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小佐古内閣参与、辞任/政治とカネ/尖閣問題・・・官邸圧力 国民の命よりも情報隠匿による政権維持

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〈来栖の独白〉
 放射線安全学の小佐古敏荘東大大学院教授が内閣参与を辞任した。政府のリスク管理、とりわけ福島県内の子どもの被ばく線量の上限を年間20ミリシーベルトとしたやり方に懸念を示してのことだ。
 が、辞任の理由は、それだけではないようだ。記者会見に関し、官邸事務方から「守秘義務がありますから」と圧力をかけられたとも囁かれている。むろん、枝野官房長官も細野首相補佐官も、圧力を否定したが。
 被曝線量のみならず、原発すべてについてデータの「秘密」などあってはならない。国民の生命に関わることだ。国民には、知る権利もある。秘密は許されない。
 振り返るなら、菅政権は実に多くのことを国民の目から隠し、隠し偽ることで政権維持に利用してきた。「政治とカネ」の問題、尖閣問題・・・。そして今回は、国民の命に関するデータを隠匿しようとしている。
 警戒区域とされた原発20キロ圏内、住民はもとより一般人の立ち入りが禁止となった。ここで何が起きているか、国民は一切、知ることができなくなった。「知る権利」が脅かされている。独裁が進む。「秘密」の政権が、いよいよその正体を現してきた。
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内閣参与辞任 安全最優先で議論を
中日新聞2011年5月4日社説
 福島第一原発事故への政府の姿勢に抗議して内閣官房参与が辞任した。放射能のリスク管理をめぐり、政府が混乱しては国民の不安を招く。政府が設けた学校の放射線量基準には合理性があるのか。
 辞任したのは、菅直人首相が起用した放射線安全学を専門とする小佐古敏荘(としそう)東大大学院教授だ。放射能をめぐる政府の対応を場当たり的だと涙ながらに批判した。
 国の原子力政策を担う原子力委員会の専門部会委員でもある。放射線防護の碩学(せきがく)の涙は重く受け止めるべきだ。
 とりわけ小佐古氏が強い懸念を示したのは、福島県内の学校での被ばく線量の暫定の上限を年間二〇ミリシーベルトとした政府のやり方だ。
 子どもが一日のうち八時間を屋外で、十六時間を屋内で過ごすと仮定して逆算し、校庭の放射線量が毎時三・八マイクロシーベルト以上ならば屋外活動を制限するとしている。
 この目安は原発作業員の普段の年間被ばく量の上限に相当し、高すぎるという。小佐古氏は「学問上の見地からも、私のヒューマニズムからも受け入れがたい」と猛反発して引き下げを求めた。
 政府が目安を決めるのに助言を求めた原子力安全委員会が、小佐古氏のような意見を踏まえてどういう議論を交わしたのか見えないのは残念だ。
 「差し支えない」との結論を出すまでに、さまざまな意見が出たに違いない。しかし、正式な委員会は招集されておらず、議事録がないから確かめようもない。
 子どもの健康を左右しかねない大事な目安をぞんざいに扱ったとのそしりは免れまい。責任の所在が曖昧なのも問題だ。
 広島や長崎の原爆の研究によれば、一〇〇ミリシーベルトの放射線を浴びると、がんになる確率が0・5%増える。ところが、それ以下の被ばく量の影響は明確ではない。
 ただ、子どもの放射線への感受性が大人より高いことははっきりしている。一九八六年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故では子どもの甲状腺がんが多発した。
 子どもの被ばく量の上限として年間二〇ミリシーベルトは高すぎると警告する人は小佐古氏のほかにも多い。飯舘村などの計画的避難区域で予想される積算の被ばく量と同じ数値なのも気掛かりだ。
 地元の自治体では、校庭の表土を放射性物質ごと削り取る動きも広がっている。政府の方針に安心できないからだ。子どもの安全を最優先に議論し、揺るぎない手だてを打ち出すべきだ。
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「官邸圧力」 「あり得ぬ」 小佐古前参与 会見急きょ中止
東京新聞2011年5月3日 朝刊
 学校での被ばく線量を年間二〇ミリシーベルト以下とした政府の対応を批判する形で内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘東大大学院教授は二日、線量をめぐる見解を述べるはずだった自らの会見を急きょキャンセルした。首相官邸側が会見を中止するよう圧力をかけたとの見方もあるが、官邸側は全否定している。
 小佐古教授と親交のある空本誠喜衆院議員(民主)はキャンセル理由について会見し、「小佐古教授は、官邸の事務方から『老婆心ながら、守秘義務がありますから』と言われ、来られなくなった」と説明した。また「小佐古教授のことが、報道各社に政局をからめて面白く書かれるのではないかと心配した」と述べた。
 四月三十日付で小佐古教授が参与を辞任して以降、官邸側からは、火消し狙いとみられる発言がしきりに出ている。
 枝野幸男官房長官は同日の会見で、「(政府の対応は)正義に反しているところはないと確信している。何か誤解があるのではないかと思っている」と述べた。五月一日の会見でも「小佐古教授は牛乳や飲料水の基準値では、逆に、より緩やかでいいと提言している。専門家の意見もいろいろある」と述べ、小佐古教授は必ずしも被ばく線量について厳格化論者ではないと強調した。
 会見キャンセルの背景に官邸側から圧力的なものがあったとの指摘について、官邸筋は二日夕、「それはありえない」と全否定。
 小佐古教授と面識のある細野豪志首相補佐官も同日の福島第一原発事故対策の統合本部会見で、「そのようなこと(圧力)はないと承知している。参与は公職なので一定の守秘義務はあるが、学問的見地からお考えになることには自由が認められている」と否定している。
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ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ2011-04-28 
無期限活動休止宣言・上杉 隆「フェアでない日本のメディアに関わりたくない」2011-04-02 
尖閣諸島ビデオ「なぜ公開許されないのか」=一色正春元海上保安官2011-01-21 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
原発20?圏に家畜65万匹超、置き去りか 餓死か/牛に「ごめん」牛を解き放とうと悩んだが、近所迷惑と考え2011-04-22 
原発の安全性は週1回48分の会議で決まった/人間の安全を議論しない原子力安全委員会2011-04-22 
苛酷な作業を強いられる東電社員 自らが被災者/「東電」と指さされ誹謗中傷/心理的に厳しい状況2011-04-20 
災害派遣、現場自衛官から上がる悲痛な声/戦争ではないが、この国は間違いなく長期戦の最中にある2011-04-14 
そこは?死の灰?が降る戦場だった/もたれ合い原発ムラの科学者たちはテレビに出るのではなく、現場へ行け2011-04-16 
福島第一原発「被曝覚悟で闘う現場作業員たち」2011-04-08


未曾有の大震災の直前に小沢一郎を排した、この国の不幸/小沢一郎の日本再造計画

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未曾有の大震災の直前に小沢一郎を排した、この国の不幸
【カレル・ヴァン・ウォルフレン(ジャーナリスト)インタビュー】 
ゲンダイネット2011年5月2日
菅政権は東電と保安院に動かされている
「誰が小沢一郎を殺すのか?」(角川書店)――オランダ人のジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の著書が話題だ。小沢一郎という異能の政治家を検察、メディアに代表される旧勢力がよってたかって潰そうとした事実が詳細に明らかにされている。小沢氏は民主党の党員資格を剥奪されて、表舞台から去った途端に大震災が起きた。右往左往の菅政権を冷徹なジャーナリストはどう見ているのか。
 小沢一郎氏はいま日本の超法規的な権力といえる官僚や検察、また大手メディアから政界を追われる身にあります。日本は民主国家であるはずですが、非公式な権力によって小沢氏の政治力は奪われ、おとしめられようとしています。
 彼は何度か首相の座に就くチャンスがありましたが、非公式権力が団結してそれを阻んできたのです。個人的には、小沢氏には政界の中枢で動いてほしい。多くの国民は彼の時代は終わったと思っているでしょうが、今こそ日本は彼のような強いリーダーシップを持った政治家が必要なのです。
 それは東日本大震災によって壊滅的な打撃を受けた被災地と原発事故の対応で、菅政権が行政コントロールを失ったかのような印象を内外に与えたことでも明らかです。もし小沢氏が首相であれば、統括的な政治力を発揮していたことでしょう。
 というのも、福島の原発事故で東京電力と原子力安全・保安院は政治家との関係構築がうまくゆかず、むしろ首相官邸が彼らに動かされてしまった。これこそが、小沢氏がもっともあってはならないと考えていたことだからです。政治主導といいながら、政治家が既成の権力にひれ伏した証拠なのです。小沢氏であれば、こうした状況でこそ既成権力のいいなりにならなかったと思います。
 今回の震災では、日本人の忍耐強さが世界中の人たちから驚嘆されました。オランダのテレビ局は「なぜ日本人は盗みをしないのだ」と聞いてきました。日本人は良識の民です。
 菅政権の全体的な震災対応は及第点をつけられるかもしれません。ただそれは、1995年の阪神・淡路大震災時の自社さ政権の対応と比較してという条件においてです。
 率直に言えば、日本政府の対応は全体を統括する行政力が不足しています。官邸と関係省庁との連携が円滑でないばかりか、地方自治体への情報伝達や物資の輸送など必須の危機管理体制が整備されていなかった。
 私が力説したいのはここです。どの国家もこの地震ほど大規模な災害を被ることはそうはありません。ただ首相が強いリーダーシップを発揮して、政治力を十分に機能させれば、地方自治体やさまざまな団体、組織を統制でき、今よりも効果的な結果が出せたはずです。
 今後、日本が抱える課題は、被災地をどう復興させるかです。
 東北地方の再開発は原子力ではなくソーラーを基礎に、全産業を取り込んだ計画を策定すれば、ソーラー技術のさらなる発達が期待できます。ただ、日本はいまだにアメリカの準植民地という立場にいます。独自の外交政策を策定し、実践してはじめて独立した民主国家になれる。それを実現しようとしているのが小沢氏なのですが、国民だけでなく権力機構からの反発がある。それが残念なことです。(インタビュアー・堀田佳男)
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前原誠司外相辞任と『誰が小沢一郎を殺すのか?』〈カレル・ヴァン・ウォルフレン著〉2011-03-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
【まんが】小沢一郎の日本再造計画 / 原発事故収束編 (04/30)

捜索現場襲う惨事ストレス/自衛隊員や海上保安官、警察官の「心のケア」が課題

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「もう限界。家に帰して…」捜索現場襲う惨事ストレス
2011.5.5 15:56
 東日本大震災で被災地に派遣され、遺体の捜索・収容作業に当たっている自衛隊員や海上保安官、警察官の「心のケア」が課題となり始めている。これまでに1万人近い遺体を収容するなど奮闘してきたが、一方で凄惨(せいさん)な現場で受けた精神的ショック(惨事ストレス)から心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような症状を訴えたり、奇行に走るケースも出ており、各省庁では惨事ストレス・ケアに乗り出した。(SANKEI EXPRESS)
 「もう限界です。家に帰していただけませんか」
 西日本の部隊に所属する陸上自衛隊の30代の男性自衛官は、部下の切実な訴えに接するたび、心に重圧がのしかかる。
 震災直後に被災地入りし、数十人の部下と続けたテント暮らしはまもなく2カ月を迎える。主な任務は沿岸部での遺体の捜索活動。これまでに数十人の遺体を収容、自治体などに引き渡した。
 住宅のがれきの下では、全身に傷を負った親子とみられる若い女性と5〜6歳ぐらいの女の子の遺体を発見した。「もしこれが自分の妻と子供だったら…」。思わずつぶやいた同僚は、夜になるとテントの中でうなされていた。
 春を迎えて日中の気温が上昇し、日を追うごとに発見される遺体の損傷は進んでいる。交代もままならず、「精神的にまいってしまい、前線を離れる隊員が多くなった」。
■■
 防衛省によると、過去最大となる約10万人の自衛隊員を投入した今回の震災では、警察、消防、米軍などと合同で行った分も含めてこれまでに計約9200人の遺体を収容。今も被災地では、1日数人単位で遺体が発見され続けている。
 肉体的な疲労に加えて、損傷がひどい遺体を扱う惨事ストレスは日に日に増している。一部には奇行に及ぶ者も出ている。
 海上自衛隊横須賀基地所属の3等海曹(31)は、宮城県沖で遺体収容作業を終えて通常業務に戻った3月下旬、レンタルビデオ店で下半身を露出し公然わいせつ容疑で現行犯逮捕された。再び被災地での活動が決まっていたことから、「また行くのが嫌だった。捕まれば行かなくてすむと思った」のが犯行理由だった。
 防衛省は、被災地での活動終了後に隊員が精神的負担からPTSDを発症する可能性があると判断。活動を終えて1カ月後、半年後、1年後をめどに、質問項目に記入する形式で心理状態を調査する方針だ。
■■
 警察庁も対策に乗り出した。ケアの対象は岩手、宮城、福島の3県警の全警察官・警察職員の計約1万500人で、問診票を配り震災対応後の心身の状態について調査。惨事ストレスが強いとみられる職員には、委託先の民間機関から臨床心理士らのチームを派遣し、面談を行う。
 一方、がれきが漂う海中で捜索や遺体収容に当たっている海上保安官らも、相当な惨事ストレスを受けているとみられる。
 海上保安庁は、震災発生から1週間後に被災地で業務に従事する潜水士や巡視船艇の職員ら約1600人を対象にアンケートを実施。うち約1割の職員について、心のケアなど「経過観察が必要」とする結果が出た。
 こうした職員らと面談した海保の惨事ストレス対策アドバイザーを務める広川進・大正大准教授(臨床心理学)によると、「涙が止まらない」「現場の光景がフラッシュバックする」といったPTSDに似た症状を訴える声もあがったという。
 広川准教授は「過酷な作業の長期化が予測されるこれからが一番危険。まとまった休息をとって頭のスイッチを強制的にオフにするなど、十分なケアが必要」と指摘する。
....................
【NHK】天皇陛下のお言葉「自衛隊警察消防海上保安庁を初めとする国や地方自治体の人々諸外国から救援のために来日した人々国内の様々な救援組織に属する人々が余震の続く危険な状況の中で日夜救援努力を進めていることに感謝し、その労を深く労いたいと思います。」
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最前線に迫る被曝上限2011-04-28 
苛酷な作業を強いられる東電社員 自らが被災者/「東電」と指さされ誹謗中傷/心理的に厳しい状況2011-04-20 
災害派遣、現場自衛官から上がる悲痛な声/戦争ではないが、この国は間違いなく長期戦の最中にある2011-04-14 
そこは?死の灰?が降る戦場だった/もたれ合い原発ムラの科学者たちはテレビに出るのではなく、現場へ行け2011-04-16 
福島第一原発「被曝覚悟で闘う現場作業員たち」2011-04-08
福島第一原発:報道をはるかに超える放射能 死を覚悟する自衛官2011-03-18 | 地震/原発

