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小沢一郎氏裁判/捜査報告書捏造 田代政弘元特捜検事は逮捕されるのか/捜査・調査、速やかに着手すべき

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小沢裁判「捜査報告書」を捏造 悪質特捜検事は逮捕されるのか
日刊ゲンダイ2011年12月22日
 「陸山会事件」の裁判で暴露された、元東京地検特捜部の田代政弘検事(44)による捜査報告書の「捏造」。捏造された報告書は、検察審査会(検察審)が小沢一郎元代表(69)を強制起訴する“決め手”になったものだ。
 強制起訴の議決書にも引用されている。田代検事が、“小沢起訴”に誘導したのも同然である。
 「取り調べ側が一方的に作成する『捜査報告書』の“捏造”は、たまに地方の警察で発覚して問題になるが、検察では異例です。まして今回は起訴、不起訴を判断する検察審の材料になったのだから問題は重大です」(司法ジャーナリスト)
 捜査報告書は立派な公文書。捏造すれば、場合によっては、虚偽公文書作成罪に当たる。村木事件で証拠改ざんした元検事の前田恒彦受刑者(44)と同じ構図だ。
 田代検事が捕まることはないのか。勝手に文書を作り、人ひとりを被告人にしたのだから、おとがめなしはおかしい。元東京地検検事の落合洋司弁護士はこう言う。
 「ポイントは虚偽の認識の有無です。最高検は、『故意ではない』という本人(田代検事)の説明を支持しているのでしょう。しかし、今後、(田代検事が)告発された場合、(最高検などが)捜査に乗り出す可能性は十分にあります」
 どの道、小沢に無罪判決が出て「国策捜査」批判が噴出すれば、前田受刑者と同様、最高検が組織防衛のために田代検事をいつパクってもおかしくない。田代検事はクビを洗っておいた方がいい。
 それにしても小沢裁判は何から何までおかしい。インチキ裁判はいい加減やめるべきだ。
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「小沢一郎氏 裁判」=検察官による「虚偽捜査報告書作成事件」 郷原信郎氏2011-12-21 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 「激変する環境、思考停止する組織〜郷原信郎が斬る」<Vol.16> 2011.12.19
陸山会事件を「平成の盧溝橋事件」にしてはならない〜虚偽捜査報告書作成事件の捜査・調査に速やかに着手すべき〜

 このところ、九州電力の問題、オリンパスの問題など企業をめぐる問題ばかり取り上げてきたこのコーナーだが、今回は、久しぶりに検察の問題を取り上げる。
 検察審査会起訴議決によって起訴されている小沢一郎氏の公判で、昨年の秋に表面化し、検察の信頼を失墜させた大阪地検をめぐる不祥事をも上回る重大な問題が、先週、明らかになったからだ。
 12月15日に東京地裁で開かれた公判において、元東京地検特捜部所属の田代政弘検事の証人尋問が行われ、昨年5月、同会元事務担当者の石川知裕衆院議員を保釈後に再聴取した際の状況について、石川被告が供述していない内容を捜査報告書に記載していたことが明らかになった。
 その報告書は小沢被告に対する起訴議決を出した東京第5検察審査会にも提出され、審査の資料とされ、議決書にも一部が引用されている。
 石川被告は昨年1月の逮捕後、田代検事の取り調べを受け、「小沢被告の了承を得て政治資金収支報告書に虚偽記入をした」との供述調書に署名した。そして、同年5月17日の任意の再聴取でも同様の内容の調書が作成され、同日付けの取調べ状況に関する捜査報告書とともに、検察審査会に捜査資料として提出された。この問題を、一面トップ、社会面トップで報じた16日付読売新聞朝刊によると、同報告書には、田代検事が小沢氏に対する報告とその了承について調査を録取した状況を質問したことに対する石川氏の供述として、以下のように記載されている。
 「私が『小沢先生は一切関係ありません』と言い張ったら、検事から、『あなたは11万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。小沢一郎の秘書という理由ではなく、石川知裕に期待して国政に送り出したはずです。それなのに、ヤクザの手下が親分を守るためにウソをつくのと同じようなことをしたら、選挙民を裏切ることになりますよ。』と言われたんですよね。これは結構効いたんですよ。堪えきれなくなって、小沢先生に報告し、了承も得ましたって話したんですよね。」
 ところが、そのようなやり取りは、石川被告が再聴取を隠し取りした録音記録にはない。
 同日の証人尋問で、その点について、小沢被告の弁護人から追及された田代検事は、「数日をかけて、思い出しながら報告書をまとめる際、勾留中のやり取りなどと記憶が混同した。虚偽ではない」と釈明した。
 田代検事の行為は、検察官の作成名義の捜査報告書という公文書に虚偽の記載をしていたということであり、虚偽性についての認識があれば、虚偽公文書作成罪という犯罪に該当する。
 虚偽公文書作成という犯罪は、形式上犯罪に該当する行為であっても、可罰性の幅は非常に広い。公文書の内容に事実に反する点があったとしても、それが官公庁内部に止まるものであれば、実質的な処罰価値はない場合も多い。しかし、本件のようにその報告書が司法作用に重大な影響を及ぼすというのは、最も悪質・重大な虚偽公文書作成の事実と言えよう。
 検察官の取調べをめぐる問題は、郵便不正事件でも、小沢氏の元秘書3人が起訴された政治資金規正法違反事件でも問題になった。被疑者が実際の供述しているのとは異なる内容の供述調書が作成され、威迫、利益誘導、切り違えなどの不当な方法によって被疑者に署名をさせるという方法が問題にされ、供述調書の請求が却下されるという事例が相次いでいる。
 被疑者の供述を内容とする捜査報告書をめぐる今回の問題は、検察官の供述調書をめぐる問題とは性格を異にする。供述者の署名があって初めて書面として成立する供述調書とは異なり、捜査報告書は、検察官側が一方的に作成できる書面だ。あくまで捜査の状況を報告するための文書であり、その分、被疑者の供述内容を立証する証拠としての価値は低い。一般の刑事事件においては、捜査報告書によって被疑者の供述が立証され事実認定が行われることはほとんどない。
 しかし、検察審査会の審査員という素人の判断との関係では、捜査報告書の取扱いも全く異なってくる。証拠の種別、価値等について前提となる知識が乏しい審査員は、捜査報告書であっても、被疑者の供述として書面に記載されていれば、それなりに信用できるもののように判断することとなる。
 今回虚偽であることが明らかになった捜査報告書は、検察審査会に資料として提出され、審査会の判断の根拠とされたものであり、それを意図して行われた疑い、つまり、虚偽の捜査報告書が検察審査会をだます目的で使われた疑いがある。そこに、これまで供述調書に関して問題とされてきたこととは異なる重大な問題があるのである。
 そこで、まず問題となるのは、報告書に虚偽の記載が行われたことが意図的なものであるかどうかである。
 田代検事は、勾留中の取調べのやり取りと混同したという「過失」を主張しているが、起訴後、保釈で身柄非拘束の状況での取調べでのやり取りを、その直後に捜査報告書に記載する際に、3ヶ月前も前の勾留中のやり取りと混同するなどということ自体が考えられない。
 また、通常、被疑者の供述が変遷したのであれば、変遷の時点で理由を聞いているはずであり、3ヶ月以上も経った、釈放後に、勾留中の供述の理由を尋ねるということも、検察官の取調べの経過として考えられない。そのような常識では考えられないような質問を自分が行い、石川氏がそれに答えているという状況を、田代検事が「自らの記憶」として報告書に書いたとは考えられない。
 しかも、石川氏の勾留中の取調べの大半が、水谷建設からの裏献金の受領の問題に費やされたこと、特に、勾留延長後の10日間は、田代検事から担当副部長に取調べ検察官が交代し、もっぱら水谷建設からの裏献金の問題について聞かれていたことは、同氏自身が語っているところである。政治資金収支報告書の虚偽記入について小沢氏に報告をした旨の石川氏の供述調書に関して、田代検事がそのような供述をした理由を尋ね、石川氏が説明する、というような「勾留中のやり取り」は、いったいどの時点で行われたのであろうか。そもそもその「やり取り」自体が存在していなかった疑いが強い。だとすると、石川氏が、「ヤクザの手下が親分を守るためにウソをつくのと同じようなことをしたら、選挙民を裏切ることになる」と考えて小沢氏への虚偽記載の報告を認めた、という捜査報告書の記述自体が「創作」であり、石川氏の供述を捏造した疑いが濃厚と言うべきであろう。
 田代検事の「過失」の弁解は明らかに不合理であり、意図的で、しかも実害を伴う虚偽公文書作成罪の嫌疑が相当程度認められるのであるから、検察として、捜査或いは内部調査に乗り出すのは当然であろう(「うその報告書―検察は経緯を検証せよ」と題する12月18日の朝日新聞社説でも、「なぜうその報告書が作られ、チェックもできなかったのか、経過を解明・検証して国民に説明する作業が欠かせない」と説明を求めている)。
 検察には、今回の虚偽公文書作成の問題について、今のところ何の動きもない。この件について何の調査も捜査も行わないとすると、前田検事の故意の証拠改ざんを行った事実を知りながら、同検事の刑事事件について捜査し、検挙するなどの措置をとらなかったとして上司の大坪・佐賀両氏を犯人隠避罪に問おうとしている検察の主張は、根底から崩れる。調査を行ったとしても、田代検事の「過失」の弁解を、そのまま受け入れるようであれば同様である。それによって、先日、検察官の論告・求刑が行われた大坪・佐賀両氏の公判にも重大な影響を与えることとなる。大坪・佐賀両氏の弁護側から、公訴取消を求められた場合、検察はどう反論するのであろうか。
 本件の虚偽公文書作成の問題に関して重要なことは、それが、検察審査会の議決に大きな影響を与えたこと、つまり、刑事司法作用を害する結果になったことだ。
 前田元検事の事件では、フロッピーディスクのデータの改ざんが行われたが、データが改ざんされる前の正しいデータを記載した捜査報告書が弁護側に開示され証拠請求されたことから、公判の審理には結果的に影響を与えなかったのに対して、今回虚偽が明らかになった捜査報告書は、検察審査会に提出され、小沢氏を起訴すべきとする議決書にも引用されており、まさに、検察審査会が小沢氏の犯罪事実を認定する議決に大きな影響を与えている。
 しかも、その取調べの際、たまたま、石川被告が、隠し録音をしていたことから、虚偽報告が発覚したが、もし、録音が存在していなかったら、田代検事は、今回のような小沢氏の公判での証人尋問で、捜査報告書の通りに取調べ時のやり取りを証言していたであろう。それは田代検事が録取した石川氏の供述調書の信用性を肯定する根拠にされた可能性が高い。
 さらに重大な問題は、この虚偽捜査報告書の作成が意図的なものであったとすれば、それが田代検事個人の判断で行われたものとは考えにくいということだ。
 先に述べたように、勾留中の被疑者が検察官の取調べに対して新たに行った供述について、その理由を、起訴後3ヶ月も経った後の取調べでわざわざ質問し、それについて捜査報告書を作成するなどということは、通常の検察官の取調べではあり得ない。何らかの上司の指示がなければ、このような捜査報告書が作成されることはないと考えるのが合理的であろう。
 そもそも、この政治資金規正法違反事件について、小沢氏は、検察の処分としては、嫌疑不十分で不起訴となっており、検察の組織としては、犯罪事実の認定について消極の判断をしている。通常であれば、検察審査会で起訴相当議決や起訴議決が出されて検察の処分が覆されることは、検察にとって極めて不名誉なことであり、検察審査会の議決を受けて行われる再捜査において、わざわざ、検察の不処分が検察審査会の議決で覆される方向で捜査を行うこと自体、担当検察官個人の行動としてはあり得ない。石川氏の供述調書の信用性を補強する虚偽の捜査報告書を作成してまで、検察審査会に小沢氏の犯罪事実を認めさせようとする行動は、田代検事個人の意思によって行われたとは考えられない。
 検察組織全体の方針に反して、検察審査会の議決を検察の処分を覆す方向に向け、それによって小沢氏を政治的に葬ろうと考える一部の集団が検察組織内部に存在していて、田代検事はその意向に従って動いたとしか考えられない。
 検察審査会の審査員が小沢氏との共謀を認める石川氏の供述調書を信用し、小沢氏に対する起訴議決を行うようにするため、田代検事に虚偽の捜査報告書を作成させる、という行為が、東京地検特捜部内で組織的な背景を持って行われた疑いが濃厚である。そうなると、検察批判を繰り返してきた私にすら信じられないことではあるが、陸山会事件では、特捜部という検察組織の中の一部が、小沢氏不起訴という検察の組織としての決定に従わず、検察審査会という外部の組織を活用して検察の処分を覆させようとする「暴発」したと見ざるを得ないのである。
 田代検事の証人尋問の翌日の12月16日の公判で、証人として出廷した前田元検事が、「主任検事から『この件は特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢をあげられなければ特捜の負けだ』といわれた」「検察が不起訴と判断した資料として検審に提出されるもので、証拠になっていないものがある」などと証言し、東京地検特捜部の陸山会事件捜査を厳しく批判した。証拠隠滅事件で実刑判決を受けて受刑中の前田元検事は、特捜部の問題とは利害関係がなくなっており、その供述の信用性を疑う理由に乏しい。そのような前田検事による、陸山会事件の捜査の内幕の暴露も、その捜査に一層疑念を生じさせるものとなった。
 昨年秋に表面化した問題は、大阪地検が中心だったが、今回の問題は特捜検察の本尊とも言える東京地検特捜部の問題だ。それだけに、特捜検察は、まさに、存亡の危機と言うべき状況にある。
 陸山会事件について小沢氏を起訴すべきとする検察審査会の議決は、政権交代によって成立した鳩山政権を退陣に追い込む大きな要因となり、その後の二度にわたる民主党代表選での争点を小沢氏の「政治とカネ」問題に集中させた。それ以降、反小沢の民主党主流派と小沢派との間の泥沼の党内対立によって、民主党は国民の支持を失っただけでなく、深刻な政治不信を招き、日本の政党政治は、もはや崩壊に近い状態とも言える一方で、東京地検特捜部の小沢氏に対する一連の捜査への対抗意識も動機の一つとなって、大阪地検特捜部が無理に無理を重ねた郵便不正事件は、村木氏の冤罪、証拠改ざんの発覚という最悪の結末となり、特捜部長、副部長の逮捕という異常な事態まで引き起こして検察の信頼は失墜した。他方、その発端となった小沢氏に対する東京地検特捜部の捜査も、不当な取調べによる供述調書の請求却下、そして、今回の虚偽報告書の作成問題と次々と問題を露呈し、検察への信頼は地に堕ちた。国家の最も枢要な作用と言うべき刑事司法の中核を担う検察は、今や危機的状況にある。
 このように、社会全体が、そして、検察という一つの権力組織が泥沼の状況に追い込まれていく契機となったという意味で、陸山会事件は、日本軍という権力組織、そして、日本という国が「日中戦争」の泥沼へと引きずり込まれていく契機となった「盧溝橋事件」と似ているとの見方もできよう。
 日本軍側、中国側のいずれが仕掛けたものであるのかについて、様々な見方の違いがあるが、いずれにしても、盧溝橋事件が、何者かの意図によって、予期せぬ軍事衝突が引き起こされ、それが日中戦争の引き金になっていったことには、ほぼ疑いがない。
 それと同様に、陸山会事件の検察審査会の起訴相当議決、起訴議決が、刑事司法関係者の予期せぬものであり、それが、その後の日本の政治、社会、そして検察組織に重大な影響を生じさせていったことは明らかである。
 歴史のベールに包まれた盧溝橋事件の真相を解明することは、今となっては極めて困難であろう。しかし、その後の日本の政治、社会に重大な影響を与えた検察審査会での起訴議決という「民意」の作出に大きく影響したと思われる虚偽の捜査報告書作成事件が、意図的なものであったのか、組織的背景があったのかを、捜査又は調査によって解明することは決して困難なことではない。捜査又は調査にただちに着手し、陸山会事件の検察捜査の真相を明らかにすることが、日本の社会を、そして、検察を救う唯一の道である。
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小沢一郎氏裁判 第9回公判〈前〉/証人 田代政弘検事「特捜部は恐ろしいところだ」=報告書に虚偽の記事2011-12-15 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 弁護人「平成22年5月17日の取り調べで、あなたは捜査報告書を書いていますね」
 証人「書きました」
 弁護人「何日に書きましたか」
 証人「5月17日に書き始めまして、何日かかけて完成させたと思います」
 弁護人「何ページの報告書ですか」
 証人「5、6ページだったでしょうか」
 弁護人「あなたが書いたものでしょう」
 証人「5、6ページか、もう少し多い10ページだったか。いずれにしましてもそれくらいだったと思います」
 弁護人「それを何日もかけたのですか」
 証人「別の仕事もしながら、合間、合間に作成しましたので…」
 弁護人「中身は覚えていますか」
 証人「だいたいは把握しています」
 弁護人「1ページ目にあなたの署名と押印があるが、間違いありませんか」
 証人「はい」
 弁護人「東京地検特捜部長あてになっているが」
 証人「そうです」
 《続いて、男性弁護士は捜査報告書の中身を示す。石川議員は11万人の有権者の投票を受けて当選したが、大半は「小沢一郎の秘書」というのではなく、個人を信頼して投票したはずだと、○○検事に言われたことを契機に、調書のサインに応じた−とする内容が具体的なやり取りとともに記載されている。だが、実際の録音にはこうしたやり取りは残っていない》
 弁護人「やり取りがないのに、どうして(捜査報告書には)記されているのですか」
 証人「やり取りがあったと認識して書いた」
 弁護人「実際のやり取りと異なるのが、記載されたことですか」
 証人「この日の取り調べを一言一句記載したのではなく、思いだし、思いだし記載した。拘留中に話したことや、保釈後に話したことの記憶が混同していたと思う」
 弁護人「もう一度聞きますが、5月17日から数日で書いたのですね」
 証人「はい」
 弁護人「5月17日には、どこまで書いたのですか」
 証人「それは記憶にはありません」
 弁護人「虚偽の捜査報告書を書いたのではありませんか」
 証人「そうではありません」
 《続いて、弁護人は○○検事が石川議員に「(虚偽記載を認める供述を覆し)逆の供述をすれば、火に油を注ぐことになる」などと話したことを追及していく》
 弁護人「(任意聴取の際には)こう伝えたことがありましたね」
 証人「はい」
 弁護人「繰り返し述べましたね」
 証人「それは、石川さんが従前通りの主張だといいながら、実際に調書のサインの段階になると、『4億円を隠すつもりはなかった』などと覆す。その中で何度かやり取りがあった」
 弁護人「何のために捜査報告書を作っていたのですか」
 証人「調べが終われば、作るように、と指示されていました」
 弁護人「指示はだれからか」
 証人「主任検事です」
 弁護人「あなたは、何日かかけて作るうちに、記憶が混同して、やり取りのない内容を記したということでしたね」
 証人「かいつまんで言えばそうです」
 弁護人「これが検察審査会の小沢さんの起訴議決にも影響を与えた可能性があったと分かっていましたか」
 証人「協議の内容については、分かりません」
 弁護人「可能性の話ですよ」
 証人「可能性の話ならば…」
 《男性弁護士は、検察審査会の議決の理由に、捜査報告書の内容を挙げている点を紹介し、追及していく》
 弁護人「理由に捜査報告書の内容が挙がっていることは認識していましたか」
 証人「議決自体は見ていないが、報道レベルでは知っていました」

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田代政弘検事 ウソの捜査報告書作成=検察審査会「起訴相当」議決に影響/小沢一郎氏裁判 第9回公判2011-12-16 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
小沢一郎氏裁判 第10回公判〈前〉/前田恒彦元検事「上司から『特捜部と小沢の全面戦争だ』と言われた」2011-12-16 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
小沢一郎氏裁判 第10回公判〈後〉前田恒彦元検事「私が裁判官なら小沢さん無罪」「検察、証拠隠しあった」2011-12-17 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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「集団強姦罪」/大阪地裁 水島和男裁判長 無罪事例など

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集団強姦罪2被告に無罪判決…被害者供述に疑問
 集団で女子高生に暴行したとして集団強姦ごうかん罪に問われた29歳と23歳の男性被告に対し、大阪地裁(水島和男裁判長)は21日、「被害者の供述の信用性に疑問が残る」などとして、いずれも無罪(求刑・懲役6年、同5年)とする判決を言い渡した。
(2011年12月21日20時02分 読売新聞)
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「大阪母子殺害事件」差し戻し審初公判 大阪地裁 水島和男裁判長2011-10-20 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 大阪母子殺害:弁護側、改めて無罪主張 差し戻し審初公判
 大阪市平野区の母子殺害放火事件で、殺人などの罪に問われた大阪刑務所刑務官の森健充(たけみつ)被告(54)=休職中=に対する差し戻し審の初公判が20日、大阪地裁(水島和男裁判長)であった。検察側は「被害者の生活状況を知る近しい者の犯行で、その機会があるのは被告だけだ」と述べ、改めて有罪を主張。弁護側は事件当日にマンションを訪れていないとして無罪を訴えた。
 検察側は事件翌日に現場マンションの階段踊り場の灰皿から採取した吸い殻72本のうち、DNA型鑑定で1本を森被告のものと断定。この日の審理でも「被告は事件当日の02年4月14日、現場のマンション階段踊り場の灰皿に吸い殻を捨てた」と述べた。
 最高裁は吸い殻が変色していたことから事件以前に捨てられた可能性があるとし、無期懲役とした1審・大阪地裁判決、死刑とした2審・大阪高裁判決の認定を事実誤認としたが、検察は「短時間で変色することもある」と強調した。
 一方、森被告の靴の中から採取した犬の毛を新証拠として提出し、DNA型鑑定の結果、被害者宅の犬の毛の可能性があると主張。更に、森被告自身が捜査段階で描いた現場室内の図面にある五月人形のかぶとは事件当日に飾られたものだとして、被告がその日に現場へ行ったことは明らかだとした。
 これに対し、弁護側は吸い殻について「被告が被害者夫婦に自分の携帯灰皿を渡したことがあり、被害女性が事件より前にその中の吸い殻を踊り場の灰皿に捨てた可能性がある」と反論。「あまりにも早く被告を犯人と絞り込みすぎた。関係者へのアリバイ捜査が十分ではない」と指摘した。
 また、最高裁が鑑定を促した残りの吸い殻71本が誤廃棄されたことに触れ「これこそが被告の無実を証明する機会だったが、吸い殻は消えた」と述べた。【苅田伸宏、村松洋】毎日新聞 2011年10月20日 11時42分(最終更新 10月20日 14時16分)
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寝坊で開廷35分遅れ…裁判長ザンゲ
裁判長の寝坊で開廷が遅れ、裁判員が約35分間待ちぼうけを食わされるという珍事が8日、大阪地裁であった。
 前代未聞の事態は、殺人未遂罪などを審理する裁判員裁判の法廷で発生。開廷予定時刻の午前10時、検察官と弁護人が所定の位置に着席しても、裁判官や裁判員が姿を現さなかった。
 地裁職員から「30分ほど遅れます」と案内があり、傍聴人らはいったん、退廷した。
 異例の「開廷時間延期」の理由は、水島和男裁判長の寝坊だった。まさかの「法の番人」の遅刻により、裁判員も待合室で待機を余儀なくされた。
 ようやく、同10時35分になって裁判長と裁判員が入廷し、裁判がスタート。
 水島裁判長は、着席すると気まずそうに「開廷が遅れましたが、わたしの個人的な事情です。今後はこういうことがないようにしたいと思います」とざんげ。
 地裁は、理由を「寝過ごしたため」としたが、裁判長本人は、さすがに法廷内の空気では言い出しにくかったのか「個人的な事情」という守備範囲の広い表現で幅を持たせていた。
 審理そのものは順調に進行。水島裁判長は、途中の休廷時にも「すみませんでした」と謝罪を繰り返し、証拠調べを進めた検察側に「もしかして、急いでやってくれました?」と声をかけていた。
(スポーツ報知2009/12/9)
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死亡事故の被告に無罪 「事故回避できず」 大阪地裁
(asahi.com 2006年10月26日14時22分)
 大阪府門真市の交差点で03年、信号無視の車と衝突して2人を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた会社員男性(35)=同府豊中市=の判決が26日、大阪地裁であった。水島和男裁判官は「男性の車は制限速度を超えていたが、仮に速度を守っていても信号無視の車との事故を回避できる可能性はなかった」として無罪(求刑禁固1年6カ月)を言い渡した。
  判決によると、男性は03年2月16日未明、門真市内で乗用車を運転中、制限速度を約20キロ超える約80キロで交差点に進入。右方向から赤信号を無視して走ってきた別の乗用車と衝突し、この車の会社員2人が死亡した。男性は04年12月に在宅起訴されていた。
 判決は、科学警察研究所の鑑定結果などから、死亡した2人の車が速度31キロで赤信号を無視して交差点に入ったと指摘。「男性が速度を守っていたとしても、2人の車を発見した時点ですでに急ブレーキをかけて事故を回避できる状態ではなかった」と判断した。

ようやく始動の小沢一郎/小沢憎しで凝り固まっている法務・検察官僚は強引に有罪に持ち込むかもしれない

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ようやく始動した小沢一郎
日刊ゲンダイ2011年12月23日
野田政権は自民と同じ 小沢はマニフェストに戻る
<歴代自民党政権よりはるかに劣る無能内閣>
 9月に裁判がスタートしてからというもの、一時、おとなしかった小沢一郎・元民主党代表がようやく、精力的に動き始めた。
 「遅すぎるよ!」と噛みつきたくはなるのだが、とはいえ、そのタイミングや影響力はさすがだ。
 11月ごろから、野田政権に対する批判を強め、今月21日には106人もの国会議員を集めて消費増税に反対する大勉強会を立ち上げた。これまで3つに分かれていた小沢グループを統合したもので、入会申込者も含めると総勢136人になる。
 「野田首相はビビったと思いますよ。民主党所属の国会議員408人の3分の1になるし、60人が団結していれば、野党が不信任案を出した場合に可決できる。その意味で、3桁の勢力を押さえれば、ゆうゆうキャスチングボートを握れるのです」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)
  しかも、暮れも押し迫り、野田は「消費増税を含む一体改革」の民主党案をまとめるために追い込まれている。そこへドンピシャのタイミングで、大軍勢を率いた小沢が「反対」のノロシを上げたのである。
  野田政権はもうグラグラで、素案の先送りや政府案と民主党案と切り離し、はたまた、あいまい表現でごまかす案まで議論百出で、右往左往。それでも野田は年内決着にこだわっているから、どうなるか見モノだ。できなきゃ求心力は完全消滅だし、強引に突っ込めば、世論は怒り、党内は騒然となる。野党は安心して倒閣へ。ただでさえ、問責閣僚を抱えて通常国会は火ダルマ必至のドジョウは、ニッチもサッチもいかなくなる。
 「もはや末期症状ですよ。疲れ切っている野田首相は最近、官僚の報告を聞いている時に居眠りしてしまう場面が増えている。能力的にも体力的にも限界が近づいている証拠です」(官邸事情通)
 周到な小沢はそれを見越していた。満を持して行動を再開したのである。
 小沢周辺によると、野田への見切りは早かったようだ。ジャーナリストの渡辺乾介氏が言う。
 「野田首相は人事で挙党一致のパフォーマンスをやりましたが、基本的には菅政権の政策を引き継ぐ反マニフェストの裏切り者政権であることには変わりがない。そういう政権の本質はとっくに見抜いていたはずです。しかし、臨時国会中は復興関連の法案を通さなければいけないので、待った。水面下で力をためて、臨時国会後に動き出したのです。新聞・TVは裁判で身動きできない小沢氏に対して、“求心力の低下”とか書いていましたが、ピント外れもいいところ。それがよく分かったのではないですか」
  財務省の言いなりで増税路線をひた走る野田政権は、民主党のマニフェストの対極に位置する政治家だ。つまり、自民党政権みたいなものだが、違うところがひとつだけある。歴代自民党政権よりもはるかに実務能力が落ちることだ。
 「だって、臨時国会の法案成立の割合は3割くらいなんですよ。それも通ったのは復興関連ばかり。復興がなければ、ほとんどゼロです。国対がまったく機能していないせいで、恐らく、審議日程のカレンダーも描ききれていないのでしょう。こんな政権は前代未聞です」(永田町事情通)
  法案もマトモに通せないような無能政権だから、ますます、官僚に頼る。代わりに「消費増税」を押し付けられて、狂気の道をひた走る。それが野田政権の正体だ。
  民意にも見放され、党内からも総スカンの野田に対し、野党が協力するわけがない。つまり、この政権は必ず近く瓦解する。そんな政権とあろうことか、消費増税で歩調を合わせるのか。
  小沢周辺は所属議員に対し、こう説得をしてきたはずだ。賛同が広がったのは、当然のなりゆきなのである。
<無罪の可能性が高まったのも大きい>
 前出の渡辺乾介氏は「検察審査会によって強制起訴された裁判の展開も大きかった。これまでの証言によって、無罪の可能性が大いに強まった」ことも指摘した。
  前田恒彦・元検事は裁判で「(検察が描いていた小沢への)ゼネコン献金は夢物語。検察幹部の妄想だった」と言い切った。同じく田代検事は石川知裕衆院議員への聴取で、事実と異なるやりとりを調書に記載したことを認めて、騒然となった。さすがに小沢に批判的だった大メディアも無罪を想定し、軌道修正を始めている。
  ま、それでも小沢憎しで凝り固まっている法務・検察官僚は強引に小沢を有罪に持ち込むかもしれない。だから、小沢は来年4月の判決を待たずに行動に出た。そういうことだ。
 「小沢氏は一時、離党も視野に入れたと思います。しかし、野田政権のテイタラクを見て、やめた。自分たちが民主党の本家である、向こうが出て行け。こんな思いだと思う。マニフェストを錦の御旗にし、正面から挑む主戦論に切り替えたのだと思います。野田政権に民主党の原点回帰を迫り、代表選で勝負を挑む。それでも野田政権が消費増税に突っ走るのであれば、野党の不信任案に同調することもあり得る。その場合は民主分裂、政界再編選挙になります」(政治評論家・浅川博忠氏)
  おそらく、政治は年明け早々、大混乱になるのだろうが、それで政治が少しでもマトモになってくれるのであれば大歓迎。小沢にはとことん、暴れて欲しい。
...................
〈来栖の独白〉
>ま、それでも小沢憎しで凝り固まっている法務・検察官僚は強引に小沢を有罪に持ち込むかもしれない。
 私も、そうなるのではと憂慮している。辛い。正義ではなく、メンツや利権が優先する「世の中」だから。
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小沢系勉強会[新しい政策研究会]の出席者一覧/小沢一郎氏 冷温停止宣言に「永久に水かけ続けるのか」 2011-12-22 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
「小沢一郎氏 裁判」=検察官による「虚偽捜査報告書作成事件」 郷原信郎氏2011-12-21 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
小沢一郎氏裁判 第10回公判〈後〉前田恒彦元検事「私が裁判官なら小沢さん無罪」「検察、証拠隠しあった」2011-12-17 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
小沢一郎氏裁判 第9回公判〈前〉/証人 田代政弘検事「特捜部は恐ろしいところだ」=報告書に虚偽の記事2011-12-15 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 八ツ場ダム建設正式決定=公約ほご、批判不可避−野田政権
 政府・民主党は23日、野田佳彦首相も出席して首相公邸で三役会議を開き、八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設継続を正式決定した。同党は衆院選マニフェスト(政権公約)に建設中止を明記、政府も政権交代後、いったんは中止方針を打ち出したが、撤回した。党側は2012年度予算案への本体工事費の計上に反対するものの、最終判断は政府に委ねるとして建設容認に転じた。
 ただ、一連の調整過程では、反対論を強硬に展開した前原誠司政調会長と政府の乖離が浮き彫りとなった。関連予算の計上に「党として反対」しながら建設を認める対応も分かりにくく、野党の厳しい追及は避けられそうにない。「コンクリートから人へ」と掲げたマニフェストの主要項目をほごにしたことへの批判も免れず、首相の政権運営にも影響しそうだ。(時事通信2011/12/23-20:14)
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<八ッ場ダム>政府・民主三役会議で建設再開を正式決定
(毎日新聞 12月23日 20:15)
 政府・民主三役会議が23日、首相公邸で開かれ、八ッ場(やんば)ダム(群馬県)の建設再開を正式に決定した。民主党側はダム本体工事費の12年度予算案への計上に反対したが、最終決定は政府側に委ねることを容認した。これにより、民主党の09年衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉公約だった八ッ場ダムの建設中止は正式に撤回されることになり、主要公約はことごとく未達成に追い込まれた。
 会議には、政府側から野田佳彦首相、藤村修官房長官、党側から輿石東幹事長、前原誠司政調会長、樽床伸二幹事長代行らが出席した。
 前原氏は「予算案に計上するなら党として反対する。閣議決定させることはできない」と反発しており、党として本体工事費の計上に反対する意向を改めて伝えた。輿石氏は「政調会長一人に責任を負わせるわけにはいかない」と前原氏に同調、樽床氏も再開反対の意向を伝えた。
 ただ、政府側は22日に示した官房長官の裁定に沿って進める方針を譲らなかったことから、党側が折れ、最終決定は政府側に委ねることになった。前田武志国土交通相は22日に建設再開方針を既に地元自治体などに伝えており、党側がこれを事実上追認した。
 予算の執行にあたっては裁定を踏まえることも確認した。裁定は(1)利根川水系の河川整備計画を策定(2)建設予定地の生活再建法案の次期通常国会への提出を目指す−−の2点を踏まえて判断するとしているが、2点は建設再開の前提ではなく、国交省は早期に建設を再開する方針とみられる。【野口武則、青木純】
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板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
野田佳彦首相が「八ッ場ダム建設継続」を決断、米国の要請に応じ、米建設業に門戸開放
2011年12月23日 00時51分18秒 | 小沢一郎「15年戦争」
■民主党がマニフェストに掲げてきた「コンクリートから人へ」は否定されたのか。やはり既定方針通り「八ッ場ダム建設継続」が決まった。「コンクリートから人へ」が、仮に正しいとしても、当初反対していた地域住民を長年かけて説得し、地域住民を立ち退かせて建設を進め、後は「本体工事」のみとなっていたにもかかわらず、これを政権交代したからといって、中止するのは、無慈悲であり、傲慢であり、暴力的であった。「コンクリートから人へ」というのなら、本来は、新しい法律が出来たときと同様に「不遡及の原則」を適用すべきであった。
 すなわち、新政策の実施は、政権交代した以降に適用すべきであり、それ以前に決定されて、実施中の事業計画には、原則適用しない。縮小するくらいが、せいぜいである。だから、前原誠司政調会長が2009年9月16日、鳩山由紀夫内閣の国土交通相(沖縄及び北方対策担当兼務)に就任して、いきなり、「八ッ場ダム建設中止」を宣言したのは、基本的に間違いであったというほかない。この意味で、野田佳彦首相指導の下、前田武志国土交通相(羽田孜派、京都大工学部卒業、同大学大学院修了後、建設省に入省。三重工事事務所所長、建設省河川局建設専門官などを歴任。国土庁の専門調査官なども務めた建設官僚)が、『八ッ場ダムは建設継続」を決めたのは、大英断である。しかも、「不遡及の原則」をするだけであるから、民主党が「マニフェスト」に掲げている「コンクリートから人へ」の政策を完全否定することには、決してならない。
 読売新聞YOMIURIONLINE12月22日午後4時3分、「八ッ場ダムは建設継続、国交相が群馬知事に伝達」という見出しをつけて、以下のように配信した。
 「前田国土交通相は22日午後、大沢正明・群馬県知事に電話し、建設継続か中止かを検証中の八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)について、建設を継続するとの方針を伝えた。 県によると、前田武志国交相は同日夜、建設予定地の長野原町を訪れ、大沢知事や高山欣也町長らに建設継続を決めた経緯などを直接説明する」
■おかしいのは、前原誠司政調会長の「こだわり」である。マニフェストを盾に、あくまで「建設中止」にこだわるというのなら、なぜ「消費税増税」に賛成するのか。マニフェストには、衆院議員任期中は、「消費税増税はしない」と明記している。だからこそ、小沢一郎元代表が「国民との約束は守らなくてはならない」として、反対しているのである。小沢一郎元代表は、元来、「消費税増税論者」である。それでも反対しているのは、マニフェストで「消費税増税はしない」と約束していることと、「この不景気のさなか、いまはタイミングが悪い」と正論を堅持しているからである。これに比べると、前原誠司政調会長が、あくまでも「こだわり」を捨てないのは、「個人的なメンツ」に基づくものであるとしか言えず、「公のため」ではない。公私混同している。
■前原誠司政調会長の「こだわり」を「情報の4重構造」によって分析してみると、面白いことに気づく。つまりは、前原誠司政調会長という政治家の正体が見えてくる。
 ?表の情報・・・前原誠司政調会長が2009年9月16日、鳩山由紀夫内閣の国土交通相に就任して、いきなり、「八ッ場ダム建設中止」を宣言し、一見「マニフェスト遵守」
 ?裏の情報・・・京大学法学部で高坂正堯教授(国際政治学)のゼミ出身で、外交官志望だった。日米外交と安全保障をライフワークとしており、入閣に際しては、外務大臣か防衛大臣を嘱望していたのに、アテがはずれ。欲求不満を抱いていた。それどころか、国土交通相が「国土防衛」に果たしている重要なポストであることをよく理解していなかった。単なる土建屋のためのポストではない。
 ?陰の情報・・・前原誠司政調会長の恩師・高坂正堯教授が深く関わっていた「原子力発電利権」の継承者であるとの自覚から、経済産業大臣にも興味があった。「3.11」、東日本大震災・大津波被災・福島第1原発事故の復旧復興に当り、菅直人政権下で、「利権の分配」が行われたとき、「原発推進利権」を割り当てられている。しかし、前原誠司政調会長は、自らが国土交通大臣のとき、副大臣だった馬淵澄夫衆院議員が、「ポスト前原」の国土交通大臣に就任した途端、「八ッ場ダム建設中止」を棚上げして、コスト評価の検証に舵を切り、元の木阿弥にしようとしてきたことに、不快感を抱いてきた。小沢一郎元代表が、その馬淵澄夫元国土交通大臣を「近い将来の総理大臣」として評価しているのが、気に食わないのである。誠に、私怨的というほかない。
 ?闇の情報・・・米国CIA要員であると見られてきた前原誠司政調会長は、「米国と北朝鮮の2重スパイ」嫌疑をオバマ政権からかけられ、いまでは、「オバマ政権に切られた」と言われている。これに対して、親中派だった小沢一郎元代表が、親米派としてオバマ政権に信頼されて、米国建設業(ゼネコン)の受け入れを承諾しているという。「八ッ場ダム建設継続」は、TPP参加の一環として「建設業界の門戸開放」を唱える米国からの強い要請に応じての決断であったともいえる。
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落合博満氏「来年ユニフォーム着るってなったら、ここまでは喋らない」/中日ベテラン主力勢に大甘更改

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livedoor >ニュース >プロ野球 >
落合氏、大いに語る「来年ユニフォーム着るってなったら、ここまでは喋らない」
2011年12月20日09時00分 提供:Sports Watch
 17日深夜放送、日本テレビ「Going! Sports&News」では、今季をもって中日ドラゴンズのユニフォームを脱いだ落合博満氏に、野球解説者の江川卓氏がインタビュー。その内容は「来年ユニフォーム着るってなったら、ここまでは喋らない」と落合氏が語るほど、深いものとなった。以下にインタビューの要約を掲載する。
江川:お疲れ様でした。
落合:やると思ってませんでしたね、8年も。最初3年だろうなと思ってたから。ただ、最初受けた時に電話で「2年で」って言われたの。
江川:スクープになりますよ。
落合:皆知ってる。「2年で何をしたいの」って聞いたら「チームを変えたい。改革したい。勝ちたい」っていうから「2年じゃなにもあのチームは変わりませんよと。最低3年かかるから、出す条件は3年契約だったら受けますよと。あとは何も言ってない。
江川:そしたら?
落合:それで結論出るなら電話下さいって。3分いらなかったね。電話かかってきてから。
江川:一回切ったんですね?
落合:3分以内に電話かかってきました。「はい、分かりました」って。何の条件も出してない。
江川:楽しかったことと苦しかったことを聞きます。どっちが答えやすいですか?
落合:楽しかったことって何にもない。ゼロ。
江川:苦しいんですか?監督って。
落合:苦しいとも思ってない。ただね、人間ってやりようによっては上手くもなる、悪くもなる。日々成長はあるけど、これを見られたっていう楽しみはある。それがまた下手になっていく子もいるんだ。反面教師じゃないけども。それを考えると人間って面白い生き物だなっていうのは別の角度から勉強させられた。そっちの方が楽しかった。
江川:どうしても聞きたいのが、プレーオフみたいな仕組みができて、3位にいた時は越せると思ってたんですか?今年に関して。
落合:思ってた。100%思ってた。
江川:どうして思うんですか?変ですよ。僕らは「もしかしたら」っていうのはありましたけど。
落合:だってヤクルトでしょ。巨人でしょ。阪神、広島が絡んでた。まだ8月。そこにうちと、横浜はどうやっても無理だなって。広島はバリントンとジオを中4日でまわしてきたよね。どっかでヘバリがくるだろうな。そんなに点数を取ることもなかったし、広島の場合はね。いいことにヤクルトが走っている状態で、ある意味マスコミが洗脳しちゃったよね。(巨人と阪神については)打順の組み合わせが悪いんじゃないか、ローテーションが悪いんじゃないかとか。負けの原因を全部新聞で叩きはじめたよね。絶対ジャイアンツの場合は慌てるだろうと。阪神もそうなるだろうと。そう叩かれないために、絶対早めに仕掛けてくる筈だよな。過去の例をみても、うちが勝つときって競っていたり向こうが先に行ってるんだけど、8月の前半から慌て始める時は大体ひっくり返している。
江川:凄いことが分かったんですけど、落合さんっていうのは、中日ドラゴンズだけ考えているんじゃないんですね。
落合:うふふふふ。
江川:分析としては、セ・リーグ6球団分析しながら野球やってたんですね。
落合:だと思います。ヤクルトは10年勝ってない。あんなに早くトップに立ってて、マスコミはこれだけ離しているんだから優勝だ優勝だって絶対浮かれてくるし疲れる。うちは9月から10月にかけて、ヤクルトと名古屋で9試合残っている。9ゲーム離されていても、前後の試合をうまく戦っていけば、この9試合で何とかなる。一番助かったのは上位を走っているチームが最終的に横浜とのゲームを残していた。うちは一試合しかなかった。どの試合が一番嫌だったかって今言われたら、俺は横浜とやるゲームが一番嫌だった。落とせないから。周りはチーム状況考えて、絶対ここには勝てるよなって星勘定するでしょ。そんな甘いもんじゃない。普通に考えたら、横浜は一個(他球団に)勝ってくれたら、それで十分いいよなってヤツを二つ勝ったり三つ勝ったりしてたでしょ。思い通りに事は運ぶんだな。横浜と試合残さなくて良かったなってずっと思ってた。
江川:意外な話ですね。
落合:強い者が必ず弱い者を倒すっていうことじゃないんですよ。弱い者っていうのは、周りがそう思うんであって、やる方は大変。今回ソフトバンクは大変だったと思う。うちとやるとき。データは全て向こうが上でしょ。俺はもっとマスコミ騒いでくれって思ってたもん。騒げば騒ぐほどうちにチャンスがあると思ってた。
江川:そういう風に考えてやるもんですか。
落合:うちのピッチャーが、あの(ソフトバンク)打線がいくら良いっていったって、そんなに点数取られることはない。うちは何点取れるのかな。7試合で9点。それで4勝3敗いくんだから大したもんといえば大したもんだった。
江川:落合さんの考えていることが、ようやく出ている、発信されている感じがします。
落合:来年ユニフォーム着るってなったら、ここまでは喋らないと思う。
江川:着ないですか?
落合:着ないよ。休みます。
江川:また(オファーが)来たら可能性ありますか?
落合:(その時は)仮面かぶらなきゃいけないかな。
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落合監督解任効果? 中日ベテラン主力勢に大甘更改
livedoor >ニュース >プロ野球 >2011年12月23日20時59分
提供:リアルライブ
 12月22日、中日の主砲である和田一浩外野手(39)が契約更改交渉に臨み、年俸4億円(以下、金額はすべて推定)から17・5%ダウンの3億3000万円+出来高でサインした。
 和田自身、1億円を超える選手の減額制限40%程度のダウンも覚悟していたというから、まさに大甘の更改だった。今季の和田はフォーム改造、視力低下の影響で、131試合出場、打率.232、本塁打12、打点54の惨たんたる成績。MVPを獲得した昨年は、144試合出場、打率.339、37本塁打、92打点で、すべての部門で大きく成績を落とした。和田は西武時代の02年にレギュラーとなったが、それ以降では打率、本塁打は自己ワーストだった。それでも、わずか7000万円のダウンですみ、しかも出来高まで付いた契約には和田も御の字だろう。
 実は今オフの中日のベテラン主力勢の契約更改を見ると、和田に限らず、かなり大甘の査定となっている。今季、故障のため、2軍でも1試合の登板もなかった大ベテランの山本昌投手(46)が、1億円から60%ダウンの4000万円+出来高に落とされたが、それを除けば一様に甘々だ。
 和田同様、主軸ながら極度の不振で、142試合出場、打率.232、本塁打10、打点45に終わった森野将彦内野手(33)は、年俸2億2500万円から、わずか3500万円ダウン(−15・6%)の1億9000万円でサイン。
 また、規定打席不足で打率.234だった井端弘和内野手(36)は1億8000万円から、わずか1000万円ダウン(−5.6%)の1億7000万円。逆にヒザの故障で102試合の出場にとどまった谷繁元信捕手(41)は、1億7000万円から、異例の1000万円アップ(+5・9%)の1億8000万円で更改。荒木雅博内野手(34)は昨年の打率.294から.263と、3分以上も率を落としたが現状維持の2億円。
 極めつけはチーム最高年俸の岩瀬仁紀投手(37)か。今季の岩瀬は投球内容も悪く、抑えに失敗する試合も目立った。中継ぎエースの浅尾拓也投手(27)に抑えを取って代わられる機会も多く、セーブ数は昨年の42から37に減少。内容的にはとても、年俸に見合った働きではなかったが、防御率が2.25から1.48と良くなった点を評価され、4億3000万から2000万円アップ(+4・4%)の4億5000万円を勝ち取った。
 他球団なら成績不振の高額年俸選手には大ナタが振るわれるのが常。たとえば、今季5勝に終わった横浜DeNAのエース、三浦大輔投手(37)は3億円から50%ダウンの1億5000万円。スタメンでの出場が減った金本知憲外野手(43=阪神)は3億6000万円から減額制限ギリギリの38・9%ダウンの2億2000万円を受け入れた。
 中日に関しては優勝祝儀もあるだろうが、ベテラン主力勢にとっては、まさに大甘更改となった。そもそも、コスト削減のためにも推定で3億7000万円ともいわれた高額年俸の落合博満前監督(58)を解雇したのに、いったいどうなっているのか。
 スポーツジャーナリストのA氏は、「まぎれもなく落合監督解雇効果です。高木守道新監督の年俸は1億円。つまりは、監督交代だけで、2億円以上の資金が浮いたわけです。ベテラン主力に甘い査定をしても、大幅アップした選手は一人もいませんから、ベテラン全体では今季より年俸総額は減るはずです。その分を大幅アップの吉見(一起)や浅尾に回せます。何の問題もないでしょう。これで、ベテラン勢も、来季気持ちよくプレーできますね」と語る。
 落合前監督の解任効果にあやかった中日のベテラン主力陣。その胸中たるや、いかがなものだろうか。
(落合一郎)
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落合監督の『采配』を読もう/選手の情報をむやみに語らない 個人事業主の権利を徹底的にリスペクト2011-11-30 | 野球・・・など
落合博満『オレ流采配』/「完全試合直前」山井の交代、アライバ謎のコンバート、WBCボイコット・・・2011-11-28 | 野球・・・など
『采配』落合博満/孤独に勝たなければ、勝負に勝てない/3つの敵/「負けない努力」が勝ちにつながる2011-11-25 | 野球・・・など
他の監督とはここが違う 落合博満だけに見えるものがある2011-11-03 | 野球・・・など

でっちあげに抗して小沢一郎が目指す真の政治/信念なき民主党、菅政権の負の遺産に苦しむ野田政権

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でっちあげに抗して小沢一郎が目指す真の政治
信念なき民主党、菅政権の負の遺産に苦しむ野田政権〜松木けんこう氏

