張するのは、資産サイドの天下り先を温存して役人が美味しい思いをして、借金だけを国民の負担で返せといっているのだ。あまりに虫のいい話ではないか。
増税の前にやるべきことといえば、世界で定番メニューは、国有財産などの国の資産の売却だ。
 ギリシャの財政再建計画では国有資産売却(含む民営化)が盛り込まれている。2015年までに債務残高の15%になる500億ユーロの売却だ。その中には、国営郵便局、水道会社、電力とガスの民営化・株式売却もあり、使われていない空港、古いオリンピック会場、ギリシャが誇る美しい海沿いの土地など国有資産の売却もある。ギリシャでの国有資産の売却規模は、日本で考えると150兆円の売却に相当する。
 イタリアも同様に、債務残高の2.6%に相当する500億ユーロの国有財産売却がある。日本で考えると25兆円規模の売却だ。
 日本でも、財政再建というのであれば、なぜ国の資産の売却の話が出てこないのか。役人の天下り先の温存といわれても仕方ないだろう。
 国の資産の売却がこれまで進んでこなかったのは、民主党政権になって経済財政諮問会議が事実上休止したことも影響している。民主党は、国家戦略会議をスタートさせるようであるが、その際、経済財政諮問会議がこれまでやってきたことをレビューすべきだ。
 そうでないと、公務員宿舎問題のように、野田政権は財務省がかつて約束した二番煎じに満足してしまうことになる。特に、国の資産の売却は、増税の前に行うべきだ。
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「霞が関の大魔王」勝栄二郎危険極まりなし/内閣に「大増税」へと舵を切らせている 2011-10-05 | 政治
 あっという間に、どじょう鍋にされたノダ 「霞が関の大魔王」勝栄二郎危険極まりなし 高橋洋一×長谷川幸洋
 現代ビジネス2011年10月05日(水)週刊現代  
■しっかり増税、とにかく増税
長谷川 野田佳彦政権の布陣を見ると、見事な増税シフトですね。そして、この増税一直線政権のプロデューサー兼シナリオライターが財務省の勝栄二郎事務次官であることは、衆目の一致するところです。
高橋 要するに「陰の総理大臣」ということね(笑)。
長谷川 そこで今日は「勝栄二郎」を徹底的に解剖していこうと思うんですが、その前提として、野田政権の人事について触れておきたい。これはもう明らかな党重視ですね。政策決定の鍵を握る政調会長に前原誠司前外相を起用し、仙谷由人元官房長官を政調会長代行に据えた。さらに財務省OBの藤井裕久元財務相を党税調会長にした。
 野田政権は政策決定の前さばき段階で党がかなり重要な役割を果たすようにしたわけですが、これは民主党の中に反増税派ないし増税慎重派がいるから。それを押さえ込んで増税を実現するために、こんな重厚な布陣になったわけですね。
高橋 通常の政策決定プロセスは、まず政府で案を作り、それを党で揉んで、それから国会へ提出する。どこにいちばん力点を置くかというと、国会のねじれがなければ、政府か党のどちらかです。
 では今回はどうかというと、国会はねじれているけど、自民党はもともと増税賛成。だから、政府段階では財務省にとっての理想的な増税メニューを打ち上げておいて、党である程度レベルダウンするけれども、国会では自民党を巻き込んで、しっかり増税。こういう筋書きがもう決まっている。つまり、党レベルでの反増税圧力をどれだけ弱められるかがポイントなんです。だから布陣は党高政低。政府としては、目いっぱい高い球を投げるだけだから、財務官僚がやればすむことなんですよ。
長谷川 党重視にした分、閣僚人事は軽くなった。その代表が、財政のことをよく知らない安住淳財務相と、旧大蔵省OBの「過去官僚」古川元久国家戦略相。この2人は財務省が完璧にコントロールできる。そこで、もうひとつのポイントが勝次官による財務省人事になるわけです。
高橋 そう。内閣は軽量だけど、そこに送り込んだ財務官僚は重量級なんです。なにしろ勝さんは、官房副長官(事務)を取ろうとした。結果的に国交省の竹歳誠事務次官に落ち着きましたが、当初は前財務次官の丹呉泰健さん(読売新聞グループ本社監査役)の起用を本気で考えていた。
長谷川 丹呉副長官だと、あまりに財務省支配がミエミエだからねえ。でも、旧建設省出身の竹歳氏は、建設公共担当の主計官も経験した勝次官とはツーカーの仲で、一心同体みたいなものでしょう。
高橋 というより頭が上がらない。予算でお世話になった勝さんの意向通りに動くと思います。それから、主計局総務課長から局次長になったばかりの太田充氏を総理秘書官として官邸に送り込んだ。彼は保守本流である主計のトップランナー。正真正銘の重量級です。
 もう一つ驚くのは、蓮舫行政刷新担当相の秘書官に財務省課長の中堅クラスが行っていること。本来なら課長補佐の最終段階くらいの年次が就くポストですけど、そこに'88年入省組の吉井浩氏を送り込んでいる。
長谷川 蓮舫大臣の担当する行革とか公務員制度改革は官僚にとって重要なポイントだから、しっかり押さえておきたいという狙いですね。それに彼女は民主党のスター的存在で発信力もあるし、注目度も高い。
高橋 実は勝さんが彼女の秘書官に吉井氏を送り出したのは前回の大臣時代。その後、首相補佐官に格下げされても「補佐官補」という肩書でずっと密着させてきた。勝さんは蓮舫さんの利用価値を読んで、きっちりマークしてたわけ。
長谷川 '88年組と言えば、古川国家戦略相の同期。しかも、この期には自見庄三郎金融担当相秘書官の井藤英樹氏もいる。
高橋 古川国家戦略相は閣僚兼秘書官みたいなものだから(笑)、この「同期秘書官トリオ」は強力ですよ。財務省に入省すると一般的な省庁研修のほかに、3週間ぐらい寝食を共にする省独自の長期合宿を行う。ここで同期の結束が非常に深まり、よその役所とまったく異なる人的ネットワークになるんですね。
長谷川 なかなか見事だねえ、このあたりの勝次官の人事は。
■人呼んで「パー・ペット内閣」
高橋 さらに言えば、藤村修官房長官秘書官には'89年組で主計畑のエース候補・宇波弘貴氏をつけた。初入閣で官邸のことなど右も左もわからない官房長官は、秘書官の言いなりになるしかないでしょう。それに宇波氏は、安住財務相の秘書官になった小宮義之氏の同期。ここの連携も完璧です。
長谷川 加えて、内閣府政務官に就任した民主党の大串博志代議士も入省同期の財務省OBだ。
高橋 '83年組の太田首相秘書官を筆頭に、閣僚にこれだけの数の秘書官をはり付けておけば、財務省で内閣を切り盛りできますよ。はっきり言って、大臣なんか誰でもいい。口の悪い永田町の住人が言っていましたが、「野田パペット(操り人形)内閣」ならぬ「パー・ペット内閣」と呼ばれているそうです。
長谷川 財務省に飼われる愚かな閣僚たちか(笑)。
高橋 財務省風味のどじょう鍋と言う人もいる(笑)。
長谷川 財務省の本省人事も見ておきたい。意外だったのは、「10年に一人の大物」と呼ばれた斎藤次郎元大蔵次官の娘婿である稲垣光隆氏が主計局筆頭局次長から財務総合政策研究所長へ外されたこと。ここは、局長になれなかった人の上がりポスト。彼は'80年組のエースだったのに・・・・・・。
高橋 これも勝さんの深謀遠慮だと思います。斎藤さんは現在、日本郵政社長。今後、郵政株売却が増税額圧縮の材料として浮上する可能性がある。その際に、斎藤大先輩に遠慮なく増税路線を貫くには、娘婿が邪魔になるという計算でしょう。つまり、いくら優秀でも省益にそぐわなければ斬り捨てるという冷徹な判断をした。
長谷川 なるほど。その一方で、同期の佐藤慎一氏を官邸の内閣審議官から呼び戻して省内司令塔の総括審議官に据えた。主税局の主要課長を歴任した税制のトップランナーをこのポジションに起用した意図は明白ですね。
高橋 それに、省内トップエリートの登竜門である文書課長だった星野次彦氏を主税局審議官にしたし、主計の花形である公共担当主計官をしていた井上裕之氏を主税局税制一課長に起用した。これらの人事は完璧な増税シフトですよ。もうまるで、増税大魔王(笑)。
■マスコミの懐柔も得意です
長谷川 さて、その大魔王の経歴を見ると、'95年から'96年にかけて為替資金課長を務めていますね。ところが、実際は為替資金とは無関係の仕事をしていた。当時、橋本龍太郎政権の行政改革で大蔵省については財政と金融の分離が叫ばれていて、実は大蔵省抵抗部隊の裏司令塔が勝課長だった。「あの人は手ごわかった」と当時、官邸で行革を担当していた人物から聞いています。
 ちなみに為替資金課長になる前に内閣官房長官秘書官をやり、為替資金課長のあと主計局の企画担当主計官や文書課長といった、ど真ん中のエリート街道を歩んでいる。財務省の文書課長というのは、書類を扱うわけじゃなくて、要するに国会担当。予算委員会では必ず部屋の隅にいて、大臣にこういうメモを入れろとか、こう答弁させろとか、そういう指示を出す司令官ですね。
高橋 勝栄二郎という人は人心掌握がうまいんです。私の役人時代のことですが、5年も後輩で直接の部下でもない私のところに突然電話をかけてくる。ボソボソした声で「すまないけど、今度の日曜日に会えないかな」とか「ちょっと君の力を借りたくてね」とか言うわけですよ。で、指定された都内のホテルへ出向いていくと、省内の若手が何人か集まって自由闊達に議論していて、勝さんがじっと聞いている。そしてしばらくすると、その時の議論が省の政策として打ち出されたりする。若手にとっては、これが嬉しい。
長谷川 腰が低くて、他人に対して居丈高な姿勢をまったく見せないでしょう。私も安倍晋三政権時代に政府税制調査会の委員をしていて、舞台裏の会合で何度も勝さんに会いましたが、彼は総括審議官で超多忙な頃だったのに、絶対に遅刻しなかった。そして末席に座って、誰に対しても丁重に接する。
高橋 彼はしゃべり言葉が丁寧で、ゆっくりしているんですね。それで政治家やマスコミの記者にウケがいい。それと、こう言ってはアレですが、頭がキレすぎない(笑)。
長谷川 なかにはマスコミに居丈高になる官僚もいるけど、勝さんはまったく正反対。女性記者との会合も積極的にセットしていたみたいですよ。
高橋 ただね、言葉遣いが丁寧なのは、彼がドイツ育ちの帰国子女で、日本語が少し不自由だからなんです。発音も少しヘンで、電話でボソボソと「勝です」と言われると、「カツドン」に聞こえる(笑)。逆に書き言葉は、勉強して覚えたおかげか、妙に格調高い。
 結局、日本語が得意じゃないから、あまりしゃべらない。ときどきしか話さないから、自然と言葉に重みが出る。そういうタイプですね。
長谷川 先ほどから見てきたように、人事もうまい。
高橋 そう。論功行賞も考えていて、日曜日の会合などに出たら、ご褒美があるんですよ。上の人のお供で海外に同行することなんです。次官OBや天下ったエライ人はヒマでよく海外に行く。その際に必ずお付きの者をつけるんですが、勝さんは日曜日に呼び出した若手をうまくセットするんです。海外出張のお供で2週間も一緒にいれば、そのOBの覚えがめでたくなる。それは出世にも少なからず影響するから、結構なご褒美なんですね。出張同行の指名を受けた側も、ああ、これは勝さんのご褒美だなと分かります。こういうやり方が非常に心憎い。
長谷川 それで省内に勝ファンが増えていくわけか。
 ところで、内閣も省内も完璧なまでの増税シフトを構築した勝さんには、「剛腕・斎藤次郎の再来」という評価もある。剛腕・勝栄二郎は果たして、このまま増税路線を突っ走るのかどうか。
高橋 野田総理の代表質問への答弁に、その答えがありますよ。野党から「消費税増税の前に国民の信を問うべし」と問われ、総理は「実施の前に信を問います」と答えている。国民もマスコミも、納得しているようですけど、これは間違いなく財務省が仕掛けた罠です。
「増税前に信を問う」というのは、普通は増税の是非を総選挙で問うという意味ですよね。ところが「実施の前」だと、増税法案が成立して増税を行う前に選挙をするという意味になる。つまり、いま予定されている通りに来年の通常国会には消費税増税法案を出して可決成立させる。その後のしかるべき時期に信を問うことになるけど、そこで与党が勝とうが負けようが、法案が通っている以上、消費税は粛々と引き上げることになる。これが勝財務省のシナリオです。
■今度のジローはしたたかすぎ
長谷川 実施前に凍結法案を出して、増税を止める手もあるけど。
高橋 無理、無理。実施直前に総選挙を設定すれば、凍結法案を出す余裕はない。そういうスケジュール管理は、財務省のお手のものです。そのために優秀な人材を秘書官に送り出しているわけだし。それに、「ここで凍結すれば、経済が大混乱します」と政治家を脅すことだって平気でやる。
長谷川 確かに、橋本政権で消費税率を3%から5%に上げたときも、景気悪化が懸念されたのに、スケジュール通りに実施された。
高橋 そう、その挙げ句にデフレが深刻化して、税収まで減っていった。バカじゃないのって話。
長谷川 ただ、剛腕・斎藤次郎は細川護熙政権のときに、与党最大の実力者だった小沢一郎氏(当時・新進党幹事長)と組んで国民福祉税構想を打ち出して、頓挫した。しかも、その後の政権交代で与党に復帰した自民党に睨まれ、長く天下り先にも恵まれなかった。「二匹目のジロウ」も、やりすぎると同じ轍を踏む危険があるんじゃないの?
高橋 斎藤さんの場合は剛腕ゆえに根回しをあまりしなかった。そのため、ときの官房長官(武村正義氏)から「待った」をかけられたんです。つまり、総理の女房役である官房長官にすら声をかけていなかった。そして、その官房長官秘書官だったのが、若き日の勝栄二郎ですよ。
長谷川 なるほど。斎藤大先輩の失敗を間近で見ていたからこそ、官邸にも省内にも人材を張り巡らせ、用意周到に増税への布石を打っている。勝栄二郎は、「配慮の行き届いた斎藤次郎」ということか。
高橋 もう一つ忘れてはならないのが、メディアを使った国民の洗脳です。
長谷川 財務官僚にすり寄る「ポチ記者」問題ね。財務省が政府を実質的に動かしていることは、ちょっと深く取材をすればわかる。財務官僚を敵に回せばネタが取れなくなるから、記者たちは自ら官僚にすり寄っていくんです。その結果、新聞紙面には連日のように、所得税、法人税、相続税に環境税とあらゆる増税ネタが報じられることになる。財務省は「高めのつりダマ」を投げて、新聞記事になれば御の字。そのうちに国民はだんだんマヒしてきて、増税やむなしの空気ができあがる。これがいま起こっている現実ですよ。
高橋 人間って、与えられた情報でしかモノを考えられませんからね。本当は増税だけじゃなく、税外収入の道もあるのに、そっちには目がいかなくなる。まさに洗脳です。
長谷川 それがメディアを使った財務省の大衆戦略ですよ。そして、そんな財務省を動かしているのが、勝栄二郎である、と。
高橋 やっぱり霞が関の大魔王だ。
「週刊現代」2011年10月7日号より
<プロフィール>
 たかはし・よういち/1955年生まれ。'80年旧大蔵省入省。内閣参事官時代に「霞が関埋蔵金」を暴露し、脚光を浴びる。'10年より嘉悦大学教授。『この経済政策が日本を殺す』『官愚の国』など著書多数
 はせがわ・ゆきひろ/1953年生まれ。東京新聞論説副主幹。財政制度等審議会臨時委員、政府税制調査会委員などを歴任。官僚が政治を操る実態を描いた『日本国の正体』で'09年度山本七平賞を受賞
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事業仕分けで凍結が決まった公務員宿舎建設 野田首相「現地視察し、私が判断したい」2011-09-30 | 政治
財務省の天皇 勝栄二郎事務次官と香川俊介官房長には逆らえない/野田政権は直勝内閣/メディア工作部隊2011-10-02 | 政治
  財務官僚たちの影響下にあるのは民主党政権だけではない。彼らは政・官・司・財・報に幅広く支配の手を伸ばしている
「増税」「宿舎建設」官僚のやりたい放題を許していいのか/勝栄二郎は小沢一郎を抑えつけ、好き放題やった2011-09-29 | 政治 
小沢一郎を落ち目と見切った登石裁判長/財務省首領 勝栄二郎が、内閣に「大増税」へと舵を切らせている2011-09-30 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
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演者(首相)の後ろに財務官僚/勝栄二郎が、内閣に「大増税」へと舵を切らせている/国家戦略会議2011-11-06 | 政治
◆前篇[公務員制度改革はかくて骨抜きにされた われらは敵だらけの中でいかに戦ったか/古賀茂明vs高橋洋一2011-07-22 | 政治]
かくて民主党政権は官僚の手に落ちた このままでは安易な増税路線に突き進む/古賀茂明vs高橋洋一(後篇)2011-07-29 | 政治

麻原彰晃氏に死刑執行あるのか/近々の刑執行はない/平岡法相「考えて結論出す」

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〈仰天情報〉麻原彰晃 死刑執行あるのか 11月21日オウム全裁判 完全終結
日刊ゲンダイ2011年11月7日
■もはや障害ナシ、人権派・平岡法相ゴーサインも
 麻原彰晃(56)の死刑が執行されるのではないか――という仰天情報が流れている。
 麻原彰晃の死刑が確定したのは06年9月。その後、再審請求が出されたが東京地裁が09年3月に棄却し、東京高裁も09年7月に棄却、さらに最高裁も2010年9月に特別抗告を棄却している。
 「刑事訴訟法では、死刑は判決確定の日から6カ月以内に執行しなければならないことになっています。しかし、法務大臣の多くが死刑執行の書類にハンコを押すことをためらい、現在、死刑囚は120人もいる。原則として判決の確定順に執行されますが、決まりがあるわけではない。いつ、誰に執行するか、すべて法相が判断することになっています。判決確定から4〜8年後に行われることが多い。ただ、再審請求している場合や共犯者の刑が確定しない場合は、執行しないことになっています」(司法関係者)
 麻原彰晃の死刑執行が取り沙汰されるのは、11月21日、オウム真理教の幹部、遠藤誠一被告(51)の上告審判決が最高裁で下され、オウム事件で起訴された189人の刑事裁判がすべて終わるからだ。
 なにより大きいのは、平岡秀夫法相(57)が、死刑執行に傾いているとみられていることだ。人権派弁護士出身の平岡法相は、法相就任の会見で「考えを整理したい。その間は判断できない」と、当分、死刑は行わないと宣言していた。ところが、死刑執行について、先月末の会見で「自分が考えて結論を出す」と在任中の執行を口にしはじめているのだ。
■“政権支持率上昇の手段”という見方
「民主党政権の発足から2年が過ぎたが、死刑執行は昨年7月の1回だけ。そのため確定死刑囚が120人に膨れ上がり、一部で批判が出ている。批判を抑えるためにも平岡大臣はゴーサインを出すのではないかとみられているのです。それ以上に、平岡大臣本人も『なぜ死刑を執行しないのか』と保守派から攻撃されているうえ、〈政治とカネ〉の問題が噴出し、批判されている。批判をかわすためにも、死刑執行に踏み切っておかしくないと囁かれているのです。民主党のなかには麻原彰晃の死刑を決断すれば、野田内閣の支持率が上がるという声まであります」(政界事情通)
 民主党政権では、昨年7月、法務官僚の圧力に屈したのか、「死刑廃止」を訴えていた千葉景子法相が死刑を執行するという皮肉な結果になっている。平岡大臣がハンコを押したら大騒ぎになるのは間違いない。
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死刑執行の可能性言及 平岡法相「考えて結論出す」
中国新聞'11/10/28
 平岡秀夫法相は28日の記者会見で、死刑執行について「個々の問題について自分が考えて結論を出す」と述べ、在任中の執行の可能性に言及した。これまでは慎重な姿勢を示していた。
 記者会見に先立ち、藤村修官房長官と官邸で会談。藤村氏は26日の衆院内閣委員会で「野田内閣として死刑を廃する方針は全くない」と明言し、平岡氏から事情を聴く考えを表明していた。
 平岡氏は会見で、死刑制度について「廃止すると言っているわけではない」と説明。制度に関する省内の勉強会に関し「何か結論が出るものではない。勉強している間でも(個々の)死刑問題は考えねばならない」と述べ、執行とは切り離す意向を強調した。
 法相就任直後の会見で平岡氏は「国際社会の廃止の流れや、必要だという国民感情を検討して考えていく。考えている間は当然判断できないと思う」と述べ、当面執行しない考えを示唆していた。
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〈来栖の独白 2011/11/07Mon.〉
 松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚に対する近々の刑執行はない、と私は考える。共犯者全員の確定を見ていないから。
 「日刊ゲンダイ」は
<11月21日、オウム真理教の幹部、遠藤誠一被告(51)の上告審判決が最高裁で下され、オウム事件で起訴された189人の刑事裁判がすべて終わるからだ。>
 というが、行政は仮定に基づく執行はしない。遠藤誠一被告の上告審判決がどのように下されるか、あくまでも判らない。差し戻されるかもしれない。差し戻しとなれば、オウム事件裁判は、暫くは終結を見ない。
 10月27日、藤村修官房長官の「野田内閣において死刑を廃止する方針はまったくない」との発言を受けて、「政権支持率上昇の手段として、年内にも死刑執行があるかもしれない」と私自身も考えた。が、それは、松本智津夫氏に対してではないだろう。上に述べた理由は別にしても、超有名人を処刑して事を荒立てるようなことはしないのではないか。
 魚住昭氏ではないが私も、この事件についてはもっとしっかり審理されなくてはならない、と思ってきた。先般の東海テレビ『死刑弁護人』のなかで安田好弘弁護士も、魚住氏の触れた個所に言及していた。井上嘉浩被告(当時)の反対尋問を松本氏が「しないで戴きたい」と切願したというのである。「ここにいる証人はたぐいまれな成就者です。この成就者に非礼な態度だけではなく、本質的に彼の精神に悪い影響をいっさい控えていただきたい」と言ったそうだ。「そして、その直後から、麻原氏は精神に異常をきたした。ガタガタと崩れた」と安田弁護士は言う。魚住氏が情熱を傾ける麻原彰晃氏とは、いかなる人物だろう。 
 この事件については、多くが解明されていない。この事件の弁護人となったことで、安田さんは無実の罪で拘引された。
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麻原が「子供を苛めるな。ここにいる I証人は 類い稀な成就者です」と弁護側反対尋問を妨害 オウム事件2011-03-08 | 死刑/重刑/生命犯 問題
『死刑弁護人』/“平和を実現する人々は幸いである。義のために迫害される人々は幸いである”マタイ5章2011-10-12 | 死刑/重刑/生命犯 問題