「テロ」との戦い、という「正義の御旗」/米国がビンラディンを追っている間に中国は絶対的な台頭を追求

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〈来栖の独白〉
 オバマ米大統領はウサマ・ビンラーディンを米国が実施した作戦で殺害したと発表、「正義は遂行された」と語った。
 ウサマ氏を「捉えた」のではなく「殺害」だった。オバマに余裕がなかったのだな、と直感した。9・11以降、アメリカから栄光も力も急速に失われていった。もはや地球に君臨する唯一の超大国ではなくなった。
 過去の栄光の残照が、大統領をして「正義」という言葉を口にさせた。が、過去においても、アメリカは「正義」ではなかった。古い記憶だがヨハネパウロ2世教皇は「戦争は人間の仕業です」と言い「戦争は悪です」と言った。地球の各地、いや全地で戦争を仕掛け、加担してきたアメリカという国が正義であるはずはない。問いたい。ヒロシマへの原爆投下は正義であったか。ベトナムでの戦争は正義であったか。イラク、アフガンへの攻撃は、正義か。聖戦であったのか、と。人間の仕業ではないか。
 田母神さんは洞察に満ちたことを言っている。テロに立ち向かう、という「錦の御旗」と。
 余分な付けたりを一つ。オバマ氏の顔を見て私は、ああ、この国から死刑制度がなくなることはないだろう、と慨嘆した。安易に「正義」などを標榜する地平からは死刑はなくならないだろう、そう思った。
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『田母神国軍』田母神俊雄著(産経新聞出版)
p94〜日本をしゃぶりつくすアメリカ
同盟国から情報がほしい
 我が国は、日米同盟という命綱のもと、アメリカの強大な軍隊に守られています。戦後、この日米同盟のおかげで、日本が経済発展に専念できたのは事実です。
 しかし、アメリカという国も、自国の国益に基づいて行動する国に過ぎません。アメリカが、日本よりも中国と組むほうが国益に繋がると判断すれば、日本は見捨てられてしまうでしょう。実際、尖閣諸島での「漁船」事件でも、アメリカは一応は日本への配慮を見せ、日米安保が適用される旨、アナウンスしましたが、そんな事件はなかったかのように中国と首脳会談を行っています。日本人には国際社会が人間の善意で動いていると思っている人が多いのですが、それは全く違います。国と国との関係は利益関係で結びついているのです。国は国益で動くのです。これはアメリカに限らず日本以外のすべての国がそうなのです。このような国際社会で「日本列島は日本国民だけのものではない」などと善意を見せれば、それは日本を中国にくれてやると言っているようなものです。中国などにつけ込まれるだけです。国際社会は腹黒の世界なのです。
 そしてもはやアメリカは、決して中国と争いたくない。争えないのです。
 経済的に切っても切れなくなった米中の狭間で、日本が翻弄されないためにも、同盟国・アメリカの考え方を知っておくことが必要です。
 日本を含めたアジア地域に対してどのような戦略を持っているのか。中国にはどう対峙していくつもりなのか。そして、アメリカが日本を同盟国としてつなぎとめておこうとする真意はどこにあるのか。
 同盟を堅持しつつ、日本はアメリカから自立しなければなりません。ただ従属するのではなく、国益のために同盟を活用する第1歩として、アメリカの戦略を知っておくことが重要なのです。
 2009(平成21)年1月にオバマ政権が発足しましたが、2010年になってから新政権の国防政策を次々と発表しています。(中略)
p96〜
 まず、現在の安全保障環境には、アメリカは次のような認識をもっているということです。
《今回のQDR(4年ごとの国防計画の見直し)は、イラクとアフガニスタンにおいて米国が現在戦っている戦争、中国やインドなどの新興国の台頭、非国家主体の影響力の増大、大量破壊兵器の拡散、海、空、宇宙、サイバー空間といった国際公共財(Global Commons)に対する侵害などにより、安全保障環境が複雑で不確実なものになっているとしている。また、紛争に多様な主体が各種手段を用いて参加することで、紛争が複合的な性格を有するハイブリッドなものとなってきているとしている。さらに、脆弱な国家は過激主義や急進主義の温床となるおそれがあり、紛争を引き起こす要因となるとしている。》
 このアメリカが言うところの「国際公共財」とは、つまりは「アメリカが自由に使えるもの」ということです。アメリカのような能力があるものしか使えないもの、それを彼らは「国際公共財」と呼んでいるのでしょう。
 そして、ここでアメリカが認識しているように、紛争には「多様な主体」が「各種手段を用いて」参加するようになってきています。
 いままでのアメリカは、国家間の戦争だけを考えていればよかった。国家間の戦争というのは、相手がはっきりしています。相手が明確にわかっていれば、その相手を抑え込むにはどうすればいいかという対応は、比較的簡単に取ることができます。
 これに対して、テロ攻撃のように戦うべき相手が誰だかもわからない、手段も様々であるというとき、1番必要になってくるのが「情報」です。この「情報」というものは、実はアメリカだけでは取ることはできません。同盟国などいろいろな国の協力があってこそ、初めて細かい情報というものが取れるようになります。
テロとの戦いは「正義の御旗」
 ですから、このような安全保障環境に置かれたアメリカは、これまでの同盟国にとどまらず、中国やロシア、そして国力をつけつつあるインドといった国も組み込んでいく必要があると考えているでしょう。
 しかし、アメリカがいままでのように「世界のリーダー」ぶって、自分勝手に行動しているようでは、なかなか情報を取ることはできません。これまでの同盟国だけでなく、できるだけ多くの国がアメリカに協力してくれるような態勢にしなければならない。だからこそ、アメリカという国は、いままでよりも各国に対して、頭を下げていくことになるでしょう。
 現在のアメリカは、サブプライムローンを発端とした不況の影響などで、経済的にも絶対に強いという存在ではなくなりました。これからは、BRICs(ブリックス)のように経済力をつけた国がどんどん出てくるので、世界における相対的な力というものも、恐らく落ちてくるでしょう。
 そういう中で、アメリカはテロ攻撃への対応で、先頭に立つこともできるだけ避けたいという思いもあります。他国をできるだけ働かせて、協力を得ていきたいと考えているのです。
 おそらく、アメリカはテロ攻撃について、「いつかは起る」と織り込み済みだったのではないかと私は思います。アメリカへのテロ攻撃は、いわゆる9・11テロのような大規模なものではなくても、いままでにもありました。それだけに、9・11テロ以降のアメリカの立ち回りは、うまくテロを使ったと言えるのではないでしょうか。
 「テロ攻撃という卑劣な手段には、断固として立ち向かわなければならない」と訴え続けることで、アメリカは同盟国に対して「協力しないのか!」という「錦の御旗」を掲げているのです。「正義」を掲げられると、諸外国も「協力しない」とはなかなか言いにくい。
 ですからアメリカは、使い勝手のいい錦の御旗を見つけたということです。誰が考えたのか、頭のいい奴がいたなと思うばかりです。(〜p99)
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遺体なき暗殺という空虚な勝利ビンラディン追跡に固執した代償  
JB PRESS 2011.05.06(Fri)Financial Times(2011年5月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 死体のない暗殺には、どこか妙なところがある。不思議なことに16年間にわたって遺体がどこかに消えていたアルゼンチンの大統領夫人、エバ・ペロンの場合と同様、死体がないということは奇異な感じがする。
 バラク・オバマ大統領の言葉を除けば、ウサマ・ビンラディンが実際に死亡したことを示す具体的な証拠はほとんどない。
 オバマ大統領は遠からず、それが怒りをかき立てるにせよ、そうでないにせよ、殺害されたアルカイダの指導者の写真を公開することを余儀なくされるだろう。
 もちろん、ビンラディンが殺害されたことや、世界がそのおかげでよくなったことを本気で疑う人はほとんどいないだろう。また、最も憎い敵に命をもって責任を取らせたことが米国に心理的な高揚感をもたらしたことを否定できる人もまずいないはずだ。
・犠牲が大きすぎて割に合わない勝利
 だが、恐ろしいのは、今回の行為の結果が死体のない暗殺と同じくらい空虚なものだと判明することだ。オバマ大統領の勝利は、犠牲が大きすぎて割に合わない結果になるかもしれない。
 その一因は、ビンラディンが世界で最も危険な人物と判断された時から、世界がどんどん先に進んできたことだ。誰に聞いても、ビンラディンは過去5年間、電話も電子メールもない状態で、緑豊かなアボタバード近郊に潜伏していた。ビンラディンは、テロの首謀者というより、テロの理念を象徴する人物になっていたのである。
 がんのような彼の考え方は、パキスタンを通ってイエメンやソマリアなどに転移していた。当然ながら、理念というものは人間よりも殺すのが難しい。
 アラブ世界の多くも、どんどん前に進んできた。示唆に富む北アフリカ、中東全土の反政府運動は、ビンラディンの二元論的なイスラム国家観とはほぼ無縁だ。エジプトからリビアに至るまで、抗議運動をする人たちは、西側の民主主義という人を夢中にさせる考え方を吸収してきた。
 そのため、ビンラディンの殺害は、彼の落ちた権威を強く感じさせるものとなった。さらに大きなダメージを与えたのは、そのことが、アフガニスタンとパキスタンで米国が進めてきた影を追いかけるような軍事行動の大きな欠陥を露呈したことだ。
 米国は「9.11」の同時テロの翌月にアフガニスタンに侵攻した。理由は単純明快だ。アフガニスタンのタリバン政権がビンラディンをかくまい、引き渡すのを拒否していたからだ。多くの米国人にとって、アルカイダとタリバンは1つに融合している。だが、アフガニスタンのタリバン政権の目的は、常にアルカイダより穏健なものだった。
 タリバンは、アフガニスタンから外国人を追い出し、自分たちの手で国を動かすことを望んでいる。米国の侵攻軍がタリバン政権を転覆させ、アルカイダの兵士の多くをパキスタンに逃げ込ませた時、米軍は、それまでと異なるアフガニスタンでの任務――国造り――と奮闘する羽目に陥った。
 パキスタンでビンラディンが発見されたという事実は瞬時に、米国の作戦の迷走を浮き彫りにした。アルカイダの指導者が死に、米軍の撤退開始期限である7月が間近に迫る中で、アフガン戦争に対する国内の批判派が完全な撤退を求めることが容易になった。
 マサチューセッツ州の民主党下院議員、バーニー・フランク氏は今週、CNNに対して、米国は「悪い政府をすべて改心させるために物理的な力を行使することはできない」と述べた。さらにフランク議員は、安全な避難場所から別の避難場所へとテロリストを追いかけることの無益さについて言及し、米国は「世界中のネズミの穴をすべて塞ぐこともできない」と付け加えた。
・パキスタンとの同盟関係に大きな亀裂
 ビンラディンの殺害は、米国政府とパキスタン政府との同盟関係により一層暗い光を当てている。パキスタンの軍統合情報局が何を目論んでいたにせよ、適切だったようには見えない。
 ある見方をすれば、情報局は、世界一のお尋ね者が目と鼻の先にいたのに発見することができなかった。米国から180億ドルも支援を受けていたのだから、ビンラディンの隠れ家を壁越しにのぞくための梯子くらい買えたはずだろう。
 また別の見方をすれば、情報局はビンラディンが発見されないように意図的にかくまってきた。米中央情報局(CIA)のレオン・パネッタ長官は、パキスタンは、ビンラディンにこっそり情報を漏らす恐れがあったために、日曜日の作戦を知らされなかったと述べた。これ以上にパキスタンを強く非難する評決は想像し難い。
 インドの軍事専門家でパキスタンに対して非友好的なブラーマ・チェラーニ氏は辛辣な論説の中で、「パキスタンのテロリズムを引き起こした原因は、数珠を擦り合わせる宗教指導者よりも、スコッチウイスキーをすする軍司令官たちだった」と書いた。
 パキスタンの米国の友人たちがこれとよく似た発言をしていなければ、チェラーニ氏の見方はパキスタンの敵であるインド人の見方として片づけられたかもしれない。米国の何人かの議員は、パキスタン政府への援助をすべて停止するよう米国政府に求めてきた。
 「我々はあともう10セントでも出す前に、パキスタンがテロとの戦いで本当に我々の味方なのかどうか知る必要がある」と、ニュージャージー州の民主党上院議員、フランク・ローテンバーグ氏は語っている。
 だが、米国政府はパキスタンを見捨てることはできない。ビンラディンを追い詰めるうえでパキスタン政府が果たした役割が良くて最小限だったという証拠にもかかわらず、オバマ大統領はパキスタン政府の協力を称賛することによって、その事実をはっきり示した。
 核武装したパキスタンは、米国が簡単に見捨てるにはあまりにも不安定であまりにも闘争の温床になりすぎている。米国とパキスタンは、居心地の悪いベッドで一緒になっているしかないのだ。
・米国がビンラディンを追っている間に中国は絶対的な台頭を追求
 ビンラディンの死によって露呈された3つ目の点は、彼を追い詰めるのにどれだけ多くのコストがかかったかということだ。米国の各テレビ局は、その数字を、アフガニスタンとイラクでの戦争を含めて2兆ドル以上と見積もっている。
 これは、エール大学の歴史学者、ポール・ケネディ教授が、その著書『The Rise and Fall of The Great Powers(大国の興亡)』の中で描いている「帝国の過剰拡大」の本質だ。
 ケネディ教授は、ハプスブルク家の皇帝たちについて書いている。「彼らは対立を繰り返しているうちに徐々に背伸びをし過ぎて、弱体化する経済基盤の割に軍事的に頭でっかちになってしまった」 米国が中東のあちこちでビンラディンを追いかけ、持続不可能な赤字を膨らませている間に、中国は自国の絶対的な台頭を追い求めてきた。
 中国は昨年、世界第2位の経済大国になり、米国に取って代わって世界最大の製造国になった。米国政府は追い求めていた人物を手に入れた。しかしその一方で、米国は道を見失ってしまったのかもしれない。
By David Pilling
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五木寛之著『歎異抄の謎』(祥伝社新書)より  
 先日、アメリカ本土の米軍基地で、高級将校が銃を乱射し、数十人の死者と30人以上の負傷者をだしました。オバマ大統領の来日が、そのために延期されたほどの衝撃的な事件でした。
 私が気になったのは、その将校が、精神科の軍医だったことです。
 2001年9月11日、いわゆる「9・11」以後のアメリカは、まちがいなく鬱の時代に突入しました。ニューヨークにそびえるツインタワー・ビルの崩壊する映像は、はっきりとそのことを世界にしめしたのです。
 戦争というものの姿が、あの日以来、一変したといっていい。
 それまでの戦争は、いわば「躁の戦争」でした。巨大空母から発進する攻撃機が、爆弾とミサイルの雨をふらせる。圧倒的な火力で敵陣を制圧し、はなばなしく地上戦を戦う。
 そんな「躁の戦争」の時代は、もう完全に終わったのです。
 あらたに登場したのが「鬱の戦争」です。「鬱の戦争」とは、テロとの戦いのことです。
 敵がどこにいるかが見えない。敵は味方のなかにひそんでいるかもしれない。一般市民にまぎれこんでいるかもしれない。
 戦車で攻撃するわけにもいかず、核兵器も使えない。疑心暗鬼のなかで、見えない敵と戦うしかない。それが「鬱の戦争」です。テロとゲリラこそ、鬱の時代の戦争の典型的な姿でしょう。
 「鬱」の時代は、すべての分野にあらわれてきます。
 成長と開発は、「躁の経済」です。それに対して、エコと環境問題は「鬱の経済」にほかなりません。
 20世紀は自動車文化(モータリゼーション)の時代でした。スピードとパワーを競うF1レースは、まさに「躁の工学」の象徴でした。トヨタをはじめ日本の有力なメーカーも、次々とF1からの撤退を発表しています。
 そしていまやエコカーと、音もなく走る電気自動車が人気を集めています。
 航空界では巨大なスーパージャンボから、効率的な中型ジェット旅客機へと業界の視線が移ってきました。
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オバマ大統領が緊急声明「正義は遂行された」
産経ニュース2011.5.2 13:18
 【ワシントン=犬塚陽介】オバマ米大統領は1日夜、ホワイトハウスでテレビカメラを前に緊急声明を発表し、2001年9月11日の米中枢同時テロの首謀者で、国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者を「米国が実施した作戦で殺害した」と語った。米国が遺体を確保しており、本人と最終確認した。米国が最大の標的と位置づけていたビンラーディン容疑者の殺害で、米国が遂行するテロとの戦争は大きな転換点を迎えた。
 米国は先週、ビンラーディン容疑者がパキスタン国内に潜伏していることを確認。パキスタン当局と協議の上、米情報当局が拘束・殺害に向けた作戦を実施した。オバマ大統領は声明で、「正義は遂行された」と語った。
 一方、ビンラーディン容疑者の殺害で、アルカーイダ系のテロ組織が報復に出る可能性もあり、米政府は警戒を強めるとみられる。
 また、米国とパキスタンの間では米情報当局のパキスタン国内での活動をめぐって軋(あつ)轢(れき)が生じており、ビンラーディン容疑者の潜伏状況や米情報当局による殺害方法をめぐって両国関係の緊張がさらに高まる可能性もある。
 ビンラーディン容疑者はサウジアラビア出身。米国はビンラーディン容疑者の拘束、殺害を最重要課題に位置づけていた。
 同時テロ後、ブッシュ前政権はアフガニスタンに滞在していたビンラーディン容疑者の身柄引き渡しを当時のタリバン政権に要求したが、拒否された。タリバン政権の崩壊後はパキスタンとアフガンの国境付近で潜伏生活を続けていたとされる。
 ビンラーディン容疑者は潜伏中もビデオや音声での声明を発表し、欧米諸国との戦いを呼びかけていた。
 米国は同時テロのほか、1998年に発生した在ケニア、タンザニアの米大使館爆破事件、2000年にイエメン沖で爆弾を積んだボートが米駆逐艦コールに突入した事件にもビンラーディン容疑者が関与した可能性があるとみている。
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ビンラディン容疑者:水葬? イスラム教慣習に反し、臆測
 【カイロ和田浩明】国際テロ組織アルカイダの最高指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の遺体を、殺害した米当局が海に流したと米主要メディアが報じている。イスラム教の慣習では土葬が一般的で、本当ならイスラム教徒から批判が強まるのは必至。殺害を巡り「何らかの作為」を疑う声も強まりそうだ。
 ビンラディン容疑者の遺体の扱いについて、米政府高官は「イスラムの伝統に沿って行う」と述べた。イスラム教では通常、遺体は死後24時間以内に土葬する。だが、米メディアが流した水葬説について、米政府高官は「引き取り手がいないからだ」とAP通信に説明したという。
 ビンラディン容疑者はサウジアラビア出身だが、同国の国籍はすでに剥奪され、遺族も絶縁している。引き取り先がテロの対象になる可能性もあり、悪名高い人物の遺体の引き取り手を探すのは確かに困難だ。また、埋葬地がイスラム過激派の「聖地」になるとの指摘もある。
 だが、米政府が「最重要容疑者」として行方を追っていた人物の遺体を殺害直後に水葬し、場所も明らかにしないのは、極めて異例な措置だ。米政府は「複数の方法で本人確認をした」と説明しているが、遺体がなければ検証もできない。
 イスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルのタイエブ総長は2日、エジプト政府系紙アルアハラム(電子版)に対し、遺体を海に流すことは「すべての宗教的、人間的価値に反する」と批判した。
毎日新聞 2011年5月2日 23時21分(最終更新 5月3日 0時05分)
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「BRICS」を政治利用する中国2011-04-23 | 国際
  米国への挑戦状:世界の盟主になりたい中国 BRICS首脳会議を主催して〜中国株式会社の研究(107)
JB PRESS〔中国〕2011.04.22(Fri)宮家 邦彦 
 日本中が放射線量の増減に一喜一憂していた4月13〜14日、胡錦濤総書記は海南島で第3回BRICS首脳会議を主催していた。インド、ロシア、ブラジルに加え、今回から南アフリカも参加した。「BRICs」が「BRICS」に変わったことに気づいた日本人がどれだけいただろうか。
投資銀行が考えた「BRICs」
 共同会見に臨む(左から)インドのマンモハン・シン首相、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領、中国の胡錦濤国家主席、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領〔AFPBB News〕
 「BRICs」という言葉が使われたのは2001年、米投資銀行大手ゴールドマン・サックスが投資家用に作成したニュースレターが最初だったと言われる。
 当時から、広大な領土と巨大な人口を持ち、急成長を続ける新興国家群の存在は関係者の間で注目されていた。
 あれから10年、今年から南アフリカが参加し、イラン高官もBRICs諸国との関係拡大を公言するようになった。
 当初は理念的に考えられ、半ば語呂合わせ的に命名されたBRICsだったが、今や国家グループとして自律的な進化を始めたかのようだ。
 ロシアとブラジルで開かれた過去2回のBRICs首脳会議のテーマは、基本的に経済問題だった。BRICs諸国が、G20と国連の役割を重視しつつ、より平等、多極的で民主的な国際社会・経済システムを目指して協力し合うという一般的な主張だったと記憶する。
 ところが、4月14日に発表された今年の首脳宣言には、微妙ながら重要な変化が見られた。昨年の共同コミュニケと読み比べれば、国連改革、リビア情勢、国際金融システム改革など、前回よりも政治的に踏み込んだ内容が随所に盛り込まれていることが分かる。
2011年BRICS首脳宣言
 今年の首脳宣言中、特に注目すべきは以下の諸点だ(括弧内の注は筆者のコメント)。
●安全保障理事会を含む国際連合の全面的改革が必要であり、中国とロシアは、インド、ブラジル、南アフリカの国際的地位・役割向上の重要性を再確認する
(注:欧米主導でつくられた現在の国連は不平等・不公平なシステムだと批判するが、インド、ブラジル、南アフリカの地位向上の重要性を唱える一方で、日本やドイツに言及しないことも同様に不平等、不公平ではないのか)
●中東・北アフリカ地域における混乱を深く憂慮し、武力行使は回避すべきである
(注:リビアなどで欧米諸国が安易に軍事介入を行っていることを批判しているようだが、BRICSとして軍事的手段に代わる解決策を提示しているわけではない)
●国際通貨基金(IMF)改革目標を早急に達成し、商品デリバティブ市場の規制を強化すべきである
(注:欧米主導の国際金融システムにおけるBRICS諸国の発言力・影響力を高めようとする主張であるが、ここでも具体的改善策は示されていない)
●安定性と確実性を伴う広範な国際準備通貨制度に基づく国際金融システムの改革・改善を支持する
(注:名指しは避けたものの、明らかに米ドル中心の現行国際通貨制度を強く批判するものだ、他方、中国の人民元の取り扱いなどの具体的解決策は提示していない)
●原子力エネルギーはBRICSにとって重要な要素であり、安全な原子力エネルギーの平和利用に関する国際協力を推進すべきである
(注:BRICSが経済成長を続けるため必要なエネルギーを確保しなければならないことは分かるが、このタイミングで敢えて原子力の重要性に言及することは実に興味深い)
「BRICS」を政治利用する中国
 以上のようなBRICS首脳会議の「政治化」を主導したのは、やはり中国であろう。中国は今回の首脳会議を大々的に宣伝しており、開催地である海南省三亜市のウェブサイトに今次首脳会議の公式サイトまで作っている。
 これに対し、欧米メディアの反応は総じて鈍いようだ。少なくとも、BRICS諸国が国際金融システムに対し挑戦し始めたといった警戒心は見られない。
 それどころか、BRICS経済が元気になることは米国にとっても有益であるといった楽観的な論調すら見られる。
 確かに中国などがこの種の主張をするのは初めてではない。その内容にも具体性がない。
 さらに、BRICS諸国と言っても一枚岩ではない。中印だけでも国境問題、貿易摩擦問題を抱えるなど、各国間の利益対立は決して小さくないからである。
 リーマン・ショック後の新たなパラダイムの中で、米国が相対的に弱体化することは避けられない。他方、BRICSを中心とする新興国側にも、米国に代わって新しい国際秩序をつくるだけの余力はなかろう。
 今のところ欧米諸国は、BRICSは「弱者同盟」に過ぎず、米国を中心とする欧米型システムを打ち破る力にはなり得ないと高を括っているのだろう。BRICS諸国側も当面は米国を中心とするグローバル経済の枠内で独自の主張を強めていくことになりそうだ。
BRICS=金磚国家
 ちなみに、第3回BRICS首脳会議は中国語で「金砖国家领导人第三次会晤」という。「金砖」とは「金磚(きんせん)」で金の延べ棒をも意味するようだ。「磚」とは煉瓦のこと、煉瓦は英語でBRICKだから、BRICS=金磚国家ということになるらしい。
 友人の中国語専門家に言わせると、これは一種の芸術なのだそうだ。未知の外来語に対し、漢字と英語の類推から、ぴったりの漢字新語を作る中国人の能力とセンスは誰も真似できないという。それはそうだろう。そんなことをするのは中国人だけなのだから。
 BRICSはBRICSなのだから、そのまま使えばいいではないか。中国語でDavidは大偉(ターウェイ)という。なぜわざわざ漢字化するのだろうか。
 趣味の問題かもしれないが、筆者には「金磚国家」など「洗練させたセンス」どころか、下手な「こじつけ」としか思えない。
 「金磚」は元々古代中国の珍しい武器の一種らしい。伝説によれば、金色をした円形敷石か瓦のようなもので、空に投げ上げると金光を発したという。
 つまり、BRICSとは、煉瓦は煉瓦でも、光り輝く煉瓦の国家群ということなのか。是非そうあってほしいものである。
〈筆者プロフィール〉
宮家 邦彦 Kunihiko Miyake
 1953年、神奈川県生まれ。東大法卒。在学中に中国語を学び、77年台湾師範大学語学留学。78年外務省入省。日米安全保障条約課長、中東アフリカ局参事官などを経て2005年退官。在北京大使館公使時代に広報文化を約3年半担当。現在、立命館大学客員教授、AOI外交政策研究所代表。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
 中国 経済の爆発的な急成長と引き換えに、中国には様々な歪みも表れてきている。減速する世界経済を中国は支え、牽引することができるのか。豊富なデータや現地情報をもとに、世界経済を左右する中国経済の行方を読み解く。
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「中国の『激変の日』に備えよ」 中国の異質性 『尖閣戦争 米中はさみ撃ちにあった日本』2011-03-03 | 政治〈国防/安全保障/領土〉