JBpress 2011.12.23(金)
マット安川 民主党を離れ、無所属となっても信念を貫く松木けんこうさんを迎え、民主党や野田政権が抱える問題や、公判中の小沢一郎さんのことについてお聞きしました。
*民主党は言ったことに責任を持て。このままではウソつきだ
松木 今朝(12月16日)の読売新聞1面の小沢(一郎・民主党元代表)さんの記事で、検事が、石川(知裕・衆院議員)さんが言っていないことを書いていたことが白日の下にさらされました。たまたま石川君がテープを持って録っていたから分かったことで、テープがなかったら検察の話が全部信用されるという大問題です。
 だから我々は、政権交代前の参議院で多数を占めた時に、可視化法案を出したんです。要するにあまりにも冤罪が多いので、捜査段階など取り調べのどこかの時点でしっかり録音、録画などの証拠を取っておくべきだという法案です。
 参議院では2回も可決されたんですが、当時は衆議院が民主党が多数ではなかったので、最後には否決されました。それでいよいよ政権を取ったら可視化法案はやらないという。それが民主党です。もう私は意味が分からないですね。
 政治家にとって大切なことは、信念を持ってやるということです。2年数カ月前に、民主党は何と言ったか。子育て支援でもっと子どもを持ってもらおう、農業者への戸別所得補償で40%しかない食料自給率をもっと高めよう、高速道路の無償化で流通コストを安くして経済を活性化させよう。いろんなことを掲げました。
 それが100%正しいかどうかは神様しか分かりません。というのは、すぐに結果が出るものとそうじゃないものがありますから。だから微調整はあっても仕方ないと思うけれども、右45度の話をしたのに、急に左45度になっちゃったというのでは、これはウソつきです。
 どうしても実情が違ってきたという時には、国民にちゃんと説明すればいいし、新しい考えを出して衆議院を解散するとか、そういうことを考えればいいんです。言ったことはしっかり信念を持ってやるということが大切なんです。
*菅前総理の負の遺産を引き継いでしまった野田政権
 野田(佳彦)政権はどんどん状況が厳しくなってきています。前政権の負の遺産にやられているとしか思えません。
 例えば与野党3党合意ですが、特例公債法案を通してもらったということでしょうがないのかもしれないけれども、それとて菅直人(前首相)さんが居座るからああいうことになったとも言える。3党合意なんていうのは、我々のマニフェストをすべて捨てるというのと同じことです。
 3党合意は、岡田(克也)さんが幹事長の時に決めたわけです。あの人は原理原則を守ると自分で言っていますが、そうであれば自分たちが決めた原理原則を守ればいいんだけど、本当は一番優柔不断な人なんです。
 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や消費税の問題も、菅さんが初めに言い出したことです。もともと訳の分からない人ですからしょうがないですけどね。それをまた野田さんが引き継ぐことはなくて、1回チャラにすればいいんです。
 TPP参加というのは食の自給率が下がる方向です。消費税に関しても、ムダの削減や特別会計、公務員の総人件費の2割削減など、全部はできないにしてもやることはまだいっぱいあるわけですよ。
 しかし何もできておらず、それをすっとばして増税というのでは、国民は怒るに決まってますよ。今の話は、子どもがお金ないからお小遣いをちょうだいと言うようなものです。何の工夫もしない子どもに、大人は小遣いをあげませんよね。
*小沢氏は本当の政治をやろうといろんな布石を打っている
 小沢さんはいろんなことを言われていますが、本当の意味で政治をやろうとして、いろんな布石を打っています。
 例えばアメリカや中国などとの関係では、ジョン万次郎記念財団(ジョン万次郎ホイットフィールド記念 国際草の根交流センター)でアメリカの若い人たちを留学で受け入れたり、中国については民間交流の「長城計画」を行っている。
 私は以前、小沢事務所に外国人の秘書がいるので大丈夫かなと思ったことがあったんですけど、やはり違うんだなと、そこまで中国やアメリカ、外交のことも考えて、将来のための布石をどんどん打っていたんだと分かりました。
 そういうことをやっている政治家なんかほかにいませんよ。私を含めてとてもそこまではできなかった。政治に対しての情熱が半端ではないというか、あれだけ叩かれながら小沢一郎というのはやってるんですよ、私だったらイヤになるでしょうね。
 ひどかったのは、衆議院選挙の時に、4億何千万円のカネを小沢一郎はバラまいたという話がありました。これは正式に政治資金としてそれぞれの人に渡したものです。俺の子分だからカネをやるとか、そういうことはひと言も言っていない。
 それであれだけ叩かれて、菅前総理にはおカネで私兵をつくるとは何ごとかと文句まで言われた。それでも、去年の参議院選挙でまたおカネ出して「がんばれ」と言ってやっている。参議院選挙で負けたらたいへんだということでおカネを出したんだと私は思います。でも悪く取られるんですよ。
 小沢さんの国会への参考人招致ですが、裁判をやっている時の参考人招致というのは今までに例がないんです。やっぱり小沢さんも裁判の有利・不利などがあるわけで、人権もあります。
 それに今、参考人だの証人喚問だのになったら、結局それは真実を明らかにするということではなく、国会の中のかけ引きに使われるだけなんですよ。与野党でやる時はどうしても政争の具になるんです。
 だからそこは、裁判は公の場でやるわけですから、裁判でやるのが筋だと思います。裁判は全面公開でやっていますから、傍聴しに行けばいい。今ならたぶん並ばなくても入れますよ。
 小沢さんはけっこう記者会見でも話をしてるんですけど、うまく伝わっていないのかなという感じがしますね。裁判がすべて終わった後に、まとめとして小沢さんが記者会見をするというのはあってもいいと思います。
「マット安川のずばり勝負」12月16日放送
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「小沢一郎氏 裁判」=検察官による「虚偽捜査報告書作成事件」 郷原信郎氏2011-12-21 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
ようやく始動の小沢一郎/小沢憎しで凝り固まっている法務・検察官僚は強引に有罪に持ち込むかもしれない2011-12-23 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
『小沢一郎 語り尽くす』TPP/消費税/裁判/マスコミ/原発/普天間/尖閣/官僚/後を託すような政治家は 2011-11-20 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
「小沢一郎氏を国会証人喚問」の愚劣2011-10-20 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
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松木謙公衆議が札幌で国政報告会/石川知裕衆議や新党大地代表代行浅野貴博衆議らが出席2011-11-16 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

     
月刊誌「北方ジャーナル」公式ブログ 2011年11月15日
“はぐれ鳥”松木謙公衆議が札幌で国政報告会
 北海道12区選出の衆議、松木謙公氏(52)の国政報告会を兼ねたパーティーが14日、札幌市内の京王プラザホテルで開かれた。毎年1回、もともとの地盤だった札幌で行なっているもので、松木氏は民主党を離れて以降初めて無所属で恒例のパーティーに臨んだ。会場には民主党所属の道議や新党大地関係者、支援者など650人あまりが出席、松木氏は「TPPは北海道に壊滅的な被害をもたらす」などと持論を展開、「民主党が変節を続けるなら解散すべき」と意気軒昂に語った。
 パーティーには道11区選出の石川知裕衆議や新党大地代表代行の浅野貴博衆議などが来賓として出席。挨拶に立った両議員は、6月の菅内閣不信任案に賛成票を投じて民主党を除名された松木氏を「筋を通す政治家」としてエールを送っていた。
 続けて“国政報告”を行なった松木衆議は、道議選や除名による離党で民主党に迷惑をかけたと陳謝しつつ、壇上に日下太朗(オホーツク総合振興局選出)、鳥越良孝(北見市選出)、佐藤伸弥(網走市選出)の3人の道議と北見市議の水上美華氏を壇上に招き紹介、「引き続き変わらぬ支援をいただき感謝している」とお礼の言葉をかけた。
 松木氏は、菅内閣で農林水産政務官としてTPP参加表明した菅首相を批判してきた経過を明らかにするとともに、6月の菅内閣不信任決議案で民主党議員としてただ一人賛成票を投じた理由を示し、「政治家として信念を貫くことが大事。私が変わったのではなく、民主党が変わってしまったのが残念」と心情を吐露した。
 さらに民主党が子ども手当や自給率向上など食を巡る政策でマニフェストを変えていくのであれば解散すべきと強く主張、「無所属なったが、これからもしっかり政治活動を頑張っていく」と決意表明していた。
 乾杯の音頭を取ったのは、日下道議。日下氏は、民主党北海道副代表、12区民主党総支部幹事長を務めている。「10年間、松木衆議と一緒に活動してきた。松木衆議には義も感じているし情も感じている。これからもそれを基本にしていきたい。今後も、地元選出国会議員として一生懸命頑張っていただくことをお願いし、何とか上手に行く環境を皆で作っていきたいと思っている」と出席者たちに支援をお願いしていた。 (さ)
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“塀の中”鈴木宗男 前衆議「大地」例会盛況 佐藤優氏/松木けんこう衆議/石川知裕衆議/松山千春氏ら2011-09-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
菅政権、自壊の始まり/松木謙公農水政務官 辞任、5つの理由2011-02-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

小沢よ、いまこそ日本を救え

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二見伸明の「誇り高き自由人として」
小沢よ、いまこそ日本を救え
 民主党は「国民主権=政治主導、『国民生活が第一』」の自立した共生国家への道を歩むか、「官僚主導=無責任政治、既得権擁護」の、カビの生えた旧来型の古い政治に逆戻りするかの岐路に立たされている。大げさではなく、民主党代表選には、日本の存亡がかかっている。
 23日、代表選への立候補を表明した前原誠司は「『小沢史観』からは脱却しなければいけない。。元代表の党員資格停止処分は、執行部の決定を尊重すべきだ」と語った。「小沢史観」とは何か。前原が説明していないので推測する以外にないが、「日本改造計画」に示した理論と政策、それを具現化するために、守旧派の政治家やマスコミの攻撃・弾圧にさらされて18年間も戦い続けている小沢の排除を対立軸とし、小沢抹殺を基本戦略とする民主党主流派の歴史認識だ。その「小沢史観から脱却する」とはどういうことなのか。素直に考えれば「小沢理論は正しい。政権交代の原点に立ち帰り、小沢を筆頭に、国難に対処できる挙党一致体制を構築する」ということだ。
 しかし、政治の世界は手練手管、騙し合いが幅を利かせる世界である。代表に選出された場合、前原の「『小沢史観からの脱却』とは、小沢理論を肯定するのではなく、むしろ、時代にあわないものとして無視することだ」と開き直ることもありうるだろう。もし、そういう事態になれば、民主党は分裂し、政界再編成の大津波が襲ってくるだろう。テレビ報道によると、23日、仙谷由人は小沢と極秘会談をして、「挙党一致で政権、党運営をするので、前原をよろしく」と懇請し、小沢から「挙党体制はわれわれが主張してきたことで、それを壊したのは、あなたがただ」と返されたそうである。
 小沢の座右の銘は「百術一誠にしかず」である。「言ったこと」「約束したこと」を守り抜く政治家は、現在の日本では小沢一郎だけだろう。その姿に鬼気迫るものを感じることもあるし、オチャラケた冗談を言いにくい堅苦しさを覚えることもある。小沢一郎は、「芸能人的政治家」ではない。
 THE WALL STREAT JOURNALのインタビューで小沢は「何か国民生活に関する問題を処理する時に、われわれは、自民党の、官僚機構に任せて、おんぶに抱っこの政治はもはやだめだと言ってきた。政治家が自ら決断し、国民のための政治を実行する。今回の原子力の話だけではない。それは何かというと、イコール責任だ。決断したら決断した者の責任が生じることは当たり前だ。責任のない決断はない。そういうことを主張してきたにもかかわらず、民主党政権が、特に、菅政権が、そうでないという実態に気づき、国民の支持を失っている」と述べている。これは政治の本質を衝いた最も重要な基本原則だ。
 私は前原の才気煥発さをそれなりに評価してきたが、民主党代表としての偽メール問題の処理でトップリーダーとしての資質に疑問をもち、国交相としての「八ツ場ダム」、沖縄担当相、外相としての「尖閣列島」などで露呈した、無責任な、マッチポンプ的言動には国を滅ぼしかねない危うさと軽さを感じた。主流派の一員として小沢排除を推進したのは、偽メール問題で解党の危機に瀕した民主党を蘇らせた小沢に対して前原にはトラウマがあるのではないだろうか。
 前原の出馬で代表選の構図は変わった。立候補を辞退する者もあるかもしれない。票が欲しいだけで小沢詣でをしてオベンチャラを言った者は「物乞い」ならぬ「票乞食」である。小沢と手を携えて新しい日本をつくろうと決意した者はそのことを堂々と宣言すればいい。日本の命運を賭けた「歴史に残る」代表選にすべきだ。無責任に面白おかしく「乱立、数合わせ」などとヤユするマスコミの陰謀に踊らされてはならない。2年間の民主党政権は、たしかに行き当たりばったりの危ういものであったが、まだ2年間も残り時間があり、十分に間に合う。
 ところで、マニフェストの妨害者は官僚と利権団体、マスコミであることを認識しておく必要がある。子ども手当、高校無償化、農家の戸別補償など国民に支持された政策を実行するためには総予算を組み替え、優先度の低いものはカットすればいい。これは官僚が天下り先の業界・団体と長年にわたって作り上げた歳出構造の抜本的改革である。官僚が身体を張って抵抗するのは無理からぬところだ。しかも、子ども手当にせよ、高校無償化、農家の戸別補償にせよ、官僚が裁量する余地のないものだ。官僚にとっては「官僚の思考」がすべてであって、彼らが関与できない、理解できないものは、「バラマキ」なのである。予算減額・カットにおののく利権集団もマニフェストを「バラマキ」として葬り去ことに躍起である。自民党にとっても、政権を奪回し、既得権益を確保するためには小沢の影響を受けた新政権の政策を「バラマキ」と決めつけ、撤回を要求するのは当然のことだ。官僚機構や利権集団と密着している大手マスコミは「マニフェスト撤回」の強力な宣伝部隊である。代表選に出馬する者には、「マニフェスト実現に命を賭ける」覚悟を求めたい。
 8月7日、東京・浅草で、21日には神田神保町の古書街で「小沢復権」を求めるささやかなデモがあった。28日には新潟でもデモがあるそうだ。中国に「東山再起」の故事がある。民主党は声なき民の叫びを真摯に受け止めるべきだ。マスコミの宣伝は浮草にすぎない。大地に根を張った民草の声は勁草だ。勁草は強い。
 小沢理論は巨大な羅針盤である。マニフェストの枝葉末節はともかく、大骨、中骨を大事にしながら日本丸の舵取りをすべきだ。そこに、東日本をはじめとする日本列島の、人間の血の流れる力強い復興がある。日本人一人ひとりの「体力」がみなぎる日本の「底力」がある。民間会社を装っていながら、実は権力の御用機関のような性格をもつ格付け会社の評価など、糞喰らえだ。小沢は、今こそ、日本のために、その影響力を最大限に発揮すべきである。
投稿者: 二見伸明 日時: 2011年8月25日 21:34
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菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎:百術は一誠に如かず2010-12-27 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
  2010年12月26日ラジオ(ニッポン放送22日収録) 
菅原 今年最後の放送は、民主党元代表、小沢一郎さんにお越しいただいて、政治の話、日本のこれからの話、そんなことを聞こうと思います。あの、小沢さんは日ごろあまりご自分のことは言われませんね(笑)。
小沢 あはは。
菅原 座右の銘なんてものはありますか?
小沢 はい。僕は「百術は一誠に如かず」という言葉が好きで、どんなに策を凝らしても一番大事なのは誠を尽くすということで、今風に言えばパフォーマンスよりは誠を尽くすことの方が大事だと。そういう意味だろうと思うんですが・・・。
菅原 もう一度言ってください。百に技術の術ですか?
小沢 百ぺんの術策よりも、唯一つの誠より優れたものはないと。
菅原 一つの誠、はあ〜なるほどねえ。今日のしてきたネクタイをいうと、紺色と白で・・・。
小沢 あはは。
菅原 色はそういう色が好きなんですか?
小沢 色は背広でも何でも紺が多いですね、我が社は(笑)ただ最近は、紫がはやっているものですから「お前も同じようなものじゃなくこういうのもつけろ」つって、ネクタイを何本か頂きました。
菅原 そんな小沢さんの人柄がなんとなく伝わったかなというところで、あの、政治というか、なぜなんでしょうか、あの沖縄の問題。承知をされているんですけど、鳩山さんもついに断念してしまった。なんであのときにずーっと行かなかったかなと思うんだけども、政治家・・自民党も民主党も僕も含めて、アメリカにね、私のような素人、門外漢から見ても日米同盟なんて言葉だけはきれいなことを言ってるけども、どこかね、怯えてるんじゃないのと。そういう風に見えるんですよ。アメリカの何に怯えてるんですか。
小沢 そうですね・・・アメリカの経済力を含めた巨大な力でしょうね。怯えと同時にですね、アメリカの言うようにしてれば楽だと。そういう意識があるんじゃないでしょうかねえ。食うには困らないというとこでやってれば。ですから、そういう意味で、独立国家としての日本はどうあるべきかとか、そういう類の問題はできるだけ考えないようにして、言うとおりにしてると。そうしてればまあ、なんとか生きていけるんじゃないかと。という、二つの要素があるんじゃないですかね。
菅原 小沢さんと同じ党だけど、今の政権の人たちはね、ほとんどみな普天間・辺野古問題は県外、国外と言ってたじゃないですか。ところが今は全部ひっくり返ってしまった。政治家として情けないなと思っているんですけども、その一方で、それじゃあ中国と親密に仲良くかと思うと、中国に対しても肩肘張って。
小沢 基本的に事なかれ主義なんですね。中国に対しても経済力でつながっていて非常に強くなって大きくなっていますが、まあ、あまりゴチャゴチャしないようにと。尖閣の領土侵犯のときも経団連なんかが「早くこれケリつけてくれないと企業経営にひびく」とか、そういう観点だけなんですね。そういうことですから、アメリカからも中国からも実は全く相手にされてないですね。ロシアだって同じですわね。そういう意味で、国は国民と領土で成り立っているものですから、そういうきちんと国民の生命、それから日本国というそのものをきちんと自分で守っていく、そういう考え方、政治的な姿勢、スタンス、そういうものが全く・・・これ自民党時代からですけども、なかったと。今もないと。そういうところが、彼らに軽んじられる最大の原因だと思っています。
菅原 本来なら、戦いに敗れたのですから、しばらくは家来でいても仕方なかったにしても、65年たっても自立、独立されてないとしたら、こんなに情けないことはないんで。小沢さんは以前からアメリカとも対等に、中国とも対等に、正三角形でいかなきゃいかんと。特に中国を中心とした東アジア同盟というか、そうした形でこれからの日本はやっていかなきゃいかんと、小沢さん除いてそういうことを言う人が一人もいないんじゃ、これは困ったもんだなと思っているんですが。
小沢 そういう発言すると角が立つと議員はみな捉えるんですね。ほんとの事なかれですから、(外国から)まず軽蔑されますね。
 官僚、政治家、それぞれの職分を守ること。政治がきちんとビジョンを示し責任を取れば役人は理解してくれる。
菅原 そういう話を聞くと、結局政治家は官僚に取り込まれてしまっている。こっちから見えない。官僚のね、これはもういろんな人が言ってるんだけど、明治維新から続いている官僚制度ですよね。(太平洋戦争終戦で)改まるかと思ったら官僚のシステムだけは生き残ってる。官僚制度の問題さえ片付ければ、自ずと普天間の問題も、日米同盟の問題も、日中の問題、アジアの問題、いろんな問題が収まってくると思ってるから。小沢さんがもしこの先政治の中心に立ったとしたら、どのようにされようと思っていますか?
小沢 明治以来の官僚機構。戦後、ぼくは、戦前以上に官僚統治が行き渡っていると思ってるんですね。それと同時に日本の官僚というのはアメリカと密接に結びついています。外務省だけじゃなく。そういう面もあるんですよ。
 ただ、僕は官僚を否定してるんじゃなくて、日本の官僚は国家レベルのことをやりなさいと。国会議員も国家レベルのことをやりなさいと。それぞれの職分を守りなさいと、それだけのことを言っているんですが。
 官僚の人もね、大部分の人は既得権を奪われるんじゃないかという恐怖感でいますけれども、優秀な人ほどこのままではいけないんじゃないかと思っています。腹の中では。だから僕はその人たちがきちんと表に立ってやれるようにするためには、政治家が「こういう国づくりをしたい」と、だから「この方針に従って、具体的な行政をあんたらやってください」と、「その結果はオレが責任とる」と、言えば彼らはやりますよ。
 その、「何かお前たち考えろ」と、役人の考える範囲というのは今までの基本方針を大変更するということはできませんから。既存の積み上げということになります。それでその中で何か知恵を絞って持ってって、うまくいかなければ「お前らけしからん」「役人けしからん」と、役人のせいにされちゃう。これじゃあたまったもんじゃないというのが彼らですね。これは全部のことに共通することで、政治家自身がやはり自分のビジョンと主張を内政でも外交でもきちんと申すと、そういうふうにすればですね、僕は必然的に役人はついてくると思っています。
菅原 小沢さんからそういう風な話を聞くと簡単なのになあ・・・と。素人から見るとねえ、できないのかなあと・・・。
小沢 官僚の既得権を奪うだけではダメなんで。必要なことは、僕は、もっと権限を強化しなきゃいけないところもあると思うんです。例えば危機管理とかテロだ金融危機だ天然災害だといろんなことあるでしょう。そんなときにもっと政府は強力な権限持たないとダメですよ。阪神大震災みたいに、総理大臣が来るまで三日間かかって何かかんかしつつ、その間に人が死んでしまうなんて。その意味では素早くパッと対応できるような、国の権限を強化しなきゃいけない面も、あります。それはもう事柄に応じてありますけども、そういう役割をきちんと付与すれば、私は役人は大丈夫、理解してくれると思います。
菅原 これから小沢さんがね、政治生命をかけて、特に、来年、裁判も待ち受けていますね。政治とカネという問題は、政治にカネは必要である。
小沢 以前からずーっと僕が主張してるのは、政治資金の問題、私個人のこと云々ということをこの場で申し上げるつもりはございませんが、政治資金の問題を筆頭にして、行政であれ、一般の会社であれ、日本は非常に閉鎖的、クローズドな社会ですよね。菅さんはオープンオープンとおっしゃってるからもっとほんとはオープンにしなきゃいけないんですが。
 僕は、政治資金も、誰から貰ったか、極端に言えばですよ、誰だって浄財くれるっていえば貰ったっていいと思う。それで、何に使ったか、収入と支出を全部、1円からオープンにすると。それで国民みなさんが「あんなやつから貰うなんてけしからんじゃないか」とか「こういうところでこれを使うのはけしからん」と、そういうふうに思えばそれは選挙の際にきちんと判断すればいいんで。
 今は、オープンオープン言いながら・・・私自身は全部オープンにしてますけども、オープンにしなくていい部分が残ってますし、それから行政でも、機密事項的なことはほとんどクローズドですよね。大臣だって知らされていないし。会社だってそうです。ほんとの機密事項は株主であれ従業員であれ誰も知らない。僕は、アメリカみたいになんでもかんでもオープンにするというのは弊害も出てくると思います。少なくとも、ヨーロッパ並みのオープンな社会にしていかないといけないと思っています。
菅原 あの、国会議員は(政治献金ではなく)国民の税金で賄ってますよね、給料から政治活動費も。
小沢 日本はそのパーセンテージが高いですね。
菅原 そうですよね。それであるんなら、政治資金も、政治に本当に使うためのものをね、アメリカ式に、広く集めたらどうなんだろうと。こないだ、岡田さんが経団連から献金を、あれだけダメだって言ってたのに(笑)、もらうことにね、そのために法人税5%下げるなんて(笑)それがひとつのアレなのかなと思わざるを得ないようなね、かえって国民から見てもおかしいなということが、清潔に、クリーンにと言いながらあらたまってこない・・・。
小沢 大きな変革をしようとすれば、今までの旧体制で既得権を持っていた人からすれば脅威ですから、「あの野郎さえいなければ」ということになりがちなのは、歴史上でも仕方のないことなんですけども。
 ただ、僕は、質問していないのは、国民の皆さんは、いま、テレビ新聞だけじゃなくて、ネットやいろんなもの、媒体が普及してきましたよね。ですからものすごく意識が変わってきている。このラジオだって、いっときテレビやなにかで押されたみたいであれしてますけども、ラジオ聴いてる人っていうのは意外に多いんですよね。いろんな意味で情報を知ることが出来るようになったので、僕は国民の皆さんは、かなり意識が違ってきてると思っています。
 ですから、さらにもう一歩進んで、今お話したように、自分も、百円でも千円でも、献金して政治活動を助けてやろうというようなことまで行けば、いろんな問題は少なくなりますよね。僕の場合はね、ワーワーワーワーメディアに騒がれるたびに個人献金が数百人規模で増えてるんですよ(笑)。
菅原 ほお。
小沢 もちろん、アメリカみたいに何万何十万という人じゃないですから、トータルの金額はそんな大きいわけじゃないですけども、それでも、去年も、今年も、300人、400人ずつ個人献金者が増えてます。
小沢 だから僕はメディアの非難が集中してますけども、お金のことであれ何であれ、不正行為がね、あったならば、それは政治家であれ一般人であれきちんと罰せられなきゃいけないと。それはその通りだと思うんですが、ただなんとなくね、そのときそのときで、一人を悪者にして、肝心な世の中の仕組みや政策やそういうものが全然改革されないで終わっちゃってるんですね。その場その場で。そこが僕は非常に問題だと思っていますね。で、何か起こるたびに、規制が強化されるんですよ。規制強化というのは官僚の権限を大きくするだけなんですよ。これがほんとに繰り返しなんですよ、日本の。
菅原 我々のようなね、政治に縁のないところで生きてるでしょう、それでも規制はひしひしと迫ってきています。だからね、戦後のどの時代よりもいま窮屈でね、「これもダメ、あれもダメ」、ね。そして税金の増税を堂々と言いかけて止めてしまったもんだから、なんかね、ズルくね小さく、ここから取ってあっちから取ってね(笑)気がつかないところで取り上げてるんですよ。そういうのをね、改めてもらいたい。
菅原 あの、金の問題が長くなりすぎたんで、ここで、これからの日本の国の姿、そして政治をどういうふうに、特に、来年、政治的な動乱が起きるんじゃないかと思っているんですが。そういう中で小沢さんは何を考え、何を目的として、この先、やっていかれるか。その話を聞かせていただいて終わりにしようと思います。
小沢 はい。私が言っているのは、自立した日本人と、自立した日本人の集合体である自立した日本国。それが私の、抽象的な言葉でいうと目標で、要するに、自分自身で考え、自分自身で判断し、自分自身で責任を取ると。ということでないと、個人も国も成り立たないし、誰にも相手にされないということだと思っているんです。
 アメリカは日本の最大の同盟国ですけども、同盟国であるに相応しい日本は、じゃあ日本の役割はなんなんだと。そして、アメリカは、なんなんだと。現状はそれでいいのかと。そういうことを日本人がしっかり持って、それでアメリカにも言わなきゃいけない。
 中国も、僕これ既に言ってんですけども、尖閣列島は、数千年の中国王朝の支配に入ったことは、歴史的にないんですよ。間違いない、日本の正真正銘の領土なんですね。そういうことについて、しっかりした・・・僕はもう中国の人にも言ってますけどね、あれは歴史上見ても争うことは何もないと。その問題であれ何の問題であれ、しっかりと自分のあれを相手に伝えられるような日本人に、そして日本の国にしたいなあと、そう思っております。
菅原 さて、そうは言っても、何年になりますか(笑)、言い続けてもね、みんな腰倒れといいますか、小沢さんも今年は68歳、まあまあ、私なんか10個も上ですけどもね、今のままでは、私のような門外漢でも不安でね、どうなんだろうこの国は。
 もう孫もいるもんだから、特に孫なんか見てると、いま中学、これから高校に行こうなんてものだから、これからの日本はどうなるんだろうと。細かく言えば教育はどうなるんだろうね食料はどうなるんだろう、いろんなことがやっぱり・・そしてそれは殆どが今までの政治の官僚組織のね、具体的に暖かい手を差し伸べてやってくれてないんですよ。
 政治家としての小沢さんは実績があり度胸があるんだからね、ひとつ・・・まあ、そういう人が何人かいるじゃないですか、亀井静香とかね(笑)。
小沢 仰るようにですね、今の日本は老いも若きもですね将来の不安、将来の見通しが全然たたない、これは経済であれなんであれね、そこに僕は日本の社会の不安定なそして不安な要素があるんだと思うんです。ですからやっぱりあらゆる意味で、少なくともリーダーが「こういう日本を作りたい」と「このために皆で頑張ろうや」というやっぱり自信を持ってですね、言えるようにしなきゃいけないと思いますですね。
菅原 お互いにあの東北のね、岩手と宮城の県境で、歩いても行けるところで(笑)。生まれてるんだけども、明治維新をもう一度振り返ると、「白河以北一山百文(『白河の関所より北の土地は、一山で百文にしかならない荒れ地ばかり』という侮蔑表現)と言われてね、ずぅっと蔑視されて、そういうやっぱり薩長土肥、西側の、私なんか薩長土肥と、向こうは敵だって言うんだけども、西郷さんも好きだし、大久保利通も。ねえ、でもそういった維新のときの精神がだんだんだんだん山縣有朋あたりになってくるとやっぱり別のものに変わってしまって・・・。
小沢 官僚機構がどんどん強くなってきてしまいましたからねえ。だから官僚のシェアの中でみんな結局は悲惨な戦前の歴史になってしまうんですよねえ。明治のリーダーが偉かったのは「白河以北一山百文」という言葉がありますけども、明治のリーダーが偉かったのは、敵であった徳川幕府の中からも優秀な人材はどんどん登用していますね。これはね、僕はえらかったと思いますね。
菅原 五稜郭榎本ね。
小沢 ええ。誰であっても。それでね、うちの大先輩の原敬であっても・・あれ東北の方ですからね、それが立憲政友会幹事長になって総理大臣にまでなったわけですから。いろんな人を、白河以北の人材であっても優秀なら採用したんですね。それだけの、やはりトップリーダーに人を見分ける目があったんでしょうね。
菅原 必ずしも薩長全部が悪いわけではなくて。だけどやっぱり東北は悲惨だった。賊軍と言われたりしてね、長いこと雌伏してた。その雌伏から、ひとつ、小沢さんが・・・。
小沢 あははは。
菅原 立ち上がりました。
小沢 あはは、はい、そうですね。
菅原 今日は本当にありがとうございました。(強調=太字は、来栖)
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WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)2011/5/27 小沢一郎元民主党代表インタビュー「天命に遊ぶ」2011-06-03政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 小沢一郎元民主党代表はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、福島原発事故への政府の対応は「遅く、放射能汚染に対する認識がまったくない」と批判するとともに、長年ライバル関係にある菅直人首相について「首相は一日も早く代わったほうがいい」と述べ、対決姿勢を鮮明にした。
 以下はインタビューの一問一答。
Q:東日本大震災と福島第1原発事故以降の政府の対応について、全般的にどう評価しているか。
A:もう2カ月以上、70日になる。原子炉がコントロールできない状況に置かれている。
 私は客観的な見方をする学者の先生から、この状況は燃料の熔融や炉が破損して、非常に危険な状況だということを聞いていた。非常に心配していたら、今になって、仕様がなくなってポツポツ認めている。対応が遅く、放射能汚染に対する認識が甘い、というより、まったくないといってもいいくらいの菅内閣の対応だ。
 一般自然災害への対応も、私の県も被災県の1つだが、単なる旧来の取り組みと同じだ。役所の積み上げと、査定に任せきりで、民主党が目指した国民主導・政治主導という政治の在り方とは程遠い実態になっている。私もそうだが、ほとんどの人たちが、不安と不満を募らせているというのが現状だ。やはりその最大の原因は、民主党が掲げてきた、政治家が自ら決断して政策を実行するということが行われていないためだ。決断とは、イコール責任だ。責任を取るのが嫌だとなると、誰も決断しなくなる。
Q:原発事故で事態をここまで悪くしないようにするために、政府がすべきであった決定や政策はどんなものがあったか。
A:こういう状況になると、東京電力の責任に転嫁したって意味がない。東京電力が悪い、あいつが悪い、こいつが悪いということを言っている。どうでもいいことならそれでいいが、原発の放射能汚染の問題は、ここまで来ると、東電に責任を転嫁しても意味がない。政府が先頭に立って、政府が対応の主体とならねばいかんというのが、私の議論だ。東電はもう、現実何もできないだろう。だから、日一日と悲劇に向かっている。
Q:菅首相は統合本部を数日後に設立し、東電に踏み込んだ。あれは十分ではなかったのか。
A:十分も何も、パフォーマンスはどうだっていい。そういうことを気にすべきではない。事態は分かっているのだ。何が起きているかってことは、ほぼ。東電が分かっているのだ。東電が分かっていることは、政府も分かっているのに決まっている。だから、私が言ったように、他人に責任をなすりつける話ではない。政府が主体となって対応策を、どんな対応策かは専門家を集めなければ分からない。それは衆智を集めて、こうだと決まったら政府が責任を取るからやってくれと、そういうのが政治主導だ。それがまったくみられないから、国民はいらいらして不満を募らせ、民主党はだめだとなっている。
Q:小沢氏が指揮を執っていれば、最初の段階でメルトダウンが起きて危ないということは国民に大きな声で言っていたか。
A:言うだろう。隠していたらどうしようもない。それを前提にして、対応策を考えねばならない。当面は福島の人だが、福島だけではない、このままでは。汚染はどんどん広がるだろう。だから、不安・不満がどんどん高まってきている。もうそこには住めないのだから。ちょっと行って帰ってくる分には大丈夫だが。日本の領土はあの分減ってしまった。あれは黙っていたら、どんどん広がる。東京もアウトになる。ウラン燃料が膨大な量あるのだ。チェルノブイリどころではない。あれの何百倍ものウランがあるのだ。みんなノホホンとしているが、大変な事態なのだ。それは、政府が本当のことを言わないから、皆大丈夫だと思っているのだ。私はそう思っている。
Q:なぜ、このタイミングで出てきたのか。
A:隠しようがなくなったからだろう。知らないが。政府に聞いてみるべきだ。
Q:菅首相はアドバイザーを集めて意見を聞いている。聞き方がまずいのか。
A:何を聞いているのだか知らない。集めただけではしようがない。結論を出して何かやらないと。だいたい、原発で食っている連中をいくら集めてもだめだ。皆、原発のマフィアだから。あなた方もテレビを見ていただろう。委員だの何だの学者が出てきて、ずっと今まで、大したことありません、健康には何も被害はありません、とかそんなことばかり言っていた。原子力で食っている人々だから、いくら言ったってだめなんだ。日本人もマスコミもそれが分からないのだ。日本のマスコミはどうしようもない。
Q:いろいろ聞いてやってみて、だめだったら辞めてもらうということだが、どこまでいったら辞めてもらうのか。どの辺が判断の基準になるのか。
A:どこまでということはない、何もしていないのだから。このまま、ダラダラしていたら、本当に悲劇になってしまう。海も使えなくなる。
Q:原子力エネルギーをどう考えるか。
A:しょせん、過渡的エネルギーとしてはある程度、大口電力供給のためにも仕方がない。だが、高レベルの廃棄物を処理できないからいずれ、新しいエネルギーを見出さなければいけない。そのように私は言ってきた。まさに今、こういう自然災害のなかで、原発の事故まで起きて、これを食い止めると同時に、長期的なエネルギー政策をしっかりと考える必要がある。
Q:菅政権に対する小沢氏の批判だが、今回、事態の深刻さに対して菅政権が国民に対して正直でなかったことにあるのか、それとも、もし政権が強ければ、事態の対応はもっとうまくいっていたということにあるのか。
A:政権が強い、強くないとの表現も間違いではないが、さきほどから言っているように、何か国民生活に関する問題を処理する時に、われわれは、自民党の官僚機構に任せて、おんぶに抱っこの政治はもはやだめだと言ってきた。政治家が自ら決断し、国民のための政治を実行する。今回の原子力の話だけではない。
 しかし、それは何かというと、それはイコール責任だ。決断したら決断した者の責任が生じることは当たり前だ。責任のない決断はない。そういうことを主張してきたにもかかわらず、民主党の政権が、特に菅政権が、そうでないという実態に気づき、国民の支持を失っている。政策の実行ができないのなら、総理をやっている意味がないでしょう、ということだ。
Q:問責決議案や不信任案を提出する、提出しないとの話が出ているが、国難といわれる時期、そのような政治家の動きを国民はどう受け止めているとみるか。
A:困難な時だけ仲良く、仲良くというのは日本人の発想で、だからだめなのだと考える。日本のマスコミは全部そうだ。太平の時は誰でもいいのだ。うまくいっている時は。困難、危機の時だから、それにふさわしい人を選び、ふさわしい政権を作るのだ。日本人は発想が逆だ。大陸の人は、発想がそうではない。日本人は平和ぼけしているから。まあまあ争わないで、まあまあ仲良くという話になる。仲良くしたって、何も解決できない。当たり障りのない話をしているだけだ。波風立てずに、丸く丸く。これでは、政治家など要らない。役人に任せていればいい。
Q:菅首相を降ろせというなか、強いリーダーはいるのか。
A:何人でもいる。
Q:強いリーダーの代表格というと小沢氏が思い浮かぶ。自分でやろうとの気持ちはあるのか。
A:私はもう老兵だから。老兵は消え去るのみ、とのマッカーサー元帥の言葉はご存知だろうか。消え去ろうと思っていたが、もう一仕事やらねばならないとは思っている。
Q:話題を変える。政治資金規正法違反の話は今、どういう状態で、今後、どういう方針で戦うのか。
A:どういう方針もなにもない。私は何も悪いことをしていない。これは官憲とマスコミによるものだ。旧体制の弾圧だからしようがない。調べてほしいのだが、私は何も不正な金はもらっていない。ただ、報告書の時期がずれていただけだ。こういった例は何百、何千とある。単に報告書を直して再提出するだけで済んでいた話だ、今まではずっと。なぜ、私だけが強制捜査を受けるのか。そこを全然、マスコミは考えない。
 これは民主主義にとって危機だ。政府ないし検察の気に入った者しか政治ができないということになる。ほんとに怖い。あなた方も変な記事を書いたとして逮捕されることになりかねない。そういうことなのだ。絶対にこういうことを許してはいけない。私が薄汚い金をもらっているのなら辞める。
 1年以上強制捜査して何も出てない。だからちょっと報告書の書き方を間違ったといったわけでしょう。現実政治というのは権力だからそうなるんだが。戦前もそう。それを繰り返したんじゃ、だめだ。そんな民主主義は成り立たない。それを心配している。自分はなんてことない。なんの未練もない。政治家をやめれば遊んで暮らせるからそれでいいが。日本の民主主義はこのままだと本当にまた終わりになる。外国が心配しているのはそこだ。日本は本当に民主主義国家かという心配をしている。
Q:震災に話を戻す。復興、復旧にこれからお金がかかっていく。もちろん労力も。一つは第2次予算が出るか出ないかで国会でもめている。第2次予算の緊急性と規模はどのようなものと考えるか。もう一つは、財源は増税にするのか、国債発行にするのか。そのへんはどのようにすべきか。
A:復旧に必要なことは、お金がどれくらいかかったって、やらなくてはならない。あのままでは住めなくなる。再臨界に達するかもしれない。あそこが爆発したら大変だ。爆発させないために放射能を出しっぱなしにしている。爆発するよりたちが悪い、本当のことを言うとだ。ずっと長年にわたって放射能が出るから。だから私は金の話じゃない。日本がつぶれるか、日本人が生き延びるかどうかという話だと言っている。金なんぞ印刷すればいい。その結果、国民が負担することになるが。国家が本当に放射能汚染をここで食い止めるという決意のもとに、徹底して金だろうがなんだろうがつぎ込まなくてはだめだ。国民はそのことをよく理解してほしい。国債でやれば借金だし、いずれ償還分は払わなくてはいけないが。
Q:東電の処理について役所が過去にはいろいろ決めてきた。今回、役所の言うとおりに決めてはいけないと考えるか。
A:東電のことはたいした問題ではない。一私企業がどうなろうが。それが本質ではない。ただ、例えば東電がつぶれるとする。電気の配電やら運営ができなくなる。それから5兆円の社債を出しているから、社債が暴落する。公社債市場が大変になる。それから銀行に何兆円かの借金があるから、それが返せなくなると銀行も大変だ、ということだろう。どうってことはない。要は早く原発の放射能を止めることだ。
Q:民主党が政権をとって間もない2009年10月、インタビューした際、自民党をつぶすことが目的だと言っていた。今回、発言を聞いていると、民主党政権に非常に批判的だが、自民党がむしろリーダーになった方がよいと、日本を救えると見ているのではないか。
A:私はそう見ていないが、国民がそのような状況になってきているということだ。これなら自民党の方がまだいいじゃないかという人が多いでしょう。私が描いていた図とちょっと違うのは、民主党政権がもう少し愚直に政治に取り組んでくれることを期待していた。そうすれば、国民がたとえ個別の政策が少しずつ遅れたとしても、変更したとしても絶対支持してくれると。
 そういう民主党をまず作り上げる。しかし、一方において自民党的、というのは日本的な政党だが、これも必要だと。自民党は事実上つぶれたような状況だが、新しい自民党がまた成長してくれると。そこで2大政党という絵を描いていたのだが。どうにも民主党政権自体がおかしくなって、強烈な支持者であった人たちも、ちょっともう見放した格好になっている。
 例えば、何兆円の企業のオーナーである稲盛さんとか、スズキ自動車の鈴木会長とかは、何兆円の企業でありながら、正面切って民主党を応援してくれていた人たちが、本当に一生懸命やっただけに、頭にきちゃって、こんな民主党ぶっつぶせ、もう一度やり直しだと言うくらい失望している。愚直さに欠けた民主党政権でちょっと違った。違ったときは違ったなりに考えなくなくてはならないので仕方ない。だが私の最初の理想は変わらない。日本に議会制民主主義を定着させたいという理想は全然変わっていない。
Q:いま、国会に不信任決議案が提出された場合、それを支持するか。
A:それはどうするかよく考えているところだ。
Q:菅首相はどのくらい政権に留ると考えているか。
A:彼はいつまでも留まりたい。だから困っている。それが彼の優先順位の第一だから。だからみんな困っている。
Q:先ほど「もう一仕事したいという気持ちを持っている」と言っていたが、どのようなことがしたいか。
A:いま言ったことだ。議会制民主主義を日本に定着させたいという、この理想は全然変わっていない。ところがいま、民主党も国民から見放され、自民党もかつての自民党ではなくなってきている。このままでは日本の政治はぐちゃぐちゃになる。だからそうならないように、老骨にむち打って頑張ろうかということだ。
Q:最近になって、メルトダウンが起きていたとか、原子炉に傷が付いていた、などの情報が次々と出ているが、政府は今まで知らなかったのか。
A:知っていたけれど言わなかったということだろう。だから問題だ。
Q:どういうことか。
A:知らない。政府のことだから。言うと大変になると思ったから言わなかったのだろう。大変になるというのはどういうことかというと、政府の対応が難しくなると言うことだ。だけど、わたしはそんなことで躊躇しているときではないと考えている。
Q:声が上がればご自身が前面に出られて首相になるということも考えられるのか。
A:私は、あまりにぎにぎしい立場というのは好きではない。もう気楽にしていた方がいいから、自分で好みはしないが、「天命に従う」というのはよくないけど、「天命に遊ぶ」という言葉が好きになった。天命の命ずるまま、もういらないと言われれば去るのみだ。
Q:最後に、菅総理はどのぐらい総理の座にとどまるとみているか。
A:一日でも早く代わった方がいいと思う。
...............
民主党大会 小沢氏演説=この理念に沿った政治をこの国が渇望しないはずがない2010-09-15

主の降誕(クリスマス)とオウム真理教事件/宗教的知識の欠如/「自分の頭で考える」という習慣のないこと

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2011年12月25日 主の降誕(夜半のミサ)(白)
今日、あなたがたのために救い主がお生まれになった(福音朗読主題句 ルカ2・11より)
コソボ デチャニ修道院 16世紀後半
 このイコンには、降誕図イコンの要素として発展したすべてのものが取り込まれている。イエスはベツレヘムの洞窟で生まれたとする新約聖書外典『ヤコブ原福音書』などに基づき、イコンではイエス誕生の舞台としての岩山と洞窟が描かれる。山は聖母の象徴、洞窟は胎内の象徴ともいわれる。表紙絵のイコンでは、岩山の山肌が青く描かれている点が印象的である。『ヤコブ原福音書』では、イエスが処女から誕生したことを産婆から聞いたサロメという名の女性が、そのことに[O1]疑いを抱き、罰として手が焼けてとれそうになるが、神に嘆願し、幼子イエスを抱きかかえると癒されたという逸話がある(荒井献編『新約聖書外典』講談社文芸文庫参照)。絵画では二人の女性(乳母)が幼子を水盤に入れて水浴させようとしている光景が描かれ、これが降誕図の下のほうに配置されるのが通例化した。この作品が描くように、一人がイエスを抱え、一人が水を注ぐという構図が多い(左下)。
 天から注がれる星の光もイコンの定型要素である。ここではその周囲に天使たちが集い、畏敬の表情で見つめている。王の姿をした東方の学者たちも左端に描かれている。マリアは産後の疲れの中で横たわっているが、その姿は構図全体の中で中央の幼子に最も近く、また最大の比重を与えられている。その姿勢がイコンによってさまざまに描かれる中、ここでは、マリアは幼子と反対側のほうを見つめている。神の子の降誕の神秘を前に一種の畏れを示しているとも考えられる。右下には、憂いに沈むヨセフが描かれている。これも神のはからいの不思議さを前にした人間の一つの態度の象徴としてイコンの伝統の中で重視されている。しかし、マリアとヨセフはこのイコンの中では頭に光輪が描かれている。神の救いの計画の中で大切な役割を果たしたことのしるしであろう。右端には最初に降誕の出来事を告げられる羊飼いの姿も見える。
 幼子は、白い布でくるまれ、ひもで縛られている。人間の条件のもとでの誕生を意味する。ろば(ここでは例外的に馬のように描かれている)と牛がのぞきこむ光景は、イザヤ1章3節をもとにしている。この幼子が主であること、そのことをユダヤ人も異邦人も含めてすべての人が悟るという意味のものとして、東西を通じて降誕図の伝統的要素である。
 このように、このイコンには、聖書やその周辺にあるさまざまな伝承・伝説を含め、教会に伝わっている主の降誕に対する信仰と信心が豊かに反映されている。そのまん中で、洞窟のどこまでも深い闇の中に浮かぶ白い衣の幼子の姿が何より印象的である。「闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた」(第一朗読:イザヤ9・1)。「すべての人々に救いをもたらす神の恵みが現れました」(第二朗読:テトス・2・11)、「今日……あなたがたのために救い主がお生まれになった」(福音朗読:ルカ2・11 )という、主の降誕・夜半のミサのみことばを、今日、わたしたちにとっての希望のメッセージとして噛みしめたい。
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ルカによる福音書 2章
1 そのころ、全世界の住民登録をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た。
2 これは、クレニオがシリヤの総督であったときの最初の住民登録であった。
3 それで、人々はみな、登録のために、それぞれ自分の町に向かって行った。
4 ヨセフもガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。彼は、ダビデの家系であり血筋でもあったので、
5 身重になっているいいなずけの妻マリヤもいっしょに登録するためであった。
6 ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、
7 男子の初子を産んだ。それで、布にくるんで、飼葉おけに寝かせた。宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。
8 さて、この土地に、羊飼いたちが、野宿で夜番をしながら羊の群れを見守っていた。
9 すると、主の使いが彼らのところに来て、主の栄光が回りを照らしたので、彼らはひどく恐れた。
10 御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのすばらしい喜びを知らせに来たのです。
11 きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。
12 あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これが、あなたがたのためのしるしです。」
13 すると、たちまち、その御使いといっしょに、多くの天の軍勢が現われて、神を賛美して言った。
14 「いと高き所に、栄光が、神にあるように。
  地の上に、平和が、
  御心にかなう人々にあるように。」
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〈来栖の独白〉
 「クリスマス」「クリスマス」と世間が云う風潮を、私は嫌悪する。いわゆるクリスマスソングなるものも、嫌悪する。
 イエスがどのようなお方か知りもせず(知ろうともせず)、騒ぐ。おぞましい。
 聖書は“宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。”と記す。貧しく、大工という最下層身分に生まれたイエス。こんな家族を泊めてくれる旅館などなかったのである。このように、イエスは社会の底辺に生誕し、生涯を小さくされた人たちとともに歩まれた。
 この季節、教会は野宿の人たちに(私は「ホームレス」という言葉を好まない)炊き出しをする。考えてみたい。イエスは、炊き出しをする側(教会)におられるだろうか。聖体ランプの灯った教会で「柔和」にしていらっしゃるか。そうではないような気がしてならない。生誕の日、泊まるところもなかった貧しい家(教会は「聖家族」と言う)をその出自とされるイエスなら、現代においても多分路上に凍えておられるのではないだろうか。一杯の雑炊を受けることを求めて並ぶ野宿の人たちの列のなかにおられるのではないか。それが、クリスマスではないだろうか。飢えと寒さのなかにおられる。
 聖書は次のように言う。
“ 『お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。』すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』そこで、王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。』 ”(マタイによる福音書25章35〜40節)
 主の生誕の意味について無関心を決め込む日本人であるから、加賀乙彦氏は、オウム事件の起きた要因について次のように言う。
“ 2つ目の要因は、宗教的知識があまりにも欠如していたこと。戦後の日本は、国家神道一色だった戦前、戦中の反動で、子供たちに学校で宗教について教えることがタブー視されてきました。いや、学校だけではありません。宗教教育は戦後60年間ないがしろにされ続けてきたのです。結婚式を教会で挙げ葬儀を仏式で行っていたとしても、60歳以下の日本人の多くは仏教もキリスト教も神道もイスラム教も、基本的なことさえ知らない。そういう親のもとで育った子供たちは、いわば無菌室のなかにいたようなもの。だから、カルト宗教という悪魔に対する免疫がまったくないと言っていい。
 オウム真理教は、麻原彰晃が1984年に設立したヨーガ道場「オウムの神仙の会」にはじまります。ヨーガを用いた修行による煩悩からの解放を説き、煩悩を1つずつ超越することを解脱と呼び、またみずからは単身ヒマラヤで修業し「ただ一人の最終解脱者」となったなどと自称していましたが、その教義は既存の宗教を知っている人間から見れば笑ってしまうようなものでした。ヒンドゥー教、小乗仏教、大乗仏教、チベット密教、キリスト教、ゾロアスター教など、さまざまな宗教の教義から利用しやすい部分を切り取って、自分に都合のいいよう解釈し、つぎはぎしたにすぎません。宗教に関する基本的な知識を持っていれば、マインド・コントロールされる前の段階で、そのいかがわしさに気づき、ほかに魅力的な要素があろうとも客観視できたのではないでしょうか。
 麻原が予言していたハルマゲドン、世界最終戦争にしてもそうです。『新約聖書』のヨハネ黙示録に、ハルマゲドンという場所で天使と悪魔との大戦争が勃発するといった記述があったため、そこから転じて後年、ハルマゲドンを「最終戦争」、「この世の終わり」などの意味で使う人々が現れました。しかし、現代のキリスト教徒の多くは、ヨハネ黙示録を未来の出来事の予言ではなく黙示文学として受け止めています。そういう知識や、これまでも多数のカルトや新興宗教がハルマゲドンという概念を人々の恐怖を煽って入信させるために利用していたという認識を、オウムにはまる前に若者たちが持っていたなら・・・と思わずにはいられません。 ”
 そして更に深刻なことは、次である。
“ 3つ目は、第2章でも述べたように自分の頭で考えるという習慣がないこと。昔から、日本人全般にその傾向があるところへもってきて、彼らは子供のころから受験戦争で勝つためのパターン化された勉強法を強いられてきた世代です。オウム幹部のように、先生や親の言う通りいい成績を取り、いい大学に入ることを第一義として生きてきた受験戦争の勝利者は、なおさらそうでしょう。1979年からは国公立の大学入試にマークシート方式が導入され、ますます若者から考える力を奪ってしまいました。大学や大学院で勉強した物理や化学の専門知識は、サリンやVXガスを作れるほど豊富であっても、みずから進んでさまざまなジャンルの本を読み、きちんと自分の思想を整えるというところまでいっている人は非常に少ないと思います。だから、出来の悪いマンガのようなオウムのイデオロギーに簡単に取り込まれてしまったのではないか。林郁夫被告は、前出の体験記にこうもつづっています。
〈麻原のいうことを至上のものとして生活していたことから、そのように葛藤すること自体を、私自身が麻原の教えを理解できない劣った心の持ち主であるからだと思うようになりました〉
 教団の医師であり、薬物を使ったマインド・コントロールのことを熟知していたはずの彼でさえ、麻原の方針を疑いながらも、そんな自分のほうを否定し教祖の指示に従ってしまう。もちろん、オウム真理教は多くのカルトがそうであるように、教えに疑問を持ち脱会しようとする者に対しては、最悪の場合ポアという手段を取るなど恐怖による締めつけを行っていました。しかし、林の発言からはやはり、彼らが共通して持っていただろう自分の頭で考えてこなかったがゆえの弱さ、立場が上の者、声の大きな者に流されがちな傾向を強く感じます。 ” 
 自分の頭で考え、自分の言葉でモノを言う。こういったことが、今の日本人にひどく不足しているように感じられてならない。女性のお化粧一つとってみても、そうではないだろうか。上手で美しいが、何やらみんな画一的である。
 このように日本が一様にクリスマスを目出度がっているうちに、この国は亡んでしまうのでではないか。そのような気さえ、してしまう。主体性のない、気持ちの悪い国だ。

「小沢裁判」は小沢を抹殺するために行われている政治裁判/ 「国家権力」という化け物と、我々は戦っている

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二見伸明の「誇り高き自由人として」
指揮官・司令塔不在の政治の空白がそら恐ろしい ──「一川問責」は野党政治家の救い難い劣化の象徴だ

