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鹿児島・川内 九州電力は「原発の影響はない」と言うが/温排水による海水温上昇/塩素の垂れ流し/磯焼け

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<新日本 原発 紀行> 鹿児島・川内
2011年5月21日中日新聞【特報】
 福島の原発事故は、南西に千二百キロも離れた日本最南端の原発、九州電力川内原発を抱える鹿児島県をも揺るがせている。事故の風評被害により、同県を訪れる外国人観光客は激減。そうした影響からか、保守系が強い県議会の改選で、反原発を掲げる革新系新人が当選するという「番狂わせ」が起きた。さらに川内原発(同県薩摩川内市)の3号機増設は凍結が決まった。このうねりは本物なのか。(鈴木伸幸)

最南端でも風評被害 外国人観光客激減 ブリ輸出 ストップ
 緑が目にまぶしい、広いフェアウエー。見上げれば抜けるような青空が広がる。南国情緒あふれる九州の名門「かごしま空港36カントリークラブ」(同県霧島市)。ここにも、東日本大震災が襲った三月十一日から異変が起きていた。
 「一年間で一万二千人もいた韓国人客がゼロになった。キャンセルが相次いで壊滅状態」と金永出(キムヨンチュル)国際部長は顔をしかめた。「福島からの距離、コースで測定した放射線量に変化がないことを示しても、来てもらえない」
 養殖ブリで知られる同県長島町も風評被害にさらされた。韓国、台湾への輸出が止まった。東町漁協の海江田美治常務は「海外では福島と鹿児島を区別してくれない。『日本は日本』という感覚。それを再認識した」と話した。
 震災は、その翌日に全線開通した鹿児島中央と博多を結ぶ九州新幹線にも水を差した。「記念式典は注目されず、自粛ムードで、観光客は予想以下」と鹿児島市内の観光業者は首を振った。
 福島の事故で安全神話は崩壊。そして、地元への風評被害も後押しとなって、川内原発の反対運動には弾みがついた。
 「鹿児島は保守的。問題意識はあっても、お上相手に声を上げてくれない。でも、福島の事故後は、応援の声を掛けられるようになった」
 川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長(62)はそう語る。
 「反対運動の参加者が高齢化する中、若い人が入ってきてくれた。それがうれしかった」
 九電は九州最大の企業だ。関連事業や取引先を含めれば、地域経済への影響力は大きく、盾突くことはタブーだった。
 そんな“怪物”を相手に「九電と原発」など原発を批判する書籍を出版してきた「南方新社」(鹿児島市)の向原祥隆社長(54)も「問い合わせが殺到している。こんな経験はなく、手応えを感じる」と笑顔を見せた。
 その向原社長がここ数年、最も気掛かりなのが、川内原発の周辺海域での環境変化だ。
 「原発が出す温排水の量は、九州南部で最大の川内川の流量に匹敵する。その影響で海水温が上がっている。原発周辺の砂浜には、イルカやサメなどの死骸が打ち上げられるようになった」*画像≪砂浜に打ち上げられた体長約80?のサメ。砂浜の向こう側に川内原発がある。=薩摩川内市で≫
 最初に死骸の急増に気付いたのは、薩摩川内市委託のウミガメ観察員、中野行男さん(53)だ。 「五年ほど前から、ほぼ毎日、原発周辺の浜辺を歩いている。そのころから大型魚類の死骸漂着はあったが、数が増えてきたので、二〇〇九年にサメを数えたら二十九匹。他の海岸ではそんな話を聞かない。何らかの警告ではないのか」

「問題なし」一辺倒 増幅する九電への不信 3号機 事実上の凍結
 温排水については原子力安全協定で「取水口と放水口における海水の温度差は、七度以下とする」と定められている。
 ところが、取水口と放水口までの距離はわずか二百メートル。取水口の海水温が上がる「温排水の再循環」が再三、指摘されている。九電は「深層取水方式を採用している」と主張するが「深層」といっても四メートルの深さ。干潮時には二メートルしかない。
 温排水が影響する海域を「放水口から二キロ内外」とする九電の主張も疑問視されている。九電の調査記録を見直すと、南に潮が流れる「下げ潮」時には、温水域が南側に大きく膨らみ、逆に「上げ潮」時には北側に大きく膨らむ。その膨らみは五キロにも及んでいる。
 温排水の問題は温度だけではない。海水は原子炉の冷却パイプ内を流れる。そのパイプの内側にフジツボなどが付かないように大量の塩素が混ぜられる。それも放水口から垂れ流されている。
 因果関係は不明だが、原発から五キロ以上も離れた海域で海藻が枯れる「磯焼け」が深刻化。漁獲高が全盛時の約五分の一に減った漁協もある。
 漁業補償を受けていない、原発から二キロ以上離れたある漁協の組合長は「九電は『原発の影響はない』というので、信じてきたのだが…。私たちが声を上げても『法的根拠がない』と言われてしまう」と打ち明けた。
 九電のこうした「問題なし」一辺倒の姿勢は、最近に始まったことではない。
 鹿児島大学の橋爪健郎元助手は「かつて原発建設時の掘削調査で、サンプルすり替え事件というのがあった。加えて、建設時は『ない』としていた周辺の活断層も、その後、存在を認めた。一九九七年に川内で震度5強の地震があったが、その時に原発で記録された観測データをいったんは出すとしながら、後に『欠落していた』とした。信用できない」と憤る。
 蓄積していた九電に対する住民の不信感は、今回の福島の原発事故で一気に噴き出した。
 先月十日投開票の鹿児島県議選。川内原発の3号機増設の是非が争点となったが、薩摩川内市区(定数三)で保守系三人の「指定席」の一角を、増設反対を訴えた社民推薦の遠嶋春日児(とおじまはるひこ)氏が奪った。
 地元紙の世論調査でも、ほぼ七割が増設に反対した。鹿児島県もこうした世論を無視できずに、3号機の増設計画は事実上の凍結となった。
 ただ、伊藤祐一郎知事は既に表明した「増設への同意」は変えない意向だ。3号機の建設費は五千四百億円とされ、その経済的恩恵は大きく、賛成派は現在、嵐が過ぎ去るのを待っているようにも見える。
 当選した遠嶋県議も「私が当選した一方で、原発反対を訴えた現職の仲間が落選した。選挙期間中の反応がよかった割には、票は伸びなかった。増設凍結から一歩先に進みたいが、県民の真意はどこまであるのか」と、思いあぐねる。
 前出の中野さんも「昔は、川内からは出稼ぎする人が多かった。親戚や同級生にも九電に世話になっている人も多く、(反対が定着するのは)そう簡単ではない」と複雑な心境を吐露する。
 だが、橋爪氏はそうした弱腰を一喝する。「福島の事故は『想定外』とされているが、自然災害の想定は無理。私たちが持つ災害の記録はたかだか数百年で、万年単位の災害は想定できない。今回は脱原発に向けての最後のチャンス。それとも、川内原発で事故がなければ分からないのか」


菅首相、G8で原発継続表明へ/原発=自然を征服してまで人間本位の社会を追求する姿勢の象徴

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〈来栖の独白〉
 我が国の首相には、ドイツの首相のような理想も叡智も胆力も、そして各界を説得しうる度量、好ましい人間性も、あるとは思えない。
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20年後を想う危機感 週のはじめに考える
中日新聞 2011年5月22日
 東日本大震災を受けて、ドイツがあらためて原発撤退に踏み出そうとしています。被災国を上回るかのような危機感は何に由来するのでしょうか。
 東日本大震災発生の報が世界中を駆け巡った際、海外の知人友人から相次いだ見舞いのメールや電話は、戦(おのの)きに満ちたものでした。
 「津波が日本を呑(の)み込んでゆく映像を見た」「原子炉が爆発し、メルトダウンが起きている、とテレビが伝えている。東京は大丈夫か」。過剰ともいえる報道ぶりは当初批判の対象ともなりました。
 撤退に収斂する民意
 皮肉にも、その恐怖感を裏付けるかのような被害実態が日々明らかになっていますが、中でも強い危機感を示したのがドイツです。従来の原発容認の立場を翻し、早期の原発撤退を鮮明にしたメルケル首相の姿勢にその衝撃の凄(すさ)まじさが集約されています。
 ドイツが原発撤退を鮮明にするのは、これで二度目です。一九九八年、「統一宰相」のコール首相に代わって政権に就いた社民党のシュレーダー首相は、フィッシャー党首時代の緑の党との連立政権下、原発撤退を主要政策の一つに掲げました。
 再生可能エネルギーの開発、原発企業への補償、海外との使用済み核燃料処理契約の扱いなど、撤退実現のための国民的論議は、この時一度尽くされています。妥協を重ねた末とはいえ、原発による発電総量、稼働期間を規定し法制化した内容は、二〇二〇年代に全廃の実現を見据えたものでした。
 この方針は、次のキリスト教民主・社会同盟と社民党の大連立政権下でも継続されましたが、一昨年の総選挙で発足した現保守系連立政権は、稼働期間を延長する方針に転換、原発は容認の方向で進むかに見えました。
 欧州にあっての試み
 そこに起きたのが東日本大震災です。発生直後に行われた保守の牙城南部バーデン・ビュルテンベルク州選挙での大敗と、州レベルとはいえ、史上初めての緑の党主導政権誕生は脱原発への回帰を迫るに十分でした。
 「原子力発電は再生可能エネルギーにつなぐまでの過渡的なエネルギー、と見る点では国民的コンセンサスができているといえる。あとは、その過渡期の期間をどれだけみるか、という違いだけだ」。ドイツ現代政治専門の森井裕一・東大准教授はこう分析しています。
 原発全廃を党是とする緑の党発足以来三十年。社民党、そして保守政党までが原発撤退を決めたことで、ドイツの民意は収斂(しゅうれん)した、といえます。
 経済大国たるドイツの地位を脅かすことなく、その転換が実現できるのか。なお道のりには厳しいものがありますが、現在十七基ある原子炉のうち八基が停止し、今後、新規の原子炉建設も見込まれない事情を考えると、撤退後の風景を想像するのもそう難しくない所まできています。
 しかし、ドイツの危機感が欧州全体、ひいては国際社会で共有されているか、といえばそうではありません。米国に次ぐ世界第二の原発大国の隣国フランスの原子力政策は、一部に見直し論が出ているとはいえ、容易に揺らぎそうにありません。
 フォルカー・シュタンツェル駐日独大使は、事故後二カ月を経て開いた記者会見で、「各国の国家判断を尊重するドイツの考え方に変わりはない」と述べました。ドイツの原発撤退は、あくまで原発を容認する欧州にあっての試みである点も忘れてはならないでしょう。
 ドイツは戦後、欧州統合のプロセスとともに歩んできました。ドイツ統一後十年の二〇〇〇年、独仏関係を熟知するルクセンブルクのユンケル首相に両国の政治的な考え方の差について伺ったことがあります。「本質的な違いはないが、あるとすればアプローチの方法だ。ドイツ人は現在の決定が二十年後にどう表れるかを正確に計りたがる。フランス人は長期的な構想にはあまり重きを置かない」。当時から二十年後、原発廃止が実現しているかもしれないという符合は示唆に富んでいます。
 被災国への問いかけ
 戦争の惨禍を繰り返すまい、と戦後一貫して負の歴史を語り継いできたドイツです。次元こそ違いますが、「3・11」を機に将来起こり得る惨禍に想(おも)いを致し、一際(ひときわ)危機意識を募らせているとしても不思議ではありません。
 自然を征服してまで人間本位の社会を追求する姿勢が西洋文明のなかにあるとすれば、原発はその一つの象徴でしょう。西欧の中心にあって、あえて脱原発を選択するドイツの危機感は、国際社会、何より、被災国日本の危機感の行方を問うています。
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安全なら原発再稼働容認=2次補正、今国会提出も―菅首相
時事通信 5月18日(水)18時21分配信
 菅直人首相は18日午後、首相官邸で記者会見し、定期検査などで運転停止中の原子力発電所について「安全性が確認されれば稼働を認めていくことになる」と表明した。また、「原子力のより安全な活用方法が見いだせるなら、さらに活用していく」と述べ、原子力政策を基本的に維持する考えを示した。
 経済産業省原子力安全・保安院によると、商用原子炉54基のうち、営業運転中は17基、調整運転中は2基で、残り35基は定期検査や東日本大震災など何らかの理由で運転を停止している。
 一方、首相は2011年度第2次補正予算案について「本当に急ぐものが提案された場合は考えないといけない」と述べ、今国会中に提出する可能性を示した。その場合、被災者生活再建支援金の不足分など小規模な2次補正とし、8月以降に復興対策のための本格的な補正予算案を編成するとみられる。
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菅首相:G8演説で「原発継続」表明へ
 菅直人首相が26、27日にフランス・ドービルで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)で行うエネルギー政策に関する発言の概要が20日、分かった。東京電力福島第1原発事故を受け、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及を推進するなど4本柱で構成。原発の安全性を向上させたうえで継続利用する方針を示し、日本が「脱原発」に転じたとの見方を払拭(ふっしょく)する。
 発言は26日昼(日本時間同夜)のG8のワーキングランチの冒頭で行われる。4本柱は(1)原子力の安全性向上(2)再生可能エネルギーの推進(3)石油、石炭など化石燃料の二酸化炭素(CO2)排出量削減(4)省エネ・節電。特に再生可能エネルギーを基幹エネルギーに加える方針を強調する。化石燃料のCO2排出量については、日本は石炭をガス化するなど最先端の削減技術を持つため、普及を促進する。【大貫智子】毎日新聞 2011年5月21日 2時33分
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原発保有国は潜在的核武装国/保有31カ国の下心/日本の原発による発電量は世界第3位2011-05-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
 東西対立の遺物、原発よさらば福島の事故が証明した、効果絶大なるテロの標的
JB PRESS 2011.05.14(Sat)川嶋 諭
 たとえ思いつきであろうと、地に落ちた人気をわずかでも回復させたいという政治パフォーマンスであろうと、菅直人首相が中部電力浜岡原子力発電所の運転停止を要請し、政府のエネルギー計画の撤回に踏み切ったことは、全くもって喜ばしい。
 原子力発電所は安全だと言い張ってきた政府と電力会社の嘘がばれたいま、福島第一原発の二の舞いは起こり得る。
 いったん事故を起こせばこれだけの被害(まだ拡大する)を引き起こす原発を彼らの手に委ねるのは国民の選択肢としてあり得ないからだ。
 もし、福島第一原発の後に続く原発事故が日本のどこかで起きれば、もはや完全に取り返しのつかないことになってしまう。
 その意味で、瓢箪から駒とはいえ、菅首相の決断は歓迎されるべきものだろう。
 実際、5月11日には今回の震災で茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発で、あわや大惨事を引き起こしかねない状況だったことが明らかになった。
 朝日新聞の報道によると、震災後の停電とその後の高さ5.4メートルの津波の影響で非常用発電機1台と非常用炉心冷却装置1系統が使用不能になって炉心温度が上がり、炉心内で発生した水蒸気を圧力容器に逃がす作業で、何とか急場をしのいだという。
 停電と5メートルの津波でも、危機が目の前に来ていたわけである。想定される東海沖地震の震源地付近に建ち、かねて危険が指摘されている浜岡原発の一時停止は、日本国の未来を懸けたリスクマネジメント上、当然の判断と言える。
 この菅首相の行動に対し、密室での決定で意思決定のプロセスが明確でない、浜岡を特別視する判断基準が分からないとの批判が相次いでいて、それはその通りだと思う(「密室で決まった浜岡原発の停止要請をどうして賞賛できるのか」)。手続きとしては明らかに間違っている。
 しかし、仮に中部地区で夏場に電力が足りない状況になったり電気料金が上がったりしても、万が一の原発事故の大きさに比べたら比較対象とはならない。
 5月11日には、神奈川県の南足柄市で栽培されていたお茶畑から政府の基準を上回る放射能(セシウム)が検出されている。また、ある食品メーカーが独自に調査した結果では、福島第一原発から50キロ以上離れた水田の土から、政府が発表している数値よりケタ違いに高い放射線が検出されたという。
*原発から50キロ以上離れた田んぼの土から高濃度のプルトニウム
 この食品メーカーによると、現時点でその結果を公表するのは影響が大きすぎるため発表は控えているとのことだが、その田んぼの土からは高い濃度のプルトニウムも検出されたそうだ。
 一方、5月12日になって、東京電力は福島第一原発の1号機の原子炉に穴が開いている可能性があると発表した。
 それが事実だとすれば、燃料棒を冷やすための水を常に供給し続けなければならず、それが高濃度の放射能に汚染された排水となって海に流れ出続ける危険性がある。
 福島第一原発の放射能汚染は、水蒸気爆発以降収まっているように見えるが、実際には汚染を続けている。新たな水蒸気爆発の危険性も高い確率で残っている。
 プルサーマル運転をしていた福島第一原発3号機では、燃料に高い比率でプルトニウムを混ぜていたため、チェルノブイリやスリーマイル島の事故とは別に半減期が2万4000年と目が飛び出るほど長いプルトニウムによる汚染が広がる危険性がある。
*半減期が2万4000年の怖い汚染の静かなる広がり
 新聞やテレビの解説者によれば、プルトニウムは万が一人体に取り込まれても異物として排除されやすいので心配はいらないという。
 しかし、プルトニウムが大気や土壌、そして海水へと撒き散らされ続ければ、再び人体に濃縮された形で取り込まれる危険性は十分にある。何しろ半減期が2万4000年なのである。紙や木が燃えるようにはなくなってくれないのだ。
 プルトニウムはα線(陽子2つと中性子2つのヘリウムの原子核)を放出する。α線は紙1枚でも防げるので人体の奥深い組織には悪影響はないとされるが、一方で肺に吸い込むと肺胞の表皮組織を集中的に傷つけて肺ガンを引き起こすとも言われている。
 原発は、いったん事故を引き起こせば、地元の住民に、そして日本人全体に甚大な被害をもたらし、また地球を非常に長い期間汚染し続けるリスクを背負っている。
 福島第一原発の事故で、目の前に終わりなき大きなリスクをまざまざと見せられたいま、最も不安を感じ始めているのは原発を持たない沖縄電力を除く電力会社の経営陣ではないだろうか。東京電力のようにはなりたくないと考えるのが自然だろう。
*13日の金曜日、浜岡原発が停止
 中部電力の水野明久社長が菅総理の要請を受け入れて、5月13日の金曜日に浜岡原発の運転を中止したのには、そんな計算も働いているはずだ。
 首相の要請を受け入れるかを議論した取締役会では激論が交わされたと報道されているが、法的根拠のない首相の要請を結局受け入れることにしたのは、明日発生するかもしれない巨大地震への恐怖ではなかったか。
 この決断は、水野社長にとって敗軍の将になる危険性がなくなるばかりか、ヒーローになれる絶好の機会と言えるのだ。
 産経新聞は中部電力の事実上の創業者で戦後の9電力体制を築いた松永安左エ門を引き合いに出して、菅首相の要請は突っぱねるべきだったと言う(産経抄)。
 しかし、死ぬまで勲章の受け取りを拒否し自立と日本のためを行動原理とした松永安左エ門だったら、日本のため世界のために浜岡原発を自ら停止したのではないか。そもそも動機不純の原発は建設しなかったかもしれない。
*菅首相の要請は渡りに船?
 中部電力の清水社長にすれば、菅総理からの要請を内心、待ってました、渡りに船だと喜んだとしても全くおかしくないと私は思う。
 ほかの電力会社のトップも内心ではそう考えている可能性もある。何しろ、原発は今の日本の環境では電力会社に富をもたらしてくれる宝の山ではなくなってきたからだ。
 日本が現在の中国のように高度経済成長の最中にあって電力供給が決定的に足りない状況だった時代は、国策もあって確かに原発への投資は利益を生んだ。しかし、日本の電力需要がピークアウトした今は、設備負担の重い原発は旨みが少なくなっているのだ。
 地域独占で料金が認可制の電力会社にとって、巨大な設備投資が必要な原発を建設すれば、その償却分や核燃料の所有額を電気代に加算できたうえに償却後は大きな利益を享受できた。しかし、それは電力消費が右肩上がりであることが前提だ。
 現在のように電力需要が下がり始めれば収益モデルは過去のものとなり巨大な設備負担がのしかかる。さらには、稼働から年月が経った原発では、地震以外にも原子炉容器や配管の応力腐食割れなど様々な事故のリスクに怯えなければならない。
*デフレ経済が好きな民主党政権では原発は儲からない
 どうしたことかデフレ政策を掲げて実践している今の民主党政権が続けば、経済はますます冷えて電力需要は下がる一方だ。
 さらに増税で企業の海外移転も進めばさらに電力消費は減る。日本の経済政策上から見ても原発は電力会社にとって経営リスクなのである。
 また、原子力発電のコストは決して安くない。それどころか、福島第一原発の事故で巨額の賠償金が必要になる以前の段階で、最も発電コストの高い方法になっているのだ(「高すぎる原発の発電コスト、LNG火力で代替せよ」)。
 この記事によれば、電力会社の業界団体である電気事業連合会などが発表している“粉飾”されたデータではなく、実態に近い発電コストは、1KWh当たり火力発電が9.9円。原子力の場合には12.23円もかかるという。
 一方、原子力が環境に優しいという触れ込みにしても、確かに二酸化炭素は出さないものの、大量の熱エネルギーを海水に放出している。何しろ、原発は蒸気機関で発電するので熱効率が悪い。タービンの性能が上がった現在でも30%台そこそこ。
*原発は蒸気機関車時代の技術
 原子炉で発生する熱の3分の2は海水に放出されている。二酸化炭素は放出しなくても地球を温めているわけで、決して環境に優しいわけではない。さらに、発電所の立地が消費地から遠いため、高圧線を通るうちに電力の半分近くが熱となって大気中に放出されてしまう。
 つまり、核分裂で得たエネルギーで最終消費者が電力消費として回収できているのはわずか6分の1。残りの6分の5は熱エネルギーとして放出している勘定になる。やはりシュッシュポッポ時代の技術でしかない。
 一方、火力発電所の方は、ガスタービンを使ったコンバインドサイクルという発電方法によって、日増しに熱効率が上がっている。最高効率のものは60%を超える。また、立地も消費地に近いため、送電ロスは小さい。
 ガスタービンというのは、言ってみればジェットエンジンである。燃料に圧力をかけて噴射させて燃やし、燃焼ガスが一気に膨張したその勢いでタービンを回す(ジェット機の場合は推力となる)。燃焼の際の温度を高めれば高めるほど、燃やしたガスの膨張度が高まるので効率が高くなる。
 すでに1500度を超える高い温度で使用できるガスタービンが実用化されている。高い温度のガスタービンは廃熱の温度も高くなるので、その廃熱を使って水を沸騰させて蒸気にして蒸気タービンを回せば、さらに効率が高くなる。これがコンバインドサイクルである。
*蒸気機関車VSジェットエンジン
 ジェットエンジンのハイブリッドシステムと考えていい。電力を発生させる仕組みそのものでは、シュッシュポッポの蒸気機関車時代の技術である原発に比べ、超音速時代の高効率な技術であり、はるかにハイテクだ。
 以前、このコンバインドサイクルを作っている三菱重工業の高砂製作所に取材に行ったことがある。
 タービンブレードの耐熱性、軽量化のための材料開発、燃焼ガスの流れを効率的にブレードに伝える空力設計など、日本の技術の粋を集めたものだった。
 技術の進歩も目覚ましく、最近では1600度以上のガスタービンも開発されていて、その場合には燃料に水素を使うという。燃焼で二酸化炭素を生まず、熱効率も60%以上となり、極めて環境に優しい発電方式となる。
 今の日本が置かれた環境にどういった発電方式が電力会社の経営にふさわしいのかという観点から、株主総会を控えているいま、電力会社の株主の皆さんは経営をチェックした方がいいのではないか。
*原発はテロリスト最大のターゲットに
 さて、日本が原発を導入するに当たってはコストや環境以外の動機もあったはずである。国防だ。しかし、日本の再軍備と核武装をこっそり視野に入れていたこの不純な動機も今となっては全くの的外れとなった。
 福島第一原発の事故が国防の観点からはっきりと示したのは、テロあるいは仮想敵国から原発に何らかの攻撃がされたら、とんでもない被害をほぼ永遠にもたらすということだろう。
 日本を滅ぼすのに原爆は不要。日本中に散らばっている54基の原発をロケットで攻撃すれば、日本全土はたちまち永遠に生物が住めない世界に変わる。カルタゴがローマ帝国に滅ぼされた時、作物が二度と生えないように塩をまかれたどころの騒ぎではない。
 中曽根康弘元総理と初代の科学技術庁長官だった正力松太郎・読売新聞社主が1955年に二人三脚でスタートさせた日本の原子力産業育成は、米国のアイゼンハワー大統領による「平和のための核利用:Atoms for peace」という見せかけの看板につられたものだった。
 実はソ連に対抗するために核による軍拡のお先棒を担がされたことが明らかだった。それについては有馬哲夫・早稲田大学教授の『原発・正力・CIA』(新潮新書、2008年)に詳しい。若く血気盛んな中曽根元総理と野望ある正力氏は、米国の術中にはまっていく。
*読売新聞が牽引した日本の原発建設
 もちろん、米国が正力氏を見込んだのにはわけがある。日本国内だけで1000万部という世界最大部数にまで育てた新聞事業と日本初の民放、日本テレビの影響力だ。結局、それらをフル活用されて日本は原発大国へと大きく歩を進めていく。
 米国に招待されて核施設を見に行った中曽根元総理は、自著『自省録』(新潮社、2004年)の中で、次のように書いている。「日本もこの流れに乗らないとたちまち取り残されると、多いに焦燥感に駆られます」
 帰国した中曽根元総理は居ても立ってもいられず、当時予算委員会の筆頭理事だった立場を最大限に利用して原子力の調査費を予算計上する。その額は2億3500万円だったという。この数字に具体的な意味はなく、熱中性子を受けて核分裂するウラン235の235をただ取っただけだった。
 このようにして日本が米国から原子力技術の供与を受けられるようになる前、米国はすでにアジアでもイラン、イラク、インド、パキスタンなどに原子力技術を供与していた。米国に滅ぼされたイラクを除けば、これらの国は今や原爆保有国である。
 原発を持った一国の権力者が原爆を持ちたくなるのは道理。隣国などと紛争を抱えていればなおさらだ。現在、原発を持っている国を調べると、その下心が透けてくる。それをデータで示してくれたのがこの記事(「知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音」)だ。
*原発を保有している31カ国の下心
 「現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)」
 「それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている」
 「その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリアが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている」
 「旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである」
 「その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている」
*原爆を作りたいがための原発は最大の弱点に
 「ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している」
 「原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである」
 日本と同じ愚かな轍を踏んでしまった国が何と多いことだろう。これらの国のいくつに原爆を作れるという下心があるかは分からない。しかし、そのために原発を建設してしまったとすれば、攻めばかり考えて守りを全く考えていないことになる。
 日本の現状を見ればそれは明らかだ。日本の原発はテロに対して全くと言っていいほど無防備である。その点はこの記事「北朝鮮が狙う日本海側の原発、守備は万全?」が警鐘を鳴らしている。
 「日本の原発の多くは日本海沿岸に集中しています。潜水艦で攻撃されたらひとたまりもないでしょう。今ごろ北朝鮮と仲良くしようとか話し合おうとか言う人には、そろそろ北の正体を思い知れと言いたいです」
*東西対決が終わってみれば、原発はただの遺物に
 世界に原発が広がったのは、米国とソ連という東西対立の賜物だった。東西対立が終わったいま、この副産物は国家を守るという意味でも大変危険な存在になっている。地域紛争やテロによる明確なターゲットになるからだ。
 建設・運営コストも高く、環境にも優しくなく、国防上からも危険極まる原発は、本来、東西対決の終わりとともに棄てていくのが正しい姿ではないか。できれば一気にすべての原子炉を廃炉にしてほしいところだが、電力供給の事情もあるから簡単にはいかないだろう。
 世界の原子力関連市場で、日本の技術や製品はその中核を占めるまでになっているという。地震国の少ない国で原子力の安全利用を進めたい国があるとすれば、そうした国に安全でできるだけコストの安い部品や機器を供給し、原発の安全度を高めるのは、福島第一原発の事故で地球を汚染してしまった国の責任でもある。
 また、万が一の場合には、徹底支援するためにも原子力技術から逃れることは許されない。
 しかし、世界最大の地震大国である日本では、浜岡原発を皮切りに危険度の高いところから廃止して、コンバインドサイクルや風力、太陽光、燃料電池、地熱発電などに切り替えていくことは、東西対決が終わったいま、明らかな時代の要請である。 *強調(着色・太字)は、来栖
〈筆者プロフィール〉
川嶋 諭 Satoshi Kawashima
・早稲田大学理工学部卒、同大学院修了。日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。1988年に「日経ビジネス」に異動後20年間在籍した。副編集長、米シリコンバレー支局長、編集部長、日経ビジネスオンライン編集長、発行人を務めた後、2008年に日本ビジネスプレス設立。
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原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
20?・250?シーベルト/国民の健康よりも原子力行政優先/「政府官邸へ何を言っても届かない」小佐古敏荘氏2011-05-17 | 地震/原発