40人の原子力専門家が明かす「フクシマの真実」/これでも原発のリスク、許容しますか

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「レベル7」ニッポンの選択 これでも原発ですか 40人の原子力専門家が明かす「フクシマの真実」
現代ビジネス2011年05月06日(金)週刊現代
*工程表を出せる状態ではない
 フクシマはいま政府や東電が発表しているように収束に向かいつつあるのだろうか。
「この工程表は当然のことながら、いま入手できるデータに基づいてできたものでしょう。しかしながら、原子炉建屋と原子炉内部が実際にはどうなっているか、誰もわかっていない。たとえば燃料棒がどのくらい損傷しているのか、それをわれわれは炉心に近づくことによってしか知ることができないのです。そのことが可能になるまでにはまだ時間が必要ですから、このプランには予想されているより長い時間がかかると考えています」
 東京電力から発表された福島第一原発事故収束への工程表について、ハーバード大学政治大学院特別研究員で前IAEA(国際原子力機関)事務次長のオリ・ハイノネン氏はこう評した。核不拡散の研究で世界的に知られているアメリカの物理学者フェレンク・ダルノキーヴェレス氏も懸念を表明する。
「工程表通りに行うことは難しいと思います。これに無理に合わせようとすると、作業員の安全が犠牲になるかもしれない。これを実行するには相当頭が切れる、クリエイティブなリーダーが求められます。そのためには東電は会社を超えて人材を確保すべきでしょう」
 それくらい、事故収束への道は険しいものだと専門家たちは考えているのだ。「冷却システムをつくるのは1ヵ月くらいでできるかもしれない」と話す東京工業大学原子炉工学研究所助教の澤田哲生氏は、2号機のサプレッションチェンバー(圧力抑制室)の破損が大きな問題だと考えている。
「ロボットで補修なんてほとんどできませんから、結局は人力か遠隔操作で土木作業をやることになります。どういう場所がどの程度破損しているのか、どの程度の作業が必要なのか、いまロボットを使って確認しようとしていますが、あそこは地下になるので、ほとんど見ることができていない。技術的にどう乗り越えるか、ここに大きな壁があります」
 京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏は、原子炉格納容器を水で満たして、圧力容器ごと燃料棒を水没させる「水棺」という方法は失敗するだろうと話す。
「2号機だけでなく、1号機と3号機も格納容器が壊れていますから、水を入れても漏れてしまいます」
 だが近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は、そもそも「まだ工程表を出せるような状況になっていない」と批判する。
「いま一進一退の状態で、まだ溜まり水も抜けないし、どういう風に冷却するかも定まっていない。そういう中で3ヵ月、6~9ヵ月と期間を決めていく時点で、私はこの工程表を信用できません。きっと今後、この予定に修正が入ってくると思います。こういうものはもう少し先が見えてから出すべきだったのではないでしょうか。
 これが『この期間で絶対に収束させてみせる』という東電の決意の表れなら、それでいいんです。でも発表されたのは日曜日(4月17日)で、クリントン米国務長官来日当日。菅総理がいい格好をしようと、東電をつついて出させたのではと勘ぐりを入れたくなるようなタイミングでした」
*チェルノブイリよりひどい
 政府は4月12日に福島第一原発の事故評価尺度(INES)を「レベル7」に引き上げたが、枝野官房長官は3月末にはすでにそのレベルにあるという報告を受けていたことが判明した。菅政権はつねにいま起きている現実を過小に評価したがる。しかし現実は現実なのだ。
 原発を作っているアメリカの電機総合メーカー、ウェスティングハウスの元執行役員アーノルド・ガンダーセン氏は事故発生直後から「レベル7」と評価していた。
「3つの原子炉の燃料棒が損傷し、4つの使用済み燃料プールが冷却できない状態のまま放置されていました。放射性物質の大量放出は避けられない情勢でした。3月12日のことです。つまり震災発生後2日目からレベル7だった。日本政府の判断は遅すぎます」
 福島原発の事故の相応しい事故評価尺度はいくつなのか。今回取材した原子力・原発の専門家40人に聞いてみたところ25人が数字を挙げた。その内訳は、「6」が7人、「6か7」が1人、「7」が15人、「7より上」が2人だった。
 6割の人が「7」だと判断している。レベル7という評価は1986年に起きたチェルノブイリ原発事故と同じことになる。だが、この事故の処理にもかかわったという物理学者ナタリア・ミロノーヴァ氏は福島の事故はチェルノブイリを上回る史上最悪の事故だと主張する。
「レベル7以上だと思います。チェルノブイリでは一つの原子炉が事故を起こし2週間後には一応の決着がついていました。一方、福島では4基がトラブルを起こし、少なくとも4週間が経過しています。つまり8倍の規模の事故なのです。プルトニウム、ヨウ素、セシウムが放出されていて、現場では余震も続いています。事故は解決するどころか長期化していますから、こうした放射性物質の放出量はトータルでチェルノブイリを超えるでしょう」
 ソウル大学原子核工学科の徐鈞烈教授もチェルノブイリを超える被害をもたらす可能性があると見ている。
「チェルノブイリのような炉心爆発があったわけではないので、深刻な事故ではないと考える人もいますが、いまだ原子炉や使用済み燃料プールがいつ爆発を起こすかわからない状態です。4基の原発が事故にかかわっていて、核燃料もチェルノブイリの10倍以上ある。これからどれだけ放射性物質が漏れるかわかりません。いつの間にかチェルノブイリを超える量になっていることも想定されます」
 しかも福島原発の周りには、チェルノブイリと違い、いくつもの街があり、東京もそれほど遠くない。「福島のほうが、国全体におよぼす影響は圧倒的に大きい」(JCO事故の現地調査にも参加した北海道大学大学院医学研究科・石川正純教授)のだ。
 4月18日、経済産業省の原子力安全・保安院は、1~3号機の原子炉内にある燃料棒が「溶融」している(燃料棒内部にある、燃料を焼き固めたペレットが溶けて崩れている)と発表した。これまで東電は燃料棒の状態について「1号機は70%、2号機は30%、3号機は25%が損傷している可能性がある」と説明してきたが、損傷より厳しい溶融の状況にあると初めて認めたのだ。
 相変わらず、何が起こるかわからない危険な状態のなか、工程表で定められた作業を進めていくことになる。しかし、「状況は悪くならないと思うが、制御されている状態とも言えない。悪いことが起きる可能性もあります」(30年以上、核の問題にかかわり続けてきた米プリンストン大学のフランク・N・フォン・ヒッペル教授)
*人体への影響は必ずある
 今回の事故では現実が想像を超えることが多い。この先の「最悪の事態」に備えた方がよさそうだ。
「水蒸気爆発を起こすと大変です。冷却に失敗して大量の燃料ペレットが溶けると、炉心部から下に落ちる。これがいわゆるメルトダウンです。このとき圧力容器の底に水があると水蒸気爆発が起きる可能性があります。少なくともこれが『起きない』と断言はできません。どのくらいの規模の爆発になるかわかりませんが、圧力容器を破壊する程度のものになるかもしれません。そうなれば外側にある格納容器も壊れ、建屋も吹き飛ぶでしょう。
 もしこの最悪のシナリオが現実になると、いままで出てきた放射性物質の量とは桁違いの量のそれが外へ出ることになりますから、大きな被害となります」(京都大学・小出氏)
 現在は冷却水ポンプが動いているから、メルトダウンの可能性は低くなっている、韓国のPOSTECH大学先端原子力工学部・金武煥教授はそう考えている。
「ただし、強い余震が心配です。すでにダメージを受けて弱っている原子炉や格納容器のどこかに衝撃が加わり、健全性を維持できなくなったら、つまり冷却ができなくなると、最悪の事態を迎えるかもしれません。燃料が溶融して、最終的に放射性物質が漏れ出る。福島の燃料棒の数はチェルノブイリよりずっと多いから、深刻な被害をもたらすことになるでしょう」
 もしもに備えて、政府は避難区域を設けてきた。これに対して、放射線防護学が専門の立命館大学名誉教授・安斎育郎氏は批判する。
「同心円状に避難範囲を定めるというのはきわめて不適切だと思います。これは計画段階でやる方法です。たとえば今頃なら南向きの風は吹かないで、風は浪江町や福島市のほうに吹き、雨が降る。だから、光化学スモッグ注意報のように、毎日、風向きを考えた、こまめで合理的な対処が必要だったと思います。そのために1980年代中頃からスピーディ(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)が開発されたはずなのに、あまり役に立っていないような気がします。避難範囲を、円を描いて決めるのはあまりに稚拙で、ミスではないでしょうか」
 IAEA元事務次長の町末男氏も言う。
「積算線量を見てみると、福島第一原発の北西方向にある飯舘村、浪江町の一部などは原発から30km以上離れているにもかかわらず数値が高い。これは水素爆発で放射性物質が放出された3月12日、14日、15日に北西へ風が吹いていたためと思われます。つまり距離だけでなく、風向きも考慮しないといけないのです。今後、多量の放射性物質が出る可能性が低くなった段階で、地区ごとの放射線レベルを細かく測定し、必要な地区のみ避難指示を行うべきでしょう」
 今回の原発事故は人間の体にどんな影響をもたらすのか。専門家たちの意見は分かれている。たとえばフィンランド放射線・原子力安全センターのユッカ・ラークソネン所長は「損傷した原子炉の制御がこのまま維持されている限り、どんな人の健康への影響もそれほどないと私は思います」と話す。
 しかし、フランスの原子力政策の専門家マイケル・シュナイダー氏は、「『安全な被曝量』などというものは存在しません。たとえ微々たる量でも被曝が原因で病気になる確率は上がっていくのです。福島原発事故の影響で、がんなどの病気の患者が生まれることは疑いようがありません」と反論する。京都大学の小出氏も人体への影響があるという立場だ。
「枝野さんは『ただちに影響はない』という言葉を繰り返しているわけですが、その意味は『急性障害がない』ということなんです。でも、それを言い換えれば『晩発性の障害はある』ということ。人体への影響は必ずあると私は思います。それは長い年月のなかで、だんだんじわじわと出てくることになるでしょう」
 北海道大学の石川教授はとくに危険な放射性物質としてヨウ素とプルトニウムを挙げた。
「放射性ヨウ素は甲状腺に集積する性質があるため、甲状腺機能が活発な乳幼児の深刻な内部被曝が懸念されます。また3号機で使用されているMOX燃料にはプルトニウムが含まれているので、プルトニウムによる肺がんの発症も心配です。ただしがんの発症は10年後など晩発性なので、放射性物質との因果関係を証明するのは難しいと思います」
*淡水魚に高いリスクが
「飯舘村と浪江町の子供が心配」というのは、東工大助教の澤田氏だ。
「事故の初期に原発から放出されたヨウ素が問題なのです。ヨウ素131は半減期が短い分だけ、出てくる放射線も強いから。20km圏内の人は比較的早いうちに避難したからいいのですが、避難指示が出なかったこの2つの村の子供たちの甲状腺への影響を懸念しています。スピーディという放射能影響予測ネットワークシステムがありながら、どうしてその情報を生かして、避難ができなかったのか、とても残念に思います」
 土壌や海の汚染も深刻だと考えている専門家は多い。
「土壌については原発から30km以上離れているところでも農業・酪農に適さない地域が出てくるでしょう。こうした土地では土壌の入れ替えなど大規模な除染が必要となります。また海水については高濃度汚染水排出による長期的影響が懸念されます。そのため海水や海藻を含む海産物に対する放射能のモニタリングを実施すべきです」(東海大学工学部原子力工学科・高木直行教授)
 コロンビア大学放射線研究所のデビッド・ブレナー所長は、放射性物質のなかでもセシウムが要注意だと話した。
「セシウムの多くは太平洋に永遠に残るが希釈されます。いくらかは蒸発して雲に入り、雨になってまた陸に戻る。いくらかは川や湖などに落ちる。そして野菜や淡水魚に影響を与えるでしょう。個人個人が曝される量は少ないですが、多くの人が曝されるという点で心配です。海の魚より淡水魚のほうが、希釈という点でその効果が薄いのでリスクがあります。したがって、セシウムの量の検査を実施すべきでしょう」
 海には歴史上ないほどの大量の高濃度の放射性物質が流れている。何が起きてもおかしくない。そう考えた方がよい。
 東京電力は福島第一の1~4号機を、廃炉にすることを決めている。だがどのくらいの時間がかかるのか。オランダ・エネルギー研究財団の研究員ボブ・ファン・デル・ズワーン氏は、「これは厳しく長い過程となる。すっかりきれいにするまでには、おそらく10年はかかる」と指摘する。専門家のなかには30年かかるという人もいる。近畿大学の伊藤氏は「核燃料を充分に冷やすだけで10~20年必要」と言う。
「いろいろな方法があると思いますが、まず大事なことは核燃料物質を取り除き、原発とは別の所に保管することです。そして残った瓦礫を含め、残留している放射性物質をきちっと封じ込める。コンクリートで覆ってしまうなり、野球をやるドームのようなものを作るなりして、密封するのです」
 廃炉にあたって、新たな問題も浮上するという。名古屋大学大学院工学研究科マテリアル理工学専攻の榎田洋一教授が説明する。
「今回の事故でむしろ問題となるのは、廃炉そのものより損壊した燃料や放射性物質に汚染された放射性固体廃棄物の処理です。通常の原発を廃炉にした前例はあるのですが、福島のようなケースはありません。普通の廃炉の場合、排出される廃棄物の95%以上は放射性廃棄物として取り扱う必要のない汚染レベルのものですが、今回の廃棄物は違います。だから核燃料の再処理施設から出てくるような『まっとうな』放射性廃棄物でさえ、処分場所を探すのに苦労するこの国で、福島原発から出る『訳あり』廃棄物をどこで始末するか、処分場決定までの困難が予想されるのです」
*隣家の庭にゴミを捨てた日本
 廃炉で終わりではないのだ。今回の原発事故はこの国が長らく培ってきた信用をも貶めた。
 アメリカの原子力エンジニア、ベハード・ナックハイ氏は「3・11」以前の日本の印象をこう話す。
「日本は科学の分野において世界で最も発展を遂げた国のひとつと思われてきた。そして歴史的に、日本は津波や地震にたびたび見舞われてきました。だから自然災害に対しても充分に準備ができていて、原子力発電所という高度なセキュリティが不可欠な場所では効果的な防衛システムが機能する。それによって大地震や大津波が来ても対処できると信じていたのです」
 しかし、大事故は起きてしまった。フランス国立科学研究センター原子炉グループ代表のダニエル・ユエ氏は、原発関係者が「歴史に学ばなかったからだ」と分析する。
「なぜ彼らは1896年6月15日の(明治三陸地震にともなう)大津波による大惨事を知らなかったのでしょうか。もしちゃんと勉強していれば、津波によって原発の電源が喪失して、冷却システムが止まることはなかったはずです」
 核化学を専門とするローマ大学のジュゼッペ・リウッツォ教授も同じ指摘をした。
「福島第一原発は約40年前に津波のことを考慮していない、不適切な設計のもとに建てられていました。その結果、海水によって発電機が使い物にならなくなって、原発をコントロールすることができなくなったのです」
 原子力の専門家40人に「今回、日本政府や東電の事故への対応は適切だったか」とたずねたところ、「適切だった」2人、「適切ではなかった」22人、「その他」16人という回答結果を得た。当然のことだが、きわめて厳しい評価だ。
 原子力工学を専門とする九州大学特任教授の工藤和彦氏は、その理由として「情報発信のまずさ」をまず挙げた。
「官邸、保安院、東電それぞれの記者会見が別々に行われているのは、奇異に感じた。情報も錯綜していることがありました。このような大事故の場合、関係者が一堂に会して情報を発信することが必要ではないでしょうか。また外国からの技術支援はある程度積極的に受けるべきだと思います。フランスやアメリカでは重大事故の研究が進んでおり、我が国が持っていない技術も手にしているのですから」
 技術的な面での未熟さも指摘されている。
「1号機については、あまりに時間がなくてどうしようもなかったかもしれません。あっという間に水素爆発してしまいましたから。でも2号機、3号機については適切で時宜を得た抑止策をとっていれば、損傷を避けられたと思います」(フィンランドの放射線・原子力安全センターのラークソネン所長)
 放射性物質に汚染された水の海への放出は、東アジアの国々から顰蹙を買った。ソウル大学の徐教授はこう批判する。
「絶対にいけないことだと思う。汚染水を周辺国に事前通告なしに海に棄てるなんて、夜中に寝静まっている隣家の庭にゴミを棄てるようなものです。失礼で非常識な行動と言えるでしょう」
 福島原発事故の影響は環境面だけでなく、世界各国のエネルギー政策にまで広がっている。「我々にとって原子力はこれからも必要か」。40人の専門家たちに尋ねた。その答えは、
 ・必要18人
 ・条件付きで必要8人
 ・不要8人
 ・その他6人
 と分かれた。フランス原子力庁元原子炉部長のベルトラン・バレ氏は「必要だ」と言う。
「期間は国によって異なるが、しばらく原発建設の休止を覚悟しなければならない。しかし原子力以外に地球の気候のバランスを危うくすることなく、増え続ける人口と急速な経済発展を続ける地域を支えられるエネルギーはありません」
 前IAEA事務次長のハイノネン氏も「他に優れた代替エネルギーがあると私は思いません。それぞれのエネルギーには危険と弱点があります。我々がするべきことは、事故から学び原子力をより安全にすることです」と話す。
*地震国に原発はムリだった
 在日イタリア大使館元科学技術担当官のカルロ・エッラーニ氏は「原子力は必要ない」と考えている。
「いままでのライフスタイルを変えれば原子力に頼る必要はなくなると思う。浪費を止め、必要のないものの生産を止めればいいでしょう。ウランはやがて枯渇するし、核廃棄物は永遠の問題として残ってしまう」
 日本の専門家たちはどう考えているのか。日本原子力学会の辻倉米蔵会長は、「人類の発展のためにエネルギー確保は必要。化石燃料のCO2排出問題などの課題解決の目処が立たない以上、安全運転さえすれば、地球環境に対して影響の少ない原子力に頼らざるを得ないと認識している」と主張する。日本はどうすべきか。フランスの核物理学者ベルナール・ラポンシュ氏の答えはシンプルだ。
「原子力はなるべく早く止めるべきです。とくに日本のような地震があるゾーンに原発は造るべきではありません」
 立命館大学の安斎名誉教授は事故後に福島の浪江町を歩いてみたという。
「現地に行ってみると花は美しく咲き、畑にも豊かな実りがあるのですが、人っ子一人いない。ここには、しばらく戻れそうもないという『透明の恐怖』を感じました。こういうことは現場に行かないとわかりません。そういう感覚を世界がどれだけ共有できるかだと思うのです。あの事故は日本特有のものだといわれているうちは何も変わらない。いずれ原発はなくさなくてはいけないでしょう。私たちの間ではフェードアウトと言っています。徐々に減らしていくのです」
 最後に九州大学の工藤教授の言葉を紹介しよう。
「人間は生きていく限り、リスクフリーで暮らすことはできません。自然現象にしろ人為的な事故にしろ、あるリスクを許容して生活しているのが現実です。今回の事故が多くのリスクのなかで許容されるのか、拒否されるのかは世界が、そして日本人が選択していかねばなりません」
 あなたは、これでも原発が必要だと思いますか。
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 
チェルノブイリの8倍酷い福島 こんなに長期間に亘って放射性物質が外に出続けるのは人類史上例がない2011-04-25 | 地震/原発
「原発に近い地域の子供たちをいかにして放射性物質から守るか」小出裕章京都大学原子炉実験所助教2011-04-23 | 地震/原発
原発の安全性は週1回48分の会議で決まった/人間の安全を議論しない原子力安全委員会2011-04-22 | 地震/原発