 大臣の言葉尻をとらえて辞任に追い込み、政権にダメージ与える野党の手法は政権交代前も現在も変わらない。いやはや、である。一川保夫防衛相問責決議は、今までとは比較にならないほど低次元、姑息で野党の衿持もなく、一歩間違えれば亡国の危機にある歴史認識も気迫も全くないものだった。要するに、参院での過半数を悪用して片っ端から問責決議を提出可決させ政治を機能不全にする小手先の嫌がらせだったのだ。酒席でのオフレコとはいえ、前沖縄局長の発言は許せるものではない。一川防衛相が直ちに沖縄局長を解任したことは、むしろ評価されていい。それなのに「監督責任」を理由に問責するとはいったいどういうことか。
 太平洋戦争で沖縄は本土と軍に見殺しにされた。戦後はアメリカという国家とアメリカ兵に半世紀以上にわたって「犯され」、本土に復帰し沖縄県となっても未だにアメリカとアメリカ兵に「犯され続けて」いるのだ。その現実を、見て見ぬふりをし、カネで片をつけようとしてきたのが日本政府だ。前沖縄局長の「不適切な発言」の根底には「犯されて」いることを歴代政権が黙認してきた歴史が根深く張っているのだ。
 「女児暴行事件」のとき、私は新進党の「明日の内閣」の安全保障担当相だったが、「事件」の奥深い深層に沖縄県民の苦悩、日米政府への不信を感じた。鹿野道彦「明日の内閣」の外相(現農水相)と相談し、自社さ連立政府に「日米地位協定の見直し、改定」を要求した。
 一官僚の酒席でのオフレコ発言で、あらためて深層心理から解き放たれた「犯」を傍観していたのは、今の野党、当時の政権党・自民党である。一川防衛相の監督責任を問責する前に歴代の首相、外相、防衛相、沖縄担当相は沖縄県民に土下座して謝罪すべきではないか。自民党には一川を問責する資格などまったくないのである。「沖縄の怒り・不信」を「不適切発言に対する防衛相の監督責任」にねじ曲げて、全ての責任を一川一人に押し付けた理由を野党、特に自民党に問いたい。
 鳩山由紀夫首相(当時)が普天間基地の国外移転に奔走している姿に沖縄県民は希望の灯を見たにちがいない。民主党は全力をあげて鳩山の国外移転構想に協力すべきだった。ところか、アメリカにおべっかを使い「辺野古」に固執し、足を引っ張ったのは岡田外相、北沢防衛相、前原沖縄担当相とその配下の外務・防衛官僚だった。本来であれば、こういうときこそ、アメリカと対等以上に渡り合える政界の第一人者小沢一郎の構想力、剛腕に沖縄の未来を託すべきだったのだ。にもかかわらず、小沢への嫉妬か、或いは、牢固とした闇の勢力に脅されたのか、それとも、アメリカの圧力か、小沢を政策決定から意図的に外す大失態を犯したのは民主党、いな、「政治のなんたるかを知らない、おしゃべり好きで、責任を回避する」オリジナル民主党の幹部ではなかったか。(注:東日本大震災と福島原発も同じだ。小沢を抹殺するのではなく、小沢に財源と権限を与えるべきだった)。
 またアメリカまで行って「辺野古移転」を主張しアメリカから「いい子」扱いされた石破自民党政調会長(当時)の言動は利敵行為そのものである。鳩山が「県外移転もやむなし」と舵を切ったとき、そっぽを向いたのは全国の知事だ。国民だって同罪だ。事と次第によっては自分の県に沖縄の基地がくるかもしれないので「県外移転」は、本音では迷惑千万だった。その心情は理解できる。であるならば、全県知事、市町村長、県市町村会議員、マスコミが一致団結、総力をあげてアメリカに国外移転を「強要」すべきではなかったのか。沖縄の米海兵隊の最も主要な任務は「朝鮮半島有事」のとき、在韓米軍の家族を救出することだ。こんな海兵隊は迷惑だ。鳩山の構想を、自民党と一部の民主党を含めた政治家やマスコミは「迷走」と軽蔑・非難したが、沖縄県民とまともな日本人は、戦略戦術的には稚拙だが「正しい軌道を走っている」と評価したはずだ。安保マフィアにはお気の毒だが、血の雨を降らさない限り辺野古移転は絶対にありえない。
■沖縄を自治州にせよ
  ところで、唐突だが琉球王国の歴史を思い起こし、大阪都構想の向こうを張って沖縄を自治州に格上げしてはどうか。地方分権のモデルになる。私が現役時代の20数年前、沖縄選出の某党の国会議員にその話をしたとき、剣もほろほろだったが。
■日米合意を白紙にしよう
  マスコミや野党は「不適切発言」によって「政府、沖縄、アメリカとの信頼関係が崩れた」と批判している。これこそ人心を惑わすデマゴーグである。崩れたのは日本を属国と考えている「沖縄利権と政府、米軍、安保マフィア」の馴れ合いの「信頼関係」だ。アメリカはグァム移転の予算を凍結するという。渡りに船とはこのことである。日米合意を白紙にし、普天間基地撤去は当然のこととして沖縄の米軍基地の縮小・撤退を、両国がそれぞれの世界戦略、政策をぶつけ合って解決すべきだ。尖閣列島を含む沖縄は日本の領土だ。アメリカではなく、日本の自衛隊が守るのが国際社会の常識である。
 2009年2月17日深夜の小沢・クリントン米国務長官会談で小沢は「日本政府は自らの主張をきちんとしなかったところに問題があった。これからは同盟国としてお互いの世界政策、戦略を話し合い、合意を得たうえで個別の問題に対処すべきではないのか」と述べた。日本のマスコミはこの会談を義務的に小さく扱ったが、外国紙はかなり詳細に報道したようだ。ちなみに、フィナンシャルタイムスは「He also said he considered China a "bigger problem" for the Japan-Us alliance than North Korea」と報じている。クリントンは小沢発言を「大変な洞察力だ」と驚嘆した。
 歴史に「若し」はないというが、鳩山が小沢と二人三脚で沖縄問題に取り組んでいたら、新しい展開があったかもしれない。
■一川よ、エセ専門家に誤魔化されるな
  ところで、10数年来の友人、一川防衛相に一言申したい。自衛隊、特に幹部には一切、政治批判をさせるな。した者は直ちに首にせよ。軍部がのさばった戦前戦中を他山の石とすべきだ。自衛隊は国が決めたことを忠実に実行すればいいのだ。これがシビリアンコントロールの原点だ。日本には本物の安全保障の専門家はいない。自称「専門家」のネタ本はアメリカの世界戦略と外交政策だ。彼らは所詮、アメリカの防衛専門家の講義を受け、それを金科玉条として、アメリカの意向に沿った防衛論こそ正道と思い込み、難解な防衛用語とレトリックを駆使しているだけである。
 話は飛躍するが、古い映画「大菩薩峠」の主人公・机龍之介を剣道5段の月形龍之介が演じた。剣を知っている映画評論家が言ったそうだ。「月形では5段の机龍之介にしかなれない。むしろ剣の心得のないほうが本物の机になる」と。アメリカナイズされたエセ専門家の鋳型にはめ込まれてはいけない。世論調査では厳しい数字だが、それはそれとして、謙虚に受け止めればいい。「うまく生きよう」などと思うな。日本と沖縄のために喜んで死んでいけ。頑張れ! ちなみに、私は「衆議院安全保障委員長」を二期務めている。
 1997年晩秋の新進党代表選で私は小沢一郎の推薦人になった。理由は単純・明快である。「世の中が"春のうららの隅田川"の時代なら、だれが首相になってもかまわないが、厳しい激動・激浪を乗り切れるのは、構想力の大きい剛腕の小沢以外にいない」である。現在は当時とは比較しようもないほど、国際社会も日本国内も非常に危険な、難しい情勢だ。
 EU発金融不安・世界恐慌は地響きをたてて迫っている。アメリカは「ウォール街占拠」に見られるように失業と貧富の格差の拡大に手の打ちようがない。ニューヨーカー誌のジョージ・バッカー氏によると1978年に企業の最高責任者と最低賃金労働者の賃金差は40対1だったが現在では400対1になっているそうだ。コロンビア大学のロバート・C・リーバーマン氏も「勝者が全てを独占する経済」と決めつけ「アメリカという国が富裕層とその他を分ける縫い目にそって分裂してしまう」と警告している。来年は大統領選もあるが、アメリカは20%、いな、1%の富裕層のための政治に堕している。政治が機能しなくなっているのだ。TPPも、言っていることはきれいごとだが、アメリカの富裕層の価値観を押し付ける新しいアメリカ型の帝国主義である。アメリカ発の恐慌もありうる。(注;誤解されないように付言する。『私は自由貿易論者である』)
 中国も不安要因充満である。ヨーロッパ向けの輸出が激減し、景気は下降局面に入った。国内ではポスト胡錦涛をめぐる江沢民派の太子党(高級幹部の子女グループ)と胡錦涛派の中国共産主義青年団(団派)との確執は凄まじく、国家主席に内定したと恩われた太子党の習近平も主席になれる保証はない。しかも、「共産党資本主義」は拝金主義を生み出し、党幹部・官僚の汚職・腐敗は日常茶飯事である。都市と農村の貧富の格差も異常すぎる。こうした中国の内部矛盾に抗議するデモは全国に蔓延し、暴動に発展しているものもある。また、3億数千万にのぼるネット人口は世界と情報を交換し、国際社会の支援を受け、独立を要求するチベットや人権問題で中央政府に反抗する勢力もかなりいるようだ。2012年1月の台湾総統選の行くえも目が離せない。内側から見た中国は、政治が機能しない崩壊寸前の状態といえよう。不動産バブルが弾ければ、世界恐慌の引き金になるだけでなく、それをきっかけとして政治動乱が勃発する惧れもある。1929年の恐慌から脱却するために太平洋戦争があった。まさかとは思うが、第三次世界戦争の惧れも否定できない.
 小沢がクリントン長官に「市場主義と共産主義は相容れない。中国をソフトランディングさせるのは日米の役目だ」と主張したのは洞察力に裏打ちされた卓見と言わざるをえない。
 日本については多言を必要としない。日本の政治は、一言で言えば、「指揮官・司令塔不在」「構想力不足」「 しみったれ」「のろま」「責任回避」「無責任」だ。今回のような大惨事に対処するには、まず、資金だ。直ちに自治体が取り組まなければならないのは、被災者の捜索、ガレキの除去、電気・水道などの復旧、物資を輸送するためのインフラ整備、仮設住宅だ。その資金を、アメリカは半狂乱になるだろうが、手持ちのアメリカ国債を売却するなり、外債を発行して調達してもいいではないか。ところが、谷垣自民党総裁は復興税説を主張し、岡田幹事長は予備費で対処したいと述べた。その構想力の貧困さにはあきれてものも言えない。しかも、震災から半年以上経ってようやく11月21日に第三次補正予算が成立した。予算が現地に配分されるのは来年の1月下旬か2月頃だろう。兵法で禁止されている「兵力の逐次投入」である。しかも、「のろま」で「しみったれ」だねぇ。
閑話休題  11月27日号のサンデー毎日の「小沢・鳥越対談」は圧巻だ。その中に興味深い小沢の発言がある。鳥越が例の「4億円」を質問したのに対し、小沢の説明は「僕のお金です(略)親からの相続は大きかった。僕自身だって稼いでいます。印税だけでも1億何千万円もありますし...」と端的である。もの書きが政治家になったのであればびっくりしないが、売れないことで定評のある政治本で1億何千万円も稼げる政治家は小沢だけだろう。小沢理綸に、希望に満ちた日本を見出し、共鳴する声なき声が多いことを示しているといえよう。信じがたいが小沢は政治家であると同時に思想家なのだ。
 11月13日の読売新聞は輿石幹事長に小沢観を語らせている。「元代表を尊敬しています(中略)だから、私はよく極端なことを言う。『小沢さん抜きの民主党はない。政権交代もない。小沢さん抜きの民主党に明日はない』と。小沢さんは幹事長の一つのモデル。政権中枢の幹事長として、10年、20年先の日本や外交のことも考える。これなら大丈夫だっていう安心感。それがないと国民の支持はえられない」と。
 かつては「左翼系革新」の理論誌、今は「中道・リベラル」の高級総合雑誌「世界」12月号が陸山会判決を厳しく批判している。北海道大学の白取祐司教授は「『推認』有罪の説得力を問う」と純法学者の立場から判決文の問題点を暴き、江川紹子氏は冷徹なジャーナリストの眼で「原則を捨てた裁判所」と題して司法の腐敗堕落を糾弾している。また、故意か偶然かわからないが、「法律時報」11月号には「追認」について「鹿児島老夫婦強盗殺人事件・無罪の判決文」を題材に情況証拠、追認の研究論文が掲載された。そのなかで「被告人に不利な状況証拠だけを積み重ねるのではなく、(被告人に)有利な情況証拠や、犯人であれば発見されるであろうと考えられる痕跡が発見されないこと等の消極的な情況証拠も取り上げるべきである」と述べている。陸山会事件にこの理論が適用されていれば石川ら3人は完全無罪で、小沢裁判もなかった。12月16日の公判では村木事件で悪名高い前田元検事が証人として出廷し、「私が裁判官なら(小沢)」無罪の判決文を書く」と述べたそうだ。民主主義と日本の将来を憂う人々が、小沢に対するマスコミを含む体制によるマインド・コントロールから目覚め始めているのではないか。
 小沢裁判は小沢を抹殺するために行われている「政治裁判」だ。「常識」で判断すると取り返しのつかないことになりかねない。司法が画策しているのは小沢を抹殺することによって民主主義の土台を崩すことである。眼に見えない「国家権力」という化け物と、我々は戦っているのだ。悲観してはいけない。絶望してはならない。19世紀のイギリスの宰相ディズレリーは「絶望は愚者の結論だ」と言った。
 40数年ぶりにアランの「幸福論」が角川書店から出版された。1940年に日本で初めて邦訳、出版した仏文学の石川涌は私の盟友の父君なので言うわけではないが、若者の間でこの本が数十年ぶりに静かなブームになっているそうだ。大震災いらい、原発事故も含めて日本の将来に、表面的にはうわついているように見える若者たちもそこはかとなく不安を感じていることの反映ではないだろうか。アランは言っている。「悪い天気には、いい顔をするものだ」
 来年は辰(龍)年だ。どじょうが龍になることありえない。いっそのこと。小沢を龍にしてしまおうではないか。「雨の猛きを見て龍の大なるを知る」という。「公共財の小沢」の復活・活用には反動も並みではないだろう。
 「民主主義の崩壊を食い止めるため」に戦う人たちよ、小異を残して大同につこうではないか。
 投稿者: 二見伸明 日時: 2011年12月21日 23:33 
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カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は小沢一郎裁判をどう見ているのか2011-10-27 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 日刊ゲンダイ20102010月24日
小沢氏のカネの出所?「それがどうした」と言いたい<司法と大メディアによる「人物破壊」>
「誰が小沢一郎を殺すのか?」(角川書店)――オランダ人のジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は今春、この本を出して話題を呼んだ。小沢一郎という異能の政治家を検察、メディアがよってたかって潰そうとしている実情を描き、日本の特殊性、異常を浮き彫りにしたのである。さて、その後、陸山会事件では元秘書3人に有罪判決が下り、小沢氏本人の裁判も佳境を迎える。司法判断、それを報じるメディアの姿勢、小沢氏本人の対応について、改めて、冷徹なジャーナリストに聞いてみた。 ⇒本文
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政党政治が崩れる〜問責国会が生む失望感===透けるポピュリズム2011-02-24 | 政治
『小沢一郎 語り尽くす』TPP/消費税/裁判/マスコミ/原発/普天間/尖閣/官僚/後を託すような政治家は 2011-11-20 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
大マスコミが伝えない小沢一郎 憂国論2011-10-08 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
「小沢一郎氏記者会見」2011年3月3日自由報道協会主催2011-03-04 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
陸山会・西松建設事件判決に見る危うさ 調書主義を転換、裁判官の印象・推認で黒白を決するようになった2011-09-27 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
「小沢一郎氏 裁判」=検察官による「虚偽捜査報告書作成事件」 郷原信郎氏2011-12-21 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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小沢よ、いまこそ日本を救え
 二見伸明の「誇り高き自由人として」
小沢よ、いまこそ日本を救え
 民主党は「国民主権=政治主導、『国民生活が第一』」の自立した共生国家への道を歩むか、「官僚主導=無責任政治、既得権擁護」の、カビの生えた旧来型の古い政治に逆戻りするかの岐路に立たされている。大げさではなく、民主党代表選には、日本の存亡がかかっている。
 23日、代表選への立候補を表明した前原誠司は「『小沢史観』からは脱却しなければいけない。。元代表の党員資格停止処分は、執行部の決定を尊重すべきだ」と語った。「小沢史観」とは何か。前原が説明していないので推測する以外にないが、「日本改造計画」に示した理論と政策、それを具現化するために、守旧派の政治家やマスコミの攻撃・弾圧にさらされて18年間も戦い続けている小沢の排除を対立軸とし、小沢抹殺を基本戦略とする民主党主流派の歴史認識だ。その「小沢史観から脱却する」とはどういうことなのか。素直に考えれば「小沢理論は正しい。政権交代の原点に立ち帰り、小沢を筆頭に、国難に対処できる挙党一致体制を構築する」ということだ。
 しかし、政治の世界は手練手管、騙し合いが幅を利かせる世界である。代表に選出された場合、前原の「『小沢史観からの脱却』とは、小沢理論を肯定するのではなく、むしろ、時代にあわないものとして無視することだ」と開き直ることもありうるだろう。もし、そういう事態になれば、民主党は分裂し、政界再編成の大津波が襲ってくるだろう。テレビ報道によると、23日、仙谷由人は小沢と極秘会談をして、「挙党一致で政権、党運営をするので、前原をよろしく」と懇請し、小沢から「挙党体制はわれわれが主張してきたことで、それを壊したのは、あなたがただ」と返されたそうである。
 小沢の座右の銘は「百術一誠にしかず」である。「言ったこと」「約束したこと」を守り抜く政治家は、現在の日本では小沢一郎だけだろう。その姿に鬼気迫るものを感じることもあるし、オチャラケた冗談を言いにくい堅苦しさを覚えることもある。小沢一郎は、「芸能人的政治家」ではない。
 THE WALL STREAT JOURNALのインタビューで小沢は「何か国民生活に関する問題を処理する時に、われわれは、自民党の、官僚機構に任せて、おんぶに抱っこの政治はもはやだめだと言ってきた。政治家が自ら決断し、国民のための政治を実行する。今回の原子力の話だけではない。それは何かというと、イコール責任だ。決断したら決断した者の責任が生じることは当たり前だ。責任のない決断はない。そういうことを主張してきたにもかかわらず、民主党政権が、特に、菅政権が、そうでないという実態に気づき、国民の支持を失っている」と述べている。これは政治の本質を衝いた最も重要な基本原則だ。
 私は前原の才気煥発さをそれなりに評価してきたが、民主党代表としての偽メール問題の処理でトップリーダーとしての資質に疑問をもち、国交相としての「八ツ場ダム」、沖縄担当相、外相としての「尖閣列島」などで露呈した、無責任な、マッチポンプ的言動には国を滅ぼしかねない危うさと軽さを感じた。主流派の一員として小沢排除を推進したのは、偽メール問題で解党の危機に瀕した民主党を蘇らせた小沢に対して前原にはトラウマがあるのではないだろうか。
 前原の出馬で代表選の構図は変わった。立候補を辞退する者もあるかもしれない。票が欲しいだけで小沢詣でをしてオベンチャラを言った者は「物乞い」ならぬ「票乞食」である。小沢と手を携えて新しい日本をつくろうと決意した者はそのことを堂々と宣言すればいい。日本の命運を賭けた「歴史に残る」代表選にすべきだ。無責任に面白おかしく「乱立、数合わせ」などとヤユするマスコミの陰謀に踊らされてはならない。2年間の民主党政権は、たしかに行き当たりばったりの危ういものであったが、まだ2年間も残り時間があり、十分に間に合う。
 ところで、マニフェストの妨害者は官僚と利権団体、マスコミであることを認識しておく必要がある。子ども手当、高校無償化、農家の戸別補償など国民に支持された政策を実行するためには総予算を組み替え、優先度の低いものはカットすればいい。これは官僚が天下り先の業界・団体と長年にわたって作り上げた歳出構造の抜本的改革である。官僚が身体を張って抵抗するのは無理からぬところだ。しかも、子ども手当にせよ、高校無償化、農家の戸別補償にせよ、官僚が裁量する余地のないものだ。官僚にとっては「官僚の思考」がすべてであって、彼らが関与できない、理解できないものは、「バラマキ」なのである。予算減額・カットにおののく利権集団もマニフェストを「バラマキ」として葬り去ことに躍起である。自民党にとっても、政権を奪回し、既得権益を確保するためには小沢の影響を受けた新政権の政策を「バラマキ」と決めつけ、撤回を要求するのは当然のことだ。官僚機構や利権集団と密着している大手マスコミは「マニフェスト撤回」の強力な宣伝部隊である。代表選に出馬する者には、「マニフェスト実現に命を賭ける」覚悟を求めたい。
 8月7日、東京・浅草で、21日には神田神保町の古書街で「小沢復権」を求めるささやかなデモがあった。28日には新潟でもデモがあるそうだ。中国に「東山再起」の故事がある。民主党は声なき民の叫びを真摯に受け止めるべきだ。マスコミの宣伝は浮草にすぎない。大地に根を張った民草の声は勁草だ。勁草は強い。
 小沢理論は巨大な羅針盤である。マニフェストの枝葉末節はともかく、大骨、中骨を大事にしながら日本丸の舵取りをすべきだ。そこに、東日本をはじめとする日本列島の、人間の血の流れる力強い復興がある。日本人一人ひとりの「体力」がみなぎる日本の「底力」がある。民間会社を装っていながら、実は権力の御用機関のような性格をもつ格付け会社の評価など、糞喰らえだ。小沢は、今こそ、日本のために、その影響力を最大限に発揮すべきである。
投稿者: 二見伸明 日時: 2011年8月25日 21:34
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証言ドキュメント「永田町・権力の漂流」/出演:小沢一郎、鳩山由紀夫、菅直人

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証言ドキュメント「永田町・権力の漂流」
NHKスペシャル(総合テレビ)12月25日(日)午後9時15分〜10時43分

出演:小沢一郎、鳩山由紀夫、菅直人
50兆円を超える過去最大の赤字国債発行が見込まれる平成24年度予算案の編成が大詰めを迎える2011年12月。熱狂の政権交代から2年あまり。あの時の高揚感はすっかり失われ、すでに3人目となった野田総理大臣はひたすら低姿勢での政権運営に務めている。2年前、政権交代を実現させた最大の原動力は「自民党政治からの脱却」を求めた世論だった。しかし、「脱官僚依存」と「政治主導」を掲げてスタートした新政権は迷走に迷走を重ねた。その根本にあったのは「小沢か、脱小沢か」という民主党内の根深い路線対立と、「利害調整」や「合意形成」ができない政治力の決定的な欠如だった。そして、大震災と原発事故という未曾有の国難に直面しながらも政治は混迷の度を深めていった。永田町の住民たちはこの2年間で何を経験し、何を学んだのか。政権運営に関わった与党幹部や、野党議員の証言を軸に、なぜ民主党の理想は挫折したのかを検証。その失敗の核心に迫り、新しい政治のあり方を展望する。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/111225.html
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〈来栖の独白〉
 たいして期待はできそうにないが・・・。

「小沢裁判」は小沢を抹殺するために行われている政治裁判/ 「国家権力」という化け物と、我々は戦っている2011-12-24 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

難聴が生み出したベートーベンの名曲たち

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難聴が生み出したベートーベンの名曲たち、オランダ研究
2011年12月22日 18:37 発信地:パリ/フランス
【12月22日 AFP】ドイツの作曲家ベートーベン(Ludwig van Beethoven)が生み出した名曲の数々に、聴力の衰えが深く反映されているというオランダの研究チームによる論文が、20日の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)」に掲載された。
 ベートーベンが楽器や人の話し声の高音が聞こえづらいと最初に訴えたのは1801年、30歳のときだった。1812年には、ほとんど叫ぶように話さないとベートーベンには聞き取れなくなり、1818年には筆談でのコミュニケーションを始めている。1827年に死去したが、晩年には聴力はほぼ完全に失われていたとみられる。
 ライデン(Leiden)にあるオランダ・メタボロミクスセンター(Netherlands Metabolomics Centr)のエドアルド・サセンティ(Edoardo Saccenti)氏ら3人の研究者は、ベートーベンの作曲活動を初期(1798〜1800年)から後期(1824〜26年)まで4つの年代に区切り、それぞれの時期に作曲された弦楽四重奏曲を分析した。
 研究チームが着目したのは、各曲の第1楽章で第1バイオリンのパートが奏でる「G6」より高い音の数だ。「G6」は、周波数では1568ヘルツに相当する。
 難聴の進行とともに、G6音よりも高音域の音符の使用は減っていた。そしてこれを補うかのように、中音域や低音域の音が増えていた。これらの音域は、実際に曲が演奏されたときにベートーベンが聞き取りやすかった音域帯だ。
 ところが、ベートーベンが完全に聴力を失った晩年に作られた曲では、高音域が復活している。これは、内耳(骨伝道)でしか音を聞けなくなったベートーベンが作曲の際、演奏された音に頼ることをやめ、かつての作曲経験や自身の内側にある音楽世界に回帰していったためだと、研究は推測している。(c)AFP

【参考】サセンティ氏らによる実演付きの研究結果説明の動画(ユーチューブ)(英語)

小沢一郎氏裁判/弁護側、虚偽の報告書を根拠にした起訴議決は無効だとして報告書証拠申請へ

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小沢元代表弁護側、「虚偽」報告書を証拠申請へ
読売新聞 12月24日(土)18時40分配信
 資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡り政治資金規正法違反(虚偽記入)に問われた小沢一郎民主党元代表(69)の公判で、当時の東京地検特捜部検事が作成した捜査報告書に虚偽があった事実が発覚した問題で、小沢被告の弁護側は来週、この報告書を根拠にした東京第5検察審査会の起訴議決は無効だとして、報告書を東京地裁に証拠申請することを決めた。
 同審査会に提出された捜査資料のリストの開示も求め、報告書などが起訴議決に与えた影響を明らかにしたい考えだ。
 この捜査報告書は、元特捜部の田代政弘検事(44)が昨年5月、保釈された同会元事務担当者・石川知裕衆院議員(38)の再聴取後に作成。昨年1月の勾留中の取り調べで小沢被告の関与を認めた理由として、石川被告が「検事から、ヤクザの手下が親分をかばうようだと言われたことが効いた」と述べたと記載している。
最終更新:12月24日(土)18時40分
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「小沢一郎氏 裁判」=検察官による「虚偽捜査報告書作成事件」 郷原信郎氏2011-12-21 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 「激変する環境、思考停止する組織〜郷原信郎が斬る」<Vol.16> 2011.12.19 
陸山会事件を「平成の盧溝橋事件」にしてはならない〜虚偽捜査報告書作成事件の捜査・調査に速やかに着手すべき〜

 このところ、九州電力の問題、オリンパスの問題など企業をめぐる問題ばかり取り上げてきたこのコーナーだが、今回は、久しぶりに検察の問題を取り上げる。
 検察審査会起訴議決によって起訴されている小沢一郎氏の公判で、昨年の秋に表面化し、検察の信頼を失墜させた大阪地検をめぐる不祥事をも上回る重大な問題が、先週、明らかになったからだ。
 12月15日に東京地裁で開かれた公判において、元東京地検特捜部所属の田代政弘検事の証人尋問が行われ、昨年5月、同会元事務担当者の石川知裕衆院議員を保釈後に再聴取した際の状況について、石川被告が供述していない内容を捜査報告書に記載していたことが明らかになった。
 その報告書は小沢被告に対する起訴議決を出した東京第5検察審査会にも提出され、審査の資料とされ、議決書にも一部が引用されている。
 石川被告は昨年1月の逮捕後、田代検事の取り調べを受け、「小沢被告の了承を得て政治資金収支報告書に虚偽記入をした」との供述調書に署名した。そして、同年5月17日の任意の再聴取でも同様の内容の調書が作成され、同日付けの取調べ状況に関する捜査報告書とともに、検察審査会に捜査資料として提出された。この問題を、一面トップ、社会面トップで報じた16日付読売新聞朝刊によると、同報告書には、田代検事が小沢氏に対する報告とその了承について調査を録取した状況を質問したことに対する石川氏の供述として、以下のように記載されている。
 「私が『小沢先生は一切関係ありません』と言い張ったら、検事から、『あなたは11万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。小沢一郎の秘書という理由ではなく、石川知裕に期待して国政に送り出したはずです。それなのに、ヤクザの手下が親分を守るためにウソをつくのと同じようなことをしたら、選挙民を裏切ることになりますよ。』と言われたんですよね。これは結構効いたんですよ。堪えきれなくなって、小沢先生に報告し、了承も得ましたって話したんですよね。」
 ところが、そのようなやり取りは、石川被告が再聴取を隠し取りした録音記録にはない。
 同日の証人尋問で、その点について、小沢被告の弁護人から追及された田代検事は、「数日をかけて、思い出しながら報告書をまとめる際、勾留中のやり取りなどと記憶が混同した。虚偽ではない」と釈明した。
 田代検事の行為は、検察官の作成名義の捜査報告書という公文書に虚偽の記載をしていたということであり、虚偽性についての認識があれば、虚偽公文書作成罪という犯罪に該当する。
 虚偽公文書作成という犯罪は、形式上犯罪に該当する行為であっても、可罰性の幅は非常に広い。公文書の内容に事実に反する点があったとしても、それが官公庁内部に止まるものであれば、実質的な処罰価値はない場合も多い。しかし、本件のようにその報告書が司法作用に重大な影響を及ぼすというのは、最も悪質・重大な虚偽公文書作成の事実と言えよう。
 検察官の取調べをめぐる問題は、郵便不正事件でも、小沢氏の元秘書3人が起訴された政治資金規正法違反事件でも問題になった。被疑者が実際の供述しているのとは異なる内容の供述調書が作成され、威迫、利益誘導、切り違えなどの不当な方法によって被疑者に署名をさせるという方法が問題にされ、供述調書の請求が却下されるという事例が相次いでいる。
 被疑者の供述を内容とする捜査報告書をめぐる今回の問題は、検察官の供述調書をめぐる問題とは性格を異にする。供述者の署名があって初めて書面として成立する供述調書とは異なり、捜査報告書は、検察官側が一方的に作成できる書面だ。あくまで捜査の状況を報告するための文書であり、その分、被疑者の供述内容を立証する証拠としての価値は低い。一般の刑事事件においては、捜査報告書によって被疑者の供述が立証され事実認定が行われることはほとんどない。
 しかし、検察審査会の審査員という素人の判断との関係では、捜査報告書の取扱いも全く異なってくる。証拠の種別、価値等について前提となる知識が乏しい審査員は、捜査報告書であっても、被疑者の供述として書面に記載されていれば、それなりに信用できるもののように判断することとなる。
 今回虚偽であることが明らかになった捜査報告書は、検察審査会に資料として提出され、審査会の判断の根拠とされたものであり、それを意図して行われた疑い、つまり、虚偽の捜査報告書が検察審査会をだます目的で使われた疑いがある。そこに、これまで供述調書に関して問題とされてきたこととは異なる重大な問題があるのである。
 そこで、まず問題となるのは、報告書に虚偽の記載が行われたことが意図的なものであるかどうかである。
 田代検事は、勾留中の取調べのやり取りと混同したという「過失」を主張しているが、起訴後、保釈で身柄非拘束の状況での取調べでのやり取りを、その直後に捜査報告書に記載する際に、3ヶ月前も前の勾留中のやり取りと混同するなどということ自体が考えられない。
 また、通常、被疑者の供述が変遷したのであれば、変遷の時点で理由を聞いているはずであり、3ヶ月以上も経った、釈放後に、勾留中の供述の理由を尋ねるということも、検察官の取調べの経過として考えられない。そのような常識では考えられないような質問を自分が行い、石川氏がそれに答えているという状況を、田代検事が「自らの記憶」として報告書に書いたとは考えられない。
 しかも、石川氏の勾留中の取調べの大半が、水谷建設からの裏献金の受領の問題に費やされたこと、特に、勾留延長後の10日間は、田代検事から担当副部長に取調べ検察官が交代し、もっぱら水谷建設からの裏献金の問題について聞かれていたことは、同氏自身が語っているところである。政治資金収支報告書の虚偽記入について小沢氏に報告をした旨の石川氏の供述調書に関して、田代検事がそのような供述をした理由を尋ね、石川氏が説明する、というような「勾留中のやり取り」は、いったいどの時点で行われたのであろうか。そもそもその「やり取り」自体が存在していなかった疑いが強い。だとすると、石川氏が、「ヤクザの手下が親分を守るためにウソをつくのと同じようなことをしたら、選挙民を裏切ることになる」と考えて小沢氏への虚偽記載の報告を認めた、という捜査報告書の記述自体が「創作」であり、石川氏の供述を捏造した疑いが濃厚と言うべきであろう。
 田代検事の「過失」の弁解は明らかに不合理であり、意図的で、しかも実害を伴う虚偽公文書作成罪の嫌疑が相当程度認められるのであるから、検察として、捜査或いは内部調査に乗り出すのは当然であろう(「うその報告書―検察は経緯を検証せよ」と題する12月18日の朝日新聞社説でも、「なぜうその報告書が作られ、チェックもできなかったのか、経過を解明・検証して国民に説明する作業が欠かせない」と説明を求めている)。
 検察には、今回の虚偽公文書作成の問題について、今のところ何の動きもない。この件について何の調査も捜査も行わないとすると、前田検事の故意の証拠改ざんを行った事実を知りながら、同検事の刑事事件について捜査し、検挙するなどの措置をとらなかったとして上司の大坪・佐賀両氏を犯人隠避罪に問おうとしている検察の主張は、根底から崩れる。調査を行ったとしても、田代検事の「過失」の弁解を、そのまま受け入れるようであれば同様である。それによって、先日、検察官の論告・求刑が行われた大坪・佐賀両氏の公判にも重大な影響を与えることとなる。大坪・佐賀両氏の弁護側から、公訴取消を求められた場合、検察はどう反論するのであろうか。
 本件の虚偽公文書作成の問題に関して重要なことは、それが、検察審査会の議決に大きな影響を与えたこと、つまり、刑事司法作用を害する結果になったことだ。
 前田元検事の事件では、フロッピーディスクのデータの改ざんが行われたが、データが改ざんされる前の正しいデータを記載した捜査報告書が弁護側に開示され証拠請求されたことから、公判の審理には結果的に影響を与えなかったのに対して、今回虚偽が明らかになった捜査報告書は、検察審査会に提出され、小沢氏を起訴すべきとする議決書にも引用されており、まさに、検察審査会が小沢氏の犯罪事実を認定する議決に大きな影響を与えている。
 しかも、その取調べの際、たまたま、石川被告が、隠し録音をしていたことから、虚偽報告が発覚したが、もし、録音が存在していなかったら、田代検事は、今回のような小沢氏の公判での証人尋問で、捜査報告書の通りに取調べ時のやり取りを証言していたであろう。それは田代検事が録取した石川氏の供述調書の信用性を肯定する根拠にされた可能性が高い。
 さらに重大な問題は、この虚偽捜査報告書の作成が意図的なものであったとすれば、それが田代検事個人の判断で行われたものとは考えにくいということだ。
 先に述べたように、勾留中の被疑者が検察官の取調べに対して新たに行った供述について、その理由を、起訴後3ヶ月も経った後の取調べでわざわざ質問し、それについて捜査報告書を作成するなどということは、通常の検察官の取調べではあり得ない。何らかの上司の指示がなければ、このような捜査報告書が作成されることはないと考えるのが合理的であろう。
 そもそも、この政治資金規正法違反事件について、小沢氏は、検察の処分としては、嫌疑不十分で不起訴となっており、検察の組織としては、犯罪事実の認定について消極の判断をしている。通常であれば、検察審査会で起訴相当議決や起訴議決が出されて検察の処分が覆されることは、検察にとって極めて不名誉なことであり、検察審査会の議決を受けて行われる再捜査において、わざわざ、検察の不処分が検察審査会の議決で覆される方向で捜査を行うこと自体、担当検察官個人の行動としてはあり得ない。石川氏の供述調書の信用性を補強する虚偽の捜査報告書を作成してまで、検察審査会に小沢氏の犯罪事実を認めさせようとする行動は、田代検事個人の意思によって行われたとは考えられない。
 検察組織全体の方針に反して、検察審査会の議決を検察の処分を覆す方向に向け、それによって小沢氏を政治的に葬ろうと考える一部の集団が検察組織内部に存在していて、田代検事はその意向に従って動いたとしか考えられない。
 検察審査会の審査員が小沢氏との共謀を認める石川氏の供述調書を信用し、小沢氏に対する起訴議決を行うようにするため、田代検事に虚偽の捜査報告書を作成させる、という行為が、東京地検特捜部内で組織的な背景を持って行われた疑いが濃厚である。そうなると、検察批判を繰り返してきた私にすら信じられないことではあるが、陸山会事件では、特捜部という検察組織の中の一部が、小沢氏不起訴という検察の組織としての決定に従わず、検察審査会という外部の組織を活用して検察の処分を覆させようとする「暴発」したと見ざるを得ないのである。
 田代検事の証人尋問の翌日の12月16日の公判で、証人として出廷した前田元検事が、「主任検事から『この件は特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢をあげられなければ特捜の負けだ』といわれた」「検察が不起訴と判断した資料として検審に提出されるもので、証拠になっていないものがある」などと証言し、東京地検特捜部の陸山会事件捜査を厳しく批判した。証拠隠滅事件で実刑判決を受けて受刑中の前田元検事は、特捜部の問題とは利害関係がなくなっており、その供述の信用性を疑う理由に乏しい。そのような前田検事による、陸山会事件の捜査の内幕の暴露も、その捜査に一層疑念を生じさせるものとなった。
 昨年秋に表面化した問題は、大阪地検が中心だったが、今回の問題は特捜検察の本尊とも言える東京地検特捜部の問題だ。それだけに、特捜検察は、まさに、存亡の危機と言うべき状況にある。
 陸山会事件について小沢氏を起訴すべきとする検察審査会の議決は、政権交代によって成立した鳩山政権を退陣に追い込む大きな要因となり、その後の二度にわたる民主党代表選での争点を小沢氏の「政治とカネ」問題に集中させた。それ以降、反小沢の民主党主流派と小沢派との間の泥沼の党内対立によって、民主党は国民の支持を失っただけでなく、深刻な政治不信を招き、日本の政党政治は、もはや崩壊に近い状態とも言える一方で、東京地検特捜部の小沢氏に対する一連の捜査への対抗意識も動機の一つとなって、大阪地検特捜部が無理に無理を重ねた郵便不正事件は、村木氏の冤罪、証拠改ざんの発覚という最悪の結末となり、特捜部長、副部長の逮捕という異常な事態まで引き起こして検察の信頼は失墜した。他方、その発端となった小沢氏に対する東京地検特捜部の捜査も、不当な取調べによる供述調書の請求却下、そして、今回の虚偽報告書の作成問題と次々と問題を露呈し、検察への信頼は地に堕ちた。国家の最も枢要な作用と言うべき刑事司法の中核を担う検察は、今や危機的状況にある。
 このように、社会全体が、そして、検察という一つの権力組織が泥沼の状況に追い込まれていく契機となったという意味で、陸山会事件は、日本軍という権力組織、そして、日本という国が「日中戦争」の泥沼へと引きずり込まれていく契機となった「盧溝橋事件」と似ているとの見方もできよう。
 日本軍側、中国側のいずれが仕掛けたものであるのかについて、様々な見方の違いがあるが、いずれにしても、盧溝橋事件が、何者かの意図によって、予期せぬ軍事衝突が引き起こされ、それが日中戦争の引き金になっていったことには、ほぼ疑いがない。
 それと同様に、陸山会事件の検察審査会の起訴相当議決、起訴議決が、刑事司法関係者の予期せぬものであり、それが、その後の日本の政治、社会、そして検察組織に重大な影響を生じさせていったことは明らかである。
 歴史のベールに包まれた盧溝橋事件の真相を解明することは、今となっては極めて困難であろう。しかし、その後の日本の政治、社会に重大な影響を与えた検察審査会での起訴議決という「民意」の作出に大きく影響したと思われる虚偽の捜査報告書作成事件が、意図的なものであったのか、組織的背景があったのかを、捜査又は調査によって解明することは決して困難なことではない。捜査又は調査にただちに着手し、陸山会事件の検察捜査の真相を明らかにすることが、日本の社会を、そして、検察を救う唯一の道である。
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小沢一郎氏裁判 第9回公判〈前〉/証人 田代政弘検事「特捜部は恐ろしいところだ」=報告書に虚偽の記事2011-12-15 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 弁護人「平成22年5月17日の取り調べで、あなたは捜査報告書を書いていますね」
 証人「書きました」
 弁護人「何日に書きましたか」
 証人「5月17日に書き始めまして、何日かかけて完成させたと思います」
 弁護人「何ページの報告書ですか」
 証人「5、6ページだったでしょうか」
 弁護人「あなたが書いたものでしょう」
 証人「5、6ページか、もう少し多い10ページだったか。いずれにしましてもそれくらいだったと思います」
 弁護人「それを何日もかけたのですか」
 証人「別の仕事もしながら、合間、合間に作成しましたので…」
 弁護人「中身は覚えていますか」
 証人「だいたいは把握しています」
 弁護人「1ページ目にあなたの署名と押印があるが、間違いありませんか」
 証人「はい」
 弁護人「東京地検特捜部長あてになっているが」
 証人「そうです」
 《続いて、男性弁護士は捜査報告書の中身を示す。石川議員は11万人の有権者の投票を受けて当選したが、大半は「小沢一郎の秘書」というのではなく、個人を信頼して投票したはずだと、○○検事に言われたことを契機に、調書のサインに応じた−とする内容が具体的なやり取りとともに記載されている。だが、実際の録音にはこうしたやり取りは残っていない》
 弁護人「やり取りがないのに、どうして(捜査報告書には)記されているのですか」
 証人「やり取りがあったと認識して書いた」
 弁護人「実際のやり取りと異なるのが、記載されたことですか」
 証人「この日の取り調べを一言一句記載したのではなく、思いだし、思いだし記載した。拘留中に話したことや、保釈後に話したことの記憶が混同していたと思う」
 弁護人「もう一度聞きますが、5月17日から数日で書いたのですね」
 証人「はい」
 弁護人「5月17日には、どこまで書いたのですか」
 証人「それは記憶にはありません」
 弁護人「虚偽の捜査報告書を書いたのではありませんか」
 証人「そうではありません」
 《続いて、弁護人は○○検事が石川議員に「(虚偽記載を認める供述を覆し)逆の供述をすれば、火に油を注ぐことになる」などと話したことを追及していく》
 弁護人「(任意聴取の際には)こう伝えたことがありましたね」
 証人「はい」
 弁護人「繰り返し述べましたね」
 証人「それは、石川さんが従前通りの主張だといいながら、実際に調書のサインの段階になると、『4億円を隠すつもりはなかった』などと覆す。その中で何度かやり取りがあった」
 弁護人「何のために捜査報告書を作っていたのですか」
 証人「調べが終われば、作るように、と指示されていました」
 弁護人「指示はだれからか」
 証人「主任検事です」
 弁護人「あなたは、何日かかけて作るうちに、記憶が混同して、やり取りのない内容を記したということでしたね」
 証人「かいつまんで言えばそうです」
 弁護人「これが検察審査会の小沢さんの起訴議決にも影響を与えた可能性があったと分かっていましたか」
 証人「協議の内容については、分かりません」
 弁護人「可能性の話ですよ」
 証人「可能性の話ならば…」
 《男性弁護士は、検察審査会の議決の理由に、捜査報告書の内容を挙げている点を紹介し、追及していく》
 弁護人「理由に捜査報告書の内容が挙がっていることは認識していましたか」
 証人「議決自体は見ていないが、報道レベルでは知っていました」
 《○○検事が任意聴取の際に「石川さんの供述がさ、やっぱり功を奏したんでしょ…」などと言った隠し録音の部分を紹介した》
 弁護人「功を奏するというのは?」
 証人「小沢さんが起訴されないことを指したと思います」
 弁護人「なぜ、そんなことを言ったのか」
 証人「石川さんに同調するように言っただけで、事実だという趣旨で言ったのではありません」
 《○○検事は、石川議員を取り調べる際、「フェアプレーで本当のことを言ってほしい」と約束していたとされる》
 弁護人「フェアプレーであると言いながら、あなた自身は事実を認識できないことを話すのですか」
 証人「客観的な事実は分からない。(小沢被告の)起訴を望んでいなかった石川さんに同調した形で話しただけです」

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小沢一郎氏「福島県民は霞ヶ関取り巻くデモ起こしてもいいのに政治の変革を求める運動に繋がっていかない」

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小沢一郎氏「福島県民は霞ヶ関取り巻くデモ起こしてもいい」
 ニュースポストセブン2011.12.26 07:00
 いまだに東日本大震災と原発事故を前に立ちすくむ日本の政治。なぜ日本の政治はこうも無力になってしまったのか。政治ジャーナリスト渡辺乾介氏(『小沢一郎 嫌われる伝説』著者)が政府と国民の関係について小沢一郎・元民主党代表に問う。
* * *
――被災地の人たちが、苦悩、苦難、困難を抱えながらも自分たちの手で何かやらねばならないという、この大衆のエネルギーを政治が酌み取ろうとしないところが実に悲しく虚しい。
 小沢:今回、一般の人たちがお互いに連帯していろいろな救助活動や復興活動に立ち上がった。これは日本人のとてもいいところで、みんなが感動した点だと思う。一方、地方はいちいち中央の霞が関の許可をもらったりするのが面倒くさくてしようがないと思っているけれども、それが政治的な運動にならない。そこが日本社会が他の国から遅れているところですね。大きな変革を起こせない理由でもある。本来ならば、特に福島県の人たちなんか、全県民が上京して、霞が関を取り巻くぐらいのムシロ旗デモを起こしてもよさそうなのに日本はそうならないんだね。
――外国なら暴動が起きても不思議はない。
 小沢:政治に何をしてほしいんだというものは必ずあるはずです。それが政治の変革を求める運動に繋がっていかないのが、日本社会の最大の問題だね。

         