米の核性能実験に広島・長崎市長が不信感だが、原発保有国は潜在的核武装国

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米の核性能実験:広島・長崎市長が不信感
 米国が核兵器の新たな性能実験を行っていたことについて、広島市の松井一実市長と長崎市の田上富久市長が22日、広島市役所で報道陣の取材に応じ、米国への不信感を示した。
 4月の就任後、初めて明らかになった核実験について松井市長は、オバマ米大統領が「核なき世界」を唱えた09年4月のプラハ演説などに触れ、「(核兵器廃絶への)切なる願いに対し、誤解を生むような行動は慎んでほしい」と語った。田上市長は「実験がどういった意味を持つのかまだ分からないが、新しい核兵器開発につながるのであれば容認できない」と話した。【寺岡俊】
毎日新聞 2011年5月22日 19時47分
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原発保有国は潜在的核武装国/保有31カ国の下心/日本の原発による発電量は世界第3位2011-05-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
 東西対立の遺物、原発よさらば 福島の事故が証明した、効果絶大なるテロの標的
JB PRESS 2011.05.14(Sat)川嶋 諭
 たとえ思いつきであろうと、地に落ちた人気をわずかでも回復させたいという政治パフォーマンスであろうと、菅直人首相が中部電力浜岡原子力発電所の運転停止を要請し、政府のエネルギー計画の撤回に踏み切ったことは、全くもって喜ばしい。
 原子力発電所は安全だと言い張ってきた政府と電力会社の嘘がばれたいま、福島第一原発の二の舞いは起こり得る。
 いったん事故を起こせばこれだけの被害(まだ拡大する)を引き起こす原発を彼らの手に委ねるのは国民の選択肢としてあり得ないからだ。
 もし、福島第一原発の後に続く原発事故が日本のどこかで起きれば、もはや完全に取り返しのつかないことになってしまう。
 その意味で、瓢箪から駒とはいえ、菅首相の決断は歓迎されるべきものだろう。
 実際、5月11日には今回の震災で茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発で、あわや大惨事を引き起こしかねない状況だったことが明らかになった。
 朝日新聞の報道によると、震災後の停電とその後の高さ5.4メートルの津波の影響で非常用発電機1台と非常用炉心冷却装置1系統が使用不能になって炉心温度が上がり、炉心内で発生した水蒸気を圧力容器に逃がす作業で、何とか急場をしのいだという。
 停電と5メートルの津波でも、危機が目の前に来ていたわけである。想定される東海沖地震の震源地付近に建ち、かねて危険が指摘されている浜岡原発の一時停止は、日本国の未来を懸けたリスクマネジメント上、当然の判断と言える。
 この菅首相の行動に対し、密室での決定で意思決定のプロセスが明確でない、浜岡を特別視する判断基準が分からないとの批判が相次いでいて、それはその通りだと思う(「密室で決まった浜岡原発の停止要請をどうして賞賛できるのか」)。手続きとしては明らかに間違っている。
 しかし、仮に中部地区で夏場に電力が足りない状況になったり電気料金が上がったりしても、万が一の原発事故の大きさに比べたら比較対象とはならない。
 5月11日には、神奈川県の南足柄市で栽培されていたお茶畑から政府の基準を上回る放射能(セシウム)が検出されている。また、ある食品メーカーが独自に調査した結果では、福島第一原発から50キロ以上離れた水田の土から、政府が発表している数値よりケタ違いに高い放射線が検出されたという。
*原発から50キロ以上離れた田んぼの土から高濃度のプルトニウム
 この食品メーカーによると、現時点でその結果を公表するのは影響が大きすぎるため発表は控えているとのことだが、その田んぼの土からは高い濃度のプルトニウムも検出されたそうだ。
 一方、5月12日になって、東京電力は福島第一原発の1号機の原子炉に穴が開いている可能性があると発表した。
 それが事実だとすれば、燃料棒を冷やすための水を常に供給し続けなければならず、それが高濃度の放射能に汚染された排水となって海に流れ出続ける危険性がある。
 福島第一原発の放射能汚染は、水蒸気爆発以降収まっているように見えるが、実際には汚染を続けている。新たな水蒸気爆発の危険性も高い確率で残っている。
 プルサーマル運転をしていた福島第一原発3号機では、燃料に高い比率でプルトニウムを混ぜていたため、チェルノブイリやスリーマイル島の事故とは別に半減期が2万4000年と目が飛び出るほど長いプルトニウムによる汚染が広がる危険性がある。
*半減期が2万4000年の怖い汚染の静かなる広がり
 新聞やテレビの解説者によれば、プルトニウムは万が一人体に取り込まれても異物として排除されやすいので心配はいらないという。
 しかし、プルトニウムが大気や土壌、そして海水へと撒き散らされ続ければ、再び人体に濃縮された形で取り込まれる危険性は十分にある。何しろ半減期が2万4000年なのである。紙や木が燃えるようにはなくなってくれないのだ。
 プルトニウムはα線(陽子2つと中性子2つのヘリウムの原子核)を放出する。α線は紙1枚でも防げるので人体の奥深い組織には悪影響はないとされるが、一方で肺に吸い込むと肺胞の表皮組織を集中的に傷つけて肺ガンを引き起こすとも言われている。
 原発は、いったん事故を引き起こせば、地元の住民に、そして日本人全体に甚大な被害をもたらし、また地球を非常に長い期間汚染し続けるリスクを背負っている。
 福島第一原発の事故で、目の前に終わりなき大きなリスクをまざまざと見せられたいま、最も不安を感じ始めているのは原発を持たない沖縄電力を除く電力会社の経営陣ではないだろうか。東京電力のようにはなりたくないと考えるのが自然だろう。
*13日の金曜日、浜岡原発が停止
 中部電力の水野明久社長が菅総理の要請を受け入れて、5月13日の金曜日に浜岡原発の運転を中止したのには、そんな計算も働いているはずだ。
 首相の要請を受け入れるかを議論した取締役会では激論が交わされたと報道されているが、法的根拠のない首相の要請を結局受け入れることにしたのは、明日発生するかもしれない巨大地震への恐怖ではなかったか。
 この決断は、水野社長にとって敗軍の将になる危険性がなくなるばかりか、ヒーローになれる絶好の機会と言えるのだ。
 産経新聞は中部電力の事実上の創業者で戦後の9電力体制を築いた松永安左エ門を引き合いに出して、菅首相の要請は突っぱねるべきだったと言う(産経抄)。
 しかし、死ぬまで勲章の受け取りを拒否し自立と日本のためを行動原理とした松永安左エ門だったら、日本のため世界のために浜岡原発を自ら停止したのではないか。そもそも動機不純の原発は建設しなかったかもしれない。
*菅首相の要請は渡りに船?
 中部電力の清水社長にすれば、菅総理からの要請を内心、待ってました、渡りに船だと喜んだとしても全くおかしくないと私は思う。
 ほかの電力会社のトップも内心ではそう考えている可能性もある。何しろ、原発は今の日本の環境では電力会社に富をもたらしてくれる宝の山ではなくなってきたからだ。
 日本が現在の中国のように高度経済成長の最中にあって電力供給が決定的に足りない状況だった時代は、国策もあって確かに原発への投資は利益を生んだ。しかし、日本の電力需要がピークアウトした今は、設備負担の重い原発は旨みが少なくなっているのだ。
 地域独占で料金が認可制の電力会社にとって、巨大な設備投資が必要な原発を建設すれば、その償却分や核燃料の所有額を電気代に加算できたうえに償却後は大きな利益を享受できた。しかし、それは電力消費が右肩上がりであることが前提だ。
 現在のように電力需要が下がり始めれば収益モデルは過去のものとなり巨大な設備負担がのしかかる。さらには、稼働から年月が経った原発では、地震以外にも原子炉容器や配管の応力腐食割れなど様々な事故のリスクに怯えなければならない。
*デフレ経済が好きな民主党政権では原発は儲からない
 どうしたことかデフレ政策を掲げて実践している今の民主党政権が続けば、経済はますます冷えて電力需要は下がる一方だ。
 さらに増税で企業の海外移転も進めばさらに電力消費は減る。日本の経済政策上から見ても原発は電力会社にとって経営リスクなのである。
 また、原子力発電のコストは決して安くない。それどころか、福島第一原発の事故で巨額の賠償金が必要になる以前の段階で、最も発電コストの高い方法になっているのだ(「高すぎる原発の発電コスト、LNG火力で代替せよ」)。
 この記事によれば、電力会社の業界団体である電気事業連合会などが発表している“粉飾”されたデータではなく、実態に近い発電コストは、1KWh当たり火力発電が9.9円。原子力の場合には12.23円もかかるという。
 一方、原子力が環境に優しいという触れ込みにしても、確かに二酸化炭素は出さないものの、大量の熱エネルギーを海水に放出している。何しろ、原発は蒸気機関で発電するので熱効率が悪い。タービンの性能が上がった現在でも30%台そこそこ。
*原発は蒸気機関車時代の技術
 原子炉で発生する熱の3分の2は海水に放出されている。二酸化炭素は放出しなくても地球を温めているわけで、決して環境に優しいわけではない。さらに、発電所の立地が消費地から遠いため、高圧線を通るうちに電力の半分近くが熱となって大気中に放出されてしまう。
 つまり、核分裂で得たエネルギーで最終消費者が電力消費として回収できているのはわずか6分の1。残りの6分の5は熱エネルギーとして放出している勘定になる。やはりシュッシュポッポ時代の技術でしかない。
 一方、火力発電所の方は、ガスタービンを使ったコンバインドサイクルという発電方法によって、日増しに熱効率が上がっている。最高効率のものは60%を超える。また、立地も消費地に近いため、送電ロスは小さい。
 ガスタービンというのは、言ってみればジェットエンジンである。燃料に圧力をかけて噴射させて燃やし、燃焼ガスが一気に膨張したその勢いでタービンを回す(ジェット機の場合は推力となる)。燃焼の際の温度を高めれば高めるほど、燃やしたガスの膨張度が高まるので効率が高くなる。
 すでに1500度を超える高い温度で使用できるガスタービンが実用化されている。高い温度のガスタービンは廃熱の温度も高くなるので、その廃熱を使って水を沸騰させて蒸気にして蒸気タービンを回せば、さらに効率が高くなる。これがコンバインドサイクルである。
*蒸気機関車VSジェットエンジン
 ジェットエンジンのハイブリッドシステムと考えていい。電力を発生させる仕組みそのものでは、シュッシュポッポの蒸気機関車時代の技術である原発に比べ、超音速時代の高効率な技術であり、はるかにハイテクだ。
 以前、このコンバインドサイクルを作っている三菱重工業の高砂製作所に取材に行ったことがある。
 タービンブレードの耐熱性、軽量化のための材料開発、燃焼ガスの流れを効率的にブレードに伝える空力設計など、日本の技術の粋を集めたものだった。
 技術の進歩も目覚ましく、最近では1600度以上のガスタービンも開発されていて、その場合には燃料に水素を使うという。燃焼で二酸化炭素を生まず、熱効率も60%以上となり、極めて環境に優しい発電方式となる。
 今の日本が置かれた環境にどういった発電方式が電力会社の経営にふさわしいのかという観点から、株主総会を控えているいま、電力会社の株主の皆さんは経営をチェックした方がいいのではないか。
*原発はテロリスト最大のターゲットに
 さて、日本が原発を導入するに当たってはコストや環境以外の動機もあったはずである。国防だ。しかし、日本の再軍備と核武装をこっそり視野に入れていたこの不純な動機も今となっては全くの的外れとなった。
 福島第一原発の事故が国防の観点からはっきりと示したのは、テロあるいは仮想敵国から原発に何らかの攻撃がされたら、とんでもない被害をほぼ永遠にもたらすということだろう。
 日本を滅ぼすのに原爆は不要。日本中に散らばっている54基の原発をロケットで攻撃すれば、日本全土はたちまち永遠に生物が住めない世界に変わる。カルタゴがローマ帝国に滅ぼされた時、作物が二度と生えないように塩をまかれたどころの騒ぎではない。
 中曽根康弘元総理と初代の科学技術庁長官だった正力松太郎・読売新聞社主が1955年に二人三脚でスタートさせた日本の原子力産業育成は、米国のアイゼンハワー大統領による「平和のための核利用:Atoms for peace」という見せかけの看板につられたものだった。
 実はソ連に対抗するために核による軍拡のお先棒を担がされたことが明らかだった。それについては有馬哲夫・早稲田大学教授の『原発・正力・CIA』(新潮新書、2008年)に詳しい。若く血気盛んな中曽根元総理と野望ある正力氏は、米国の術中にはまっていく。
*読売新聞が牽引した日本の原発建設
 もちろん、米国が正力氏を見込んだのにはわけがある。日本国内だけで1000万部という世界最大部数にまで育てた新聞事業と日本初の民放、日本テレビの影響力だ。結局、それらをフル活用されて日本は原発大国へと大きく歩を進めていく。
 米国に招待されて核施設を見に行った中曽根元総理は、自著『自省録』(新潮社、2004年)の中で、次のように書いている。「日本もこの流れに乗らないとたちまち取り残されると、多いに焦燥感に駆られます」
 帰国した中曽根元総理は居ても立ってもいられず、当時予算委員会の筆頭理事だった立場を最大限に利用して原子力の調査費を予算計上する。その額は2億3500万円だったという。この数字に具体的な意味はなく、熱中性子を受けて核分裂するウラン235の235をただ取っただけだった。
 このようにして日本が米国から原子力技術の供与を受けられるようになる前、米国はすでにアジアでもイラン、イラク、インド、パキスタンなどに原子力技術を供与していた。米国に滅ぼされたイラクを除けば、これらの国は今や原爆保有国である。
 原発を持った一国の権力者が原爆を持ちたくなるのは道理。隣国などと紛争を抱えていればなおさらだ。現在、原発を持っている国を調べると、その下心が透けてくる。それをデータで示してくれたのがこの記事(「知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音」)だ。
*原発を保有している31カ国の下心
 「現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)」
 「それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている」
 「その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリアが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている」
 「旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである」
 「その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている」
*原爆を作りたいがための原発は最大の弱点に
 「ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している」
 「原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである」
 日本と同じ愚かな轍を踏んでしまった国が何と多いことだろう。これらの国のいくつに原爆を作れるという下心があるかは分からない。しかし、そのために原発を建設してしまったとすれば、攻めばかり考えて守りを全く考えていないことになる。
 日本の現状を見ればそれは明らかだ。日本の原発はテロに対して全くと言っていいほど無防備である。その点はこの記事「北朝鮮が狙う日本海側の原発、守備は万全?」が警鐘を鳴らしている。
 「日本の原発の多くは日本海沿岸に集中しています。潜水艦で攻撃されたらひとたまりもないでしょう。今ごろ北朝鮮と仲良くしようとか話し合おうとか言う人には、そろそろ北の正体を思い知れと言いたいです」
*東西対決が終わってみれば、原発はただの遺物に
 世界に原発が広がったのは、米国とソ連という東西対立の賜物だった。東西対立が終わったいま、この副産物は国家を守るという意味でも大変危険な存在になっている。地域紛争やテロによる明確なターゲットになるからだ。
 建設・運営コストも高く、環境にも優しくなく、国防上からも危険極まる原発は、本来、東西対決の終わりとともに棄てていくのが正しい姿ではないか。できれば一気にすべての原子炉を廃炉にしてほしいところだが、電力供給の事情もあるから簡単にはいかないだろう。
 世界の原子力関連市場で、日本の技術や製品はその中核を占めるまでになっているという。地震国の少ない国で原子力の安全利用を進めたい国があるとすれば、そうした国に安全でできるだけコストの安い部品や機器を供給し、原発の安全度を高めるのは、福島第一原発の事故で地球を汚染してしまった国の責任でもある。
 また、万が一の場合には、徹底支援するためにも原子力技術から逃れることは許されない。
 しかし、世界最大の地震大国である日本では、浜岡原発を皮切りに危険度の高いところから廃止して、コンバインドサイクルや風力、太陽光、燃料電池、地熱発電などに切り替えていくことは、東西対決が終わったいま、明らかな時代の要請である。 *強調(着色・太字)は、来栖
〈筆者プロフィール〉
川嶋 諭 Satoshi Kawashima
・早稲田大学理工学部卒、同大学院修了。日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。1988年に「日経ビジネス」に異動後20年間在籍した。副編集長、米シリコンバレー支局長、編集部長、日経ビジネスオンライン編集長、発行人を務めた後、2008年に日本ビジネスプレス設立。

鈴木宗男氏 満期を待たずに年内保釈の可能性か

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 アジア太平洋資料センター(PARC)が実施している「PARC自由学校」によれば、【15.検察は「正義」か?】の講座2011年12月に、日程調整中ながら、「刑期を終えて私が語りたいこと」とのタイトルで、講師として、鈴木宗男氏(新党大地代表、前衆院議員、現在栃木県の喜連川社会復帰促進センターで受刑中)の名がある。
http://www.parc-jp.org/freeschool/2011/pdf/fs_2011_all.pdf
 満期を待たずに保釈の可能性があるということか。満期なら来年5月ごろ出所予定のはずだ。
 ホリエモンも確定し、閉塞感に心腐らせる私に、やっと少し、小窓が開いた感じだ。

ムネオ日記「それでは行って参ります。私は元気です。私はへこたれません」2010-12-08 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
ムネオ日記
2010年12月6日(月) 鈴 木 宗 男
 昨夜は鈴木家全員で家内の手作りの夕食。何とも言えぬ格別な味がした。
 孫の元気な姿が神々しく見える。
 いよいよ収監の日、家内は私の大好物をしっかり用意してくれる。
 娘とたわいのない会話をしながら一緒に明治神宮に向かう。厳粛な気持で「真実が明らかにならなかった悔しさ無念さを正直に思いながら、国家の安泰と世界平和」を祈念する。見事な天気のもとで参拝し心洗われる思いである。
 多くの人から「身体に気をつけて」と、電話・FAXが入る。かけがえのない素晴らしい凄い後援者にめぐまれ感謝の気持で一杯だ。
 松山千春さんから「ムネオさん胸を張って堂々と行って下さい。足寄が故郷の我々はどこまでも一緒です。居ない間のことは心配しないで任せて下さい」と励ましを受ける。私にとって一番の「お告げ」であり、精神安定剤である。
 松山千春さんはじめ北海道・全国の後援会、新党大地の皆さんしばらく留守をしますがどうぞ宜しくお願い致します。
 それでは行って参ります。私は元気です。私はへこたれません。私には心ある人が付いています。お目にかかれる日を楽しみにしています。ごきげんよう。
〈来栖の独白〉2010-12-08
 こんなひどい濡れ衣を着せられ、そのため失職させられても、正義を離さず、人への温かい思いやりと感謝を忘れずに生きる人がいる。国の平和を祈念する人がいる。
 小沢一郎氏と同様に宗男氏も、年齢を考えるなら、1年半ほどの期間が空しくてならない。取り返すことの出来ない損失である。国の大きな間違いに、怒りが込み上げる。