菅首相 浜岡原発の運転全面停止を中部電力に要請 高さ15?の防波壁完成(13年度末)まで

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〈来栖の独白〉
 良い決断。英断。「決断は人気取り」と評する人もいるだろうけれど、それならそれでもいい。昨年の「諫早湾」(最下段に記事)以来の良い決断。菅さんだって、たまにはこういうことをしてもいい。
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浜岡原発:全面停止へ 東海地震備え、安全対策完成まで
 菅直人首相は6日夜、首相官邸で緊急記者会見し、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)について、現在定期検査中の3号機に加え、稼働中の4、5号機を含むすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請したことを明らかにした。浜岡原発は東海地震の予想震源域に立地しており、地震により重大事故が発生する可能性がある。首相は「国民の安全と安心を考えた。浜岡原発で重大な事故が発生した場合に、日本社会全体に及ぶ甚大な影響を考慮した」と述べ、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、大地震に伴う重大事故発生を防ぐため停止要請したとの考えを示した。
 首相の指示を受け、海江田万里経済産業相は同日、中部電の水野明久社長に原子炉の停止を要請。水野社長は「迅速に検討する」とのコメントを発表した。これにより、浜岡原発は全面停止されることになる。
 首相は会見で、運転停止要請の具体的な理由について文部科学省の地震調査研究推進本部が「30年以内にマグニチュード8程度の東海地震が発生する可能性は87%」と分析していることを紹介。「東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが必要だ。完成までの間、すべての原子炉の運転を停止すべきだと考えた」と説明した。中部電は浜岡原発の海側に高さ15メートルの防波壁を設置する工事に着手したが、完成は13年度末とされており、少なくとも完成まで運転は停止されるとみられる。
 中部電幹部は4、5号機の具体的な停止時期について「検討中」としているが、電力需要が高まる7月以前の停止となれば、供給力から最大電力量を引いた予備電力量が約80万キロワットに落ち込み、管内の電力需要が逼迫(ひっぱく)する恐れもある。首相は「電力需給バランスに大きな支障が生じないよう、政府としても最大限の対策を講じる」と説明。「電力不足のリスクは、地域住民をはじめとする全国民がより一層、省電力、省エネルギーの工夫をしていただくことで、必ず乗り越えていけると確信している」と協力を呼び掛けた。【田中成之、丸山進】
毎日新聞 2011年5月6日 19時03分(最終更新 5月6日 22時34分)
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浜岡原発:菅首相の緊急会見要旨
 首相として海江田万里経済産業相を通じ、浜岡原発のすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請した。国民の安全と安心を考えた結果の判断だ。浜岡原発で重大な事故が発生した場合に、日本社会全体に及ぶ甚大な影響も考慮した。
 文部科学省地震調査研究推進本部の評価では、これから30年以内に浜岡原発の所在地域を震源とするマグニチュード(M)8程度の東海地震が発生する可能性は87%と、極めて切迫している。特別な状況を考慮すれば、東海地震に十分耐えられるよう防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが必要だ。対策完成まで、定期検査中で停止中の3号機のみならずすべての原子炉を停止すべきだ。
 浜岡原発は活断層の上に立地する危険性が指摘されてきた。先の震災と(東京電力福島第1)原発事故に直面しさまざまな意見を聞き、海江田経産相とともに熟慮を重ねて決定した。
 中部電力管内の電力需給バランスに大きな支障が生じないよう、政府として最大限の対策を講じる。電力不足のリスクは地域住民をはじめ全国民が一層、省電力の工夫をすることで必ず乗り越えられる。国民のご理解とご協力をお願いする。
 (停止は)基本的に要請だ。指示や命令は現在の法制度では決まっていない。(中部電力に)十分に理解いただけるように説得していきたい。
毎日新聞 2011年5月6日 20時39分(最終更新 5月6日 20時40分)
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浜岡原発:津波対策「不十分」と指摘 30年以内にM8級
 浜岡原発は、東海地震の想定震源域の真上に立地している。東海地震はマグニチュード(M)8級の巨大地震で、今後30年以内に87%の確率で起きると推定されており、唯一予知体制が敷かれ、地震対策が集中的に進められてきた。
 中部電力は3、4号機について、国が06年9月に原発の新耐震指針を出す前の05年10月、耐震補強工事を始めた。想定する地震の加速度も従来の600ガルから800ガルに引き上げ、補強工事で1000ガルの揺れにも耐えられると説明した。しかし、新潟県中越沖地震(M6.8)の際に東京電力柏崎刈羽原発直下の岩盤で、同原発の想定を大きく上回る1000ガル近くの揺れが観測された。
 一方、津波については、過去に浜岡原発の敷地に最も大きな影響を及ぼしたと考えられる1854年の安政東海地震の痕跡高などから、敷地付近の津波高は満潮でも最大6メートル程度と判断した上で、対策を進めていた。中部電力によると、浜岡原発の敷地の高さは、想定していた津波高以上の6〜8メートル。さらに、敷地前面に高さ10〜15メートルの砂丘が存在している上、原子炉建屋の出入り口は防水構造にしており、「津波に対する安全性は十分確保している」としていた。
 しかし、東日本大震災の津波で福島第1原発は非常用発電機が同時故障し、原子炉冷却機能が失われて水素爆発が起きるなど深刻な事態になった。事故を受け、中部電力は浜岡原発に高さ15メートルの防波壁を作る方針を示したが、同原発の運転差し止めを求めて係争中の原告側は「せめて防波壁が完成するまで運転を止めるべきだ」として6月にも運転差し止めの仮処分申請を行う方針だった。
 また、中部電は4月28日に発表した12年3月期の業績予想で、10年11月から定期検査中の3号機を7月に運転再開すると表明した。中部電は福島第1原発事故を受け、高さ15メートルの防波壁の設置や非常用電源の確保などに約300億円をかける緊急対策をまとめている。一方、川勝平太・静岡県知事は「津波対策が不十分。7月の再稼働は客観的にみて難しい」と話していた。
毎日新聞 2011年5月6日 21時08分(最終更新 5月6日 21時13分)
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英断に敬意=「地元経済にも適切対応を」−川勝静岡知事
 菅直人首相が6日、中部電力に対し浜岡原発(静岡県御前崎市)の全原子炉の停止を要請したことについて、静岡県の川勝平太知事は「安全性確保に対する地元の要望を最優先した菅総理と海江田(万里・経済産業)大臣のご英断に敬意を表します」とするコメントを発表した。その上で「地元経済に対する影響についても、適切に対応していただかなければなりません」と国に配慮を求めた。
 また、小林佐登志県危機管理監は記者団に「国がどういう考えに基づいてこういう判断をしたのかや、今後、浜岡原発をどうしていくのかについて国の考え方を聞きたい」と述べ、週明けにも原子力安全・保安院に対し、説明を求める考えを示した。原子炉の稼働停止に伴う交付金や税の減収など、地元自治体財政への影響については「国が決めたことで生ずる結果には、当然国が対応してもらわなければならない」と強調した。(時事通信2011/05/06-21:58)
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浜岡原発:全面停止へ 戸惑う地元自治体「あまりに唐突」
 中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の原子炉を全て停止するよう菅直人首相が6日、中部電力に要請したことについて、地元住民や自治体、関係者の間には戸惑いと歓迎が交錯した。「唐突で人気取り」「交付金に依存する自治体財政はどうなる」と疑問視する向きがある一方、危険性を訴えてきた市民団体などからは「当然の判断だ」とする声が上がった。
 ◇静岡・御前崎
 浜岡原発を市内に抱える静岡県御前崎市の建設業、植田政志さん(55)は友人から原発停止要請のニュースを聞いた。「あまりにも唐突で戸惑った。(菅首相が)人気取りのためにやったのではないか」と感じたという。「福島第1原発の事故で安全神話が崩れたということなのだろうが、止めるというなら地元にきちんとわかりやすく説明をすべきではないか。これまで原発と共存共栄でやってきたので、税収ダウンなどの影響が心配だ」と話した。
 同市内で原発から約2キロに住む農業の男性(50)は「突然の発表だったので周囲はこれから混乱するのではないか」と驚いた様子。「原発があることで御前崎が潤っている面があるが、福島の原発事故で地元の農業が壊滅的被害を受けているという報道も見ていたので、原発に怖さを感じていたことも事実。メロンをハウス栽培しているので東京電力管内のように電力不足になって計画停電などが実施されると困る。大変複雑だ」と話した。
 石原茂雄・御前崎市長は「話が唐突過ぎて言葉が出ない。海江田万里経済産業相と5日に会って話したばかりだ。地元の意見をよく聞いて3号機の運転再開を判断すると言っていたのに4、5号機も止めるなんて」と戸惑う。その上で「原発交付金に依存する自治体財政はどうなるのか、困惑を通り越してあっけに取られるばかりだ。菅首相は選挙目当てでこんな思い付きを言うのかと勘ぐってしまう。国策に従って原発を受け入れてきた自治体はどうなるのか。中部電力はどうするのか聞きたい」と怒りをあらわにした。
 一方、静岡県の川勝平太知事はコメントを発表し「福島第1原発の事故を受け、安全性確保に対する地元の要望を最優先した英断に敬意を表する」と歓迎した。ただし、「国におかれては地元経済に対する影響についても適切に対応していただかねばならない」と注文も付けた。
 ◇差し止め訴訟弁護団長
 差し止め訴訟の原告弁護団長、河合弘之弁護士(67)は「歴史的な大英断だ」と評価した。「福島原発事故が発生して、対応しきれない恐怖を味わったことが決断につながったのではないか。福島を制圧できていない今、仮に浜岡原発でも事故が発生したら、東京は挟み撃ちになる。その恐ろしさを想定したのではないか」と分析した。
 「菅首相は会見で、中長期的に対策が立てられるまでの間の停止と話していたが、その点はばかげている。どんな状況でも浜岡を廃炉にしなければいけない」と強調した。
 原告団は福島第1原発の事故を受け、5月下旬に浜岡原発の運転停止を求める仮処分を静岡地裁に申し立てる予定だった。河合弁護士は「私たちが裁判を通じて訴え続けてきたことが社会に伝わって政府の決断につながった」と胸を張った。
 ◇「厳しい電力事情になる」 中部電力
 名古屋市東区の中部電力本社には6日夜、大勢の報道陣が詰めかけた。広報担当者は「浜岡原発が停止すると、厳しい電力事情になるのは間違いない」と厳しい表情で話した。
 同社広報によると、6日午後6時半ごろ、海江田万里経済産業相が水野明久社長に電話し、停止要請について「運転中の浜岡原発4、5号機も東海地震の震源域にあり、地震が発生する可能性が高い。防波壁が完成するまでは停止するようにお願いしたい」と説明したという。防波壁完成は13年末ごろで、約2年かかる見通しだ。
 この電話の後、原子力安全・保安院の担当者が保安院に同社の岡部一彦東京支社長を呼び出し、停止要請について詳細に書いた要請書を手渡したという。【三木幸治、高木香奈】
 ◇市民団体
 浜岡原発停止を求めて約15年間活動を続けてきた市民団体「浜岡原発を考える静岡ネットワーク」の運営委員で、運転差し止め訴訟原告団の一人でもある長野栄一さん(90)は「菅首相はよく言ってくれた。止まるのはありがたい」と喜んだ。
 一方で「停止要請の原因が福島原発の事故かと思うと、福島県民に同情を禁じ得ない」と語る。「日本国内のすべての原発が停止するよう活動したい。国が脱原発へと政策転換してくれたら」と話した。
 同ネットワーク事務局長の鈴木卓馬さん(71)も「菅首相を素直に評価したい。ただ、東海地震がどれほどの規模になるか想像できないのに、完全な防災対策をとることは不可能。私たちは廃炉にするよう強く求めていきたい」と話した。
 ◇静岡県袋井市長
 市の一部が浜岡原発から20キロ圏内にある静岡県袋井市の原田英之市長は談話で「首相は、会見に先立って地元の意見を聞くという、地域主権の原則に反しているのではないか」と不快感を示した。そのうえで「(浜岡原発が)東海地震への備えが万全でないことは理解しているが、仮に原発を止めたときの代替エネルギーの問題をセットで考えなければならず、(要請に)異議がある」と指摘した。
 ◇掛川市長
 浜岡原発の10キロ圏内にかかる掛川市の松井三郎市長は「国の原子力安全・保安院から午後7時50分すぎ、連絡をもらった。浜岡原発についてマグニチュード9クラスの地震にも耐えられる安全対策を求めてきた立場としては、今回の政府の判断は妥当だろう」と述べ、菅首相の判断を一定程度、評価した。
 一方で、松井市長は「地元自治体に事前の連絡がなく、首相がいきなり記者会見で発表するなんて、いかにも唐突で遺憾だ」と、不満を示した。
毎日新聞 2011年5月6日 21時23分(最終更新 5月6日 21時59分)
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浜岡原発:中部経済、夏に懸念 関西電力に支援要請
 浜岡原発の全原子炉停止が避けられない情勢になったことを受けて、中部電力が電力を供給する愛知、静岡、三重、岐阜、長野の5県では需要がピークを迎える夏場の電力供給に懸念が高まってきた。東海地域にはトヨタ自動車、ホンダ、スズキなど大手自動車メーカーなど製造業の工場が集積している。仮に電力の使用が制限される事態になれば、東日本大震災で打撃を受けた生産の復旧への影響は避けられない。
 中部電が策定した11年度の供給計画によると、同社の供給力は約3000万キロワットで、ピーク時の最大電力量を約2560万キロワットと想定している。供給力から最大電力量を引いた予備電力は439万キロワットだ。
 浜岡原発の供給電力量は、現在定期検査中の3号機(出力110万キロワット)と4、5号機の合計で360万キロワットのため、浜岡原発を全面停止した場合の予備電力量は約80万キロワットに落ち込み、予備電力率は約3%程度に低下することになる。
 中部電幹部は「極めて低い水準で、計画停電などの協力をお願いする可能性もある。東電に融通している電力供給にも影響が出る恐れがある」とする。海江田万里経済産業相は6日、関西電力に対して中部電に電力を融通するよう支援要請したことを明らかにしたが、夏場に電力が不足する東電管内から関西電力管内に生産を移管する予定の企業も多く、関西電力もどれほど余裕があるか不明だ。
 浜岡原発では10年12月に駿河湾沖地震などの影響で三つの原子炉全てが停止した時期がある。しかし、この時は電力需要の少ない冬場だったため、火力発電所の運転再開などで補うことができた。管内の電力需要の約7割は産業用で、仮に猛暑などで家庭の使用電力量が増加すれば、使用制限など生産活動に影響が出る可能性もある。【工藤昭久】
毎日新聞 2011年5月6日 21時12分(最終更新 5月6日 21時43分)
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諫早湾干拓、「歴史的に反省あってもいい」
産経ニュース2010.12.15 20:27
 諫早湾干拓訴訟
 −−諫早湾の開門訴訟で、首相の上告見送りの表明を受け、(古川康)佐賀県知事が評価する一方で、長崎県の中村法道知事が「地元に前もって一切話がない」と強く批判している。地元の対応が分かれているなか、難しい判断を迫られたと思うが、どのように理解を求めていくつもりか。今後、開門に対する補償を検討する考えはあるか
 「まあ私あの、1997(平成9)年の『ギロチン』以来、現地に何度も足を運び、いろいろな皆さんから状況を聞いていましたし、また、構造もたぶん国会議員の中でもよく知っている中の一人だと思っています。そういう意味で、今回の高裁判決に対して上告はしないという判断をしました。まあ今日、午前中にも皆さんの前でそのことは伝えました。と同時に、現在営農している人に悪影響がないように、きちんとするよう指示もいたしました」
 −−諫早湾干拓は当時、大型公共工事として問題になったが、無駄な大型公共工事に対して反対していくという姿勢が、今回の上告しないという首相の決定の要因になっているか
 「この諫早干拓事業というのは、いろいろな意味で象徴的な事業です。農林(水産)省にとっては確か最後の国営干拓事業じゃなかったでしょうか。そういう意味で当時からいろいろ議論があった中で今日まで、まあ事実上の工事は終わっているわけですね。そういう中で色々な私は歴史的には反省があってもいいんじゃないかと、こう思っています」

「木曽川長良川連続リンチ殺人事件」実名報道・・・

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3府県連続リンチ殺人:匿名か実名か、判断分かれた理由−−死刑が確定した元少年3人
 大阪など3府県で94年、男性4人が殺害された「連続リンチ殺人事件」。最高裁が3月10日、強盗殺人罪などに問われた当時18〜19歳の元少年3人の上告を棄却し、全員に死刑を言い渡した2審判決が同30日に確定した。新聞・テレビの大半は、それまでの匿名を実名報道に切り替えた。毎日新聞は匿名を継続したが少数派だ。報道各社にアンケートして匿名・実名報道の理由を聞くとともに、専門家に話を聞いた。【臺宏士、内藤陽】
 今回は新聞5社(朝日、読売、産経、日経、東京)▽通信2社(共同、時事)▽放送6社(NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)の計13社に対し、判決を受け(1)実名、匿名のどちらで報じたか(2)その判断理由(3)読者・視聴者への説明方法−−を尋ねた。その結果、これまでと同様、匿名報道を維持したのは、毎日、東京新聞とテレビ朝日の3社だけだった。名古屋のローカル局はキー局の判断に合わせた。
 少年法は未成年者の犯罪について実名報道を禁じているため、これまでは一部週刊誌を除き、マスコミ各社は匿名報道を続けてきた。最高裁の上告棄却を受けた今回、判断が分かれたのは、死刑判決が確定することで同法が目的とする更生(社会復帰)の機会が失われたかどうかの認識で違いが出たからとみられる。
 匿名報道を継続した毎日新聞は3月11日朝刊で、「元少年らには今後も更生に向けて事件を起こしたことを悔い、被害者・遺族に心から謝罪する姿勢が求められる。死刑確定後も再審や恩赦が認められて社会復帰する可能性が全くないとは言い切れない」などとの見解を掲載した。東京新聞は「少年法に配慮する必要性は消えていない」、また、テレビ朝日は「判決が確定していない段階では少年法の精神を尊重した」としたが、「確定した段階で実名に切り替える」との立場で、4月1日ネットニュースで実名報道した。
 これに対して、実名報道に切り替えた社は「生命を奪われる刑の対象者は明らかにすべきだと判断した」(朝日新聞)や「凶悪で重大な犯罪で社会の関心が高い」(NHK)などとした。元少年3人の少年時の顔写真を放送したフジテレビは「死刑執行は重要な国家権力の行使である」と回答した。また、テレビ朝日を除き、各社は記事や番組内で理由を説明した。
 日弁連(宇都宮健児会長)は3月10日、報道各社の大半が実名報道に踏み切ったことについて「極めて遺憾」とする会長声明を発表。「再審や恩赦制度があることから少年が社会復帰する可能性は残っている」とした。また、江田五月法相は同11日の閣議後会見で各社の対応について「それぞれの報道機関の判断だ。私どもがどうこう言うことではない」と述べた。一方、元少年の代理人弁護士の一人は判決前、報道各社に実名で報じないことを求める要望書を出していた。