アメリカの言いなりだった小泉竹中路線と同じ道を辿る野田政権(BKD=売国奴)のTPP参加

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またのさばる開国論者たち 野田 仙谷 前原の民主党は売国奴
日刊ゲンダイ2011/11/08
■アメリカのいいなりだった小泉竹中路線と同じ道を辿る野田民主党政権のTPP参加とそれを後押しする財界、マスコミ、エセ学者たち
 目の前に並べられたダイヤモンドの真贋を判別したければ、売り主の本性を見抜けばいい。信頼に足る人物なら本物だし、口先だけのペテン師なら偽物だ。賛成と反対が激しく対立しているTPPも、“応援団”の顔ぶれを見れば、どっちが国益にかなうのかハッキリする。
 竹中平蔵慶大教授――米国ベッタリの小泉元首相とつるんで日本に格差社会を定着させた張本人だ。「労働者派遣法」を見直し、日本を非正規労働者という名のワーキングプアであふれさせた揚げ句、派遣会社大手パソナの会長に座った恥知らずでもある。金持ち優遇、弱者切り捨て社会は小泉竹中コンビの暴走から始まった。
 この卑劣漢は今、「TPP頑張れ」のスタンスだ。〈TPPしか選択はない。むしろ早く参加して交渉を有利に進めることこそが国益なのだ〉(日経電子版)などとほざいている。テレビでも、「TPPで自由に競争できるようになる」「自由になれば貿易が拡大する」などと主張。ほかのコメンテーターに「安い輸入品が入ってくればデフレが深化する」「関税が減った分は円高で吹っ飛ぶ」と突っ込まれても、「デフレ対策、円高対策は別にやればいい」と居直った。
 竹中の子分の大田弘子元経財相も、参加が経済成長につながると訴え、確たる根拠もないくせに「中国も韓国も入ってくる」なんて無責任なことを言っている。こんな連中が肩入れしているのだから、TPPは絶対にダメだ。参加すればロクなことがない。それだけはハッキリとしている。
■TPPに参加して世界と競争すればこの国は経済成長すると今回も嘘八百を並べ立てるが、アメリカ資本主義最後の策謀になぜ隷従しなければならないのか
*全体右向けでTPPに突っ込む
 同志社大教授の浜矩子氏(国際経済学)が言う。
 「特定エリアの関税を撤廃すれば、自然と貿易も、そのエリアに封じ込められます。360度の幅広い市場から好きなものを選択するのではなく、決められた範囲内で取引をするようになる。このどこが自由なのでしょうか。大局的に見れば、TPPは新しい囲い込みだし、貿易の効率を落とします。円高やデフレの問題を抱えながらTPPを推進するのも矛盾している。こっちをたたけばあっちが頭を出すモグラたたきと同じです。自分で自分の首を絞めることになる。必要なのは、モグラを一網打尽にすること。一気に処理する構想が必要なのです。ほかのことはさておいて“競争に負けるな”“競争に勝てば経済成長する”と強調するのは非常に短絡的。“視野狭窄(きようさく)症候群”を患っているとしか思えません」
 視野が狭いのは米国かぶれした学者たちだけではない。財界はもちろん大マスコミも、TPPを後押ししている。政財界御用達の日経が〈野田佳彦首相は、今こそ交渉参加を決断すべきだ。機は熟した〉(11月3日付社説)と煽るのは珍しくないが、ほかの大新聞まで〈少子化で国内市場が縮小するなか、成長著しいアジア太平洋地域を中心に経済連携を深めることは欠かせない〉(朝日10月16日付社説)、〈日本だけが一方的に不利益をこうむるはずがない〉(毎日10月31日付社説)とエールを送るのだ。全体右向け右で戦争に突き進んだ暗い記憶が呼び戻されるようである。
*30年来の対日市場開放要求の総仕上げ始めたオバマ
 TPPは強欲な米国資本主義が仕掛ける最後の策略だ。オバマ米大統領は「5年間で輸出を倍増させる」と主張している。そのための仕掛けが、この協定だ。交渉参加国に日本を含めた10カ国の総GDPを見ると、日米の2カ国だけで9割を占めてしまう。ほかはチョボチョボでオマケみたいなもの。TPPの実態は日米FTAである。米国は日本市場で輸出を倍増させるハラだ。
 法大教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
 「米国は多国間交渉をカムフラージュにして、30年来の対日市場開放要求を一気に実現しようと狙っています。これまでも構造協議や年次改革要望書で日本に圧力をかけてきた。その総仕上げがTPPなのです。民主党は普天間で米国の怒りをかっている。その代わりにTPPを推進して、ご機嫌を取ろうとしているのかもしれませんが、とんでもない。市場開放、新自由主義、規制緩和と米国の言いなりになって構造改革を進めた結果、日本はメチャクチャです。貧困が増大し、格差は拡大した。米国のやり方やルールを押しつけられても、日本は豊かになりません。TPPだけは違うという保証はどこにもないのです。米国流の新自由主義や規制緩和の旗振り役となり、大きな失敗を犯した政治家や企業経営者、マスコミは真摯に反省すべきでしょう。無責任な言説を唱えるなど、もってのほかです」
 それなのに野田首相は、失敗を犯した連中の後を追いかけ、日本の格差を拡大させるつもりだ。
 日本を離れて気が大きくなったのか、外遊先の仏カンヌで「最終的に私の政治決断が必要になる」と言い出した。民主党内や野党、国民の反対が強くても、目を閉じ、耳をふさいで交渉参加に舵を切るわけだ。完全に常軌を逸している。
*日本の農産物の関税率は高くない
 企業の目が外に向けば向くほどコスト意識は高まっていく。グローバル市場は価格競争だ。工場が国内に残っても人件費は削られる。一方で大株主や経営者は、海外展開で利益が出れば配当や役員報酬でニンマリだ。99%の人たちは搾取され、1%が甘い汁をすする。自由貿易は、もともと不平等や格差を拡大させる性質を持っているのだ。
 TPPには、その弊害を何倍、何十倍にも増幅させる威力がある。小泉竹中路線で破壊された国民の暮らしは、対米隷属野田政権で、さらに悪化してしまう。
 「信念か宗教的関心か知らないが、党内合意を形成させないことを自己目的化している」と反対派をこき下ろした仙谷政調会長代行、「不満を持つ人に配慮したら政策は前に進まない」と反対派の切り捨てを宣言した前原政調会長もトチ狂っている。民主党の中枢はそろいもそろって売国奴ばかりだ。
 真っ先にTPPに飛びついた菅前首相は、これを「平成の開国だ」とぶち上げた。しかし、日本はすでに十分開国している。日本の農産物の平均関税率は11・7%だ。高いのは、コメの778%や小麦の252%などで主食ぐらいのもの。でも、市場としては大きい。だから米国が狙っている。それを民主党の売国奴はうやうやしく差し出すつもりだ。
 「降って湧いたようなTPPになぜ日本も前のめりになるのか。米国がハイジャックした政策に誘われ、ホイホイと仲間入りする必要があるのか。もっと腰を落ち着けて、グローバル社会における日本の通商のあり方について、きちんと議論してもらいたい」(浜矩子氏=前出)
 野田は、「米国の後ろ盾があれば長期政権が見込める」と計算しているのかもしれないが、お天道様は天下の悪行を許さないだろう。
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演者(首相)の後ろに財務官僚/勝栄二郎が、内閣に「大増税」へと舵を切らせている/国家戦略会議2011-11-07 | 政治(経済/社会保障/TPP)
TPP交渉参加「苦境にあるオバマ大統領にAPECで花を持たせたい」/問題はデメリットを報道しないメディア2011-11-01 | 政治(経済/社会保障/TPP)
TPPとは、米国による属国化政策/意に沿わないと訴えられる/FTAに頼った韓国の大誤算は明日の日本の姿2011-11-07 | 政治(経済/社会保障/TPP)
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BKD(=売国奴議員)を「総選挙」で叩き落とせ!!
日刊ゲンダイ2011/11/08
 AKB48の総選挙が話題になったが、今、永田町では「BKDの総選挙」が話題だ。BKDとは売国奴の略。国を売るようなTPPについて、早期の参加表明を促している議員らである。京大准教授の中野剛志氏が彼らを「BKD」と命名。TPP絶対反対を訴えていた。BKD議員こそ、次の総選挙で叩き落とさなければならない。そのリストに出てくるのは誰なのか。国民もよーく知っておいたほうがいい。
 TPPに反対している民主党議員らでつくる「TPPを考える国民会議」が5日、東京・有楽町で街頭演説会を開いた。山田正彦前農相ら約25人の国会議員が参加。原口一博元総務相は「民主党政権が強行するなら、民主党をぶっ壊しても頑張りたい」と声を張り上げていたが、注目を集めたのは中野剛志氏の訴えだ。
 「これだけみんなが心配しているのにTPPに参加するというのは、政治学の専門用語でいいますと、売国といいます。売国をする人たちのことを専門用語で売国奴といいます。売国奴というのは英語でBKDといいます」と、まあ、一種のユーモアを交えて、聴衆を引きつけ、TPPの問題点を徹底的に訴えたのである。
 そこで、BKD議員とは誰なのか。まとめてみたのが別表だ。もちろん、沈黙派も含めた推進容認派は民主党議員で200人以上いる。選挙の際は徹底チェックするべきだが、とりあえず、ワーストBKDが彼らになる。
 筆頭の野田首相はとにかく自分の延命のためにオバマにすがり、ご機嫌取りのためにAPECでの参加表明に突き進んでいる。民主党のTPP作業チーム事務局次長の藤末健三参院議員(元経産官僚)が作成した内部文書がすっぱ抜かれたが、そこには〈APECで参加表明すれば、米国がもっとも評価するタイミングになる〉なんて表現が出てくるのだ。野田はそこから逆算して、党内議論の日程を組み、資料も小出しに出してきた。
 「2位の前原政調会長は慎重派議員の批判について、TPPお化け論を展開。『交渉参加しても途中で抜けられる』なんて、いい加減なことを言って、世論誘導しています。3位の仙谷政調会長代行は慎重派の批判を『宗教的な反対』と侮辱した。その秘蔵っ子が吉良事務局長、玄葉外相は開国フォーラムの説明役だったのに、予定されていたフォーラムをきちんと開こうとしない。APECに間に合わせるためとしか思えません」(ジャーナリスト・横田一氏)
 次の枝野は担当大臣。岡田前幹事長はきのう(6日)もTVで「反対議員は農業の今後について答えがない。理解できない」と批判。こちらも推進スポークスマンのひとりだが、輿石幹事長や樽床幹事長代行、鉢呂吉雄TPPプロジェクトチーム座長、鹿野道彦農相らもBKDになる。反対・慎重派の中には「裏切り者」と言う議員もいるほどだ。
 「輿石幹事長や樽床幹事長代行はTPP慎重派の小沢グループの意向を尊重すると思いきや、幹部就任以降、発言はコトなかれ主義に終始している。経産相をクビになった鉢呂氏は北海道選出のくせにAPECまでに決意表明の流れをつくろうとシャカリキ。信じられない言動です。でも、一番許せないのは鹿野さんですよ。なんだかんだいって、代表選の最後に野田さんに乗った鹿野グループがTPPを推進させたA級戦犯ともいえる」(反対派議員のひとり)
 その鹿野はグループ内の会合で「与党の責任は重い」とか呼びかけていた。全員、選挙で鉄槌を加えるべきである。
▽ワーストBKD議員 国を滅ぼす政治家12人
 野田佳彦首相
 前原誠司政調会長
 仙谷由人政調会長代行
 玄葉光一郎外相
 枝野幸男経産相
 岡田克也前幹事長
 輿石東幹事長
 樽床伸二幹事長代行
 藤末健三参院議員(TPPプロジェクトチーム事務局次長)
 鉢呂吉雄衆院議員(同座長)
 吉良州司衆院議員(同事務局長)
 鹿野道彦農相
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TPP交渉参加「苦境にあるオバマ大統領にAPECで花を持たせたい」/問題はデメリットを報道しないメディア2011-11-01 | 政治(経済/社会保障/TPP)
『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項(毒まんじゅう)/コメの自由化は今後こじ開けられる2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP)

原子力安全庁のホームページ作成費に1.4億円/「原発の取材、『女性はダメ』というのは受け入れがたい」

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原子力安全庁のサイト作成に1億4000万円 細野原発担当相に「水増し」指摘
ニコニコニュース(オリジナル)2011年11月8日(火)17時45分配信
 「原子力安全庁」(仮称)のホームページ作成費として、1.4億円が三次補正予算案に計上されていることが2011年11月8日、自民党・茂木敏充政調会長の指摘でわかった。
 原子力安全庁は、環境省の外局として来年4月に発足予定の機関。経済産業省の原子力安全・保安院や内閣府の原子力安全委員会が統合され、原子炉・核燃料物質などの使用に関する規制、安全性の確認、環境モニタリングなどを担う組織になるとされている。
 茂木政調会長は11月8日午前の衆議院予算委員会で、細野豪志原発事故担当相に、
「細野大臣がこれから所管をする原子力安全庁。三次補正の発足準備経費の中にホームページの作成費も入っている。1.4億円。政府からもらった数字なので、間違いない。1億4000万円をかけて、どんなホームページを作るのか」
 と質問。これに対して、1.4億円のホームページ作成費について「承知していなかった」という細野原担相は、
「ホームページというのは、多分に広報を主な目的とするところにある。その効果をしっかりと見たうえで、予算というものをしっかりと立てていかなければならないと思う。1.4億円という予算が、他省庁と比較して本当に適正かどうか、しっかりと確認をしなければならない」
 とし、1.4億円の予算が適正であるか精査する意向を示した。
 この答弁を受け茂木政調会長は、「明らかに代理店の言いなりの『水増し』。官僚に任せないで自身でチェックをして欲しい」と厳しい意見を浴びせた。
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外国人ジャーナリスト「福島第1原発の取材、『女性はダメ』というのは受け入れがたい」
ニコニコニュース(オリジナル)2011年11月8日(火)20時24分配信
 イタリア人ジャーナリストのピオ・デミリア氏は2011年11月8日、同じくイタリア人の写真家ピエルパネロ・ミッティカ氏と共に都内で出版記念イベントを開催した。東日本大震災の発生直後から被災地を取材しているデミリア氏はイベントのなかで、今月12日に予定されている細野豪志原発担当大臣の福島第1原発現地視察について、女性記者の同行が禁じられていることなどに疑問を呈し、政府による取材制限は「受け入れがたい」と語った。
 デミリア氏はジャーナリストとして、日本外国特派員協会に名を連ねている。細野原発担当相は12日に福島第1原発の現地視察を予定しているが、敷地内への同行取材を認められているのは内閣記者会に加盟する19社と、福島県政記者クラブ7社、そして外国プレスの計36人に限定されている。これについては自由報道協会所属のフリー記者らがすべての報道陣に公開することを求め、細野原発担当相に「現地同行取材に関する申し入れ」を行っている。
 デミリア氏は、出版記念イベントのなかでこの現地視察に触れ、
「日本政府が報道機関に対し、福島第1原発施設の内部を取材しても構わないという許可を初めて出した。しかしながら外国の報道機関はテレビだけと言われている。それに女性はダメとも言われており、これも到底受け入れることはできない」
と、外国人記者としての立場から政府による取材制限を批判。「それぞれの記者が選択をして、自分の責任において活動をすべきだと思っている」とし、
「情報の伝達という活動において政権側にある機関というものは情報を隠そうとする。隠されようとしている情報を暴き、真実を伝えることが我々の仕事だ」
 と自らの立場を強調した。
.........................
細野担当相の福島第1視察、同行取材は記者クラブ限定/首相補佐官時代は門戸を開いていたが・・・2011-11-03 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 細野担当相の福島第1視察、同行取材は記者クラブ限定
2011年11月02日「北方ジャーナル」
首相補佐官時代は記者クラブ以外にも門戸を開いていた筈だが…
 大手紙などの既報によると、細野豪志・内閣府特命担当大臣(原子力行政担当)は1日、今月12日に福島第1原子力発電所を視察する予定を発表、記者クラブ加盟メディアと外国プレスの記者36人の同行取材を認めるとした。記者クラブに加盟していないフリー記者などは、同午後から同大臣室などに問い合わせや要望などを寄せているが、現時点で参加が認められる見込みはなさそうだ。
 同大臣室の担当者によると、同行取材が認められるのは内閣記者会の常勤幹事社19社と福島県政記者クラブの加盟社7社の記者、及び外国プレスの4人で、人数としては36人。女性記者は参加を認められない。また、スチル写真や動画映像は発表前に“検閲”される可能性がある。
 以下、同大臣室とのやり取りを採録する。
――12日に予定されている細野大臣の福島第1原発視察、同行報道陣の参加資格と申し込み方法を伺いたい。
「過密スケジュールで進む現場の負担を考え、入っていただく人数は大幅に制限せざるを得なかった。細野大臣のほうから『現場の状況を少しでも知っていただくため、この機会に同行取材をお受けしよう』ということになり、内閣官房の大臣として視察することから、総理などの同行取材と同様、『内閣記者会』の常勤幹事社にお声をおかけした」
――何社になるか。
「それで19社。それに加え、被災した方々が地元の皆さんであるという観点から、地元の新聞やテレビなど計7社にもお声をおかけしようと」
――地元の記者クラブということか。
「『福島県政記者クラブ』。さらに、海外での関心も当然高いだろうということも踏まえ、外国プレスの代表の方、こちらもお入りいただくことにしようと、お声をおかけしているところである」
――外国プレスの窓口はFCCJ(日本外国特派員協会)か。
「窓口は『FPIJ(在日外国報道協会)』で、4人としている」
――4人とした理由は。
「基本的にスチルカメラ、ムービーカメラ、その音声担当、及びペン記者、各1人と想定している」
――そうした声かけ対象の中にフリー記者などが含まれない理由は。
「決して、今後もフリーや雑誌の方々を排除しようという考えではない。ただ、全体の人数として、たとえば免震重要棟(対策本部などを設置)の大きさや現場の負担などを考えると、今回の36人がぎりぎりだろうと。先の3つの団体に加盟する方々に留めざるを得ないということになった」
――「外国プレス4人」のような枠をフリー向けに加えることも難しいか。
「ちょっと難しいという判断になった」
――女性記者の参加が禁じられているとの情報があるが、事実か。
「そのようにお伝えしている。理由は大きく2点。1つに、女性は現地の労働者としても立ち入ることができなくなっている。母体保護の観点から、女性については線量の限度が男性のそれよりも厳しく設けられているため。もちろん、取材対応時は線量に細心の注意を払うことになるが、先の事情に鑑みて女性の参加については慎重にならざるを得ない。もう1つ、これらの事情の帰結として、現在の福島第1原発の中には男性しかいない。そこに女性が入るとなると、卑近な例で恐縮だが、お手洗いや更衣室の整備など、施設面での細かい準備などが必要になってくる。そういった観点で、今回はご遠慮いただかざるを得ない」
――そのあたりの事情は内閣記者会などに伝わっており、当事者も了解済みということか。
「今のところ、特段ご質問などは受けていない」
――女性のケースと同じ理由で若い男性記者の参加が制限されることは。
「それはない」
――伝聞情報で、撮影が制限されるようだという話がある。具体的には、撮影後の素材(写真・動画)を発表前にチェックされる可能性があると。これは事実か。
「核物質防護の観点から、原子炉の管理者(東京電力)には、支障のある情報を外に出さないように管理する義務が課せられている。支障のある部分を撮られることのないよう事前にお声をかけさせていただくつもりではあるが、なにぶん現在の原発内の警備体制は地震の影響で通常時とは少し違った形になっており、そのあたりはグレーというべきか、取材に同行する原子力安全・保安院の人間から見て何でもないように見える風景であっても、のちに画像・映像をきちんと見直すと支障のあるものが写り込んでいた、という可能性も否定できない。そういった状況に対応するため、そういう部分は事後的に確認させていただきたいとお願いしている」
――チェックする主体は東京電力か。
「そうである」
――その旨も、FPIJを含めて取材者らは了解済みなのか。
「そういうご連絡を差し上げているところである」
――申し込み締め切りは4日で間違いないか。
「そうである」
――すでに申し込みは来ているか。
「一部届いている」
――定員を超えた場合は先着で決めるのか。
「各社何人、という形で人数を制限しているので、そういうことはない」
――つまり、各社から誰が行くか、というだけの段階か。
「そうである」
――当日のスケジュールなどは固まっているか。
「検討中。現場の放射線量などを現地で確認しているところであり、確定次第こちらからご連絡することになっている」
――どのように実施したのかを事後に問い合わせることはできるか。
「東京電力に問い合わせることはできると思う」
――今回の件で、参加できないフリー記者などから内閣府への抗議はあったか。
「一部、『なぜですか』というようなご照会はいただいている。また『次回は入れてね』というご希望もいただいている。」
――抗議という形のものは来ていないと。
「それらのご希望なりご照会の、『なんでだ』というような口調を抗議と受け取るかどうか、というところではないか」
――その「次回」というのはあり得るのか。
「あり得ると思われる。ただ、日程はまったくわからない」
――それにフリー記者が加われる可能性はあるか。
「そのあたりも含めて改めて検討することになる」
――どういう形になるかはわからないが、1度きりでは終わらないと。
「今回とまったく同じような同行取材という形をとるかどうかも含めて、時期や形が未定ということである」
 (2日午前、電話取材)
 1日正午ごろに大臣室に苦情を寄せた東京都のフリーランスライター畠山理仁さん(38)は、「福島第1の現地取材は、フリーも大手も関係なく、内閣記者会以外の記者が東京電力の会見や政府・東電の合同会見などでずっと求め続けていたこと。それがなぜ内閣記者会限定になるのか」と、率直な疑問を口にする。大臣室の担当者が、フリーからの抗議が届いていないと認識していることについては「やさしい口調で抗議したからいけなかったのだろうか」と、「次」の機会が訪れる可能性については「次が来る前に大臣が変わってしまうのではないか」と話した。敢えてフリーとして参加を申し込み、記者クラブから欠員が出たら参加できるよう交渉するつもりという。畠山さんが暫定幹事長を務める自由報道協会が、内閣府に抗議などを寄せる可能性もある。
 ジャーナリストの寺澤有さん(44)など政府・東電の合同会見に参加しているフリー記者らの集まり「フリーランス連絡会」では、外国プレスと同様4人の参加枠を求め、申し込み締め切りの4日までに内閣府宛て要求書を提出する考えがある。今のところ参加枠に入っていない寺澤さんは、取材映像などを事前チェックするという現時点でのルールについて、「もともと記者クラブメディアは政府・東電の大本営発表を垂れ流しているだけだから、彼らにとっては今さら検閲されてもあまり影響がないのでは」と、冷笑ぎみに話している。  (ん)


TPP:小沢一郎氏は慎重姿勢

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TPP:小沢元代表は慎重姿勢
 民主党の小沢一郎元代表は8日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加について「自由競争、自由貿易の原則は誰も否定できないが、今、米国が主張しているTPPをそのまますぐ受け入れることとは別問題。日本の国民生活をちゃんと守るシステムを作ったうえで、吟味してやらなければならない」と慎重な姿勢を示した。来週発売の「サンデー毎日」に掲載されるジャーナリストの鳥越俊太郎氏との対談に応じ「(現時点で交渉に参加すれば米国の)意のままにやられてしまう」と述べた。
毎日新聞 2011年11月8日 19時33分
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アメリカの言いなりだった小泉竹中路線と同じ道を辿る野田政権(BKD=売国奴)のTPP参加2011-11-08 | 政治(経済/社会保障/TPP)
 またのさばる開国論者たち 野田 仙谷 前原の民主党は売国奴
  日刊ゲンダイ2011/11/08
・アメリカのいいなりだった小泉竹中路線と同じ道を辿る野田民主党政権のTPP参加とそれを後押しする財界、マスコミ、エセ学者たち
 目の前に並べられたダイヤモンドの真贋を判別したければ、売り主の本性を見抜けばいい。信頼に足る人物なら本物だし、口先だけのペテン師なら偽物だ。賛成と反対が激しく対立しているTPPも、“応援団”の顔ぶれを見れば、どっちが国益にかなうのかハッキリする。
 竹中平蔵慶大教授――米国ベッタリの小泉元首相とつるんで日本に格差社会を定着させた張本人だ。「労働者派遣法」を見直し、日本を非正規労働者という名のワーキングプアであふれさせた揚げ句、派遣会社大手パソナの会長に座った恥知らずでもある。金持ち優遇、弱者切り捨て社会は小泉竹中コンビの暴走から始まった。
 この卑劣漢は今、「TPP頑張れ」のスタンスだ。〈TPPしか選択はない。むしろ早く参加して交渉を有利に進めることこそが国益なのだ〉(日経電子版)などとほざいている。テレビでも、「TPPで自由に競争できるようになる」「自由になれば貿易が拡大する」などと主張。ほかのコメンテーターに「安い輸入品が入ってくればデフレが深化する」「関税が減った分は円高で吹っ飛ぶ」と突っ込まれても、「デフレ対策、円高対策は別にやればいい」と居直った。
 竹中の子分の大田弘子元経財相も、参加が経済成長につながると訴え、確たる根拠もないくせに「中国も韓国も入ってくる」なんて無責任なことを言っている。こんな連中が肩入れしているのだから、TPPは絶対にダメだ。参加すればロクなことがない。それだけはハッキリとしている。
・TPPに参加して世界と競争すればこの国は経済成長すると今回も嘘八百を並べ立てるが、アメリカ資本主義最後の策謀になぜ隷従しなければならないのか
*全体右向けでTPPに突っ込む
 同志社大教授の浜矩子氏(国際経済学)が言う。
 「特定エリアの関税を撤廃すれば、自然と貿易も、そのエリアに封じ込められます。360度の幅広い市場から好きなものを選択するのではなく、決められた範囲内で取引をするようになる。このどこが自由なのでしょうか。大局的に見れば、TPPは新しい囲い込みだし、貿易の効率を落とします。円高やデフレの問題を抱えながらTPPを推進するのも矛盾している。こっちをたたけばあっちが頭を出すモグラたたきと同じです。自分で自分の首を絞めることになる。必要なのは、モグラを一網打尽にすること。一気に処理する構想が必要なのです。ほかのことはさておいて“競争に負けるな”“競争に勝てば経済成長する”と強調するのは非常に短絡的。“視野狭窄(きようさく)症候群”を患っているとしか思えません」
 視野が狭いのは米国かぶれした学者たちだけではない。財界はもちろん大マスコミも、TPPを後押ししている。政財界御用達の日経が〈野田佳彦首相は、今こそ交渉参加を決断すべきだ。機は熟した〉(11月3日付社説)と煽るのは珍しくないが、ほかの大新聞まで〈少子化で国内市場が縮小するなか、成長著しいアジア太平洋地域を中心に経済連携を深めることは欠かせない〉(朝日10月16日付社説)、〈日本だけが一方的に不利益をこうむるはずがない〉(毎日10月31日付社説)とエールを送るのだ。全体右向け右で戦争に突き進んだ暗い記憶が呼び戻されるようである。
*30年来の対日市場開放要求の総仕上げ始めたオバマ
 TPPは強欲な米国資本主義が仕掛ける最後の策略だ。オバマ米大統領は「5年間で輸出を倍増させる」と主張している。そのための仕掛けが、この協定だ。交渉参加国に日本を含めた10カ国の総GDPを見ると、日米の2カ国だけで9割を占めてしまう。ほかはチョボチョボでオマケみたいなもの。TPPの実態は日米FTAである。米国は日本市場で輸出を倍増させるハラだ。
 法大教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
 「米国は多国間交渉をカムフラージュにして、30年来の対日市場開放要求を一気に実現しようと狙っています。これまでも構造協議や年次改革要望書で日本に圧力をかけてきた。その総仕上げがTPPなのです。民主党は普天間で米国の怒りをかっている。その代わりにTPPを推進して、ご機嫌を取ろうとしているのかもしれませんが、とんでもない。市場開放、新自由主義、規制緩和と米国の言いなりになって構造改革を進めた結果、日本はメチャクチャです。貧困が増大し、格差は拡大した。米国のやり方やルールを押しつけられても、日本は豊かになりません。TPPだけは違うという保証はどこにもないのです。米国流の新自由主義や規制緩和の旗振り役となり、大きな失敗を犯した政治家や企業経営者、マスコミは真摯に反省すべきでしょう。無責任な言説を唱えるなど、もってのほかです」
 それなのに野田首相は、失敗を犯した連中の後を追いかけ、日本の格差を拡大させるつもりだ。
 日本を離れて気が大きくなったのか、外遊先の仏カンヌで「最終的に私の政治決断が必要になる」と言い出した。民主党内や野党、国民の反対が強くても、目を閉じ、耳をふさいで交渉参加に舵を切るわけだ。完全に常軌を逸している。
*日本の農産物の関税率は高くない
 企業の目が外に向けば向くほどコスト意識は高まっていく。グローバル市場は価格競争だ。工場が国内に残っても人件費は削られる。一方で大株主や経営者は、海外展開で利益が出れば配当や役員報酬でニンマリだ。99%の人たちは搾取され、1%が甘い汁をすする。自由貿易は、もともと不平等や格差を拡大させる性質を持っているのだ。
 TPPには、その弊害を何倍、何十倍にも増幅させる威力がある。小泉竹中路線で破壊された国民の暮らしは、対米隷属野田政権で、さらに悪化してしまう。
 「信念か宗教的関心か知らないが、党内合意を形成させないことを自己目的化している」と反対派をこき下ろした仙谷政調会長代行、「不満を持つ人に配慮したら政策は前に進まない」と反対派の切り捨てを宣言した前原政調会長もトチ狂っている。民主党の中枢はそろいもそろって売国奴ばかりだ。
真っ先にTPPに飛びついた菅前首相は、これを「平成の開国だ」とぶち上げた。しかし、日本はすでに十分開国している。日本の農産物の平均関税率は11・7%だ。高いのは、コメの778%や小麦の252%などで主食ぐらいのもの。でも、市場としては大きい。だから米国が狙っている。それを民主党の売国奴はうやうやしく差し出すつもりだ。
 「降って湧いたようなTPPになぜ日本も前のめりになるのか。米国がハイジャックした政策に誘われ、ホイホイと仲間入りする必要があるのか。もっと腰を落ち着けて、グローバル社会における日本の通商のあり方について、きちんと議論してもらいたい」(浜矩子氏=前出)
 野田は、「米国の後ろ盾があれば長期政権が見込める」と計算しているのかもしれないが、お天道様は天下の悪行を許さないだろう。
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演者(首相)の後ろに財務官僚/勝栄二郎が、内閣に「大増税」へと舵を切らせている/国家戦略会議2011-11-07 | 政治(経済/社会保障/TPP)
TPPとは、米国による属国化政策/意に沿わないと訴えられる/FTAに頼った韓国の大誤算は明日の日本の姿2011-11-07 | 政治(経済/社会保障/TPP)
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BKD(=売国奴議員)を「総選挙」で叩き落とせ!!
 日刊ゲンダイ2011/11/08
 AKB48の総選挙が話題になったが、今、永田町では「BKDの総選挙」が話題だ。BKDとは売国奴の略。国を売るようなTPPについて、早期の参加表明を促している議員らである。京大准教授の中野剛志氏が彼らを「BKD」と命名。TPP絶対反対を訴えていた。BKD議員こそ、次の総選挙で叩き落とさなければならない。そのリストに出てくるのは誰なのか。国民もよーく知っておいたほうがいい。
 TPPに反対している民主党議員らでつくる「TPPを考える国民会議」が5日、東京・有楽町で街頭演説会を開いた。山田正彦前農相ら約25人の国会議員が参加。原口一博元総務相は「民主党政権が強行するなら、民主党をぶっ壊しても頑張りたい」と声を張り上げていたが、注目を集めたのは中野剛志氏の訴えだ。
 「これだけみんなが心配しているのにTPPに参加するというのは、政治学の専門用語でいいますと、売国といいます。売国をする人たちのことを専門用語で売国奴といいます。売国奴というのは英語でBKDといいます」と、まあ、一種のユーモアを交えて、聴衆を引きつけ、TPPの問題点を徹底的に訴えたのである。
 そこで、BKD議員とは誰なのか。まとめてみたのが別表だ。もちろん、沈黙派も含めた推進容認派は民主党議員で200人以上いる。選挙の際は徹底チェックするべきだが、とりあえず、ワーストBKDが彼らになる。
 筆頭の野田首相はとにかく自分の延命のためにオバマにすがり、ご機嫌取りのためにAPECでの参加表明に突き進んでいる。民主党のTPP作業チーム事務局次長の藤末健三参院議員(元経産官僚)が作成した内部文書がすっぱ抜かれたが、そこには〈APECで参加表明すれば、米国がもっとも評価するタイミングになる〉なんて表現が出てくるのだ。野田はそこから逆算して、党内議論の日程を組み、資料も小出しに出してきた。
 「2位の前原政調会長は慎重派議員の批判について、TPPお化け論を展開。『交渉参加しても途中で抜けられる』なんて、いい加減なことを言って、世論誘導しています。3位の仙谷政調会長代行は慎重派の批判を『宗教的な反対』と侮辱した。その秘蔵っ子が吉良事務局長、玄葉外相は開国フォーラムの説明役だったのに、予定されていたフォーラムをきちんと開こうとしない。APECに間に合わせるためとしか思えません」(ジャーナリスト・横田一氏)
 次の枝野は担当大臣。岡田前幹事長はきのう(6日)もTVで「反対議員は農業の今後について答えがない。理解できない」と批判。こちらも推進スポークスマンのひとりだが、輿石幹事長や樽床幹事長代行、鉢呂吉雄TPPプロジェクトチーム座長、鹿野道彦農相らもBKDになる。反対・慎重派の中には「裏切り者」と言う議員もいるほどだ。
 「輿石幹事長や樽床幹事長代行はTPP慎重派の小沢グループの意向を尊重すると思いきや、幹部就任以降、発言はコトなかれ主義に終始している。経産相をクビになった鉢呂氏は北海道選出のくせにAPECまでに決意表明の流れをつくろうとシャカリキ。信じられない言動です。でも、一番許せないのは鹿野さんですよ。なんだかんだいって、代表選の最後に野田さんに乗った鹿野グループがTPPを推進させたA級戦犯ともいえる」(反対派議員のひとり)
 その鹿野はグループ内の会合で「与党の責任は重い」とか呼びかけていた。全員、選挙で鉄槌を加えるべきである。
▽ワーストBKD議員 国を滅ぼす政治家12人
野田佳彦首相
前原誠司政調会長
仙谷由人政調会長代行
玄葉光一郎外相
枝野幸男経産相
岡田克也前幹事長
輿石東幹事長
樽床伸二幹事長代行
藤末健三参院議員(TPPプロジェクトチーム事務局次長)
鉢呂吉雄衆院議員(同座長)
吉良州司衆院議員(同事務局長)
鹿野道彦農相
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TPP交渉参加「苦境にあるオバマ大統領にAPECで花を持たせたい」/問題はデメリットを報道しないメディア2011-11-01 | 政治(経済/社会保障/TPP)
『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項(毒まんじゅう)/コメの自由化は今後こじ開けられる2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP) 
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「一部紙面等で『TPPについて小沢氏前向き』と報じられておりますが、それは誤りです」小沢一郎事務所2011-10-22 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 小沢元代表:「虚偽記載とは思わない」記者会見で持論展開
 民主党の小沢一郎元代表は20日、東京都内で記者会見し、資金管理団体「陸山会」を巡り政治資金規正法違反(虚偽記載)で強制起訴されたことについて「虚偽記載しているとは思っていない」と改めて否定した。また、07年2月の会見で、陸山会による土地購入に関し、土地の権利が自分にないことを示す証拠として公開した「確認書」について、当時の会見直前に作ったことを認めた。
 確認書を巡っては、07年に陸山会所有とされた土地が元代表個人の名義で登記されていることが発覚。「政治資金を使った蓄財」との批判が高まり、元代表は会見で釈明。「政治団体では不動産登記が認められないので代表者の名前で登記した。土地取引時に私個人のものではないことを確認書として残した」と説明し、05年の日付が書かれていた。
 20日の会見で元代表は文書について「作成を指示し、他(の取引で)はできていたが、その部分(問題の土地取引で)は抜け落ちていた。悪いことだと思っていない」と釈明した。
 ◇一般記者質問に雰囲気が一変
 会見は一部のフリーやインターネットメディアの記者らでつくる「自由報道協会」の主催。「全国民同時参加型の記者会見」と銘打ち、ネットで生中継された。主催者側は東日本大震災の被災者支援と環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について質問。続いてネットで公募したという計7問に対し、元代表が熱弁をふるった。
 だが、会場からの質疑応答に移り一般紙記者が「(陸山会事件の)虚偽記載は形式的ではない」と質問すると雰囲気は一変。元代表は「あなたの意見が違う。これまで間違った場合は全て修正ですんでいる」と語気を強めて反論した。記者が再質問すると司会者は打ち切りを要求、フリー記者は「(司会者の指示に従うという)ルールを守れ」などと声を上げた。結局、事件を巡る質問は別の一般紙記者と合わせて2問だけだった。
 ◇記者会見での主なやりとり
−−被災地に行って表だった活動をしないのはなぜか。
  震災後に岩手に入り国と県の協力を緊密にやっていこうと話をした。その後も知事から連絡があり、できる立場でやっている。岩手県沿岸の地勢についてある意味では誰よりも分かっている。
−−今後首相をめざすか、後進に道を譲るか?
  自民党を離党した際に目指した政権交代、本当の意味での議会制民主主義を定着させるために、やれることはなんでもやりたい。
−−司法のチェックのために匿名の裁判員制度や検察審査会制度を撤廃し、裁判官と検察官は記者会見を開くべきでは?
  できるかぎりオープンな社会構造にしなくてはいけない。国民の代表の国会議員が真実を分かるようにするため、強制力のある国政調査権を持たせるなど国会機能の強化が早道だ。
−−政治資金は全てオープンにして国民が判断できるようにすべきだとこれまで発言しているが、陸山会事件で国民の判断を誤らせる虚偽記入があれば実質的な犯罪ではないか。
  いわゆる実質的犯罪が伴わない場合は、いままで収支報告書の訂正ですまされてきたというふうに申し上げてきた。私どもは虚偽記載しているとは思っていませんから。
毎日新聞 2011年10月20日 21時28分(最終更新 10月20日 21時45分)
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国内対策なければ早計=TPP参加で民主・小沢氏
 民主党の小沢一郎元代表は20日午後、フリー記者らでつくる「自由報道協会」主催の会見に臨み、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加に関し、「自由貿易や自由競争という基本的原則は日本に大変有利でありメリットがあるので賛成だが、国民生活を守る対策が取られないうちにやるのはちょっと早計だ」との認識を示した。
 小沢氏は「TPP(に参加した場合の影響)は農林水産業の話だけではない。むしろ(米国などの)メーンの狙いは他の分野にある」とも指摘した。
 首相を目指す考えがあるかどうかを問われたのに対しては、「本当の意味の政権交代可能な、国民が政権を選ぶことのできる民主主義を日本に定着させたい。そのためならば自分でやれることは何でもやりたい」と否定しなかった。(時事通信2011/10/20-19:25)
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@ozawa_jimusho小沢一郎事務所
今日、一部紙面等で『TPPについて「小沢氏前向き」』と報じられておりますが、それは誤りです。 今の拙速な進め方では、国内産業は守れません。