鈴木宗男氏収監?/冤罪なのに選挙民が選んだ代議士をこんな簡単に失職させてよいのか
鈴木宗男氏収監?「これからも権力と闘う」/暴走する検察 東京地検特捜部の惨憺たる内情 

検察は行政の一部である。次の法務大臣は、冤罪の構図を徹底的に検証すべきである2010-09-15 
 2010年9月15日(水) 鈴 木 宗 男
 民主党大会終了後、小沢先生から電話があった。弾んだ声で元気いっぱいだった。まだまだ期するものがあるという気迫が感じられた。その声に安堵したものである。
 10時から「取調べの全面可視化を実現する議員連盟」の第13回会合に出席。
 10日に判決のあった村木厚子元厚労省局長の弁護人を務めた弘中惇一郎先生が、検察の調書の取り方、暴走について話す。
 続いて私が、「取調べの全面可視化を是非とも実現して戴きたい。私の活動はもう何日かしかない」と、出席議員の皆さんに心からの魂の訴えをさせて戴く。
 発言の機会をつくってくれた川内博史会長、辻恵事務局長はじめ、役員の皆さんに心から感謝したい。
 新聞を整理していると、9月12日付東京新聞「こちら特報部」の「本音のコラム」に、山口二郎先生の記事を見つける。多くの人の声を代弁していると思うので、読者の皆さんにお知らせしたい。
本音のコラム 裁判と政治
 9月8日、最高裁判所は鈴木宗男議員の上告を棄却し、実刑判決が確定した。9月10日、大阪地裁は郵便不正事件で起訴された厚労省の村木厚子氏に無罪を言い渡した。二つの裁判に直接のつながりはない。それにしても、鈴木氏の上告棄却のタイミングがきわめて作為的だと感じるのは、勘ぐりだろうか。
 検察がしばしば事件を捏造し、無実の人の罪に陥れることは、近年明らかになった冤罪事件が物語っている。村木氏の事件も、検察の歴史に汚点を加えることになるのだろう。鈴木氏の事件についても、検察の主張が事実なのかどうか、裁判の場で徹底した審理を行うべきであった。
 鈴木氏に連座する形で背任罪に問われ、有罪が確定した佐藤優氏の書物を読むと、検察が事実に基づいて適正な捜査を行ったとは、私には思えない。
 民主党代表選挙で小沢一郎氏が勝てば、検察や裁判所に対する政治からの風当たりが強くなることが予想される。最高裁はそれを察知して、厄介な案件を片づけたのではないか。鈴木氏の有罪確定は、裁判所が本来果たすべき役割を放棄した結果だと、私は思う。 裁判所に政府が介入することはできない。しかし、検察は行政の一部である。次の法務大臣は、冤罪の構図を徹底的に検証すべきである。(9月12日付東京新聞25面)
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◆ アジア太平洋資料センター(PARC) 
堀江貴文氏への重すぎる実刑確定と、それでも止まらない大手メディアの“社会的リンチ”2011-05-20 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

トヨタ、自動車向けSNS加速「クルマが話す」 米IT大手セールスフォースと提携

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トヨタ、自動車向けSNS加速 米IT大手と提携、若年層を開拓 
SankeiBiz 2011.5.24 05:00
 トヨタ自動車と米IT(情報技術)大手のセールスフォース・ドットコムは23日、トヨタの自動車ユーザー向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で提携したと発表した。セールスフォースのSNSサービスを通じて、2012年に市販予定のトヨタの電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)でサービスを提供する予定。ITサービスを強化することで、クルマ離れが指摘されている若年層の需要を開拓することなどが狙い。トヨタは4月、IT分野で米マイクロソフト(MS)とも提携しており、今回はMSのIT基盤を活用した次世代情報サービスの第1弾となる。
 今回の提携によりセールスフォースはトヨタのIT事業会社「トヨタメディアサービス」(名古屋市中区、資本金1億5050万円)が7月に実施予定の10億円の第三者割当増資のうち、2億2300万円を出資する予定。
 新サービス「トヨタフレンド」は、顧客のスマートフォン(高機能携帯電話)などに自動車の状態やサービス情報などを提供する。例えばEVやPHVの電池残量が少ない場合、「電池残量5%」と充電を促す情報を知らせる。また、地図情報と連動し、運転中にドライバー同士で相互の位置や運行状況なども確認できるサービスも提供。外部のSNSやツイッターと連携し、家族や友人と交流することも可能という。
 同日会見したトヨタの豊田章男社長は「サービスを通じて自動車をさらに身近に感じてもらうことで、若者のクルマ離れに歯止めをかけられる」と語った。セールスフォースのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)も「車と顧客、販売店、工場がつながる」とした。
 トヨタは、MSと次世代情報サービスで提携したばかり。セールスフォースはネット経由でソフトなどを提供するクラウドサービスでMSと競争関係にあるが、「MSの情報サービス基盤上でセールスフォースのオープンなSNSを提供する」(友山茂樹常務役員)と、競合しないと説明した。(阿部賢一郎)
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「クルマはモバイルデバイスになりつつある」──クルマがつぶやくSNS「トヨタフレンド」の狙い
 トヨタとSalesforceが共同で構築・運営するEV/PHV向けSNS「トヨタフレンド」は、「クルマのソーシャル化」に向けた一歩になるかもしれない。SalesforceのベニオフCEOは「クルマはモバイルデバイスになりつつある」とみる。
ITmedia 2011年05月23日 21時09分 更新
 「クルマはモバイルデバイスになりつつある」──トヨタ自動車の豊田章男社長と都内で会見した米Salesforce.comのマーク・ベニオフCEOは、両社の戦略的提携によるトヨタ車向けSNS「トヨタフレンド」について、「クルマがネットワークにつながり、透明でオープンになれば信頼が生まれ、本当の意味での『トヨタフレンド』になれるだろう」と話す。豊田社長も「ソーシャルネットワークの普及でコミュニケーションが劇的に変化している。クルマも変わることができれば、若者のクルマ離れやクルマの魅力低下に歯止めをかけられるのでは」と期待を込めた。
 SNS「トヨタフレンド」は、トヨタが2012年から市販する電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)に対応。ドライバーとクルマ、販売店、メーカーを結ぶプライベートSNSとして機能する。
 特徴の1つは「クルマのつぶやき」だ。EV/PHVのバッテリー残量が少ない場合、「電池残量5%です。充電プラグは接続しましたか?」などとクルマがつぶやき、iPhoneなどを通じてドライバーに充電を促す。また「間もなく走行距離が1000キロになります」とクルマが点検を促すと、販売店がクルマをリモート点検し、結果をドライバーに通知する──といったこともできる。友人の位置情報を地図上に表示する「フレンドサーチ」機能なども備える。
 トヨタフレンド自体はドライバーと販売店などをインターナルに結ぶSNSだが、Facebook、Twitterなど外部のソーシャルサービスとも連携し、家族や友人とのコミュニケーションツールとしても利用可能という。SNSはスマートフォンやタブレット端末で利用できるようにする。ソーシャルメディアやスマートデバイスを活用し、クルマの付加価値を高めるとともに、ドライバーやその家族、販売店、メーカーなどとの関係をより深いレベルで強化するのが狙いだ。
 トヨタは4月、米Microsoftとのテレマティクス分野での提携を発表。SNSはSalesforceが持つクラウドプラットフォーム上に構築し、クルマのデータ収集などはWindows Azureベースのシステムで行い、SNSにデータを渡す仕組みになっている。
 SalesforceとMicrosoftは、サービスを運営するトヨタ子会社TOYOTA MEDIA SERVICEにそれぞれ出資する(Salesforceが2.23億円、Microsoftが3.35億円)。
クルマのソーシャル化で「本当の意味での『トヨタフレンド』に」
 Microsoftに続き、大手IT企業との提携を発表した豊田社長。トヨタは東日本大震災の直前に発表した中期計画「グローバルビジョン」で「未来のモビリティ社会をリードする」という目標を掲げ、「いいクルマ」作りのためにITとの連携を進める方針を明らかにしていた。
 クラウドに関心を持った豊田社長は、ベニオフCEOがSalesforceの立ち上げについて記した著書「クラウド誕生」を読み、今年1月のデトロイトモーターショーで訪米した際にベニオフCEOと会談。「ソーシャルメディアにクルマ自身が参加者として入る『トヨタフレンド』」というアイデアをその場でベニオフCEOから提案され、今回の提携につながったという。
 クルマ好きで知られる豊田社長は「まさかクルマが話すとは。わたしはクルマ好きで、テストコースではクルマと会話している。SNSで普段から会話できるんだと、感動した」と話す。「お客がトヨタをフレンドだと思ってもらえればこんなにうれしいことはない」「もっといいクルマを作るというチャレンジの1つ。Salesforceと一緒に仕事をすることで、トヨタのクルマがどう変わるのか、期待でわくわくしている」
 ベニオフCEOは「非常に高速に変化する時代だが、重要なのは『信頼』だ。トヨタフレンドに必要なのは透明性だ。透明で、オープンでなければならない」という。「わたしがFacebookやTwitterを好むのは、これまで世界になかったような、その透明性のためだ。これらを活用することで企業にも信頼感をもたらすことができる」「クルマがネットワークにつながるということは、ソーシャルになれる、本当の意味での『トヨタフレンド』になれるということだ」
 ベニオフCEOは、トヨタがSalesforceというクラウドを採用したことを評価する。「トヨタはオープンカンパニーだ。トヨタ車が場所を選ばずどこでも走るように、クラウドもどこでも使える。もちろんMicrosoftは重要だが、クラウド上で動くことも重要だ」
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〈来栖の独白〉
 上の記事には及びもつかないが、我が愛車(インサイト)も、ナビを起動させると、色んなおしゃべりをする。「ハンドルのふらつきが多くなりました」とも言う。長距離を走行するときなど、ケッコー面白い。
 ただ先日、新しく完成した道路を行くとき、まだインストールしていなくて、案内に四苦八苦しているようで、可笑しかった。「インサイト君、気分(体調)が悪くなるのでは?」と、ちょっと心配もしてあげた。

陸山会事件公判 水谷建設の元運転手証言「川村尚元社長を裏金5千万円受渡し現場へ送った記憶、ない」

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「記憶ない」元運転手、裏金提供の元社長送迎を否定
産経ニュース2011.5.24 12:31
 小沢一郎民主党元代表(69)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の第13回公判が24日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれ、中堅ゼネコン「水谷建設」の元運転手が出廷。検察側の主張では、元運転手は石川被告に裏金5千万円が渡された日に川村尚元社長(54)を受け渡し現場のホテルに送迎したとされるが「その日に送った記憶はない。もっと後だった」と証言した。
 検察側が作成した自身の供述調書について「訂正してほしい」とも述べた。
 これまでの公判では、川村元社長を含め同社の元幹部ら4人が、小沢元代表側に裏金が提供されたことを裏付ける証言をしている。
 午後には、同社の水谷功元会長(66)が出廷する。
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「小沢氏側に裏金1億円払った」 水谷建設元社長証言
産経ニュース2011.4.27 11:25
 小沢一郎民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の第10回公判が27日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれ、中堅ゼネコン「水谷建設」の川村尚・元社長(53)が証人として出廷。石川被告らに手渡したとされる小沢事務所への裏金計1億円について「衆院議員会館の小沢先生の部屋で大久保隆規被告(49)から要求された。その後、お支払いした」などと証言、裏金の提供を明言した。
 小沢元代表側への裏金提供を当事者が公の場で言及したのは初めて。
 検察側の質問に、川村元社長は小沢事務所に営業活動を行った理由を「小沢先生の地元のダム。力が強い小沢事務所に反対されると工事に参入できないと聞いていたため」と証言した。
 平成15年の社長就任以降、受注したい具体的工事名2つを挙げて大久保被告にあいさつや料亭接待を続けたところ、16年9月になって「それぞれの工事業者決定後に5千万円ずつ」と要求され、「同年10月15日と17年4月中旬ごろに支払った」と語った。
 15年末には大久保被告の自宅で、お歳暮として現金100万円と高級牛肉を渡したとも明かした。
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ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ2011-04-28 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
〈来栖の独白〉
 陸山会事件の公判。水谷建設前社長・川村尚氏の供述に耳を傾けるほどに、ロッキード事件が重なってしまう。
 現金受け渡しの場面などは、まったく酷似している。陸山会事件のそれは全日空ホテル(現ANAインターコンチネンタルホテル)であり、ロッキード事件はホテルオークラであった。「陸山会」は水谷建設前社長川村氏が渡し、「ロッキード」は丸紅の伊藤宏専務が渡した(という)。陸山会は「5000万円を宅急便の袋に入れて折りたたみ、それをひと回り大きい紙袋」に入れ「床をスライドさせるような形で渡し」、ロッキードは「1億2500万円入りの段ボール箱」。どちらも証人がことさら具体的に述べれば述べるほど、意図に反してリアリティは低下し、胡散臭さが漂ってしまう。これで、弁護側証人水谷建設元会長水谷功氏なんかが出てきた日には、この法廷はどうなるんだろう♪
 ロッキード事件で成功した検察。裁判所まで同じでは困る。
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『検察を支配する「悪魔」』田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)  
 第三章 絶対有罪が作られる場所
p80〜 ロッキード事件の金銭授受は不自然---田原
 ここからは、ロッキード事件の話をしたい。
 ロッキード事件で田中角栄は、トライスター機を日本が購入するにあたって、ロッキード社から4回にわたって、丸紅を通じて計5億円の賄賂を受けと取ったとして、1983年10月に受託収賄罪で懲役四年、追徴金5億円の判決を受けましたね。
 この4回あったとされる現金の受け渡し場所からしても、常識から考えておかしい。1回目は1973年8月10日午後2時20分頃で、丸紅の伊藤宏専務が松岡克浩の運転する車に乗り、英国大使館裏の道路で、田中の秘書、榎本敏夫に1億円入りの段ボール箱を渡した。2回目は同年10月12日午後2時30分頃、自宅に近い公衆電話ボックス前で、榎本に1億5000万円入りの段ボール箱を。3回目は翌年の1月21日午後4時30分頃、1億2500万円入りの段ボール箱がホテルオークラの駐車場で、伊藤から榎本に渡された。そして、同年3月1日午前8時頃、伊藤の自宅を訪れた榎本が、1億2500万円が入った段ボール箱を受け取ったとされている。
 最後の伊藤の自宅での受け渡しはともかく、他の3回は、誰が見ても大金の受け渡し場所としては不自然です。とくに3回目のホテルオークラは、検察のでっちあげ虚構としか思えない。
 伊藤の運転手だった松岡にインタビューしたところ、検察によって3回も受け渡し場所を変更させられたと言う。もともと松岡は、受け渡しに対して記憶はまったくなかったのですが、検事から伊藤の調書を見せられ、そんなこともあったかもしれないと、曖昧なまま検察の指示に従った。
 検事が、最初、3回目の授受の場所として指定してきたのは、ホテルオークラの正面玄関です。松岡は検事の命令に添って、正面玄関前に止まっている2台の車の図を描いた。
 でも考えてみれば、こんなところで1億2500万円入りの段ボール箱の積み下ろしなどするわけがない。正面玄関には、制服を着たボーイもいれば、客の出入りも激しい。おまけに、車寄せに2台車を止めて段ボール箱を運び込んだら、嫌でも人の目につく。
 検察も実際にホテルオークラに行ってみて、それに気が付いたんでしょう。体調を崩して大蔵病院に入院していた松岡の元に検察事務官が訪ねてきて、「ホテルオークラの玄関前には、右側と左側に駐車場がある。あなたが言っていた場所は左側だ」と訂正を求めた。
 それでも、まだ不自然だと考えたのでしょう。しばらくしたら、また検察事務官がやってきて、今度は5階の正面玄関ではなく、1階の入り口の駐車場に変えさせられたと言います。
 それだけならまだしも、おかしなことに、伊藤が描いた受け渡し場所も変更されていた。最初の検事調書では、伊藤も松岡とほぼ同じ絵を描いている。松岡の調書が5階の正面玄関から1階の宴会場前の駐車場に変更後、伊藤の検事調書も同様に変わっていた。
 打ち合わせもまったくなく、両者が授受の場所を間違え、後で揃って同じ場所に訂正するなんてことが、あり得るわけがない。検事が強引に変えさせたと判断するしかありません。百歩譲って、そのような偶然が起りえたとしても、この日の受け渡し場所の状況を考えると、検事のでっち上げとしか考えられない。
 この日、ホテルオークラの宴会場では、法務大臣や衆議院議長などを歴任した前尾繁三郎を激励する会が開かれていて、調書の授受の時刻には、数多くの政財界人、マスコミの人間がいたと思われる。顔見知りに会いかねない場所に、伊藤や田中の秘書、榎本が出かけていってカネをやり取りするのは、あまりにも不自然です。
 しかも、この日の東京は記録的な大雪。調書が事実だとすれば、伊藤と田中の秘書が雪の降りしきる屋外駐車場で、30分以上立ち話をしていたことになる。しかし、誰の口からも、雪という言葉が一切出ていません。
 万事がこんな調子で、榎本にインタビューしても、4回目の授受は検察がつくりあげたストーリーだと明言していました。
 もっとも、丸紅から5億円受け取ったことに関して彼は否定しなかった。伊藤の自宅で、5億円を受け取ったと。それは、あくまでも丸紅からの政治献金、田中角栄が総理に就任した祝い金だと。だから、伊藤は、せいぜい罪に問われても、政治資金規正法だと踏んだ。そして、検察から責め立てられ、受けとったのは事実だから、場所はどこでも五十歩百歩と考えるようになり、検察のでたらめにも応じたのだと答えた。
 つまり、検察は政治資金規正法ではなく、何があっても罪の重い受託収賄罪で田中角栄を起訴したかった。そのためにも、無理やりにでも授受の場所を仕立てる必要があったというわけでしょう。
p83〜 法務省に事前に送られる筋書き---田中
 ロッキード事件のカネの受け渡し場所は、普通に考えておかしい。またそれを認めた裁判所も裁判所ですよ。ロッキード事件以来、ある意味、検察の正義はいびつになってしまった。
 政界をバックにした大きな事件に発展しそうな場合、最初に、検察によってストーリーがつくられる。被疑者を調べずに周りだけ調べて、後は推測で筋を立てる。この時点では、ほとんど真実は把握できていないので、単なる推測に過ぎない。
 でも、初めに組み立てた推測による筋書きが、検察の正義になってしまうのです。なぜ、そんなおかしなことになるかと言えば、政界や官界に波及する可能性がある事件の捜査については、法務省の刑事課長から刑事局長に、場合によっては、内閣の法務大臣にまであげて了解をもらわなければ着手できない決まりになっているからです。とくに特捜で扱う事件は、そのほとんどが国会の質問事項になるため、事前に法務省にその筋書きを送る。
 いったん上にあげて、了承してもらったストーリー展開が狂ったら、どうなりますか?検察の組織自体が否定されますよ。事件を内偵していた特捜の検事がクビになるだけでなく、検察に対する国民の信頼もなくなる。
 本当は長い目で見たら、途中で間違っていましたと認めるほうが国民の信頼につながる。それは理屈として特捜もわかっているけれど、検察という組織の保身のためには、ごり押しせざるを得ないのが現実です。
 特捜の部長や上層部がなんぼ偉いといっても、一番事件の真相を知っているのは被疑者ですよ。その言い分をぜんぜん聞かず、ストーリーをどんどん組み立てる。確かに外部に秘密がまれたり、いろいろあるから、その方法が一番いいのかもしれないが、だったら途中で修正しなければいけない。
 ところが、大きい事件はまず軌道修正しない。いや大きい事件になるほど修正できない。だから、特捜に捕まった人はみんな、後で検察のストーリー通りになり、冤罪をきせられたと不服を洩らす。僕を筆頭として、リクルート事件の江副浩正、KSD事件の村上正邦、鈴木宗男議員と連座した
外務省の佐藤優、村上ファンドの村上世彰(よしあき)、ライブドア事件の堀江貴文・・・全員、不満たらたらで検察のやり方を非難している。
 これを特捜が謙虚に反省すればいいのですが、特捜はそんなことはまったく頭にない。「あのバカども、何を言っていやがるんだ」という驕りがあり、最初にストーリーありきの捜査法は一向に改善されません。
p85〜 尋問せずに事実関係に勝手に手を入れる---田中
 とくに東京の特捜では、まずストーリーありきの捜査しかしない。被害者を加害者に仕立て上げてしまった平和相銀事件がいい例ですよ。
 東京に来て驚いたのは、調書ひとつをとっても、上が介入する。調書作成段階で、副部長や主任の手が入ることも多く、筋書きと大幅に異なったり、筋書きを否定するような供述があると、ボツにされる。だから、検事たちも、尋問をするときから、検察の上層部が描いた筋書きに添う供述を、テクニックを弄して取っていく。
 僕も手練手管を弄して自分の描いた筋書きに被疑者を誘導することはありましたよ。しかし、それは、あくまでも現場で捜査に携わっている人間だから許されることだと思う。捜査をしている現場の検事は、こりゃあ違うなと感じれば、軌道修正する。被疑者のナマの声を聞いて判断するので、自分の想定したストーリーが明らかに事実と違えば、それ以上はごり押しできない。人間、誰しも良心がありますから。
 しかし東京では、尋問もしていない上役が事実関係に手を入れる。彼らは被疑者と接していないので容赦ない。被疑者が、これは検事の作文だよとよく非難しますが、故のないことではないと思った。恐ろしいと思いましたよ。冤罪をでっち上げることにもなりかねないので。
 だから、僕は東京のやり方には従わなかった。大阪流で押し通した。上がなんぼ「俺の言う通りに直せ」といっても、「実際に尋問もしていない人の言うことなんか聞けるか」で、はねのけた。
p86〜 大物検事も認めた稚拙なつくりごと---田原
 4回目の授受の場所を特定したのは誰か---ロッキード事件に関わった東京地検特捜部のある検事にこの質問をしたところ、彼は匿名を条件に「誰にも話したことはないが」と前置きして、次のように当時の心境を語っていた。
「ストーリーは検事が作ったのではなく、精神的にも肉体的にも追いつめられた被告の誰かが・・・カネを受け取ったことは自供するけれども・・・あとでお前はなぜ喋ったんだといわれたときのエクスキューズとして、日時と場所は嘘を言ったのじゃないか。
 そして、それに検事が乗ってしまったのじゃないか、と思ったことはある。田中、榎本弁護団が、それで攻めてきたら危ないと、ものすごく怖かった」
 この元検事の証言を、事件が発覚したときに渡米し、資料の入手やロッキード社のコーチャン、クラッターの嘱託尋問実現に奔走した堀田力元検事にぶつけると、「受け渡しはもともと不自然で子どもっぽいというか、素人っぽいというか。恐らく大金の授受などしたことがない人たちが考えたとしか思えない」と語っていました。
 堀田さんは取り調べには直接タッチしていない。だからこそ言える、正直な感想なんでしょうけれど、どう考えても、あの受け渡し場所は稚拙なつくりごとだと認めていましたよ。
p88〜 検事は良心を捨てぬと出世せず---田中
 検事なら誰だって田原さんが指摘したことは、わかっている。その通りですよ。田原さんがお書きになったロッキード事件やリクルート事件の不自然さは、担当検事だって捜査の段階から認識している。
 ところが引くに引けない。引いたら検察庁を辞めなければいけなくなるから。だから、たとえ明白なでっち上げだと思われる“事実”についてマスコミが検察に質しても、それは違うと言う。検事ひとりひとりは事実とは異なるかもしれないと思っていても、検察という組織の一員としては、そう言わざるを得ないんですよね。上になればなるほど、本当のことは言えない。そういう意味では、法務省大臣官房長まで務めた堀田さんの発言は非常に重い。
 特捜に来るまでは、検察の正義と検察官の正義の間にある矛盾に遭遇することは、ほとんどありません。地検の場合、扱うのは警察がつくっている事件だからです。警察の事件は、国の威信をかけてやる事件なんてまずない。いわゆる国策捜査は、みんな東京の特捜か大阪の特捜の担当です。
 特捜に入って初めて検察の正義と検察官の正義は違うとひしひしと感じる。僕も東京地検特捜部に配属されて、特捜の怖さをつくづく知りました。
 検察の正義はつくられた正義で、本当の正義ではない。リクルート事件然り、他の事件然り。検察は大義名分を立て、組織として押し通すだけです。
 それは、ややもすれば、検察官の正義と相入れません。現場の検事は、最初は良心があるので事実を曲げてまで検察の筋書きに忠実であろうとする自分に良心の呵責を覚える。
 しかし、波風を立てて検察の批判をする検事はほとんどいない。というのも、特捜に配属される検事はエリート。将来を嘱望されている。しかも、特捜にいるのは、2年、3年という短期間。その間辛抱すれば、次のポストに移って偉くなれる。
 そこの切り替えですよ。良心を捨てて、我慢して出世するか。人としての正義に従い、人生を棒に振るか。たいていの検事は前者を選ぶ。2年、3年のことだから我慢できないことはないので。ただそれができないと僕のように嫌気がさして、辞めていくはめになるのです。