 ◆報道各社の実名・匿名対応とその理由◆
 (毎日新聞の対応は文中。●は実名、○は匿名、△は判決時は匿名で、確定時実名。アンケートは判決言い渡し直後に実施)
朝日新聞  ● 生命を奪われる刑の対象者は明らかにすべきだと判断した。本社は04年、事件当時は少年でも、死刑が確定した場合は原則として実名で報道する方針を決めている
読売新聞  ● 更生(社会復帰)の機会はなくなる。国家が人の命を奪う死刑の対象が誰なのかは重大な社会的関心事となる
日経新聞  ● 死刑判決が下された重大性に加え、被告の更生の機会がなくなることを考慮した
東京新聞  ○ 被告との面会や書簡のやりとりから内心の変化もうかがえる。死刑執行時まで罪に向き合う日々が残されている。現時点では、少年法が求める配慮の必要性はなお消えていない
産経新聞  ● 死刑が確定する可能性が極めて高い。社会復帰などを前提とした更生の機会は失われる。事件の重大性も考慮した
共同通信  ● 更生、社会復帰に配慮する必要がない。上告審判決への訂正申し立てで、量刑が覆った例がない。4人死亡の事実関係に争いはなく、再審が認められる可能性は事実上ない
時事通信  ● 社会復帰を前提とする更生の機会がなくなることに加え、事件の重大性、悪質性などを総合的に判断した
NHK  ● 4人が次々に殺害されるという凶悪で重大な犯罪で社会の関心が高い。社会復帰して更生する可能性が事実上なくなった
TBS  ● 更生と社会復帰の可能性への配慮が必要なくなる。4人もの生命が奪われ、被告の生命が奪われることになるという事件の重大性なども考慮した
日本テレビ ● 事実上死刑が確定した。更生の可能性が基本的になくなった。事件が社会に与えた影響を踏まえた
テレビ朝日 △ 判決が確定していない段階では、少年法の精神を尊重し、匿名としている。死刑判決が確定した段階で、実名に切り替えた
フジテレビ ● 更生の可能性がなくなった。死刑執行は重要な国家権力の行使である。事件の重大性などを総合的に判断した
テレビ東京 ● 更生や社会復帰に配慮をする必要性が失われたと考えられる。事案の重要性にかんがみて。少年事件での最高裁の死刑判決は重く、これまでに申し立てで量刑が覆ったことがない
毎日新聞 2011年5月7日 東京朝刊
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木曽川・長良川リンチ殺人事件「少年法が求める配慮の必要性から、中日新聞は3被告を匿名で報道します」2011-03-11 | 死刑/重刑/生命犯 問題
「木曽川・長良川リンチ殺人事件」実名報道=更生を全否定 越えてはならない一線を越えた2011-03-10 | 死刑/重刑/生命犯 問題
「木曽川・長良川連続リンチ殺人事件」 被告と面会続ける遺族/極刑求める遺族2011-03-09 | 死刑/重刑/生命犯 問題
木曽川長良川リンチ殺人事件

高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概

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文明転換へ覚悟と気概 週のはじめに考える
中日新聞【社説】2011年5月8日
 東日本の巨大地震からまもなく二カ月。連日の余震となお遠い復興への道のり。私たちが問われているのは、文明転換への覚悟と気概のようです。
 なかば義務感にかられて、北欧フィンランドに建設中の放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」を見に出かけました。
 多くの国際賞受賞のこの記録映画の配給元は「アップリンク」。今秋公開の予定でしたが、四月、東京・渋谷の自社劇場で上映したところ連日の行列と満席、全国各地の五十館以上での上映へと広がっていったそうです。前例のない反響、福島第一原発事故で国民が原発問題に真正面から向き合うようになったことがわかります。
 高レベル放射性廃棄物は世界に二十五万トン、危険性が消えるまでには十万年。「オンカロ」はフィンランド語で隠し場所を意味します。廃棄物を凍土奥深くの岩盤に埋め込む世界初の試みです。管理可能か、明快な回答を持ち合わせる専門家はいませんでした。
*人間支配が及ばない
 日本列島が現在の形になったのは一万年前、人類が文明をもったのはたかだか五、六千年前です。十万年は人間のリアルな思考や言葉が及ぶ時空域ではありません。人間が制御できないという絶望感。静かな画面は、人類が手にしてしまった原発の恐怖と不気味さを伝えていました。
 続いて、菅直人首相が浜岡原発の全炉停止を要請しました。法的手続きではない政治判断でした。
 東京から百八十キロ、名古屋から百三十キロ。東海地震想定域の真上の浜岡原発は「世界で最も危険な原発」と呼ばれてきました。事故の場合の被害は福島原発の比ではなく、首都圏の一千万人の避難や首都喪失も想定されました。
*やむをえぬ浜岡の停止
 マグニチュード9・0の巨大地震は、日本列島を東西に数メートル引き伸ばし、首都直下型や東海、東南海・南海地震誘発が憂慮されます。浜岡原発停止はやむをえぬ判断でしょう。全原発に及ぼすべきかどうか、そこが問題です。
 浜岡を含め日本の原発は五十四基、電力の30%を占めるようになっています。すでに原油枯渇の兆候があり、太陽光や風力のクリーンエネルギーへ転換させるにしろ、先行きはなお不透明です。電力の安定供給のためには原発は不可欠という状況です。
 原発停止による生活レベルの一九七〇年代への後退は許容できるにしても、グローバル競争の落後者になる恐怖に打ち勝てるかどうか。私たちは無限の成長を前提にした近代世界の住人。文明転換の勇気をもてるかどうかです。
 地質学の石橋克彦神戸大名誉教授は、地震と原発が複合する破局的災害・「原発震災」の概念や言葉を提唱、浜岡原発の廃炉を訴えるなど警告を発してきました。
 「世界」や「中央公論」の誌上には「日本列島全域が今世紀半ばごろまで大地震活動期」「原発は完成された技術ではない」「人間の地震に関する理解は不十分」「地震列島に五十基以上の大型原子炉を林立させることは暴挙」とも書いています。警告通り、福島原発の大損傷が発生してしまいました。
 「原発震災」は人間存在への問いかけだったのでしょう。教授が提言したように原発総点検、リスクが高い順の段階的閉鎖・縮小が現実路線のように映ります。世界観を変えるには覚悟と決意、気概がいります。
 日本を代表する東北の農漁業。その被害も甚大でした。食料問題も原発に劣らない不安で重大な問題。世界の食料品価格が高騰、二〇〇八年のリーマン・ショック時を上回っているからです。
 食料価格高騰は投機と「将来の供給不足懸念」が要因とされるだけに深刻です。コメと野菜こそ90%台と80%台の自給率を保っているものの、小麦は10%台、大豆やトウモロコシはほとんど輸入しています。命にかかわる問題です。農業の復興と立て直し、食料の自給は急務です。
*新しい幸せと充実が
 失われたコミュニティーの復元や修復も大切なテーマ。震災は、私たちがそれぞれが独立しながらも、結局は支え合い、助け合って生きていくものだ、ということをあらためて気づかせてくれました。それは、ボランティアに向かう若者の行動にも表れました。
 極限状況にあっても、人間はなお優しさや思いやり、勇気や忍耐を示す存在でした。献身や自己犠牲も。それは私たちの未来へ向けての大きな希望でした。
 経済的繁栄や快適な生活とは別次元の幸せと充実。それが追い求める内容かもしれません。私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。 *背景色着色は来栖
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使用済み燃料 大量に
中日新聞2011/5/7Sat.夕刊
 政府の要請を受けて浜岡原発が全面停止しても、建屋内には使用済み燃料が大量に残る。このため、想定外の地震や津波が起きた際の危険性はすぐには去らない。
 核燃料は、燃料棒を束ねた燃料集合体を一体とし、使用後も原子炉建屋内のプールで貯蔵される。冷却のために最低でも2年弱は保管され、青森県六ヶ所村の再処理工場や海外などに運ばれる。
 中電によると、3月末時点で浜岡原発1〜5号機に保管されている使用済み核燃料は計6625体。福島原発の事故を受け、中電は緊急対策として冷却機能を保つための非常用ディーゼル発電機を建屋屋上に設置した。(略)
 榎田洋一名大院教授(原子力工学)は「原発を全面停止しても、使用済み燃料は発熱が続く。外部に移すにも、安全性が整った施設に限られており、簡単に運び出せない。国内の原発からは、六ヶ所村だけで処理しきれない量の使用済み燃料が出ており、長期的に手だてを考えなければならない」と話している。
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 

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一番心配なのは巨大海底断層の上に立つ浜岡原発 / 直下型東海地震、その時期が近づいている2011-04-01 | 地震/原発
東海地震予想震源地の真上に建つ「最も危険」とされる浜岡原発 中部電力は地盤は硬いと言うが2011-04-08 | 地震/原発
40人の原子力専門家が明かす「フクシマの真実」/これでも原発のリスク、許容しますか2011-05-06 | 地震/原発


日本の原発テロ対策に米が憂慮 「台本通り訓練」批判も

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日本の原発テロ対策に米が憂慮 「台本通り訓練」批判も
 【ニューヨーク共同】日本各地の原子力発電所のテロ対策に、米側が憂慮を示していたことが内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が7日公開した米外交公電で明らかになった。原発の警備体制をワシントンに報告する一方、原発テロを想定した訓練が台本通りの進行に終始していることを批判している。
 2007年2月26日付の在日米大使館発の公電によると、米側は各地の原発に武装警官を配置できないか日本政府に質問、文部科学省は「原発の事業者と警察当局が判断する」とした。公電は民間警備員による武器携行は法律上不可能との日本側の説明も記載しており、米側が武装部隊の必要性を念頭に置いていることをうかがわせる。
 米側は特に茨城県東海村を「主なプルトニウム保管施設」と指摘。武装部隊がいないとして日本側に事情をただしたが、文科省は「武装警察の配置が正当化できるほどの脅威はない」と説明したとしている。
 また原発の重要区域に出入りする労働者の身元調査も米側は求めたが、文科省は「日本社会では神経を使うプライバシーの問題を取り上げるのは避けてほしい」と頼む一方で、日本政府が「非公式に」身元調査をしている可能性は認めたとした。
 06年1月27日付けの公電は、関西電力美浜原発(福井県)で前年11月に行われた国民保護法に基づく対テロ訓練を報告し「台本通りで少し完璧すぎる」と指摘。06年11月2日付の公電は東海村での同年9月の訓練について「参加者が台本を持っており現実味がない」との日本側のコメントを記した。
 米大使館員らが警備体制を調べて報告したことが公電に記録されているのは東京電力柏崎刈羽原発と中国電力島根原発だった。
2011/05/08 15:54【共同通信】
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日本の原発、テロ攻撃対策も不十分−ウィキリークスの米外交公電
きょうのWSJ日本版より
【東京】福島第1原子力発電所の事故は、地震と津波に対する日本政府の原子炉安全対策上の欠陥を露呈した。しかし内部告発サイト「ウィキリークス」が先週末発表した米政府の外交公電によれば、米当局者は近年、テロ攻撃に対する原子力施設防衛でも日本政府が十分な予防策を講じていないと懸念していたことが明らかになった。
 福島第1原子力発電所ウィキリークスの公表した一連の外交公電では、米当局者は日本政府側に対し、安全対策を強化するよう繰り返し促していたが、そのたびに日本側から拒否されていたという。
 米国務省はコメントを拒否している。日本政府のコメントは8日現在、得られていない。
 2007年2月26日、東京の米大使館は本国の国務省に送った公電で、「原子力施設の物理的な保護をめぐる米国の懸念」を伝えている。こうした懸念に対し、日本の文部科学省の原子力安全担当者は米側に対して「地元のニーズと資源から判断して、現場に武装警官を配備しなければならないほどの脅威はない」と述べたという。
 問題となったのは、茨城県東海村の核燃料再処理工場で、プルトニウム貯蔵施設の役割も兼ねている。
 ウィキリークスの公表した米外交公電によると、日本では一部の原子力施設に武装警官を配備しているが、東海村の施設を含む54カ所の原子力発電所の警備状況をみると、民間の警備会社と契約している場合、武装していなかった。日本では民間の警備会社の武装は禁じられている。
 同じ公電によれば、日本側は、扱いに注意を要する情報に触れることのできるすべての原発職員に対する素性調査をするよう求めた米側の要求も拒否した。一部の原発運営会社は自主的に職員の履歴を検査したが、こうした素性検査は日本の憲法上、法的に義務付けられなかった。また、極めて微妙なプライバシー問題を提起しかねないと懸念する日本政府の意向もあったという。ただし、文科省当局者は、「非公式ならば」職員の素性を検査できるかもしれない、と譲歩したという。
 北朝鮮が不安定で攻撃的な核政策を追求していることと、イラク、アフガニスタンでの米国主導の作戦に対する日本の役割を受けて、日本政府は近年、テロ対策を強化した。しかし、一部原子力施設で物理的な対策を強化したとはいえ、東京の米大使館から送られた公電では、欠陥と考えられる点が詳述されている。
 例えば、日本はテロ攻撃に対してどう対応するか大規模な訓練を実施しているが、2006年に訓練を見学した米当局者は、訓練の台本があまりに周到に計画され過ぎていて、訓練の現実味がかえって薄れてしまっていると公電で書き送っていた。
 日本が初めて政府肝いりで核テロに対する訓練を実施したのは2005年11月のことで、福井県の美浜原発で2000人近くが参加した。
 この訓練の模様を詳述した2006年1月の公電によると、東京の米大使館当局者は訓練前に現地を訪問した。その際、福井県の当局者は米側当局者に対し、北朝鮮の潜水艦が周辺水域に出没していたことがあると述べ、北朝鮮によるテロ攻撃の脆弱性を懸念していると語った。米当局者は「この期間中、警備体制が敷かれたが、欠陥があるようだ」とし、「訪問した当日、商業原子力施設で警官がいたのを目撃したが、6人ばかりの警官の乗った軽装備車両で、警官の一部は居眠りしていた」と伝えた。
 また、一部の原子力業界の幹部の中には2005年にこうしたテロ対策訓練を開始した際、その意味を疑う向きもあった。
 例えば、2006年9月の訓練後に送られた米大使館員の公電によれば、東海村のトップは「私見」として「現地の住民にとって放射性物質の放出のほうがテロ以上に現実的な脅威だ」と述べ、どちらのシナリオを優先すべきか迷うと語ったという。
記者: Yoree Koh

浜岡原発:停止決定

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中部電社長「原発不安、真摯に対応し信頼得たい」
日本経済新聞2011/5/9 22:09
 「今回の要請は社会の原発への不安の高まりを踏まえたもの。真摯に対応して信頼を得ることが最優先だ」。9日夕の記者会見で、中部電力の水野明久社長は浜岡原発の停止を決定した理由を淡々と語った。
 名古屋市内の同社本店で会見に1人で臨んだ水野社長は冒頭の約15分間、資料を見ながら運転停止決定の理由や今後の需給計画などについて説明。約1時間にわたって相次いだ記者団からの質問にも顔色を変えず、短い言葉で返答する場面が目立った。
 ただ、浜岡原発の安全性について質問されると「私たちの安全対策は適切に実施されていると(経産)大臣も確認している。(地域住民らの)一層の安心のためだ」とやや語気を強めた。
 計画停電実施の可能性については「考えていない」と言明したうえで「お客様にはエネルギーの効率的な利用をお願いしたい」と節電への協力を求めた。
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浜岡原発:首相と、原発推進維持図る経産省の同床異夢
 中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止が9日、菅直人首相からの異例の要請を受け入れる形で決まった。背景にあるのは、これを将来的なエネルギー政策の転換につなげる一歩としたい菅首相と、「最も危険な浜岡」だけを止めることで原発推進の国策維持を図る経済産業省の同床異夢。夏の電力需給の逼迫(ひっぱく)を警戒する中部電は、停止の受け入れを2日間遅らせたものの、微妙なバランスの上に成り立った「政権の決断」にあらがう選択肢はなかった。
 「中部電力が要請を受け入れ、大変良かった。政府としても電力全体が足らなくならないよう対応には力を入れたい」。菅首相は9日夜、東日本大震災の発生後、ほとんど応じていなかった記者団の質問に答え、「海江田万里経産相がしっかりと説明してくれたことによって良い形ができた」と付け加えた。
 実際、浜岡停止の根回しに走ったのは海江田氏だった。日本の原子力行政を進めるためにも「福島第1原発の二の舞いは許されない」と考え、3月末から浜岡原発の耐震性や停止した場合の影響などの検討に着手。4月下旬には停止方針を固めた。
 資源エネルギー庁の一部幹部は「ほかの原発にも波及しかねない」「東京電力や関西電力の需給にも影響が生じる」と抵抗したが、海江田氏は「浜岡は大地震の起こる可能性が突出している。ほかの原発には波及させない」と説得。首相が8日、浜岡以外の原発を止める可能性を否定し、「特別なケース」と明言したのも経産省への配慮だった。
 しかし、首相が周辺に語る本音は「原子力と石油火力がダメとなったら、再生可能エネルギーと省エネに力を入れるしかない」。法的根拠のない「要請」という手法に加え、大型連休の谷間の6日に発表した経緯を首相周辺は「我々が一番気にしたのは、どう(経産省や電力会社の)巻き返しを防ぐかだった」と振り返る。発表前に情報が漏れて原発推進派に抵抗の余地を与えることを警戒。政府内の根回しも官邸、経産省などごく一部に抑え、内閣府の原子力安全委員会にも助言要請しない段階で、間髪をいれず発表した。
 日本全体の電力需給を考えれば、ほかの原発の停止は非現実的。エネルギー政策の方向性をどう示すかが今後の焦点となる。首相は26、27日にフランスで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)で原発の安全対策強化を訴える方針で、風力など再生可能エネルギーの推進に踏み込む意欲も示している。ただ、サミット参加国の大半は原発推進国。政府関係者は「浜岡以外は止めないと言っているのはフランスなどへの配慮」と解説する。
 首相官邸内にも温度差がある。原発プラントの輸出に積極的だった仙谷由人官房副長官は8日のNHK番組で「原発を堅持する」と強調。枝野幸男官房長官は9日の記者会見で「原子力政策一般については(福島原発)事故の検証を踏まえたうえでゼロベースで検討する」と見直す可能性をにじませた。
 当面の浜岡停止でまとまった政権の意向を受け、中部電力は代替火力発電の燃料調達に追われた。中部電の三田敏雄会長は7日の臨時取締役会終了後、0泊3日の強行軍でカタールに飛び、液化天然ガス(LNG)の追加調達のめどがついたことで、浜岡停止を最終決断した。【平田崇浩、野原大輔、丸山進、関東晋慈】
毎日新聞 2011年5月9日 22時39分
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浜岡原発:停止決定に静岡知事ら「深い敬意」
 中部電力が浜岡原発の原子炉全面停止を決めたことについて、静岡県の川勝平太知事は9日、記者団に「社会的使命を果たせるかどうかの問題をクリアしながら、菅首相の要請に応えて決断した経営陣に深い敬意を表する」と評価した。
 浜岡原発が立地する御前崎市の石原茂雄市長は「安全性を重視した決定と思う。原子炉を停止させるまでに1週間程度は必要だと思う」と記者団に語り、地元自治体として運転停止を受け入れる考えを改めて表明した。【舟津進、仲田力行】
毎日新聞 2011年5月9日 20時41分(最終更新 5月9日 21時33分)
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高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
 文明転換へ覚悟と気概 週のはじめに考える
  中日新聞【社説】2011年5月8日
 東日本の巨大地震からまもなく二カ月。連日の余震となお遠い復興への道のり。私たちが問われているのは、文明転換への覚悟と気概のようです。
 なかば義務感にかられて、北欧フィンランドに建設中の放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」を見に出かけました。
 多くの国際賞受賞のこの記録映画の配給元は「アップリンク」。今秋公開の予定でしたが、四月、東京・渋谷の自社劇場で上映したところ連日の行列と満席、全国各地の五十館以上での上映へと広がっていったそうです。前例のない反響、福島第一原発事故で国民が原発問題に真正面から向き合うようになったことがわかります。
 高レベル放射性廃棄物は世界に二十五万トン、危険性が消えるまでには十万年。「オンカロ」はフィンランド語で隠し場所を意味します。廃棄物を凍土奥深くの岩盤に埋め込む世界初の試みです。管理可能か、明快な回答を持ち合わせる専門家はいませんでした。
*人間支配が及ばない
 日本列島が現在の形になったのは一万年前、人類が文明をもったのはたかだか五、六千年前です。十万年は人間のリアルな思考や言葉が及ぶ時空域ではありません。人間が制御できないという絶望感。静かな画面は、人類が手にしてしまった原発の恐怖と不気味さを伝えていました。
 続いて、菅直人首相が浜岡原発の全炉停止を要請しました。法的手続きではない政治判断でした。
 東京から百八十キロ、名古屋から百三十キロ。東海地震想定域の真上の浜岡原発は「世界で最も危険な原発」と呼ばれてきました。事故の場合の被害は福島原発の比ではなく、首都圏の一千万人の避難や首都喪失も想定されました。
*やむをえぬ浜岡の停止
 マグニチュード9・0の巨大地震は、日本列島を東西に数メートル引き伸ばし、首都直下型や東海、東南海・南海地震誘発が憂慮されます。浜岡原発停止はやむをえぬ判断でしょう。全原発に及ぼすべきかどうか、そこが問題です。
 浜岡を含め日本の原発は五十四基、電力の30%を占めるようになっています。すでに原油枯渇の兆候があり、太陽光や風力のクリーンエネルギーへ転換させるにしろ、先行きはなお不透明です。電力の安定供給のためには原発は不可欠という状況です。
 原発停止による生活レベルの一九七〇年代への後退は許容できるにしても、グローバル競争の落後者になる恐怖に打ち勝てるかどうか。私たちは無限の成長を前提にした近代世界の住人。文明転換の勇気をもてるかどうかです。
 地質学の石橋克彦神戸大名誉教授は、地震と原発が複合する破局的災害・「原発震災」の概念や言葉を提唱、浜岡原発の廃炉を訴えるなど警告を発してきました。
 「世界」や「中央公論」の誌上には「日本列島全域が今世紀半ばごろまで大地震活動期」「原発は完成された技術ではない」「人間の地震に関する理解は不十分」「地震列島に五十基以上の大型原子炉を林立させることは暴挙」とも書いています。警告通り、福島原発の大損傷が発生してしまいました。
 「原発震災」は人間存在への問いかけだったのでしょう。教授が提言したように原発総点検、リスクが高い順の段階的閉鎖・縮小が現実路線のように映ります。世界観を変えるには覚悟と決意、気概がいります。
 日本を代表する東北の農漁業。その被害も甚大でした。食料問題も原発に劣らない不安で重大な問題。世界の食料品価格が高騰、二〇〇八年のリーマン・ショック時を上回っているからです。
 食料価格高騰は投機と「将来の供給不足懸念」が要因とされるだけに深刻です。コメと野菜こそ90%台と80%台の自給率を保っているものの、小麦は10%台、大豆やトウモロコシはほとんど輸入しています。命にかかわる問題です。農業の復興と立て直し、食料の自給は急務です。
*新しい幸せと充実が
 失われたコミュニティーの復元や修復も大切なテーマ。震災は、私たちがそれぞれが独立しながらも、結局は支え合い、助け合って生きていくものだ、ということをあらためて気づかせてくれました。それは、ボランティアに向かう若者の行動にも表れました。
 極限状況にあっても、人間はなお優しさや思いやり、勇気や忍耐を示す存在でした。献身や自己犠牲も。それは私たちの未来へ向けての大きな希望でした。
 経済的繁栄や快適な生活とは別次元の幸せと充実。それが追い求める内容かもしれません。私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。 