Ozawa Ichiro Website

日米安保破棄を真剣に検討し始めた米国 米軍の再編がもたらす日本の危機にどう立ち向かうか

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日米安保破棄を真剣に検討し始めた米国 米軍の再編がもたらす日本の危機にどう立ち向かうか
JBpress2011.11.08(火)福山 隆
1.はじめに―クリントン国務長官論文
 ヒラリー・クリントン米国務長官が“Foreign Policy”誌(10月11日号)に「これからの世界政治はアジアで決まる。アフガニスタン、イラクでではない。米国はこれからもアクションの中心にい続けるだろう」と題する長大な論文を発表した。
 筆者の若干の私見を加えて要約すれば、その論旨は以下の通り。
(1)米軍は経済力減退に伴い引き続き「世界の警察官」を全うするに足る戦力を維持することができない。
  従って、今後は、重点戦域を定め、一部からは思い切って撤退し、特定戦域に戦力を集中して配備する必要がある。
(2)しからば、重点的に米軍を配備する正面はどこにするか。それは中国が台頭し、米国の経済的利益も大きいアジア太平洋にほかならない。
(3)アジアにおける冷戦後の重点配備は、日本と韓国であった(合計で5万人強の米軍を配備)が、これを見直す(日本に対する戦略的期待が低下したものと思われる)。
(4)新たな配備の方向性は次の通り。
 ・米軍配置を地理的にもっと広げ(distributed)、抗堪性があり、政治的にも問題性の少ない(sustainable)ものとする。
 ・特に南アジア、インド洋での米軍プレゼンスを強化する。豪州は南アジア、インド洋をコントロールするうえで、戦略的な重要国家。
 ・昨今は太平洋とインド洋が軍事的にも一つながりになってきた。シンガポールは、両洋を繋ぐチョークポイントで、戦略的に重要。同国には既に沿岸防衛用艦艇を配備したし、これからは共同作戦も検討する。
 ・このような戦略上のニーズに、米軍の配備・行動をどう合わせていくか。現状のトランスフォーメーションを見直す必要がある。いずれにしても米軍のプレゼンスをもっと広く分布させる必要があり、そのために同盟国、パートナー国を増やしていく。
2.従来のトランスフォーメーションの概要
 冷戦間、米軍は、ソ連を封じ込める体制――前方展開戦略――に基づいて配置されていた。1991年のソ連崩壊後、米国はその世界戦略の見直しを迫られた。
 米軍の展開態勢見直し(Global Posture Review, GPR)は、海外駐留米軍の体制を根本から見直すもので、QDR2001(2001年に公表された、4年毎の国防政策見直し)において宣言されたのち、2003年11月より正式に開始された。
 その基本構想は、次のようなものだ。
(1)共産圏諸国封じ込めのため、その周囲に配置した米軍兵力は時代遅れ
(2)師団(約2万人)ではなく旅団(約4000人)を戦闘単位とし、小型軽量の部隊を急速に展開できるようにする
(3)ITを全面的に活用し、情報収集と命中精度を飛躍的に向上させ、重い砲を減らす
(4)テロ活動と大量破壊兵器の拡散が米国への脅威で、それへの対応に力点を置く
 この基本構想は、ソ連崩壊後の米国は相対的に突出した軍事力を保持し、世界の警察官として、全世界に関与する――という前提になっていた。
 ちなみに、この一環として、日本でも、(1)沖縄の第3海兵遠征軍司令部、第3海兵師団など8000人をグアムに移転、(2)在韓国の第8軍司令部を廃止する代わりに、小型(約300人)の第1軍団司令部を米ワシントン州から神奈川県の座間に移転すること、が表明された。
3.米国・米軍にとっての新たな情勢の出現
 QDR2001が策定された頃に比べ、米国・米軍の戦略環境は以下のように大きな変化を見せ始めた。
(1)日本の没落
 日本が経済的に没落しつつある。今次、東日本大震災は日本の没落を加速する可能性がある。また、政治的には民主党政権が出現し、従来の自民党ほどには米国の意のままにならなくなった。
 米国は日本を、「太平洋の要石(Key Stone of the Pacific)」 と位置づけ重要視してきたが、今後、日本を米国戦略に活用する目算が立ちにくくなりつつある。
(2)中国の台頭と軍事的脅威の顕在化
 米国の当初の対中国政策は、「ヘッジ」と「エンゲージメント」政策の二股を掛けたものだった。
 「ヘッジ」とは、将来、中国が米国の覇権に挑戦する時には、いつでも中国を軍事力で制圧するか、封じ込め得る体制を作ることを指す。
 「エンゲージメント」政策とは共産党独裁国家の中国を米国と同じスタンダードに徐々に変えるために中国と関わることで、経済・社会・人権基準などを米国なみに整合させようと努力することだ。
 しかし、最近、米国は、中国が空母建造に踏み切り、米空母の投入を防ぐ対艦弾道ミサイルの開発を急ぐなど著しい軍拡に鑑み、「ヘッジ」政策に傾きつつある。
(3)米国の凋落
 原因はともかくも、米国の経済は、「世界の警察官」を担うだけの余力を失いつつある。今後10年間で国防予算を最大6000億ドル削減する予定で、陸軍・海兵隊最大約20万人、海軍艦艇最大60隻、空軍戦闘機最大468機を削減するとの報道がある。
(4)イラク・アフガンからの撤退
 バラク・オバマ大統領は、10月21日、イラク駐留米軍部隊を年末までに全面撤収させると発表した。また、6月には、約10万人の規模となっているアフガニスタン駐留米軍を7月より部分撤退し、2012年の夏までに計3万3000人を撤収させる計画を発表した。
 アフガン駐留経費はこれまでに4400億ドル(約35兆円)に達し、米財政に重い負担になっており、残りの部隊も、早晩撤退を余儀なくされるものと思われる。
 イラク・アフガン部隊の撤退は、米国の次なる世界戦略策定を急がせるトリガーになることは間違いないことだろう。
4.新たな米軍戦略の骨格と特徴
(1)米国の基本スタンス――パクスアメリカーナへの未練
 米国は、超大国の地位から降りることを納得するだろうか。ペンタゴンや国務省などの戦略策定担当者たちは、新戦略を検討するに当たり、現実としてもはや米国がパクスアメリカーナを維持できないことを知りつつも、なお過去の栄光を完全に排除することはできないだろう。
 従来の手法のように、北大西洋条約機構(NATO)や日本の支援を受け、パクスアメリカーナを維持することに腐心するだろうが、やがて断念せざるを得ないだろう。
 米国の新戦略を策定するうえで、自国の現状の国力――超大国なのか、大国の1つに過ぎないのか――を客観的に評価・認識することが、「あるべき戦略」を決める要件なのだが。
 言い換えれば(1)引き続き、世界覇権の維持を目指すか、(2)世界覇権の維持を断念し、アジア覇権の維持のみを最優先目標として掲げるのか、ということだ。
 2014年に発表されるはずの次のQDRで、米国が自国の立場をどのように認識して、記述するのか注目される。
(2)米国の乗ずべき中国のアキレス腱
 中国は、資源を海外に求めざるを得ない。しかも、ヒマラヤ、新疆ウイグル自治区やモンゴルを経由して内陸正面から物資を搬出・搬入する量は限定的で、やはり主たる貿易は海洋に依存せざるを得ない。
 海洋上の中国の生命線(シーレーン)は、3つある。
 第1のルートは、マラッカ海峡からインド洋経由で中近東・アフリカに到るもの。
 第2のルートはパプアニューギニア周辺を通過してオーストラリアや南米に到るもの。ちなみに、このルートは、大東亜戦争において、日本(帝国陸海軍)が米国とオーストラリアを分断するために実施した「SF作戦」の方向と同じである。
 「SF作戦」は、フィジー、サモアおよびニューカレドニアを占領することにより、南方戦線におけるオーストラリアの脅威を排除するとともに、米国(ハワイ諸島)とオーストラリアの間のシーレーンを遮断することでオーストラリアを孤立させ、同国をイギリス連邦から脱落させることを狙った作戦であった。
 第3のルートは、琉球諸島正面から北米に到るもの。
 第1のルートのチョークポイントはマラッカ海峡。第2のルートのそれはパプアニューギニア・マーシャル諸島・ソロモン諸島などの周辺海域。第3のルートの場合は沖縄・宮古海峡ではないだろうか。
 米国としては、中国との有事に、かかるチョークポイントを制することができる体制を構築することを目指すと思われる。
(3)新たな陣立て(ニュートランスフォーメーション)をするうえでの考慮要件
 中国は「Anti-Access(接近阻止)/Area-Denial(領域拒否):A2AD」という海洋戦略を掲げている。
 この戦略は、遠方から来る敵を防衛線内に入れさせず(接近阻止)、防衛線を突破されてもその内側で敵に自由な行動を許さない(領域拒否)というコンセプトである。
 さらに言えば、この防衛線内に存在する既存の米軍基地に対しては、米国の戦闘機が基地から飛び立つ前に弾道ミサイルで敵基地(在日米軍基地)の滑走路などを先制攻撃する軍事ドクトリンを新たに取り入れたと報じられた(6月20日付読売)。
 このような状況で米軍が緒戦に生き残るためには、次の点が重要になる。
(i)中国との間合いを従来以上に離隔させ弾道ミサイルの射程外(約1850キロと推定)に出ることが望ましく、ミサイルの奇襲攻撃に対処(ミサイル迎撃ミサイルなど)できるようにする。
(ii)広域に分散すること。
(iii)ミサイルからの被害を局限するための抗堪化や、滑走路の被害復旧能力の強化。
(4)重視地域
 上記(2)の分析のように、今後米国はオーストラリアと太平洋諸島(パプアニューギニア、マーシャル諸島、ソロモン諸島など)を従来以上に重視し、軍事的な配備を強化することだろう。
 特に、オーストラリアは上記の3ルートのいずれにも扼する(対処する)ことができる位置にあり、今後オーストラリアの戦略的価値は米国にとって極めて重要なものになることだろう。
(5)二重包囲網の形成
 中国は、太平洋正面への進出目標線として、第1列島線(九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島に至るライン)および第2列島線(伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るライン)を挙げている。
 米国は、今後これに対抗して、従来の日本・韓国・台湾・フィリピンのラインに加え、グアム・マーシャル諸島・ソロモン諸島・オーストラリアを連ねるもう1つの防衛ラインを設けて、中国を二重に封じ込める新たな陣立て(ニュートランスフォーメーション)を構成するものと予想する。
 米国が、将来、戦力の逓減具合が大幅で、中国の相対的戦力が第1列島線付近で劣勢になると認めた場合は、第1列島線の防衛を放棄し、グアム・マーシャル諸島・ソロモン諸島・オーストラリアを連ねるもう1つの防衛ラインまで後退する可能性もあろう。
 このことは、日本が米国の防衛線から切り捨てられることを意味する。
(6)軍事インフラ建設のための財政措置
 今後は、沖縄の第3海兵遠征軍司令部、第3海兵師団など8000人をグアムに移転する際に、日本が財政負担をするような「ウマイ話」はないだろう。
 従って、米軍の新たな展開基地は、関係国の既存の軍事基地のほかに、民間施設(空港・港湾)を最大限活用するという方針になるだろう。
5.結言――日本への影響
 これまで、日本は米国にとってかけがえのない戦略基盤であった。その理由は(1)(冷戦時代)極東ソ連軍の封じ込めの拠点、(2)インド洋や中東までも展開する米軍の基地機能の提供、(3)財政的な支援など。
 しかし、今日経済的に疲弊しつつある日本は、将来、財政面でそれほど大きな貢献をすることは期待できなくなりつつある。米国は、日本はもはや「金の卵」を産まなくなるだろうと思っているに違いない。
 しかも、中国との距離が近すぎて、在日米軍基地は徐々に中国の弾道ミサイルなどの脅威にさらされることになるだろう。さらに、自民党政権に比べれば、民主党政権は御し難い。
 近い将来米国は日本の戦略的価値を「要石」などと持ち上げなくなるだろう。その帰結として、次の通りのシナリオが考えられる。
 第1のシナリオ:米国は、日米安保を維持するものの、その信頼性は空洞化する。
 第2のシナリオ:米国は、一方的に日米安保を破棄する。
 第3のシナリオ:米国は、日米安保条約を双務条約に改定することを迫る。
 戦後、60年以上にわたり、我が国の平和と繁栄の基盤になってきた、日米安保体制が今重大な岐路に差しかかっていることを銘記すべきだろう。日本は、戦後レジームのコペルニクス的な転換の時期を迎えるかもしれない。
 なお、日本政府にとって喫緊の課題である海兵隊を普天間からグアムに移す計画について米国政府は、上記のような思惑から、白紙に戻し、新たな再配置の全体計画(ニュートランスフォーメーション)を策定した後に、在日米軍の再配置を改めて決めるのではないかと思われる。
 10月25日、野田佳彦総理と会談したレオン・E・パネッタ国防長官は、これまで通り、辺野古への移設を主張した。これは、「そもそも移設の可能性が低いことを見越して、日本政府に貸しを作る思惑」と見るべきかもしれない。
 半世紀以上続いた戦後レジームをどのように変えればよいのだろうか。日本国民は、生存(安全保障)と繁栄の道――生き残りの道――について、真剣な議論をしなければならない重大な時期にあるものと思う。
<筆者プロフィール>
福山 隆Takashi Fukuyama
 元陸将、現在は(株)ダイコー専務
 1947年長崎県生まれ、70年・防衛大学卒業(応用科学専攻)、陸上自衛隊入隊。89年・1等陸佐、93年・第32普通科連隊長として地下鉄サリン事件の除染作戦を指揮。98年・陸将補、2003年・西部方面総監部幕僚長、2004年・陸将、2005年・退官、山田洋行顧問。2009年・ダイコー専務に就任して現在に至る。
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自分の国は自分で守る決意/境外を保護するのは法律、正義、自由ではない。国際法も国力の強弱に依存2011-01-12 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
日本抹殺を目論む中国に備えはあるか?今こそ国家100年の計を立てよ、米国の善意は当てにできない
JB PRESS 2011.01.12(Wed) 森 清勇
 今日の国際情勢を見ていると、砲艦外交に逆戻りした感がある。そうした理解の下に、今次の「防衛計画の大綱」(PDF)は作られたのであろうか。「国家の大本」であるべき国防が、直近の政局絡みで軽々に扱われては禍根を千載に残すことになる。
 国家が存在し続けるためには国際社会の現実から目をそらしてはならない。日本の安全に直接的に関わる国家は覇権志向の中国、並びに同盟関係にある米国である。両国の国家としての在り様を検証して、国家百年の計を立てることこそ肝要である。
*中国は日本抹殺にかかっている
 1993年に中国を訪問したポール・キーティング豪首相(当時)に対して、李鵬首相(当時)が「日本は取るに足るほどの国ではない。20年後には地上から消えていく国となろう」と語った言葉が思い出される。
 既に17年が経過し、中国は軍事大国としての地位を確立した。日本に残された期間はわずかである。
 中国の指導者の発言にはかなりの現実味がある。毛沢東は「人民がズボンをはけなくても、飢え死にしようとも中国は核を持つ」と決意を表明した。
 当時の国際社会で信じるものは少なかったが実現した。?小平は「黒猫でも白猫でも、ネズミを捕る猫はいい猫だ」と言って、社会主義市場経済を導入した。
 また香港返還交渉では、交渉を有利にするための「一国両制」という奇想天外なノーブルライ(高貴な嘘)で英国を納得させた。
 政治指導者ばかりでなく、軍高官も思い切ったことをしばしば発言している。例えば、朱成虎将軍は2005年に次のように発言している。
 「現在の軍事バランスでは中国は米国に対する通常兵器での戦争を戦い抜く能力はない。(中略)米国が中国の本土以外で中国軍の航空機や艦艇を通常兵器で攻撃する場合でも、米国本土に対する中国の核攻撃は正当化される」
 「(米国による攻撃の結果)中国は西安以東のすべての都市の破壊を覚悟しなければならない。しかし、米国も数百の都市の破壊を覚悟せねばならない」
 他人の空言みたいに日本人は無関心であるが、日米同盟に基づく米国の武力発動を牽制して、「核の傘」を機能不全にしようとする普段からの工作であろう。
 2008年に訪中した米太平洋軍司令官のティモシー・キーティング海軍大将は米上院軍事委員会公聴会で、中国海軍の高官が「太平洋を分割し、米国がハワイ以東を、中国が同以西の海域を管轄してはどうか」と提案したことを明らかにしている。
 先の尖閣諸島における中国漁船の衝突事案がらみでは、人民解放軍・中国軍事科学会副秘書長の要職にある羅援少将が次のように語っている。
 「日本が東シナ海の海洋資源を握れば、資源小国から資源大国になってしまう。(中略)中国人民は平和を愛しているが、妥協と譲歩で平和を交換することはあり得ない」と発言し、また「釣魚島の主権を明確にしなければならない時期が来た」
 こうした動きに呼応するかのように、中国指導部が2009年に南シナ海ばかりでなく東シナ海の「争う余地のない主権」について「国家の核心的利益」に分類したこと、そして2010年に入り中国政府が尖閣諸島を台湾やチベット問題と同じく「核心的利益」に関わる問題として扱い始めたと、香港の英字紙が報道した。
*中国の「平和目的」は表向き
 1919(大正8)年、魚釣島付近で福建省の漁民31人が遭難したが、日本人が救助し無事に送還した。それに対して中華民国長崎領事が「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島・・・」と明記した感謝状を出している。
 中国が同諸島の領有権を主張し始めたのは国連の海洋調査でエネルギー資源が豊富にあることが判明した1970年代で、領海法を制定して自国領に組み入れたのは1992年であるにもかかわらず、「明確な日本領」を否定するためか、最近は「古来からの中国領土」とも言い出している。
 実際、首相が横浜APECで“首脳会談を開けた”だけで安堵している間に、ヘリ2機搭載可能で機銃まで装備していると見られる新鋭漁業監視船を含む2隻が接続水域に出没している。
 海保巡視船の警告に対しては「正当に行動している」と返事するのみである。
 中国の言う「正当な行動」とは中国の領海法に基づくもので、尖閣諸島に上陸しても正当化されるということにほかならない。現に、石垣市議2人が上陸したことに対し、中国外務省は「中国の領土と主権を著しく侵犯する行為」という談話を発表した。
 漁船がさほど見当たらないにもかかわらず漁業監視船が接続水域を彷徨しているのは、日本人の感覚を麻痺させる(あるいは既に上陸しているかもしれない)のを隠蔽する作戦のように思われる。
 係争の真っ只中で、そうした行動が取れるはずがないという識者も多いが、「尖閣は後世の判断に任せる」、あるいは「ガス田の協議をする」などの合意を平気で反故にしてきた中国である。何があってもおかしくない。
 20年余にわたって2桁台の軍事力増強を図ってきた中国に透明性を求めると、「平和目的」であるとの主張を繰り返す。中国の「平和目的」は異常な軍事力増強の言い逃れであり、露わになってきた覇権確立のカムフラージュでしかない。
 軍事力増強と尖閣沖漁船衝突のような異常な行動、さらには北朝鮮の無謀をも擁護する中国の姿勢が日米(韓はオブザーバー)や米韓(日本はオブザーバー)の合同軍事演習の必要性を惹起させたのであるが、中国はあべこべに自国への脅迫であるとクレームをつけている。
 現時点では指導部の強権でインターネット規制などをしながら、人民には愛国無罪に捌け口を求めさせることで収拾している。
 しかし、矛盾の増大と情報の拡散で人民を抑えきれなくなった時、衣の下に隠された共産党指導部の意図が、ある日突然行動に移されないとは言えない。
*米国を頼れる時代は終わりつつある
 日本人で米国の「核の傘」の有効性に疑問を呈する者は多い。歴史も伝統も浅い米国は、「国民の国民による国民のための政治」を至上の信条としており、行動の基本は世論にあると言っても過言ではないからである。
 フランクリン・ルーズベルトは不戦を掲げて大統領選を戦い、国民はそれを信じて選んだ。しかし、第2次世界大戦が始まるや、友邦英国の苦戦、ウィンストン・チャーチルの奮戦と弁舌巧みな哀願を受けた大統領は、米国民のほとんどが反対する戦争に参加する決心をした。
 当初はドイツを挑発して参戦の機会を探るが、多正面作戦を嫌うドイツは挑発に乗らなかった。
 そこでルーズベルトは日本を戦争に巻き込むことを決意し、仕かけた罠が「ハル・ノート」を誘い水として真珠湾を攻撃させることであった。
 日本の奇襲作戦を「狡猾(トリッキィー)」と喧伝し、米国民には「リメンバー・パールハーバー」と呼びかけて国民を参戦へと決起させたのである。
 逆に、世論が政府を動かないようにさせることも当然あり得る。核に関して言うならば、被害の惨状に照らして、国民が政府に「核の傘」を開かせないという事態が大いにあり得る。
 虎将軍ら中国軍高官の発言は、普段から米国民にこうした意識を植え付けて、米国が日中間の係争に手を出せないように仕向ける下地つくりとも思われる。
 米国初代のジョージ・ワシントン大統領は「外国の純粋な行為を期待するほどの愚はない」と語っている。
 日米安保が機能するように努力している現在の日本ではあるが、有事において真に期待できるかどうか、本当のところは分からない。能天気に期待するならば、これほどの愚はないということではないだろうか。
 今こそ、日米同盟を重視しながらも、「自分の国は自分で守る」決意を持たないと、国家としての屋台骨がなくなりかねない。
 中でも「核」問題が試金石であると見られる。親米派知識人は、「日本の核武装を米国が許すはずがない」の一点張りであるが、あまりにも短絡的思考である。
 日本の核論議が日米同盟を深化させ、ひいては米国の戦略を補強するという論理の組み立てをやってはいかがであろうか。
 米国が自国の国益のために他国を最大限に利用し、また国家戦略のために9.11にまつわる各種事象を操作(アル・ゴア著『理性の奪還』)したりするように、日本も自立と国益を掲げて行動しないと、米中の狭間に埋没しかねない。
 核拡散防止条約(NPT)は高邁な趣旨と違って、保有を認められた5カ国の核兵器削減は停滞しているし、他方で核保有国は増大している。
 「唯一の被爆国」を称揚する日本であるゆえに、道義的観点並びに核に関するリアリズムに則った新条約などを提案する第一の有資格者である。
 同時に、地下鉄サリン事件の防護で有効に対処できた経験を生かし、核にも有効対処できるように準備する必要がある。
 その際、形容矛盾の非核三原則ではなく、バラク・オバマ大統領の言葉ではないが、「日本は核保有国になれるが、保有しない」(Yes, we can, but we don’t)と闡明し、しっかり技術力を高めておくのが国家の使命ではないだろうか。
 ヒラリー・クリントン米国務長官は「尖閣には日米安保条約第5条が適用される」と言明した。
 しかし、かつて一時的にせよ、ウォルター・モンデール元駐日米大使が「適用されない」と発言したように、政権により、また要人により、すなわちTPO(時・場所・状況)に左右されると見た方がよい。
 米国では従軍慰安婦の議会決議に見た通り、チャイナ・ロビーの活躍も盛んである。
 ましてや、既述のように決定の最大要因が国民意思であるからには、核兵器の惨害が米国市民数百万から1000万人に及ぶと見られる状況では、「核の傘」は機能しないと見るのが至当ではなかろうか。「有用な虚構」であり続けるのは平時の外交段階だからである。
先人の血の滲む努力を無にするな
 日本は明治維新を達成したあと、範を欧米に求めた。新政府の要路にある者にとって自分の地位が確立していたわけでもなく、また意見の相違も目立つようになり内憂を抱えていた。
 しかし、それ以上に外患に備えなければ日本の存立そのものが覚束ないという思いを共有していた。そこで、岩倉具視を団長とする米欧使節団を送り出したのである。
 一行には木戸孝允、大久保利通、伊藤博文などもいた。1年10カ月にも及ぶ長期海外視察は、現役政府がそのまま大移動するようなもので、不在間の案件処理を必要最小限に留めるように言い残して日本を後にしたのもゆえなしとしない。
 よく言われるように、英国を観ては「40年も遅れている」とは受け取らず、「40年しか遅れていない」と見て、新興国日本の明日への希望を確認した。
 また、行く先々で文明の高さや日本と異なる景観に感服するところもあったが、その都度、好奇心を発揮して記憶にとどめ、また瀬戸内海などの素晴らしい景観があるではないかと、「日本」を決して忘れることはなかった。
 米国のウエストポイント陸軍士官学校を訪れた時は射撃を展示され、そのオープンさにびっくりするが、日本人ならばもっと命中させると逆に自信の程を高めている。
 ことほどさように、初めて外国を視察しているにもかかわらず、その目は沈着で、異国情緒に飲み込まれることもなく、基底に「日本」を据えて比較検証しようとしている。
 こうした見識はひとえに、為政者として日本の明日を背負って立たなければならないという確固たる信念がもたらしたと見るほかはない。
 代表団が特に関心を抱いたことは、小国の国防についてである。オランダ、ベルギー、デンマーク、さらにはオーストリア、スイスなどを回っては、日本の明日を固める意志と方策を見出そうと懸命である。
 もう1つ、国際社会に出ようとする日本が関心を持ったのは万国公法(今日の国際法)についてであった。プロシアの鉄血宰相ビスマルクの話には真剣に耳を傾け、また参謀総長モルトケの議会演説にも強い関心を持った。
 概略は次のようなものだった。
 「世界各国は親睦礼儀をもって相交わる態度を示しているが、それは表面上のことでしかない。内面では強弱相凌ぎ、大小侮るというのが実情である。万国公法は、列国の権利を保全する不変の法とはいうものの、それは大国の利のあるうちでいったん不利となれば公法に代わる武力をもってする」(ビスマルク)
 「政府はただ単に国債を減らし、租税を軽くすることばかりを考えてはならない。国の権勢を境外に振るわすように勤めなければならない。法律、正義、自由などは国内では通用するが、境外を保護するのは兵力がなければ不可能である。万国公法も国力の強弱に依存している」(モルトケ)
 このことは、現在にも通用する。しっかり反芻し、記憶することが大切である。
 日本は「唯一の被爆国」や「平和憲法」を盾に、国際情勢の激変にもかかわらず官僚的手法の「シーリングありき」で累次の「防衛計画の大綱」を策定してきた。
 こうした日本の無頓着で内向的対応が、周辺諸国の軍事力増強を助長した面はないのだろうか。
 明治の為政者たちが意識した外国巡視に比較して、今日の政治家の海外視察はしっかりした歴史観も日本観も希薄に思えてならない。
*歴史の教訓を生かす時
 ここで言う歴史の教訓とは、明治の先人たちが命懸けで体得した「国際社会は力がものをいう」というリアリズムである。今日ではそのことが一段と明確になっている。
 アテネはデモクラシー(民主主義)発祥の地であり、ソクラテスやプラトンを輩出したことで知られている。
 そのアテネでは人民(デモス)の欲望が際限なく高まり、国家はゆすり、たかりの対象にされ、過剰の民主主義が国力を弱体化させていく。
 専制主義国家スパルタとの30年戦争の間にも国民は兵役を嫌い、目の前の享楽に現を抜かし道徳は廃れ、ついに軍門に下る。
 その後、経済も復興するが、もっぱら「平和国家」に徹し続け、スパルタに代わって台頭した軍事大国マケドニアに無条件降伏を突きつけられる。一戦を交えるが惨敗して亡国の運命をたどった。
 例を外国に求めるまでもない。日本にも元禄時代があった。男性が女性化し、風紀は乱れ、国家の将来が危ぶまれた。この時、出てきたのが「武士道といふは死ぬことと見つけたり」で膾炙している『葉隠』である。
 ことあるごとに死んでいたのでは身が幾つあってもたまらないが、真意は「大事をなすに当たっては死の覚悟が必要だ」ということである。 
 こうした考えが、自分たちのことよりも国家の明日を心配した米欧派遣の壮挙につながった。日本出発から1カ月を要してようやくワシントンに着くが、いざ条約改正交渉という段になって天皇の委任状のないことを指摘され、大久保と井上博文はその準備に帰国する。
 往復4カ月をかけて再度米国に着いた時には、軽率に条約改正する不利を悟り代表団が米政府に交渉打ち切りを通告していた。
 何と無駄足を運んだかとも思われようが、当時の彼らにとっては、国力の差を思い知らされる第1章と受け取る余裕さえも見せている。
 国家を建てる、そして維持することの困難と大切さを身に沁みて知ったがゆえに、華夷秩序に縛られた朝鮮問題で無理難題を吹っかけられても富国強兵ができる明治27(1894)年まで辛抱したのであり、三国干渉の屈辱を受けても臥薪嘗胆して明治37(1904)年までの10年間を耐えたのである。
 佐藤栄作政権時代に核装備研究をしていたことが明らかになった。「非核三原則」を打ち出した首相が、こともあろうにという非難もあろう。
 しかし、ソ連に中立条約を一夜にして破られた経験を持つ日本を想起するならば、「日本の安全を真剣に考えていた意識」と受け取り、その勇気に拍手喝采することも必要ではないか。
 国際社会は複雑怪奇である。スウェーデンもスイスも日本人がうらやむ永世中立国である。その両国が真剣に核装備を検討し、研究開発してきたことを知っている日本人はどれだけいるであろうか。また、こうした事実を知って、どう思うだろうか。
 「密約」を暴かずには済まない狭量な政治家に、そんな勇気はないし、けしからんと難詰するのが大方ではないだろうか。しかし、それでは国際社会を生き抜くことはできない。
*終わりに
 漁船衝突事案では、横浜APECを成功させるために、理不尽な中国の圧力に屈した。日本は戦後65年にわたって、他力本願の防衛で何とか国家を持ちながらえてきた。
 しかし、そのために国家の「名誉」も「誇り」も投げ捨てざるを得なかった。今受けている挑戦は、これまでとは比較にならない「国家の存亡」そのものである。
 米国から「保護国」呼ばわりされず、中国に「亡失国家」と言われないためには、元寇の勝利は神風ではなく、然るべき防備があったことを真剣に考えるべきである。
 そのためにはあてがいぶちの擬似平和憲法から、真の「日本人による日本のための日本国憲法」を整備し、名誉ある独立国家・誇りある伝統国家としての礎を固めることが急務であろう。
〈筆者プロフィール〉
森 清勇 Seiyu Mori星槎大学非常勤講師
 防衛大学校卒(6期、陸上)、京都大学大学院修士課程修了(核融合専攻)、米陸軍武器学校上級課程留学、陸幕調査部調査3班長、方面武器隊長(東北方面隊)、北海道地区補給処副処長、平成6年陸将補で退官。
その後、(株)日本製鋼所顧問で10年間勤務、現在・星槎大学非常勤講師。
また、平成22(2010)年3月までの5年間にわたり、全国防衛協会連合会事務局で機関紙「防衛協会会報」を編集(『会報紹介(リンク)』中の「ニュースの目」「この人に聞く」「内外の動き」「図書紹介」など執筆) 。
著書:『外務省の大罪』(単著)、『「国を守る」とはどういうことか』(共著)
 国防 日米安保条約が締結されてから50年目が経ち、いつしか日米安保は空気のような存在となった。そんな折、日本では自民党政権が倒れ、沖縄にある普天間基地の国外・県外への移設を掲げる民主党政権が誕生した。普天間基地の移設問題では早くも日米間できしみが生じるなど、日本の国防が根底から揺らぎそうな雰囲気だ。一方、中国が軍事力、なかんずく海軍力を大幅に増強、北朝鮮からは核ミサイル発射の危険性も現実のものとなり、国を守ることを国民一人ひとりが真剣に考えなければならない時代を迎えている。 *強調(太字・着色)は来栖
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中国の戦略的意図は米軍を沖縄から追い出し、この地域の軍事的主導権を握ること2011-04-01 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉 
知らないのは日本人だけ?(1)世界の原発保有国の語られざる本音/多くの国は核兵器を持ちたいと思っている2011-06-14 | 地震/原発
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。(