陸山会事件公判 水谷建設水谷功元会長「裏献金、手配したが、実際に提供されたかどうかは分からない」

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陸山会事件:裏献金「手配はしたが提供は不明」元会長証言
 小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人の第13回公判が24日、東京地裁(登石郁朗裁判長)であり、小沢事務所に計1億円を裏献金したとされる「水谷建設」(三重県)の水谷功元会長(66)が証人出廷した。元会長は裏献金について「私がすべて手配した」と述べる一方、小沢事務所に実際に提供されたかどうかは「分からない」と証言した。
 証言によると、同社は04年、胆沢ダム(岩手県奥州市)の関連工事で下請けJV(共同企業体)の幹事となることを目指していた。元会長は川村尚前社長(54)に対し、元公設第1秘書の大久保隆規被告(49)への陳情を指示。「大久保さんと合意できた」との報告を受けたため、最初の5000万円を用意したという。
 ところが、同社は下請けにはなったが、幹事にはなれなかった。元会長は「裏金は成功報酬みたいなもの。(前社長からの)報告とは異なっており、納得いかなかった」と振り返った。また、5000万円の提供先は大久保被告だったと前社長から報告されたといい「事件が明るみに出て『石川議員に渡した』(と前社長が供述した)と知り、びっくりした」と述べた。
 公判には、04年10月15日に裏献金の授受場所とされる東京都内のホテルに前社長を送ったとされる元運転手の男性も出廷。男性は捜査段階の供述を翻し「(同日に送迎した)記憶はない。そのホテルに送ったことはあるが、05年以降だと思う」と述べた。
 検察側は、虚偽記載の背景に同社の裏献金があったと主張。4月に証人出廷した川村前社長も、04年10月15日に都内のホテルで石川被告に、05年4月に大久保被告に各5000万円を渡したと証言したが、両被告は受領を全否定していることから、弁護側が元会長らを証人申請していた。【野口由紀】毎日新聞 2011年5月24日 20時05分
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水谷建設元会長、16年の裏金提供は「大久保さんに渡したと聞いていた」元社長と食い違う証言
産経ニュース2011.5.24 21:24
 小沢一郎民主党元代表(69)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37)、元公設第1秘書、大久保隆規被告(49)ら元秘書3人の第13回公判が24日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれ、中堅ゼネコン「水谷建設」の水谷功元会長(66)が出廷。川村尚元社長(54)が「平成16年10月に石川さんに手渡した」と証言した現金5千万円について「私が手配したが、大久保さんに渡したと報告を受けていた」と述べた。
 法廷で「16年10月と17年4月に、元秘書側に計1億円を提供した」と、裏金提供を認めた川村元社長と食い違う内容。弁護側は「石川氏に裏金が渡ったとする検察側主張を覆す証言」とする一方、検察側は「(現金の手配や授受の報告は)こちらの主張を補強した」と受け止めており、裁判所の判断が注目される。
 水谷元会長は、ダム関連工事の受注をめぐり、小沢元代表の事務所側へ1億円を提供することになったとの報告を川村元社長から受け、了承したという。
 受け渡しには、元専務を立ち会わせるつもりだったにもかかわらず、川村元社長が単独で石川被告に手渡したと証言しているため、経緯に「不明朗な点がある」と述べた。
 また、現金授受の現場となったホテルに川村元社長を送迎したとされる同社の元運転手も出廷。「その日に送った記憶はない。もっと後だった」と証言した。
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小沢氏強制起訴 水谷元会長告白「1億円裏ガネ=ワケ分かりません。石川、大久保なんて会ったこともない」2011-02-02 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 小沢強制起訴 「裏ガネ授受」疑惑のキーマン水谷建設元会長 激白
日刊ゲンダイ2011/2/2
 小沢疑惑のカギを握る「キーマン」が本紙に“衝撃”告白だ。その人物とは、7日に初公判が開かれる「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、衆議院議員石川知裕被告や大久保隆規被告らに「裏ガネ1億円を渡したと証言した」と報じられた水谷功氏(65)である。
 「水谷建設側が04年10月と05年春の2回にわたって、小沢秘書に5000万円ずつ、計1億円を渡した。岩手の胆沢ダム関連工事を受注した謝礼だった」
 09年11月から、大新聞テレビで一斉報道が始まった「水谷建設裏ガネ疑惑」。大マスコミは「検リーク」に乗っかり、以来、このカネが「陸山会が購入した世田谷の土地資金の原資になった」と決め付け、「小沢悪者キャンペーン」を展開してきた。
 「脱税で三重刑務所に服役していた水谷元会長に、東京地検特捜部の検事が会いに行ったのは、09年夏ごろ。当時、西松建設をめぐるダミー団体献金事件で、小沢氏の第1秘書の大久保被告を逮捕・起訴したが、検察側のシナリオ通りに裁判が進まず、困り果て、すがったのが水谷元会長だったといわれています」(司法ジャーナリスト)
 「水谷証言」が本当なら、小沢氏は即、逮捕・起訴されていただろう。ところが、検察は1年以上、捜査したが何の証拠も見つけられず、結局は不起訴。
 現在、刑を終えて出所した水谷元会長を直撃した。
(1億円裏ガネ証言は)ワケ分かりません
記者「裏ガネ疑惑、証言内容は本当だったのか」
水谷氏「分かんないよ。知らないよ」
石川(議員)の『イ』の字も知りません 大久保(秘書)なんて会ったこともない
記者「04年と05年の2回、石川、大久保両被告に水谷建設がカネを渡したと報じられています」
水谷氏「石川、大久保なんて会ったこともない。石川被告の顔は報道でクローズアップされて知っているが、それまで石川のイの字も知らなかった」
記者「大新聞テレビでは、これまで、水谷氏が検事に『カネを渡したことを証言』などと報じられてきた。これは誤報ということですか」
水谷氏「何がどうなのか、ワケが分かんないよ」
記者「新聞テレビの記者は、証言の裏付け取材に来なかったのですか」
水谷氏「何人かは来たけど・・・。『こんな話、聞いたことがありますか』って言うから、『聞いたことぐらいはあるな』とは答えたたが・・・」
記者「“証言”の否定会見はしないのですか」
水谷氏「どうでもエエ。私には分からん。あんた方は私のことを勝手に書いて・・・」
 いやはや、仰天発言ではないか。検察が書いたシナリオに水谷氏はうなづいただけなのか。
 検察はなぜか水谷氏を証人申請していない。「裏ガネ疑惑」をどう立証するつもりなのか。もういい加減にした方がいい。
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〈来栖の独白〉2011-02-02
 水谷氏の「証言」が証言に価しないことは、佐藤栄佐久氏の事件で立証済みだ。小沢氏強制起訴の際の記者会見であるが、指定弁護士の皆さんの表情は弱々しく精彩を欠いていた。およそ正義感の発露として人(とりわけ本件の場合、ただの「人」ではない)を起訴するという意欲も覇気も感じられない。公判は維持できるのか。明らかに無罪と分かっている事件を検察審査会が起訴相当と議決した場合、どうすべきなのか。問題は、そこだ。小沢さんから無為に時間を奪うことは、もうこの辺で止めてほしい。やめるべきだ。
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陸山会事件公判 水谷建設の元運転手証言「川村尚元社長を裏金5千万円受渡し現場へ送った記憶、ない」2011-05-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
陸山会事件公判「手提げ紙袋を新幹線で東京支店に運んだ。中身は見ていない」/リアリティ欠くシナリオ2011-05-16 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
陸山会事件 日本発破技研山本潤社長「検事からヒントを貰って記憶が蘇った」 杜撰、粗末なシナリオ2011-05-11 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
ロッキード事件に酷似 陸山会事件公判 (川村尚)証人が具体的に述べれば述べるほど低下するリアリティ2011-04-28 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
「陸山会事件」 水谷建設川村尚元社長「小沢氏側へ1億円」証言の背後にある事情2011-04-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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東京地裁、石川知裕被告弁護団の申請に基づき水谷建設元会長を証人採用2011-02-03 
マスコミは、なぜ小沢が怖いのか/日本の殆どのマスコミが、手段を選ばず「小沢抹殺」で狂奔している光景2011-02-02 
小沢氏強制起訴/「4億円が汚い金というのは検察が勝手に言ってるだけ。証拠がない」と担当検事2011-02-02 
国民は騙されている 小沢強制起訴の虚構 ?どこを探しても出てこない虚偽記載の事実2011-01-20 
国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構 ?1億円ウラ献金を証言した水谷建設元会長のいかがわしさ2011-01-2

韓国議員が国後島を訪問 日露間の領土問題におけるロシアの対応を視察

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 北方領土:韓国議員が国後島を訪問…政府は「無関係」
毎日新聞2011年5月24日 20時14分
 【モスクワ田中洋之、ソウル西脇真一】韓国国会「独島(ドクト、日本名・竹島)領土守護対策特別委員会」の姜昌一(カン・チャンイル)委員長ら国会議員3人が24日、サハリンから空路で北方領土・国後島を訪問した。姜委員長によると、韓国国会議員団の北方領土訪問は初めて。日露間の領土問題におけるロシアの対応を視察するのが目的としている。韓国政府は「無関係」との立場だが、日本政府は既に懸念を伝達。今回の訪問が日韓、日露関係に波紋を呼ぶ可能性が出ている。
 3人はいずれも最大野党の民主党員。同委は、日韓が領有権を主張している竹島の実効支配を強化するため、関連法案の整備や国際社会への広報などに取り組む。同委には現在、与野党18議員が所属するが、参加は3人にとどまった。
 一行は22日に韓国を出発し、国後入り。車で約30分間、空港周辺を視察し、24日夕に再びサハリンへ戻った。
 日本政府は、日本人がロシアのビザで北方領土を訪問するのは「ロシアの管轄権を認める形となり認められない」との立場をとっている。短時間の滞在からみても、視察そのものより、同じ領土問題を抱える韓国の国会議員として北方領土に乗り込むことで、日本政府を揺さぶる狙いがありそうだ。
 一方、訪問は日露関係にも微妙な影を落としそうだ。姜委員長は視察後「ロシアとは歴史的背景が違うので、共闘は考えていない。ロシア政府関係者とは一人も会っていない」と語った。また、韓国外交通商省報道官は24日、「特別な政府としての見解はない」と一線を画した。
 しかし、北方領土を含むクリル諸島(千島列島)の開発を進めるロシアは、韓国や中国からの投資を呼び込みたい考えで、地元サハリン州が両国でプレゼンテーションを開くなど期待は大きい。
 モスクワの外交筋は「ロシアは『来るもの拒まず』のスタンス。これをもって領土問題で韓国とともに対日けん制を強めることにはならないだろう。ただ、北方領土の実効支配を正当化する材料の一つとして利用する可能性はある」と指摘する。
 ◇松本外相「容認できない」
 松本剛明外相は24日の記者会見で、韓国の国会議員3人による北方領土訪問について「第三国の国民、それも国会議員が北方領土でロシアのビザを取得してロシア側の管轄権に服することは、わが国の基本的な立場から容認できない。大変遺憾だ」と非難した。日本政府は近く、韓国政府や議員らに遺憾の意を伝える方針だ。
 松本外相は会見で、20日に東京都内で行われた日韓外相会談で、韓国の金星煥(キム・ソンファン)外交通商相から「訪問は政府と関係がない」との説明を受けたことを明らかにした。枝野幸男官房長官は24日の会見で「韓国政府が日本の立場と矛盾したことを取ることはないと確認している」と語った。【犬飼直幸】


服役19回の知的障害者/国の福祉政策、問題ないのか/『累犯障害者』

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<裁判>服役19回の知的障害者に懲役2年求刑/矯正の道 刑務所だけ?
毎日新聞 5月24日(火)8時36分配信
 福岡市内の民家で現金を盗んだとして窃盗罪などに問われた男(63)の初公判が23日、福岡地裁(高原正良裁判官)であった。これまで19回刑務所に入った男は耳が聞こえず話すこともできない。さらに知的障害もある被告が罪を重ねてしまうのは、わが国の矯正制度が障害を抱える被告に十分機能していないことをうかがわせる。弁護側は「被告の更生を考えるなら、必要なのは刑務所への収監ではない」と執行猶予付き判決を求めた。
 男は昨年9月、福岡市内のアパートの1室に侵入し現金約3万円を盗んだなどとして起訴された。
 検察、弁護双方の話を総合すると、男は窃盗などを繰り返したため72年以降、19回収監された。服役期間は22年以上に及び、成人になってからその半分以上を刑務所で過ごしたことになる。
 男は月数万円の年金を受給しているが、管理は障害をもつ家族がしている。意思疎通の問題などから受け渡しがうまくいかずに、手持ちの現金がなくなると、窃盗を繰り返していたとみられている。
 論告で、検察側は男が手袋をはめて室内を物色していたことを挙げ「慣れた犯行で、前科も極めて多い」などと指摘。懲役2年を求刑した。
 これに対し、弁護側は、被告の健康状態が芳しくなく、刑務所に収容しても矯正は期待できないことなどを指摘。男が何らかの職に就くことを望んでいることも踏まえ、授産施設への入所などを念頭に、執行猶予付きの判決を求めた。
 山西信裕弁護士は「被告はこのままでは刑務所と社会を往復し、人生を終えることになる。国の福祉政策に問題がないのか考える必要がある」と話しており、判決は6月13日に言い渡される。【岸達也、近松仁太郎】
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山本譲司著『累犯障害者』獄の中の不条理 新潮社刊
 (帯から)
「これまで生きてきたなかで、ここが一番暮らしやすかった・・・」
 逮捕された元国会議員は、刑務所でそうつぶやく障害者の姿に衝撃を受けた。獄中での経験を胸に、「障害者が起こした事件」の現場を訪ね歩く著者は、「ろうあ者だけの暴力団」「親子で売春婦の知的障害者」「障害者一家による障害者の監禁致死事件」など、驚くべき事実を次々とあぶり出す。現代日本の「究極の不条理」を描く問題作。
第五章 ろうあ者暴力団---「仲間」を狙いうちする障害者たち
p178〜
 ろうあ者だけの暴力団----。この事実を知った時、多くの人たちは、驚愕するのではないかと思う。私も、刑務所に入っていなければ、そうだったろう。だが、すでに私は、服役中、この話を耳にしていた。
---大阪にろうあ者だけの「組」がある。でもそれだけでない ろうあ者のヤクザ ほかにも結構いる。
 そう教えてくれたのは、ろうあ者である受刑者仲間。彼は、自分のことも「暴力団の準構成員」と名乗っていた。さらに彼の説明によると、「加害者と被害者 どちらもろうあ者になる事件 多い」という。
 確かに、彼の言う通りだった。ここ数年、ろうあ者がろうあ者に対して行った「恐喝事件」や「詐欺事件」が頻発している。
 手話で脅迫
 2002年の7月18日、二人のろうあ者の男が、熊本県警に逮捕された。一人は55歳、もう一人が31歳。いずれも住所不定・無職である。二人が逮捕されたのは、2件の「詐欺事件」によるものだった。
 まず1件目。それは、40歳代のろうあ者の女性に、「出資すれば、株で儲かる」などと架空の話を持ち掛け、女性から現金1700万円を受け取っていたという事件である。
 2件目の詐欺は、一人暮らしの老女を狙った犯行だった。「中国で治療を受ければ病気が治る」
 70歳代のろうあ者の女性に、そんな嘘をつき、約120万年を騙し取っていたのだ。
 この二人の犯罪者は、「ろうあ者の集い」などに積極的に参加し、そうしたなかで騙す相手を選んでいたという。
「ろうあ者同士は、信頼されやすいから」55歳の男は、逮捕後、こう供述している。
p184〜
 だが一方で、「デフ・コミュニティ」の中で完結する彼らの犯罪については、どうしても、その「特異性」を意識してしまう。さらには、事件を敷衍してみると、デフ・コミュニティそのものに対する「特殊性」を感じないわけにはいかない。
p185〜
 聾学校では、彼らろうあ者の言語である手話は、口話を妨げるものとして、「手まね」という蔑称がある。耳の不自由な児童・生徒に無理矢理声を出させ、徹底的に発音練習を強いるのだ。発音時の口や舌の形が間違っていれば、口内に指を突っ込まれたりもする。だが、声を発している本人たちには聞こえてはいない。これには、ナンセンスを通りすぎて、滑稽な感じすらしてしまう。
 また、口話による会話ができるよう、いくら読唇術を覚えたところで、それには限界がある。「煙草」と「卵」、「好き」と「愚痴」、「パパ」と「ママ」、「言いました」と「聞きました」などなど、口の形だけでは、区別できない言葉は何百、何千と存在するのだ。にも拘わらず、強制的に発声練習を続ける聾学校。算数を学ぶにしても、「1+1」という数式の答えは「2」というよりも、きちんと「いちたすいちは、に」と発音できるかどうかが問題となる。こうして、ほとんどの教科が、その分野の知識を高めるための授業ではなく、単なる発音練習の場と化してしまうのである。すべては、聴者の言葉に近づけるための訓練だ。
p186〜
「音声言語を持つ人」と「手話と言う言語を持つ人」、それは、「日本語を話す人」と「英語を話す人」以上に立場の違いがある。こうなると、常識の違いというよりも、文化の違いがあると見たほうがいいだろう。
 したがって多くの場合、ろうあ者が結婚する相手は、やはり、ろうあ者となる。実際に、ろうあ者同士が結婚する確率は、9割以上だといわれている。それが、デフ・ファミリーを形成し、デフ・コミュニティへとつながる。このコミュニティ内の結び付きは、非常に強固だ。それは、聴者社会にはない、独特の文化を共有しているからであろう。
p187〜
 しかし、ろうあ者人口は限られている。結局のところ、デフ・コミュニティは、非常に狭い社会なのだ。ろうあ者にとっては、「学校」「恋愛」「就職」「結婚」、それぞれにおける選択肢は極めて限定されており、聴者とは同日の談ではない。
 狭い社会のなかで、濃い人間関係をつくって生きているろうあ者たち。彼らには、「犯罪」の相手ですら、ろうあ者に限定されてしまうのだろうか。
終章 行き着く先はどこに---福祉・刑務所・裁判所の問題点 ホームレスかヤクザか閉鎖病棟か・・・
p219〜
 寮内工場に、5箇所の福祉施設と8箇所の更生保護施設に引き受けを拒否された、視覚障害者のある受刑者がいた。50歳代後半の彼は生まれながらの全盲者で、いまは世の中に一人の身内もいない。「窃盗罪」による服役だが、その内容は600円ほどの弁当を盗んだというものだった。
 彼が刑期満了になる直前、私は聞いてみた。
「出所したら、どうするつもりですか」
 彼は、迷わず答える。
「ここを出る時に貰える作業賞与金が1万5000円くらいあるんで、それで目いっぱい酒を飲むな。それがこの世での飲み納めだ。そのあとは、なるべく人に迷惑がかからない方法で死ぬだけさ。海にでも飛び込むか。はっはっは」
 乾いた笑い声を上げた後、すぐに溜め息を漏らした彼。真顔に戻ったその表情からして、彼が口にした言葉が、単なる冗談だとは思えなかった。そして、いまでも彼の安否については、大いに気になっている。
 実は私は、出所後2年が経過した頃から、獄中生活を共に送った障害者たちの消息を追いかけている。全盲の彼をはじめ、行方が分からない受刑者仲間も多いが、残念ながら、本当に自殺してしまった者がいた。その彼は肢体不自由者だったが、服役中から、「娑婆に戻るのが怖い」とたびたび訴えていたように記憶している。
 もう一人、変死している者もいた。そして案の定、刑務所に戻ってしまった者も何人かいる。ほかには、ヤクザ組織に身を置く者、路上生活者となっている者など、出所後の生き方はさまざまである。
「俺よー、いま、めっちゃ楽しいんだ。周りには俺と同じように、ムショ上がりがいっぱいいるし、組の兄貴たちにも可愛がってもらってるし」
 そう言う彼は、軽度の知的障害者だった。確かに、刑務所にいた時よりも生き生きとしているが、この調子だと、すぐに鉄砲玉にされかねない。ピストルを撃つ構えをして、「バキューン、バキューン」などと口にしながら、悦に入っている様子の彼。「あいつを撃ってこい」と命令されれば、即、飛んでいきそうだ。しかし、彼にとってそこは、生まれてはじめて見つかった、自分自身の居場所なのかもしれない。なんとも遣り切れない思いがするが、いまのところ彼を受け入れてくれる福祉施設はないし、彼自身もそれを望んではいなかった。
 一方、寮内工場には、重い知的障害を抱えている受刑者も多数いた。彼らは、ヤクザ組織からの勧誘を受けることもないだろうし、ホームレスとしての一人暮らしも不可能なはずだ。であるならば、福祉とつながっている者はいないか。そう思い、私なりのアンテナを張って調べてみた。
 心当たりがある場所に足を運んだり、行政機関に問い合わせたりするなかで、ようやく2人の知的障害者の所在が判明した。が、残念ながら2人とも、福祉の支援は受けていなかった。福祉施設ではなく、医療機関にいたのだ。精神科の病院である。医療的な治療など必要ないにも拘わらず、彼らはいま、精神科病院の閉鎖病棟に収容されている。
 このように、彼らの消息を訪ねるなか、触法障害者を取り巻く世の中の現実が、かなり見えてきた。かろうじて再犯者になることを免れている者も、「路上生活者」「ヤクザの三下」「閉鎖病棟への入院」、そして「自殺者」や「変死者」になっていたりと、それは、あまりにも切ない現実の数々だった。
 -----福祉は、一体何をやっているんだ。
 すべての福祉関係者に向かって、そう叫びたくなる。もちろんそれは、私自身に対してもだ。
p233〜
 だが、こうした私の思いとは逆に、世の中はいま、「知的障害者であろうと精神障害者であろうと、罪を犯した奴は厳罰に処せ」という声が大きくなっているのではないだろうか。私も、その考えに頷けなくもないが、それが、社会防衛的発想、あるいは優生主義的発想に根ざしているのであれば、かつての「魔女裁判」のような危険性を感じざるを得なくなる。知的障害者に対して、「得体の知れない人間は、得体の知れないことをやらかしてしまうのではないか」というような思いがあるとすれば、それは全くの見当違いである。私がいま関わっている知的障害者の多くは、被害者になりこそすれ、加害者になるような人たちでは絶対にない。いや、刑務所で出会った知的障害者も、そのほとんどが人生の9割以上は被害者として生きてきた人たちだった。そして刑務所に服役することになった罪も、本当に軽微な罪なのである。
 では、なぜ、そんな障害者が起こした犯罪を本にまでして書きたてるのか、と問われるかもしれない。
 しかしそうであっても、私は触法障害者の問題について訴え続ける。
 なぜなら、我が国の福祉の現状を知るには、被害者になった障害者を見るよりも、受刑者に成り果ててしまった彼らに視点をあてたほうが、よりその実態に近づくことができるからである。そしてそこには、日本社会の影の部分も見えてくるのだ。