使用済み燃料 大量に
中日新聞2011/5/7Sat.夕刊
 政府の要請を受けて浜岡原発が全面停止しても、建屋内には使用済み燃料が大量に残る。このため、想定外の地震や津波が起きた際の危険性はすぐには去らない。
 核燃料は、燃料棒を束ねた燃料集合体を一体とし、使用後も原子炉建屋内のプールで貯蔵される。冷却のために最低でも2年弱は保管され、青森県六ヶ所村の再処理工場や海外などに運ばれる。
 中電によると、3月末時点で浜岡原発1〜5号機に保管されている使用済み核燃料は計6625体。福島原発の事故を受け、中電は緊急対策として冷却機能を保つための非常用ディーゼル発電機を建屋屋上に設置した。(略)
 榎田洋一名大院教授(原子力工学)は「原発を全面停止しても、使用済み燃料は発熱が続く。外部に移すにも、安全性が整った施設に限られており、簡単に運び出せない。国内の原発からは、六ヶ所村だけで処理しきれない量の使用済み燃料が出ており、長期的に手だてを考えなければならない」と話している。

鳩山政権はかくして潰された/日本政府にとって小沢と沖縄は邪魔者でしかない

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外務・防衛官僚の対米隷属体質暴いたウィキリークス 鳩山政権はかくして潰された
日刊ゲンダイ2011年5月9日
 内部告発サイト「ウィキリークス」で、日米間の最新の公電文書が次々とバクロされ、注目を集めている。そこであらためて分かったのは米国ベッタリで“暗躍”する防衛・外務官僚の姿だ。大マスコミは詳しく報じていないが、沖縄・普天間基地移設問題をめぐるやりとりでは、束になって「鳩山前首相潰し」をもくろむ官僚のロコツな発言が生々しく出てくる。
 例えば、高見沢将林・防衛政策局長は09年10月12日、キャンベル国務次官補との昼食会で、普天間基地県外移転を模索する鳩山政権の方針について「米側が早期に柔軟さを見せるべきではない」と発言。県外阻止の姿勢を鮮明にしろと助言していたから驚く。
 一方、藪中三十二・外務事務次官は09年12月21日のルース大使との昼食会で「いまは政治的な過渡期。(普天間問題では)日米がより非公式な形で対話を進めるほうが、公式的な協議の枠組みを定めるより望ましい」として、政治家そっちのけで勝手に協議を提案。藪中は「世論一般やメディアの一部は安全保障問題をよく理解していない。テレビのコメンテーターや政治家たちを教育することに価値があるかも」とも指摘し、人気のあるテレビコメンテーターを挙げたという。薄っぺらな薄汚い発想だ。
 このほか、09年11月27日付の公電では、核密約調査を進める民主党政権に懸念を示す在日米国大使館のズムワルト首席公使に対し、梅本和義・北米局長が「普天間問題より悩ましい問題。鳩山政権は、調査がもたらす影響を理解していない」などと、これまた米国寄りの姿勢を強調していた。
 日本の税金で給料をもらいながら、平気で時の首相を米国に売り渡す感覚。コイツら本当に日本人なのか。それともスパイなのか。
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日本政府にとって小沢と沖縄は邪魔者でしかない=米国のご機嫌とりのため手段を選ばない謀略作戦に出てくる2010-10-13 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
  岡留安則 提供:マガジン9  2010年10月13日
 大阪地検特捜部における特捜部の主任検事、前副部長、前特捜部長の3人を逮捕する前代未聞の事件が発生した。村木厚子元厚生労働局長逮捕事件で証拠改竄があったことが判明したためである。検察のシナリオにそって証拠をデッチあげたのだから、特捜部のこれまでの権力を傘に着た傲慢な捜査手法がようやく表沙汰になったといえる。『噂の真相』では、長期にわたり、大手メディアが絶対書けない特捜部のタブーにチャレンジしてきた。そのおかげで、こちらも特捜部から名誉毀損で公訴されるという意趣返しを受けたが、検察側にもそれなりのダメージを与えてきたはずだ。しかし、捜査権と公訴権を持つ日本最強の権力機関からは、表向きは何事もなかったようにやりすごされてきた。司法記者クラブに所属している大手メディアが検察のスキャンダルをしっかりガードしてきたからだ。そうした『噂の真相』の経験から言えば「何をいまさら」という感じであるが、この際、特捜部の綱紀粛正のために、検察組織の根本的な病理を徹底解明し、特捜部組織の解体、取調べの全面可視化など検察の大改革を推し進めるべきである。
 その検察組織がミエミエの政治判断をやることを国民に教えてくれたのが、尖閣諸島における中国漁船の海上保安庁巡視船への体当たり事件だ。漁船を拿捕し、船長らを逮捕したものの、最後は船長の満期拘留も起訴も待たずに突然釈放した。明らかに中国側から繰り出された対日圧力の数々に抗しきれず、政治・外交的配慮で事件を幕引きしたのだ。実際は官邸や外務省が那覇地検に圧力をかけたものだが、那覇地検の検事正は、自ら政治判断したことを苦し紛れに釈明し、官邸の意に従ったのである。
 これは、検察が自ら事件に対峙する時、政治判断で動くこともありうることを証明したも同然だ。特捜部が手がけた数々の国策捜査もしかり。小沢一郎という日米両政府にとって危険な政治家を潰すために1年以上にわたり、政治資金法規制法違反という微罪で徹底的に捜査したことにも当てはまるはずだ。検察による司法記者クラブへの情報リークを通じて小沢=ワルという見事なまでのイメージ操作にも成功したのだ。その結果が第五検察審査会による二度目の「起訴すべし」という議決につながったといえる。しかし、この検察審査会は建前上、検察捜査に対して市民感覚でチェックをかけるというものだが、その審査員も内容も秘密主義につつまれており、運用しだいではファシズムの温床になる諸刃の刃ともいえるシステムである。
 検察審査会に「起訴すべし」とされたその小沢氏が、沖縄選出の喜納昌吉前参議院議員に対して、次の県知事選候補は「伊波洋一しかいない」と発言したという。民主党本部は「伊波洋一の支持はありえない」という方針を掲げており、一貫して普天間基地の県外・国外移設を主張してきた沖縄民主党県連との間には大きなネジレがある。民主党本部はいまだに、仲井真知事支持と民主党独自候補擁立の間で揺れている。沖縄県民の立場に立てば、小沢氏の方がまさしく正論である。だからこそ、小沢氏は日米両政府から蛇蝎のごとく嫌われ、反小沢で凝り固まっている菅―仙谷政権やそれに追随するメディアから総スカンを食うのである。沖縄から見れば、対等かつ緊密な日米関係、辺野古基地建設反対、日米地位協定改定など難問が山積する基地問題を解決するには、これまでの官僚丸投げから政治主導の政治を力説する小沢氏の方がはるかにマシな政治家である。しかし、極論すれば、既得権益にがんじがらめにされた日本政府存続のためには小沢も沖縄も邪魔者という結論になる。これほどまでの国内差別、切り捨て策のどこが民主主義国家なのか。
 その沖縄では相変わらず、米軍の傲慢な要求が突きつけられている。それもだんだんエスカレートしているのだ。嘉手納基地の滑走路を補修する間、F15戦闘機を普天間基地や那覇空港でも使用するという宣告である。普天間基地は市街地の密集した場所にあり、軍用ヘリや輸送機はともかく、F15戦闘機は危険極まりない。普天間の嘉手納基地統合案が出た時、安保マフィアともいうべき御用評論家たちは、普天間の海兵隊と嘉手納の空軍が相容れるはずがないという縄張り意識で説明していたが、それは関係なかったということなのだ。海兵隊のグアム移転計画も予定より大幅に遅れることになった。米側の軍事戦略や国防予算削減も関係しているといわれる。その削減分を日本の思いやり予算で補えというのが米国の本音だろう。当初、辺野古新基地に配備される予定だったオスプレイも普天間基地に駐留させる可能性もあるのだという。北澤防衛大臣に至っては米国・ゲーツ国防長官とともに武器輸出三原則の見直しも画策している。ふざけた話ではないか。
 米国のご機嫌を損ねないためなら、歴代の政権も官邸も、そして防衛省や外務省も手段を選ばない謀略作戦に出てくるのは、過去の歴史が証明するところである。もう一度、尖閣諸島で、海上保安庁の巡視船に中国漁船が体当たりするという作戦も否定できないのではないか。あるいは金正日の後継に決まった金正恩大将のために、ミサイルの一発も日本向けにブッ放すかもしれない。それが、米国の沖縄駐留の正当化につながる裏技だからだ。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーで、世界のエネルギー77%供給可能

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世界のエネルギー77%供給可能  風力や太陽光で50年に
福井新聞(2011年5月9日午後9時13分)
 太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーは、最大で2050年の世界のエネルギー消費の77%を供給できる可能性があり、温室効果ガスの大幅な排出削減に貢献できるとの特別報告書を、気候変動に関する政府間パネル(IPCC、本部スイス)が9日、発表した。
 今後各国で投資が拡大するのに伴って、発電コストも大幅に低下すると予測。福島第1原発事故を受け、日本でも関心が高まっている再生可能エネルギー開発への追い風となりそうだ。
 報告書は、太陽光や風力のほか、バイオマスや地熱、小規模な水力発電、波力や潮力といった海洋エネルギーなどについて、今後の成長の可能性を技術面と経済面から検討。さまざまなシナリオに基づいて50年までの推移を予測した。
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中日新聞2011年5月10日朝刊より上記記事補足(転写)
 各国の投資や技術開発が最も順調に進むとのシナリオでは、30年に世界エネルギー消費の43%、50年には77%を供給できるとの結果がでた。
 報告書は、再生可能エネルギーの拡大による温室効果ガスの排出削減効果は、10〜50年の総計で最大6百億?(2酸化炭素換算)に達すると試算。原子力などよりはるかに大きいとした。
 IPCCの担当者は「福島原発の事故で、原子力の後退が予想され、化石燃料で代替すると地球温暖化が深刻化することになる」と警告。「再生可能エネルギーの拡大が重要な選択肢になる」と述べた。

両陛下と東日本大震災 「国民とともに歩む」皇室

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【祈り 両陛下と東日本大震災】
(上)お見舞い「1人でも多く」 前に進む勇気、お与えに
産経ニュース2011.4.27 21:20
 3月11日午後2時46分。皇居がある東京都千代田区は震度5強を観測した。天皇、皇后両陛下は、宮殿にいらっしゃった。
 陛下は揺れに驚きながらもすぐテレビをつけ、状況を確認しながら国民を心配された。被害が明らかになるにつれ、短時間業務を離れても支障がない災害の専門家らを人選し、皇居に呼んで話を聞かれてきた。
 宮内庁によると、両陛下は当初から「一日も早く東北地方に入りたい」という意向を持たれていた。被災地に負担にならない時期を考えながら、3月30日に東京都内、今月8日に埼玉県加須市の避難所を訪問された。震災1カ月の節目が過ぎた14日には、被災地では初めてとなる千葉県旭市へ。22日も茨城県北茨城市を見舞っており、27日の宮城県訪問で、5週連続で避難所や被災地に足を運ばれたことになる。
 「震災、津波に遭った人たち、原発におびえる人たちを思いやり、頭がいっぱいになって、たいへん気が張っていらっしゃる。この国の人たちの幸せも不幸もわがこととして受け止めて、実践していかれる姿が現れていると思います」
 宮内庁の羽毛田信吾長官は、ハイペースで被災地訪問を続けられている陛下の様子をこう説明している。
 27日に両陛下が訪問された、宮城県南三陸町の歌津中学校体育館。いつものように両ひざを床につけ、一人一人に言葉をかけた両陛下が立ち去られる際、手を振る両陛下に「ありがとうございました」とあちこちから自然に声が上がった。声は広がり、最後は大きな拍手となって両陛下を送った。
 佐藤仁町長は「感激ですね。一人一人に声をかけることはなかなかできない。前に進まなければいけないと、自分も改めて感じた」とし、こう付け加えた。
 「被災者のああいう笑顔を見られたのは初めてです」

 皇居では東日本大震災によって、祭祀を司る宮中三殿でも、耐震補強していない場所で一部、柱がずれるなどの被害が出た。
 震災発生から10日後、3月21日の春分の日に行われた祭祀(さいし)「春季皇霊祭・春季神殿祭の儀」。余震が続いていたことから、宮内庁内では「今回は天皇陛下ではなく、儀式を司る掌典の代拝にすべきではないか」という声が出た。
 だが、両陛下の希望があり、結局陛下はモーニング、皇后さまは洋装で祭祀に臨まれた。通常は着物で臨むが、万一緊急に避難する必要性が出た場合のことを考え、殿上には昇らずに拝礼される「異例の措置」(宮内庁)が取られた。「普段から祭祀にはご熱心だが、震災のこともあるので、ご自身で拝礼されたい思いが特に強かったのではないか」と祭祀関係者は語る。
 宮中祭祀は主なものだけで年間20回余り。通常、祭祀の関係者以外はその場におらず、撮影された写真や映像が国民の目に触れることはない。両陛下は皇居の森の中で、ただ静かに祈られている。

 平成3年7月10日。両陛下は雲仙・普賢岳噴火の被災地見舞いに、長崎・島原を訪問された。両陛下にとり即位後、初めてとなる災害被災地への訪問だった。
 島原の最高気温は33・2度。過去の被災地訪問で両陛下に同行した宮内庁関係者は、厳しい条件の中で行われた、両陛下の被災地訪問の「原点」を語る。
通常、両陛下が地方を視察される前には、宮内庁職員が綿密な下見や打ち合わせを行うが、この時は被災地の負担を増やすことを懸念した両陛下のご意向を受け、「特別な対応はしないで、そのままにしてほしい」と県に伝えていた。避難所での予定は「ここから入り、ここから出る」程度のぶっつけ本番。「入り口に入り乱れて置かれた靴の中から、陛下の靴を探して出口に持っていくのも苦労した」という。
 「平成の天皇陛下を象徴するスタイル」といわれる、ひざをついて被災者と懇談される姿は、このとき初めてみられた。この元側近は「びっくりした。立って、座っての繰り返しは、お体にこたえるはず」。
 長崎空港では、飛び乗るように帰りの民間機へ。元側近は「乗り込む際、皇后さまの首筋は日に焼け、真っ赤に腫れていらした。女官長が、冷たいタオルを首に巻いていた」と振り返る。そして、今回もすべて日帰り訪問を続けられている陛下と皇后さまをこう案じた。
 「雲仙を見舞われた当時でさえ、お疲れになったのではないかと心配した。両陛下は『一人でも多くの人に』という思いでお見舞いされる。無理をなさらないように。本当に心配しています」。雲仙への見舞いから20年。陛下は77歳、皇后さまは76歳になられている。

 各地の避難所、被災地への「祈りの旅」を続けられている両陛下。災害のたびに国民の精神的支柱となってきた皇室の歴史や、側近らのエピソードを交え、そのお姿を伝えたい。

(中)「自分で厳しく律する」国民に模範
「食事は、簡単なものでいいから」
 東日本大震災後、天皇、皇后両陛下は食事を担当する職員にこのように指示される場面があったという。東京電力の計画停電で「第1グループ」に分類された地域の停電予定に合わせ、1回約2時間、暖房や電灯など電気の使用を控える「自主停電」をされているためだ。
 「停電中だと、調理に支障がでるだろうというご配慮だったのではないか」と側近は振り返る。
 那須御用邸の職員用風呂の開放、御料牧場で取れた卵、缶詰などの提供…。両陛下が地震後に意向を示された前例のない取り組みの中でも、自主停電は特徴的だ。
 自主停電は「国民と困難を分かち合いたい」として3月15日に始められた。皇居がある東京都千代田区は計画停電の対象になっていないことについて、陛下は「ノルマがないからこそ、自分で厳しく律さないといけない」と話されたという。
寒さは厚着で
 自主停電中、両陛下は夜間にろうそくや懐中電灯で灯りをとり、寒さはセーターなどの厚着でおしのぎになった。側近によると、皇后さまは東日本大震災発生後まもなく、職員とともに御所で保管しているろうそくを集めるとともに、懐中電灯が点灯するか自ら確認をされたという。
 自主停電の時間によっては、ろうそくの明かりのもとで夕食を取られることもあった。その際には、余震で倒れる可能性を考え、低い位置まで水を入れた水槽の中に、火をつけたろうそくを立てられていたという。
 陛下のご公務にも変更が生じた。「電力消費の大きい宮殿の使用は必要最小限に」という両陛下のご意向で、宮内庁は3月14日以降、宮殿の使用を、閣僚などの認証官任命式と、新しい駐日外国大使を迎えて行う信任状捧呈(ほうてい)式に限定。ほかの宮殿行事はお住まいの御所で実施している。
 3月31日、陛下が離任する駐日トルコ大使を御所で引見されたときには、ちょうど自主停電の時間にあたった。
 「照明も暖房もない応接間で行われた。幸い天気が良く、障子ごしに差し込む陽光で十分明るかったのではないか」と宮内庁幹部。皇室の国際親善を担当する式部職が、事前に両陛下の自主停電のお取り組みについて説明したところ、トルコ大使は深く納得した様子だったという。
 「御所はプライベートな空間で、本来、外国人であれば王族など親しい方しか入れない。洋風な宮殿と違い、日本的な渡り廊下や障子があり、トルコ大使は御所での手厚い対応を喜んでいた」そうだ。
 今月21日にオーストラリアのギラード首相を引見された時間も、自主停電の時間にあたった。宮内庁幹部は「何ら支障はなかった」と話す。
「不実施」でも継続
 両陛下は皇太子時代から節電を心がけてこられた。第1次オイルショックが起きた昭和48年、陛下が40歳を迎えた誕生日の記事には、電気スタンドをつけず、薄暗い部屋で読書されることがある、と報じられている。
 両陛下は、今回の自主停電では、ブレーカーを全部落とされているわけでない。御所には配電盤がいくつもあり、防犯や防災など安全に関わる部分や両陛下の医薬品を管理する冷蔵庫の電源は、自主停電の間も電力を切ることはなかったそうだ。「不必要な部分を徹底的に洗い出し、節電するのが両陛下のなさりよう」と側近は話す。
 東京電力では、「電気の需給バランスが著しく改善した」として、計画停電を8日から「原則不実施」としたが、実は両陛下は自主停電をその後も毎日続けられている。計画停電が終わっても、東電では「やむを得ず計画停電を実施する場合」のスケジュールを発表し続けており、両陛下はこれを利用されているようだ。
 夏場に打ち水をするなど、節電のため日頃から工夫している両陛下は、今月末で自主停電に区切りをつけ、通常の節電生活に戻られる。
 夏の電力不足は不可避といわれ、都心部でも不安が広がる。こうした中、身の回りのことに目を向け、黙々と行動する両陛下のご姿勢は示唆に富む。側近は「両陛下は、苦境の中で『国民に模範を示せれば』というお考えもあるのではないか」と話す。