韓国も米韓FTAの危険性に気づき始めた/TPP=国民皆保険制度の崩壊 混合診療解禁 医療ツーリズム

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TPP問題「米韓FTA」に乗り遅れるな!の大間違い
[慶大教授 金子勝の天下の逆襲]日刊ゲンダイ2011/11/09
 TPP交渉参加をめぐって激しい対立が起きている。
 推進派や大手メディアは、とりあえず交渉に参加してルール作りに関与すべきだという。だが、米政府との事前協議に3カ月かかることを政府は隠していた。日本が参加を表明しても、議論に参加できるのは半年後だ。来夏にルールを決定するというのに、どうやってルール作りに参加できるのか。
 さらに推進派は、米韓FTAに乗り遅れるなという。だが、米韓FTAによって韓国が本当に利益を得られるのか。
 たとえば米国は2・5%の自動車関税を撤廃するというが、韓国車は小型車中心で、輸出単価1万5000ドルルのうち、300ドル程度の引き下げ効果しかない。逆に米国製トラックは、排出基準の変更などで3000ドルル近くも値下げ効果がある。繊維品も「原産地主義」が糸に適用されるので、生地の海外生産を進める韓国にはほとんどメリットがない。
 医薬品についても、米国の医薬品メーカーは自社製品の薬価が低く決定されたと訴えることができる。医薬品の認可が遅れたら、損害補償を要求できる。さらに米国は高度な医療機械を輸出し、保険外の高額医療を拡大するつもりだ。
 もし、韓国政府がそれを健康保険でカバーしようとしたら、米国の民間保険会社は領域を侵していると、「ISD条項」で訴えることができる。ISDとは、企業が相手政府を訴えることができる条項。韓国はISD条項をのまされた。健康保険制度も危ない。
郵便局、農協、漁協、信用組合が提供する「保険サービス」も、3年以内に民間保険と同じ扱いにする等々。オバマ大統領が、米韓FTAで7万人の雇用を増やしたと表明したように、韓国の国益につながる条項はほとんどない。
 サムスンの生産額がGDPの4分の1を占める韓国は、格差社会だ。しかも、韓国経済は短期資金に依存していてもろい。米韓FTAは韓国国会で審議中だが、韓国国民も米韓FTAの危険性に気づき始めた。ソウル市長選では市民団体出身の野党候補が当選してしまった。
米韓FTAはモデルになるどころか、むしろ「他山の石」にすべきなのだ。だまされてはいけない。
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TPP首相対応 拙速参加に「亡国」の危うさ
2011年11月9日 琉球新報
 環太平洋連携協定(TPP)への拙速な対応で「亡国への道」を歩んではならない。野田政権は国民の声に耳を澄ますべきだ。
 政府は7日、TPP交渉参加問題に絡み、保険適用の診療と適用外の自由診療を併用する「混合診療」の全面解禁が今後「議論される可能性は排除されない」との見解を初めて明らかにした。
 野田佳彦首相のTPP交渉参加への態度表明をめぐり民主党内の対立が激しさを増す中、不都合な情報を小出しにする政府のやり方はあまりにも姑息(こそく)である。
  日本医師会は、TPP参加を医療への市場原理主義の導入、金持ち優遇策だとして懸念を表明している。具体的には外国資本が日本に自由価格の医療市場の要求を強め「混合診療の全面解禁」「医療ツーリズム」「株式会社参入」などが進めば、日本の公的医療保険制度、つまり国民皆保険制度が崩壊しかねないと警戒している。
  「混合診療の全面解禁」によって、自由診療拡充で商機を狙う外資が日本に対し医療保険関連の規制撤廃要求をエスカレートさせる可能性が高い。その先に待つのは民間医療保険への加入、非加入による「医療格差」の拡大であろう。
  米国は今年2月、貿易や規制の在り方を協議する「日米経済調和対話」の中で約70項目の対日要望を提示。郵政改革や民間保険に比べて優遇されがちな共済制度の見直しなどを求めたとされる。日本で未承認の医薬品や食品添加物の承認を促すなど国民生活の安全に関わる項目も含まれている。
  今後、米産業界が政治的影響力を行使し、これらの規制撤廃を日本のTPP交渉入りの条件として要求することも懸念される。こうした可能性を、野田政権はまともに説明していない。
  日本社会を混乱、疲弊させる急進的な関税や規制の撤廃に異を唱えると、自由貿易自体を否定しているかのように反対意見を曲解するTPP推進論に違和感を覚える。
  「混合診療」の全面解禁も農産物の関税完全撤廃など農業問題も、国民の命に関わる大事だ。米国への安易な譲歩や無原則な外資依存は、国民の生命や安全を守るべき国の主権放棄にも等しい。
  野田首相が国民的議論が生煮えの中、TPP交渉参加を表明するのは権力の乱用だ。拙速な交渉参加表明は断念すべきである。
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TPPとは、米国による属国化政策/意に沿わないと訴えられる/FTAに頼った韓国の大誤算は明日の日本の姿2011-11-07 | 政治(経済/社会保障/TPP)
『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項(毒まんじゅう)/コメの自由化は今後こじ開けられる2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP)

TPP 中野剛志「メディアが報じないアメリカの本音」/ライオンズ・シェア/小沢一郎氏 政府の交渉力に危惧

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TPP反対派の急先鋒・中野剛志「メディアが報じないアメリカの本音。やはり日本は狙われている」
週プレニュース[2011年11月10日]
 ついにTPPに参加することがほぼ決定的となった日本。報道の裏側、アメリカの真意などを反対派の中野氏が明かす
 TPPについては、むちゃくちゃな話がメディアでそのまま流れています。先日(10月27日)、私が生出演したフジテレビの『とくダネ!』なんてヒドいもんでしたよ。
 進行役のアナウンサーが、スタジオのモニターで内閣府が試算したTPP参加の経済効果を示したんですが、そこに映し出されたのは「GDP2.7兆円増加」という数字だけ。それを見たコメンテーターが「日本の年間GDPは約530兆円ですから、0・54%くらいの効果です」と解説しちゃったんです。
 オマエら、ちょっと待て、と。2.7兆円という数字は10年間の累積だろ! 単年度で見ればTPPの経済効果なんてたったの2700億円。私は生放送で、なんで正確な数字を出さないんだ!とブチ切れましたよ。
 ところが、その前に放送された『新報道2001』でもフジテレビは同じ“誤報”を飛ばしました。しかも、こちらは番組スタッフが収録前の段階で10年間の累積である事実を把握していたから、私には故意に隠したとしか思えないんです。視聴者を“TPP賛成”へと誘導したい大手マスコミの狙いが透けて見えますよ。
 政府は政府で、TPPに参加することで「国を開く」などとトンチンカンなことを言う。日本の平均関税率は諸外国と比べても低いほうであり、その意味で国はすでに開かれているんです。なぜ、こんな自虐的な発言をしたのか意味不明。本当にこんな状態でTPPを進めてよいのでしょうか?
■「輸出2倍戦略」のためにアメリカはTPPを使う
 今、世界はどうなっているのかというと、08年のリーマン・ショック以降、その構造は激変しました。かつての世界恐慌がそうでしたが、今のような世界的な大不況下では、各国とも生き残りのために手段を選ばず必死になります。各国は、日本にオイシイ話やキレイ事を並べながら、えげつない計略を次々と仕掛けてくる。特に住宅バブルの崩壊で国内経済がズタボロのオバマ政権は、経済回復と支持率稼ぎのためになりふり構わなくなっています。
 そのアメリカが今、最大のターゲットにしているのが日本です。アメリカは「2014年までに輸出を2倍にする」ことを国是に掲げています。そのために利用しようとしているのがTPPです。アメリカはまず日本をTPPに誘い込み、思惑どおりに関税や非関税障壁を撤廃させる。もちろん関税撤廃には応じますが、同時にドル安(円高)に誘導して日本企業の輸出競争力を奪います。その上で、金融や農業などで日本の市場の収奪にかかる。これがアメリカの狙いです。
■日本が自ら進む“人食いワニ”の池
 このまま日本がTPPに参加すると、国内のルールや仕組みをアメリカ企業に有利になるように改定させられる恐れがあります。そこで、昨年12月に合意に至った米韓FTA(自由貿易協定)が、韓国側から見て、いかに無惨な内容だったかをお話ししましょう。
 韓国は、アメリカが韓国の自動車市場に参入しやすくなるよう、排ガス診断装置の装着や安全基準認証などの義務に関して、米国から輸入される自動車は免除するという“例外”をのまされました。
 さらに韓国では、日本と同じく国内ニーズが高い小型車に優遇税制を設けていたが、これもアメリカの要求で大型車に有利な税制に変えさせられました。そしてFTAによる関税撤廃で急伸した韓国産自動車の輸出がアメリカの自動車産業を脅かすようなら“関税を復活する”という規定も加えられたのです。
 手段を選ばないアメリカのこうした攻勢が、TPP交渉参加後は日本に及ぶことになります。自動車業界では、まず日本のエコカーが標的となるでしょう。米国車の多くは、現時点では日本政府が定めた低公害車の基準を満たしておらず、エコカー減税の対象外。これをアメリカに「参入障壁だ」と指摘されれば、韓国のように泣く泣く優遇税制を撤廃せざるを得なくなるでしょう。
 また、TPPで最も懸念されるのは、投資家保護を目的とした「ISDS条項」。これは、例えば日本への参入を図ったアメリカの投資企業が、国家政策によってなんらかの被害を受けた場合に日本を訴えることができるというもの。訴える先は日本の裁判所ではなく、世界銀行傘下のICSID(国際投資紛争解決センター)という仲裁所です。ここでの審理は原則非公開で行なわれ、下された判定に不服があっても日本政府は控訴できません。
 さらに怖いのが、審理の基準が投資家の損害だけに絞られる点。日本の政策が、国民の安全や健康、環境のためであったとしても、一切審理の材料にならないんです。もともとNAFTA(北米自由貿易協定)で入った条項ですが、これを使い、あちこちの国で訴訟を起こすアメリカを問題視する声は少なくないのです。そんな“人食いワニ”が潜んでいる池に日本政府は自ら飛び込もうとしているわけです。
 残念ながら、野田首相のハラは固まっているようです。世論で反対が多くなろうが、国会議員の過半数が異論を唱えようが、もはや民主的にそれを食い止める術はありません。交渉参加の表明は政府の専権事項、野田首相が「参加する」と宣言すれば終わりなんです。
 そして、いったん参加表明すれば、国際関係上、もう後戻りはできない。すべての国民が怒りをぶつけ地響きが鳴るような反対運動でも起きない限り、政府の“暴走”は止まりません。
 (取材・文/興山英雄 撮影/山形健司)
■中野剛志(なかの・たけし)
 1971年生まれ。東京大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。現在は京都大学に准教授として出向中。著書に『TPP亡国論』(集英社新書)など。
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中日春秋
2011年11月8日
 ライオンとロバが、共同で狩りをした話がイソップにある。終わって、獲物を三つに分けた後、ライオンが独特の分配法を表明する▼「一つ目は百獣の王たるわしがもらう。二つ目は平等なパートナーとして、わしが取る。さて三つ目だが、もしお前が逃げていかないなら、ひどい目に遭うぞ!」。つまり、獲物は全部ライオンのもの…▼恐らくは、「不当に大きな取り分」を指す英語の成句、<ライオンズ・シェア>の由来でもある。民主党内にも強硬な反対論がある中、野田首相が近々、環太平洋連携協定(TPP)への参加表明の意向だと聞いて、ふと思い出した次第▼協定の中身は無論だが、大いに不安があるのは、わが政府の「交渉力」だ。原則、関税撤廃の協定であっても「例外を設けることは可能」などと政府は言うが、これまで大抵の要求をのまされてきた米国相手に、本当にその“取り分”をへつるような、したたかな交渉ができるのか▼実際、例えば米軍普天間飛行場移設問題では、時の首相があれほど「国外・県外」を主張し、世論も望んだのに、官僚はそっぽを向き、政府は肝心の米国と交渉らしい交渉さえできなかったではないか▼自分より強い者と共同でことを行うのは考えもの、というのがイソップのご高説。確かに、協定が成ってみたら米国の<ライオンズ・シェア>だった…ではたまらぬ。
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風雲TPP〈中〉民主党内、半数が慎重派 集約へ鹿野氏キーマン/小沢氏「米国と誰が交渉できるんだ」2011-10-26 | 政治(経済/社会保障/TPP)
 風雲TPP:/中 民主党内、半数が慎重派 集約へ鹿野氏キーマン
 「拙速に議論を進めないでほしい」。民主党内を揺るがす環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加問題。「TPPを慎重に考える会」会長の山田正彦前農相は25日昼、前原誠司政調会長を国会内の事務所に訪ね、詰め寄った。
 会談は約40分間。山田氏は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で野田佳彦首相が交渉参加を表明するのを見送るよう求めた。だが、前原氏は「先送りは簡単ではない。首相はAPECまでのつもりだ」と反論、平行線に終わった。山田氏は会談後、「党内は完全に二分されている。無理をすればどうなるか」と記者団に不満を示した。
 民主党は経済連携プロジェクトチーム(PT)で11月2日までに意見集約を図る方針だが、議論は今月14日の第1回総会から荒れた。PT役員の大半が推進派だったことや総会の位置づけに批判が続出。鉢呂吉雄座長は「慎重派の役員を増やす。取りまとめ案は役員会で作るが、総会でしっかり決める」と譲歩せざるを得なかった。
 推進派が慎重派に配慮せざるを得ないのは、TPPの国会による承認を見据えれば、民主党内が分裂するような事態は避けなければならないからだ。交渉不参加の表明を求める署名簿には党所属国会議員の約半数にあたる200人(25日現在)がサインした。山田氏は「党内の半分は慎重論」と主張する。
 党支持率が低迷する中、選挙基盤の弱い若手や地方出身議員にとってTPP反対論が強い農業や医療関係の団体の組織票は貴重だ。推進派は「反対派は自分の選挙のために大声で反対することしか考えない。政権与党としての責任を果たそうとしない」と苦り切る。
 前原氏ら推進派はTPPが国益に沿わない場合は撤退する「条件付き参加」を落としどころとして探るが、同じ推進派でも玄葉光一郎外相が「(離脱は)簡単な話じゃない。論理的にはあり得るが、どういう国益を損なうかよく考えなければならない」と述べるなど足並みは乱れている。
 慎重派も一枚岩ではない。小沢一郎元代表に近い中堅・若手の衆院議員グループ「一新会」は25日、国会内で会合を開き、会として統一行動を取らないことを決めた。昨年10月、菅直人首相(当時)がTPP参加検討を表明した際には強硬に反対する姿勢を示したが、小沢元代表にも近い輿石東幹事長はTPP議論をまとめる側。グループ内には慎重派が多いが、野田政権と決定的な対立になるのを避けたとみられる。小沢元代表に最近面会した側近議員によると、元代表は「TPPはやらざるを得ないが、米国と誰が交渉できるんだ」と述べ、政府の交渉力に危惧の念を示したという。
 「議論をどうまとめるのか見えない」(PT幹部)中、推進派は鹿野道彦農相に期待を寄せる。官邸関係者は「鹿野さんが懸念しているのはTPPが党を二分すること。反対ではない。党を二分する事態は避けられると鹿野さんが踏めば、TPPは行ける」と語る。慎重派には民主党代表選で鹿野氏を支持した議員が多く、「『鹿野氏が言うなら仕方ない』と思ってもらうしかない」(推進派議員)との戦略だ。
 鹿野グループは民主党代表選の決選投票で野田首相に投じた。鹿野氏は野田首相誕生のキーマンでもある。首相と鹿野氏のコンビはどう決着をつけるのか。残された時間は少ない。
毎日新聞 2011年10月26日 東京朝刊

TPP交渉参加への対立が激しさを増す中、不都合な情報を小出しにする政府の姑息なやり方2011-11-09 | 政治(経済/社会保障/TPP)