人間・小沢一郎「最後の大構想」
  週刊ポスト2012年1月1・6日号
 小沢一郎。この稀有で頑固な政治家の「人間」を解剖することは日本の政治の形、国家の形がどう変わらなければならないかを探るケーススタディといえるかもしれない。天の怒りに地の喜びが打ち砕かれた2011年3月11日。政治は荒れた大地に陽炎の如く輪郭を浮かべ、無為に時を重ねた。多くの国民は「動かない小沢」に焦れた。小沢封じの政治の病巣は現実と醜悪な乖離を見せつけた。何をしていたのかという挑みの問いに、小沢が「人の顔」で激しく語った。(聞き手・渡辺乾介氏 政治ジャーナリスト)
■震災対応で二つの「政治問題」
 2011年の掉尾を奮う時、東日本大震災を抜きにしては語れない。人々は地震と津波の襲来、息つく間もなく放射能禍に見舞われ、日常のすべての営みを断たれ、最愛の家族と生活の絆、仕事を失い、形骸だけを残した街を目の当たりにした。
 被災者は誰も人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟しつつ、絶望の悲嘆にくれる暇さえなく、生きる使命と希望に奮い立った。その姿は世界に大きな感銘を与えた。
 そして、政治と行政の力を求めたが、空前絶後に事態に機能不全に陥り、無力であることを知って、人々は自力で我が町、我が村を興そうと動き出したのだった。やがて恐る恐る政治がやってきた。遅きに失するばかりの復興対策である。被災者は惨状に只中にありながら、政治や行政にかまわず自助自立、相互扶助で苦難に立ち向かってきた。
 人災としての放射能禍は、政治が最大の障害というべき連関に人々を押し込め苦しめた。人民あっての政治が、政治ゆえに人々に立ちはだかる。
 一体、政治とは何なのか。未曾有の困難と混乱の大震災であればこそ「国民の生活が第一」という民主党政権の拠って立つ基本理念の実践、その真価が問われたのではなかったか。
 同時にそれは、政権交代の立役者であった小沢の存在理由であり、国民との約束の政治的価値そのものなのである。
 だから、問う。
 震災直下で人々が、人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟していたように、政治家でありながらも、一人の人間として、小沢もまた被災地に立って何を思い考え、いかなる人たる呻吟をしていたか、である。
 小沢:被災地の皆さんは非常に厳しい、そして辛い生活をずっと耐えて、長い間頑張ってこられた。亡くなった方々へのお悔やみとご家族へのお見舞いを申し上げると同時に、くじけずに頑張っておられる郷里の皆さん、被災地の皆さんに、心から敬意を表したいと思います。
 千年に一度の巨大地震、大津波というのでは、人知の及ばない面もある。そこは自然災害に対する今後の方策を考えていく以外にないんだけれども、政治的には二つの大問題があります。
 一つは原発。日本の再建だ、東北の再建だと言っていますけれども、放射能封じ込めに成功しないと日本経済の再建も日本の将来もない。福島第一原発の事故はマスコミでは喉元過ぎればで、なんだか風化したみたいになってますけれども、日本人的な現象で非常に危険だと思います。
 この放射能については、なんとしても完全に封じ込めないといけない。そのためには、どれだけお金を使ってもやむを得ないし、封じ込めの先頭に立つのは国だ。ということを僕は言い続けてきたんです。事故の現状は、東電が第一義的に責任者だからといって、東電にやらせていいという状況を超えている。国が自ら先頭に立って、主体的にやらなくちゃいけない。
 原発による被災者の皆さんの生活の問題と同時に、放射能をいかにして封じ込めるか。水をかけて「冷温停止状態を達成した」なんていたって、永久に水をかけ続けるのか?今になって、核燃料が圧力容器からメルトスルーして、もうすぐ格納容器の底のコンクリートを抜けるかもしれないなんて、呑気なことを言っているわけですね。
 震災の2、3日後には、熱工学の学者をはじめ客観的に事実を見ている人たちは、必ず炉心は壊れていると言っていた。燃料も必ずメルトダウンしているとわかっていたわけですよ。それにもかかわらず、政府は2ヵ月後にようやくメルトダウンを発表して、そして最近になって落ちたウラン燃料がコンクリートを侵食して、底を突き破るまであと30何センチだなんて言ってるわけです。あれ、突き抜けて土の中に入っちゃったら、汚染の拡大を止められなくなりますからね。
 それをまず徹底的に封じ込めないといけない。それは国家、政府が先頭に立ってやるべきことです。
 もう一つは統治の機構。この機会に「地域主権」を確立すべきですよ。
 復興のための補正予算などで金銭的な手当ては一応してあるんだけれども、その使い方は相変わらず旧来と同じ公共事業でしょう。今まで同じパターンで補助金を出すやり方だから、仕事は遅いし無駄が多い。
 政府は地方の再建、東北の再生なんて言っていますが、これを機会に我々が主張してきたように中央省庁が仕切る補助金の制度を、地方自治体が自由に使える一括交付金の制度へと変える。これだけの大被害なんだから暫定的にでもやるという理屈も成り立つ。好きなように使ってよいというお金をもらえれば、もっと早く、もっとたくさん仕事ができると言うんですよ。(被災地の)知事も市町村長もそう言う。
 相変わらず予算を貰うには、いちいち中央の役所から査定に来る。学校つくるにも、仮設住宅つくるにも、海岸つくるにもすべて中央が査定して、霞ヶ関へ持って行って、そこでまた検討して、やと補助金が出る。しかも、旧来の役所のメニューにある事業、やり方しか対象にならない。
 私は、今こそ民主党が政権交代で訴えてきた補助金制度の改革を断行して、一気に「地域主権」を確立すべきだと思う。中央集権の霞ヶ関一極集中の統治機構を変える絶好の機会だと思っているんだけれども、そういう発想はまったく出てこない。非常にジレンマと苛立ちを感じています。
 渡辺:あなた自身、大震災が発生して現地に入るまでどういう気持ちだったのか。
 小沢:かつてないほど多くの方が亡くなった。僕は昔から浜も何もかも歩いて知っているから、どこがどうなったかはわかる。しかし、生きている者は町づくり、村づくりをしなくちゃいかんから、そっちの方に目が向いた。僕はどのようにして復興財源を賄うかとか、どういうふうに直せばいいのかとかいうことを考えなければならない。だから、達増拓也岩手県知事とはずっと連絡を取り合って協力しながらやってきた。
 実はあれだけの大津波にもやられなかった浜があるんですよ。岩手で2ヶ所かな。明治時代に津波にやられた教訓で、昔の村長さんが主導して高台に全部移転していたんだ。それが今回幸いした。だから同じ金を掛けるにしても、そういうことまで考えて、根本的な浜の町づくりをしないといけない。
■ 「もう帰れない」と伝える責任
 渡辺:被災者の人たちが、苦悩、苦難、困難を抱えながらも自分たちの手で何かやらねばならないという、この大衆のエネルギーを政治が汲み取ろうとしないところが悲しく虚しい。
 小沢:今回、一般の人たちがお互いに連帯していろいろな救助活動や復興活動に立ち上がった。これは日本人のとてもいいところで、みんなが感動した点だと思う。
 一方、地方はいちいち中央の霞ヶ関の許可をもらったりするのが面倒臭くてしょうがないと思っているけれども、それが政治的な運動にならない。そこが日本社会が他の国から遅れているところですね。大きな変革を起こせない理由でもある。本来ならば、特に福島県の人たちなんか、全県民が上京して、霞ヶ関を取り巻くぐらいの筵旗(むしろばた)デモを起こしてもよさそうなのに日本はそうはならないんだね。
 渡辺:外国なら暴動が起きても不思議はない。
 小沢:政治に何をして欲しいんだというものは必ずあるはずです。それが政治の変革を求める運動に繋がっていかないのが、日本社会の最大の問題だね。
 渡辺:元ソ連邦大統領のゴルバチョフ氏は回顧録で、チェルノブイリ原発の事故について「わが国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことを見せつける恐ろしい証明であった」と書いている。福島原発も同じ問題を内包していると思う。
 小沢:溶けた核燃料を取り去るなんて工程表に書いてある。でも、どうやって取り出すの?それをどこへ持っていくの?何も方策がないのに、そんなことを文書にだけ書いてどうするんだ。そういう意味のないスケジュール表みたいなのを作ったって、何の役にも立たないと僕は思う。
 それをこのままに放置しておくとなると、今を生きている我々が末代まで責めを負わなければならない。
 渡辺:戦争以外であれだけの領土を事実上、失うことは大変な事態です。
 小沢:(大きく頷いて)まさにそうです。
 渡辺:それだけ重大であるという意味が、政・官・財、大メディアにも共有されていない。
 小沢:原発から20キロだか30キロのあたりで、これ以上放射能が拡散しないという保証があるならいいけれども、もっと拡散するかもしれない。まだ政府はなんとなく避難した人たちがいずれ故郷に帰れるみたいな話ばかりしているでしょう。だから避難した人たちは、もしかしたら帰れるかもしれないと思って新しい生活設計ができない。中途半端で宙ぶらりんの状態になっている。これは政治の一番の罪だと思う。
 事実上、放射能の強い地域には帰れない。だから、被災者にはきちんとそう言って、新しい生活に対して支援をしていくべきです。みなさん、それぞれ生活設計をしてください、帰るのは当分考えられる限り無理です、ということをじはっきり言わないと避難している人たちに対する裏切りというか、背信、嘘つきになっちゃう。
 ■増税せずとも当面の金はある
 渡辺:被災者も国民も、政治は国民のために動いていないと怒っている。たとえば、原発事故では被曝予測システム「SPEEDI」の情報を隠し、復興を口実にして国民に負担増を強いる。この震災の結果責任の悲劇的なところだ。
 小沢:自分が担当している間は無難に過ごせばいいという事なかれ主義、悪い意味の官僚的発想なんですね。誰も泥をかぶらないで、かわい子ちゃんでいたい。官僚だけでなく政治家もそうなっちゃったということですね。
 渡辺:あなたが唱えてきた「自立と共生」の視点から、これだけ病み、傷んだ国土、国民、国家の震災後の在り方を語るときに、どういう再生の方向性があるのか。それは国民があなたに注目する大きな一つの視点だ。
 小沢:日本には、市民の力によって政治体制を変えた歴史がほとんどないですから、自ら政治を動かそうという発想がなかなか国民の間に生まれてこない。
 ただ、インターネットの広がりとともに、政治に無関心であったといわれる若い人たちがかなり関心を持ち始めて、そして実際に行動するようになったんじゃないだろうかと思う。原発の問題もそうだけれど、年金の問題でも、掛け金(保険料)を払ったって年金をもらえるのかという先行き不安が現実に出ている。いずれも結局は政治の場で解決する以外ないわけだから、だんだん政治に対する見方が変わってきているんじゃないかという気がします。
 民主主義社会では、上からの革命というわけにはいかない。国民が支持し、国民が支援してくれなきゃ改革はできない。今はほとんどの人がインターネットで情報を共有できるので、普通の人、特に若い人が行動するようになってきたことに僕は希望を見出します。
 渡辺:今の答えの中にあったが、年金と消費税がセットで国民生活を闇の中に押し込めようとしている。「国民の生活が第一」という政権交代の理念と基本政策を、民主党は冷凍保存しようとしているのではないか。
 小沢:僕が代表のときに掲げた言葉だから嫌なんでしょう。(笑)
 渡辺:政府・与党の中枢部は事あるごとに「国民にも痛みを分かち合ってもらう」という言い方をするが、安易に復興税だ、消費税だとのめり込み、返す刀で年金支給年齢引き上げを画策したりと、国民負担増だけに政治の軸足を置いている。
 小沢:これは民主党だけでなく、自民党も同じなんですが、自分たちが唱えてきたこと、選挙に国民に訴えたことは何だったのかということをまったく忘れている。
 先日も政府に入っている議員10人ぐらいと会合があったから話してきたんです。「今の時点では、それぞれの役目をこなす以外にないけれども、我々は古い仕組みを変えるんだと主張して政権を与えられたんだから、そのことを頭において仕事をしないといけない。役人の言うことばかりを聞いていたら、国民から自民党以下だと言われる。それだけは忘れないでくれ」とね。
 渡辺:「痛みを分かつ」というのは、変節政治家と官僚が自分の無能を隠蔽する常套句だ。あなたは消費税の増税について非常に厳しく批判し反対している。
 小沢:我々は総選挙で、特別会計を含めた国の総予算207兆円を全面組み替えて、国民主導の政治と地域主権の社会を実現すると国民に約束して、政権交代を認めてもらった。その理念、主張をまったく忘れちゃって、今までと同じやり方で予算編成を行っている。各省庁の要求を集めたものが総予算ですが、それが前年度の大枠よりちょっと出ていれば一律のカットするというだけのことで何も変わっていないわけです。
 我々はそれを変えて、政治主導で国家予算の総組み換えを断行して行政の無駄を省き、中央集権の官僚支配を打破することによって、必要な財源も生み出していくと主張した。それで民主党は政権をいただいたんですよ。なのに何もせずに役人のペースにどっぷり浸って「お金はありません。だから増税です」という話しか聞こえないわけだね。これじゃ、国民の理解は得られない。
 渡辺:政府・与党は消費税を5%上げて社会保障、年金財源にするという名分を掲げているが、本当にそうなのか。5%上げると、税収は約13兆円増える。ところが、今年7月に閣議了解された「社会保障と税の一体改革」の成案によると、13兆円の税収のうち、社会保障の充実に回るのは消費税1%分の2・7兆円。うち年金分は6000億円に過ぎない。つまり、消費税は倍に上げても大半は何に使うかわからない。痛みを分かつと言いながら、これではまた官僚に好き勝手に利権食いされるような心配が先に立つ。それが消費税増税の最大の問題点だと思う。
 小沢:消費税増税を言う前に私は「当面の金はまだある」と言ってます。増税せんでも財源はある」と言っているんだけれど、誰もそれを言おうとしない。
 僕はずっと所得税減税を主張していて、そのためには間接税の消費税の引き上げはいずれ検討しなくちゃいけないかもしれない。それは否定していないけれども、なんの政治理念もなく、何の努力もせずに「痛みを分かち合ってください」というのは詐欺的行為だと思います。税制論議以前の問題だね。
 渡辺:消費税アップの「社会保障・税一体改革成案」は7月に閣議了解したといわれているが、実際は与党の国民新党が反対したために閣議決定できず、閣議了解さえもできていない。「閣議報告」という形で当時の菅内閣は発表した。だが、政策だけは既成事実となり野田首相はいつの間にか「もう決定した」みたいなことを言う。行政の正しい手続きすらない。
 小沢:野田さんが本当に国民のために、お国のためにそれが必要なんだ、それはこういう理由からだとちゃんと説明して、自分の政治生命を懸けるという決意がはっきりすれば、まだ国民はそうなかなという気持ちになるかもしれない。けれども、上げた消費税を何に使うのかもわからない。ただ闇雲に消費税、消費税と言っているようにしか見えないから、絶対に国民に理解されないと思います。
 渡辺:あなたは優しいからそう言う。(笑)でも、野田首相が今の状態でいくら説明し、決意を述べたとしても納得できない。
 小沢:いや、僕も賛成しないですよ。
 ■増税推進なら「他の手段」を考える
 渡辺:先ほどの一体改革成案には、現在65歳の年金支給開始年齢の68〜70歳への引き上げが盛り込まれている。増税が年金充実のためというなら、給付が手厚くならなきゃ辻褄が合わないのに、70歳支給になったら、国民の老後は真っ暗になる。現在、厚生年金の平均受給額は月に約16万円だから、支給開始が5年引き上げられると1人当たり1000万円の減額になる。
 それだけでも空前の年金カット計画だが、なぜそれが必要なのか。厚生省年金局の「年金検証結果レポート」によると、年金財源に厚生年金で500兆円、国民年金で50兆円、合わせて550兆円の債務がある。1人1000万円ずつ年金を減らすと、厚生年金加入者は約3444万人だから344兆円が浮く。さらに、これから厚生年金に加入する19歳以下世代の削減額を含めると、550兆円の債務を帳消しにできる。いかにも役人らしい悪巧みが潜んでいることを『週刊ポスト』は指摘している。
 これが「国民の生活が第一」を掲げて政権交代した民主党内閣がやろうとしている消費税増税と年金改悪の二重詐欺です。あなたの消費税増税批判はちょっと中途半端じゃないか。
 小沢:我々は年金制度を根本から変えて一元化すると主張している。月額7万円前後の最低保障年金は消費税を全て充てて安定させ、その上に報酬比例年金を設けて、2階建ての新しい年金制度を作ると提案した。
 ところが、それについても政府は作業をしていない。国民との約束をまったく顧みないで、支給開始年齢だけでなく、掛け金まで上げるというのだから、僕は本当に詐欺、裏切り行為だと思う。消費税も年金も所得税も国民負担を増やすという話には僕は到底賛成できない。
 渡辺:大新聞も支給開始年齢の引き上げを叫んでいる。いわば内閣と官僚と大新聞の共同正犯行為による詐欺みたいな形になっている。
 小沢:ただ、国民はかなり情報を正確に知るようになってきている。国民が情報を得る手段はもうテレビや新聞だけじゃない。いずれ国民に鉄槌を下されると僕は思います。
 渡辺:公約に対して忠誠を誓うという意味において、先の大阪のダブル選挙、あるいはその前に愛知のトリプル選挙で当選した市長・知事たちの、有権者に対する死に物狂いの公約実現の努力をどう見るか。民主党も国の仕組みを変えると言ったけれども、今に至る政権の姿は橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長と真反対です。
 小沢:彼らが頑なに自分の主張、市民との約束を徹底して実行しようとしているということは、まず間違いないと思います。
 それに反して民主党政権、そして今の自民党も、市民感覚からはもう駄目だと思われている。だから、荒っぽいかもしれないけれど約束は守る、国民のためには旧体制を壊さないと駄目だ、という橋下さんや河村さんに期待する結果になったのは無理もないと思う。
 渡辺:その意味では、あなたはもう一度総選挙でその動きを作り直すしかない。
 小沢:橋下さんは府庁舎や市役所そのものをぶっ壊さないと本当の改革はできないと主張している。僕も旧体制、アンシャン・レジームをぶっ壊さないと新しい世の中はできないとずっと言い続けてきた。それゆえに「壊し屋」とみんなから非難されているけれど、橋下さんはまだそういわれていないようだから、それだけでも彼はたいしたもんじゃないの。(笑)
 予算編成のことを例にして言いましたけれども、自民党政権のときとずっと同じことをやってきておいて、金がない、何がないのと言ったって始まらないんです。
 渡辺:民主党がアンシャン・レジームになってしまった。
 小沢(苦笑しながら)そうなんだよね・・・。
 渡辺:その民主党をどうやってもう一度ぶち壊すのか。
 小沢:僕は現時点においては、野田さんが初心に帰り、政権交代の原点に思いをはせて、そして是非「国民生活が第一」の政策に戻って欲しいと、ひたすらに望んでいます。そうしなきゃ民主党政権に明日はない。必ず国民から見放される。
 渡辺:すでに今日もない。
 小沢:ん?今日もないけれども。(苦笑)
 渡辺:次の総選挙で「今度こそやります」と訴えたからって国民は民主党を・・・。
 小沢:それは信用しない。
 渡辺:政策を担保する何か、あるいは覚悟が本気だと思ってもらうための新たな努力が必要ではないか。
 小沢:さっき言ったように、僕は野田さんがまず「国民の生活が第一」の理念に基づいて、しっかりしたビジョンを語るべきだと思う。それがまったくないまま、ただ増税だけを推進しているとなると、民主党政権は滅びる。かといって自民党政権に戻ることもない。日本はぐちゃぐちゃのカオスの状況に入ってしまう。
 渡辺:国外に目を転じると北朝鮮では金正日が死亡し、東アジア情勢が流動的になってきた。
 小沢:突然のことで大変驚きました。核開発の問題もありますので、日中韓をはじめ関係各国が緊密に連携して、不測の事態に対処しうる体制を早急に構築することが肝心だと思います。
 渡辺:選挙までの残り任期は少ない。今の政権が原点に戻らない場合、あなた自身はどういう覚悟を決めるのか。
 小沢:その時は他の手を考えなきゃならない。
 渡辺:その手段とは。
 小沢:今、具体的にどうこう言うわけにはいかないけれども、今の政権がどうしても(原点回帰は)だめだといったら、僕も国民を裏切ることになってしまう。それは困るし、それによる日本の大混乱も防がなきゃならない。何らかの方法を考えなければならない。
 渡辺:そのカオスを突き抜けるところで、あなたにとって2012年は相当過酷な年になる。
 小沢:最後のご奉公です。文字通り「最後」です。
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ようやく始動の小沢一郎/小沢憎しで凝り固まっている法務・検察官僚は強引に有罪に持ち込むかもしれない2011-12-23 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
ようやく始動した小沢一郎 日刊ゲンダイ2011年12月23日
野田政権は自民と同じ 小沢はマニフェストに戻る<歴代自民党政権よりはるかに劣る無能内閣>
 9月に裁判がスタートしてからというもの、一時、おとなしかった小沢一郎・元民主党代表がようやく、精力的に動き始めた。
 「遅すぎるよ!」と噛みつきたくはなるのだが、とはいえ、そのタイミングや影響力はさすがだ。
 11月ごろから、野田政権に対する批判を強め、今月21日には106人もの国会議員を集めて消費増税に反対する大勉強会を立ち上げた。これまで3つに分かれていた小沢グループを統合したもので、入会申込者も含めると総勢136人になる。
 「野田首相はビビったと思いますよ。民主党所属の国会議員408人の3分の1になるし、60人が団結していれば、野党が不信任案を出した場合に可決できる。その意味で、3桁の勢力を押さえれば、ゆうゆうキャスチングボートを握れるのです」(政治ジャーナリスト・野上忠興氏)
  しかも、暮れも押し迫り、野田は「消費増税を含む一体改革」の民主党案をまとめるために追い込まれている。そこへドンピシャのタイミングで、大軍勢を率いた小沢が「反対」のノロシを上げたのである。
  野田政権はもうグラグラで、素案の先送りや政府案と民主党案と切り離し、はたまた、あいまい表現でごまかす案まで議論百出で、右往左往。それでも野田は年内決着にこだわっているから、どうなるか見モノだ。できなきゃ求心力は完全消滅だし、強引に突っ込めば、世論は怒り、党内は騒然となる。野党は安心して倒閣へ。ただでさえ、問責閣僚を抱えて通常国会は火ダルマ必至のドジョウは、ニッチもサッチもいかなくなる。
 「もはや末期症状ですよ。疲れ切っている野田首相は最近、官僚の報告を聞いている時に居眠りしてしまう場面が増えている。能力的にも体力的にも限界が近づいている証拠です」(官邸事情通)
 周到な小沢はそれを見越していた。満を持して行動を再開したのである。
 小沢周辺によると、野田への見切りは早かったようだ。ジャーナリストの渡辺乾介氏が言う。
 「野田首相は人事で挙党一致のパフォーマンスをやりましたが、基本的には菅政権の政策を引き継ぐ反マニフェストの裏切り者政権であることには変わりがない。そういう政権の本質はとっくに見抜いていたはずです。しかし、臨時国会中は復興関連の法案を通さなければいけないので、待った。水面下で力をためて、臨時国会後に動き出したのです。新聞・TVは裁判で身動きできない小沢氏に対して、“求心力の低下”とか書いていましたが、ピント外れもいいところ。それがよく分かったのではないですか」
  財務省の言いなりで増税路線をひた走る野田政権は、民主党のマニフェストの対極に位置する政治家だ。つまり、自民党政権みたいなものだが、違うところがひとつだけある。歴代自民党政権よりもはるかに実務能力が落ちることだ。
 「だって、臨時国会の法案成立の割合は3割くらいなんですよ。それも通ったのは復興関連ばかり。復興がなければ、ほとんどゼロです。国対がまったく機能していないせいで、恐らく、審議日程のカレンダーも描ききれていないのでしょう。こんな政権は前代未聞です」(永田町事情通)
  法案もマトモに通せないような無能政権だから、ますます、官僚に頼る。代わりに「消費増税」を押し付けられて、狂気の道をひた走る。それが野田政権の正体だ。
  民意にも見放され、党内からも総スカンの野田に対し、野党が協力するわけがない。つまり、この政権は必ず近く瓦解する。そんな政権とあろうことか、消費増税で歩調を合わせるのか。
  小沢周辺は所属議員に対し、こう説得をしてきたはずだ。賛同が広がったのは、当然のなりゆきなのである。
<無罪の可能性が高まったのも大きい>
 前出の渡辺乾介氏は「検察審査会によって強制起訴された裁判の展開も大きかった。これまでの証言によって、無罪の可能性が大いに強まった」ことも指摘した。
  前田恒彦・元検事は裁判で「(検察が描いていた小沢への)ゼネコン献金は夢物語。検察幹部の妄想だった」と言い切った。同じく田代検事は石川知裕衆院議員への聴取で、事実と異なるやりとりを調書に記載したことを認めて、騒然となった。さすがに小沢に批判的だった大メディアも無罪を想定し、軌道修正を始めている。
  ま、それでも小沢憎しで凝り固まっている法務・検察官僚は強引に小沢を有罪に持ち込むかもしれない。だから、小沢は来年4月の判決を待たずに行動に出た。そういうことだ。
 「小沢氏は一時、離党も視野に入れたと思います。しかし、野田政権のテイタラクを見て、やめた。自分たちが民主党の本家である、向こうが出て行け。こんな思いだと思う。マニフェストを錦の御旗にし、正面から挑む主戦論に切り替えたのだと思います。野田政権に民主党の原点回帰を迫り、代表選で勝負を挑む。それでも野田政権が消費増税に突っ走るのであれば、野党の不信任案に同調することもあり得る。その場合は民主分裂、政界再編選挙になります」(政治評論家・浅川博忠氏)
  おそらく、政治は年明け早々、大混乱になるのだろうが、それで政治が少しでもマトモになってくれるのであれば大歓迎。小沢にはとことん、暴れて欲しい。
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私の面倒を見てくれた政権の座にある人物が1日中、椅子に座らされて、1人でいるのは耐えられなかった2011-10-04 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 フラッシュバック:小沢氏、再び法廷に WSJ Japan Real Time2011/10/3 16:48.
 政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表の初公判が6日、東京地裁で開かれるが、同氏が師と仰いだ田中角栄元首相の裁判が改めて思い出される。田中元首相は国防関連最大手、米ロッキードからの収賄罪に問われた。
 政治資金規正法違反罪で強制起訴された小沢一郎・民主党元代表の初公判が6日、東京地裁で開かれる。当時まだ若かった小沢氏は、1977〜83年にわたった191回の公判全てに出席した。審理の結果、田中元首相には有罪判決が下った。田中派議員のなかでも、毎回公判に出席したのは小沢氏1人だけだった。
 小沢氏は毎回終了までとどまり、田中元首相と目が合うのを待って深くお辞儀をしたと伝えられる。
 政治ジャーナリスト渡辺乾介氏が執筆した1992年の本のなかで、小沢氏は心情的にそうした、と述べたと引用されている。この本の出版に当たり、小沢氏は渡辺氏と長時間にわたり会談したという。「あの人〜ひとつの小沢一郎論〜」と題するこの本の中で、小沢氏は私の面倒を見てくれた政権の座にある人物が1日中、椅子に座らされて、1人でいるのは耐えられなかった、と語ったと記されている。
 政治資金規正法違反の嫌疑について、小沢氏は自身の不正行為を否定している。田中元首相も収賄罪で不正行為を働いたことを否定し、有罪判決を受けた後も陰の実力者の地位に君臨した。
 小沢氏はその後何年にもわたって田中元首相を擁護し、不当に罰せられたと指摘した。小沢氏は2006年に出版された別の本のインタビューで、田中のオヤジが完璧だと言っているのではない、と語ったという。田中さんだけじゃなく、国民も政治家も官僚もみなやっていたことだと述べ、田中元首相はスケープゴートにされたと言及した。
 小沢氏は自身の裁判でも同様の弁護を行っている。田中元首相の裁判の最中でさえ、小沢氏は法廷に立つことを予想していたかのようだ。小沢氏は、政治家として裁判で同じ立場に置かれたら、どうすべきかと考えていたと、1992年の本の出版に際しての渡辺氏とのインタビューで語っていた。自分だったらどうするかと、公判の間、ずっとそういったことを考えていた、と語っていた。
 記者:Jacob M. Schlesinger *強調(太字・着色)は来栖

この国が恐ろしいのは、総ての権力が同じ方向を向いて走り、正義より自分たちの足元ばかり気にしている点だ2011-10-03 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 小沢「抹殺裁判」 『誰が小沢一郎を殺すのか?』
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オリンパス以上の“粉飾”予算 歳出削減できない民主党/小沢一郎を排した、この国の不幸

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藤田正美の時事日想:オリンパス以上の“粉飾”予算、なぜ民主党は歳出削減できないのか
Business Media 誠2011年12月26日 08時00分
 12月24日に政府が決定した2012年度予算案。復興経費など、膨張する歳出の一部を一般会計から外すことなどで見栄えを取りつくろったが、実質的な国債発行額は約47兆円と過去最高。なぜ民主党は歳出削減に切りこめないのだろうか。
 先週、「もう民主党に日本を変革することを期待するのは止めたほうがいいのかもしれない」と書いたが、2012年度予算を見ると、その感がいっそう強くなる。
 野田首相や安住財務相が何と言いわけしようが、これは立派な「粉飾予算」である。世界をにぎわしたオリンパスの不正買収などまるで芥子粒のように思えてしまう。なにせオリンパスはせいぜい1000億円規模の話だが、この予算で粉飾された金額は6兆円を超える。コンプライアンスもガバナンスもあったものではない。ギリシャに入れ知恵して赤字隠しをした米国のゴールドマンサックスも日本財務省には脱帽するかもしれない。
 粉飾の手段は、特別会計と交付国債である。3兆8000億円という復興経費を特別会計として一般会計から切り離した。その財源は最長25年にわたる復興増税でまかなわれるが、その間は復興債を発行する。これによっていわゆる中期財政フレームの基礎的財政収支対象経費はおおむね68兆4000億円に収まることになった。
 もう1つは基礎年金の国庫負担財源だ。年金基金に国債を交付、将来の増税をそこに充当することにして、当面は基金を取り崩すというのである。これによって、約2兆6000億円の国債が別枠になった。
 野田首相はどうしても「一般会計の総額は90兆3000億円と2011年度の当初予算よりも2兆円以上も少なくしたし、国債発行額も44兆円に抑えた」と言いたかった。しかし、実質的に粉飾分を入れると約96兆7000億円、当初予算としては過去最大なのである。そして将来の増税を当て込んだ交付国債2兆6000億円を加えると国債発行額は約47兆円とこれまた過去最高になる。
 「財政再建待ったなし」と口にする割には、なぜこうも歳出削減に切り込まない予算ができてしまうのか。それは一にも二にも民主党内のガバナンスの問題だ。
 たとえば八ッ場ダム問題にしても、結局は建設省出身の大臣をすえたあたりから、工事再開という筋書きはあっただろう。最後の段階で前原政調会長が「閣議決定させない」と力んでみせた。最初に中止を打ち出した国交相だったし、「コンクリートから人へ」というスローガンの象徴である八ッ場ダムだから、前原氏本人はガス抜きのつもりだったのかもしれない。それでも離党者が出た。年内に素案がまとまる見通しが限りなく小さくなった消費税増税問題にしても、場合によってはまた離党者が出る可能性がある。
 外部から見れば、それも当然だ。民主党は「予算の組み替えをやれば20兆円ぐらいのカネは生み出せる」と言い、実際にマニフェストでも16兆8000億円の財源を増税なしに捻出し、それで民主党が打ち出した子供手当や高校授業料無償化、戸別所得補償、高速道路無料化などで2013年度に実現するとしていた。
 しかし、今や「2015年までに消費税を10%に上げるのが喫緊の課題だ」といい、その一方で子供手当は後退、高速道路無料化は撤退に追い込まれている。さらに国会議員の定数削減も、公務員の人件費削減も、そして社会保障を持続可能なものにするための給付削減も先送りとなった。要するに、票を減らすようなことはやりたくないのである。増税は幸いなことに自民党も公言しているから、票の上では「中立要因」ということなのだろう。
 民主党ではなく自民党が政権の座についていたら、どうなっていただろう。きっと同じように既得権益にメスを入れることを躊躇(ちゅうちょ)して、同じように巨額の国債を発行することになっていただろうと思う。その意味で、不幸なことにわれわれ有権者には次の政権の選択肢がない。
■賞味期限が尽きかかっている民主党
 なぜこれほどまでに政治が劣化しているのか。先日、ある人が「選挙が多すぎるからだ」と言っていた。確かに最低でも4年に1度は衆院選があり、3年に1度は参院選がある。その他に地方選挙がある。先の大阪ダブル選挙は、中央政党も巻き込んで大騒ぎになった(橋下阻止に動いた大政党が、橋下氏が勝ったとたんに、手のひらを返したように橋下大阪市長にすり寄っているさまは、見ていてうんざりするものがある)。
 民主党の前原政調会長は、橋下市長との会談だったか、「示された民意は尊重しなければならない」と語っていた。しかし敢えて言わせてもらえば、それでは橋下阻止に動いたのはなぜだったのか。その民意の中身とはいったい何なのかについて明快な説明はない。
 実際のところ、民意は常に正しいわけでも、常に明確なわけでもない。争点がはっきりしているような場合(たとえば2005年の郵政選挙)でも、まさに民主党が主張したように、問われたのは郵政民営化についてだけであり、その他の問題で民意が示されたとは言えないのである。もっと言えば、国民は小泉首相に肩入れしただけなのかもしれない。
 借金の重みに耐えかねて徐々に沈みつつある日本。いま必要なのは、とにかく10年後、20年後のビジョン、とりわけ年金、医療、介護などの社会保障の姿、そこに至るための道筋、そしてそれを支える財政の姿と再建のロードマップを国民に提示できるリーダー、政党なのである。野田首相に欠けているのはこの道筋を描くことだ。
 来年度予算でも基礎的財政収支は22兆円のマイナス。この先、経済成長率がそう高くなることはないから、2015年までに消費税率を10%にしても、民主党が描いた2020年までに基礎的財政収支を黒字化するという目標にはとうてい届かない。増税ばかりが前に出てくれば、当然のことながら経済の活力を削ぐ。成長戦略といっても政府が描く成長戦略よりも規制を緩和して民間の知恵を動員するほうがよほど効率的かつ効果的だろうと思う。
 自民党の賞味期限が尽きるまでには半世紀近くかかったが、民主党の賞味期限はすでに尽きかかっている。こうなったら、政策を練り直して政界大再編をするしかないとは思うが、いまの政治家たちにその器量があるかどうか。国会議事堂が大デモ隊に囲まれるような日が再び来るかどうかは分からないが、それぐらい怒る国民も必要かもしれない。
 *著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」 
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八ッ場ダム建設:民主・中島衆院議員、建設再開を批判 党本部に離党届 /群馬
 政府が建設再開を決めた八ッ場ダム問題は24日、民主党県連会長代行の中島政希衆院議員(比例北関東)の離党届提出に発展した。ダム中止を訴え続けてきた中島氏は高崎市内で記者会見し「党がマニフェストを捨てたのは国民に対する背信行為だ」と述べた。議員辞職は否定し、今後は無所属で議員活動を続けるという。中島氏を含む同党の県選出国会議員6人はダム反対で足並みをそろえていたが、離党届については賛否が割れた。【鳥井真平、喜屋武真之介、奥山はるな】
 中島氏は「野田政権は最重要公約を自ら放棄し建設継続を決めた。政党政治の歴史に汚点を残す愚行だ」と強調。09年に比例代表候補として初当選しているだけに党籍離脱に有権者の批判も予想されるが「党の政策に違反したなら辞職するが党幹部は公約を捨て党は変節した」と述べた。
 一方、離党届提出について、石関貴史衆院議員(群馬2区)は「気持ちは全く同じ。国民への違背行為を続ける政権運営と党に大きな幻滅を感じている」とコメント。宮崎岳志衆院議員(群馬1区)も「決定プロセスに問題があり(中島氏の)気持ちは理解できる」、三宅雪子衆院議員(比例北関東)も「残念だが、仲間という思いに変わりはない」と話した。これに対し、桑原功衆院議員(同)は「離党は逃げだ。比例で当選した以上は議員も辞するべきだ」と語った。
 建設再開に市民団体は政権批判を強めており、「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」(嶋津暉之代表)など7団体は24日、野田佳彦首相と前田武志国交相あてに連名で抗議声明を提出。「八ッ場あしたの会」(野田知佑代表世話人)も23日に抗議声明を発表している。
毎日新聞 2011年12月25日 地方版
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人間・小沢一郎 最後の大構想/「福島県民は霞ヶ関取り巻くデモ起こしてもいいのに」/「最後のご奉公です」2011-12-26 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 人間・小沢一郎「最後の大構想」
  週刊ポスト2012年1月1・6日号
 小沢一郎。この稀有で頑固な政治家の「人間」を解剖することは日本の政治の形、国家の形がどう変わらなければならないかを探るケーススタディといえるかもしれない。天の怒りに地の喜びが打ち砕かれた2011年3月11日。政治は荒れた大地に陽炎の如く輪郭を浮かべ、無為に時を重ねた。多くの国民は「動かない小沢」に焦れた。小沢封じの政治の病巣は現実と醜悪な乖離を見せつけた。何をしていたのかという挑みの問いに、小沢が「人の顔」で激しく語った。(聞き手・渡辺乾介氏 政治ジャーナリスト)
■震災対応で二つの「政治問題」
 2011年の掉尾を奮う時、東日本大震災を抜きにしては語れない。人々は地震と津波の襲来、息つく間もなく放射能禍に見舞われ、日常のすべての営みを断たれ、最愛の家族と生活の絆、仕事を失い、形骸だけを残した街を目の当たりにした。
被災者は誰も人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟しつつ、絶望の悲嘆にくれる暇さえなく、生きる使命と希望に奮い立った。その姿は世界に大きな感銘を与えた。
そして、政治と行政の力を求めたが、空前絶後に事態に機能不全に陥り、無力であることを知って、人々は自力で我が町、我が村を興そうと動き出したのだった。やがて恐る恐る政治がやってきた。遅きに失するばかりの復興対策である。被災者は惨状に只中にありながら、政治や行政にかまわず自助自立、相互扶助で苦難に立ち向かってきた。
人災としての放射能禍は、政治が最大の障害というべき連関に人々を押し込め苦しめた。人民あっての政治が、政治ゆえに人々に立ちはだかる。
一体、政治とは何なのか。未曾有の困難と混乱の大震災であればこそ「国民の生活が第一」という民主党政権の拠って立つ基本理念の実践、その真価が問われたのではなかったか。
同時にそれは、政権交代の立役者であった小沢の存在理由であり、国民との約束の政治的価値そのものなのである。
だから、問う。
震災直下で人々が、人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟していたように、政治家でありながらも、一人の人間として、小沢もまた被災地に立って何を思い考え、いかなる人たる呻吟をしていたか、である。
小沢:被災地の皆さんは非常に厳しい、そして辛い生活をずっと耐えて、長い間頑張ってこられた。亡くなった方々へのお悔やみとご家族へのお見舞いを申し上げると同時に、くじけずに頑張っておられる郷里の皆さん、被災地の皆さんに、心から敬意を表したいと思います。
千年に一度の巨大地震、大津波というのでは、人知の及ばない面もある。そこは自然災害に対する今後の方策を考えていく以外にないんだけれども、政治的には二つの大問題があります。
一つは原発。日本の再建だ、東北の再建だと言っていますけれども、放射能封じ込めに成功しないと日本経済の再建も日本の将来もない。福島第一原発の事故はマスコミでは喉元過ぎればで、なんだか風化したみたいになってますけれども、日本人的な現象で非常に危険だと思います。
この放射能については、なんとしても完全に封じ込めないといけない。そのためには、どれだけお金を使ってもやむを得ないし、封じ込めの先頭に立つのは国だ。ということを僕は言い続けてきたんです。事故の現状は、東電が第一義的に責任者だからといって、東電にやらせていいという状況を超えている。国が自ら先頭に立って、主体的にやらなくちゃいけない。
原発による被災者の皆さんの生活の問題と同時に、放射能をいかにして封じ込めるか。水をかけて「冷温停止状態を達成した」なんていたって、永久に水をかけ続けるのか?今になって、核燃料が圧力容器からメルトスルーして、もうすぐ格納容器の底のコンクリートを抜けるかもしれないなんて、呑気なことを言っているわけですね。
震災の2、3日後には、熱工学の学者をはじめ客観的に事実を見ている人たちは、必ず炉心は壊れていると言っていた。燃料も必ずメルトダウンしているとわかっていたわけですよ。それにもかかわらず、政府は2ヵ月後にようやくメルトダウンを発表して、そして最近になって落ちたウラン燃料がコンクリートを侵食して、底を突き破るまであと30何センチだなんて言ってるわけです。あれ、突き抜けて土の中に入っちゃったら、汚染の拡大を止められなくなりますからね。
それをまず徹底的に封じ込めないといけない。それは国家、政府が先頭に立ってやるべきことです。
もう一つは統治の機構。この機会に「地域主権」を確立すべきですよ。
復興のための補正予算などで金銭的な手当ては一応してあるんだけれども、その使い方は相変わらず旧来と同じ公共事業でしょう。今まで同じパターンで補助金を出すやり方だから、仕事は遅いし無駄が多い。
政府は地方の再建、東北の再生なんて言っていますが、これを機会に我々が主張してきたように中央省庁が仕切る補助金の制度を、地方自治体が自由に使える一括交付金の制度へと変える。これだけの大被害なんだから暫定的にでもやるという理屈も成り立つ。好きなように使ってよいというお金をもらえれば、もっと早く、もっとたくさん仕事ができると言うんですよ。(被災地の)知事も市町村長もそう言う。
相変わらず予算を貰うには、いちいち中央の役所から査定に来る。学校つくるにも、仮設住宅つくるにも、海岸つくるにもすべて中央が査定して、霞ヶ関へ持って行って、そこでまた検討して、やと補助金が出る。しかも、旧来の役所のメニューにある事業、やり方しか対象にならない。
私は、今こそ民主党が政権交代で訴えてきた補助金制度の改革を断行して、一気に「地域主権」を確立すべきだと思う。中央集権の霞ヶ関一極集中の統治機構を変える絶好の機会だと思っているんだけれども、そういう発想はまったく出てこない。非常にジレンマと苛立ちを感じています。
渡辺:あなた自身、大震災が発生して現地に入るまでどういう気持ちだったのか。
小沢:かつてないほど多くの方が亡くなった。僕は昔から浜も何もかも歩いて知っているから、どこがどうなったかはわかる。しかし、生きている者は町づくり、村づくりをしなくちゃいかんから、そっちの方に目が向いた。僕はどのようにして復興財源を賄うかとか、どういうふうに直せばいいのかとかいうことを考えなければならない。だから、達増拓也岩手県知事とはずっと連絡を取り合って協力しながらやってきた。
実はあれだけの大津波にもやられなかった浜があるんですよ。岩手で2ヶ所かな。明治時代に津波にやられた教訓で、昔の村長さんが主導して高台に全部移転していたんだ。それが今回幸いした。だから同じ金を掛けるにしても、そういうことまで考えて、根本的な浜の町づくりをしないといけない。
■「もう帰れない」と伝える責任
渡辺:被災者の人たちが、苦悩、苦難、困難を抱えながらも自分たちの手で何かやらねばならないという、この大衆のエネルギーを政治が汲み取ろうとしないところが悲しく虚しい。
小沢:今回、一般の人たちがお互いに連帯していろいろな救助活動や復興活動に立ち上がった。これは日本人のとてもいいところで、みんなが感動した点だと思う。
一方、地方はいちいち中央の霞ヶ関の許可をもらったりするのが面倒臭くてしょうがないと思っているけれども、それが政治的な運動にならない。そこが日本社会が他の国から遅れているところですね。大きな変革を起こせない理由でもある。本来ならば、特に福島県の人たちなんか、全県民が上京して、霞ヶ関を取り巻くぐらいの筵旗(むしろばた)デモを起こしてもよさそうなのに日本はそうはならないんだね。
渡辺:外国なら暴動が起きても不思議はない。
小沢:政治に何をして欲しいんだというものは必ずあるはずです。それが政治の変革を求める運動に繋がっていかないのが、日本社会の最大の問題だね。
渡辺:元ソ連邦大統領のゴルバチョフ氏は回顧録で、チェルノブイリ原発の事故について「わが国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことを見せつける恐ろしい証明であった」と書いている。福島原発も同じ問題を内包していると思う。
小沢:溶けた核燃料を取り去るなんて工程表に書いてある。でも、どうやって取り出すの?それをどこへ持っていくの?何も方策がないのに、そんなことを文書にだけ書いてどうするんだ。そういう意味のないスケジュール表みたいなのを作ったって、何の役にも立たないと僕は思う。
それをこのままに放置しておくとなると、今を生きている我々が末代まで責めを負わなければならない。
渡辺:戦争以外であれだけの領土を事実上、失うことは大変な事態です。
小沢:(大きく頷いて)まさにそうです。
渡辺:それだけ重大であるという意味が、政・官・財、大メディアにも共有されていない。
小沢:原発から20キロだか30キロのあたりで、これ以上放射能が拡散しないという保証があるならいいけれども、もっと拡散するかもしれない。まだ政府はなんとなく避難した人たちがいずれ故郷に帰れるみたいな話ばかりしているでしょう。だから避難した人たちは、もしかしたら帰れるかもしれないと思って新しい生活設計ができない。中途半端で宙ぶらりんの状態になっている。これは政治の一番の罪だと思う。
事実上、放射能の強い地域には帰れない。だから、被災者にはきちんとそう言って、新しい生活に対して支援をしていくべきです。みなさん、それぞれ生活設計をしてください、帰るのは当分考えられる限り無理です、ということをじはっきり言わないと避難している人たちに対する裏切りというか、背信、嘘つきになっちゃう。
■増税せずとも当面の金はある
渡辺:被災者も国民も、政治は国民のために動いていないと怒っている。たとえば、原発事故では被曝予測システム「SPEEDI」の情報を隠し、復興を口実にして国民に負担増を強いる。この震災の結果責任の悲劇的なところだ。
小沢:自分が担当している間は無難に過ごせばいいという事なかれ主義、悪い意味の官僚的発想なんですね。誰も泥をかぶらないで、かわい子ちゃんでいたい。官僚だけでなく政治家もそうなっちゃったということですね。
渡辺:あなたが唱えてきた「自立と共生」の視点から、これだけ病み、傷んだ国土、国民、国家の震災後の在り方を語るときに、どういう再生の方向性があるのか。それは国民があなたに注目する大きな一つの視点だ。
小沢:日本には、市民の力によって政治体制を変えた歴史がほとんどないですから、自ら政治を動かそうという発想がなかなか国民の間に生まれてこない。
ただ、インターネットの広がりとともに、政治に無関心であったといわれる若い人たちがかなり関心を持ち始めて、そして実際に行動するようになったんじゃないだろうかと思う。原発の問題もそうだけれど、年金の問題でも、掛け金(保険料)を払ったって年金をもらえるのかという先行き不安が現実に出ている。いずれも結局は政治の場で解決する以外ないわけだから、だんだん政治に対する見方が変わってきているんじゃないかという気がします。
民主主義社会では、上からの革命というわけにはいかない。国民が支持し、国民が支援してくれなきゃ改革はできない。今はほとんどの人がインターネットで情報を共有できるので、普通の人、特に若い人が行動するようになってきたことに僕は希望を見出します。
渡辺:今の答えの中にあったが、年金と消費税がセットで国民生活を闇の中に押し込めようとしている。「国民の生活が第一。」という政権交代の理念と基本政策を、民主党は冷凍保存しようとしているのではないか。
小沢:僕が代表のときに掲げた言葉だから嫌なんでしょう。(笑)
渡辺:政府・与党の中枢部は事あるごとに「国民にも痛みを分かち合ってもらう」という言い方をするが、安易に復興税だ、消費税だとのめり込み、返す刀で年金支給年齢引き上げを画策したりと、国民負担増だけに政治の軸足を置いている。
小沢:これは民主党だけでなく、自民党も同じなんですが、自分たちが唱えてきたこと、選挙に国民に訴えたことは何だったのかということをまったく忘れている。
先日も政府に入っている議員10人ぐらいと会合があったから話してきたんです。「今の時点では、それぞれの役目をこなす以外にないけれども、我々は古い仕組みを変えるんだと主張して政権を与えられたんだから、そのことを頭において仕事をしないといけない。役人の言うことばかりを聞いていたら、国民から自民党以下だと言われる。それだけは忘れないでくれ」とね。
渡辺:「痛みを分かつ」というのは、変節政治家と官僚が自分の無能を隠蔽する常套句だ。あなたは消費税の増税について非常に厳しく批判し反対している。
小沢:我々は総選挙で、特別会計を含めた国の総予算207兆円を全面組み替えて、国民主導の政治と地域主権の社会を実現すると国民に約束して、政権交代を認めてもらった。その理念、主張をまったく忘れちゃって、今までと同じやり方で予算編成を行っている。各省庁の要求を集めたものが総予算ですが、それが前年度の大枠よりちょっと出ていれば一律のカットするというだけのことで何も変わっていないわけです。
我々はそれを変えて、政治主導で国家予算の総組み換えを断行して行政の無駄を省き、中央集権の官僚支配を打破することによって、必要な財源も生み出していくと主張した。それで民主党は政権をいただいたんですよ。なのに何もせずに役人のペースにどっぷり浸って「お金はありません。だから増税です」という話しか聞こえないわけだね。これじゃ、国民の理解は得られない。
渡辺:政府・与党は消費税を5%上げて社会保障、年金財源にするという名分を掲げているが、本当にそうなのか。5%上げると、税収は約13兆円増える。ところが、今年7月に閣議了解された「社会保障と税の一体改革」の成案によると、13兆円の税収のうち、社会保障の充実に回るのは消費税1%分の2・7兆円。うち年金分は6000億円に過ぎない。つまり、消費税は倍に上げても大半は何に使うかわからない。痛みを分かつと言いながら、これではまた官僚に好き勝手に利権食いされるような心配が先に立つ。それが消費税増税の最大の問題点だと思う。
小沢:消費税増税を言う前に私は「当面の金はまだある」と言ってます。増税せんでも財源はある」と言っているんだけれど、誰もそれを言おうとしない。
僕はずっと所得税減税を主張していて、そのためには間接税の消費税の引き上げはいずれ検討しなくちゃいけないかもしれない。それは否定していないけれども、なんの政治理念もなく、何の努力もせずに「痛みを分かち合ってください」というのは詐欺的行為だと思います。税制論議以前の問題だね。
渡辺:消費税アップの「社会保障・税一体改革成案」は7月に閣議了解したといわれているが、実際は与党の国民新党が反対したために閣議決定できず、閣議了解さえもできていない。「閣議報告」という形で当時の菅内閣は発表した。だが、政策だけは既成事実となり野田首相はいつの間にか「もう決定した」みたいなことを言う。行政の正しい手続きすらない。
小沢:野田さんが本当に国民のために、お国のためにそれが必要なんだ、それはこういう理由からだとちゃんと説明して、自分の政治生命を懸けるという決意がはっきりすれば、まだ国民はそうなかなという気持ちになるかもしれない。けれども、上げた消費税を何に使うのかもわからない。ただ闇雲に消費税、消費税と言っているようにしか見えないから、絶対に国民に理解されないと思います。
渡辺:あなたは優しいからそう言う。(笑)でも、野田首相が今の状態でいくら説明し、決意を述べたとしても納得できない。
小沢:いや、僕も賛成しないですよ。
■増税推進なら「他の手段」を考える
渡辺:先ほどの一体改革成案には、現在65歳の年金支給開始年齢の68〜70歳への引き上げが盛り込まれている。増税が年金充実のためというなら、給付が手厚くならなきゃ辻褄が合わないのに、70歳支給になったら、国民の老後は真っ暗になる。現在、厚生年金の平均受給額は月に約16万円だから、支給開始が5年引き上げられると1人当たり1000万円の減額になる。
それだけでも空前の年金カット計画だが、なぜそれが必要なのか。厚生省年金局の「年金検証結果レポート」によると、年金財源に厚生年金で500兆円、国民年金で50兆円、合わせて550兆円の債務がある。1人1000万円ずつ年金を減らすと、厚生年金加入者は約3444万人だから344兆円が浮く。さらに、これから厚生年金に加入する19歳以下世代の削減額を含めると、550兆円の債務を帳消しにできる。いかにも役人らしい悪巧みが潜んでいることを『週刊ポスト』は指摘している。
これが「国民の生活が第一」を掲げて政権交代した民主党内閣がやろうとしている消費税増税と年金改悪の二重詐欺です。あなたの消費税増税批判はちょっと中途半端じゃないか。
小沢:我々は年金制度を根本から変えて一元化すると主張している。月額7万円前後の最低保障年金は消費税を全て充てて安定させ、その上に報酬比例年金を設けて、2階建ての新しい年金制度を作ると提案した。
ところが、それについても政府は作業をしていない。国民との約束をまったく顧みないで、支給開始年齢だけでなく、掛け金まで上げるというのだから、僕は本当に詐欺、裏切り行為だと思う。消費税も年金も所得税も国民負担を増やすという話には僕は到底賛成できない。
渡辺:大新聞も支給開始年齢の引き上げを叫んでいる。いわば内閣と官僚と大新聞の共同正犯行為による詐欺みたいな形になっている。
小沢:ただ、国民はかなり情報を正確に知るようになってきている。国民が情報を得る手段はもうテレビや新聞だけじゃない。いずれ国民に鉄槌を下されると僕は思います。
渡辺:公約に対して忠誠を誓うという意味において、先の大阪のダブル選挙、あるいはその前に愛知のトリプル選挙で当選した市長・知事たちの、有権者に対する死に物狂いの公約実現の努力をどう見るか。民主党も国の仕組みを変えると言ったけれども、今に至る政権の姿は橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長と真反対です。
小沢:彼らが頑なに自分の主張、市民との約束を徹底して実行しようとしているということは、まず間違いないと思います。
それに反して民主党政権、そして今の自民党も、市民感覚からはもう駄目だと思われている。だから、荒っぽいかもしれないけれど約束は守る、国民のためには旧体制を壊さないと駄目だ、という橋下さんや河村さんに期待する結果になったのは無理もないと思う。
渡辺:その意味では、あなたはもう一度総選挙でその動きを作り直すしかない。
小沢:橋下さんは府庁舎や市役所そのものをぶっ壊さないと本当の改革はできないと主張している。僕も旧体制、アンシャン・レジームをぶっ壊さないと新しい世の中はできないとずっと言い続けてきた。それゆえに「壊し屋」とみんなから非難されているけれど、橋下さんはまだそういわれていないようだから、それだけでも彼はたいしたもんじゃないの。(笑)
予算編成のことを例にして言いましたけれども、自民党政権のときとずっと同じことをやってきておいて、金がない、何がないのと言ったって始まらないんです。
渡辺:民主党がアンシャン・レジームになってしまった。
小沢:(苦笑しながら)そうなんだよね・・・。
渡辺:その民主党をどうやってもう一度ぶち壊すのか。
小沢:僕は現時点においては、野田さんが初心に帰り、政権交代の原点に思いをはせて、そして是非「国民生活が第一。」の政策に戻って欲しいと、ひたすらに望んでいます。そうしなきゃ民主党政権に明日はない。必ず国民から見放される。
渡辺:すでに今日もない。
小沢:ん?今日もないけれども。(苦笑)
渡辺:次の総選挙で「今度こそやります」と訴えたからって国民は民主党を・・・。
小沢:それは信用しない。
渡辺:政策を担保する何か、あるいは覚悟が本気だと思ってもらうための新たな努力が必要ではないか。
小沢:さっき言ったように、僕は野田さんがまず「国民の生活が第一。」の理念に基づいて、しっかりしたビジョンを語るべきだと思う。それがまったくないまま、ただ増税だけを推進しているとなると、民主党政権は滅びる。かといって自民党政権に戻ることもない。日本はぐちゃぐちゃのカオスの状況に入ってしまう。
渡辺:国外に目を転じると北朝鮮では金正日が死亡し、東アジア情勢が流動的になってきた。
小沢:突然のことで大変驚きました。核開発の問題もありますので、日中韓をはじめ関係各国が緊密に連携して、不測の事態に対処しうる体制を早急に構築することが肝心だと思います。
渡辺:選挙までの残り任期は少ない。今の政権が原点に戻らない場合、あなた自身はどういう覚悟を決めるのか。
小沢:その時は他の手を考えなきゃならない。
渡辺:その手段とは。
小沢:今、具体的にどうこう言うわけにはいかないけれども、今の政権がどうしても(原点回帰は)だめだといったら、僕も国民を裏切ることになってしまう。それは困るし、それによる日本の大混乱も防がなきゃならない。何らかの方法を考えなければならない。
渡辺:そのカオスを突き抜けるところで、あなたにとって2012年は相当過酷な年になる。
小沢:最後のご奉公です。文字通り「最後」です。
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未曾有の大震災の直前に小沢一郎を排した、この国の不幸/小沢一郎の日本再造計画2011-05-05 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 【カレル・ヴァン・ウォルフレン(ジャーナリスト)インタビュー】
 ゲンダイネット2011年5月2日
菅政権は東電と保安院に動かされている
「誰が小沢一郎を殺すのか?」(角川書店)――オランダ人のジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の著書が話題だ。小沢一郎という異能の政治家を検察、メディアに代表される旧勢力がよってたかって潰そうとした事実が詳細に明らかにされている。小沢氏は民主党の党員資格を剥奪されて、表舞台から去った途端に大震災が起きた。右往左往の菅政権を冷徹なジャーナリストはどう見ているのか。
 小沢一郎氏はいま日本の超法規的な権力といえる官僚や検察、また大手メディアから政界を追われる身にあります。日本は民主国家であるはずですが、非公式な権力によって小沢氏の政治力は奪われ、おとしめられようとしています。
 彼は何度か首相の座に就くチャンスがありましたが、非公式権力が団結してそれを阻んできたのです。個人的には、小沢氏には政界の中枢で動いてほしい。多くの国民は彼の時代は終わったと思っているでしょうが、今こそ日本は彼のような強いリーダーシップを持った政治家が必要なのです。
 それは東日本大震災によって壊滅的な打撃を受けた被災地と原発事故の対応で、菅政権が行政コントロールを失ったかのような印象を内外に与えたことでも明らかです。もし小沢氏が首相であれば、統括的な政治力を発揮していたことでしょう。
 というのも、福島の原発事故で東京電力と原子力安全・保安院は政治家との関係構築がうまくゆかず、むしろ首相官邸が彼らに動かされてしまった。これこそが、小沢氏がもっともあってはならないと考えていたことだからです。政治主導といいながら、政治家が既成の権力にひれ伏した証拠なのです。小沢氏であれば、こうした状況でこそ既成権力のいいなりにならなかったと思います。
 今回の震災では、日本人の忍耐強さが世界中の人たちから驚嘆されました。オランダのテレビ局は「なぜ日本人は盗みをしないのだ」と聞いてきました。日本人は良識の民です。
 菅政権の全体的な震災対応は及第点をつけられるかもしれません。ただそれは、1995年の阪神・淡路大震災時の自社さ政権の対応と比較してという条件においてです。
 率直に言えば、日本政府の対応は全体を統括する行政力が不足しています。官邸と関係省庁との連携が円滑でないばかりか、地方自治体への情報伝達や物資の輸送など必須の危機管理体制が整備されていなかった。
 私が力説したいのはここです。どの国家もこの地震ほど大規模な災害を被ることはそうはありません。ただ首相が強いリーダーシップを発揮して、政治力を十分に機能させれば、地方自治体やさまざまな団体、組織を統制でき、今よりも効果的な結果が出せたはずです。
 今後、日本が抱える課題は、被災地をどう復興させるかです。
 東北地方の再開発は原子力ではなくソーラーを基礎に、全産業を取り込んだ計画を策定すれば、ソーラー技術のさらなる発達が期待できます。ただ、日本はいまだにアメリカの準植民地という立場にいます。独自の外交政策を策定し、実践してはじめて独立した民主国家になれる。それを実現しようとしているのが小沢氏なのですが、国民だけでなく権力機構からの反発がある。それが残念なことです。(インタビュアー・堀田佳男)
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前原誠司外相辞任と『誰が小沢一郎を殺すのか?』〈カレル・ヴァン・ウォルフレン著〉2011-03-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
【まんが】小沢一郎の日本再造計画 / 原発事故収束編 (04/30)