(下)復興へ、ともに歩まれて
2011.4.29 22:43
 平成7年の阪神大震災のお見舞いで、皇后さまが被災した少女を抱き締める場面があった。両手の拳を握るしぐさをされたこともある。今回の訪問でも、天皇、皇后両陛下が被災者の手を握ったり、移動のバスの中で立ったまま沿道の歓迎の列に手を振り続けたりして、臨機応変に行動される姿が目立っている。
 側近は「両陛下はその場に行ってから、一番いいと思う行動を取られる。いつでも“真剣勝負”で向き合われるから」と話す。そうした姿が、各地に癒やしを与えられている。27日の仙台市ご訪問の際、皇后さまから手を握られた被災者の女性は「手を出してはいけないと思っていたけれど、感極まってしまった。優しい感触でした」と感激した。
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 「両陛下のご訪問は、被災者にとって何よりの薬。行政が(村民が避難生活を送った)4年5カ月かけて一生懸命がんばっても、両陛下の一言にはかなわない」。12年に島が噴火して被災した東京都三宅村の平野祐康村長は、ご訪問が被災地に与える「効果」を、最大限の言葉で表現する。
 帰島後の復興視察も含め、両陛下は公式に6回、三宅島民がいる避難所などを訪問された。村によると、非公式にも数回あり、皇后さまが御料牧場のアイスクリームを届けられたこともあった。
 13年8月、両陛下が静岡・下田に避難している三宅村の漁業者を慰問された際には、小さい子供が皇后さまに「おばあちゃん、うちにも遊びにきてね」と話しかけた。皇后さまは翌朝、その子が住んでいるアパートの玄関先にいらっしゃったという。「子供の約束まで果たしてくださった。それほどまで、被災者の気持ちをくんでくださっている」と平野村長。
 一方、阪神大震災のご訪問の際、避難所にいた男性は「励ましよりもお金がほしい」と避難所で大声で話していた別の被災男性が、陛下から声をかけられると、せきを切ったように大声で泣き出した光景が忘れられないと話す。
 ほかの被災地の町の幹部も「政治家は体育館の壇上から『がんばれ』と一言いって帰るだけ。両陛下のなさりようは全然違う」。
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 今回の震災ではこれまで、両陛下のほかにも、皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻、常陸宮ご夫妻が避難所を訪問されている。訪問先は重なられていない。宮内庁の羽毛田信吾長官は「役割分担という考え方は取っておられない」とするものの、皇室全体のお取り組みになっている一面もある。
 皇室による「お見舞い」には長い歴史がある。励ましのお言葉やお金を受けた国民は、いつの時代も復興の意欲を新たにしてきた。
 近現代の皇室について研究している静岡福祉大の小田部雄次教授によると、明治時代には自然災害に対し、天皇、皇后から賜金が出されていた。明治26年に福島県の吾妻山が噴火した際には、「予知はできないのか」と侍従を現地に派遣した記録もあるという。
 大正12年の関東大震災では、皇太子だった昭和天皇や皇族が、直接現地に入って慰問された。昭和天皇は馬で東京の惨状も視察されたという。御殿を避難者らに開放した皇族もいた。
 小田部氏は「慈愛、恩恵を国民が直接感じることができたし、賜金はほかの援助を得る機会になったといえる。皇室は、困難な状況におかれた人々の精神的な支えになってきたのではないか」と話す。
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 三宅村の平野村長は「両陛下は復興を成し遂げる最後まで、被災地を見届けてくださる。そのお姿にエネルギーをいっぱいいただいた」と語る。両陛下の被災地へのご配慮は「その場限り」で終わらないところに特徴があり、それを受け止めた各地でもさまざまな形で記憶、記録されている。
 阪神大震災直後に両陛下は、火災で壊滅した神戸市長田区に足を運ばれ、皇后さまはその日の朝に皇居で摘んだ17本のスイセンを手向けられた。地元住民の提案でスイセンはドライフラワーとなり、市内で展示されている。地元関係者は「みんながいただいたもの。復興のシンボルとして長く展示したい」。
 今回も「国民とともに歩む」皇室を体現している両陛下は、5月上旬までに、被害が大きかった東北3県すべてに足を踏み入れられる予定だ。復興の長い道のりを見届けられる「祈りの旅」は、まだまだ続きそうだ。

 連載は芦川雄大、篠原那美が担当しました。

原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり

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知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音
JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。(背景の着色は来栖)
〈筆者プロフィール〉
川島 博之 Hiroyuki Kawashima
 東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。1953年生まれ。77年東京水産大学卒業、83年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得のうえ退学(工学博士)。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現職。主な著書に『農民国家 中国の限界』『「食糧危機」をあおってはいけない』『「食糧自給率」の罠』など
・世界の中の日本 メイド・イン・ジャパンの製品を世界中に売りまくりジャパンバッシング(日本叩き)が沸き起こっていたのは遠い過去の話となった。今では何を求めても反応すらしない国(ジャパンミッシング)として世界から忘れられようとしている世界第2位の経済大国ニッポン。国際社会から孤立しないためには何をすべきなのか。海外に張り巡らされた日本人随一のネットワークを生かして、日本の取るべき針路を考察する。
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田母神俊雄著『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』(産経新聞出版)
p166〜
 わが国は戦後、アメリカに守ってもらうことを前提としてきましたので、自らやり返すという意思がありません。従ってやり返すための攻撃力も自衛隊は持っていないのです。専守防衛では抑止力にならないのです。
 今後、多くの新興国の勃興によりアメリカの相対的国力はどんどん低下していくと思います。アメリカの抑止力は次第に弱くなっていくのです。そのような情勢下で、我が国の防衛がこれまでどおりアメリカの抑止力に全面的に依存することは無理があると思います。日中間の尖閣諸島における小競り合いでも、アメリカは中国と争うことがアメリカの国益に合致しないと判断したときは、日本を守らないと思います。
 独立国家は、自分の国を自分で守ることが必要です。日本は世界のGDPの10%近くを占める経済大国なのです。(略)
 そのためには、いま自衛隊に欠けている攻撃力を整備する必要があります。それがやられたらやり返すという明確な意思表示であり、我が国に対する侵略を抑止するのです。
 具体的には諸外国が持っている空母、戦略爆撃機、地対地ミサイル、艦対地ミサイルを持つべきです。
p167〜
 現在、日本の自衛隊は空母を持っていません。
 なぜ持っていないのかと言えば、空母が攻撃のための戦闘機を運ぶものだからです。隣国が空母を持つというのに、日本にはないのですから、我が国がどれほど自衛隊に攻撃力を持たせたくないかわかろうというものでしょう。
 四方を海で囲まれた日本にとって、いつでも攻撃に出る用意があるという姿勢をとるためには空母が重要不可欠です。
 中国は、通常型の国産空母の建造に乗り出しています。つまり、中国は着実に「恫喝」の準備を進めているのです。
 このまま指をくわえてみていれば、いずれ中国の空母が東シナ海に出ようとしたとき、日本は何の対抗措置もとれないということになります。
 中国との軍事力のバランスをとるためには、日本も空母を3隻は持たなければならないと私は思います。アメリカの第7艦隊に配備された原子力空母ジョージ・ワシントンと同じクラスの10万トン級相当を想定して、3隻です。もちろん、艦載機も必要です。
 ただし、アメリカ海軍のように遠海を巡回させる必要はありません。日本周辺に置いておけば、それだけで抑止力になります。
p168〜
 例えば尖閣諸島や南沙・西沙諸島といった、中国が太平洋に進出するために通過しなければならないルートに置けばいいわけです。その地域に空母が存在し、海と空を支配することが、中国に対する抑止になる。(略)
p169〜
 我が国が核武装を目指す場合、国内的な合意を取ることが相当に難しいし、また核武装国はこれを邪魔しようとするでしょう。(略)
 1番の問題は、国民も政治家も核兵器がどういう兵器なのか、わかっていないということです。核兵器は先制攻撃に利用するものだと思われていますが、国際社会では「核兵器は防御の兵器」というのが常識です。
 核兵器はその破壊力があまりにも強大であるために、核戦争に勝者はいません。核で先制攻撃したところで必ず報復されますから、これもまた負けに等しい。
 ですから核は、「やれるならやってみろ、だけどやったら報復するぞ」と思わせておいて、実際は誰も使いはしないし、使わせもしないという“防御的”な兵器なのです。
 また、核兵器は、これまでの通常兵器のように戦力の均衡というものを必要としません。通常兵器の場合は、相手国が100で自国が1というほどの戦力差をつけられていれば、たとえ1を持っていようとも何の抑止にもなりません。しかし、核の場合は、アメリカやロシアがそれを何千発保有していようが、インドや北朝鮮が数発持つだけで十分に抑止力になります。
 日本の場合は、核武装について議論をするだけでも、核抑止力は向上します。外交交渉力も向上するのです。それだけでも、国際社会の中で日本の発言力は高まります。しかし、「核武装はしません」と公言した途端に、世界中から相手にされなくなるのです。(略)
 アメリカもロシアも、自分たち以外の国に核武装をさせたくないのが本音です。NPTという枠組みで世界的に核軍縮を呼びかけていますが、あれはタテマエでしかありません。アメリカもロシアも「核を廃絶する方向に行くよ」と単なるジェスチャーをしているの過ぎないのです。
 「私たちも核廃絶に向けて努力するのだから、いまから核武装しようとは考えないでください」ということで、本音は、「皆さんが核武装を考えなければ、私たち核保有国の優位は永遠に続きます」と言っているわけです。
 そんな核保有国の意図もわからずに、日本の首相はそれにまともに乗っかってしまう。2009年9月、ニューヨークの国連本部で開かれた核軍縮・核不拡散に関する安全保障理事会の会合で、鳩山由紀夫首相(当時)は非核三原則を堅持すると改めて宣言しました。
 鳩山さん本人は心の底から、そうすれば世界から尊敬されると思っているのだから重症です。当然ながら、世界中の国が、「馬鹿な首相もいるな」と思ったはずです。誰も言わないけれど、世界中の失笑を買ったのは明らかです。
 あの場では、「日本は唯一の被爆国だからこそ、二度と核攻撃されないためにも核武装する権利がある」と言うべきでした。鳩山氏、ひいては日本の政治家は、「国際政治を動かしているのが核兵器だ」ということを全く理解していないのだから、呆れるばかりです。

Twitterをやってみた


中国、原子炉新規稼働へ/原発を持つ国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができる/原発保有国の本音

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〈来栖の独白〉
 「知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音」を立証するようなニュースだ。JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之氏の当論説は、私に、これを周知させたいという思いを強くさせ、Twitterを始めさせた。
 中国はアメリカを抜いて世界の主導権を握りたいと望んでいる。核を保有しているが、原発も推進してゆくだろう。経済大国が真に手に入れたいのは防衛・軍事で世界のトップに立つことだ。
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原子炉新規稼働へ 福島事故後初 中国
中日新聞2011年5月11日 朝刊
 【北京=渡部圭】中国広東省深セン市で来月中旬、新たに原子炉一基が稼働する。福島第一原発の放射性物質の流出事故後、世界初の新規稼働になる。欧州や日本では「脱原発」などエネルギー政策の転換も検討されるが、中国政府は安全性を高めることを強調し、原発推進政策を堅持する方針だ。
 国有の原発会社「広東核電集団」によると、同社が建設した嶺澳(れいおう)原発の2号機が今月五日、試運転に成功し、六月十五日に営業運転を開始する。同原発は既に三基を稼働させており、四基目となる2号機は加圧水型で百万キロワットの出力がある。
 中国政府は福島原発の事故を受け、稼働中の原発の安全検査を実施し、安全計画策定までは建設中を除く計画中の承認を一時凍結した。2号機は既に完成間近で、稼働日程は事故の影響を受けることはなかった。
 国家発展改革委員会は福島の事故後、国が奨励する産業システムとして「先進的な原子炉建設と技術開発」「原子力発電所建設」の二項目を盛り込み、あらためて原発推進の政策を確認した。
 原子力安全管理局の幹部は、安全検査が八月までに終了するとの見通しを示し、ほぼ同時期に安全計画を公表、未承認の原発計画の承認手続きを再開する予定だ。
 中国政府は、化石燃料への依存から脱却するため、二〇一五年には計画中の原子炉十基を除き、現在の四倍に当たる約四千万キロワット(建設中を含め計三十七基)の出力にする目標を掲げる。実現すれば世界の五位以内に入る「原発大国」になる。
 中国は現在、消費電力の八割近くを石炭に頼る。大気汚染、温暖化が深刻化する中、高度経済成長を維持するには、原発建設は「国是」といえる。
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原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
 知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音
JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。
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陸山会事件 日本発破技研山本潤社長「検事からヒントを貰って記憶が蘇った」 杜撰、粗末なシナリオ