われらの年金を返せ! 1500万円も高い公務員の「お手盛り年金」 この国は役人のためにあるのか

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大反響第6弾 われらの年金を返せ! 1500万円も高い公務員の「お手盛り年金」 この国は役人のためにあるのか
現代ビジネス2011年11月10日(木)週刊現代
 支給開始年齢の引き上げが詐欺なら、こちらも詐欺ではないか。「年金に払うカネがない」と言いながら、役人たちは自分の老後を豊かにするべく既得権益を守り続ける。この国は腐っている。
*地方公務員はもっと高い
 「一般のサラリーマンに支払われる厚生年金の平均月額は7万3573円なのに対して、国家公務員の年金支給額は13万6109円です。また、地方公務員は16万1380円と、厚生年金の2倍以上支払われている。しかも、彼ら公務員の保険料率は15.862%と、厚生年金の16.412%に対して低く抑えられているので、将来の年金のために支払う額は少なくて済んでいるんですよ。民主党はこの問題に真っ先に取り組むべきなんです」
 みんなの党の政策調査会長、浅尾慶一郎衆議院議員が年金の「官民格差」を指摘する。浅尾氏によれば、国家公務員に支払われている共済年金(サラリーマンの厚生年金に相当)の月額は、民間企業より6万3000円も多い('09年度)。1年当たりでは75万6000円、60歳定年として男性の平均寿命である80歳まで20年間もらい続けるとすると、実に約1500万円もお得な計算になるのだ。地方公務員に至っては、民間より約2100万円も多い。それに加えて、公務員が在職中に支払う保険料は、サラリーマンより年間24万円も少なくて済む(年収500万円の男性の場合)---。
 厚生年金の支給開始は、'25年までに65歳に上がるが、厚労省は今後さらに68~70歳まで引き上げる検討をしている。将来的に年金支給は「70歳から」が現実となりつつあるいま、もっとも懸念されるのは、支給額の大幅減額だ。一方、引き上げを主導する役人たちの年金は、「聖域」として手つかずのままなのである。
 なぜそんなに差が出るのか。公務員の共済年金には、民間の中小企業には見られない「職域加算」という制度があるからである。
 年金制度は、「基礎年金(国民年金)」という1階部分の上に、厚生年金や共済年金の2階が乗る仕組みだ。公務員の職域加算はその上の3階部分にあたり、在職20年以上なら、支給額が一律2割増しとなる。
「役人に、なぜ職域加算があるのかを尋ねると、『公務員が身分上持っている守秘義務などの制約に対する代替措置』と説明します。『守秘義務は民間にもある』と反論すると、『就業規則によるものと、法律で縛られている守秘義務とでは違う。それが月額の差に表れる』と言う。
 でもたとえば、外務事務次官が核の持ち込みについて守秘義務を怠ったからといって、年金を減らされたという話は聞かない。だから、職域加算には根拠がないんですよ。'86年に、厚生年金と共済年金の基礎年金部分が統合された際、支給額が民間より高いことを隠すために、職域加算という制度を新たにつくった」(前出・浅尾氏)
 公務員の既得権が侵害されるという危惧から、職域加算制度は導入された。まさに、自分の利益になるように取り計らう?お手盛り年金?である。
 職域加算以外に、共済年金には「追加費用」と呼ばれるものもある。これは、'59年まであった恩給制度から保険制度の共済年金に切り替えられた際、それまで保険料を払ってこなかった恩給世代に払う年金の一部を、税金で補填するものだ。この追加費用が、毎年1兆円以上かかっている。
*「我々試験に合格してますから」
 なぜ、職域加算や追加費用という聖域はなくならなかったのか?目白大学教授の宮武剛氏が、解説する。
 「'07年に安倍晋三内閣が、共済年金と厚生年金の一元化法案を提出した。合併するときに職域加算を廃止し、追加費用についても、原則27%カットという思い切った施策を打ち出しました。厚労省も財務省も年金記録問題で責められているときだったので、『やむなし』と法案提出が実現したんです。ところが、その法案は一度も審議されないまま廃案になってしまった。当時、野党だった民主党が反対し、自民党もまったくやる気が出なかったのです」
 公務員年金優遇は現在の与党・民主党によって維持されたのである。厚労省OBは当時を振り返り、「民主党は公務員の組合を支持母体にしているので、『一元化はけしからん』となった」と内情を明かす。
 安倍政権のとき公務員制度改革を進めた、元財務官僚の高橋洋一氏が語る。
 「役人はよく、『民間と比較して』と言いますが、『民間』とは大企業の正社員を意味しています。中小企業の人から見れば、公務員は恵まれていると思えるのも無理はありません。安倍さんの公務員制度改革でも、メディアの大批判にあったり、役人の反発は強かった。年金のお手盛り部分は、役人側から止めましょうと言うわけがありませんから、政治主導でやっていくしかない」
 既得権と官民の不公平こそが、年金制度一元化を阻んでいる。給付水準の低い厚生年金にそろえようとすると、公務員の側は既得権の侵害と言うし、高い公務員のほうにそろえようとすると、厚生年金の保険料を上げるなど財政の負担を増やすしかない。
 高額の年金によって、老後の安心が保証されている公務員。しかし、当然のように、年金制度だけが優遇されているわけではない。前出の浅尾氏が批判する。
「民間の場合、退職金の半額が企業年金として支われるため、実際の退職一時金は1445万円です。それに対して、国家公務員の退職金は2960万円と、2倍以上の格差がある。
 また、昇給制度も民間とは違います。勤務成績が良好な人だけが昇給するよう、公務員の昇給制度に、5段階の評価を取り入れた。しかし、5段階のA~Eまで正規分布にするかと思いきや、昇給額が従来通りか1.5~2倍になるA~Cが97%、半分になるDと、昇給ゼロのEは全体の3%しか出なかった。何故偏るのかと役人に質すと、『公務員は試験に合格して仕事をしているので、みんな一生懸命。デキない人はいない』と言う。そんな言い訳は民間では通用しませんよ」
 厚労省の外郭団体に勤めた体験から、公務員の特権を批判し続けるジャーナリストの若林亜紀氏もこう述べる。
 「そもそも、公務員の給料が民間よりだいぶ高い。一般男性の平均年収も男性は515万円なのに対し、'09年の公務員の年収は、636万円と発表されています。しかし、これは額を低く見せるためのウソの数値。課長以下のいわゆる組合員平均というもので、国会答弁で明らかにされたところによれば、公務員の平均年収は926万円、自衛官などを除くと、実に1043万円にもなります」
 国民のために汗水垂らして必死に働いてくれるなら、多少、優遇されても目をつぶれるが、その仕事ぶりは真逆である。
 「私が働いていた団体では、出勤時刻は9時だったのですが、9時30分になっても誰も来ない。出勤しても、仕事が与えられずにヒマでした。課長が出勤するのは、会議がある週に1回だけ。部長に至っては月に1回しか出勤してこなかった。それでいて、課長の年収は1200万円、部長は1400万円以上、もらっていました」(同)
 ちなみに、この外郭団体は民主党の事業仕分けで廃止が決まったというが、それもどこ吹く風でまだ存続しているという。
 「公務員は大変なんです」
 十分すぎるほど老後の安泰が保証されている共済年金制度の批判を、公務員の労働組合はどう考えているのか。日本国家公務員労働組合連合会幹部が取材に応じた。
「公務員の給与や退職金、年金、どれをとっても優遇されているとは思いません。マスコミは公務員の一側面を切り取って、優遇されているなどと面白おかしく比較しますが、もっと全体像を見てほしい。公務員として窮屈なこともたくさんありますし、保険料率の違いもほんのわずかなことですよね。このご時世、われわれは、賃金の引き下げに歯止めをかけるべく頑張っていますが、それは民間の方々に頑張っていただいてなしうるものですから、労働環境を改善する策を先にとるべきではないでしょうか。組合の立場でも厚生年金と共済年金との一元化には決して反対していませんし、そうなることを私たちも願っていますよ」
 公務員のお手盛りを批判する前に、民間のほうがもっと頑張れと言う。こんな態度では、公務員亡国と言ってよいギリシャの二の舞になりかねない。この国は役人のためにあるのではないのだ。
 ちなみに、放送法で規定される特殊法人・NHKの年金も潤沢だ。NHK職員の平均年収は1041万円、一般的モデルでの退職金の額は2019万円、保険料負担は公務員の共済年金よりも軽いという。
 元NHK幹部が、手厚い年金制度について語る。
 「入局の際、重役から『NHKは給料が安い代わりに年金はとにかくいいんだ』と言われました。厚生年金に上乗せされる3階部分の企業年金が充実しているのです」
 実際はどうなのか。NHK広報局が回答した。
 「年金の掛け金は労使で折半しており、支給月額は、現在、平均で約12万円となっています。また本人が死亡した場合、残りの年金の半額を、一時金として遺族に支給しています」
 運用利回りが予定利回りに達しなかった場合は、受信料から補填される可能性もあるという。その一方で、受信料の値下げは少しずつしか進まない。
 旧態依然のシステムを改善せず、年金制度の危機をここまで放置していた責任は、官僚にもある。その「当事者」がお手盛りの手厚い年金にしがみついているのは、何をかいわんやだ。真面目に掛け金を払い込む気が、どんどん失せていく。
「週刊現代」2011年11月12日号より

中野剛志「開国どころかTPPで包囲されているのは日本。輸出を拡大できっこない」/能天気な【社説】

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中野剛志先生のよくわかるTPP解説―日本はTPPで輸出を拡大できっこない!  
 2011年11月10日
中野:TPPの議論で妙なのは、まず簡単に説明すると、もうご案内の方も多いと思いますが、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイという非常に小さな国が最初に協定を結んでいました。ところがこれにアメリカが入ろうといって、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、最近ではマレーシアがその交渉に参加するということになって、それで環太平洋連携協定(TPP)というものの交渉が行われ、ルールづくりが行われているという話になっています。貿易の関税自由化がかなり急進的に自由化を目指すと。貿易もモノだけでなくて人とかサービスも含めて包括的なものになっていると聞いています。交渉参加にあたって、あらかじめ、例えばコメは例外ですよとかいう自由貿易の例外品目を提示して参加するのは認められない。類似の自由貿易の協定で、よくFTAと聞くと思うんですが、あれはアメリカと韓国の2国間でやるものなんですけど、これは多国間でやる。
西部邁(にしべすすむ):FTAというのは、Free Trade Agreement。
中野:10月初旬に菅首相がこの交渉の参加を検討すると所信表明で言ってから、11月初旬のAPECまでわずか1カ月の間でこれだけ包括的な話を急にするという、唐突感がまず異常なんですが、この議論はかなり大切であるにもかかわらず、マスメディアだけでなく政府あるいは経済界が、「開国か鎖国か」「平成の開国をすべきかすべきでないか」とか、極めて単純極まりない分類でやっている。まず、日本はいま鎖国なんかしていないわけですよ。平均関税率でも世界的に見ると低いほうですし、農業に限定した平均関税率だって、かなり低いほうです。「完全な貿易自由化」と「完全な鎖国」との間に山ほどバリエーションがあるのにですね。
西部:さっき聞いてびっくりしたけれども、農業の関税ね、日本は700%前後でしたっけ。
中野:それはものによるんですね。
西部:ものによるのね。でもそれを平均で言うとEUより低いんですって?
中野:そうです。計算のしかたはいろいろありますが、EUより低かったりしているわけです。TPPの参加国はみんな農業国が多かったりするので、この中では日本は高めですが、世界で見ると、別に特に高いわけじゃない。議論のレベルがあまりにも単純だというのがまず非常に気になる。もう一つ気になるのが、なんかTPPで日本の農業が危ないというのは聞いてますよね。
秋山:ええ、聞いています。
中野:確かにそれはあるんです。ところが一方で、TPPをやると輸出を伸ばせる。製造業は得をするが、農業は損をする。
秋山:それで反対しているんですかね。
中野:ええ。で、どっちがいいのかみたいな、農業対製造業みたいな話で、議論がほとんどなっているんですが、私の見立てでは、製造業がTPPに参加して一層拡大するとかは、できません。まずTPPがアジア太平洋の貿易のルールの基本になるとか、これに乗らないと世界の孤児になるとか、そういった議論がされているんですが、交渉参加しているシンガポール、ニュージーランドうんぬんかんぬんが大体9カ国あるんですが、これに仮に日本を加えて、GDPでどれだけ大きなシェアがあるかというと、この10カ国のうちGDPはアメリカが67%、日本が24%、オーストラリアは5%で、ほぼ9割が日米なんです。
秋山:日米ですね。
中野:残りの7カ国で4%なんですね。しかもアメリカと日本以外の国は、みんな外需依存度が高い。GDPに占める輸出の割合が3〜4割と高い国が多いので、内需でもう1回計算し直すと、アメリカが73%。内需がですね。つまり日本が輸出できそうな場所ですね。アメリカ73%、日本は23%、オーストラリアは3.7%、残り7カ国で0.1%です。
西部:(笑)
中野:だからTPPでアジアの成長と共に日本が輸出を伸ばすとか言ってるんですけど、0.1%なんですよ。
西部:そうね。
中野:これはだからアジアの成長とか全然関係ないんです。これは実質的に「日米」貿易です。日米自由貿易なんです。
西部:アメリカとジャパンの関係であって、それに入らなければ世界の孤児になるということ自体が、統計上のまったくの間違い、嘘話ということですね。
中野:そうです。東アジアでこれが、本当に東アジアや太平洋のルールになるためには、韓国と中国が入らなければいけないんですけど、韓国はFTAを選んでいるんですよ。その理由はですね、こんなところに入ったら、これは日本とかアメリカに輸出したい国が7カ国もあって、みんなアメリカの味方になるので、ルールメイキングをしたら韓国や日本の味方にならないから、だから韓国は2国間で勝負しようとしているんです。この中に入るのは不利だから、韓国は2国間でやっているんですね。それから中国が入らないと意味がないんですが、中国は入りっこないわけです。中国は自由貿易、関税以前に、人民元問題といって、為替のコントロールをしちゃってるので、自由貿易以前の、基本的な段階でつかえているので、中国も入らない。そうすると大体このメンバーなんですけど、でも日米なんですよ、これは。
西部:そうだね。アメリカに対して工業、製造業の輸出増などは、関税撤廃しても見込まれないというのはどういうふうな。
中野:それはですね、まず日本は輸出を先というのは、アメリカに輸出をするということを考えなきゃいけないんですが、アメリカは、オバマ大統領がこう言っています。「5年間で2倍に輸出を拡大する」と。アメリカは貿易黒字を増やすと言っています。貿易黒字、輸出拡大戦略のためにTPPを活用すると言ってるんですね。つまりアメリカはTPPを活用して、アメリカの輸出を拡大すると言っているんです。そうすると、アメリカが輸出できそうな国って、この中だと日本しかないので。
西部:日本だけですね、これ。
中野:そうなんですよ。だから日本に輸出したいとアメリカは言っているんです。しかもアメリカはいま失業率が9.8%とかものすごいことになっていて、そんなところに日本が輸出なんかできっこないんですよ。その逆なんですね。で、一つそこで疑問なのは、じゃあなんで貿易黒字を増やしたいんだったら、アメリカは自由貿易を使用としているのかなんですよ。なんでアメリカが関税を撤廃しようとしているのかなんですが、これは理屈は簡単で、もはやアメリカが輸出を拡大する方策は関税じゃないんです。為替なんです。
西部:そうですね。
中野:だから関税なんかもう全然関係ないんですね。
西部:要するにドル安にして輸出をしやすくするということね。
中野:そうです。すなわちですね、アメリカの戦略はおそらくこうなんですね。まずアメリカに味方する国々がいっぱいある中に、日本を巻き込んで、多数決で自分の国に有利なようにルールを決めていく。で、確かに農業の関税を撤廃させる代わりに、アメリカも関税を撤廃してみせますが、そのあとアメリカはドル安に誘導するので、結局日本の工業製品の競争力は減殺されて、減殺されなければアメリカに現地生産をする。アメリカに工場を建てる。もうそうなっていて、為替リスクとかあるので、例えば自動車産業はアメリカで販売する車の66%がすでに現地生産のものなんです。もう関税も為替も関係ないんですよ。
西部:そうだよな。
中野:ホンダ自動車なんて8割ですよ。
秋山:8割。ホンダが。
中野:8割が現地生産なんで、もうすでに関税なんか関係なくなっている。ドル安に誘導すれば、この比率がどんどん高まるということで、アメリカは日本に輸出先を提供もしないし、日本企業に雇用も奪われることはないわけです。で、ドル安にして、日本の農業関税を撤廃させると、ドル安によって競争力をさらに強化されたアメリカの農産品が、関税の防波堤を失った日本市場に襲いかかってくるわけですね。そうするとアメリカは黒字が溜まっていく。こういう仕組みになっているので、どう考えたって日本がTPPで輸出なんか拡大できっこないということなんです。
西部:そういうことだね。言葉は汚いけども、なんか鎖国か開国かの前に、日本はアメリカに対して「レイプしてください」とかさ、男で言えば「去勢してください」と言っているような、哀れな姿ということですね。
中野:ええ、だから言い方は悪いですけど、私ははっきり言ってもうアメリカか中国の官僚になりたかったですね。もう日本をカモにするのなんて、本当にもう赤子の手をひねるようで、こんなに簡単にできる。
秋山:そんなもんなの。
中野:いや、そんなもんですね。日本にこういう条件を突きつけて、「鎖国したいのか」と言えば、もうみんな日本は開国しないと生きていけないと言ってこれに参加するという、こういう思考回路の人たちですから。それで経団連も政府もそういう調子なわけですね。それでいて日本国家には戦略がないとか、何を言ってるのか理解ができない。シンガポールとかマレーシアは、GDPよりも輸出のほうが大きいという、外需依存国の小国です。チリとかブルネイとかアメリカ、オーストラリアは鉱業品、鉱業というのはマイニングのほうですね、鉱物資源とか農産物の競争力がある、輸出力のある国ですね。ペルーもそうですね。それからベトナムやマレーシアやペルーやチリは、低賃金労働を輸出したい国ですね。
西部:なるほどね。
中野:この中に入って、よくTPPに早く参加したほうが日本に有利なルールがつくれると言うんですけども、このメンバーの中で日本に有利なルールをつくるためには、日本と利害が一致する国と組まなければいけないわけですよ。だけどみんな日本と利害が一致しないんですよ。みんな一次産品の競争力があったり、外需依存度が強い。だけど日本は一次産品の競争力がなくて、日本だけが、この中で日本だけがですよ、工業品の輸出国で、しかも内需が大きいんですよ。誰と組んでルールをうまくつくるんだと。日本の農業はですよ、為替リスクを回避したり、関税リスクを回避するために現地生産ってできないんですよ。
西部:できないよね。まさかね。
中野:だから農業は確実にやられるんです。いや、開国することがいいことだというのも、よくそういうバカなことを言うなと。まず「平成の開国」とか何とか言ってるんですけども、じゃあ幕末明治の開国は何だったのかという話なんですけど、幕末明治の開国はですね、むしろ開国をしたあとずっと富国強兵をやって日露戦争を戦ってとやって、日本は独立するために頑張って、関税自主権の回復のために戦ったんです。TPPは逆ですよ。関税自主権を失うためにやっている。この本(『自由貿易の罠 覚醒する保護主義』青土社)にも書いたことなんですけど、先ほど先生が自由と言ったらいいということではないということなんですけど、まさに自由貿易というのは安いもの、安い労働力の製品が国内に入ってきて、物価が安くなるということなんですね。だからTPPで言うと、コメも牛肉も関税がなくなったら、例えば牛丼がいま1杯250円が60円とか50円とかになるという話なんですけど、いま物価が下がる、デフレで困っているわけですよね。自由貿易になったらデフレがもっと激しくなるんですよ。しかもいまアメリカがデフレしかかってますから、アメリカで物価や賃金が下がっている、それで自由貿易をやるとアメリカの製品が入ってくるので、アメリカのデフレが日本に輸入されるんですよ。だからデフレがもっとひどくなる。デフレが困ると言ってるんだったら、TPPとか自由貿易なんてのは普通は出てこないですね。だからこのTPPをなんかイメージだけで、中国を包囲するためだとか、なんか戦略家ぶるヤツがいるんですよ。どうしてそうなるのか説明しないでですよ。でも今日説明申し上げたように、TPPで包囲されているのは日本なんですよ。お前が包囲されてるってぇのという、そういう話なんです。
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〈来栖の独白〉
 中野センセイの解説を聞けば、下記中日新聞社説の能天気ぶりに笑ってしまう。とりわけ末尾。
“*日本が米中の橋渡しも
 日本の最大貿易相手国は中国だ。TPPがゴールではない。たとえば「東南アジア諸国連合+日中韓FTA」を視野に入れながら、日中韓の交渉を加速する。米中の橋渡し役を務めるような攻めの外交も必要だ。
 戦わずして有利なルールを獲得する選択肢はあり得ない。”
 こんなことを言っていては、日本の製造業・食料・医療など生活の総てはアメリカに、尖閣は中国に乗っ取られてしまう。
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ルールづくりは戦いだ TPP交渉を決断へ
中日新聞 社説 2011年11月10日
 世界貿易機関(WTO)の自由化交渉が難航する中、環太平洋連携協定(TPP)の焦点は新しい貿易ルールづくりだ。日本も正面から取り組まねば…。
 民主党がTPP参加の是非をめぐる政府への提言について協議した。推進派と慎重派が党内を二分したため、しこりが残るのを恐れたのだろう。「交渉入り」をめぐる明確な結論は避け、最終判断は野田佳彦首相に委ねられた。
 これを受けて首相は十日、交渉入りの姿勢を表明する。
*難航する多国間の交渉
 首相はこれまで「早急に結論を出す」と言うばかりで、なぜTPPに参加するのか、その理由について発信を怠ってきた。
 それどころか市場参入規制をめぐって、日本郵政グループに民間の保険会社より有利な商品を認めている扱いについて米議会関係者が議題にするよう求めてきたのに政府はその事実を隠してきた。 
 交渉が生活にどんな影響を及ぼすのか、国民は心配している。こうした説明を避ける姿勢は政府への不信を募らせるだけだ。
 貿易交渉の潮流は大きく変わってきた。TPP交渉を主導する米国のお家の事情もある。そこに目を向けなければならない。
 自由貿易のルールづくりは一九四八年、関税貿易一般協定(ガット)を舞台に始まり、WTOに引き継がれた。ところが、百五十に上る国・地域が加盟しているWTOでの交渉は難航し、新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は開始から十年たった今も合意のめどが立っていない。
 WTO閣僚会合では、中国とインドが農産品輸出大国の米国に対して、セーフガード(緊急輸入制限)の発動条件を緩めなければ交渉には応じられないと牽制(けんせい)した。新興国の発言力が強まって、当初の交渉日程は大きく後にずれこんでいる。
*主役は自由貿易協定に
 そこで登場したのが、二カ国以上が互いに関税などの削減・撤廃を約束する自由貿易協定(FTA)だ。多国間交渉を補完する狙いで八〇年代から締結国が現れ、九〇年代以降、一気に増加した。WTOの機能低下が背景にある。
 世界には二百近いFTAが存在している。二国間にとどまらず北米自由貿易協定など複数国にまたがるFTAも実現し、重層的な貿易網が形成され始めた。
 TPPもFTAの一種だ。チリなど四カ国で二〇〇六年に発効した当初のTPPに米国が参加を表明し、拡大交渉を主導している。それは互いに自国に有利なルールをつくることが目的だ。
 ルールづくりの主役が世界規模のWTOからTPPを含めたFTAに移っている現実を日本もしっかりと直視しなければならない。
 カーク米通商代表は「アジア太平洋地域は米国の輸出、雇用を増やす」「TPP参加国は最高水準の拘束力のある協定を手に入れるだろう」「影響を及ぼす場所はアジア太平洋経済協力会議(APEC)だ」と語った。米国の通商戦略を端的に言い表している。
 オバマ米大統領は今後五年間で輸出を倍増して二百万人の雇用を生み出すと表明した。米国の照準は成長著しいアジアに向かっている。例外なき関税撤廃などのルールを強化しつつ、ゆくゆくは二十一カ国・地域で構成するAPECを土台にして、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を実現するもくろみだ。
 リーマン・ショックで米国の金融資本主義は大きく揺らいだ。世界の国内総生産(GDP)の約六割、貿易量も半分を占めるまでに膨らんだアジア太平洋の成長を吸い上げ、高水準にある失業率を低下させたい。それには自国に都合のよい貿易ルールづくりが早道と腹を固めている。
 米国とすれば、自分たちが主導して新しいルールを広め、豊かな成長を達成することによって、やがては中国もひきつけたい。そんな狙いがある。
 貿易交渉はルールづくりの戦いだ。その行方は日本経済の浮沈も決定づける。WTOの全加盟国が合意したルールを一律に適用する従来の方式から、FTAがより高い水準のルールを決めて自由化を先導していく。そんな現実から目をそらしていいのだろうか。
 日本が腰を据えた交渉をためらっていては、不都合な貿易ルールを強いられかねない。コメの例外扱いも交渉の中で実現していく道を探るべきではないか。
*日本が米中の橋渡しも
 日本の最大貿易相手国は中国だ。TPPがゴールではない。たとえば「東南アジア諸国連合+日中韓FTA」を視野に入れながら、日中韓の交渉を加速する。米中の橋渡し役を務めるような攻めの外交も必要だ。
 戦わずして有利なルールを獲得する選択肢はあり得ない。

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『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項(毒まんじゅう)/コメの自由化は今後こじ開けられる2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP)
 米国丸儲けの米韓FTAからなぜ日本は学ばないのか 「TPP亡国論」著者が最後の警告! 
Diamond online 2011年10月24日 中野剛志[京都大学大学院工学研究科准教授]
 TPP交渉に参加するのか否か、11月上旬に開催されるAPECまでに結論が出される。国民には協定に関する充分な情報ももたらされないまま、政府は交渉のテーブルにつこうとしている模様だ。しかし、先に合意した米韓FTAをよく分析すべきである。TPPと米韓FTAは前提や条件が似通っており、韓国が飲んだ不利益をみればTPPで被るであろう日本のデメリットは明らかだ。
 TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加についての結論が、11月上旬までに出される。大詰めの状況にありながら、TPPに関する情報は不足している。政府はこの点を認めつつも、本音では議論も説明もするつもりなどなさそうだ。
 しかし、TPPの正体を知る上で格好の分析対象がある。TPP推進論者が羨望する米韓FTA(自由貿易協定)である。
■米韓FTAが参考になるのはTPPが実質的には日米FTAだから
 なぜ比較対象にふさわしいのか?
 まずTPPは、日本が参加した場合、交渉参加国の経済規模のシェアが日米で9割を占めるから、多国間協定とは名ばかりで、実質的には“日米FTA”とみなすことができる。また、米韓FTAもTPPと同じように、関税の完全撤廃という急進的な貿易自由化を目指していたし、取り扱われる分野の範囲が物品だけでなく、金融、投資、政府調達、労働、環境など、広くカバーしている点も同じだ。
 そして何より、TPP推進論者は「ライバルの韓国が米韓FTAに合意したのだから、日本も乗り遅れるな」と煽ってきた。その米韓FTAを見れば、TPPへの参加が日本に何をもたらすかが、分かるはずだ。
 だが政府もTPP推進論者も、米韓FTAの具体的な内容について、一向に触れようとはしない。その理由は簡単で、米韓FTAは、韓国にとって極めて不利な結果に終わったからである。
 では、米韓FTAの無残な結末を、日本の置かれた状況と対比しながら見てみよう。
■韓国は無意味な関税撤廃の代償に環境基準など米国製品への適用緩和を飲まされた
 まず、韓国は、何を得たか。もちろん、米国での関税の撤廃である。
 しかし、韓国が輸出できそうな工業製品についての米国の関税は、既に充分低い。例えば、自動車はわずか2.5%、テレビは5%程度しかないのだ。しかも、この米国の2.5%の自動車関税の撤廃は、もし米国製自動車の販売や流通に深刻な影響を及ぼすと米国の企業が判断した場合は、無効になるという条件が付いている。
 そもそも韓国は、自動車も電気電子製品も既に、米国における現地生産を進めているから、関税の存在は企業競争力とは殆ど関係がない。これは、言うまでもなく日本も同じである。グローバル化によって海外生産が進んだ現在、製造業の競争力は、関税ではなく通貨の価値で決まるのだ。すなわち、韓国企業の競争力は、昨今のウォン安のおかげであり、日本の輸出企業の不振は円高のせいだ。もはや関税は、問題ではない。
 さて、韓国は、この無意味な関税撤廃の代償として、自国の自動車市場に米国企業が参入しやすいように、制度を変更することを迫られた。米国の自動車業界が、米韓FTAによる関税撤廃を飲む見返りを米国政府に要求したからだ。
 その結果、韓国は、排出量基準設定について米国の方式を導入するとともに、韓国に輸入される米国産自動車に対して課せられる排出ガス診断装置の装着義務や安全基準認証などについて、一定の義務を免除することになった。つまり、自動車の環境や安全を韓国の基準で守ることができなくなったのだ。また、米国の自動車メーカーが競争力をもつ大型車の税負担をより軽減することにもなった。
 米国通商代表部は、日本にも、自動車市場の参入障壁の撤廃を求めている。エコカー減税など、米国産自動車が苦手な環境対策のことだ。
■コメの自由化は一時的に逃れても今後こじ開けられる可能性大
 農産品についてはどうか。
 韓国は、コメの自由化は逃れたが、それ以外は実質的に全て自由化することになった。海外生産を進めている製造業にとって関税は無意味だが、農業を保護するためには依然として重要だ。従って、製造業を守りたい米国と、農業を守りたい韓国が、お互いに関税を撤廃したら、結果は韓国に不利になるだけに終わる。これは、日本も同じである。
 しかも、唯一自由化を逃れたコメについては、米国最大のコメの産地であるアーカンソー州選出のクロフォード議員が不満を表明している。カーク通商代表も、今後、韓国のコメ市場をこじ開ける努力をし、また今後の通商交渉では例外品目は設けないと応えている。つまり、TPP交渉では、コメも例外にはならないということだ。
 このほか、韓国は法務・会計・税務サービスについて、米国人が韓国で事務所を開設しやすいような制度に変えさせられた。知的財産権制度は、米国の要求をすべて飲んだ。その結果、例えば米国企業が、韓国のウェブサイトを閉鎖することができるようになった。医薬品については、米国の医薬品メーカーが、自社の医薬品の薬価が低く決定された場合、これを不服として韓国政府に見直しを求めることが可能になる制度が設けられた。
 農業協同組合や水産業協同組合、郵便局、信用金庫の提供する保険サービスは、米国の要求通り、協定の発効後、3年以内に一般の民間保険と同じ扱いになることが決まった。そもそも、共済というものは、職業や居住地などある共通点を持った人々が資金を出し合うことで、何かあったときにその資金の中から保障を行う相互扶助事業である。それが解体させられ、助け合いのための資金が米国の保険会社に吸収される道を開いてしまったのだ。
 米国は、日本の簡易保険と共済に対しても、同じ要求を既に突きつけて来ている。日本の保険市場は米国の次に大きいのだから、米国は韓国以上に日本の保険市場を欲しがっているのだ。
■米韓FTAに忍ばされたラチェット規定やISD条項の怖さ
 さらに米韓FTAには、いくつか恐ろしい仕掛けがある。
 その一つが、「ラチェット規定」だ。
 ラチェットとは、一方にしか動かない爪歯車を指す。ラチェット規定はすなわち、現状の自由化よりも後退を許さないという規定である。
 締約国が、後で何らかの事情により、市場開放をし過ぎたと思っても、規制を強化することが許されない規定なのだ。このラチェット規定が入っている分野をみると、例えば銀行、保険、法務、特許、会計、電力・ガス、宅配、電気通信、建設サービス、流通、高等教育、医療機器、航空輸送など多岐にわたる。どれも米国企業に有利な分野ばかりである。
 加えて、今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米国にも同じ条件を適用しなければならないという規定まで入れられた。
 もう一つ特筆すべきは、韓国が、ISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」)条項を飲まされていることである。
 このISDとは、ある国家が自国の公共も利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度である。
 しかし、このISD条項には次のような問題点が指摘されている。
 ISD条項に基づいて投資家が政府を訴えた場合、数名の仲裁人がこれを審査する。しかし審理の関心は、あくまで「政府の政策が投資家にどれくらいの被害を与えたか」という点だけに向けられ、「その政策が公共の利益のために必要なものかどうか」は考慮されない。その上、この審査は非公開で行われるため不透明であり、判例の拘束を受けないので結果が予測不可能である。
 また、この審査の結果に不服があっても上訴できない。仮に審査結果に法解釈の誤りがあったとしても、国の司法機関は、これを是正することができないのである。しかも信じがたいことに、米韓FTAの場合には、このISD条項は韓国にだけ適用されるのである。
 このISD条項は、米国とカナダとメキシコの自由貿易協定であるNAFTA(北米自由貿易協定)において導入された。その結果、国家主権が犯される事態がつぎつぎと引き起こされている。
 たとえばカナダでは、ある神経性物質の燃料への使用を禁止していた。同様の規制は、ヨーロッパや米国のほとんどの州にある。ところが、米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとして、ISD条項に基づいてカナダ政府を訴えた。そして審査の結果、カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払った上、この規制を撤廃せざるを得なくなった。
 また、ある米国の廃棄物処理業者が、カナダで処理をした廃棄物(PCB)を米国国内に輸送してリサイクルする計画を立てたところ、カナダ政府は環境上の理由から米国への廃棄物の輸出を一定期間禁止した。これに対し、米国の廃棄物処理業者はISD条項に従ってカナダ政府を提訴し、カナダ政府は823万ドルの賠償を支払わなければならなくなった。
 メキシコでは、地方自治体がある米国企業による有害物質の埋め立て計画の危険性を考慮して、その許可を取り消した。すると、この米国企業はメキシコ政府を訴え、1670万ドルの賠償金を獲得することに成功したのである。
 要するに、ISD条項とは、各国が自国民の安全、健康、福祉、環境を、自分たちの国の基準で決められなくする「治外法権」規定なのである。気の毒に、韓国はこの条項を受け入れさせられたのだ。
 このISD条項に基づく紛争の件数は、1990年代以降激増し、その累積件数は200を越えている。このため、ヨーク大学のスティーブン・ギルやロンドン大学のガス・ヴァン・ハーテンなど多くの識者が、このISD条項は、グローバル企業が各国の主権そして民主主義を侵害することを認めるものだ、と問題視している。
■ISD条項は毒まんじゅうと知らず進んで入れようとする日本政府の愚
 米国はTPP交渉に参加した際に、新たに投資の作業部会を設けさせた。米国の狙いは、このISD条項をねじ込み、自国企業がその投資と訴訟のテクニックを駆使して儲けることなのだ。日本はISD条項を断固として拒否しなければならない。
 ところが信じがたいことに、政府は「我が国が確保したい主なルール」の中にこのISD条項を入れているのである(民主党経済連携プロジェクトチームの資料)。
 その理由は、日本企業がTPP参加国に進出した場合に、進出先の国の政策によって不利益を被った際の問題解決として使えるからだという。しかし、グローバル企業の利益のために、他国の主権(民主国家なら国民主権)を侵害するなどということは、許されるべきではない。
 それ以上に、愚かしいのは、日本政府の方がグローバル企業、特にアメリカ企業に訴えられて、国民主権を侵害されるリスクを軽視していることだ。
 政府やTPP推進論者は、「交渉に参加して、ルールを有利にすればよい」「不利になる事項については、譲らなければよい」などと言い募り、「まずは交渉のテーブルに着くべきだ」などと言ってきた。しかし、TPPの交渉で日本が得られるものなど、たかが知れているのに対し、守らなければならないものは数多くある。そのような防戦一方の交渉がどんな結末になるかは、TPP推進論者が羨望する米韓FTAの結果をみれば明らかだ。
 それどころか、政府は、日本の国益を著しく損なうISD条項の導入をむしろ望んでいるのである。こうなると、もはや、情報を入手するとか交渉を有利にするといったレベルの問題ではない。日本政府は、自国の国益とは何かを判断する能力すら欠いているのだ。
■野田首相は韓国大統領さながらに米国から歓迎されれば満足なのか
 米韓FTAについて、オバマ大統領は一般教書演説で「米国の雇用は7万人増える」と凱歌をあげた。米国の雇用が7万人増えたということは、要するに、韓国の雇用を7万人奪ったということだ。
 他方、前大統領政策企画秘書官のチョン・テイン氏は「主要な争点において、われわれが得たものは何もない。米国が要求することは、ほとんど一つ残らず全て譲歩してやった」と嘆いている。このように無残に終わった米韓FTAであるが、韓国国民は、殆ど情報を知らされていなかったと言われている。この状況も、現在の日本とそっくりである。
 オバマ大統領は、李明博韓国大統領を国賓として招き、盛大に歓迎してみせた。TPP推進論者はこれを羨ましがり、日本もTPPに参加して日米関係を改善すべきだと煽っている。
 しかし、これだけ自国の国益を米国に差し出したのだから、韓国大統領が米国に歓迎されるのも当然である。日本もTPPに参加したら、野田首相もアメリカから国賓扱いでもてなされることだろう。そして政府やマス・メディアは、「日米関係が改善した」と喜ぶのだ。だが、この度し難い愚かさの代償は、とてつもなく大きい。
 それなのに、現状はどうか。政府も大手マス・メディアも、すでに1年前からTPP交渉参加という結論ありきで進んでいる。11月のAPECを目前に、方針転換するどころか、議論をする気もないし、国民に説明する気すらない。国というものは、こうやって衰退していくのだ。 *強調(太字・着色)は来栖
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韓国国民も米韓FTAの危険性に気づき始めた/TPPは国民皆保険制度を破壊する?/混合診療2011-11-09 | 政治(経済/社会保障/TPP)
アメリカの言いなりだった小泉竹中路線と同じ道を辿る野田政権(BKD=売国奴)のTPP参加2011-11-08 | 政治(経済/社会保障/TPP)
TPPとは、米国による属国化政策/意に沿わないと訴えられる/FTAに頼った韓国の大誤算は明日の日本の姿2011-11-07 | 政治(経済/社会保障/TPP)
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TPP交渉参加「苦境にあるオバマ大統領にAPECで花を持たせたい」/問題はデメリットを報道しないメディア2011-11-01 | 政治(経済/社会保障/TPP) 