『等伯』『親鸞』 昔も今も人の世は変わらない、人の心は変わらない。読みながら、そう慨嘆する。

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〈来栖の独白〉
 毎朝、『等伯』を楽しみに読む。強い感化を受ける。日本経済新聞の連載小説。安部龍太郎著、西のぼる(画)、である。挿絵も優れて美しい。
 知ることの乏しい私は、流石に興に押されて、安部氏についてWikipediaで検索した。“「隆慶一郎が最後に会いたがった男」という伝説ができた。”とも紹介されており、一入の感慨を覚えた。隆慶ワールドは、何年も前になるが、存分に私を愉しませてくれたからだ。
 それにしても、これほどの作品をものされるには安部氏は、とてもお若い。『等伯』に魅せられるのは、安部氏の広い学識、それに裏打ちされた世界観、深い人間洞察、巧みなストーリー等による。表現力は、むろんの事である。
 昔も今も人の世は、変わらない。人の心は変わらない。読みながら、そう慨嘆する。中日新聞連載中の『親鸞』(五木寛之著)、『グッバイ マイ ラブ』(佐藤洋二郎著)にも云えることだ。この3作を、私は毎朝読む。・121回と122回から、少し転写させていただく。
・121回より
「そちは信長が憎くはないんか」
「もちろん憎いです。しかし・・・」
 比叡山を襲った信長軍の強さと恐ろしさが、信治の胸に沁みついている。あんな軍勢を指一本で動かせる男を倒せるとは思えなかった。
「たとえどれほど強かろうと、屈するわけにはいかんのや。(略)信長が南蛮人の手先になってこの国の国体を壊そうとしていることや」(略)
「(略)これは単に信仰ばかりの問題やない。ポルトガルがイエズス会を通じて、信長の天下取りを支援しとるからなんや」
 五摂家筆頭の当主だけあって、前久は世界の現状についてもかなり詳しく知っていた。
 この頃の世界は、大航海時代の真っただ中にあった。
 コロンブスやバスコ・ダ・ガマの活躍によって世界への航路を開いたスペインやポルトガルは、キリスト教の布教を大義名分にして次々と異教徒の国を征服し、世界にまたがる大帝国をきずき上げていた。(略)
 むろん信長とて、彼らのこうした戦略は承知していた。だが南蛮貿易によって上がる巨額の利益と、硝石や鉛、軟鋼、真鍮などの軍需物資を手に入れるには、イエズス会やポルトガルとの協力が不可欠だった。
 ちなみに軟鋼は鉄砲の銃身の内側(これを真筒という)を作る時に用いる純度の高い低酸素の鉄。真鍮は鉄砲の引金や火挟みなどのカラクリを作る時に用いる銅と亜鉛の合金である。
 いずれも日本では生産する技術がなく、すべて輸入に頼っていたのだった。
・122回より
 この輸入ルートを押さえていたのがポルトガルやイエズス会だから、鉄砲を大量に使えば使うほど彼らへの依存度を強めることになる。その見返りに要求されることも多くなり、天下統一を急がざるを得なくなる。
 信長が比叡山焼き討ちを強行した裏には、実はこうした事情があった。(以下略)

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隆慶一郎著『花と火の帝』2006,1,13
隆慶一郎著『捨て童子松平忠輝』2006,1,18
隆慶一郎著『時代小説の愉しみ』  『風の呪殺陣』 2006,2,20 
隆慶一郎著『影武者 徳川家康』2007,1,11
隆慶一郎著『吉原御免状』 2007,1,29 
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 「読書note」より ◆隆慶一郎著『柳生非情剣』 2006,11,27
 〈来栖の独白〉この本には6人の柳生が描かれている。どれも掌編で、連也斎、友矩、宗冬、十兵衛、新次郎、五郎右衛門である。
 面白さは、隆慶一郎だから決まっている。今日はストーリーではなく、山口昌男氏の「解説」を抜粋して写してみる。隆作品の本質に迫っている。分けても私の気に入ったのは、「スティグマ」という言葉である。これは、優れて福音的な響きである。聖書に拠って云うなら、「小さくされた人」に通じる。イエスのように「生まれ故、社会階層故」差別抑圧された人たちだ。が、彼らはおしなべて純一無雑である。この人たちを隆慶一郎は温かな眼差しで活写している。
p198〜
 解説
 講談社版の「柳生非情剣」のあとがきの中で、作者隆慶一郎は、「オール読物」「歴史読本」「週刊小説」に別々に発表されたが、一冊の本に纏められると、連作とも云うべきものになったこれらの作品群を「異形の小説」と自ら名づけている。
 異形とは、常人とは異なっているために、ふつうの人々のように平和な生活を営むことができないような状態を云う。異形は、色々な形で現れる。先ず一番現れやすいのは身体の形の崩れとしてである。元来、大衆小説、それも時代小説と云われる分野の主人公の多くは、こうした身体的異形性を帯びた存在であった。すぐ思いつく例に、林不忘の「丹下左膳」がある。あの隻腕・片目は、本来、暗い時代に向かう日本の当時のやるせない、ニヒルな気持ちを表現する何よりもよい形姿であったとふつういわれている。時代小説の中の異形のもう一人の代表選手は、「大菩薩峠」の主人公、机龍之介であった。机龍之介は全盲の姿で無明の闇を救いを求めて彷いつづける人間の妖しい魅力を惜しみなくふり撒いて、大正時代の読者を魅了した。
p199〜
 こうした異形について、二つの考え方がなり立つ。一つは「スティグマ」という言葉で云い現わされるものである。スティグマは「聖なる刻印」と云えるものである。天によって選ばれたしるしとして、何か人とは違った刻印とかしるしを背負った存在をさす。こうした刻印のゆえに、これらの人々は、ふつうの人の生き方の軌道から外れることになる。そしてここに物語が発生する。こういう人
の物語を通して、人間を超えた存在は、何らかのメッセージを送ってくる。読者は、こうしたスティグマを背負った主人公を通して、世の中を少し違った眼で見ざるをえないような物語の「迷路」に誘いこまれて、ふと日常生活における「吾れ」を忘れてしまう。
 そもそも、この片目とか全盲というのは、日本の中世でいえば、死者の世界とのつなぎの役を果たし、平家物語誕生のきっかけをつくった、琵琶法師と呼ばれる盲僧というような先祖を持ち、更に古代に遡れば、柳田国男が「一つ目小僧」で説いたように、「見者(ヴォアイヤン)」又は詩人の能力をたかめるために片目をつぶされたシャーマンの姿にさかのぼれるかもしれない。
 こうした異形という存在は、考えようによっては、世間から排除されるあらゆるタイプの人々についても云えるかも知れない。その生まれ故、社会階層故、過度に美点を持つ(強すぎ、又は美貌)故、という具合に様々の動機故に、ふつうの人の人生コースと距りを持ってしまう人達が異形性の中に含まれて来る。
p200〜
 隆慶一郎は、晩年の短い期間に矢継早に刊行された数多くの作品文の中で、社会的に排除され続けて来た、くぐつ師、芸能によって生きる遊行の民、つまり「道々の輩」、流離する貴種を描き続けた。そして貴種の主人公とこうした社会的異形集団との秘かなつながり、又は入れ替りといった操作によって物語の原動力といったものを発動させて来た。
 この「柳生非情剣」において、著者は、柳生一族を全体として異形集団であるという前提で、この連作を書きはじめたようである。
p202〜
 こうした視点から、柳生の剣法が能に通じていることを説く作者の目はたしかで、芸能の歴史に対しても鋭い切り込みになっている。
 他の作品群において著者は、「道々のやから」や「くぐつ師」などの制外者(にんがいしゃ)を通して歴史の光の部分と闇の部分を交錯させている。この作品群において作者は身体の正と負の部
分を妖しく交錯させて、読者を倦ませるところがない。
2006,11,27 up

《第13回前半》陸山会事件公判 水谷建設元運転手が調書内容を否定「ハラがたってます」

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《第13回前半》陸山会公判傍聴記 ── 水谷建設元運転手が調書の内容を否定「ハラがたってます」
2011/5/25《THE JOURNAL》

5月24日雨。今日は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷するため、傍聴希望者がいつもより多い。約55席の傍聴席に対して、90人ぐらいは並んでいた。たしかに、水谷元会長は日本全国を揺るがせた陸山会事件のキーマンの一人で、ウラ金の実態をどう証言するかでこの裁判の行方が大きく左右されることは間違いない。
そのほか、水谷元会長の前には水谷建設の元専属運転手が弁護側の証人として出廷する。ウラ金を渡したとされる時期に社用車の運転手をしていたのは彼だけで、これもまた重要な証言となる。まずは午前に行われたこの元運転手の証言から報告する。

10時開廷。午前中は、水谷建設の元専属運転手が出廷。元運転手は、事情聴取のときに川村元社長が04年10月15日に石川知裕氏に5000万円を渡した際、受け渡し場所となった全日空ホテル(現・ANAインターコンチネンタルホテル)まで川村元社長を送ったと話し、その時の様子が調書にまとめられている。石川氏に渡したとされる5000万円については証言や物的証拠が極端に少ないので、運転手の証言は検察側の立証にとって重要な意味を持つ。まずは弁護人による尋問。
(──は弁護人、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたは川村元社長を全日空ホテルまで車で送ったことはありますか
「1回か2回ぐらいあると思います」
── 時期についての記憶はありますか?
「会長(注:水谷功元会長のこと)が脱税事件で逮捕された以降だと思います」
※補足。水谷功元会長が脱税容疑で逮捕されたのは06年7月。川村元社長がウラ金を渡したと証言しているのは04年10月と05年4月。つまり、元運転手はウラ金渡しの際に川村社長を社用車に乗せて全日空ホテルに行ったことはないと証言していることになる。
──そのことは検察官に説明しましたか
「はい」
── 検察官に何を聞かれましたか
「全日空ホテルで車を待機させるときのことを聞かれました」
── それは04年10月15日ではなく、全日空ホテルで車を停めるときの方法を聞かれたということですか
「はい」
── 車はどのように停めていたのですか
「川村社長だけではなく、会長を送るときも含め、2階のロビーで降ろして、ボーイさんに頼んでその近くで待機していました」
── 川村元社長の手荷物について聞かれましたか
「『覚えておりません』と答えました」
※補足。「手荷物」とは川村元社長が届けたとされる5000万円入りの紙袋を指す。検察は、何としてもこの運転手に「川村社長は、全日空ホテルに送ったときに手荷物を持っていた」という調書をとりたかっただろう。というのも、石川氏に渡したとされる5000万円については川村元社長の証言以外に証拠はなく、当日に本当に川村元社長が全日空ホテルに行ったという証拠もないからだ。しかし、その調書は元運転手の記憶とは異なるものだったことが明らかになっていく。
── あなたは調書を訂正したいと思っていますか
「はい」
── 川村社長を全日空ホテルに送ったときは、出発の直前に指示されたとの供述がありますが
「日常的にどこに行くのかは直前に言われることもあったので、こういうことを言いました」
── ということは、特定の時期の話ではなくて、一般的な話だったということですね
「はい」
── 検事は、その説明を(特定の日付の話であるかのような)こんな書き方をしたのですか
「はい」
── 調書を訂正するのなら、どのように訂正したいですか
「この日の記憶がほとんどなかったので、(日付を)限定できるということはないと思います。(検事には)この当時の記憶がほとんどなかったので『送った記憶がない』と言ったのですが、こういう調書になってしまいました」
── 検事から手荷物について聞かれたことについては
「手荷物については一般的なことで言ったので、川村社長を全日空ホテルに送った時の話をしたわけではないです」
── 調書にサインを求められたとき、どのように感じましたか
「10月15日ということで限定していたので、不安を感じました」
── 検事にはどのように話しましたか
「10月15日について限定されていることを指摘して、『サインできません』と言いました」
── 検事はどう言いましたか
「『サインしてもらわないと困る』と。私が『10月15日に限定しているのは直せないのですか』と聞いたら『直せない』と言われました」
── サインをしなくちゃいけないとも言われたのですか
「『サインして下さい』と言われたので、『サインはできません』と申し上げたのですが、『これは今日あなたが話したことをまとめたものだ』と」
── なぜサインしてしまったのですか
「『サインをしなきゃいけない』と言われました」
── 当時はなぜ(10月15日のことについて)聞かれているのかわからなかったのではないですか
「はい」
── サインしたことで後悔はしていますか
「10月15日に限定されたことが、私には覚えがありませんので、こういう書き方をされたのは直してほしいとおもっています」
── こういう調書がつくられたことについては
「できるならば、日付は削除してほしいです」
── こういう調書ができたことについて、どのように感じていましたか
「多少、ハラがたっていますね」
── 04年10月15日に、川村元社長を全日空ホテルに送ったという記憶はないんですね
「はい」
── 川村社長はこの公判で、全日空ホテルへの交通手段について『社用車がタクシーで』と答えていますが
「タクシーであれば、会社に領収書があると思います」
※弁護人の尋問終了後、検察側の反対尋問が行われる。運転手の調書否定証言に対し、検察側は川村元社長を議員会館の小沢事務所に訪ねていたことを尋問する。狙いがどこにあるかがよくわからなかったが、川村元社長が小沢事務所を訪ねていたことを証言させ、水谷建設と小沢事務所の関係の濃さをアピールしたかったのかもしれない。それに対し、元運転手は手帳に書かれているものは議員会館に行ったことを認め、一方で「日付はわかりませんが、手帳に書いた以外はないと思います」と答える。

最後に裁判官による尋問。
(──は裁判官、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたが手帳をつけていた理由はなぜなのですか
「会社には日報があったのですが、私が行動していたことを自分で後で確認することも含めて、会社に聞かれたときのために書いていました」
※補足。会社に提出していた日報は、手帳に書かれているものに比べればおおざっぱなもので、詳細は書かれていないという。
── 手帳はどういう時に書いていましたか
「その時に応じて書く場合と夕方に書いていました」
── 何日かまとめてということは
「それはほとんどないと思います」
── 書き漏らしはありますか
「(仕事が)重なった時などはあると思うんですが」
── もうちょっと具体的にお話いただけますか
「時間的に会長と社長がバッティングしてしまったりした時ですね」
── 書き漏らすこともあったということですか
「忘れることもあったと思います。その日、書くのを忘れて、そのまま書いていないということはあると思います」
── 手帳はあなたのスケジュール表としても使っていたのですか
「そうです」
── スケジュールはあらかじめわかっているものなのですか
「先にわかっているというのは少ないですね。(指示が来るのは)当日か前の日で、事前に連絡がきていれば手帳に書きますが、当日に書くことが多かったです」
── それが当日が前日に書くことが多かったということですね
「はい」
── 直前に言われて書き忘れるということは
「それもあると思います」
── 10月15日に川村社長を送ったかどうかですが、あなた自身は記憶がないのですね
「はい」

以上で午前の部が終了。裁判官も、04年10月15日に元運転手が全日空ホテルまで川村氏を送迎したかどうかに強い関心を持っているようだ。
元運転手が証言したように、川村氏が水谷建設東京支店で金庫から5000万円を引き出した後、全日空ホテルまでタクシーで移動したのであれば、領収書が何らかの形で残っている可能性が高い。しかし、それがないのであれば社用車で移動したことになり、それは元運転手の証言とは矛盾してしまう。川村氏の移動手段をどのように事実認定するかも、裁判の重要なポイントとなるだろう。
そのほか、元運転手の証言によって検察による調書の取り方の問題点がまたもや明らかとなった。おそらく、元運転手の聴取を担当した検事は、上司の思い描くストーリーのままの調書をつくったのだろう。しかも、検察はこの調書の内容を一部の記者にリークして、「石川有罪」の空気作りまでしていた。リークをした検察関係者が、このような杜撰な聴取で調書が作られていたことを知っていたかは不明だが、検察の情報操作の巧さを感じさせる。
引き続き、午後は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷する。ここでも石川氏に渡したとされる5000万円の流れについて証言が行われる。
※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に主要部分を再構成したものです
2011/5/25(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史
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陸山会事件公判 水谷建設の元運転手証言「川村尚元社長を裏金5千万円受渡し現場へ送った記憶、ない」2011-05-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
陸山会事件公判 水谷建設水谷功元会長「裏献金、手配したが、実際に提供されたかどうかは分からない」2011-05-24 | 政治/検察/メディア/小沢一郎

アメリカの足の裏を舐めないと存続できない日本/米主導で原子力発電/発電用濃縮ウランの大半は米から輸入

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うそつき  
田中良紹の「国会探検」
2011年5月30日 18:55
 大震災以来の政治に感じるどうしようもない「違和感」の原因を考え続けてきた。
 退陣の危機に追い込まれていたため震災を政権延命の手段と考えてしまうパフォーマンス政治。手柄を独り占めしたいのか「お友達」だけを集め、全政治勢力を結集しようとしなかった身内政治。パニックを恐れて情報を隠してしまう隠蔽政治。責任の所在が曖昧なままの無責任政治。「違和感」の原因は様々だが、終始付きまとうのは「国民は嘘をつかされ続けてきたのではないか」という疑念である。
 例の海水注入問題では、当初東京電力が廃炉になる事を恐れて海水注入を躊躇したのに対し、菅総理の指示で海水注入は行なわれたと言われた。「国民の敵」東京電力と「国民の味方」菅総理という構図である。ところがその後、東京電力の海水注入を菅総理が55分間中断させたという話が出てきた。「国民の敵」が入れ替わった訳だ。
 すると今度は「敵役」として原子力安全委員長が登場した。東京電力の海水注入が開始された後で、菅総理が海水注入による「再臨界」の危険性を斑目原子力安全委員長に問いただしたところ「危険性がある」と答えたため中断したとされた。これに斑目氏が噛み付いた。「そんな事を言うはずがない」と言うのである。結局、菅総理に「可能性はゼロではない」と答えたという事になった。
 その時点で菅総理は「そもそも東京電力が海水注入を開始していた事実を知らなかった」と国会で答弁した。知らなかったのだから中断させるはずがないと言うのである。これを聞いて私の頭は混乱し始めた。海水注入を知らない総理がどうして原子力安全委員長に海水注入の危険性を問う必要があるのか。
 それに「海水注入を渋る東京電力VS海水注入を指示した総理」という構図はどうなるのか。理解不能な話になった。理解不能な話を理解するには誰かが「嘘」をついていると考えるしかない。最も疑わしいのは「海水注入を知らなかった」と言い切った菅総理である。
 菅総理が東京電力の海水注入を知らなかったなら原子力安全委員長とのやり取りも、当初言われた構図も信憑性が薄くなる。自分のパフォーマンスのために東京電力に「敵役」を押し付け、その代わり東京電力を潰さない、政府が賠償の面倒を見ると裏約束をしたのではないかと思えてくる。
 いよいよ菅総理の「嘘」が追及される話になると思っていたら事態は思わぬ方向に展開した。東京電力が「海水注入の中断はなかった」と発表したのである。現地責任者の吉田昌郎所長が独断で注水を継続したという話になった。これで一件落着の雰囲気である。しかし何事も疑ってみる私の第一印象は「うまく逃げたな」である。
 この話が裏を取る事の出来ない話になったからである。前にも書いたが福島原子力発電所の現場は今や日本の国民生活と日本経済の存亡をかけた戦場である。その指揮官の判断で結果的に国民生活が守られる方向になったとなれば誰も糾弾できない。しかも裏を取ることも出来ない。この話も本当かどうか分からないが事態を収束させる効果はある。そこに彼らは逃げ込んだ。しかしこれで「知らなかった」と言った疑惑は消えるのか。
 放射性物質の拡散予測SPEEDI(スピーディ)を巡る菅政権の無責任ぶりをフジテレビが放送していた。SPEEDIは気象条件などから放射性物質の広がりをコンピューターを使って予測するシステムで、原発事故が起きた場合、そのデータは文部科学省、経済産業省原子力保安院、原子力安全委員会、関係都道府県などに提供される。
 ところがその内容が国民には公表されていなかったという事で、番組は関係先を取材し、どこも自分の所管ではないとたらい回しにされる模様を放送していた。そしてスタジオの識者が「どうなっているのだ」と怒って見せるのだが、役所の担当者に怒ってみても仕方がない。
 番組の中で細野豪志総理補佐官が語っていたように菅政権は「パニックを恐れて公表を控えた」のである。細野氏はその事を反省していたが、公表しなかったために被爆をしなくても良い人が被爆をした。これはその責任を誰が取るのかという問題である。ところが番組はそういう方向にならない。「日本の組織は滅茶苦茶だ」と責任の所在を広げてあいまいにし、「あいつもこいつも悪い」と鬱憤晴らしをして終るのである。
 そして問題なのはこの番組で枝野官房長官がSPEEDIのデータを「報告を受けていない」と発言した部分である。番組はそこを問題にすべきであった。この発言が本当ならば霞が関を掌握しなければならない立場の官房長官は失格と言わざるを得ない。そんな政権に政治を任せておけないと言う話になる。
 しかし原子力災害が起きている時に放射能データを官邸に報告しない役人などいるはずがない。つまり枝野官房長官も嘘をついている可能性が高いのである。むしろ細野氏が言ったように菅政権はパニックを恐れて情報を隠蔽した。それで周辺住民の被害は拡大した。その責任を追及されると困るので「情報を共有出来なかった」と嘘をついて組織上の問題にすりかえているのである。
 番組はまさにそのように視聴者を誘導した。かくして国民は「日本は駄目な国ねえ」などと言って終る。おめでたい限りである。菅政権が国民のパニックを恐れて情報を公表しなかったとすれば、自らの危機管理能力に自信がなかったか、或いは国民を愚かだと思っていたかのどちらかである。
 しかし国民がどんなに愚かでも嘘はつき通せるものではない。それに仮に「海水注入を知らなかった」、「SPEEDIの報告を受けていなかった」のが真実ならば、それはそれで政権担当能力はゼロ。とても国難の時に政権を任せるわけにはいかないと言わざるを得ないのである。
〈筆者プロフィール〉
田中良紹(たなか・よしつぐ)
 1945年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同年(株)東京放送(TBS)入社。ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。
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「目くらまし」を見抜けぬ愚民国家
田中良紹の「国会探検」2011年5月17日 18:07
 浜岡原発の停止要請は「目くらまし」だと前回書いた。ところがそれを「原子力政策の転換」と受け止める「おめでたい」論調が多いので呆れる。あのやり方はこの国の官僚が国民を支配するために使ってきた常套手段そのもので、見抜けなければ愚民と言うしかない。
 福島原発の深刻な事故は国民の反原発感情を揺さぶり、今後のエネルギー政策に大きな影響を与える事が予想された。そうした時に支配者が考える事は世論を無視して強行突破することではない。いかにも原子力政策を転換するように見せかけながら、実際には変更の幅を極力変えないようにすることである。そのため「浜岡原発」が利用された。
 官僚が「目くらまし」に使うトリックの道具は数字である。今回は「87%」という数字が使われた。「地震が起きる確立が87%」と言われると、感情でしか物事を考えない人達は「大変だ」と恐怖心が先に立つ。それでまともな思考が出来なくなる。支配する側はそれを狙っている。
 福島原発事故は地震の確率が0.1%の所で起きた。論理的に考えれば地震の確率と事故とはストレートに結びつかない。どこの原発も事故は起こる可能性がある。それをそう考えさせないために支配者は「87%」に目を向けさせ、愚民はそれに乗せられる。
 「87%」を問題にするなら、そもそもそんなところに原発を建設した事が間違いである。運転を停止しても地震が来れば放射能事故は起こる可能性があり、速やかに「廃炉」にするというのが論理的である。ところが菅総理が言った事は「安全策を講じるまでの運転停止」だった。それは「浜岡原発を継続する」と宣言したに等しい。
 なぜなら安全のために投資をしたら、投資をした後で「廃炉」という選択肢はありえないからである。防潮堤の建設などには2年ほどの時間がかかるらしいから、運転再開を決めるのは自分ではない別の人間で「俺の責任にはならない」という計算も菅総理には働いたかもしれない。
 それを本人が「歴史の評価」とか大見得を切るからチャンチャラおかしくなる。菅総理は「停止要請」によって浜岡原発の継続を宣言し、それ以外の場所にある原発事故の危険性から目をそらさせたのである。そう言われると困るから、「原子力計画をいったん白紙にする」と付け加えた。しかし「白紙」というのは「変更」ではない。自分は「白紙」にし、別の人間が極力「変更」しない形の計画にしてくれれば良いのである。
 それをニュースキャスターが「菅総理は原発の見直しに踏み込んだ」とか言っているから「おめでたい」。「何年までに原発の割合を何%減らす」とか、再生エネルギーの開発計画を発表した時に言うべき事を、論理的に考えれば考えるほど「原発を継続する」と言っている時に言うのだから始末が悪い。
 福島原発事故の教訓は「絶対の安全はない」と言うことである。どんなに想定しても想定外の事は起こる。どんなに安全対策をしても破られる事はある。だから最悪を考えて備えをしなければならない。ところが政府は「原発の安全性」を強調するあまり、不測の事態への対応をして来なかった。
 原発のメルトダウンを知りながら、住民のパニックを恐れて発表したのは事故から2ヶ月以上も経ってからである。発表していれば対応できていた事ができなかった。その被害者は周辺住民である。放射能による健康被害が現れるのは5年から10年先の事だから、これも菅政権にとっては「俺の責任ではない」と言う事になるのだろうか。
 日本が原発を54基持っているという事は、54個の核爆弾を持っているに等しい。つまり核戦争に備える思考と準備が必要なのである。敵は自然の猛威かもしれないし、テロ攻撃かもしれない。日本にミサイルで原爆を投下しなくとも、テロリストは小型スーツケースの原爆を都心で爆発させる事も出来るし、また海岸に建てられた原子力発電所を襲えば原爆投下と同様の効果が得られる。
 ところがそうした備えがない事を今回の事故は示してくれた。警視庁の放水車や消防庁の放水車が出動するのを見て私は不思議でならなかった。核戦争に備えた自衛隊の部隊はいないのかと思った。こんな事では政治は国民も国土も守る事が出来ない。いちいちアメリカを頼らなければならなくなる。
 考えてみれば日本のエネルギー自給率は4%に過ぎず、すべてはアメリカ頼みである。かつては国内の石炭に頼っていたのを1960年代に政府は無理矢理石炭産業を潰し、アメリカの石油メジャーが牛耳る中東の石油に切り替えた。ところが遠い中東の石油に頼りすぎる危険性が指摘されると、これもアメリカの主導で原子力発電を導入した。発電用濃縮ウランの大半はアメリカから輸入されている。
 普天間やTPP問題で分かるようにアメリカの足の裏を舐めないと存続できない菅政権は、原発見直しのフリは出来ても「転換」は簡単には出来ないのである。
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原発保有国は潜在的核武装国/保有31カ国の下心/日本の原発による発電量は世界第3位2011-05-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉

君が代起立命令は合憲=最高裁/「思想・良心の自由を間接的に制約する面がある、との指摘は重い」橋下知事

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君が代起立命令は合憲=元教員の敗訴確定−再雇用拒否訴訟・最高裁
 卒業式の君が代斉唱で起立しなかったことを理由に定年後の再雇用を拒否されたのは不当だとして、都立高校元教諭(64)が東京都に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(須藤正彦裁判長)は30日、「起立や斉唱を命じた校長の職務命令は合憲」として、元教諭側の上告を棄却した。請求を退けた二審判決が確定した。
 君が代をめぐる職務命令について最高裁が憲法判断するのは、ピアノ伴奏命令を合憲と判断した2007年以来2回目で、起立命令では初めて。都教委によると、係争中の同様の訴訟は23件あり、影響を与えそうだ。
 職務命令が憲法の定める思想良心の自由に反するかが最大の争点だった。判決は命令に基づく起立斉唱について、特定の思想を強制するものではないものの、個人の歴史観とは異なる行動を求められることで、間接的に思想良心の自由を制限していると判断した。
 その上で、入学式や卒業式は教育上重要な行事で秩序の確保が必要なことや、法律で国旗国歌が定められていること、全体の奉仕者としての公務員の地位などを踏まえると、命令には自由の制限が許されるだけの必要性や合理性が認められ、憲法に違反しないと結論付けた。
 判決は4裁判官全員一致の意見。須藤裁判長は「強制や不利益処分はできる限り抑制的であるべきだ」とし、千葉勝美裁判官は「国旗、国歌の問題は、強制的ではなく自発的な敬愛対象となるよう環境を整えることが重要」とする補足意見を、それぞれ述べた。
 元教諭は04年の卒業式で起立を拒否して戒告処分を受け、定年後に再雇用を申請したが、07年に不合格とされた。一審では原告の主張が一部認められたが、二審で逆転敗訴していた。時事通信2011/05/30-21:26
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大阪府の起立条例案審議に影響も 国旗国歌訴訟判決
日本経済新聞2011/5/30 21:12
 君が代斉唱で起立を命じた校長の職務命令を合憲とした最高裁判決は、教職員に起立・斉唱を義務付ける条例案が提出された大阪府議会の審議にも影響を与えそうだ。
 橋下徹知事率いる地域政党「大阪維新の会」は全国初とされる条例案を25日に府議会に提出。維新が過半数を握っているため、6月3日の本会議で可決される見通しだ。罰則は設けていない。
 条例の狙いについてこれまで知事は「教育委員会だけに指導を任せず、政治が一定の規範を示す必要がある」と説明していた。この日、最高裁判決を受け「世間は条例であえてやる必要はないという流れになってくると思うが、それでも条例が必要な理由をしっかり説明しなければならない」と述べた。
 義務化を迫られる学校現場には波紋も広がり、府教委幹部は議会で「現場の指導で起立しない教員は減っている。条例による義務付けは必要ない」との考えを示している。
 橋下知事は罰則についての条例を9月議会で成立させる意向を表明。これまで知事は「君が代で起立しない教職員は絶対にやめさせる」と強い調子で話していたが、この日は「『思想・良心の自由を間接的に制約する面がある』との指摘は重い。君が代だけをターゲットにしたものにはしない。(学校の中で)ふさわしくない行為は何なのか考えたい」と後退した。
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支局長からの手紙:起立して歌え /宮崎
 四半世紀も前のことだが、ある県で高校の教員採用試験を受けたことがある。その記憶がよみがえったのは、次のニュースを読んだからだ。
 入学式や卒業式で、君が代を起立して斉唱するよう教職員に義務付ける条例案を、「大阪維新の会」の大阪府議団が府議会に提案した。維新の会は、橋下徹知事が自らの主義・主張実現のためにつくった首長政党。先の統一地方選で府議会の過半数を制しており、条例案の可決は確実という。
 大阪本社版の記事によると、橋下知事は「国旗・国歌を否定するなら公務員を辞めればよい。自分の職場環境だけでしかバカな主義主張を貫けない教員はとっとと辞めてもらう」と主張し、不起立を繰り返す教職員を処分するための条例案もいずれ提案するという。
 私が思い出したのは面接の質問だった。「君が代斉唱中に起立しない教員がいますが、どう思いますか」。試験官にこう聞かれた。入学・卒業式での「日の丸掲揚」「君が代斉唱」の義務化が、学習指導要領に盛り込まれる少し前だった。起立強制は「思想信条の自由の侵害だ」などとして、各地で教員らと管理職との対立が起きていた。
 面接の質問は「初めに芽を摘んでおく」という趣旨だったかもしれない。「あまり強制すべきことでないと思う」という内容のことを答えた。試験は不合格だった。
 その後も、教委による教員の大量処分や、教員が懲戒処分取り消しを求めて裁判を起こすなどのいざこざは続いた。
 だが、今や起立しない教職員はほとんどいないと聞く。そもそも「起立して歌え」というのは、条例で定めなければならないことなのか。どうにも違和感がぬぐえない。
 くだんの試験官の質問に、今ならどう答えるだろう。「起立ぐらいしていいのでは」だろうか。思想信条というより、それが他の出席者らへの礼儀だと思うからだ。<宮崎支局長・池田亨>
毎日新聞 2011年5月30日 地方版
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橋下徹大阪府知事 国歌起立条例案 これが民主主義だ2011-05-19 | 政治
「君が代起立」条例案 橋下・大阪府知事、不起立教員「辞めてもらう」2011-05-18 | 政治

木曽川・長良川リンチ殺人事件 法務省が写真週刊誌「フライデー」編集部に抗議 死刑囚撮影「誠に遺憾」

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法務省がフライデーに抗議 死刑囚撮影「誠に遺憾」
 法務省は30日、写真週刊誌「フライデー」(講談社)が名古屋拘置所内で撮影した死刑囚の写真を掲載したことについて、「誠に遺憾」とする抗議文を同誌編集部宛てに送った。拘置所長も同日、面会者宛てに抗議文を送った。
 フライデー編集部は「抗議文が届いていないのでコメントできないが、意義があると思い掲載した」としている。
 同省によると、抗議文は、拘置所は撮影機器の持ち込みが禁止されており、写真掲載は遺憾などとする内容。
 江田五月法相は13日に「(拘置所側の態勢に)どういった不備があるか調査したい」と述べたが、法務省矯正局は現段階で「必要な調査はしたが、どのように撮影されたか不明」としている。
2011/05/30 19:59【共同通信】
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〈来栖の独白〉
 先週27日(Fri.)、K君と面会した。いつも落ち着いたK君であるので、一通りの「ご無沙汰でした」の挨拶。
 が、この日は珍しくK君のほうから、木曽川・長良川事件の死刑囚の写真が公開されたこと、それに伴う処遇の後退について、話しかけてきた。
「えっ、もう? ここ(岡山刑務所)もですか」(宥)
「いや、ここは、そうではないですが」(K)
「ああいうことがあると、処遇にひびくのでは、と直ぐに心配しました。傍迷惑なはなしです」(宥)
 そういえば、岡山刑務所の門の傍の待合所に、新しい掲示物が貼られていた。ケータイ等「電子機器」は持ち込まないように、という注意書きである。従来、受付で「ケータイは?」との質問はあり、続けて「ケータイはロッカーに置いてください」と言われてはいた。
 週刊誌への死刑囚の写真掲載は、読者の卑しい興味(覗き見趣味)に応え、売り上げアップを図る以外のなにものでもないだろう。何の意義も認められない。
 これにより被収容者への処遇が険しいものになることは、容易に推測できる。出版社とジャーナリストの皆さんは、最も弱い立場に居る彼らに配慮して戴きたい。外の人との、小さな小さな窓、これすらも閉ざさせようとする行為だ。行刑に、処遇後退の格好の口実を与える。写真等の露出は何の正義も意義も無いことを素直に認め、やめて戴きたい。
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木曽川・長良川リンチ殺人事件 週刊誌の写真掲載「驚いたが、記事に悪意を感じない」=死刑囚2011-05-13 | 死刑/重刑/生命犯 問題
木曽川・長良川リンチ殺人事件
名古屋アベック殺人事件 
確定死刑囚の処遇の実際と問題点---新法制定5年後の見直しに向けて

舞鶴 高1女子殺害事件〈中勝美被告〉 京都地検、無期懲役とした地裁判決を不服とし大阪高裁に控訴

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〈来栖の独白〉
 死刑(生命刑)求刑で無期懲役判決であったし、生命を奪う犯罪であるので、カテゴリーは「死刑/重刑/生命犯 問題」とするところ。だが、そうしたくない気持ちが私にある。カテゴリーは矢張り「社会」とした。
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舞鶴高1殺害、検察側も控訴=京都
時事通信 5月31日(火)15時12分配信
 京都府舞鶴市の高校1年小杉美穂さん=当時(15)=が殺害された事件で、京都地検は31日、殺人などの罪に問われた中勝美被告(62)を無期懲役とした京都地裁判決を不服とし、大阪高裁に控訴した。地検は死刑を求刑していた。
 判決によると、中被告は2008年5月7日、同市内で小杉さんの顔面を鈍器で殴り殺害した。
 被告は初公判から無罪を主張。5月18日の判決当日に控訴している。
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無期懲役の中被告が控訴=舞鶴高1殺害
 京都府舞鶴市の高校1年小杉美穂さん=当時(15)=が殺害された事件で、殺人などの罪に問われ、一審京都地裁で無期懲役の判決を受けた無職中勝美被告(62)が、判決を不服として、大阪高裁に控訴したことが19日、分かった。控訴は18日付で、被告本人によるもの。
 判決によると、中被告は2008年5月7日、同市内で小杉さんの顔面を鈍器で殴り殺害した。被告は初公判から無罪を主張している。(時事通信2011/05/19-14:42) ◆舞鶴 高1女子殺害事件/大阪母子殺害放火事件/鹿児島夫婦強殺事件2011-05-19
舞鶴事件の無期判決 状況証拠だけで十分か 状況証拠を積み上げたとはいえ、本当に冤罪ではないと言い切れるのだろうか。
中国新聞 '11/5/19
 京都府舞鶴市の高1少女殺害事件で京都地裁はきのう、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた無職中勝美被告(62)に無期懲役(求刑は死刑)を言い渡した。
 凶器や指紋など、被告と犯行を直接結び付ける証拠は見つからなかった。被告は捜査段階から全面否認を続け、公判では一貫して無罪を主張していた。
 逮捕、起訴した警察、検察が目撃証言や防犯カメラ画像などの状況証拠をどれだけ丹念に積み重ねることができたか。こうした状況証拠の評価が裁判の最大の焦点だったといえる。
 判決は「防犯カメラの画像は被害者と一緒にいたことを示す証拠と認められ、目撃者の証言も信用できる」と評価。検察側の主張を採用し、被告の訴えを退けた。
 「被告は犯人でしか知り得ない遺留品の特徴を知っており、犯人であることに疑いを抱かせる事情は存在しない」とも述べている。
 これに対し弁護側は公判の中で「捜査官の誘導があった」としてきた。判決はそうした主張には根拠がないと判断したようだ。
 それにしても痛ましい事件である。2008年5月8日朝、行方が分からなくなっていた小杉美穂さん=当時(15)=が、市内の雑木林で遺体で見つかった。
 全身に土と枯れ葉がかけられ、着衣は近くに捨てられていた。死因は頭や顔を鈍器で殴られたことによる失血死。母親(40)から前夜、捜索願が出されていた。
 事件の捜査も異例の展開をたどる。警察は現場近くに住む中被告を窃盗容疑で拘束。別件逮捕との批判も出た。殺人などの罪で逮捕したのは被告が窃盗罪で実刑判決を受け、服役中のことだ。
 窃盗罪で起訴した直後、弁護士立ち会いの下で6日間にわたり自宅を捜索しても、凶器などの物証は発見できなかった。
 状況証拠だけで起訴されたケースとして大阪の母子殺害放火事件がある。最高裁は昨年4月、無期懲役の一審判決、死刑の二審判決をいずれも破棄して審理を大阪地裁に差し戻した。
 その際に「被告が犯人でなければ説明できない事実が証拠の中に含まれることが必要」との判断基準を示している。
 この基準が適用されたのが昨年12月の鹿児島地裁の裁判員裁判だ。夫婦強盗殺人事件の被告に無罪が言い渡された。
 今回の裁判では、遺留品についての供述が最高裁基準に当てはまるとして、有罪判決に踏み切ったようにみえる。だが密室での取り調べだけに、供述自体が押しつけられた可能性も否定できない。
 中被告が起訴されたのは裁判員裁判の施行直前だった。分かりやすさが要求される新制度を回避したとの指摘もある。審理はプロの裁判官だけで進められた。
 弁護側は控訴する意向を示している。立証は十分だったのか。高裁であらためて問われるべきだ。
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「大阪母子殺害事件」事実認定の点で抑制的と言われていた最高裁は変わっても、依然変わらぬ検察2011-01-28 | 死刑/重刑/生命犯 問題
 検察、有罪「決め手」実験で補強 大阪の母子殺害事件
 大阪の母子殺害放火事件で殺人と放火の罪に問われた大阪刑務所刑務官森健充被告(53)=休職中=の差し戻し審で、検察側が、有罪の決め手の証拠としていたたばこの吸い殻について「事件当日、現場に捨てられた可能性がある」とする実験結果を大阪地裁に証拠請求したことが28日、検察関係者への取材で分かった。
 昨年4月の最高裁判決は二審の死刑判決を「事実誤認の疑いがある」と破棄しており、差し戻し審は無罪となる可能性がある。検察側は実験結果を補強材料に、再び吸い殻を有罪立証の「柱」として巻き返しを図る方針だが、最高裁は、状況証拠での立証は困難としており、ハードルは高そうだ。
 検察側はこれまで、現場マンションの灰皿で見つかった吸い殻に付着した唾液のDNA型が森被告と一致したとして、「森被告が当日現場を訪れた」と主張。一、二審では認められたが、最高裁判決は「フィルターが茶色に変色し、かなり以前に捨てられた可能性がある。最も重要な証拠なのに審理が不十分」として退けた。
 このため検察側は、同種のたばこの吸い殻を自然に捨てる実験で変色の状況を調査。「当日でも同様に変色する」との結果を得て、公判前整理手続きで証拠請求した。2011/01/28 08:22 共同通信
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<大阪母子殺害>被告側「無罪判決に向け全力」(毎日新聞 2010年4月27日)
 「『疑わしきは被告の利益に』という刑事裁判の原則にかなった判決。差し戻し審では無罪判決に向け全力で頑張りたい」。大阪市の母子殺害事件で殺人罪などに問われた刑務官、森健充(たけみつ)被告(52)の死刑判決を破棄した27日の最高裁判決について、弁護側は高く評価した。今後、大阪地裁で審理がやり直されるが、判決は改めて直接証拠がない事件捜査の難しさを示した。
 午後3時、最高裁第3小法廷。藤田宙靖(ときやす)裁判長の退官により、堀籠幸男裁判官が判決主文を代読すると、後藤貞人弁護士はじっと前を見つめ、弁護活動の実務を担った陳愛弁護士は、うっすらと涙を浮かべた。
 1、2審とも有罪とされた森被告だが、陳弁護士らの接見に、いつも「裁判所は分かってくれる」と語り、無罪判決しか頭にない様子だったという。後藤弁護士は法廷を出ると事務所に電話し、森被告に判決を伝える電報を打つよう指示した。
 その後、後藤弁護士は「最高裁はこれまで事実誤認の主張に扉を閉ざしてきたが、最近は痴漢冤罪(えんざい)や再審など変化が見られる。裁判員制度開始の影響が大きい」と興奮を隠せない様子で語った。大阪府警の捜査については「あまりに早い段階で容疑者を絞り、必要な捜査を怠った。無理な取り調べもあった」と批判。「検証のため取り調べの可視化が必要」と語気を強めた。【伊藤直孝】
◇事件の経緯◇
 02年4月14日夜、大阪市平野区のマンション一室から出火し、焼け跡から主婦の森まゆみさん(当時28歳)と長男瞳真(とうま)ちゃん(同1歳)の他殺体が見つかった。まゆみさんは森被告の妻の連れ子と結婚して暮らしており、検察側は、まゆみさんに恋愛感情を募らせた森被告が思いを拒まれるなどしたため憤って絞殺し、瞳真ちゃんを浴槽につけて水死させたうえ、室内に放火したとして、殺人、現住建造物等放火罪で起訴した。1審・大阪地裁は05年8月、状況証拠から有罪認定して無期懲役を言い渡し、2審・大阪高裁(06年12月)も有罪として「被告は反省しておらず、更生の可能性はない」と死刑を言い渡した。
◇解説…状況証拠評価、裁判官も割れる
 死刑判決を破棄した最高裁判決だが、裁判官5人の見解は割れた。小法廷の考え方となる多数意見は3人にとどまり、那須弘平裁判官は「有罪の余地あり」と意見を述べ、堀籠幸男裁判官は「被告の関与は十分立証されている」と反対意見で1、2審の有罪認定を支持した。裁判員制度導入で市民が死刑判決に関与するかもしれない中、状況証拠のみで有罪・無罪を判断する困難さが改めて浮き彫りになった。
 判決は「直接証拠がある事件でも、状況証拠のみの事件でも有罪認定の基準は変わらない」とした07年の最高裁判例を引用し、状況証拠のみの事件では「被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が必要」と基準を示した。そのうえで現場に残された吸い殻を立証の柱とした検察側の主張について、捜査の不十分さを指摘し「有罪認定のレベルに達していない」と批判した。裁判員制度を念頭に慎重な捜査、審理を促したと言える。
 しかし堀籠裁判官は、国民の健全な良識を刑事裁判に反映させることが裁判員制度の目的として「今回の基準は不明確。裁判官の認定手法を裁判員に求めることは避けるべきだ」と指摘した。一方、藤田宙靖裁判長は「手放しで『国民の健全な良識』を求めることが制度の趣旨と言えるかは疑問。基準を明示することは法律家の責務」と反論。基準に対する見解も分かれた。
 和歌山毒物カレー事件(98年)や仙台・筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件(00年)でも状況証拠による立証が争われたが、被告の有罪が確定した。今後、直接証拠がないとされる埼玉・千葉と鳥取の連続不審死事件などが裁判員裁判で審理される。裁判員が判断に迷う場面が予想され、捜査当局は従来以上に十分な証拠集めと説得力のある立証活動が求められ、裁判官も評議の工夫を迫られている。【伊藤一郎】(毎日新聞 2010年4月27日 22時1分)
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死刑求刑の被告に無罪判決 鹿児島夫婦強殺事件/10人の真犯人を逃すとも1人の無辜を罰するなかれ2010-12-10 | 被害者参加・裁判員裁判 / 検察審査会
舞鶴 高1女子殺害事件 中勝美被告に無期懲役判決/関連:和歌山毒物カレー事件・鹿児島夫婦殺害事件2011-05-18 
和歌山毒カレー事件

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「オンカロ」地下500? 核のごみ隠す/原発から出た放射性廃棄物を、無害になるとされる10万年後まで保管

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【特報】中日新聞2011/5/26Thu.
地下500? 核のごみ「隠す」
 大惨禍を引き起こすまで「思考停止」に陥っていた原発政策。「推進」「脱」を超えて、目をそらさないでほしいのが核燃料廃棄物の最終処分問題だ。最終的には地下深い岩盤に埋めるが、受け入れ先は決まらず、「地震大国」ゆえに半永久的に安全管理する適地も多くない。原発を稼動し続ける限り、危険な放射能の害はたまり続ける。先々の世代にまで核の後始末を押しつけていいのか。