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〈来栖の独白〉
 余りにも杜撰、粗末すぎるシナリオではないか。こんな者しか呼べないのか。いないのか。
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「検事のヒントで記憶よみがえる」…陸山会事件
 小沢一郎民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、同法違反(虚偽記入)に問われた元秘書3人の第11回公判は10日午後も東京地裁で続いた。
 中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県)から同会側への5000万円の裏金提供について証言した土木会社「日本発破技研」(大阪市)の山本潤社長(56)が弁護側や裁判官の質問に対し、「検事からヒントをもらって記憶がよみがえった」などと述べた。
 山本社長は同日午前の審理で、水谷建設の川村尚元社長(53)が2005年4月、東京・赤坂のホテル2階のフロント前の喫茶店で陸山会元会計責任者・大久保隆規被告(49)に紙袋を渡す際に同席し、「紙袋の中身は現金だと思った」と証言。川村元社長も前回の公判で、この紙袋には、岩手県の胆沢(いさわ)ダム建設の関連工事受注の謝礼金5000万円が入っていたと述べていた。
 この現金授受を「事実無根」とする弁護側は午後の審理で、「川村元社長に同行する理由がない」と追及し、山本社長は「川村さんに頼まれたから行った。呼ばれた理由は今も分からない」などと答えた。山本社長は記憶にあいまいな点がある理由について、「昨年1月の取り調べまで当時のことは忘れていたが、検事から資料を見せられたり、ホテル名などのヒントを与えられたりして記憶がよみがえった」と説明した。
(2011年5月11日09時56分  読売新聞)
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ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ2011-04-28 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 〈来栖の独白2011-04-28
 陸山会事件の公判。水谷建設前社長・川村尚氏の供述に耳を傾けるほどに、ロッキード事件が重なってしまう。
 現金受け渡しの場面などは、まったく酷似している。陸山会事件のそれは全日空ホテル(現ANAインターコンチネンタルホテル)であり、ロッキード事件はホテルオークラであった。「陸山会」は水谷建設前社長川村氏が渡し、「ロッキード」は丸紅の伊藤宏専務が渡した(という)。陸山会は「5000万円を宅急便の袋に入れて折りたたみ、それをひと回り大きい紙袋」に入れ「床をスライドさせるような形で渡し」、ロッキードは「1億2500万円入りの段ボール箱」。どちらも証人がことさら具体的に述べれば述べるほど、意図に反してリアリティは低下し、胡散臭さが漂ってしまう。これで、弁護側証人水谷建設元会長水谷功氏なんかが出てきた日には、この法廷はどうなるんだろう♪
 ロッキード事件で成功した検察。裁判所まで同じでは困る。
... ... ...
『検察を支配する「悪魔」』田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)  
 第三章 絶対有罪が作られる場所
p80〜 ロッキード事件の金銭授受は不自然---田原
 ここからは、ロッキード事件の話をしたい。
 ロッキード事件で田中角栄は、トライスター機を日本が購入するにあたって、ロッキード社から4回にわたって、丸紅を通じて計5億円の賄賂を受けと取ったとして、1983年10月に受託収賄罪で懲役四年、追徴金5億円の判決を受けましたね。
 この4回あったとされる現金の受け渡し場所からしても、常識から考えておかしい。1回目は1973年8月10日午後2時20分頃で、丸紅の伊藤宏専務が松岡克浩の運転する車に乗り、英国大使館裏の道路で、田中の秘書、榎本敏夫に1億円入りの段ボール箱を渡した。2回目は同年10月12日午後2時30分頃、自宅に近い公衆電話ボックス前で、榎本に1億5000万円入りの段ボール箱を。3回目は翌年の1月21日午後4時30分頃、1億2500万円入りの段ボール箱がホテルオークラの駐車場で、伊藤から榎本に渡された。そして、同年3月1日午前8時頃、伊藤の自宅を訪れた榎本が、1億2500万円が入った段ボール箱を受け取ったとされている。
 最後の伊藤の自宅での受け渡しはともかく、他の3回は、誰が見ても大金の受け渡し場所としては不自然です。とくに3回目のホテルオークラは、検察のでっちあげ虚構としか思えない。
 伊藤の運転手だった松岡にインタビューしたところ、検察によって3回も受け渡し場所を変更させられたと言う。もともと松岡は、受け渡しに対して記憶はまったくなかったのですが、検事から伊藤の調書を見せられ、そんなこともあったかもしれないと、曖昧なまま検察の指示に従った。
 検事が、最初、3回目の授受の場所として指定してきたのは、ホテルオークラの正面玄関です。松岡は検事の命令に添って、正面玄関前に止まっている2台の車の図を描いた。
 でも考えてみれば、こんなところで1億2500万円入りの段ボール箱の積み下ろしなどするわけがない。正面玄関には、制服を着たボーイもいれば、客の出入りも激しい。おまけに、車寄せに2台車を止めて段ボール箱を運び込んだら、嫌でも人の目につく。
 検察も実際にホテルオークラに行ってみて、それに気が付いたんでしょう。体調を崩して大蔵病院に入院していた松岡の元に検察事務官が訪ねてきて、「ホテルオークラの玄関前には、右側と左側に駐車場がある。あなたが言っていた場所は左側だ」と訂正を求めた。
 それでも、まだ不自然だと考えたのでしょう。しばらくしたら、また検察事務官がやってきて、今度は5階の正面玄関ではなく、1階の入り口の駐車場に変えさせられたと言います。
 それだけならまだしも、おかしなことに、伊藤が描いた受け渡し場所も変更されていた。最初の検事調書では、伊藤も松岡とほぼ同じ絵を描いている。松岡の調書が5階の正面玄関から1階の宴会場前の駐車場に変更後、伊藤の検事調書も同様に変わっていた。
 打ち合わせもまったくなく、両者が授受の場所を間違え、後で揃って同じ場所に訂正するなんてことが、あり得るわけがない。検事が強引に変えさせたと判断するしかありません。百歩譲って、そのような偶然が起りえたとしても、この日の受け渡し場所の状況を考えると、検事のでっち上げとしか考えられない。
 この日、ホテルオークラの宴会場では、法務大臣や衆議院議長などを歴任した前尾繁三郎を激励する会が開かれていて、調書の授受の時刻には、数多くの政財界人、マスコミの人間がいたと思われる。顔見知りに会いかねない場所に、伊藤や田中の秘書、榎本が出かけていってカネをやり取りするのは、あまりにも不自然です。
 しかも、この日の東京は記録的な大雪。調書が事実だとすれば、伊藤と田中の秘書が雪の降りしきる屋外駐車場で、30分以上立ち話をしていたことになる。しかし、誰の口からも、雪という言葉が一切出ていません。
 万事がこんな調子で、榎本にインタビューしても、4回目の授受は検察がつくりあげたストーリーだと明言していました。
 もっとも、丸紅から5億円受け取ったことに関して彼は否定しなかった。伊藤の自宅で、5億円を受け取ったと。それは、あくまでも丸紅からの政治献金、田中角栄が総理に就任した祝い金だと。だから、伊藤は、せいぜい罪に問われても、政治資金規正法だと踏んだ。そして、検察から責め立てられ、受けとったのは事実だから、場所はどこでも五十歩百歩と考えるようになり、検察のでたらめにも応じたのだと答えた。
 つまり、検察は政治資金規正法ではなく、何があっても罪の重い受託収賄罪で田中角栄を起訴したかった。そのためにも、無理やりにでも授受の場所を仕立てる必要があったというわけでしょう。
p83〜 法務省に事前に送られる筋書き---田中
 ロッキード事件のカネの受け渡し場所は、普通に考えておかしい。またそれを認めた裁判所も裁判所ですよ。ロッキード事件以来、ある意味、検察の正義はいびつになってしまった。
 政界をバックにした大きな事件に発展しそうな場合、最初に、検察によってストーリーがつくられる。被疑者を調べずに周りだけ調べて、後は推測で筋を立てる。この時点では、ほとんど真実は把握できていないので、単なる推測に過ぎない。
 でも、初めに組み立てた推測による筋書きが、検察の正義になってしまうのです。なぜ、そんなおかしなことになるかと言えば、政界や官界に波及する可能性がある事件の捜査については、法務省の刑事課長から刑事局長に、場合によっては、内閣の法務大臣にまであげて了解をもらわなければ着手できない決まりになっているからです。とくに特捜で扱う事件は、そのほとんどが国会の質問事項になるため、事前に法務省にその筋書きを送る。
 いったん上にあげて、了承してもらったストーリー展開が狂ったら、どうなりますか?検察の組織自体が否定されますよ。事件を内偵していた特捜の検事がクビになるだけでなく、検察に対する国民の信頼もなくなる。
 本当は長い目で見たら、途中で間違っていましたと認めるほうが国民の信頼につながる。それは理屈として特捜もわかっているけれど、検察という組織の保身のためには、ごり押しせざるを得ないのが現実です。
 特捜の部長や上層部がなんぼ偉いといっても、一番事件の真相を知っているのは被疑者ですよ。その言い分をぜんぜん聞かず、ストーリーをどんどん組み立てる。確かに外部に秘密がまれたり、いろいろあるから、その方法が一番いいのかもしれないが、だったら途中で修正しなければいけない。
 ところが、大きい事件はまず軌道修正しない。いや大きい事件になるほど修正できない。だから、特捜に捕まった人はみんな、後で検察のストーリー通りになり、冤罪をきせられたと不服を洩らす。僕を筆頭として、リクルート事件の江副浩正、KSD事件の村上正邦、鈴木宗男議員と連座した
外務省の佐藤優、村上ファンドの村上世彰(よしあき)、ライブドア事件の堀江貴文・・・全員、不満たらたらで検察のやり方を非難している。
 これを特捜が謙虚に反省すればいいのですが、特捜はそんなことはまったく頭にない。「あのバカども、何を言っていやがるんだ」という驕りがあり、最初にストーリーありきの捜査法は一向に改善されません。
p85〜 尋問せずに事実関係に勝手に手を入れる---田中
 とくに東京の特捜では、まずストーリーありきの捜査しかしない。被害者を加害者に仕立て上げてしまった平和相銀事件がいい例ですよ。
 東京に来て驚いたのは、調書ひとつをとっても、上が介入する。調書作成段階で、副部長や主任の手が入ることも多く、筋書きと大幅に異なったり、筋書きを否定するような供述があると、ボツにされる。だから、検事たちも、尋問をするときから、検察の上層部が描いた筋書きに添う供述を、テクニックを弄して取っていく。
 僕も手練手管を弄して自分の描いた筋書きに被疑者を誘導することはありましたよ。しかし、それは、あくまでも現場で捜査に携わっている人間だから許されることだと思う。捜査をしている現場の検事は、こりゃあ違うなと感じれば、軌道修正する。被疑者のナマの声を聞いて判断するので、自分の想定したストーリーが明らかに事実と違えば、それ以上はごり押しできない。人間、誰しも良心がありますから。
 しかし東京では、尋問もしていない上役が事実関係に手を入れる。彼らは被疑者と接していないので容赦ない。被疑者が、これは検事の作文だよとよく非難しますが、故のないことではないと思った。恐ろしいと思いましたよ。冤罪をでっち上げることにもなりかねないので。
 だから、僕は東京のやり方には従わなかった。大阪流で押し通した。上がなんぼ「俺の言う通りに直せ」といっても、「実際に尋問もしていない人の言うことなんか聞けるか」で、はねのけた。
p86〜 大物検事も認めた稚拙なつくりごと---田原
 4回目の授受の場所を特定したのは誰か---ロッキード事件に関わった東京地検特捜部のある検事にこの質問をしたところ、彼は匿名を条件に「誰にも話したことはないが」と前置きして、次のように当時の心境を語っていた。
「ストーリーは検事が作ったのではなく、精神的にも肉体的にも追いつめられた被告の誰かが・・・カネを受け取ったことは自供するけれども・・・あとでお前はなぜ喋ったんだといわれたときのエクスキューズとして、日時と場所は嘘を言ったのじゃないか。
 そして、それに検事が乗ってしまったのじゃないか、と思ったことはある。田中、榎本弁護団が、それで攻めてきたら危ないと、ものすごく怖かった」
 この元検事の証言を、事件が発覚したときに渡米し、資料の入手やロッキード社のコーチャン、クラッターの嘱託尋問実現に奔走した堀田力元検事にぶつけると、「受け渡しはもともと不自然で子どもっぽいというか、素人っぽいというか。恐らく大金の授受などしたことがない人たちが考えたとしか思えない」と語っていました。
 堀田さんは取り調べには直接タッチしていない。だからこそ言える、正直な感想なんでしょうけれど、どう考えても、あの受け渡し場所は稚拙なつくりごとだと認めていましたよ。
p88〜 検事は良心を捨てぬと出世せず---田中
 検事なら誰だって田原さんが指摘したことは、わかっている。その通りですよ。田原さんがお書きになったロッキード事件やリクルート事件の不自然さは、担当検事だって捜査の段階から認識している。
 ところが引くに引けない。引いたら検察庁を辞めなければいけなくなるから。だから、たとえ明白なでっち上げだと思われる“事実”についてマスコミが検察に質しても、それは違うと言う。検事ひとりひとりは事実とは異なるかもしれないと思っていても、検察という組織の一員としては、そう言わざるを得ないんですよね。上になればなるほど、本当のことは言えない。そういう意味では、法務省大臣官房長まで務めた堀田さんの発言は非常に重い。
 特捜に来るまでは、検察の正義と検察官の正義の間にある矛盾に遭遇することは、ほとんどありません。地検の場合、扱うのは警察がつくっている事件だからです。警察の事件は、国の威信をかけてやる事件なんてまずない。いわゆる国策捜査は、みんな東京の特捜か大阪の特捜の担当です。
 特捜に入って初めて検察の正義と検察官の正義は違うとひしひしと感じる。僕も東京地検特捜部に配属されて、特捜の怖さをつくづく知りました。
 検察の正義はつくられた正義で、本当の正義ではない。リクルート事件然り、他の事件然り。検察は大義名分を立て、組織として押し通すだけです。
 それは、ややもすれば、検察官の正義と相入れません。現場の検事は、最初は良心があるので事実を曲げてまで検察の筋書きに忠実であろうとする自分に良心の呵責を覚える。
 しかし、波風を立てて検察の批判をする検事はほとんどいない。というのも、特捜に配属される検事はエリート。将来を嘱望されている。しかも、特捜にいるのは、2年、3年という短期間。その間辛抱すれば、次のポストに移って偉くなれる。
 そこの切り替えですよ。良心を捨てて、我慢して出世するか。人としての正義に従い、人生を棒に振るか。たいていの検事は前者を選ぶ。2年、3年のことだから我慢できないことはないので。ただそれができないと僕のように嫌気がさして、辞めていくはめになるのです。

「美宝堂」名古屋市東区白壁

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宝石販売「美宝堂」、事実上の倒産
中日新聞2011年5月11日 12時34分
 帝国データバンク名古屋支店は11日、親子3代で出演するユニークなCMで知られた宝石販売の「美宝堂」(名古屋市東区)が、資金繰りの悪化から事実上の倒産状態に陥ったと発表した。
 同社は、経営者が知人から集めた多額の現金の返済が不能となっていることが発覚した3月から店舗を閉鎖し、事業停止状態となっていた。
 同支店によると、美宝堂は今月2日に2回目の不渡りを出して金融機関から取引停止処分を受けた。負債額は2010年1月期末で22億円とみられるが、さらに変動する見込みもある。
 同社は1950年創業。経営者の親子が登場する宣伝などで人気を呼び、東海地方で高い知名度を誇った。07年1月期には11億円の売上高を計上。しかし08年のリーマン・ショック後の消費不況で業績が悪化し、10年1月期の売上高は7億円に落ち込んでいた。
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〈来栖の独白〉
 東新町、東片端、カトリック主税町教会を過ぎて清水口。清水口交差点を左折するとき、必ず美宝堂を右手にチラッと見る。到着したな、と感じる。それが、10年まえまで私が白壁の名古屋拘置所へ車で行くときの習癖だった。
 その美宝堂が倒産だという。世の中は変わることを、遠くから実感させられた。

海自イージス艦「あたご」無罪/地検は有罪ゲームに勝つだけの組織なのか

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「あたご」無罪 ずさんな捜査を批判
中日新聞 社説2011年5月12日
 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船が衝突した事故の裁判で、あたごの元航海長ら二人が無罪となった。検察が描く漁船の航跡図そのものを否定した。ずさんな捜査が批判されたといえる。
 事故が起きたのは、二〇〇八年二月の房総半島沖だった。午前四時ごろは、月も出て、視認状況は良好で、波や風も潮流も穏やかだった。なぜ、そんな海で巨大なイージス艦と衝突したのか。
 最大のポイントは、漁船「清徳丸」がどのような航跡をたどっていたかだ。漁船の測位システムの記録は失われ、乗っていた親子は後に死亡認定された。客観的な証拠がないため、僚船の乗組員らの目撃証言などから推定するほかはなかった。
 ところが、横浜地裁の公判で、僚船船長の供述調書が大きく揺らいだ。調書には清徳丸が「自船の左前7度の角度、三マイルを航行」などと角度や距離が詳細に書かれていたが、船長は「この辺と言っただけ」と法廷で証言した。検察側が作成した清徳丸の航跡図も、この調書ができあがる前に既に作られていたことも分かった。
 検察が立証の柱とした航跡図のほころびが、公判段階で浮かんでいたわけだ。判決が「(検察が先に作成していた)航跡に沿うようにするため、恣意(しい)的に船長らの供述を用いた」と検察側を厳しく指弾したのは当然だ。
 海難審判では「あたごに回避義務があった」と認定したのに対し、判決は「清徳丸に回避義務があった」と正反対の結論になった。それは清徳丸が直進すれば、あたごの艦尾から数百メートルを航行したはずが、衝突前の三分前に清徳丸が右転し、衝突の危険が生じたと、裁判所が判断したためだ。
 原因究明と再発防止に主眼がある海難審判と異なり、刑事裁判では個人の刑事責任が問われる。一般的に立証のハードルは高いといわれる。検察側の立証に対して、判決は「航跡の特定方法に看過しがたい問題点がある。証拠の評価を誤った」とも言及した。
 そもそも「起訴ありき」の捜査ではなかったかという疑問も湧く。無罪となった被告は「地検は有罪ゲームに勝つだけの組織なのか」と訴えた。捜査の在り方をもう一度、点検してみる必要があろう。
 回避義務がなかったとはいえ、あたご側の動静監視が十分だったとはいえまい。二度と悲惨な事故を起こさぬよう海自側にも再点検が求められる。
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海自イージス艦事故無罪判決:遺族「納得いかぬ」、ぼうぜん、憤り、涙
神奈川新聞2011年5月12日
 判決主文が読み上げられると、傍聴席にどよめきが広がった。「何を言っているんだ」。亡くなった清徳丸船長・吉清治夫さんの弟の美津男さん(60)は、ぼうぜんと裁判長の顔を見つめた。事故から約3年3カ月。今でも2人のことを思うと、満足に眠れない時がある。「ふざけてる」。退廷する裁判長に、声を投げ掛けた。
 「清徳丸は大幅に右転してあたごと衝突する危険のある針路となり、一切の回避行為をとることなく衝突した」と判決が認定したことが信じられなかった。
 閉廷後の会見で、美津男さんは「納得いきません。うちの兄貴はそういう…」としばし言葉を継げず、ほおを伝う涙をぬぐった。震える声で続けた。「兄貴はそういうことをする男じゃない。あたごにぶつかっていくような男じゃないんです。兄貴にも過失があるとは思います。でも、無罪はないでしょう。死人に口なしですか? かわいそうですよ」。海に消えた兄と、その息子。死んだのは誰のせいなのか、ぶつける先が見つけられない憤りがその口調に表れていた。
 「2人の墓前に何と報告すればいいのか」。治夫さんのおいの祥章さん(21)も判決への戸惑いを口にした。治夫さんの息子の哲大さんには、子どものころからかわいがられてきた。事故後、2人が使っていた車の中にあったお金を形見代わりに、自分の交通安全のお守りの中に入れている。「裁判長が言う『あたごの警笛』を聞いた人はいるのか。疑問を感じる」と不信感をあらわにした。
 今回の判決は、海難審判の裁決と逆の結果となっただけに、漁業関係者らも戸惑いが隠せない。新勝浦市漁業協同組合の外記栄太郎前組合長(83)は「海難審判は『双方とも見張り不十分』との中で裁決が出て、漁師の考える枠での判断だったが、今回、2被告は無罪。どうして海難審判所と横浜地裁で判断が大きく食い違ったのか」と疑問を投げ掛けた。
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〈来栖の独白〉
 横浜地裁 秋山敬裁判長に、心から敬意を表したい。
 公判では“僚船船長の供述調書が大きく揺らいだ。調書には清徳丸が「自船の左前7度の角度、三マイルを航行」などと角度や距離が詳細に書かれていたが、船長は「この辺と言っただけ」と法廷で証言した。検察側が作成した清徳丸の航跡図も、この調書ができあがる前に既に作られていたことも分かった。”という。なんということだろう。
 現在東京地裁で審理が進められている陸山会事件も、如何にも杜撰な検察の手法が窺われ、作られたストーリーとの感を否めない。証人が具体的に述べれば述べるほど、「造られた」胡散臭さが漂う。
 もう、やめて戴きたい。でっち上げによるシナリオ造りは。裁判所の判断は真実を追究、認定するものであり、遺族の感情とは別だ。
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陸山会事件 日本発破技研山本潤社長「検事からヒントを貰って記憶が蘇った」 杜撰、粗末なシナリオ2011-05-11 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ2011-04-28 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

「木曽川・長良川事件」死刑囚の写真

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拘置所内で死刑囚撮影し掲載…フライデー
 12日発売の写真週刊誌「フライデー」(発行元・講談社)が、1994年に岐阜県などで4人が殺害された連続リンチ殺人事件で死刑が確定した大倉(旧姓・小森)淳死刑囚(35)を、判決確定前の3月11日に、名古屋拘置所内で撮影したとする写真を掲載していることが分かった。
 法務省によると、拘置所の接見室内での写真撮影を禁じる法律はないが、拘置所長の権限で認めていない。
 問題の写真は、ジャーナリストの青木理(おさむ)氏が、大倉死刑囚に面会した際に行ったインタビュー記事とともに掲載されている。最高裁が大倉死刑囚の上告を棄却した翌日、青木氏が面会した際に撮影されたといい、同死刑囚が涙を拭う様子がとらえられている。
 大倉死刑囚は犯行時19歳で、3月30日に、当時18〜19歳の共犯者2人とともに死刑が確定した。
 フライデー編集部は、「編集部独自の判断で撮影・掲載したもので、(死刑囚本人の同意の有無や撮影手段については)コメントしない。報道することに意義があると考えている」としている。(2011年5月12日08時45分  読売新聞)
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〈来栖の独白〉
 人の心には崇高な面と卑劣な面とが混在し、踏み絵を迫られたとき、どちらか一方が顔を出す。
 光市事件でも、某ジャーナリストが被告元少年の実名をタイトルにして彼やその周辺に取材した本を出版した。
 本件でフライデー編集部は、「報道することに意義がある」としているが、どうだろう。どんな意義だろう。教えてほしい。
 木曽川長良川事件では、3被告全員が最高裁で死刑確定した。死刑確定よって「更生可能性がなくなった」として、多くのメディアが元少年被告全員の実名報道に踏み切った。私は烈しい違和感を覚えた。
 ただ、本件フライデーの死刑囚写真掲載とメディアによる実名報道とに、どれほどの開き、差異があるだろう。読者の卑俗な興味に応えようとする意図に変わりはないように思える。光市事件の被告実名をタイトルにした意図も同様で、暴露によって売り上げを追求したものに違いない。
 インターネット上で、名の知れた事件の加害者の実名や家族について知りたい(教えて)、などという書き込みを見かけたこともある。
 犯罪は悲しみの心を私に催させるが、その周辺で、人びとの示す劣った興味、それに応えて利益追求する姿は、おぞましさを抱かせてやまない。いずれも、唾棄すべき群像だ。
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木曽川長良川事件
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木曽川・長良川リンチ殺人事件「少年法が求める配慮の必要性から、中日新聞は3被告を匿名で報道します」2011-03-11 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 〈来栖の独白〉?
 今回、強く、中日新聞を購読していることを嬉しく思った。中日新聞は「更生になお配慮必要」として、3被告を匿名で報道した〈日経新聞も読んでいるが、こちらは実名報道〉。匿名報道の理由も、合理性を満たしたものだ。次のように述べている。書き写させて戴く。
 なぜ匿名報道か「更生になお配慮必要」2011/03/11中日新聞朝刊1面
 本紙は連続リンチ殺人事件で、事件当時18、19歳だった3被告の逮捕段階から、本人を特定できるような記事や写真の掲載を禁じた少年法61条の趣旨を尊重し、匿名で報じてきました。
 61条は、少年の更生や社会復帰の妨げにならないよう社会に配慮を求めた規定です。表現の自由との関係で罰則はなく、社会の自主的な規制に委ねているとされます。
 報道は実名を原則とし、重大事件の加害者の氏名は社会の正当な関心事です。人命を奪う究極の国家権力の行使が、誰に対してなされるのかも曖昧にはできません。
 3被告の死刑が確定すれば、更生する可能性が事実上なくなったとみなせます。
 死刑判決が覆る可能性もほとんどないことから、実名への切り替えも議論しました。
 しかし、この段階で更生に配慮する必要はないと言い切れるか、との疑問はぬぐえません。
 3被告との面会や書簡のやりとりから内心の変化もうかがえます。死刑執行時まで罪に向き合う日々が残されています。
 本紙は、実名報道の目的、意義を踏まえても、現時点では、少年法が求める配慮の必要性はなお消えていないと判断し、これまで通り3被告を匿名で報道します。(東京本社社会部長・大場司)
 〈来栖の独白〉?
 中日新聞1面の「解説」も、行き届いた正論である。書き写させて戴く。↓
 「解説」 刑罰と少年法理念
 元少年3人を死刑とした10日の最高裁判決が、被告が少年である点に言及したのはわずか1箇所、「くむべき事情」の一つとして「いずれも少年だった」と触れただけだった。成人被告に対する判決と、ほとんど変わるところのない判決は、年齢は特段重視すべき事情ではないとの考え方をあらためて示したとも言える。
 死刑判決された少年事件で、最高裁の判断の分岐点となったのは、1、2審の無期懲役判決を疑問視し、審理を差し戻した山口県光市母子殺害事件の上告審(2006年)だ。
 この判決は被告が18歳になったばかりだったことについて「罪の重大性などと比べ総合判断する上での1事情にとどまる」と指摘。今回もこの枠組みを踏まえ、犯行自体の悪質さを重視し、極刑以外の選択肢はないと判断した。
 今回の判決は、09年に裁判員裁判が始まって以来、重大な少年事件で最高裁が初めて判断を示す場でもあった。にもかかわらず、更生の可能性をどう検討したのか、まったく触れなかった点には疑問が残る。
 凶悪事件を起こした少年にも更生を重んじる少年法の理念は生かされなければならない。死刑という究極の刑罰を選択したのだからこそ、犯罪の重大さとこの理念をどう判断したのか明示してほしかった。(東京本社社会部・小嶋友美)
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「光市母子殺害事件」元少年被告の実名表記した単行本2009-09-28 | 光市母子殺害事件 
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「木曽川長良川連続リンチ殺人事件」実名報道・・・各紙の対応2011-05-09 | 死刑/重刑/生命犯 問題

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