小沢一郎裁判は、ドレフェス裁判だ/米国に隷属化した人たちの手によって仕掛けられたものに他ならない

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「日本一新運動」の原点(80)── 小沢・TPP問題にみる日本国家の危機
平野貞夫の「永田町漂流記」
 
 10月27日(木)から29日(土)までの3日間、我が故郷高知に帰省していた。28日(金)に、民主党四国ブロック地方自治体議員フォーラムが、足摺岬の?足摺テルメ?で開かれるということで、高知県連から講師を頼まれてのことであった。
 ここのところ続いた政局や、小沢さん関係の裁判などで、東京の緊張した雰囲気から離れて、冷静に世の中を観る良い機会でもあり出かけた。驚いたのは、地方の人々の方が東京で暮らしている人より、世界の動きや、日本の不況についてきわめて強い関心と危惧を持っていたことだ。
 政局や小沢さん関係の話をなるべくしないつもりで、フォーラムのテーマも『地方振興について』という地味なものにした。
 しかし、質問が中々に厳しくTPP問題を始めとする民主党野田政権の行方や、小沢さんの関係の検察・裁判所の姿勢に対する不安、俎上にあがっている選挙制度をどうするのかなど、フォーラムでは厳しい質問攻めに会った。首都圏の話題が「放射性物質汚染問題」にあるのに対して、地方議員たちは、日本の現状と将来に対して不安を感じ政府や既成政党に強い不信感を持っていた。
 今回の旅は時間的余裕があり、友人や知人など、私の参議院議員時代に支援してくれた人々、お医者さんとか、経営者、自治体の首長など、15人くらいと個別に懇談する機会があった。最近の高知県人の政治意識は、明治・大正・敗戦後と比べて劣化していると思い込んでいたが、誤りであった。最近の政治・経済・社会問題に、厳しい問題提起をしてきた。「お前と会えるのを待っていた」ということで、改めて土佐人の感性の鋭さを学んだ。
■小沢・TPP問題にみる日本国家の危機
 地方議員フォーラムでも質問があったが、TPP問題は、ロッキード事件から小沢問題へと繋がる米国の圧力・仕掛けではないか、という見方を懇談した人々の大半がしてきたことに驚いた。こういう見方は東京でもしばしば聴くが、私はこういう短絡的な話は嫌いなので避けてきた。具体的な証拠もなく、全てを米国のせいにすることは、問題の解決にならない。米国の政府や有識者の中には、田中角栄や小沢一郎、それに、TPPに反対する政治家たちを、「米国に従属しないケシカラン奴らだ」と思っている人たちもいるだろう。私もこれらのことをまったく無視するつもりはない。ロッキード事件の田中問題や、小沢問題でも、米国の権力者の中に「排除すべき人物」と考える人たちがいることは事実であろう。
 しかし一方には、こういう発想に反対する米国人有識者も大勢いるのだ。その一端は国際草の根交流センター(http://www.manjiro.or.jp/)にも紹介されていることから、是非とも見て頂きたい。
 重要なことは、米国でどうしてこんな考え方が出てくるのか、どうして日本の政治家・官僚・メディアなどの中に、この考え方の影響を受ける人たちが大勢いるのか、日本人の問題として、私たち自身が主体的に考えるべきである。こういうことを地方議員や懇談した人たちに話したが、なかなか理解してもらえなかった。
 大きな宿題を抱えた気分で10月29日の深夜帰宅してみると、『月刊日本』11月号が届いていた。この雑誌はきわめて個性が強く、中々一般に普及しないが、時々、時代を鋭く追求する論説を掲載することで知られている。11月号には文藝評論家・山崎行太郎氏の「小沢裁判はドレフェス裁判だ」という、インタビュー記事があった。
 山崎行太郎氏の指摘を要約すると、
1)小沢裁判では、ほとんどすべての言論が、検察審査会による強制起訴という制度そのものへの問題提起もされていない。通常の権力闘争、世論のヒステリーを越えた何事かがある。小沢一郎を葬り去らねばならないという、ある種の決意がある。
2)それはポスト・コロニアリズムの空気だ(江藤淳「閉ざされた言語空間・占領軍の検閲と戦後日本=文春文庫)。戦後の言論が一見自由を装って、実は占領軍による検閲というトラウマの中で、自ら自由な言論を束縛してきた。奴隷根性であり、これを一旦身につけると抜けない。小沢一郎はこれを改革し、日本の自主・自立を目指そうとした。
3)小沢がやり玉に挙げられ始めたのは政権交代直前からで、西松・水谷・陸山会事件と過剰な疑惑報道がされた。小沢が対米自立に舵を切ろうとした時期に重なる。小沢を手段を問わず血祭りにしようとメディアが暴走し、その尻馬に乗った検察・裁判所の暴走なのだ。
4)小沢という政治家は、明確に日本の自主・自立を目指した人物だ。中国への接近が問題とされるが、それは政治の場で論議すべきこと。政治手法とは異なる所(司法権力)で、力づくで小沢を排除することを放置すれば、日本の自立はほとんど永遠の彼方に遠ざかろう。
5)小沢裁判の本質は、我々は無意識のうちにポスト・コロニアリズム的奴隷根性の命ずるままに小沢叩きに興じているだけなのではないか。日本の自立とは何か、我々の思考の枠組みそのものを問い直すことが、最重要だ。
6)思い出すのは、19世紀フランスで起きたドレフェス事件だ。普仏戦争で敗けたフランスでスパイ疑惑が発生し、反ユダヤ主義が吹き荒れるなかで、ユダヤ人のドレフェス陸軍大佐が犯人とされ、有罪となった。作家エミール・ゾラは「私は弾劾する」という論文を発表し、裁判の不当性を糾弾した。これで起きた社会運動によって、冤罪の実態が明らかになりフランス陸軍の権威は失墜し、フランスはさらなる弱体化を招いた。
 小沢問題を、日本人のポスト・コロニアリズム的奴隷根性という、社会心理的観点から指摘した山崎氏の意見は見事といえる。TPP問題もこの観点から考えると共通した本質に行きつくことができる。この日本人の、米国に対する「ポスト・コロニアリズム的奴隷根性」は、その後発展した「排他的投機資本主義」によって、さらなる癒着と合体を重ねて21世紀の世界を混乱させている。
 「小沢問題」は、米国が直接手を出さなくとも、日本人でありながら米国に隷属化した人たちの手によって仕掛けられたものに他ならない。メディアにも、官僚にも、そして検事・裁判官にも、日本国籍を持ちながら、心理的・文化的に米国連邦政府職員の意識を持つ人たちが大勢いるのだ。彼らは小沢一郎の主張する「自立と共生―国民の生活が第一」の「共生国家の建設」を許すことができないのである。
 彼らにとっては「狂気化し暴走する排他的米国資本主義」を守るため、小沢一郎という政治家を葬るとともに、TPPという米国資本主義のための「新しい収奪装置」に日本を参加させることに必死なのである。
 彼らはもはやデモクラシーという方法でなく、メディアによる社会心理的暴力装置と、検察・裁判所という物理的暴力装置を使って、「新しいファシズム国家」をつくろうとしているのだ。
 本来であれば、それを阻止すべき議会民主政治が、阻止どころか与野党で協力している国会議員が多数存在しているのだ。これを国家の危機といわなくて、何を危機というのか。
 投稿者: 平野貞夫 日時: 2011年11月10日 00:44 *強調(太字・着色)は来栖
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アメリカの言いなりだった小泉竹中路線と同じ道を辿る野田政権(BKD=売国奴)のTPP参加2011-11-08 | 政治(経済/社会保障/TPP)
角栄氏と小沢一郎氏/角栄をやり、中曾根をやらなかった理由〜有罪が作られる場所『検察を支配する悪魔』2011-11-04 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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小沢一郎裁判=「官僚支配に従う者」と「国民主権を打ち立てようとする者」とを見分けるリトマス紙である2011-10-10 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
小沢一郎元代表の「暗黒裁判」は、米CIAと東京地検特捜部、マスメディアの共謀共同事件だ2011-10-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
私の面倒を見てくれた政権の座にある人物が1日中、椅子に座らされて、1人でいるのは耐えられなかった2011-10-04 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 小沢氏は毎回終了までとどまり、田中元首相と目が合うのを待って深くお辞儀をした . . .


民主党政権公約「農業の戸別所得補償制度導入と日米FTAの締結をセットで実現」=小沢一郎の持論

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小沢一郎がTPPに反対しないワケ
市村 孝二巳
日経ビジネス2011年11月10日(木)
 きょう11月10日、野田佳彦首相は記者会見を開き、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を表明する見通しだ。民主党内に渦巻く反対論を振り切る形で、野田首相が就任後初めて大きな政治決断を下すことになる。国論を二分する議論に発展したTPPだが、民主党のある大物がこの問題に関して沈黙を守り続けていることにお気づきだろうか。小沢一郎元代表である。なぜ小沢グループに所属する議員の多くが反対を叫ぶTPPへの態度を明らかにしないのか。
 全国農業協同組合中央会(JA全中)が11月1日、「TPP交渉参加反対の国会請願」に賛成した国会議員が363人に上り、全国会議員の過半を占めた、と発表した。このリストを見ると、民主党議員は「TPPを慎重に考える会」の山田正彦・前農相をはじめ、小沢グループの議員が多数、名を連ねている。農林票を大きな支持基盤とする議員はともかく、農林水産関係者からほとんど支持を得ていないであろう若手議員まで、次の選挙への不安が彼らをTPP反対へと駆り立てていることが分かる。
 このリストには、小沢元代表の名前がない。元代表は慎重に考える会に関して、「うちのグループから署名集めに参加させてもいい。反対活動をするなら、まずコアのメンバーを固めないといけない」と語ったと伝えられるが、当の本人は加わっていない。慎重に考える会に出席していた鳩山由紀夫元首相の名前もない。これはどういうことか。時計の針を2009年の政権交代前に逆戻りさせると、その事情が見えてくる。
*「食料自給体制の確立と自由貿易は矛盾しない」
 「農家には戸別所得補償制度の導入を提案しており、食料自給体制の確立と自由貿易は何も矛盾しない」。2009年8月8日、当時の小沢一郎代表代行は鹿児島県肝付町で記者団にこう語った。
 民主党がマニフェスト(政権公約)の目玉としていた農業の戸別所得補償制度の導入と、日米FTA(自由貿易協定)の締結をセットで実現すべきだ、というのが小沢元代表の持論であった。WTO(世界貿易機関)のドーハ・ラウンド(多角的通商交渉)など、農業保護のあり方を巡る通商交渉の世界では、農産物の関税障壁を削減・撤廃していく一方、輸出促進を目的としない農業補助金に切り替えていく、という流れであり、米国も、欧州連合(EU)もそうした改革を進めてきた。
 小沢元代表は「(日米FTAによる自由化で)農産物の価格が下がっても所得補償制度で農家には生産費との差額が支払われる」とも語り、農産物の市場価格が生産費を下回っても「赤字」を補填する所得補償を講ずれば、関税障壁は撤廃・削減できると主張していたのだ。
 小沢元代表が代表として臨んだ2007年の参院選マニフェストにはこうある。
 「農産物の国内生産の維持・拡大と、世界貿易機関(WTO)における貿易自由化協議及び各国との自由貿易協定(FTA)締結の促進を両立させます。そのため、国民生活に必要な食料を生産し、なおかつ農村環境を維持しながら農業経営が成り立つよう、『戸別所得補償制度』を創設します」
 そして、2009年8月の衆院選に向けたマニフェストも、7月27日の発表時には日米FTAについて「締結」と明記していたが、その後、農業団体などの猛反対に遭って「促進」と後退させた。鹿児島県での小沢元代表の発言は、マニフェストを修正した、当時の鳩山由紀夫代表、菅直人代表代行に対する批判である。
*「緊密で対等な日米関係を築く」
 小沢元代表にはこういう思いもあったのだろう。2009年のマニフェストで日米FTAを謳ったのは、「緊密で対等な日米関係を築く」という外交の項目だ。
 「日本外交の基盤として緊密で対等な日米同盟関係をつくるため、主体的な外交戦略を構築した上で、米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす」
 かつて日米二国間の通商交渉には、日本が一方的に米国から理不尽な要求を突きつけられ、市場開放や輸出制限などを強いられてきた屈辱的な歴史がある。小沢元代表が求めていたのは、そうした従属的な関係から脱し、日本の外交の基軸である日米関係を再構築していくことではなかったか。
 そうした理想を掲げていたはずの小沢元代表が、今のTPP交渉参加問題に関して口をつぐんでいるのは、改めて持論を展開すれば、次の総選挙への悪影響を免れないからだろう。
 現在の戸別所得補償制度は、日米FTAなど貿易・投資の自由化と平行して進めるという小沢元代表の理想から遊離し、農業を活性化する効果が希薄なバラマキ政策に変容してしまっている。
 資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で強制起訴され、全面無罪を主張した10月6日の初公判以来、小沢元代表の発言はほとんど公になっていない。内々には「今の拙速な進め方では、国内産業は守れない」という否定的な見解を示した、とされるが、あえて表立ってTPP反対を唱えようとはしない小沢元代表の沈黙は、今の民主党が抱えている矛盾を雄弁に物語っている。
<筆者プロフィール>
 市村孝二巳(いちむら・たかふみ)日経ビジネス副編集長 兼 編集委員。
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TPP:小沢一郎氏は慎重姿勢2011-11-08 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 TPP:小沢元代表は慎重姿勢
 民主党の小沢一郎元代表は8日、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加について「自由競争、自由貿易の原則は誰も否定できないが、今、米国が主張しているTPPをそのまますぐ受け入れることとは別問題。日本の国民生活をちゃんと守るシステムを作ったうえで、吟味してやらなければならない」と慎重な姿勢を示した。来週発売の「サンデー毎日」に掲載されるジャーナリストの鳥越俊太郎氏との対談に応じ「(現時点で交渉に参加すれば米国の)意のままにやられてしまう」と述べた。
毎日新聞 2011年11月8日 19時33分
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ライオンズ・シェア TPP/ 小沢一郎氏「米国と誰が交渉できるんだ」と、政府の交渉力に危惧の念2011-11-09 | 政治(経済/社会保障/TPP)
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小沢一郎裁判は、ドレフェス裁判だ/米国に隷属化した人たちの手によって仕掛けられたものに他ならない2011-11-10 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