上杉隆/本稿をもってジャーナリストを休業する/「懇談メモ」と称する、政府とメディアの談合の「証拠」

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『週刊・上杉隆』堕国論?
Diamond online 2011年12月22日
 12月23日、布袋寅泰(元BOOWY)の30周年ツアーは被災地・仙台で幕を閉じる。
 7月のコンプレックスの再結成による東京ドームチャリティライブ、そこで4億円もの支援金を集めたロックスターの2011年がそうやって終わろうとしている。
 「何ができるんだろう。3.11の呆然とする中、しばらくして俺は気づいた。やはり俺にはこいつ(ギター)しかない。30年以上一緒にやってきたこの相棒で表現するしかないんだ」
 渋谷公会堂での演奏の合間、そう呟いた布袋氏の言葉を聴きながら、筆者は、継続することの力強さ、さらに、またひとりの人間がなすべき可能性について、想いを巡らせていた。
 ひとりひとりにできることは小さい。だが、今回の震災で、「何かしたいのだ」と考える機会を、ひとりひとりの日本人に与えるきっかけになったことは大きい。
 布袋氏は、それをギターという道具を使ってロックで届けようとした。その布袋氏の言葉に符合するのが、広河隆一氏(フォトグラファー)の言葉だった。
 「何ができるのか、そして何をしたのか。3.11は、ひとりひとりのジャーナリストにそのことを突きつけた」
 野田首相が「事故収束」宣言を発表した翌日、DAYS JAPAN編集長の広河氏は、その総会の冒頭挨拶でこう述べた。
 乾杯の挨拶を待つ間、筆者はその言葉を自らに向けて、深く反芻させていた。
 いったい3.11のあの日、筆者は何をしていたのだろうか。
 そう、そういえば、あの日、筆者はいったんすべての取材活動を休止し、あるひとつのことに集中、猛進していたではないか。それは、一瞬の判断での決断と行動であった。
「記者会見をオープンにしてください。まもなく世界中から一線級のジャーナリストたちが日本に到着します。その時に政府の会見をクローズドにしていたら、まちがいなく情報隠蔽を疑われます。そしてそれがデマとなり、世界中で日本政府の信用、さらには日本の国家全体の信頼を堕とすことになります。最初が肝心です。放射能事故の際はなおさら完全な情報公開が必要です。なんなら、私は入らなくてもいい。とにかく、外国人記者だけでもいいから会見に入れてください」
 官邸の脇、途中からは国会議事堂前の坂道に自動車を止め、筆者はこうした電話を繰り返し繰り返しかけ続けた。相手は内閣官房、閣僚、民主党幹部、秘書、党職員、そして官邸中枢だ。
 だが、その震災後の100時間ほど、筆者の人生において無力感を覚えた時間はなかった。
 官邸の笹川武内閣広報室長(当時)、西森昭夫内閣参事官(当時)は相も変わらず、煮え切らない態度を続けている。私の口調は徐々に荒くなり、3月14日以降の電話では、ほとんど怒鳴ることが続いていた。
 「原発事故だ。原発事故! 人の命が懸かっているんだ。国民の命だぞ。お前ら役人に何の権限があって情報を遮断するんだよ。とにかく、こちらには現地の情報があるんだ。フリー記者、海外メディア、自由報道協会の記者たちが現場に入り、そこの情報を持っているんだ。ガイガーカウンターで測定した数値もある。こんな時に政府を批判しようなんてジャーナリストなんていないよ。いいか、おい、記者会見は質問ばかりではない。記者が政府に情報を伝えるという機能もあるんだよ。とにかく、早く官房長官、副長官でもいいから伝えろ!」
 前の日の3月13日、筆者は原発から3キロメートルのところに到達した広河氏と電話で話していた。
 広河氏は、子どもたちの遊ぶ病院の敷地内で3つあるガイガーカウンターを稼動させた。すべての計器の針は振り切れ、それは20年来チェルノブイリを取材している広河氏にとっても初めての経験となる恐ろしい出来事であることを示していた。
 「とにかく、子どもと女性だけでも逃がさなくてはいけない。首長に掛け合っているところですが、なかなか信じてもらえない」
 その広河氏の言葉を聞いた私は、官邸への圧力をさらに強める覚悟を決めた。携帯電話のバッテリーはすぐに消耗し、自動車の電源系統から直接、充電しつつ、電話を続けるようになった。
 また、ちょうど同じころ、自由報道協会所属のフリーライター島田健弘氏の知人の自衛隊員が、福島第一原発への最初の突入を試みていた。それは初めての現場の声として、筆者らの背筋を凍らせるに十分な情報だった。
 「ダメだ。遠くに避難しろ。ここは無理だ」
 島田氏は迷いながらもそれを自由報道協会のメーリングリストにアップした。情報源との兼ね合いなどもあるものの、人命救助を優先させた末の判断だった。
 その時期、そうした決断をした人物はほかにもたくさんいる。三号炉の緊急冷却装置の設計者でもある上原春夫・元佐賀大学学長もそのうちのひとりだ。
 「燃料棒が空気に触れている今、メルトダウンは確実に始まっているんだよ。緊急冷却装置を作動させ続けて、時間を稼げば、どうにか対応できるんだよ。なんで、動かさないのかな。上杉さん、伝えてくれよ」
 上原氏による原子炉のメルトダウンの可能性にかかる重要な情報は、翌14日、氏を紹介してくれた原口一博元総務大臣の口から、直接、官邸のオペレーション室に届けられた。
 その原口氏は今回の震災後、もっとも献身的に行動した政治家のひとりである。仮に原口氏がいなければ、福島の原発はもっと酷いことになっていたに違いない。それは断言できることだが、残念ながらその原口氏の評価は低いものとなっている。
 なぜか。それは記者クラブメディアが自らの「誤報」を隠すために、原口氏を悪者に仕立て上げることを続けているからだ。その証拠はたくさんある。だが、そのすべてをいま明かすことはできない。ただ、筆者はその証人でもあり、確固たる自信をもって原口氏の涙ぐましい努力の数々を証言することができる。
 3.11直後のうんざりするようなあの情報隠蔽の中、原口氏は果敢に官僚機構に挑んだ数少ない政治家だった。
 だが、当時の官邸は、いや現在もそうだが、完全に機能不全を来たし、そうした献身的な人物たちが寄せる情報を吸収する余裕はなかった。むしろ、官僚と記者クラブが伝える偽情報ばかりを信じ、逆に、現場からの正しい情報を排除するという過ちを繰り返すことになる。
 それは9ヵ月後のきょう(12月22日)、ようやくメディアが当時の真相を明らかにし始めたことでも、本コラムの読者のみなさんならばすぐに理解できるだろう。
〈東京電力福島第一原子力発電所の3号機で、水素爆発を起こす前日の3月13日に、現場の運転員が非常用の冷却装置を所長らがいる対策本部に相談せずに停止し、原子炉を冷やせない状態が7時間近く続いていたことが、政府の事故調査・検証委員会の調べで分かりました。
 福島第一原発では、1号機に続いて3号機も原子炉が冷却できなくなってメルトダウンを起こし3月14日に水素爆発しました。政府の事故調査・検証委員会の調べでは、この前日の13日未明に、3号機の運転員が原子炉を冷やす「高圧注水系」という非常用の冷却装置のバッテリーが切れることを懸念して、消火ポンプによる注水に切り替えようと装置を停止したということです。ところが、注水ができるように原子炉の圧力を抜くための弁の操作に必要なバッテリーを用意していなかったため、弁は開かず、再び冷却装置を稼働させようとしましたが、動かなかったということです。このあと、3号機では車のバッテリーを集めて弁を開け、消防ポンプによる注水が行われましたが、原子炉の冷却が7時間近くにわたって中断され、その後メルトダウンに至ったということです。装置の停止が対策本部に伝わったのは停止から1時間以上あとだったということで、事故調査・検証委員会は、冷却装置を止めるという重要な決定を事前に所長らがいる対策本部に相談しなかったことは問題だったとみています。福島第一原発では、1号機でも、非常用の冷却装置を運転員の判断で停止したのに対策本部に伝わらず、所長らは冷却装置が動いていると誤って認識していたことが明らかになっています。こうしたことから事故調査・検証委員会は、安全上重要な情報を現場 と対策本部が共有できなかったことが事故対応の遅れにつながったとみて、今月26日に公表する中間報告で指摘することにしています〉(12月22日NHKニュース)
 こんなことは3月13日、遅くとも15日までにはすべてわかっていたことだ。結局、筆者らがずっと指摘してきたように、今回の原発事故は「人災」だったのだ。
 だが、NHKをはじめとするメディアは当時、そうした可能性を一切報じなかったばかりか、真実を口にする者を次々とメディアの世界から追放しはじめたのである。
 果たして、戦時中の「大本営」を髣髴とさせるそんなことがこの現代日本に起こるのだろうか。いや、実際にそれは起きたのだ。
 政府と記者クラブは、3.11を境に事実上、自分たちと論を異にする言論人たちを社会から遮断し続けた。それはチュニジア、エジプト、リビアの独裁者たちが行った情報隠蔽とまったく同じ構図である。
 いや、わざわざ世界に例を探す必要もないだろう。かつて日本においても同じことが行われていたではないか。そう、日本のパワーエリートたちは再び70年前のあの愚挙を繰り返しているにすぎないのだ。
 まさか、そんなことはなかった、とは言わせない。3月、原発事故による瓦礫とともに築かれたメディア「誤報」の山は、いまなお撤去されること無く積み上げられたままである。自らの目で確かめるがよい。
 その誤報の山はまた、TBSを筆頭に、まともな言論人たちを追放した責めを将来にわたって負うことになるだろう。すべての記者クラブメディアが背負った国家と国民への重大な「犯罪」は2011年の歴史に確実に刻まれている。
 いったい誰が放射能の危険性を最初に追及したのか。いったい誰が東京電力の隠蔽に迫ったのか。いったい誰がこれから日本の未来図にとって重要な原発事故の工程表を明らかにさせたのか。
 少なくともそれは政府でも、役人でも、東電でも、ましてや大手メディアの記者でもない。あの三月、自由報道協会を筆頭とするフリーランスのジャーナリストたちがいなかったら、果てして日本はどうなっていたか。それは考えるだに恐ろしい。現在の日本社会から事実上、追放された者たちの仕事によって、ほとんどすべてが明らかになったのだ。
 仮にあの三月、ジャーナリストの日隅一雄氏がいなかったら、あるいはフリーライターの木野龍逸氏がいなかったらと考えると筆者は暗闇に落ちるような錯覚を覚える。
 とくに日隅氏は、自らの本業である弁護士業務をすべて中断させ、東京電力本店に通い続けた。あの底冷えする暗いロビーに座り込み、記者クラブの記者たちが独占している椅子の隅で立ち続けていた日隅氏。体調不良を洩らすも、彼の使命感は東電会見から離脱することを許さなかったのだ。
 その結果、5月、耐えに耐えた末に向かった病院で余命半年の末期がんを宣告されることになる。だが、それでも、日隅氏は政府と記者クラブの隠蔽に立ち向かい続けた。
 週に2回開かれる統合対策本部の記者会見に姿をみせ、弱って痩せ細ったその体から、か弱き声をマイクにぶつけ、文字通り命を賭けた質問を繰り返している。
 12月、日隅氏の余命はマイナス一ヵ月になった。それでも彼の姿は東京電力本店に認められていた。咳き込みながらも、いつものように鋭い質問がマイクを通じて繰り出される。だが、いまの日隅氏に残された力はそこまでだ。質問を終えると机に突っ伏す。そして肩で息をしながら、その耳で回答を聞くのがやっとのこともあるのだ。
 しかし、政府・東京電力は、その日隅氏の唯一の心の叫び場である会見を閉鎖することに決めてしまった。なぜ、政府と東電による統合対策室は命の明かりを灯しながら、真実に向かって戦う者を排除するのか。細野豪志原発担当相によると、会見の閉鎖というそのアイディアは同業者、つまり、筆者たちとおなじ記者からもたらされたものだという。記者クラブの記者はそこまで腐りきっているのか。
 また、福島第一原発の現場にいる2000人を超える作業員たちも同じだ。まさしく日々、命がけで「冷温停止状態」の政府の保証する「安全な」原発の収束作業に当たっている。
 3月以降、すでに5人以上の作業員が命を落としている中、現場検証もされず、死因特定もされず、親会社の東京電力への捜査も、証拠保全さえもされない中、「安定して安全な原子炉」(政府)の作業に当たらされているのだ。
 日本という国家が彼らを救済することは絶対にないだろう。なぜならこの9ヵ月間、どんな死因であろうが、政府と東京電力は一例たりとも放射能の影響による健康被害を認めていないからだ。
 政府・東京電力は賠償逃れを確定させるため、今日の今日までこの事故が「人災」であるということを伏せ続け、代わりに「津波」や「地震」のせいにし、時間稼ぎをしているのである。そして、原子力賠償法に基づくそうした賠償逃れの片棒を担いできたのがメディアだ。記者クラブという世界でも稀に見る不健全な利権システムを完成させた大手メディアの記者たちだ。それはまさしく「大本営発表」以外の何者でもない。
 あのころ、官邸は何をしていたのか。筆者がかけ続けた電話をすべて拒否したあの100時間、政府と記者クラブは何を諮り、実際どのような「犯罪」を繰り返していたのか。
 その欺瞞の証拠を少しだけお見せしよう。
〈記者 IAEAへの要請については首相はなんと言っていたのか?
顧問 早期に先遣隊というのは時期的な問題もあるから、そういうのは外国の受け入れを含めて細野さんのところだったかな、そこに指示を出すと。
記者 国民が安心していない、ということか?
顧問 説明に対して、やっぱりわかんねえんだよ。やっと専門用語じゃない、平易な言葉で話すようにはなったけれども、やっぱり国際機関の中でこういう処理をしていけば大丈夫だとか、これがものすごく広がることにはならないよ、とか政府や事業者がいったって、なんとなくそうなのかなとは思うわね。
記者 首相はそれについての問題意識は持っていたのか?
顧問 本人は「ぼくはものすごく原子力には強いんだ」と。詳しいんだといっていた。辻元さんが「まいっちゃうよねえ」とかいっていたね。ハハハ。
記者 危機感がないようだが?
顧問 福島が弾けた後、最大の危機の震災の問題、日本の半分はつぶれるんじゃないかと。このまま、もしチェルノブイリと同じようなことになったらね、という危機感の中で対応した、ということだ。技術的な面も含めて、自分は詳しいからものすごい対応をしてきたと。でも、ここから先、収まりそうになったので、原発問題については枝野さんと福山さんのかかわりかたを少し軽減させたいと。
記者 軽減させる、というが、それは首相の言葉?
顧問 それは少し、荷を軽くするといったのかな。原子力ばかりしゃべっている話じゃないわけだから。
記者 4号機も近付けないようだが。
顧問 炉心に完全防護で入った経験からいうと、10分交代でやる作業になるわけだよ。今もうちょっと短い期間なのかな。一番いいのはわかるところから注入するのがいいんだけど、これが接近できないとなるとね。非常にタイトなところを渡っているのは間違いない。
記者 「ぼくは原子炉に強いんだ」の発言はどういう文脈で出たのか?
顧問 電力事業者の危機感が薄いねと。だから最終的に乗り込んでいって、もっと危機感をもって対応してくれないかという話をしたなかで出た。
記者 それは首相が話した?
顧問 そうですよ。自分としては原子力の問題については詳しい。まあ、たぶん自分は政府の中で一番知っていると思っているんじゃないかって。
記者 政府で一番知っていると言ったのか?
顧問 あ、それは私の感じだが。
記者 東日本が、というのも首相の発言か?
顧問 仮にだよ、仮に。本当に事故が1から4まであるいは5やら6まで含めてあったら、東日本は危機的な状況になるわな。
記者 首相がいったのか?
顧問 数字はいっていない。福1が本当に最悪の事態になったときには東日本がつぶれる、というようなことも想定をしなければならない。そういうことに対する危機感が非常にうすいと。自分はこの問題については詳しいので、余計にそういう危機感をもった対応をしてほしいということで電力に乗り込んだということだ〉
 ここでいう「顧問」とは、内閣総理大臣特別顧問で連合の笹森清氏のことである。それにしてもこの緊張感のなさは何なんだろうか? こうしたやり取りをずっと続けて、原発事故の本質については何も報じない、それが記者クラブメディアのやり方だ。
 だが、報じない代わりに、上司を喜ばせるだけのこうした「懇談メモ」を作り続けている、それが、悲しいかな、日本のジャーナリストたちの主たる仕事なのである。筆者は彼らに対して、心からの同情を禁じえない。同時に、大いなる軽蔑の目をも向けざるを得えない。そう、筆者の手元にある40万ページにも及ぶ「記者メモ」のほとんどは、こうした政局ネタばかりなのである。
 筆者は、本稿をもってジャーナリストを休業する。それはフェアでない言論空間しか持たない現代日本社会への絶望に対してではない、同業者たちへの大いなる抗議の意味と、新しい日本を築くためのひとつの方法論としての休業である。
 日本は一度堕ちるところまで堕ちなければならないのかもしれない。終戦の翌年(1946年)、坂口安吾が喝破したようにそれ以外にいまの日本という国家を建て直す道はない。
 記者クラブシステムを象徴とする「偽装設計」による国家の成り立ちは、もはや滅びの瀬戸際にまで日本を連れて行った。政府、東電、経済産業省、マスメディアなどで構成される「原子力ムラ」という腐った「建築資材」では、じき全体の崩壊を招くことになるだろう。
 66年前のあの敗戦後の廃墟の中、坂口安吾はこう書いた。
〈戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが、人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くでは有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。人間は結局処女を刺殺せずにはいられず、武士道をあみださずにはいられず、天皇を担ぎださずにはいられなくなるであろう。だが他人の処女でなしに自分自身の処女を刺殺し、自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。そして人の如くに日本も亦堕ちることが必要であろう。堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。政治による救いなど上皮だけの愚にもつかない物である〉(『堕落論』新潮文庫)
 自らを直視し、堕ちることのできない政治はウソである。自らの過ちを認め、訂正しながら堕ちることのできない記者クラブは欺瞞である。そうした社会制度を打倒しない限り、3.11からの日本の真の復興は有り得ない。
 この12年間、ジャーナリストとして筆者のやってきたことは、この腐敗したシステムの綻びを世に問い続けることであった。そしていま別のアプローチでこの日本の病巣に向かっていく時期がやってきたようだ。
 大本営メディアによるこの腐敗したシステムはいちど滅ぼさなくてはならない。そのために筆者はアンシャンレジームとともに堕ちる道を覚悟している。自ら、そのシステムもろとも地獄に堕ちる以外に日本のジャーナリズムを再生させる道はない。
 その最初の一撃が40万ページに及ぶ、「懇談メモ」と称する、政府とメディアの談合の「証拠」を公開していくことだ。
 なにより、まず、この「談合」の実態を本コラムの読者に問いたい。それでもなお、みなさんは政府を信じ、そしてメディアを信じることができるだろうか。
 結論は各人の自由である。だが、その結果、そうでないと感じ、その革命のためになにかをしなくてはならないと思えば、ぜひとも行動に移してほしい。
 それはどんな方法でも構わない。もちろんギターでなくてもいいし、カメラでなくてもいい。
 ひとりひとりができることを考え、そして実際に行動に移すだけいいのである。ともに堕ちる覚悟さえあれば、きっと日本は変わるだろう。いや、それ以外にこの日本を救う道はないのである。
 「生きよ、堕ちよ」
 まさしく65年前に安吾の書いたこの言葉こそ、すべての日本人に欠かせない言葉だ。未来の日本人のために一緒に堕ちようではないか。それがジャーナリストとしての私からの最期のメッセージである。
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無期限活動休止宣言・上杉 隆「フェアでない日本のメディアに関わりたくない」2011-04-02 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 無期限活動休止のおしらせ
並々ならぬご支援を頂戴している皆々様へ
(以下:なみなみならぬみなみなさま)
おかげさまで、兎年の今年、上杉隆はジャーナリスト活動12周年を迎えることができました。これもなみなみならぬみなみなさまのおかげでございます。まずは冒頭、衷心より御礼申し上げます。
ニューヨークタイムズを辞め、フリーランスとしての活動でもちょうど10年。おかげさまで、この間、じつに多くの方々の温かいご支援や励ましのもと、たくさんの著作や記事、あるいは番組などを通じて、活動内容を世に問うことができました。誠にありがとうございました。
とくに、最近の5年間は、フェアでない日本の言論空間の是正、メディア環境の世界標準化を目指す一環として、記者クラブ制度の改革に取り組み、それなりの警鐘を鳴らすことに成功したと自負しております。これもなみなみならぬみなみなさまの支えがあったからに他なりません。重ねて御礼申し上げます。
しかし、残念ながら、少しばかり手遅れのようでありました。今回の東京電力福島第一原発事故の例が示すように、自らの既得権益にのみ汲々とした日本の大手メディア(記者クラブ)は、結果として、政府と東電の「合成の誤謬」に加担し、憐れにも、先人たちの築いてきた日本という国の信頼を地に堕とす「共犯者」の役割を演じています。
かつて在籍したニューヨークタイムズ紙などの世界の論調を眺めていると、私はひとりの日本人ジャーナリストとして、いま強烈な無力感に襲われています。それは、あたかも日本政府は原子力エネルギーをコントロールできない無謀な「核犯罪国家」であり、また日本全体が先進国の地位から脱落して、今後数十年間にわたって「情報最貧国」に留まることが決定付けられているような書きぶりだからです。
ただ今回、唯一の救いは、今年立ち上がった「自由報道協会」所属の記者を中心としたジャーナリストたちの目を瞠るような活躍により、被災地、あるいは記者会見の現場、さらには内部の情報提供者から、政府・東電・マスコミで作られた「官報複合体」の隠蔽しようとする情報を、国民の前に提示することができたことです。
震災発生直後にガイガーカウンターを持って現地入りした者、ツイッターなどのソーシャルメディアで安否情報を発進した者、ラジオなどで被災地の声を全国に届けた者、東京電力という巨大スポンサーに屈せず発言し番組を降ろされた者、記者会見に通い海洋汚染の危険性を唱え続けた者、核マフィアの隠すプルトニウムの真実を追及した者、最悪のシナリオについて再三叫び続けた者――。彼らは各々己の責任で勝手に取材活動を行なっただけにすぎないのですが、結果としてジャーナリストとして「連帯」していたのです。
自由報道協会の暫定代表として、私は、彼らの仕事を心から誇りに思います。
いま、私は、70年前の「大本営」(政府・軍部・新聞)の時とは明らかに違う世界に住んでいる喜びを実感しています。インターネットなどの新しいメディアの発達によって、世界はそれ以前の状態に戻ることはないだろうと、確信しました。私自身は、微力ながらも、少しだけその変化に寄与できたはずだと自負しております。
一方で、記者クラブメディアはこの間、いったい何をしていたのでしょうか。自分たちは安全なところに置きながら、フリーランスや海外メディア、ネット記者らの仕事を横取りし、ソースも明示せず、自らの手柄のように報じているだけです。しかも、その直前までは政府・東電の発表に乗っかり、まったく逆のニュースを流していたのです。
私は、少なくとも敬意を持って彼らの仕事を評価してきたつもりでした。ソースは必ず明示し、スクープには賞賛を、つまらない仕事には批判でもって対応してきました。ところが、この12年間、彼らの方では、フリーランスやネット記者の仕事を、ただの一度も認めることはしませんでした。この20年間、ほとんどのスクープ記事が雑誌、ネット、フリーランスのジャーナリストたちによるものであるにもかかわらず、です。
これ以上、国際的にフェアな仕事のできない日本のメディアに関わることは、畢竟、自分自身も犯罪に加担していると疑われる可能性もあります。私はジャーナリストとして、国家的犯罪に加担したくないのです。
ということで、なみなみならぬみなみなさまにご報告があります。日本にとって、また私自身にとっても大きな節目となる2011年、その本年12月31日をもって、ジャーナリズム活動を休止することを決めました。
なみなみならぬみなみなさまに置かれましては、事情ご賢察のほど、ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げ、お許し願えればと存じます。
最後になりましたが、今回の東北関東大震災で被災されたすべての方々へのお見舞いと、政府、東京電力、記者クラブが作る歪んだ社会の中で生き続けなければならないすべての日本人の幸福を心からお祈り申し上げます。
2011年4月1日
上杉 隆
 
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もはや関係修復は不可能 小沢一郎氏vs記者クラブメディアの戦い
Diamond online 週刊・上杉隆【第195回】2011年10月7日
・この事件は小沢一郎という政治家と司法、霞ヶ関、マスコミとの戦いである
 陸山会事件における小沢一郎氏本人の裁判がようやく始まった。
 きょう、東京地裁では初公判が行われた。これによって、2009年3月の大久保元秘書の逮捕からスタートした政治資金規正法違反事件の本番がようやく訪れたということになる。
 なにしろ長かった。その一年半余りの間、元秘書の逮捕、代表辞任、政権交代、検察審査会、党員資格停止、さらに3人の元秘書の有罪判決などがあり、きょうに至っているのだ。
 これまで自由報道協会の記者会見以外ではほとんど語ることのなかった小沢氏だったが、初公判を受けて、早速、今夕、議員会館で簡単な記者会見に臨んだ。
 筆者自身も、この事件については2009年3月3日、つまり、事件当日から追っている。
 端的にいえば、この事件は、小沢一郎という政治家と、現在の日本の権力システム――司法(裁判所)、霞ヶ関(検察)、そしてマスコミ(記者クラブ)――との戦いに他ならない。
 今回もまた、世間にほとんど知られていないマスコミとの戦いが繰り広げられている。
 そこで、筆者自身の取材を振り返る意味でも、また、小沢氏のマスコミとの戦いを検証する意味でも、きょうの会見を振り返ってみようと思う。
 なお、筆者も会見には出席したが、小沢氏の発言の引用については、より公平性を期すため、すべて産経新聞のウェブ版に拠った。さらに、文意のまとまったパラグラフについては省略をしないことにする。そのため、引用部分が長くなるがそこはご海容いただきたい。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111006/stt11100618560018-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111006/stt11100619050019-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111006/stt11100619350020-n1.htm
〈えーそれでは私から最初に申し上げさせていただきます。私が主張したい内容は、本日の法廷で裁判長の許可をいただいて意見を申し述べましたので、そのことにほとんど含まれておりますので、ここで改めて私の意見の陳述をもう1度繰り返させていただきます。あん?そうかな。立った方がいいのかな。座った方がいいのか。立った方がいい。よしよし。今日ぐらいサービスしよう。大丈夫。
 裁判長のお許しをいただき、ただいまの指定弁護士の起訴状に対し、私の見解を申し上げます。指定弁護士の主張は、検察の不当・違法の捜査で得られた供述調書を唯一の根拠にした検察審査会の誤った判断に基づくものに過ぎず、この裁判はただちに打ち切るべきであると考えます。百歩譲って裁判を続けるにしても、私が罪に問われる理由はまったくありません。本件では政治資金収支報告書に間違った記載をした事実はなく、従って政治資金規正法のいう、虚偽記載に当たる事実はありません。
 ましてや、私が虚偽記載について、共謀したことは断じてありません。また、本件の捜査段階における検察の対応は、主権者である国民からの何の負託も受けていない一捜査機関が、特定の意図により国家権力を濫用(らんよう)し、議会制民主政治を踏みにじったという意味において、憲政史上の一大汚点として後世に残るものであります〉
・テレビでは仏頂面がおなじみだが 実は「いい感じ」のスタートが多い小沢会見
 冒頭からいきなりカメラマンへのサービス精神を発揮した小沢氏だが、じつは普段の自由報道協会の会見でもこうした「いい感じ」で始まることが多い。
 ところが、実際テレビなどで映像が使われる段になると不機嫌で怒ったような顔ばかりが使用される。単純な印象操作だが、それも徹底していれば影響は大きい。実際、小沢氏はそうしたアンフェアな報道姿勢に不満を持っており、それは、後の小沢氏自身の言葉からも読み取ることができる。
〈実際、日本外国特派員協会の会長でもあったオランダ人ジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は近著「誰が小沢一郎を殺すのか?」で小沢一郎に対する強力かつ長期的なキャラクターアサシネーション、人物破壊は世界的に類を見ないと言っています。人物破壊とはその人物の評価を徹底的に破壊することで、表舞台から永久に抹殺する社会的暗殺、アサシネーションであり、生命を奪う殺人以上に残酷な暴力だと思います。
 それ以上に本件で特に許せないのは主権者たる国民から何も負託されていない検察、法務官僚が土足で議会制民主主義を踏みにじり、それを破壊し、公然と国民の主権を冒涜(ぼうとく)侵害したことであります。
 一昨年の衆院総選挙の直前に、何の根拠もないのに検察当局は捜査逮捕権という国家権力を乱用して、いきなり野党第一党の代表である私を狙って強制捜査を開始したのであります。衆議院総選挙は国民が自ら主権を行使して、直接政権を選択することのできる唯一の機会に他なりません〉
・言外に日本のメディアを批判した小沢氏 しかし質疑応答スタートの一言は……
 ここでは小沢氏自身は触れていないが、この「人物破壊」には記者クラブメディアも加担していると言外に表明しているのだ。海外メディアの日本の団体のトップであった人物に語らせることで日本のメディアのアンフェアさを述べているのである。
〈日本は戦前、行政官僚、軍人官僚、検察警察官僚が結託し、財界、マスコミを巻き込んで国家権力を濫用し、政党政治を破壊しました。その結果は無謀な戦争への突入と、悲惨な敗戦という悲劇でありました。教訓を忘れて今のような権力の乱用を許すならば日本は必ず同様の過ちを繰り返すに違いありません〉
 さらに小沢氏はそれを戦前の大本営発表になぞらえて批判している。日本の記者クラブシステムの打破は、20年来の小沢氏の持論でもある。
 だが、それを本当に理解している人物は少ないのかもしれない。なにしろ会見の司会を担当した側近議員ですら、完全オープンでの記者会見の意味を理解せず、いきなり次のように語って質疑応答を始めたのだった。
「それでは幹事社の方から質問をお願いします」
 それでは、小沢一郎氏と記者クラブメディアの戦いをノーカットで見てみよう。
――テレビ幹事社として2点伺う。まず今日の初公判を終えての現在の心境、率直なご感想をお聞かせいただきたい。初公判を終えての現在の心境を率直に一言お願いしたい
〈今申し上げた通り、私の今回の捜査、そして検察審査会による強制起訴。これは全く、今申し上げました通り、不当な捜査であり、また、今日の裁判も一時も早く止めるべきであるというふうに申し上げました。その通りであります〉
――元秘書3人が一審で有罪判決を受けたことを含め、刑事責任とは別に道義的責任を問う声もあるが、ご自身の今後の政治活動はこれまで通り続けられるのか。議員辞職や離党についてはどのようにお考えか
〈今の文章でもお分かりいただけたと思いますけれども、私も、私の秘書も有罪と認定されるようなことは何もしておりません。この間の判決についても何ら法的な証拠も何もない。裁判官が自分の推測と推断で事実を認定し、それに基づいて判決を下すと。前代未聞のことであり、私は司法の自殺に等しいと思っております。従いまして私どもが何か違法なことをしたというならば、あんたが今使った言葉の中の、色々なことについて考える余地はありますけれども、何にも違法なことをしておりませんですから、そのようなことを考えるつもりは全くありません〉
――国会での説明責任についてうかがいたい。野党は証人喚問が必要だと主張している。かつて小沢氏は政倫審への出席を表明した経緯もあるが、公判がスタートしたとはいえ、司法の場とは別に国会で説明責任を果たす考えはあるか
〈君はどう考えているの? 司法の公判が進んでいるとき、他の立法権や、その他のこと、いろいろと議論すべきだと思ってんの? あんたは。あんたの見解は?〉
――司法手続きは重要だと思うが、国会での説明も一方では重要なことだと思う
〈あっ、そうなの。じゃ、三権分立を君はどう考えているの? だから、ちゃんとよく勉強して筋道立った質問してください。司法で裁判所っちゅうのは、最高の、最終の法に基づき、根拠に、証拠に基づいて判断をする場所でしょ? それが、いろいろな力や感情によって結果が左右されるようなことになってはいけないから、司法は司法で独立しているわけでしょ。うん。もうちょっと勉強してから、また質問をしてください〉
――今回の虚偽記載の件に関し、小沢氏が用立てたとされる4億円の原資は何だったのか
〈原資は私のお金です。詳しく聞きたければ検察に聞いてください。強制捜査、1年以上もやって、国会で説明する、君たちに説明するどころじゃないでしょ? 強制捜査をずっとやってんですよ。私の知らないことまで全部調べておりますから、お聞きください〉
 司会の岡島一正民主党衆院議員「フリーランスの記者の質問を2問ほど受けます」
――(TBS松原キャスター)2004年に小沢氏の政治資金管理団体「陸山会」は銀行から4億円の融資を受け、そこに小沢氏も署名しているが、これはなんのための融資だと考えるか。指定弁護士は虚偽記載の隠蔽工作ではないかと見ているが、どう考えるか。どう説明するか
 岡島氏「質問はフリーの人を優先してということなんで」
――あのー、いやー。
 岡島氏「フリーの方と知らないで私、指したんで」
〈(質問者に対し)ちゃんと、あんた、ルールを守らなくちゃだめだよ。答えるけども〉
岡島氏「フリーの方、もう一度お願いします」
〈(テレビ局からの質問はすでに)代表してやったんでしょ?〉
 岡島氏「フリーだと思ったんで。フリーじゃないと知らなかったものですから、すみません」
――(自由報道協会・田中龍作記者)小沢氏がこうまで検察とマスコミに狙われるのは、検事総長をはじめとする検察の人事、記者会見のオープン化、新聞社がテレビ局を持つという奇妙奇天烈なクロスオーナーシップに踏み込むからではないかとみる向きもある。小沢氏はどう考えているか
〈あのー、私は検察の人事であれなんであれ、官僚の人事にいろいろ干渉したり、口出したりすることは、したことはありません。ただ、それとは別に、今もう一つ言った、マスコミもいわゆる法律的にも集中排除の原則というのは法的にちゃんと規定されております。そういうことと同時にですね、私はやはり、どういう分野であっても程度の差はあれ、自由な競争というものが必要だと思っております。ですから、身近なことでいえば、会見でも、ずーっと以前から私はどなたでもどうぞというふうにオープンにいたしております。それが私の基本的考え方です〉
――それが記者クラブに嫌われた原因か
〈それは分かりません〉
 岡島氏「さっき、私の仕切りの言葉が悪かったので誤解されたかもしれません。まず、フリーの方、あとおひとり」
――(ニコニコ動画・七尾功氏)
 今回の裁判では小沢氏への支持、不支持を超えて司法のあり方そのものを疑問視する声が非常に多い状況となっている。一方でマスメディアのいう世論というものがあり、昔からこうした声は正反対の意見が多いわけだが、もう少し考えを聞かせてほしい。また、今後の対応は
〈はい、あのー、私はテレビ、新聞のやっている世論調査、国民の声というものがまったくデタラメとは申し上げませんけれども、しかし、必ずしも全国民のまんべんなく意見を代表しているというふうにも思えません。ですから、もし、その通りであるならば、私自身が選挙に受かることもなかったでしょうし、こうして政治家として活動が許されることもなかったと思います〉
〈ですから、賛否両論、いろいろ私に対してはあると思います。それは当然です。しかし、それが一方的なものであるとは私、思っていませんので、がんばってくれという大勢の方もありますし、私自身、なんら一点もやましいこと、ありませんので、今後もがんばっていきたいと思っております〉
 岡島氏「(記者会見に同席した民主党の階猛、辻恵両衆院議員に対し)補足ありますか。特にない。それではこの会見は、これで質問を終わらさせていただきます。ありがとうございました」
〈はい、ありがとう〉
 これでわかるだろう。もはや小沢一郎という政治家と既存の記者クラブメディアとの関係修復は不可能なのだ。
 こんな状況で健全な記者会見ができるはずもない。フェアな議論はフェアな舞台にしか宿らない。
 小沢一郎氏がマスコミを人物破壊を行う「敵」のひとりとみなしている理由はここにある。《「救急で小沢一郎氏が病院へ搬送」のニュースと田中角栄氏/ 小沢一郎氏vs記者クラブメディアの戦い2011-10-07 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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小沢氏初公判 第3の検察と化した記者クラブ
田中龍作ジャーナル2011年10月6日 20:53
 初公判を受けての小沢氏記者会見。会場は立錐の余地もないほど記者やカメラマンで埋め尽くされた。
 土地購入をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記載)で検察審査会の議決によって強制起訴された小沢一郎・元民主党代表。6日夕方、初公判を終え国会内で記者会見を開いた。
 小沢氏は法廷で行った意見陳述をもう一度読み上げた。続いて記者クラブ幹事社からの質問だ。筆者は会見が始まる前、記者クラブから出されるであろう質問を予想し、それをツイートした。「秘書が有罪になったが…」「議員辞職はしないのか?」などだった。
 幹事社(今月はテレビ朝日、共同通信)はものの見事に筆者の予想に沿った質問をしてくれた。テレビ朝日の記者が「秘書が有罪になったことの道義的責任は?」「議員辞職しないのか?」と質問したのだった。
 小沢氏は次のように答えた―
 「私も私の秘書も有罪とされるようなことはしていない。有罪の証拠はない。裁判官が自分の推測にもとづいて判決を下した。(議員辞職など)そのようなことは考えていない」。
 共同通信記者の質問は―
「野党は証人喚問を要求しているが、国会で責任を果たす予定は?」
「4億円の原資は何だったのか?」
 小沢氏の回答は―
 「3権分立を何と考えているのかね。君はどう考えているのかね」。
小沢氏から逆質問されると、共同通信の記者は絶句してしまった。
 「4億円は自分のお金です。検察に聞いて下さい。検察が1年以上、私の知らないことまで捜査しているのだから」。
 検察リークを垂れ流していることへの強烈な皮肉だった。
 検察審査会が第2の検察と言うなら、記者クラブは第3の検察である。
 筆者も毎度おなじみのワンパターンな質問をした。情けない話だが、この問題に行き着くのである。
 「小沢さんがこうまで検察とマスコミに狙われるのは『検察人事』『記者会見のオープン化』『クロスオーナーシップ』に踏み込もうとしているからではないか?」
 小沢氏はこう答えた。「検察人事に介入したことはない。記者会見は開かれたものでなければならない。(クロスオーナーシップについては)集中排除の法律を守らなければならない」。
 「あいつ(田中)はいつも同じ質問ばかりだな」とバカにされるのは承知のうえだった。記者クラブ制度と検察の体質を改善しない限り、日本という国が破滅に向かうと思うからである。
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この国の謎 なぜ八ツ場ダムは再開したのか 現国交大臣が旧建設省官僚だから