フィンランド最終処分場
 雪が降り積もった凍土を、トナカイがゆったりと歩く。壮大な自然の光景に見とれていると、カメラは洞窟のような工事現場に移る。地下500?まで強固な岩盤を掘削して建設される、フィンランドの高レベル放射性廃棄物の最終処分場だ。
 今、話題のドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」は、世界初の最終処分場がテーマ。原発から出た大量の放射能が無害になるとされる10万年後まで、果たして廃棄物を銅と鉄の特殊な容器に入れて安全に保管し続けられるのか。マイケル・マドセン監督が政府関係者や専門家にインタビューを重ねる。
 処分場は首都ヘルシンキから北西240?、オルキルオト原発から東に約1?の場所にある。名前は「オンカロ」。フィンランド語で「隠し場所」という意味だ。現在は調査施設を造り、2020年から操業予定だ。
 放射能の危険から未来の人類を守るにはどうすればいいか。映画の中で専門家らは「隠し方」を大真面目で議論する。
無害になるまで“10万年”
 「10万年後は次の氷河期をへて別の人類がいて、危険標識の言葉は通じないかも」「恐怖感を感覚で伝えるのにノルウェーの画家ムンクの絵『叫び』を使っては」・・・。
 配給元のアップリンク(東京都渋谷区)によると、福島第1原発の事故で4月の上映開始から東京など17館で約2万人が鑑賞した。今後、シネコンも含めた全国60館で上映が予定され、自主上映の問い合わせもひっきりなしだという。
 中部地方でも、名古屋市千種区今池の「名古屋シネマテーク」で28日から6月17日まで、浜松市中区田町の「シネマe-ra」で8月13日から3週間上映予定など主要都市で公開される。
 映画の中である専門家は「原発への賛成、反対は関係ない。放射性廃棄物という、現存する危険に取り組む必要がある」と語る。政治的なメッセージはない。伝わるのは「十万年」という永遠と同等の時間の重みだ。
 「廃棄のリスクがあまりにも大きすぎることを知り、呆然とした」などと、配給元には観客の感想が続々と寄せられている。
 フィンランドは人口540万人。同国在住のジャーナリスト、靴家(くつけ)さちこさんは、「電力の約3割を原子力で賄う原発推進国。今、5基目となる世界初の160万キロワット級新型炉を建設中」と話す。
 福島の事故への反応はどうだったか。「チェルノブイリ事故の記憶から『恐ろしいことが起きた』と瞬時に反応した。薬局からは安定ヨウ素剤が消えた。でも、地盤が固く地震も少ない国で、ドイツのような脱原発の動きは出てきていない」
 それでも情報隠しが次々と明らかになる日本とは異なり、「情報公開を徹底して、透明性を保とうとしている」と靴家さん。事故があると、地元住民の問い合わせ先として、担当者と携帯電話の番号まで公開される。
 最終処分場の存在はほとんどの国民が知っているはずだというが、注目されていない。
 建設中のオンカロは「日本の原発立地事情と同じく人口が少ないへんぴなところにある。地元は雇用が増えると賛成した」と話す。
「サイクル路線」日本 行き詰まり
 なぜフィンランドが、世界で初めて最終処分場の建設に着手したのか。
「将来起りそうな問題を予見し、事前に処理する。放射性廃棄物についても万全の対策を講じようとした」と語るのは、北欧諸国の事情に詳しい「スウェーデン社会研究所」の須永昌博所長だ。
 フィンランドは、独自技術で原発を推進する隣国スウェーデンと連携してきた。最終処分場も、計画自体はスウェーデンのほうが先行していた。同国での着工予定は13年だ。原発は世界30ヵ国に432基あり、フィンランドは4基(世界18位)、スウェーデンは10基(10位)だ。須永氏は「産業を振興していくためには原発が必要と判断した」と解説する。
 それでも国民からは未解決の最終処分問題に疑問の声が上がり続けた。両国政府がいち早く処分場の選定に取り組んだことが、国民的議論を巻き起こしたともいえる。
 スウェーデンは1980年、国民投票で原発の是非を問い、条件付き賛成が6割、反対は4割。反対の主な理由が処分問題だった。当時の国会は、10年までに全廃する方針を決めたが、09年、現状の10基体制の維持へと転換。フィンランドも、5基体制で行くことになっている。
 一方、日本では使用済み核燃料の処分方法が確立されないまま、54基もの原発が立っている。使用済み核燃料から核物質のプルトニウムとウランを取り出し、燃料として再利用する「核燃料サイクル路線」を推し進めてきたものの、行き詰まっている。
 青森県六ヶ所村の再処理工場はいまだに稼動していない。六ヶ所村と全国の原発施設には、使用済み核燃料が福島第1原発の事故前で約1万6千300?もたまっている。
 仮に再処理ができたとしても、高レベルの放射性廃棄物が残る。再処理せずに捨てる「直接処分方式」のフィンランドと同様、最終処分の問題はついて回るわけだ。


 処分事業を担う「原子力発電環境整備機構(NUMO)」の計画では、まず放射性廃棄物をガラスと混ぜて金属容器に流し込み「ガラス固化体」(高さやく1・3?、直径約0・4?)を作る。
 これを30〜50年間冷やした後、300?以上の地下の岩盤に埋める「地層処分」とする。その際、鉄製の容器や粘土固めなど「4つのバリアー」で閉じこめて「ガラス固化体と地下水が少なくとも千年間は接触しないようにする」という。
地下水、活断層・・・適地探しは困難
 だが、豊富な地下水と活断層に覆われた日本で適地を探すのは難しい。
 今、六ヶ所村などに貯蔵するガラス固化体は千7百本。国内の使用済み核燃料をすべて再処理すると約2万4千百本に上り、さらに年間で千3百〜千6百本増えていく。
 原発大国の米国でも、使用済み核燃料は行き場を失っている。ネバダ州ユッカマウンテンで処分場建設が決まったが、地元の反対などでオバマ大統領が白紙撤回した。
 舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)は「米国は原発の敷地が広いから貯蔵する中間処理施設を造ってためておけるが、日本では地元の理解を得るのは難しい。最終処分場選びはもっと困難だ」と指摘する。
 須永氏は「福島の事故を機に原発をやめるのかを徹底した情報公開によって国民に問うべきだ」とし、こう促す。「もし脱原発に向かったとしても、既にたまった放射性廃棄物の処理の問題は残る。日本は技術面、情報公開のあり方などをフィンランドから学ぶべきだ」 *強調(太字)は来栖
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高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
 文明転換へ覚悟と気概 週のはじめに考える
中日新聞【社説】2011年5月8日
 東日本の巨大地震からまもなく二カ月。連日の余震となお遠い復興への道のり。私たちが問われているのは、文明転換への覚悟と気概のようです。
 なかば義務感にかられて、北欧フィンランドに建設中の放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」を見に出かけました。
 多くの国際賞受賞のこの記録映画の配給元は「アップリンク」。今秋公開の予定でしたが、四月、東京・渋谷の自社劇場で上映したところ連日の行列と満席、全国各地の五十館以上での上映へと広がっていったそうです。前例のない反響、福島第一原発事故で国民が原発問題に真正面から向き合うようになったことがわかります。
 高レベル放射性廃棄物は世界に二十五万トン、危険性が消えるまでには十万年。「オンカロ」はフィンランド語で隠し場所を意味します。廃棄物を凍土奥深くの岩盤に埋め込む世界初の試みです。管理可能か、明快な回答を持ち合わせる専門家はいませんでした。
*人間支配が及ばない
 日本列島が現在の形になったのは一万年前、人類が文明をもったのはたかだか五、六千年前です。十万年は人間のリアルな思考や言葉が及ぶ時空域ではありません。人間が制御できないという絶望感。静かな画面は、人類が手にしてしまった原発の恐怖と不気味さを伝えていました。
 続いて、菅直人首相が浜岡原発の全炉停止を要請しました。法的手続きではない政治判断でした。
 東京から百八十キロ、名古屋から百三十キロ。東海地震想定域の真上の浜岡原発は「世界で最も危険な原発」と呼ばれてきました。事故の場合の被害は福島原発の比ではなく、首都圏の一千万人の避難や首都喪失も想定されました。
*やむをえぬ浜岡の停止
 マグニチュード9・0の巨大地震は、日本列島を東西に数メートル引き伸ばし、首都直下型や東海、東南海・南海地震誘発が憂慮されます。浜岡原発停止はやむをえぬ判断でしょう。全原発に及ぼすべきかどうか、そこが問題です。
 浜岡を含め日本の原発は五十四基、電力の30%を占めるようになっています。すでに原油枯渇の兆候があり、太陽光や風力のクリーンエネルギーへ転換させるにしろ、先行きはなお不透明です。電力の安定供給のためには原発は不可欠という状況です。
 原発停止による生活レベルの一九七〇年代への後退は許容できるにしても、グローバル競争の落後者になる恐怖に打ち勝てるかどうか。私たちは無限の成長を前提にした近代世界の住人。文明転換の勇気をもてるかどうかです。
 地質学の石橋克彦神戸大名誉教授は、地震と原発が複合する破局的災害・「原発震災」の概念や言葉を提唱、浜岡原発の廃炉を訴えるなど警告を発してきました。
 「世界」や「中央公論」の誌上には「日本列島全域が今世紀半ばごろまで大地震活動期」「原発は完成された技術ではない」「人間の地震に関する理解は不十分」「地震列島に五十基以上の大型原子炉を林立させることは暴挙」とも書いています。警告通り、福島原発の大損傷が発生してしまいました。
 「原発震災」は人間存在への問いかけだったのでしょう。教授が提言したように原発総点検、リスクが高い順の段階的閉鎖・縮小が現実路線のように映ります。世界観を変えるには覚悟と決意、気概がいります。
 日本を代表する東北の農漁業。その被害も甚大でした。食料問題も原発に劣らない不安で重大な問題。世界の食料品価格が高騰、二〇〇八年のリーマン・ショック時を上回っているからです。
 食料価格高騰は投機と「将来の供給不足懸念」が要因とされるだけに深刻です。コメと野菜こそ90%台と80%台の自給率を保っているものの、小麦は10%台、大豆やトウモロコシはほとんど輸入しています。命にかかわる問題です。農業の復興と立て直し、食料の自給は急務です。
*新しい幸せと充実が
 失われたコミュニティーの復元や修復も大切なテーマ。震災は、私たちがそれぞれが独立しながらも、結局は支え合い、助け合って生きていくものだ、ということをあらためて気づかせてくれました。それは、ボランティアに向かう若者の行動にも表れました。
 極限状況にあっても、人間はなお優しさや思いやり、勇気や忍耐を示す存在でした。献身や自己犠牲も。それは私たちの未来へ向けての大きな希望でした。
 経済的繁栄や快適な生活とは別次元の幸せと充実。それが追い求める内容かもしれません。私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。 *背景色着色は来栖
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使用済み燃料 大量に
中日新聞2011/5/7Sat.夕刊
 政府の要請を受けて浜岡原発が全面停止しても、建屋内には使用済み燃料が大量に残る。このため、想定外の地震や津波が起きた際の危険性はすぐには去らない。
 核燃料は、燃料棒を束ねた燃料集合体を一体とし、使用後も原子炉建屋内のプールで貯蔵される。冷却のために最低でも2年弱は保管され、青森県六ヶ所村の再処理工場や海外などに運ばれる。
 中電によると、3月末時点で浜岡原発1〜5号機に保管されている使用済み核燃料は計6625体。福島原発の事故を受け、中電は緊急対策として冷却機能を保つための非常用ディーゼル発電機を建屋屋上に設置した。(略)
 榎田洋一名大院教授(原子力工学)は「原発を全面停止しても、使用済み燃料は発熱が続く。外部に移すにも、安全性が整った施設に限られており、簡単に運び出せない。国内の原発からは、六ヶ所村だけで処理しきれない量の使用済み燃料が出ており、長期的に手だてを考えなければならない」と話している。
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 

吉田文さんのコンサート/ 『なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか』森炎著 幻冬舎刊

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〈来栖の独白〉
 本日、芸術劇場へ行き、吉田文さんのパイプオルガン演奏を聴いた。その後、いつものように家人(近くにオフィスあり)と食事。更にその後、三省堂で本を物色。
 東大法学部卒、東京地裁、大阪地裁などの裁判官を経て、現在弁護士・・・といった著者の経歴から、ま、いいか(悪い本でもなかろう)、と『なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか』を買った。
 が、やはり、この買い物は失敗。過去から現在に至る死刑事件を、年代順に駆け足で書き出している。裁判官だったというが、清孝の事件も、昔のメディア報道をなぞって、走り書き。「被害者は22人に上るとも言われている」とのお気楽さ。薄い新書版であるので、致し方ないのだろうが、これなら何も、本にするまでもない。Twitterでも事足りる。元裁判官であるなら、資料に当たり、読み込んで戴きたいものだ。すべての事件を概観し、そのなかから、なぜ日本人は世界の中で死刑を是とするのか、を論じるなど、新書でやれることではない。
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 吉田文さんのコンサートは、満足できるものだった。芸文センターの「彼女」(パイプオルガン)の音色は、力強く華やかだ。日本最大級の大きさだという。
 今年に入って、私はバッハに回帰!した。精神的に疲労感が強いこともあって、こんなときはバッハに依り頼む。本日の吉田さんの演奏曲目にも、バッハが2曲あった。そのなか、「G線上のアリア」をリクエスト(事前に葉書で)なさっていた方が「涙がでました」と書かれていたが、ほんとうに、そうだ。美しい曲。こんな美しい音楽を生み出す人類が、一方では原発をやり、無辜の動物たちを死に追いやる。そのあわいで、私は心萎えないわけにいかぬ。音楽が美しければ美しい故に、私は深く落ち込む。

「誰が小沢一郎を殺すのか?」日本の人格破壊システム/政治資金規正法を皆さん勘違い

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政治資金規正法を皆さん勘違い。小沢さんがいなくなることはプロの政治家がいなくなること=安田弁護士2011-01-08 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 7/19緊急シンポジウム!! ''ニッポン''は何を守ろうとしているのか!H.22-06-08 
 「唯一はっきりしている条文があるんです。政治資金規正法で処罰されるのは、会計責任者だけなんです。政治家は処罰されないんです。政治家は処罰の対象から外れているんです。始めから、そういう法律なんです。そもそも法律の目的というのは、会計責任者が責任を持って会計の結果について報告する、ということが義務付けられているんです。ところが皆さん、勘違いしている。小沢さんが秘書と一蓮托生で処罰されるべきだと。これほど法律違反、法律の主旨に反することは、ないんです。つまり、どこかで法律が歪められて、トリッキー歪められて、つまり、政治資金規正法は政治家取締法なんだというふうに完全に勘違いしている。この勘違い、実は検察審査会も、まったく同じ評決をしているわけですね。小沢さんは、これだけ権力を持っている人間が、小沢さんの指示なしに物事が行われるはずがない、と。しかし法律の枠組みは、およそそんなことは無いんです。もし小沢さんが有罪になるとすればですね、責任者との共犯なんです、あくまでも。単に、知っていたとか、報告受けていたとか、そんなことでは共犯になるはずありませんね。これは、税理士さんが「これで申告しますよ」と言って「ああ、はい、どうぞ」って言ったら共犯になるか、といえば、そんなことはないわけなんです。ですからもし小沢さんが共犯になるとすれば「おい、石川、こうやれ」という形ですね。「こうやらんと許さんぞ」と、指示・命令、絶対的に服従させたと、そういう場合に初めて共犯として存在する。それを皆さん、完全に誤解している。大変な誤解(笑)。それで、皆さん、恐らくテレビなどで論評していらっしゃる。
 次の問題です。政治資金規正法の中に、何を記載せよとか、どのような会計原則に則れとか、何一つ書いてないんです。ですからたとえば、ちょっとお金を借りましたとか、立て替えて貰いましたとか、或いは、今日帳簿に載せるよりは来年のほうに載せとこうか、というような話は、本当に虚偽記載になるのかどうか、或いはそれを載せなければならないのかどうか、それさえもあの法律の中には書いてないんですよ。つまり、虚偽を記載してはいかん、という話だけなんですよ。何が虚偽なのか、さえ書いていない。しかしそれを検察が勝手に解釈してですね、例えば今回の場合の、今年載せずに来年載せたということが犯罪だと、虚偽だと、やったわけです。或いはAという政治団体からお金貰った、それを実はこうだった、違う人だった、と言って、それは虚偽だというわけですね。しかしAという政治団体を通して貰ったんだから、それを記載するのは当たり前の話でして、それを虚偽といえるかどうか、それこそ大変大きな問題なわけです。ですから小沢さんの一昨年の問題、或いは今年の問題、いずれも法律の解釈を彼らがやって初めて有罪に出来るだけの話でして。ですから立法者の条文とは違うんですね。
 ですからこの間(かん)も法律が守られずにどんどんどんどんきている。今回典型的なことはですね、石川さんが逮捕されました。しかしその2日後、3日後ですかね、3日後には国会が開かれるわけです。国会が開かれた場合、国会議員を逮捕するためには国会の議員の議決の承諾がないといけないわけなんです。それを抜き打ち的に、先達する形で石川さんを逮捕する。これは立法権に対する侵害じゃないですか。つまり憲法違反の事を彼ら、やっているわけです。つまり憲法に違反している行為に対する批判がどこにもない。これは、私ももう、大変びっくりしたわけです。
 検察はしっかりと政治をやっている、というふうに私は理解しているんです。例えば今回、石川さんの弁護をやっていて3日目か4日目ですかね、あ、検察はこれを狙っているな、というのは大体、私も、石川さんが検察にどういうことを言われているかというのを聞いて分かるんです。
 つまり検察は小沢さんを逮捕することは恐らく不可能だろうと最初から思った。しかし検察審査会で勝負をかける、ということを彼らは考えている。彼らのやり方はこうだな、と。検察審査会で起訴相当を取ることによって小沢さんの政治生命を奪う、と。そのシナリオ通りに見事に小沢さんの政治生命はなくなってしまった。ま、これが今回のシナリオでですね。小沢さんを直接起訴すれば当然全面戦争になってしまうわけでして。むしろ国民を総動員して、或いは市民という名を、怒れる11人の市民を使って小沢さんの政治生命を奪うという戦術に彼ら、でてきた。
 で検察審査会も、トリック、ま、検察審査会には助言者といってですね、弁護士がその場に同席していろんな助言をするわけです。法律の解釈とかそういうものを。恐らくその助言者がとんでもない助言をしたんだろうと思うんです。どういうことかというと、政治資金規正法は政治家の犯罪、取締法なんだという解説をしたんだと思うんです。
 ですからとんでもない、検察でさえ起訴しなかったものを検察審査会が起訴相当という結論をだしたんだろうと、そしてそのことを検察は最初から予想、予定していたんだろうと、そう思うわけです。
 先に、情緒的な風潮の中で有罪無罪が決まっていくと、そういう話がありましたけど、私は思うんですね。弁護士は弁護士として、政治家は政治家として、メディアの人間はメディアの人間として、それぞれの人間がプロ的な精神を持ってそれぞれの職責を全面的に発揮すれば、おそらくこんな体たらくな状態にはならんだろうと思うんです。法廷でも、捜査段階から弁護士が弁護人として責任をしっかりと果たせば、恐らく情緒的な社会の動きに対してたえることが出来る、或いは十分に弁護して勝つことが出来るだろうと思うんですね。
 プロ性がどんどん抜けていく、今回の政権交代でも、ま、アマチュアの集団というか、益々プロがなくなる。小沢さんがいなくなることは、プロがいなくなる、そういうことだろうな、と。崩壊の社会が来たな、と。プロが居なくなるということは、結局情緒的なものに流されるし、或いは、世間の風潮に流される、とこういう時代に益々突入したな、と思っているんです。
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「誰が小沢一郎を殺すのか?」 日本の"人格破壊"システムとは
NCN 6月1日(水)17時42分配信 tweets 217  「誰が小沢一郎を殺すのか?」――この謎を紐解くと、日本の真の姿が見えてくる。ジャーナリストの上杉隆氏は2011年5月27日、ニコニコ生放送で『誰が小沢一郎を殺すのか? 画策者なき陰謀』(角川書店)を先日上梓したジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏とスカイプ中継でトークセッションを行った。ウォルフレン氏は、政治家・小沢一郎を取り巻く環境を、日本特有の「人格破壊」システムであると指摘し、問題提起した。
 ウォルフレン氏の最新刊『誰が小沢一郎を殺すのか?』は、民主党・小沢一郎氏の波乱に満ちた政治家人生を分析し、そこから浮かび上がる日本独特のシステムや日本人のネガティブな一面を浮き彫りにした本である。日本の政治を30年以上見つめ続けてきた外国人記者ならではの、客観的かつ冷静な視点が光る、珠玉の日本人論にもなっている。
 小沢一郎を"殺す"存在――それは官僚・マスコミ・検察に代表される「非公式権力」であるとウォルフレン氏は語る。小沢氏は1993年に自民党を飛び出し、新生党を結成。それが結果的に55年体制の崩壊につながった。改革派として一気に政治の表舞台に立った小沢氏に、"官"は徹底的な圧力をかけ、マスコミはネガティブキャンペーンを展開したと指摘する。ウォルフレン氏はこの「圧力」は日本特有のものであるとし、これを「人格破壊」という言葉で表現。この「人格破壊」によって、小沢氏は政治家としての命をじわじわとはぎ取られることになった。それがウォルフレン氏の言う、"殺す"ということだという。
 さらに上杉氏から「なぜ、非公式権力は小沢一郎の人格破壊を行ったのでしょうか?」と質問を受けたウォルフレン氏は、「第一にそれが日本の慣習であるから」と回答。「変化を望まず傑物を嫌う」日本のネガティブな慣習――。それは、「アメリカからの独立」を掲げ表舞台に登場した小沢氏を嫌ったアメリカによる外圧と合わせて、過去にないほど大掛かりな「人格破壊」につながったという。だからこそ、今回の著書では小沢氏を「象徴」として取り上げたのだ、と。
 上杉氏はまた「93年以前からウォルフレン氏は『人格破壊』をする日本のシステムの問題点を指摘しており、自らも学生時に著作に触れて影響を受けた」とウォルフレン氏の先見性を高く評価。非公式権力による「人格破壊」は小沢氏だけではなく、表舞台に登場し行動してきた、あらゆる"改革者"が通ってきた日本のシステムであるという解釈を示した。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]ウォルフレン氏登場部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv49780531?ref=news#14:00
(村井克成)
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前原誠司外相辞任と『誰が小沢一郎を殺すのか?』〈カレル・ヴァン・ウォルフレン著〉2011-03-07 | 政治/検察/メディア/小沢一郎 
〈来栖の独白2011-03-07 〉
 前原誠司氏辞任劇に接し、またもやありふれた光景が繰り返されていると慨嘆する。「検察当局の横暴が政治を翻弄する」という、これまで幾度も目に映った光景だ。
 当局は、「政治家」が嫌いである。当局にとって、菅政権も前原氏もアメリカ追従であり、おとなしいポチには違いないが、自民党に比べれば遙かに安定感を欠く。官僚の下位に位置する法律(政治資金規正法)を使って、一気に民主党を政権の座から追い落とそうとした。
 小沢一郎氏に比べれば、前原氏など、脆いものだ。
 検察とマスコミの口車にのって思いっきり小沢氏排除を進めてきたやり方が、いま、菅政権の首を絞める。
 カレル・ヴァン・ウォルフレン著『誰が小沢一郎を殺すのか?』から、見てみたい。
p47〜
 歴史が示すように、日本では政党政治は発展しなかった。しかも1世紀以上を経たいまなお、それはこの国にとって大きな問題であり続けている。だからこそ民主党は与党となっても悪戦苦闘を続けているのだ。政党政治が発展しなかったからこそ、軍事官僚が、当時の日本の10倍にも達する産業基盤を有する国アメリカを相手に戦争をはじめても、それに対して日本はなんら対処することができなかったのだ。
p48〜
 小沢氏をはじめとする改革派政治家たちはみな、彼らにこそ国家を運営する権利があり、義務があると信じている。官僚が国に滅私奉公する善なる存在であるなどと、彼らはもちろん考えてはいない。我々が一歩退いてみるとき、小沢氏のような政治家をつぶそうとするメカニズムは、近代国家の道を歩みはじめたばかりの当時の日本で、すでに機能していたことがわかる。つまり日本の近代化が推し進められるのとときを同じくして、政治家に対する陰謀も進行していったということだ。そして小沢氏こそ、この百数十年もの長きにわたり、連綿と続けられてきた陰謀の犠牲者にほかならないのである。
p50〜
 そして体制の現状維持を危うくする存在であると睨んだ人物に対して、その政治生命を抹殺しようと、日本の検察と大新聞が徒党を組んで展開するキャンペーンもまた、画策者なき陰謀にほかならない。検察や編集者たちがそれにかかわるのは、日本の秩序を維持することこそみずからの使命だと固く信じているからである。そして政治秩序の維持とは旧来の方式を守ることにほかならない。そんな彼らにとって、従来のやり方、慣習を変えようとすることはなんであれ許しがたい行為なのである。この種の画策者なき陰謀で効果を発揮するツールこそがスキャンダルである。そして検察や編集者たちは、そのような人物があらわれたと見るや、まるで自動装置が作動しているのではないかと思えるほどに、予想に少しも違(たが)わない反応を見せる。
p60〜
 欧米諸国を参考とした大日本帝国憲法もほかの法律も、専制的な権力から国民を守ることを想定したものではなかった。つまり日本の当局は欧米の法律を参考にしはしても、その「精神」を真似ることはなかったというわけだ。そして今日、もちろん不当なあつかいから国民を守るべきだという理念はあり、それが過去数十年で強められてきてはいても、現実には、それはいまなおきわめて曖昧模糊とした感情の領域に押しとどめられている。そのため大抵の日本人はいまだに、法律というのは単に政府が人々の行動を抑制するための手段なのだ、と見なしている。これに関して忘れてはならない事実がある。東京大学法学部というのは、日本の政治システムの最上部を占める高官を輩出することで知られているわけだが、その教授陣はいまだに法律を官僚が統治に利用する手段にすぎないととらえている。そして彼らはそうした視点に立って、学生に教え続けているのである。要するに、時代が変わったとはいえ、法律は権力エリートが用いるツールであるとする見方は、日本では以前とまったく変わっていないということなのだ。
 また日本の官僚たちの間では、自分の目的を達成するために、法律のなかから適切なものを選び出すという習慣が長いこと続いてきた。そして自分たちの計画が法律の文言に抵触しかねない場合は、実に巧に新しい解釈を考え出す。このように日本では、法律というのは当局にとって、あくまでも秩序を維持するためのツールでしかない。そのため、国民みずからが与えられているはずの権利を政治システムの上層部に対して主張する目的で、法律を利用するよう奨励されているなどということは決してないのである。
p64〜
 1960年代と70年代に日本の政治、そして権力構造について研究していた時期、私はそのようなやり方が繰り返し行われていることに気づいた。だからこそ日本の政治・経済について初めて執筆した著書〔『日本/権力構造の謎』〕のなかで、「法を支配下におく」という1章を設けたのだ。
 私はそのなかで、権力者の独り歩きを可能にするような方法で、日本では法律は支配するのではなく、支配されているのであって、この国の権力システムにおいて、法律は政治に関して許容すべきこととそうでないことを決定づける基準にはなっていない、と説いた。すなわち独り歩きをする日本の権力システムに対して、異議を唱え、改革を加えようとする者を阻止するような仕組みがある、ということだ。本書のテーマに当てはめて解説するならば、小沢氏のような野心的な政治家、あるいは彼のように改革を志す政治家が将来何人あらわれようと、現体制はあくまでそれを拒むというわけだ。
 いま、小沢氏の政治生命を抹殺しようと盛んにキャンペーンが繰り広げられているのも、これによって説明がつく。
p65〜
 99・9%という「無謬」
 中立的な権威としての法律を日本の政治システムから遠ざけておくやり方はそのほかにもいくつかある。法律が非公式な政治システムに対して、なんら影響をおよぼすことが許されないとしたら、ではなにがシステムをつかさどっているのか?。それは暗黙の了解事項、つまり不文律であり、記憶のなかで受け継がれる古い習慣だ。裁判官もまた体制に大きく依存している。最高裁事務総局に気に入られるような判決を下さなければ、地方に左遷されかねないことを、彼らは考えないわけにはいかない。戦前、戦後を通じて日本の裁判官たちは、法務省のトップクラスの検察官を恐れてきた。これが99・9%という人間の検察の有罪判決率を可能にした理由の一つである。
 つまり、みずから裁判にかけたケースで99・9%の勝利をおさめるに日本の検察は、事実上、裁判官の役割を果たしているということになる。つまり、日本ではわずか0・1%、あるいはそれ以下に相当するケースを除いては、法廷に裁判官がいようといまいと、その結果に大した違いはないということだ。
p68〜
 しかし日本に関してもうひとつ気づいたことがある。それは社会秩序を傷つけかねないどんなものをも未然に防ぐという検察の任務が、政治システムにおいても重視されているという事実だ。当然、そのためにはシステムの現状を維持することが必要となる。問題は、現状をわずかでも変える可能性があると見れば、どんな人間であっても既存の体制に対する脅威と見なしてしまうことである。そのような姿勢は当然のことながら、小沢氏のみならず、日本という国家そのものにとっても望ましいものではない。なぜならば多くの日本人は長い間、権力システムの改革が必要だと考えてきたからだ。後述するが、自民党と日本の秩序をつかさどる人々との間には、一種、暗黙の了解のようなものがあり、それが50年にわたって保たれてきたのだろう。そして自民党が政権の座を追われたいま、単に自民党とは行動の仕方が違うという理由で、体制側は民主党を、小沢氏という個人とともに、脅威を与える存在と見ているのだ。
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未曾有の大震災の直前に小沢一郎を排した、この国の不幸/小沢一郎の日本再造計画2011-05-05 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
 【カレル・ヴァン・ウォルフレン(ジャーナリスト)インタビュー】 
ゲンダイネット2011年5月2日
菅政権は東電と保安院に動かされている
「誰が小沢一郎を殺すのか?」(角川書店)――オランダ人のジャーナリスト、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の著書が話題だ。小沢一郎という異能の政治家を検察、メディアに代表される旧勢力がよってたかって潰そうとした事実が詳細に明らかにされている。小沢氏は民主党の党員資格を剥奪されて、表舞台から去った途端に大震災が起きた。右往左往の菅政権を冷徹なジャーナリストはどう見ているのか。
 小沢一郎氏はいま日本の超法規的な権力といえる官僚や検察、また大手メディアから政界を追われる身にあります。日本は民主国家であるはずですが、非公式な権力によって小沢氏の政治力は奪われ、おとしめられようとしています。
 彼は何度か首相の座に就くチャンスがありましたが、非公式権力が団結してそれを阻んできたのです。個人的には、小沢氏には政界の中枢で動いてほしい。多くの国民は彼の時代は終わったと思っているでしょうが、今こそ日本は彼のような強いリーダーシップを持った政治家が必要なのです。
 それは東日本大震災によって壊滅的な打撃を受けた被災地と原発事故の対応で、菅政権が行政コントロールを失ったかのような印象を内外に与えたことでも明らかです。もし小沢氏が首相であれば、統括的な政治力を発揮していたことでしょう。
 というのも、福島の原発事故で東京電力と原子力安全・保安院は政治家との関係構築がうまくゆかず、むしろ首相官邸が彼らに動かされてしまった。これこそが、小沢氏がもっともあってはならないと考えていたことだからです。政治主導といいながら、政治家が既成の権力にひれ伏した証拠なのです。小沢氏であれば、こうした状況でこそ既成権力のいいなりにならなかったと思います。
 今回の震災では、日本人の忍耐強さが世界中の人たちから驚嘆されました。オランダのテレビ局は「なぜ日本人は盗みをしないのだ」と聞いてきました。日本人は良識の民です。
 菅政権の全体的な震災対応は及第点をつけられるかもしれません。ただそれは、1995年の阪神・淡路大震災時の自社さ政権の対応と比較してという条件においてです。
 率直に言えば、日本政府の対応は全体を統括する行政力が不足しています。官邸と関係省庁との連携が円滑でないばかりか、地方自治体への情報伝達や物資の輸送など必須の危機管理体制が整備されていなかった。
 私が力説したいのはここです。どの国家もこの地震ほど大規模な災害を被ることはそうはありません。ただ首相が強いリーダーシップを発揮して、政治力を十分に機能させれば、地方自治体やさまざまな団体、組織を統制でき、今よりも効果的な結果が出せたはずです。
 今後、日本が抱える課題は、被災地をどう復興させるかです。
 東北地方の再開発は原子力ではなくソーラーを基礎に、全産業を取り込んだ計画を策定すれば、ソーラー技術のさらなる発達が期待できます。ただ、日本はいまだにアメリカの準植民地という立場にいます。独自の外交政策を策定し、実践してはじめて独立した民主国家になれる。それを実現しようとしているのが小沢氏なのですが、国民だけでなく権力機構からの反発がある。それが残念なことです。(インタビュアー・堀田佳男)