TPP参加を巡って国内の意見が二分された事は、実は交渉の舞台づくりに役立っている/実利はしっかり確保

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「これでいいのだ」 
田中良紹の「国会探検」2011年11月10日 22:27
 外国と交渉する時、国内が一つにまとまる方が交渉力は強まると思われがちだが、政治はそんな単純なものではない。むしろ意見が一つだと相手を篭絡するのが難しくなる。多様な意見を背にする方が「したたかな交渉」が出来る。TPP参加を巡って国内の意見が二分された事は、野田政権にとって「足かせ」のように見せながら、実は交渉の舞台づくりに役立っているのである。
 日米貿易戦争の歴史は長いが、80年代半ばまでの自民党政権は実に「したたかな交渉」を行なってきた。アメリカから強いバッシングを受けると、それに譲歩して負けたフリをしながら、実利だけはしっかり確保した。その結果、世界最大の金貸し国の地位をアメリカから日本が奪い、1985年には日本が世界一の金貸し国になり、アメリカは世界一の借金国に転落した。日米交渉で煮え湯を飲まされ続けたのはアメリカである。
 日米貿易戦争の最前線にいた通産省の天谷直弘氏は「町人国家論」を唱えた。つまり江戸時代に政治、軍事、警察力を握っていたのは武士だが、経済を握っていたのは町人である。町人が力を維持するには、武士との関係に細心の注意を払わなければならない。なぜなら武士は軍事力をちらつかせて「金を出せ」と命令する事が出来るからである。
 町人がしたたかに生きるには、情報収集力、構想力、交渉力、そして時には這いつくばってゴマをする能力も必要になる。武士から唾を吐きかけられても揉み手をしながら笑って見せ、それで利益が確保できれば町人は生き残れる。戦後の世界でアメリカが武士ならば日本は町人である。それなら日本は大商人を目指すべきという内容だったと思う。
 当時の自民党は社会党が政権獲得を目指さない野党であった事から、選挙で大勝を目指さずに、むしろ野党勢力の数を減らさないよう配慮した。野党勢力を少数に追い込めば、対米交渉にとって決してプラスにならず、国益を損なうと考えたからである。
 アメリカから要求を突きつけられた時、野党勢力の強い反対がなければ、町人国家の日本は要求をそのまま飲まざるを得ない。武士に対して町人が正面から逆らえば、どんな仕返しをされるか分からないからである。しかし国内に反対があり、それを潰すだけの力が自民党にない事を見せつければ、アメリカも要求のレベルを下げざるを得ない。交渉では負けた顔をしながら実利を取る。それがかつての自民党のやり方であった。
 しかし中曽根康弘、小泉純一郎の二人の総理だけはそうした考えを取らなかった。中曽根総理は86年のダブル選挙で300議席を越える大勝を果たし、「わが自民党は都市にまでウイングを伸ばし」と演説した。すると、自民党の票田である農村を保護する事を認めてきたアメリカが、すぐさま牛肉、オレンジ、コメなどの農作物輸入を要求してきた。また05年の選挙で大勝した小泉政権がどれほどアメリカの要求を飲まされ続けたかは記憶に新しいところである。
 過去の貿易戦争に照らせば、TPP問題では野党第一党の自民党が激しく反対する必要があった。ところが現在の自民党にはその役回りが演じ切れない。だから民主党を二分して激しく戦わせる必要があった。国内で反対が高まれば高まるほど、政府は情けない顔をしてみせ、しかし交渉カードを増やせるのである。
 アメリカでは超党派の議員がオバマ政権に対し、TPP交渉に日本を参加させる事に慎重であるべきだとの申し入れを行なった。日本を参加させれば交渉は複雑になると言うのだが、真意は過去に煮え湯を飲まされた轍を踏まずに、アメリカ主導で交渉を行なうようはっぱをかけたのである。要するに日米双方の議会は国益を守れと政府に働きかけている。
 そもそもアメリカは農業大国でヨーロッパに農産物を輸出する供給国であった。ところがヨーロッパが地域共同体になり、各国間の関税が撤廃されると、アメリカのヨーロッパに対する農作物輸出は激減した。1980年代に水田面積を増やし、コメを作ってヨーロッパに売り込もうと苦労していたアメリカを取材した事がある。日本でパン食を普及させたようにヨーロッパの子供にコメを食べさせようとしていた。しかしそれが成功したという話は聞いていない。
 ヨーロッパを向いていたアメリカは否応なく顔をアジアに向けるようになった。クリントン大統領が「アメリカは太平洋国家」と宣言して以来、アジア太平洋地域で覇権を握る事にアメリカは力を入れてきた。日本とオーストラリアが主導してきたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)にも積極的に関わり出した。
 アメリカが恐れているのは成長著しい中国と技術力世界一の日本とが手を組み、それに韓国が参加する事である。この3カ国を分断し、アメリカがそれぞれと繋がって、アジアでの主導権を握りたいのである。それがTPPに乗り出してきたアメリカの理由である。死活的にアジアを必要としているのはアメリカだから、アメリカにはそれが故の弱みがある。
 しかしその弱みをあからさまにして武士を怒らせては町人は生きられない。武士に逆らわない顔をしながら、しっかりアジアの成長から利益を得る作業を続けるのが日本の国益である。そのためには旗幟鮮明な政治など不用である。アメリカは常に二枚舌、三枚舌の外交を行なう国だから本当の事を言うはずがない。それならこちらも千変万化の政治で対抗すれば良い。
 党内が二分された民主党を「学級崩壊」と解説し、野田政権の力の低下を云々するメディアがあるが、全く政治の奥深さを分かっていない。そんなレベルで世界の政治は行われていない事を知るべきである。ここまでのところは「これでいいのだ」と私は思う。
<筆者プロフィール>
田中良紹(たなか・よしつぐ)
 1945年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同年(株)東京放送(TBS)入社。ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。
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小沢一郎裁判=「官僚支配に従う者」と「国民主権を打ち立てようとする者」とを見分けるリトマス紙である2011-10-10 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 リトマス試験紙 田中良紹の「国会探検」日時:2011年10月9日
 小沢裁判は、明治以来の官僚支配に従う者と、日本に国民主権を打ち立てようとする者とを見分けるリトマス試験紙である。裁判の結果とは別に、誰が官僚の手先で民主主義を破壊する者かがあぶり出される。
 初公判での小沢一郎氏の陳述は、私がこれまで書いてきた事と軌を一にするものであった。私が書いてきたのは以下の事である。事件は政権交代を見据えてその推進力である小沢氏の政治的排除を狙ったものである。しかし十分な材料がないため捜査は無理を重ねた。目的は有罪にする事ではなく小沢氏の排除であるから、メディアを使って無知な大衆を扇動する必要がある。大衆に迎合する愚かな政治家が小沢排除の声を挙げれば目的は達する。
 民主主義国家における検察は、国民の代表である国会議員の捜査には慎重の上にも慎重を期さなければならない。それが国民主権の国の常識である。国家機密を他国に売り渡すような政治家や、一部の利益のために国民に不利益を与えた政治家は摘発されなければならないが、その場合でも国民が主権を行使する選挙の前や、政治的バランスを欠いた捜査をやってはならない。民主主義の捜査機関にはそれが課せられる。
 ところが一昨年、小沢氏の秘書が突然逮捕された「西松建設事件」は、政権交代がかかる総選挙直前の強制捜査であった。しかも政治資金収支報告書の記載ミスと言えるのかどうか分からないような容疑での逮捕である。これで逮捕できるならほとんどの国会議員が摘発の対象になる。そんな権限を民主主義国家が捜査機関に与えて良い筈がない。
 しかも捜査のやり方が極めて異常であった。かつて私が東京地検特捜部を取材したロッキード事件も奇怪な事件で、事件の本筋とは言えない田中角栄氏が逮捕され、国民は「総理大臣の犯罪」と思い込まされたが、それでも当時は手順を踏んだ捜査が行なわれた。ところが今回は国会議員に関わる事件であるのに検察首脳会議を開かず、「若手検事の暴走」という前代未聞の形での着手である。
 それほどの異常な捜査を新聞もテレビも追及する側に回らず擁護する側に回った。平均給与が全産業を上回るほど利益追求に走った新聞とテレビは、国税や検察がその気になれば、脱税などの犯罪で摘発される可能性があり、財務省や検察を批判する事など恐ろしくて出来ないからだろう。
 そして案の定、愚かな政治家が「政治的道義的責任」などと騒ぎ出し、国民生活のために議論しなければならない国会の審議時間を削るような事を言い出した。「国会で国民に説明責任を果たせ」と言うのである。そんな馬鹿な事を言う政治家が世界中にいるだろうか。「説明責任(アカウンタビリティ)」とは会計用語であり、国民から預った税金の使い道について「官僚には説明する責任がある」という意味である。
 前にも書いたが、アメリカのクリントン大統領には「ホワイトウォーター疑惑」と呼ばれるスキャンダルがあった。アーカンソー州知事時代に不動産業者に便宜を図って違法な献金を受けた疑惑である。事件が発覚した後に自殺者も出た。特別検察官が選ばれて捜査が開始された。しかしクリントン大統領に「議会で国民に説明しろ」などという声は上がらない。議会が喚問したのは検察官である。議会は行政府をチェックするところであるからそれが当たり前だ。説明責任があるのは政治家ではなく検察官僚なのである。それが日本では逆転している。
 日本の捜査機関は国会に呼ばれてもろくに答弁しない。「捜査中につきお答えできない」で終わる。サリン事件が起きた時、日本の警察は国会でそう言って答弁を拒否したが、同じ頃にアメリカ議会ではFBI、CIAが議会に喚問され、アメリカ国内でのオウム真理教の活動について捜査内容を証言させられた。そのビデオテープを自民党議員に見せたら「うらやましい」と言った。日本の国会は行政府に舐められているのである。
 「ホワイトウォーター疑惑」に関わったとされるヒラリー夫人は大陪審に喚問されて証言した。しかし議会には喚問されない。司法が追及している時に、議会が同じ事をやる意味はないし、議会にはそんな暇もない。ところがこの国では不思議な事が続いてきた。何かと言えば「国会で証人喚問しろ」と言うのである。それがどれほど意味のないバカバカしいパフォーマンスであるかを、政治家はイヤというほど見てきた筈だ。
 ところが今回も野党の党首クラスが揃いも揃って「証人喚問」などと騒いでいる。全く学習効果のない哀れな連中である。ロッキード事件以来続けられてきた「政治とカネ」のスキャンダル追及ほど民主主義政治の足を引っ張ってきたものはない。国民の税金の使い道を徹底して議論しなければならない予算委員会で、日本の政治は肝心要の事をやらずに政治家のスキャンダル追及に力を入れてきた。大衆に気に入られたいためである。
 下衆(げす)な大衆は権力者の凋落を見るのが何より楽しい。それが自らの生活を貶める事になるとは思わずに「やれ、やれ」となる。直接民主制であった古代ギリシアでは有能な政治家ほど大衆から妬まれて追放された。偉大な哲学者ソクラテスは愚かな大衆から死刑判決を受けた。ギリシアの民主主義は長く続かなかった。民主主義は厄介なもので、大衆が政治や裁判を直接左右すると民主主義は潰れるのである。それが歴史の教訓である。
 明治以来の官僚支配の背景にも官僚勢力とメディアによる大衆の扇動があった。政党政治家の原敬が暗殺され、反軍演説をした斉藤隆夫が衆議院から追放され、田中角栄が「闇将軍」となった背景にもそうした事情がある。
 小沢陳述はそうした過去にも触れつつ、検察権力の横暴と議会制民主主義の危機を訴えた。しかしそれに対するメディアの反論は、「検察が不起訴としたのに検察を批判するのは筋が違う。起訴したのは検察審査会だ」とか、「4億円の出所を言わないのはおかしい」という瑣末なものである。
 すべての問題の発端を作ったのは検察で、目的は小沢氏の政治的排除にあるのだから、そもそも不起訴にして大衆の扇動を狙っていた。従って乗せられた方ではなく乗せた方を批判するのは当然である。また自分の財布の中身をいちいち説明しなければならない社会とはどういう社会なのか。それが違法だと言うなら、言う方が違法性を証明しなければならない。それが民主主義社会のルールである。「政治家は公人だから」と言ってあらゆる責めを負わせるのは、国民主権を嫌う官僚の昔からのやり口である。
 ともかく初公判後の記者会見で小沢氏は検察とメディアに対し闘争宣言を行なった。潰れるか潰されるかの戦いを宣したのである。検察もメディアも引けないだろうが、不起訴処分にした検察は既に一歩後ろに退いており、前面に立つのは司法とメディアである。
 行政権力の手先だと世界から見られている日本の司法とメディアがこの戦いにどう対抗するのか。小沢氏を潰そうとすればするほど、民主主義の敵に見えてくるのではないかと私には思える。(
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「小沢一郎氏を国会証人喚問」の愚劣2011-10-20 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
国会証人喚問の愚劣 田中良紹の「国会探検」  
 新聞が民主主義の破壊者である事を示す論説を読んだ。10月17日付朝日新聞の若宮啓文主筆による「検察批判は国会でこそ」という論説である。
 初公判を終えた小沢一郎氏が記者から国会の証人喚問に応ずるかと問われ、「公判が進んでいる時、立法府が色々議論するべきでない」と語った事を批判し、「公判で語った激しい検察批判は、国会で与野党の議員たちにこそ訴えるべき」と主張している。
 この主筆は、国会がこれまで繰り返してきた証人喚問の愚劣さ、それが日本の民主主義を損ねてきた現実に目をつむり、証人喚問を「議会制民主主義」を守る行為であると思い込んでいるようだ。政治の現実からかけ離れた論説を読まされる読者は哀れである。
 国会の証人喚問が脚光を浴びたのは1976年のロッキード事件である。テレビ中継の視聴率は30%を越えた。喚問された小佐野賢治国際興業社主は「記憶にございません」を連発してそれが流行語になった。3年後のグラマン事件では喚問された海部八郎日商岩井副社長の手が震えて宣誓書に署名できず、喚問を公開する事の是非が議論された。
 そもそも証人喚問は国政調査権に基づいて行なわれるが、行なうには全会一致の議決が原則である。それほど慎重にすべきものである。容易に証人喚問が出来るようになれば、多数党が野党議員を証人喚問し、場合によっては偽証罪で告発できる。国民から選ばれた議員を国会が政治的に潰す事になれば国民主権に反する。民主主義の破壊行為になる。 
 また証人とその関係者が刑事訴追を受けている場合、証人は証言を拒否する事が認められている。つまり司法の場で裁かれている者は証人喚問されても証言を拒否できるのである。従って司法の場で裁かれている証人を喚問しても真相解明にはならない。真相解明はあくまでも司法に委ねられる。
 それではなぜ刑事訴追された者まで証人喚問しようとするのか。大衆受けを狙う政党が支持率を上げるパフォーマンスに利用しようとするからである。これまで数多くの証人喚問を見てきたが、毎度真相解明とは無縁の単なるパフォーマンスを見せられてきた。しかし大衆にとっては、いわば「お白洲」に引き出された罪人に罵詈雑言を浴びせるようなうっぷん晴らしになる。かつて証人喚問された鈴木宗男議員や村上正邦議員は喚問には全く答えず、ひたすら野党とメディアによる批判の儀式に耐えているように見えた。
 証人喚問には海部八郎氏の例が示すように人権上の問題もある。日本が民主主義の国であるならば証人の人権を考慮するのは当然だ。リクルート事件で東京地検特捜部が捜査の本命としていたのは中曽根康弘氏だが、野党が国会で中曽根氏の証人喚問と予算とを絡ませ、審議拒否を延々と続けていた時、中曽根氏が頑として喚問に応じなかったのは人権問題であるという主張である。
 野党と中曽根氏の板ばさみとなった竹下総理は証人喚問のテレビ撮影を禁止する事にした。そのため証人喚問は静止画と音声のみのテレビ中継になった。その頃、アメリカ議会情報を日本に紹介する仕事をしていた私に、自民党議員からアメリカではどうなっているのかと聞かれた。調べてみると、アメリカでは証人の意志で公開か非公開かが決まる。真相究明が目的なら非公開でも全く問題はないはずである。しかし証人が自分を社会にアピールしたければ公開にする。なるほどと思わせる仕組みであった。
 ところが日本では「真相究明」は建前で「本音はパフォーマンス」である。非公開になると証人喚問を要求した政党も、ここぞとばかり証人を叩きたいメディアも、うっぷんを晴らしたい国民も納まらない。「何でオープンにしないのか」、「それでは民主主義じゃない」と、滅茶苦茶な論理で見世物にしようとする。いつもその先頭に立ってきたのが民主主義の破壊者たるメディアなのだ。
 中曽根氏の抵抗で国会の証人喚問は静止画放送となった。民主主義国でこんなグロテスクな放送をする国があるだろうかと呆れていると、あちこちから批判されて再びテレビ撮影は認められるようになった。しかしアメリカのようにはならない。違いは公開か非公開かを決めるのが証人ではなく委員会なのである。なぜ証人の意志が無視されるのか。人権的配慮と民主主義についての認識がアメリカ議会と日本の国会では全く違う。
 この違いをうまく利用してきたのが検察であり官僚機構である。本来ならば政治にコントロールされるべき存在が、コントロールされずに、国民と一体であるはずの政治を国民と対立させる事が出来た。リクルート事件が顕著な例だが、違法ではない「未公開株の譲渡」を、朝日新聞が「濡れ手で粟」と報道して大衆の妬みを刺激し、次いで譲渡された政治家の名前を小出しにして大衆の怒りを増幅し、そこで「国民が怒っているのに何もしない訳にはいかない」と捜査に乗り出したのが検察である。メディアと検察が一体となって政治を叩いた。まるでそれが民主主義であるかのように。
 『リクルート事件―江副浩正の真実』(中央公論新社)を読むと、江副氏は検察から嘘の供述を強要され、その供述によって次代の総理候補であった藤波孝生氏やNTT民営化の功労者である真藤恒氏などが訴追された。この事件がどれほど日本政治を混乱させ、弱体化させたかを、当時政治取材をしていた人間なら分かるはずである。
 政治の弱体化は相対的に官僚機構を強化させる。野党が「ええ格好」する証人喚問と法案審議を絡ませれば、法案を吟味する時間はなくなる。官僚機構が作った法案は厳しくチェックされることなく通過していく。そうした事をこの国の国会は延々と繰り返してきた。国政調査や真相解明は建前で、パフォーマンスで大衆に媚びる政治がどれほど議会制民主主義を損ねてきたか、国民は過去の証人喚問の惨憺たる事例を見直す必要がある。
 朝日新聞の主筆氏は「検察や法務省権力が議会制民主主義を踏みにじったというなら、小沢氏は証人喚問に応じてそこで国会議員に訴えるべきだ」と述べているが、その主張はこれもアメリカ議会の人権や民主主義の感覚とかけ離れている。小沢氏の一連の事件でまず国会に喚問されるべきは小沢氏ではなく検察当局である。国民主権の国ならばそう考えるのが常識である。
 国民の税金で仕事をさせている官僚を監視し監督をするのは国民の側である。それを国民の代表である政治家に託している。その政治家に対して捜査当局が捜査を行なうと言うのであれば捜査当局には「説明責任」が生ずる。だから前回も書いたが、クリントン大統領の「ホワイトウォーター疑獄」で議会に喚問されたのは大統領ではなく捜査に当った検察官なのである。適切な捜査をしているかどうかが議会から問われる。
 小沢事件で国会が喚問を行なうなら、検事総長を証人に、なぜ選挙直前に強制捜査をする必要があったのか、事前に「検察首脳会議」を開いて決めたのか、巷間「若手検事の暴走」と言われているのは何故か、容疑の妥当性はどうかなどを国会が問い質せば良い。実際、西松建設事件が起きた直後にアメリカ人政治学者は検察こそ国会で「説明責任」を果たすべきだと指摘した。
 民主主義政治を見てきた者ならばそれは当然の反応である。「説明責任」を果たすべきは政治家ではなく官僚なのである。ところがこの時に検察は「すべては裁判で明らかにする」と言って国会での「説明」を拒否した。
 それならば小沢氏も裁判で明らかにすれば良い。証人喚問を求められる事自体がおかしい。それをこの国のメディアも国会議員も理解できない。ともかくこれは極めて政治的な色彩の強い事件である。従ってこの事件に対する反応の仕方で民主主義政治に対する姿勢が分かる。つまりリトマス試験紙になる。今回の朝日新聞の論説はそれを見事に示してくれた。この新聞は官僚の手先で国民主権を冒涜するメディアなのである。
投稿者: 田中良紹 日時: 2011年10月19日 22:08 *リンクは来栖 
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「衆愚の時代」予算の議論をしない予算委員会/参院の存在意義2010-10-29 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
  「衝突のビデオテープ」や「小沢氏の国会招致」を取引材料にするつもりだろうが、しかしいつまでこんな馬鹿馬鹿しい国会を続ける気でいるのだろうか。野党の自民党はかつての野党の馬鹿馬鹿しさを良く知っている筈だが、今では全く同じ馬鹿になろうとしている。それでは政権に復帰してもろくな政権になれる筈がない。国民が勘違いして再び自民党政権が出来ても「ねじれ」は変わらないから、安倍、福田、麻生政権と同じように所詮は短命の政権が出来るだけの話である。
 小沢元幹事長の証人喚問が取引材料として取り沙汰されているが、これまで予算委員会で行われてきた証人喚問がどれほど不毛なものであったかを議員を含めて国会関係者は今一度思い起こして貰いたい。これまでの証人はみな「刑事訴追されているので答弁は差し控える」と繰り返してきた。国会で疑惑解明など出来る筈がない事は何度も証明済みである。繰り返すが疑惑があれば司法の場で行えば良い話なのである。
 かつてリクルート事件で証人喚問を要求された中曽根元総理は頑として証人喚問に応じなかった。困った竹下総理が議院証言法を改正して映像の撮影を禁止し、中曽根氏に喚問に応ずるよう説得した事がある。そのため一時期「静止画像」という奇妙な形の証人喚問が行われた。私は世界に対して恥ずかしいと思った。(
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『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項(毒まんじゅう)/コメの自由化は今後こじ開けられる2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP)
TPP:反対請願の賛同議員(一覧) / TPP:参加反対集会にJAなど3000人2011-10-26 | 政治(経済/社会保障/TPP)

『スティーブ・ジョブズ』秘話 並みの経営書とは違う『洗練を極めれば簡素になる』という生き方

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「『スティーブ・ジョブズ』秘話 並みの経営書とは違う『洗練を極めれば簡素になる』という生き方」佐々木俊尚×井口耕二 前編
現代ビジネス2011年11月11日(金)
佐々木: 上下二巻、かなりの分量ですが、ものすごくおもしろくて、読みだすと止まらない良い本だと思います。これは、いつ原稿を見たんですか。
井口: 実は、何回かに分けて原稿がきているんです。上巻分くらいが7月の頭にきているんですね。その後8月の頭に残りの四分の三か三分の二くらいがきて、最後まで届いたのが9月の半ばです。
佐々木: ということは、7月の段階ではまだ全部書ききれていなかったんですかね。
井口: そうですね、その段階では「後ろのほうの章はまだ書けていないから」ということでした。
*「ジョブズはかなりいやな奴だとわかった」
佐々木: 当初は来年3月発売の予定でしたか。全世界同時発売というのは最初から決まっていたんですか。3月だったのが11月に繰り上がって、それがまた10月になったんですよね。それには何か事情があったんですか。
井口: 11月に繰り上がったのは、アメリカのいわゆるクリスマス商戦に間に合わせたいということでした。11月の半ばか月末に、ということでした。これは、7月、私が翻訳に掛かる段階でもう決まっていて、相当強行軍でやらざるを得ないということで進んでいました。最後の最後は、やはりジョブズが亡くなってしまったことで、アメリカが4週間前倒しにするということになりました。日本側は、さらに4週間前倒しになると、私だけでなく編集さんや校正さんなど後の工程の方も全員死ぬような思いだったと思います。
佐々木: 僕が読んだのはつい最近で、月曜日に本をいただいて、火曜日に大阪へ出張したので新幹線の中で読んで、下巻に関しては昨日受け取って昨日の夜から今朝に掛けて読みました。それだけ労力を掛けて作った割には2日間くらいで読んでしまったのが申し訳なく感じます。
井口: そのくらい一気におもしろく読んでいただけると、それがいちばんなので。
佐々木: ちょっと感想をお話ししますと、まず、ものすごく読みやすい本ですね。これは井口さんの翻訳が素晴らしいということもある。非常に平易な文章で、しかも技術的な部分についても、一般書を読んでいると「それは違うよ」と思うところがあったりするのですが、そういう部分がまったくありませんでした。われわれのようなITの業界にいる人間にも、非常にすらすら読めておもしろいと思いました。
 読んでみてわかったのは、やはり「ジョブズってかなりいやな奴だな」ということですね(笑)、正直なところを言えば。とくにここ数年、iPhone、iPadを展開して、なおかつ亡くなられたことでカリスマ視され、神話化されている部分があります。今ではまるで神様のような扱いになっていますが、上巻にはApple Iなんかを作っている頃の話が出ていて、二十代くらいの話を読んでいくと、本当に面倒くさくて大変な人だな、と。
 「これは耐えられない」と思ったのは、「菜食をしていれば臭いがしないから、風呂に入らなくても大丈夫だ」と思い込んでいて、臭くてたまらなかったというところです。まあ、極端な人ですね。それが最初に「おお、こういう人だったのか」と感じたところです。
 もう一つは、彼のビジネスのやり方って、ほかの人にとってほとんど参考にならないんじゃないかということです(笑)。
井口: ITは当たれば良いですけど、外したら会社を賭けちゃいますからね。
*普通の会社ならつぶれてしまう
佐々木: 昔から素晴らしい経営者の本っていっぱい出ているじゃないですか。そういう本を読むと、「そうだ、われわれもこうやって起業しよう」とか、「ビジョンを持ってマネジメントをちゃんとやって」というふうに、企業経営者やそれを目指している人たちが読んで、自分の将来の進路や会社の運営の仕方の参考になる。
 たとえばプレジデント誌なんかで「信長に学ぶ人生の切り拓き方」みたいな記事をよく採り上げていて、自分の人生や働き方の参考にするというケースが多い。この本に関しては、これを参考にできる経営者はほとんどいないんじゃないかと思います。あまりにも奇天烈すぎるというか、こういうやり方をしたらほとんどの会社は潰れるんじゃないかと思います。
井口: ただ、私が自分で訳していて思ったのは、私は個人事業者なんですが、個人事業の場合は参考になるかもしれないということです。個人事業では、手を広げたくても、労力としては人間が一人しかいなくて一日24時間しか時間がないのですから、できることは限られています。それで何をするのかを考えると、やることを絞り込むことしかないと思います。
 独自の「売り」がないとどうしようもないわけですから、絞り込んでいかざるを得ない。会社と同じようにいろいろなことをしようとする人もいて、それでもそれなりには回っていくんですけど、個人事業の形態で良い仕事ができる人というのは、業務を絞り込んでいる人なんじゃないかと思います。
*洗濯機は何を買うかで三日三晩議論
佐々木: ジョブズの場合は、それをAppleのような巨大企業のレベルでやったというのが怖ろしいな、すごいな、と思いますね。
 下巻のほうで、80年代に一旦Appleを追われたジョブズがNeXTをやったりピクサーをやったりして、最終的に90年代の後半になってAppleに戻ってくる。そのときのAppleの状況は惨憺たるもので、Macintoshのラインが十数種類出ていて、社員に「おまえの知り合いが買うと言ったらどれを奨めるんだ」と聞いても答えられない。とにかく種類がたくさんあってどれが良いのかわからない。
 そこで「もうそんなのはやめろ」と言う。「ノートとデスクトップでそれぞれプロ用とコンシューマ用を展開して、その4種類しか出さなくていいんだ」と言って絞り込む。あの辺のくだりはもう、美意識的に訴えてくるものがあります。非常にシンプルで美しい。
 元々「洗練を極めれば簡素になる」という言葉を二十代でApple IIを作っている当時に言っていて、そのやり方が生活まで含めて彼の人生の最終的なキーワードになっています。口絵に写真が載っていて、何にもない部屋でポツンと座っているんですが、それは家具が買えなかったからだというんですね。
井口: そうですね、ベストなものを買おうとすると買えない、ということみたいですね。中途半端なものを買うのはいやだと。
佐々木: 結婚した当時、洗濯機は何を買うかで三日三晩夫婦で議論したみたいな話も載っていますね。普通は「洗濯機なんてどうでもいいじゃないか」と思いますけど、そういうのにこだわってしまう人だった。
 すべてをどんどんシンプルにしていくというのは、今の時代に人々が感じることとすごく重なっている部分もあるんじゃないかと思います。大分前からノマドだとか言われていて、余計な仕事をどんどん減らしていって、たとえばビジネスランチとかビジネスディナーなんかくだらないからもうやめて、メールでいいじゃないか、その代わり付き合いたい人との付き合いを深めて良い人生を送ろうよ、とか。
 余計な荷物を減らそうということでは、たとえばPCや携帯電話だったら今までは鞄の中にガチャガチャいろいろ入っていたのが、そういうのはやめてノートパソコン一台と通信機器一台でいいじゃないか、と。私も仕事は極力余計な夾雑物を持たずにシンプルに暮らしていこうじゃないの、ということを言っているんです。それは、今多くの人が実感している方向性じゃないかと思います。
 ジョブズはそこを先駆的に実現してきたし、シンプルなものを求めるという感覚そのものが、今の時代にマッチしていて、そこが受け容れられた部分が大きいんじゃないかと思います。
 iPhoneやiPadが出てきたことでスマートフォン市場やタブレット市場が生まれ、韓国や台湾、日本のメーカーが同じようなものをandroidベースで作っているんですけど、見るとコネクタが山のように付いていたりしますね。やっぱりあれだけじゃダメだぞ、SDカードが入ったほうがいいよね、外部に映像出力できたほうがいいよね、というので、どんどん端子が増えていって、機能のほうも高機能化・多機能化していく。
 そういうのが出れば出るほど、ジョブズが作った機器のシンプルな美しさが際立って見える。彼はまったく時代とは関係なしにそういうことをやっているんだけれど、最終的に時代とマッチしてしまっているというところが、すごくおもしろいなと思いました。名刺を作るのにもすごくこだわったという話がありますね。NeXTの頃の話でしたっけ。
井口: そうですね。たとえば「Steven P. Jobs」の「P.」で「.」をどこに打つか、「P」の出っ張っているところの下に入るか出るかにこだわったということです。鉛活字だったら「.」は別の活字になるので「P」の外側にしか打てなかったんですが、ジョブズは「DTPなら中に追い込めるからもっと寄せたい」と希望して、ずいぶんデザイナーと激論を交わしたみたいですね。パッと見てわからない違いなんですが。
佐々木: 普通に考えると、そんなものにこだわるのは経営者のやることじゃないだろうと考えるのが一般的ですが、でもそこにこだわることこそが本質なのである、と。そこは「神は細部に宿る」という言葉通りなのであって、一種のミニマリズムというか、仏教の影響が大きいのかなと思います。前半でかなり仏教の話が出てきますよね。
*ヒッピーに由来するアメリカのコンピュータ文化
井口: いわゆる禅の修行をずっとしていましたからね。インドにも行っていますし、出家しようという話まであったというくらいで、福井の永平寺に行くとか行かないとかいう話もありました。「ビジネスの世界に身を置いていても禅の追求はできるから出家はやめておけ」と禅の師に諭されてやめたということですね。知野弘文さんと鈴木俊隆とお二人なんですけど、お二人とも日本で生まれて一人前のお坊さんになってから、アメリカの西海岸に渡って布教活動をされていた方ですね。
佐々木: そういうのを見ると、アメリカのコンピュータ文化の出自やオリジンがあの辺にあると実感しますね。よく言っていることなのですが、アメリカのコンピュータ文化はヒッピー由来で、日本のコンピュータ文化はおたく由来である、と。アメリカはジョブズなんですけど、日本はアスキーの西和彦さんで、かなりイメージが違うというか、あの西和彦さんが出家して頭を坊主にしてインドをさまよっているというイメージは浮かばないですね(笑)。
 ジョブズは元々そういう人で、1960年代にアメリカ西海岸でヒッピー文化が生まれて、ジョブズがスタンフォード大学のスピーチで語った例の「Stay hungry, stay foolish」という言葉も、元々アメリカの西海岸で作られた「生活を良くしていこう」みたいな趣旨の雑誌から採った言葉ですね。
井口: 「The Whole Earth Catalogue」という雑誌の廃刊号の裏表紙にあった言葉ですね。裏表紙に田舎道が続いている風景の写真があって、最後にその一言があるわけですから、あれが最後のメッセージなんですね。
*ビル・ゲイツはLSDをやったことがないからダメ?!
佐々木: いちばん最後がそのメッセージで、「ここから先は自分で歩いていきなさい」というイメージなんでしょうね。ああいう、自分たちの精神を自由に解放していこうという考え方の延長上で、60年代末期にはLSDのような幻覚剤と呼ばれる薬物が頻繁に利用されるようなこともあって、ジョブズも若い頃にLSDをやっていたと書いてありますよね。
井口: ビル・ゲイツなんかはLSDをやってないから凝り固まっちゃったんだ、なんて書いてありますね(笑)。佐々木: LSDを使うことによって日常生活とは違う感覚を得ることができて、その感覚が薬物をやめたあとも残っているから身になっているんだ、みたいなことを言っていますね。あまりそこを強調すると、薬物を奨めているような話になってしまうので微妙なところですが。
 そして、幻覚剤を使って精神を拡張するというのは、必ずしも60年代のアメリカ人が西海岸でやっていただけではなくて、メキシコやアメリカの先住民族が元々やっていたことで、人間の文明の中にはそういうやり方で精神を深めたり拡張するという文化そのものがあったわけです。その後継としてヒッピー文化があったという形だろうと思います。
 70年代に入ってからはそこにテクノロジーが流入してくるということで、今まで薬物によって精神を拡張していたのが、薬物の代わりにコンピューティングという新しいデジタルな装置によって自分たちの脳を拡張できるのではないかというふうに、徐々に文化が切り替わってきます。そこで、ヒッピー文化もパソコン文化もプレイヤーが同じという状況が生まれたのでしょう。だから、70年代初頭のパソコン文化を担った人たちの多くは、西海岸のヒッピー系の人たちが多かったということでしょうね。
井口: 一方で投資家は東海岸にいて、その辺の文化の違いで東海岸から見ると「コンピュータ会社の連中はわけがわからない」みたいなイメージがあったのだと思います。
*コンピュータは新しい自由を獲得するための手段
佐々木: そういう背景があって、コンピュータはわれわれの新しい自由を獲得するための手段なのだ、という思想がアメリカのコンピュータ文化の基盤に根強くあって、そこが日本とはすごく違う部分だと思います。日本ではなぜか、コンピュータというと精神を拡張するものというより、引き籠もって悪さをしているというイメージにされてしまっています。
 本当はそうではないはずで、アメリカでも日本でも使い方とかやっていること自体は変わっていないわけで、アメリカと同じように、われわれもコンピュータを武器にしてわれわれの精神を拡張していこう、ということをもう少しメッセージとして伝えなければならないかな、と思います。
 どうしても80年代、90年代にはそういう文脈で語られないまま日本がここまできてしまったというところに、僕は一種日本のコンピュータ文化の哀しさや悲劇みたいなところがあると思っていて、相変わらずアメリカ崇拝というか、アメリカには追い着けないというふうに、アメリカの下に従属して日本のコンピュータ文化があるような状況になっているように思います。
 実際にこの本を読んでみると、その体現者であるジョブズは二十代の頃にそういうことを強烈にやっていた人なんだなということがよくわかりました。インドへ行っていたというのはあまり知らなかったんですけど、そうだったんですね。
井口: ずいぶん長い間行っていたようですし、けっこういろいろな体験をしてきたようですね。
佐々木: インドから帰ってきたときは、向こうのお坊さんのような格好で頭をツルツルにして帰ってきたんでしょう。すごいですね。
井口: ジョブズの親が空港で待っていて、彼が横を通ったのに気づかなかったという話ですね。どこかにいるはずなんだけど、ときょろきょろしていたけど、わからなかったという話で、日灼けしていたのもあったようです。
佐々木: その頃にジョブズと知り合っていっしょに会社をやるようになった人にも後にけっこう離反する人がたくさんいて、その人たちが著者のアイザックソンのインタビューで「あのときAppleに残っていれば、今頃何十億も手にしていたかもしれないのに、後悔していませんか」と聞かれて、「いや、あのときあれ以上ジョブズといっしょにいたらおかしくなっていただろうから、これで満足しています」と応えている人が何人もいますよね。
井口: それはそれで正しい判断だったんじゃないかと思えるほど、いろいろ激しい逸話がありますからね。
以降後半へ。(近日公開予定)