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この国の謎 なぜ八ツ場ダムは再開したのか 現国交大臣が旧建設省官僚だから
日刊ゲンダイ2011年12月26日
国民をナメ切って税金を自分のカネと思っているこの国の役人たちのドロボー根性
 「八ツ場ダム」の建設工事再開があっけなく決まった。大新聞は「民主党のマニフェスト全滅」とうれしがって騒いでいるが、不思議なのは、なぜ、こんなバカバカしい巨大工事が再開されたのかである。
  だいたい今ごろ本体工事なんて言っているが、八ツ場ダムの建設計画は60年も前だ。当時は利水、治水が目的だったが、今や水需要は予想を大きく下回り、治水面でもダム効果の過大評価が指摘されている。とっくに「破綻」しているのだ。
  そこのところを大新聞は突かない。国交省はこうした素朴な疑問にマトモに答えないばかりか、“ヤラセ”もお構いなし。2年前の本体工事の凍結後に関東地方整備局がダム建設の是非について公募したパブリックコメントでは、寄せられた約6000件の内容が同じ文言の賛成意見だったこともあった。原発再開のヤラセとソックリだ。そんなインチキな検証作業の結論をもとに「事業継続が妥当」と判断したのが前田武志国交相(74=参院比例)。旧建設省の官僚出身である。古巣の連中とグルになって予算計上、工事再開を強行したのだ。
 「前田大臣は旧建設省で、河川局計画専門官などをやった技官。本来なら国交官僚の姑息(こそく)な手口を知っているから、“工事再開”の結論ありきで進む有識者会議のメンバーを入れ替えるなど、大胆なこともできたでしょう。それをしなかったのは後輩官僚に丸投げしている証拠。そんな先輩OBを見て、現場が『今が本体工事再開のチャンス』と思って押し切ったのです」(国交省担当記者)
  ここまでして、なぜ役人はムダなダムを造りたがるのか。
 「巨大な天下り利権があるからです。07年に国会で明らかになった資料によると、八ツ場ダム工事に関連する公益法人や建設業者に天下った国交官僚は、04年の時点でも200人近くいた。国交省はダム工事を続けることで莫大な事業予算を天下り先の公益法人、企業にバラまくことができるのです」(経済ジャーナリスト)
  八ツ場ダム問題を取材してきたジャーナリストの横田一氏によれば、本体工事再開で、最終的な事業費は「1兆円に達するとの見方もある」という。一方で財政危機と言いながら、役人は国民を完全にナメ切っている。ダム工事が長引くほど、税金を「自分のカネ」と思っているドロボー根性の役人たちが肥え太るのである。庶民は本当にやってられない。
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人間・小沢一郎 最後の大構想/「福島県民は霞ヶ関取り巻くデモ起こしてもいいのに」/「最後のご奉公です」2011-12-26 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 人間・小沢一郎「最後の大構想」
  週刊ポスト2012年1月1・6日号
 小沢一郎。この稀有で頑固な政治家の「人間」を解剖することは日本の政治の形、国家の形がどう変わらなければならないかを探るケーススタディといえるかもしれない。天の怒りに地の喜びが打ち砕かれた2011年3月11日。政治は荒れた大地に陽炎の如く輪郭を浮かべ、無為に時を重ねた。多くの国民は「動かない小沢」に焦れた。小沢封じの政治の病巣は現実と醜悪な乖離を見せつけた。何をしていたのかという挑みの問いに、小沢が「人の顔」で激しく語った。(聞き手・渡辺乾介氏 政治ジャーナリスト)
■震災対応で二つの「政治問題」
 2011年の掉尾を奮う時、東日本大震災を抜きにしては語れない。人々は地震と津波の襲来、息つく間もなく放射能禍に見舞われ、日常のすべての営みを断たれ、最愛の家族と生活の絆、仕事を失い、形骸だけを残した街を目の当たりにした。
  被災者は誰も人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟しつつ、絶望の悲嘆にくれる暇さえなく、生きる使命と希望に奮い立った。その姿は世界に大きな感銘を与えた。
 そして、政治と行政の力を求めたが、空前絶後に事態に機能不全に陥り、無力であることを知って、人々は自力で我が町、我が村を興そうと動き出したのだった。やがて恐る恐る政治がやってきた。遅きに失するばかりの復興対策である。被災者は惨状に只中にありながら、政治や行政にかまわず自助自立、相互扶助で苦難に立ち向かってきた。
 人災としての放射能禍は、政治が最大の障害というべき連関に人々を押し込め苦しめた。人民あっての政治が、政治ゆえに人々に立ちはだかる。
 一体、政治とは何なのか。未曾有の困難と混乱の大震災であればこそ「国民の生活が第一」という民主党政権の拠って立つ基本理念の実践、その真価が問われたのではなかったか。
  同時にそれは、政権交代の立役者であった小沢の存在理由であり、国民との約束の政治的価値そのものなのである。
だから、問う。
 震災直下で人々が、人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟していたように、政治家でありながらも、一人の人間として、小沢もまた被災地に立って何を思い考え、いかなる人たる呻吟をしていたか、である。
小沢:被災地の皆さんは非常に厳しい、そして辛い生活をずっと耐えて、長い間頑張ってこられた。亡くなった方々へのお悔やみとご家族へのお見舞いを申し上げると同時に、くじけずに頑張っておられる郷里の皆さん、被災地の皆さんに、心から敬意を表したいと思います。
 千年に一度の巨大地震、大津波というのでは、人知の及ばない面もある。そこは自然災害に対する今後の方策を考えていく以外にないんだけれども、政治的には二つの大問題があります。
 一つは原発。日本の再建だ、東北の再建だと言っていますけれども、放射能封じ込めに成功しないと日本経済の再建も日本の将来もない。福島第一原発の事故はマスコミでは喉元過ぎればで、なんだか風化したみたいになってますけれども、日本人的な現象で非常に危険だと思います。
 この放射能については、なんとしても完全に封じ込めないといけない。そのためには、どれだけお金を使ってもやむを得ないし、封じ込めの先頭に立つのは国だ。ということを僕は言い続けてきたんです。事故の現状は、東電が第一義的に責任者だからといって、東電にやらせていいという状況を超えている。国が自ら先頭に立って、主体的にやらなくちゃいけない。
 原発による被災者の皆さんの生活の問題と同時に、放射能をいかにして封じ込めるか。水をかけて「冷温停止状態を達成した」なんていたって、永久に水をかけ続けるのか?今になって、核燃料が圧力容器からメルトスルーして、もうすぐ格納容器の底のコンクリートを抜けるかもしれないなんて、呑気なことを言っているわけですね。
 震災の2、3日後には、熱工学の学者をはじめ客観的に事実を見ている人たちは、必ず炉心は壊れていると言っていた。燃料も必ずメルトダウンしているとわかっていたわけですよ。それにもかかわらず、政府は2ヵ月後にようやくメルトダウンを発表して、そして最近になって落ちたウラン燃料がコンクリートを侵食して、底を突き破るまであと30何センチだなんて言ってるわけです。あれ、突き抜けて土の中に入っちゃったら、汚染の拡大を止められなくなりますからね。
 それをまず徹底的に封じ込めないといけない。それは国家、政府が先頭に立ってやるべきことです。
 もう一つは統治の機構。この機会に「地域主権」を確立すべきですよ。
復興のための補正予算などで金銭的な手当ては一応してあるんだけれども、その使い方は相変わらず旧来と同じ公共事業でしょう。今まで同じパターンで補助金を出すやり方だから、仕事は遅いし無駄が多い。
  政府は地方の再建、東北の再生なんて言っていますが、これを機会に我々が主張してきたように中央省庁が仕切る補助金の制度を、地方自治体が自由に使える一括交付金の制度へと変える。これだけの大被害なんだから暫定的にでもやるという理屈も成り立つ。好きなように使ってよいというお金をもらえれば、もっと早く、もっとたくさん仕事ができると言うんですよ。(被災地の)知事も市町村長もそう言う。
 相変わらず予算を貰うには、いちいち中央の役所から査定に来る。学校つくるにも、仮設住宅つくるにも、海岸つくるにもすべて中央が査定して、霞ヶ関へ持って行って、そこでまた検討して、やと補助金が出る。しかも、旧来の役所のメニューにある事業、やり方しか対象にならない。
 私は、今こそ民主党が政権交代で訴えてきた補助金制度の改革を断行して、一気に「地域主権」を確立すべきだと思う。中央集権の霞ヶ関一極集中の統治機構を変える絶好の機会だと思っているんだけれども、そういう発想はまったく出てこない。非常にジレンマと苛立ちを感じています。
渡辺:あなた自身、大震災が発生して現地に入るまでどういう気持ちだったのか。
小沢:かつてないほど多くの方が亡くなった。僕は昔から浜も何もかも歩いて知っているから、どこがどうなったかはわかる。しかし、生きている者は町づくり、村づくりをしなくちゃいかんから、そっちの方に目が向いた。僕はどのようにして復興財源を賄うかとか、どういうふうに直せばいいのかとかいうことを考えなければならない。だから、達増拓也岩手県知事とはずっと連絡を取り合って協力しながらやってきた。
 実はあれだけの大津波にもやられなかった浜があるんですよ。岩手で2ヶ所かな。明治時代に津波にやられた教訓で、昔の村長さんが主導して高台に全部移転していたんだ。それが今回幸いした。だから同じ金を掛けるにしても、そういうことまで考えて、根本的な浜の町づくりをしないといけない。
■「もう帰れない」と伝える責任
渡辺:被災者の人たちが、苦悩、苦難、困難を抱えながらも自分たちの手で何かやらねばならないという、この大衆のエネルギーを政治が汲み取ろうとしないところが悲しく虚しい。
小沢:今回、一般の人たちがお互いに連帯していろいろな救助活動や復興活動に立ち上がった。これは日本人のとてもいいところで、みんなが感動した点だと思う。
  一方、地方はいちいち中央の霞ヶ関の許可をもらったりするのが面倒臭くてしょうがないと思っているけれども、それが政治的な運動にならない。そこが日本社会が他の国から遅れているところですね。大きな変革を起こせない理由でもある。本来ならば、特に福島県の人たちなんか、全県民が上京して、霞ヶ関を取り巻くぐらいの筵旗(むしろばた)デモを起こしてもよさそうなのに日本はそうはならないんだね。
渡辺:外国なら暴動が起きても不思議はない。
小沢:政治に何をして欲しいんだというものは必ずあるはずです。それが政治の変革を求める運動に繋がっていかないのが、日本社会の最大の問題だね。
渡辺:元ソ連邦大統領のゴルバチョフ氏は回顧録で、チェルノブイリ原発の事故について「わが国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことを見せつける恐ろしい証明であった」と書いている。福島原発も同じ問題を内包していると思う。
小沢:溶けた核燃料を取り去るなんて工程表に書いてある。でも、どうやって取り出すの?それをどこへ持っていくの?何も方策がないのに、そんなことを文書にだけ書いてどうするんだ。そういう意味のないスケジュール表みたいなのを作ったって、何の役にも立たないと僕は思う。
 それをこのままに放置しておくとなると、今を生きている我々が末代まで責めを負わなければならない。
渡辺:戦争以外であれだけの領土を事実上、失うことは大変な事態です。
小沢:(大きく頷いて)まさにそうです。
渡辺:それだけ重大であるという意味が、政・官・財、大メディアにも共有されていない。
小沢:原発から20キロだか30キロのあたりで、これ以上放射能が拡散しないという保証があるならいいけれども、もっと拡散するかもしれない。まだ政府はなんとなく避難した人たちがいずれ故郷に帰れるみたいな話ばかりしているでしょう。だから避難した人たちは、もしかしたら帰れるかもしれないと思って新しい生活設計ができない。中途半端で宙ぶらりんの状態になっている。これは政治の一番の罪だと思う。
 事実上、放射能の強い地域には帰れない。だから、被災者にはきちんとそう言って、新しい生活に対して支援をしていくべきです。みなさん、それぞれ生活設計をしてください、帰るのは当分考えられる限り無理です、ということをじはっきり言わないと避難している人たちに対する裏切りというか、背信、嘘つきになっちゃう。
■増税せずとも当面の金はある
渡辺:被災者も国民も、政治は国民のために動いていないと怒っている。たとえば、原発事故では被曝予測システム「SPEEDI」の情報を隠し、復興を口実にして国民に負担増を強いる。この震災の結果責任の悲劇的なところだ。
小沢:自分が担当している間は無難に過ごせばいいという事なかれ主義、悪い意味の官僚的発想なんですね。誰も泥をかぶらないで、かわい子ちゃんでいたい。官僚だけでなく政治家もそうなっちゃったということですね。
渡辺:あなたが唱えてきた「自立と共生」の視点から、これだけ病み、傷んだ国土、国民、国家の震災後の在り方を語るときに、どういう再生の方向性があるのか。それは国民があなたに注目する大きな一つの視点だ。
小沢:日本には、市民の力によって政治体制を変えた歴史がほとんどないですから、自ら政治を動かそうという発想がなかなか国民の間に生まれてこない。
  ただ、インターネットの広がりとともに、政治に無関心であったといわれる若い人たちがかなり関心を持ち始めて、そして実際に行動するようになったんじゃないだろうかと思う。原発の問題もそうだけれど、年金の問題でも、掛け金(保険料)を払ったって年金をもらえるのかという先行き不安が現実に出ている。いずれも結局は政治の場で解決する以外ないわけだから、だんだん政治に対する見方が変わってきているんじゃないかという気がします。
 民主主義社会では、上からの革命というわけにはいかない。国民が支持し、国民が支援してくれなきゃ改革はできない。今はほとんどの人がインターネットで情報を共有できるので、普通の人、特に若い人が行動するようになってきたことに僕は希望を見出します。
渡辺:今の答えの中にあったが、年金と消費税がセットで国民生活を闇の中に押し込めようとしている。「国民の生活が第一。」という政権交代の理念と基本政策を、民主党は冷凍保存しようとしているのではないか。
小沢:僕が代表のときに掲げた言葉だから嫌なんでしょう。(笑)
渡辺:政府・与党の中枢部は事あるごとに「国民にも痛みを分かち合ってもらう」という言い方をするが、安易に復興税だ、消費税だとのめり込み、返す刀で年金支給年齢引き上げを画策したりと、国民負担増だけに政治の軸足を置いている。
小沢:これは民主党だけでなく、自民党も同じなんですが、自分たちが唱えてきたこと、選挙に国民に訴えたことは何だったのかということをまったく忘れている。
 先日も政府に入っている議員10人ぐらいと会合があったから話してきたんです。「今の時点では、それぞれの役目をこなす以外にないけれども、我々は古い仕組みを変えるんだと主張して政権を与えられたんだから、そのことを頭において仕事をしないといけない。役人の言うことばかりを聞いていたら、国民から自民党以下だと言われる。それだけは忘れないでくれ」とね。
渡辺:「痛みを分かつ」というのは、変節政治家と官僚が自分の無能を隠蔽する常套句だ。あなたは消費税の増税について非常に厳しく批判し反対している。
小沢:我々は総選挙で、特別会計を含めた国の総予算207兆円を全面組み替えて、国民主導の政治と地域主権の社会を実現すると国民に約束して、政権交代を認めてもらった。その理念、主張をまったく忘れちゃって、今までと同じやり方で予算編成を行っている。各省庁の要求を集めたものが総予算ですが、それが前年度の大枠よりちょっと出ていれば一律のカットするというだけのことで何も変わっていないわけです。
 我々はそれを変えて、政治主導で国家予算の総組み換えを断行して行政の無駄を省き、中央集権の官僚支配を打破することによって、必要な財源も生み出していくと主張した。それで民主党は政権をいただいたんですよ。なのに何もせずに役人のペースにどっぷり浸って「お金はありません。だから増税です」という話しか聞こえないわけだね。これじゃ、国民の理解は得られない。
渡辺:政府・与党は消費税を5%上げて社会保障、年金財源にするという名分を掲げているが、本当にそうなのか。5%上げると、税収は約13兆円増える。ところが、今年7月に閣議了解された「社会保障と税の一体改革」の成案によると、13兆円の税収のうち、社会保障の充実に回るのは消費税1%分の2・7兆円。うち年金分は6000億円に過ぎない。つまり、消費税は倍に上げても大半は何に使うかわからない。痛みを分かつと言いながら、これではまた官僚に好き勝手に利権食いされるような心配が先に立つ。それが消費税増税の最大の問題点だと思う。
小沢:消費税増税を言う前に私は「当面の金はまだある」と言ってます。増税せんでも財源はある」と言っているんだけれど、誰もそれを言おうとしない。
  僕はずっと所得税減税を主張していて、そのためには間接税の消費税の引き上げはいずれ検討しなくちゃいけないかもしれない。それは否定していないけれども、なんの政治理念もなく、何の努力もせずに「痛みを分かち合ってください」というのは詐欺的行為だと思います。税制論議以前の問題だね。
渡辺:消費税アップの「社会保障・税一体改革成案」は7月に閣議了解したといわれているが、実際は与党の国民新党が反対したために閣議決定できず、閣議了解さえもできていない。「閣議報告」という形で当時の菅内閣は発表した。だが、政策だけは既成事実となり野田首相はいつの間にか「もう決定した」みたいなことを言う。行政の正しい手続きすらない。
小沢:野田さんが本当に国民のために、お国のためにそれが必要なんだ、それはこういう理由からだとちゃんと説明して、自分の政治生命を懸けるという決意がはっきりすれば、まだ国民はそうなかなという気持ちになるかもしれない。けれども、上げた消費税を何に使うのかもわからない。ただ闇雲に消費税、消費税と言っているようにしか見えないから、絶対に国民に理解されないと思います。
渡辺:あなたは優しいからそう言う。(笑)でも、野田首相が今の状態でいくら説明し、決意を述べたとしても納得できない。
小沢:いや、僕も賛成しないですよ。
■増税推進なら「他の手段」を考える
渡辺:先ほどの一体改革成案には、現在65歳の年金支給開始年齢の68〜70歳への引き上げが盛り込まれている。増税が年金充実のためというなら、給付が手厚くならなきゃ辻褄が合わないのに、70歳支給になったら、国民の老後は真っ暗になる。現在、厚生年金の平均受給額は月に約16万円だから、支給開始が5年引き上げられると1人当たり1000万円の減額になる。
 それだけでも空前の年金カット計画だが、なぜそれが必要なのか。厚生省年金局の「年金検証結果レポート」によると、年金財源に厚生年金で500兆円、国民年金で50兆円、合わせて550兆円の債務がある。1人1000万円ずつ年金を減らすと、厚生年金加入者は約3444万人だから344兆円が浮く。さらに、これから厚生年金に加入する19歳以下世代の削減額を含めると、550兆円の債務を帳消しにできる。いかにも役人らしい悪巧みが潜んでいることを『週刊ポスト』は指摘している。
 これが「国民の生活が第一」を掲げて政権交代した民主党内閣がやろうとしている消費税増税と年金改悪の二重詐欺です。あなたの消費税増税批判はちょっと中途半端じゃないか。
小沢:我々は年金制度を根本から変えて一元化すると主張している。月額7万円前後の最低保障年金は消費税を全て充てて安定させ、その上に報酬比例年金を設けて、2階建ての新しい年金制度を作ると提案した。
 ところが、それについても政府は作業をしていない。国民との約束をまったく顧みないで、支給開始年齢だけでなく、掛け金まで上げるというのだから、僕は本当に詐欺、裏切り行為だと思う。消費税も年金も所得税も国民負担を増やすという話には僕は到底賛成できない。
渡辺:大新聞も支給開始年齢の引き上げを叫んでいる。いわば内閣と官僚と大新聞の共同正犯行為による詐欺みたいな形になっている。
小沢:ただ、国民はかなり情報を正確に知るようになってきている。国民が情報を得る手段はもうテレビや新聞だけじゃない。いずれ国民に鉄槌を下されると僕は思います。
渡辺:公約に対して忠誠を誓うという意味において、先の大阪のダブル選挙、あるいはその前に愛知のトリプル選挙で当選した市長・知事たちの、有権者に対する死に物狂いの公約実現の努力をどう見るか。民主党も国の仕組みを変えると言ったけれども、今に至る政権の姿は橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長と真反対です。
小沢:彼らが頑なに自分の主張、市民との約束を徹底して実行しようとしているということは、まず間違いないと思います。
 それに反して民主党政権、そして今の自民党も、市民感覚からはもう駄目だと思われている。だから、荒っぽいかもしれないけれど約束は守る、国民のためには旧体制を壊さないと駄目だ、という橋下さんや河村さんに期待する結果になったのは無理もないと思う。
渡辺:その意味では、あなたはもう一度総選挙でその動きを作り直すしかない。
小沢:橋下さんは府庁舎や市役所そのものをぶっ壊さないと本当の改革はできないと主張している。僕も旧体制、アンシャン・レジームをぶっ壊さないと新しい世の中はできないとずっと言い続けてきた。それゆえに「壊し屋」とみんなから非難されているけれど、橋下さんはまだそういわれていないようだから、それだけでも彼はたいしたもんじゃないの。(笑)
 予算編成のことを例にして言いましたけれども、自民党政権のときとずっと同じことをやってきておいて、金がない、何がないのと言ったって始まらないんです。
渡辺:民主党がアンシャン・レジームになってしまった。
小沢:(苦笑しながら)そうなんだよね・・・。
渡辺:その民主党をどうやってもう一度ぶち壊すのか。
小沢:僕は現時点においては、野田さんが初心に帰り、政権交代の原点に思いをはせて、そして是非「国民生活が第一。」の政策に戻って欲しいと、ひたすらに望んでいます。そうしなきゃ民主党政権に明日はない。必ず国民から見放される。
渡辺:すでに今日もない。
小沢:ん?今日もないけれども。(苦笑)
渡辺:次の総選挙で「今度こそやります」と訴えたからって国民は民主党を・・・。
小沢:それは信用しない。
渡辺:政策を担保する何か、あるいは覚悟が本気だと思ってもらうための新たな努力が必要ではないか。
小沢:さっき言ったように、僕は野田さんがまず「国民の生活が第一。」の理念に基づいて、しっかりしたビジョンを語るべきだと思う。それがまったくないまま、ただ増税だけを推進しているとなると、民主党政権は滅びる。かといって自民党政権に戻ることもない。日本はぐちゃぐちゃのカオスの状況に入ってしまう。
渡辺:国外に目を転じると北朝鮮では金正日が死亡し、東アジア情勢が流動的になってきた。
小沢:突然のことで大変驚きました。核開発の問題もありますので、日中韓をはじめ関係各国が緊密に連携して、不測の事態に対処しうる体制を早急に構築することが肝心だと思います。
渡辺:選挙までの残り任期は少ない。今の政権が原点に戻らない場合、あなた自身はどういう覚悟を決めるのか。
小沢:その時は他の手を考えなきゃならない。
渡辺:その手段とは。
小沢:今、具体的にどうこう言うわけにはいかないけれども、今の政権がどうしても(原点回帰は)だめだといったら、僕も国民を裏切ることになってしまう。それは困るし、それによる日本の大混乱も防がなきゃならない。何らかの方法を考えなければならない。
渡辺:そのカオスを突き抜けるところで、あなたにとって2012年は相当過酷な年になる。
小沢:最後のご奉公です。文字通り「最後」です。
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小沢氏 被災地初訪問へ 1月3日に岩手県入り/民主・斎藤恭氏が離党表明=数人も検討 消費増税に反発

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小沢氏が被災地初訪問へ 1月3日に本県入り
 民主党県連は26日、小沢一郎元同党代表(県連代表)が来年1月3日、県連の会合に出席のため本県の沿岸被災地を初めて訪問すると発表した。達増知事や地元首長との意見交換のほか、仮設住宅の訪問なども予定している。
 東日本大震災後、小沢氏は3月28日に本県入りし県庁で達増知事と会談したが、沿岸部は訪れていなかった。
 小沢氏は3日朝から久慈を皮切りに、宮古、釜石、大船渡、陸前高田各市で開かれる県連の緊急役員会に出席。達増知事や地元首長も来賓として招き、県選出国会議員らと共に復旧・復興の要望を受け、意見を交換する。
(岩手日報2011/12/27)
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民主、複数議員が離党検討 消費増税に反発
 民主党の複数の若手議員が、野田佳彦首相の消費税増税方針に反発し離党を検討していることが26日、分かった。6月に菅内閣不信任決議案に賛成して民主党を除籍され、現在無所属で活動している松木謙公衆院議員らとの連携も視野に入れている。
 民主党では中島政希衆院議員が24日、八ツ場ダムの建設再開決定を批判して離党届を提出。離党者が続けば首相の求心力はさらに低下し、政権運営に影響を与えるのは必至。
 若手議員らは26日、小沢一郎元代表らと都内で会談。関係者によると、小沢氏が党にとどまるよう求めたが、議員の一人は「増税阻止のためにどうするかを考えて行動する」と述べた。
2011/12/27 02:02  【47ニュース】
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民主・斎藤恭氏が離党表明=数人も検討、消費増税に反発
 民主党の鳩山由紀夫元首相のグループに所属する斎藤恭紀衆院議員(宮城2区選出、当選1回)は27日、野田政権の消費増税方針に反発し、離党する意向を表明した。菅内閣に対する不信任決議案に賛成し、同党を除籍(除名)された松木謙公元農林水産政務官らと新党を結成する方向で調整しているという。党関係者によると、このほか小沢一郎元代表グループの中後淳氏(比例南関東)ら数人の若手衆院議員も離党を検討している。
 これに関し、輿石東幹事長は27日午前の記者会見で「どういう気持ちで離党するか確認したり、(慰留の)働き掛けは必要だと思っている」と述べ、離党届が提出された場合は翻意を促す考えを示した。
 民主党では、政府が八ツ場ダム(群馬県長野原町)の事業継続を決定したのを受け、衆院当選1回の中島政希氏が離党届を提出した。相次ぐ若手の離党の動きは政権にとって打撃で、消費増税を含む社会保障と税の一体改革の素案取りまとめにも影響を与えそうだ。
 斎藤氏は、衆院議員会館で記者団に「(国民との)約束を果たすため離党する」と明言。松木氏との連携については「新党ありきではないが、同じ思いなので固まりで動いた方がいい」と述べた。また、小沢氏から「犬死にしてはいけない」と慎重な行動を促されたことも明らかにした。 
 一方、中後氏は記者団に「まだ言える状況でない。離党するというのは離党届を持って行く時だ」と語った。(時事通信2011/12/27-13:03)
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人間・小沢一郎 最後の大構想/「福島県民は霞ヶ関取り巻くデモ起こしてもいいのに」/「最後のご奉公です」2011-12-26 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 人間・小沢一郎「最後の大構想」
  週刊ポスト2012年1月1・6日号
 小沢一郎。この稀有で頑固な政治家の「人間」を解剖することは日本の政治の形、国家の形がどう変わらなければならないかを探るケーススタディといえるかもしれない。天の怒りに地の喜びが打ち砕かれた2011年3月11日。政治は荒れた大地に陽炎の如く輪郭を浮かべ、無為に時を重ねた。多くの国民は「動かない小沢」に焦れた。小沢封じの政治の病巣は現実と醜悪な乖離を見せつけた。何をしていたのかという挑みの問いに、小沢が「人の顔」で激しく語った。(聞き手・渡辺乾介氏 政治ジャーナリスト)
■震災対応で二つの「政治問題」
 2011年の掉尾を奮う時、東日本大震災を抜きにしては語れない。人々は地震と津波の襲来、息つく間もなく放射能禍に見舞われ、日常のすべての営みを断たれ、最愛の家族と生活の絆、仕事を失い、形骸だけを残した街を目の当たりにした。
  被災者は誰も人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟しつつ、絶望の悲嘆にくれる暇さえなく、生きる使命と希望に奮い立った。その姿は世界に大きな感銘を与えた。
 そして、政治と行政の力を求めたが、空前絶後に事態に機能不全に陥り、無力であることを知って、人々は自力で我が町、我が村を興そうと動き出したのだった。やがて恐る恐る政治がやってきた。遅きに失するばかりの復興対策である。被災者は惨状に只中にありながら、政治や行政にかまわず自助自立、相互扶助で苦難に立ち向かってきた。
 人災としての放射能禍は、政治が最大の障害というべき連関に人々を押し込め苦しめた。人民あっての政治が、政治ゆえに人々に立ちはだかる。
 一体、政治とは何なのか。未曾有の困難と混乱の大震災であればこそ「国民の生活が第一」という民主党政権の拠って立つ基本理念の実践、その真価が問われたのではなかったか。
  同時にそれは、政権交代の立役者であった小沢の存在理由であり、国民との約束の政治的価値そのものなのである。
だから、問う。
 震災直下で人々が、人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟していたように、政治家でありながらも、一人の人間として、小沢もまた被災地に立って何を思い考え、いかなる人たる呻吟をしていたか、である。
小沢:被災地の皆さんは非常に厳しい、そして辛い生活をずっと耐えて、長い間頑張ってこられた。亡くなった方々へのお悔やみとご家族へのお見舞いを申し上げると同時に、くじけずに頑張っておられる郷里の皆さん、被災地の皆さんに、心から敬意を表したいと思います。
 千年に一度の巨大地震、大津波というのでは、人知の及ばない面もある。そこは自然災害に対する今後の方策を考えていく以外にないんだけれども、政治的には二つの大問題があります。
 一つは原発。日本の再建だ、東北の再建だと言っていますけれども、放射能封じ込めに成功しないと日本経済の再建も日本の将来もない。福島第一原発の事故はマスコミでは喉元過ぎればで、なんだか風化したみたいになってますけれども、日本人的な現象で非常に危険だと思います。
 この放射能については、なんとしても完全に封じ込めないといけない。そのためには、どれだけお金を使ってもやむを得ないし、封じ込めの先頭に立つのは国だ。ということを僕は言い続けてきたんです。事故の現状は、東電が第一義的に責任者だからといって、東電にやらせていいという状況を超えている。国が自ら先頭に立って、主体的にやらなくちゃいけない。
 原発による被災者の皆さんの生活の問題と同時に、放射能をいかにして封じ込めるか。水をかけて「冷温停止状態を達成した」なんていたって、永久に水をかけ続けるのか?今になって、核燃料が圧力容器からメルトスルーして、もうすぐ格納容器の底のコンクリートを抜けるかもしれないなんて、呑気なことを言っているわけですね。
 震災の2、3日後には、熱工学の学者をはじめ客観的に事実を見ている人たちは、必ず炉心は壊れていると言っていた。燃料も必ずメルトダウンしているとわかっていたわけですよ。それにもかかわらず、政府は2ヵ月後にようやくメルトダウンを発表して、そして最近になって落ちたウラン燃料がコンクリートを侵食して、底を突き破るまであと30何センチだなんて言ってるわけです。あれ、突き抜けて土の中に入っちゃったら、汚染の拡大を止められなくなりますからね。
 それをまず徹底的に封じ込めないといけない。それは国家、政府が先頭に立ってやるべきことです。
 もう一つは統治の機構。この機会に「地域主権」を確立すべきですよ。
復興のための補正予算などで金銭的な手当ては一応してあるんだけれども、その使い方は相変わらず旧来と同じ公共事業でしょう。今まで同じパターンで補助金を出すやり方だから、仕事は遅いし無駄が多い。
  政府は地方の再建、東北の再生なんて言っていますが、これを機会に我々が主張してきたように中央省庁が仕切る補助金の制度を、地方自治体が自由に使える一括交付金の制度へと変える。これだけの大被害なんだから暫定的にでもやるという理屈も成り立つ。好きなように使ってよいというお金をもらえれば、もっと早く、もっとたくさん仕事ができると言うんですよ。(被災地の)知事も市町村長もそう言う。
 相変わらず予算を貰うには、いちいち中央の役所から査定に来る。学校つくるにも、仮設住宅つくるにも、海岸つくるにもすべて中央が査定して、霞ヶ関へ持って行って、そこでまた検討して、やと補助金が出る。しかも、旧来の役所のメニューにある事業、やり方しか対象にならない。
 私は、今こそ民主党が政権交代で訴えてきた補助金制度の改革を断行して、一気に「地域主権」を確立すべきだと思う。中央集権の霞ヶ関一極集中の統治機構を変える絶好の機会だと思っているんだけれども、そういう発想はまったく出てこない。非常にジレンマと苛立ちを感じています。
渡辺:あなた自身、大震災が発生して現地に入るまでどういう気持ちだったのか。
小沢:かつてないほど多くの方が亡くなった。僕は昔から浜も何もかも歩いて知っているから、どこがどうなったかはわかる。しかし、生きている者は町づくり、村づくりをしなくちゃいかんから、そっちの方に目が向いた。僕はどのようにして復興財源を賄うかとか、どういうふうに直せばいいのかとかいうことを考えなければならない。だから、達増拓也岩手県知事とはずっと連絡を取り合って協力しながらやってきた。
 実はあれだけの大津波にもやられなかった浜があるんですよ。岩手で2ヶ所かな。明治時代に津波にやられた教訓で、昔の村長さんが主導して高台に全部移転していたんだ。それが今回幸いした。だから同じ金を掛けるにしても、そういうことまで考えて、根本的な浜の町づくりをしないといけない。
■「もう帰れない」と伝える責任
渡辺:被災者の人たちが、苦悩、苦難、困難を抱えながらも自分たちの手で何かやらねばならないという、この大衆のエネルギーを政治が汲み取ろうとしないところが悲しく虚しい。
小沢:今回、一般の人たちがお互いに連帯していろいろな救助活動や復興活動に立ち上がった。これは日本人のとてもいいところで、みんなが感動した点だと思う。
  一方、地方はいちいち中央の霞ヶ関の許可をもらったりするのが面倒臭くてしょうがないと思っているけれども、それが政治的な運動にならない。そこが日本社会が他の国から遅れているところですね。大きな変革を起こせない理由でもある。本来ならば、特に福島県の人たちなんか、全県民が上京して、霞ヶ関を取り巻くぐらいの筵旗(むしろばた)デモを起こしてもよさそうなのに日本はそうはならないんだね。
渡辺:外国なら暴動が起きても不思議はない。
小沢:政治に何をして欲しいんだというものは必ずあるはずです。それが政治の変革を求める運動に繋がっていかないのが、日本社会の最大の問題だね。
渡辺:元ソ連邦大統領のゴルバチョフ氏は回顧録で、チェルノブイリ原発の事故について「わが国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことを見せつける恐ろしい証明であった」と書いている。福島原発も同じ問題を内包していると思う。
小沢:溶けた核燃料を取り去るなんて工程表に書いてある。でも、どうやって取り出すの?それをどこへ持っていくの?何も方策がないのに、そんなことを文書にだけ書いてどうするんだ。そういう意味のないスケジュール表みたいなのを作ったって、何の役にも立たないと僕は思う。
 それをこのままに放置しておくとなると、今を生きている我々が末代まで責めを負わなければならない。
渡辺:戦争以外であれだけの領土を事実上、失うことは大変な事態です。
小沢:(大きく頷いて)まさにそうです。
渡辺:それだけ重大であるという意味が、政・官・財、大メディアにも共有されていない。
小沢:原発から20キロだか30キロのあたりで、これ以上放射能が拡散しないという保証があるならいいけれども、もっと拡散するかもしれない。まだ政府はなんとなく避難した人たちがいずれ故郷に帰れるみたいな話ばかりしているでしょう。だから避難した人たちは、もしかしたら帰れるかもしれないと思って新しい生活設計ができない。中途半端で宙ぶらりんの状態になっている。これは政治の一番の罪だと思う。
 事実上、放射能の強い地域には帰れない。だから、被災者にはきちんとそう言って、新しい生活に対して支援をしていくべきです。みなさん、それぞれ生活設計をしてください、帰るのは当分考えられる限り無理です、ということをじはっきり言わないと避難している人たちに対する裏切りというか、背信、嘘つきになっちゃう。
■増税せずとも当面の金はある
渡辺:被災者も国民も、政治は国民のために動いていないと怒っている。たとえば、原発事故では被曝予測システム「SPEEDI」の情報を隠し、復興を口実にして国民に負担増を強いる。この震災の結果責任の悲劇的なところだ。
小沢:自分が担当している間は無難に過ごせばいいという事なかれ主義、悪い意味の官僚的発想なんですね。誰も泥をかぶらないで、かわい子ちゃんでいたい。官僚だけでなく政治家もそうなっちゃったということですね。
渡辺:あなたが唱えてきた「自立と共生」の視点から、これだけ病み、傷んだ国土、国民、国家の震災後の在り方を語るときに、どういう再生の方向性があるのか。それは国民があなたに注目する大きな一つの視点だ。
小沢:日本には、市民の力によって政治体制を変えた歴史がほとんどないですから、自ら政治を動かそうという発想がなかなか国民の間に生まれてこない。
  ただ、インターネットの広がりとともに、政治に無関心であったといわれる若い人たちがかなり関心を持ち始めて、そして実際に行動するようになったんじゃないだろうかと思う。原発の問題もそうだけれど、年金の問題でも、掛け金(保険料)を払ったって年金をもらえるのかという先行き不安が現実に出ている。いずれも結局は政治の場で解決する以外ないわけだから、だんだん政治に対する見方が変わってきているんじゃないかという気がします。
 民主主義社会では、上からの革命というわけにはいかない。国民が支持し、国民が支援してくれなきゃ改革はできない。今はほとんどの人がインターネットで情報を共有できるので、普通の人、特に若い人が行動するようになってきたことに僕は希望を見出します。
渡辺:今の答えの中にあったが、年金と消費税がセットで国民生活を闇の中に押し込めようとしている。「国民の生活が第一。」という政権交代の理念と基本政策を、民主党は冷凍保存しようとしているのではないか。
小沢:僕が代表のときに掲げた言葉だから嫌なんでしょう。(笑)
渡辺:政府・与党の中枢部は事あるごとに「国民にも痛みを分かち合ってもらう」という言い方をするが、安易に復興税だ、消費税だとのめり込み、返す刀で年金支給年齢引き上げを画策したりと、国民負担増だけに政治の軸足を置いている。
小沢:これは民主党だけでなく、自民党も同じなんですが、自分たちが唱えてきたこと、選挙に国民に訴えたことは何だったのかということをまったく忘れている。
 先日も政府に入っている議員10人ぐらいと会合があったから話してきたんです。「今の時点では、それぞれの役目をこなす以外にないけれども、我々は古い仕組みを変えるんだと主張して政権を与えられたんだから、そのことを頭において仕事をしないといけない。役人の言うことばかりを聞いていたら、国民から自民党以下だと言われる。それだけは忘れないでくれ」とね。
渡辺:「痛みを分かつ」というのは、変節政治家と官僚が自分の無能を隠蔽する常套句だ。あなたは消費税の増税について非常に厳しく批判し反対している。
小沢:我々は総選挙で、特別会計を含めた国の総予算207兆円を全面組み替えて、国民主導の政治と地域主権の社会を実現すると国民に約束して、政権交代を認めてもらった。その理念、主張をまったく忘れちゃって、今までと同じやり方で予算編成を行っている。各省庁の要求を集めたものが総予算ですが、それが前年度の大枠よりちょっと出ていれば一律のカットするというだけのことで何も変わっていないわけです。
 我々はそれを変えて、政治主導で国家予算の総組み換えを断行して行政の無駄を省き、中央集権の官僚支配を打破することによって、必要な財源も生み出していくと主張した。それで民主党は政権をいただいたんですよ。なのに何もせずに役人のペースにどっぷり浸って「お金はありません。だから増税です」という話しか聞こえないわけだね。これじゃ、国民の理解は得られない。
渡辺:政府・与党は消費税を5%上げて社会保障、年金財源にするという名分を掲げているが、本当にそうなのか。5%上げると、税収は約13兆円増える。ところが、今年7月に閣議了解された「社会保障と税の一体改革」の成案によると、13兆円の税収のうち、社会保障の充実に回るのは消費税1%分の2・7兆円。うち年金分は6000億円に過ぎない。つまり、消費税は倍に上げても大半は何に使うかわからない。痛みを分かつと言いながら、これではまた官僚に好き勝手に利権食いされるような心配が先に立つ。それが消費税増税の最大の問題点だと思う。
小沢:消費税増税を言う前に私は「当面の金はまだある」と言ってます。増税せんでも財源はある」と言っているんだけれど、誰もそれを言おうとしない。
  僕はずっと所得税減税を主張していて、そのためには間接税の消費税の引き上げはいずれ検討しなくちゃいけないかもしれない。それは否定していないけれども、なんの政治理念もなく、何の努力もせずに「痛みを分かち合ってください」というのは詐欺的行為だと思います。税制論議以前の問題だね。
渡辺:消費税アップの「社会保障・税一体改革成案」は7月に閣議了解したといわれているが、実際は与党の国民新党が反対したために閣議決定できず、閣議了解さえもできていない。「閣議報告」という形で当時の菅内閣は発表した。だが、政策だけは既成事実となり野田首相はいつの間にか「もう決定した」みたいなことを言う。行政の正しい手続きすらない。
小沢:野田さんが本当に国民のために、お国のためにそれが必要なんだ、それはこういう理由からだとちゃんと説明して、自分の政治生命を懸けるという決意がはっきりすれば、まだ国民はそうなかなという気持ちになるかもしれない。けれども、上げた消費税を何に使うのかもわからない。ただ闇雲に消費税、消費税と言っているようにしか見えないから、絶対に国民に理解されないと思います。
渡辺:あなたは優しいからそう言う。(笑)でも、野田首相が今の状態でいくら説明し、決意を述べたとしても納得できない。
小沢:いや、僕も賛成しないですよ。
■増税推進なら「他の手段」を考える
渡辺:先ほどの一体改革成案には、現在65歳の年金支給開始年齢の68〜70歳への引き上げが盛り込まれている。増税が年金充実のためというなら、給付が手厚くならなきゃ辻褄が合わないのに、70歳支給になったら、国民の老後は真っ暗になる。現在、厚生年金の平均受給額は月に約16万円だから、支給開始が5年引き上げられると1人当たり1000万円の減額になる。
 それだけでも空前の年金カット計画だが、なぜそれが必要なのか。厚生省年金局の「年金検証結果レポート」によると、年金財源に厚生年金で500兆円、国民年金で50兆円、合わせて550兆円の債務がある。1人1000万円ずつ年金を減らすと、厚生年金加入者は約3444万人だから344兆円が浮く。さらに、これから厚生年金に加入する19歳以下世代の削減額を含めると、550兆円の債務を帳消しにできる。いかにも役人らしい悪巧みが潜んでいることを『週刊ポスト』は指摘している。
 これが「国民の生活が第一」を掲げて政権交代した民主党内閣がやろうとしている消費税増税と年金改悪の二重詐欺です。あなたの消費税増税批判はちょっと中途半端じゃないか。
小沢:我々は年金制度を根本から変えて一元化すると主張している。月額7万円前後の最低保障年金は消費税を全て充てて安定させ、その上に報酬比例年金を設けて、2階建ての新しい年金制度を作ると提案した。
 ところが、それについても政府は作業をしていない。国民との約束をまったく顧みないで、支給開始年齢だけでなく、掛け金まで上げるというのだから、僕は本当に詐欺、裏切り行為だと思う。消費税も年金も所得税も国民負担を増やすという話には僕は到底賛成できない。
渡辺:大新聞も支給開始年齢の引き上げを叫んでいる。いわば内閣と官僚と大新聞の共同正犯行為による詐欺みたいな形になっている。
小沢:ただ、国民はかなり情報を正確に知るようになってきている。国民が情報を得る手段はもうテレビや新聞だけじゃない。いずれ国民に鉄槌を下されると僕は思います。
渡辺:公約に対して忠誠を誓うという意味において、先の大阪のダブル選挙、あるいはその前に愛知のトリプル選挙で当選した市長・知事たちの、有権者に対する死に物狂いの公約実現の努力をどう見るか。民主党も国の仕組みを変えると言ったけれども、今に至る政権の姿は橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長と真反対です。
小沢:彼らが頑なに自分の主張、市民との約束を徹底して実行しようとしているということは、まず間違いないと思います。
 それに反して民主党政権、そして今の自民党も、市民感覚からはもう駄目だと思われている。だから、荒っぽいかもしれないけれど約束は守る、国民のためには旧体制を壊さないと駄目だ、という橋下さんや河村さんに期待する結果になったのは無理もないと思う。
渡辺:その意味では、あなたはもう一度総選挙でその動きを作り直すしかない。
小沢:橋下さんは府庁舎や市役所そのものをぶっ壊さないと本当の改革はできないと主張している。僕も旧体制、アンシャン・レジームをぶっ壊さないと新しい世の中はできないとずっと言い続けてきた。それゆえに「壊し屋」とみんなから非難されているけれど、橋下さんはまだそういわれていないようだから、それだけでも彼はたいしたもんじゃないの。(笑)
 予算編成のことを例にして言いましたけれども、自民党政権のときとずっと同じことをやってきておいて、金がない、何がないのと言ったって始まらないんです。
渡辺:民主党がアンシャン・レジームになってしまった。
小沢:(苦笑しながら)そうなんだよね・・・。
渡辺:その民主党をどうやってもう一度ぶち壊すのか。
小沢:僕は現時点においては、野田さんが初心に帰り、政権交代の原点に思いをはせて、そして是非「国民生活が第一。」の政策に戻って欲しいと、ひたすらに望んでいます。そうしなきゃ民主党政権に明日はない。必ず国民から見放される。
渡辺:すでに今日もない。
小沢:ん?今日もないけれども。(苦笑)
渡辺:次の総選挙で「今度こそやります」と訴えたからって国民は民主党を・・・。
小沢:それは信用しない。
渡辺:政策を担保する何か、あるいは覚悟が本気だと思ってもらうための新たな努力が必要ではないか。
小沢:さっき言ったように、僕は野田さんがまず「国民の生活が第一。」の理念に基づいて、しっかりしたビジョンを語るべきだと思う。それがまったくないまま、ただ増税だけを推進しているとなると、民主党政権は滅びる。かといって自民党政権に戻ることもない。日本はぐちゃぐちゃのカオスの状況に入ってしまう。
渡辺:国外に目を転じると北朝鮮では金正日が死亡し、東アジア情勢が流動的になってきた。
小沢:突然のことで大変驚きました。核開発の問題もありますので、日中韓をはじめ関係各国が緊密に連携して、不測の事態に対処しうる体制を早急に構築することが肝心だと思います。
渡辺:選挙までの残り任期は少ない。今の政権が原点に戻らない場合、あなた自身はどういう覚悟を決めるのか。
小沢:その時は他の手を考えなきゃならない。
渡辺:その手段とは。
小沢:今、具体的にどうこう言うわけにはいかないけれども、今の政権がどうしても(原点回帰は)だめだといったら、僕も国民を裏切ることになってしまう。それは困るし、それによる日本の大混乱も防がなきゃならない。何らかの方法を考えなければならない。
渡辺:そのカオスを突き抜けるところで、あなたにとって2012年は相当過酷な年になる。
小沢:最後のご奉公です。文字通り「最後」です。
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ようやく始動の小沢一郎/小沢憎しで凝り固まっている法務・検察官僚は強引に有罪に持ち込むかもしれない2011-12-23 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

なぜ「麻原に事件の真相を語らせるべき」という指摘がされないのか/早く死刑にせよ、との声が圧倒的だから

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あの事件から16年、真相は解明されず不安だけが残った
森達也 リアル共同幻想論

Diamond online 2011年12月26日
■2011年11月21日、オウム真理教を巡る全公判が終了した
 この連載の担当編集である笠井一暁から昨日届いたメールの一部を、まずは以下に引用する。本人の承諾はとっていない。一応は作家の肩書を持つものに編集者として送ったメールなのだから、いつどのように利用されようが文句を言えるはずがないと、勝手に解釈している。
 オウム真理教による事件の全公判が終了しました。メディアもこれを大きく扱い、自分もできるかぎり新聞の社説や記事を読みましたが、そのほとんどに共通しているのが「事件の真相はまだ解明されていない」という指摘でした。同時に多くの記事やニュースが「事件を風化させてはいけない」「事件について考え続けなければいけない」などと結んでいるのですが、ならば具体的にどうすべきなのか、あるいはもっと踏み込んで「司法の場でもう一度真相を解明すべき」との主張は、どうしても見つけることができませんでした。
 「事件について忘れてはいけない」、「考え続けなければいけない」という指摘に、私はもちろん賛成です。しかし、「真相は解明しきれてない」と指摘しながら、裁判が終結することに異議をまったく唱えないことに、強い違和感を覚えました。司法の場で真相を解明する道が閉ざされようとしているのに、私たちは真相のわからない事件について、何をどう考え続けなければいけないというのでしょうか? 
 また、「麻原が他者と意思疎通できない状態が続いている」と報じる記事やニュースはかなり目にしましたが、そのほとんどに、麻原が「口を閉ざしている」という表現が使われており、森さんの著書である『A3』を読んだ私としては、麻原が自らの意志で口を閉ざしているのか、それとも弁護側が主張するように精神障害によって意思疎通ができなくなっているのか、その点にわざと言及するのを避けているのではないかと思ってしまいます。なぜ、麻原に事件の真相を語らせるべきという指摘がされないのでしょうか?
 「事件を風化させるな」「事件について考え続けろ」と言いつつも多くの報道の焦点は、すでに「真相の解明」ではなく「死刑執行できるかどうか」にあり、裁判の終結と死刑執行が前提となっているようです。幕引きが前提で形だけ申し訳程度に「事件を風化させるな」と言っているのではないかと考えてしまいます。森さんはどのように感じられましたか?
■僕だって正解を知っているかどうかわからない
 笠井のこの文章を今回の原稿の冒頭に引用しようと決めた理由は、決して字数稼ぎなどではなく、この文章だけで問題の本質を、充分に言いつくしているからだ。
 笠井のこの問いかけは僕に対してだけではなく、今この文章を読んでいるあなた(つまりこの社会)への問いかけでもあるはずだ。ならば僕の解答など、本来なら不要だ。忙しい人はここからもう一度冒頭に戻って、笠井の文章を再読してほしい。そして(押しつけがましいけれど)考えてほしい。僕だって正解を知っているかどうかわからない。ここからはある意味で蛇足です。
 引用ついでにもうひとつ。僕自身のブログから、11月23日に更新したコラムの文章を以下に貼る。くどいけれど、忙しい人は読まなくてもいいから。
 突然のこの大ニュースのような扱いが不思議だ。中川智正さんにしても遠藤誠一さんにしても、最高裁の上告棄却はほぼ予想できたし、日程だってずいぶん前に決まっていた。つまり予期せぬことなど何ひとつ起きていない。
 ならばどこにニュース性があるのだろう。
 もちろん僕はオウムについて、社会はもっと考えるべきという立場だ。依頼を受ければコメントするし、多くの人が振り返って考えるならば、この騒ぎを無意味とは思わない。でもここ数日のメディアの狂奔状態は、やっぱりとても不自然だ。しかもそのほとんどは、「麻原は口を閉ざし続けている」のレベルだ。 もしあなたが『A3』を読んでくれているのなら、このフレーズがいかに浅薄で無責任で悪質であるかについて、きっと実感してくれると思う。
 日本のメディアが「終結」とか「節目」とかの言葉が大好きなことは知っているけれど、だったら毎年3月20日の冷淡ぶりはどうだろう。
 メディアと社会はほぼ重複している。結局はお祭り。日程が過ぎればあっというまに冷める。次の祭りは誰かの執行のとき。中川智正さんの前に死刑判決が確定した信者の名前を、いったいどのくらいの人が知っているのだろう。
■事件から11年のその日、新聞の一面は「日本、敵国破り決勝へ」
 2006年3月20日、地下鉄サリン事件からちょうど11年が過ぎたこの日、読売新聞の朝刊一面は19日に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)準決勝の日本―韓国戦の結果を「日本、敵国破り決勝へ」の大見出しとともに伝え、試合終了の瞬間にハイタッチで喜ぶ日本人選手たちの写真も、カラーで大きく紹介されている。社会面にも「宿敵・韓国に雪辱」の見出しの下にサンディエゴのスタンドで頬に日の丸を描いて歓喜するファンたちが紹介されていて、「オウム」の文字は紙面のどこにもない。
 読売を例に挙げたけれど、他紙もほぼ同様だ。もちろんテレビは論外。時期的にはちょうどこの頃、麻原への精神鑑定を行うか否かが法廷では大きな争点になっていたけれど、そんな記事はまったくない。
 補足するが、周年的な記事やニュースの常態化は、むしろ風化を表している。その意味では、3月20日なのだから記事にせよとまでは思わない。だって16年が過ぎたのだ。風化しないほうがおかしい。普通は忘れる。事件当時に幼かった子どもたちも、オウムや麻原という言葉は知っている。そのほうが異常なのだ。
 忘れてはいけない理由は、オウムがこの社会に与えた後遺症はとても大きく、しかも過去形ではなく現在進行形で加速しているからだ。
 なぜなら地下鉄サリン事件は、不特定多数を標的にしている。1995年3月20日に東京の営団地下鉄に乗っていたら、誰もが被害者になる可能性があった。しかも規格外の報道量で、いかにオウムが危険な存在であるかが何度も刷り込まれた。だからこそこの社会は、恐怖や不安を激しく刺激され、強い被害者感情を一気に共有した。
 事件を解明するためには、なぜ事件が起きたのかを知らなければならない。つまり動機。ところが彼らがサリンを撒いた理由すら、この社会はいまだに解明しきれていない。つまり動機がわからない。ならば不安が持続することは当然だ。
 こうして不安と恐怖を抱え込んだ社会は、ひとりが怖くなり、集団化や結束を求め始める。つまり集団下校。これは群れて生きることを選択した人類の本能だ。でも9.11後のアメリカが示すように、集団はその内圧を高めれば高めるほど、外部の敵を探したくなる。内部の異物を見つけたくなる。攻撃して排除したくなる。さらに集団内部の同調圧力が強くなることで、全体と違う動きがしづらくなる。誰かが走れば自分も走りたくなる。
 こうして集団は、足並みをそろえて暴走する。人類の歴史は、そんな過ちの繰り返しだ。
■真相を解明できなかったその理由は何か
 真相は解明しきれていないと指摘するのなら、まずは彼らがサリンを撒いた理由を、この社会は獲得しなくてはならない。動機を解明しなくてはならない。でも解明できなかったその理由は、弟子たちにすべての犯罪を指示して行わせたとされている麻原の裁判が、何も解明されないままに一審だけで終わったからだ。
 なぜ一審だけで終わったかといえば、麻原の精神状態が普通ではなくなったからだ。ならば普通に戻してから裁判を続けましょう。二審弁護団のその主張は、結局のところまったく認められなかった。「口を閉ざした」のではない。最終的には「口を閉ざされた」のだ。直接的には裁判所の判断だけど、その背後には、麻原を早く吊るせとする圧倒的な民意がある。つまり司法とメディアが、解明よりも処刑を優先する民意に従属した。その帰結としてこの社会は、自ら集団化を促進し、今も激しく変わりつつある。でも群れとして加速し続けているから、多くの人は気づかない。
 刑事訴訟法479条は、「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する」とある。まさしく麻原はその状態にあると僕は推測する。ただし断言はできない。人の意識の中まではわからない。99.999999%まで自分のこの推測は正しいとは思うけれど、絶対に正しいとは思わない。
 だから裁判所にお願いする。再審を認めてほしい。鑑定と治療にも取り組んでほしい。症状が悪化してからさらに五年も放置されたから、どれほどに病状が進行しているかわからないが、できることはやってほしい。東京拘置所にもお願い。麻原への差し入れを勝手に処分するような違法行為はしないでほしい。家族や弁護人にも連絡せずに眼球摘出手術をするようなことは、今後は絶対にやめてほしい。されるがままとはいえ、彼だってまだ生きている。人権はある。
 法と正義の番人であるならば、法に従ってほしいし、民意の圧力に屈して不正義を看過しないでほしい。
■僕たちは、事件の真相を思うことを放棄してはならない
 最後に(蛇足の蛇足だけど)笠井の質問に答える。
Q. 私たちは真相のわからない事件について、何をどう考え続けなければいけないというのでしょうか?
A. 真相を思うことを放棄してはならない。そしてもし裁判所やメディアがこれを放棄しているのなら、放棄すべきではないと訴えなくてはならない。
Q. なぜ、麻原に事件の真相を語らせるべきという指摘がされないのでしょうか?
A. 本文で書いたように、早く死刑にせよとの声が圧倒的だから。つまりポピュリズム。これに尽きます。警察や政治家が事件の真相を語ってほしくないと思っているから麻原を薬漬けにしたとの推測を時おり見かけるけれど、ほとんど謀略史観と考えてよいと思う。ただし、これは『A3』に書いたことだけど、彼らが地下鉄にサリンを撒いたきっかけを、結果的に警察が作ってしまっていた可能性はある。
 書きながら気持ちが萎える。言葉にすれば無力感。これほどに正しいのに(僕がこんな言い方をすることは珍しいと思う)、これほどに意味があるのに、訴えは届かない。ほとんどの人は聞いてくれない。その程度の存在であることが悔しい。『A3』を刊行してからもうすぐ一年が過ぎるけれど、それから現在まで僕は、一冊も本を上梓できていない。ある意味で呆けてしまった。それほどに全力を込めた。なぜ麻原がサリンを撒けと命じたのかを解明する仮説を提示しているのに、ほとんどの人が知らないことばかりなのに、読んでもらえない。手にとってもらえない。書店に置いてもらえない。
 もちろんこれまで、売れない本はたくさん書いてきた。初版で終わってしまった本はいくらでもある。そのたびにいちいち落ち込んでなどいられない。分相応だと思っていた。
 でも『A3』は(僕にとって)別格だ。この社会にとっても別格のはずだ。冒頭数ページだけでも読んでほしい。きっと終わりまで一気に読みきってもらえると思うのだけど。
 ……最後は間違いなく蛇足の蛇足。ここまで書いたら引かれるかもしれない。でも本音です。さらに蛇足の蛇足の蛇足を承知で書けば、ほとんどの人が知らないのではなく、ほとんどの人は目をそむけているのだと思う。ならば『A3』が売れないことは当たり前。
 だから負け惜しみのように、最後に自分に言い聞かせます。愚痴を言うべきじゃない。もしもこれがベストセラーになるような世の中なら、逆にこの本は必要ないのだから。
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「死刑執行、教祖から」と江川紹子氏は云うが・・・/【63年法務省矯正局長通達】に見る行刑の苦難2011-12-04 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 死刑執行「教祖から」ジャーナリスト・江川紹子さん
産経ニュース2011.11.27 19:26(より、抜粋)
 「死刑執行の順番を間違えちゃいけない」
 江川紹子さん(53)。今後、手続きが取られていくことになるであろう死刑執行に、思いを至らせる。
 例外はあるが日本の死刑執行は、判決確定日が早い死刑囚から順に執行されるのが原則だ。
 裁判で死刑判決となった元幹部らは13人。罪を認めた元幹部ほど裁判の終結は早い。罪を認めようとしなかった者や、裁判に背を向けた者ほど、審理に時間がかかった。
 「反省して罪を認めた人から刑が執行されるようなことになれば、正義に反する。ましてや犯行を首謀した麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(56)より先に、弟子が執行されるようであってはならない」
 審理については、麻原死刑囚が何も語らなかったことなどから「真相に十分は迫れなかった」という不満を訴える関係者らの声が少なからずある。
 だが江川さんは、「私は一連の裁判を、もっと肯定的にとらえたい」と話す。
 「確かに時間も費用もかかった。でも、それは法治国家として必要なもので、裁判から得るべきものも多かったのではないか」
 裁判から得るべき教訓をこう考える。「膨大な時間をかけた被告人質問や証人尋問からは、教団やカルト、マインドコントロールといった恐ろしさは、とてもよく出ていたし、十分に伝わってきたと思う。
.....   ....   ..
〈来栖の独白2011/12/04 Sun.〉
 【死刑執行「教祖から」】との野太いタイトルに驚いた。麻原彰晃(松本智津夫)氏の刑確定に至った経緯に、江川氏は無関心のようだ。裁判全般についても、「膨大な時間をかけた・・・恐ろしさは、とてもよく出ていた」と評価する。
 なぜ麻原氏は語らなくなったのか、確定したのか、これらは拘置所行政や裁判(刑事弁護)の闇の闇を露呈している。
 獄中の麻原彰晃に接見して/会ってすぐ詐病ではないと判りました/拘禁反応によって昏迷状態に陥っている2011-11-30 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 加賀乙彦著『悪魔のささやき』集英社新書2006年8月17日第1刷発行
 p145〜
 獄中の麻原彰晃に接見して
 2006年2月24日の午後1時、私は葛飾区小菅にある東京拘置所の接見室にいました。強化プラスチックの衝立をはさみ、私と向かい合う形で車椅子に座っていたのは、松本智津夫被告人、かつてオウム真理教の教祖として1万人を超える信者を率い、27人の死者と5千5百人以上の重軽傷者を出し、13の事件で罪を問われている男です。
p146〜
 04年2月に1審で死刑の判決がくだり、弁護側は即時、控訴。しかし、それから2年間、「被告と意思疎通ができず、趣意書が作成できない」と松本被告人の精神異常を理由に控訴趣意書を提出しなかったため、裁判はストップしたままでした。被告の控訴能力の有無を最大の争点と考える弁護団としては、趣意書を提出すれば訴訟能力があることを前提に手続きが進んでしまうと恐れたのです。それに対し東京高裁は、精神科医の西山詮に精神鑑定を依頼。その鑑定の結果を踏まえ、控訴を棄却して裁判を打ち切るか、審議を続行するかという判断を下す予定でした。2月20日、高裁に提出された精神状態鑑定書の見解は、被告は「偽痴呆性の無言状態」にあり、「訴訟能力は失っていない」というもの。24日に私が拘置所を訪れたのは、松本被告人の弁護団から、被告人に直接会ったうえで西山の鑑定結果について検証してほしいと依頼されたためです。
 逮捕されてから11年。目の前にいる男の姿は、麻原彰晃の名で知られていたころとはまるで違っていました。トレードマークだった蓬髪はスポーツ刈りになり、髭もすっかり剃ってあります。その顔は、表情が削ぎ落とされてしまったかのようで、目鼻がついているというだけの虚ろなものでした。灰色の作務衣のような囚衣のズボンがやけに膨らんでいるのは、おむつのせいでした。
「松本智津夫さん、今日はお医者さんを連れてきましたよ」
 私の左隣に座った弁護士が話しかけ、接見がはじまりましたが、相変わらず無表情。まったく反応がありません。視覚障害でほとんど見えないという右目は固く閉じられたままで、視力が残っている左目もときどき白目が見えるぐらいにしか開かない。口もとは力なくゆるみ、唇のあいだから下の前歯と歯茎が覗いています。
 重力に抵抗する力さえ失ったように見える顔とは対照的に、右手と左手はせわしなく動いていました。太腿、ふくらはぎ、胸、後頭部、腹、首・・・身体のあちこちを行ったり来たり、よく疲れないものだと呆れるぐらい接見のないだ中、ものすごい勢いでさすり続けているのです。
「あなたほどの宗教家が、後世に言葉を残さずにこのまま断罪されてしまうのは惜しいことだと思います」
「あなたは大きな教団の長になって、たくさんの弟子がいるのに、どうしてそういう子供っぽい態度をとっているんですか」
 何を話しかけても無反応なので、持ち上げてみたり、けなしてみたり、いろいろ試してみましたが、こちらの言うことが聞こえている様子すらありません。その一方で、ブツブツと何やらずっとつぶやいている。耳を澄ましてもはっきりとは聞こえませんでしたが、意味のある言葉でないのは確かです。表情が変わったのは、2度、ニタ〜という感じで笑ったときだけ。しかし、これも私が投げた言葉とは無関係で、面談の様子を筆記している看守に向かい、意味なく笑ってみせたものでした。
 接見を許された時間は、わずか30分。残り10分になったところで、私は相変わらず目をつぶっている松本被告人の顔の真ん前でいきなり、両手を思いっきり打ち鳴らしたのです。バーンという大きな音が8畳ほどのがらんとした接見室いっぱいに響き渡り、メモをとっていた看守と私の隣の弁護士がビクッと身体を震わせました。接見室の奥にあるドアの向こう側、廊下に立って警備をしていた看守までが、何事かと驚いてガラス窓から覗いたほどです。それでも松本被告人だけはビクリともせず、何事もなかったかのように平然としている。数分後にもう1度やってみましたが、やはり彼だけが無反応でした。これは間違いなく拘禁反応によって昏迷状態におちいっている。そう診断し、弁護団が高裁に提出する意見書には、さらに「現段階では訴訟能力なし。治療すべきである」と書き添えたのです。
 拘禁反応というのは、刑務所など強制的に自由を阻害された環境下で見られる反応で、ノイローゼの一種。プライバシーなどというものがいっさい認められず、狭い独房に閉じ込められている囚人たち、とくに死刑になるのではという不安を抱えた重罪犯は、そのストレスからしばしば心身に異常をきたします。
 たとえば、第1章で紹介したような爆発反応。ネズミを追いつめていくと、最後にキーッと飛びあがって暴れます。同じように、人間もどうにもならない状況に追い込まれると、原始反射といってエクスプロージョン(爆発)し、理性を麻痺させ動物的な状態に自分を変えてしまうことがあるのです。暴れまわって器物を壊したり、裸になって大便を顔や体に塗りつけ奇声をあげたり、ガラスの破片や爪で身体中をひっかいたり・・・。私が知っているなかで1番すさまじかったのは、自分の歯で自分の腕を剥いでいくものでした。血まみれになったその囚人は、その血を壁に塗りつけながら荒れ狂っていたのです。
 かと思うと、擬死反射といって死んだようになってしまう人もいます。蛙のなかには、触っているうちにまったく動かなくなるのがいるでしょう。突っつこうが何しようがビクともしないから、死んじゃったのかと思って放っておくと、またのそのそと動き出す。それと同じで、ぜんぜん動かなくなってしまうんです。たいていは短時間から数日で治りますが、まれに1年も2年も続くケースもありました。
 あるいはまた、仮性痴呆とも呼ばれるガンゼル症候群におちいって幼児のようになってしまい、こちらの質問にちょっとずれた答えを返し続ける者、ヒステリー性の麻痺発作を起こす者。そして松本被告人のように昏迷状態におちいる者もいます。
 昏迷というのは、昏睡の前段階にある状態。昏睡や擬死反射と違って起きて動きはするけれど、注射をしたとしても反応はありません。昏迷状態におちいったある死刑囚は、話すどころか食べることすらしませんでした。そこで鼻から胃にチューブを通して高カロリー剤を入れる鼻腔栄養を行ったところ、しばらくすると口からピューッと全部吐いてしまった。まるで噴水のように、吐いたものが天井に達するほどの勢いで、です。入れるたびに吐くので、しかたなく注射に切り替えましたが、注射だとどうしても栄養不足になる。結局、衰弱がひどくなったため、一時、執行停止処分とし、精神病院に入院させました。
 このように、昏迷状態におちいっても周囲に対して不愉快なことをしてしまう例が、しばしば見られます。ただ、それは無意識の行為であり、病気のふりをしている詐病ではありません。松本被告人も詐病ではない、と自信を持って断言します。たった30分の接見でわかるのかと疑う方もいらっしゃるでしょうが、かつて私は東京拘置所の医務部技官でした。拘置所に勤める精神科医の仕事の7割は、刑の執行停止や待遇のいい病舎入りを狙って病気のふりをする囚人の嘘や演技を見抜くことです。なかには、自分の大便を顔や身体に塗りたくって精神病を装う者もいますが、慣れてくれば本物かどうかきっちり見分けられる。詐病か拘禁反応か、それともより深刻な精神病なのかを、鑑別、診断するのが、私の専門だったのです。
 松本被告人に関しては、会ってすぐ詐病ではないとわかりました。拘禁反応におちいった囚人を、私はこれまで76人見てきましたが、そのうち4例が松本被告人とそっくりの症状を呈していた。サリン事件の前に彼が書いた文章や発言などから推理するに、松本被告人は、自分が空想したことが事実であると思いこんで区別がつかなくなる空想虚言タイプだと思います。最初は嘘で、口から出まかせを言うんだけれど、何度も同じことを話しているうちに、それを自分でも真実だと完全に信じてしまう。そういう偏りのある性格の人ほど拘禁反応を起こしやすいんです。
 まして松本被告人の場合、隔離された独房であるだけでなく、両隣の房にも誰も入っていない。また、私が勤めていたころと違って、改築された東京拘置所では窓から外を見ることができません。運動の時間に外に出られたとしても、空が見えないようになっている。そんな極度に密閉された空間に孤独のまま放置されているわけですから、拘禁反応が表れるのも当然ともいえます。接見中、松本被告人とはいっさいコミュニケーションをとれませんでしたが、それは彼が病気のふりをしていたからではありません。私と話したくなかったからでもない。人とコミュニケーションを取れるような状態にないからなのです。(〜p151)
 「死刑にして終わり」にしないことが、次なる悪魔を防ぐ
 しかるに、前出の西山医師による鑑定書を読むと、〈拘禁反応の状態にあるが、拘禁精神病の水準にはなく、偽痴呆性の無言状態にある〉と書かれている。偽痴呆性というのは、脳の変化をともなわない知的レベルの低下のこと。言語は理解しており、言葉によるコミュニケーションが可能な状態です。西山医師は松本被告に3回接見していますが、3回とも意味のあるコミュニケーションは取れませんでした。それなのにどうして、偽痴呆性と判断したのでしょうか。また、拘禁反応と拘禁精神病は違うものであるにもかかわらず、〈拘禁反応の状態にあるが、拘禁精神病の水準にはなく〉と、あたかも同じ病気で片や病状が軽く、片や重いと受けとれるような書き方をしてしまっている。
 鑑定書には、さらに驚くべき記述がありました。松本被告人は独房内でみずからズボン、おむつカバー、おむつを下げ、頻繁にマスターベーションをするようになっていたというのです。05年4月には接見室でも自慰を行い、弁護人の前で射精にまで至っている。その後も接見室で同様の行為を繰り返し、8月には面会に来た自分の娘たちの前でもマスターベーションにふけったそうです。松本被告人と言葉によるコミュニケーションがまったく取れなかったと書き、このような奇行の数々が列挙してあるというのに、なぜか西山医師は唐突に〈訴訟をする能力は失っていない〉と結論づけており、そういう結論に至った根拠はいっさい示していない。失礼ながら私には、早く松本被告人を断罪したいという結論を急いでいる裁判官や検事に迎合し、その意に沿って書かれた鑑定書としか思えませんでした。
 地下鉄サリン事件から11年もの歳月が流れているのですから、結論を急ぎたい気持ちはわかります。被害者や遺族、関係者をはじめ、速やかな裁判の終結と松本被告人の断罪を望んでいる人も多いでしょう。死刑になれば、被害者にとっての報復にはなるかもしれません。しかし、20世紀末の日本を揺るがせた一連の事件の首謀者が、なぜ多くの若者をマインド・コントロールに引き込んだのかは不明のままになるでしょう。
 オウム真理教の事件については、私も非常に興味があったため裁判記録にはすべて目を通し、できるだけ傍聴にも行きました。松本被告人は、おそらく1審の途中から拘禁ノイローゼになっていたと思われます。もっと早い時期に治療していれば、これほど症状が悪化することはなかったはずだし、治療したうえで裁判を再開していたなら10年もの月日が無駄に流れることもなかったでしょう。それが残念でなりません。
 拘禁反応自体は、そのときの症状は激烈であっても、環境を変えればわりとすぐ治る病気です。先ほど紹介した高カロリー剤を天井まで吐いていた囚人も、精神病院に移ると1カ月で好転しました。ムシャムシャ食べるようになったという報告を受けて間もなく、今度は元気になりすぎて病院から逃げてしまった。すぐに捕まって、拘置所に戻ってきましたが。
 松本被告人の場合も、劇的に回復する可能性が高いと思います。彼の場合は逃亡されたらそれこそたいへんですから、病院の治療は難しいでしょうが、拘置所内でほかの拘留者たちと交流させるだけでもいい。そうして外部の空気にあててやれば、半年、いやもっと早く治るかもしれません。実際、大阪拘置所で死刑囚を集団で食事させるなどしたところ、拘禁反応がかなり消えたという前例もあるのです。(〜p153)