「赤ちゃん工場」ナイジェリア 人身売買目的

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「赤ちゃん工場」摘発 ナイジェリア警察、32人保護
中日新聞2011年6月3日 朝刊
 【ロンドン=松井学】ナイジェリア警察は一日、同国南部アバで病院施設を装って新生児を売買していた「赤ちゃん工場」を摘発したと発表した。人身売買用の子供を産ませるため監禁されていた十五〜十七歳の妊娠中の少女ら三十二人が保護された。英BBC放送が同日伝えた。
 警察によると、少女らは出産後に新生児一人につき現金百七十ドル(約一万三千七百円)を施設経営者から受け取ったと話している。その後、新生児は取引業者らに売られた。一方、経営者は施設の目的は望まない妊娠をした少女のための避難所だと主張しているという。
 ナイジェリアの人身売買を監視する国家機関(NAPTIP)は、「赤ちゃん工場」に監禁されていた少女らには、望まぬ妊娠をした少女を「無料で堕胎する」などとだまして誘い込むケースと、少女らを拉致して性的暴行し妊娠させるケースがあるという。また新生児の売買は児童就労や移植用の臓器摘出、性的虐待などが目的で、後を絶たないと指摘している。一部の部族社会では子供がいない女性が呪われた者とみなされるため、新生児を買って自分の子供と偽る事態も起きているという。
 国連児童基金(ユニセフ)は、ナイジェリアでは一日十人以上の子供たちが売買されていると推計している。

《ちらつく原発タブー》 不信任案否決されたが、「菅降ろし」なぜ起きた 

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ちらつく原発タブー 「菅降ろし」なぜ起きた
中日新聞 【特報(佐藤圭、小国智裕)2011/6/3Fri.】より抜粋 転写
*政策転換がきっかけに
 今回の「不信任案政局」を振り返ると、菅首相が原子力政策の見直しに傾斜するのと呼応するように、自民、公明両党、民主党内の反菅勢力の動きが激化していったことが分かる。
 首相は5月6日、中部電力に浜岡原発の原子炉をいったん停止するよう要請。同月18日には、電力会社の発電、送電部門の分離を検討する考えを表明した。
 さらに事故の原因を調べる政府の「事故調査・検証委員会」を設置することを5月24日に決定。翌25日には外遊先のパリで、太陽光や風力など自然エネルギーの総電力に占める割合を2010年代の早期に20%へと拡大する方針も打ち出した。(略)
*旧態依然権力の影
 実際、自民党の石原伸晃幹事長は6月2日、不信任案への賛成討論で「電力の安定供給の見通しもないまま、発送電の分離を検討」「日本の電力の3割が原発によって賄われているのに、科学的検証もないままやみくもに原発を止めた」と攻撃。菅降ろしの最大理由の一つが原発問題にあることを“告白”した。
 民主党内でも、小沢一郎元代表周辺が5月の大型連休後、不信任案可決に向けた党内の署名集めなど多数派工作をスタートさせた。5月24日には、小沢氏と、菅首相を支持してきた渡部恒三最高顧問が「合同誕生会」を開催。渡部氏は、自民党時代から地元福島で原発を推進してきた人物だ。
 日本経団連の米倉会長はこの間、首相の足を引っ張り続けた。浜岡停止要請は「思考の過程がブラックボックス」、発送電分離は「(原発事故の)賠償問題に絡んで出てきた議論で動機が不純」、自然エネルギーの拡大には「目的だけが独り歩きする」との発言を続けるという具合だ。
 金子勝慶応大教授は、福島第1原発の事故について「財界中枢の東京電力、これにベッタリの経済産業省、長年政権を担当してきた自公という旧態依然とした権力が引き起こした大惨事だ」と指摘する。
 金子氏は「不信任案政局」の背景をこう推測する。
 「管首相は人気取りかもしれないが、自公や財界がいちばん手を突っ込まれたくないところに手を突っ込んだ。自公は事故の原因が自分たちにあることが明らかになってしまうと焦った。それを小沢氏があおったのではないか」
*政権不手際に矮小化?
 戦後政治史を振り返ると、自民党と原発の関係は深い。
 1954年、当時若手衆院議員だった中曽根康弘元首相が、「原子力の平和利用」うたい、原子力開発の関連予算を初めて提出、成立させた。保守合同で自民党が誕生した55年には、原子力基本法が成立。その後の自民党の原発推進政策につながっていった。
 74年には田中角栄内閣の下で、原発などの立地を促す目的で、自治体に交付金を支出する電源三法交付金制度がつくられ、各地に原子炉を建設する原動力となる。
*今も続く蜜月関係
 自民党と電力会社の蜜月関係は今も続く。
 自民党の政治資金団体「国民政治協会」の2009年分の政治資金収支報告書を見てみると、9電力会社の会長、社長ら役員が個人献金をしている。
 東電の勝俣会長と清水正孝社長は、それぞれ30万円。東北電力の高橋宏明会長は20万円、海輪誠社長は15万円。中国電力の福田督会長と山下隆社長はそれぞれ38万円を献金している。
 会長、社長以外でも、東電では、6人の副社長全員が12〜24万円を、9人の常務のうち7人が献金していた。
・98年から昨年まで自民党参院議員を務めた加納時男氏は元東電副社長。党整調副会長などとしてエネルギー政策を担当し、原発推進の旗振り役を務めた。
 民主党の小沢元代表も、東電とは縁が深い。
 東電の社長、会長を務めた故平岩外四氏は、90年ら94年ま財界トップの旧経団連会長。90年、当時自民党幹事長だった小沢氏は、日米の草の根交流を目的として「ジョン万次郎の会」を設立したが、この際、平岩氏の大きな支援があったとされる。
 「ジョン万次郎の会」は、財団法人「ジョン万次郎ホイットフィールド記念 国際草の根交流センター」に名を変えたが、今でも小沢氏が会長で、東電の勝俣会長は顧問の1人に名を連ねている。「原発事故は神様の仕業としか説明できない」などと東電擁護の発言をしている与謝野薫経済財政相も、現在は大臣就任のため休職扱いだが、副会長に就いていた。与謝野氏は政界入り前に日本原子力発電の社員だった経歴もある。
 一方、電力会社の労働組合である電力総連は、民主党を支援している。労働組合とはいえ労使一体で、エネルギーの安定供給や地球温暖化対策などを理由に、原発推進を掲げてきた。原発で働いている組合員もいる。
 また電力総連は、連合加盟の有力労組であり、民主党の政策に大きな影響を及ぼしてきた。
 組織内議員も出していて、小林正夫参院議員は東京電力労組の出身。藤原正司参院議員は関西電力労組の出身だ。
 つまり、エネルギー政策の見直しを打ち出した菅首相は、これだけの勢力を敵に回した可能性がある。
 結局、菅首相は「死に体」となり、発送電分離や再生可能エネルギー拡大への道筋は不透明になった。
 「フクシマ」を招いた原子力政策の問題点もうやむやになってしまうのか。すべてを「菅政権の不手際」と矮小化させるシナリオが進行しているようにみえる。
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〈来栖の独白2011/06/03Fri.〉
 6月2日の菅内閣に対する不信任案は、鳩山さんによって否決、揉み消された(と私は感じた)。昨年、鳩山氏が自らの総理辞任に際し「『私も辞めます。小沢さんも退いてください』と言いいました」と語ったが、そのときと全く同じ感情が私の裡で湧きあがり、怒りを押さえるのに苦労した。
 国会の直前に俄かに会談、というのもあってはならないことだ。鳩山さんという人は、物事(この場合は「国会」)の直前に会った人(この場合は「菅首相」)の影響を最高度に受ける。この愚かで信頼性ゼロの鳩山という人物は、いい歳をして、こういったご自分の性格とか弱点に対する自覚もない。・・・そのように怒った私だったが、本日6月3日の中日新聞特報は、実に示唆に富んで、禁忌に触れることを恐れない勇敢な記事であった。小沢氏も渡部氏も原発に深く関与してきたことは知っていたが、まるで降って湧いたように行われた小沢氏と渡部氏の合同誕生会の理由が納得できた。
 ただ、附言しておきたい。菅直人という人物は、けっして反原発ではない。浜岡原発も、防波壁が完成して安全が保障されるまでの一時停止を要請したにすぎない。「防波壁を造る」とは、設備投資である。巨額の設備投資をさせた後に「廃炉」は絶対にあり得ない。つまり、設備投資もさせてより積極的に原発を推進させるという政策にほかならない。
 が、財界や政党、政治家の多くが、菅一流の言葉のマジックに迂闊にも引っかかってしまった。利潤追求という財界の性の故だろう、菅の「停止要請」を反原発宣言のように、早とちりしてしまった。いや、それとも、2〜3年の停止すらも許せなかったか。
 警戒しなくてはならない。「一定のメド」同様、菅という男は、言葉を巧に操る。確認書に具体的な何(期日・数字)も明記しないで済ませるような鳩山でなくとも、菅のマジックには多くの人がコロッと騙される。目晦ましに遭う。
 とりたてて名門の出というのでもなく市民運動をやってきただけの男が、一国の総理にまで成りあがった。たくみに政敵をつくり、それを踏み台にして成り上がる。並みの思考ではない。強運の持ち主でもあり、何ともあざとい男だ。
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アメリカの足の裏を舐めないと存続できない日本/米主導で原子力発電/発電用濃縮ウランの大半は米から輸入2011-05-30 | 地震/原発
 「目くらまし」を見抜けぬ愚民国家
田中良紹の「国会探検」2011年5月17日 18:07
 浜岡原発の停止要請は「目くらまし」だと前回書いた。ところがそれを「原子力政策の転換」と受け止める「おめでたい」論調が多いので呆れる。あのやり方はこの国の官僚が国民を支配するために使ってきた常套手段そのもので、見抜けなければ愚民と言うしかない。
 福島原発の深刻な事故は国民の反原発感情を揺さぶり、今後のエネルギー政策に大きな影響を与える事が予想された。そうした時に支配者が考える事は世論を無視して強行突破することではない。いかにも原子力政策を転換するように見せかけながら、実際には変更の幅を極力変えないようにすることである。そのため「浜岡原発」が利用された。
 官僚が「目くらまし」に使うトリックの道具は数字である。今回は「87%」という数字が使われた。「地震が起きる確立が87%」と言われると、感情でしか物事を考えない人達は「大変だ」と恐怖心が先に立つ。それでまともな思考が出来なくなる。支配する側はそれを狙っている。
 福島原発事故は地震の確率が0.1%の所で起きた。論理的に考えれば地震の確率と事故とはストレートに結びつかない。どこの原発も事故は起こる可能性がある。それをそう考えさせないために支配者は「87%」に目を向けさせ、愚民はそれに乗せられる。
 「87%」を問題にするなら、そもそもそんなところに原発を建設した事が間違いである。運転を停止しても地震が来れば放射能事故は起こる可能性があり、速やかに「廃炉」にするというのが論理的である。ところが菅総理が言った事は「安全策を講じるまでの運転停止」だった。それは「浜岡原発を継続する」と宣言したに等しい。
 なぜなら安全のために投資をしたら、投資をした後で「廃炉」という選択肢はありえないからである。防潮堤の建設などには2年ほどの時間がかかるらしいから、運転再開を決めるのは自分ではない別の人間で「俺の責任にはならない」という計算も菅総理には働いたかもしれない。
 それを本人が「歴史の評価」とか大見得を切るからチャンチャラおかしくなる。菅総理は「停止要請」によって浜岡原発の継続を宣言し、それ以外の場所にある原発事故の危険性から目をそらさせたのである。そう言われると困るから、「原子力計画をいったん白紙にする」と付け加えた。しかし「白紙」というのは「変更」ではない。自分は「白紙」にし、別の人間が極力「変更」しない形の計画にしてくれれば良いのである。
 それをニュースキャスターが「菅総理は原発の見直しに踏み込んだ」とか言っているから「おめでたい」。「何年までに原発の割合を何%減らす」とか、再生エネルギーの開発計画を発表した時に言うべき事を、論理的に考えれば考えるほど「原発を継続する」と言っている時に言うのだから始末が悪い。
 福島原発事故の教訓は「絶対の安全はない」と言うことである。どんなに想定しても想定外の事は起こる。どんなに安全対策をしても破られる事はある。だから最悪を考えて備えをしなければならない。ところが政府は「原発の安全性」を強調するあまり、不測の事態への対応をして来なかった。
 原発のメルトダウンを知りながら、住民のパニックを恐れて発表したのは事故から2ヶ月以上も経ってからである。発表していれば対応できていた事ができなかった。その被害者は周辺住民である。放射能による健康被害が現れるのは5年から10年先の事だから、これも菅政権にとっては「俺の責任ではない」と言う事になるのだろうか。
 日本が原発を54基持っているという事は、54個の核爆弾を持っているに等しい。つまり核戦争に備える思考と準備が必要なのである。敵は自然の猛威かもしれないし、テロ攻撃かもしれない。日本にミサイルで原爆を投下しなくとも、テロリストは小型スーツケースの原爆を都心で爆発させる事も出来るし、また海岸に建てられた原子力発電所を襲えば原爆投下と同様の効果が得られる。
 ところがそうした備えがない事を今回の事故は示してくれた。警視庁の放水車や消防庁の放水車が出動するのを見て私は不思議でならなかった。核戦争に備えた自衛隊の部隊はいないのかと思った。こんな事では政治は国民も国土も守る事が出来ない。いちいちアメリカを頼らなければならなくなる。
 考えてみれば日本のエネルギー自給率は4%に過ぎず、すべてはアメリカ頼みである。かつては国内の石炭に頼っていたのを1960年代に政府は無理矢理石炭産業を潰し、アメリカの石油メジャーが牛耳る中東の石油に切り替えた。ところが遠い中東の石油に頼りすぎる危険性が指摘されると、これもアメリカの主導で原子力発電を導入した。発電用濃縮ウランの大半はアメリカから輸入されている。
 普天間やTPP問題で分かるようにアメリカの足の裏を舐めないと存続できない菅政権は、原発見直しのフリは出来ても「転換」は簡単には出来ないのである。
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映画「100,000年後の安全」地下500? 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発
高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 
原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ/巨額の「反原発」対策費が政・官・財・学・メディア・地元に2011-05-17 | 地震/原発
原発保有国は潜在的核武装国/保有31カ国の下心/日本の原発による発電量は世界第3位2011-05-14 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉

*管理人の便宜上、2つのカテゴリー「政治」「地震/原発」でエントリ

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