「オリンパス」/損失を隠し、前任者の体面を汚さないようにするのが義務?/不正直は恥ずべきことだ

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オリンパスの恥ずべき偽り
JBpress 2011.11.11(金) Financial Times
 今から3週間前、オリンパスで起きた出来事は不可解だった。同社の英国人社長、マイケル・ウッドフォード氏が解任され、その後間もなく極めて異様な買収の詳細を公表した。
 何かがひどく間違っていたが、オリンパスがなぜ3件の小さな企業買収と馬鹿げたほど法外な顧問料で14億ドルを無駄にしたのかを理解するのは難しかった。
 今週は状況が少し明らかになったが、一段と不穏な事態になった。
 高山修一新社長は正式な謝罪として2度頭を下げ、1990年代までさかのぼる投資の損失を隠すために、取締役会内部で20年間にわたって会計操作が行われていたことを明らかにした。これらの損失は買収を使って償却されていたのだ。
*損失を隠し、前任者の体面を汚さないようにするのが義務?
 カメラ・医療機器メーカーであるオリンパスの前会長、菊川剛氏を筆頭に責任を問われている3人の取締役・監査役が、恥ずかしくない行動を取っていると思っていたと考えることはまだ可能だ。彼らは、失敗をこっそりと隠し、前任者たちの体面を汚さないようにすることが義務だと思ったのかもしれない。
 もしそうだとしたら(正確に何が起きたのか我々にはまだ分からないが)、彼らは間違っていた。正直に話していた方が、同社の投資家だけでなく、従業員、監査役、日本企業にとってもはるかに良かった。
 ところが実際には、彼らがオリンパスを危険なほど脆弱な状況に陥れ、事情を知っていたか義務を怠ったかのどちらかである他の取締役たちの信用も傷つけてしまった。
 明らかに似ているのは、1990年代末に「飛ばし」と呼ばれる取引でバブル崩壊後に負った損失を隠した日本長期信用銀行や山一証券のような金融機関だ。
 これらの企業は、毀損した資産を簿価でダミー子会社に移すことで、証券投資や融資でやらかした大失敗を隠蔽した。オリンパスは単に、それからさらに15年間ほど、ごまかしを引き延ばしただけだ。
*悪徳トレーダーと似た本能
 また、オリンパスの一件は、損失を出し、それを架空取引や秘密口座を使って隠蔽する銀行の悪徳トレーダーを連想させる。
 ベアリングズ銀行の悪徳トレーダーだったニック・リーソン氏は1990年代半ば、株価指数の日経225と日本国債を使った取引で、オリンパスが怪しげな買収に支払ったのとほぼ同じ額の損失を出した。
 1つの違いは、犯人とされる人物がオリンパスの取締役会の一員だったことだ。
 オリンパスも、損失を明らかにするよりも、それを隠すことが自らを救う唯一の方法だと考える悪徳トレーダーの本能を共有している。
 もしかしたら日本人が抱く強い廉恥心に、同社取締役がすぐにミスを認めず、逆に事態を悪化させてしまうという歪んだ効果があったのかもしれない。
 これまでの証拠から見ても、今回の出来事は類まれな不祥事であり、口をつぐみ、仕事を失わないようにするよりも、むしろ公表することにしたウッドフォード氏の判断が完全に正しかったことを示している。
*小説か映画のような共謀
 経営上層部におけるこれほどの共謀は通常、役員室の日常ではなく、悪徳企業を描くジョン・グリシャム氏の小説やハリウッド映画に出てくるようなものだ。
 今回の不正行為は、世界的に名高い内視鏡事業と有名なカメラブランドを持つ企業を危険にさらしている。
 オリンパスの株価は10月半ばから75%下落し、同社の時価総額は35億ドルの自己資本をわずかに超える水準まで減少。社債も格下げされた。
 菊川氏は、ウッドフォード氏がオリンパスの「社会的信用を貶めようとしている」と非難したが、実際に貶めたのは菊川氏自身である。
 エンロンの破綻や「レポ105」という粉飾決算手段を用いたリーマン・ブラザーズが示すように、会計スキャンダルは決して日本独自のものではない。
 それでも、オリンパスが認めた行為の規模と大胆不敵さは驚異的だ。それは、買収に過剰な金額を支払い、それを減損処理するという広く蔓延する習慣につけ込むことで損失を隠すという、しゃれた企業風刺劇であり、「顧問料」は特に独創的だった。
 だが、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の甘い基準は、オリンパスがこうした不正を働くのを嫌になるほど容易にした。
*不正を容易にした日本のガバナンスの甘さ
 15人の取締役のうち12人は同社の幹部か元幹部で、別に監査役会を持っているという安全装置は、責任を問われている3人組の1人、山田秀雄氏が監査役会のトップだったという事実によって機能しなくなっていた。
 一方、同社の外部の監査法人――2009年まではKPMG、現在はアーンスト・アンド・ヤング*1――は、今回のごまかしがなぜ続いていたのか、そして損失がロンダリングされていたと言われるケイマン諸島籍の投資ファンドの本当の目的をなぜ見抜けなかったのかという厄介な疑問に答えなければならない。
 日本にとっては、もっと大きな教訓がある。物事がうまくいかなくなった時に、問題の本当の深刻さを認めるよりも、むしろ「軟着陸」を企てることは、不信を生むということである。我々が今目にしているように、最終的に真実が浮かび上がった時には投資家が怖気づき、信頼の危機が起きる。
*1=KPMGの日本のメンバーファームはあずさ監査法人、アーンスト・アンド・ヤングは新日本監査法人
 筆者の同僚のジリアン・テットは、長銀の破綻に関する著書『Saving the Sun(邦題:セイビング・ザ・サン―リップルウッドと新生銀行の誕生)』の中で、長銀の役員たちは習慣的に、日銀が検査を実施する際、地下室のコンクリートのマンホールの中に都合の悪い資料を隠したと伝えている。
 それがさらに進んで、子会社を設立するようになり、子会社が不良債権を貯め込んでおくために使われるようになったという。
 多くの日本人はその結末に納得がいかなかった。長銀は米国のプライベートエクイティファンド、リップルウッド・ホールディングスが率いる投資グループによって、新生銀行という名の欧米流金融機関に変わった。だが、オリンパスの外国人投資家が今変革を迫っているように、長銀のごまかしが同社を攻撃されやすくしたのだ。
*恥ずべき不正直
 日本企業は、調和的な労働慣行について欧米に教えるものを持っている。だが、企業の取締役会は、幹部に目を光らせ、たとえ誰を困らせることになっても、規律が適用されていることを確実にするのが仕事だ。オリンパスの取締役たちは、代わりに自分たちを守った。
 徹底した掃除が必要であり、東京証券取引所から上場廃止にされるといった脅威にしっかりと対応できる新たな経営陣が必要だ。菊川氏は立派な意図を持っていたかもしれないが、不正直は恥ずべきことだ。By John Gapper
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オリンパス内部通報:「配転」逆転勝訴だが・・・2011-08-31 | 社会

TPP・オリンパス/世界は今度こそ「日本は終わった。これからアジアは中国だ」と受け止めるだろう

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「アメリカの陰謀論」に明け暮れるTPP問題、企業統治が問われるオリンパス事件ーー世界の投資家に見捨てられ日本経済のさらなる転落が始まる
2011年11月11日(金)長谷川幸洋「ニュースの深層」
 環太平洋連携協定(TPP)とオリンパス。これは一見、無関係のようだが、実は奥深いところで話がつながってくる。ともに日本経済に対して、じわじわと毒が回ってくるような打撃を与える可能性が高いのだ。
 誤解しないでほしいが「TPPの締結が日本経済にマイナスになる」と言っているのではない。そうではなく、日本がTPP交渉に参加を表明したとしても、実は参加できないかもしれず、そうなると一層、日本経済に打撃になる。そこを指摘したいのである。
 そう実感したのは、次のニュースが報じられたからだ。
*アメリカは「日本のTPP参加は迷惑」
  〈米下院歳入委員会と上院財政委員会の幹部を務める超党派議員4人は8日、オバマ政権に対し、日本が今週環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する意向を表明した場合、議会との事前協議なく早急に決断することがないよう要請した。議員グループが米通商代表部(USTR)のロン・カーク代表に宛てて書簡を送った。それによると、議員らは「日本が交渉に参加すればTPP交渉に新たな次元と複雑性が加わることになる。このため(米政府に対し)いかなる決断も下す前に連邦議会その他の関係者に相談するよう強く求める」と要請した。その理由として、同書簡は「日本は長い間、国内市場を意味のある競争から保護してきた」と指摘し、米国は日本政府が本気で市場を開放し、米自由貿易協定(FTA)が求める高い水準を満たす用意があるのかを十分確認する必要があるとしている。〉(ロイター通信、11月8日配信)
 これを読んで「やはりそうか」と思った。
 というのは先日、BS朝日の『激論!クロスファイア』に出演し米国務省の元日本部長、ケビン・メアと同席した際、メアは司会の田原総一朗の質問に答えて、こう言っていたからだ。
 「日本でTPP交渉参加の話が出たとき、ワシントンでは困っていた。というのは、日本が交渉に加わると、いろいろ条件を持ち出してくる。そうなると交渉の妨害になってしまうからです。私は『強い日本がアジア太平洋全体にとってもいいことだ』と主張して結局、日本を歓迎することになった」
 一部で言われたように、米国は日本に対して交渉参加を押しつけたわけではない。それは違う。それどころかまったく逆に、ワシントンでは「日本の参加は迷惑」と考える意見が出ていたのだ。なぜなら、抵抗勢力である日本が加わると、交渉全体がスピードダウンしてしまうからだ。
 先のロイター電はまさしく、そうした米国側の懸念を伝えている。これは超党派議員の動きだが、それを先取りするように、政府部内でも早くから日本の参加を懸念する意見が出ていた。メアはそれを抑えて、とりあえず日本を歓迎する方針でまとめていたのだ。
*アメリカはもはや日本を必要としていない現実
 だが日本が正式に交渉参加を求めれば、米国では議会の姿勢が重要な鍵になってくる。オバマ政権が歓迎したとしても、議会が超党派で反対するとなると、乗り越えるのは高いハードルになるだろう。
 もともと政府部内にあった慎重論が再び盛り返して「ここはしばらく日本の参加承認を先送りしよう」とならないとも限らない。
 もしも、米国があれこれと注文やら質問を繰り返して、承認を引き延ばすようだと、一方でTPP交渉自体は進んでいくので、日本は「手を挙げてはみたが、無視される」という最悪の事態に陥ってしまう。
 なぜ最悪かといえば、米国でさえも「もはや日本を必要としていない」という現実が赤裸々になってしまうからだ。
 それでなくても、いまでは国際社会で「日米欧」という言葉は完全な死語になっている。そんな3極の時代はとっくに終わり、世界の重心は「米欧中」あるいは「米中」の2極に移っているのが現実である。
 国民の生活水準を示す1人当たり国内総生産(GDP)でみても、日本は33,771ドル(2010年、推計)と先進国クラブである経済協力開発機構(OECD)諸国のうち、上から18番目に落ち込んでしまった。フランスやスペイン、イタリア並みである。かろうじて「先進国の一員」にとどまってはいるが、とてもトップクラスとはいえない。
 そんな中で「TPPに入りたくても入れない日本」の姿が浮き彫りになると、世界は今度こそ「日本は終わった。これからアジアは中国だ」と受け止めるだろう。
 世界情勢を先取りする産業である金融分野では、とっくの昔に中国が焦点になっていた。外資系金融機関は中国市場をにらんで香港やシンガポールに相次いで拠点を移し、いまでは事実上、東京市場は香港やシンガポール、上海の周辺市場(peripheral market)扱いされている。
 そんな認識が金融に限らず、ごく普通になっていくのは間違いない。
 野田佳彦首相は当初、11月10日午後に予定していた記者会見を11日に延期した。交渉参加を表明する意向と報じられていたが、いざとなったら迷いが出たのかもしれない。「1日、ゆっくり考える」のだそうだ。ここへきて「参加しない」と言い出すなら、野田という政治家の地金がそれまでだったという話になる。
 あるいは野田がTPP参加を表明したとしても、本当に交渉に加われるかどうかの正念場は、まさにこれからなのだ。
*粉飾決算はオリンパスだけなのか
 オリンパスの事件が象徴的なのは、内部告発したのが英国人社長だったという点である。しかも米英の主要紙が報じ、捜査当局が動き出してから、押っ取り刀で駆けつけるように日本の新聞や当局が動き始めた。
 日本の金融庁や証券取引等監視委員会、捜査当局がどたばたと動き始めたのも、英国人社長が動かぬ証拠を米英の当局に突き付けたからだとみれば、まさに「外圧によって事件が暴露された」といえる。
 ここでは「企業統治に無関心な日本」の姿が浮き彫りになっている。
 はたして、こうした粉飾決算はオリンパスだけなのか。それとも、もっと他に多くの企業も似たような粉飾をしているのではないか。欧米で日本企業に対する疑問がわき起こるのは当然だ。
 TPP参加をめぐって「米国の押しつけに屈してはならない」とか言っているうちに、米国政府が日本を棚上げしてしまう。あるいは世界の企業やファンドが「怪しげな日本」への投資を手控えるようになれば、どうなるか。答えはあきらかだろう。さらなる日本経済の転落が始まるのだ。(文中敬称略)
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「オリンパス」/損失を隠し、前任者の体面を汚さないようにするのが義務?/不正直は恥ずべきことだ2011-11-11 | 社会(経済)
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「霞が関の大魔王」勝栄二郎危険極まりなし/内閣に「大増税」へと舵を切らせている 2011-10-05 | 政治
 あっという間に、どじょう鍋にされたノダ 「霞が関の大魔王」勝栄二郎危険極まりなし 高橋洋一×長谷川幸洋
現代ビジネス2011年10月05日(水)週刊現代  
■しっかり増税、とにかく増税
長谷川 野田佳彦政権の布陣を見ると、見事な増税シフトですね。そして、この増税一直線政権のプロデューサー兼シナリオライターが財務省の勝栄二郎事務次官であることは、衆目の一致するところです。
高橋 要するに「陰の総理大臣」ということね(笑)。
長谷川 そこで今日は「勝栄二郎」を徹底的に解剖していこうと思うんですが、その前提として、野田政権の人事について触れておきたい。これはもう明らかな党重視ですね。政策決定の鍵を握る政調会長に前原誠司前外相を起用し、仙谷由人元官房長官を政調会長代行に据えた。さらに財務省OBの藤井裕久元財務相を党税調会長にした。
 野田政権は政策決定の前さばき段階で党がかなり重要な役割を果たすようにしたわけですが、これは民主党の中に反増税派ないし増税慎重派がいるから。それを押さえ込んで増税を実現するために、こんな重厚な布陣になったわけですね。
高橋 通常の政策決定プロセスは、まず政府で案を作り、それを党で揉んで、それから国会へ提出する。どこにいちばん力点を置くかというと、国会のねじれがなければ、政府か党のどちらかです。
 では今回はどうかというと、国会はねじれているけど、自民党はもともと増税賛成。だから、政府段階では財務省にとっての理想的な増税メニューを打ち上げておいて、党である程度レベルダウンするけれども、国会では自民党を巻き込んで、しっかり増税。こういう筋書きがもう決まっている。つまり、党レベルでの反増税圧力をどれだけ弱められるかがポイントなんです。だから布陣は党高政低。政府としては、目いっぱい高い球を投げるだけだから、財務官僚がやればすむことなんですよ。
長谷川 党重視にした分、閣僚人事は軽くなった。その代表が、財政のことをよく知らない安住淳財務相と、旧大蔵省OBの「過去官僚」古川元久国家戦略相。この2人は財務省が完璧にコントロールできる。そこで、もうひとつのポイントが勝次官による財務省人事になるわけです。
高橋 そう。内閣は軽量だけど、そこに送り込んだ財務官僚は重量級なんです。なにしろ勝さんは、官房副長官(事務)を取ろうとした。結果的に国交省の竹歳誠事務次官に落ち着きましたが、当初は前財務次官の丹呉泰健さん(読売新聞グループ本社監査役)の起用を本気で考えていた。
長谷川 丹呉副長官だと、あまりに財務省支配がミエミエだからねえ。でも、旧建設省出身の竹歳氏は、建設公共担当の主計官も経験した勝次官とはツーカーの仲で、一心同体みたいなものでしょう。
高橋 というより頭が上がらない。予算でお世話になった勝さんの意向通りに動くと思います。それから、主計局総務課長から局次長になったばかりの太田充氏を総理秘書官として官邸に送り込んだ。彼は保守本流である主計のトップランナー。正真正銘の重量級です。
 もう一つ驚くのは、蓮舫行政刷新担当相の秘書官に財務省課長の中堅クラスが行っていること。本来なら課長補佐の最終段階くらいの年次が就くポストですけど、そこに'88年入省組の吉井浩氏を送り込んでいる。
長谷川 蓮舫大臣の担当する行革とか公務員制度改革は官僚にとって重要なポイントだから、しっかり押さえておきたいという狙いですね。それに彼女は民主党のスター的存在で発信力もあるし、注目度も高い。
高橋 実は勝さんが彼女の秘書官に吉井氏を送り出したのは前回の大臣時代。その後、首相補佐官に格下げされても「補佐官補」という肩書でずっと密着させてきた。勝さんは蓮舫さんの利用価値を読んで、きっちりマークしてたわけ。
長谷川 '88年組と言えば、古川国家戦略相の同期。しかも、この期には自見庄三郎金融担当相秘書官の井藤英樹氏もいる。
高橋 古川国家戦略相は閣僚兼秘書官みたいなものだから(笑)、この「同期秘書官トリオ」は強力ですよ。財務省に入省すると一般的な省庁研修のほかに、3週間ぐらい寝食を共にする省独自の長期合宿を行う。ここで同期の結束が非常に深まり、よその役所とまったく異なる人的ネットワークになるんですね。
長谷川 なかなか見事だねえ、このあたりの勝次官の人事は。
■人呼んで「パー・ペット内閣」
高橋 さらに言えば、藤村修官房長官秘書官には'89年組で主計畑のエース候補・宇波弘貴氏をつけた。初入閣で官邸のことなど右も左もわからない官房長官は、秘書官の言いなりになるしかないでしょう。それに宇波氏は、安住財務相の秘書官になった小宮義之氏の同期。ここの連携も完璧です。
長谷川 加えて、内閣府政務官に就任した民主党の大串博志代議士も入省同期の財務省OBだ。
高橋 '83年組の太田首相秘書官を筆頭に、閣僚にこれだけの数の秘書官をはり付けておけば、財務省で内閣を切り盛りできますよ。はっきり言って、大臣なんか誰でもいい。口の悪い永田町の住人が言っていましたが、「野田パペット(操り人形)内閣」ならぬ「パー・ペット内閣」と呼ばれているそうです。
長谷川 財務省に飼われる愚かな閣僚たちか(笑)。
高橋 財務省風味のどじょう鍋と言う人もいる(笑)。
長谷川 財務省の本省人事も見ておきたい。意外だったのは、「10年に一人の大物」と呼ばれた斎藤次郎元大蔵次官の娘婿である稲垣光隆氏が主計局筆頭局次長から財務総合政策研究所長へ外されたこと。ここは、局長になれなかった人の上がりポスト。彼は'80年組のエースだったのに・・・・・・。
高橋 これも勝さんの深謀遠慮だと思います。斎藤さんは現在、日本郵政社長。今後、郵政株売却が増税額圧縮の材料として浮上する可能性がある。その際に、斎藤大先輩に遠慮なく増税路線を貫くには、娘婿が邪魔になるという計算でしょう。つまり、いくら優秀でも省益にそぐわなければ斬り捨てるという冷徹な判断をした。
長谷川 なるほど。その一方で、同期の佐藤慎一氏を官邸の内閣審議官から呼び戻して省内司令塔の総括審議官に据えた。主税局の主要課長を歴任した税制のトップランナーをこのポジションに起用した意図は明白ですね。
高橋 それに、省内トップエリートの登竜門である文書課長だった星野次彦氏を主税局審議官にしたし、主計の花形である公共担当主計官をしていた井上裕之氏を主税局税制一課長に起用した。これらの人事は完璧な増税シフトですよ。もうまるで、増税大魔王(笑)。
■マスコミの懐柔も得意です
長谷川 さて、その大魔王の経歴を見ると、'95年から'96年にかけて為替資金課長を務めていますね。ところが、実際は為替資金とは無関係の仕事をしていた。当時、橋本龍太郎政権の行政改革で大蔵省については財政と金融の分離が叫ばれていて、実は大蔵省抵抗部隊の裏司令塔が勝課長だった。「あの人は手ごわかった」と当時、官邸で行革を担当していた人物から聞いています。
 ちなみに為替資金課長になる前に内閣官房長官秘書官をやり、為替資金課長のあと主計局の企画担当主計官や文書課長といった、ど真ん中のエリート街道を歩んでいる。財務省の文書課長というのは、書類を扱うわけじゃなくて、要するに国会担当。予算委員会では必ず部屋の隅にいて、大臣にこういうメモを入れろとか、こう答弁させろとか、そういう指示を出す司令官ですね。
高橋 勝栄二郎という人は人心掌握がうまいんです。私の役人時代のことですが、5年も後輩で直接の部下でもない私のところに突然電話をかけてくる。ボソボソした声で「すまないけど、今度の日曜日に会えないかな」とか「ちょっと君の力を借りたくてね」とか言うわけですよ。で、指定された都内のホテルへ出向いていくと、省内の若手が何人か集まって自由闊達に議論していて、勝さんがじっと聞いている。そしてしばらくすると、その時の議論が省の政策として打ち出されたりする。若手にとっては、これが嬉しい。
長谷川 腰が低くて、他人に対して居丈高な姿勢をまったく見せないでしょう。私も安倍晋三政権時代に政府税制調査会の委員をしていて、舞台裏の会合で何度も勝さんに会いましたが、彼は総括審議官で超多忙な頃だったのに、絶対に遅刻しなかった。そして末席に座って、誰に対しても丁重に接する。
高橋 彼はしゃべり言葉が丁寧で、ゆっくりしているんですね。それで政治家やマスコミの記者にウケがいい。それと、こう言ってはアレですが、頭がキレすぎない(笑)。
長谷川 なかにはマスコミに居丈高になる官僚もいるけど、勝さんはまったく正反対。女性記者との会合も積極的にセットしていたみたいですよ。
高橋 ただね、言葉遣いが丁寧なのは、彼がドイツ育ちの帰国子女で、日本語が少し不自由だからなんです。発音も少しヘンで、電話でボソボソと「勝です」と言われると、「カツドン」に聞こえる(笑)。逆に書き言葉は、勉強して覚えたおかげか、妙に格調高い。
 結局、日本語が得意じゃないから、あまりしゃべらない。ときどきしか話さないから、自然と言葉に重みが出る。そういうタイプですね。
長谷川 先ほどから見てきたように、人事もうまい。
高橋 そう。論功行賞も考えていて、日曜日の会合などに出たら、ご褒美があるんですよ。上の人のお供で海外に同行することなんです。次官OBや天下ったエライ人はヒマでよく海外に行く。その際に必ずお付きの者をつけるんですが、勝さんは日曜日に呼び出した若手をうまくセットするんです。海外出張のお供で2週間も一緒にいれば、そのOBの覚えがめでたくなる。それは出世にも少なからず影響するから、結構なご褒美なんですね。出張同行の指名を受けた側も、ああ、これは勝さんのご褒美だなと分かります。こういうやり方が非常に心憎い。
長谷川 それで省内に勝ファンが増えていくわけか。
 ところで、内閣も省内も完璧なまでの増税シフトを構築した勝さんには、「剛腕・斎藤次郎の再来」という評価もある。剛腕・勝栄二郎は果たして、このまま増税路線を突っ走るのかどうか。
高橋 野田総理の代表質問への答弁に、その答えがありますよ。野党から「消費税増税の前に国民の信を問うべし」と問われ、総理は「実施の前に信を問います」と答えている。国民もマスコミも、納得しているようですけど、これは間違いなく財務省が仕掛けた罠です。
「増税前に信を問う」というのは、普通は増税の是非を総選挙で問うという意味ですよね。ところが「実施の前」だと、増税法案が成立して増税を行う前に選挙をするという意味になる。つまり、いま予定されている通りに来年の通常国会には消費税増税法案を出して可決成立させる。その後のしかるべき時期に信を問うことになるけど、そこで与党が勝とうが負けようが、法案が通っている以上、消費税は粛々と引き上げることになる。これが勝財務省のシナリオです。
■今度のジローはしたたかすぎ
長谷川 実施前に凍結法案を出して、増税を止める手もあるけど。
高橋 無理、無理。実施直前に総選挙を設定すれば、凍結法案を出す余裕はない。そういうスケジュール管理は、財務省のお手のものです。そのために優秀な人材を秘書官に送り出しているわけだし。それに、「ここで凍結すれば、経済が大混乱します」と政治家を脅すことだって平気でやる。
長谷川 確かに、橋本政権で消費税率を3%から5%に上げたときも、景気悪化が懸念されたのに、スケジュール通りに実施された。
高橋 そう、その挙げ句にデフレが深刻化して、税収まで減っていった。バカじゃないのって話。
長谷川 ただ、剛腕・斎藤次郎は細川護熙政権のときに、与党最大の実力者だった小沢一郎氏(当時・新進党幹事長)と組んで国民福祉税構想を打ち出して、頓挫した。しかも、その後の政権交代で与党に復帰した自民党に睨まれ、長く天下り先にも恵まれなかった。「二匹目のジロウ」も、やりすぎると同じ轍を踏む危険があるんじゃないの?
高橋 斎藤さんの場合は剛腕ゆえに根回しをあまりしなかった。そのため、ときの官房長官(武村正義氏)から「待った」をかけられたんです。つまり、総理の女房役である官房長官にすら声をかけていなかった。そして、その官房長官秘書官だったのが、若き日の勝栄二郎ですよ。
長谷川 なるほど。斎藤大先輩の失敗を間近で見ていたからこそ、官邸にも省内にも人材を張り巡らせ、用意周到に増税への布石を打っている。勝栄二郎は、「配慮の行き届いた斎藤次郎」ということか。
高橋 もう一つ忘れてはならないのが、メディアを使った国民の洗脳です。
長谷川 財務官僚にすり寄る「ポチ記者」問題ね。財務省が政府を実質的に動かしていることは、ちょっと深く取材をすればわかる。財務官僚を敵に回せばネタが取れなくなるから、記者たちは自ら官僚にすり寄っていくんです。その結果、新聞紙面には連日のように、所得税、法人税、相続税に環境税とあらゆる増税ネタが報じられることになる。財務省は「高めのつりダマ」を投げて、新聞記事になれば御の字。そのうちに国民はだんだんマヒしてきて、増税やむなしの空気ができあがる。これがいま起こっている現実ですよ。
高橋 人間って、与えられた情報でしかモノを考えられませんからね。本当は増税だけじゃなく、税外収入の道もあるのに、そっちには目がいかなくなる。まさに洗脳です。
長谷川 それがメディアを使った財務省の大衆戦略ですよ。そして、そんな財務省を動かしているのが、勝栄二郎である、と。
高橋 やっぱり霞が関の大魔王だ。
「週刊現代」2011年10月7日号より
<プロフィール>
 たかはし・よういち/1955年生まれ。'80年旧大蔵省入省。内閣参事官時代に「霞が関埋蔵金」を暴露し、脚光を浴びる。'10年より嘉悦大学教授。『この経済政策が日本を殺す』『官愚の国』など著書多数
はせがわ・ゆきひろ/1953年生まれ。東京新聞論説副主幹。財政制度等審議会臨時委員、政府税制調査会委員などを歴任。官僚が政治を操る実態を描いた『日本国の正体』で'09年度山本七平賞を受賞

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