 上掲タイトルのように、江川氏は、死刑執行「教祖から」と云われる。
 死刑執行の現場から考えてみたい。同一事件でも、死刑確定の時期によって刑執行の期日にズレはある。オウム真理教事件のように死刑囚が多勢になれば、全員同日執行は余程の困難が予想される。
 期日をずらせばずらしたことにより、拘置所の管理運営は困難を極める。(たとえば、外部交通を遮断したとしても)自分と同事件の死刑囚が執行されたことを耳に入れずに済ませることは、苦肉の策に違いない。耳に入れば、死刑囚は動揺する。心情の安静は保ちにくい。いずれしても、拘置所職員の労苦は、並大抵ではないだろう。
 【63年法務省矯正局長通達】
法務省矯正甲第96号
昭和38年3月15日
死刑確定者の接見及び信書の発受について
 接見及び信書に関する監獄法第9章の規定は、在監者一般につき接見及び信書の発受の許されることを認めているが、これは在監者の接見及び信書の発受を無制限に許すことを認めた趣旨ではなく、条理上各種の在監者につきそれぞれその拘禁の目的に応じてその制限の行われるべきことを基本的な趣旨としているものと解すべきである。
 ところで、死刑確定者には監獄法上被告人に関する特別の規定が存する場合、その準用があるものとされているものの接見又は信書の発受については、同法上被告人に関する特別の規定は存在せず、かつ、この点に関する限り、刑事訴訟法上、当事者たる地位を有する被告人とは全くその性格を異にするものというべきであるから、その制限は専らこれを監獄に拘置する目的に照らして行われるべきものと考えられる。
 いうまでもなく、死刑確定者は死刑判決の確定力の効果として、その執行を確保するために拘置され、一般社会とは厳に隔離されるべきものであり、拘置所等における身柄の確保及び社会不安の防止等の見地からする交通の制約は、その当然に受忍すべき義務であるとしなければならない。更に拘置中、死刑確定者が罪を自覚し、精神の安静裡に死刑の執行を受けることとなるよう配慮さるべきことは刑政上当然の要請であるから、その処遇に当たり、心情の安定を害するおそれのある交通も、また、制約されなければならないところである。
 よって、死刑確定者の接見及び信書の発受につきその許否を判断するに当たって、左記に該当する場合は、概ね許可を与えないことが相当と思料されるので、右趣旨に則り自今その取扱いに遺憾なきを期せられたい。
    記
一、本人の身柄の確保を阻害し又は社会一般に不安の念を抱かせるおそれのある場合
二、本人の心情の安定を害するおそれのある場合
三、その他施設の管理運営上支障を生ずる場合

 死刑囚の心情の安静に苦渋するのも刑務官なら、実際に手をかけねばならない(死刑執行する)のも、彼らである。職務とはいえ、人を、白昼、殺さねばならない。
 江川氏も含めて、数分でもよい。我々国民一人一人が、現場の人の心情を忖度してみてはどうだろう。
 そこのところを、下記論説は言っている。
 論壇時評【「神的暴力」とは何か 死刑存置国で問うぎりぎり孤独な闘い】(抜粋)
 日本は、「先進国」の中で死刑制度を存置しているごく少数の国家の一つである。井上達夫は、「『死刑』を直視し、国民的欺瞞を克服せよ」(『論座』)で、鳩山邦夫法相の昨年の「ベルトコンベヤー」発言へのバッシングを取り上げ、そこで、死刑という過酷な暴力への責任は、執行命令に署名する大臣にではなく、この制度を選んだ立法府に、それゆえ最終的には主権者たる国民にこそある、という当然の事実が忘却されている、と批判する。井上は、国民に責任を再自覚させるために、「自ら手を汚す」機会を与える制度も、つまり国民の中からランダムに選ばれた者が執行命令に署名するという制度も構想可能と示唆する。この延長上には、くじ引きで選ばれた者が刑そのものを執行する、という制度すら構想可能だ。死刑に賛成であるとすれば、汚れ役を誰かに(法相や刑務官に)押し付けるのではなく、自らも引き受ける、このような制度を拒否してはなるまい。(大澤真幸 京都大学大学院教授)
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死刑とは何か〜刑場の周縁から 
麻原彰晃死刑囚(=意識混濁・拘禁症状)の「Xデー」/ オウム中川智正・遠藤誠一被告側が訂正申し立て2011-11-28 | 死刑/重刑/生命犯 問題

死刑執行 19年ぶりにゼロの見通し/人はそれでもなお、人を命で断罪せずにはすまぬほどの「感情」をもつ

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死刑執行、19年ぶりにゼロの見通し 法相に執行の動きなし
産経ニュース2011.12.27 21:19
 平成23年の死刑執行は27日現在、行われておらず、4年以降19年ぶりに「執行ゼロ」となる見通しとなった。刑事訴訟法の規定では死刑執行には法相の命令が必要だが、複数の法務省関係者によると、平岡秀夫法相が年内に執行を命じる動きはないという。
 死刑執行は昨年7月28日に千葉景子元法相が行ったのを最後に止まっている。戦後、執行がなかったのは昭和39、43年と、平成2、3、4年だけだ。
 平岡氏は27日の閣議後会見で、19年ぶりに執行ゼロとなる可能性について、「いろんな検討をした結果なので、それ自体、大きな意味があるとは受け止めていない」と述べた。
 一方、27日現在の確定死刑囚は130人で、戦後最多を更新。昨年末時点での確定囚は111人だったが、今年1年間で22人の死刑が確定し、3人が病死した。
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〈来栖の独白〉
 本年は、東日本大震災により、多くの生命が失われた。人間や動物だけではない。山河も喪われた。無残に姿を変え、放射能に汚染された。
 このようななかにあって、人はそれでもなお、人を、命で断罪せずにはすまぬほどの「感情」をもつ。この1年間で、22人が死刑確定したという。
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増え続ける死刑囚 「執行なければ、事件は終わらない」と遺族
産経ニュース2011.12.27 21:22
 死刑執行が止まる中、膨れあがる一方の確定死刑囚。平岡秀夫法相は死刑制度について「考えを整理したい」「国民的な論議を呼びかけたい」などと繰り返し、9月の就任以降、慎重な姿勢を貫いている。民主党政権になって法相は次々と交代した。法相個人の意思で執行が止まっている現状に犯罪被害者や遺族からは、刑事訴訟法の改正を求める声も出始めた。
 ■平岡氏の真意不明
 今月19日、法務省内で開かれた「死刑の在り方についての勉強会」。死刑廃止国のイギリス、フランスの専門家が、廃止の経緯や現状などの説明を行い、平岡氏らが熱心に聞き入った。
 死刑執行がストップしている間、法務省内で続けられてきたのが、この勉強会だ。昨年8月、当時の千葉景子法相が「国民的議論の契機としたい」と設置し、計10回開かれたが、進展はない。法曹関係者からは「勉強会は執行しないための時間稼ぎにすぎないのでは」との声も上がる。
 平岡氏は27日の閣議後会見で、「勉強会が何らかの結論を出す性格のものではない以上、個々の問題をしっかり考えていかなければならない」と述べ、勉強会を開く間も執行に含みを残したが、真意は不明だ。
 ■「どちらが残酷か」
 法相の姿勢に、いらだちを隠せないのが遺族だ。
 「死刑が執行されない限り事件は終わらない」と語るのは、平成11年の池袋通り魔事件で長女を殺害された宮園誠也さん(77)。加害者は19年に死刑が確定したが、現在も執行されていない。
 高齢となり、心配なのは自身の健康問題だ。「犯人より早く死ねない」と身体を鍛えるため、週4、5回のジョギングに励み、今年の夏は富士山にも登った。死刑廃止論者の中には「絞首刑は残酷」との意見もあるが、「娘は何時間も苦しんで死んでいった。一体どちらが残酷なのか考えてほしい」と訴え、「法相は死刑を執行したくないから、逃げているだけじゃないのか」と批判する。
 ■法改正求める声も
 死刑囚の数は増える一方だ。今年6月には、強盗殺人事件の被告が控訴を取り下げ、裁判員裁判で初めて死刑が確定。オウム真理教の一連の事件でも幹部3人の死刑が今年確定し、刑事裁判が終結した。麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(56)を含め13人の死刑が確定しているが、いまだに執行されていない。
 21年9月の民主党政権発足後、死刑を執行したのは千葉氏だけ。千葉氏の後任の柳田稔氏、仙谷由人氏(兼任)は短命で執行せず、今年1月に就任した江田五月氏は廃止派で、現法相の平岡氏も「これまで執行に前向きな姿勢はない」(法務省幹部)という。
 全国犯罪被害者の会(あすの会)顧問の岡村勲弁護士は「法相は法を守るべき国の最高責任者であり、法を守らないことは許されない。これ以上、執行しない状態が続くならば、法相から死刑執行命令権を取り上げ、検事総長に移す方向で、刑事訴訟法を改正すべきだ」と指摘している。(上塚真由)
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日弁連、死刑廃止で統一見解 オウム裁判終結で懸念2011-12-18 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 日弁連(宇都宮健児会長)は17日までに、死刑制度の廃止を求める「死刑廃止検討委員会」を設置することを決めた。日弁連が死刑廃止方針を統一見解として打ち出すのは、1949年の設立後初めて。オウム真理教関連の刑事裁判が終結し、執行を求める動きが強まる中、広く政府や世論に働きかけ、制度見直しを求める。 2011年12月17日17時05分:共同通信
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日弁連:死刑廃止検討委を設置へ
 日本弁護士連合会は、死刑廃止に向けた議論と提言をする「死刑廃止検討委員会」を年明けにも発足させることを決めた。従来、死刑の執行停止に向けた運動を進めてきたが、全面的に廃止の検討を掲げた組織を設けるのは初めて。
 日弁連は02年に「死刑制度問題に関する提言」を発表。死刑執行停止法の制定などを実現するため、「死刑執行停止実現委員会」を発足させ、死刑問題を考える公聴会やシンポジウムを開催したり海外の法曹団体と意見交換をしたりしてきた。
 今年10月に実施した人権擁護大会では、「死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択。裁判員制度の導入で、一般市民が死刑判決の選択を迫られることなどを踏まえ、国に対し「直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止すること」を求めた。
 日弁連は今月の理事会で新たな委員会の設置を決定。「死刑執行停止実現委員会」の名称を変更し、委員の数も増員する方向で準備を進める。
 死刑制度を巡っては、法務省内でも法相の勉強会が設置されており、制度の是非を巡る検討が進んでいる。【伊藤一郎】毎日新聞 2011年12月17日 19時46分
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法相に、死刑執行の法的義務は存在しない/「6ヵ月以内に死刑執行」は、訓示規定に過ぎない2011-02-27 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 千葉景子法相による死刑執行に抗議する 弁護士・フォーラム90 安田好弘  2010年7月28日の執行・執行抗議集会から  
◎法務大臣には死刑執行の法的義務は存在しない
 今回、千葉さんが、「死刑執行するのは法務大臣の義務だ」と言っています。実は、過去、法務省はそのようには言っていませんでした。これを言い始めたのは、後藤田元法相です。彼が1993年3月に死刑執行を再開した後に、自己の行為の正当化のために言い出したことです。彼に対しては、志賀さんや倉田哲治弁護士などが直接会って、執行をしないようにと話をし、彼はそれに対してよく考えてみるとか、団藤さんの本も実際に読んでみるとか、言っていたわけです。ところが彼は死刑を執行し、法務大臣には死刑執行をする法的義務がある、だから執行しないのは怠慢だし、執行しないならば法務大臣を辞めるべきだと、そもそも執行しない者は法務大臣に就くべきではない、と言い出したのです。今回の千葉さんも、詰まるところ同じことを言っているのです。
 私たちはその当時から、法務大臣には死刑執行の法的義務はないのだと言い続けてきました。これはスローガンとして言っていたわけではなく、法的根拠を持って言ってきたわけです。刑事訴訟法の475条第1項を見ていただければわかりますが、死刑執行は法務大臣の命令による、としか書いてないわけです。法務大臣が死刑執行をしなければならない、とは書いていません。これは法務大臣以外の者が死刑執行を命令してはならないという制限規定です。第2項に6ヵ月以内に執行命令を出さなければならない、となっていますが、これは法務省自らが訓示規定と言っているわけでして、絶対に守らなければならないというものではないわけです。
 法務省が言っていますが、法務大臣の死刑執行はどういう法的性質のものかというと、死刑執行を法務大臣の権限としたのは(権限です。義務とは言っていない)、死刑執行は極めて重要な刑罰なので、政治的責任を持っている人間しか命令してはならないものだ。法務大臣は政治的責任を負っているのだから、いろいろの社会的状況を考慮して、政治的な決断として執行を命令するのだ、という言い方をしています。ここからは義務だという発想は出てこないのです。法務省設置法という法律がありまして、法務省の責任や役目を示したものですが、3条、4条にはっきり書いてありますが、法務省の任務に、「基本法制の整備」、「刑事法制に関する企画立案」とあります。彼らの責務として法体制を改革したり改善したり、法律を新しく制定したり、法律を改正したり、ということがあるわけです。ですから法務大臣は死刑執行をすることが義務ではなく、死刑制度について改善したり、新しい死刑制度に関する企画を出したり、その企画が通るまで死刑執行を停止すると、いったようなことが法務大臣の義務としてあるわけです。千葉さんの発言は、これを完全に無視した発言であるわけです。
 さらに言いますと、官吏服務紀律という勅令がありまして、昭和22年に一部改正されており、国務大臣はこれに従わなければならないとされています。その1条には「国民全体の奉仕者として誠実勤勉を主とし法令に従い各職務をつくすべし」とあって、権限を行使する場合は、公僕として法律に則って職務を果たせという職務規範はあっても、死刑執行を命令しなければならないというような、羈束(キソク=つなぎとめる、拘束する)的に、必ず一定の行為を行わなければならないというような職務規範は予定されていないわけです。このように、法の規定からしても、また過去の法務省の理解ないしは解説からしても、法務大臣に死刑執行命令をする義務があるというのは、間違い以外何ものでもないと考えます。この点についても議論しなければならないと、私は思っています。
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死刑執行命令を発する権限と義務
 刑事訴訟法によれば、死刑執行の命令は判決が確定してから6か月以内に行わなければならないが、再審請求などの期間はこれに含まれない。また、大臣によって決裁の頻度は異なり、賀屋興宣や左藤恵等、在任中に発令の署名をしなかった大臣の例もある。第3次小泉改造内閣の法相杉浦正健が就任直後の会見で「私の心や宗教観や哲学の問題として死刑執行書にはサインしない(杉浦は弁護士出身、真宗大谷派を信仰)」と発言したところ各所から批判を浴び、わずか1時間で撤回するという騒動が起きた(ただし、在任中は死刑執行命令を発しないで、結果的に最初の信念を貫き通した形となった)。
 判決確定から6ヶ月という規定は、日本国憲法制定後に、「今までのように死刑執行まで時間がかかりすぎるのは、死刑執行を待つ恐怖が長く続くことになって残酷であり、新憲法の趣旨にも反する」という理由で作られたもので、「犯罪者に対する厳正な処罰のために、6ヶ月で執行しなければならない」とする解釈は、本来の趣旨ではない。判決確定から6ヶ月以内に執行されない事例がほとんどであり、実効性のない規定になっている。
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上杉隆の「ここまでしゃべっていいですか」1(1〜2)朝日新聞が世間の感覚とズレにズレている理由

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杉隆の「ここまでしゃべっていいですか」:朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由
Business Media 誠2010年08月11日 09時00分 UPDATE
 気鋭のジャーナリスト、上杉隆氏、相場英雄氏、窪田順生氏の3人が、Business Media 誠に登場。「政治評論家に多額の資金が渡った」と指摘されている官房機密費問題や、メディアが抱える問題点などについて語り合った。[土肥義則,Business Media 誠]
 小渕内閣で官房長官を務めた野中広務氏の「官房機密費」問題が注目を浴びている。当時の官房機密費の取り扱いについて、野中氏は「毎月5000万円〜7000万円くらいは使っていた」と暴露。さらに評論家らにも配っていたが、那覇市内で行われたフォーラムで「持って行って断られたのは、田原総一朗さん1人」と述べた(参照リンク)。
 野中氏の発言は一斉に報じられるものの、その後、この問題を追及する主要メディアはほとんどなかった。なぜ新聞やテレビは、官房機密費問題を取り上げようとしないのか。それとも「報道に値する」ものではないのだろうか。Business Media 誠ではジャーナリストの上杉隆氏、作家・経済ジャーナリストの相場英雄氏(時事日想・木曜日連載)、ノンフィクションライターの窪田順生氏を招き、官房機密費やメディアに関する問題を徹底的に語り合ってもらった。全10回に渡ってお送りする。
■政治部は人であらず
相場:主要メディアで官房機密費問題を追及しているところはほとんどないのですが、一般の人にはかなり浸透してきたのではないでしょうか。
窪田:浸透してきましたね。これまで多くの人は、新聞記者やテレビ報道に携わる人のことを「中立な人だ」「正義の象徴だ」と勘違いしていましたが。
相場:確かに。大いなる誤解はあったでしょうね。
窪田:官房機密費の問題では、政治家が政治評論家や主要メディアの解説委員クラスに「お金を渡したのではないか?」という疑いが出ています。しかしヒラの記者にも、政治家は“お年玉”と称して、お金を配っていました。そんなに大きな額ではありませんが、年末や正月にお金を受け取った記者は多いはず。
 記者が政治家のために好意的な記事を書けば、当然「ありがとうな」ということになる。そして政治家からメシをおごってもらったりする。それだけならまだしも、やがてエスカレートし、正月にお年玉をもらったりするのかもしれない。
上杉:官房機密費は、政治の問題だけじゃないんですよ。メディアの問題。そもそも官房機密費というのはあって当然だと思う。使い道をオープンにすれば、いろいろな面で「抑止力」になるわけですし。問題は、ジャーナリストがお金をもらったということ。しかもお金の出所は税金なのに。
 ボクはこのことを何度も言っているのに、必ず「官房機密費のあり方について」という議論に戻されてしまう。フリーのボクがこの問題を取材していますが、本来であれば新聞やテレビが率先して内部調査しなければいけない。それが“筋”というもの。しかも税金の使い道に関する問題なのに、主要メディアはだんまりを決め込んでいる。記者クラブ問題のときと同様、今回の件についてはそういう動きが全くない。
相場:日本のマスコミは、ものすごく官僚的ですね。
上杉:そうですね。マスコミと思うからダメで、むしろ彼らのことを「官僚」だと思えばいい。
相場:なるほど。分かりやすいですね。
窪田:日本のメディアはジャーナリストではなく、「役人」であれば腹が立たない……ということですね。
相場:ボクには小学校5年生の子どもがいるんですが、なぜか息子のクラスにはマスコミ関係者の父親が多い。でも、父親がマスコミで働いている子どもは肩身が狭いそうで……。
窪田:それはかわいそうですね。
相場:ちなみに、ウチの息子はこのように言っているそうです。「ボクのパパは、元時事通信社の経済部だ。政治部ではない!」と(笑)。
上杉:昔は政治部以外は人にあらずだったのに……隔世の感がありますね。
■朝日新聞のズレ
相場:ボクがいた時事通信社でも、政治部記者の多くは真面目に取材をしていました。しかし偉くなっていくと、社内の権力闘争に明け暮れていくんですよ。そして、それに勝った人間が上に上り詰めていく。
窪田:まさに官僚的ですね。ボクも以前は朝日新聞にいて、そのときにもらった資料や本を探してみました。何か面白いことでも書いていないかな……と(笑)。入社したときに『歴史の瞬間とジャーナリストたち 朝日新聞にみる20世紀』という非売品の本をもらったので、読み返してみました。その本には、朝日新聞の記者が日本の近代化にどれだけ役目を果たしたか、といった内容が書かれていました。
上杉:負の歴史ですね(笑)。
窪田:あらためて驚いたのは開いて1ページ目から、「日露開戦にいち早く布石」という見出しで、当時の朝日新聞主筆・池辺三山が外務省の参事官から、元老と会って「対露強攻策で問題解決を図るよう働きかけてほしい」と頼まれるくだりからはじまっていることです(笑)。
上杉:それって、ものすごくマズイじゃないですかっ!
窪田:元老の山縣有朋が日露交渉に賛成する姿勢をみせたので、開戦論者の外務官僚からすればワラをもすがる思いで頼んだわけですよ。池辺主筆も期待に応え、「いまなさねばならぬのは、断じてこれを行うという決断です」と説得、山縣は頭を垂れて涙を流したと書いてあります(笑)。
 要するに、朝日新聞の役割というのは、取材よりも官僚の役にたって政治に働きかけることであるということです。なんせ……1ページ目から書いてあるくらいですから。
上杉:それって、自分たちがジャーナリストではなく、プレイヤーであることを宣言しているようなもの。
相場:じゃあ昔から、読売新聞社のナベツネ(渡辺恒雄)さんみたいな人がいたということですね。
窪田:ですね。事実、この逸話は「これ以降、日本の新聞界に近代的エディターとしての主筆が定着する」と誇らしげにしめくられています。やはり朝日新聞の感覚というのは、世間とズレていると思いました。
上杉:それは朝日新聞だけではないですよ。どこも同じようなもの。
 あとメディアには「愛社精神」というヘンなものがありますよね。「朝日人」とか。ちなみにボクがNHKにいたときには「NHKマン」だった(笑)。これってものすごく気持ち悪い。
窪田:気持ち悪いですね。それって昔の「オレは大蔵官僚だ」「ワシは通産官僚だ」といった感覚に近いのかもしれない。
上杉:また彼らは、家族で同じ寮に住んだりしている。そうすると考え方まで似通ってくる。
■クッキーの包装紙に御車代
上杉:小渕政権で官房長官を務めた野中広務さんは「現職の記者に金品を渡したことがない」と言っています。しかしボクが鳩山邦夫さんの秘書をしていたとき、実に多くの政治家が記者にお金を渡していたのを知っています。もちろん鳩山事務所の場合は、官房機密費ではなく、“子ども手当て”だったりしますが(笑)。
相場・窪田:ハハハ。
上杉:鳩山家の子ども手当てに対し、大手メディアが突っ込めないのは多くの人がその恩恵に与っているから。
 ところで、官房副長官をした鈴木宗男さんは政治部長懇談会などを開いたとき、必ず「お土産と一緒にクルマ代を渡していた」と言っています。「クルマ代を渡さないなんてありえないだろう」と。ちなみにボクもクルマ代をもらったことがある。もちろんすぐに返しましたが。
相場:実はボクも1度、クルマ代をもらったことがありました。そのときはひっくり返りそうになりましたね。
上杉:ボクの場合、白地の封筒を見せられ、「御車代です」と言われました。相場さんはどのように?
相場:ある業界団体から、クッキーをもらいました。しかしよく見ると、包装紙に封筒がくっついていたんですよ。それがクルマ代。このことをキャップに言ったら「すぐに返してこい!」と怒鳴られました。しかし冷静になって考えてみると、当たり前の対応です。封筒は絶対に開けませんでしたから。
窪田:うっかり封筒を開けてから返すと、イチャモンをつけられるかもしれない。「金額が少ないじゃないか」と(笑)。
相場・上杉:ハハハ。
窪田:また封を切ってから返してしまうと「オレを舐めるな! こんな金額じゃ足りねえ!」などと勘違いされても困る(笑)。
上杉:せめて大きめの紙袋に入れてもらわないと(笑)。
窪田:いやジュラルミンケースに入れてもらって、ゴロゴロ転がしてきてもらわないと(笑)。
上杉:そこまでしてくれるのならちょっと考えてやっても……いや、絶対にないな。
■永田町の感覚
相場:普通の記者であれば、お金をもらったらビックリしますよね。お金をもらったら「ちょっとマズイ」という意識が働きますから。
 ボクは経済部だったので、企業の広報から接待されれば、必ずおごり返していました。それが慣習としてありましたから。しかしお金をもらったときには驚きましたね。
上杉:相場さんの感覚は普通ですよ。むしろ永田町の感覚が、麻痺している。政治家はよくこんなことを言います。「ほら“お年玉”をあげるよ。これはね……社会通念上の問題だから」と。
相場・窪田:ハハハ。
上杉:でも、秘書時代の先輩から聞くと「A社の政治部長に10万円はちょっと少ないかなあ」と思ったりしたそうです。30万〜50万円が多かったので「時事通信だと30万円でいいけど、読売新聞だと50万円かな」といった感じ。そういうことをしていると、永田町の通念が当たり前のように思えてくる。またもらう側の記者も、何の疑問も抱かずに受け取る。しかし一般の人の感覚からすると「なぜ政治家と一緒にご飯を食べただけで、30万〜50万円の大金をもらえるのか?」と思うのが普通ですよね。
相場:永田町の感覚って……相撲界の“ごっつあん体質”に近いのかもしれない。
上杉:ボクの場合、ジャーナリストをする前に政治家の秘書をしていた。つまり配っている側からもらう側になってしまった。実際、ジャーナリストになると政治家の秘書たちがお金を持ってくるんですよ。彼らは平気な顔をして、机の上にお金を置いていく。しかしそのお金をきちんと返せば、相手は2度と渡そうとしません。
 受けとろうとしない相手に、何度も何度も渡そうとする人なんていません。なので「自分は断っているのに、政治家が何度も何度も渡しに来る」と言っている人は、過去に1度は受けとっている可能性があるとみてしまう。あと高名な政治評論家に関しては「講演会」を絡めて、500万円くらいが相場でした。しかし、ある別の政治評論家はこんなことを言っていました。「これ金額が間違っていますよ」と。多すぎるんですか? と聞いたところ「これは半分だよ。半分しかない。1000万円だよ」と言ってきた。
窪田:政治評論家の先生って、スゴイですねえ。
上杉:相場さんがいらっしゃった時事通信社にも該当者はいます。『週刊ポスト』に詳細を書いたのでここでは控えますが、その人物にはずっと取材を依頼していた。ところが、いきなり怒鳴ってきましたよ。「そんな不愉快な質問をする奴とは2度と仕事ができない!」「オレの名前を出すな!」と。怒るのではなくて、きちんと説明してくれればいいのに。もしお金をもらっていなければ、怒らずに説明できるはず。自分がそういう立場だったら、きちんと説明しますね。
窪田:そのリアクションを見る限り、“クロ”と疑われても仕方がない(笑)。
上杉:その人物のことはすでに書いたのですが、こうなると他の該当者のこともすべて書かなければいけなくなる。ま、最後には書くかもしれませんが(笑)。
相場・窪田:ハハハ。
上杉:ハッキリ言えば、解説委員や編集委員クラスの名前が挙がっていますが、もっと無名の人でも金品を受け取っている。ボクは今、彼らが内部調査をするのを待っている状態です。しかし何もしなければ、いつかは彼らのことについても書くかもしれません。
窪田:読んでみたいなあ。楽しみにしていますので。
■官房機密費と記者クラブの関係
上杉:官房機密費の問題ですが、メディアの中でも共同通信と時事通信の記者は「接待」を受けやすかった環境にありました。なぜなら通信社は土・日・祝日でも必ず官邸に詰めないといけないから。そうなると政治家も情が移り、渡しやすいんですよ。
 また官房機密費の問題は、記者クラブ制度と密接にリンクしている。しかもそれがキモだったということが、取材して分かった。そういう意味でいうと、ボクも鈍感でしたね(笑)。
相場・窪田:ハハハ。
上杉:取材を進めていくうちに「なんでだっ!? なんでこんなことが起こるんだ!?」と思うことがありました。
窪田:記者クラブ問題よりも、触れてはいけなかったことかもしれないですね。まさに彼らの“逆鱗”に触れたといった感じ。
 逆に言うと、この問題を触れられたくなかったから、記者クラブで止めておきたかったのかもしれない。
上杉:その可能性は高いですね。
■新聞やテレビは、自民党しか取材してこなかった
相場:あえて名前は伏せておきますが、毎日のようにテレビに出て政治のことを語っているXさん。このことはBusiness Media 誠の時事日想の連載でも書かせていただきましたが(関連記事)、彼は民主党の取材が全くできていない。そんな人が、テレビでコメントすることに疑問を感じますね。Xさんは民主党議員の知り合いがほとんどいないので、ネタ元はすべて現場の記者から。彼のせいで、若い記者たちが泣いていましたよ。頻繁に「何かネタはないのか?」とせっつかれて。
上杉:Xさんのみならず、各社は自民党しか取材をしてこなかった。2009年に政権交代が行われましたが、その1年前に各社は「そろそろヤバイな」ということで民主党の番記者を増やしたりした。ところが人脈がないので、なかなかうまく取材ができない。政権交代したのにもかかわらず、民主党内の話を自民党議員のコメントを使って埋めるという不思議な記事が多かった(笑)。当時からよくお呼びがかかったのが、政治アナリストの伊藤惇夫さん。ボクも鳩山邦夫さんの秘書をしていたので、民主党議員に知り合いがたくさんいた。しかし記者クラブ問題を突っ込んでいたので、主要メディアでは「上杉を出すな!」という号令がかかっていた。なので各社は、伊藤さんのところに殺到したというわけです。他にはずっと民主党を取材していた神保哲夫さん、それに塩田潮さんなどが重宝がられてました。十分うなずける人選です。でも、他の評論家やコメンテーターはひどいものです。民主党の記者会見どころか、民主党取材を一切したことないくせに、「オレは全部知っている」という感じですから。
相場:テレビに出ている解説委員クラスの人は、そもそも取材をしようという気があまりない。部下の記者を使って情報を集めておいて、テレビでしったかぶりしてコメントしている。それって……「記者」と呼べるかどうか。
上杉:そういう人たちは「評論家」にしてもらえればいいのに。
記事で“お返し”してはいけない
窪田:テレビに解説委員の人たちがよく出ていますが、海外ではどのような状況なのでしょうか。
上杉:いますよ。例えばCNNの『AC360』を担当しているアンダーソン・クーパーはジャーナリスト。ジョン・キングはこの前まではジャーナリストでしたが、オバマ選挙後は政治アナリストになりました。アナリストは分析に重心を置き、取材をしなくてもいい。一方のジャーナリストは現場で取材をする。両者の役割は違うが、いずれも取材対象者からお金をもらってはいけない。ボクはニューヨーク・タイムズに1999年から2001年までいましたが、取材対象者から2ドル以上のお金や物品を受けてはいけないという“2ドルルール”がありました。いまではニューヨーク・タイムズのWebサイト(参照リンク)にルールが記載されていて、取材対象者と会食をしたり、ランチを食べたりすることですらNGになっています。クリントン政権のときにロビイストとランチを食べるときに「20ドルを超えてはいけない」というルールができた。それに習って各社も限度額を設定したのでしょう。そしてその額を超えてしまうと、ワイロとみなされる。「取材対象者からお金をもらった記者の記事は信用できない」ということに。
窪田:米国のルールを持ち込むと、日本の記者は全員アウトですね(笑)。
相場:ボクは“即死”(笑)。
窪田:メシを一緒に食べることがダメなんですよね? 日本では、取材対象者とメシを食いに行って“ごっつあんになります”という記者は多い。
上杉:日本には「メシを食わなければ取材ができない」という独特の文化がありますね。もちろんそのときは「対等返し」で、自分の分も支払います。ただ料亭では受けとってくれないことが多いので、必ず料理代金相当のおみやげを渡します。もしそれでも金額が足りなかったら、翌日議員会館などに行って「ありがとうございます」と言って、別の形で必ず返しますよ。そうやってバランスをとるのが、日本型なのかなと思っています。
窪田:一部の企業ではちょっと前まで、企業広報の役割といえば記者に飲ませたり、食わせたりすることでした。
相場:そうですね。広報は記者を“ズブズブ”にしておくことで、もしスキャンダルが出ても記事に手心が加わることを期待しています(関連記事)
窪田:しかし記事でお返しをするのではなく、日本人的な形で返す方法があるのではないでしょうか。例えばメシをおごってもらえれば、メシをおごりかえすように……。
■“裏懇”で金品を受け取っている記者
上杉:まだ官房機密費の問題が続いていますが、なぜこんなことがまかり通るようになったのかというと、やはり記者クラブ制度が残っていたから。記者クラブがあることで秘密を共有し、いわゆる共犯関係にしてしまう。もはや記者クラブは秘密を漏洩させないシステム……つまり“カルテル”だと言っていい。
 そして秘密を共有するだけではなく、そこにお金もからんでいた。ただ記者クラブを開放してしまうと、フリーのジャーナリストが入り込んで秘密をばらしてしまう。だから主要メディアは記者クラブを守りたかったのか……と思わざるを得ない。
相場:ボクは経済部にいましたが、政治部とは温度差のようなものを感じていました。20年ほど前に、日本に外資系企業がやってきましたが、そのころから記者クラブに緩みがでてきました。そして記者クラブがなくなったところもたくさんある。なので政治部記者の話を聞いていると「えっ、永田町ってまだそんなことやってるの?」といった新鮮な驚きがありますね。
上杉:ただ若手の記者で官房機密費をもらっている人はほとんどいません。小泉政権のときに大きく変わりましたから。
相場:なるほど。
上杉:約5億円の官房機密費を騙し取った外務省の元要人外国訪問支援室長・松尾克俊の問題が浮き彫りになってから、ピタッと止まりました(参照リンク)。もちろん“裏懇”などで、金品の提供を受けている人間はごく少数残っていますが……。
相場:そうなると、当時の政治部部長や次長クラスの人が“ズブズブ”だったということですね。
■官房機密費のことは聞いたことがない
上杉:森喜朗内閣くらいまでの幹部クラスはもらっているのではないでしょうか。政治部長、次長、デスク、官邸キャップなど――。
 日本外国特派員協会で行われた記者会見で、時事通信社の田崎史郎さんはこのようなことを言っていました。官房機密費問題のことは「50年間、聞いたことがない」と。これには驚きましたね。ボクのようなぺーペーだって「見たことも、聞いたこともある」のに(笑)。田崎さんは政治部記者の中核として活躍されてきたはずなのに、「聞いたこともない」のならどんだけの“モグリ”だよ、という話になってしまう。
 田崎さんのみならず、ほかの評論家たちも同じです。政治のことは表も裏も知り尽くしたはずなのに、なぜか官房機密費のことだけは聞いたことがない、となるんですよ。そこだけ知らないなんて……なんともうまくできているというか。
窪田:すごいなあ。官房機密費のお金だけは見えないんでしょうね。
相場:都合の悪いところは盲点になるのかもしれない。
上杉:また会見の席に他のメディアの人もいましたが、その発言が面白かった。ある記者が「今、『週刊ポスト』で連載をしていますが、官房機密費のことを見聞きしたことがありますか?」と質問したところ、「私はもらっていないっ!」と答えた人がいた。
相場:そういう意味で、質問したわけじゃないでしょう(笑)。
上杉:そして田崎さんが「そんなのは50年前の話だ。1回もそんなお金は見たこともないし、デタラメだ」などと言っていた横で、共同通信社の西川孝純(論説委員)さんが「飛行機の中で現金が入っている〈と思わしき〉封筒を渡されたが、『これは受け取るわけにはまいりません』とその場で返却した。それが官房機密費だったかどうかは尋ねてもいないし、知る由もない」と。いきなり論理が破たんしてます(笑)。
相場:確かに論理が破たんしていますね。ないということがウソになっている。
 *編集部注:共同通信社・西川孝純さんの発言内容に一部誤りがありましたので、修正いたしました。読者の皆さまにはご迷惑をおかけいたしました。(9/21 11:47)
■取材の受け方がヘタ
上杉:読売テレビの岩田公雄さん(特別解説委員)は「そのころの自分は地方にいたので、官房機密費のことは見たことも聞いたこともない。だからそういうことがあることが分からない。『ない』と信じている」と言っていた。さらに以前『週刊ポスト』の取材で、朝日の幹部は「朝日新聞の記者は一切もらっていない」と言い切った。内部調査をしての発言ならばまだしも、それは断定できないのではないか、という感じですが。
窪田:その世代の記者は、取材の受け方がヘタですね(笑)。「もう自分はクロです」と言っているようなもの。
上杉:また政治評論家の三宅久之さんも、『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)という番組の中で、ボクにいきなりこう言ったんですよ。「だいたいこの人はね、デタラメでインチキなんだよ。取材も受けていないのにウソばっかり書いているからね」と。
窪田:もう政治家並みに、ウソをつくのがヘタですねえ(笑)。
上杉:こちらは繰り返し取材を申し込んでいるのに、「取材を受けていない」という人がいます。そして、そういう人に限って「インタビューを受けていない」ことを強調する。しかしこれは間違っていて、正確に言うと「取材を拒否した」だけのこと。ちなみに野中広務さんも安倍晋三さんも、三宅さんもそうでした。彼らに共通していることは取材依頼という入口ばかりを取り上げ、問題の中身については一切語りません。
■普通の関係を超えている
相場:ボクは東北によく取材に行くのですが、自民党候補の若い政治家のポスターに政治評論家の三宅さんが一緒に写っているんですよ。またそのポスターの数がものすごく多い。
窪田:ボクもそのポスターは見たことがありますよ。
相場:あの感覚って、分からないですよね。
窪田:三宅さんは、勢力的にいろいろな政治家と一緒に写っていますよ。
相場:そして三宅さんと政治家の懇親会があったりする。しかしそれって、ものすごく不自然。
 ボクは経済部の記者を長くやっていましたが、「○○企業とはソリが合わない」と思うことはよくありました。記者といっても人間なので、それは仕方がないこと。もちろん先方も「○○新聞の○○記者は嫌い」ということはあるでしょう。しかし三宅さんと政治家の関係は、もはや普通の関係を超えてしまっている。
上杉:官房機密費の問題は、お金の出所が税金であること。しかし新聞やテレビはこの問題について、1文字も報じない異常さがある。このことを海外のメディアに話したところ、完全に呆れながら、「普通ならば大キャンペーンを張って、糾弾しているだろう」と言っていました。しかし日本の主要メディアはキャンペーンを行うどころか、全く触れようとしない。なぜ報道しないかというと、自分たちもお金をもらっているからとしか考えられない。お金をもらっていなければ、記事にできるはずですから。
 各社は「コンプライアンスは必要」などと言っているんだから、少なくとも内部調査はしなければいけない。
窪田:そうですね。
相場:そもそもコンプライアンスの室長あたりがもらっているかもしれない(笑)。
上杉:いや、もっと上、政治部出身の経営陣がもっとも怪しい(笑)。
 官房機密費をもらっている人のリストには20人ほどの名前が並んでいて、最初は「この20人くらいを取材して、それで終わりかな」と思っていた。しかし『週刊ポスト』に書いてみると、いろんな人から電話がかかってくるんですよ。どういった人からかというと、政治家の元秘書が圧倒的に多かった。
 そして彼らが言う内容は、ほとんど同じ。テレビを見ていて、一般のコメンテーターやタレントが「政治家は汚い」「政治家には説明責任があるんですよ」と言っても、みんな“まあ仕方がないか”と許せるらしんですよ。しかし主要メディアの解説委員クラスが「政治家はきちんと自分の言葉で説明しなければいけない」と言うと、"カチン"とくるらしいんですよ。散々、お金をたかりに来ていた人たちだから(笑)。
相場:そりゃあそうでしょうね。
上杉:ある地方在住のある元秘書は「許しがたい!」と言って私のことを怒鳴る(笑)。
相場・窪田:ハハハ。
上杉:そして彼の日記帳には、このようなことが書いてありました。「平成○年○月○日、○○記者、○○ホテル、○○万円」と。とにかくこの官房機密費問題で怒っているのは、政治家の元秘書たち。「あの解説委員はなに偉そうなことを言ってるんだ!」「お前だけは言うな!」といった感じで怒っていますね。
窪田:丸川珠代さんが国会でヤジって話題になった「恥を知れ!」という言葉は、まさしくこういうときに使うべきなんでしょうね(笑)。
相場:官房機密費問題では、いまの解説委員クラスが標的になっていますが、その前の世代もすごかったのでしょうね。
上杉:山里会でいうと読売新聞の渡邉恒雄さん自らが政治家のところに行って、「官房機密費をよこせ。そうすればいろいろな問題を抑えてやる」などと言っていたようです。
 しかし三法会の人たちは分け前をもらえなかったから、自ら会を作った。つまり官房機密費をもらうシステムを自分たちで作ったわけですよ。
窪田:恐ろしい人たちですね。
上杉:しかし、この問題を取り上げようとすると、メディアからひどい仕打ちを受けますよ。またいつものとおり、「上杉だけは使うな!」という動きならまだしも、「あいつだけは許さん。何とかしろ」と超法規的な声も出ている。だからBusiness Media 誠さんくらいしか出れなくなったんですよ(笑)。
窪田:業界の噂で、記者クラブ問題のときと同じように「上杉を黙らせろ」といった動きがあるようですけど。
上杉:あるテレビ局の幹部は「上杉だけは絶対に許さない、なんとしてでも潰せ」と言っているようですね。ま……記者クラブ問題のときも、散々言われましたが。
窪田:そこで「お前だけには言われたくないわ」という話になりますよね(笑)。
相場:経済界だと本当のことを書いたアナリストが、不要ともいえる税務調査を受けたりします。上杉さんは、このような嫌がらせを受けたりしたことはありますか?
上杉:大手新聞社やテレビは「上杉はうそつきだからは絶対に使うな」という動きになっています。あとは「上杉はインチキだ!」「でたらめだ!」といった噂を流されたりしますが、もとからインチキででたらめな性格を自覚しているんで、なんともないですね(笑)。でも、官房機密費問題の事実が明るみになれば、ボクのネガティブ情報を流した彼らが嘘つきになる。
窪田:どちらが嘘つきか……しばらくすると分かるでしょうね。
■スピン(情報操作)に注意しなければいけない
相場:都内のバーで飲んでいると、ある新聞社の政治部記者からこんなことを言われました。「お前は上杉の友達かっ!」と。
上杉:ハハハ。
相場:ボクは経済部出身なので、「官房機密費問題はどうなっているんですか?」と聞いただけなのに。
窪田:ごく普通の好奇心で聞いても、この問題は彼らの逆鱗に触れるようですね。まるで政治部の記者以外は好奇心を持ってはいけないようですね(笑)。少し心配していることは、細かい部分の間違いを指摘して「上杉の記事はインチキだ」といったことを強調し、根本的な問題をうやむやにするスピン(情報操作)を仕掛けられないかということ。彼らはくだらない方向に話をもっていって、火消しを図ろうとするかもしれない。そうすると、いろんなとこから“上杉スキャンダル”を狙っていると思うんですよ。
上杉:気をつけないといけませんね。ただネットがあることで、随分と助けられています。例えばTwitterでつぶやくことで、多くの人が同調してくれる。こちらからお願いしていないのにもかかわらず、新聞社やテレビ局に抗議の電話をしたり、メールを送ったりしている。
窪田:既存メディアだけであれば、上杉さんのような人は潰されていたかもしれない。
上杉:一瞬で、おしまいですよ(笑)。というか、元々潰れているから(笑)。
窪田:例えば上杉さんが駅のホームに立っていて、後ろからドンと押す人がいても、それを見た人がTwitterでつぶやいたりする。「上杉、押されるなう」と(笑)。
相場:Ustreamで流れるかもしれない。
上杉:以前、テレビのレギュラー番組に出ていたころは、歩いていてもあまり声をかけられたりしませんでした。しかしTwitterを始めてからは、声をかけられることが多くなりましたね。Twitterでフォローしていると、親しみというか存在が近く感じるのかもしれない。「テレビ、毎日見てるわよ」と声をかけられたりする。もう、テレビには出ていないのに……(笑)。
■全国紙がズルイ理由
相場:フリージャーナリストで活躍されている方はたくさんいますが、今の若い世代の人がどこまで通用するのか、と心配しています。言葉は悪いですが、「君、この取材の仕方はないだろう」と思う人をしばしば見かけます。年寄りの戯言かもしれませんが、若い人はもっと"雑巾がけ"をした方がいいと思う。
上杉:簡単に取材ができる、と思っている人が多いのかもしれません。あとはネットで記事を書いていると、その発信元しか見ていない人が増えているような気がします。
 ただ記者クラブが崩れてきている中で、30年後、50年後に振り返ってみれば「あのときは過渡期だった」「あのときに日本のメディアも世界標準としてスタートした」と思うのではないでしょうか。
窪田:しかし今は“空白のとき”を過ごしていて、この間に「ジャーナリスト」と呼ばれる人が少なくなっているような気がします。
上杉:その一方で、Webメディアからこれまでにないタイプのジャーナリストが誕生するかもしれない。ネットメディアがもたらしたメリットは、メディアの看板で選ぶのではなく、中身で選ぶ人が増えたこと。必然的に読者のリテラシーが高くなったのではないでしょうか。例えば朝日新聞の主筆を務める船橋洋一さんがネット上で書いても、多くの読者が集まる時代ではない。無名でも記事が面白ければ、中身で人が集まるようになったことは、「健全化の1歩」と言えるのではないでしょうか。
窪田:今後、日本の新聞ってどうなると思いますか? これまで発表報道が中心だったのに、記者クラブに穴が開いてきました。また朝日新聞ですら記者のリストラを始めている。
相場:ボクは地方で取材することが多いのですが、地方新聞は町内の回覧板的な役割を果たしています。これは絶対に必要だと思う。でも在京紙というのは、もう必要ないのかもしれない。
窪田:都会で生活している人にとって、新聞はもういらないかもしれませんね。
上杉:少なくとも全国紙はいらない。例えば米国を見ると、全国紙なんてない。日本の全国紙がズルイのは、自分たちも「全国紙はいらないのでは?」と思っているくせに、気付いてないフリをしていること。ニューヨーク・タイムズ時代のボスだったハワード・フレンチ元東京支局長は、「日本のメディアは砂の中に頭を入れているダチョウだ」と言っています。自分たちは安全だと思っているかもしれないが、このままでは死んでしまうぞ、という意味。砂の中に入れていると頭は安全かもしれませんが、それ以外の部分は敵に襲われるかもしれない。また砂の中にずっと頭を入れていれば、やがて窒息するだけ。フレンチ氏が言うように、日本の新聞はまさに「砂の中に頭を入れているダチョウ」ですね。また日本の新聞は海外の新聞事情を研究して、生き残りを図らなければならない。それなのに見えないフリをしているのは、これまで護送船団に甘やかされたから。その甘えた考えを自ら変えないと、生き残ってはいけない。
窪田:その通りだと思います。毎日新聞は、共同通信社から国内ニュースの配信を受けることになりました。発表モノは共同の記事を使い、自社の記者を独自取材に振り向けるといっています。しかし全国に散らばっている記者を、東京や大阪に集約させようとしている。そうすると、地方からの独自ネタを発信できなくなりますね。
上杉:このままだと、新聞社の立派な建物や輪転機が残って、報道が消えていく可能性がありますね。
■経営と編集は分離されていないと
相場:大手新聞社のトップを見てみると、全員が記者出身(関連記事)。ボクの先輩は組合の幹部団交の席で、このように言っていました。「経営をアウトソーシングをしろ」と。この発言は組合報に掲載されていましたが、「その通り」だなと思いましたね。
上杉:そもそも経営と編集は分離されていないといけないのに、日本の多くのメディアは元記者が経営を行っている。記者が経営を行うということは、サッカー選手が現役を引退して、プロ野球の監督をするようなもの。おかしな話なのに、それがまかり通っている。
窪田:昔から政治部出身の記者が、経営に携わるケースが多いですよね。なぜ政治に少し詳しいだけで、経営を行うことができるのでしょうか。
相場:ただ社内でも「オレは管理職にはならない」「オレは記者一筋でやっていく」という人がいます。しかしこうした発言は社内でものすごい軋轢を生むんですよ。多くの人は管理職をやって、部下のヘタな原稿をチェックしなければいけない。なのに「あいつは何だ!」「我がままばかり言いやがって!」と批判されるわけですよ。
上杉:それこそ官僚体質ですよね。記者というのは専門分野を長く取材することで、権力を監視することができる。しかし日本では1年生記者が、総理大臣にブラ下がったりする。政治家側からすれば、彼らの取材なんておちゃのこさいさいですよ。
窪田:自分の息子くらいの年齢の記者が「どうですか?」と聞かれても、鼻であしらうだけでしょうね。
上杉:例えば自分の会社で行った世論調査について、総理にこのような聞き方をしていますよね。「総理、支持率が○○%になりました。受け止めを?」と。
窪田:そんな質問は、新橋のSL広場でサラリーマンにやればいいんですよ(笑)。
■あらかじめ質問を用意する記者
相場:ボクはブラ下がり取材というのが、あまり好きではありません。なぜならブラ下がるだけでは、たいしたネタが出てくるとは思えないから。しかしテレビなどで記者が話しかけているのを見ていると「お前ら、もっとちゃんと聞けいっ!」と思うことが多い。
上杉:ブラ下がり取材は上司から「こういうことを聞いてこい」と命令されるんですか?
相場:ブラ下がりだけでなく、会見でも命令されます。例えば「朝刊または夕刊で○○という見出しを立てる。閣議後の会見で大臣に対し、○○の質問をしろ」と言われる。そして各大臣のメモが、担当者から回ってくるんですよ。
上杉:会見前に、質問内容を準備しているわけですよね。ボクの場合、質問したいことがあっても、大臣の発言を聞いていて「あれ?」と思うことがある。そして、そのことについて質問する。大臣の言っていることがおかしければ、そこで突っ込みを入れるのが大切。しかしあらかじめ質問を用意している記者は、会見の流れを断ち切って、別のことを聞いたりする。全く関係のない質問をすることによって、“大臣を逃がすことがある”ということを彼らは分かっていない。
窪田:記者クラブに加盟しているメディアの記者は、自分の裁量で質問している感じがしません。もちろんテーマを持って取材している記者もいるとは思いますが、大多数とは思えない。あらかじめ紙面ができていて、キャップに「こういうことを聞いて来い」と言われている記者は「これだけは聞かなければいけない」という束縛感のようなものがありますよね。
相場:昔は「自分はどうしてもこのテーマで書きたい」という記者が多かったように思います。しかし紙面の関係で書けない場合は、ペンネームを使って雑誌などで書いていた。ただ最近では、そうした記者も少ない。
上杉:しかしそのやり方は、アンフェアですよね。多くの政治家は名前を出して堂々と答えているのに、聞いたこともないペンネームで書かれたりする。そしてインタビューした記者に「なんでこんな記事を書いたんだ」と問い詰めても、「自分は知らないです。ボクじゃないです」とはぐらかす。こうしたやり方は卑怯だと思う。
窪田:ということは、雑誌『選択』は卑怯者の巣窟ですね(笑)。
上杉:ハハハ。
窪田:卑怯原稿の塊なのですが、新聞記者的にはちょっとしたステータスになったりしている。「ちょっとオレ……『選択』に頼まれちゃったよ」といった感じで(笑)。
上杉:ボクはニューヨーク・タイムズに入った1999年以来、一度も匿名で書いたことがない。コメントも名前が掲載されない原稿については、一切協力しませんでした。でないと相手も反論のしようがない。なぜこのように対応しているかというと、秘書時代に“汚い”記者を散々見てきたから。
窪田:自分の名前を出さずに匿名で書くという行為は、官僚的なのかなあと思いますね。自分は安全なところにいるのにもかかわらず、「オレにも記者魂があるから、これだけは言わせてくれ」といった人がいる。だったら自分の名前を堂々と出せばいいだけのこと。
上杉:記者が集まっているバーに行くと、そのようなことを言っている人がいますね。ただ当事者が目の前に現れると、静かになったりする(笑)。例えばボクが会見に行くと、普段は気軽に話しているのに無視する人がいる。周囲の目が気になるんですかねえ。
窪田:その人は上司の目が気になるんじゃないでしょうか? 「お前、さっき上杉と何を話してたんだ」と聞かれたりするんで。
上杉:記者クラブ問題のときも多くの人から無視されましたが、今回の官房機密費の方が多いですね。それだけみんな怒っているのかなあ。

上杉×相場×窪田の「ここまでしゃべっていいですか」バックナンバー:
朝日新聞が、世間の感覚とズレにズレている理由(1)
政治家のフトコロから記者にカネ……メディア汚染の問題点とは(2)
“ブラックなカネ”と記者クラブの密接な関係(3)
あなたはモグリの記者ですか? そう感じさせられたエライ人の論理(4)
主要メディアが、官房機密費問題を報じないワケ(5)
新聞社の立派な建物が残り、報道が消えてしまうかもしれない(6)
大臣を逃がしている自覚がない? つまらない質問をする記者たち(7)

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小沢一郎「若者がネットを使い行動することに希望を見出す」/最後の大構想/大マスコミが伝えない憂国論

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小沢一郎氏 若者がネットを使い行動することに希望を見出す
NEWSポストセブン2011.12.28 07:00
東日本大震災や原発事故への対応を見れば日本の政治の無力さが際立つ結果となっている。その一方で、国民の側をただ手をこまねいていていいのかという疑問もわいてくる。政治ジャーナリスト渡辺乾介氏(『小沢一郎 嫌われる伝説』著者)が政府と国民の関係について小沢一郎・元民主党代表に聞いた。
* * *
――あなたが唱えてきた「自立と共生」の視点から、これだけ病み、傷んだ国土、国民、国家の震災後の在り方を語る時に、どういう再生の方向性があるのか。それは国民があなたに注目する大きな一つの視点だ。
小沢:日本には、市民の力によって政治体制を変えた歴史がほとんどないですから、自ら政治を動かそうという発想がなかなか国民の間に生まれてこない。ただ、インターネットの広がりとともに、政治に無関心であったといわれている若い人たちがかなり関心を持ち始めて、そして実際に行動するようになったんじゃないだろうかと思う。原発の問題もそうだけれど、年金の問題でも、掛け金(保険料)を払ったって年金をもらえるのかという先行き不安が現実に出ている。いずれも結局は政治の場で解決する以外にないわけだから、だんだん政治に対する見方が変わってきているんじゃないかという気がします。民主主義社会では、上からの革命というわけにいかない。国民が支持し、国民が支援してくれなきゃ改革はできない。今はほとんどの人がインターネットで情報を共有できるので、普通の人、特に若い人が行動するようになってきたことに、僕は希望を見出します。
――今の答えの中にあったが、年金と消費税がセットで国民生活を闇の中に押し込めようとしている。「国民の生活が第一。」という政権交代の理念と基本政策を、民主党は冷凍保存しようとしているのではないか。
小沢:僕が代表の時に掲げた言葉だから、嫌なんでしょう(笑い)。
 ※週刊ポスト2012年1月1・6日号


              

人間・小沢一郎「最後の大構想」
  週刊ポスト2012年1月1・6日号
 小沢一郎。この稀有で頑固な政治家の「人間」を解剖することは日本の政治の形、国家の形がどう変わらなければならないかを探るケーススタディといえるかもしれない。天の怒りに地の喜びが打ち砕かれた2011年3月11日。政治は荒れた大地に陽炎の如く輪郭を浮かべ、無為に時を重ねた。多くの国民は「動かない小沢」に焦れた。小沢封じの政治の病巣は現実と醜悪な乖離を見せつけた。何をしていたのかという挑みの問いに、小沢が「人の顔」で激しく語った。(聞き手・渡辺乾介氏 政治ジャーナリスト)
■震災対応で二つの「政治問題」
 2011年の掉尾を奮う時、東日本大震災を抜きにしては語れない。人々は地震と津波の襲来、息つく間もなく放射能禍に見舞われ、日常のすべての営みを断たれ、最愛の家族と生活の絆、仕事を失い、形骸だけを残した街を目の当たりにした。
  被災者は誰も人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟しつつ、絶望の悲嘆にくれる暇さえなく、生きる使命と希望に奮い立った。その姿は世界に大きな感銘を与えた。
 そして、政治と行政の力を求めたが、空前絶後に事態に機能不全に陥り、無力であることを知って、人々は自力で我が町、我が村を興そうと動き出したのだった。やがて恐る恐る政治がやってきた。遅きに失するばかりの復興対策である。被災者は惨状に只中にありながら、政治や行政にかまわず自助自立、相互扶助で苦難に立ち向かってきた。
 人災としての放射能禍は、政治が最大の障害というべき連関に人々を押し込め苦しめた。人民あっての政治が、政治ゆえに人々に立ちはだかる。
 一体、政治とは何なのか。未曾有の困難と混乱の大震災であればこそ「国民の生活が第一」という民主党政権の拠って立つ基本理念の実践、その真価が問われたのではなかったか。
  同時にそれは、政権交代の立役者であった小沢の存在理由であり、国民との約束の政治的価値そのものなのである。
だから、問う。
 震災直下で人々が、人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟していたように、政治家でありながらも、一人の人間として、小沢もまた被災地に立って何を思い考え、いかなる人たる呻吟をしていたか、である。
小沢:被災地の皆さんは非常に厳しい、そして辛い生活をずっと耐えて、長い間頑張ってこられた。亡くなった方々へのお悔やみとご家族へのお見舞いを申し上げると同時に、くじけずに頑張っておられる郷里の皆さん、被災地の皆さんに、心から敬意を表したいと思います。
 千年に一度の巨大地震、大津波というのでは、人知の及ばない面もある。そこは自然災害に対する今後の方策を考えていく以外にないんだけれども、政治的には二つの大問題があります。
 一つは原発。日本の再建だ、東北の再建だと言っていますけれども、放射能封じ込めに成功しないと日本経済の再建も日本の将来もない。福島第一原発の事故はマスコミでは喉元過ぎればで、なんだか風化したみたいになってますけれども、日本人的な現象で非常に危険だと思います。
 この放射能については、なんとしても完全に封じ込めないといけない。そのためには、どれだけお金を使ってもやむを得ないし、封じ込めの先頭に立つのは国だ。ということを僕は言い続けてきたんです。事故の現状は、東電が第一義的に責任者だからといって、東電にやらせていいという状況を超えている。国が自ら先頭に立って、主体的にやらなくちゃいけない。
 原発による被災者の皆さんの生活の問題と同時に、放射能をいかにして封じ込めるか。水をかけて「冷温停止状態を達成した」なんていたって、永久に水をかけ続けるのか?今になって、核燃料が圧力容器からメルトスルーして、もうすぐ格納容器の底のコンクリートを抜けるかもしれないなんて、呑気なことを言っているわけですね。
 震災の2、3日後には、熱工学の学者をはじめ客観的に事実を見ている人たちは、必ず炉心は壊れていると言っていた。燃料も必ずメルトダウンしているとわかっていたわけですよ。それにもかかわらず、政府は2ヵ月後にようやくメルトダウンを発表して、そして最近になって落ちたウラン燃料がコンクリートを侵食して、底を突き破るまであと30何センチだなんて言ってるわけです。あれ、突き抜けて土の中に入っちゃったら、汚染の拡大を止められなくなりますからね。
 それをまず徹底的に封じ込めないといけない。それは国家、政府が先頭に立ってやるべきことです。
 もう一つは統治の機構。この機会に「地域主権」を確立すべきですよ。
復興のための補正予算などで金銭的な手当ては一応してあるんだけれども、その使い方は相変わらず旧来と同じ公共事業でしょう。今まで同じパターンで補助金を出すやり方だから、仕事は遅いし無駄が多い。
  政府は地方の再建、東北の再生なんて言っていますが、これを機会に我々が主張してきたように中央省庁が仕切る補助金の制度を、地方自治体が自由に使える一括交付金の制度へと変える。これだけの大被害なんだから暫定的にでもやるという理屈も成り立つ。好きなように使ってよいというお金をもらえれば、もっと早く、もっとたくさん仕事ができると言うんですよ。(被災地の)知事も市町村長もそう言う。
 相変わらず予算を貰うには、いちいち中央の役所から査定に来る。学校つくるにも、仮設住宅つくるにも、海岸つくるにもすべて中央が査定して、霞ヶ関へ持って行って、そこでまた検討して、やと補助金が出る。しかも、旧来の役所のメニューにある事業、やり方しか対象にならない。
 私は、今こそ民主党が政権交代で訴えてきた補助金制度の改革を断行して、一気に「地域主権」を確立すべきだと思う。中央集権の霞ヶ関一極集中の統治機構を変える絶好の機会だと思っているんだけれども、そういう発想はまったく出てこない。非常にジレンマと苛立ちを感じています。
渡辺:あなた自身、大震災が発生して現地に入るまでどういう気持ちだったのか。
小沢:かつてないほど多くの方が亡くなった。僕は昔から浜も何もかも歩いて知っているから、どこがどうなったかはわかる。しかし、生きている者は町づくり、村づくりをしなくちゃいかんから、そっちの方に目が向いた。僕はどのようにして復興財源を賄うかとか、どういうふうに直せばいいのかとかいうことを考えなければならない。だから、達増拓也岩手県知事とはずっと連絡を取り合って協力しながらやってきた。
 実はあれだけの大津波にもやられなかった浜があるんですよ。岩手で2ヶ所かな。明治時代に津波にやられた教訓で、昔の村長さんが主導して高台に全部移転していたんだ。それが今回幸いした。だから同じ金を掛けるにしても、そういうことまで考えて、根本的な浜の町づくりをしないといけない。
■「もう帰れない」と伝える責任
渡辺:被災者の人たちが、苦悩、苦難、困難を抱えながらも自分たちの手で何かやらねばならないという、この大衆のエネルギーを政治が汲み取ろうとしないところが悲しく虚しい。
小沢:今回、一般の人たちがお互いに連帯していろいろな救助活動や復興活動に立ち上がった。これは日本人のとてもいいところで、みんなが感動した点だと思う。
  一方、地方はいちいち中央の霞ヶ関の許可をもらったりするのが面倒臭くてしょうがないと思っているけれども、それが政治的な運動にならない。そこが日本社会が他の国から遅れているところですね。大きな変革を起こせない理由でもある。本来ならば、特に福島県の人たちなんか、全県民が上京して、霞ヶ関を取り巻くぐらいの筵旗(むしろばた)デモを起こしてもよさそうなのに日本はそうはならないんだね。
渡辺:外国なら暴動が起きても不思議はない。
小沢:政治に何をして欲しいんだというものは必ずあるはずです。それが政治の変革を求める運動に繋がっていかないのが、日本社会の最大の問題だね。
渡辺:元ソ連邦大統領のゴルバチョフ氏は回顧録で、チェルノブイリ原発の事故について「わが国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことを見せつける恐ろしい証明であった」と書いている。福島原発も同じ問題を内包していると思う。
小沢:溶けた核燃料を取り去るなんて工程表に書いてある。でも、どうやって取り出すの?それをどこへ持っていくの?何も方策がないのに、そんなことを文書にだけ書いてどうするんだ。そういう意味のないスケジュール表みたいなのを作ったって、何の役にも立たないと僕は思う。
 それをこのままに放置しておくとなると、今を生きている我々が末代まで責めを負わなければならない。
渡辺:戦争以外であれだけの領土を事実上、失うことは大変な事態です。
小沢:(大きく頷いて)まさにそうです。
渡辺:それだけ重大であるという意味が、政・官・財、大メディアにも共有されていない。
小沢:原発から20キロだか30キロのあたりで、これ以上放射能が拡散しないという保証があるならいいけれども、もっと拡散するかもしれない。まだ政府はなんとなく避難した人たちがいずれ故郷に帰れるみたいな話ばかりしているでしょう。だから避難した人たちは、もしかしたら帰れるかもしれないと思って新しい生活設計ができない。中途半端で宙ぶらりんの状態になっている。これは政治の一番の罪だと思う。
 事実上、放射能の強い地域には帰れない。だから、被災者にはきちんとそう言って、新しい生活に対して支援をしていくべきです。みなさん、それぞれ生活設計をしてください、帰るのは当分考えられる限り無理です、ということをじはっきり言わないと避難している人たちに対する裏切りというか、背信、嘘つきになっちゃう。
■増税せずとも当面の金はある
渡辺:被災者も国民も、政治は国民のために動いていないと怒っている。たとえば、原発事故では被曝予測システム「SPEEDI」の情報を隠し、復興を口実にして国民に負担増を強いる。この震災の結果責任の悲劇的なところだ。
小沢:自分が担当している間は無難に過ごせばいいという事なかれ主義、悪い意味の官僚的発想なんですね。誰も泥をかぶらないで、かわい子ちゃんでいたい。官僚だけでなく政治家もそうなっちゃったということですね。
渡辺:あなたが唱えてきた「自立と共生」の視点から、これだけ病み、傷んだ国土、国民、国家の震災後の在り方を語るときに、どういう再生の方向性があるのか。それは国民があなたに注目する大きな一つの視点だ。
小沢:日本には、市民の力によって政治体制を変えた歴史がほとんどないですから、自ら政治を動かそうという発想がなかなか国民の間に生まれてこない。
  ただ、インターネットの広がりとともに、政治に無関心であったといわれる若い人たちがかなり関心を持ち始めて、そして実際に行動するようになったんじゃないだろうかと思う。原発の問題もそうだけれど、年金の問題でも、掛け金(保険料)を払ったって年金をもらえるのかという先行き不安が現実に出ている。いずれも結局は政治の場で解決する以外ないわけだから、だんだん政治に対する見方が変わってきているんじゃないかという気がします。
 民主主義社会では、上からの革命というわけにはいかない。国民が支持し、国民が支援してくれなきゃ改革はできない。今はほとんどの人がインターネットで情報を共有できるので、普通の人、特に若い人が行動するようになってきたことに僕は希望を見出します。
渡辺:今の答えの中にあったが、年金と消費税がセットで国民生活を闇の中に押し込めようとしている。「国民の生活が第一。」という政権交代の理念と基本政策を、民主党は冷凍保存しようとしているのではないか。
小沢:僕が代表のときに掲げた言葉だから嫌なんでしょう。(笑)
渡辺:政府・与党の中枢部は事あるごとに「国民にも痛みを分かち合ってもらう」という言い方をするが、安易に復興税だ、消費税だとのめり込み、返す刀で年金支給年齢引き上げを画策したりと、国民負担増だけに政治の軸足を置いている。
小沢:これは民主党だけでなく、自民党も同じなんですが、自分たちが唱えてきたこと、選挙に国民に訴えたことは何だったのかということをまったく忘れている。
 先日も政府に入っている議員10人ぐらいと会合があったから話してきたんです。「今の時点では、それぞれの役目をこなす以外にないけれども、我々は古い仕組みを変えるんだと主張して政権を与えられたんだから、そのことを頭において仕事をしないといけない。役人の言うことばかりを聞いていたら、国民から自民党以下だと言われる。それだけは忘れないでくれ」とね。
渡辺:「痛みを分かつ」というのは、変節政治家と官僚が自分の無能を隠蔽する常套句だ。あなたは消費税の増税について非常に厳しく批判し反対している。
小沢:我々は総選挙で、特別会計を含めた国の総予算207兆円を全面組み替えて、国民主導の政治と地域主権の社会を実現すると国民に約束して、政権交代を認めてもらった。その理念、主張をまったく忘れちゃって、今までと同じやり方で予算編成を行っている。各省庁の要求を集めたものが総予算ですが、それが前年度の大枠よりちょっと出ていれば一律のカットするというだけのことで何も変わっていないわけです。
 我々はそれを変えて、政治主導で国家予算の総組み換えを断行して行政の無駄を省き、中央集権の官僚支配を打破することによって、必要な財源も生み出していくと主張した。それで民主党は政権をいただいたんですよ。なのに何もせずに役人のペースにどっぷり浸って「お金はありません。だから増税です」という話しか聞こえないわけだね。これじゃ、国民の理解は得られない。
渡辺:政府・与党は消費税を5%上げて社会保障、年金財源にするという名分を掲げているが、本当にそうなのか。5%上げると、税収は約13兆円増える。ところが、今年7月に閣議了解された「社会保障と税の一体改革」の成案によると、13兆円の税収のうち、社会保障の充実に回るのは消費税1%分の2・7兆円。うち年金分は6000億円に過ぎない。つまり、消費税は倍に上げても大半は何に使うかわからない。痛みを分かつと言いながら、これではまた官僚に好き勝手に利権食いされるような心配が先に立つ。それが消費税増税の最大の問題点だと思う。
小沢:消費税増税を言う前に私は「当面の金はまだある」と言ってます。増税せんでも財源はある」と言っているんだけれど、誰もそれを言おうとしない。
  僕はずっと所得税減税を主張していて、そのためには間接税の消費税の引き上げはいずれ検討しなくちゃいけないかもしれない。それは否定していないけれども、なんの政治理念もなく、何の努力もせずに「痛みを分かち合ってください」というのは詐欺的行為だと思います。税制論議以前の問題だね。
渡辺:消費税アップの「社会保障・税一体改革成案」は7月に閣議了解したといわれているが、実際は与党の国民新党が反対したために閣議決定できず、閣議了解さえもできていない。「閣議報告」という形で当時の菅内閣は発表した。だが、政策だけは既成事実となり野田首相はいつの間にか「もう決定した」みたいなことを言う。行政の正しい手続きすらない。
小沢:野田さんが本当に国民のために、お国のためにそれが必要なんだ、それはこういう理由からだとちゃんと説明して、自分の政治生命を懸けるという決意がはっきりすれば、まだ国民はそうなかなという気持ちになるかもしれない。けれども、上げた消費税を何に使うのかもわからない。ただ闇雲に消費税、消費税と言っているようにしか見えないから、絶対に国民に理解されないと思います。
渡辺:あなたは優しいからそう言う。(笑)でも、野田首相が今の状態でいくら説明し、決意を述べたとしても納得できない。
小沢:いや、僕も賛成しないですよ。
■増税推進なら「他の手段」を考える
渡辺:先ほどの一体改革成案には、現在65歳の年金支給開始年齢の68〜70歳への引き上げが盛り込まれている。増税が年金充実のためというなら、給付が手厚くならなきゃ辻褄が合わないのに、70歳支給になったら、国民の老後は真っ暗になる。現在、厚生年金の平均受給額は月に約16万円だから、支給開始が5年引き上げられると1人当たり1000万円の減額になる。
 それだけでも空前の年金カット計画だが、なぜそれが必要なのか。厚生省年金局の「年金検証結果レポート」によると、年金財源に厚生年金で500兆円、国民年金で50兆円、合わせて550兆円の債務がある。1人1000万円ずつ年金を減らすと、厚生年金加入者は約3444万人だから344兆円が浮く。さらに、これから厚生年金に加入する19歳以下世代の削減額を含めると、550兆円の債務を帳消しにできる。いかにも役人らしい悪巧みが潜んでいることを『週刊ポスト』は指摘している。
 これが「国民の生活が第一」を掲げて政権交代した民主党内閣がやろうとしている消費税増税と年金改悪の二重詐欺です。あなたの消費税増税批判はちょっと中途半端じゃないか。
小沢:我々は年金制度を根本から変えて一元化すると主張している。月額7万円前後の最低保障年金は消費税を全て充てて安定させ、その上に報酬比例年金を設けて、2階建ての新しい年金制度を作ると提案した。
 ところが、それについても政府は作業をしていない。国民との約束をまったく顧みないで、支給開始年齢だけでなく、掛け金まで上げるというのだから、僕は本当に詐欺、裏切り行為だと思う。消費税も年金も所得税も国民負担を増やすという話には僕は到底賛成できない。
渡辺:大新聞も支給開始年齢の引き上げを叫んでいる。いわば内閣と官僚と大新聞の共同正犯行為による詐欺みたいな形になっている。
小沢:ただ、国民はかなり情報を正確に知るようになってきている。国民が情報を得る手段はもうテレビや新聞だけじゃない。いずれ国民に鉄槌を下されると僕は思います。
渡辺:公約に対して忠誠を誓うという意味において、先の大阪のダブル選挙、あるいはその前に愛知のトリプル選挙で当選した市長・知事たちの、有権者に対する死に物狂いの公約実現の努力をどう見るか。民主党も国の仕組みを変えると言ったけれども、今に至る政権の姿は橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長と真反対です。
小沢:彼らが頑なに自分の主張、市民との約束を徹底して実行しようとしているということは、まず間違いないと思います。
 それに反して民主党政権、そして今の自民党も、市民感覚からはもう駄目だと思われている。だから、荒っぽいかもしれないけれど約束は守る、国民のためには旧体制を壊さないと駄目だ、という橋下さんや河村さんに期待する結果になったのは無理もないと思う。
渡辺:その意味では、あなたはもう一度総選挙でその動きを作り直すしかない。
小沢:橋下さんは府庁舎や市役所そのものをぶっ壊さないと本当の改革はできないと主張している。僕も旧体制、アンシャン・レジームをぶっ壊さないと新しい世の中はできないとずっと言い続けてきた。それゆえに「壊し屋」とみんなから非難されているけれど、橋下さんはまだそういわれていないようだから、それだけでも彼はたいしたもんじゃないの。(笑)
 予算編成のことを例にして言いましたけれども、自民党政権のときとずっと同じことをやってきておいて、金がない、何がないのと言ったって始まらないんです。
渡辺:民主党がアンシャン・レジームになってしまった。
小沢:(苦笑しながら)そうなんだよね・・・。
渡辺:その民主党をどうやってもう一度ぶち壊すのか。
小沢:僕は現時点においては、野田さんが初心に帰り、政権交代の原点に思いをはせて、そして是非「国民生活が第一。」の政策に戻って欲しいと、ひたすらに望んでいます。そうしなきゃ民主党政権に明日はない。必ず国民から見放される。
渡辺:すでに今日もない。
小沢:ん?今日もないけれども。(苦笑)
渡辺:次の総選挙で「今度こそやります」と訴えたからって国民は民主党を・・・。
小沢:それは信用しない。
渡辺:政策を担保する何か、あるいは覚悟が本気だと思ってもらうための新たな努力が必要ではないか。
小沢:さっき言ったように、僕は野田さんがまず「国民の生活が第一。」の理念に基づいて、しっかりしたビジョンを語るべきだと思う。それがまったくないまま、ただ増税だけを推進しているとなると、民主党政権は滅びる。かといって自民党政権に戻ることもない。日本はぐちゃぐちゃのカオスの状況に入ってしまう。
渡辺:国外に目を転じると北朝鮮では金正日が死亡し、東アジア情勢が流動的になってきた。
小沢:突然のことで大変驚きました。核開発の問題もありますので、日中韓をはじめ関係各国が緊密に連携して、不測の事態に対処しうる体制を早急に構築することが肝心だと思います。
渡辺:選挙までの残り任期は少ない。今の政権が原点に戻らない場合、あなた自身はどういう覚悟を決めるのか。
小沢:その時は他の手を考えなきゃならない。
渡辺:その手段とは。
小沢:今、具体的にどうこう言うわけにはいかないけれども、今の政権がどうしても(原点回帰は)だめだといったら、僕も国民を裏切ることになってしまう。それは困るし、それによる日本の大混乱も防がなきゃならない。何らかの方法を考えなければならない。
渡辺:そのカオスを突き抜けるところで、あなたにとって2012年は相当過酷な年になる。
小沢:最後のご奉公です。文字通り「最後」です。
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大マスコミが伝えない小沢一郎 憂国論2011-10-08 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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日本を語ろう フツーの市民vs小沢一郎/最も国民の生命、財産、人権を守るべき裁判所/民主主義国家/2011-10-05 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 ■今回の判決について
小沢; この間の判決は大変びっくりしました。というのは、独裁国家でとにかく気に入らんヤツはみんな有罪にしちゃえという社会なら別ですが、「法と証拠」、いわゆる民主主義国家で何の証拠もないのに裁判官が独断で、その推測に基づいて有罪を決めてしまうというのは、ちょっと民主主義国家では考えられない結果だったものですから、ほんとにびっくりしております。
 今度の私と私の政治団体に対する最初の捜査から、なんか僕が不正なカネを貰っているに違いないという前提で捜査が、しかも強制捜査が突然始められたわけですね。
 中味は結局1年以上かかって調べても、そういう問題はなかったという検察の結果で、そうすると残ったのは何かというと政治資金収支報告書の書き方の話なんですね、ここに書けばよかった、こう書けばよかったと、いう類の話で、そういうことは、ずっと何百件、何千件と、事務的間違いですから、仮に間違いだったとしても、いっぱいあって、大概それは修正報告で全部許されて、許されてというか当たり前なんですけれどもそこの中に他の犯罪が絡んでいれば別ですけれども、収支報告の書き方の問題なんかは、そもそもそういう強制捜査とか、検察の捜査になじまない、いわば指導して修正すればいいわけですから。
 そういう結果だったから結局は、検察も起訴するには至らなかったということだと思うんですけれども今度の裁判は、結局、それを不正な金銭の授受があったんだということを推測で前提にしてしまって、それで、有罪だと、こういうふうに決めちゃったものですから、なんていいますか、二重にですね、びっくりしました。
 私自身が何としてもこの国を変えなくちゃいけないと、まあ、日本人自身の意識も含めて今までのままではダメだと、国民の生活を長年にわたって、将来にわたって安定させ、守っていくためには変えなくちゃいかん、というのを強烈に思ってますので僕自身。
 ということは、旧来の今までの体制を変えるということになるますね、制度とかいろんな仕組みとか行政であれ、何であれ。
 それは今までの体制の中で、既得権を持っていた方々にとってはものすごく、ある意味で恐怖といいますか、あいつだけは許せない、あいつだけは国政の先頭に立たせてはいかんとという意識が働くんじゃないでしょうか。
 ですから、民主党に所属してますから、そして民主党内閣ですから、今は民主党うんぬんということになりますが、民主党というよりたぶん、僕自身だろうと思います、その彼等の狙いは。
 僕個人云々というよりも、こういうような民主主義国家と言われている、あるいは自負している国で、社会でこういうような事が起きると、こういう裁判が行われているということが非常に心配ですね、行われたということが。
 ですから、誰かがあれをおとしいれてやろうと思ったら、あいつはこうこう、こういうことしたと、いうとその一方的な意見だけで、じゃあ、判決が、裁判が左右されちゃうのかということになったら、本当にもう暗黒社会になっちゃいますね。
 ですから、その意味で僕自身どうのこうのではなくて日本の社会、最も国民の生命、財産、人権を守らなければいけない裁判所までが、そういうようなことになってしまっている、まあ、劣化っていうんですかね、なんか、そういうふうになっちゃっているっていうのが非常に心配ですね。
■民主主義国家とは
小沢; 民主主義ということの実態はそれぞれの国や地域において、必ずしも同じではない。どこから始まったのか。ギリシャからという人もいれば、ゲルマンの森という人もいるし、イギリスという人もいる。
 日本は日本人の歴史や風土にあった民主主義国家であればいいと思う。そういうことを勘案した上でも、日本は本当の民主主義国家になってない。日本人自身が認識しなければならない。
 結局はお上信仰が残っている。何かあると政府が悪い、あれが悪いと、そういうこともあるが、それに全部負わせている。一人ひとりが自立した個人であることが前提。日本人はどうしても歴史的に豊かに過ごしてきたから余り波風を立てないで、丸く丸くと。自己主張を軽くして満場一致でやればいいという考え方が強い。
 「和を以て・・・」というが結果は誰も責任をとらない。誰が決めたか分からない、なんとかくみんなで決めて、それがうまくいかなかったら、誰も責任を取らない。そういうような風土というか風潮が日本社会にはある。しっかりと自らの判断や責任を大事にする相手の判断も大事にすること。そういう意識改革をしていかないと、民主主義が根付かない。
 特に戦後日本がアメリカにいろいろな意味でおんぶにだっこだった。そのほうが楽、気楽でいい。特に戦後芽生えてしまい、何かあったらカネを出せばいいと。
 それはアメリカからも軽蔑される。独立した国家だと認められない。日本の特質・・・そうした経緯で歪んでしまった。
 戦後も敗戦のどん底で全てアメリカの技術や経済をもらって、市場も開放してもらってある意味しょうがなかった。
 今はアメリカ自体がおかしくなっている。世界全体が安定した時代ではない。
 今の生活を享受しながらしかも平和にやっていこうというならば、自分自身が努力し、意志をもっていかないと、安定した平和を維持できなくなる。
小沢; 議論しなくても日本は平和で豊かに暮らしてきた。古代もはるかに大陸よりも豊かだった。みんな平和に愉しく豊かに暮らしてきた。自己主張するなという風土ができあがった。
 今はそういう時代ではなくなった。
 日本人はどうしても意見をガンガン言い合うと感情的になって喧嘩になる。ですから日本の社会は、多数決というものは絶対しない。会社でもどこでも、多数決というのは、しない。政治でも組合でもしない。執行部に一任してくださいとなる。一致しなかったら、ずっと議論をやるわけにはいかない。
ここを直さなければならない。
 ぼくは日米交渉を3回した。アメリカの指導者が日本を信用しないのは意見を言わないから。「前向きに検討する」といわれOKだと思ったらNOだったと驚いている。
 日米同盟というが、アメリカは日本を信用していない。大事な決断を日本はしない。何かあるとアメリカに聞きに行く。
■メディアとネット
小沢; またテレビ新聞のことを批判すると、あれなんですけど(笑)。ネットもそのままを流してくれる。テレビ新聞で何をしゃべってもその通り伝えない。こういったけど実はこうだと、全部偏向した報道したものになる。国民のみなさんに真意が伝わらない。正確に伝えて、良いか悪いかは国民のみなさんが判断してくれればいい。
■民主主義の手だて
小沢; 官が全てを治めていたからでしょうね。官主導で中央集権で、全ての権力が官僚機構に集まってますから。どうしてもその人たちのやり易いように解釈するし面倒くさいことはなるべくさけたい。
 それを解決する一つは地方分権で、身近な問題は地方に任せる。
 そう言うと、「地方にカネも権力も任せたら酷いことになるんじゃないか」といわれるが、それは傲慢すぎる。仮におかしな問題が出たら、地方のほうが住民からのチェックが効く。国家だとわからない、霞が関で何をしているか。だからチェック機能が働く。
 国は外交や防衛に専念する。天下国家のことを議論する。君らは青春を犠牲にして一所懸命勉強して官僚になった。なんでそんなチマチマしていることをしているんだと。もっと天下国家のことをやればずいぶんよくなる。
■陸山会裁判の判決は法治国家の終焉 日本は独裁国家 証拠も確たる証言もないところで裁判官が推測で有罪だと、あるいは天の声があったと、ゼネコンからの1億円の闇献金があってそれを受取ったと。単に三人の証言なんですよ。西松建設事件は東京地検特捜部が1年以上かけて100人以上の検事をおそらく税金を30億円以上使ってるんですね。それで徹底的にゼネコンを強制捜査して叩いたんだけど何も出てこない、立件できなかった。立件できないことを別の裁判で、それが訴因でもないことなのに、1億円をあったと勝手に認めた。
■東日本大震災 原発
小沢; それぞれ内閣の総理以下、役所も一所懸命やっていると思いますが、こういう今までないような災害ですから。
 私も災害県岩手県の出身の一人ですが、内閣が先頭に立ってあらゆる手段を講じて復興しなければならないのは当たり前ですが、自然災害、これはもっと復興のためにやれとか金をつぎ込めということはありますが、幸い生き残ったものがお互い力を合わせて、街づくりをする、自分たちの生活を立ち上げるというのが十分可能だが、原発の問題だけは一般の人がどうしようかと思っても出来ない話ですし、このままだと前から言っているが、これを放置していれば日本の復興とか再建とかはありえない。
 仰るとおり溶融して解けたものが下に落ちてますし、大量の燃料があるわけです。水で冷やして一所懸命冷やしてを爆発を止められたとしても、燃料がそのままのこっている。地中で、地下水にいったり海水にいったり、空気中にもウランがあるんですから出てるんです。
 菅さんの時から言っているが、みんな東電の責任ばかり、第一義的には東電なんですよ。「悪いんだ。悪いんだ」と言っても何も解決しない話なんです。ですから国家的な深刻なはなしですから政府が表に立てと。
 今の仕組みは東電が前に立って、お金なり何なりを政府が東電に対して支援するかたちになっている。そうじゃないと、まずは原発そのものを知恵を集めて封じ込める。
 これは何兆かかろうが何十兆かかろうがやんなくちゃならないんですよ。それも政府が直接、前面に出てやると。
 近所の人は、いずれ帰れると政府もいっているが、帰れないんですよ、ほんと近い人は。そうすると、新しい生活を始めなきゃならないわけですよ。ところが帰れるようなことを言うものだから、新しい生活を違う場所でやろうという気持ちにならない。なんとなく、帰れるだろう、帰れるだろうということになって、結局は不安定なまんま。仰るように、棄民、置き去りにされ、捨て去られたようなかたちでいっぱい多くの人がいるということですから、やっぱり本当に当分は、ここは住めないと、住めないと、
そこにおった人たちに対しては、キチンと生活の安定、これからの生活を支援するために政府が全部やりますよ、ということを生活面でやらなければならない。
 あるいは生産、農林水産、いろいろありますけれども、そういう一般生活の面でも、ぼくは政府が、これいっぺんにはできないですよ。これ莫大な金額を要しますからね。
しかし、現実に今生活がこれじゃあおくっていけないという人が出てきちゃってわけですから、そういう人たちに対する生活の支援というのは、当面、政府がやっていくというのは必要だと思います。
 何よりもだけどこの原発をね、まあいろんな知恵を出せば、封じ込めることが可能だというふうに聞いております。ですから、これはやっぱり国家が、内閣がそのトップは総理大臣が、やっぱり決断してね、やるべきだと私は思いますね。
 さっき言いましたようにね、日本には最終の決断する人がいないんですよ。その立場にある人でさえ、最終決断をしないわけですね、なるべくしないようにしている。
 だから自分で責任を問われるのがどうだこうだとか、そんなことを心配している状況ではもうない、というふうに私は思いますので、野田総理には蛮勇をふるってでも、大いなる決断をしてもらって
是非、積極的な、それこそ、今の問題だけではなくて将来にわたってずっと影響があることですから、是非、やってもらいたいと思っています。
■小沢さんがもし即時全基停止して廃炉といえば、ある意味、日本に革命が起きるんじゃないか
小沢; 僕は原子力というのは過渡的なエネルギーだということを最初から言い続けてきたんですが、若干、私も含めまして日本人が、原子力は安全で安く発電できるという、その神話に安住し過ぎたきらいがあるんじゃないかなと、そう思っています。ですから、こういうことを契機にですね、ほんとにエネルギー政策を考えなくてはいけない。
 過渡的エネルギーだという以上は、いつか止める話になりますが、今、全部・・・、正確に試算してみないと、国民みなさん、特に生産活動や何かに障害が生じなければ、原子力やる必要はないと思います。
 ただ、国民みなさんも電気の消費やいろんな意味で利便を享受しているわけですね。だから、原子力は嫌だけど、電気はいっぱい使いたいとか、いう話になっちゃうとそれは不可能な話になりますから、そういう意味でお互いが生活をちゃんと考えた上でどこまでどうやれるのかとはっきりわかりさえすれば、私は可能なことだと思っています。
 まあ、いずれにしても、ドイツは11年後に止めるということを決めました。ただドイツの場合は、ものすごく品質のいい石炭や、その他いっぱいありますからね。ドイツのように日本もいけるかどうかはわかりませんけれども、やっぱり自然なクリーンエネルギーの開発を少し怠ってきたという、ツケがですね、出たんじゃないかと思いまして、できれば、だから原発というのは精査してみて、国民みなさんが「よし、それでいこうや」という合意さえできれば、止めていいと思いますね。
 情報を国民皆さんに開示してこなかったというのは事実だと思います。
 爆発の直後からいわゆる国の原子力に密接に関わっているひとは別として、専門の客観的な学者の方々は、もうあれで完全に炉もメルトダウンしているし燃料もそうなっているに違いないと、いうことを最初っから言ってましたね3月の時点から。だけど「そんなことない、そんなことない」と言い続けて、三ヵ月後ですかね、やっぱりメルトダウンして今度はメルとスルーしていると。これはもうほんとに、やっぱり政治家が、それなりの責任をもって、情報をきちんと出すということは、原子力は特に命に関わることですから、何としても必要だと思いますね。
 ただ、さっき言ったように出して、情報によって起った責任をどうしようとか、じゃあ出すのはいいけれども、どういう対策をおまえは持っているのかと言われたらどうしようとか。そういう話になっちゃうもんですから、結局みんな事なかれの形に落ち着いちゃっている、というのが今の政治・行政の一番欠点だと思いますね。
■ビデオレターの配信して、ユーチューブに定期的に出して。小沢さんが考えていることがわからない。アメリカの茶会派のロンポールさんは75歳ですが、毎日ビデオレターを出していて世界に配信している。それを見てみんな支持している。TPPなどテーマごとに。こういった座談会も月一でやっていただけると。500人から1000人の大集会をやってほしい。
小沢; はい、はい。考えます。
 民主党政権が果たして2年前の国民の皆さんの熱狂的な支持に、今までの2年は振り返らずに、これからの2年でありますから、ここでほんとに信頼を取り戻せるような、政治をちゃんとやれるかどうか、それを国民皆さんも、また私たちもキチッと見つめていきたいと思います。
 それと今もう一つ心配なのは経済なんですね、やっぱりEU、ユーロの危機は救済のあれがドイツでも可決されまして、一応、当面回避された形になってますけれども、決してそれは根本的な解決になってないんで、ぼくは、いずれ通貨危機ユーロ、それからアメリカの不景気、これは全世界的なものになる恐れがあると思ってます。
 ですから、国内では一番、原発の問題を抱え、ここに通貨、金融恐慌そして世界恐慌的なものが一緒になってきたら、とてもじゃないけど、それこそまだ民主主義も十分に成長して無い日本ではヒッチャカメッチャカになっちゃう可能性があると。
 そしてその時に、やはり一番、僕はこれも前から心配していることですが、国内では、政治不信、政党不信、政治がゴチャゴチャになると、必ず日本では極端な議論がおきます。これを一番してるんです。
 やはり極端なナショナリズム、あるいはテロリズムが加わったり、そういう国内の日本人の心理的にものすごく不安定な状況になることが一つと。
 それから、国外のことではユーロなど、経済的危機でも政治的動乱にはつながりにくいですね、欧米のあれは。ただ、中国の場合は、今ちょっと調子悪くなってきてましたね。それから自由、政治的自由を求めている運動に対してすごい弾圧を加えております。
 しかし、ここでね、バブルが弾けちゃったらもう権力で弾圧したって、何したって、とてもじゃないけど止められないですよ、大衆の動きは。そうすると中国が政治的動乱になる恐れあると。
 僕は、中国の指導者にも面と向かって言ってきてますけどね、「共産党独裁と自由経済、そして民主主義というのは両立しないと、かならず矛盾が起きるよと、コペルニクス転換をあなたがたがするなら別だけど、多分できないだろうと。必ず共産党独裁は崩壊するよ」と、言ってるんですよ、幹部の連中に、ウン、と頷いてますけども。だけど本当に深刻な話になるんですよ、そうすると。
 だからその意味で、そういうことにならないように日本が中国を助ける必要もあるし、日本が他人様を助けるためには日本自身がしっかりしなければならないし、そういう、いっぺんにいろんな問題が重なってきちゃうということがあると、今の日本の何やかや色いろ問題を抱えていながらも、みんな一定の生活を維持してやってるわけだけども、これができなくなる恐れもあると、ということで非常に心配をしております。
■陸山会事件なんかがなければ、「小沢首相」。今も続いていた。
小沢;
 ぼくもね、皆さんのご期待に添える力があるとは思っていませんが、ただ、自分がそういう立場に立ったらば自分の責任やら、責任回避あるいはなんていいますか、ポジションだけにすがりついたりという類のものだけは絶対したくないし、しないでやりたいと、その気持ちだけは持っております。 

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